説明

アリの駆除方法及びアリの駆除剤

【課題】殺虫性の固体粒状駆除剤を用いたアリの駆除方法を提供する。
【解決手段】本発明は、殺虫有効量の1)固体粒状担体と、2)ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンとの混合物を含む駆除剤を、アリの駆除が必要、又は必要となることが予想される場所へ付与すことをからなるアリを駆除するための方法に関する。殺虫性の固体粒状駆除剤によれば、オオアリと収穫アリを迅速に駆除できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンを含有する殺虫性の固体粒状駆除剤を用いたアリの駆除方法及びアリの駆除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オオアリや収穫アリのようなアリは、迷惑を引き起こし、または、人間や不動産に被害を加えることがある昆虫である。
【0003】
黒オオアリ(カンポノタス・ペンシルバニカス、Camponotus pensylvanicus)、赤オオアリ(カンポノタス・フェルギネウス、Camponotus ferrugineus)、スモーラーオオアリ(カンポノタス・ネアルクチカス、Camponotus nearcticus)などのオオアリは、建物に重大な被害を与える害虫である。なぜなら、オオアリは自身のコロニーを、湿った木、時には、発泡断熱材に掘った通路に収容する。オオアリは、古い放棄された巣や、シロアリによってくり抜かれた木を使うので、巣を作るために湿った領域を常に必要としているわけではない。オオアリは、巣作りで取り除かれた木を食べない。しかし、取り除かれた木の断片に加えて、土のくず、空の種皮、アリの死骸、昆虫の一部、食物の残余物などの巣から出される残骸をコロニーの入り口の外に積み上げ、人間や家畜にとって有害な環境を生み出している。
【0004】
カリフォルニア赤収穫アリ(ポゴノミルメックス・カリフォルニカス、Pogonomyrmex californicus)などの収穫アリは、巣の周りと、巣を中心とした放射状の餌探しの道に沿った領域から草を取り除き、取り除いた草を巣の盛り土を構築するために使用する。一般的に、巣は広々した地域に構築され、ゴルフコース、レクリエーション地域、たまに芝生において実際に問題となっている。また、収穫アリは、食物源として種を収穫するので、地域に再び種を蒔くことも妨げる。加えて、収穫アリは人間と動物を刺すことができ、刺されるとひどい痛みがでる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
迅速な駆除と長期間の駆除のための持続性活性という利点を有し、簡便に使用できる、安価なアリ駆除剤と、これらの駆除剤でアリを駆除するための方法を提供することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、1)固体粒状担体と、2)前記固体粒状担体に付与したゼータ−シペルメトリンとビフェントリンとの混合物からなる固体粒状駆除剤によって、アリの駆除が改善される。特に、本発明の殺虫性の固体粒状駆除剤によれば、オオアリと収穫アリを迅速に駆除できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、殺虫性有効量の下記の組成物を含む駆除剤を、アリの駆除が必要、又は必要となることが予想される場所へ付与することからなるアリを駆除するための方法に関する。
1)固体粒状担体と、
2)ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンとの混合物
この殺虫性の固体粒状駆除剤は、個々の活性成分単独と比較して、アリを予想外に迅速に駆除することができる。
【0008】
本発明で用いられる殺虫性の固体粒状駆除剤は、ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンを、個々に、又は組み合わせて、溶媒に溶解して、生成された溶液を、適当な固体粒状の担体に付与することによって調製される。
【0009】
溶媒は、ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンの双方を完全に溶解する単一溶媒、又はゼータ−シペルメトリンとビフェントリンの双方を完全に溶解する混合溶媒である。推奨される溶媒は、合成イソパラフィン系炭化水素、例えば、エクソンモービル・ケミカル・カンパニー(ExxonMobil Chemical Company)から入手可能なイソパー・エム(Isopar M、商標)と、ジイソプロピルビフェニル、例えば、ビーブイエー・オイルズ・インク(BVA Oils Inc)から入手可能なヌソルブエービーピー103(NuSolv ABP 103)からなる混合溶媒である。
【0010】
固体粒状担体は、非反応性で、殺虫性混合物を標的の場所に放出できるように多孔質の担体が望ましい。推奨される固体粒状担体は、例えば、ドロマイト質石灰石と木材粉塵をベースとした化学担体、例えば、アンダーソンズ・インク(Andersons,Inc)から入手可能なディー・ジー・ライト(DG Lite、商標)、セルロース複合体、例えば、カダント・グランテック・インク(Kadant GranTek,Inc)から入手可能なバイオダック(Biodac、登録商標)、木質繊維顆粒、例えば、サイクル・グループ・インク(Cycle Group,Inc)から入手可能なエコグラニュール(EcoGranule、商標)、破砕したトウモロコシの穂軸、例えば、アンダーソンズ・インク(Andersons,Inc)から入手可能なベッドオーコブス(bed−o’cobs、登録商標)、又は、マウント・プラスキ・プロダクツ・インク(Mt.Pulaski Products,Inc)から入手可能なマイゾルブ(Maizorb、登録商標)、破砕したピーナッツ殻、砂、粒状の窒素/リン/カリウム(NPK)肥料である。
【0011】
殺虫性の固体粒状駆除剤は、ゼータ−シペルメトリン成分とビフェントリン成分が1:20から10:1の重量比である混合物を含むことが望ましい。ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンを1:4で含むことが最も望ましい。組み合わせられた殺虫活性成分の量は、駆除剤の総重量の0.01%から5.0%であることが望ましい。駆除剤の総重量の0.1%から0.3%であればより望ましい。
【0012】
本発明の望ましい実施態様は、アリの駆除が必要、又は必要となることが予想される場所へ殺虫有効量の1)固体粒状担体と、2)固体担体に担持されたゼータ−シペルメトリンとビフェントリンの混合物、を含む駆除剤とを付与することからなるアリを駆除する方法である。オオアリの駆除においては、本発明の殺虫性の駆除剤の使用は、入り口にぴったりと適合する先端と管とを備えるハンドダスターを用いて、乾燥粒状駆除剤を、入り口の穴を通してオオアリの巣へ導入することで達成される。あるいは、壁、土台又は梁に穴を開けて、オオアリの巣の空洞と通路を遮断して、乾燥粒状駆除剤を穴へ付与することである。乾燥粒状駆除剤を基部の板、出没する地域周辺のひびや裂け目へ付与することで、採餌するために巣を出入りするオオアリを駆除できる。本発明に係る方法は、ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンを含む、迅速に機能する組成物を用いるが、巣に戻るオオアリが死ぬ前にそれらの足に殺虫性の駆除剤をつけて巣に持ち込む十分な時間がある。
【0013】
収穫アリの駆除においては、本発明の殺虫性の駆除剤の適用は、乾燥粒状駆除剤を、入り口の穴を通して収穫アリの巣の中や周辺に導入することで達成される。
【0014】
「ゼータ−シペルメトリン」という用語は、(R,S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2−(1RS)−シス−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートであって、それらの1R−シス−Sと1R−トランス−S異性体を富化してあるものが好ましい。
【0015】
「ビフェントリン」という用語は、2−メチルビフェニル−3−イルメチル(Z)−(1RS)−シス−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロプ−1−エニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートを意味している。
【0016】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。しかし、もちろん、本実施例は、限定して解釈されるべきではない。以下の実施例では、本発明の組成物によって、有効性が改善されたことを示すデータを説明する。
【実施例1】
【0017】
破砕したピーナッツ殻に付着した0.144%ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンを含む固体粒状駆除剤の調製
機械式の攪拌機を備えた混合用容器に、1.87ポンドの溶けたゼータ−シペルメトリン(38.5%の活性成分を含有、準備工程は、U.S.4,997、970参照)、2.99ポンドの溶けたビフェントリン(96.2%の活性成分を含有)、1.3ポンドのイソパー・エム(Isopar M、商標)、15.94ポンドのヌソルブエービーピー103(NuSolv ABP 103)が加えられた。これらの混合物は30分撹拌された。結果として生じた殺虫活性溶液は、重量比1:4でゼータ−シペルメトリンとビフェントリンを含む。
【0018】
破砕したピーナッツ殻(3.96ポンド)が混合機に加えられた。上記で調製された殺虫活性溶液の一部(0.035ポンド、50℃で保温)が手持ち可能な噴霧器に入れられて、破砕したピーナッツ殻が混合機に入れられる間、暖めた殺虫活性溶液の微細な霧が、ピーナッツ殻に向けて噴霧された。
【0019】
全ての殺虫活性溶液が加えられてから15分間混合された。結果として生じた殺虫性固体粒状は、ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンの重量比が1:4である殺虫活性成分を0.144%含む。この殺虫性固体粒状駆除剤は、保存容器に詰められた。
【実施例2】
【0020】
破砕したピーナッツ殻に付着した0.25%ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンを含む固体粒状駆除剤の調製
実施例1と同様に、0.06ポンドの殺虫活性溶液が、3.92ポンドのピーナッツ殻に噴霧された。結果として生じた殺虫性固体粒状は、ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンの重量比が1:4である殺虫活性成分を0.25%含む。この殺虫性固体粒状は、保存容器に詰められた。
【比較例】
【0021】
破砕したピーナッツ殻に付着した0.086%ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンを含む固体粒状駆除剤の調製
機械式の攪拌機を備えた混合用容器に、2.16ポンドの溶けたゼータ−シペルメトリン(38.5%の活性成分を含有、準備工程は、U.S.4,997、970参照)、2.99ポンドの溶けたビフェントリン(96.2%の活性成分を含有)、0.34ポンドのイソパー・エム(Isopar M、商標)、6.25ポンドのヌソルブエービーピー103(NuSolv ABP 103)が加えられた。これらの混合物が30分撹拌されて、9.5%(重量%)のゼータ−シペルメトリンを含むゼータ−シペルメトリン殺虫活性溶液が生成された。
【0022】
破砕したピーナッツ殻(6.64ポンド)が混合機に加えられた。上記で準備した殺虫活性溶液の一部(0.06ポンド、50℃で保温)が手持ち可能な噴霧器に入れられた。破砕したピーナッツ殻が混合機に入れられる間、ピーナッツ殻は、暖めた殺虫活性溶液の微細な霧がピーナッツ殻に向けて噴霧された。全てのゼータ−シペルメトリン殺虫活性溶液が加えられてから15分間混合された。結果として生じた殺虫性固体粒状駆除剤は、0.086%の殺虫活性成分を含む。このゼータ−シペルメトリン殺虫活性溶液は、保存容器に詰められた。
【実施例3】
【0023】
この実施例は、殺虫性固体粒状駆除剤のオオアリ(カンポノタス・ペンシルバニカス、Camponotus pensylvanicus)に対する殺虫性評価を示している。
本発明に係る駆除剤は、以下の方法で、成虫のオオアリに対する殺虫活性を試験された。
【0024】
アリが逃げるのを防ぐために、100mmの使い捨てペトリ皿の端が、ポリテトラフルオロエチレン(フルオン・エーディーワン(Fluon AD1),ノザン・プロダクト(Nothern Product)から入手可能,ウーンソケット・アールアイ(Woonsocket RI))で覆われた。完全にペトリ皿の底を覆うために、被試験固体粒状駆除剤が十分に使われた。直接、被試験固体粒状駆除剤の上になるように、5匹かそれとも10匹の成虫のオオアリが各ペトリ皿に置かれた。各試験で使われたアリの総数が下の表1に示されている。アリは、5分おきに70分まで調べられた。瀕死と死亡したアリの数を数えることで、パーセント抑制率が評価された。アリが瀕死であると見なされるのは、探り針による検査には反応するが、ひっくり返して10秒以内に自身で立て直せない場合である。アリが死亡であると見なされるのは、探り針による検査には反応しない場合である。下の表1は、被試験駆除剤のパーセント抑制率をまとめている。太字表記は、個々の化合物と比較したときに、有利な殺虫効果が観察されたことを示す。
【0025】
【表1】

【実施例4】
【0026】
この実施例は、殺虫性固体粒状駆除剤の収穫アリ(ポゴノミルメックス・カリフォルニカス、Pogonomyrmex californicus)に対する殺虫性評価を示している。
本発明に係る駆除剤は、固体担体としてディー・ジー・ライト(DG Lite)又は砂を用いて、異なる比率において、実施例1及び実施例2と同様の方法で準備された。下の表2にまとめられたように、これらの駆除剤は、以下のようにして、成虫の収穫アリに対する殺虫活性を試験された。
【0027】
アリが逃げるのを防ぐために、100mmの使い捨てペトリ皿の端が、ポリテトラフルオロエチレン(フルオン・エーディーワン(Fluon AD1),ノザン・プロダクト(Nothern Product)から入手可能,ウーンソケット・アールアイ(Woonsocket RI))で覆われた。円形のろ過紙がペトリ皿の底に置かれ、1mLの脱イオン水で湿らされた。完全にペトリ皿の底を覆うために、被試験固体粒状駆除剤が十分に使われた。試験を4回繰り返し、1つの試験につき、8匹から10匹の成虫の収穫アリを用いた。収穫アリは、被試験固体粒状駆除剤上に置かれ、5分おきに50分又は60分まで調べられた。瀕死と死亡したアリの数を数えることで、パーセント抑制率が評価された。アリが瀕死であると見なされるのは、探り針による検査には反応するが、ひっくり返して10秒以内に自身で立て直せない場合である。アリが死亡であると見なされるのは、探り針による検査には反応しない場合である。下の表2Aは、被試験駆除剤のパーセント抑制率をまとめている。太字表記は、ビフェントリン単独と比較したときに、有利な殺虫効果が観察されたことを示す。
【0028】
【表2】

【0029】
【表2A】

【0030】
本技術分野における当業者は、本発明の変形例が使用されてもよいこと、および、本発明は明細書に記載した通り以外にも実施できることを意図していること理解するであろう。したがって、本発明には、以下の請求項で定義される発明の趣旨と範囲内に包含される全ての修正例が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリの駆除方法であって、
1)固体粒状担体と、
2)ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンとの混合物と、
を含む駆除剤を、
アリの駆除が必要、又は必要となることが予想される場所へ付与する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記固体粒状担体は、
ドロマイト質石灰石と木材粉塵、破砕したピーナッツ殻、又は砂である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンとの混合物は、
両活性成分を1:20から10:1の比で含む、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンとの混合物は、
両活性成分を1:4の比で含む、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アリは、
オオアリは収穫アリから選ばれる、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記場所は、
ゴルフコース、運動場、公園、芝生、アリが群がる構造物、アリが群がることが予想される構造物、又は、これらの構造物の付近の場所である、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1)固体粒状担体と、
2)ゼータ−シペルメトリンとビフェントリンとの混合物と、
からなることを特徴とするアリ駆除剤。

【公開番号】特開2010−265264(P2010−265264A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107957(P2010−107957)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】