説明

アラミド紙ブレンド

【課題】複合構造体に適したアラミド紙を提供すること。
【解決手段】50〜95重量パーセントのp−アラミドパルプと、3000cN/テックス未満の初期モジュラスを有する5〜50重量パーセントのフロックとを含んでなるアラミド紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合構造体に適したアラミド紙に関する。
【背景技術】
【0002】
アラミド紙の歴史は、1961月9月12日にモーガン(Morgan)に発行された(特許文献1)からたどることができ、この特許は、芳香族ポリアミド(アラミド)フィブリッドからの紙、および該フィブリッドと異なる繊維との組み合わせからの紙を含む合成ポリマーからのフィブリッドに基づいた紙を開示する。
【0003】
次の時代には、アラミドフィブリッド、アラミドフロック、アラミドパルプ、他の原料、およびこれらの組み合わせに基づいた多くの種類の紙およびプレスボードが記載された。
【0004】
いずれもトカルスキー(Tokarsky)の(特許文献2)および(特許文献3)は、p−アラミドフロックと、p−アラミドパルプまたはそれらのブレンドと、場合により、アラミドフィブリッドを含む5〜15%の高分子バインダーとを含んでなる高密度p−アラミド紙を開示する。
【0005】
(非特許文献1)は、40〜60重量%のm−アラミドフィブリッド、0〜30重量%のm−アラミドフロック、0〜60重量%のp−アラミドフロック、および0〜40重量%のp−アラミドパルプを有するアラミド繊維含有シートを開示する。
【0006】
へスラー(Hesler)らの(特許文献4)は、10〜40重量%のアラミドフィブリッドと、5〜30重量%の高温耐性フロックと、50〜60%のアラミドフィブリッドおよび40〜50%のアラミドフロックを含有する乾燥アラミド紙を粉砕して6.4〜12.7mmの選別スクリーンを通過できる粒径にすることにより調製された30〜85重量%のアラミド紙パルプとを含んでなる高多孔性紙を開示する。より具体的には、この発明の高多孔性紙は、アラミド紙パルプからの予め乾燥したアラミドフィブリッドおよび予め乾燥したアラミドフロックを含んでなり、また乾燥していないアラミドフィブリッドおよび乾燥していない高温耐性フロックも含んでなる。
【0007】
ノモト(Nomoto)の(特許文献5)は、p−アラミド繊維が混合物の20重量%以上から50重量%未満までを占める、p−アラミド繊維(フロック)およびm−アラミドパルプの混合物のベースシートから製造されたハニカムコアを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2,999,788号明細書
【特許文献2】米国特許第4,698,267号明細書
【特許文献3】米国特許第4,729,921号明細書
【特許文献4】米国特許第5,026,456号明細書
【特許文献5】米国特許第5,789,059号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】U.K.Research Disclosure V338(073)(匿名)1992年発行
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、50〜95重量パーセントのp−アラミドパルプと、3000cN/テックス未満の初期モジュラス(initial modulus)を有する5〜50重量パーセントのフロックと、場合により20重量パーセント未満のポリマーバインダー材料とを含んでなる複合構造体のためのアラミド紙に関する。本発明は、該紙の製造方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アラミド紙は、とりわけ、ハニカムコアのための基本材料、プリント回路基板および他の積層構造体のための強化材、油充填または樹脂充填システムにおける電気絶縁材、自動車産業における摩擦仕上げ用の基本材料として、そして高性能複合構造体のその他の用途における使用を見出す。最終複合構造体のより高い剛性、強度、より良好な寸法安定性、および耐摩耗性のために、このような紙は、好ましくは、p−アラミド繊維成分を含有すべきである。
【0012】
許容できる均一性のために、組成物中にp−アラミドフロックを有する紙は、非常に希薄なスラリー(0.01〜0.05重量%)から形成され、これは、ウェットレイド不織布(傾斜ワイヤなど)のための特別な機械の使用を必要とする。アラミド成分としてp−アラミドパルプのみを含有する紙は、中程度に希釈されたスラリー(0.2〜0.6重量%)から、フォードリニア(Fourdrinier)などの標準の水平式製紙機械で均一に形成することができる。しかしながら、パルプのみに基づくアラミド紙は、比較的低い坪量(例えば、70g/m2より低い)で安定して製造するのに十分な強度、そして最終構造体にうまく加工するのに十分な強度を有さない。いくらかの量のp−アラミドフロックをp−アラミドパルプに添加すると、フォードリニアマシンで形成されるシートの均一性が大幅に低下し、均一な形成のためには上述の特別な機械が必要とされる。また、例えば米国特許第6,592,963号明細書に記載されるように、紙組成物へのp−アラミドフロックの添加は紙を非常に堅くし、最終複合構造体へ加工する際の問題を回避するために特別な方法を必要とし得る。
【0013】
50〜95重量%のp−アラミドパルプと、3000cN/テックスよりも低い初期モジュラスを有する5〜50重量%のフロックと、場合により20重量%未満のポリマーバインダー材料との組み合わせにより、フォードリニア型の製紙機械において安定的かつ均一に最終紙に加工することができる紙組成物が提供されることが発見された。70g/m2未満の坪量を有するこのような紙は、m−アラミド紙と同等の剛性を示すことができる。
【0014】
更に、樹脂を含浸して複合紙構造体を形成した後には、m−アラミド組成物で達成されるよりもはるかに高い機械特性(強度および剛性)を達成することができる。このような複合紙構造体は、p−アラミドフロックを有する組成物で達成される特性に近づくことができる。実際には、市販のメタ−アラミド紙またはパラ−アラミドフロックに基づくパラ−アラミド紙では2倍未満であることと対照的に、本発明の複合紙構造体は4〜5倍の剛性の増大を示す。紙を含浸して複合紙構造体を形成するための樹脂には、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタンおよび同等に適切であるその他の樹脂が含まれる。
【0015】
最適化された組成では、本発明の紙は、パラ−またはメタ−アラミド紙に基づくハニカム用の市販の紙と比べて、温度の変化と共により低い寸法変化(すなわち、より低い熱膨張係数)を示すことができる。
【0016】
「フロック(floc)」は、2〜25ミリメートル、好ましくは3〜7ミリメートルの長さと、3〜20マイクロメートル、好ましくは5〜14マイクロメートルの直径とを有する繊維を意味する。フロックの長さが3ミリメートル未満であれば、紙の強度に対するその影響はあまり十分に高くはない。そしてその長さが25ミリメートルよりも長ければ、ウェットレイド法によって均一なウェブを形成することはほとんど不可能である。フロック直径が5マイクロメートル未満であれば、十分な均一性かつ再現性で製造することは困難であり得る。そして、その直径が20マイクロメートルよりも大きければ、軽〜中間の坪量の均一な紙を形成することは事実上不可能である。フロックは、一般に、連続紡績フィラメントを特定の長さの断片に切断することによって製造される。本発明において好ましいタイプのフロックはメタ−アラミドフロックであり、特に、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)からのフロックである。しかしながら、3000cN/テックス未満の初期モジュラスを有するその他の材料からのフロック、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリアクリロニトリルなどを使用することもできる。
【0017】
「パルプ」という用語は、本明細書中での使用では、軸(stalk)と、通常そこから延出するフィブリルとを有するアラミド材料の粒子を意味する。ここで、軸は略円柱状であり、直径が約10〜50マイクロメートルである。そしてフィブリルは、通常軸に付いている細かい毛のような部材であり、直径が1マイクロメートルのほんの何分の一か、あるいは数マイクロメートルであり、長さが約10〜100マイクロメートルである。
【0018】
「フィブリッド(fibrids)」という用語は、本明細書中での使用では、およそ100〜1000マイクロメートルの長さおよび幅、ならびにわずかおよそ0.1〜1マイクロメートルの厚さを有することが分かっている、小さい薄膜状の本質的に二次元の粒子の非常に微粉化されたポリマー生成物を意味する。フィブリッドは、ポリマー溶液を、溶液の溶媒と非混和性である液体の凝固浴中に流し込むことによって製造される。ポリマー溶液の流れは、ポリマーが凝固されるときに激しいせん断力および乱流を受ける。
【0019】
「アラミド」材料はポリアミドであり、ここで、アミド(−CO−NH−)結合のうちの少なくとも85%は2つの芳香環に直接結合する。アラミドと共に添加剤を使用することができ、最大10重量パーセントもの他の高分子材料をアラミドとブレンドできることが分かっている。アラミドのジアミンの代替となる10パーセントもの他のジアミン、あるいはアラミドの二酸クロリドの代替となる10パーセントもの他の二酸クロリドを有するコポリマーが使用され得る。
【0020】
本発明の紙におけるフロック、p−アラミドパルプおよびポリマーバインダー材料は、天然色でもよいし、染料または顔料で着色されてもよい。フロックおよびパルプは、バインダーが繊維表面に接触して保持する能力に悪影響を与えない限りは、その表面特性を変更する材料で処理することができる。
【0021】
本発明の紙のより高い強度を達成するために、組成物全体の20重量%までの量、しかし少なくとも約3%の量で、紙組成物中にポリマーバインダー材料を有するのが好ましいことが決定された。20重量%よりも多いポリマーバインダーが紙組成物中に存在すれば、最終複合構造体への更なる加工において樹脂による紙の含浸を複雑にし、強化のために必要なバインダーのレベルを超える可能性がある。
【0022】
アラミドフィブリッドは、非常に有効な種類のバインダーである。乾燥またはカレンダ加工操作の間に溶融可能であるか、または水溶性樹脂であるフロックなどの他のポリマーバインダー、もしくは異なる種類のポリマーバインダーの組み合わせを本発明のために使用することができる。溶融性フロックの場合には、本発明の紙組成物において2つの機能を果たし、紙の形成中に紙が破断するのを防止するためのフロックとして働くと共に、更なる加工の後にバインダーとして働く。ポリマーバインダー材料の種類と、紙組成物中のその含有量とに依存して、本発明の紙は、ガーレー透気度(Gurley air resistance)が数秒である非常に高い透過性を有するか、あるいは、ガーレー透気度が数千秒までである中間の透過性を有することができる。
【0023】
本発明のフィブリッドのための好ましい材料は、一般にはアラミド、具体的にはメタ−アラミド、そしてより具体的には、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)である。他の適切なフィブリッド材料は、ポリアクリロニトリル、ポリカプロアミド、ポリ(エチレンテレフタレート)などである。アラミド材料からのフィブリッドは、他の言及した材料と比較して、より良好な紙の熱安定性を提供するであろう。
【0024】
バインダーとして使用される樹脂は、製紙用分散体に直接添加される水溶性または分散性ポリマーの形態でもよいし、あるいは乾燥または次の更なる圧縮および/または加熱処理の間に加えられる熱によりバインダーとして活性化されるようにアラミド繊維と混ぜられた樹脂材料の熱可塑性バインダー繊維の形態でもよい。水溶性または分散性バインダーポリマーのための好ましい材料は、一般に、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ尿素、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステルおよびアルキド樹脂などの水溶性または水分散性の熱硬化性樹脂である。特に有用なのは、製紙産業では典型的な水溶性ポリアミド樹脂(例えば、カチオン性湿式強度(wet−strength)樹脂カイメン(KYMENE(登録商標)557LXなど)である。非硬化ポリマーの水溶液および分散体も同様に使用することができる(ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)など)。
【0025】
熱可塑性バインダーフロックは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリプロピレン、ポリエステルなどのポリマーから製造することができ、上記のフロックと同様の長さおよび直径を有するべきである。
【0026】
紙の導電率および他の特性を調整するための充填剤、顔料、酸化防止剤などの更なる原料を、粉末または繊維の形態で本発明の紙組成物に添加することができる。
【0027】
本発明の紙は、実験室用スクリーンからフォードリニアまたは傾斜ワイヤマシンなどの市販のサイズの製紙機械類まで、任意のスケールの装置において形成することができる。一般的な方法は、p−アラミドパルプ、フロック、およびバインダー材料(所望される場合)の水性液体中の分散体を製造し、分散体から液体を排出して湿った組成物をもたらし、そして湿った紙組成物を乾燥させることを伴う。分散体は、繊維を分散させ、次にバインダー材料を添加するか、あるいはバインダー材料を分散させ、次に繊維を添加するかのいずれかによって製造することができる。また分散体は、繊維の分散体と、バインダー材料の分散体とを合わせることによっても製造することができる。分散体中の繊維の濃度は、分散体の全重量を基準として0.01〜1.0重量パーセントの範囲であり得る。分散体中のバインダー材料の濃度は、固形分の全重量を基準として20重量パーセントまでであり得る。
【0028】
分散体の水性液体は通常水であるが、pH調整材料、成形助剤、界面活性剤、消泡剤などの他の様々な材料を含んでもよい。水性液体は通常、分散体をスクリーンまたは他の有孔支持体上に導き、分散された固体を保持し、次に液体を通過させることによって、分散体から排出され、湿った紙組成物がもたらされる。湿った組成物が支持体上に形成されたら、これは通常、真空または他の圧力の力で更に脱水され、そして残りの液体を蒸発させることにより更に乾燥される。
【0029】
より高い密度および強度が所望される場合に実行され得る次の工程は、紙の1つもしくはそれ以上の層を、金属−金属ロール、金属−複合体ロール、または複合体−複合体ロールのニップ内でカレンダ加工することである。あるいは、紙の1つもしくはそれ以上の層は、特定の組成物および最終用途に最適な圧力、温度および時間において、プラテンプレスで圧縮され得る。また、強化またはいくつかの他の特性の変更が所望される場合に高密度化を行なうことなく、あるいは高密度化に加えて、カレンダ加工または圧縮の前または後もしくはその代わりに、独立した工程として加熱処理を実行することができる。
【0030】
本発明の紙は、コア構造体またはハニカムなどの構造材料における構成要素として有用である。例えば、アラミド紙の1つもしくはそれ以上の層は、ハニカム構造のセルを形成するための主要な(primarly)材料として使用することができる。あるいは、アラミド紙の1つもしくはそれ以上の層は、ハニカムセルまたは他のコア材料を被覆または仕上げするためのシートにおいて使用され得る。好ましくは、これらの積層体は、フェノール樹脂、エポキシ、ポリイミドまたは他の樹脂などの樹脂で含浸される。しかしながら、場合によっては、紙は、樹脂の含浸がなくても有用であり得る。構造上の用途に加えて、本発明の紙は、プリント配線板などの熱寸法安定性が所望される場合、あるいはモーターで使用するための電気絶縁材料、変圧器および他の電力装置などの誘電特性が有用である場合にも有用である。これらの用途では、本発明の紙は、所望に応じて、樹脂を含浸して、あるいは含浸せずに使用することができる。
【0031】
試験方法
2.54cm幅の試験片、および18cmのゲージ長を用い、ASTM D828に従って、本発明の紙および複合体の引張り強さ、モジュラス、引張り剛性、および引張りインデックス(Tensile Index)をインストロン型試験機で決定した。
【0032】
紙および複合体の厚さおよび坪量(Basis Weight、Grammage)は、相応じてASTM D645およびASTM D646に従って決定した。
【0033】
紙の密度(見かけ密度)は、ASTM D202に従って決定した。
【0034】
紙の比剛性は、紙の引張り剛性を紙の坪量で割ることによって計算される数学的な量として決定した。
【0035】
複合体の比剛性は、複合体の引張り剛性を原紙の坪量で割ることによって計算される数学的な量として決定した。
【0036】
複合体の比引張りインデックス(Specific Tensile Index)は、複合体の引張り強さを原紙の坪量で割ることによって計算される数学的な量として決定した。
【0037】
紙のガーレー透気度は、TAPPI T460に従って、1.22kPaの圧力差を用い、約6.4平方センチメートルの紙の円形領域に対して100ミリリットルのシリンダの移動あたりの透気度(秒)を測定することによって決定した。
【0038】
平面の熱膨張係数は、20℃〜100℃の温度、10℃/分の温度上昇で、2940TMA機器において、長さ約8.7mmおよび幅2mmの寸法を有する材料の乾燥片で測定した。負荷は、紙および樹脂紙のそれぞれに対して、2グラムおよび36グラムであった。紙ウェブの機械方向および横断方向の示度の平均を最終の数として報告した。
【実施例】
【0039】
実施例1
乾燥履歴のないメタ−アラミドフィブリッドの水性分散体を、0.5%のコンシステンシー(水中に0.5重量パーセントの固体材料)で製造した。パルパー内で、パラ−アラミドパルプを0.2%のコンシステンシーで5分間分散させた。その後、フィブリッド分散体を有するタンク内にパルプ分散体を添加した。10分連続して攪拌した後、メタ−アラミドフロックを添加した。更に5分間攪拌した後、水を添加して、0.2%の最終コンシステンシーが得られた。固体材料は、
パラ−アラミドパルプ − 74%
メタ−アラミドフィブリッド − 17%
メタ−アラミドフロック − 9%
であった。
【0040】
パラ−アラミドパルプは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプタイプ1F361(デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(デュポン)(E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont))により商品名ケブラー(KEVLAR(登録商標))で販売)であった。メタ−アラミドフィブリッドは、米国特許第3,756,908号明細書に記載されるように、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)から製造した。メタ−アラミドフロックは、初期モジュラスが約800cN/テックスであり、0.22テックス(2.0デニール)の線密度および0.64cmの長さのポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)フロック(デュポンにより商品名ノーメックス(NOMEX(登録商標))で販売)であった。得られた分散体を供給チェスト(supply chest)にポンプで送り、そこからフォードリニアマシンへ供給して、47.5g/m2の坪量の紙を製造した。紙の他の特性は以下の表1に記載される。
【0041】
実施例2
実施例1と同様にスラリーを調製した。40.7g/m2の坪量の紙をフォードリニアで形成した。紙の他の特性は以下の表1に記載される。
【0042】
比較例3
実施例1と同様にスラリーを調製したが、組成物にフロックを添加しなかった。固体材料は、
パラ−アラミドパルプ − 80%
メタ−アラミドフィブリッド − 20%
であった。
【0043】
得られた分散体を、供給チェストにポンプで送り、そこからフォードリニアへ供給して、47.5g/m2および60g/m2の坪量の紙を製造した。しかしながら、頻繁な破断が発生し、連続シートを調製することは不可能であった。
【0044】
比較例4
実施例1で使用したパラ−アラミドパルプをパルパーにおいて0.2%のコンシステンシーで5分間分散させた。得られた分散体を供給チェストにポンプで送り、そこからフォードリニアへ供給して、50g/m2および60g/m2の坪量の紙を製造した。しかしながら、頻繁な破断が発生し、連続シートを調製することは不可能であった。
【0045】
実施例5
実施例1からの紙を、約300℃の温度および約1200N/cmの線圧で、ロール直径約20cmの金属−金属カレンダのニップに通過させた。最終紙の特性は表1に示される。
【0046】
実施例6
実施例2からの紙を、約300℃の温度および約1200N/cmの線圧で、ロール直径約20cmの金属−金属カレンダのニップに通過させた。
【0047】
最終紙の特性は表1に示される。
【0048】
実施例7
実施例1からの紙を、約304℃の温度および約3.45MPaの圧力で、プラテンプレス内で2分間圧縮した。
【0049】
最終紙の特性は表1に示される。
【0050】
実施例8
実施例1からの紙を、約327℃の温度および約10.8MPaの圧力で、プラテンプレス内で5分間圧縮した。
【0051】
最終紙の特性は表1に示される。
【0052】
実施例9
1.5g(乾燥重量に基づく)のパラ−アラミドパルプを、800mlの水と共にワーリングブレンダー(Waring Blender)に入れ、3分間攪拌した。その後、34.5gの水性の乾燥履歴のないメタ−アラミドフィブリッドスラリー(0.58%のコンシステンシーおよびショッパーリーグラー(Shopper−Riegler)の自由度(freeness)330ml)、ワーリングブレンダーから調製したパラ−アラミドパルプの水分散体、および0.3gのメタ−アラミドフロックを一緒に、実験室用ミキサー(英国製パルプ評価装置)に約1600gの水と共に入れて1分間攪拌した。
【0053】
スラリー中の固体材料は、
パラ−アラミドパルプ − 75%
メタ−アラミドフロック − 15%
メタ−アラミドフィブリッド − 10%
であった。
【0054】
パラ−アラミドパルプ、メタ−アラミドフロックおよびメタ−アラミドフィブリッドは、実施例1で記載したものと同じであった。分散体を8リットルの水と共に、約21×21cmのハンドシート型(handsheet mold)に注ぎ、ウェットレイドシートを形成した。シートを2枚の吸い取り紙の間に置き、ローリングピンにより手でクーチングし、そして190℃のハンドシート乾燥器で乾燥させた。
【0055】
乾燥後、シートを、約270℃の温度および約3000N/cmの線圧で、ロール直径約20cmの金属−金属カレンダのニップに通過させた。
【0056】
最終紙は、56.6g/m2の坪量を有した。
【0057】
紙の他の特性は以下の表1に記載される。
【0058】
実施例10〜13
実施例9に記載されるように紙を調製したが、3つの成分(パラ−アラミドパルプ、メタ−アラミドフロック、およびメタ−アラミドフィブリッド)の割合を変化させた。
【0059】
紙組成物の成分の割合およびその特性は、表1に示される。
【0060】
実施例14
1.2g(乾燥重量に基づく)のパラ−アラミドパルプを、800mlの水と共にワーリングブレンダーに入れ、3分間攪拌した。その後、調製したパラ−アラミドパルプの水分散体、0.3gのポリ(ビニルアルコール)フロック、および0.5gのメタ−アラミドフロックを一緒に、実験室用ミキサー(英国製パルプ評価装置)に約1600gの水と共に入れて1分間攪拌した。
【0061】
スラリー中の固体材料は、
パラ−アラミドパルプ − 60%
メタ−アラミドフロック − 25%
ポリ(ビニルアルコール)フロック − 15%
であった。
【0062】
パラ−アラミドパルプおよびメタ−アラミドフロックは、実施例1で記載したものと同じであった。ポリ(ビニルアルコール)フロックは、線密度0.11テックスおよびカット長3mmのタイプVPB105−1(クラレ社(KURARAY Co.)により商品名クラロン(Kuralon)VPで販売)であった。R.W.モンクリーフ(Moncrieff)、人造繊維(Man−Made Fibres)、ウィリー国際事業部(Wiley International Division)、1970、488ページにおいて見出されるように、その初期モジュラスは、530cN/テックスよりも低かった。
【0063】
分散体を8リットルの水と共に、約21×21cmのハンドシート型に注ぎ、ウェットレイドシートを形成した。シートを2枚の吸い取り紙の間に置き、ローリングピンにより手でクーチングし、そして190℃のハンドシート乾燥器で乾燥させた。乾燥後、約304℃の温度および約10.8MPaの圧力で、シートをプラテンプレス内で5分間圧縮した。
【0064】
最終紙の特性は表1に示される。
【0065】
実施例15〜16
実施例14と同様に紙を調製したが、3つの成分(パラ−アラミドパルプ、メタ−アラミドフロックおよびポリ(ビニルアルコール)フロック)の割合を変化させた。
【0066】
紙組成物の成分の割合およびその特性は、表1に示される。
【0067】
実施例17
組成物の全重量を基準として5重量パーセントの量で水溶性樹脂を紙組成物に添加したことを除いて、実施例14と同様に紙を調製した。水溶性樹脂は、ハーキュリーズ(Hercules)により販売されるカイメン(KYMENE)557LXであった。紙組成物および特性は表1に示される。
【0068】
実施例18
組成物の全重量を基準として5重量パーセントの量で水溶性樹脂を紙組成物に添加したことを除いて、実施例15と同様に紙を調製した。樹脂は、実施例23の場合と同じであった。紙組成物および特性は表1に示される。
【0069】
実施例19
実施例5からの紙を溶媒ベースのフェノール樹脂(デュレズ・コーポレーション(Durez Corporation)からのプリオフェン(PLYOPHEN)23900)で含浸させた後、吸い取り紙で表面から過剰の樹脂を除去し、次のように:
室温から82℃まで加熱してこの温度を15分維持し、温度を121℃に上昇させてこの温度を更に15分間維持し、そして温度を182℃に上昇させこの温度を60分間維持して温度を上昇させてオーブン内で硬化させることによって、複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0070】
実施例20
実施例6からの紙を使用したことを除いて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0071】
比較例21
ケブラー(KEVLAR(登録商標))1.8N636紙としてデュポンにより販売される、ケブラー(KEVLAR(登録商標))フロックおよびノーメックス(NOMEX(登録商標))フィブリッドに基づくパラ−アラミド紙を使用したことを除いて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0072】
比較例22
ケブラー(KEVLAR(登録商標))2.8N636紙としてデュポンにより販売される、ケブラー(KEVLAR(登録商標))フロックおよびノーメックス(NOMEX(登録商標))フィブリッドに基づくパラ−アラミド紙を使用した点を変えて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0073】
比較例23
ノーメックス(NOMEX(登録商標))2T412紙としてデュポンにより販売される、ノーメックス(NOMEX(登録商標))フロックおよびノーメックス(NOMEX(登録商標))フィブリッドに基づくメタ−アラミド紙を使用した点を変えて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0074】
比較例24
ノーメックス(NOMEX(登録商標))3T412紙としてデュポンにより販売される、ノーメックス(NOMEX(登録商標))フロックおよびノーメックス(NOMEX(登録商標))フィブリッドに基づくメタ−アラミド紙を使用したことを除いて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
表2から分かるように、本発明の紙の剛性は、p−アラミドフロックに基づく市販の紙(すなわち、比較例21および22)の剛性よりも低く、また更にm−アラミドに基づく紙(すなわち、比較例23および24)よりも低い。
【0078】
しかしながら、本発明の紙に基づく複合体は非常に堅く、これは、大部分の複合体用途のために望ましい。その剛性はp−アラミド紙に基づく複合体の剛性に非常に近く、m−アラミド紙に基づく複合体よりもはるかに堅い。これは、複合体とそれの基礎となるそれぞれの紙との比剛性の比率によって、更に実証される。比率は、比較紙に対して本発明の紙でははるかに高く、「より柔らかい」(すなわち、あまり堅くない)紙によって、最終複合構造体へのより容易な転化が提供されることが実証される。
【0079】
更に、本発明の紙および対応する複合体は、非常に良好な寸法安定性を有する。指示された温度変化では、本発明の紙はそれ自体、p−アラミドフロックに基づく市販の紙よりも良好な寸法安定性を有し、そして市販のm−アラミド紙よりもはるかに良好である。本発明の紙に基づく最終複合構造体の寸法安定性は、p−アラミドフロックを有する紙に基づく複合体に非常に近く、アラミド紙に基づく複合体の寸法安定性と比較してはるかに良好である。
【0080】
以下、本発明の態様を示す。
1.50〜95重量パーセントのp−アラミドパルプと、3000cN/テックス未満の初期モジュラスを有する5〜50重量パーセントのフロックとを含んでなるアラミド紙。
2.前記p−アラミドパルプが、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)パルプである上記1に記載のアラミド紙。
3.前記フロックが、メタ−アラミドである上記1に記載のアラミド紙。
4.前記メタ−アラミドフロックが、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)フロックである上記3に記載のアラミド紙。
5.全組成物の重量を基準として20重量パーセント未満の量のポリマーバインダー材料を含んでなる上記1に記載のアラミド紙。
6.前記ポリマーバインダー材料の少なくとも一部が、フィブリッドの形態である上記5に記載のアラミド紙。
7.前記フィブリッドが、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)から製造される上記6に記載のアラミド紙。
8.前記ポリマーバインダーが、乾燥およびカレンダ加工よりなる群のうちの1つによって溶融可能である上記5に記載のアラミド紙。
9.前記ポリマーバインダー材料の少なくとも一部が、紙の乾燥またはカレンダ加工中に溶融可能な樹脂バインダー材料である上記5に記載のアラミド紙。
10.前記樹脂バインダー材料の少なくとも一部が、熱可塑性フロックである上記9に記載のアラミド紙。
11.前記樹脂バインダー材料の少なくとも一部が、水溶性樹脂である上記9に記載のアラミド紙。
12.前記紙の坪量が、70g/m2未満である上記1に記載のアラミド紙。
13.20〜100℃の温度間隔における平面の紙の熱膨張係数の絶対値が、4ppm/C未満である上記1または5に記載のアラミド紙。
14.70〜95重量パーセントのp−アラミドパルプを含んでなる上記1または5に記載のアラミド紙。
15.上記1または5に記載の紙の1つもしくはそれ以上の層を含んでなるプリント配線板。
16.上記1または5に記載の紙の1つもしくはそれ以上の層を含んでなる電気絶縁材料。
17.樹脂が含浸された上記1または5に記載のアラミド紙を含んでなる複合構造体。
18.前記樹脂がフェノールである上記17に記載の複合構造体。
19.上記17に記載の複合構造体を含んでなるプリント配線板または電気絶縁材料。
20.上記1または5に記載のアラミド紙を含んでなる構造材料。
21.前記アラミド紙が、ハニカム構造のセルに組み込まれる上記20に記載の構造材料。
22.前記アラミド紙が、サンドイッチパネルの仕上げ面に組み込まれる上記20に記載の構造材料。
23.p−アラミドパルプを水中に分散させ、
パルプ/水スラリーを、3000cN/テックス未満の初期モジュラスを有するフロックとブレンドし、ここで前記パルプおよび前記フロックの固形分中の重量パーセントがそれぞれ50〜95および5〜50であり、
最終スラリーから水を排出して湿った紙組成物をもたらし、
前記湿った紙組成物を乾燥させること
を含んでなるアラミド紙の製造方法。
24.乾燥の前に、前記湿った紙組成物を湿式加圧することを含んでなる上記23に記載の方法。
25.乾燥の後に、前記紙を加熱処理することを含んでなる上記24に記載の方法。
26.前記パルプ/水スラリーを前記フロックとブレンドした後に、ポリマーバインダー材料を全固形分の20重量パーセント未満の量で添加することを含んでなる上記23に記載の方法。
27.乾燥の後に、前記紙を加熱処理することを含んでなる上記26に記載の方法。
28.前記乾燥した紙を高密度化することを含んでなる上記23に記載の方法。
29.前記高密度化が、カレンダのニップ内における圧力の印加およびプレス内での圧力の印加よりなる群のうちの1つを選択することによって実行される上記28に記載の方法。
30.前記高密度化の後に、前記紙を加熱処理することを含んでなる上記28に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜95重量パーセントのp−アラミドパルプと、3000cN/テックス未満の初期モジュラスを有する5〜50重量パーセントのm−アラミドフロックと、全組成物の重量を基準として20重量パーセント未満の量のポリマーバインダー材料と、を含み、
前記ポリマーバインダー材料の少なくとも一部が、紙の乾燥またはカレンダ加工中に溶融可能な樹脂バインダー材料であり、
前記樹脂バインダー材料の少なくとも一部が、熱可塑性フロックであるアラミド紙。
【請求項2】
請求項1に記載の紙の1つもしくはそれ以上の層を含んでなるプリント配線板。
【請求項3】
請求項1に記載の紙の1つもしくはそれ以上の層を含んでなる電気絶縁材料。
【請求項4】
樹脂が含浸された請求項1に記載のアラミド紙を含んでなる複合構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の複合構造体を含んでなるプリント配線板または電気絶縁材料。
【請求項6】
請求項1に記載のアラミド紙を含んでなる構造材料。
【請求項7】
p−アラミドパルプを水中に分散させ、
パルプ/水スラリーを、3000cN/テックス未満の初期モジュラスを有するm−アラミドフロックとブレンドし、ここで前記パルプおよび前記フロックの固形分中の重量パーセントがそれぞれ50〜95および5〜50であり、
前記パルプ/水スラリーを前記フロックとブレンドした後に、ポリマーバインダー材料を全固形分の20重量パーセント未満の量で添加し、ここで、前記ポリマーバインダー材料の少なくとも一部が、紙の乾燥またはカレンダ加工中に溶融可能な樹脂バインダー材料であり、且つ前記樹脂バインダー材料の少なくとも一部が、熱可塑性フロックであり、
最終スラリーから水を排出して湿った紙組成物をもたらし、
前記湿った紙組成物を乾燥させること
を含んでなるアラミド紙の製造方法。

【公開番号】特開2011−219913(P2011−219913A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161010(P2011−161010)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2007−508603(P2007−508603)の分割
【原出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】