説明

アモオラニン化合物の組成物及びその使用

アモオラニン(amooranin)(AMR)は、G2/M細胞周期停止、カスパーゼ活性化、及びアポトーシスを通じて腫瘍細胞死を引き起こすことが見い出された。さらに、AMRがP糖タンパク質の基質であることが実証された。これらの作用から、AMR類似体を含むAMR化合物は、異常な細胞増殖が起こる多くの疾患、例えば、薬物感受性癌及び薬物耐性癌、自己免疫障害、並びに炎症性疾患の処置において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年4月16日出願の米国特許仮出願第60/562,732号の恩典を主張する2005年4月15日出願の米国特許出願第11/106,841号の一部継続出願であり、いかなる図表、表、核酸配列、アミノ酸配列、および図面を含むその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
生物学的に活性な新規化合物を探索する過程で、いくつかの天然物及び生物が、有用で極めて多様な生物学的活性を有する化学分子の潜在的な供給源であることが見出された。タキソール、ポドフィロトキシン、ビンブラスチン及びビンクリスチン等の植物由来の癌用薬は、重要な抗有糸分裂薬であり、現在はヒト悪性疾患の処置に使用されている。これらのリード化合物は、新規の抗癌剤の開発のモデルとして用いられている(Cragg, G.M. "Role of plants in the National Cancer Institute drug discovery and development program" In Human Medicinal Agents from plants, ACS Symposium Series 534, Eds. Kinghorn, A.D. & Balandrin, M.F., 149-169, American Chemical Society Books, Washington, D.C., 1993; Wall, M.E. and Wani, M.C. "Camptothecin and analogues: Synthesis, biological in vitro and in vivo activities and clinical possibilities" In human medicinal agents from plants, ACS symposium series 534 Eds. Kinghorn, A.D & Balandrin, M.F., 149-169, American Chemical Society Books, Washington, D.C., 1993)。
【0003】
数種のイチイの木から単離されたジテルペンであるタキソールは、微小管を安定化させ、それらの遊離チューブリンへの脱重合を阻害する紡錘体毒である(Fuchs, D.A., R.K. Johnson (1978) Cancer Treat. Rep. 62:1219-1222; Schiff, P.B., J. Fant, S.B. Horwitz (1979) Nature (London) 22:665-667)。タキソールはまた、抗腫瘍活性を有することも公知であり、多くの臨床試験が行われ広範囲の癌の処置に有効であることが示された(Rowinski, E.K., R.C. Donehower (1995) N. Engl. J. Med. 332:1004-1014)。米国特許第5,157,049号;同第4,960,790号;及び同第4,206,221号もまた参照のこと。
【0004】
薬物作用の分子的機構に関する情報は、任意の潜在的な化学療法薬の開発に不可欠である。この文脈で、いくつかの癌用薬が腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導することが示された。アポトーシスは、生化学的に、DNAが180〜200塩基対又はその倍のヌクレオソーム大の断片に切断されることにより特徴付けられ、これはゲル電気泳動によるDNAラダーとして検出され得る(Skladanowski, A. and Konopa, J. Biochem Pharmacol, 1993, 46:375-382; Ohmori, T. et al. Biochem Biophys Res Commun, 1993, 192:30-36; Ling, Y-H. et al. Cancer Res, 1993, 53:1845-1852; Kolber, M.A. et al. FASEB J, 1990, 4:3021-3027)。いくつかの癌用薬はまた、腫瘍細胞がアポトーシスを起こす前にG2/M停止を引き起こす(Klucer, J. and Al-Rubeai, M. FEBS Lett, 1997, 400:127-130)。細胞死プロセスにおいては、アポトーシス誘導遺伝子が活性化され、抗アポトーシス遺伝子が抑制されて、その細胞内のそれぞれタンパク質及びゲノムDNAを分解する作用を有する、カスパーゼ及びヌクレアーゼが活性化される(Green, D. Cell, 1998, 94:695-698)。
【0005】
カスパーゼはアスパラギン酸特異的システインプロテアーゼであり、潜伏性細胞内チモーゲンとして存在する(Earnshaw, W.C. et al. Annu Rev Biochem, 1999, 68:383-424; Wolf, B.B. and Green, D.R. J Biol Chem, 1999, 274:20049-20052)。これらは、ひとたびアポトーシスシグナルにより活性化されると、規定された基質特異性を有する重要な細胞タンパク質及び核タンパク質を切断することによりその細胞全体を破壊し得る(Martin, D.S. et al. Cancer Res, 2000, 60:6776-6783; Budihardjo, I. et al. Annu Rev Cell Dev Biol, 1999, 15:269-290)。アポトーシスのシグナル伝達における行動順に基づき、14以上のカスパーゼが同定され、アポトーシスイニシエーターカスパーゼ及びプロセッサーカスパーゼとして体系化された(Earnshaw, W.C. et al. Annu Rev Biochem, 1999, 68:383-424; Wolf, B.B. and Green, D.R. J Biol Chem, 1999, 274:20049-20052; Martin, D.S. et al. Cancer Res, 2000, 60:6776-6783; Budihardjo, I. et al. Annu Rev Cell Dev Biol, 1999, 15:269-290)。
【0006】
スクアレンの環化により植物中で生合成されるテルペノイドは、抗腫瘍形成性及び消炎性を有することが報告されている(Huang, M.T. et al. Cancer Res, 1994, 54:701-708; Nishino, H. Cancer Res, 1988, 48:5210-5215)。テルペノイドは腫瘍細胞において増殖を阻害しアポトーシスを誘導することが示された(Konopleva, M. et al. Blood, 2002, 99:326-335; Kim, D.K. et al. Int J Cancer, 2000, 87:629-636; Hoernlein, R.F. et al. J Pharmacol Exp Ther, 1999, 288:613-619; Stadheim, T.A. et al. J Biol Chem, 2002, 277:16448-16455)。
【0007】
合成トリテルペノイドである2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン-1,9-ジエン-28-オイン酸(CDDO)及びそのメチルエステル(CDDO-Me)は、抗増殖効果、消炎効果及び分化効果を有することが報告された(Konopleva, M. et al. Blood, 2002, 99:326-335; Stadheim, T.A. et al. J Biol Chem, 2002, 277:16448-16455; Suh, N. et al. Cancer Res, 1999, 59:336-341)。これらの合成トリテルペノイドは両方とも、カスパーゼ-8、カスパーゼ-3の活性化並びに白血病細胞株及び骨肉腫細胞におけるミトコンドリアシトクロムcの放出の誘導によりアポトーシスを誘導する(Ito, Y. et al. Cell Growth Differ, 2000, 11:261-267; Ito, Y. et al. Mol Pharmacol, 2001, 59:1094-1099)。
【0008】
多種の癌の処置に対する化学療法の成果は、新生物細胞がその薬物の細胞毒効果を妨害できるよう発展させた細胞機構を通じて実質的に打ち消され得る。いくつかの細胞は、構造上関係のない多くの薬物に対する耐性を付与する機構を構築している。この多剤耐性(又はMDR)現象は、多くの異なる機構を通じて実現し得る。
【0009】
MDRに寄与する主要な要因の1つは、P糖タンパク質(P-gp)の過剰発現により媒介される排出増加の結果として薬物の蓄積が減少することである。P-gpは膜結合性ATP依存性排出ポンプとして機能し、多種の構造上機能上関係のない薬物を細胞膜を通じて外に運搬することで広範囲の交差耐性を付与すると考えられる(Gottesman, M.M. et al. Ann Rev Biochem, 1993, 62:385-427; Moscow, J.A. and Cowan, K.H. J. Natl Cancer Inst, 1988, 80:14-20; Biedler, J.L. Cancer, Supplement, 1992, 70:1799-1809)。
【0010】
P-gpの機能を阻害し得る多くの薬物が同定され、これらは排出遮断剤(efflux blocker)、化学増感剤(chemosensitizer)又はMDR調節剤(MDR modulator)と呼ばれる(Ford, J.M. Eur J Cancer, 1996, 32A:991-1001; Sikic, B.I. Semin Oncol, 1997, 34:40-47)。臨床的なMDRの薬理学的阻害についてこれらの薬物を試験する臨床試験がヒトにおいて実施された(Lum, B.L. et al. Cancer, 1993, 72:3502-3514; Bates, S.F. et al. Novartis Found Symp, 2002, 243:83-102)。これらの調節剤の多くはインビボで毒性であるか又は有効性がなかった;従って、難治性患者における臨床的なMDRを克服するためには、潜在的な新規薬剤の同定が必要である。Tsuruoら(Cancer Res, 1989, 41:1967-1972)は、ビンクリスチンの抗増殖活性を調節し、多剤耐性マウス白血病細胞株における細胞のビンクリスチン蓄積を増加させるベラパミル及びトリフルオペラジンによるMDRの薬理学的逆行についての報告を最初に行った。それ以来、多くの化合物が、多種の組織培養アッセイにおいて、及びその細胞が耐性を有する化学療法剤と同時投与した場合の動物腫瘍モデルにおいて、MDRを打ち消すことが示された(Tsuruo, T., et al. Cancer Res, 1989, 41:1967-1972; Ford, J.M. and Hait, W.N. Pharmacol Rev, 1990, 42:156-199; Ford, J.M. Hematol Oncol Clin North Amer, 1995, 9:337-355)。
【0011】
一般的に、MDRを打ち消すのに使用される薬剤は、多剤耐性細胞における薬物蓄積の問題を改善するが、薬物感受性細胞においてはほとんど又は全く効果がない。大部分の調節剤がそれによってMDRを打ち消すと考えられている。その主要機構は、P-gpにより媒介される薬物排出の直接的な阻害を通じて、多剤耐性細胞における細胞毒性薬物の蓄積を回復させるというものである。しかし、異なるクラスの調節剤の機能的類似性、P-gp上の調節剤結合部位の数及び位置、並びに調節剤の結合部位と細胞毒性物質の結合部位との重複性に関して相反する証拠が存在する。
【0012】
ヒト悪性疾患の処置のためにインドのアーユルベーダ医療システム(Indian Ayurvedic system of medicine)において使用される漢方薬の1つは、アモオラ・ロヒツカ(Amoora rohituka)の幹皮、セミカルプス・アナカルディム(Semicarpus anacardium)の果実及びグリジリザ・グラブラ(Glyzirrhiza glabra)の根を含み、これはインドで「CANARIB」として販売されている(Prasad, G.C. J Res Ayurveda Sidha, 1987, 8:147-167; Prasad, G.C. J Res Ayurveda Sidda, 1994, 8:147-157)。アモオラ・ロヒツカは、インド、マレーシア及びスリランカに特有の天然の熱帯薬用樹であり、インドでは「ロヘラ(rohera)」として知られている。この植物の幹皮及び種子は、癌を含む、脾臓、肝臓、及び腹部の疾患を処置するための医薬物として定着し使用されている(Chopra R.N. et al., Glossary of Indian Medicinal Plants, Council of Scientific and Industrial Research: New Delhi, 1956; Wealth of India, Raw Materials, Vol. I, Council of Scientific and Industrial Research: New Delhi, 1973; Prasad, 1987; Prasad, 1994)。これまでの研究で、アモオラ・ロヒツカ幹皮由来の多種の抽出物及びトリテルペン酸が、MCF-7ヒト乳房腺癌細胞(Rabi T. et al., Indian J Pharm Sci, 1994, 56:136-137)、受容体マウスの腹膜腔に接種したダルトン・リンパ腫腹水細胞(Rabi, T. and Gupta, R.C. Int J Pharmacogn, 1995, 33:359-361)、ラット腫瘍モデルにおけるN-ニトロソメチル尿素誘導性の乳房腺癌(Rabi T. et al, Curr Sci, 1996, 70:80-81)、及びその他のヒト腫瘍細胞株(Rabi T. et al, Phytother Res, 2002, 16:S84-S86)に対して細胞毒性を示すことが実証された。
【0013】
ヒト及び動物の処置のためには炎症の予防及び制御もまた非常に重要である。消炎性を有する化合物の開発のために多くの研究が行われてきた。炎症の阻害又は制御を助ける一定の方法及び化学的組成物が開発されているが、さらなる消炎方法及び消炎組成物が必要とされる。
【0014】
免疫調節は、免疫薬理学の中では発展途上の分野である。免疫調節性の化合物及び組成物は、その名の通り、ヒト又は動物における免疫学的機能を調節又は加減するのに有用である。免疫調節剤は、特定の疾患及び障害に対する免疫を強化する、又はそれらからの治癒を開始する免疫刺激剤であり得る。逆に、免疫調節剤は、外来物質に対する身体の望ましくない免疫反応を抑止する、又は自己免疫反応若しくは自己免疫疾患を抑止若しくは改善する免疫阻害剤又は免疫抑制剤であり得る。
【0015】
免疫調節剤は、エリテマトーデス及び糖尿病等の全身性自己免疫疾患、並びに免疫不全疾患を処置するのに有用であることが見出された。さらに、免疫調節剤は、癌の免疫療法に、又は移植片中の外来器官若しくはその他の組織、例えば、腎臓、心臓、又は骨髄の拒絶反応を抑止するのに有用であり得る。
【0016】
FK506、ムラミル酸ジペプチド誘導体、レバミソール、ニリダゾール、オキシスラン、フラジル、並びにインターフェロン、インターロイキン、ロイコトリエン、コルチコステロイド、及びシクロスポリンの群のその他の化合物を含む、多種の免疫調節性化合物が発見された。しかし、これらの化合物の多くは、望ましくない副作用及び/又は高い毒性を有することが見出された。従って、広範囲の免疫調節機能を提供する新規の免疫調節性化合物が必要とされる。
【発明の開示】
【0017】
発明の概要
1つの局面において、本発明は、図1に示される構造を有する単離された化合物(本明細書中では、アモオラニン(amooranin)、25-ヒドロキシ-3-オキソオレアン-12-エン-28-オイン酸、若しくはAMRとも称する)、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体を提供する。本発明のAMR化合物は、低濃度で多剤耐性(MDR)を減少させることができ、かつ高濃度でアポトーシス及び細胞毒性を誘導することができる。アモオラニンは、アモオラ・ロヒツカの幹皮から得られたトリテルペン酸であり、優れた抗癌特性を示す。その腫瘍細胞死の主要機構は、G2/M細胞周期停止、カスパーゼ活性化、及びアポトーシスを通じた機構である。
【0018】
本発明の別の局面は、癌細胞(化学療法剤に対する耐性を有する癌細胞を含む)における細胞増殖の制御、並びにG2/M細胞周期停止、カスパーゼ活性化、及びアポトーシスの誘導のための方法を提供する。本明細書において、AMRがP糖タンパク質(P-gp)の基質であり、かつドキソルビシン(DOX)の細胞毒性に対する化学的増感効果を有することが実証される。多剤耐性白血病(CEM/VLB)細胞株及び結腸癌腫(SW620/Ad-300)細胞株の両方において、AMR及びDOXの組み合わせは、DOXの細胞毒性を調節することが示された。1つの態様において、有効量の少なくとも1つのAMR化合物(AMR、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体)が患者に投与される。
【0019】
本発明のさらなる局面は、少なくとも1つのAMR化合物(AMR、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体)の免疫抑制的用法に関する。
【0020】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つのAMR化合物(AMR、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体)と薬学的に許容される坦体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0021】
本発明のさらなる局面は、アモオラ・ロヒツカ植物材料からアモオラニンを獲得するプロセスを提供する。
【0022】
発明の詳細な説明
異常な様式で増殖する細胞成長を阻害することにより、本発明の治療法、化合物、及び組成物は、多くの細胞増殖性障害、例えば、白血病及びリンパ腫(例えば、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、及び多発骨髄腫)、小児固形腫瘍(例えば、脳腫瘍、神経芽腫、網膜芽腫、ウィルムス腫、骨腫、及び軟部組織肉腫)、成人の総固形腫瘍(例えば、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、尿癌、子宮癌、膀胱癌、口腔癌、膵臓癌、黒色腫及び他の皮膚癌、腹部癌、卵巣癌、脳腫瘍、肝臓癌、喉頭癌、甲状腺癌、食道癌、及び精巣癌)を含むがこれらに限定されない癌を処置するのに使用され得る。本発明の方法は、ヒト及び非ヒト哺乳動物における癌性細胞の成長を阻害するために、インビボ又はインビトロで実施され得る。
【0023】
本発明の治療法は、化学療法、放射線療法、又は増殖性障害(例えば、癌)の処置及び管理について当業者に公知の任意の他の療法(例えば、抗癌剤投与)を含むがこれらに限定されない少なくとも1つのさらなる治療法と組み合わせ得る点で有利である。
【0024】
AMR及びAMR類似体は、単離された化合物として投与され得るが、これらの化合物を薬学的組成物として投与するのが好ましい。従って本発明はさらに、活性薬剤としてAMR若しくはその類似体、又は生理学的に許容されるそれらの塩を少なくとも1つの薬学的に許容される坦体と組み合わせて含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、多種の投与経路、例えば、経腸、非経口、静脈内、筋内、局所、皮下等の投与経路に適合し得る。投与は連続的なものでも一定間隔おきのものでもよく、それは当業者により決定され得ることである。
【0025】
本発明のAMR化合物は薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従い処方され得る。処方は当業者に周知であり容易に入手できる多くの情報源に記載されている。例えば、Remington's Pharmaceutical Science(Martin, E.W., 1995, Easton Pennsylvania, Mack Publishing Company, 19th ed.)には、本発明と関連して使用され得る処方が記載される。投与に適した処方物としては、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及びその処方物に対象受容者の血液との等張性を与える溶質を含み得る水性無菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁物が挙げられる。処方物は、単回投薬用又は複数回投薬用の容器(例えば、密封されたアンプル及びバイアル)中に提供されてもよく、そして使用前に無菌液体坦体(例えば、注射用水)による調製のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)条件で保存されてもよい。注射溶液及び注射懸濁物は、無菌粉末、顆粒、錠剤等から即座に調製され得る。本発明の組成物は、上記の詳細に言及した成分に加えて、当処方の類型に関連して当技術分野において慣用されるその他の薬剤を含み得ることが理解されなければならない。
【0026】
本発明のAMR化合物には、当業者により調製され得るAMR又はAMR類似体の全ての水和物及び塩が含まれる。本発明の化合物が、安定な非毒性の酸性塩又は塩基性塩を形成するのに十分塩基性又は酸性である条件の下では、化合物を塩として投与するのが適切であり得る。薬学的に許容される塩の例は、生理学的に許容される陰イオンを生じる酸の存在下で形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、αケトグルタル酸塩、及びαグリセロリン酸塩である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、及び炭酸塩を含む適切な無機塩もまた形成され得る。
【0027】
AMRの薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の標準的手順を用いて、例えば、アミン等の十分に塩基性の化合物と、生理学的に許容される陰イオンを生じる適切な酸を反応させることによって、獲得され得る。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム若しくはリチウム)塩又はアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩もまた作製され得る。
【0028】
本明細書中で使用する「類似体」という用語は、別の化合物と実質的に同一であるが、例えば側鎖基の付加、親構造の酸化又は還元によって修飾された化合物を意味する。AMRの類似体は、一般的に知られている標準的反応を用いて容易に調製され得る。これらの標準的反応には、水素添加反応、アルキル化反応、アセチル化反応、及び酸性化反応が含まれるがこれらに限定されない。化学修飾は、当業者により、その分子中に存在する全ての官能基を保護し、科学文献において公知の標準的手順を用いて所望の反応を行った後にそれらを脱保護することによって達成され得る(Greene, T.W. and Wuts, P.G.M. "Protective Groups in Organic Synthesis" John Wiley & Sons, Inc. New York. 3rd Ed. pg. 819, 1999; Honda, T. et al. Bioorg. Med. Chem. Lett, 1997, 7:1623-1628; Honda, T. et al. Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8:2711-2714; Konoike, T. et al. J. Org. Chem., 1997, 62:960-966; Honda, T. et al. J. Med. Chem., 2000, 43:4233-4246;これらは各々、その全体が参照として本明細書に組み入れられる)。所望の生物学的活性(例えば、多剤耐性の減少、アポトーシスの誘導、及び/又は細胞毒性)を示す類似体は、細胞アッセイ又はその他のインビトロ若しくはインビボアッセイ(例えば、本明細書中に記載されるアッセイ)を用いて同定又は確認され得る。例えば、G2/M細胞周期停止、カスパーゼ活性化、及び/又は腫瘍の成長の低減を検出するアッセイが利用され得る。
【0029】
図13は、本発明のAMR類似体の化学構造(II)を表す式を示し、式中、R1、R2、及びR3は同じであっても異なっていてもよく、各々、H、O、CN、CH3COO、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、又はアルコキシであり得る。
【0030】
本明細書において単独で又は組み合わせて使用する「アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル部分を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等を包含する。
【0031】
「アルケニル」という用語は、2〜6個の炭素原子を有し、さらに1つの二重結合を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル部分(適用可能な場合はE立体化学又はZ立体化学のいずれかのアルキル部分)を意味する。アルケニルという用語は、例えば、ビニル、1-プロペニル、1-ブテニル及び2-ブテニル、2-メチル-2-プロペニル等を包含する。
【0032】
「アルキニル」という用語は、2〜6個の炭素原子を有し、さらに1つの三重結合を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル部分を意味する。アルキニルという用語は、例えば、エチニル、1-プロピニル、1-ブチニル及び2-ブチニル、1-メチル-2-ブチニル等を包含する。
【0033】
「アルコキシ」という用語は、アルキル-O-基(アルキル基は上記の通り)を意味する。従って、「アルコキシ」は、最大6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ等を包含する。
【0034】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
【0035】
本発明は、任意のR基(R1、R2、及び/又はR3)の任意の置換基(H、O、CN、CH3COO、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、及びアルコキシからなる群より選択される)の除外を意図する。
【0036】
本発明のAMR類似体は、1つまたは複数の非対照的に置換された炭素原子(すなわち、炭素中心)を含み得ることが認識されるであろう。本発明の類似体、例えば、図13及び図14A〜14Fに示される類似体に、1つまたは複数の非対照中心が存在することから、立体異性体が生じ得、各々の場合において本発明は、鏡像体、ジアステレオマー、及びそれらのラセミ混合物を含む混合物を含む全てのそのような立体異性体に及ぶことが理解されなければならない。
【0037】
1つの態様において、図13に示される化学構造(II)はAMRの化学構造(構造I;図1)又はその薬学的に許容される塩を除外する。
【0038】
図14A〜14Iは本発明のAMR類似体を示す。図14Aの類似体(構造(III))において、-CO基は、不飽和のα位の炭素、この分子のC11位でシクロヘキサン環に組み込まれる。図14Bにおいて、-CN基は、C3位のケト基のα位、この分子のC2位でシクロヘキサン環に組み込まれる(構造(IV))。図14Cに示されるAMR類似体(構造(V))は、図14A及び14Bの構造に組み込まれた両方の置換基(-CO及び-CN)を有する。図14D〜14Fに示されるAMR類似体(構造(VI)、(VII)、及び(VIII))は、アモオラニンのC3位の-CO基の酸素原子がCH3COOで置換され、構造(III)〜(V)(図14A〜14C)の3-O-アセチル誘導体となっている。図14G〜14Iに示されるAMR類似体(構造(IX)、(X)、及び(XI))は、図14D〜14Fの構造(VI)、(VII)、及び(VIII)におけるC3位の酢酸基(CH3COO)をグリコシル残基(グルコース分子)で置換することにより獲得され得る。
【0039】
本発明のAMR化合物は、様々な非治療目的及び治療目的に有用である。それは本発明のAMR化合物が異常な細胞成長を減少するのに有効であることを示す試験から明らかである。本化合物は、その抗増殖特性により、インビトロ及びインビボを含む広範囲の状況における望ましくない細胞成長を減少させるのに有用である。これらはまた、標準として及び教育目的の実演のためにも有用である。本明細書中に開示されるように、AMR化合物はまた、動物及びヒトにおける癌細胞を予防的及び治療的に処置するのに有用である。
【0040】
AMR化合物及びそれらを含む組成物の治療適用は、当業者に現在公知の又は将来公知となる任意の適切な治療法及び治療技術により達成され得る。さらに、本発明のAMR化合物は、他の有用な化合物及び組成物を調製するための出発材料又は中間体としての用途を有する。
【0041】
本発明のAMR化合物は、一箇所以上の解剖学的部位、例えば、望ましくない細胞成長の部位に局所投与され得る。本発明のAMR化合物は、薬学的に許容される坦体、例えば、不活性希釈液、又は経口送達のための吸収性食用坦体と組み合わせて全身投与、例えば静脈内投与又は経口投与され得る。これらは硬質ゼラチンカプセル又は軟質ゼラチンカプセルに内包されても、錠剤として圧縮されても、又は患者の食事用の食物に直接加えられてもよい。経口治療投与のために活性化合物は、1つまたは複数の賦形剤と混和され得、摂食用錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤等の形態で使用され得る。
【0042】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等はまた、トラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンブン若しくはゼラチン等の結合剤;リン酸二カルシウム等の賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;及びスクロース、フルクトース、ラクトース若しくはアスパルテーム等の甘味剤を含んでもよく、又はペパーミント、冬緑油、若しくはチェリーフレーバー等の着香剤が添加されてもよい。単回投薬剤形がカプセル剤である場合、上記類型の材料に加えて、植物油又はポリエチレングリコール等の液体坦体も含まれ得る。多種のその他の材料は、コーティングとして、又はそうでなければ固形単回投薬剤形の物理的形状を調整するために、存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、ゼラチン、蝋、シェラック、又は糖等でコーティングされ得る。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース又はフルクトース、保存剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、染料及び着香剤(例えば、チェリーフレーバー又はオレンジフレーバー)を含み得る。当然のことながら、任意の単回投薬剤形の調製に使用される任意の材料は、その使用量で薬学的に許容されかつ実質的に非毒性でなければならない。さらに、活性化合物は、徐放性調製物及び徐放性デバイスに組み込まれ得る。
【0043】
活性薬剤(すなわち、AMR又はAMRの薬学的に許容される塩若しくは類似体)はまた、注入又は注射によって静脈内投与又は腹腔内投与され得る。活性薬剤又はその塩の溶液は、非毒性の界面活性剤と任意で混合された水中で調製され得る。分散剤はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物中で、並びに油中で調製され得る。通常の保存条件及び使用条件下で、これらの調製物は微生物の成長を抑止するための保存薬を含む。
【0044】
注射又は注入に適した薬学的投薬剤形には、無菌水性溶液剤若しくは無菌水性分散剤、又は無菌注射若しくは注入用の溶液剤若しくは分散剤の即時調製に適合し任意でリポソーム中に被包される活性成分を含む無菌粉末剤が挙げられる。全ての場合において、最終的な投薬剤形は、無菌的であり、流体であり、かつ製造条件及び保存条件下で安定でなければならない。液体坦体又は賦形剤は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒体であり得る。適当な流体性は、例えば、リポソームの形成によって、分散剤の場合は必要な粒子サイズの維持によって、又は界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物活動の抑止は、多種の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、緩衝液、又は塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射用組成物の長期的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンをその組成物において使用することによりもたらされ得る。
【0045】
無菌注射用溶液は、必要量のAMR化合物(すなわち、AMR又はAMRの薬学的に許容される塩若しくは類似体)を、必要に応じて上記の多種の他の成分を含む適切な溶媒に加えた後に濾過滅菌することによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末剤の場合、好ましい調製方法は、前もって濾過滅菌された溶液中に含まれる活性成分及び任意の追加の所望の成分の粉末を生成する真空乾燥技術及び冷凍乾燥技術である。
【0046】
局所投与について、AMR化合物は、純粋な形態で(すなわちそれらが液体である場合に)適用され得る。しかし、一般論として、皮膚科学的に許容される坦体と組み合わせた、固体又は液体であり得る組成物としてそれらを皮膚に局所投与することが望ましい。
【0047】
有用な固体坦体としては、滑石、粘土、微晶質セルロース、シリカ、アルミナ等の微粉固体が挙げられる。有用な液体坦体としては、AMR化合物を有効レベルで(状況に応じて非毒性界面活性剤の補助により)溶解又は分散することができる、水、アルコール若しくはグリコール又は水-アルコール/グリコールブレンドが挙げられる。所定の用途にその特性を最適化するために着香剤及び追加の抗菌剤等の佐剤が添加され得る。得られる液体組成物は、含浸帯具及びその他の包帯に使用される吸収パッドによって適用され得るか、又はポンプ型噴霧器若しくはエアゾール型噴霧器を用いて疾患領域に噴霧され得る。
【0048】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及び脂肪酸エステル、脂肪アルコール、修飾セルロース又は修飾無機物等の増粘剤もまた、使用者の皮膚に直接適用するための展延性のペースト、ゲル、軟膏、スープ等を形成するために、液体坦体と共に用いられ得る。AMR化合物を皮膚に送達するために使用され得る有用な皮膚科学的組成物の例は、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)及びWoltzman(米国特許第4,820,508号)に開示される。
【0049】
本発明の薬学的組成物の有用な用量は、それらのインビトロ活性及び動物モデルにおけるインビボ活性を比較することにより決定され得る。マウス及びその他の動物における有効用量からヒトにおけるそれを推定する方法は、当技術分野で公知である;例えば、米国特許第4,938,949号を参照のこと。
【0050】
従って、本発明は、AMR化合物(すなわち、AMR又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体)を薬学的に許容される坦体と組み合わせて含む薬学的組成物を包含する。経口投与、局所投与、又は非経口投与に適合した、一定量のAMR化合物を含む薬学的組成物は、本発明の好ましい態様を構成する。本発明についての文脈で、患者、特にヒトに投与される用量は、合理的な時間枠内で患者における治療的反応を達成するのに十分であるべきである。当業者は、用量が、被験体の状態(健康状態)、被験体の体重、併用する処置の種類、状況によっては処置の頻度、治療可能比(therapeutic ratio)、並びに病理学的状態の重篤度及びステージを含む多種の要因に依存することを認識するはずである。
【0051】
適切な用量とは、標的細胞の増殖を減少させる量である。癌についての文脈では、適切な用量とは、悪性腫瘍等の癌組織において所望の反応を達成することが知られている活性薬剤の濃度をもたらす用量である。好ましい用量とは、管理できない副作用を示さずに癌細胞成長を最大限阻害する量である。AMR化合物の投与は連続的であっても一定間隔おきであってもよく、これらは当業者により決定され得る。
【0052】
所望の治療的処置用にこのような用量の投与を提供するために、本発明の新規の薬学的組成物は、坦体又は希釈剤を含む組成物の総重量を基にした1つまたは複数の新規化合物の総重量で、約0.1%〜45%、特に1%〜15%を含むのが都合良い。詳細には、動物重量(体重)1kgあたりに投与される活性成分の用量レベルは、、静脈内、0.01〜約20mg/kg;腹腔内、0.01〜約100mg/kg;皮下、0.01〜約100mg/kg;筋内、0.01〜約100mg/kg;経口、0.01〜約200mg/kg、好ましくは約1〜100mg/kg;鼻腔内滴下、0.01〜約20mg/kg;及びエアゾール、0.01〜約20mg/kgであり得る。
【0053】
開示される方法からの利益を享受する哺乳動物種としては、類人猿、チンパンジー、オラウータン、ヒト、サル等の霊長類;イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ベトナムポットベリーピッグ、ウサギ、及びフェレット等の家畜動物(例えば、ペット);ウシ、バッファロー、バイソン、ウマ、ロバ、ブタ、ヒツジ、及びヤギ等の家畜農場動物;クマ、ライオン、トラ、パンサー、ゾウ、カバ、サイ、キリン、カモシカ、ナマケモノ、ガゼル、シマウマ、ヌー、プレーリードッグ、コアラ、カンガルー、フクロネズミ、アライグマ、パンダ、ハイエナ、アザラシ、アシカ、ゾウアザラシ、カワウソ、ネズミイルカ、イルカ、及びクジラ等の典型的には動物園で見られる珍しい動物が挙げられるがこれらに限定されない。開示される方法からの利益を享受し得るその他の種としては、魚類、両生類、鳥類、及び爬虫類が挙げられる。本明細書中で使用する「患者」及び「被験体」という用語は互換的に用いられ、このようなヒト及び非ヒト種を含むことが意図される。同様に、本発明のインビトロ方法は、このようなヒト及び非ヒト種の細胞に対して実施され得る。
【0054】
本発明の方法を用いて処置する必要のある患者は、適当な場合、医学又は獣医学の専門家に公知の標準的技術を用いて同定され得る。
【0055】
本明細書中で使用する「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には無秩序な細胞成長により特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を意味するか、又はそれを表す。癌は、多剤耐性(MDR)又は薬物感受性であり得る。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病が含まれるがこれらに限定されない。このような癌のより具体的な例には、乳癌、前立腺癌、結腸癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、腹膜癌、肝臓癌、例えば、肝癌、膀胱癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、及び甲状腺癌が含まれる。
【0056】
その他の癌の非限定的な例は、基底細胞癌腫、胆道癌;骨癌;脳及びCNSの癌;絨毛癌;結合組織癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;胃癌(gastric cancer);上皮内新生物;喉頭癌;ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;黒色腫;骨髄腫;神経芽腫;口腔癌(例えば、唇、舌、口、及び咽頭);網膜芽腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;肉腫;皮膚癌;胃癌(stomach cancer);精巣癌;子宮癌;泌尿器系の癌、並びにその他の癌腫及び肉腫である。
【0057】
本明細書中で使用する「腫瘍」という用語は、悪性であるか良性であるかに関係なく全ての腫瘍性の細胞成長及び細胞増殖、並びに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を意味する。例えば、特定の癌は、固形腫瘍塊により特徴付けられ得る。この固形腫瘍塊は、存在する場合、原発性腫瘍塊であり得る。原発性腫瘍塊は、その組織の正常細胞の形質転換により生じる組織中の癌細胞の成長物を意味する。多くの場合、原発性腫瘍塊は、目視若しくは触診法を通じて、又は組織の形状の不規則性、質感、若しくは重量により発見され得る嚢腫の存在により特徴付けられる。しかし、いくつかの原発性腫瘍は触診できず、X線(例えば、マンモグラフィー)等の医療画像化技術を通して又は針吸引によってのみ検出され得る。これら後者の技術の使用は、早期検査においてはより一般的である。組織中の癌細胞の分子的分析及び表現型分析は、通常、その癌が組織に内因的であるか、又はその病巣が別の部位からの転移によるものかを確認する。
【0058】
本発明の方法に従い、AMR又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体は、患者に単独で投与されるか、又は別の薬剤と同時投与され得る。同時投与は、同時に(同一処方物若しくは別個の処方物として)又は連続して実施され得る。さらに、本発明の方法に従い、AMR又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体は、アジュバント療法として患者に投与され得る。例えば、AMR又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体は、化学療法と関連して患者に投与され得る。1つの態様において、AMR化合物は、インビトロ又はインビボで、アントラサイクリン等の別の抗癌剤と共に多剤耐性(MDR)癌細胞に同時投与され、AMR化合物は、AMR化合物のP-gp排出遮断活性を通じて、同時投与される抗癌剤に対する標的MDR細胞の感受性を高める働きをする。
【0059】
従って、本発明のAMR化合物(AMR又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体)は、個別に投与される場合も薬学的組成物として投与される場合も、添加物として多種の他の要素を含み得る。関連する状況で使用され得る許容される要素又は補助剤の例としては、抗酸化剤、遊離ラジカル除去剤、ペプチド、成長因子、抗生物質、静菌剤、免疫抑制剤、抗凝固剤、緩衝剤、消炎剤、解熱剤、徐放性結合剤、麻酔剤、ステロイド、及びコルチコステロイドが挙げられる。このような要素は、追加の治療的利益を提供することができ、AMR化合物の治療作用に影響するよう作用することができ、又はAMR化合物の投与の結果としてもたらされ得る任意の潜在的な副作用を抑止するよう作用することができる。本発明のAMR化合物はまた、治療薬剤と結合され得る。
【0060】
同一処方物において又は別個の処方物としてインビトロ又はインビボで、例えば患者における標的細胞に同時投与され得るさらなる薬剤としては、免疫調節剤等の所定の生物学的反応を修飾する薬剤が挙げられる。例えば、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン(例えば、αインターフェロン及びβインターフェロン)、神経発育因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、及び組織プラスミノゲン活性化因子等のタンパク質が投与され得る。リンホカイン、インターロイキン(例えば、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、及びインターロイキン-6(IL-6))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、又はその他の成長因子等の生物学的反応修飾因子が投与され得る。1つの態様において、本発明の方法及び組成物は、抗癌剤、細胞毒性薬剤、化学療法剤、及び抗シグナル伝達剤からなる群より選択される1つまたは複数の薬剤を取り入れる。
【0061】
別の局面において、本発明は、本発明のAMR化合物の免疫抑制的用法に関する。本発明のAMR化合物は、望ましくない免疫反応を減少、抑制、阻害、又は抑止するために使用され得る。従って、本発明のAMR化合物は、免疫抑制を必要とするヒト又は動物の処置に有用である。免疫抑制が望まれる状態の例には、糖尿病、狼瘡、及び関節リウマチ等の自己免疫疾患の処置又は抑止が含まれるがこれらに限定されない。免疫抑制はまた、器官移植と関連して必要とされる場合が多い。免疫抑制剤はまた、ヒト又は動物がスーパー抗原若しくは免疫系の過剰刺激を引き起こすことで公知のその他の要因に曝露されたか又は曝露された可能性がある場合に使用され得る。本発明のAMR化合物はまた、他の推定免疫抑制剤の活性を評価する標準としても有用である。
【0062】
本発明のさらなる局面は、アモオラ・ロヒツカ植物材料から単離されたAMRを得るプロセスを提供する。1つの態様において、このプロセスは、(a)液体又は粉末形態の乾燥させたアモオラ・ロヒツカ植物材料を提供する段階;(b)抽出溶媒を用いて液体又は粉末に対して抽出を行い、抽出物を得る段階;(c)抽出物を蒸発させて残留物を得る段階;(d)残留物を溶媒に懸濁する段階;(e)石油エーテル及び酢酸エチルを用いてさらなる抽出を行う段階;(f)酢酸エチル画分を蒸発させて残留物を得る段階;(g)残留物を酢酸エチルに溶解し、溶液を得る段階;(h)有効量の溶媒(例えば、石油エーテル、塩化メチレン、及び酢酸エチルの溶媒系(例えば、4:1:1))で溶液を沈降処理し、濾液を得る段階;(i)濃縮した濾液を同じ溶媒系で溶出し、画分を得る段階;(j)この画分を薄層クロマトグラフィに供する段階;(k)約0.49のRf値を有する画分から溶媒を蒸発させて、残留物を得る段階;(l)残留物を結晶化する段階;(m)結晶を洗浄及び乾燥させる段階;並びに(n)再結晶化させて純粋な固体を得る段階、を包含する。1つの態様において、この画分のRf値は0.42〜0.55である。別の態様において、この画分のRf値は0.45〜0.53である。別の態様において、この画分のRf値は0.47〜0.51である。別の態様において、この画分のRf値は0.48〜0.50である。
【0063】
好ましい態様においては、アモオラ・ロヒツカの木の乾燥樹皮を粗粉末形態にし、そしてソックスレー抽出器により、200%標準濃度エタノール(proof ethanol)を用いて48時間連続的に抽出する。抽出物は、ロータリーエバポレーターにおいて50℃で蒸発させ、その残留物を蒸留水に懸濁し、そして石油エーテル及び酢酸エチルで連続的な抽出を行う。酢酸エチル画分を40℃の真空条件下で蒸発させ、その残留物を酢酸エチルに溶解し、有効量の溶媒(例えば、石油エーテル、塩化メチレン、及び酢酸エチルを含む溶媒系(例えば、4:1:1))で沈降処理し、そして濾過する。その濾液を、好ましくは蒸発によって濃縮し、その後シリカゲルカラムを通し、そして同じ溶媒系で溶出する。(薄層クロマトグラフィ(TLC)において)約0.49のRf値を有する画分を回収し、溶媒を40℃の真空条件下で蒸発させ、その後にメタノール中で結晶化させる。1つの態様において、この画分のRf値は0.42〜0.55である。別の態様において、この画分のRf値は0.45〜0.53である。別の態様において、この画分のRf値は0.47〜0.51である。別の態様において、この結晶のRf値は0.48〜0.50である。その結晶は、無色になるまで冷メタノールで数回洗浄する。その結晶を乾燥させ、そしてメタノール中で再結晶化させて純粋な白色の微細固体を得る(収率≦0.01%)。天然物精製分野の科学者は、前述の方法を容易に適合させることができ、本発明の好ましい態様に記載された溶媒及び固定相を多種の溶媒及び固定相で容易に置き換えることができる。例えば、固体-液体抽出法又は液体-液体抽出法が、単離された化合物を得るのに使用され得る。クロマトグラフィに加えて、結晶化及び分配等の方法もまた、所望の化合物を精製するのに使用され得る。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Brown G.G., Unit Operations, John Wiley & Sons, 1956; McCabe, W.L. and J.C. Smith, Unit Operations of Chemical Engineering, McGraw-hill, 1956; 及びPerry, R.H., and D. Green, Perry's Chemical Engineers' Handbook, 7th Edition, McGraw-Hill, 1997を参照のこと。
【0064】
植物からAMRを抽出する方法に関しては特に制限がない。例えば、多種の溶媒による抽出又は超臨界流体抽出法が適用できる。植物からのAMRの抽出に使用する溶媒に関しては特に制限がない。適切な溶媒の例としては、水、無機塩水溶液及び緩衝溶液等の水性媒体、並びにアルコール、ヘキサン、トルエン、石油エーテル、ベンゼン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2-トリクロロエタン、ジメチルスルホキシド、及びアセトン等の有機溶媒が挙げられ、その中でもアルコールが好ましい。水は、水、蒸留水、脱イオン水、又は純水であり得る。使用され得る緩衝溶液の例としては、リン酸緩衝液及びクエン酸緩衝液が挙げられる。
【0065】
使用され得るアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール等の一価アルコール、並びにプロピレングリコール及びグリセロール等の多価アルコールが挙げられ、その中でも一価アルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。これらの溶媒は単独で又は混合物として使用され得る。混合溶媒としては、含水アルコールが好ましい。含水一価アルコールがより好ましく、含水エタノールが特に好ましい。
【0066】
植物材料からAMRを抽出する際、水、含水エタノール、又は無水エタノール等の治療に適した溶媒を使用するのが適当である。
【0067】
抽出のために、溶媒は、例えば、植物1重量部あたり0.1〜10,000重量部の量で、好ましくは1〜100重量部の量で使用され得る。抽出温度に関しては特に制限はないが、抽出は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜90℃で行う。抽出時間については特に制限はないが、好ましくは、例えば、1分間〜1週間、より好ましくは30分間〜1日行われ得る。
【0068】
抽出に使用する装置に関して特に制限はなく、効率的な抽出のために設計された容器、攪拌器、還流冷却器、ソックスレー抽出器、破砕器、振盪器、超音波発生機等が使用され得る。液体抽出物は、沈降、脱水濾過、クリア濾過(clear filtration)、遠心濾過、遠心沈降、加圧分離、又はフィルタープレス等の多種の固体-液体分離法により処理され得る。
【0069】
植物粉末を調製するために、AMRを含む植物の全部又は一部、例えば、葉、枝、幹、幹皮、根、種子、培養細胞若しくは培養器官、又はカルスが使用され得る。幹皮が好ましい。植物材料は、そのまま又は物理的若しくは化学的若しくは生物学的に処理した後に使用され得る。物理的又は化学的な処置法の例は、乾燥、冷凍乾燥、破砕、及び抽出である。物理的又は化学的に処理された物質としては、乾燥物、冷凍乾燥物、破砕物及び抽出物が挙げられる。抽出物としては、抽出後に得られる植物残留物が挙げられる。
【0070】
植物粉末を調製するために、好ましくは乾燥させたアモオラ・ロヒツカ植物材料は、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー又はコーンクラッシャー等の加圧式破砕器;カッターミル又はシュレッダー等の剪断機;ハンマークラッシャー等のインパクトクラッシャー;ロールクラッシャー等のロールミル;粉砕機又はケージミル等のロータリーミル;コーヒーミル等のスクリューミル;エッジランナー等のローリングミル;スタンプミル等のハンマーミル;遠心ローラーミル、ボールベアリングミル、ボウルミル、又はゼロミル等のローラーミル;スウィングハンマーミル、ピンミル、ケージミル、ターボ型ミル、又は遠心ミル等の高速ロータリーミル;回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、又はCFミル等の容器振動ミル;通しパイプ型ミル、撹拌タンクミル、環状ミル、空気吸込型ミル、インパクトプレートインパクトミル、又は流動床ミル等のジェットミル;超音波シュレッダー等の破砕器;石臼又はすり鉢で破砕され得る。上記方法により得られる産物はさらに、植物粉末を得るために物理的又は化学的に処理され得る。
【0071】
植物粉末は、粗粉末又は細粉末であり得る。植物粉末の平均粒子サイズは、乾燥状態で、好ましくは0.1μm〜1mm、より好ましくは1〜100μm、特に2〜50μmである。乾燥状態の植物粉末の平均粒子サイズは、例えば、レーザー回折式粒度分布分析機により測定され得る。あるいは、植物粉末をグリセロール及び水の1:1混合物で膨潤させる場合、その粉末の平均粒子サイズは、好ましくは1μm〜10mm、より好ましくは10μm〜1mm、特に20〜500μmである。膨潤状態の植物粉末の平均粒子サイズは、例えば、顕微鏡観察により測定され得る。
【0072】
乾燥法は当技術分野で公知である。例えば、乾燥法は、加熱及び減圧下での乾燥、加熱及び大気圧下での乾燥、若しくは噴霧乾燥機若しくはドラム乾燥機による乾燥、又は冷凍乾燥を含み得るが、加熱及び減圧下での乾燥又は冷凍乾燥が好ましい。
【0073】
本明細書中で使用する「処置する」又は「処置」という用語は、治療的処置及び予防的又は抑止的な手段の両方を意味する。対象は、癌の進行若しくは広がり等の望ましくない生理学的変化若しくは障害を抑止又は鈍化(縮小)される。本発明の目的上、有益又は望ましい臨床的結果には、検出可能なものも不可能なものも含めて、症状の軽減、疾患の規模の縮小、疾患の状態安定化(悪い意味ではなく)、疾患の進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的なものも全体的なものも)が含まれるがこれらに限定されない。例えば、AMR化合物による処置は、望ましくない細胞増殖の減少、多剤耐性(MDR)の減少、並びに/又はアポトーシス及び細胞毒性の誘導を含み得る。細胞増殖の減少は、G2/M細胞周期停止、カスパーゼ活性化、及びアポトーシスのうちの1つまたは複数を通じて起こり得る。「処置」はまた、処置を受けない場合に期待される寿命よりも寿命を延長することを意味する。処置の必要のある者は、すでにその状態若しくは障害を有する者だけでなく、その状態若しくは障害に罹りやすい者又はその状態若しくは障害が抑止されるべき者を含む。
【0074】
本明細書中で使用する「(治療)有効量」という用語は、哺乳動物における疾患若しくは障害を処置するのに効果的なAMR化合物又はその他の薬剤(例えば、薬物)の量を意味する。癌の場合、治療有効量の薬剤は、望ましくない細胞増殖を減少させることができ(すなわち、ある程度鈍化し、好ましくは停止させることができ);癌細胞の数を減少させることができ;腫瘍サイズを縮小することができ;末梢器官への癌細胞の侵襲を阻害することができ(すなわち、ある程度鈍化し、好ましくは停止させることができ);腫瘍の転移を阻害することができ(すなわち、ある程度鈍化し、好ましくは停止させることができ);腫瘍の成長をある程度阻害することができ;及び/又は癌に関連する症状の1つまたは複数をある程度軽減することができる。AMR化合物が成長を抑止し、及び/又は存在する癌細胞を死滅させる範囲で、AMR化合物は細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性であり得る。癌療法について、その効果は、例えば、疾患が進行するまでの時間(TTP)を評価することにより及び/又は反応率(RR)を測定することにより測ることができる。
【0075】
本明細書中で使用するAMR化合物の「成長阻害量」という用語は、細胞成長を阻害する機構に関係なく、インビトロ若しくはインビボのいずれかにおいて標的細胞、例えば、腫瘍細胞の成長又は増殖を阻害する量を意味する。好ましい態様において、成長阻害量は、インビボ若しくは細胞培養物中の標的細胞の成長又は増殖を、約20%超、好ましくは約50%超、最も好ましくは約75%超(例えば、約75%〜約100%)阻害する(すなわち、ある程度鈍化する、好ましくは停止させる)。
【0076】
「細胞」及び「細胞集団」という用語は本明細書中で互換的に使用され、そうでないことが示されない限り、インビトロ若しくはインビボの単一の細胞又は複数の細胞のいずれかを包含することを意図する。
【0077】
本明細書中で使用する「抗癌剤」という用語は、インビトロ若しくはインビボで、癌細胞の機能を阻害する、それらの形成を阻害する、及び/又はそれらの破壊を引き起こす物質又は処置を意味する。例としては、細胞毒性剤(例えば、5-フルオロウラシル、TAXOL)、化学療法剤、及び抗シグナル伝達剤(例えば、PI3K阻害剤LY)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
本明細書中で使用する「細胞毒性剤」という用語は、インビトロ及び/若しくはインビボで、細胞の機能を阻害若しくは抑止する、並びに/又は細胞の破壊を引き起こす物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、及びLuの放射性同位元素)、化学療法剤、細菌源、真菌源、植物源、又は動物源の低分子毒素又は酵素活性毒素等の毒素、及び抗体(そのフラグメント及び/又は変異体を含む)を含むことが意図される。
【0079】
本明細書中で使用する「化学療法剤」という用語は、癌の処置に有用な化学的化合物、例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル(TAXOL、BRISTOL-MYERS SQUIBB Oncology, Princeton, N.J.)及びドキセタキセル(TAXOTERE、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France))、クロラムブシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifen)、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(FARESTON、GTx, Memphis, TN))、並びに抗アンドロゲン(例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン)等である。好ましい態様において、化学療法剤は、一種以上のアントラサイクリンである。アントラサイクリンは、化学療法薬のファミリーであり、抗生物質でもある。アントラサイクリンは、DNAの構造を破壊することにより細胞分裂を抑止し、かつ、(1)DNAの副溝(minor grooves)の塩基対にインターカレートすることにより;及び(2)DNA中のリボースの遊離ラジカルによる損傷を引き起こすことによってその機能を停止させる。アントラサイクリンは、多くの場合、白血病療法において使用される。アントラサイクリンの例としては、ダウノルビシン(CERUBIDINE)、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN、RUBEX)、エピルビシン(ELLENCE、PHARMORUBICIN)、及びイダルビシン(IDAMYCIN)が挙げられる。
【0080】
本明細書中で使用する「AMR化合物」という用語は、AMR(図1に示される、25-ヒドロキシ-3-オキソオレアン-12-エン-28-オイン酸)又はAMRの薬学的に許容される塩もしくは類似体を意味することが意図される。AMR又はAMR化合物に関して本明細書中で使用する「単離された」という用語は、それが自然界で存在するときの媒体(例えば、アモオラ・ロヒツカの植物材料又は植物抽出物)を実質的に含まない化合物を意味する。しかし、単離されたAMR化合物はまた、当業者に公知の適切な化学合成反応によっても獲得され得る(Greene, T.W. and Wuts, P.G.M. "Protective Groups in Organic Synthesis" John Wiley & Sons, Inc. New York. 3rd Ed. pg. 819, 1999; Honda, T. et al. Bioorg. Med. Chem. Lett., 1997, 7:1623-1628; Honda, T. et al. Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8:2711-2714; Konoike, T. et al. J. Org. Chem., 1997, 62:960-966; Honda, T. et al. J. Med. Chem., 2000, 43:4233-4246)。
【0081】
以下の実施例では、本発明を実施するための材料、方法、及び手順を解説する。本実施例は解説を目的とするものであり、限定として扱われるべきでない。そうでないことが示されない限り、本明細書中で開示される全ての割合(百分率)は、本明細書の前後を問わず、重量基準であり、全ての溶媒の比率は容量基準である。
【0082】
材料及び方法
アモオラニン(AMR)の単離
アモオラ・ロヒツカの木の乾燥させた樹皮を粗粉末形態にし、ソックスレー抽出器において、48時間連続的に200%標準濃度エタノールによる抽出を行った。抽出物を50℃のロータリーエバポレーター中で蒸発させ、その残留物を蒸留水に懸濁し、石油エーテル及び酢酸エチルによる連続抽出を行った。酢酸エチル画分を40℃の真空下で蒸発させ、その残留物を最少量の酢酸エチルに溶解し、石油エーテル、塩化メチレン及び酢酸エチルを含む溶媒系(4:1:1)で沈降させ、そして濾過した。その濾液を蒸発により濃縮し、シリカゲルカラムを通し、そして同じ溶媒系で溶出を行った。(TLCにおいて)約0.49のRf値を有する画分を回収し、溶媒を40℃の真空下で蒸発させた後にメタノール中で結晶化させた。その結晶を無色になるまで冷メタノールで洗浄した。次いでその結晶を乾燥させ、最小量のメタノール中で再結晶化させて純粋な白色の微細固体を得た(収率≦0.01%)。単離された化合物は、薄層クロマトグラフィーで分析したところ高度に純粋であり、腫瘍細胞に対して有意な細胞毒性を示した。この化合物のその他の利点は、薬理学的に許容される溶媒系におけるその溶解性の良さである。
【0083】
細胞及び細胞培養物
ヒト白血病細胞株(CEM)及びそのビンブラスチン耐性亜株CEM/VLBは、Dr. William Beck(University of Illinois)から譲受した。ヒト結腸癌腫(SW620)細胞株及びそのMDR細胞株SW620/Ad-300細胞は、Dr. S. Bates(National Cancer Institute)から譲受した。これらの細胞株は、37℃、5% CO2の加湿環境下、10%ウシ胎仔血清、100IU/μlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを補充したRPMI培地で維持した。耐性細胞は、CEM/VLB細胞については0.1μMのビンブラスチン、SW620/Ad-300細胞については300ng/mlのDOXを含有する培地で時々(2ヶ月に1回)負荷をかけ、それらの耐性レベルを維持した。
【0084】
ヒト乳房腺癌MCF-7細胞、その多剤耐性亜種クローンであるMCF-7/TH細胞及び乳房上皮MCF-10A細胞は、37℃、5% CO2のインキュベーターにおいて、10%ウシ胎仔血清及び抗生物質(100ユニット/mlペニシリン、100μg/ml硫酸ストレプトマイシン)を含有するダルベッコ変法必須培地(LIFE TECHNOLOGIES, INC., MD)中で培養した。
【0085】
化学品及び試薬
3-(4,5-ジメチルチオザル-2イル)-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)生存アッセイキット及びインサイチュー細胞死検出キットは、ROCHE Molecular Biochemicals, Indianapolis(IN)から購入した。フルオレセインカスパーゼ(VAD)活性キット及びカスパーゼ-8(LETD)活性キットは、INTERGEN Company(NY)から購入した。
【0086】
薬物
塩酸ドキソルビシン(DOX)は、SIGMA Chemical Co., MOから購入した。アモオラニン(AMR)は上記の通りに単離した。アモオラニンの化学構造は図1に示す。
【0087】
細胞毒性アッセイ(実施例1〜5)
薬物感受性腫瘍細胞及び薬物耐性腫瘍細胞は、個々の薬物及びそれらの組み合わせに対する細胞毒性分析のために、AMR、DOX又はそれらの組み合わせにより処置した(Rabi, T. et al. Phytother Res, 2001, 15:1-3; Rabi, T. et al. "Amooranin overcomes cellular drug resistance and acts synergistically with doxorubicin in multidrug resistant human colon carcinoma and leukemia cell lines" Proc. 2001, AACR-NCI-EORTC International Conference: Molecular Targets and Cancer Therapeutics: Discover, Biology and Clinical Applications, 2001, p.88)。Roche Diagnostics GmbH (Indianapolis, IN)製の細胞増殖キットI(MTT)を細胞毒性アッセイに使用し、製造元のプロトコルに従い本アッセイを行った。用量修正因数(dose modification factor;DMF)は、DOX+AMRの組み合わせにおけるDOX IC50値をDOX単独処置についてのIC50値で割ることによって算出した。
【0088】
DNAヒストグラム分析
48時間薬物に曝露した後、細胞を遠心分離し、1時間かけてヨウ化プロピジウム-低張性クエン酸溶液に懸濁し、その後細胞周期分布のフローサイトメトリー分析に供した(Ramachandran, C. et al. Biochem Pharmacol, 1995, 49:545-552)。
【0089】
細胞DOX含量
log期の細胞(1×106)を、2μg DOXと共に、AMR(1又は2μg/ml)の非存在下又は存在下、37℃で1時間インキュベートした。細胞のDOXの蛍光をCoulter Eliteフローサイトメーターで分析した。少なくとも10,000細胞からの蛍光発光(約530nm)を収集し、増幅し、測定することで単一パラメータのヒストグラムを生成した(Ramachandran, C. et al. Biochem Pharmacol, 1995, 49:545-552)。
【0090】
P-gpの発現
P-gp発現のフローサイトメトリー分析を、MRK16モノクローナル抗体(Mab; KAMIYA Biochemical Co., Seattle, WA)を用い、本発明者らが公表した手順に従い行った(Ramachandran, C. et al. Biochem Pharmacol, 1998, 56:709-718)。
【0091】
形質膜の光標識
腫瘍細胞由来の形質膜を本発明者らが公表した手順に従い調製した(Ramachandran, C. et al. Biochem Pharmacol, 1998, 56:709-718; Chen, G. et al. Cancer Res, 1993, 53:2544-2547)。膜調製物のタンパク質含量を、ブラッドフォードアッセイにより測定した。膜小胞(50μgタンパク質)を、最終量50μlの、10μM CaCl2、4%ジメチルスルホキシド、及び0.2μM [3H]-アジドピン(10μCi)含有40mMリン酸カリウム緩衝液中で光標識した。この混合物を、1,2,4μg/mlのAMR若しくは2μg/mlのDOX+4μg/mlのAMRの存在下又はそれらの非存在下、暗所、室温にて1時間プレインキュベートした。次いでUVクロスリンカーにより光標識混合物を20分間照射した。光標識された膜タンパク質調製物を、7.5%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。[3H]-アジドピンの共有結合による取り込みを、Amplify(AMERSHAM PHARMACIA, Piscataway, NJ)を用いた蛍光間接撮影法により検出した。
【0092】
細胞毒性アッセイ(実施例6〜8)
薬物感受性を測定するためにMTTアッセイを使用した(Hansen, M.B. et al. J Immunol Methods, 1989, 119:203-210)。細胞(1×104)を96ウェルプレート上で培養し、48時間後にその培地を新しい培地に交換した。細胞を37℃で、異なる濃度のAMRと共に37℃で48時間インキュベートした。次いで、細胞生存度を、MTT色素(500μg/ml)を添加することによってアッセイした。インキュベーション期間の6時間後、MTT含有培地を除去した。ホルマザン結晶を100μl/ウェルのジメチルスルホキシドに溶解し、プレートをBIO-RAD Benchmark Microplate Readerにて570nmの波長で読み取った。全ての実験をそれぞれの3つの複製物により3回繰り返し、その平均値を算出した。スチューデントt検定を用いてIC50値間の有意差を測定した。
【0093】
細胞周期の分析
細胞周期の各期にある細胞数は、1mg/mlのヨウ化プロピジウムで染色した後の細胞DNA含量のフローサイトメトリー分析により確認した(Chen, G. et al. Cancer Res, 1993, 53:2544-2547)。このデータを分析して細胞周期の各相(G0+G1、S、及びG2+M)にある細胞の割合を測定した。
【0094】
アガロースゲル電気泳動によるDNAの断片化の分析
AMRによるDNAの切断パターンを評価するために、Cohen及びDukeにより記載された通りゲル電気泳動を行った(Cohen, J.J. and Duke, R.C. J Immunol, 1984, 132:38-42)。簡単に説明すると、対照細胞及び薬物処置細胞(2×106細胞)を、室温で30分間、0.2%Triton X-100を含む0.5mlの溶解緩衝液に溶解した。その上清画分を12,000×g、30分間の遠心分離により回収した。これらの画分に含まれるDNAを、-20℃で一晩、100μlの5M塩化ナトリウム及び0.5mlの2-イソプロパノールにより沈降させた。そのDNAを20μlの10mM Tris-HCl(pH 7.4)及び1mM EDTA緩衝液に溶解した。その試料にRNase(10ユニット)を加えた後、60℃で1時間インキュベートした。その後、等量の充填用緩衝液(loading buffer)を追加し、試料を、50Vで3時間、Trisホウ酸緩衝液中の2%アガロースゲル上での電気泳動に供した。そのアガロースゲルをエチジウムブロマイドで染色し、UVトランスイルミネーターによりDNAの断片化パターンを可視化した。AMR誘導性のDNA断片化はまた、インサイチュー細胞検出キットを製造元の指示に従い使用するTUNELアッセイによっても分析した。簡単に説明すると、細胞を、0.1% Triton X-100及び0.1%(w/v)クエン酸ナトリウムを含む溶液中で2分間透過処理した。PBSで洗浄した後、細胞を標識溶液及びターミナルトランスフェラーゼと共にインキュベートした。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼを加えずにインキュベートした細胞を陰性対照として使用した。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼの存在下で標識溶液と共にインキュベートしたDNase(1μg/ml)処理細胞(TUNEL反応混合物)を陽性対照として使用した。TUNELアッセイの詳細についてはすでに記載されている(Ramachandran, C. et al. Anticancer Res, 1997, 17:3369-3376)。
【0095】
アポトーシス及びカスパーゼ活性の検出
乳癌腫又は乳房上皮細胞を、AMR(1〜8μg/ml)の存在下又は非存在下で48時間インキュベートした。AMR誘導性のアポトーシスは、製造元の指示に従い使用したフルオレセインカスパーゼ(VAD)活性キット及びカスパーゼ-8(LETD)活性キットにより評価した(Carcia-Calvo, M. et al. J Biol Chem, 1998, 273:32608-32613)。
【0096】
ヌードマウスにおけるAMRを用いた異種移植研究
BALB/c系統の雄の胸腺欠損ヌード(nu/nu)マウス(4〜5週齢)をTaconic Labs, NYから購入した。0.1mlのハンクス平衡塩溶液中のSW620結腸癌腫細胞(106/部位)を21ゲージ針を用いてヌードマウスの左側腹部に皮下注射した。腫瘍の容積がおよそ0.5cm3に達してから(通常14日)、各群ほぼ同じ大きさの腫瘍を有する6匹のマウスを用いてAMRによる化学療法を開始した。処置群には、2mg/kgドキソルビシン、0、10、及び20mg AMR/kg体重を、3週間の間、週毎に腹腔内注射した。AMRは、投与のためにCremophor EL及びエタノールの1:1混合物に溶解し、対照処置は、ホスフェートを溶かした生理食塩水に溶解したドキソルビシン及び生理食塩水単独(0 mg/kg)であった。腫瘍のサイズ(長さ及び幅)は、体重及び生存データと共に、各処置日から5日目に記録した。腫瘍の容積は、次式を用いて算出した。

腫瘍成長速度を平均V1/V0(V1は処置効果評価日における容積であり、V0は処置初日における容積である)として算出した。成長速度指数及び治療指数の概算値は、次式を用いて算出した。

治療可能比=100-腫瘍成長速度指数(GRI)
【0097】
実施例1:AMRによるDOX耐性の逆行
AMR、DOX及びこれらの組み合わせに対するヒト白血病(CEM及びCEM/VLB)細胞並びに結腸癌腫(SW620及びSW620/AD-300)細胞の感受性を用量応答曲線により表す(図2)。DOX、AMR及びそれらの組み合わせのIC50値を表1に示す。感受性ヒト白血病(CEM)細胞株及び多剤耐性CEM/VLB細胞株についてのDOX IC50値(48時間暴露)は、それぞれ0.12μg/ml及び13.4μg/mlであり、これはCEM/VLBにおける耐性がおよそ112倍であることを示す。細胞毒性データ(表1)は、CEM/VLB細胞がまた、AMRに対してCEMの1.9倍耐性であることを示した。CEM/VLB細胞を異なる濃度のDOX及び1μg/mlのAMRと同時インキュベートした場合、DOX IC50値は、13.4から0.25μg/mlに減少し、用量修正因数(DMF)は53.6であった。しかし、DOX及びAMR(1μg/ml)の組み合わせで処置したCEM/VLB細胞は、親CEM細胞と比較して約2倍の残存DOX耐性を有した。この症状は結腸癌腫細胞株においても同様であった。IC50値基準で、SW620/Ad-300細胞は、感受性のSW620親細胞よりもDOXに対しておよそ125倍耐性であった。SW620/Ad-300細胞はまた、SW620細胞と比較してAMRに対して1.6倍耐性であった。耐性SW620/Ad-300細胞をAMR及びDOXと同時インキュベートした場合、DOX耐性は有意に逆行し、DMFは108であった。
【0098】
(表1)ヒト白血病細胞株及び結腸癌腫細胞株のアモオラニンIC50値及びドキソルビシンIC50値

値は平均±SD(n=3)。
【0099】
実施例2:細胞周期への効果
インビトロで48時間、腫瘍細胞をAMR処置した後、細胞DNA含量をフローサイトメトリーにより分析した。図3におけるDNAのヒストグラムは、0〜2.5μg/mlのAMRに48時間曝露した細胞のものである。4つの細胞株全てにおいて、AMR処置は、用量依存的様式で、G2+M期の細胞の割合を増加させ、同時にG0-G1集団を減少させた。このAMR誘導性のG2+M停止は、これらがアポトーシスへと向かう前兆であり得る。G2+M期の細胞の割合は、あらゆるAMR濃度において、薬物耐性CEM/VLB細胞株及びSW620/Ad-300細胞株と比較して薬物感受性CEM細胞株及びSW620細胞株において比例的に高かった。ヒト白血病細胞株におけるAMR処置は、G2+M細胞の割合を、CEM細胞株においては18.0%から61.1%に、CEM/VLB細胞株においては18.0%から48.7%に増加させた。同様の細胞周期分布が、結腸癌腫細胞株においても証明された。SW620細胞株において、G2+Mの割合は、AMR濃度が0から2.5μg/mlまで増加するのに対して、12.5%から59.5%の範囲であった。多剤耐性SW620/Ad-300細胞株におけるG2+Mの割合は、AMR処置によって15.6%から52.8%に増加した。
【0100】
実施例3:細胞のDOX蓄積に対するAMRの効果
図4A〜4Dは、AMRの存在下又は非存在下でインキュベートしたヒト白血病細胞及びヒト結腸癌腫細胞における細胞のDOXの蓄積を示す。1又は2μg/mlのAMRの存在下の感受性CEM細胞株及びSW620細胞株においては、細胞のDOXの蛍光における有意な変化は見られなかった。しかし、多剤耐性のCEM/VLB細胞株及びSW 620/Ad-300細胞株においては、1及び2μg/mlのAMRは細胞のDOXの蓄積を用量依存的様式で増加させた。
【0101】
実施例4:MDR細胞におけるP-gp
薬物感受性ヒト白血病(CEM)細胞及び結腸癌腫(SW620)細胞は、MRK16 Mabで染色しフローサイトメトリーにより分析した場合、P-gpを発現しない(図5A〜5D)。他方、CEM/VLB及びSW620/Ad-300のような多剤耐性細胞はP-gpを豊富に発現する。
【0102】
実施例5:P-gpの[3H]-アジドピン光標識化の阻害
多剤耐性(CEM/VLB及びSW620/Ad-300)細胞におけるP-gpの[3H]-アジドピンによる光標識化に対するAMRの阻害効果を図6A〜6Bに示す。多剤耐性CEM/VLB細胞及びSW620/Ad-300細胞は高レベルのP-gpを発現し、これらは[3H]-アジドピンで標識化された(図6A及び6Bのレーン1)。1、2、及び4μg/mlのAMRは、耐性細胞において用量依存的様式で、P-gpのアジドピン結合を阻害した。DOX+AMRの組み合わせは、P-gpを、4μg/mlの濃度のAMRと同レベル阻害した。
【0103】
実施例1〜5において、AMRはP-gpの基質であり、ドキソルビシンの細胞毒性に対する化学的増感効果を有することが示された。多剤耐性白血病(CEM/VLB)細胞株及び結腸癌腫(SW620/Ad-300)細胞株の両方において、AMR及びDOXの組み合わせは、DOXの細胞毒性を調節することを示した。Beck及びQian(Beck, W.T. and Qian, X. Biochem Pharmacol, 1992, 43:89-93)により提唱される調節剤指数(Modulator Index;MI=耐性の減少(〜倍)/調節剤μM濃度)を排出遮断剤の有効性を表現するのに使用する場合、CEM/VLB細胞株におけるAMRのMIは40であり、SW620/Ad-300細胞株においては41.6である。このMIは、ビンブラスチン耐性ヒト白血病細胞株におけるベラパミル及びクロルプロマジン等の他の多くの排出遮断剤のMIよりずっと高い(Zamora, J.M. et al. Mol Pharmacol, 1998, 33:454-462; Pearce, H.L. et al. Adv Enzyme Regul, 1990, 30:357-373)。
【0104】
AMRの存在下でのDOX蓄積のフローサイトメトリー分析は、AMRが多剤耐性CEM/VLB 細胞株及びSW620/AD-300細胞株におけるDOX蓄積を増強することを示した。細胞のDOX蓄積は、1μg/mlのAMRよりも2μg/mlのAMRの場合の方が高かった。AMRはまた、光標識実験において、用量依存的様式でP-gpの[3H]-アジドピン結合を阻害する。CEM/VLB 細胞及びSW620/Ad-300細胞の両方において[3H]-アジドピン結合を阻害するのに、2μg/mlのAMRで全く十分であった。DOXの蓄積及び細胞毒性に対するAMRの効果に基づき、加えてP-gpの[3H]-アジドピン結合の阻害にも基づき、本発明者らは、AMRがP-gpの基質であることを報告する。AMRは、多剤耐性細胞中のP-gp上の密接に関連する結合部位が競合し得るため、ドキソルビシンと組み合わされ得る。
【0105】
高濃度(>2.5μg/ml)の単独薬剤としてのAMRもまた、いくつかの腫瘍細胞株において細胞毒性である。AMRで48時間処置した場合、AMRは白血病細胞株及び結腸癌腫細胞株において細胞周期の混乱を引き起こす。AMR処置は、アントラサイクリンに対する感受性に関係なく全ての細胞株においてG2+M停止を誘導した。G2+M期の細胞の割合は、0〜2.5μg/mlのAMRで用量依存的様式で増加した。さらに、実施例6〜8に詳細に記載されるように、AMRが、乳癌腫細胞においてカスパーゼの活性化、G2+M期停止、及びアポトーシスを引き起こすことが観察された。
【0106】
実施例6:AMRの細胞毒性
MCF-7細胞、MCF-7/TH細胞及びMCF-10A細胞を0〜8μg/mlのAMRに48時間曝露した後に、MTTアッセイによりIC50値を測定した。細胞株のAMR用量応答曲線を図7に示す。この結果は、AMRが乳癌細胞に対して細胞毒性であることを示す。AMRとインキュベートしたMCF-7細胞、MCF-7/TH細胞及びMCF-10A細胞は、用量依存的な細胞生存度の減少を示し、8μg/mlで最大効果を達成した(図7)。MCF-7細胞株は、MCF-7/TH(IC50=6.8μg/ml)細胞株及びMCF-10A(IC50=6.9μg/ml)細胞株よりもAMRに対する感受性(IC50=3.8μg/ml)が高かった(p=0.0004)。
【0107】
実施例7:細胞周期の停止を誘導するAMR
1μg/mlのAMRで処置したMCF-7細胞及びMCF-7/TH細胞は、G2+M期集団の蓄積(12.4%〜32.2%)及びそれに付随するG0+G1期細胞の減少を示した。このことは、細胞周期がG2+M期で停止した可能性を示唆する(図8)。しかし、1μg/mlのAMRは、MCF-10A細胞におけるG2/M期停止を誘導しない。AMRはまた、高い割合のサブG0-G1集団を誘導した。このことは、本研究において試験したあらゆる薬物濃度において、ヒト乳房上皮細胞株(MCF-10A)よりも両方の乳癌細胞株(MCF-7及びMCF-7/TH)においてアポトーシスが起きたことを示唆する(図8)。
【0108】
実施例8:AMR誘導性アポトーシス
AMRにより誘導されるアポトーシスを、DNAの断片化、カスパーゼ群全体の活性化及びカスパーゼ-8の蛋白分解性の活性化等の異なる技術により調査した。TUNELアッセイの結果を図9A〜9Dに示す。AMRは、1〜8μg/mlの濃度で、37.3〜72.1%のMCF-7細胞、32〜48.7%のMCF-7/TH細胞においてDNAの断片化を引き起こしたのに対して、MCF-10A細胞では0〜37.1%であった。DNase処理した陽性対照の試料は、3つ全ての細胞株において95%超のアポトーシス細胞を示した。薬物感受性(MCF-7)細胞株及び多剤耐性(MCF-7/TH)細胞株は、アポトーシスの誘導に関して、乳房上皮細胞株(MCF-10A)よりもAMRに対する感受性が高かった。さらに、MCF-7細胞株は、MCF-7/THよりもAMRに対する感受性が高かった。
【0109】
MCF-7細胞、MCF-7/TH細胞及びMCF-1OA細胞におけるAMRにより誘導されたヌクレオソーム内DNAの断片化の分析を、低分子量DNAのゲル電気泳動による検出によって行った(図10A〜10C)。AMRは、細胞を48時間処置した場合、アポトーシスの目印である特徴的なDNAのラダーパターンを誘導した。AMRは、両方の癌細胞株(MCF-7及びMCF-7/TH)においてはっきりとしたラダーパターンを誘導したが、このラダーはヒト乳房上皮細胞株(MCF-10A)においてはそれよりも弱かった。さらに、DNAの断片化は、1μg/mlのAMRで48時間処置したMCF-10A細胞においてほとんど検出できなかったが、MCF-7細胞株及びMCF-7/TH細胞株における同濃度でのラダーパターンには高い視認性があった。
【0110】
AMR誘導性アポトーシスの機構を分析するために、カスパーゼ群全体の活性化を試験した。カスパーゼ群全体の活性は、概して、AMR処置したMCF-7細胞株及びMCF-7/TH細胞株の方がMCF-10A細胞株よりも高かった(データ示さず)。さらに特異的カスパーゼを特徴付けるために、カスパーゼの重要な構成要素であるイニシエーターカスパーゼ-8の活性を分析した。MCF-7及びMCF-7/THの両方の乳癌細胞株は、MCF-10Aヒト乳房上皮細胞株よりも1〜8μg/mlのAMRにおけるカスパーゼ-8陽性細胞の割合が高いことを示した(図6A及び6B)。AMRは、1〜8μg/mlの濃度で、40.8〜71%のMCF-7細胞、28.5〜43.2%のMCF-7/TH細胞においてカスパーゼの活性化を引き起こしたのに対して、MCF-10Aでは4〜32.8%のみであった。
【0111】
実施例6〜8に記載されるように、AMRが、多剤耐性MCF-7/TH乳癌細胞及びMCF-10A乳房上皮細胞よりもMCF-7乳癌細胞の成長の阻害に対してより強力な効果を有することを測定した。MCF-7/THは、アドリアマイシンへの反復的暴露によりMCF-7から構築したMDR細胞株であり、活性なP糖タンパク質ポンプを有する。AMRがP-gpの基質であること及びAMRが腫瘍におけるアドリアマイシンの蓄積を増加させ得ることも示された。従ってMCF-7細胞株よりもMCF-7/TH細胞株についてより高いAMR IC50が予測され得る。しかし、それよりMCF-10A細胞のAMR IC50値が高い理由は、それがほぼ正常細胞の表現型であること以外にはっきりと分からない。
【0112】
AMRは1μg/mlで、細胞周期の周回におけるG2+M期において細胞を蓄積させる。AMRによる細胞周期分布の変化は、DNA標的薬剤に対する腫瘍細胞の感受性を向上させる。AMRは、オレアノール酸等の他のテルペノイドと類似の塩基性化学構造を有するトリテルペン酸である(Suh, N. et al. Cancer Res, 1999, 59:336-341)。
【0113】
ヨウ化プロピジウム染色、DNAの断片化及びTUNEL標識により示されるように、AMRにより誘導される細胞死の主要な機構はアポトーシスの誘導のようである。乳癌細胞は、アポトーシスと関連する不連続なDNAの断片化パターンを示した。正常な乳房上皮MCF-10A細胞においてAMRにより誘導されるアポトーシス性の細胞死は乳癌細胞におけるものよりも有意に低いことから、AMRは腫瘍細胞により特異的である。
【0114】
いくつかの報告は、カスパーゼファミリーがアポトーシスにおいて重要な役割を担うことを実証した(Patel, T. et al. FASEB J, 1997, 10:587-597; Zhivotovsky, B. et al. Biochem Biophys Res Commun, 1997, 230:481-488; Cohen, G.M. Biochem J, 1997, 326:1-16; Nicholson, D.W. et al. Nature, 1995, 376:37-43; Rao, L. and White, E. Curr Opin Gene Dev, 1997, 7:52-58; Salvesen, G.S. and Dixit, V.M. Cell, 1997, 91:443-446)。本研究における結果もまた、AMRが用量依存的様式で、アポトーシスプロセスにおいてカスパーゼ-8を活性化させることを示す。乳癌細胞は、MCF-10A乳房上皮細胞よりも48時間のAMR処置後に高いカスパーゼ-8活性を示した。今日までにクローニングされた14のカスパーゼの中で、カスパーゼ-8は、カスパーゼ2、9及び10と共にアピカルカスパーゼ(apical caspase)に分類される。これらのアピカルカスパーゼは、エフェクターカスパーゼ3、6及び7を活性化することが報告されている(Thornberry, N. A. and Lazebnik, Y. Science, 1998, 281:1312-1316; Hu, S. et al. J Biol Chem, 1998, 273:29648-29653)。MCF-7細胞は、カスパーゼ-3遺伝子のエクソン3に欠失変異を有する(Janicke, R.U. et al. J Biol Chem, 1998, 273:9357-9360)。組み換えカスパーゼ-8は、カスパーゼ-1〜カスパーゼ-7並びにカスパーゼ-9及びカスパーゼ-10を含む全ての公知のカスパーゼをプロセシング/活性化することができ(Fernandes, A.T. et al. Proc Natl Acad Sci USA, 1996, 93:7464-7469)、アポトーシスカスケードの頂点に位置する(Boldin, M.P. et al. Cell, 1996, 85:803-815)。直接的に関連するCD95及びTNFR-1により媒介されるアポトーシスにおけるカスパーゼ-8のFADD様プロドメインの重要性についてはすでに注目されている(Boldin, M.P. et al. Cell, 1996, 85:803-815)。恐らく、AMR処置により、カスパーゼ-8のプロドメインがアポトーシスを促進するために特異的に動員されるのであろう。乳癌腫細胞におけるカスパーゼ-8の活性化によるAMRのアポトーシス誘導は、CDDO及びCDDO-Me等の合成トリテルペノイドにより既に報告された効果から期待され、かつこれを確認し得るものである。Bednerらは、DNA鎖の分解の存在(TUNELアッセイ)により概算されたアポトーシス指数と抗癌剤により処置した培養物中のカスパーゼの活性化の間の相関関係を報告した(Bedner, E. et al. Exp Cell Res, 2000, 259:308-313)。AMRで48時間処置した細胞において、カスパーゼレベルとDNA鎖の分解レベル(TUNELアッセイにより測定)の間に強い相関関係が観察された(r=0.95、p<0.05)。このことは、本研究において記載した細胞系においてアポトーシスを起こした細胞の度数の概算値が、カスパーゼの活性化に基づくものであろうが、DNAの断片化(TUNELアッセイ)に基づくものであろうが、ほとんど同じであることを示唆する。結論としては、AMRは、MCF-7細胞、MCF-7/TH細胞及びMCF-10A細胞において細胞周期の停止を誘導し、その後にアポトーシスを誘導することが実証され、そしてこのことは、この天然トリテルペン化合物の抗癌効果及び臨床的可能性を示唆するものである。
【0115】
実施例9:ヒト腫瘍異種移植におけるAMRの抗腫瘍活性の評価
ヒト腫瘍異種移植におけるAMRの抗腫瘍活性の評価を、材料及び方法の節に記載した通りヌードマウスにおいて行った。AMRを用いた予備的な異種移植研究は、AMRがインビボで抗腫瘍効果を有することを示した。
【0116】
SW20異種移植片における腫瘍成長速度に対するAMRの腹腔内感染の効果を図12に示す。2〜10mg/kgのAMRは、ドキソルビシン(2mg/kg)処置又は生理食塩水処置と比較して腫瘍成長速度を有意に減少させた。腫瘍成長速度の減少について、2mg/kgのAMRはそれより高用量のAMRよりも有効であった。ドキソルビシンに勝るAMR処置の優位性は高い治療価によっても示される(表2)。AMR治療はまた、生理食塩水処置よりも生存率が良く、2mg/kgの用量がそれより高用量よりも有効であった(表3)。
【0117】
(表2)SW620ヒト腫瘍異種移植片におけるアモオラニンの治療指数

治療可能比=100-腫瘍成長速度指数(GRI)

【0118】
(表3)アモオラニンで処置したSW620ヒト腫瘍異種移植片の生存

【0119】
AGILENT 22Kヒトマイクロアレイ(22000遺伝子)(AGILENT TECHNOLOGIES, Palo Alto, Calif.)による異種移植片由来の腫瘍RNAのマイクロアレイハイブリダイゼーションは、全てのAMR用量で、147個の遺伝子がアップレギュレートされ(>3倍)、57個の遺伝子がダウンレギュレートされる(<3倍)ことを示した。AMRは、薬物輸送、細胞のシグナル伝達、チトクロムc放出、アポトーシス、G2/M細胞周期停止及び炎症反応に関与するいくつかの遺伝子を特異的にアップレギュレートした。AMRはまた、血管新生及び免疫反応に関与する遺伝子をダウンレギュレートする。
【0120】
本明細書中で言及又は引用した全ての特許、特許出願、仮出願、及び公報は、全ての図面及び表を含むそれらの全体が、本明細書中の明示的な教示と矛盾しない範囲で参照として本明細書に組み入れられる。
【0121】
本明細書中に記載した実施例及び態様は解説のみを目的とするものであること、それらに照らして多種の修正又は変更が当業者に示唆されること、それらは本願の意図及び範囲に含まれるべきことが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】アモオラニン(25-ヒドロキシ-3-オキソオレアン-12-エン-28-オイン酸)の化学構造を示す。
【図2】図2A〜2Dは、ヒト白血病(CEM、CEM/VLB)細胞株及び結腸癌腫(SW620、SW620/Ad-300)細胞株におけるDOXの細胞毒性に対するAMRの効果を示す。DOX+AMRの組み合わせの処置において、細胞を、異なる濃度のDOX(μg/ml)及び1μg/mlのAMRで処置した。生存細胞の割合(対照に対する%)を、その組み合わせの処置におけるDOX濃度に対してプロットした。CEM/VLB細胞株及びSW620/Ad-300細胞株においてAMRがDOXの細胞毒性を調節することに注目されたい。
【図3】0〜2.5μg/mlのAMRで48時間処置したSW620細胞、SW620/Ad-300細胞、CEM細胞、及びCEM/VLB細胞のDNA分布ヒストグラムを示す。AMRは全ての細胞株においてG2+M停止を誘導し(黒塗りの矢印)、かつ用量依存的様式でG2+M期の細胞の割合を増加させる。白抜きの矢印は、AMRにより誘導されるサブG0-G1集団を示す。
【図4】図4A〜4Dは、細胞のDOX蓄積に対するAMRの効果を示す。ヒト結腸癌腫(SW620、SW620/Ad-300)細胞株及び白血病細胞株を、DOX(2μg/ml)、DOX(2μg/ml)+AMR(1μg/ml)、又はDOX(2μg/ml)+AMR(2μg/ml)と共に37℃で2時間インキュベートした。細胞のDOXの蛍光をフローサイトメーターで分析した。AMRは、多剤耐性CEM/VLB細胞及びSW620/Ad-300細胞における細胞のDOX蓄積を増強した。
【図5】図5A〜5Dは、MRK16 Mabを用いたヒト結腸癌腫細胞株及び白血病細胞株におけるP-gpのフローサイトメトリー分析を示す。
【図6】図6A及び6Bは、ヒト結腸癌腫(図6A;CEM/VLB)細胞株及び白血病(図6B;SW620/Ad-300)細胞株におけるAMR及びAMR+DOXの組み合わせによるP-gpの[3H]-アジドピン光親和性標識化の阻害を示す。レーン1、CEM/VLB又はSW620/Ad-300に[3H]-アジドピンのみを使用;レーン2、CEM/VLB又はSW620/Ad-300に1μg/ml AMRを使用;レーン3、CEM/VLB又はSW620/Ad-300に2μg/ml AMRを使用;レーン4、CEM/VLB又はSW620/Ad-300に4μg/ml AMRを使用;レーン5、CEM/VLB又はSW620/Ad-300に2μg/ml DOX+4μg/ml AMRを使用。
【図7】MCF-7細胞、MCF-7/TH細胞及びMCF-10A細胞の成長に対するAMRの効果を示す。データ点は、3連で行った3つの独立した実験から算出した平均±SDである。MCF-7細胞株のAMR IC50値は、MCF-10A細胞株及びMCF-7/TH細胞株におけるそれらと有意に相違する(p<0.05)。
【図8】AMRがG2/M期停止及びアポトーシスを誘導することを示す。MCF-7細胞、MCF-7/TH細胞及びMCF-10A細胞を、37℃で48時間、0〜2.5μg/mlのAMRで処置した。この細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、DNAフローサイトメトリーにより細胞周期の分布について分析した。
【図9】図9A〜9Dは、AMRによる用量依存的なアポトーシスの誘導を実証するTUNELアッセイの結果を示す。MCF-7細胞、MCF-7/TH細胞及びMCF-10A細胞を、0、1、2、4及び8μg/mlの濃度のAMRで48時間処置した(図9A〜9C)。ターミナルトランスフェラーゼの存在下、FITC結合デオキシヌクレオシドで標識した後、細胞をフローサイトメトリーによりDNAの断片化について分析した。AMRにより誘導されたアポトーシス細胞の割合を、薬物濃度に対してプロットする(図9D)。結果は平均±S.D.値である。
【図10】図10A〜10Cは、AMRにより誘導されるDNAの断片化を示す。MCF-7細胞を、0、1、2、4及び8μg/mlのAMRで48時間処置した(レーン2〜6)(図10A)。MCF-7/TH細胞を、0、1、2、4及び8μg/mlのAMRで48時間処置した(レーン2〜6)(図10B)。MCF-10A細胞を、0、1、2、4及び8μg/mlのAMRで48時間処置した(レーン2〜6)(図10C)。A、B、及びCのレーン1は、HaeIIIで消化したφX174 DNAマーカである。
【図11】図11A-1、11A-2、及び11Bは、AMRにより誘導されるカスパーゼ-8活性のフローサイトメトリー分析の結果を示す。MCF-7細胞、MCF-7/TH細胞及びMCF-10A細胞を、0、1、2、4及び8μg/mlの濃度のAMRで48時間処置した。FAM-LETD-FMK及びヨウ化プロピジウムで染色した後、細胞をカスパーゼ-8の活性について分析した(図11A-1及び11A-2)。AMR処置により誘導されたカスパーゼ-8陽性細胞の割合を、薬物濃度に対してプロットする(図11B)。結果は平均±S.D.値である。
【図12】ヒト腫瘍異種移植片における腫瘍成長速度に対するAMRの腹腔内感染の効果を、ドキソルビシン(DOX)感染及び生理食塩水(対照)感染と比較して示す。
【図13】本発明のAMR類似体を表す式(化学構造(II))を示す。
【図14】図14A〜14Iは、それぞれ、本発明のAMR類似体(構造(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、及び(XI))を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造(II)を有する単離された化合物又はその薬学的に許容される塩:

式中、R1、R2、及びR3は同じであっても異なっていてもよく、各々、H、O、CN、CH3COO、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、及びアルコキシからなる群より選択され、単離された化合物はアモオラニン(amooranin)(25-ヒドロキシ-3-オキソオレアン-12-エン-28-オイン酸)ではない。
【請求項2】
(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、及び(XI)からなる群より選択される化学構造を有する、請求項1記載の単離された化合物又はその薬学的に許容される塩:




【請求項3】
以下の化学構造(II)を有する単離された化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される坦体とを含む薬学的組成物:

式中、R1、R2、及びR3は同じであっても異なっていてもよく、各々、H、O、CN、CH3COO、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、及びアルコキシからなる群より選択され、単離された化合物はアモオラニン(25-ヒドロキシ-3-オキソオレアン-12-エン-28-オイン酸)ではない。
【請求項4】
化合物が(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、及び(XI)からなる群より選択される化学構造を有する、又はその薬学的に許容される塩である、請求項3記載の薬学的組成物:




【請求項5】
少なくとも1つの抗癌剤をさらに含む、請求項3記載の薬学的組成物。
【請求項6】
標的細胞を、以下の化学構造(II)を有するアモオラニン類似体又はその薬学的に許容される塩の有効量と接触させる段階を含む、標的細胞の増殖を減少させる方法:

式中、R1、R2、及びR3は同じであっても異なっていてもよく、各々、H、O、CN、CH3COO、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、及びアルコキシからなる群より選択され、化学構造(II)はアモオラニン(25-ヒドロキシ-3-オキソオレアン-12-エン-28-オイン酸)を含まない。
【請求項7】
アモオラニン類似体が(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、及び(XI)からなる群より選択される化学構造を有する、又はその薬学的に許容される塩である、請求項6記載の方法:




【請求項8】
接触段階がインビトロで行われる、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
接触段階がインビトロで行われ、かつ標的細胞が腫瘍細胞株の細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
標的細胞が薬物感受性癌細胞又は多剤耐性(MDR)癌細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
接触段階がインビボで行われ、かつ接触段階が患者にアモオラニン類似体を投与する段階を含む、請求項6又は7記載の方法。
【請求項12】
患者が、無秩序な細胞成長により特徴付けられる増殖性障害に罹患しており、かつ標的細胞が、無秩序な細胞成長の部位に存在する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
増殖性障害が癌である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
増殖性障害が、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
増殖性障害が、乳癌、前立腺癌、結腸癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、及び甲状腺癌からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
増殖性障害が、基底細胞癌、胆道癌;骨癌;中枢神経系(CNS)の癌;絨毛癌;結合組織癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;胃癌(gastric cancer);上皮内新生物;喉頭癌;リンパ腫;黒色腫;骨髄腫;神経芽腫;口腔癌;膵臓癌;網膜芽腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;肉腫;皮膚癌;胃癌(stomach cancer);精巣癌;子宮癌;及び泌尿器系の癌からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
アモオラニン類似体が患者に全身投与される、請求項13記載の方法。
【請求項18】
アモオラニン類似体が標的細胞に局所投与される、請求項11記載の方法。
【請求項19】
標的細胞がヒト細胞である、請求項6又は7記載の方法。
【請求項20】
アモオラニン類似体が標的細胞のアポトーシスを誘導する、請求項6又は7記載の方法。
【請求項21】
標的細胞を抗癌剤と接触させる段階をさらに含み、標的細胞が多剤耐性(MDR)であり、かつアモオラニン類似体は抗癌剤に対する標的細胞の感受性を高める、請求項6又は7記載の方法。
【請求項22】
標的細胞が患者の腫瘍部位の良性腫瘍細胞又は悪性腫瘍細胞であり、アモオラニン類似体は腫瘍の大きさを縮小する、請求項11記載の方法。
【請求項23】
治療に使用するための、以下の化学構造(II)を有する化合物又はその薬学的に許容される塩:

式中、R1、R2、及びR3は同じであっても異なっていてもよく、各々、H、O、CN、CH3COO、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、及びアルコキシからなる群より選択され、単離された化合物はアモオラニン(25-ヒドロキシ-3-オキソオレアン-12-エン-28-オイン酸)ではない。
【請求項24】
請求項1記載の単離された化合物からなる群より選択される化学構造を有するか、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、及び(XI)からなる群より選択される化学構造を有する、請求項23記載の化合物又はその薬学的に許容される塩:





【請求項25】
増殖性障害の治療的処置及び/又は予防的処置のための医用薬剤の製造における請求項23記載の化合物の使用。
【請求項26】
増殖性障害の治療的処置及び/又は予防的処置のための医用薬剤の製造における請求項24記載の化合物の使用。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図3F】
image rotate

【図3G】
image rotate

【図3H】
image rotate

【図3I】
image rotate

【図3J】
image rotate

【図3K】
image rotate

【図3L】
image rotate

【図3M】
image rotate

【図3N】
image rotate

【図3O】
image rotate

【図3P】
image rotate

【図3Q】
image rotate

【図3R】
image rotate

【図3S】
image rotate

【図3T】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図8D】
image rotate

【図8E】
image rotate

【図8F】
image rotate

【図8G】
image rotate

【図8H】
image rotate

【図8I】
image rotate

【図8J】
image rotate

【図8K】
image rotate

【図8L】
image rotate

【図8M】
image rotate

【図8N】
image rotate

【図8O】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A−1a】
image rotate

【図11A−1b】
image rotate

【図11A−1c】
image rotate

【図11A−1d】
image rotate

【図11A−1e】
image rotate

【図11A−1f】
image rotate

【図11A−1g】
image rotate

【図11A−1h】
image rotate

【図11A−1i】
image rotate

【図11A−2a】
image rotate

【図11A−2b】
image rotate

【図11A−2c】
image rotate

【図11A−2d】
image rotate

【図11A−2e】
image rotate

【図11A−2f】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図14D】
image rotate

【図14E】
image rotate

【図14F】
image rotate

【図14G】
image rotate

【図14H】
image rotate

【図14I】
image rotate


【公表番号】特表2008−537957(P2008−537957A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506698(P2008−506698)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/013902
【国際公開番号】WO2006/113368
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507339722)
【Fターム(参考)】