説明

アラミド繊維基材の染色方法

【課題】高濃度の酸水溶液等を用いることなく、均一で染色堅牢度に優れた染色方法を提供すること。
【解決手段】ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を合計で5g/L以上含有する界面活性剤水溶液中に、アラミド繊維基材を浸漬する第1浸漬工程と、
無機酸、又は無機酸の金属塩若しくはアンモニウム塩を含有するpH2〜3の無機酸水溶液にカチオン染料を添加した染料液中に、前記第1浸漬工程後のアラミド繊維基材を浸漬する第2浸漬工程と、を含んでおり、前記第2浸漬工程中、又は前記第2浸漬工程後のアラミド繊維基材を加熱する、アラミド繊維基材の染色方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラミド繊維基材の染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アラミド繊維は優れた耐熱性、強度、難燃性を有することから、航空機の補強材、建材、産業資材、軍事用品、スポーツ用品、レーシング用品、消防等の安全服、軍手等、幅広い分野で使用されている。ところが、アラミド繊維を染色する場合、界面活性剤を添加した染料液にアラミド繊維を浸漬する等の方法では高い染色性及び染色堅牢度を得ること、並びに染色の色ムラの発生を十分抑制することが困難であった。
【0003】
そのため、このようなアラミド繊維を染色する方法としては、染料による染色の前にアラミド繊維を硫酸又はクロロ硫酸の水溶液に接触させ、アラミド繊維の一部をスルホン化する方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2662201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される方法では、60〜90重量%程度の高濃度の酸水溶液が必要であり、染色工程の作業性に問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、60〜90重量%といった高濃度の酸水溶液等を用いることなく、染色後の色ムラが十分に抑制され、染色堅牢度に優れたアラミド繊維基材を得ることのできる、アラミド繊維基材の染色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を合計で5g/L以上含有する界面活性剤水溶液中に、アラミド繊維基材を浸漬する第1浸漬工程と、無機酸、又は無機酸の金属塩若しくはアンモニウム塩を含有するpH2〜3の無機酸水溶液にカチオン染料を添加した染料液中に、第1浸漬工程後のアラミド繊維基材を浸漬する第2浸漬工程と、を含んでおり、前記第2浸漬工程中、又は前記第2浸漬工程後のアラミド繊維基材を加熱する、アラミド繊維基材の染色方法を提供する。なお、無機酸は複数種用いてもよく、無機酸と無機酸の金属塩又はアンモニウム塩とを併用してもよい。後者の場合において、塩を形成した無機酸と、塩を形成していない無機酸の種類は同一でも異なっていてもよい。
【0008】
上記染色方法によって得られる染色されたアラミド繊維基材は、色ムラが少なく、染色堅牢度、染色性に優れる。本発明は、アラミド繊維基材を界面活性剤の溶液に浸漬した後に、染料液に浸漬すること、すなわち界面活性剤を含む染料液にアラミド繊維基材を浸漬するのではなく、浸漬を2つに分けたこと、また、界面活性剤としても、アニオン界面活性剤のみを用いるのではなく、ノニオン界面活性剤も併用すること、をその特徴の一部としている。このような特徴を含む上記本発明の構成により、上述したような効果が奏される。なお、本発明の方法では、アニオン界面活性剤とカチオン染料の双方を含有する溶液にアラミド繊維基材を浸漬する場合に比べて、さらにノニオン界面活性剤を含有するため、溶液中の界面活性剤の凝固が抑制され、凝固前に界面活性剤を有効かつ均一にアラミド繊維基材に吸着させることが可能となっていることが想定される。
【0009】
本発明の染色方法においては、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を合計で5g/L以上含有するが、このように、染色に先立って、高い濃度の界面活性剤水溶液中にアラミド繊維基材を浸漬することで、アラミド繊維基材の染色性を向上させることが可能になる。なお、本発明では、第2浸漬工程中のアラミド繊維基材を加熱することが好ましく、特には、第2浸漬工程において、70℃未満で第1浸漬工程後のアラミド繊維基材を前記染料液中に浸漬した後、浸漬させたまま、当該アラミド繊維基材を70℃以上に加熱することが好ましい。
【0010】
アラミド繊維基材はメタ系アラミド繊維基材であることが好ましい。アラミド繊維基材がメタ系アラミド繊維基材の場合、染色後の色ムラがより顕著に低減され、染色堅牢度がより優れたアラミド繊維基材を得ることができる。
【0011】
界面活性剤水溶液における、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤の質量比(ノニオン界面活性剤/アニオン界面活性剤)が、30/1〜3/1であることが好ましい。このような染色方法により得られる染色されたアラミド繊維基材は色ムラ、汚れがさらに低減され、染色性及び染色堅牢度がさらに向上する。
【0012】
これは、ノニオン界面活性剤の水への溶解性が低い傾向があることと、アニオン界面活性剤が多い場合にカチオン染料がアラミド繊維の繊維束の表面のみに付着し、アラミド繊維の繊維束の内部にまで侵入して内部の繊維にまで付着することができなくなる傾向があることによるものであると考えられる。
【0013】
上記ノニオン界面活性剤はポリオキシアルキレンのアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンのフェニルエーテルであることが好ましい。
【0014】
上記無機酸として硝酸及び硫酸を併用することが好ましい。
【0015】
本発明によれば、高濃度の酸水溶液等を用いることなく、色ムラが抑制され、染色堅牢度に優れたアラミド繊維基材の染色方法を提供することができる。なお、本発明の染色方法においては、染料液のpHは2〜3であればよいので、従来より低濃度の60g/L未満の酸溶液でよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の染色方法は、第1浸漬工程と、第2浸漬工程とを含むものであり、第2浸漬工程中、又は第2浸漬工程後に加熱を行う。以下、本発明の染色方法の実施形態を工程ごとに説明する。
【0017】
第1浸漬工程では、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を合計で5g/L以上含有する界面活性剤水溶液中に、アラミド繊維基材を浸漬する。ここで、アラミド繊維基材とは、アラミド繊維からなる基材を意味する。アラミド繊維基材は、メタ系アラミド繊維基材とパラ系アラミド繊維基材に大別されるが、メタ系アラミド繊維基材であることが好ましい。アラミド繊維基材がメタ系アラミド繊維基材であることにより、染色されたアラミド繊維基材の色ムラがより抑制され、染色性、染色堅牢度がより向上する傾向がある。
【0018】
界面活性剤水溶液に含有されるノニオン界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール型と、多価アルコール型に大別でき、前者の例として、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物などを挙げることができる。後者の例として、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアル切るエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどを挙げることができる。ノニオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンのフェニルエーテルであることが好ましい。
【0019】
界面活性剤水溶液に含有されるアニオン界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩であるセッケン、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、イケポンT(商品名)、エアロゾルOT(商品名)、高級アルコールリン酸エステル塩などを挙げることができる。アニオン界面活性剤は上記ノニオン界面活性剤と相溶性のよいものであることが好ましい。相溶性は、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を水中で混合したときに、濁りや沈殿を生じるか否かで判定でき、このような現象が生じない場合、相溶性が良好であると判断できる。
【0020】
界面活性剤水溶液中のノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤の合計の濃度は5g/L以上である。界面活性剤水溶液中の界面活性剤の濃度が5g/L以上であるとき、優れた染色性を有するアラミド繊維基材を得ることができる。しかし、界面活性剤水溶液中の界面活性剤の濃度が過度に大きい場合、染色に問題は生じないが、染色後の洗浄作業の労力と界面活性剤の使用量が増えるため、染色のコストが増加する傾向がある。したがって、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤の合計の濃度の上限は、50g/Lであることが好ましい。合計濃度のより好ましい範囲は、10〜50g/Lである。
【0021】
界面活性剤水溶液における、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤の質量比については、ノニオン界面活性剤/アニオン界面活性剤=30/1〜3/1が好ましい。ノニオン界面活性剤/アニオン界面活性剤は、30/1〜5/1がより好ましく、20/1〜8/1がさらによく、15/1〜10/1が特に好ましい。
【0022】
界面活性剤水溶液が、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との質量比30/1以下のノニオン界面活性剤を含むことにより、アラミド繊維基材の染色における色ムラ、汚れの発生をさらに抑制させることができる傾向がある。また、界面活性剤水溶液が、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との質量比3/1以上のノニオン界面活性剤を含むことにより、アラミド繊維基材の染色性及び染色堅牢度をより向上させることができる傾向がある。
【0023】
アラミド繊維基材を界面活性剤水溶液中に浸漬する際の界面活性剤水溶液の温度は20〜70℃であることが好ましい。また、アラミド繊維基材の界面活性剤水溶液中への浸漬時間は1分間以上であることが好ましく、2分〜5分であることがより好ましい。浸漬温度が20℃以上であり、浸漬時間が1分以上であることにより、より色ムラが抑制され、染色堅牢度に優れた、染色されたアラミド繊維基材を得ることができる傾向がある。
【0024】
第2浸漬工程では、無機酸、又は無機酸の金属塩若しくはアンモニウム塩(以下「無機酸類」と呼ぶことがある)を含有するpH2〜3の無機酸水溶液にカチオン染料を添加した染料液中に、第1浸漬工程後のアラミド繊維基材を浸漬する。ここで、カチオン染料は、塩基性染料としても知られ、典型的には、アミノ基や置換アミノ基等の塩基性基を含んでおり、色素部分が陽イオンを生じる。カチオン染料としては、絶縁型カチオン染料、共役型カチオン染料等が挙げられる。上記カチオン染料は、アラミド繊維基材を黒、紺、朱、青色等の濃い色に染色できる染料であることが好ましい。
【0025】
染料液は、無機酸類の水溶液に上述したカチオン染料を添加して得ることができる。染料液は、無機酸類を少なくとも1種含んでいればよく、2種以上の併用であってもよい。無機酸としては、塩酸、硫酸及び硝酸等が挙げられる。また、無機酸の金属塩としては、無機酸のナトリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。無機酸又はその金属塩若しくはアンモニウム塩は、硝酸、硝酸の金属塩及び硝酸のアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種と、硫酸、硫酸の金属塩及び硫酸のアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種とを含む化合物である(すなわち、無機酸として硝酸及び硫酸を併用する)ことが好ましい。無機酸水溶液中の無機酸類の濃度は、それぞれ2〜50g/Lであることが好ましく、3〜30g/Lであることがより好ましい。このような無機酸水溶液は濃度が低いため、より安全な染色作業が可能となる。
【0026】
無機酸水溶液のpHは2〜3である。無機酸水溶液のpHは2〜3となるように、必要に応じて蟻酸、酢酸等で調整することができる。無機酸水溶液へのカチオン染料の添加量は、カチオン染料の種類により適宜選定すればよいが、無機酸水溶液100質量部に対し、0.01〜3.0質量部であることが好ましく、0.1〜2.0質量部であることがより好ましい。
【0027】
第1浸漬工程後のアラミド繊維基材を、染料液中に浸漬する際の染料液の温度は20〜65℃であることが好ましい。また、アラミド繊維基材の染料液中への浸漬時間は3分以上(さらには3分以上60分以下)であることが好ましい。また、アラミド繊維基材は、第1浸漬工程の界面活性剤水溶液中に浸漬された後、絞液して別の浴槽にある染料液に浸漬されてもよく、第1浸漬工程の界面活性剤水溶液中に浸漬された後、この界面活性剤水溶液と同じ浴槽中に染料液を追加した混合液として染料液に浸漬されてもよい。
【0028】
アラミド繊維基材が、界面活性剤水溶液中に浸漬された後絞液して別の浴槽にある染料液に浸漬される場合、絞液した後、染料液に浸漬する前にアラミド繊維基材を乾燥して染料液に浸漬させてもよいが、乾燥せず直接染料液に浸漬させてもよい。
【0029】
第2浸漬工程中のアラミド繊維基材、又は第2浸漬工程後のアラミド繊維基材に対して加熱を行なう(加熱工程)。加熱温度は70℃以上が好ましく、70〜160℃であることがより好ましく、80〜150℃がさらに好ましい。また、加熱時間は30〜150分であることが好ましい。加熱処理は、例えば、アラミド繊維基材を浸漬した染料液を常圧または加圧下70℃以上で加熱するものであってもよく、或いは、アラミド繊維基材を染料液から取り出して常圧または加圧下70℃以上で加熱(好ましくは、蒸気により100〜160℃で加熱(スチーマ処理))するものであってもよい。アラミド繊維基材を加熱することにより、アラミド繊維基材の染色性や染色堅牢度等の特性が向上する。アラミド繊維基材の加熱を第2浸漬工程中に実施する場合においては、第2浸漬工程の染料液を最初からアラミド繊維基材の加熱に適した温度(例えば上記加熱温度)にしておき、染色と加熱を同時に実施してもよい。しかし、この方法よりも、アラミド繊維基材を染料液から取り出して常圧または加圧下で加熱(例えば上記加熱温度)する方が、染色性や染色堅牢度等の特性が向上する。これらの特性をさらに向上させる観点からは、第2浸漬工程の途中からアラミド繊維基材の加熱に適した温度(例えば上記加熱温度)に変化させることが好ましい。この場合、第2浸漬工程において、70℃未満で第1浸漬工程後のアラミド繊維基材を上記染料液中に浸漬した後(温度については、好ましくは20℃以上70℃未満、さらには20℃以上65℃以下。時間については、好ましくは3分以上、さらには3分以上60分以下)、浸漬させたまま、当該アラミド繊維基材を70℃以上に加熱する(温度については、好ましくは70℃以上160℃以下、さらには80℃以上150℃以下。時間については、好ましくは30〜150分。)ことが特に好ましい。
【0030】
上記加熱工程を経て、乾燥して、染色されたアラミド繊維基材を得ることができる。なお、必要により、乾燥の前又は後に、染色されたアラミド繊維基材を、ナフタリンスルホン酸ソーダホルマリン45重量%水系液などでソーピング処理してもよい。なお、アラミド繊維基材の基材としては糸条、原綿、布帛(織物、編物)、不織布等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンクロルフェニルエーテルを13g/L、アニオン界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ソーダを1g/L含む界面活性剤水溶液を得た。すなわち、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を14g/Lの濃度で含み、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との質量比が13/1である界面活性剤水溶液を得た。
【0032】
一方、硫酸アンモニウム、硝酸ソーダ及び酢酸を水中に溶解し、硫酸アンモニウム5g/L、硝酸ソーダ5g/L、酢酸約5g/Lの濃度を有する無機酸水溶液を得た。該無機酸水溶液100質量部に対しカチオン染料(Basic Dyes Blue 54)を1.0質量部添加し、pHが2.5の染料液を得た。
【0033】
アラミド繊維基材(質量320g/mの平織り組織の織物)を上記界面活性剤水溶液に30℃にて3分間浸漬し、界面活性剤水溶液を撹拌した。攪拌後のアラミド繊維基材を染料液に移し、染料液中で30℃で5分間浸漬し、染料液を攪拌した。その後、アラミド繊維基材が浸漬された染料液を140℃で90分間加熱した。
【0034】
得られたアラミド繊維基材を染料液から取り出し、2g/Lのナフタリンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物水溶液で洗浄し、80℃で20分間加熱することにより乾燥して、染色されたアラミド繊維基材を得た。
【0035】
(実施例2)
界面活性剤水溶液として、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンクロルフェニルエーテルを10g/L、アニオン界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ソーダを3g/L含む界面活性剤水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして染色されたアラミド繊維基材を得た。上記界面活性剤水溶液は、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を13g/Lの濃度で含み、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との質量比が10/3であった。
【0036】
(比較例1)
酢酸約0.1g/LのみからなるpHが4.0の無機酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして染色されたアラミド繊維基材を得た。
【0037】
(比較例2)
界面活性剤水溶液として、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンクロルフェニルエーテルを3g/L、アニオン界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ソーダを0.2g/L含む界面活性剤水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして染色されたアラミド繊維基材を得た。上記界面活性剤水溶液は、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を3.2g/Lの濃度で含み、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との質量比が3/0.2であった。
【0038】
(比較例3)
界面活性剤水溶液として、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンクロルフェニルエーテルを15g/L含み、アニオン界面活性剤を含まない界面活性剤水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして染色されたアラミド繊維基材を得た。上記界面活性剤水溶液は、ノニオン界面活性剤のみを15g/Lの濃度で含み、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との質量比が15/0であった。
【0039】
(比較例4)
実施例1で用いられた界面活性剤水溶液及び染料液と同じ界面活性剤水溶液及び染料液を混合した混合液に、アラミド繊維基材を浸漬し、混合液を30℃にて10分間攪拌した。その後、アラミド繊維基材が浸漬された混合液を140℃で90分間加熱した。次いで、実施例1と同様に洗浄、乾燥して染色されたアラミド繊維基材を得た。
【0040】
<色ムラ、汚れ>
実施例1〜2及び比較例1〜4で得られた染色されたアラミド繊維基材の色ムラ及び汚れの評価を目視にて以下の基準に従って行なった。評価結果を表1に示す。
A:色ムラ・汚れなし
B:色ムラ・汚れが若干あり
C:色ムラ・汚れが目立つ
【0041】
<汗堅牢度>
実施例1〜2及び比較例1〜4で得られた染色されたアラミド繊維基材の汗堅牢度の評価試験をJIS L0848(汗に対する染色堅牢度試験方法)に従って行い、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:5級〜4級
B:3−4級〜2−3級
C:2級〜1級
【0042】
<摩擦堅牢度>
実施例1〜2及び比較例1〜4で得られた染色されたアラミド繊維基材の摩擦堅牢度の評価試験をJIS L0849(摩擦に対する染色堅牢度試験方法)に従って乾燥試験を行い、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:5級〜4級
B:3−4級〜2−3級
C:2級〜1級
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を合計で5g/L以上含有する界面活性剤水溶液中に、アラミド繊維基材を浸漬する第1浸漬工程と、
無機酸、又は無機酸の金属塩若しくはアンモニウム塩を含有するpH2〜3の無機酸水溶液にカチオン染料を添加した染料液中に、前記第1浸漬工程後のアラミド繊維基材を浸漬する第2浸漬工程と、を含んでおり、
前記第2浸漬工程中、又は前記第2浸漬工程後のアラミド繊維基材を加熱する、アラミド繊維基材の染色方法。
【請求項2】
前記アラミド繊維基材はメタ系アラミド繊維基材である、請求項1に記載の染色方法。
【請求項3】
前記界面活性剤水溶液における、前記ノニオン界面活性剤と前記アニオン界面活性剤の質量比(ノニオン界面活性剤/アニオン界面活性剤)が、30/1〜3/1である、請求項1又は2に記載の染色方法。
【請求項4】
前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンのフェニルエーテルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項5】
前記無機酸として硝酸及び硫酸を併用する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の染色方法。

【公開番号】特開2013−36132(P2013−36132A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172070(P2011−172070)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【出願人】(511192311)株式会社文京精練 (1)
【Fターム(参考)】