アモルファスカーボン薄膜作製方法
【課題】簡易にしかも安価に作製することができるアモルファスカーボン薄膜作製方法を提供する。
【解決手段】超臨界流体セル6の流体層5内に二酸化炭素及び炭化水素を封入し超臨界状態を形成する工程と、流体層5内に紫外波長のレーザー光を照射する工程と、を含むアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【解決手段】超臨界流体セル6の流体層5内に二酸化炭素及び炭化水素を封入し超臨界状態を形成する工程と、流体層5内に紫外波長のレーザー光を照射する工程と、を含むアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアモルファスカーボン薄膜作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体作製の際に利用される低誘電率(1ow-k)薄膜作製技術は、半導体産業において重要な技術の一つである。従来の化学蒸着(CVD)法による薄膜作製では、原料の炭化水素などをチャンバー内で900℃程度に加熱・分解し、シリコンなどの基板上に堆積させる。
【0003】
ところが、CVD法では加熱温度が900℃以上であることより耐熱性のない薄膜作製が困難であった。またCVD法に用いられる製造装置が大型でしかも高価であった。そのため、簡易にしかも安価に薄膜を作製する方法が求められていた。
【0004】
上述の課題を解決する手段としていくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−144084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡易にしかも安価に作製することができるアモルファスカーボン薄膜作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、超臨界流体セルの流体層内に二酸化炭素及び炭化水素を封入し超臨界状態を形成する工程と、流体層内に紫外波長のレーザー光を照射する工程と、を含むアモルファスカーボン薄膜作製方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易にしかも安価に作製することができるアモルファスカーボン薄膜作製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アモルファスカーボン薄膜作成装置の概略構成図を示す。
【図2】比較例1の薄膜についての原子間力顕微鏡(AFM)観察により得られた図を示す。
【図3】実施例1の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す。
【図4】実施例1の薄膜についてのRaman散乱計による構造解析結果を示す。
【図5】実施例1の薄膜についてのEDS成分分析結果を示す。
【図6】参考例2の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す(T−Tc=0℃)。
【図7】参考例3の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す(T−Tc=1℃)。
【図8】実施例2の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す(T−Tc=3℃)。
【図9】実施例3の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す(T−Tc=5℃)。
【図10】AFM観察により得られた画像から計算された薄膜表面高さのRMSを計算した値を示す。
【図11】AFM観察により得られた画像から計算された薄膜表面高さのRMSを計算した値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0011】
(アモルファスカーボン薄(a−c)膜作成装置)
実施形態に係るアモルファスカーボン薄膜作製方法に用いられるアモルファスカーボン薄膜作成装置1は、超臨界雰囲気が形成される流体層5を備える超臨界流体セル6と、超臨界流体セル6の上部に配置された合成石英ガラス4と、流体層5の底部に配置され薄膜が成長する基板8と、超臨界流体セル6にレーザー光を照射するレーザー2と、光源からのレーザー光の進路を変更するミラー3と、さらに超臨界流体セル6の周囲に配置された温度調節器9と、を有する。
薄膜が成長することとなる基板8としては、シリコン基板を用いることができる。
【0012】
(アモルファスカーボン薄膜作製方法)
(イ)図1に示すようなアモルファスカーボン薄膜作成装置1を用意する。
【0013】
(ロ)超臨界流体セル6の流体層5内に二酸化炭素及び炭化水素を封入する。薄膜の原料源となる炭化水素としては、ベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン等のベンゼン類が挙げられる。ベンゼン類は超臨界二酸化炭素内における分散性が高いことから、反応溶媒としての超臨界二酸化炭素との相性が良いからである。
【0014】
(ハ)超臨界流体セル6の流体層5内で超臨界状態を形成する。一般に二酸化炭素の臨界点では、臨界密度466kg/m3、臨界圧力7.38MPa、臨界温度304.2Kになる。よって、超臨界流体セル6内の温度、圧力を上記の数値程度に調整することで二酸化炭素の超臨界状態を形成することができる。
【0015】
この場合、超臨界二酸化炭素温度をT、臨界温度をTcとしたときの温度差T−Tcが3℃以上、より好ましくは5℃以上になるように流体層5内の温度を調整することが都合がよい。平坦な薄膜を形成することができるからである。
【0016】
流体層5内に入れるベンゼン類の種類・量により臨界温度が変化し、絶対的な温度を示すことが難しいので、ここでは流体層5内の温度として二成分混合系の気液臨界点温度からの差を記載している。この場合、特に制限はないが、後に説明する実施例の欄に示す1,3,5−トリクロロベンゼンを混合させた場合では、流体層5内の温度を臨界温度(35℃)よりも3℃以上高い38℃以上に調整することが好ましく、5℃以上高い40℃以上に調整することがより好ましい。
【0017】
より均一な薄膜を得るには電場をかけることが好ましい。具体的には0.40kV/mmよりも高い電場をかけることが好ましく、より好ましくは0.50kV/mm以上、さらに好ましくは0.60kV/mm以上の電場をかけることが好ましい。
【0018】
(ニ)流体層5内に紫外波長のレーザー光を照射する。紫外波長のレーザー光としては、例えばYAG−THG(3次元周波):波長355nm、YAG−THG(4次元周波):波長266nm、KrFエキシマ:波長248nm等が挙げられる。
【0019】
半導体作製の際に利用される低誘電率(1ow-k)薄膜作製技術は、半導体産業において重要な技術の一つである。CVD法による薄膜作製では、原料の炭化水素などをチャンバー内で900℃程度に加熱・分解し、シリコンなどの基板上に堆積させていた。ところが、本実施形態によれば、従来の薄膜作製技術とは異なり、35℃程度の室温で薄膜作製が可能である。また本実施形態によれば、比較的に安価でしかも入手容易なベンゼン類を超臨界二酸化炭素中に分散させ、YAGレーザーを照射することにより、分散されているベンゼン類を光分解し、超臨界流体セル6内に設置したシリコン基板に堆積させることができる。つまり本実施形態によれば、簡易にしかも安価で薄膜を作製することができる。
【0020】
また本実施形態によれば、低温でアモルファスカーボン薄膜を作製することができるため、熱に弱いタンパク質を用いたバイオ半導体チップなどの作製に使用され得る。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
実施形態と同様の方法により以下の条件で図1のアモルファスカーボン薄膜作成装置1を用いて薄膜を作製した。
条件:反応溶媒として二酸化炭素、炭素源(炭化水素)として1,3,5−トリクロロベンゼン、紫外波長のレーザー光としてYAG−THG4次元周波(波長266nm)を用いて、流体層内温度:40℃、臨界密度で実験を行った。
【0022】
得られた薄膜について、原子間力顕微鏡(AFM)観察、Raman散乱計による薄膜の構造解析、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いた成分分析を行った。得られた結果を図3、図4、図5に示す。
【0023】
(比較例1)
亜臨界状態となるように流体層内温度を25℃、臨界密度にしたことを除いて、実施例1と同様に実験を行った。得られた薄膜について、AFM観察を行った。得られた結果を図2に示す。
実施例1により、二酸化炭素の超臨界状態(35℃程度の室温)において厚さが均一な薄膜が形成されることが示された。一方、比較例1によれば、二酸化炭素の亜臨界状態においては、厚さが均一な薄膜が形成されないことが示された。
【0024】
(実施例2、実施例3)、(比較例2、比較例3、)
超臨界流体セル6内のベンゼンが分散された超臨界二酸化炭素の温度と薄膜の均一性等の関係を示すため、炭素源としてベンゼンを用い、T−Tc=0℃、1℃、3℃、5℃としたことを除き、実施例1と同様に実験を行った。得られた薄膜について、AFM観察を行った。得られた結果を図6(比較例2、T−Tc=0℃)、図7(比較例3、T−Tc=1℃)、図8(実施例2、T−Tc=3℃)、図9(実施例3、T−Tc=5℃)に示す。また、薄膜の均一性を定量的に評価するため、AFM観察により得られた画像から計算された薄膜表面高さのRMSを計算した値を図10に示す。
図6〜図9より、超臨界二酸化炭素の温度が高くなるに従い、薄膜表面が均一になることが分かった。
【0025】
図10より臨界二酸化炭素温度、つまり超臨界流体セル6内の温度の上昇に伴い薄膜表面の均一性が向上していることが分かった。薄膜表面高さのRMSがT−Tc=0℃において、T−Tc=1℃での場合と比較して均一性が向上しているが、この場合臨界タンパク光の発生により二酸化炭素分子が多く分解することによって引き起こされる。しかしながら、薄膜の特性に関しては二酸化炭素分子が分解されたものが多く含まれ不純物となってしまうため、T−Tc=0℃では薄膜にとっては良い条件とはならない。したがって、今回の薄膜作製実験においては、チャンバー内の超臨界二酸化炭素がT−Tc>3℃程度の温度環境で均一なa-c薄膜を作製することが可能であることが分かった。
【0026】
(アモルファスカーボン(a−c)薄膜の表面粗さに関する電場の影響)
電場強度と薄膜の均一性の関係を示すため、電場強度を変化させたことを除いて、実施例3と同様に実験を行った。図11に流体温度T−Tc=5℃において電場強度を変化させた場合のa−c薄膜の表面のRMS変化を示す。電場を強くすることにより、a−c薄膜表面が均一になることがわかった。また、電場強度0.38kV/mmと0.63kV/mmの間に大きな違いが見られ、0.63kV/mmの電場強度では、10倍以上の均一な薄膜を形成することが分かった。
【0027】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0028】
例えば、1ow-k薄膜には、フッ素含有薄膜が良いとされていることより、1,3,5−トリクロロベンゼンに換えて、ヘキサフルオロベンゼンを超臨界二酸化炭素に分散させても構わない。さらに、超臨界流体セル6内に電場を印加することで、高効率かつ均一に薄膜を作製することができる。
【0029】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0030】
1:アモルファスカーボン薄膜作成装置
2:レーザー
3:ミラー
4:合成石英ガラス
5:流体層
6:超臨界流体セル
8:基板
9:温度調節器
【技術分野】
【0001】
本発明はアモルファスカーボン薄膜作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体作製の際に利用される低誘電率(1ow-k)薄膜作製技術は、半導体産業において重要な技術の一つである。従来の化学蒸着(CVD)法による薄膜作製では、原料の炭化水素などをチャンバー内で900℃程度に加熱・分解し、シリコンなどの基板上に堆積させる。
【0003】
ところが、CVD法では加熱温度が900℃以上であることより耐熱性のない薄膜作製が困難であった。またCVD法に用いられる製造装置が大型でしかも高価であった。そのため、簡易にしかも安価に薄膜を作製する方法が求められていた。
【0004】
上述の課題を解決する手段としていくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−144084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡易にしかも安価に作製することができるアモルファスカーボン薄膜作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、超臨界流体セルの流体層内に二酸化炭素及び炭化水素を封入し超臨界状態を形成する工程と、流体層内に紫外波長のレーザー光を照射する工程と、を含むアモルファスカーボン薄膜作製方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易にしかも安価に作製することができるアモルファスカーボン薄膜作製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アモルファスカーボン薄膜作成装置の概略構成図を示す。
【図2】比較例1の薄膜についての原子間力顕微鏡(AFM)観察により得られた図を示す。
【図3】実施例1の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す。
【図4】実施例1の薄膜についてのRaman散乱計による構造解析結果を示す。
【図5】実施例1の薄膜についてのEDS成分分析結果を示す。
【図6】参考例2の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す(T−Tc=0℃)。
【図7】参考例3の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す(T−Tc=1℃)。
【図8】実施例2の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す(T−Tc=3℃)。
【図9】実施例3の薄膜についてのAFM観察により得られた図を示す(T−Tc=5℃)。
【図10】AFM観察により得られた画像から計算された薄膜表面高さのRMSを計算した値を示す。
【図11】AFM観察により得られた画像から計算された薄膜表面高さのRMSを計算した値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0011】
(アモルファスカーボン薄(a−c)膜作成装置)
実施形態に係るアモルファスカーボン薄膜作製方法に用いられるアモルファスカーボン薄膜作成装置1は、超臨界雰囲気が形成される流体層5を備える超臨界流体セル6と、超臨界流体セル6の上部に配置された合成石英ガラス4と、流体層5の底部に配置され薄膜が成長する基板8と、超臨界流体セル6にレーザー光を照射するレーザー2と、光源からのレーザー光の進路を変更するミラー3と、さらに超臨界流体セル6の周囲に配置された温度調節器9と、を有する。
薄膜が成長することとなる基板8としては、シリコン基板を用いることができる。
【0012】
(アモルファスカーボン薄膜作製方法)
(イ)図1に示すようなアモルファスカーボン薄膜作成装置1を用意する。
【0013】
(ロ)超臨界流体セル6の流体層5内に二酸化炭素及び炭化水素を封入する。薄膜の原料源となる炭化水素としては、ベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン等のベンゼン類が挙げられる。ベンゼン類は超臨界二酸化炭素内における分散性が高いことから、反応溶媒としての超臨界二酸化炭素との相性が良いからである。
【0014】
(ハ)超臨界流体セル6の流体層5内で超臨界状態を形成する。一般に二酸化炭素の臨界点では、臨界密度466kg/m3、臨界圧力7.38MPa、臨界温度304.2Kになる。よって、超臨界流体セル6内の温度、圧力を上記の数値程度に調整することで二酸化炭素の超臨界状態を形成することができる。
【0015】
この場合、超臨界二酸化炭素温度をT、臨界温度をTcとしたときの温度差T−Tcが3℃以上、より好ましくは5℃以上になるように流体層5内の温度を調整することが都合がよい。平坦な薄膜を形成することができるからである。
【0016】
流体層5内に入れるベンゼン類の種類・量により臨界温度が変化し、絶対的な温度を示すことが難しいので、ここでは流体層5内の温度として二成分混合系の気液臨界点温度からの差を記載している。この場合、特に制限はないが、後に説明する実施例の欄に示す1,3,5−トリクロロベンゼンを混合させた場合では、流体層5内の温度を臨界温度(35℃)よりも3℃以上高い38℃以上に調整することが好ましく、5℃以上高い40℃以上に調整することがより好ましい。
【0017】
より均一な薄膜を得るには電場をかけることが好ましい。具体的には0.40kV/mmよりも高い電場をかけることが好ましく、より好ましくは0.50kV/mm以上、さらに好ましくは0.60kV/mm以上の電場をかけることが好ましい。
【0018】
(ニ)流体層5内に紫外波長のレーザー光を照射する。紫外波長のレーザー光としては、例えばYAG−THG(3次元周波):波長355nm、YAG−THG(4次元周波):波長266nm、KrFエキシマ:波長248nm等が挙げられる。
【0019】
半導体作製の際に利用される低誘電率(1ow-k)薄膜作製技術は、半導体産業において重要な技術の一つである。CVD法による薄膜作製では、原料の炭化水素などをチャンバー内で900℃程度に加熱・分解し、シリコンなどの基板上に堆積させていた。ところが、本実施形態によれば、従来の薄膜作製技術とは異なり、35℃程度の室温で薄膜作製が可能である。また本実施形態によれば、比較的に安価でしかも入手容易なベンゼン類を超臨界二酸化炭素中に分散させ、YAGレーザーを照射することにより、分散されているベンゼン類を光分解し、超臨界流体セル6内に設置したシリコン基板に堆積させることができる。つまり本実施形態によれば、簡易にしかも安価で薄膜を作製することができる。
【0020】
また本実施形態によれば、低温でアモルファスカーボン薄膜を作製することができるため、熱に弱いタンパク質を用いたバイオ半導体チップなどの作製に使用され得る。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
実施形態と同様の方法により以下の条件で図1のアモルファスカーボン薄膜作成装置1を用いて薄膜を作製した。
条件:反応溶媒として二酸化炭素、炭素源(炭化水素)として1,3,5−トリクロロベンゼン、紫外波長のレーザー光としてYAG−THG4次元周波(波長266nm)を用いて、流体層内温度:40℃、臨界密度で実験を行った。
【0022】
得られた薄膜について、原子間力顕微鏡(AFM)観察、Raman散乱計による薄膜の構造解析、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いた成分分析を行った。得られた結果を図3、図4、図5に示す。
【0023】
(比較例1)
亜臨界状態となるように流体層内温度を25℃、臨界密度にしたことを除いて、実施例1と同様に実験を行った。得られた薄膜について、AFM観察を行った。得られた結果を図2に示す。
実施例1により、二酸化炭素の超臨界状態(35℃程度の室温)において厚さが均一な薄膜が形成されることが示された。一方、比較例1によれば、二酸化炭素の亜臨界状態においては、厚さが均一な薄膜が形成されないことが示された。
【0024】
(実施例2、実施例3)、(比較例2、比較例3、)
超臨界流体セル6内のベンゼンが分散された超臨界二酸化炭素の温度と薄膜の均一性等の関係を示すため、炭素源としてベンゼンを用い、T−Tc=0℃、1℃、3℃、5℃としたことを除き、実施例1と同様に実験を行った。得られた薄膜について、AFM観察を行った。得られた結果を図6(比較例2、T−Tc=0℃)、図7(比較例3、T−Tc=1℃)、図8(実施例2、T−Tc=3℃)、図9(実施例3、T−Tc=5℃)に示す。また、薄膜の均一性を定量的に評価するため、AFM観察により得られた画像から計算された薄膜表面高さのRMSを計算した値を図10に示す。
図6〜図9より、超臨界二酸化炭素の温度が高くなるに従い、薄膜表面が均一になることが分かった。
【0025】
図10より臨界二酸化炭素温度、つまり超臨界流体セル6内の温度の上昇に伴い薄膜表面の均一性が向上していることが分かった。薄膜表面高さのRMSがT−Tc=0℃において、T−Tc=1℃での場合と比較して均一性が向上しているが、この場合臨界タンパク光の発生により二酸化炭素分子が多く分解することによって引き起こされる。しかしながら、薄膜の特性に関しては二酸化炭素分子が分解されたものが多く含まれ不純物となってしまうため、T−Tc=0℃では薄膜にとっては良い条件とはならない。したがって、今回の薄膜作製実験においては、チャンバー内の超臨界二酸化炭素がT−Tc>3℃程度の温度環境で均一なa-c薄膜を作製することが可能であることが分かった。
【0026】
(アモルファスカーボン(a−c)薄膜の表面粗さに関する電場の影響)
電場強度と薄膜の均一性の関係を示すため、電場強度を変化させたことを除いて、実施例3と同様に実験を行った。図11に流体温度T−Tc=5℃において電場強度を変化させた場合のa−c薄膜の表面のRMS変化を示す。電場を強くすることにより、a−c薄膜表面が均一になることがわかった。また、電場強度0.38kV/mmと0.63kV/mmの間に大きな違いが見られ、0.63kV/mmの電場強度では、10倍以上の均一な薄膜を形成することが分かった。
【0027】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0028】
例えば、1ow-k薄膜には、フッ素含有薄膜が良いとされていることより、1,3,5−トリクロロベンゼンに換えて、ヘキサフルオロベンゼンを超臨界二酸化炭素に分散させても構わない。さらに、超臨界流体セル6内に電場を印加することで、高効率かつ均一に薄膜を作製することができる。
【0029】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0030】
1:アモルファスカーボン薄膜作成装置
2:レーザー
3:ミラー
4:合成石英ガラス
5:流体層
6:超臨界流体セル
8:基板
9:温度調節器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体セルの流体層内に二酸化炭素及び炭化水素を封入し、超臨界状態を形成する工程と、
前記流体層内に紫外波長のレーザー光を照射する工程と、
を含むことを特徴とするアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項2】
前記炭化水素が、1,3,5−トリクロロベンゼンであることを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項3】
前記炭化水素が、ヘキサフルオロベンゼンであることを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項4】
超臨界二酸化炭素温度をT、臨界温度をTcとしたときの温度差T−Tcが3℃以上になるように前記流体層内の温度を調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項5】
超臨界二酸化炭素温度をT、臨界温度をTcとしたときの温度差T−Tcが5℃以上になるように前記流体層内の温度を調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項1】
超臨界流体セルの流体層内に二酸化炭素及び炭化水素を封入し、超臨界状態を形成する工程と、
前記流体層内に紫外波長のレーザー光を照射する工程と、
を含むことを特徴とするアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項2】
前記炭化水素が、1,3,5−トリクロロベンゼンであることを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項3】
前記炭化水素が、ヘキサフルオロベンゼンであることを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項4】
超臨界二酸化炭素温度をT、臨界温度をTcとしたときの温度差T−Tcが3℃以上になるように前記流体層内の温度を調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【請求項5】
超臨界二酸化炭素温度をT、臨界温度をTcとしたときの温度差T−Tcが5℃以上になるように前記流体層内の温度を調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボン薄膜作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−82619(P2013−82619A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−279333(P2012−279333)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2007−267780(P2007−267780)の分割
【原出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2007−267780(P2007−267780)の分割
【原出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【Fターム(参考)】
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