説明

アラーム優先度の変更機能付き生体情報モニタ装置及びアラーム制御方法

【課題】 生体信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームが生成された後に同じ優先度で当該アラームが継続した場合に、アラーム状態が所定の条件を満たす場合に当該アラームの優先度を変更(例えば、中優先度から高優先度)可能なエスカレーション機能付き生体情報モニタ装置を提供する。
【解決手段】 検出された生体信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームを出力するアラーム制御部を備えた生体情報モニタ装置であって、前記アラーム制御部は、前記バイタルアラーム、若しくは前記テクニカルアラームとして、第1の優先度のアラームを出力すると共に、前記所第1の優先度のアラームの出力後に、所定の条件を満たした場合に、前記第1の優先度のアラームをより第1の優先度から第2の優先度のアラームに変更して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体から検出された検出信号を処理した生体情報を表示部に表示したり、スピーカよりアラーム音を発したり、LED等から構成されるアラームインジケータにアラームランプを点灯する生体情報モニタ装置であって、特に、前記検出信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは前記生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームのアラームの優先度を状況に応じて変更した視覚アラーム及び聴覚アラームを出力することが可能な生体情報モニタ装置及びアラーム制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の患者モニタ装置の1例としては以下のものが知られている。
典型的なパルスオキシメータは、二つの生体パラメータ(血中ヘモグロビンの現在の酸素飽和度(sat)及び脈拍数(rate))を計測する。アラームを目的として、患者に維持されるに望ましい通常の範囲を決定し、sat及びrateの両方の低スレッショルド及び高スレッショルドが設定される。例えば、新生児の場合、satは80から95パ−セントの間に維持され、rateは90から190拍/秒に維持されることが望ましい。
これら二つの計測パラメータから、四つのアラームタイプ(低sat、高sat、低rate、高rate)が生成される。典型的なパルスオキシメータでは、sat又はrateのいずれか一方が通常の範囲を逸脱すると直ちにアラームを開始し、sat及びrateの両方が通常の範囲内に戻ると直ちにアラームを終了する。アラームは、典型的に、聴覚的な音声及び/又は視覚的なインジケ−タにより知らされる。
【0003】
計測パラメータが通常の範囲を逸脱する際に起こる各々の事柄を事象又はイベントと呼ぶ。すなわち、典型的なオキシメータでは、各イベントがアラームに該当し、アラームの時間間隔がイベントの時間間隔に一致する。
典型的なオキシメータにより発生される多数のアラームは、一般に、臨床的に有効なイベントに対応させるように考えられていない。
臨床的有効性の定義は患者と環境によって変わるが、一般的には、対象のイベントの激しさ又はシベラティ(severity)と時間間隔に関係する。例えば、非常に浅い不飽和が、比較的長い時間間隔の間、耐える場合に有効と考えられるだけである。
【0004】
同様に、非常に短い期間の不飽和が、低satスレッショルドよりも非常に深く降下する場合に有効と考えられるだけである。また、ノイズや信号アーチファクト(artifact)に起因するパラメータの計測誤差が偽イベントを発生させる。臨床的に有効なイベントに対応するいずれのアラームも不要アラームと考えられる。
【0005】
飽和アラームの数を減少させようと試みる研究が発表されてきた。これら研究は、アラームスレッショルドを低くするか又はスレッショルドを通過した後に幾らかの固定時間間隔だけ待たせるかのいずれかである。
スレッショルドを低くすることについては、患者の飽和が、元々のスレッショルド(新しいスレッショルドよりも高い)よりも低く無期限に残り、アラームが生成されることがないので、問題である。
また、固定時間だけアラームの生成を遅らせることは、患者の飽和が、即座の医学的な介在を要する非常に低いレベルに急激に降下するか又はそのレベルに残るという潜在的に深刻な状況のため、問題がある。
【0006】
そこで、この例では、生体パラメータの計測値がスレッショルドを通過するとアラームが生成される医用診断装置のアラーム制御方法及び装置を提供している。
この方法は、計測値がスレッショルドを通過する時間量と、スレッショルドを通過した量との両方を決定(又は、定量)する。アラームは、この時間量と、スレッショルドを通過した量との組合せ(又は、コンビネーション(combination))に基づいて禁止される。好適に、この組合せは、積分、又は積分の幾つかの関数である。
【0007】
パルスオキシメータの飽和度アラームのため、好適実施例は、酸素飽和度が上方スレッショルドを超えた量又は下方スレッショルド以下に下降した量の積分を計算する。この積分が所定値を超えると、飽和アラームが生成される。
同様に、パルスオキシメータのrateアラームのため、好適実施例は、脈拍が上方又は下方スレッショルドを超えた量の積分を計算し、この積分が所定値を超えるとrateアラームが生成される。
【0008】
生体情報機器(ME機器)のアラーム規格としてはICE 60601-1-8がある。その概要を以下に説明する。
図4の表1は、ICE 60601-1-8の規格の内のアラーム状態の優先度(alarm-condition-priority)を示している。
アラーム状態は、高・中・低優先度(high,medium,low-priority)の1つ以上に割り当てるものとする。どの優先度にするかは表1に示すリスクマネジメントプロセス(ISO14971)に基づかなければならない。また、各アラーム状態の優先度は、取扱説明書に示す必要があり、優先度についてはグループ内で識別されてもよい。
【0009】
図5の表2は、ICE 60601-1-8の規格の内の視覚アラーム(visual alarm signals)を示している。
操作者の応答または確認を必要とする機器または機器の一部を操作者が識別するためにアラームインジケータが必要な場合は、表2に示すような特性をもつものとする。
【0010】
図6の表3(a)及び(b)は、ICE 60601-1-8の規格の内のアラーム音(聴覚アラーム)を示している。
図7の表4は、ICE 60601-1-8の規格の内の聴覚アラームの内のメロディアラームを示している。
アラーム音を出すアラームシステムは、少なくとも次の(1)又は(2)の1つのセットをもたなくてはならない。
(1) 優先度をパターン化し、表3(a)及び(b)に適合する。
(2) 異なる技術(音声アラーム信号など)によって発生し、かつ妥当性が確認されている。
【0011】
上述の如く、生体情報機器(ME機器)のアラーム規格における、優先度(alarm-condition-priority)である、高優先度,中優先度及び低優先度は、表1に示すリスクマネジメントプロセス(ISO14971)に基づいて詳細に規定され、その出力形態である視覚アラーム、聴覚アラームも各優先度に応じて決められている。
【0012】
アラームを聴覚的な音声及び/又は視覚的なインジケ−タにより報知する生体信号モニタ装置の例を図3を用いて説明する。
図3は、ナースステーション等に配置される複数の患者の生体信号を同時にモニタ可能なステーション型の生体情報モニタ装置の外観図である。
図3において、1はステーション型の生体信号モニタ装置であり、2は複数(図示の装置では8名)の患者の生体信号を処理した結果の数値及び波形を同時に表示(図示の状態では、4名のみモニタ中)する表示画面である。
3−1,3−2,3−3は視覚的アラームの表示出力部であって、3−1及び3−2は個々の患者に対応した表示が可能な個別表示部であり、3−3は全ての患者に共通する共通表示部であって、それぞれの表示部は例えばLEDで構成されていて、アラームの優先度に応じて、赤、黄又はシアン等に区別して表示される。さらに、表示画面2における個々の患者に対応した表示領域に視覚的アラームが表示されてもよい。
また、4は聴覚的なアラームを出力するスピーカであって、異なった周波数,持続時間等によって優先度に応じたアラームを出力が可能である。
【0013】
図3は、複数の患者の生体信号を同時にモニタ可能なステーション型の生体信号モニタ装置であるが、病室等に配置される患者に対して個別にモニタするベッドサイド型の生体信号モニタ装置が本発明に係るアラームの優先度変更機能を有してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−101214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記パルスオキシメータでは、飽和度アラームのため、酸素飽和度が上方スレッショルドを超えた量又は下方スレッショルド以下に下降した量の積分を計算する。この積分が所定値を超えると、飽和アラームが生成されるものである。
したがって、飽和アラームが生成されるまでは、越えた(下降した)量を積分しているため、ノイズや信号アーチファクト(artifact)に起因する影響は除かれるが、一度飽和アラームが生成されると、酸素飽和度が上方スレッショルド以下又は下方スレッショルド以上に戻らない限り飽和アラームは解除されることはない。
【0016】
このような一度飽和アラームが生成された後に、酸素飽和度が上方スレッショルド又は下方スレッショルドの近辺で停滞している状態では、飽和アラームは解除されず、一定の音声及び/又は視覚的な形態でのアラーム報知を続けることになって、監視者にとって慣れを生じて重大な異常を見逃す可能性が生じる。
【0017】
さらに、積分の場合、突発的な現象などにより、非常に短い期間で酸素飽和度が低satスレッショルドを大幅に越え、飽和アラームが一度生成された場合、現象が改善して酸素飽和度がスレッショルド近辺まで回復しても優先度が維持されてしまう。
この場合、本来優先度の低いはずのアラームが発生しているにも関わらず、緊急性の高いアラームが出力されることとなり、医療従事者の作業に支障を与える可能性もある。
【0018】
上述の如く、生体情報機器(ME機器)のアラーム規格において、高優先度,中優先度及び低優先度は、表1に示すリスクマネジメントプロセス(ISO14971)に基づいて詳細に規定された視覚アラーム、聴覚アラームであるため、視覚アラーム又は聴覚アラーム(特に、低優先度又は中優先度)が継続した場合に、慣れによる見逃しが生じ易いという問題がある。
【0019】
具体的には、酸素飽和度が上方スレッショルド又は下方スレッショルドの近辺で停滞している状態(中優先度)では、同じ優先度であるので、前記表1〜4に示す如く、一定の音声及び/又は視覚的な形態でのアラーム報知を続けるので、監視者にとって同じ優先度のままであるという認識の慣れで重大な異常を見逃す可能性があった。
【0020】
また、テクニカルアラームの発生は、生体信号測定装置の装置そのものの故障やプローブの確認や脈波検出不能等状態が生じたことを意味するが、そのことが患者の生体信号に異常が発生したことには直接的には結びつくものではないので、電極又はプローブの離脱といった患者の体動等の動作によってテクニカルアラームが発生しても即時に復旧することもあることからテクニカルアラームが発生しても回復するだろうという期待感を持って見逃す可能性が生じる。
【0021】
本発明の課題(目的)は、生体信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームが生成された後に同じ優先度で当該アラームが継続した場合に、アラーム状態が所定の条件を満たす場合に当該アラームの優先度を変更(例えば、中優先度から高優先度)可能なアラーム優先度の変更機能付き生体情報モニタ装置を提供することにある。
ここで、測定環境の異常とは、例えば測定した生体信号を送信機が無線送信するにあたって、受信する生体情報モニタ装置が電波切れや受信不良により生体信号を受信できない状態や、電極の接触インピーダンスが上がり、ノイズが混入するといった現象などが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するために、本発明のエスカレーションアラーム機能付き生体情報モニタ装置は、検出された生体信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームを出力するアラーム制御部を備えた生体情報モニタ装置であって、
前記アラーム制御部は、前記バイタルアラーム、若しくは前記テクニカルアラームとして、第1の優先度のアラームを出力すると共に、前記第1の優先度のアラームの出力後に、所定の条件を満たした場合に、前記アラームの優先度を第1の優先度から第2の優先度へ変更して、前記アラームを出力することを特徴とする。
【0023】
また、前記所定の条件は、前記第1の優先度のテクニカルアラームの出力後に前記異常状態を所定時間継続するものであることを特徴とする。
また、前記所定の条件は、前記第1の優先度のバイタルアラームの出力後に前記異常状態を所定時間継続する場合と、前記第1の優先度のバイタルアラームの出力後、危険な状態を示す閾値を越えた場合との、少なくともいずれか一方であることを特徴とする。
【0024】
また、前記生体情報モニタ装置は、さらにアラーム制御部に入力部を備え、前記アラームを第2の優先度へ変更後、使用者が前記入力部を操作し、前記アラームを第1の優先度へ変更することを特徴とする。
また、前記アラーム制御部は、前記バイタルアラームを第2の優先度へ変更後、危険な状態を示す閾値を越えた後に、検出された生体信号が危険状態を脱し、前記閾値内に戻った場合、前記バイタルアラームを第1の優先度へ変更することを特徴とする。
【0025】
また、前記閾値は、前記異常状態の設定に連動して設定されることを特徴とする。
また、前記異常状態を継続する所定時間又は前記閾値は、それぞれ複数の値から設定可能であることを特徴とする。
【0026】
また、前記アラームの出力形態としては、視覚アラーム及び聴覚アラームを含み、視覚アラームでは第2の優先度では第1の優先度よりも点滅速度をより速く設定し、聴覚アラームでは第2の優先度では第1の優先度よりも音量をより高く設定することを特徴とする。
また、前記アラームの出力形態としては、視覚アラーム及び聴覚アラームを含み、視覚アラームでは第2の優先度では第1の優先度よりも点滅速度をより遅く設定し、聴覚アラームでは第2の優先度では第1の優先度よりも音量をより低く設定することを特徴とする。
【0027】
また、前記アラームの出力形態としては、視覚アラーム及び聴覚アラームを含み、視覚アラームではそれぞれの優先度で表示色を異ならせて設定し、聴覚アラームではそれぞれの優先度で異なる音に設定することを特徴とする。
また、前記テクニカルアラームは、生体情報モニタの異常、少なくとも酸素飽和度、血圧、心電図、呼吸の内の1つを測定するセンサの異常、当該測定装置と患者との間のインタフェースの異常、無線信号のいずれかを含むことを特徴とする。
【0028】
また、前記第2の優先度は、前記第1の優先度より優先度が高いことを特徴とする。
また、前記第1の優先度は、前記第2の優先度より優先度が高いことを特徴とする。
【0029】
前記課題を解決するために、本発明のエスカレーションアラーム機能付き生体情報モニタ装置のアラーム制御方法は、検出され検出された生体信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームを出力する生体情報モニタ装置のアラーム制御方法であって、
アラーム毎の優先度条件を設定するステップと、バイタルアラーム及び/又はテクニカルアラームを出力するステップと、バイタルアラーム又はテクニカルアラームの出力状況と、前記優先度条件とを対比するステップと、前記対比結果が優先度条件を満たした場合に、アラームの優先度を変更してアラームを出力するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、生体信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームが生成された後に同じ優先度で当該アラームが継続した場合に、アラーム状態が所定の条件を満たす場合に当該アラームの優先度を変更(例えば、中優先度から高優先度)が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のアラーム状態が所定の条件を満たす場合のアラームの優先度変更の1例を酸素飽和度(SpO2)の測定の例を説明する図である。
【図2】本発明のアラーム優先度の変更の発生条件の1例を示す図である。
【図3】ナースステーション等に配置される複数の患者の生体信号を同時にモニタ可能なステーション型の生体信号モニタ装置の外観を示す図である。
【図4】ICE 60601-1-8の規格の内のアラーム状態の優先度(alarm-condition-priority)を示す表1である。
【図5】ICE 60601-1-8の規格の内の視覚アラーム(visual alarm signals)を示す表2である。
【図6】ICE 60601-1-8の規格の内のアラーム音(聴覚アラーム)を示す表3である。
【図7】ICE 60601-1-8の規格の内の聴覚アラームの内の(メロディアラーム)を示す表4である。
【図8】本発明のアラーム状態が所定条件(異常の状態)から脱した場合のアラームの優先度変更の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の構成を図1を用いて説明する。
図1は、本発明のアラーム状態が所定の条件を満たす場合に当該アラームの優先度を変更するアラーム優先度の変更の1例を酸素飽和度(SpO2)の測定の例を用いて説明する。
図1では、SpO2の測定値が予め設定された下限値である90%を越えて低下した場合を示している。
図1では、SpO2アラームの優先度変更の設定は、図示の如く下限値からの低下値(異常状態が進行し、危険状態を示す閾値)として、OFF,−3%,−5%,−10%の内の−10%に、下限値からの低下継続時間として、OFF,1m(分),2m(分),3m(分),5m(分),10m(分)の内の5m(分)に設定されている。
【0033】
ここで、上記継続時間や下限値からの低下値の設定は、複数のそれぞれ複数の値から選択可能である。
さらに下限値からの低下値(異常状態が進行し、危険状態を示す閾値)は、割合(%)や固定値(本例では−10%)による設定が可能であり、下限値の設定と連動して自動的に変更されても良い。連動することで、医療従事者は特に細かい設定を意識することなく、アラームの優先度変更の設定を自動的に可能とする。
【0034】
アラームレベル(優先度)の設定は、通常のSpO2アラームは、H,M,Lの内のMレベルに、優先度を変更後のSpO2アラームは、H,Mの内のHに設定されている。
【0035】
この状態で、SpO2測定値が低下して下限値である90%を越えると、通常のSpO2アラームが発生して、視覚アラーム(黄のインジケータ表示)及び聴覚アラーム(150〜1000Hzのパルスで、125〜250msの持続時間)の中優先度アラームが発生される。
【0036】
本発明では、上述の如く、SpO2の優先度変更の設定は、図示の如く下限値からの低下値(異常状態が進行し危険状態を示す閾値)として、OFF,−3%,−5%,−10%の内の−10%に、下限値からの低下継続時間として、OFF,1m(分),2m(分),3m(分),5m(分),10m(分)の内の5m(分)に設定されているので、図1の(a)の如く下限値の90%を越えて低下していた後、SpO2のアラームの継続時間の設定値である5分を越えても、下限値を上まわらなかった場合には、優先度がエスカレーション(変更)されて、高優先度のアラームに切替わる。
【0037】
また、図1の(b)の如く下限値の90%を越えて、さらに低下して、優先度変更の下限値の設定値である10%である(90−10=80%:危険状態を示す閾値)を越えた場合にも上記と同様に、優先度がエスカレーション(変更)されて、高優先度のアラームに切替わる。
【0038】
上述の如く、本来はSpO2の下限値の90%を越えた場合は、中優先度アラームを継続すべき状態であるが、本発明では、所定の条件を満たした場合には、高優先度アラームに切り替わるので、音声アラームでは通常よりも音量を増加させ、点滅アラームでは点滅速度を速くする等によって注意を喚起することが可能になる。
【0039】
さらに、図8の如く、SpO2アラームの優先度が高優先度と変更された後、優先度変更の下限値の設定値内に戻った場合(即ち、危険状態を脱し、異常状態に戻った場合)、SpO2アラームの優先度は中優先度のアラームへディエスカレーション(変更)される。
【0040】
図1では、SpO2の優先度変更の設定は例えば図示の如く下限値からの低下値として、OFF,−3%,−5%,−10%の内の−10%に、下限値からの低下継続時間として、OFF,1m(分),2m(分),3m(分),5m(分),10m(分)の内の5m(分)に設定され、適宜変更できる。
また、図1の数値以外に設定することも可能である。
【0041】
図1では、SpO2のアラームの例を用いて説明しているが、SpO2以外にも、他の生体信号の測定である、非観血血圧(NIBP)、心電図(ECG)、呼吸(RESP)測定の測定値に対するアラームの優先度を変更させることも可能である。
【0042】
また、図1では、生体信号であるSpO2のバイタルアラームを例として説明しているが、生体信号測定装置の故障やプローブの確認や脈波検出不能等や電波切れや受信不良等により発生するテクニカルアラームについても所定の条件を満たす場合にアラームの優先度を変更させることも可能である。
【0043】
次に、本発明のアラームの優先度変更の設定例について図2を用いて説明する。
図2は、本発明のアラームの優先度変更の発生条件の1例を示す図である。
図2では、バイタルアラームのパラメータ及びアラーム項目として、SpO2では下限値からの低下値としてはOFF,-3%,-5%,-10%の候補から設定可能に構成されている。
また、パラメータ及びアラーム項目として、SpO2の下限値からの低下時間としてはOFF,1m,2m,3m,5m,10mの候補から設定可能に構成されている。
【0044】
また、バイタルアラームのパラメータ及びアラーム項目として、RESP(呼吸)では、APNEA(無呼吸)時間がOFF,20s,40s,60sの候補から設定可能に構成されている。
【0045】
また、テクニカルアラームのパラメータ及びアラーム項目として、SpO2ではプローブ確認、脈波検出不能が、それぞれOFF,1m,2m,3m,5m,10mの候補から設定可能に構成されている。
また、テクニカルアラームのパラメータ及びアラーム項目として、ECG(心電図)では電極確認、解析不能(ノイズ)が、それぞれOFF,1m,2m,3m,5m,10mの候補から設定可能に構成されている。
また、テクニカルアラームのパラメータ及びアラーム項目として、テレメータでは電波切れが、OFF,1m,2m,3m,5m,10mの候補から設定可能に構成されている。
また、テクニカルアラームのパラメータ及びアラーム項目として、テレメータでは電池交換が、OFF,1m,10m,30m,60m,120mの候補から設定可能に構成されている。
【0046】
また、図2では、バイタルアラーム及びテクニカルアラームの優先度の変更の前後におけるアラームの優先度が通常レベルと優先度の変更(後)のレベルとが示されている。
図2では、例えば、SpO2における通常レベル(M)が優先度の変更後では(H)になる。
図示の如く、優先度の変更レベルは通常のレベルよりも高いレベルに設定が可能である。(これは、看護師等により強い警報を発生して見逃しを防止するためである。)
【0047】
図2では、アラームの例及びアラーム項目として、バイタルアラームではSpO2,RESPの2つを、テクニカルアラームではSpO2,ECG,テレメータの3つを挙げているが、本発明の思想は上記の例以外のバイタルアラーム及びテクニカルアラームにも適用できることは明らかである。
【0048】
図1では、生体信号であるSpO2のバイタルアラームの優先度の変更の例として説明しているが、生体信号測定装置の故障及びプローブの確認や脈波検出不能等のテクニカルアラームについては、本発明のアラーム優先度の変更の対象として特に重要である。
【0049】
テクニカルアラームの発生は、生体信号測定装置の装置そのものの故障やプローブの確認や脈波検出不能や電波切れや受信不良等の場合に出力されるものであるため、生体信号測定装置の装置そのものの故障やプローブの確認や脈波検出不能や電波切れや受信不良等の場合状態が生じた場合にはテクニカルアラームが発生する。
しかし、テクニカルアラームが発生したということは、生体信号測定装置の装置そのものの故障やプローブの確認や脈波検出不能や電波切れや受信不良等の状態が生じたことを意味するが、そのことが患者の生体信号に異常が発生したことには直接的には結びつくものではないので、テクニカルアラームが継続していても看護師等が見逃してしまうという問題が生じる。
【0050】
テクニカルアラームが継続している間は、患者の生体信号を正しく測定できていないので、患者の重大な生体信号の異常を見逃すことに繋がりかねない。
そこで、本発明のテクニカルアラームの所定時間継続した場合にアラームの優先度を変更して、異なる優先度のアラームを発生させるため、エスカレーションアラームが患者の重大な生体信号の異常を見逃すことの防止に大いなる効果を奏する。
【0051】
また、患者が離室した手術室などでは、正常に測定が行われていない為、テクニカルアラーム(時にはバイタルアラーム)が発生する場合がある。本発明では、継続時間を経過すると、優先度の高いアラームが報知される場合があり、望ましくない状況とは言えない。
【0052】
そこで、生体情報モニタ装置に、アラーム制御部を使用者が直接操作可能な(図示しない)入力部が設け、使用者が入力部を操作することで、高い優先度のアラームを低い優先度のアラームへディエスカレーション(変更)されても良い。これにより、上記望ましくない状況は回避可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1:ステーション型生体情報モニタ装置
2:患者の生体情報表示部
3-1,3-2,3-3:視覚的アラーム表示部
4:聴覚的アラーム表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出された生体信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームを出力するアラーム制御部を備えた生体情報モニタ装置であって、
前記アラーム制御部は、
前記バイタルアラーム、若しくは前記テクニカルアラームとして、第1の優先度のアラームを出力すると共に、
前記第1の優先度のアラームの出力後に、所定の条件を満たした場合に、前記アラームの優先度を第1の優先度から第2の優先度へ変更して、前記アラームを出力することを特徴とする優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記第1の優先度のテクニカルアラームの出力後に前記異常状態を所定時間継続するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記第1の優先度のバイタルアラームの出力後に前記異常状態を所定時間継続する場合と、前記第1の優先度のバイタルアラームの出力後、危険な状態を示す閾値を越えた場合との、少なくともいずれか一方である、
ことを特徴とする請求項1に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項4】
前記生体情報モニタ装置は、さらにアラーム制御部に入力部を備え、
前記アラームを第2の優先度へ変更後、使用者が前記入力部を操作し、前記アラームを第1の優先度へ変更する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項5】
前記アラーム制御部は、前記バイタルアラームを第2の優先度へ変更後、危険な状態を示す閾値を越えた後に、検出された生体信号が危険状態を脱し、前記閾値内に戻った場合、前記バイタルアラームを第1の優先度へ変更する、
ことを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項6】
前記閾値は、前記異常状態の設定に連動して設定される
ことを特徴とする請求項1又は3〜5のいずれか1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項7】
前記異常状態を継続する所定時間又は前記閾値は、それぞれ複数の値から設定可能である、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項8】
前記アラームの出力形態としては、視覚アラーム及び聴覚アラームを含み、
視覚アラームでは第2の優先度では第1の優先度よりも点滅速度をより速く設定し、聴覚アラームでは第2の優先度では第1の優先度よりも音量をより高く設定する、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項9】
前記アラームの出力形態としては、視覚アラーム及び聴覚アラームを含み、
視覚アラームでは第2の優先度では第1の優先度よりも点滅速度をより遅く設定し、聴覚アラームでは第2の優先度では第1の優先度よりも音量をより低く設定する、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項10】
前記アラームの出力形態としては、視覚アラーム及び聴覚アラームを含み、
視覚アラームではそれぞれの優先度で表示色を異ならせて設定し、聴覚アラームではそれぞれの優先度で異なる音に設定する、
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項11】
前記テクニカルアラームは、生体情報モニタの異常、少なくとも酸素飽和度、血圧、心電図、呼吸の内の1つを測定するセンサの異常、当該測定装置と患者との間のインタフェースの異常、無線信号の受信不良のいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項12】
前記第2の優先度は、前記第1の優先度より優先度が高い、
ことを特徴とする請求項1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項13】
前記第1の優先度は、前記第2の優先度より優先度が高い、
ことを特徴とする請求項1項に記載の優先度変更機能付き生体情報モニタ装置。
【請求項14】
検出された生体信号の異常時に出力されるバイタルアラーム、若しくは生体情報モニタ装置やセンサや測定環境の異常時に出力されるテクニカルアラームを出力する生体情報モニタ装置のアラーム制御方法であって、
アラーム毎の優先度条件を設定するステップと、
バイタルアラーム及び/又はテクニカルアラームを出力するステップと、
バイタルアラーム又はテクニカルアラームの出力状況と、前記優先度条件とを対比するステップと、
前記対比結果が優先度条件を満たした場合に、アラームの優先度を変更してアラームを出力するステップと、
を含むことを特徴とするアラーム制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−78562(P2011−78562A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233153(P2009−233153)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】