説明

アラミドコードとナイロン66とのハイブリッドコード及びそれを補強コードとして用いた空気入りタイヤ

【課題】ハイブリッドコードを補強ベルトに用いた乗用車用空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】伸率0.5〜1%の弾性率に対する伸率3〜5%の弾性率の比率が1以上10以下の範囲であるアラミドコードとナイロン66とのハイブリッドコード。それを補強コードとして用いた空気入りタイヤは、上撚数と下撚数が異なるコードを補強ベルトに適用することにより、高速耐久性と操縦安定性を向上させた高性能のラジアルタイヤを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の撚数(twist count)により補強したハイブリッドコードを補強ベルトに使用する乗用車用空気入りタイヤに関するものであって、より詳しくは、上撚数と下撚数が異なるコードを補強ベルトに適用することにより、高速耐久性と操縦安定性を向上させた高性能のラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
アラミド繊維をタイヤコード糸として適用する多数の技術が公開されている[特許文献1、特許文献2、特許文献3など]。
【0003】
また、アラミドフィラメントとナイロンフィラメントからなるハイブリッドコードに関する技術も公開されている[特許文献4、特許文献5、特許文献6など]。
【0004】
特許文献6には、2本のアラミドフィラメントと1本のナイロン46フィラメントを下撚とは逆方向に上撚を施し、複合繊維コードの上撚係数が1700〜2700となるように調整することにより、高速耐久性と耐フラットスポット性(flat spot resistance)を向上させるようにした複合繊維コードが記載されている。
【0005】
タイヤのベルトは、自動車が走行する時、地面からの応力を分散させて接地形状を維持することにより、走行性能、摩耗、及びブレーキ性能に影響を及ぼす大変重要な機能を行う。その中、補強ベルトは、自動車が走行する時、スチールベルトの遊動を抑制してタイヤの性能を維持する役割をする。
【0006】
このような補強ベルトの主要特性は、耐熱接着力、収縮力、室温及び高温でのモジュラス維持率などが挙げられる。その中、耐熱接着力は、タイヤの耐久性に最も大きい影響を及ぼす要素であって、タイヤにおいて発熱が最も激しいトレッドとベルトとの間に位置する補強ベルトの位置特性上、走行中の高温により老化が促進された場合、接着力を一定の水準に維持しなければならない。収縮力は、走行時、温度上昇によるタイヤの膨張により耐久性が低下する現象を補強ベルトの収縮により予防する。モジュラスは、乗り心地と操縦安定性に影響を及ぼす要素であって、補強ベルトのモジュラスが大きいほど外部からの力によるスチールベルトの形状変化を減少させて操縦安定性を向上させるが、乗り心地が低下する短所がある。
【0007】
乗用車用タイヤは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、レーヨン、及びナイロンなどをコードとして使用する。PETコードは、耐熱接着力が弱く、高温でのモジュラスが大きく低下して補強ベルトへの適用が困難である。レーヨンは、収縮力が殆どなく、耐疲労性が低くてスチールベルトを支えられないため、タイヤに使用することができない。最後に、広く使われているナイロンは、ナイロン66がナイロン6に比べて耐熱接着力に優れ、高温でのモジュラス低下率が低いという長所があるため、現在、全世界的に最も多く用いられている補強ベルト用素材である。しかし、ナイロンの特性上、基本的なモジュラスが非常に低いため、高速走行によりタイヤの内部温度が上昇する可能性が大きい高性能のラジアルタイヤに適用する場合、耐久性能に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2009−0164609号
【特許文献2】韓国公開特許第2009−0114131号
【特許文献3】韓国公開特許第2010−0006195号
【特許文献4】韓国公開特許第1989−0012812号
【特許文献5】韓国公開特許第2006−012601号
【特許文献6】特開2009−132324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アラミドコードとナイロン66を組み合わせたハイブリッドコードを適用することにより、乗り心地の変化がなく、高速耐久性と操縦安定性を向上させた高性能のラジアルタイヤを提供することにある。
【0010】
本発明によるラジアルタイヤは、異なる弾性率を有する2本の下撚コードとそれぞれの下撚数の差を用いて乗り心地が低下することなく、高速耐久性と操縦安定性を10〜15%向上させることができる。
【0011】
より詳細には、ハイブリッドコードの製造時、高弾性率のコードに比して低弾性率のコードの撚数を少なくして撚り合わせることで、低速走行時には相対的に低弾性率の下撚コードの特性を生かす一方、高速走行時には高弾性率のコードの特性を生かす。それによって、低速走行時はナイロンのような疲労性能に優れたコードが適用されて乗り心地をそのまま維持させ、高速走行時はアラミドのような耐熱性能に優れたコードが適用されてタイヤ内部の温度上昇によるタイヤの膨張を抑制することにより、高速耐久性と操縦安定性を一定水準以上に向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、アラミドコードとナイロン66を撚り合わせたハイブリッドコードを用いた乗用車用空気入りタイヤに関するものである。
【0013】
ナイロン66は、耐熱接着力、収縮力、低温、及び低荷重での弾性率に優れているため、補強ベルト用タイヤに使用してタイヤの乗り心地と操縦安定性を維持する役割をするが、これは低速区間及び一般速度区間に限って効果が大きい。しかし、最近、乗用車が高性能化するにつれて、高速走行によるタイヤの高耐久性能が求められている。そのため、ナイロン66だけでは高速走行時のタイヤの形態安定性を保障できない。したがって、高温での弾性率を維持するために、アラミドのような高弾性物質をナイロン66と組み合わせて使用することで、問題を解決することができる。この時、アラミドとナイロン66の特性を発揮するために、それぞれの下撚数を異なるようにし、ナイロン66は50〜200TPMを適用し、アラミドは200〜500TPMを適用する。また、常にナイロン66の上撚数がアラミドの上撚数よりも少なくなるように調整した。相対的に低伸率のアラミドの上撚数がナイロン66の上撚数よりも少なくなると、低速走行時、ナイロンの特性を実現することができなくなる。アラミドの下撚数が200TPM以下になると、タイヤの疲労性能が低下し、また、アラミドの下撚数が500TPM以上になると、フィラメント間の摩擦によって剛性が低下してタイヤの耐久性能が減少する。
【0014】
また、アラミドハイブリッドコードは、伸率0.5〜1%の弾性率に対する伸率3〜5%の弾性率の比率が1以上10以下の範囲でなければならない。弾性率の比率が1未満であれば、高速走行時のナイロン特性によるタイヤの形態安定性が不良となるため、タイヤの走行性能が低下し、10を超えると、アラミドコードの高弾性率特性によりタイヤの成形が困難となり、走行時の乗り心地が低下する短所がある[表1、グラフ1]。
本発明による空気入りラジアルタイヤは、従来のラジアルタイヤに使われたナイロン66補強ベルトの代わりに、アラミドコード−ナイロン66のハイブリッドコード補強ベルトを適用したもので、補強ベルトの変更以外の設計要素の変更はない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による高性能のラジアルタイヤは、アラミドコードとナイロン66を組み合わせたハイブリッドコードを補強ベルトに適用することにより、乗り心地の変化がなく、さらに向上させた高速耐久性と操縦安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】アラミドコード単独、アラミドコードとナイロン66とのハイブリッドコード、及びナイロン66単独のモジュラスとストレイン(strain)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、実施例により限定されるものではない。
【0018】
【表1】

【0019】
物性評価
1)破断強度と破断伸度はASTM D885により測定する。
2)耐熱接着力はH−Test ASTM D4776により測定し、100℃で24時間老化してから接着力を測定した。
【0020】
前記表1の結果をコードの伸率による弾性率として示すように、本発明による実施例1及び2の伸率0.5%での弾性率が比較例1の弾性率よりも低く、伸率が0.5%から5.0%に増加するほどハイブリッドコードの弾性率が伸率に比例して増加することが分かる。また、上撚数の高い実施例2のハイブリッドコードが、低伸率におけるナイロン66の低弾性率特性を有することが分かる。
【0021】
撚数差を有するアラミド繊維が混合されているナイロン66ハイブリッドコードを下記表2に応じて補強ベルトに適用したタイヤを製造した。
【0022】
【表2】

【0023】
このように製造されたタイヤの高速走行耐久性及び操縦安定性の評価と高速走行後の走行安定性の評価を次のように行い、その結果を次の表3に示す。
1)高速走行耐久性の評価
高速耐久性試験条件規格ECE−R30に準じて評価した。
【0024】
2)操縦安定性の評価
タイヤを取り付けた車両を、操縦安定性の変化を感知できる専門的な訓練を積んだテストドライバ(Test Draiver)が調整しながら操縦安定性の程度を把握する。初期の操縦安定性とは、タイヤを取り付けた初期の操縦安定性であり、高速走行後の操縦安定性の評価は、評価用タイヤを230km/hrで30分間走行してタイヤが予熱された状態での操縦安定性である。
【0025】
【表3】

項目別インデックス:100以下(不良)<100<100以上(良好)
【0026】
前記表3の結果から分かるように、撚数差を有するアラミド繊維が混合されているナイロン66ハイブリッドコードにより補強した補強ベルトコードをタイヤに適用した応用例1及び応用例2は、高速走行耐久性と低速及び高速走行での操縦安定性が両方とも優れているが、既存のナイロン66コードを補強ベルトコードに適用したタイヤは高速走行耐久性と低速及び高速走行での操縦安定性が相対的に低下した。
【0027】
以上、詳細に説明した通り、本発明により、撚数差を有するアラミドが混合されているナイロン66コードにより補強した補強ベルトは、乗り心地が低下することなく、高速耐久性と操縦安定性に優れている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸率0.5〜1%の弾性率に対する伸率3〜5%の弾性率の比率が1以上10以下の範囲であることを特徴とするアラミドコード−ナイロン66のハイブリッドコード。
【請求項2】
初期の弾性率の大きいアラミドの下撚数が200〜500TPMであり、初期の弾性率の小さいナイロン66の下撚数が50〜200TPMであることを特徴とする請求項1に記載のアラミドコード−ナイロン66のハイブリッドコード。
【請求項3】
ナイロン66に対するアラミド繊維の下撚数の比率が1よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のアラミドコード−ナイロン66のハイブリッドコード。
【請求項4】
請求項1に記載のアラミドコード−ナイロン66のハイブリッドコードを補強ベルトに適用することを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−23806(P2013−23806A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162657(P2012−162657)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【出願人】(502365519)ハンコック タイヤ カンパニー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】