説明

アモルファスα−(N−スルホンアミド)アセトアミド化合物の生物学的に利用可能な組成物

(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、およびポリビニルピロリドン−ビニルアセテートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートのどちらかを含むアモルファス固形分散組成物が、打錠用に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は米国仮出願番号第61/169,066号(2009年4月14日出願)の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ベータアミロイドペプチド産生阻害化合物(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドを含む医薬組成物に関連し、より具体的には、(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドを1つまたはそれ以上の医薬的に許容される重合体と共に含む長期間安定保存可能な組成物に関連する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
アルツハイマー病(AD)は進行性の神経変性疾患であり、記憶障害に始まり、重篤な認知障害、行動異常、および運動機能低下へと進行する(Grundman, M. et al., Arch. Neurol., 61:59-66 (2004); Walsh, D.M. et al., Neuron, 44:181-193 (2004))。それは最も多い形態の認知症であり、心臓障害および癌に続く3番目に多い死因となっている。ADの代償は甚大であり、患者およびその家族の苦しみならびに患者およびその介護者の生産性の低下が含まれる。ADを効果的に予防する、または臨床症状およびその原因となる病態生理を回復させる治療は今のところ存在しない。
【0004】
認知症患者のADの最終診断には、剖検における老人斑および神経原線維変化の数および局在の病理組織学的評価が必要である(Consensus recommendations for the postmortem diagnosis of Alzheimer’s disease. Neurobiol. Aging, 18:S1-S2 (1997))。同様の変化がトリソミー21(ダウン症)の患者に見られる。老人斑は主にβ−アミロイド(Aβ)ペプチドからなり、Aβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のβ−サイトAPP−切断酵素(BACE)(N−末端を形成)およびγ−セクレターゼ(C−末端を形成)による段階的なタンパク質分解的切断により産生される(Selkoe, D.J., Physiol Rev., 81:741-766 (2001))。γ−セクレターゼは膜貫通タンパク質複合体であり、ニカストリン、Aph−1、PEN−2、およびプレセニリン−1(PS−1)またはプレセニリン−2(PS−2)のいずれかを含む(Wolfe, M.S. et al., Science, 305: 1119-1123 (2004))。PS−1およびPS−2はγ−セクレターゼの活性部位を含むと考えられている。
【0005】
Aβ40は産生されるAβの最も多い形態であり(80−90%)、一方でAβ42はAD病変形成に最も密接に関連する。特に、稀な家族性の形態のADを引き起こすAPP、PS−1、およびPS−2遺伝子における変異は、Aβ42が主要な毒性種として凝集することで発症に関与する(Selkoe, D.J., Physiol. Rev., 81:741-766 (2001))。最近の証拠により、オリゴマー、プロトフィブリル、および細胞内Aβ42が疾患の過程に重要な役割を果たすことが示唆されている(Cleary, J.P. et al., Nat. Neurosci., 8:79-84 (2005))。Aβ42を形成する酵素、例えばγ−セクレターゼの阻害剤は、AD治療のための強力な疾患修飾薬となる可能性を有する。
【0006】
γ−セクレターゼはAPPに加え、様々なI型膜貫通タンパク質を切断する(Pollack, S.J. et al., Curr. Opin. Investig. Drugs, 6:35-47 (2005))。これらの切断の大半における生理的意義は不明であるが、遺伝学的証拠により、γ−セクレターゼによるNotchの切断がNotchシグナリングに必要であることが示唆されている(Artavanis-Tsakonas, S. et al., Science, 284(5415):770-776 (1999); Kadesch, T., Exp. Cell Res., 260(1):1-8 (2000))。γ−セクレターゼ阻害剤を投与したげっ歯類において、薬剤−関連毒性が消化管(GI)、胸腺、および脾臓で確認された(Searfoss, G.H. et al., J. Biol. Chem., 278: 46107-46116 (2003); Wong, G.T. et al., J. Biol. Chem., 279:12876-12882 (2004); Milano, J. et al., Toxicol. Sci., 82:341-358 (2004))。これらの毒性はNotchシグナリングの阻害に関連していると考えられる(Jensen, J. et al., Nat Genet., 24:36-44 (2000))。
【0007】
メカニズムに基づく毒性の同定は、許容可能な治療指数がγ−セクレターゼ阻害剤により達成できるかという疑問を呈する。Notch切断と比較してのAβ形成の選択的阻害、薬物動態、薬物蓄積および/または組織特異的な薬力が治療限界に影響し得る。
【0008】
γ−セクレターゼ阻害による脳内Aβレベルの減少がADの発症および進行を予防し得ることが証拠により示唆される(Selkoe, D., Physiol. Rev., 81:741-766 (2001); Wolfe, M., J. Med. Chem., 44:2039-2060 (2001))。他の疾患、例えば軽度認識障害(MCI)、ダウン症、脳アミロイド血管症(CAA)、レヴィー小体型認知症(DLB)、筋萎縮性側索硬化症(ALS−D)、封入体筋炎(IBM)、および加齢性黄斑変性症にAβのおける役割に関して新しいデータが出されている。有利なことに、γ−セクレターゼを阻害し、Aβ産生を減少させる化合物は、これらのまたは他のAβ−依存的疾患の治療に用いられ得る。
【0009】
Aβの過剰な産生および/またはクリアランスの減少はCAA(Thal, D. et al., J. Neuropath. Exp. Neuro., 61:282-293 (2002))を引き起こす。これらの患者において、血管アミロイド沈着が血管壁の変性を引き起こし、高齢患者における出血性卒中の10−15%の原因は動脈瘤である可能性がある。ADと同様に、Aβをコードする遺伝子における変異がオランダ型脳出血アミロイドーシスと呼ばれるCAAの早期発症を引き起こし、この変異タンパク質を発現するマウスは患者と同様のCAAを発症する。γ−セクレターゼを特異的な標的とする化合物はCAAを減弱または予防し得る。
【0010】
DLBは幻視、妄想、およびパーキンソニズムを症状とする。興味深いことに、Aβ沈着を引き起こす家族性AD変異は、レヴィー小体およびDLB症候をも引き起こし得る(Yokota, O. et al., Acta Neuropathol. (Berl.), 104:637-648 (2002))。さらに、孤発性DLB患者はADと同様のAβ沈着を有する(Deramecourt, V. et al., J. Neuropathol. Exp. Neurol., 65:278-288 (2006))。これらのデータに基づくと、AβはDLBにおけるレヴィー小体病理を促進すると考えられ、故にγ−セクレターゼ阻害剤はDLBを減弱または予防し得る。
【0011】
ALS患者の約25%が重篤な認知症または失語症を呈する(Hamilton, R.L. et al., Acta Neuropathol. (Berl.), 107:515-522 (2004))。これらの患者の大部分(〜60%)(ALS−Dとする)は主にTDP−43タンパクからなるユビキチン−陽性封入体を有する(Neumann, M. et al., Science, 314:130-133 (2006))。ALS−D患者の約30%がその認知症を引き起こすAβと一致するアミロイド斑を有する(Hamilton, R.L. et al., Acta Neuropathol. (Berl.), 107:515-522 (2004))。これらの患者はアミロイドイメージング試薬で同定可能であり、γ−セクレターゼ阻害剤で治療できる可能性が高い。
【0012】
IBMは稀な骨格筋の年齢依存的変性疾患である。IBMの筋肉におけるAβ沈着の出現および筋肉にAPPを過剰発現させたトランスジェニックマウスにおけるいくつかの病態の再現により、IBMにおいてAβが役割を有することが支持される(Murphy, M.P. et al., Neurology, 66:S65-S68 (2006)によりレビュー)。γ−セクレターゼを特異的な標的とする化合物はIBMを減弱または予防し得る。
【0013】
加齢性黄斑変性症において、Aβはドルーゼン、網膜色素上皮(RPE)下の細胞外沈着物のいくつかの成分に1つとして同定された(Anderson, D.H. et al., Exp. Eye Res., 78:243-256 (2004))。最近の研究により、マウスにおけるAβと黄斑変性の密接な関連が示された(Yoshida, T. et al., J. Clin. Invest., 115:2793-2800 (2005))。AD患者において、Aβ沈着および核白内障の増加が認められている(Goldstein, L.E. et al., Lancet, 361:1258-1265 (2003))。γ−セクレターゼを特異的な標的とする化合物は加齢性黄斑変性症を減弱または予防し得る。
【0014】
腫瘍形成におけるNotchシグナリングの役割に基づくと、γ−セクレターゼを阻害する化合物は癌の治療のための治療薬としても有効であり得る(Shih, I.-M. et al., Cancer Res., 67:1879-1882 (2007))。
【0015】
γ−セクレターゼを阻害する化合物は、例えば多発性硬化症などにおける髄鞘形成の減少に伴う症状の治療にも有効であり得る(Watkins, T.A. et al., Neuron, 60:555-569 (2008))。
【0016】
ジョージタウン大学メディカルセンターの研究者による最近の研究により、γ−セクレターゼ阻害剤が外傷性脳損傷における長期的な損傷を防止し得ることが示唆された(Loane, D.J., et al., Nat. Med., 1-3 (2009))。Smith et al.は国際出願WO 00/50391(2000年8月31日公開)において、様々な疾患、特にアルツハイマー病および他のアミロイド沈着に関連する疾患の治療方法としてアミロイドβタンパクの産生調節に働く一連のスルホンアミド化合物を開示する。特許第11343279号(1999年12月14日公開)は、自己免疫疾患の治療に有用なTNF−α阻害剤である一連のスルホンアミド誘導体を開示する。
【0017】
Parker et al.は国際出願WO 03/053912(2003年7月3日公開)において、アルツハイマー病および他のβ−アミロイドペプチドが関連する病態の治療に有用なβアミロイド阻害剤として一連のα−(N−スルホンアミド)アセトアミド誘導体を開示する。
【0018】
今や、(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドとして知られるα−(N−スルホンアミド)アセトアミド化合物がアルツハイマー病および他のβ−アミロイドペプチドが関連する病態の治療に有用となる優れた特性を有することが発見された。この化合物は同時係属の米国特許出願番号第12/249,180号(2008年10月10日出願)において説明、記述されており、その内容の全体をここに取り込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
不運なことに、(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドの水溶性は乏しく、しばしば、室温付近において<1μg/mLとされる。さらに、粒子径減少による生物学的利用能の相当な改善は示されていない。加えて、結晶形の化合物を含む固形の投与剤形は、経口投与時の生物学的利用能が低いことがイヌにおいて示されている。故に、医薬品有効成分の最適な曝露を得るためには活性化合物のアモルファス(非晶質)な形態が提供される必要があることが今や明らかとなった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かくして、現在技術分野において必要なものは、活性化合物(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド(その医薬的に許容される塩を含む)および1つまたはそれ以上の医薬的に許容される重合体を含み、さらに該活性成分を含む錠剤の打錠に用いられる1つまたはそれ以上のアモルファス固形分散製剤となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1つの実施態様において、本発明は(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよびPVP−VAを含むアモルファス固形分散組成物に方向付けられる。本発明に用いられる「PVP−VA」はポリビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体を意味する。
【0022】
本発明の別の態様の1つにおいて、(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよびHPMC−AS−ASを含むアモルファス固形分散組成物が提供される。本明細書中で用いられるように、「HPMC−AS−AS」はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(またはヒプロメルロースアセテートスクシネート)を意味する。
【0023】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、ならびにPVP−VAおよびHPMC−AS−ASからなる群から選択される1つの成分を含むアモルファス固形分散組成物を含む医薬錠剤もまた、本明細書中で提供される。
【0024】
ホットメルト押出成形または噴霧乾燥により本発明の組成物を製造する方法もまた、提供される。
【0025】
本発明のさらなる実施態様において、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、軽度認知障害および/またはダウン症の治療方法またはその発症を遅延させる方法、ならびに頭部外傷、外傷性脳損傷および/またはボクサー認知症の治療方法であって、1つまたはそれ以上の上記実施態様に記載される治療上有効量の医薬錠剤を患者に投与することを特徴とする方法が提供される。本発明はこれら、および以下に記載される別の重要な分野に方向付けられる。
【0026】
(発明の詳細な説明)
式(I):
【化1】

を有する(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド(その医薬的に許容される塩を含む)は、アルツハイマー病(AD)または他のβ−アミロイドペプチドが関連する障害に罹患している、または罹患しやすい患者におけるAβ産生の阻害に有用であることが見出された。
【0027】
この化合物は化学式C2017ClFS、分子量520.88を有する。この化合物はアモルファス状態にあることが好ましい。この化合物は水溶性に乏しいため、実施態様によりPVP−VAを用いて製剤化することが提案される。PVP−VAは以下の式:
【化2】

で表され、ポリビニルピロリドンおよびビニルアセテートの共重合体を表す。第1の実施態様による本発明の組成物において、約10−50w/v%のアモルファス化合物(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約90−50w/v%のPVP−VAが提供される。より好ましくは、約20−40w/v%の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約80−60w/v%のPVP−VAである。
【0028】
さらにより好ましくは、本発明の組成物は約25w/v%の活性化合物(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約75w/v%のPVP−VAを含む。医薬品グレードの増量剤および結合剤などの当業者に周知の別の賦形剤もまた、本発明の組成物に組み込まれてもよいが、これは任意である。
【0029】
上記の該組成物を製造するため、当業者に周知の種々の製造方法を用いることができる。活性化合物およびPVP−VAを含む該組成物はホットメルト押出成形または噴霧乾燥を用いる方法により製造することが好ましく、ホットメルト押出成形を用いる方法がより好ましい。当業者に周知の装置を用いた活性化合物のホットメルト押出成形において、加工温度は約150−160℃が好ましい。約100℃において、化合物(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドのPVP−VAに対する溶解度は5%未満であることが示されている。
【0030】
ホットメルト押出成形による加工後、押出成形品は当業者に周知の方法および装置を用いて製粉されてもよい。粒子径は約D90<50μmに減少していることが好ましい。
【0031】
本発明の更なる実施態様において、(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよびHPMC−ASを含む組成物が提供される。HPMC−ASはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートとして知られる重合体である。好ましくは、約10−50w/v%のアモルファス化合物(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよび約90−50w/v%のHPMC−ASが提供される。より好ましくは、約20−40w/v%の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよび約80−60w/v%のHPMC−ASが提供される。
【0032】
さらにより好ましくは、本発明の組成物は約25w/v%の活性化合物(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよび約75w/v%のHPMC−ASを含む。医薬品グレードの増量剤および結合剤などの当業者に周知の別の賦形剤もまた、本発明の組成物に組み込まれてもよいが、これは任意である。
【0033】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよびHPMC−ASを含む上記の組成物を製造には、アセトンまたはメタノール溶液(〜5−10%w/v)を用いた当業者に周知の噴霧乾燥法を用いることが好ましい。噴霧乾燥装置のインレット温度は典型的には約60−100℃であり、アウトレット温度は約30−60℃である。噴霧乾燥した物質は、典型的には粒子径(D90)が50μm以下であり、故に、さらに造粒する必要はない;しかしながら、必要なら、噴霧乾燥した物質をさらに造粒してもよい。
【0034】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、およびPVP−VAまたはHPMC−ASを含む本発明の組成物は、保存の際に非常に安定である。これは、約25℃/60%相対湿度下で密閉容器もしくは蓋のない容器に保存、または約40℃/75%相対湿度下で密閉容器に保存した場合に、少なくとも約3ヶ月間、好ましくは少なくとも約6ヶ月間、さらにより好ましくは少なくとも約9ヶ月間、粉末X線回折(PXRD)もしくは示差走査熱量測定(DSC)により判断される結晶化を該組成物が示さないことを意味する。
【0035】
次いで、種々の実施態様に記載される本発明の組成物は、当業者に周知の装置の方法を用いて打錠されてもよい。
【0036】
さらに、望ましいまたは必要な場合、適切な別の結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色料が打錠混合物に組み込まれてもよい。適切な結合剤は、例えばデンプン、ゼラチン、天然糖(例えばブドウ糖またはベータ−乳糖)、トウモロコシ甘味料、天然および合成ゴム(例えばアラビアゴム、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールなどである。これらの投与剤形で用いられる滑沢剤は、例えばオレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどである。崩壊剤は、これらに限定されないが、例えばデンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴムなどである。例えば錠剤は、粉末混合物を製造し、造粒またはスラッグし、滑沢剤または崩壊剤を加え、打錠することにより製剤化されてもよい。粉末混合物は、適切に破砕した化合物を上記の希釈剤または基剤、および適宜結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤(例えばパラフィン)、吸収促進剤(例えば第4級塩)および/または吸収剤(例えばベントナイト、カオリンまたは第二リン酸カルシウム)と混合することにより製造される。粉末混合物は、結合剤(例えばシロップ、デンプン糊、アカディア粘液(acadia mucilage)、またはセルロース系もしくは重合体系物質の溶液)で湿潤させ、ふるいに押し通すことによって造粒してもよい。造粒する代わりに、粉末混合物を打錠機に通し、不完全形成スラッグを得て顆粒に砕いてもよい。該顆粒にステアリン酸、タルクまたはミネラル油を加えることにより滑らかにし、打錠用ダイスに付着することを防ぐことができる。このように滑らかにした混合物は、次いで打錠することができる。本発明の化合物はまた、自由流動性の不活性な担体と混合し、造粒またはスラッグの段階を経ずに直接打錠することもできる。セラックによる密閉コーティング、糖または重合体系物質によるコーティング、およびワックスによる艶出しコーティングからなる透明または不透明な保護的コーティングも提供され得る。異なる投与単位を区別するために、これらのコーティングに色素を加えてもよい。
【0037】
限定されない例として、本明細書中に記載の組成物を用いて、例えば約50mgの活性化合物(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドを含む錠剤を製造することができる。別の投与単位も本発明の範囲に包含される。特に、凍結粉砕された(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよびPVP−VAを含む錠剤では、インビトロにおける溶解速度、およびイヌにおける経口投与時の生物学的利用能が比較用の可溶化カプセル剤と同程度にまで改善されることが示されている。同様に、(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよびHPMC−ASを含む噴霧乾燥された組成物もまた、インビトロにおける溶解速度が改善され、イヌにおける優れた経口投与時のインビボの生物学的利用能および優れた化学的/物理的安定性を有することが示されている。
【0038】
本発明のさらなる実施態様において、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、軽度認知障害および/またはダウン症の治療または発症の遅延、および頭部外傷、外傷性脳損傷および/またはボクサー認知症の治療のための方法であって、1つまたはそれ以上の上記の実施態様による治療上有効量の医薬錠剤を患者に投与することを特徴とする方法が提供される。患者におけるアルツハイマー病の治療方法であって、1つまたはそれ以上の上記の実施態様による治療上有効量の医薬錠剤を患者に投与することを特徴とする方法もまた、提供される。さらに、γ−セクレターゼ酵素の機能を阻害する方法であって、1つまたはそれ以上の上記の実施態様による治療上有効量の医薬錠剤によりγ−セクレターゼに接触する方法も提供される。また、患者におけるβ−アミロイドペプチドの産生を阻害する方法であって、1つまたはそれ以上の上記の実施態様による治療上有効量の医薬錠剤により患者においてγ−セクレターゼに接触する方法も提供される。さらに、患者におけるβ−アミロイドペプチドの産生を阻害する方法であって、1つまたはそれ以上の上記の実施態様による治療上有効量の医薬錠剤を該患者に投与することを特徴とする方法も提供される。用語「治療上有効量」は、該方法において、患者利益、即ち症状または疾患の根本治療に十分な活性化合物の総量を意味する。単独投与される個々の活性成分に適用される場合、該用語は成分単独を意味する。組み合わせで投与される場合、該用語は、組み合わせ、時間差または同時に投与されるかにかかわらず、治療効果を引き出す活性成分の組み合わせの量を意味する。
【0039】
上述の説明は単に例示目的にすぎず、決して本発明の範囲または根本的な概念を限定すると理解されるべきではない。実際、本明細書中で示され、記載されたものに加え、本発明の種々の変法は以下の実施例および上記の説明により当業者に明らかとなるであろう。かかる変法もまた、添付される請求項の範囲に包含されると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよびPVP−VAを含むアモルファス固形分散組成物。
【請求項2】
約10−50w/v%の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約90−50w/v%のPVP−VAを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約20−40w/v%の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約80−60w/v%のPVP−VAを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
約25w/v%の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約75%のPVP−VAを含む請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも約3ヶ月間物理化学的に安定な組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも約6ヶ月間物理化学的に安定な組成物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ホットメルト押出成形または噴霧乾燥により製造される組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
錠剤化された組成物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
経口投与可能な組成物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項10】
経口投与可能な組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドおよびHPMC−ASを含むアモルファス固形分散組成物。
【請求項12】
約10−50のw/v%(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約90−50w/v%のHPMC−ASを含む請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
約20−40w/v%の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約80−60w/v%のHPMC−ASを含む請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
約25w/v%の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、および約75%のHPMC−ASを含む請求項13の組成物。
【請求項15】
少なくとも約3ヶ月間物理化学的に安定である、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも約6ヶ月間物理化学的に安定である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
噴霧乾燥により製造された組成物である、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
打錠された組成物である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
経口投与可能な組成物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
経口投与可能な組成物である、請求項11に記載の組成物。
【請求項21】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、ならびにPVP−VAおよびHPMC−ASからなる群から選択される1つの成分を含む医薬錠剤。
【請求項22】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドをPVP−VAと共にホットメルト押出成形することを特徴とする、アモルファス固形分散組成物の製造方法。
【請求項23】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドをHPMC−ASと共に噴霧乾燥することを特徴とする、アモルファス固形分散組成物の製造方法。

【公表番号】特表2012−524090(P2012−524090A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506089(P2012−506089)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/030679
【国際公開番号】WO2010/120662
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】