説明

アメリカンドッグ用ミックス

【課題】従来のアメリカンドッグよりも、ボリュームがあり、ソフトな食感で口どけがよく、風味がよいアメリカンドッグ得ることができる、アメリカンドッグ用ミックスを提供すること。
【解決手段】アメリカンドッグ用ミックス中に、(A)ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムおよびメタリン酸カリウムから選ばれるいずれか1種以上の塩基性の重合リン酸塩を好ましくは0.05質量%以上2質量%以下および/または(B)酵母粉末を好ましくは0.05質量%以上2質量%以下配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アメリカンドッグ用ミックスに関し、詳しくは、ボリュームがあり、ソフトな食感で口溶けがよく、風味もよいアメリカンドッグを得ることのできるアメリカンドッグ用ミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アメリカンドッグは、ソーセージのまわりに、バッター生地をつけ、油ちょうして製造される。このアメリカンドッグは、ボリュームを出すことが特に要望されている。
しかし、小麦粉を主成分とするバッター生地を用いてアメリカンドックを製造しても、グルテンが生成して、ソーセージとバッター生地との付着が悪くなり、小さくて歪なボリュームのないものしか得られないという問題があった。
【0003】
一方、リン酸塩および酵母粉末は、従来から食品への使用例が報告されている(リン酸塩の使用例:非特許文献1及び酵母粉末の使用例:非特許文献2参照)が、前記問題を改善する目的でのアメリカンドッグへの使用は報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「畜産食品」文永堂 昭和53年,P246〜247
【非特許文献2】「新しい製パン基礎知識」パンニュース社 昭和53年、P40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、前述した従来のアメリカンドッグよりも、ボリュームがあり、ソフトな食感で口どけがよく、風味がよいアメリカンドッグを得ることができる、アメリカンドッグ用ミックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、特定のリン酸化合物および/または特定の酵素を、アメリカンドッグ用ミックス中に配合することで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、(A)ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムおよびメタリン酸カリウムから選ばれるいずれか1種以上の塩基性の重合リン酸塩および/または(B)酵母粉末を含むアメリカンドッグ用ミックスを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記アメリカンドッグ用ミックスを用いて製造されてなるアメリカンドッグを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアメリカンドッグ用ミックスによれば、ボリュームがあり、ソフトな食感で口どけがよく、風味がよいアメリカンドッグを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のアメリカンドッグ用ミックスについて、好ましい実施形態に基づき説明する。
【0011】
本発明で用いられる(A)成分である塩基性の重合リン酸塩は、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムおよびメタリン酸カリウムであり、吸湿性が少なく、水への溶解性がよく、使い易いことから、ポリリン酸ナトリウムを用いることが好ましい。なお、(A)成分である塩基性の重合リン酸塩は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい
【0012】
本発明において、(A)成分である塩基性の重合リン酸塩の含有量は、アメリカンドッグ用ミックス中、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。塩基性の重合リン酸塩の含有量が0.05質量%未満であると、ボリュームと食感の改善効果が充分でなく、2質量%を超えると、添加量の増加による効果が見られないだけでなく、風味を損なってしまう。
【0013】
(B)成分である酵母粉末は、酵母を粉末化したものである。酵母粉末として用いられる酵母としては、可食性のものであれば特に制限はなく、ビール酵母,パン酵母,清酒用酵母等一般に食品工業で用いられているものを用いることができる。このような酵母としては、例えばサッカロマイセス( Saccharomyces)属、ピキア( Pichia)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、デバリオマイセス(Debariomyces)属、キャンディダ(Candida)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属等に属する酵母が挙げられ、これらの酵母の中でも、サッカロマイセス( Saccharomyces)属のパン酵母がより好ましい。またこれらの酵母は、一種のみを用いてもよく二種以上を併用してもよい。
また、酵母の粉末化の方法としては、従来公知の方法が挙げられ、特に制限されないが、スプレー式乾燥、流動層乾燥を挙げることができる。
【0014】
(B)成分である酵母粉末としては、死滅酵母を適度に含むことから、グルタチオンを一定量以上含有するもの、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2〜5質量%含有するものが好ましい。このような酵母粉末としては、例えば、商品名「イーストパウダー」オリエンタル酵母工業株式会社製等の市販品を用いることができる。
【0015】
本発明において、(B)成分である酵母粉末の含有量は、アメリカンドッグ用ミックス中、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。酵母粉末の含有量が0.05質量%未満であると、ボリュームと食感の改善効果が充分でなく、2質量%を超えると、添加量の増加による効果が見られないだけでなく、風味を損なってしまう。
【0016】
本発明では、(A)成分である塩基性の重合リン酸塩または(B)成分である酵母粉末を単独で使用してもよく、(A)成分である塩基性の重合リン酸塩および(B)成分である酵母粉末を併用してもよい。
【0017】
(A)成分である塩基性の重合リン酸塩および(B)成分である酵母粉末を併用する場合、(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、アメリカンドッグ用ミックス中、好ましくは0.05〜4質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。(A)成分及び(B)成分の合計の含有量が、0.05質量%未満であると、ボリュームと食感の改善効果が充分でなく、4質量%を超えると、添加量の増加による効果が見られないだけでなく、風味を損なってしまう。
【0018】
また、(A)成分と、(B)成分との配合比(質量基準)は、特に限定されない。
【0019】
本発明のアメリカンドッグ用ミックスは、主成分として小麦粉が用いられる。該小麦粉としては、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉等が挙げられ、適宜選択して用いることができるが、薄力粉が好ましく用いられる。また、小麦粉の含有量は、アメリカンドッグ用ミックス中、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%である。
【0020】
また、本発明のアメリカンドッグ用ミックスには、必須成分である(A)塩基性の重合リン酸塩および(B)酵母粉末、ならびに上述した小麦粉の他、従来用いられている原材料や添加物、例えば、砂糖、澱粉、コーンフラワー、大豆たんぱく、卵粉、脱脂粉乳、膨張剤、乳化剤、増粘剤等のその他の成分を適宜含有することができる。これらのその他の成分の含有量は、アメリカンドッグ用ミックス中、合計で、好ましくは20〜60質量%である。
【0021】
本発明のアメリカンドッグは、前述した本発明のアメリカンドッグ用ミックスを、水と混合してバッター生地を作製し、このバッター生地を、ソーセージのまわりにつけ、通常170〜180℃の温度で4〜7分程度油ちょうすることにより得られる。
【0022】
本発明のアメリカンドッグを製造する場合の水の配合量は、本発明のアメリカンドッグ用ミックス100質量部に対し60〜80質量部であることが好ましく、65〜75質量部であることがより好ましい。混合する水の量が、60質量部未満であると、ボリュームがなく食感が硬くなり、混合する水の量が、80質量部を超えると、形状が崩れ糊っぽい食感となる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明をさらに具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例等に制限されるものではない。
【0024】
なお、以下の実施例および比較例において用いた原材料は以下の通りである。
ポリリン酸ナトリウム:青葉化成株式会社製
ポリリン酸カリウム:青葉化成株式会社製
メタリン酸ナトリウム:青葉化成株式会社製
メタリン酸カリウム:青葉化成株式会社製
酵母粉末:商品名「イーストパウダー」オリエンタル酵母工業株式会社製
小麦粉:商品名「フラワー」日清製粉製の薄力粉
ベーキングパウダー:商品名「ベーキングパウダー」オリエンタル酵母工業株式会社製
乳化剤:商品名「エマルジーY−61」理研ビタミン株式会社製
【0025】
≪アメリカンドッグ用ミックスならびにアメリカンドッグの製造および評価≫
実施例1〜5及び比較例1
実施例1〜5及び比較例1に係るアメリカンドッグ用ミックスは、以下の表1の配合で製造した。
【0026】
【表1】

【0027】
以上の各実施例および比較例に係るアメリカンドッグ用ミックスを用いて、以下に示す配合・手順により、アメリカンドッグを作製した。
【0028】
<アメリカンドッグの配合>
アメリカンドッグ用ミックス 1000g(100質量部)
水(10℃) 700g(70質量部)
【0029】
<アメリカンドッグの作製手順>
ホバート社製卓上ミキサー(N−50)に水とミックスの順に計量し投入し、ビーターをセットした。1速で30秒、更に2速で30秒混合しバッター生地を作成した。バッター生地を2リッター容の筒型の容器に移した。串つきソーセージを容器中のバッター生地に漬けてから引き上げ、バッター生地をソーセージに付着させた後、即座に175℃に加熱した大豆白絞油で、4分間フライした。
【0030】
得られた各アメリカンドッグについて、下記の評価基準に従って、アメリカンドッグの外観、食感および風味を評価した。なお、食感および風味は、5名のパネラーによる平均点とした。結果を表1に併せて示す。
【0031】
<アメリカンドッグの外観の評価基準>
5: ボリューム大きく、丸みがあり、表面が滑らかで良好
4: 3と5の中間
3: ボリューム普通、形状と表皮はほぼ良好
2: 1と2の中間
1: ボリューム小さく、形状が歪で、表皮が割れる
【0032】
<アメリカンドッグの食感の評価基準>
5: サクミがあり、歯切れ・口溶けが良好
4: サクミがあり、歯切れ・口溶けほぼ良好
3: サクミが多少あり、歯切れ・口溶け普通
2: サクミあまり無く、歯切れ・口溶け劣る
1: サクミ無く、歯切れ・口溶けが悪い
【0033】
<アメリカンドッグの風味の評価基準>
5: 甘味・風味が優れ、異味が無い
4: 甘味・風味がよく、異味が無い
3: 甘味・風味が普通、異味が無い
2: 粉っぽさや渋み等の異味をやや感じる
1: 粉っぽい。渋い等異味を強く感じる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムおよびメタリン酸カリウムから選ばれるいずれか1種以上の塩基性の重合リン酸塩および/または(B)酵母粉末を含むアメリカンドッグ用ミックス。
【請求項2】
(A)成分の含有量が0.05質量%以上2質量%以下である請求項1記載のアメリカンドッグ用ミックス。
【請求項3】
(B)成分の含有量が0.05質量%以上2質量%以下である請求項1または2記載のアメリカンドッグ用ミックス
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアメリカンドッグ用ミックスを用いて製造されてなるアメリカンドッグ。

【公開番号】特開2012−5349(P2012−5349A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119696(P2010−119696)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】