説明

アリル−及びビニルエーテルに基づくアニオン性水溶性添加剤

モノマー(A)、(B)及び(C)を重合して、反応性末端OH基を有する非イオン性ポリマーを得、次いでこの末端OH基をアニオン性端基に転化することによって得ることができるアニオン性に変性されたコポリマーであって、
(A)は、次式(I)のモノマーであり、


[式中、
Aは、C−〜C−アルキレンを表し、そして
Bは、Aとは異なるC−〜C−アルキレンを表し、
kは、0または1の数に相当し、
mは、0〜500、好ましくは0〜50の数であり;
nは、0〜500、好ましくは0〜50の数であり、
この際、m+nの合計は1〜1000に等しい]
(B)は、芳香族基を含むエチレン性不飽和モノマーであり、
(C)は、アルキル基を含むエチレン性不飽和モノマーである、
前記コポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、水系顔料調合物用の分散剤として使用できる新規のアニオン性コポリマー、及びこのコポリマーの製造方法である。
【0002】
ノボラックに基づく従来慣用のアニオン性分散剤は、それの製造方法の結果として、アルキルフェノール、多くの場合にノニルフェノール、及びこれらのエトキシレートの残渣を含む。アルキルフェノールエトキシレートまたはこれらの分解生成物は環境中で殆ど分解せず、蓄積してしまう。これは問題である。というのも、これらは水性生物に対しホルモン作用を示すからである。それ故、多くの国において、アルキルフェノールまたはそれらのエトキシレートを含む物質を開放物質循環系で使用することを制限するかまたは禁止する法規制が発布されている(例えば2003/53/EC)。
【0003】
米国特許出願公開第2005085563号明細書(特許文献1)は、ビニル官能化ポリエーテルとスチレンオキシドとを共重合することによって得られる分散剤を開示している。
【0004】
欧州特許出願公開第0894811号明細書(特許文献2)及び欧州特許出願公開第0736553号明細書(特許文献3)には、水硬性結合剤、特にセメントに使用するのに適した、不飽和カルボン酸誘導体及びオキシアルキレングルコールアルキルエーテル並びにジカルボン酸誘導体に基づくコポリマーが記載されている。
【0005】
独国特許出願公開第10017667号明細書(特許文献4)には、水性顔料調合物の調製のためにこのようなコポリマーを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005085563号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0894811号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0736553号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10017667号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでの試験は、アニオン性ノボラック系に等価の分散剤を合成することは今なお非常に困難であることを示している。従って、有機顔料を40%を超える高濃度で低粘度に分散できる新しい分散剤が求められている。この分散体は簡単に製造できなければならない。すなわち、顔料は簡単に濡れることができなければならず、かつ簡単に水性媒体中に配合できなければならない。この分散体は、強くかつ再現可能な色強度を有していなければならず、またこれは、数年間の期間にわたり安定したままでいなければならない。同様に、他の全てのカラーパラメータ、例えば色相角及び純度が再現可能でかつ安定しているべきである。更に、この分散体は低い粘度を有していなければならず、顔料は集塊(アグロメレ−ション)も凝集(フロキュレーション)もしてはならず、浮遊も沈降もしてはならない。また分散体は、発泡するべきではないし、または適用媒体中で泡の形成を惹起もしくは促進すべきではない。更に、分散剤は、様々な適用媒体中での分散体の幅の広い相溶性に貢献すべきである。加えて、分散体は剪断安定性でなければならない。すなわち、剪断下に色強度または色彩が変化してはならず、また分散体は、この条件下に凝集(フロキュレーション)安定性を保たなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、ポリエチレン/ポリプロピレングリコール−モノビニルエーテルまたは−アリルエーテルからなるマクロモノマーを用いて製造される特殊なアニオン性櫛状コポリマーがこれらの課題を満たすことが見出された。
【0009】
それ故、本発明の対象は、モノマー(A)、(B)及び(C)を重合して、反応性末端OH基を有する非イオン性コポリマーを得、次いでこの末端OH基をアニオン性端基、例えば硫酸モノエステルに転化して得ることができる、アニオン性に変性したコポリマーであって、
(A)が、次式(I)のモノマーであり、
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、
Aは、C〜Cアルキレンを表し、
Bは、Aとは異なるC〜Cアルキレンを表し、
kは、0または1の数に相当し、
mは、0〜500の数、好ましくは0〜50の数であり、
nは、0〜500の数、好ましくは0〜50の数であり、
ここでm+nの合計は1〜1000に等しい]
(B)は、芳香族基を含むエチレン性不飽和モノマーであり、そして
(C)は、アルキル基を含むエチレン性不飽和モノマーである、
前記コポリマーである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のコポリマーは、ラジカル重合の開始によってまたは連鎖移動反応によってまたは連鎖停止反応によって生ずる通常の端基、例えばプロトン、ラジカル開始剤からの基、または連鎖移動試薬からの硫黄含有基を有する。アニオン性端基は、スルフェート、スルホスクシネート、カルボキシレートまたはホスフェートであることができる。アニオン性端基に転化される反応性末端OH基は、式(I)のモノマーから生ずるポリマー側鎖に存在する。
【0013】
各モノマーのモル分率は、好ましくは、モノマー(A)が1〜80%、モノマー(B)が0.1〜80%、そしてモノマー(C)が0.1〜80%である。特に好ましくは、各モノマーのモル分率は、モノマー(A)が10〜70%、モノマー(B)が10〜60%、そしてモノマー(C)が10〜60%である。
【0014】
好ましいモノマー(A)は、AがエチレンをそしてBがプロピレンを意味するか、またはAがプロピレンをそしてBがエチレンを意味するものである。
【0015】
アルキレンオキシド単位(A−O)及び(B−O)は、ランダム状にか、または好ましい実施形態の場合のようにブロック状に配置されて存在することができる。アルキレンオキシド単位の総数は原則的にn+m=1〜1000であることができ、好ましくは1〜500、特に2〜100、特に好ましくは5〜100である。
【0016】
好ましいモノマー(B)は、次式(IIa)または(IIb)によって表すことができる。
【0017】
【化2】

【0018】
[式中、
は、場合によってはN、O及びSの一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含む、炭素原子数3〜30の芳香族もしくは芳香脂肪族基を表し、
は、Hまたは(C−C)アルキルを表し、
は、Hまたは(C−C)アルキルを表し、
は、Hまたは(C−C)アルキルを表す]
【0019】
【化3】

【0020】
[式中、
は、水素またはメチルを表し、
は、場合によってはN、O及びSの一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含む、炭素原子数3〜30の芳香族または芳香脂肪族基を表し、
は、酸素またはNH基を表す]
【0021】
モノマー(B)には、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸の次のエステル及びアミド、すなわちフェニル、ベンジル、トリル、2−フェノキシエチル、フェネチル−エステル及びアミドが挙げられる。
【0022】
更に別のモノマー(B)は、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン及びそれの誘導体、例えばビニルトルエン、アルファ−メチルスチレンである。芳香族単位は、例えば1−ビニルイミダゾールの場合のようにヘテロ芳香族であることができる。
【0023】
特に好ましいモノマー(B)は、スチレン、1−ビニルイミダゾール、ベンジルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート及びフェネチルメタクリレートであり得る。
【0024】
好ましいモノマー(C)は、以下の式(IIIa)または式(IIIb)で表すことができる。
【0025】
【化4】

【0026】
[式中、
は、水素またはメチルを表し、
Yは、炭素原子数1〜30、好ましくは6〜30、特に9〜20の脂肪族炭化水素を表し、これは線状もしくは分枝状かまたは環状であることもでき、そしてヘテロ原子O、N及び/またはSを含むことができ、また不飽和であることもでき、
は、酸素またはNH基を表す]
【0027】
【化5】

【0028】
[式中、
は、炭素原子数1〜30、好ましくは6〜20、特に8〜12の脂肪族炭化水素基を表し、これは線状もしくは分枝状かまたは環状であることもでき、そしてヘテロ原子O、N及び/またはSを含むことができ、また不飽和であることもできる]
【0029】
モノマー(C)には、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸の次のエステル及びアミド、すなわちメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、3,3−ジメチルブチル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、ラウリル、セチル、ステアリル、ベヘニル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ボルニル、イソボルニル、アダマンチル、(2,2−ジメチル−1−メチル)プロピル、シクロペンチル、4−エチル−シクロヘキシル、2−エトキシエチル、テトラヒドロフルフリル及びテトラヒドロピラニル−エステル及びアミドなどが挙げられる。
【0030】
更に、モノマー(C)としては、カルボン酸のビニルエステル、例えばラウリン酸ビニルエステル、ミリスチン酸ビニルエステル、ステアリン酸ビニルエステル、ベヘン酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステル、ネオヘキサン酸ビニルエステル、ネオヘプタン酸ビニルエステル、ネオオクタン酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル、ネオデカン酸ビニルエステル及びネオウンデカン酸ビニルエステルなども挙げられる。この際、これらの種のカルボン酸の混合物からなるビニルエステルも同様に使用することができる。
【0031】
本発明のコポリマーは、10g/mol〜10g/mol、特に好ましくは10〜10g/mol、就中好ましくは10〜10g/molの分子量を有する。
【0032】
モノマー(A)と芳香族及び脂肪族モノマー(B)及び(C)とを組み合わせることによって、非常に類似した特性プロフィルが得られるようにノボラック系分散剤の性質を首尾良く模倣することができる。
【0033】
本発明のポリマーとは異なり、ポリマー骨格上にカルボキシレート基を有するポリマーは、40%を超える高濃度で有機顔料を有する顔料分散体の調製には適していない。なぜならば、このようなポリマーは高い粘度を招くからである。
【0034】
本発明のコポリマーの製造は、ラジカル重合を用いて行うことができる。重合反応は、連続的に、断続的にまたは半連続的に行うことができる。
【0035】
重合反応は、有利には、沈殿重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合またはゲル重合として行われる。本発明のコポリマーの特性プロフィルにとって特に有利なものは溶液重合である。
【0036】
重合反応用の溶剤としては、ラジカル重合反応に対してほぼ不活性に挙動する全ての有機または無機溶剤を使用することができ、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチルまたは1−メトキシ−2−プロピルアセテート、並びにアルコール類、例えばエタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノールまたは1−メトキシ−2−プロパノール、また同様にジオール類、例えばエチレングリコール及びプロピレングリコールなどを使用できる。また、ケトン類、例えばアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン及びメチルエチルケトン、酢酸、プロピオン酸及び酪酸のアルキルエステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル及び酢酸アミル、エーテル類、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、並びにエチレングリコール−及びポリエチレングリコール−モノアルキルエーテル及び−ジアルキルエーテルも使用することができる。同様に、芳香族溶剤、例えばトルエン、キシレンまたは高沸点アルキルベンゼン類も使用できる。また同様に、溶剤混合物の使用も考えられ、この際、溶剤または複数種の溶剤の選択は本発明のコポリマーの使用目的に依存する。好ましくは、水、低級アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール類、iso−、sec−及びt−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ブチルグリコール及びブチルジグリコール、特に好ましくはiso−プロパノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ブチルグリコール及びブチルジグリコール、炭素原子数5〜30の炭化水素、及び上記の化合物の混合物及びエマルションが使用される。特に好ましいものはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノールである。
【0037】
重合反応は、好ましくは、0〜180℃、特に好ましくは10〜100℃の温度範囲で、常圧下にまたは高められたもしくは低められた圧力下に行われる。場合により、重合は、保護ガス雰囲気下に、好ましくは窒素下に行うこともできる。
【0038】
重合の開始のためには、高エネルギーの電磁放射線、機械的エネルギーまたは通常の化学的重合開始剤、例えば有機過酸化物、例えばベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、クモイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド(DLP)またはアゾ開始剤、例えばアゾジイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスアミドプロピル−ヒドロクロライド(ABAH)及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル(AMBN)を使用することができる。同様に、場合により還元剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、硫酸鉄(II))とまたは還元成分として脂肪族もしくは芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸)を含むレドックス系と組み合わせた、無機パーオキシ化合物、例えば(NH、KまたはHも適している。
【0039】
分子量調節剤としては、慣用の化合物が使用される。適当な既知の調節剤は、例えばアルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec.−ブタノール及びアミルアルコール類、アルデヒド、ケトン、アルキルチオール、例えばドデシルチオール及びtert−ドデシルチオール、チオグリコール酸、イソオクチルチオグリコレート及び幾つかのハロゲン化合物、例えば四塩化炭素、クロロホルム及び塩化メチレンである。
【0040】
重合の後は、溶剤は除去される。そうして得られたノニオン性ポリマーは、今や、ポリオキシアルキレン側鎖に反応性ヒドロキシ官能基を有し、これは、次の段階で、アニオン性官能基に転化される。アニオン性官能基は、例えば、SOM、CHCOOM、POまたはスルホスクシネートである。この際、Mは、以下に定義する意味を有する。
【0041】
本発明のアニオン性コポリマーは、例えば、次の式(IV)、(V)、(VI)または(VII)によって表すことができる。
【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
インデックスa、b及びcは、各々のモノマー(A)、(B)及び(C)のモル分率を与え、詳しくは
aは、0.01〜0.8であり、
bは、0.001〜0.8であり、
cは、0.001〜0.8であり、
この際、a+b+cの合計は1に等しく、
特に好ましくは、
aは、0.1〜0.7であり、
bは、0.1〜0.6であり、
cは、0.1〜0.6であり、
この際、a+b+cの合計は1に等しい。
【0047】
式(IV)、(V)、(VI)及び(VII)中、Qは、SO、CHCOO、POMを表すか、またはQMは次を意味し、
【0048】
【化10】

【0049】
そしてMは、H、一価の金属カチオン、二価の金属カチオン、NH、第二、第三もしくは第四アンモニウムイオン、またはこれらの組み合わせ、または二価、三価もしくは多価の金属イオンの当量、例えばCa2+またはAl3+の当量を表す(上記マルクーシュ式中の星印*は、その箇所にポリマーへの結合があることを示す)。
【0050】
スルホスクシネートの場合は、先ず、非イオン性コポリマーを例えば無水マレイン酸でエステル化する。この際、溶剤無しで作業することができ、この反応は、ポリマー溶融物中で高められた温度下に行うことができる。次いで、得られたマレイン酸モノエステルをスルホン化する。このためには、これを、例えば水性溶液中で亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸ナトリウムと反応させる。スルホスクシネート−ナトリウム塩の水溶液が生成物として得られる。
【0051】
スルフェートエステルは、例えば、非イオン性コポリマーをアミドスルホン酸と反応させることによって製造される。この反応は、アミドスルホン酸を添加して、非イオン性コポリマーの溶融物中で行われる。この際、コポリマーのOH基がスルフェートエステルに転化され、これは次いでアンモニウム塩として存在する。
【0052】
カルボキシメチル化、例えばクロロ酢酸ナトリウムを用いたカルボキシメチル化によって、末端ヒドロキシ官能基を対応するポリエーテルカルボキシレートに転化することができる。
【0053】
リン酸エステルは、例えば、ノニオン性コポリマーの溶融物をポリリン酸または五酸化リンと反応させることによって得ることができる。この反応の際、リン酸モノエステルばかりでなく、リン酸ジエステル及びトリエステルも得られうる。
【0054】
本発明の更に別の対象は、分散剤としての、特に顔料及びフィラー用の分散剤としての、例えば、エマルションペイント及び着色ニス、ペイント、コーティング材料及び印刷インキの着色に、並びに紙、厚紙及びテキスタイル材料の着色に使用される水系顔料濃厚物用の分散剤としての、本発明のアニオン性コポリマーの使用である。
【実施例】
【0055】
合成例
合成手順1:
一般重合手順:
攪拌機、還流冷却器、内部温度計及び窒素導入部を備えたフラスコ中で、モノマーA、モノマーC、場合により及び分子量調節剤を窒素導入下に溶剤中に仕込んだ。次いで、温度を攪拌下に80℃にし、そして1時間内に、開始剤の溶液を計量添加した。これと同時に、モノマーBの計量添加を開始し、3時間後に完了した。次いで、この温度で更に2時間攪拌し、次いで溶剤を真空下に除去した。
【0056】
合成手順2:
一般合成手順:
攪拌機、還流冷却器、内部温度計及び窒素導入部を備えたフラスコ中で、モノマーA、モノマーC、場合によっては及び分子量調節剤、及びレドックス開始剤系の成分1(アスコルビン酸)を、窒素導入下に溶剤中に仕込んだ。次いで、温度を攪拌下に80℃にし、そして3時間内に、レドックス開始剤系の成分2(t−BuOOH)の溶液を計量添加した。これと同時に、モノマーBの計量添加を開始し、3時間後に完了した。次いで、この温度で更に2時間攪拌し、次いで溶剤を真空中で除去した。
【0057】
合成手順3:
合成手順1または2に従い得られたポリマーを反応させて、側鎖にエーテルスルフェート基を有するアニオン性コポリマーを得る一般合成手順:
コポリマーを、窒素下にアミドスルホン酸及び尿素を含むフラスコ中に仕込んだ。次いで、攪拌下に4時間、100℃に加温した。次いで、50重量%濃度の苛性ソーダ溶液を用いてpH値を6.5〜7.5に調節した。NMR分光分析により、対応する硫酸エステル−アンモニウム塩への>95%の転化率を求めることができた。
【0058】
合成手順4:
合成手順1または2に従い得られたポリマーを反応させて側鎖にスルホスクシネート基を有するアニオン性コポリマーを得るための一般合成手順:
コポリマーを、窒素下にフラスコ中に仕込んだ。次いで、無水マレイン酸及び水酸化ナトリウムを加え、そして攪拌下に75〜85℃の温度に加熱した。この温度で、3時間攪拌し、次いで亜硫酸ナトリウム水溶液(10重量%濃度)を計量添加した。60〜70℃で反応が完了するまで攪拌し、そして最後にpH値を、50重量%濃度苛性ソーダ溶液を用いてpH7に調節した。
【0059】
以下の三つの表は二段階の合成例を含む。これらの合成例では、先ずポリマーを合成手順1または2に従い製造し、次いでこのポリマーのアニオン性誘導体を合成手順3または4に従い製造する。
AMBN=2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
表1〜3のモノマーA:

ポリグリコール1 ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル(式(I)、k=0、n=0、m=11.5;(A−O)は(CHCHO)に相当)、分子量:約550g/mol
ポリグリコール2 ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル(式(I)、k=0、n=0、m=24;(A−O)は(CHCHO)に相当)、分子量:約1100g/mol
ポリグリコール3 ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル(式(I)、k=0、n=0、m=44.5;(A−O)は(CHCHO)に相当)、分子量:約2000g/mol
ポリグリコール4 ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル(式(I)、k=0、n=0、m=135.4;(A−O)は(CHCHO)に相当)、分子量:約6000g/mol
ポリグリコール5 ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(I)、k=1、n=0、m=6.6;(A−O)は(CHCHO)に相当)、分子量:約350g/mol
ポリグリコール6 ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(I)、k=1、n=0、m=10;(A−O)は(CHCHO)に相当)、分子量:約500g/mol
ポリグリコール7 ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(I)、k=1、n=0、m=21.4;(A−O)は(CHCHO)に相当)、分子量:約1000g/mol
ポリグリコール8 ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(I)、k=1、エチレンオキシド/プロピレンオキシドの比率6:4(ランダムに重合)、分子量:約500g/mol
ポリグリコール9 ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(I)、k=1、エチレンオキシド(B−O)/プロピレンオキシド(A−O)の比率11:4(ブロックコポリマー)、分子量:約750g/mol
ポリグリコール10 ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(I)、k=1、エチレンオキシド(B−O)/プロピレンオキシド(A−O)の比率20:10(ブロックコポリマー)、分子量:約1500g/mol
ポリグリコール11 ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(I)、k=1、エチレンオキシド/プロピレンオキシドの比率20:20(ランダムに重合)、分子量:約2100g/mol
【0064】
使用例 顔料調合物
顔料調合物の製造
粉末、顆粒物またはプレスケーキのいずれかとしての顔料を、分散剤及び他の添加剤と一緒に脱イオン水中でペースト化し、次いでディスソルバ(例えば、VMA−Getzmann GmbH社製のタイプAE3−M1)または他の適当な装置を用いて均一化及び予備分散した。次いで、ビーズミル(例えばVMA−Getzmann社製のAE3−M1)または他の適当な分散装置を用いて行った。この際、粉砕は、直径d=1mmのシリカザイト(Siliquarzit)ビーズまたはジルコニウム混合酸化物ビーズを用いて冷却しながら希望の色強度及び色になるまで行った。次いで、分散体を脱イオン水で希望の顔料濃度に調節し、粉砕媒体を分離し、そして顔料調合物を単離した。
【0065】
顔料調合物の評価
色強度及び色相の測定はDIN55986に従って行った。“ラブアウト試験(Rub−Out−Test)”のために、エマルションペイントを、顔料分散体と混合した後にペイントカード上に塗布した。次いで、このペイントカードの下の部分を指で後擦りした。後擦りした面が、隣接する後処理していない面よりも強く着色されている場合には馴染みの悪さ(Unvertraeglichkeit)が存在した(“ラブアウト試験”は独国特許出願公開第2638946号明細書に記載されている)。色強度及び着色すべき媒体との馴染みの良さは、外装用のエマルションペイントを用いて求めた(水系、20%TiO)。
【0066】
粘度は、Haake社製のコーン−プレート粘度計(Roto Visco1)を用いて20℃で測定し(チタン製コーン:φ60mm、1°)、この際、0〜200s−1の範囲の剪断速度に対する粘度の依存性を試験した。粘度は60s−1の剪断速度で測定した。分散体の貯蔵安定性の評価のためには、粘度を調合物の製造直後と、50℃で四週間貯蔵した後に測定した。
【0067】
以下の例に記載の顔料調合物は、上述の方法に従い製造したものであり、この際、以下の成分を、100部の顔料調合物が生ずるように記載の量で使用した。以下の例では、部は重量部を意味する。
50部 C.I.ピグメントブルー15
6部 合成例11からのポリマー
2部 湿潤剤
8部 エチレングリコール
0.2部 防腐剤
33.8部 水
【0068】
上記顔料調合物は、白色の分散体において高い色強度を有しかつ安定している。ラブアウト試験は、後擦りした面と比べて色強度の差異を示さない。該分散体は、50℃での28日間の貯蔵の後でもなおも同様に流動性に優れているため、流動性に優れかつ貯蔵安定性であることが分かる。製造後の粘度は681mPa・sである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー(A)、(B)及び(C)を重合して、反応性末端OH基を有する非イオン性コポリマーを得、次いでその末端OH基をアニオン性端基に転化することによって得ることができるアニオン性に変性されたコポリマーであって、ここで
(A)は、次式(I)のモノマーであり、
【化1】

[式中、
Aは、C−〜C−アルキレンを表し、そして
Bは、Aとは異なるC−〜C−アルキレンを表し、
kは、0または1の数に相当し、
mは、0〜500の数であり、
nは、0〜500の数であり、
m+nの合計は1〜1000に等しい]
(B)は、芳香族基を含むエチレン性不飽和モノマーであり、そして
(C)は、アルキル基を含むエチレン性不飽和モノマーである、
前記コポリマー。
【請求項2】
各モノマーのモル分率が、モノマー(A)は1〜80%、モノマー(B)は0.1〜80%、そしてモノマー(C)は0.1〜80%であることを特徴とする、請求項1のコポリマー。
【請求項3】
AがエチレンをそしてBがプロピレンを意味するか、またはAがプロピレンをそしてBがエチレンを意味することを特徴とする、請求項1または2のコポリマー。
【請求項4】
モノマー(B)が次式(IIa)または(IIb)の化合物であることを特徴とする、請求項1〜3の一つまたはそれ以上のコポリマー。
【化2】

[式中、
は、炭素原子数3〜30の芳香族または芳香脂肪族基を表し、これは、場合によっては、N、O及びSの一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含み、
は、Hまたは(C−C)−アルキルを表し、
は、Hまたは(C−C)−アルキルを表し、
は、Hまたは(C−C)−アルキルを表す]
【化3】

[式中、
は、水素またはメチルを表し、
は、炭素原子数3〜30の芳香族または芳香脂肪族基を表し、これは、場合によっては、N、O及びSの一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含み、
は、酸素またはNH基を表す]
【請求項5】
モノマー(C)が次の式(IIIa)または式(IIIb)の化合物であることを特徴とする、請求項1〜4の一つまたはそれ以上のコポリマー。
【化4】

[式中、
は、水素またはメチルを表し、
Yは、炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基を表し、これは線状もしくは分枝状かまたは環状であることもでき、そしてヘテロ原子O、N及び/またはSを含むことができ、また不飽和であることもでき、
は、酸素またはNH基を表す]
【化5】

[式中、
は、炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基を表し、これは線状もしくは分枝状かまたは環状であることもでき、そしてヘテロ原子O、N及び/またはSを含むことができ、また不飽和であることもできる]
【請求項6】
アニオン性端基が、SOM基、CHCOOM基、PO基またはスルホスクシネート基のうちの一つを意味し、この際、Mは、H、一価の金属カチオン、二価の金属カチオン、NH、第二、第三もしくは第四アンモニウムイオン、またはこれらの組み合わせの意味を有することを特徴とする、請求項1〜5の一つまたはそれ以上のコポリマー。
【請求項7】
次の式(IV)、(V)、(VI)または(VII)を特徴とする、請求項1〜6の一つまたはそれ以上のコポリマー。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

[式中、
Aは、C−C−アルキレンを表し;
Bは、Aとは異なるC−C−アルキレンを表し;
mは、0〜500の数を表し;
nは、0〜500の数を表し;
この際、m+nの合計は1〜1000に等しく;
は、炭素原子数3〜30の芳香族または芳香脂肪族基を表し、これは、場合によっては、N、O及びSの一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含み、
は、Hまたは(C−C)−アルキルを表し、
は、Hまたは(C−C)−アルキルを表し、
は、Hまたは(C−C)−アルキルを表し、
は、水素またはメチルを表し、
Yは、炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基を表し、これは線状もしくは分枝状かまたは環状であることもでき、そしてヘテロ原子O、N及び/またはSを含むことができ、または不飽和であり、
は、酸素またはNH基を表し、
は、水素またはメチルを表し、
は、炭素原子数3〜30の芳香族または芳香脂肪族基を表し、これは、場合によっては、N、O及びSの一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含み、
は、酸素またはNH基を表し、
は、炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基を表し、これは線状もしくは分枝状かまたは環状であることもでき、そしてヘテロ原子O、N及び/またはSを含むことができ、また不飽和であることもでき;
aは0.01〜0.8であり、bは0.001〜0.8であり、cは0.001〜0.8であり、
この際、a+b+cの合計は1に等しく、
Qは、SO、CHCOO、POMまたはスルホスクシネートの意味を有し、この際、Mは、H、一価の金属カチオン、二価の金属カチオン、NH、第二、第三もしくは第四アンモニウムイオン、またはこれらの組み合わせの意味を有する]
【請求項8】
モノマー(A)、(B)及び(C)をラジカル重合し、そしてこの際生じた末端OH基をアニオン性端基に転化する、請求項1〜7の一つまたはそれ以上のコポリマーの製造方法。
【請求項9】
分散剤、特に顔料及びフィラー用の分散剤としての、請求項1〜7の一つまたはそれ以上のコポリマーの使用。

【公表番号】特表2010−536963(P2010−536963A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521330(P2010−521330)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006022
【国際公開番号】WO2009/024234
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】