説明

アリスキレンを含む医薬組成物

本発明は、a)治療有効量のアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩と、b)充填剤と、c)さらなる特定の充填剤とを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な担体中の活性成分としての経口活性レニン阻害剤であるアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物に関する。特に、本発明は、バルサルタンなどのアンジオテンシンIIアンタゴニストと任意選択で組み合わせた、経口活性レニン阻害剤であるアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩、特にアリスキレンのヘミ−フマル酸塩を含むガレヌス製剤を提供する。本発明はまた、それらの調製方法および医薬品としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓から放出されるレニンは、循環血液中のアンジオテンシノーゲンを切断して、デカペプチドであるアンジオテンシンIを形成する。これは肺、腎臓および他の器官中のアンジオテンシン変換酵素によって切断され、オクタペプチドであるアンジオテンシンIIを形成する。このオクタペプチドは、動脈血管収縮によって直接的、および副腎からナトリウムイオン保持ホルモンであるアルドステロンを遊離する(細胞外液の容量の増加を伴う)ことによって間接的の両方で血圧を上昇させる。レニンの酵素活性の阻害剤は、アンジオテンシンIの形成の減少を引き起こす。結果として、より少量のアンジオテンシンIIが生成される。その活性ペプチドホルモンの濃度低下は、例えば、レニン阻害剤の抗血圧上昇作用の直接原因である。したがって、レニン阻害剤、またはその塩は、例えば、降圧剤として、またはうっ血性心不全を治療するために用い得る。
【0003】
レニン阻害剤であるアリスキレン、特に、そのヘミ−フマル酸塩は、年齢、性別もしくは人種に関わりなく血圧を低下させる治療において有効であることが知られており、また耐容性良好である。遊離塩基の形態のアリスキレンは、下記の式
【0004】
【化1】

によって表され、2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドと化学的に定義される。上記のように、最も好ましいのは、EP678503Aにおいて実施例83として特に開示されているそのヘミ−フマル酸塩である。
【0005】
バルサルタンは、公知のアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB、アンジオテンシンIIアンタゴニスト)であり、アリスキレンとの組合せが、例えばWO02/40007に記載されている。
【0006】
アンジオテンシンIIは、血管の収縮をもたらすホルモンである。これは、高血圧、および心臓への負担をもたらし得る。アンジオテンシンIIは、標的細胞の表面上の特異的受容体と相互作用することが知られている。アンジオテンシンIIについての2種の受容体サブタイプ、すなわちAT1およびAT2がこれまで同定されてきた。最近、AT1受容体に結合する物質を同定するために大きな努力がなされてきた。アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB、アンジオテンシンIIアンタゴニスト)は、アンジオテンシンIIが血管の壁のその受容体に結合することを阻害し、それによって血圧の低下をもたらすことが現在知られている。したがって、このようなアンタゴニストは、AT1受容体の阻害によって、降圧剤として、または他の適応症の中でうっ血性心不全の治療のために使用することができる。
【0007】
経口経路によるこのような医薬品の投与は、患者による自己投与を可能とするため、非経口投与より好ましい。一方、非経口製剤は、殆どの場合医師または医療補助員が投与しなくてはならない。
【0008】
しかし、アリスキレンは、その物理化学的特性のために製剤するのが困難な製剤原料であり、特に、錠剤の物性(流動性、圧縮挙動または溶解速度など)に関して、信頼のおけるロバストな方法で、錠剤の形態で経口製剤を作製することはささいなことではない。例えば、アリスキレンは、製剤原料のバルク特性、例えば、流動性およびかさ密度に対してマイナスの影響を有する針状晶癖を有する。製剤原料の圧縮挙動は乏しく、弱い微粒子間結合および加圧下で多型の変化がもたらされる。アリスキレンは、強力な弾力性のある成分を有し、これはまた微粒子間結合の低下をもたらす。製剤原料の質は、錠剤の加工性、例えば、粒度分布、かさ密度、流動性、濡れ挙動、表面積および固着性に対する作用によって非常に変わりやすい。さらに、アリスキレンは、非常に吸湿性である。水との接触および水の除去の後、製剤原料の多型は、結晶状態と比較して劣った安定性を示すアモルファス状態に変化する。
【0009】
さらに、高用量のアリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩(錠剤当たり300mg以上の遊離塩基)の特別な場合は、妥当な錠剤サイズを達成するために、高い薬物充填量が必要となる。
【0010】
これらのハードルの組合せは、標準的な錠剤の製造工程を非常に困難なものとする。アリスキレンの固体経口剤形は、WO2005/089729に記載されている。
【0011】
他方、バルサルタンは、pH依存性溶解度を有し、それによって消化管の酸性環境中での非常に微溶性から中性環境中での可溶性まで変動する。さらに、患者に好都合なバルサルタンの経口剤形の開発は、その低いかさ密度のために難易度が高い。
【0012】
さらに一般に、特定の活性成分を使用した経口一定用量の組合せ製剤の開発は難易度が高い。本明細書において使用する場合、「一定用量の組合せ」とは、単一の投与単位(例えば、錠剤またはカプセル剤)中に存在し、それ自体として投与される、確定した用量の2種の薬物または活性成分の組合せを意味する。さらに本明細書において使用する場合、「自由用量の組合せ」とは、同時に投与されるが、2つの別個の投与単位として投与される、2種の薬物または活性成分の組合せを意味する。経口一定用量の組合せを製剤するとき、一定用量の組合せを開発する上での時間およびコストを節約するために、同じ活性成分の相当する自由用量の組合せと生物学的に同等な、患者に好都合な剤形を提供することは有利である。自由用量の組合せと生物学的に同等である一定用量の組合せの開発は、合わせようと試みている薬物の薬物動態学的特性および医薬特性から生じる非常に多数のハードルによって難易度が高い。
【0013】
上記の理由によって、信頼のおけるロバストな方法で錠剤の形態の経口製剤を調製するためにアリスキレンについて遭遇する難しさは、他の治療剤、特にバルサルタンと組み合わせてそれを使用するときに増加すると考えられる。
【0014】
バルサルタンおよびアリスキレンの治療量が高い場合、2種の薬物を合わせたとき、添加剤の量を最小限に抑え、過剰に大きな製剤を避けることが非常に望ましい。その事実に関わらず、製剤は上記の必要性の全てを依然として満たすべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、アリスキレンの特性に関連して、特にバルサルタンと一緒に製剤したときに、上記の問題を克服する適切およびロバストなガレヌス製剤を開発する必要がある。
【0016】
驚いたことに、特定の充填剤の使用によって、上記で同定された欠点を克服する、特に多層錠剤(特に二層錠剤)などの圧縮錠剤の形態の医薬組成物の調製が可能となることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、
a)治療有効量のアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩と、
b)充填剤と、
c)充填剤b)と異なり、かつ
c1)アルジトール、
c2)単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類、ならびに
c3)0.5〜1.5g/cmの範囲のタップ密度を有する充填剤
から独立に選択される1種または複数、例えば、1〜3種の充填剤と
を含む医薬組成物を提供し、
ただし、インジゴチンレーキが組成物中に含まれる場合、インジゴチンレーキは単位用量当たり0.13mg、0.2mg、0.25mgまたは0.5mgの量ではない。
【0018】
好ましい実施形態は、本明細書および下位クレームに定義されている通りである。
【0019】
一態様において、本発明は、
a)治療有効量のアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩と、
b)充填剤と、
c)充填剤b)と異なり、かつc1)アルジトール、c2)単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類、ならびにc3)0.5〜1.5g/cmの範囲のタップ密度を有する充填剤から選択される充填剤と
を含む医薬組成物に関し、
ただし、インジゴチンレーキが組成物中に含まれる場合、インジゴチンレーキは単位用量当たり0.13mg、0.2mg、0.25mgまたは0.5mgの量ではない。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明は、
a)治療有効量のアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩と、
b)充填剤と、
c)充填剤b)と異なり、かつc1)アルジトール、またはc2)単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類から独立に選択される1種または複数、例えば、1〜3種の充填剤と
を含む医薬組成物に関し、
ただし、インジゴチンレーキが組成物中に含まれる場合、インジゴチンレーキは単位用量当たり0.13mg、0.2mg、0.25mgまたは0.5mgの量ではない。
【0021】
本発明は、多層錠剤、特に二層錠剤を含めたロバストなガレヌス製剤の製造を可能とする。
【0022】
本出願に亘り、様々な用語は下記の通りである。
【0023】
放出プロファイル:「放出」という用語は、本明細書において使用する場合、医薬経口一定用量の組合せが流体と接触し、その流体が、薬物(複数可)を剤形の外部へ剤形を取り巻く流体中に輸送する過程を意味する。患者において、所与の剤形によって示される送達速度および送達期間の組合せは、そのインビボの放出プロファイルとして記載することができる。剤形の放出プロファイルは、異なる放出速度および放出期間を示してもよく、連続的であり得る。連続放出プロファイルには、1種または複数の活性成分が定速度または変動速度で連続的に放出される放出プロファイルが含まれる。
【0024】
異なる放出プロファイルを有する2種以上の成分を1つの剤形中に合わせるとき、2種の成分のこのように得られた個々の放出プロファイルは、成分の1つのみを有する剤形と比較して、同一でも異なっていてもよい。したがって2種の成分は、互いの放出プロファイルに影響し、個々の成分各々についての異なる放出プロファイルをもたらし得る。
【0025】
2成分剤形は、互いに同一または異なる2種の成分の放出プロファイルを示すことができる。各成分が異なる放出プロファイルを有する2成分剤形の放出プロファイルは、「非同期性」と記載し得る。このような放出プロファイルは、(1)好ましくは成分b)が成分a)より遅く放出される異なる連続放出、および(2)成分a)およびb)の一方、好ましくは成分b)が連続放出され、成分a)およびb)の他方、好ましくは成分a)が修飾され、時間遅延を伴って連続的に放出されるプロファイルの両方を包含する。また1種の薬物についての2つの放出プロファイルの組合せ(例えば、薬物の50%が連続的であり、同じ薬物の50%が時間遅延を伴って連続的である)が可能である。
【0026】
即時放出:本出願の目的のために、即時放出製剤は、特別の製剤設計または製造方法によって意図的に調整されない、活性物質(複数可)の放出を示す製剤である。
【0027】
調節放出:本出願の目的のために、調節放出製剤は、特別の製剤設計または製造方法によって意図的に調整される、活性物質(複数可)の放出を示す製剤である。この調節放出は典型的には、成分の1つまたは両方、好ましくは成分a)の放出時間を遅延させることによって得ることができる。典型的には本発明の目的のために、調節放出とは、5時間に亘る放出(3時間に亘る、またはさらにそれより短い期間に亘る放出など)を意味する。調節放出とは、本明細書において使用する場合、2種の成分の時間をかけた異なる連続放出、または成分の1つ、好ましくは成分a)が遅延時間の後で初めて放出される遅延放出の両方を包含することを意味する。このような調節放出形態は、放出調整コーティング、例えば、拡散コーティングを、製剤原料(複数可)、または製剤原料(複数可)を含有するコアに塗布することによって、あるいは製剤原料(複数可)を包埋する放出調整マトリックスを生じさせることによって生成し得る。
【0028】
「時間遅延」という用語は、本明細書において使用する場合、本発明の組成物を含む剤形の投与と、その特定の成分からの活性成分の放出の間の期間を意味する。
【0029】
「遅延時間」という用語は、本明細書において使用する場合、剤形の1つの成分からの活性成分の放出と剤形の別の成分からの活性成分の放出との間の時間を意味する。
【0030】
崩壊:「崩壊」という用語は、本明細書において使用する場合、医薬経口一定用量の組合せが典型的には、流体によってばらばらに別々の粒子に壊れ、分散する過程を意味する。USP<701>によって、崩壊は、固体経口剤形について、試験装置のスクリーン上に残った固体経口剤形の残留物(存在する場合、不溶性コーティングまたはカプセル殻の断片を除いて)が、明白に硬いコアを有さない柔らかい塊である状態にあるときに達成される。崩壊特性を決定するための流体は、水道水または脱イオン水などの水である。崩壊時間は、当業者には公知の標準的方法によって測定する。薬局方USP<701>およびEP2.9.1およびJPに記載されている整合された手順を参照されたい。
【0031】
侵食:「侵食」という用語は、本明細書において使用する場合、外部環境(例えば、溶解媒体、体液など)中に置かれたときに、それによって医薬経口一定用量の組合せが磨滅、減少または変質し得る過程を意味する。崩壊とは対照的に、医薬経口一定用量の組合せは、ばらばらに壊れることによって分散せず、むしろ侵食過程が進行するにつれ時間と共に小さくなる。
【0032】
溶解速度:「溶解」という用語は、本明細書において使用する場合、それによって固体物質、ここでは活性成分が、媒体に分子形態で分散する過程を意味する。本発明の医薬経口一定用量の組合せの活性成分の溶解速度は、液体/固体界面、温度および溶媒組成の標準化した条件下で、単位時間当たりに溶解する製剤原料の量によって定義される。溶解速度は、当業者には公知の標準的方法によって測定する。薬局方USP<711>およびEP2.9.3およびJPに記載されている整合された手順を参照されたい。本発明の目的のために、個々の活性成分の溶解を測定するための試験は、pH4.5で薬局方USP<711>に従って、75rpm(毎分回転数)でパドル撹拌要素を使用して行う。溶解媒体は好ましくは、緩衝液、典型的にはリン酸緩衝液、特に実施例の「溶解試験」に記載したものである。緩衝液のモル濃度は、好ましくは0.1Mである。
【0033】
物理的に分離している:「物理的に分離している」という用語は、本明細書に定義されているように、それらが同じ担体中で互いに混合されていないが、分離しているように製剤される、成分a)およびd)の両方を含有する一定用量の組合せの形態の医薬組成物を意味する。1つの剤形中の2種の成分a)およびd)のこの物理的分離は、例えば、成分a)およびd)各々を別々の層またはシェル中に製剤することによって(例えば、二層製剤または有核(シェル中のコア)錠剤が得られる)、あるいは成分a)および成分d)各々の異なる集団の粒子を含む微粒子系(多微粒子)を使用することによって(例えば、カプセル剤、サシェ剤、多微粒子を充填したスティックパック、多微粒子を圧縮することから得られる錠剤、および顆粒またはビーズなどの多微粒子を圧縮することから得られるミニ錠剤(その後にカプセル剤中に充填することができる)が得られる)、当技術分野において公知の様々な手段によって達成することができる。物理的分離の別の形態は、例えば、1)成分の1つの多微粒子と、2)他の成分の顆粒もしくはビーズなどの多微粒子を圧縮することから得られる、1つの錠剤、いくつかの錠剤またはミニ錠剤とで充填されているカプセル剤である。
【0034】
「微粒子」という用語は、本明細書において使用する場合、それらのサイズ、形状または形態に関わらず、分離した粒子、ペレット、ビーズまたは顆粒の存在によって特徴付けられる物質の状態を意味する。複数の微粒子が存在するとき、これらは多微粒子と称される。典型的には、微粒子は、約3mm未満、好ましくは約1μm〜3mmの平均サイズを有する。「平均粒径」とは、少なくとも50%の微粒子が、概ね所与の値(重量による)未満の粒径を有することを意味する。粒径は、当業者には周知の従来の粒径測定技術によって測定した重量平均粒径に基づいて決定し得る。このような技術には、例えば、沈降場流動分画、光子相関分光、光散乱、およびディスク遠心分離が含まれる。
【0035】
「小錠剤」という用語は、本出願の範囲内で、約3〜5mmの外形寸法を有する錠剤を意味する。
【0036】
「ミニ錠剤」という用語は、本出願の範囲内で、概ね2〜30mg、例えば、概ね4〜9mg、例えば、概ね7mgの全重量がそれらのコーティングされていない形態にある小錠剤を意味する。ミニ錠剤は、本明細書に定義されているような多微粒子の特定の形態である。ミニ錠剤は、顆粒またはビーズなどの他のより小さな多微粒子からの調製を含めて、本明細書に記載のように調製することができる。ミニ錠剤は、錠剤について当業者にとって公知の任意の形状を有し得る(例えば、円形、例えば、約1.25〜3mmの直径を有する;円柱形、例えば、凸状の上面および凸状の下面を有し、例えば、円柱の直径および高さが、互いに独立に1〜3mmである;または両凸面のミニ錠剤、例えば、その高さおよび直径は概ね等しく、1.25〜3mmである)。
【0037】
好ましくは、多微粒子は、制御放出コーティングを有する。具体的には、多微粒子である成分a)および成分d)の混合物が使用される場合、各々の多微粒子は、異なる制御放出プロファイルを提供するために異なる制御放出コーティングを含む。
【0038】
「一定用量の組合せ」という用語は、単一の投与単位(例えば、錠剤またはカプセル剤)中に存在し、それ自体として投与される、確定した用量の2種の薬物または活性成分の組合せを意味する。さらに本明細書において使用する場合、「自由用量の組合せ」とは、同時に投与されるが、2つの別個の投与単位として投与される、2種の薬物または活性成分の組合せを意味する。
【0039】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、糖尿病性心筋症の進行を停止もしくは緩和し、またはそうでなければ完全にもしくは部分的に治癒し、または姑息的に状態に作用する、活性成分または薬剤の量を意味する。
【0040】
「予防的有効量」という用語は、糖尿病性心筋症の発症を予防する活性成分または薬剤の量を意味する。
【0041】
「温血動物または患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、これらに限定されないが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、サル、ウサギ、マウスおよび実験動物が含まれる。一実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0042】
「治療」という用語は、疾患、状態または障害の進行を予防し、根絶させ、または遅延させる目的のための、好ましくは疾患、状態または障害を根絶させる目的のための患者の管理およびケアを意味し、特に治療はまた予防的治療である。
【0043】
「予防」/「予防する」という用語は、健康な患者への合わせた調製品または医薬組成物などの薬物を予防的に投与し、疾患、状態または障害の発生を防止することを意味すると理解される。
【0044】
「進行の遅延」/「進行を遅延させる」という用語は、合わせた調製品または医薬組成物などの薬物を、疾患、状態または障害の前段階にある患者に投与することを意味すると理解される。
【0045】
「薬物」、「活性物質」、「活性成分」、「活性剤」という用語は、化合物が遊離形態、または特に本明細書において特定されるような薬学的に許容される塩の形態であることを意味すると理解される。
【0046】
化合物、塩、医薬組成物、疾患、障害などについて複数形が使用される場合、これは1種または複数の単一の化合物(複数可)、塩(複数可)、医薬組成物(複数可)、疾患(複数可)、障害(複数可)または同様のものを意味すると理解され、単数形または不定冠詞(「a」、「an」)が使用される場合、これは複数形または単数形(「one」)を含むことを意図する。
【0047】
「多糖類」という用語は、本明細書において使用する場合、糖類単位で構成されているポリマーを意味する。
【0048】
「多糖類」という用語は、糖類モノマーのホモポリマー、コポリマー、およびその誘導体を含むと定義され、直鎖状糖類鎖、非直鎖状糖類鎖および架橋糖類鎖を含む。
【0049】
「コポリマー」という用語は、2種のモノマー種の共重合によって得られるコポリマー、3種のモノマー種から得られるもの(「ターポリマー」)、4種のモノマー種から得られるもの(「四元ポリマー」)などを含めた、モノマーの複数の種に由来するポリマーと定義される。「コポリマー」という用語は、ランダムコポリマーおよび交互コポリマーを含むとさらに定義される。「ランダムコポリマー」という用語は、鎖中の任意の所与の部位において所与のモノマー単位を見出す確率が隣接する単位の性質と無関係である分子を含むコポリマーとして定義される。「交互コポリマー」という用語は、2つの種のモノマー単位が交互の順序で含まれる分子を含むコポリマーとして定義される。
【0050】
「ホモ多糖類」という用語は、本明細書において使用する場合、単一のタイプの糖類単位でできている多糖類を意味する。それには直鎖状、非直鎖状および架橋多糖類、特に非直鎖状および架橋多糖類が含まれる。一実施形態において、ホモ多糖類は、糖類単位が、α−グリコシド結合、またはα−およびβ−グリコシド結合の両方によって結合している直鎖状多糖類である。別の実施形態において、ホモ多糖類という用語は、糖類単位がグルコースではない直鎖状多糖類である。
【0051】
「ヘテロ多糖類」という用語は、本明細書において使用する場合、糖類単位の全てが同じタイプではない多糖類を意味する。それには直鎖状、非直鎖状および架橋ヘテロ多糖類が含まれる。
【0052】
「糖類単位」という用語は、本明細書において使用する場合、1つの糖類分子を意味する。糖類単位は、多糖類のモノマー単位である。「糖類」という用語には、炭水化物、例えば、グルコース、フルクトースまたはガラクトース、およびその誘導体(マンヌロン酸またはグルロン酸など)が含まれる。
【0053】
「直鎖状多糖類」という用語は、本明細書において使用する場合、その糖類単位が鎖様の様式で配置されている多糖類(鎖の間に分岐または架橋がない)を意味する。
【0054】
「架橋多糖類」という用語は、本明細書において使用する場合、多糖類を連結している架橋が存在する多糖類を意味する。
【0055】
「非直鎖状多糖類」または「分岐多糖類」という用語は、本明細書において使用する場合、少なくとも1つの分岐点、例えば、1〜3つの分岐点を有する糖類単位が存在する多糖類を意味する。この用語には、少なくとも1つの主鎖および少なくとも1つの末端の分岐を含む任意の多糖類が含まれる。
【0056】
「分岐」という用語には、本明細書において使用する場合、分岐糖類単位の側基の少なくとも一端に共有結合している、任意の糖類単位または直鎖状多糖類が含まれる。
【0057】
「インジゴチンLAKE12196」または「インジゴチンレーキ」または「インジゴチンfarBlack」または「インジゴチン」という用語は、例えば、UNIVAR LTDから市販されており、例えば、www.kremer−pigmente.comおよびhttp://www.foodadditivesworld.com/fdc−blue−no2−lake.htmlに記載されているような、着色剤、色素剤または染料を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0058】
請求項1に記載されている本発明による医薬組成物は、成分a)およびb)に加えて、請求項1に成分c)として記載されている充填剤を含むことを特徴とする。このような特定の充填剤の使用は驚いたことに、従来技術と関連する欠点を克服し、実施形態において下記を可能とする。
−適切な物理的および薬理学的特性を維持する一方で、成分a)の高い充填量(実施形態において、単位用量当たり300mg以上の医薬組成物)、ならびに従来の機器を使用した圧縮錠剤、特に二層錠剤などの多層錠剤の形態の医薬組成物を形成させる適性。
−破砕性および硬度などの適切な物性、実施形態においてさらには200〜300[N]超(350[N]までなど)などの高硬度を有する多層錠剤、特に二層錠剤の調製。
−崩壊時間および溶解プロファイルなどの、使用のための所望の特性の維持。
【0059】
本発明によって用いられる充填剤c)は、請求項1に同定されているようなc1)群〜c3)群から選択される。
【0060】
c3)群についてのタップ密度は、特にUSP<616>によって測定するような確立した基準によって決定する。特に、c3)群についてのタップ密度は、0.5〜1.5g/cm(0.6〜1.2g/cmなど)の範囲である。
【0061】
好ましい実施形態は、下記の通りである。
c1):マンニトールおよびソルビトール、最も好ましくはマンニトール
c2):ラクトース、スクロース、デキストロース、最も好ましくはラクトース
c3):デンプン、リン酸二カルシウム
【0062】
特に好ましいのは、マンニトールおよびラクトースである。1種のみの充填剤c)が本発明の医薬組成物中に存在することがさらに好ましい。
【0063】
本発明の医薬組成物の成分a)〜c)は好ましくは、医薬組成物の全重量に対して下記の重量比で用いられる。
重量比a):c):20:1〜1:1、特に15:1〜2:1、例えば8:1〜2:1、特に6:1〜3:1。これらの重量比は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、重量比はそれに応じて適合される。
重量比b):c):10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5、さらに好ましくは4:1〜2:1。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態において、成分a)は、医薬経口一定用量の組合せの全重量に対して、10〜45重量%(10〜40重量%など)、一実施形態において15〜35重量%(20〜30重量%など)の量で存在する。これらの割合は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、その割合はそれに応じて適合される。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、成分a)は、単位医薬経口一定用量の組合せ当たり、75〜300mg(150〜300mgなど)、特に75mg、150mgまたは300mg、例えば150mgまたは300mgの範囲の量で存在する。これらの量は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、その量はそれに応じて適合される。
【0066】
別の実施形態において、成分a)は、成分a)を含む顆粒の全重量に対して、40重量%以上、例えば50重量%以上、例えば60重量%以上の量で存在する。これらの割合は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、その割合はそれに応じて適合される。
【0067】
本発明によれば、さらなる実施形態において、二層錠剤などの多層錠剤において、成分a)は、成分a)を含む顆粒の全重量に対して、40〜70重量%、例えば45〜65重量%、例えば50〜65重量%の量で存在する。これらの割合は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、その割合はそれに応じて適合される。
【0068】
本発明の医薬組成物が両方の重量比を満たすときにさらに好ましく、すなわち、重量比a):c)およびb):c)が上記定義の通りであることが好ましく、両方の比が上記で同定したような各々の好ましい範囲内であるときがさらに好ましい。本発明が成分a)と第2の有効成分d)との一定の組合せの形態の医薬組成物に関するとき(下記に定義されている通り、特に、二層錠剤などの多層錠剤)、上記の所与の重量比は、成分a)を含有する一定用量の組合せの部分に適用される。例えば、医薬組成物が二層錠剤の形態で存在するとき、上記で示した重量比は、成分a)を含有する層に関する。
【0069】
さらなる実施形態において、本発明は、アリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を調製するための特定の方法を提供することによって、アリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩を含有する粒状体を調製するための公知の方法を調整することによって従来技術と関連する欠点を克服する。この方法は、請求項14に記載されており、好ましい一実施形態を、請求項15に示す。
【0070】
驚いたことに、新規な添加物を使用せずに単純な方法の調整によって、アリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩を含有する粒状体生成物(特に、二層錠剤などの多層錠剤)の製造の間に困難に遭遇することなく、このような生成物を提供することが可能となり、アリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩(アリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩は、投与単位当たり300mg(遊離塩基の場合である、塩が使用される場合、その量はそれに応じて適合される)以上などのより高い充填量で含有される)を含む圧縮錠剤、一定用量の組合せおよび/または多層錠剤(二層錠剤など)の調製を可能とすることがまた見出されてきた。請求項14に記載され、特に請求項15に記載されているような、アリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩を含有する造粒生成物の第2の処理ステップの使用によって、上記で同定したような生成物を調製するために非常に有益な特性を有する粒状体生成物を提供する。最終生成物の製造の前の第2の処理ステップの使用によって、細粒含量が減少し、かつ/またはバルクおよび/もしくはタップ密度が増加し、これによって、剤形の物理的特性または他の特性を犠牲にすることなく、より高い充填量のアリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩を有する医薬品剤形のさらには大規模の形成が驚いたことに可能とする。
【0071】
上記で同定した本発明の態様に関して、二層錠剤および医薬組成物についての本明細書に記載されているような好ましい実施形態はまた、上記のような新規で発明性のある方法のために適用されることが強調される。
【0072】
上記で示されているように、本発明は特に、本明細書に定義されているような医薬組成物の一定用量の組合せ、好ましくは経口一定用量の組合せを意図し、第2の有効成分d)は、成分a)とは異なる。このような一定用量の組合せは、任意の所望の方法で製剤してもよく、特に好ましいのは、二層錠剤などの多層錠剤である。このような一定用量の組合せの成分b)は所望の通りに選択し得るが、好ましくは成分d)は、バルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩である。このような一定用量の組合せにおいて、成分d)は、適切な組成物の形態で、すなわち本明細書において記載されているような添加物と一緒になって存在し得る。しかし、成分d)または一定用量の組合せの各々の部分を含む組成物が、成分a)からc)を含む本発明の医薬組成物について、本明細書に定義されているような充填剤c)を含まないことが好ましい。
【0073】
下記において、本発明を、成分d)としてバルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む、多層錠剤、特に二層錠剤に関してより詳細に記載する。しかし、これは限定するものとして解釈すべきではなく、ここで記載するような実施形態は同様に、他の一定用量の組合せ、および本発明の医薬組成物の他の実施形態に適用する。
【0074】
本発明の別の好ましい実施形態において、成分a)は、医薬経口一定用量の組合せの全重量に対して、10〜45重量%(10〜40重量%など)、一実施形態において15〜35重量%(20〜30重量%など)の量で存在する。これらの割合は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、その割合はそれに応じて適合される。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、成分a)は、単位医薬経口一定用量の組合せ当たり、75〜300mg(150〜300mgなど)、特に75mg、150mgまたは300mg、例えば150mgまたは300mgの範囲の量で存在する。これらの量は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、その量はそれに応じて適合される。
【0076】
本発明によれば、別の実施形態において、二層錠剤などの多層錠剤において、成分a)は、成分a)を含む層の全重量に対して、40重量%以上、例えば50重量%以上、例えば60重量%以上の量で存在する。これらの割合は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、その割合はそれに応じて適合される。
【0077】
さらなる実施形態において、本発明によれば、二層錠剤などの多層錠剤において、成分a)は、成分a)を含む層の全重量に対して、40〜70重量%、例えば45〜65重量%、例えば50〜65重量%の量で存在する。これらの割合は成分a)の遊離塩基に基づいており、塩が使用される場合、その割合はそれに応じて適合される。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、成分d)は、医薬経口一定用量の組合せの全重量に対して、8〜45重量%、例えば15〜35重量%、特に20〜30重量%の範囲の量で存在する。これらの割合は成分d)の遊離酸に基づいており、塩が使用される場合、その割合はそれに応じて適合される。
【0079】
成分d)は、単位剤形当たり75〜350mg、例えば80mg〜320mg、例えば160〜320mg、特に80mg、160mgまたは320mg、例えば160mgまたは320mgの範囲の量で存在することが好ましい。これらの量は成分d)の遊離酸に基づいており、塩が使用される場合、その量はそれに応じて適合される。
【0080】
一実施形態において、300mgのa)および/または320mgのd)、最も好ましくは300mg/320mgのa)/d)を使用した高い薬物充填量を使用することが好ましい。これらの量は成分a)の遊離塩基および成分d)の遊離酸に基づいており、塩が使用される場合、その量はそれに応じて適合される。
【0081】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、治療する状態の進行を停止もしくは緩和し、またはそうでなければ完全にもしくは部分的に治癒し、または姑息的に状態に作用する、活性成分または薬剤の量を意味する。「薬物」、「活性物質」、活性成分」、「活性剤」などという用語は、本明細書において使用する場合、他に特定しない限り、成分a)およびd)を意味する。成分a)またはd)の各々は、「薬物」、「活性物質」、活性成分」、「活性剤」などと称することができる。
【0082】
上記および下記において、「アリスキレン」という用語は、具体的に定義しない場合、遊離塩基として、およびその塩、特に薬学的に許容されるその塩(ヘミ−フマル酸塩、硫酸水素塩、オロト酸塩または硝酸塩など)、最も好ましくはそのヘミ−フマル酸塩としての両方で理解される。
【0083】
アリスキレン、または薬学的に許容されるその塩は、例えば、それ自体公知の態様で、特に、EP678503A、例えば、実施例83に記載されているように調製することができる。
【0084】
下記において、「バルサルタン」という用語は、具体的に定義しない場合、遊離塩基として、および下記のようなその塩、特に薬学的に許容されるその塩としての両方であると理解される。
【0085】
バルサルタン、または薬学的に許容されるその塩は、例えば、それ自体公知の態様で調製することができる。好ましい塩の形態には、酸付加塩が含まれる。少なくとも1つの酸基を有する化合物(例えば、COOHまたは5−テトラゾリル)はまた、塩基との塩を形成することができる。適切な塩基との塩は、例えば、金属塩、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩、またはアンモニアまたは有機アミンを有する塩、例えば、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−、ジ−もしくはトリ−低級アルキルアミン、例えば、エチル−、tert−ブチル−、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−もしくはジメチルプロピルアミン、またはモノ、ジもしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えば、モノ−、ジ−もしくはトリ−エタノールアミンである。相当する内部塩が、さらに形成されてもよい。製薬学的用途に適さないが、例えば、遊離化合物Iまたは薬学的に許容されるこれらの塩の単離または精製のために用いることのできる塩がまた含まれる。さらにより好ましい塩は、例えば、アモルファス形態のモノ−ナトリウム塩;アモルファスまたは結晶形態、特にその水和物形態のバルサルタンのジ−ナトリウム塩から選択される。
【0086】
アモルファス形態のバルサルタンのモノ−カリウム塩;アモルファスまたは結晶形態、特にその水和物形態のバルサルタンのジ−カリウム塩。
【0087】
結晶形態、特に水和物形態、主にその四水和物のバルサルタンのカルシウム塩;結晶形態、特に水和物形態、主にその六水和物のバルサルタンのマグネシウム塩;結晶形態、特に水和物形態のバルサルタンのカルシウム/マグネシウム混合塩;結晶形態、特に水和物形態のバルサルタンのビス−ジエチルアンモニウム塩;結晶形態、特に水和物形態のバルサルタンのビス−ジプロピルアンモニウム塩;結晶形態、特に水和物形態、主にその半水和物のバルサルタンのビス−ジブチルアンモニウム塩;アモルファス形態のバルサルタンのモノ−L−アルギニン塩;アモルファス形態のバルサルタンのビス−L−アルギニン塩;アモルファス形態のバルサルタンのモノ−L−リシン塩;アモルファス形態のバルサルタンのビス−L−リシン塩。
【0088】
最も好ましくは、バルサルタンは、遊離酸として使用される。
【0089】
本発明による一定用量の組合せは、溶解プロファイルなどの所望特性を示すように適切に選択する必要がある。典型的には、一定用量の組合せは、固体剤形である。
【0090】
本発明の経口一定用量の組合せは好ましくは、調節放出プロファイルと見なされる、成分a)およびd)の両方、さらに好ましくは成分a)の放出プロファイルを示す。本発明の経口一定用量の組合せは好ましくは、即時放出プロファイルと見なされる、成分d)の放出プロファイルを示す。本発明の好ましい実施形態において、経口一定用量の組合せの2種の有効成分a)およびd)の放出プロファイルは、非同期性である。一実施形態において、両方の成分は、非同期性放出プロファイルを伴い連続的に放出され、それによって成分の1つ、好ましくは成分a)は修飾され、連続したより遅い速度で放出される。別の実施形態において、成分の1つ、好ましくは成分a)は、成分d)と比較して成分a)のタイムラグをもたらすように、時間遅延を伴って放出される。
【0091】
好ましくは、本発明の医薬経口一定用量の組合せは、成分a)およびd)が物理的に分離しているように設計する。医薬経口一定用量の組合せのための典型的な技術および製剤原理には、二層錠剤などの多層錠剤が含まれる。
【0092】
したがって、本発明は特に、二層錠剤の形態の医薬経口一定用量の組合せに関する。
【0093】
本発明による二層錠剤は、1層が成分a)を含有し、他の層が成分d)を含有することを特徴とする。両方の層は単一の相で構成されていてもよく、または1つもしくは両方の層は、当業者に公知のように内相および外相を含み得る。好ましくは、両方の層は、内相および外相を含む。
【0094】
二層錠剤は、当技術分野において公知の方法、特に、成分a)または成分d)を含有する個々の錠剤を調製するために記載される方法によって製造することができる。好ましくは、層の各々は、湿式または乾式造粒を使用して調製することができる。湿式造粒の例は、水性または有機湿式造粒、特に下記のような有機湿式造粒である。乾式造粒の好ましい例には、例えば、下記に記載されているようなローラー圧縮が含まれる。乾式造粒方法は、これらが溶媒の使用を回避し、さらなる乾燥ステップを避けるため好ましい。本発明の二層錠剤のために、個々の層は、同じまたは異なる方法によって調製することができ、例えば、1層は、湿式造粒によって調製することができ、第2の層は、ローラー圧縮によって調製することができ、あるいは最も好ましくは、両方の層は、ローラー圧縮を使用して調製することができる。
【0095】
医薬組成物中、特に錠剤(多層錠剤、特に本発明による二層錠剤など)の形態における使用に適した薬学的に許容される添加物には、これらに限定されないが、賦形剤または充填剤、崩壊剤、流動促進剤、滑沢剤、結合剤、着色剤およびこれらの組合せが含まれる。好ましい薬学的に許容される添加物には、充填剤および結合剤が含まれる。医薬経口一定用量の組合せ中の各添加物の量は、当技術分野で通常の範囲内で変化し得る。
【0096】
適切な充填剤には、これらに限定されないが、微結晶性セルロース(例えば、セルロースMK GR)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびこれらの組合せ、好ましくは、微結晶性セルロース、例えば、登録商標AVICEL、FILTRAK、HEWETENまたはPHARMACELで入手可能な製品が含まれる。存在するとき、成分a)を含有する層中の充填剤は、二層錠剤の約1重量%〜約30重量%、好ましくは約2重量%〜約20重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。存在するとき、成分d)を含有する層中の充填剤は、二層錠剤の約1重量%〜約40重量%、好ましくは約10重量%〜約25重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。好ましくは、両方の層は、充填剤を含有する。
【0097】
適切な結合剤には、これらに限定されないが、ポリビニルピロリドン(PVP)、(例えば、PVP K30またはPVP90Fなど)、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG4000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(両方とも好ましくは、中粘度から高粘度のもの、例えば、粘度グレード3cpsまたは6cps)、アルファ化デンプンおよびこれらの組合せが含まれる。最も好ましい結合剤は、PVP K30またはPVP90Fである。成分a)を含有するローラー圧縮層は好ましくは、内相中に結合剤を含有し、成分a)を含有する湿式造粒層は好ましくは、内相および外相中に結合剤を含有する。存在するとき、成分a)を含有する層中の結合剤は、二層錠剤の約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約0.5重量%〜約15重量%、例えば0.7重量%〜10重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。存在するとき、成分d)を含有する層中の結合剤は、二層錠剤の約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約0.2重量%〜約10重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。
【0098】
適切な滑沢剤には、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、アルミニウムまたはケイ酸カルシウム、ステアリン酸、cutina、PEG4000〜8000、タルクおよびこれらの組合せ、好ましくはステアリン酸マグネシウムが含まれる。存在するとき、成分a)を含有する層中の滑沢剤は、二層錠剤の約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは約0.5重量%〜約3重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。存在するとき、成分d)を含有する層中の滑沢剤は、二層錠剤の約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは約0.5重量%〜約3重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。好ましくは、両方の層は、いずれの場合にも、好ましくは外相および内相の両方において滑沢剤を含有する。
【0099】
適切な崩壊剤には、これらに限定されないが、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、架橋PVP(例えば、クロスポビドン、POLYPLASDONEまたはKOLLIDON XL)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムおよびグアーガム、最も好ましくは架橋PVP(クロスポビドン)、架橋CMC(Ac−Di−Sol)、カルボキシメチルデンプン−Na(PlRIMOJELおよびEXPLOTAB)が含まれる。最も好ましい崩壊剤は、架橋PVP、好ましくはPVPPXLである。存在するとき、成分a)を含有する層中の崩壊剤は、二層錠剤の約0.5重量%〜約20重量%、好ましくは約1重量%〜約3重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。存在するとき、成分d)を含有する層中の崩壊剤は、二層錠剤の約1重量%〜約20重量%、好ましくは約2重量%〜約12重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。好ましくは、崩壊剤は、成分a)を含有する層、特に成分a)を含有するローラー圧縮層中に存在しない。成分a)を含有する湿式造粒層は、崩壊剤を含有し得る。好ましくは、成分d)を含有する層には、崩壊剤が含まれる。
【0100】
適切な流動促進剤には、これらに限定されないが、コロイド状二酸化ケイ素(例えば、Aerosil200)、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルクおよびこれらの組合せが含まれる。存在するとき、成分a)を含有する層中の流動促進剤は、二層錠剤の約00.05重量%〜約5重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。存在するとき、成分d)を含有する層中の崩壊剤は、二層錠剤の約0.05重量%〜約5重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の範囲の量で用いてもよい(任意の任意選択のフィルムコーティングの前に)。
【0101】
本発明の第1の実施形態の医薬経口一定用量の組合せは、低破砕性の二層錠剤医薬経口一定用量の組合せである。好ましくは、破砕性は0.8%以下である。破砕性は、当業者には公知の標準的方法によって測定する。薬局方USP<1216>およびEP2.9.7およびJPに記載されている整合された手順を参照されたい。
【0102】
本発明の第1の実施形態の医薬経口一定用量の組合せは、適切な硬度の二層錠剤医薬経口一定用量の組合せである(硬度を決定するための方法を示すべきである)(例えば、二層形態について、約200[N]〜約350Nの範囲の平均硬度)。このような平均硬度は、医薬経口一定用量の組合せの上に任意のフィルムコーティングを塗布する前に決定する。その点において、本発明の好ましい一実施形態は、フィルムコーティングされた医薬経口一定用量の組合せを対象とする。適切なフィルムコーティングは公知であり、市販されており、または公知の方法に従って作製することができる。典型的にはフィルムコーティング材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、タルクおよび着色剤などの材料を含むポリマーフィルムコーティング材料である。典型的には、フィルムコーティング材料は、フィルムコート錠の約1重量%〜約6重量%の範囲のフィルムコーティングを提供するような量で塗布する。
【0103】
本発明のさらなる実施形態は、本発明による二層錠剤の製造方法である。成分a)を含有する1層および成分d)を含有する1層を含む二層錠剤は、下記の方法によって調製することができる。(1)任意選択で造粒液の存在下で、成分a)および薬学的に許容される添加物を造粒して、アリスキレン粒状体を形成するステップと;(2)成分d)および薬学的に許容される添加物を造粒して、バルサルタン粒状体を形成するステップと;(3)このように得られた各々の粒状体を任意選択で乾燥させるステップと;(4)ふるい分けするステップと;(5)各々の粒状体を外側相の添加剤と任意選択で混合するステップと;(6)バルサルタン粒状体およびアリスキレン粒状体を一緒に圧縮して、二層錠剤を形成するステップとを含む。成分a)およびd)、ならびに薬学的に許容される添加物に関する詳細、すなわち、源、量などを、上記に記載する。
【0104】
方法の第1のステップにおいて、成分a)を、任意選択で造粒液の存在下で薬学的に許容される添加物と共に造粒して、アリスキレン粒状体を形成させる。造粒液は、造粒の技術分野において周知の任意の液体または液体混合物(エタノール、エタノールおよび水の混合物、エタノール、水およびイソプロパノールの混合物など)でよく、前記混合物は、本明細書に記載されているものなどの結合剤を含有し得る。この方法はしたがって有機湿式造粒と称される。エタノールおよび水の好ましい混合物は、約50/50〜約99/1(%w/w)の範囲であり、最も好ましくは約94/6(%w/w)である。エタノール、水およびイソプロパノールの好ましい混合物は、約45/45/5〜約98/1/1(%w/w/w)、最も好ましくは約88.5/5.5/6.0〜約91.5/4.5/4.0(%w/w/w)の範囲である。好ましい実施形態において、造粒は、結合剤のエタノール性溶液およびさらなるエタノールによって行われる。アリスキレンの造粒は、任意の適切な手段によって達成することができる。アリスキレンの造粒は典型的には、下記の方法(湿式造粒)を使用して達成される。(1)造粒液の存在下で、成分a)および薬学的に許容される添加物をブレンドして、ブレンドされた材料を形成し;(2)ブレンドされた材料を乾燥させ、(3)ブレンドされた材料をふるい分けし;(4)ふるい分けした材料をスクリーニングして、適当なアリスキレン粒状体画分を単離する。代わりに、アリスキレンの造粒は、下記のような別の方法(乾式造粒)を使用して達成される。(1)成分a)および薬学的に許容される添加物をブレンドして、ブレンドされた材料を形成し;(2)ブレンドされた材料をふるい分けし;(3)ふるい分けした材料をブレンドして、最終的ブレンド材料を形成し;(4)最終的ブレンド材料を圧縮して、圧縮された材料を形成し;(5)圧縮された材料を粉砕して、粉砕された材料を形成し;(6)粉砕された材料をブレンドして、アリスキレン粒状体を形成する。
【0105】
当技術分野で用いられる造粒、乾燥、ふるい分けおよび混合の多数の公知の方法、例えば、流動床におけるスプレー造粒、高剪断ミキサーにおける湿式造粒、溶融造粒、流動床乾燥器における乾燥、フリーフォール(free-fall)またはタンブルブレンダーにおける混合、シングルパンチまたはロータリー式打錠機における錠剤への圧縮が注目される。ブレンドのステップは、任意の適切な手段を使用して達成することができる。典型的には、成分a)および薬学的に許容される添加物を、拡散ブレンダーまたは拡散ミキサーなどの適切な容器に送る。ステップの乾燥は、例えば、任意の適切な手段を使用して達成することができる。ふるい分けのステップは、任意の適切な手段を使用して、例えば、振動ふるいを使用して達成することができる。スクリーニングのステップは、任意の適切な手段を使用して達成することができる。圧縮のステップは、任意の適切な手段を使用して達成することができる。典型的には圧縮は、約20kN〜約60kNの範囲、好ましくは約35kNの圧縮力のローラーコンパクターを使用して達成される。圧縮はまた、ブレンドした粉末を大きな錠剤に形成し、次いでそれのサイズを縮めることによって行い得る。粉砕のステップは、任意の適切な手段を使用して達成することができる。典型的には圧縮された材料を、スクリーニングミルを通して粉砕する。好ましくは、粉砕された材料を、しばしば薬学的に許容される添加物(滑沢剤など)と共に拡散ブレンダー中でブレンドする。
【0106】
方法の第2のステップにおいて、成分d)を薬学的に許容される添加物と共に造粒して、バルサルタン粒状体を形成する。バルサルタンの造粒は、任意の適切な手段によって達成することができる。本発明の好ましい実施形態において、バルサルタンの造粒は、(1)成分d)および薬学的に許容される添加物をブレンドして、ブレンドされた材料を形成し;(2)ブレンドされた材料をふるい分けし;(3)ふるい分けした材料をブレンドして、最終的ブレンド材料を形成し;(4)最終的ブレンド材料を圧縮して、圧縮された材料を形成し;(5)圧縮された材料を粉砕して、粉砕された材料を得て、(6)粉砕された材料をブレンドして、バルサルタン粒状体を形成することによって達成する。
【0107】
ステップ(1および3)のブレンドは、任意の適切な手段を使用して達成することができる。典型的には成分d)および薬学的に許容される添加物を、拡散ブレンダーまたは拡散ミキサーなどの適切な容器に送る。ステップ(2)のふるい分けは、上述したものなどの任意の適切な手段を使用して達成することができる。ステップ(4)の圧縮は、任意の適切な手段を使用して達成することができる。例えば、典型的には成分b)について、圧縮は、約20kN〜約60kNの範囲、好ましくは約35kNの圧縮力のローラーコンパクターを使用して達成する。圧縮はまた、ブレンドした粉末を大きな錠剤に形成し、次いでそれのサイズを縮めることによって行い得る。ステップ(5)の粉砕は、任意の適切な手段を使用して達成することができる。典型的には圧縮された材料を、スクリーニングミルを通して粉砕する。ステップ(6)のブレンドは、任意の適切な手段を使用して達成することができる。好ましくは、粉砕された材料を、しばしば薬学的に許容される添加物(滑沢剤など)と共に拡散ブレンダー中でブレンドする。
【0108】
この方法のさらなるステップにおいて、薬学的に許容される添加物を、バルサルタン粒状体および/またはアリスキレン粒状体に加え得る。これは、外側相中に添加物を加えると記載される。各々のアリスキレンおよびバルサルタン粒状体は、内側相と称される。添加物は、部分的に粒状体中(内側相中)および部分的に外側相中に分布していてもよく、これは好ましくは記載されている本発明における場合である。充填剤、滑沢剤および流動促進剤(存在する場合)、さらに好ましくは、滑沢剤は、部分的に内側相中および部分的に外側相中に分布することができ、結合剤(存在する場合)は好ましくは、内側相の唯一の部分である。
【0109】
この方法の最終ステップにおいて、バルサルタン粒状体(添加物を含めた)およびアリスキレン粒状体(添加物を含めた)を一緒に圧縮して、二層錠剤を形成させる。圧縮は、任意の適切な手段を使用して達成することができる。典型的には圧縮は、二層ロータリー式打錠機を使用して達成する。典型的な圧縮力は、約5kN〜約35kNの範囲である。好ましくは、成分d)を含有する層を事前圧縮し、成分a)を含有する層をこのように得られた事前圧縮した層に加え、次いで両方の層を圧縮する。
【0110】
任意選択で、この方法は、二層錠剤をフィルムコーティングするステップを含む。フィルムコーティング材料に関する詳細、すなわち、成分、量などは、上記の通りである。フィルムコーティングは、任意の適切な手段を使用して達成することができる。適切なフィルムコーティングは公知であり、市販されており、または公知の方法によって作製することができる。典型的にはフィルムコーティング材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、タルクおよび着色剤などの材料を含むポリマーフィルムコーティング材料である。典型的には、フィルムコーティング材料は、フィルムコート錠の約1重量%〜約6重量%の範囲のフィルムコーティングを提供するような量で塗布する。
【0111】
本発明によるこのように得られた製剤は、下記の利点を示す。
・比較的高い薬物充填量が容易に達成し得る。
・十分な硬度、破砕性に対する抵抗、崩壊時間などを伴う医薬経口一定用量の組合せの製剤が可能である。
・ロバストな製造工程が達成される。
・再現性のある性能をもたらす製剤および工程のスケールアップが達成される。
・合理的な保存寿命を達成するための十分な安定性が達成される。
【0112】
本発明は同様に、本明細書の上記に記載するような医薬経口一定用量の組合せの調製方法に関する。このような医薬経口一定用量の組合せは、適切な量の本明細書の上記で定義されているような成分を後処理することによって生成して、単位医薬経口一定用量の組合せを形成し得る。
【0113】
本発明の医薬組成物、および(経口)一定用量の組合せは、収縮期もしくは拡張期または両方の血圧を低下させるのに有用である。本発明が有用である状態には、これらに限定されないが、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、収縮期、または他の二次性型)、うっ血性心不全、狭心症(安定または不安定)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能障害(アルツハイマー病など)および脳卒中、頭痛および慢性心不全が含まれる。
【0114】
本発明は同様に、このような治療を必要としているヒト患者を含めた動物に、治療的に有効な本発明による医薬組成物または(経口)一定用量の組合せを投与することを含む、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、収縮期、または他の二次性型)、うっ血性心不全、狭心症(安定または不安定)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能障害、例えば、アルツハイマー病、脳卒中、頭痛および慢性心不全を治療する方法に関する。
【0115】
本発明は同様に、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、収縮期、または他の二次性型)、うっ血性心不全、狭心症(安定または不安定)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能障害、例えば、アルツハイマー病、脳卒中、頭痛および慢性心不全の治療のための医薬の製造のための、本発明による医薬組成物または(経口)一定用量の組合せの使用に関する。
【0116】
本発明は同様に、本発明による医薬経口一定用量の組合せを含む、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、収縮期、または他の二次性型)、うっ血性心不全、狭心症(安定または不安定)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能障害、例えば、アルツハイマー病、脳卒中、頭痛および慢性心不全の治療のための医薬組成物に関する。
【0117】
究極的に、投与される活性剤および特定の製剤の正確な用量は、いくつかの要因、例えば、治療する状態、所望の治療期間、および活性剤の放出速度によって決まる。例えば、必要とする活性剤の量およびその放出速度は、血漿中の特定の活性剤濃度が治療効果のために許容されるレベルのままである期間はどれくらいかを決定する公知のインビトロまたはインビボの技術に基づいて決定し得る。
【0118】
上記の説明は、その好ましい実施形態を含めて、本発明を完全に開示する。本明細書において特に開示されている実施形態の調整および改善は、下記の特許請求の範囲内である。さらに工夫することなく、当業者は、上記の記載を使用して、本発明をその最大限まで利用することができると考えられる。したがって、本明細書において実施例は、単に例示的なものであり、本発明の範囲を決して限定するものではないと解釈される。
【実施例1】
【0119】
二層錠剤製剤
アリスキレンおよびバルサルタン錠剤(mg/単位)の組成
ローラー圧縮されたアリスキレン層を調製するために、アリスキレン層の成分を、本明細書に記載されているように、混合、造粒および任意選択で圧縮した。バルサルタン層の成分を、本明細書に記載されているように混合、造粒および圧縮した。バルサルタン層を、全ての二層の変形について、エキセントリック型打錠機に充填し、<2.5kNの圧縮力で圧縮した。アリスキレン層をバルサルタン層の上に加え、次いで錠剤コアを5〜40kNで圧縮し、二層錠剤コアを得た。
【0120】
【表1】

【実施例2】
【0121】
二層錠剤製剤
【0122】
【表2】

【実施例3】
【0123】
二層錠剤製剤
【0124】
【表3】

【実施例4】
【0125】
二層錠剤製剤
【0126】
【表4】

【実施例5】
【0127】
二層錠剤製剤
【0128】
【表5】

【実施例6】
【0129】
溶解試験
本発明による製剤の溶解特性は、下記のように確認した。
【0130】
アセンブリーは下記からなる。ガラスまたは他の不活性で透明な材料でできているカバー付きの容器;モーター、ならびに撹拌要素としてブレードおよびシャフトから形成されるパドル。容器を任意の都合がよいサイズの適切な水バス中に部分的に浸漬し、または加熱ジャケット中に配置する。水バスまたは加熱ジャケットによって、試験の間、容器内の温度を37±0.5°で保持し、バス液が一定に滑らかに移動し続けることが可能となる。
【0131】
アセンブリーが置かれた環境を含めて、アセンブリーの部分は、滑らかに回転する撹拌要素によって生じるものを超えたかなりの動き、揺れ、または振動をもたらさない。試験の間に標本および撹拌要素の観察を可能とする装置は、下記の寸法および容量を有する。高さは160mm〜210mmであり、その内径は98mm〜106mmである。その側面は上部で広がっている。ぴったりと合ったカバーを使用して、蒸発を遅らせ得る。その軸がどの時点であっても容器の垂直軸から2mm以下であり、かなりの揺れなく滑らかに回転するように、シャフトを配置する。ブレードの垂直中心線はシャフトの軸を通過し、その結果ブレードの底はシャフトの底と重なっている。パドルのデザインは、USP<711>、図2に示す通りである。ブレードと容器の内底の間の25±2mmの距離を試験の間維持する。金属性または適宜不活性で強固なブレードおよびシャフトは、単一の実体を含む。適切な2つのパーツの脱着式のデザインを使用してもよく、ただし、試験の間アセンブリーはしっかりと係合し続ける。パドルのブレードおよびシャフトを、適切な不活性なコーティングでコーティングし得る。ブレードの回転を開始する前に、投与単位を容器の底に沈下させる。小さな遊離断片(loose piece)の非反応性材料(せいぜい数回転分のワイヤヘリックスなど)を、そうでなければ浮かぶであろう投与単位に付着させてもよい。他の有効なおもり装置を使用し得る。
【0132】
pH4.5±0.05に調節した1リットルの緩衝化水溶液(13.61gのリン酸水素カリウムを750mlの脱イオン水に溶解し、脱イオン水で1Lに希釈することによって得た0.1Mのリン酸緩衝液;本明細書において下記で「溶解媒体」と称する)を装置の容器中に入れ、装置を組み立て、溶解媒体を37±0.5°に保ち、温度計を取り出す。1つの剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)を装置上に置き、剤形単位の表面からの気泡を除くように気を付け、直ちに装置を75+3rpmの速度で操作する。
【0133】
規定した時間間隔(例えば、10分、20分、30分、45分、60分、90分および120分)以内で、または定められた時間の各々で、標本(≧1ml)を、溶解媒体の表面と回転ブレードの上部との間のゾーンの中ほど(容器の壁から1cm以上)から取り出す。[NOTE−分析のために取り出した一定分量を37°で等しい容量の新鮮な溶解媒体と置き換え、または媒体の置換が必要ないことを示すことができる場合、容量変化を計算で補正する。試験の期間中、容器を覆い続け、適切な時間での試験中の混合物の温度を検証する]。標本を適切なフィルター、例えば、0.45μmのPVDFフィルター(Millipore)を通して濾過し、最初の数ml(2〜3ml)の濾液を廃棄する。分析は、HPLCまたはUV検出によって行う。さらなる剤形単位について、試験は少なくとも6回繰り返す。
【0134】
本発明によって調製された二層錠剤の例は全て、下記の表に記載の適切な溶解特性を有した。
【0135】
【表6】

【実施例7】
【0136】
自由な組合せおよび一定用量の組合せの生物学的同等性
アリスキレン/バルサルタン(300mg/320mg)錠剤の一定の組合せ、ならびにアリスキレン(300mg)およびバルサルタン(320mg)の自由な組合せの生物学的同等性を決定するための非盲検、無作為化、2治療、クロスオーバー単回投与試験を、78人の健康な対象で行った。300mg/320mgのアリスキレン/バルサルタンの一定の組合せ錠剤は、300mgのアリスキレンおよび2×160mgのバルサルタンカプセル剤の自由な組合せと生物学的に同等であった。アリスキレンおよびバルサルタン両方のAUC/Cmaxについての幾何平均比の90%信頼区間は0.80〜1.25の生物学的同等性の限度内に含有されたが、これは試験製剤が参照製剤と生物学的に同等であることを示す。300mg/320mgのアリスキレン/バルサルタン錠剤の一定の組合せからのアリスキレンおよびバルサルタンの吸収の速度および程度は、300mgのアリスキレン錠剤および2つの160mgのバルサルタンカプセル剤の自由な組合せからのアリスキレンおよびバルサルタンの吸収の速度および程度と同様であった。自由な組合せおよび一定の組合せの両方は、安全で耐容性良好であった。
【0137】
各対象から集めた血液で薬物動態学的測定を行った。合わせたLC/MS/MS法を使用して、同じ血漿試料中でアリスキレンおよびバルサルタンを検出した。定量化の下限は、アリスキレンについて0.5ng/mlおよびバルサルタンについて5.0ng/mlであった。PKパラメーターは、ノンコーパートメント法を使用して血漿中で決定した。
【0138】
アリスキレンおよびバルサルタンの対数変換AUC0−tlast、AUC0−infおよびCmax測定は、線形混合作用モデルを使用して別々に分析した。下記の薬物動態学的方法を、アリスキレンおよびバルサルタンについて決定した。
AUC0−tlast:ゼロ時間からtlast時間までの濃度−時間曲線下面積、tlastは、測定可能な濃度を伴う最後の時点である(ng時間/ml)。
AUC0−inf:ゼロ時間から無限時間までの血漿濃度−時間曲線下面積(ng時間/ml)。
max:最大(ピーク)血漿濃度(ng/ml)。
max:ピークまたは最高濃度に達する時間(時間)。
1/2:片対数濃度−時間曲線(時間)の末端勾配(terminal slope)(□)と関連する消失半減期。
【0139】
PKパラメーターの統計解析
下記の表におけるデータは、AUCおよびCmaxが、アリスキレンおよびバルサルタンの両方について0.8〜1.25の同等性の限度内に含有されたことを示す。300mg/320mgのアリスキレン/バルサルタン錠剤の一定の組合せは、300mgのアリスキレン錠剤および2つの160mgのバルサルタンカプセル剤の自由な組合せと生物学的に同等であったことをこれは示す。
【0140】
【表7】

【0141】
アリスキレンのAUC0−tlast、AUC0−infおよびCmaxについての対象間の変動係数(CV)は、各々33.98%、33.19%および51.90%であり、バルサルタンのAUC0−tlast、AUC0−infおよびCmaxについての対象間のCVは、各々28.56%、28.33%および40.37%であった。
【0142】
アリスキレンPK:バルサルタンとの自由な組合せおよび一定用量の組合せ
アリスキレン(300mg)錠剤および2つの160mgのバルサルタンカプセル剤の自由な組合せの投与に続いて得たものと比較して、アリスキレンの平均血漿濃度−時間プロファイルは、300mg/320mgのアリスキレン/バルサルタンの一定の組合せ錠剤の単一の経口用量に続いて同様であった。AUC0−tlastおよびCmaxについての幾何平均比(90%CI)は、各々0.99(0.91〜1.08)および0.97(0.85〜1.10)であった。両方の治療におけるAUCおよびCmaxと関連する対象間の変動性(%CV)は同様であった。平均半減期およびTmax中央値はまた、治療の間に同様であった。
【0143】
【表8】

【0144】
バルサルタンPK:アリスキレンとの自由な組合せおよび一定用量の組合せ
アリスキレン(300mg)錠剤および2つの160mgのバルサルタンカプセル剤の自由な組合せの投与に続いて得たものと比較して、アリスキレンの平均血漿濃度−時間プロファイルは、300mg/320mgのアリスキレン/バルサルタンの一定の組合せ錠剤の単一の経口用量に続いて同様であった。AUC0−tlastおよびCmaxについての幾何平均比(90%CI)は、各々1.09(1.01〜1.17)および1.09(0.98〜1.20)であった。両方の治療におけるAUCおよびCmaxと関連する対象間の変動性(%CV)は同様であった。平均半減期およびTmax中央値はまた、治療の間に同様であった。
【0145】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)治療有効量のアリスキレン、または薬学的に許容されるその塩と、
b)充填剤と、
c)充填剤b)と異なり、かつ
c1)アルジトール、
c2)単糖類、二糖類、三糖類、および多糖類、ならびに
c3)0.5〜1.5g/cmの範囲のタップ密度を有する充填剤
から独立に選択される1種または複数、例えば、1〜3種の充填剤と
を含み、ただし、インジゴチンレーキが組成物中に含まれる場合、インジゴチンレーキは単位用量当たり0.13mg、0.2mg、0.25mgまたは0.5mgの量ではない、医薬組成物。
【請求項2】
充填剤c)が、マンニトールおよびソルビトールから選択されるアルジトールである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
充填剤c)が、単糖類または二糖類であり、好ましくはラクトース、スクロースおよびデキストロースから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
充填剤c)が、化合物c3)の群、好ましくはデンプンまたはリン酸二カルシウムから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
錠剤の形態の、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物を含有する1層と、成分a)とは異なる医薬有効成分d)を含む第2の層とを含む二層錠剤の形態の、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
成分a)とは異なる医薬有効成分d)が、バルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
成分a)およびc)が、組成物の全重量に対して、15:1〜2:1、好ましくは8:1〜2:1、さらに好ましくは6:1〜3:1の重量比で存在する、請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
成分b)およびc)が、組成物の全重量に対して、5:1〜1:5、好ましくは4:1〜1:2の重量比で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
300mg以上のアリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
成分a)が、成分a)を含む顆粒の全重量に対して40〜70重量%の量で存在する、請求項1から10のいずれかに記載の医薬経口一定用量の組合せ。
【請求項12】
高血圧症、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能障害、脳卒中、頭痛および慢性心不全、特に高血圧症の治療のための、請求項1から11のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
(1)任意選択で造粒液の存在下で、成分a)からc)および薬学的に許容される添加物を造粒して、アリスキレン粒状体を形成するステップと;(2)成分d)および薬学的に許容される添加物を造粒して、バルサルタン粒状体を形成するステップと;(3)このように得られた各々の粒状体を任意選択で乾燥させるステップと;(4)ふるい分けするステップと;(5)各々の粒状体を外側相の添加剤と任意選択で混合するステップと;(6)バルサルタン粒状体およびアリスキレン粒状体を一緒に圧縮して、二層錠剤形成するステップとを含む、請求項6から11のいずれかに記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項14】
(1)任意選択で造粒液の存在下で、アリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される添加物を造粒して、アリスキレン粒状体を形成するステップと;(2)ステップ(1)の生成物をさらに処理して、バルクおよびもしくはタップ密度を増加させ、かつ/または細粒含量を減少させるステップと、圧縮錠剤または二層錠剤の1層などの医薬品剤形を調製するために、ステップ(2)の生成物を使用するステップとを含む、アリスキレンまたは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物の調製方法。
【請求項15】
ステップ(1)における造粒方法が溶媒造粒であり、ステップ(2)における処理がローラー圧縮である、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−520892(P2012−520892A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500947(P2012−500947)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027748
【国際公開番号】WO2010/107966
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】