説明

アリピプラゾールの経口速溶性組成物

【課題】アリピプラゾールの経口速溶性組成物を提供する。
【解決手段】活性成分としてのアリピプラゾールと担体とを含む経口投与用医薬組成物であって、流体と接触した状態で10秒以内に崩壊し、急速に該活性成分を放出するように設計された急速分散投与剤型の形態である上記経口投与用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性成分としてアリピプラゾール(aripiprazole)を含む急速分散投与剤型の形態にある経口投与用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,006,528号は、本発明におけるカルボスチリル誘導体として同じ化学構造式を包含しており、それらの薬理学的性質は、統合失調症に対する治療に有益な薬物である。
【0003】
特開平9−301867(1997)に開示されたカルボスチリル化合物は、不安の治療に有用である。
【0004】
アリピプラゾール(7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロカルボスチリル)は、ドーパミンD受容体に強い親和性で結合し、ドーパミンD受容体及び5−HT受容体に中等度の親和性で結合することが報告されている(Masashi Sasaら、CNS Drug Reviews,Vol.3,No.1,pp.24−33)。
【0005】
更に、アリピプラゾールは、シナプス前ドーパミン自己受容体作動活性、シナプス後D受容体拮抗活性、及びD受容体部分作動活性を有すると報告されている[T.Kikuchi,K.Tottori,Y.Uwahodo,T.Hirose,T.Miwa,Y.Oshiro and S.Morita:J.Pharmacol.Exp.Ther.,Vol.274,pp.329,(1995);T.Inoue,M.Domae,K.Yamada and T.Furukawa:J.Pharmacol.Exp.Ther.,Vol.277,pp.137,(1996)]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,006,528号
【特許文献2】特開平9−301867
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Masashi Sasaら、CNS Drug Reviews,Vol.3,No.1,pp.24−33
【非特許文献2】T.Kikuchi,K.Tottori,Y.Uwahodo,T.Hirose,T.Miwa,Y.Oshiro and S.Morita:J.Pharmacol.Exp.Ther.,Vol.274,pp.329,(1995)
【非特許文献3】T.Inoue,M.Domae,K.Yamada and T.Furukawa:J.Pharmacol.Exp.Ther.,Vol.277,pp.137,(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
慣用の錠剤、丸剤又はカプセル剤の形態における経口投与は一般に好都合に患者に許容されるので、医薬投与の一般に好ましい投与ルートを構成する。しかし、このような組成物は、特にこのような組成物を嫌いであるか、又は呑み込むことが困難である小児及び老人の患者の治療において、又は慣用の錠剤、丸剤またはカプセル剤の投与が不可能である場合において、欠点を有することとなる。この問題を克服する一つの方法は、口腔内で急速に崩壊する固体投与剤型を投与することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討し、以下の発明をなすに至った。即ち本発明は以下の通りである。
【0010】
(1)活性成分としてのアリピプラゾールと担体とを含む経口投与用医薬組成物であって、流体と接触した状態で10秒以内に崩壊し、急速に該活性成分を放出するように設計された急速分散投与剤型の形態である上記経口投与用医薬組成物。
(2)前記担体がゼラチンである、上記(1)に記載の医薬組成物。
(3)マトリックス形成剤、糖、環状糖、アミノ酸、保存剤、界面活性剤、粘性増強剤、着色剤、調味料、pH調整剤、甘味剤及びそれらの組合せからなる群から選択した追加的成分をさらに含む、上記(1)又は(2)に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アリピプラゾールは上述の通り公知化合物であり、米国特許第5,006,528号のような刊行物に開示されており、上記刊行物に記載されたプロセスによって容易に調製することができる。
【0012】
アリピプラゾールは、それと医薬として許容される酸を反応することによって、その酸付加塩に容易に変換することができる。そのような酸の例としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、その他、のような無機酸、例えばシュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、その他、のような有機酸を包含する。
【0013】
溶媒和物の溶媒は、再結晶に通常使用される溶媒である。溶媒和物の例としては、半水和物、水和物、及びアルコラート、例えばエタノラート、メタノラート、イソプロパノラート、その他を包含する。
【0014】
上に挙げた反応によって調製される所望の化合物は、溶媒抽出、希釈、再結晶、カラムクロマトグラフィ、分取薄層クロマトグラフィ、その他のような通常の分離手段によって容易に単離精製することができる。
【0015】
アリピプラゾールは、双極性障害、例えば最近のエピソードが軽い躁、躁、混合状態、鬱、或いは特定できない症状の発現を有する双極性I型障害;エピソードが軽い躁症状の発現を伴った再発大鬱症状の発現及び循環型を有する双極性II害障害;鬱病、例えば内因性鬱病、大鬱病、メランコリー、及び治療抵抗性鬱病;パニック障害;強迫性障害(OCD);睡眠障害;性的機能不全;アルコール乱用及び薬物耽溺;認知障害;アルツハイマー病、パーキンソン病、その他のような神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病及び関連障害のような神経変性疾患に起因した認知障害;嘔吐;乗物酔い;肥満;片頭痛;自閉症;ダウン症候群;注意欠陥多動障害(ADHD);治療抵抗性、難治性又は慢性統合失調症(一般に入手し得る抗精神病薬に適切に反応しない);治療抵抗性統合失調症、難治性統合失調症又は慢性統合失調症その他に起因する認知障害、を誘発する、5−HT1A受容体サブタイプに関連した中枢神経系の種々の障害に有効である。
【0016】
アリピプラゾールは、医薬として許容される処方に好適に調製され得る[米国特許第5,006,528号、欧州特許第367,141号及び特開平7−304740(1995)及び特開2001−302499を参照。これらは参照することによって本明細書の一部に組み込まれる。]
【0017】
本発明のこれらの医薬品製剤の投与量は、投与方法、患者の年齢、性別及びその他の因子、疾病の重症度及びその他の因子によって適切に選択される。しかしながら、一般的には、有効成分の化合物の一日当りの投与量は、好ましくは、体重1kg当り約0.0001乃至約50mgの範囲内である。有効成分の化合物は、約0.001から約1000mg、特に0.01から100mg、更に詳しくは0.1から50mg、より更に詳しくは3mgから24mgの量で各単位投与形態の中に含有されることが望ましい。
【0018】
本発明において担体は、活性成分であるアリピプラゾールとともに、経口投与用医薬組成物を形成するために用いられる。
該経口投与用医薬組成物が流体と接触した状態で10秒以内に崩壊し、急速に該活性成分を放出するように設計された急速分散投与剤型の形態をとる限り、上記担体は薬学的に許容できるいかなる担体であってもよい。好ましい担体はウシゼラチン、ブタゼラチン又は魚ゼラチンのようなゼラチンである。特にウシゼラチンが好ましい。
【0019】
本発明において流体とは、水、生理食塩水等の水溶液、唾液等の消化液を包含する。本発明が経口投与用であることから、流体は口腔内の唾液であることが好ましいが、これには限定されない。
【0020】
即ち、本発明の経口投与用医薬組成物は、口腔内に入ると60秒以内に、好ましくは30秒以内に、更に好ましくは10秒以内に崩壊し、急速に活性成分を放出する。
【0021】
本発明の組成物は、活性成分と担体に加えて、追加的成分をさらに含んでもよい。追加的成分としては、マトリックス形成剤、糖、環状糖、アミノ酸、保存剤、界面活性剤、粘性増強剤、着色剤、調味料、pH調整剤、甘味剤及びそれらの組合せが挙げられるが、これらには限定されない。
【0022】
この発明に使用するのに適したマトリックス形成剤としては、ゼラチン類、デキストリン類、大豆、小麦、オオバコ(psyllium)種子タンパクなどの動物性若しくは植物性タンパク質;アラビアゴム、ガーガム、寒天、キサンタンなどのゴム質物質;ポリサッカライド類;アルギン酸類;カルボキシメチルセルロース類;カラゲナン類;デキストラン類;ペクチン類;ボリビニルピロリドンなどの合成ポリマー類;ゼラチン−アラビアゴムコンプレックスなどのポリペプチド/タンパクコンプレックス又はボリサッカライド類コンプレックスなどから誘導される物質が含まれる。
この発明に使用するのに適したその他の追加的成分としては、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、トレハロースなどの糖類;シクロデキストリンなどの環状糖類;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸アルミニウム類などの無機塩類;グリシン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−フェニルアラニンなどの炭素原子数が2から12までのアミノ酸などが含まれる。好ましい追加的成分は、マンニトール、デキストロース、ラクトース又はガラクトースなどの糖類である。
【0023】
また、保存剤、酸化防止剤、界面活性剤、増粘増強剤、着色剤、調味料、pH調整剤、甘味料などの追加的成分は、組成物中に導入することができる。適当な着色剤としては、赤色、黒色ならびに黄色酸化鉄類およびエリス・アンド・エベラールド社のFD&Cブルー2号ならびにFD&Cレッド40号などのFD&C染料が挙げられる。適当な調味料には、ミント、ラズベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、チェリー、グレープフレーバー及びその組み合わせたものが含まれる。適当なpH調整剤は、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸及びマレイン酸が含まれる。適当な甘味料としては、アスパルテーム、アセスルフェームKならびにタウマチンなどが含まれる。
【0024】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
アリピプラゾールを含む迅速に溶解する経口医薬組成物を、下記のように調製した。
混合容器中でゼラチン及びマンニトールを純水に加え、これを次いで混合しながら約60℃に加熱した。混合をゼラチンが完全に溶解するまで真空中で続けた。この混合物を冷却した。
冷却後、アリピプラゾール、無水クエン酸及びアスパルテームを混合物に加えた。この混合を溶解性の成分が溶解し、完全に薬剤粒子が分散するまで続け、室温(約23℃)で均質化した。
各成分の割合を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
得られた懸濁液をブリスタポケットに分け入れ、凍結し、凍結乾燥させて調剤形態を完成させた。
崩壊試験は、現行の日本薬局方 一般試験方法 崩壊試験法(1)即放性製剤により行った。試験液として水を用い、補助盤は用いなかった。
試験6個につき、それぞれの崩壊時間を秒単位で記録した。
崩壊試験の結果:0〜4秒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてのアリピプラゾールと担体とを含む経口投与用医薬組成物であって、流体と接触した状態で10秒以内に崩壊し、急速に該活性成分を放出するように設計された急速分散投与剤型の形態である上記経口投与用医薬組成物。
【請求項2】
前記担体がゼラチンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
マトリックス形成剤、糖、環状糖、アミノ酸、保存剤、界面活性剤、粘性増強剤、着色剤、調味料、pH調整剤、甘味剤及びそれらの組合せからなる群から選択した追加的成分をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。

【公開番号】特開2012−121850(P2012−121850A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−274671(P2010−274671)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】