説明

アリルエーテル系重合体及びその製造方法

【課題】 洗浄時に優れた再汚染防止能を発揮することができ、界面活性剤との相溶性にも優れたアリルエーテル系重合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 特定の構造を有する(i)アリルエーテル系単量体(A)に由来する構造単位(a)と、(ii)アミノ基含有単量体(B−1)、環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B−4)、カルボン酸ビニル(B−5)から選ばれる単量体(B)に由来する構造単位(b)とを所定の範囲で含む、アリルエーテル系重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリルエーテル系重合体及びその製造方法に関する。より詳しくは、洗剤添加剤等の原料として有用なアリルエーテル系重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無機顔料分散剤、石炭用分散剤、洗浄剤組成物、水処理剤等種々の工業分野において用いられて重合体が使用されており、例えば、衣料用洗剤組成物には、洗浄効果を向上させることを目的として、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルリル酸ソーダ等の洗剤助剤を配合することが行なわれている。
例えば、特許文献1には、一般式(I)で表される構成単位(A)及び一般式(II)で表される構成単位(B)を有するポリマーが開示されている。当該ポリマーは、衣類等の洗濯時に一度落とされた汚れが再び衣類に付着して汚染する「再汚染」を防止する再汚染防止剤として使用できることが開示されている。
【0003】
【化1】

【0004】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を示し、n個のR2は同一でも異なっていても良い。R3は水素原子、又は炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、あるいはフェニル基を示し、Xは−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−又は−CO−NR5−(R5は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示す)を示し、nはR2Oの平均付加モル数を示す1〜200の数である。)
【0005】
【化2】

【0006】

(式中、R1は前記の意味を示し、R4は炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基あるいはフェニル基を示し、これらの基は置換基として1つの水酸基を有していても良い。Yは−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−NR5−(R5は前記の意味を示す)又は−O−CO−を示す。)
一方、特許文献2には、下記式
【0007】
【化3】

【0008】

(式中、R1は水素原子または有機残基を表し、R2は水素原子、対イオン、または有機残基を表し、Gは糖残基を表す)で表される構造単位を有する数平均分子量1,000〜2,000,000のアクリル酸エステル系重合体、が開示されており、界面活性剤として有用であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−249743号公報
【特許文献2】特開平8−325303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、例えば特許文献1の通り、再汚染防止剤に用いる重合体として様々な構造を持ったものが検討されている。一方、特許文献2の通り、再汚染防止剤以外の用途に用いる重合体として、様々な構造を持ったものが検討されている。
ところで、近年、消費者の環境意識が高まってきたことにより、節水を目的として、風呂の残り湯を洗濯に使用する等の洗濯が定着してきた。これによって、風呂の残り湯に含まれる汚れ成分が洗濯中に繊維等に付着したり、風呂の追い焚きによって硬水成分が濃縮してしまうといったことが問題となるため、より高硬度下においても、洗濯中に汚れ成分の繊維への再付着を抑制する性能(「再汚染防止能」という)が従来よりも厳しく求められるようになってきている。また、現在需要の増大している液体洗剤は、界面活性剤の含有量が50%以上であるような濃縮液体洗剤であるため、洗剤添加剤にはこのような濃縮液体洗剤への配合に適したものであることが必要とされ、従来よりも界面活性剤との相溶性に優れた洗剤添加剤が求められている。
しかしながら、従来の重合体は、上記用途の性能に関して、最近の厳しい要求を必ずしも充分に満足させることができるものとは言い切れず、このような新たなニーズに対応する、より高い性能を発揮する洗剤添加剤に好適に用いることができる重合体について更なる改良の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、洗浄時に優れた再汚染防止能を発揮することができるアリルエーテル系重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、洗剤添加剤等に好適に用いることができる重合体について検討し、特定の構造を有するアリルエーテル系単量体に由来する構造単位と、特定の単量体に由来する構造単位とを有するアリルエーテル系重合体が、高硬度下においても、極めて良好な再汚染防止能を発揮することができ、界面活性剤との相溶性も高いることを見いだした。更に、重合体中の各上記構造単位の含有量を特定の範囲に調整することにより、上述した性能が一層優れたものとなり、このような重合体を新たなニーズに対応する洗剤添加剤として好適に用いることができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、(i)下記一般式で表されるアリルエーテル系単量体(A)に由来する構造単位(a)と、(ii)アミノ基含有単量体(B−1)、環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B−4)、カルボン酸ビニル(B−5)から選ばれる単量体(B)に由来する構造単位(b)、とを必須とするアリルエーテル系重合体であって、上記アリルエーテル系重合体は、上記重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量100質量%に対して、構造単位(a)を1〜99質量%含み、構造単位(b)を1〜99質量%含むことを特徴とするアリルエーテル系重合体である。
【0012】
【化4】

【0013】

(式中、Rは水素原子または有機残基を表し、Rは、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、水素原子、金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表す。)。
本発明はまた、(i)下記一般式で表されるアリルエーテル系単量体(A)と、(ii)アミノ基含有単量体(B−1)、環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B−4)、カルボン酸ビニル(B−5)から選ばれる単量体(B)、とを重合させる工程を含むアクリル酸エステル系重合体の製造方法であって、上記製造方法は、使用する全単量体の総量100質量%に対して、下記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)を1〜99質量%、上記単量体(B)を1〜99質量%使用することを特徴とするアリルエーテル系重合体の製造方法でもある。
【0014】
【化5】

【0015】

(式中、Rは水素原子または有機残基を表し、Rは、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、水素原子、金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表す。)。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアリルエーテル系重合体は、例えば洗浄時に優れた再汚染防止能を発揮することから、洗剤添加剤等の原料として好適に用いることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳述する。
【0018】
〔本発明のアリルエーテル系重合体〕
<アリルエーテル系単量体(A)>
本発明のアリルエーテル系重合体(本発明の重合体ともいう。)は、下記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)に由来する構造単位(a)を必須とする重合体である。
【0019】
【化6】


(式中、Rは水素原子または有機残基を表し、Rは、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、水素原子、金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表す。)。アリルエーテル系単量体(A)が、このような構造を有することによって、無機粒子や汚れ成分等の分散安定化に寄与する。従って、洗剤用途に使用した場合には、良好な再汚染防止能を発揮することになる。
また、本発明のアリルエーテル系重合体を液体洗剤等に配合した場合に、単量体(A)由来の構造等に起因して界面活性剤との相溶性が高くなるために、配合物中での経時安定性(分離安定性)を優れたものとすることができる。
上記一般式(1)において、上記Rで示される置換基のうち、有機残基とは、具体的には、炭素数1〜18の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基;炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基;炭素数2〜20のアルコキシアルキル基;炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基;アリール基を示す。
【0020】
上記有機残基として、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシオクチル基等のヒドロキシアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;等が例示される。
【0021】
本発明のアリルエーテル系重合体の再汚染防止能等が向上することから、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシアルキル基、炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましい。
【0022】
上記一般式(1)において、Rで示される置換基のうち、金属原子とは、具体的には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;亜鉛、ニッケル、錫、鉛、銀等の遷移金属;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0023】
上記一般式(1)において、R、Rで示される置換基のうち、−(CHRCHO)nR基における、Rで表される有機残基の例示としては、炭素数1〜18、好ましくは1〜12の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12、好ましくは6〜10の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基(特にペルフルオロアルキル基)、炭素数5〜8、好ましくは5〜6のシクロアルキル基、および炭素数6〜12、好ましくは6〜8のアリール基を挙げることができる。
【0024】
上記一般式(1)において、R、Rで示される置換基において、炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基のなかでも、本発明のアリルエーテル系重合体の再汚染防止能等が向上することから、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基が好適である。炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基のなかでも、炭素数6〜10の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、特にペルフルオロアルキル基が好適である。炭素数5〜8のシクロアルキル基のなかでも、炭素数5〜6のシクロアルキル基が好適である。炭素数6〜12のアリール基のなかも、炭素数6〜8のアリール基が好適である。
【0025】
上記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)として、具体的には、具体的には、α−メトキシメチルアクリル酸メチル、α−エトキシメチルアクリル酸メチル、α−プロポキシメチルアクリル酸メチル、α−ブトキシメチルアクリル酸メチル、α−ラウロキシメチルアクリル酸メチル、α−ブトキシメチルアクリル酸、α−ブトキシメチルアクリル酸プロピル、α−ブトキシメチルアクリル酸ブチルが例示される。
【0026】
本発明のアリルエーテル系重合体は、上記アリルエーテル系単量体(A)に由来する構造単位(a)を有する。構造単位(a)は、アリルエーテル系単量体(A)の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造であり、下記一般式(5)で表される。
【0027】
【化7】

【0028】

(式中、Rは水素原子または有機残基を表し、Rは、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、水素原子、金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表す。)。
【0029】
なお、本発明のアリルエーテル系重合体が「アリルエーテル系単量体(A)に由来する構造単位(a)」を有するとは、最終的に得られた重合体が上記一般式(2)で表される構造単位を有することを意味する。すなわち、本発明における「アリルエーテル系単量体(A)に由来する構造単位(a)」には、上記アリルエーテル系単量体(A)を合成した後、それを他の単量体成分と共重合させることによって重合体中に導入されるものだけでなく、例えば、まずアリルエーテル系重合体の主鎖部分を共重合によって形成し、その後特定の構造を有する側鎖を導入して得られるもののように、形成工程が重合反応の前後にわたるものも含まれる。
また、本発明のアリルエーテル系重合体が有する構造単位(a)は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
本発明のアリルエーテル系重合体は、アリルエーテル系重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量(構造単位(a)、後述する構造単位(b)及び(e)の総量)100質量%に対して、上記構造単位(a)を1〜99質量%含むものである。構造単位(a)の含有量が上記範囲内であれば、本発明の重合体を洗剤ビルダーとして使用した場合に、汚れ成分粒子を分散させることができ、再汚染防止能を発揮することが可能となる。構造単位(a)の含有量として、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは10〜80質量%であり、更に好ましくは15〜70質量%である。
なお、上記構造単位(a)がカルボン酸塩を含む場合、すなわち、一般式(5)においてRが金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、の場合、全単量体由来の構造単位の総量に対する質量割合(質量%)は、対応する酸換算で計算(例えば−COONaを含む場合、−COOHとして計算する)するものとする。また、単量体(A)の、全単量体の総量に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算で計算するものとする。全単量体由来の構造単位の総量に対する、開始剤や連鎖移動剤に由来する構造単位の質量割合(質量%)を計算する場合も同様とする。
【0031】
<アリルエーテル系単量体(A)の製造方法>
上記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)の調製方法としては、特に制限されず、任意の適切な方法により調製することができる。そのような調製方法としては、上記アリルエーテル系単量体(A)を高い収率で製造することができることから、例えば、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物を三級アミンの存在下で反応を行うことによって、容易に製造することができる(例えば、特開平10−226669号公報に記載の反応条件で製造することができる)。
【0032】
【化8】

【0033】

(式中、Rは水素原子または有機残基を表し、Rは、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、水素原子、金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表す。)。
【0034】
【化9】


(式中、Rは、同一若しくは異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表す。)。
【0035】
一般式(3)で表される化合物は、具体的には、例えば、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、n−ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、2−エチルヘキシル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、メチル−α−(1−ヒドロキシエチル) アクリレート、エチル−α−(1−ヒドロキシエチル) アクリレート、n−ブチル−α−(1−ヒドロキシエチル) アクリレート、2−エチルヘキシル−α−(1−ヒドロキシエチル) アクリレート等のアルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート類;α−ヒドロキシメチルアクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ナトリウム;等が挙げられる。これらアクリル酸エステル類は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
なお、一般式(3)で表される化合物の製造方法は、特に限定されるものではない。上記一般式(3)で表される化合物は、従来公知の方法、例えば、相当するアクリレート化合物とアルデヒド化合物とを塩基性イオン交換樹脂等の触媒の存在下で反応させる(例えば、特開平6−135896号公報等)ことにより、容易に得ることができる。
【0036】
上記一般式(4)で化合物は、特に限定されるものではないが、具体的には、次の通りである。
アルキルアルコール類:メチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなど。
シクロアルキルアルコール類:シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコールなど。
アリールアルコール類:フェノール、ナフトール、ベンジルアルコールなど。
ペルフルオロアルキルアルコール類:2,2,2−トリフルオロエチルアルコール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアルコール、2−(ペルフルオロブチル)エチルアルコール、2−(ペルフルオロオクチル)エチルアルコール、2−(ペルフルオロデシル)エチルアルコールなど。
ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類:メチルセロソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルなど。
これらのなかでも、メチルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルアルコールおよび2−(ペルフルオロオクチル)エチルアルコールが好適である。
【0037】
上記一般式(1)で表されるのアリルエーテル系単量体は、例えば上記一般式(3)の化合物と上記一般式(4)の化合物とから脱水反応によって得ることができる。
【0038】
下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物との反応は、上記の通り三級アミンの存在下で行うことができるが、例えば、当該三級アミンとしては、次のものを使用することができる。
(i)NRで表される三級アミン化合物(式中、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1〜12の直鎖または分岐状のアルキル基、または炭素数5〜8のシクロアルキル基である)。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N−ジメチル(2−エチルアヘキシル)アミン、N,N−ジメチルラウリルアミンなどを挙げることができる。
(ii)RN(CHR12)nNR1011で表される三級アミン化合物(式中、R、R、R10およびR11は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1〜12の直鎖または分岐状のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基であり、R12は水素原子またはメチル基であり、nは1〜8の整数である)。具体的には、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンなどを挙げることができる。
(iii)環状三級アミン化合物。具体的には、1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1−アザビシクロ[3,2,1]オクタン、1−アザビシクロ[3,3,1]ノナン、1−アザビシクロ[2,3,2]ノナン、1−アザビシクロ[3,3,0]オクタン、1−アザビシクロ[4,3,0]ノナン、キヌクリジン、ピロリジン、ピロコリジン、ルピナン、キヌクリジノン、3−ヒドロキシキヌクリジン、キノリジン,N−メチルピロリジン、N−メチルピロリン、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−メチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを挙げることができる。
(iv)三級アミンを交換基に有するイオン交換樹脂。具体的には、ローム・アンド・ハース社製のアンバーライトA−21、アンバーライトIRA−68、アンバーライトIRA−93ZU、アンバーライントIRA−35およびアンバーライトIRA−99;三菱化学(株)製のダイヤイオンWA−10、ダイヤイオンWA−11およびダイヤイオンWA−30;ダウ・ケミカル社製のダウエックスMWA−1、ダウエックス66およびダウエックスD−3;住友化学(株)製のデュオライトA−368、デュオライトA−561、デュオライトA−340、デュオライトA−375およびデュオライト−378、などを挙げることができる。
(v)三級アミンを有する重合体。例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの三級アミン基を有する重合性モノマーを重合して得られる重合体であり、単独重合体あるいはアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、スチレンなどの重合性モノマーとの共重合体、またはそれら重合体の架橋物などを挙げることができる。
記の三級アミンのなかでも、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノブタン、トリエチレンジアミン、キヌクリジン、ピロコリジンなどが好適に用いられる。
【0039】
一般式(3)の化合物と一般式(4)との割合については、通常、一般式(3)の化合物/一般式(4)の化合物(モル比)=2/1〜1/50であり、好ましくは1/1〜1/10である。
【0040】
三級アミンの使用量については、一般式(3)の化合物の1〜100モル%、好ましくは5〜50モル%、特に好ましくは10〜30モル%である。
【0041】
一般式(3)の化合物と一般式(4)の化合物との反応条件に関しては、温度は、通常、30〜150℃であり、好ましくは50〜120℃である。また、反応圧力については、常圧(大気圧)、減圧および加圧のいずれでもよい。
【0042】
出発原料としての一般式(3)の化合物および生成物としての一般式(1)の化合物はいずれも重合し易い性質を持っていることから、これら化合物の重合防止のために一般に用いられている重合禁止剤の存在下に反応を行うのがよい。また、反応系に分子状酸素を添加してもよい。上記重合禁止剤の代表例としては、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、p−ベンゾキノン、t−ブチルカテコール、フェノチアジンなどを挙げることができる。そして、その添加量は一般式(1)の化合物に対し、0.001〜5重量%の範囲となるようにすればよい。分子状酸素の供給形態としては、不活性ガスとの混合ガス、あるいは空気を用いることができる。
【0043】
上記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)を製造する反応において、脱水反応である場合には、反応によって生成する水を速やかに系外に除去するのが好ましい。
【0044】
上記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)を製造する反応は、溶剤としてもよく、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられるが、反応生成物を溶解するとともに反応に不活性なものであれば特に制限されるものではない。
【0045】
上記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)を製造する反応において三級アミンを使用した場合、三級アミンは、反応終了後に酸により中和除去するのが好ましい。この酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、硫酸水素ナトリウム塩などの水溶液を用いることができる。具体的には、上記酸水溶液を反応液に加えて中和処理した後、反応液を水相と有機相とに分液し、この有機相を更に水洗することにより三級アミンを効果的に除去することができる。上記中和処理に用いる酸の量は、反応に用いた三級アミンと等モル量を用いればよいが、処理効率を高めるためには酸を三級アミンに対して1〜20モル%過剰に使用するのが好ましい。また、上記水洗に使用する水の量については特に制限はないが反応液に対して10〜100容量%の範囲内で実施するのが経済的である。
【0046】
また、単量体(A)を製造する反応の反応溶液には、例えば、触媒残渣や、副生成物、或いは、原料に含まれていた不純物、重合禁止剤等が含まれている場合がある。そこで、蒸留や濾過等の精製手段により、単量体(A)を精製してから重合に使用しても良い。尚、上記精製手段は、特に限定されるものではない。<単量体(B)>
本発明のアリルエーテル系重合体は、アミノ基含有単量体(B−1)、環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B−4)、カルボン酸ビニル(B−5)から選ばれる単量体(B)に由来する構造単位(b)を必須とする重合体である。
本発明のアリルエーテル系重合体における単量体(B)の主要な役割は、(i)アリルエーテル系重合体に疎水性物質に対する吸着性を向上し、再汚染防止能や汚れ成分の分散安定性を向上すること、(ii)単量体(A)由来の構造を、重合体の好ましい位置に配置したり、本発明のアリルエーテル系重合体を適度な分子量や分子量分布に制御する為の単量体(A)同士のつなぎの役割を担うこと、である。
【0047】
アミノ基含有単量体(B−1)とは、1〜4級のアミノ基を有する単量体であり、例えばビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルモルホリン、ビニルピロール等の環状アミン構造を有する、ビニル環状アミン系単量体;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、アミノエチルメタクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、1〜3級のアミン(塩)類を反応させることにより得られる単量体;およびこれらのアミノ基を四級化した構造の単量体が挙げられる。
上記アミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のアルキルアミン;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;モルホリン、ピロール等の環状アミン類が挙げられる。カチオン性基含有単量体が四級化されたアミノ基を有する場合としては、1〜3級のアミノ基を有するカチオン性基含有単量体を公知の四級化剤で四級化した単量体等が例示されるが、公知の四級化剤としては、ハロゲン化アルキルや、ジアルキル硫酸等が挙げられる。
上記三級アミン塩としては、具体的にはトリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩等が挙げられる。塩としては、塩酸塩や有機酸塩等が挙げられる。
【0048】
環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)としては、環状のラクタム環を有する単量体であり、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−4−ブチルピロリドン、N−ビニル−4−プロピルピロリドン、N−ビニル−4−エチルピロリドン、N−ビニル−4−メチルピロリドン、N−ビニル−4−メチル−5−エチルピロリドン、N−ビニル−4−メチル−5−プロピルピロリドン、N−ビニル−5−メチル−5−エチルピロリドン、N−ビニル−5−プロピルビロリドン、N−ビニル−5−ブチルピロリドン、N−ビニル−4−メチルカプロラクタム、N−ビニル−6−メチルカプロラクタム、N−ビニル−6−プロピルカプロラクタム、N−ビニル−7−ブチルカプロラクタム等が挙げられる。
環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)由来の構造の中でも、アリルエーテル系重合体の再汚染防止能の向上効果が高いことから、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム由来の構造を有することが好ましい。
【0049】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)としては、炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル基を有する単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−ヒドロキシメチル等が挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)由来の構造の中でも、アリルエーテル系重合体の再汚染防止能の向上効果が高いことから、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル由来の構造を有することが好ましい。
【0050】
炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B−4)としては、
炭素数1〜20のアルキル基を有するメタクリル酸エステル、炭素数1〜20のアルキル基を有するアクリル酸エステルであるが、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が例示される。単量体(B−4)由来の構造の中でも、アリルエーテル系重合体の再汚染防止能の向上効果が高いことから、炭素数1〜4のアルキル基を有するアクリル酸エステルが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレートが特に好ましい。
【0051】
カルボン酸ビニル(B−5)としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が例示される。
本発明のアリルエーテル系重合体は、アリルエーテル系重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量(構造単位(a)、(b)及び後述する構造単位(e)の総量)100質量%に対して、上記構造単位(b)を1〜99質量%含むものである。構造単位(b)の含有量が上記範囲内であれば、汚れ成分粒子や顔料の分散性や、再汚染防止能を好ましく発揮することが可能となる。また、界面活性剤との相溶性の顕著な向上効果を得ることができる。構造単位(b)の含有量として、好ましくは10〜95質量%であり、より好ましくは20〜90質量%であり、更に好ましくは30〜85質量%である。
なお、上記構造単位(b)がアミノ基含有単量体由来の構造単位である場合には、全単量体に由来する構造単位の総量に対する質量割合や、アミノ基含有単量体の、全単量体の総量に対する質量割合を算出する際には、対応する未中和アミンの質量割合として計算するものとする。例えば、アミノ基含有単量体(B−1)がビニルアミン塩酸塩の場合には、対応する未中和アミンであるビニルアミンの質量割合(質量%)を計算する。
また、四級化されたアミノ基を含有する単量体又はそれに由来する構造単位の質量割合(質量%)を計算する場合には、カウンターアニオンの質量は考慮しないで(含めないで)計算するものとする。
全単量体由来の構造単位の総量に対する、開始剤や連鎖移動剤に由来する構造単位の質量割合(質量%)を計算する場合も同様とする。
【0052】
本発明のアリルエーテル系重合体は、構造単位(b)を上記範囲で有するものであり、構造単位(b−1)の1種又は2種以上のみ、構造単位(b−2)の1種又は2種以上のみ、構造単位(b−3)の1種又は2種以上のみ、構造単位(b−4)の1種又は2種以上のみ、構造単位(b−5)の1種又は2種以上のみ、であってもよいが、構造単位(b−1)、構造単位(b−2)、構造単位(b−3)、構造単位(b−4)、構造単位(b−5)の内、異なる構造単位群から複数を有していても良い。
構造単位(b−1)、構造単位(b−2)、構造単位(b−3)、構造単位(b−4)、構造単位(b−5)の中でも、アリルエーテル系重合体の再汚染防止能の向上効果が特に高いことから、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−ビニルピロリドンから選ばれる1種以上を有することが好ましい。
【0053】
<その他の単量体>
本発明のアリルエーテル系重合体は、その他の単量体(E)(上記単量体(A)及び単量体(B)以外の単量体)に由来する構造単位(e)を有していてもよい。上記アリルエーテル系重合体は、構造単位(e)を1種のみ有していてもよいし、2種以上の構造単位(e)を有していてもよい。
【0054】
上記その他の単量体(E)に由来する構造単位(e)とは、上記その他の単量体(E)が有する不飽和二重結合が単結合に置き換わった構造単位である。本発明のアリルエーテル系重合体が「その他の単量体(E)に由来する構造単位(e)」を有するとは、最終的に得られた重合体が、単量体(E)の不飽和二重結合を単結合に置き換えた構造単位を有することを意味する。
【0055】
上記その他の単量体(E)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びこれらの塩等の不飽和モノカルボン酸系単量体;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチレングルタル酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩等の不飽和ジカルボン酸系単量体;不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜22のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩等のスルホン酸基含有単量体;スチレン、インデン等のビニルアリール単量体;イソブチレン等のアルケン類;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル環状アミド単量体;(メタ)アクリルアミド、(メタ)イソプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アリルアルコールやイソプレノール等の水酸基含有単量体にアルキレンオキサイドを1〜200モル付加した単量体や、アルコキシポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体;等が挙げられる。
上記塩とは、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩(有機アンモニウム塩)等が例示される。
本発明のアリルエーテル系重合体が、任意成分であるその他の単量体(E)に由来する構造単位(e)を有する場合には、アリルエーテル系重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量(すなわち構造単位(a)、(b)及び(e)の総量)100質量%に対して、上記構造単位(e)を0〜60質量%含むことが好ましい。より好ましくは、0〜50質量%である。
上記構造単位(e)が酸基を含有する単量体由来の構造単位である場合には、全単量体由来の構造単位の総量に対する質量割合(質量%)は、対応する酸換算で計算するものとする。また、酸基を含有する単量体の、全単量体の総量に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算で計算するものとする。全単量体由来の構造単位の総量に対する、開始剤や連鎖移動剤に由来する構造単位の質量割合(質量%)を計算する場合も同様とする。
【0056】
<その他の構造単位>
本発明の重合体は、重亜硫酸(塩)(C−1)、過酸化水素(C−2)、次亜リン酸(塩)(C−3)から選ばれる化合物(C)に由来する構造単位(c)を含んでいても良い。すなわち、重亜硫酸(塩)(C−1)に由来するスルホン酸(塩)基や、過酸化水素に由来する水酸基、次亜リン酸(塩)に由来するホスフィネート基等を含んでいても良い。本発明の重合体が構造単位(c)を含むことにより、本発明の重合体の再汚染防止能が顕著に向上する傾向にある。特に本発明の重合体がスルホン酸(塩)基を有すると、重合体の耐塩性が向上することから好ましい。
上記化合物(C)は通常開始剤または連鎖移動剤として作用するため、構造単位(c)は、通常分子末端に導入される(但し、次亜リン酸(塩)は2箇所反応部位を有する為、分子末端または分子中に導入される)。
全単量体由来の構造100質量%に対して、開始剤や連鎖移動剤に由来する構造単位(酸基の塩の場合は酸型換算)は、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましい。
<アリルエーテル系重合体のその他の物性>
本発明のアリルエーテル系重合体は、上記構造単位(a)、(b)、及び、必要に応じて構造単位(e)が、上記したような特定の割合で導入されていればよく、各構造単位は、ブロック状、ランダム状のいずれで存在していてもよい。
また、上記アリルエーテル系重合体の重量平均分子量は、適宜設定できるものであり、特に限定されない。具体的には、アリルエーテル系重合体の重量平均分子量は、2,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜100,000、最も好ましくは4,000〜60,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、再汚染防止能が向上する傾向にある。
また、上記アリルエーテル系重合体の数平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、最も好ましくは2,000〜25,000である。数平均分子量が上記範囲内であれば、再汚染防止能が向上する傾向にある。
なお、本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、後述する実施例において記載される装置及び測定条件により測定することが可能である。
本発明のアリルエーテル系重合体は、再汚染防止能が高いものであるが、再汚染防止率が75%以上であることが好ましい。より好ましくは76%以上である。
なお、再汚染防止率は、後述する実施例と同様にして測定することができる。
〔アリルエーテル系重合体組成物〕
本発明のアリルエーテル系重合体は、他の成分とともにアリルエーテル系重合体組成物を構成してもよい。上記他の成分としては、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。上記アリルエーテル系重合体組成物は、本発明のアリルエーテル系重合体を、アリルエーテル系重合体組成物の総量100質量%に対して、1〜100質量%含有することが好ましい。上記アリルエーテル系重合体組成物の好ましい形態の一つは、本発明のアリルエーテル系重合体を40〜60質量%含有し、水を40〜60質量%含有する形態である。
〔本発明のアリルエーテル系重合体の製造方法〕
本発明のアリルエーテル系重合体は、(i)上記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)(単量体(A))及び、(ii)アミノ基含有単量体(B−1)、環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B−4)、カルボン酸ビニル(B−5)から選ばれる単量体(B)を必須とし、必要に応じてその他の単量体(E)(単量体(E))を含む単量体成分を所定の割合で共重合することにより製造することができる。
好ましくは、上記化合物(C)の存在下で重合を行なう。
本発明のアリルエーテル系重合体の製造方法において、重合に使用する各単量体の組成比は、全単量体(単量体(A)、(B)、(E))の総量100質量%に対して、単量体(A)が1〜99質量%、単量体(B)が1〜99質量%である。単量体(A)の含有量が1質量%未満であると、汚れ成分の分散性や再汚染防止能が低下することにより洗浄力が低下する場合がある。また、単量体(B)の含有量が1質量%未満であると、重合体の分子量や分子量分布が制御できなくなるおそれがある。重合に使用する各単量体の組成比として好ましくは、単量体(A)が5〜90質量%、単量体(B)が10〜95質量%であり、より好ましくは、単量体(A)が10〜80質量%、単量体(B)が20〜90質量%であり、特に好ましくは、単量体(A)が15〜70質量%、単量体(B)が30〜85質量%である。
また、全単量体(単量体(A)、(B)、(E))の総量100質量%に対して、単量体(E)を0〜60質量%の割合で含んでいてもよい。より好ましくは、0〜50質量%であり、更に好ましくは、0〜10質量%であり、特に好ましくは、0質量%である。
本発明のアリルエーテル系重合体を得るための重合方法としては、特に制限されず、通常用いられる重合方法又はそれを修飾した方法を採用することができる。重合方法としては、例えば、ラジカル重合法が挙げられ、具体的には、水中油型乳化重合法、油中水型乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈澱重合法、溶液重合法、水溶液重合法、塊状重合法等を採用することができる。上記例示の重合方法の中でも、安全性が高く、また、生産コスト(重合コスト)を低減することができる点で、溶液重合法を採用することが好ましい。
上記溶液重合法においては、溶媒中で単量体成分を重合することとなるが、該溶媒としては、特に制限されず、通常、溶液重合法において用いられる溶媒を用いることができる。上記溶媒としては、例えば、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール類等の水性の溶媒が好適である。中でも、水がより好ましい。
上記溶媒は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、上記単量体成分の溶媒への溶解性を向上させるため、重合反応に悪影響を及ぼさない範囲で、有機溶媒を適宜加えても良い。
上記有機溶媒としては、特に制限されず、任意の適切な有機溶媒を用いることができる。そのような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;等が挙げられる。
上記有機溶媒は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記溶媒の使用量は、全単量体(単量体(A)、(B)、(E))の総量100質量部に対して、好ましくは40〜300質量部、より好ましくは45〜200質量部、さらに好ましくは50〜150質量部の範囲である。溶媒の使用量が全単量体の総量100質量部に対して40質量部未満の場合には、得られる重合体の分子量が高くなりすぎるおそれがある。一方、溶媒の使用量が全単量体の総量100質量部に対して300質量部を超える場合には、得られる重合体の濃度が低くなり、場合によっては溶媒除去が必要となるおそれがある。
なお、溶媒は、重合初期に一部又は全量を反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよいし、単量体成分や開始剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよい。
上記溶液重合法の反応形態としては、特に制限されず、通常用いられる形態により反応を行うことができるが、代表的には、例えば、反応系内に予め仕込まれた溶媒中に、上記単量体成分を含む溶液と、上記化合物(C)を含む溶液と、重合開始剤(以下、「開始剤」ともいう。)を含む溶液とを滴下して反応を行う形態が挙げられる。そのような反応形態において、上記滴下する各溶液の濃度は、特に制限されず、任意の適切な濃度を採用することができる。
上記反応系内に予め仕込まれた溶媒中に、上記単量体成分を含む溶液と開始剤を含む溶液とを滴下して反応を行う形態としては、例えば、単量体(A)、単量体(B)、必要に応じて単量体(E)、開始剤成分、及び必要に応じてその他の添加剤をそれぞれ溶媒に溶解し、又は、溶媒に溶解させずにそのままで、重合中に反応系内に適当に添加(滴下)して重合を行う形態が挙げられる。また、該反応形態においては、単量体(A)の全使用量の一部又は全部を重合開始前に予め反応系内に添加(初期仕込み)することもできる。
上記溶液重合法による重合反応においては、反応系内への単量体(A)の添加が、単量体(B)の添加よりも早く終了することが好ましい。そして、単量体(A)の添加終了時点において、単量体(B)の全使用量のうち5〜100質量%が未添加であることがより好ましい。単量体(A)の添加終了時点において、単量体(B)の全使用量の10〜50質量%が未添加であることがさらに好ましく、単量体(B)の全使用量の15〜35質量%が未添加であることが特に好ましい。このような添加方法により添加して重合を行うことで、アリルエーテル系単量体(A)の重合性を改善することができるため、得られた重合体の分散性、再汚染防止能等を向上させることができる。
<重合開始剤>
上記製造方法において用いられる重合開始剤としては、通常用いられるものを使用することができる。具体的には、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩が好ましく、過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上を混合して使用されてもよい。
<連鎖移動剤>
上記製造方法においては、必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸;次亜リン酸(塩)(C−3)、すなわち次亜リン酸及びその塩(例えば次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等);重亜硫酸(塩)(C−1)、すなわち亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等、が挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもよく、2種以上を混合して使用されてもよい。
連鎖移動剤を使用すると、製造される重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量のアクリル酸エステル系重合体を効率よく製造することができるという利点がある。
上記製造方法において、重亜硫酸(塩)(C−1)を連鎖移動剤として使用することは好ましい形態である。その場合、重亜硫酸(塩)(C−1)に加えて重合開始剤を使用する。更に、後述する反応促進剤として、重金属イオンを併用してもよい。
上記重亜硫酸(塩)(C−1)は、亜硫酸水素や水と反応して亜硫酸水素を発生する化合物又はこれらの塩を意味する。中でも、亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸及び/又は亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。
上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等が好ましい。
また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、トリエチルアミン等が好適である。更に、上記重亜硫酸(塩)(C−1)は、アンモニウム塩であってもよい。
よって、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。上記重亜硫酸(塩)(C−1)は、単独で使用されてもよく、2種以上を混合して使用されてもよい。
<反応促進剤>
上記製造方法においては、開始剤等の使用量を低減する等の目的で反応促進剤を加えてもよい。反応促進剤としては、例えば、重金属イオンが挙げられる。本発明において、重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが両方含まれていてもよい。
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いることが、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであれば良く、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらはいずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れたものとなる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明のアリルエーテル系重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
上記重金属イオンの添加方法は特に限定されないが、単量体の添加終了までに添加することが好ましく、全量を初期仕込することが特に好ましい。また、使用量としては反応液全量に対して100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。100ppmを越えると添加による効果が見られず、また得られた重合体の着色が大きく洗剤組成物として用いる場合等には使用できないおそれがあるため好ましくない。
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が充分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である重合体を洗剤ビルダーとして用いる場合に、着色汚れの原因となるおそれがある。
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体が酸成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
上記製造方法において、重合の際には、上述した化合物等に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。
重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステル及びその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミン及びその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸及びその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
上記連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせは、化合物(C)の一種以上が含まれれば、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択できる。例えば、連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/Fe(イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素/Fe(イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/酸素/Fe(イオン)等の形態が好ましい。より好ましくは、過硫酸ナトリウム/過酸化水素、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Fe(イオン)、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(イオン)であり、最も好ましくは亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe(イオン)、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Fe(イオン)である。
<重合開始剤等の使用量>
重合開始剤の使用量は、単量体の共重合を開始できる量であれば特に制限されないが、全単量体成分(単量体(A)、(B)及び(E))の総量1モルに対して15g以下であることが好ましい。より好ましくは1〜12gである。
開始剤として、過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、全単量体成分の総量1モルに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が1.0g未満であると、得られる重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると、添加量の増加に見合うだけの効果が得られなくなり、更に、残存する過酸化水素量が多くなる等の悪影響を及ぼす。
開始剤として、過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、全単量体成分の総量1モルに対して1.0〜5.0gであることが好ましく、2.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量が上記範囲より少ないと、得られる重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が上記範囲より多いと、添加量の増加に見合うだけの効果が得られなくなり、更に、得られる重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
開始剤として過酸化水素と過硫酸塩とを併用する場合、過酸化水素及び過硫酸塩の添加比率は、過酸化水素に対する過硫酸塩の重量比が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られる共重合体の重量平均分子量が高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が、添加量の増加に見合うほどには得られなくなり、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
過酸化水素の添加方法としては、実質的に連続的に滴下することにより添加する量が、必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、100重量%、すなわち全量を滴下により添加することが最も好ましい。過酸化水素を連続的に滴下する際、その滴下速度は変えてもよい。
過酸化水素の滴下は、後述する好適な反応条件(温度、圧力、pH等)の下で反応を行う場合において、単量体(初期仕込みする単量体を除く)の滴下開始後、遅らせて開始することが好ましい。具体的には、好ましくは単量体(A)の滴下開始後1分以上経過後、より好ましくは3分以上経過後、更に好ましくは5分以上経過後、最も好ましくは10分以上経過後に過酸化水素の滴下を開始することである。過酸化水素の滴下開始を遅らせることにより、初期の重合開始をスムーズにし、分子量分布を狭くすることが可能となる。
過酸化水素の滴下開始を遅らせる時間は、単量体の滴下開始後60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
過酸化水素の滴下を単量体の滴下と同時に開始することや、単量体の滴下前に予め過酸化水素を仕込むことも可能であるが、予め過酸化水素を仕込む場合は、必要所定量の10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下、更に好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
単量体の滴下開始までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、例えば過硫酸塩を併用する場合には過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止するおそれがある。一方、単量体の滴下開始から60分より遅く開始すると、過酸化水素による連鎖移動反応等が起こらなくなるため、重合初期の分子量が高くなる。
また、過酸化水素の滴下は、後述する好適な反応条件(温度、圧力、pH等)の下で反応を行う場合において、単量体の滴下終了と同時に終了することが好ましい。また、単量体滴下終了時間よりも10分以上早く終了することがより好ましく、30分以上早く終了することが特に好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、未反応の過酸化水素については添加による効果が得られず無駄となる。また、過酸化水素が多量に残存すると、得られた重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。
過硫酸塩の添加方法としては、特に限定はされないが、その分解性等を考慮すると、実質的に連続的に滴下することにより添加する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましい。より好ましくは80重量%以上であり、100重量%すなわち全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩を連続的に滴下する際、その滴下速度は変えてもよい。
滴下時間も特に限定されないが、後述する好適な反応条件(温度、圧力、pH等)の下で反応を行う場合において、過硫酸塩は比較的分解の早い開始剤であるため、単量体の滴下終了時間まで滴下を続けることが好ましい。また、単量体滴下終了後から30分以内に滴下を終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に滴下を終了することが特に好ましい。これにより、製造した重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る。
なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた重合体中の単量体の残存量に応じて開始剤の滴下終了時間を設定すればよい。
上記過硫酸塩のように比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すればよい。例えば、単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始してもよいし、2種以上の開始剤を併用する場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過後又は滴下が終了してから別の開始剤の滴下を開始してもよい。いずれの場合にも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜開始剤の滴下開始時間を設定すればよい。
重合開始剤を滴下により添加する場合の開始剤溶液の濃度は、特には限定されないが、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。開始剤の濃度が5重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に60重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で問題となる。
連鎖移動剤の添加量は、単量体(A)、(B)及び(E)が良好に重合する量であれば制限されないが、好ましくは単量体(A)、(B)及び(E)からなる全単量体成分の総量1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがある。一方、20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下するおそれがある。特に、重亜硫酸(塩)(C−1)を使用する場合には、余剰の重亜硫酸(塩)(C−1)が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがある。更に、経済的にも不利となるおそれがある。
上記開始剤と連鎖移動剤との組み合わせとしては、過硫酸塩と重亜硫酸(塩)(C−1)とをそれぞれ1種以上用いることが最も好ましい。この場合、過硫酸塩と重亜硫酸(塩)(C−1)との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸(塩)(C−1)0.5〜5質量部を用いることが好ましい。重亜硫酸(塩)(C−1)量の下限は、過硫酸塩1質量部に対して1質量部であることがより好ましく、最も好ましくは2質量部である。また、重亜硫酸(塩)(C−1)量の上限は、過硫酸塩1質量部に対して4質量部であることがより好ましく、最も好ましくは3質量部である。過硫酸塩1質量部に対して重亜硫酸(塩)(C−1)が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に、必要となる開始剤総量が増加するおそれがあり、5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、単量体(A)、(B)及び(E)からなる全単量体成分の総量1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明の重合体を効率よく生産することができ、また、アリルエーテル系重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
上記製造方法において、単量体成分、重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、それぞれ単独で反応容器へ導入してもよく、他の成分や、溶媒等とあらかじめ混合しておいてもよい。
具体的な添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分とを反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;等が挙げられる。このような方法の中でも、得られる重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、汚れの分散性や再汚染防止能を向上することができることから、重合開始剤と単量体成分とを反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。このような重合は、回分式でも連続式でも行うことができる。
<重合条件>
上記製造方法において、重合温度等の重合条件は、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤等により適宜定められるが、重合温度としては、25〜200℃であることが好ましい。より好ましくは、50〜150℃であり、更に好ましくは、60〜120℃であり、特に好ましくは、80〜110℃である。重合温度が低すぎると、得られる重合体の重量平均分子量が高くなり過ぎるおそれや、不純物の生成量が増加するおそれがある。
上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。なお、重合温度とは、重合反応の反応溶液の温度をいう。また、重合温度の測定方法や制御手段については、任意の適切な方法や手段を採用することができる。例えば、一般に使用される装置を用いて測定すれば良い。
上記製造方法における重合時の圧力は、特に制限されず、任意の適切な圧力を採用することができる。例えば、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。また、反応系内の雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいし、不活性ガス雰囲気としてもよい。反応系内の雰囲気を不活性ガス雰囲気とする場合には、例えば、重合開始前に反応系内を窒素等の不活性ガスで置換することにより行うことができる。これによって、反応系内の雰囲気ガス(例えば、酸素ガス等)が液相内に溶解し、重合禁止剤として作用することとなる。
上記製造方法において、上記添加成分の添加が終了し、反応系における重合反応が終了した時点での反応溶液(重合体溶液)中の固形分濃度は、35質量%以上であることが好ましい。35質量%未満の場合には、得られる重合体の生産性を大幅に向上することができないおそれがある。より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは45〜65質量%である。このように、重合反応終了時の固形分濃度が35質量%以上であれば、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、効率よく重合体を得ることができる。例えば、濃縮工程を省略することができ、重合体の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。なお、重合反応が終了した時点とは、全ての添加成分の添加が終了した時点を表しているが、その後の所定の熟成時間を経過した時点(重合が完結した時点)においても、反応溶液中の固形分濃度が、上述した範囲であることが好ましい。
上記固形分濃度は、130℃の熱風乾燥機で1時間処理した後の不揮発分を求めることで、算出することができる。
上記熟成時間は、好ましくは1〜120分間、より好ましくは5〜60分間、更に好ましくは10〜30分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成が不十分なために単量体成分が残存することがあり、残存モノマーに起因する不純物によって性能低下等を招くおそれがある。熟成時間が120分間を超える場合には、重合体溶液の着色のおそれがある。
上記製造方法において、重合時間は、特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、更に好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜300分である。なお、本発明において「重合時間」とは、特に断らない限り、単量体を添加している時間、すなわち、単量体の添加を開始してから終了するまでの時間を表す。
上記製造方法により製造することができる本発明のアリルエーテル系重合体は、水系用途において高い性能を発揮でき、耐硬水性、洗浄力、再汚染防止能、クレー(Clay)分散性、界面活性剤との相互作用等が高いので、分散剤、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、洗浄剤、水処理剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮することができる。
〔本発明のアリルエーテル系重合体及びアリルエーテル系重合体組成物の用途〕
本発明のアリルエーテル系重合体(又はアリルエーテル系重合体組成物)は、凝固剤、凝集剤、印刷インク、接着剤、土壌調整(改質)剤、難燃剤、スキンケア剤、ヘアケア剤、シャンプー・ヘアースプレー・石鹸・化粧品用添加剤、アニオン交換樹脂、繊維・写真用フィルムの染料媒染剤や助剤、製紙における顔料展着剤、紙力増強剤、乳化剤、防腐剤、織物・紙の柔軟剤、潤滑油の添加剤、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤用添加剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤等として用いることができる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用等、様々な用途の洗剤に添加して使用することができる。
<水処理剤>
本発明のアリルエーテル系重合体(又はアリルエーテル系重合体組成物)は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いてもよい。
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
<繊維処理剤>
本発明のアリルエーテル系重合体(又はアリルエーテル系重合体組成物)はまた、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明のアリルエーテル系重合体(又はアリルエーテル系重合体組成物)とを含む。
上記繊維処理剤における本発明のアリルエーテル系重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
以下に、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物及び界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
本発明のアリルエーテル系重合体と、染色剤、過酸化物及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用することができる。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維及びこれらの織物および混紡品が挙げられる。
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の重合体と、アルカリ剤及び界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明のアリルエーテル系重合体(又はアリルエーテル系重合体組成物)はまた、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いてもよい。
上記無機顔料分散剤中における、本発明のアリルエーテル系重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質又は軽質炭酸カルシウム、クレーの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、充分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
<洗剤ビルダー>
本発明のアリルエーテル系重合体(又はアリルエーテル系重合体組成物)はまた、洗剤ビルダーとして用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
<洗剤組成物>
本発明のアリルエーテル系重合体(又はアリルエーテル系重合体組成物)はまた、洗剤組成物にも添加しうる。
洗剤組成物における上記アリルエーテル系重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、アリルエーテル系重合体の含有量は、洗剤組成物の全量100質量%に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、更に好ましくは0.5〜5質量%である。
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において一般的に知られている知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はそのエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量100質量%に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、更に好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、充分な洗浄力を発揮できなくなるおそれがあり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下するおそれがある。
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記洗剤組成物は、本発明のアリルエーテル系重合体(又はアリルエーテル系重合体組成物)に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩等のアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
上記添加剤及び他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、更に好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤及び他の洗剤ビルダーの合計の配合割合が0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがあり、50質量%を超えると経済性が低下するおそれがある。
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸等が好適である。本発明の重合体以外のその他の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
上記洗浄剤組成物は、分散能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、単量体や反応中間体の定量及び各種物性値の測定は、以下の方法により行った。
<重量平均分子量及び数平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:HITACHI RI Detector L−7490
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ、GF−710−HQ、GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:ジーエルサイエンス株式会社製 POLYETHYLENE GLYCOL STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)。
<単量体の定量方法>
単量体の定量は、下記条件にて高速クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長:215nm)。
<固形分の測定>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで、本発明のアリルエーテル系重合体を含むアリルエーテル系重合体組成物1.0gに水1.0gを加えたものを1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と揮発成分(%)とを算出した。
【0058】
<アリルエーテル系単量体(A)の合成>
[合成例1]
撹拌機、冷却管、温度計、ガス吹込み管および油浴を備えた1000mlの4つ口フラスコに次の化合物を仕込んだ。
(α−ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル=130g(1モル)、
n−ブタノール=370g(5モル)、
トリエチレンジアミン=11g(0.1モル)、
重合禁止剤としてのp−メトキシフェノール=0.1g。
その後、反応液を130℃にて72時間撹拌して反応させた。反応途中、反応液は沸騰し、水分離管に生成水とn−ブタノールとが共沸蒸留するが、その際、生成水は分離し、n−ブタノールのみを反応系に戻しながら反応を進めた。
反応終了後の反応液を、30%リン酸水溶液を添加して三級アミンを中和した後、靜置して、油層と水層とに分液した。この油層を分別蒸留して(α−n−ブトキシメチル)アクリル酸エチルRHMA−Bu単量体(1)を無色透明液として得た。
反応の進行は液体クロマトグラフィー、HNMRで確認した。
【0059】
[合成例2]
撹拌機、冷却管、温度計、ガス吹込み管および油浴を備えた1000mlの4つ口フラスコに次の化合物を仕込んだ。
(α−ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル=130g(1モル)、
n−プロパノール=300g(5モル)、
トリエチレンジアミン=11g(0.1モル)、
重合禁止剤としてのp−メトキシフェノール=0.1g。
その後、反応液を130℃にて72時間撹拌して反応させた。反応途中、反応液は沸騰し、水分離管に生成水とn−プロパノールとが共沸蒸留するが、その際、生成水は分離し、n−プロパノールのみを反応系に戻しながら反応を進めた。
反応終了後の反応液を、30%リン酸水溶液を添加して三級アミンを中和した後、靜置して、油層と水層とに分液した。この油層を分別蒸留して(α−n−ブトキシメチル)アクリル酸エチルRHMA−Pr単量体(2)を無色透明液として得た。
反応の進行は液体クロマトグラフィー、HNMRで確認した。
【0060】
<アリルエーテル系重合体の製造>
[実施例1]
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水150.0g、および、モール塩0.0043gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、アクリル酸ヒドロキシエチル(以下、HEAと称す。)200.0g、単量体(1)50.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと称す。)54.4g、35%亜硫酸水素ナトリウム(以下、35%SBSと称す。)46.6g、および、純水108.1gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。
各溶液の滴下開始は同時とし、各溶液の滴下時間は、HEAについては120分間、単量体(1)については60分間、15%NaPSについては130分間、35%SBSについては120分間、および、純水については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度48%の共重合体(1)を含む水溶液(重合体組成物(1))を得た。
【0061】
[実施例2]
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水150.0g、および、モール塩0.0062gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、HEA200.0g、単量体(1)133.3g、15%NaPS68.5g、35%SBS58.7g、および、純水267.7gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。
各溶液の滴下開始は同時とし、各溶液の滴下時間は、HEAについては120分間、単量体(1)については60分間、15%NaPSについては130分間、35%SBSについては120分間、および、純水については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度45%の共重合体(2)を含む水溶液(重合体組成物(2))を得た。
【0062】
[実施例3]
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水150.0g、および、モール塩0.0062gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、アクリル酸ジメチルアミノエチル(以下、DAAと称す。)200.0g、単量体(1)50.0g、15%NaPS45.7g、および、純水115.1gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。
各溶液の滴下開始は同時とし、各溶液の滴下時間は、DAAについては120分間、単量体(1)については60分間、15%NaPSについては130分間、および、純水については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度48%の共重合体(3)を含む水溶液(重合体組成物(3))を得た。
【0063】
[実施例4]
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水150.0g、および、モール塩0.0061gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、DAA200.0g、単量体(1)133.3g、15%NaPS59.8g、および、純水274.8gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。
各溶液の滴下開始は同時とし、各溶液の滴下時間は、DAAについては120分間、単量体(1)については60分間、15%NaPSについては130分間、および、純水については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度45%の共重合体(4)を含む水溶液(重合体組成物(4))を得た。
【0064】
[比較例1]
メトキシポリエチレングリコール(9モル)メタクリレート(NKエステルM−90G;新中村化学工業(株)製、以下MMP9と称す。)47.7g、メチルメタクリレート(以下、MMAと称す。)32.3g、エタノール46.3gを均一に混合し、内容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で一定時間攪拌した。その反応溶液を80℃付近まで昇温し、そこに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65;和光純薬工業(株)製)0.84gをエタノール7.6gに溶解した溶液を添加した。80℃付近で6時間保持することで重合・熟成した。この反応溶液を冷却することで、ポリマーの60重量%エタノール溶液として、比較重合体(1)を得た。
【0065】
重合体組成物(1)、(2)の液体クロマトグラフィーの測定の結果、残存モノマーは1000ppm以下であり、仕込量どおりの組成の重合体(表1参照)が得られたことが確認できた。
【0066】
[実施例5]
実施例1、2及び比較例1で得た共重合体(1)、(2)及び比較共重合体(1)について、以下のようにして界面活性剤との相溶性を評価した。結果を表1に示す。
<界面活性剤との相溶性>
試験サンプル(アリルエーテル系重合体又はアリルエーテル系重合体組成物)を含む洗剤組成物を下記の配合で調製した。
SFT−70H(日本触媒(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル);40g
ネオペレックスF−65(花王(株)製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム);7.7g(有効成分5g)
コータミン86W(花王(株)製、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド);17.9g(有効成分5g)
ジエタノールアミン;5g
エタノール;5g
プロピレングリコール;5g
試験サンプル(固形分換算);1.5g
イオン交換水;バランス(イオン交換水の量は、試験サンプルの量を実際の使用量として、上記全合計が100gとなるように適宜調整する。)。
各成分が均一になる様に充分に攪拌し、25℃での濁度値を、濁度計(日本電色(株)製「NDH2000」)を用い、Turbidity(カオリン濁度:mg/l)で測定した。
以下の基準で評価した。
○:カオリン濁度(0以上、50未満(mg/l))、目視で分離、沈殿又は白濁していない。
△:カオリン濁度(50以上、200未満(mg/l))、目視で僅かに白濁している。
×:カオリン濁度(200以上(mg/l))、目視で白濁している。
【0067】
【表1】

【0068】

[実施例6]
また、実施例1で得た共重合体(1)、実施例2で得た共重合体(2)、実施例4で得た共重合体(4)、比較例1で得た比較共重合体(1)について、以下のようにして再汚染防止能を評価した。
共重合体(1)の再汚染防止率は77%、共重合体(2)の再汚染防止率は79%、共重合体(4)の再汚染防止率は76%であった。それに対して、比較共重合体(1)の再汚染防止率は、73%であった。
<再汚染防止能試験>
再汚染防止能試験は、下記の手順に従って行った。
(1)Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作成した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(2)塩化カルシウム2水和物1.1gに純水を加えて15kgとし、硬水を調製した。
(3)ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル4.0g、に、純水を加えて、100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。pHは、水酸化ナトリウムで8.5に調整した。
(4)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で5%の重合体水溶液1g、カーボンブラック1.0gをポットに入れ、150rpmで1分間撹拌した。その後、白布5枚を入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(5)手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。
(6)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度白布の白度を反射率にて測定した。
(7)以上の測定結果から下式により再汚染防止率を求めた。
再汚染防止率(%)=(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)×100。

実施例及び比較例の結果から、本発明の重合体が、界面活性剤との相溶性に優れ、かつ、高硬度下において優れた再汚染防止能を有していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記一般式で表されるアリルエーテル系単量体(A)に由来する構造単位(a)と、(ii)アミノ基含有単量体(B−1)、環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B−4)、カルボン酸ビニル(B−5)から選ばれる単量体(B)に由来する構造単位(b)、とを必須とするアリルエーテル系重合体であって、上記アリルエーテル系重合体は、上記重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量100質量%に対して、構造単位(a)を1〜99質量%含み、構造単位(b)を1〜99質量%含むことを特徴とするアリルエーテル系重合体。
【化1】


(式中、Rは水素原子または有機残基を表し、Rは、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、水素原子、金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表す。)。
【請求項2】
(i)下記一般式で表されるアリルエーテル系単量体(A)と、(ii)アミノ基含有単量体(B−1)、環状N−ビニルラクタム系単量体(B−2)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート系単量体(B−3)、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B−4)、カルボン酸ビニル(B−5)から選ばれる単量体(B)、とを重合させる工程を含むアリルエーテル系重合体の製造方法であって、上記製造方法は、使用する全単量体の総量100質量%に対して、下記一般式(1)で表されるアリルエーテル系単量体(A)を1〜99質量%、上記単量体(B)を1〜99質量%使用することを特徴とするアリルエーテル系重合体の製造方法。
【化2】


(式中、Rは水素原子または有機残基を表し、Rは、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、水素原子、金属原子、アンモニウム塩、有機アミン塩、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐状のペルハロゲノアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または−(CHRCHO)nR基(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または有機残基である)を表す。)。
【請求項3】
請求項1に記載のアリルエーテル系重合体を含む洗剤組成物。

【公開番号】特開2012−57087(P2012−57087A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203210(P2010−203210)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】