説明

アリピプラゾール懸濁液及び凍結乾燥製剤の製造方法

開示されているのは、(a)アリピプラゾール原末とビヒクルとを混合して一次懸濁液を形成する工程、(b)該一次懸濁液を、例えば高剪断型の粉砕機、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、又は高圧噴射式乳化分散機を用いる第一粉砕に供して二次懸濁液を形成する工程、および(c)該二次懸濁液を、例えば高圧噴射式乳化分散機を用いた第二粉砕に供して最終懸濁液を形成する工程を包含する、アリピプラゾールの平均粒子径が1〜10?mであるアリピプラゾール懸濁液の製造方法;並びに、該アリピプラゾール懸濁液から凍結乾燥製剤を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリピプラゾール懸濁液の製造方法、及び更に凍結乾燥製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリピプラゾールは非定形抗精神病薬として知られている公知の薬剤である。アリピプラゾールを投与するに際して、アリピプラゾール水性懸濁液を注射用製剤として使用することが提案されており、なかでも、平均粒子径が約1〜約10μmのアリピプラゾールを水性ビヒクルに懸濁させてなる懸濁液は、優れた徐放特性と生物学的利用率を有することが知られている(特許文献3)。
【0003】
従来の技術においては、アリピプラゾール原末を無菌操作的に商業生産レベルで粉砕することは困難であった。例えば、湿式粉砕において汎用されるセラミックビーズを用いたボールミル法では、ビーズ同士が擦れ合うことからコンタミの可能性があること、インラインで滅菌可能なボールミルが現時点では一般に市販されていないこと等の問題点があった。
【0004】
また、ボールミルによる粉砕方法に関しては、一部の大きな粒子がビーズ間をすりぬけるショートパスの可能性があり、特許文献4に示すように、所望の小粒子、好ましくは平均粒子径が約100μm以下、より好ましくは結晶の約95%が粒子径100μm未満及び狭い粒径分布のアリピプラゾール原末を使用することが望ましい。しかし、そのような平均粒子径が約100μm以下のアリピプラゾール原末を製造するためには、特許文献4に記載のように、衝突噴流結晶化法のような特殊な晶析技術を必要とする。
【0005】
一方、粒子径を減少する方法として、高圧ホモジナイザーが挙げられるが、アリピプラゾール平均粒子径が100μmを超える10%懸濁液を高圧ホモジナイザーで処理すると、ラインの目詰まり等を生じ、粉砕が不可能となる。従って、好ましくは平均粒子径が100μm以下のアリピプラゾールを使用することが望ましい。
【0006】
しかし、このような平均粒子径が約100μm以下のアリピプラゾールをビヒクル溶液に懸濁する際、泡の発生を伴うため、均一な懸濁液を調製するためには、真空下での混合を必要とする(特許文献3、実施例1、段落0089参照)。
【0007】
真空下での混合を行うと、外気を取り込むことがあり、外部環境からの汚染を防止する対策が必要となるので、この点での改善が望まれる。
【0008】
特許文献1では、(a)高剪断下に、水への溶解性の乏しい薬剤と1種類以上の表面活性物質との水性担体中の混合物を、有機溶媒の非存在下に、該水への溶解性の乏しい薬剤の融点以上の第1の温度範囲内で混合して、溶解した薬剤を含む加熱サスペンジョンを形成し、(b)該加熱サスペンジョンを第1の圧力範囲において、そして該第1温度範囲内で均質化して、溶融した薬剤を含む加熱均質化物を形成し、(c)該加熱均質化物を、該水への溶解性の乏しい薬剤の融点未満の第2温度範囲に冷却して、薬剤を含む一時的に安定な冷却均質化物を形成し、(d)該冷却均質化物に、該薬剤の融点未満の第2の温度範囲内で、第2の圧力範囲で、粒子安定エネルギー処理を加え、薬剤を含む安定化された小粒子の冷却分散物を形成し、そして(e)該冷却された分散物を乾燥して、水への溶解性の乏しい薬剤を含む乾燥小粒子を形成する工程を含む、水への溶解性の乏しい薬剤を含む小粒子の製造方法について開示している。
【0009】
しかし、特許文献1の方法は、薬剤の融点以上の加熱エマルションを調製することを必須としており、結晶形の維持の点で問題がある。
【0010】
特許文献2では、所定量の油性成分(脂肪)、乳化剤およびシクロデキストリンの組合せ配合による難溶性化合物の有効な可溶化または分散化手段を開示しており、粗乳化はホモミキサーを、精乳化は高圧ホモジナイザーまたは超音波ホモジナイザーを用いることを開示している。しかし、特許文献2では、可溶化または分散化された難溶性化合物を含む組成物は、脂肪乳剤形態であり、水性懸濁液ではない。
【0011】
特許文献3では、(a)所望の粒度分布を有する無菌アリピプラゾール原末を調製する工程、(b)該無菌アリピプラゾール原末のための無菌ビヒクルを調製する工程、(c)該無菌アリピプラゾールと該無菌ビヒクルを混合して、無菌固体混合物を含む無菌一次懸濁液を形成する工程、(d)該無菌一次懸濁液中の該無菌固体混合物の平均粒子径を、例えば無菌湿式粉砕により、約1〜約100μm、特に1〜10μmの範囲内に減少させて、無菌最終懸濁液を形成する工程、および(e)該無菌最終懸濁液を凍結乾燥して、凍結乾燥製剤を形成する工程を包含する、無菌凍結乾燥製剤の製造方法について開示している。上記(d)工程の無菌湿式粉砕手法としては湿式ボールミリングが好ましいと記載されている。
【0012】
非特許文献1は、マイクロフルイダイザーは他の平均粒子径を減少させる方法と比べて最終生成物に混入物質を欠いていること、製造のスケールアップが容易であることの2つの利点があることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2003−531162号公報
【特許文献2】特開2005−22989号公報
【特許文献3】特表2007−509148号公報
【特許文献4】特表2007−509153号公報
【特許文献5】特許第3760264号公報
【特許文献6】特許第3750023号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Kathleen J. Illing, et al., “Use of Microfluidizer Processing for Preparation of Pharmaceutical Suspensions”, Pharm. Tech., OCTOBER 1996.第78〜88頁。
【非特許文献2】青木聡之ら、「アリピプラゾールの結晶変形に関する研究」、第4回日韓合同分離技術シンポジウム〈1996年10月6日〜8日〉講演要旨集、第937〜940頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
平均粒子径が約1〜約10μmのアリピプラゾールを水性ビヒクルに懸濁させてなる懸濁液は、優れた徐放特性を有することが知られている。この平均粒子径1〜10μmのアリピプラゾール懸濁液を調製する方法として、特許文献3及び4に示すように、好ましくは平均粒子径約100μm以下、より好ましくは結晶の約95%が粒子径100μm以下のアリピプラゾールを使用し、湿式ボールミリングする方法が知られている。
【0016】
しかし、平均粒子径約100μm以下のアリピプラゾール原薬を得るためには、衝突噴流結晶化法のような特殊な原薬の製造方法が必要とされた。その平均粒子径約100μm以下のアリピプラゾール原薬をビヒクルに懸濁させる工程において真空混合が必要であった。
【0017】
そこで、バッチ晶析で製造される100μm以上のアリピプラゾール粒子を10%以上含む原末、好ましくは平均粒子径が100μmより大きい、特に110μm〜1000μm、特に好ましくは200μm〜400μmである原末を使用でき、真空混合を必要としない製造方法が望まれてきた。
【0018】
また、湿式ボールミリング法では、ビーズ同士が擦れ合うことからコンタミの可能性があること、インラインで滅菌可能なボールミルが現時点では一般に市販されていないこと等の問題点があり、コンタミの可能性が低く、インラインで滅菌可能な製造装置を用いる方法が望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、100μm以上のアリピプラゾール粒子を10%以上含む平均粒子径が20〜1000μmのアリピプラゾール原末、好ましくは平均粒子系が100μmより大きい、特に110μm〜1000μm、最も好ましくは200μm〜400μmのアリピプラゾール原末を使用する場合であっても、高剪断型の粉砕機、例えば、高剪断型ホモミキサー、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、又は高圧噴射式乳化分散機、例えば、高圧ホモジナイサーを用いた第一粉砕工程を行い、更に高圧噴射式乳化分散機、例えば、高圧ホモジナイザーを用いた第二粉砕工程を行うことによって、上記課題を解決できるという知見を得た。
【0020】
これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の製造方法を提供すものである。
【0021】
項目1:(a)アリピプラゾール原末とビヒクルを混合して一次懸濁液を形成する工程、
(b)該一次懸濁液を第一粉砕に供して二次懸濁液を形成する工程、及び
(c)該二次懸濁液を第二粉砕に供して最終懸濁液を形成する工程
を包含する、アリピプラゾール懸濁液の製造方法。
【0022】
項目2:工程(b)の第一粉砕において、一次懸濁液を高剪断型の粉砕機、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、又は高圧噴射式乳化分散機を用いた粉砕によって二次懸濁液を形成し、
工程(c)の第二粉砕において、二次懸濁液を高圧噴射式乳化分散機を用いた粉砕によって最終懸濁液を形成する、
項目1に記載の方法。
【0023】
項目3:工程(b)の第一粉砕において、一次懸濁液を高剪断型の粉砕機又は被処理物に剪断力を与える分散機を用いた粉砕によって二次懸濁液を形成し、
工程(c)の第二粉砕において、二次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いた粉砕によって最終懸濁液を形成する、
項目1又は2に記載の方法。
【0024】
項目4:工程(c)において、高圧ホモジナイザーを粉砕圧300〜1000 barで使用する、項目3に記載の方法。
【0025】
項目5:工程(c)において、高圧ホモジナイザーを粉砕圧300〜600 barで使用する、項目3又は4に記載の方法。
【0026】
項目6:工程(c)において、高圧ホモジナイザーを入口温度1〜70℃で使用する、項目3〜5のいずれかに記載の方法。
【0027】
項目7:工程(b)の第一粉砕において、一次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて粉砕することによって二次懸濁液を形成し、
工程(c)の第二粉砕において、二次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて粉砕することによって最終懸濁液を形成する、
項目1又は2に記載の方法。
【0028】
項目8:工程(b)の第一粉砕において、一次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて50〜200 barの粉砕圧で粉砕することによって二次懸濁液を形成し、
工程(c)の第二粉砕工程において、二次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて200〜1000 barの粉砕圧で粉砕することによって最終懸濁液を形成し、
工程(b)での粉砕圧と工程(c)での粉砕圧との差が100〜900 barであることを特徴とする、項目1、2又は7に記載の方法。
【0029】
項目9:工程(b)において、高圧ホモジナイザーの粉砕圧が50〜200 barであり、工程(c)において、粉砕が複数回行われ、その際に、粉砕圧を200〜1000 barの範囲内で段階的に上昇させる、項目8に記載の方法。
【0030】
項目10:工程(c)において最終の高圧ホモジナイザーの粉砕圧が300〜600 barである、項目9に記載の方法。
【0031】
項目11:工程(b)及び工程(c)において、高圧ホモジナイザーが入口温度1〜50℃で使用される、項目7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
項目12:ビヒクルが、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の懸濁化剤を含有する、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【0033】
項目13:アリピプラゾール原末が粒子径100μm以上のアリピプラゾール粒子を10%以上含み、20μm〜1000μmの平均粒子径を有する、項目1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
項目14:アリピプラゾール原末が100μmより大きい平均粒子径を有する、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【0035】
項目15:アリピプラゾール原末が110μm〜1000μmの平均粒子径を有する、項目1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【0036】
項目16:アリピプラゾール原末が200μm〜400μmの平均粒子径を有する、項目1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
項目17:アリピプラゾール懸濁液中のアリピプラゾールが1〜10μmの平均粒子径を有する、項目1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【0038】
項目18:アリピプラゾール懸濁液中のアリピプラゾールが1〜5μmの平均粒子径を有する、項目1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
項目19:アリピプラゾール懸濁液中のアリピプラゾールが2〜4μmの平均粒子径を有する、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
項目20:アリピプラゾール懸濁液中のアリピプラゾールが2〜3μmの平均粒子径を有する、項目1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
項目21:(I)平均粒子径が200μm〜400μmの無菌アリピプラゾール原末と無菌ビヒクル(好ましくは、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を含む無菌ビヒクル)とを混合して無菌一次懸濁液を形成する工程、
(II)該無菌一次懸濁液を高剪断型の粉砕機又は被処理物に剪断力を与える分散機を用いる第一粉砕に供して無菌二次懸濁液を形成する工程、および
(III)該無菌二次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いる第二粉砕に供して無菌最終懸濁液を形成する工程
を包含し、無菌最終懸濁液(即ち、所望のアリピプラゾール懸濁液)中のアリピプラゾールの平均粒子径が1〜10μm(好ましくは1〜5μm,特に2〜4μm)である、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
項目22:アリピプラゾール原末が、一水和物及び無水物B形結晶からなる群から選ばれる形態である、項目1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
項目23:前記最終懸濁液を、定格ろ過精度が10〜225μmのフィルターでろ過を行う工程を更に含む、項目1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
項目24:アリピプラゾール水和物Aの凍結乾燥製剤の製造方法であって、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法により製造したアリピプラゾール水和物A含有懸濁液を、-20〜-55℃まで冷却し懸濁液を凍結させる工程、及びその後、約0℃未満で乾燥を行う工程を包含する方法。
【0045】
項目25:(1)項目1〜23のいずれか一項に記載の方法により製造した一水和物又は無水物結晶の形態であるアリピプラゾール原末を用いて得られたアリピプラゾール懸濁液を、-20〜-55℃まで冷却し懸濁液を凍結する段階、
(2)約0℃未満で行われる一次乾燥段階、および
(3)約0℃超の温度で行われる二次乾燥段階
を包含する無水形態のアリピプラゾールを含む凍結乾燥製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0046】
本発明によると、次のような優れた効果が奏される。
【0047】
(a)本発明のアリピプラゾール原末を2段階粉砕を行うことによるアリピプラゾール懸濁液の製造方法は、粒子径が100μm以上のアリピプラゾール粒子を10%以上含む平均粒子径が20μm〜1000μmのアリピプラゾール原末、好ましくは平均粒子径が100μmより大きいアリピプラゾール原末、特に110μm〜1000μmのアリピプラゾール原末、最も好ましくは200μm〜400μmであるアリピプラゾール原末を使用する際に最も有効であるが、平均粒子径の大きさにかかわらず、容易に平均粒子径が1〜10μm、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μm、最も好ましくは約2〜3μmのアリピプラゾール懸濁液を製造できる。
【0048】
(b)本発明に従って、高剪断型の粉砕機(例えば、高剪断型ホモミキサー)、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、又は高圧噴射式乳化分散機(例えば高圧ホモジナイザー)を用いた第一粉砕工程と、高圧噴射式乳化分散機(例えば高圧ホモジナイザー)を用いた第二粉砕工程での2段階粉砕を行うことにより、バッチ晶析法等で得られる大きな平均粒子径の原末、特に平均粒子径100μmより大きいアリピプラゾール原末を使用しても、平均粒子径1〜10μmのアリピプラゾール懸濁液が調製できる。そのため、特許文献4とは異なり、アリピプラゾール原末の調製のために衝突噴流結晶化法のような特殊な晶析技術を必要としない。
【0049】
(c)本発明の方法は、無菌アリピプラゾール原末として、粒子径が100μm以上のアリピプラゾール粒子を10%以上含む平均粒子径20μm〜1000μmのアリピプラゾール原末、好ましくは平均粒子径が100μmより大きいアリピプラゾール原末、特に110μm〜1000μmであるアリピプラゾール原末、最も好ましくは200μm〜400μmであるアリピプラゾール原末を使用するので、特許文献3のような真空混合の工程を採用することなく、アリピプラゾール原末とビヒクルとの混合工程、第一粉砕工程及び第二粉砕工程が行える。このため、無菌製剤製造において外気を製剤中に入れる可能性が除外され、無菌製剤製造法として多大のメリットがもたらされる。
【0050】
(d)また、ボールミルのような摩耗を伴わないので、該摩耗に基づくコンタミの問題がない。
【0051】
(e)湿式ボールミリングで問題とされる大粒子のショートパスの可能性が低い。従って、粗大アリピプラゾール粒子を含まない均質な懸濁液が調製できる。その結果、粉砕後のアリピプラゾール懸濁液の異物除去のために、より孔径の小さいフィルターを用いたろ過が可能になり、異物管理の面で非常に好ましい。
【0052】
(f)商業スケールにおける無菌的な製造において、ボールミル等のような装置では定置洗浄(CIP)及び定置滅菌(SIP)が難しいが、本発明の粉砕方法(第一粉砕工程及び第二粉砕工程)に用いる製造装置はCIP及びSIPが可能であることから装置のインライン滅菌による無菌保持が容易である。
【0053】
(g)また、本発明製造方法において、ビヒクルの懸濁化剤としてカルボキシメチルセルロース及びその塩を選択した場合には、平均粒子径が1μm未満になる過粉砕を生じさせない。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の製造方法につき詳述する。
【0055】
本発明では用語“平均粒子径”は、レーザー光散乱(laser-light scattering;LLS)法によって測定される場合の体積平均直径(volume mean diameter)をいう。粒度分布は、LLS法によって測定され、そして平均粒子径は、粒度分布から計算される。
【0056】
アリピプラゾール原末
アリピプラゾールは、構造
【0057】
【化1】

【0058】
を有し、統合失調症の治療に有効な非定型抗精神病薬である。それは、乏しい水溶性を有する(室温で、<1μg/ml)。
【0059】
アリピプラゾール原薬ないし原末としては、いかなる平均粒子径及び粒度分布のものであってもよい。一般的には、粒子径100μm以上のアリピプラゾール粒子を10%以上含む平均粒子径20μm〜1000μmのアリピプラゾール原末を用いるのが良く、好ましくは平均粒子径が100μmより大きいアリピプラゾール原末、特に110μm〜1000μmのアリピプラゾール原末、最も好ましくは200μm〜400μmであるアリピプラゾール原末を使用するのがより好ましい。
【0060】
また、アリピプラゾール原末の結晶形も特に限定されず、各種のものが使用できる。例えば、アリピプラゾールの結晶形としては、非特許文献2記載の一水和物(本明細書では、単に一水和物と言う場合、非特許文献2記載のものを意味する。)、特許文献5記載の水和物A及び無水物B形結晶、特許文献6記載の無水物C形結晶、無水物D形結晶、無水物E形結晶、無水物F形結晶、及び無水物G形結晶が挙げられる。これらの中で好ましくは、一水和物及び無水物B形結晶である。
【0061】
本発明では、一水和物の結晶(非特許文献2)をアリピプラゾール原末として使用すれば、本発明の方法により水和物A(特許文献5)の懸濁液が得られる。アリピプラゾール原末として水和物Aを使用しても、本発明の方法により水和物Aの懸濁液を得ることができる。また、アリピプラゾール原末として、無水物B形結晶(特許文献5)、無水物C形結晶、無水物D形結晶、無水物E形結晶、無水物F形結晶及び無水物G形結晶の結晶(特許文献6)を使用することも可能である。これらの結晶では、無水物と水和物Aのアリピプラゾールが混合されたアリプラゾール懸濁液が得られる。また、前もって無水物B形結晶、無水物C形結晶、無水物D形結晶、無水物E形結晶、無水物F形結晶、又は無水物G形結晶の結晶をエタノールと水などで再結晶して一水和物を作成して、得られた一水和物を、アリピプラゾール原末として使用することもできる。
【0062】
ビヒクル
本発明において使用するビヒクルは、一般的には、
(1)1以上の懸濁化剤、
(2)注射用水、
(3)必要に応じて1以上のバルキング剤又は等張化剤、
(4)必要に応じて1以上の緩衝剤、および
(5)必要に応じて1以上のpH調整剤
を含む。
【0063】
懸濁化剤(suspending agent)は、無菌注射製剤(本発明のアリピプラゾール懸濁液)の総重量に基づいて、約0.2〜約10重量%、好ましくは約0.3〜約5重量%、より好ましくは約0.4〜約0.9重量%の範囲内の量で存在する。使用のために好適な懸濁化剤の例としては、カルボキシメチルセルロース及びその塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンの1、2またはそれ以上が挙げられるが、これらに限定されず、カルボキシメチルセルロース及びその塩、特にナトリウム塩が好ましい。アリピプラゾールのためのビヒクルにおける使用のために好適な他の懸濁化剤としては、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然プロダクト(natural products)、および界面活性剤(非イオン性およびイオン性界面活性剤を含む)、例えば、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、グリセロール、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス(cetomacrogol emulsifying wax)、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(polyoxyethylene castor oil derivatives)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、市販のTweens(登録商標)、例えば、Tween20(登録商標)およびTween80(登録商標)(ICI Specialty Chemicals));ポリエチレングリコール類(例えば、Carbowaxs 3350(登録商標)および1450(登録商標)、ならびにCarbopol 934(登録商標)(Union Carbide))、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンステアレート、コロイダル二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム(carboxymethylcellulose calcium)、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC−SL、およびHPC−L)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースフタレート、非結晶性セルロース(noncrystalline cellulose)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキサイドおよびホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポール(tyloxapol)、スペリオン(superione)、およびトリトン(triton)としても公知)、ポロキサマー(poloxamers)(例えば、Pluronics F68(登録商標)およびF108(登録商標)、これらは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのブロックコポリマーである);ポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)としても公知、これは、エチレンジアミンへのプロピレンオキサイドおよびエチレンオキサイドの連続付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーである(BASF Wyandotte Corporation,Parsippany,N.J.));荷電リン脂質(charged phospholipid)、例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオクチルスルホサクシネート(DOSS);Tetronic 1508(登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte Corporation)、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル(例えば、Aerosol OT(登録商標)、これはスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルである(American Cyanamid));Duponol P(登録商標)、これはラウリル硫酸ナトリウムである(DuPont);Tritons X−200(登録商標)、これはアルキルアリールポリエーテルスルホネートである(Rohm and Haas);Crodestas F−110(登録商標)、これはスクロースステアレートおよびスクロースジステアレートの混合物である(Croda Inc.);p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、Olin−10G(登録商標)またはSurfactant 10−G(登録商標)としても公知(Olin Chemicals,Stamford,Conn.);Crodestas SL−40(Croda,Inc.);ならびにSA9OHCO、これはC1837CH(CON(CH))−CH(CHOH)(CHOH)である(Eastman Kodak Co.);デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシル β−D−グルコピラノシド;n−デシル β−D−マルトピラノシド;n−ドデシル β−D−グルコピラノシド;n−ドデシル β−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル β−D−チオグルコシド;n−ヘキシル β−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノニル β−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチル β−D−チオグルコピラノシドなどが挙げられる。
【0064】
これらの懸濁化剤の大部分は、公知の薬学的賦形剤であり、そしてthe American Pharmaceutical AssociationおよびThe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同発行されたthe Handbook of Pharmaceutical Excipientsに詳細に記載されており(The Pharmaceutical Press, 1986)、参照により具体的に組込まれる。懸濁化剤は、市販されており、及び/又は当該分野において公知の技術によって製造され得る。
【0065】
本発明において、ビヒクルの懸濁化剤としてカルボキシメチルセルロース又はその塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリビニルピロリドンを使用することが好ましい。カルボキシメチルセルロース(以下「CMC」ということがある)又はその塩(好ましくはナトリウム塩(以下「CMCNa」ということがある))を用いた際には、第二粉砕工程を繰り返しても、又は、長時間第二粉砕工程を行っても、平均粒子径が1μm未満になる過粉砕を生じさせない効果が特に大きい。
【0066】
カルボキシメチルセルロースまたはそのナトリウム塩の粘度範囲も広い範囲から適宜選択すればよいが、一般的には、4%水溶液の25℃での粘度が、20〜400 cps程度、特に50〜200 cps程度であるのが好ましい。
【0067】
本発明のビヒクルは、バルキング剤(bulking agent)(冷凍/凍結乾燥保護剤(cryogenic/lyophilize protecting agent)とも呼ばれる)又は等張化剤を必要に応じて含んでいてもよく、これは、無菌注射製剤(本発明のアリピプラゾール懸濁液)の総重量に基づいて、約1〜約10重量%、好ましくは約1.5〜約8重量%、より好ましくは約2〜約5重量%の範囲内の量で存在する。本明細書中における使用に好適なバルキング剤又は等張化剤の例としては、マンニトール、スクロース、マルトース、キシリトール、グルコース、スターチ、ソルビトール等の1、2またはそれ以上が挙げられるが、これらに限定されず、平均粒子径が約1ミクロン以上である製剤のためには、マンニトールが、好ましい。
【0068】
本発明のビヒクルは、緩衝剤(buffer)を必要に応じて含んでいてもよく、これは、アリピプラゾール水性懸濁液のpHを、約6〜約8、好ましくは約7に調整する量で使用される。このようなpHを達成するために、通常、緩衝剤は、タイプに依存して、無菌注射製剤(本発明のアリピプラゾール懸濁液)の総重量に基づいて、約0.02〜約2重量%、好ましくは約0.03〜約0.1重量%の範囲内の量で使用される。本明細書中における使用のために好適な緩衝剤の例としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、またはTRIS緩衝剤の1、2またはそれ以上が挙げられるが、これらに限定されず、リン酸ナトリウムが好ましい。
【0069】
本発明のビヒクルは、pH調整剤(pH adjusting agent)を必要に応じて含んでいてもよく、これは、アリピプラゾールの水性懸濁液のpHを、約6〜約7.5の範囲、好ましくは約7に調整する量で使用され、そして、凍結乾燥アリピプラゾールの水性懸濁液のpHが、所望の約7の中性pHに達するために上昇される必要があるのかあるいは低下される必要があるのかに依存して、酸または塩基であり得る。従って、pHが低下される必要がある場合、酸性pH調整剤、例えば、塩酸または酢酸、好ましくは塩酸が使用され得る。pHが上昇される必要がある場合、塩基性pH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム、好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。
【0070】
本発明の製造方法
本発明の製造方法について説明する。前述のように、本発明の製造方法は、
(a)アリピプラゾール原末とビヒクルを混合して一次懸濁液を形成する工程、
(b)一次懸濁液を第一粉砕に供して二次懸濁液を形成する工程、及び
(c)二次懸濁液を第二粉砕に供して最終懸濁液を形成する工程
を包含する、アリピプラゾール懸濁液の製造方法である。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態によると、次の方法が提供される:
(A)無菌アリピプラゾール原末と無菌ビヒクルを混合して無菌一次懸濁液を形成する工程、
(B)無菌一次懸濁液を高剪断型の粉砕機、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、又は高圧噴射式乳化分散機を用いる第一粉砕に供して無菌二次懸濁液を形成する工程、および
(C)無菌二次懸濁液を高圧噴射式乳化分散機を用いる第二粉砕に供して無菌最終懸濁液を形成する工程
を包含する、アリピプラゾールの平均粒子径が1〜10μm、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μm、最も好ましくは約2〜3μmである無菌アリピプラゾール懸濁液の製造方法。
【0072】
本発明の無菌アリピプラゾール懸濁液の製造方法を行う際に、無菌アリピプラゾールおよび無菌ビヒクルが無菌的に混合されて無菌懸濁液が形成されるように、全てが無菌状態であることが要求される。
【0073】
しかしながら、所望のアリピプラゾール懸濁液が得られた後に滅菌処理ができる場合は、上記工程(A)、(B)及び(C)を備えた製造法では、必ずしも無菌のアリピプラゾール原末及び無菌のビヒクルを使用する必要はない。
【0074】
(A)無菌アリピプラゾール原末と無菌ビヒクルを混合して無菌一次懸濁液を形成する工程
この工程(A)は、次の工程(A-1)、(A-2)及び(A-3)を含む。
【0075】
(A-1)無菌アリピプラゾール原末を調製する工程
この工程は、典型的には、100μm以上のアリピプラゾール粒子を10%以上含む平均粒子径20μm〜1000μmの無菌アリピプラゾール原末、好ましくは平均粒子系が100μmより大きい、特に好ましくは110μm〜1000μm、最も好ましくは200μm〜400μmである無菌アリピプラゾール原末を調製する工程である。
【0076】
アリピプラゾール原末の無菌化方法は、特に限定されず、無菌晶析、オートクレーブ滅菌、ガス滅菌、及び放射線滅菌を含む多くの方法から選択できる。なかでも、無菌晶析が好ましい。
【0077】
無菌晶析は、例えば、アリピプラゾールを溶媒に溶解した溶液を濾過滅菌等で無菌化した後、晶析を行う方法であり、特に限定されず広い範囲の方法が使用できるが、例えば、連続晶析方法、バッチ晶析方法などを例示できる。
【0078】
また、オートクレーブ滅菌、ガス滅菌、又は放射線滅菌はアリピプラゾールの無菌化を達成できる慣用されている方法に従って行えばよい。
【0079】
無菌アリピプラゾールの結晶形は、一水和物、水和物A、無水物B形結晶、無水物C形結晶、無水物D形結晶、無水物E形結晶、無水物F形結晶、無水物G形結晶等の形態で存在することが知られており、これらは全て、本発明の製剤において使用され得る。これらの中で最も好ましいのは一水和物及び無水物B形結晶である。
【0080】
(A-2)無菌アリピプラゾール原末のための無菌ビヒクルを調製する工程
無菌アリピプラゾール原末のためのビヒクルは、前記懸濁化剤、必要に応じてバルキング剤又は等張化剤、緩衝剤、及びpH調整剤を注射用水に均一に溶解し、得られたビヒクル溶液を無菌化することにより調製される。
【0081】
上記ビヒクル溶液の無菌化方法は、特に制限されないが、好ましくはフィルターろ過である。フィルターの孔径は、0.2μm程度であるのが好ましい。
【0082】
(A-3)無菌アリピプラゾールと無菌ビヒクルを混合して無菌一次懸濁液を形成する工程
無菌アリピプラゾール原末および無菌ビヒクルは、無菌的に混合されて無菌一次懸濁液が形成される。無菌的混合処理は、従来知られている無菌的な撹拌技術であれば特に制限されない。例えば、プロペラを用いる機械的撹拌装置で無菌的に混合する方法等が例示できる。混合時の条件としては特に制限されないが、例えば、粉末粒子がビヒクルに混合され、泡がみを起こさない撹拌条件が望ましい。
【0083】
上記無菌ビヒクル中に分散させる無菌アリピプラゾール原末の濃度は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、10〜400 mg/ml程度、好ましくは50〜250 mg/ml、最も好ましいのは100 mg/ml程度である。
【0084】
工程(A-3)での混合は常圧(大気圧)下または加圧下で行えばよく特許文献3とは異なり、真空ないし減圧条件を採用する必要はない。加圧下で行う場合、一般的に、0〜0.3 MPa程度のゲージ圧力下で混合を行うのが好ましい。工程(A-3)での温度条件は、5〜80℃程度、特に10〜40℃程度であるのが好ましく、特許文献1とは異なり、アリピプラゾール原末の融点以上の温度を使用する必要はない。
【0085】
(B)無菌一次懸濁液を、高剪断型の粉砕機(例えば、高剪断型ホモミキサー)、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、又は高圧噴射式乳化分散機(例えば高圧ホモジナイザー)を用いる第一粉砕に供して無菌二次懸濁液を形成する工程
アリピプラゾールの粒子径が、第一粉砕工程によって所望のレベルへ減少される。この第一粉砕工程に用いられる粉砕機としては、適宜目的の粒子径の粒子を得られるものであり、高剪断型の粉砕機、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機(粉砕機)、高圧噴射式乳化分散機(例えば高圧ホモジナイザー)などが挙げられる。好ましくは、高剪断型の粉砕機又は被処理物に剪断力を与える分散機を使用することによって行われる。このような高剪断型の粉砕機、例えば、高剪断型ホモミキサーとしては、各種の市販品が入手可能であり、例えば、商品名「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)などが挙げられるが、密封し泡立ちの無い高剪断型の粉砕機であれば特に限定されない。
【0086】
高剪断型ホモミキサーを用いて粉砕する際の条件としては、適宜目的の粒子径を得られるものであればよく、目的の粒子径とはこの次の第二粉砕工程で使用するホモジナイザーの流路が詰まらない程度であればよい。一般的な条件としては平均粒子径が5〜100μm程度、好ましくは5〜50μmまで減少する条件であればよい。
【0087】
第一粉砕工程としては、前述した機械を用いて、一般的には回転翼(ローター)の周速5〜50 m/s、好ましくは10〜40 m/s、さらに好ましくは15〜35 m/s程度で粉砕が行われるのが好ましい。特に高剪断型粉砕機、例えば高剪断型ホモミキサー(例えば、商品名「クレアミックス」として入手可能)ではこの周速が有効である。例えば、一次懸濁液(4L、実験室レベル)をクレアミックスCLM1.5Sを使用して、周速28.3 m/sで第一粉砕したものと同様に、一次懸濁液(40L、スケールアップ)をクレアミックスCLM-9S又はCLM15Sを使用して、周速28.3 m/sで第一粉砕したものでも、平均粒子径が10〜20μmの二次懸濁液が製造できた。
【0088】
工程(B)での温度条件は、5〜80℃程度、特に10〜40℃程度である。
【0089】
高剪断型ホモミキサーに代えて、被分散材料に剪断力を与える分散機、即ち、処理中にアリピプラゾール粒子に剪断力が及ぼされる方式の分散装置を使用することもできる。このような分散機としては、各種市販品が入手可能であり、被処理物に剪断力を与える分散機(商品名「T-50ベーシック」、IKAジャパン株式会社製)等が例示できる。かかる分散機での粉砕条件としては、適宜目的の粒子径を得られるものであればよく、目的の粒子径とはこの次の第二粉砕工程で使用する高圧ホモジナイザーで流路が詰まらない程度であればよい。一般的な条件としては平均粒子径が5〜100μm程度、好ましくは5〜50μmまで減少する条件であればよい。
【0090】
コロイドミル、超音波分散機(粉砕機)、又は高圧噴射式乳化分散機も上記と実質同様の条件下で使用できる。
【0091】
この工程 (B)での粉砕は常圧(大気圧)下または加圧下で行えばよく、特許文献3とは異なり、真空ないし減圧条件を採用する必要はない。加圧下で行う場合、一般的に、0〜0.3 MPa程度のゲージ圧力下で混合を行うのが好ましい。
【0092】
(C)無菌二次懸濁液を高圧噴射式乳化分散機(例えば高圧ホモジナイザー)を用いる第二粉砕に供して無菌最終懸濁液を形成する工程
アリピプラゾールの粒子径が、第二粉砕工程によって所望のレベルへ減少される。この第二粉砕工程に用いられる粉砕機としては、例えば、処理液を高圧で処理する高圧噴射式乳化分散機が挙げられる。高圧噴射式乳化分散機としては、ポンプで加圧された処理液が排出部の特殊バルブの調整で高圧で噴射される高圧ホモジナイザーが好ましい。この種の代表的な機種として、EmulsiFlex(Avestin製)やAPV社、NIRO SOAVI 社又は三和機械株式会社製の高圧ホモジナイザーが挙げられる。また、種々な形の連結溝(オリフィス)を処理液同士が衝突するような方向に設けて、高圧で通過させる他の分散機も使用できる。この種の代表的な機種として、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)、スターバースト(株式会社スギノマシン)、及びナノマイザー(吉田機械興業株式会社)などが挙げられる。
【0093】
高圧ホモジナイザーの粉砕圧は好ましくは300〜1000 bar程度、より好ましくは300〜600 bar程度である。高圧ホモジナイザーの入口温度は、広い範囲から適宜選択できるが、一般的には、1〜70℃程度、好ましくは5〜40℃程度である。
【0094】
上記条件下で第二粉砕工程を行うことにより、最終懸濁液中のアリピプラゾールの平均粒子径を1〜10μm程度、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μm、最も好ましくは2〜3μmに調整するのが好ましい。平均粒子径が2〜3μmのアリピプラゾール懸濁液の場合は吸収プロファイルに優れ、製造過程で沈降することもないので有用な懸濁液である。
【0095】
上記工程(C)の第二粉砕工程において、懸濁液を複数回高圧ホモジナイザーを通過させることもでき、その場合、完全パス方式及び循環方式が採用でき、同様の結果が得られる(後述の実施例1〜5と実施例6参照)。両方の方式を組み合わせることも可能である(後述の実施例7参照)。
【0096】
ここで、完全パス方式とは、具体的には、例えば高圧ホモジナイザーで、懸濁液の全量が処理されるまで通過させることによって処理されると共に、処理された懸濁液を回収する方法である。懸濁液を完全パス方式で複数回処理する場合は、回収された懸濁液の全量が処理されるまで高圧ホモジナイザーを通過させることによって処理されると共に、処理された懸濁液を回収し、その操作を繰り返す。
【0097】
循環方式とは、具体的には、例えば、高圧ホモジナイザーの入口と連結されており、懸濁液を収容しているタンク又はベッセルを、ホモジナイザーの出口にもリサイクルラインで連結し、タンク又はベッセル中の懸濁液を回収することなく連続的に高圧ホモジナイザーで処理し、処理された懸濁液を該リサイクルラインを通して該タンク又はベッセルにリサイクルし、そこで未処理懸濁液と混合し、混合物を連続的に該ホモジナーザーを通過させ、こうして、懸濁液を循環しながら処理する方法である。
【0098】
工程(C)での粉砕は、特許文献3とは異なり、真空ないし減圧条件を必要としない。
【0099】
前述の第一粉砕工程及び第二粉砕工程の両方の工程で高圧ホモジナイザーを使用する場合、本発明の上記工程(A)〜(C)を備えた製造方法の工程(B)及び(C)が、それぞれ、次の工程(BB)及び(CC)で示されるように行われることが好ましい。
【0100】
工程(BB)
本発明の工程 (BB)は、工程(A)で得られた無菌一次懸濁液を、高圧ホモジナイザーの粉砕圧を50〜200 bar、好ましくは70〜150 barとして粉砕することにより、二次懸濁液を得る第一粉砕工程であり、この工程を採用することにより、前記目詰まりの問題点が解消できることが明らかになった。
【0101】
即ち、高圧ホモジナイザーを、粉砕圧力を、50〜200 bar、好ましくは70〜150 barの範囲で使用することにより、高圧ホモジナイザーの流路の目詰まりを防止できる。
【0102】
高圧ホモジナイザーの入口温度は、広い範囲から適宜選択できるが、一般的には、1〜50℃程度、好ましくは5〜40℃程度である。
【0103】
こうして、無菌二次懸濁液を得る。
【0104】
工程(CC)
本発明の工程(CC)は、上記工程(BB)で得られた無菌二次懸濁液を、高圧ホモジナイザーを用いた200〜1000 barの粉砕圧の粉砕によって無菌最終懸濁液を形成する第二粉砕工程であり、この工程を経ることにより、所望の平均粒子径1〜10μm、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μm、最も好ましくは約2.5μmを有するアリピプラゾール懸濁液を得る。
【0105】
工程(CC)においては、工程(BB)の粉砕圧に比し、高圧ホモジナイザーの粉砕圧力を上昇させる必要がある。通常、工程(BB)での粉砕圧に比べて、工程(CC)での粉砕圧を100〜900 bar程度、特に200〜500 bar程度高く設定することが好ましい。
【0106】
工程(CC)における高圧ホモジナイザーの粉砕圧は200〜1000 bar、特に300〜600 bar程度であることが好ましい。
【0107】
また、工程(CC)での粉砕を複数回行う場合、200〜1000 barの間で段階的に粉砕圧を上昇させることも可能である。この場合、最終圧は好ましくは300〜1000 bar程度、より好ましくは300〜600 bar程度である。
【0108】
高圧ホモジナイザーの入口温度は、広い範囲から適宜選択できるが、一般的には、1〜50℃程度、好ましくは5〜40℃程度である。
【0109】
上記工程(CC)の第二粉砕工程において、懸濁液を複数回高圧ホモジナイザーを通過させることもでき、その場合、前記した完全パス方式及び循環方式のいずれも採用でき、同様の結果が得られる。両方を組み合わせることも可能である。
【0110】
この工程(CC)での粉砕は、特許文献3とは異なり、真空ないし減圧条件を採用する必要はない。
【0111】
本発明においては、本発明で用いる装置、例えば、高剪断型の粉砕機、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、及び高圧噴射式乳化分散機の接液表面を、定置洗浄(CIP)及び定置殺菌(SIP)により洗浄及び滅菌できる。また、インライン滅菌も可能である。CIPは、水、熱水、アルカリ水、酸性水、又は有機溶媒を用い、必要に応じてアルカリ性洗剤、中性洗剤、酸性洗剤等の通常使用される洗浄剤の1種類以上を添加して行うことができ、SIPはピュアスチーム、加圧高温水等を用いて行うことができる。
【0112】
従って、工程(a)において調製された無菌アリピプラゾール一次懸濁液を、工程(b)において予め接液部分を滅菌した高剪断型の粉砕機(例えば、高剪断型ホモミキサー)、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、又は高圧噴射式乳化分散機(例えば高圧ホモジナイザー)を用いて無菌的に粉砕することによって無菌二次懸濁液を形成し、工程(c)において得られた無菌二次懸濁液を予め接液部分を滅菌した高圧噴射式乳化分散機(例えば高圧ホモジナイザー)を用いて無菌的に粉砕することによって、アリピプラゾールの平均粒子径が1〜10μmである無菌アリピプラゾール懸濁液が調製できる。
【0113】
アリピプラゾール水性懸濁液
上記本発明の製造法により製造されたアリピプラゾール水性懸濁液中のアリピプラゾールの平均粒子径は、1〜10μm、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μm、最も好ましくは約2〜3μm程度である。
【0114】
本発明の製造法によれば、アリピプラゾール原末として、平均粒子径がどのような大きいサイズであっても、最終的に得られる懸濁液中のアリピプラゾールの平均粒子径は上記の範囲とすることができる。このため、当該方法は、無菌原末を製造する上で制約が少なくてすみ、粒子径の大きな原末を用いれば、懸濁液調製時において気泡を巻き込みにくく、脱泡処理が容易で減圧の必要がなく、外気からの汚染の可能性が極めて低くなるという点で多大のメリットを有する。
【0115】
また、本発明の製造法によれば、粗大アリピプラゾール粒子を含まない均質な最終懸濁液が調製できるため、必要に応じて、製造された最終懸濁液(即ち、所望のアリピプラゾール懸濁液)の異物除去のためのろ過が可能である。使用されるろ過フィルターの孔径は、定格ろ過精度として10〜225μmであり、好ましくは 20〜70μmである。従って、本発明の製造法は、工程(c)で得られた最終懸濁液を、定格ろ過精度10〜225μmのフィルターでろ過する工程を更に備えていてもよい。
【0116】
得られる最終懸濁液(即ち、所望のアリピプラゾール懸濁液)中のアリピプラゾール濃度は、10〜400 mg/ml程度、特に50〜250 mg/ml程度であるのが好ましく、最も好ましいのは100 mg/mlである。
【0117】
本発明の製造法により得られた無菌アリピプラゾール懸濁液は、注射用製剤として、例えば、筋肉内投与及び皮下投与される。
【0118】
凍結乾燥製剤の製造方法
上記方法により得られた無菌アリピプラゾール懸濁液を凍結乾燥することにより、凍結乾燥製剤を製造することができる。
【0119】
具体的には、当該最終アリピプラゾール懸濁液を凍結乾燥して、所望の多型形態(無水物、水和物A、または両方の混合物)の凍結乾燥製剤を形成することが出来る。アリピプラゾール水和物Aの凍結乾燥製剤を得たい場合は、アリピプラゾール原末として一水和物又は水和物Aの結晶を使用し、本発明の方法により得られた水和物A懸濁液を次に述べる凍結乾燥サイクルに供する。
【0120】
その凍結乾燥サイクルは、適当な冷却速度で-20〜-55℃まで懸濁液を冷却し凍結させる工程、並びに、乾燥を、約0℃未満(好ましくは0℃〜-15℃程度)の温度、適当な真空(例えば、1〜100 Pa程度)、及び適当な期間(例えば、凍結乾燥製剤が得られるまで。典型的には、10〜100時間程度)で行う工程を包含する。
【0121】
アリピプラゾールの無水物形態を含む凍結乾燥製剤が望ましい場合、アリピプラゾール原末として、一水和物又は無水物形態の結晶のアリピプラゾールが使用され、本発明の方法により得られた懸濁液を次に述べる凍結乾燥サイクルに供する。その凍結乾燥サイクルは、3段階(凍結、一次乾燥、および二次乾燥)を包含する。具体的には、凍結乾燥サイクルは、適当な冷却速度で-20〜-55℃まで冷却し懸濁液を凍結させる段階、約0℃未満(好ましくは0℃〜-20℃程度)の温度、適当な真空(例えば、1〜100 Pa程度)、及び適当な期間(典型的には、10〜100時間程度)で一次乾燥を行う段階、並びに約0℃を超える温度(好ましくは0℃〜60℃程度)、適当な真空(例えば、0.1〜20 Pa程度)、及び適当な期間(例えば、凍結乾燥物が得られるまで。典型的には、10〜100時間程度)で二次乾燥を行う段階、を包含する。
【0122】
このように製造された凍結乾燥製剤は、投与直前に、注射用水で容易に所望のアリピプラゾール懸濁液に再構成されることができるので、用時投与製剤として有用である。製剤に注射用水を添加して、手で振る程度の再構成方法によっても均質なアリピプラゾール懸濁液を得ることができる。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。
【0124】
各実施例において、平均粒子径は、レーザー光散乱(laser-light scattering;LLS)粒度分布測定装置(laser diffraction particle size analyzer SALD-3000J,島津製作所)にて測定した体積平均直径(volume mean diameter)である。10%径、50%径、及び90%径とはそれぞれ、粒度分布において、積算(%)の分布曲線が積算値における10%値と交差するポイントの粒子径、50%値と交差するポイントの粒子径、及び90%値と交差するポイントの粒子径である。測定条件は、次の通りである。媒体:水、屈折率:2.00〜0.20i、セル:フローセル。
【0125】
各実施例において、ビヒクルの調製工程、及びアリピプラゾール原末とビヒクルを混合して一次懸濁液を形成する工程は、特に記載がない限り、いずれも室温(20〜30℃)で行った。一次懸濁液を粉砕する第一粉砕工程は、特に記載がない限り、20〜45℃で行った。
【0126】
各実施例で使用した高圧ホモジナイザーは、市販の高圧ホモジナイザー(商品名「PANDA 2K Type」、NIRO SOAVI社製)である。
【0127】
実施例1
(a)カルボキシメチルセルロースナトリウム(18.30 g)、マンニトール91.52 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物1.63 gを精製水に溶解し、全量を2059.2 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0128】
得られたろ液(1872 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(208 g、原末の平均粒子径=258μm、10%径=99μm、50%径=280μm、90%径=609μm)を分散し、一次懸濁液を得た。
【0129】
該一次懸濁液を調製するための分散操作は、スリーワンモーター(HEIDON社製)を用い、直径100 mmの羽にて200〜400 rpm程度で撹拌し行った(以下の実施例においても、特に断らない限り同じである)。
【0130】
(b)この一次懸濁液を高剪断型ホモミキサー(商品名「クレアミックス(CLM-1.5S)」、エム・テクニック株式会社製)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕し、二次懸濁液を得た。
【0131】
(c)得られた二次懸濁液を入口温度が常に約10℃、約20℃、約40℃、及び約60℃となるように冷却または加温し、高圧ホモジナイザーを用い600 barにて完全パス方式で10回通過させて粉砕した。
【0132】
1回粉砕後と10回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
表1から次のことが判る。
(i)バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール水和物原末を用いても、第二粉砕工程(工程(c))において、入口温度が10〜60℃で、600 barにて懸濁液を1回高圧ホモジナイザーを通過させることで、平均粒子径1〜10μmのアリピプラゾール懸濁液が調製可能であった。
(ii)第二粉砕工程(工程(c))において、入口温度が10〜60℃で、600 barにて懸濁液を10回高圧ホモジナイザーを通過させることで、平均粒子径約2〜4μmのアリピプラゾール懸濁液が調製可能であった。
(iii)第二粉砕工程(工程(c))において、入口温度が10〜40℃で、600 barにて懸濁液を10回高圧ホモジナイザーを通過させることで、平均粒子径約2〜3μmのアリピプラゾール懸濁液が調製可能であった。
【0135】
よって、本発明の効果の一つである、平均粒子径の大きな原末を用いても目的とする平均粒子径(1〜10μm、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μm)の懸濁液を得ることが可能であることが判る。
【0136】
上記と同一の結果は、無菌アリピプラゾール原末及び無菌ビヒクルを用いても得ることができる。以下の実施例においても同じである。
【0137】
実施例2
カルボキシメチルセルロースナトリウム(45.76 g)、マンニトール228.80 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物4.07 gを精製水に溶解し、全量を5148 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0138】
得られたろ液(1872 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(208 g、原末の平均粒子径=239μm、10%径=99μm、50%径=276μm、90%径=632μm)を分散し一次懸濁液を得た。
【0139】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして二次懸濁液を得た。
【0140】
得られた二次懸濁液を入口温度が常に約20℃となるように冷却し、高圧ホモジナイザーにて300 bar、600 bar、及び1000 barにて完全パス方式で10回通過させて粉砕した。1回粉砕後と10回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0141】
【表2】

【0142】
表2から次のことが判る:
(i)バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末を用いても、300〜1000 barにて懸濁液を1回高圧ホモジナイザーを通過させることで、平均粒子径1〜10μmのアリピプラゾール懸濁液が調製可能であった。
(ii)300〜1000 barにて懸濁液を10回高圧ホモジナイザーを通過させることで、平均粒子径2〜3μmのアリピプラゾール懸濁液が調製可能であった。
(iii)1000 barでも平均粒子径2〜3μmのアリピプラゾール懸濁液が調製可能であるが、300〜600 barにすることにより、効率よく所望のアリピプラゾール懸濁液が得られる。
【0143】
実施例3
カルボキシメチルセルロースナトリウム(45.76 g)、マンニトール228.80 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物4.07 gを精製水に溶解し、全量を5148 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。カルボキシメチルセルロースナトリウムは、粘度が93 cps(4%水溶液、25℃)と187 cps(4%水溶液、25℃)の2種を用いた。
【0144】
得られたろ液(1872 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(208g 、粘度93 cpsのカルボキシメチルセルロースナトリウムの検討に用いた原末の平均粒子径=258μm、10%径=99μm、50%径=280μm、90%径=609μm、粘度187 cpsのカルボキシメチルセルロースナトリウムの検討に用いた原末の平均粒子径=239μm、10%径=99μm、50%径=276μm、90%径=632μm)を分散し一次懸濁液を形成した。
【0145】
この一次懸濁液のそれぞれをクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして二次懸濁液を得た。
【0146】
得られた二次懸濁液を入口温度が常に約20℃となるように冷却し、高圧ホモジナイザーにて600 barにて完全パス方式で10回通過させて粉砕した。1回粉砕後と10回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0147】
【表3】

【0148】
表3から、CMCNaの上記粘度の違いは、粉砕に影響しないことが判る。
【0149】
実施例4
カルボキシメチルセルロースナトリウム(33.28 g)、マンニトール166.40 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物2.96 gを精製水に溶解し、全量を3744 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0150】
得られたろ液(1872 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(208 g、原末の平均粒子径=386μm、10%径=118μm、50%径=356μm、90%径=1640μm)を分散し一次懸濁液を形成した。該一次懸濁液を調製するための分散操作は、スリーワンモーター(HEIDON社製)を用い、直径50 mmの羽にて700〜800 rpm程度で撹拌し行った。
【0151】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして二次懸濁液を得た。
【0152】
得られた二次懸濁液を温度調整することなく、高圧ホモジナイザーにて600 barにて完全パス方式で10回通過させて粉砕した。1回粉砕後と10回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0153】
【表4】

【0154】
表4から次のことが判る:
入口温度の調整を行わなくとも平均粒子径3〜5μm程度のアリピプラゾールの懸濁液を調製できる。入口温度のコントロールを行うと、平均粒子径が3ミクロンを下回るアリピプラゾール懸濁液を得ることができる(実施例1及び2参照)。
【0155】
実施例5
カルボキシメチルセルロースナトリウム(45.76 g)、マンニトール228.80 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物4.07 gを精製水に溶解し、全量を5148 gとした。カルボキシメチルセルロースナトリウムは、粘度が93 cps(4%水溶液、25℃)と187 cps(4%水溶液、25℃)のものを用いて調製した。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0156】
得られたろ液(1872 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(208 g、原末の平均粒子径=239μm、10%径=99μm、50%径=276μm、90%径=632μm)を分散し一次懸濁液を形成した。
【0157】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして二次懸濁液を得た。
【0158】
得られた二次懸濁液を入口温度が常に約20℃となるように冷却し、高圧ホモジナイザーにて300barにて完全パス方式で10回通過させて粉砕した。
【0159】
1回粉砕後と10回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて、平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0160】
【表5】

【0161】
表5から、第二粉砕工程において、高圧ホモジナイザーの粉砕圧が、300 barであっても、実施例3と同様にCMCNa粘度の相違は、粉砕に影響を与えないことが判る。
【0162】
実施例6
カルボキシメチルセルロースナトリウム(183 g)、マンニトール915 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物16.3 gを精製水に溶解し、全量を20592 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0163】
得られたろ液18720 gに、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(2080 g、原末の平均粒子径=246μm、10%径=103μm、50%径=260μm、90%径=548μm)を分散し一次懸濁液を形成した。
【0164】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-9S)を用い、5700 rpmにて1Lあたり15分間粉砕した。こうして二次懸濁液を得た。
【0165】
得られた二次懸濁液(500 mL)を、高圧ホモジナイザーを通して循環させ、高圧ホモジナイザー出口にて冷却し、入口温度が約15℃〜約25℃となるように調整した。懸濁液を高圧ホモジナイザーからの吐出速度155 mL/分にて、粉砕圧500 barで32.5分間粉砕した。
【0166】
3.25分粉砕後と32.5分粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0167】
【表6】

【0168】
上記表6から、実施例1〜5で使用された完全パス方式による粉砕ではなく、循環方式であっても所望の粉砕が可能であることがわかる。また、循環方式による粉砕を長時間繰り返しても、平均粒子径は1μmを下回らないことがわかる。
【0169】
実施例7
カルボキシメチルセルロースナトリウム(45.76 g)、マンニトール228.80 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物4.07 gを精製水に溶解し、全量を5148 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0170】
得られたろ液(1872 g)に、バッチ晶析で製造された公知のアリピプラゾール一水和物原末(208 g、原末の平均粒子径=256μm、10%径=109μm、50%径=272μm、90%径=566μm)を分散し一次懸濁液を形成した。
【0171】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて7.5分/L粉砕した。こうして二次懸濁液を得た。
【0172】
得られた二次懸濁液(500 mL)を入口温度が常に約20℃となるように冷却し、高圧ホモジナイザーにて500 barにて4回通過させて粉砕した。その後、懸濁液を高圧ホモジナイザーを通して循環させ、高圧ホモジナイザー出口にて冷却し、入口温度が約20℃となるように調整した。懸濁液を吐出速度155 mL/分にて、粉砕圧500 barにて循環方式で更に42分間粉砕した。
【0173】
完全パス方式で1回粉砕、4回粉砕した懸濁液、及び完全パス方式で4回粉砕後更に42分間循環方式で粉砕した懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて、平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0174】
【表7】

【0175】
表7から、完全パス方式と循環方式を組み合わせることも可能であることがわかる。また、循環粉砕を長時間繰り返しても、平均粒子径は1μmを下回っていない。
【0176】
実施例8
カルボキシメチルセルロースナトリウム(450 g)、マンニトール2250 g、リン酸2水素ナトリウム1水和物40 g、及び1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液160 gを精製水に溶解し、全量を50625 gとした。この溶液を、0.2μmのフィルターでろ過した。このろ液(748.8 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(83.2 g、原末の平均粒子径=256μm、10%径=109μm、50%径=272μm、90%径=566μm)を分散し、一次懸濁液を形成した。
【0177】
この一次懸濁液を、被処理物に剪断力を与える分散機(商品名「T-50ベーシック」、IKAジャパン株式会社製)にて、シャフトとして一般名シャフトジェネレーター(商品名「S50N-G45G」、IKAジャパン株式会社製)を用い、6400 rpmで1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして、二次懸濁液を得た。
【0178】
得られた二次懸濁液を、入口温度が約20℃となるように冷却し、高圧ホモジナイザーにて完全パス方式で300 barにて1回、500 barで4回通過させ計5回粉砕した。1回粉砕後と5回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて、平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0179】
【表8】

【0180】
表8から次のことが判る:
第一粉砕工程に使用する粉砕機としては、ある程度せん断力があり、原末を粉砕できればよく、既述の高剪断型ホモミキサー(例えば、クレアミックス)だけでなく、分散機(例えば、「T-50ベーシック」、IKAジャパン株式会社製)であっても使用可能である。
【0181】
実施例9
カルボキシメチルセルロースナトリウム(450 g)、マンニトール2250 g、リン酸2水素ナトリウム1水和物40 g、及び1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液160 gを精製水に溶解し、全量を50625 gとした。この溶液を、0.2μmのフィルターでろ過した。この濾液(748.8 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(83.2 g、原末の平均粒子径=256μm、10%径=109μm、50%径=272μm、90%径=566μm)を分散し、一次懸濁液を形成した。
【0182】
この一次懸濁液を入口温度が約20℃となるように冷却し、完全パス方式で高圧ホモジナイザーにて100 barにて1回通過させて粉砕し(第一粉砕工程)、並びに300 barにて1回及び500 barで4回通過させ粉砕して(第二粉砕工程)計6回粉砕した。1回、2回、及び6回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0183】
【表9】

【0184】
表9から次のことが判る:
高圧ホモジナイザーであっても、粉砕圧を低くすればラインの目詰まりもなく、第一粉砕工程に使用することが可能である。
【0185】
実施例10
カルボキシメチルセルロースナトリウム(16.64 g)、マンニトール83.20 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物1.48 gを精製水に溶解し、全量を3704 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0186】
得られたろ液1852 gに、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(208 g、原末の平均粒子径=238μm、10%径=72μm、50%径=274μm、90%径=811μm)を分散し、一次懸濁液を形成した。
【0187】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして、二次懸濁液を得た。
【0188】
得られた二次懸濁液を温度調整することなく、高圧ホモジナイザーにて完全パス方式で600 barにて10回通過させ粉砕した。1回粉砕後と10回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0189】
【表10】

【0190】
表10から次のことが判る:
入口温度の調整を行わなくとも平均粒子径3〜5μm程度のアリピプラゾールの懸濁液を調製できる。入口温度の温度コントロールを行うと、平均粒子径が3ミクロンを下回るアリピプラゾール懸濁液を得ることができる(実施例11参照)。
【0191】
実施例11
カルボキシメチルセルロースナトリウム(16.64 g)、マンニトール83.20 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物1.48 gを精製水に溶解し、全量を3704 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0192】
得られたろ液(1852 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(208 g、原末の平均粒子径=238μm、10%径=72μm、50%径=274μm、90%径=811μm)を分散し、一次懸濁液を形成した。
【0193】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして、二次懸濁液を得た。
【0194】
得られた二次懸濁液を入口温度が常に約20℃となるように冷却し、高圧ホモジナイザーにて600 barにて完全パス方式で10回通過させ粉砕した。
【0195】
1回粉砕後と10回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて、平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0196】
【表11】

【0197】
上記表11から次のことが判る:
懸濁化剤であるCMCNaの濃度が低い場合であっても、1回のパスで平均粒子径1〜5μmの懸濁液が調製可能であり、10回のパスで平均粒子径2μmの懸濁液が調製可能である。
【0198】
実施例12
カルボキシメチルセルロースナトリウム(16.64 g)、マンニトール83.20 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物1.48 gを精製水に溶解し、全量を3704 gとした。この溶液を1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0199】
得られたろ液(1852 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(208 g、原末の平均粒子径=258μm、10%径=99μm、50%径=280μm、90%径=609μm)を分散し、一次懸濁液を形成した。
【0200】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして、二次懸濁液を得た。
【0201】
得られた二次懸濁液を入口温度が常に約10℃、約20℃、約40℃、及び約60℃となるように冷却または加温し、高圧ホモジナイザーにて600 barにて完全パス方式で10回通過させ粉砕した。1回粉砕後と10回粉砕後の懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0202】
【表12】

【0203】
表12から次のことが判る:
(i)低いCMCNa濃度でも実施例1と同様に平均粒子径1〜5μmの懸濁液が調製可能である。
(ii)低いCMCNa濃度でも、入口温度を40℃以下に調整することにより、実施例1と同様に、平均2〜3μmの懸濁液を調製できる。
【0204】
実施例13
カルボキシメチルセルロースナトリウム(8.32 g)、マンニトール41.60 g、及びリン酸2水素ナトリウム1水和物0.74 gを精製水に溶解し、全量を1852 gとした。この溶液を1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した。
【0205】
得られたろ液(740.8 g)に、バッチ晶析で製造されたアリピプラゾール一水和物原末(83.2 g、原末の平均粒子径=256μm、10%径=99μm、50%径=280μm、90%径=609μm)を分散し、一次懸濁液を得た。該一次懸濁液を調製するための分散操作は、スリーワンモーター(HEIDON社製)を用い、直径50 mmの羽にて300〜500 rpm程度で撹拌し行った。
【0206】
この一次懸濁液をクレアミックス(CLM-1.5S)を用い、18000 rpmにて1Lあたり7.5分間粉砕した。こうして、二次懸濁液を得た。
【0207】
得られた二次懸濁液(450 mL)を、高圧ホモジナイザーを通して循環させ、高圧ホモジナイザー出口にて冷却し、入口温度が約20℃となるようにした。
【0208】
懸濁液を高圧ホモジナイザーからの吐出速度155 mL/分にて、粉砕圧500 barにて72.5分間循環方式で粉砕した。14.5分間及び72.5分間粉砕した懸濁液につき、粒度分布測定装置(SALD-3000J,島津製作所)にて平均粒子径を測定した。結果を以下に示す。
【0209】
【表13】

【0210】
表13から、低いCMCNa濃度であっても、循環方式で所望の粉砕が可能であることがわかる。また、循環粉砕を長時間繰り返しても、平均粒子径は1μmを下回っていない。
【0211】
実施例14
実施例1〜13に示す方法で得られたアリピプラゾール懸濁液(2.5mL)をそれぞれガラスバイアルに充填し、バイアルはゴム栓で部分的に栓をした。このバイアルを、凍結乾燥機に搬入し、以下の条件で凍結乾燥を行った。
【0212】
(a)凍結:バイアルを1℃/分で-40℃まで冷却し、-40℃で6時間維持した。
【0213】
(b)乾燥:チャンバ圧を約13 Paへ低下させ、凍結乾燥機の棚温度を0.3℃/分で-5℃へ上昇させた。その後、真空度は約13 Pa、棚温度は約-5℃で維持して、乾燥を55.5時間継続した。
【0214】
(c)窒素または空気を使用して、大気圧または部分真空下で、バイアルに栓をし、凍結乾燥機から取り出した。
【0215】
(d)バイアルをアルミシールで密封した。
【0216】
得られたアリピプラゾール懸濁液の凍結乾燥物のアリピプラゾールは、いずれも水和物Aであった。
【0217】
実施例15
実施例1〜13に示す方法で得られたアリピプラゾール懸濁液をガラスバイアルに充填し、バイアルをゴム栓で部分的に栓をした。このバイアルを、凍結乾燥機に搬入し、以下の条件で凍結乾燥を行った。
【0218】
(a)凍結:バイアルを1℃/分で-40℃まで冷却し、-40℃で6時間維持した。
【0219】
(b)一次乾燥:チャンバ圧を約13 Paへ低下させ、凍結乾燥機の棚温度を0.3℃/分で-5℃へ上昇させた。その後、真空度は約13 Pa、棚温度は約-5℃で維持して、一次乾燥を55.5時間継続した。
【0220】
(c)二次乾燥:棚温度25℃に上昇させ、真空度を約13 Paで維持して、24時間乾燥を継続した。その後、棚温度を50℃に上昇させ、真空度を約13 Paで維持して、24時間乾燥を継続した。
【0221】
(d)窒素または空気を使用して、大気圧または部分真空下で、バイアルに栓をし、凍結乾燥機から取り出した。
【0222】
(e)バイアルをアルミシールで密封した。
【0223】
得られたアリピプラゾール懸濁液の凍結乾燥物のアリピプラゾールは、いずれも無水物形態であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アリピプラゾール原末とビヒクルを混合して一次懸濁液を形成する工程、
(b)該一次懸濁液を第一粉砕に供して二次懸濁液を形成する工程、及び
(c)該二次懸濁液を第二粉砕に供して最終懸濁液を形成する工程
を包含する、アリピプラゾール懸濁液の製造方法。
【請求項2】
工程(b)の第一粉砕において、一次懸濁液を高剪断型の粉砕機、被処理物に剪断力を与える分散機、コロイドミル、超音波分散機、又は高圧噴射式乳化分散機を用いた粉砕によって二次懸濁液を形成し、
工程(c)の第二粉砕において、二次懸濁液を高圧噴射式乳化分散機を用いた粉砕によって最終懸濁液を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)の第一粉砕において、一次懸濁液を高剪断型の粉砕機又は被処理物に剪断力を与える分散機を用いた粉砕によって二次懸濁液を形成し、
工程(c)の第二粉砕において、二次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いた粉砕によって最終懸濁液を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)において、高圧ホモジナイザーを粉砕圧300〜1000 barで使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、高圧ホモジナイザーを粉砕圧300〜600 barで使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、高圧ホモジナイザーを入口温度1〜70℃で使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)の第一粉砕において、一次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて粉砕することによって二次懸濁液を形成し、
工程(c)の第二粉砕において、二次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて粉砕することによって最終懸濁液を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)の第一粉砕工程において、一次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて50〜200 barの粉砕圧で粉砕することによって二次懸濁液を形成し、
工程(c)の第二粉砕工程において、二次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて200〜1000 barの粉砕圧で粉砕することによって最終懸濁液を形成し、
工程(b)での粉砕圧と工程(c)での粉砕圧との差が100〜900 barであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)において、高圧ホモジナイザーの粉砕圧が50〜200 barであり、工程(c)において、粉砕が複数回行われ、その際に、粉砕圧を200〜1000 barの範囲内で段階的に上昇させる、項目8に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)において最終の高圧ホモジナイザーの粉砕圧が300〜600 barである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)及び工程(c)において、高圧ホモジナイザーが入口温度1〜50℃で使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ビヒクルが、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロ-ス、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の懸濁化剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アリピプラゾール原末が粒子径100μm以上のアリピプラゾール粒子を10%以上含み、20μm〜1000μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アリピプラゾール原末が100μmより大きい平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
アリピプラゾール原末が110μm〜1000μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
アリピプラゾール原末が200μm〜400μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
アリピプラゾール懸濁液中のアリピプラゾールが1〜10 μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
アリピプラゾール懸濁液中のアリピプラゾールが1〜5μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
アリピプラゾール懸濁液中のアリピプラゾールが2〜4μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
アリピプラゾール懸濁液中のアリピプラゾールが2〜3μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(I)平均粒子径が200μm〜400μmの無菌アリピプラゾール原末と無菌ビヒクルとを混合して無菌一次懸濁液を形成する工程、
(II)該無菌一次懸濁液を高剪断型の粉砕機又は被処理物に剪断力を与える分散機を用いる第一粉砕に供して無菌二次懸濁液を形成する工程、および
(III)該無菌二次懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いる第二粉砕に供して無菌最終懸濁液を形成する工程
を包含し、無菌最終懸濁液中のアリピプラゾールの平均粒子径が1〜10μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
アリピプラゾール原末が、一水和物及び無水物B形結晶からなる群から選ばれる形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記最終懸濁液を、定格ろ過精度が10〜225μmのフィルターでろ過を行う工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
アリピプラゾール水和物Aの凍結乾燥製剤の製造方法であって、請求項1に記載の方法により製造したアリピプラゾール水和物A含有懸濁液を、-20〜-55℃まで冷却し懸濁液を凍結させる工程、及びその後、約0℃未満で乾燥を行う工程を包含する方法。
【請求項25】
(1)請求項1に記載の方法により製造した一水和物又は無水物結晶の形態であるアリピプラゾール原末を用いて得られたアリピプラゾール懸濁液を、-20〜-55℃まで冷却し懸濁液を凍結する段階、
(2)約0℃未満で行われる一次乾燥段階、および
(3)約0℃超で行われる二次乾燥段階
を包含する無水形態のアリピプラゾールを含む凍結乾燥製剤の製造方法。

【公表番号】特表2010−535151(P2010−535151A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504102(P2010−504102)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/JP2008/064076
【国際公開番号】WO2009/017250
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】