説明

アリル系重合体およびジアリルフタレート樹脂を含む光硬化性樹脂組成物とその用途

【課題】プラスチックとの接着性に優れたアリル系重合体および路アリルフタレート樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
一般式(I)で表されるアリル系化合物
(CHR=CR−CH−O−CO)−A (I)
[RおよびRは、それぞれ、HまたはCHを表し、
Aはアルキル置換基を有する飽和または一部不飽和の4〜8員環の環状骨格を表し、
nは2または3を表す。]
を重合して得られるアリル系重合体と
ジアリルフタレート樹脂を含んでなる光照射により硬化可能な光硬化性樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を含んでなるインキ、塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリル系重合体およびジアリルフタレート樹脂を含む光硬化可能な樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を含んでなるインキ、塗料に関する。さらに詳しくはプラスチックとの接着性に優れた光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光(例えば、紫外線)により硬化させる種々の樹脂組成物は、インキ、塗料、接着剤、フォトレジストなどに使用されている。例えば、紫外線硬化タイプの印刷インキは、硬化速度が早く短時間で硬化できること、溶剤を使わないので環境に適合していること、省資源・省エネルギーであること等の点が高く評価され実用化が広がっている。
【0003】
そのような樹脂組成物の中で、ジアリルフタレート(ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート)から誘導されたジアリルフタレート樹脂を含有する樹脂組成物は、紙用のUVオフセットインキとして採用されている。
【0004】
しかしながら、プラスチック用のオフセットインキとして用いる際に、一般にジアリルフタレート樹脂を配合すると印刷基材とインキの接着性が十分でないことが知られている(例えば、特許文献1)。
今日、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)といった様々な種類のプラスチック製品が市販されており、ジアリルフタレート樹脂の欠点であるプラスチックとの接着性の向上が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−4310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、プラスチックとの接着性に優れたアリル系重合体およびジアリルフタレート樹脂を含む光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、一般式(I)で表されるアリル系化合物
(CHR=CR−CH−O−CO)−A (I)
[RおよびRは、それぞれ、HまたはCHを表し、
Aはアルキル置換基を有する飽和または一部不飽和の4〜8員環の環状骨格を表し、
nは2または3を表す。]
を重合して得られるアリル系重合体と
ジアリルフタレート樹脂を光硬化性樹脂組成物に用いることにより、プラスチックとの接着性が向上した樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明はすなわち、上記式(I)で表される化合物を重合して得られるアリル系重合体と、ジアリルフタレート樹脂を含む光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0009】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、プラスチックとの接着性に優れたアリル系重合体を含む光硬化性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インキ、塗料、接着剤およびフォトレジストが、合成高分子の基材、特にプラスチック基材に対して接着性が良好である光硬化性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記式(I)で表される化合物を重合して得られるアリル系重合体と、ジアリルフタレート樹脂を含んでなる。
【0012】
本発明において、一般式(I)で表されるアリル系化合物を重合して得られるアリル系重合体を用いる。
(CHR=CR−CH−O−CO)−A (I)
[RおよびRは、それぞれ、HまたはCHを表し、
Aはアルキル置換基を有する飽和または一部不飽和の4〜8員環の環状骨格を表し、
nは2または3を表す。]
【0013】
上記式(I)におけるAの具体例として、以下の環状骨格を例示できる。

[式中、R11は、アルキル基(炭素数1〜5、特にメチル基およびエチル基)、
pは1〜4、例えば1〜3、特に1または2である。]
【0014】
Aは種々のものであり得、上記以外の環状骨格であってもよい。環(特に、6員環)において、二重結合の数は、1に限定されず、2であってもよい。
【0015】
Aの環上におけるCHR=CR−CH−O−CO−基の置換位置は何れの組み合わせであっても良く、それらの混合物でも良い。特に、2つのCHR=CR−CH−O−CO−基が6員環のAに結合するときに、2つのCHR=CR−CH−O−CO−基は、オルト配向またはメタ配向またはパラ配向のいずれでもよいが、オルト配向またはメタ配向であることが好ましい。
【0016】
Aは、分子内で架橋されていても良い(例えば、アダマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン)。また、Aは、芳香族の6員環ではない。
上記式中、置換基R11は、それぞれ同一または異なって、アルキル基(炭素数1〜5、特にメチル基およびエチル基)である。
Aの環上におけるR11基の置換位置は何れであっても良く、それらの混合物でも良い。
pの下限値は1である。pの上限値は、[(環の炭素数)−(1、2または3)]である。pは一般に1〜4、例えば1〜3、特に1または2である。
nは、2または3、好ましくは2である。
【0017】
上記式(I)で表されるアリル系化合物の具体例としては、3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3,6−エンドメチレン−3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3,6−エンドメチレン−4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート等を例示することができ、好ましくは3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートである。上記アリル系化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上を、重合することで得られるアリル系重合体を光硬化性樹脂組成物に用いることができる。
【0018】
上記式(I)で表されるアリル系化合物の重合方法は、特に限定されず、通常の重合反応を用いることができる。また、重合反応において、未反応のアリル系化合物の単量体を回収し、再び重合反応に用いてもよい。
本発明に用いる式(I)で表されるアリル系化合物の単量体は、空気中の酸素により重合し得るので、重合開始剤を用いることなく、重合することができる。また、必要に応じて、適宜重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤を用いることで、より高分子量の重合体を短時間に得ることができる。
【0019】
重合反応に用いる重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ開始剤、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の過酸化物開始剤、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド等のリン系、チオキサントン等のイオウ系、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン等のベンジル系の光開始剤が挙げられる。
【0020】
重合開始剤の量は、式(I)で表されるアリル系化合物の単量体100重量部に対して1.0重量部以下、より好ましくは0.2重量部以下、例えば0.001〜0.1重量部であることが好ましい。
【0021】
重合時の反応温度は60〜240℃、例えば80〜220℃であることが好ましい。反応時間は、0.1〜100時間、例えば1〜30時間であることが好ましい。
アリル系重合体の重量平均分子量は30万以下、好ましくは20万以下、例えば2,000〜150,000の範囲がより好ましく、特に5,000〜120,000の範囲が特に好ましい。
【0022】
本発明において 本発明で用いられるジアリルフタレート樹脂とは、ジアリルオルソフタレートプレポリマー、ジアリルイソフタレートプレポリマー、ジアリルテレフタレートプレポリマー等のジアリルフタレート樹脂に代表され、これらの単独、あるいは二種以上の混合物であってよい。また、当該樹脂はジアリルオルソフタレートモノマー、ジアリルイソフタレートモノマー、ジアリルテレフタレートモノマー等の二種以上のいわゆるジアリルモノマーの共重合体からなるプレポリマーであってもよい。この場合、ベンゼン環上の水素原子が塩素、臭素等のハロゲン原子で置換されていてもよく、また分子内に存在する不飽和結合が全部または一部において水添されたプレポリマーもここに含まれるものとする。
【0023】
本発明のジアリルフタレート樹脂の分子量は特に限定されないが、溶媒への溶解性、硬化性が向上する点で、重量平均分子量が10,000〜200,000であることが好ましく、重量平均分子量が20,000〜60,000であることがより好ましい。尚、重量平均分子量はGPCにより測定され、標準ポリスチレン換算で表されるものである。
【0024】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、アリル系重合体、ジアリルフタレート樹脂、必要に応じて、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、光開始助剤、添加剤(例えば、安定剤、顔料)を含有してもよい。
【0025】
本発明における光硬化性樹脂組成物中の式(I)で表されるアリル系化合物を重合して得られる重合体およびジアリルフタレート樹脂の重量比は、以下のように例示することができる。
光硬化性樹脂組成物中のアリル系化合物から誘導されるアリル系重合体は、アリル系重合体およびジアリルフタレート樹脂の合計100重量%に対して、5〜95重量%、例えば10〜90重量%、特に20〜90重量%が好ましい。
また、光硬化性樹脂組成物中のジアリルフタレート樹脂は、式(1)で表されるアリル系化合物から誘導される重合体およびジアリルフタレート樹脂の合計100重量%に対して、5〜95重量%、例えば10〜90重量%、特に10〜80重量%が好ましい。
【0026】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光照射により硬化可能であるエチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。エチレン性不飽和化合物は、1〜20、例えば1〜10、特に2〜5の炭素-炭素二重結合を有する化合物であることが好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アリル化合物およびビニル化合物が挙げられる。また、エチレン性不飽和化合物は2種以上の化合物の混合物を用いてもよい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル化合物、およびそれらをエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドで付加した(メタ)アクリル酸エステル化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものの(メタ)アクリル酸エステル化合物;エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキッド(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル化合物;エポキシ化大豆油アクリレート等のアクリル酸エステル化合物を例示することができ、好ましくはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル化合物、およびそれらをエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドで付加した(メタ)アクリル酸エステル化合物であり、より好ましくはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、等のアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル化合物に、およびそれらをエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドで付加した(メタ)アクリル酸エステル化合物ある。
【0028】
(メタ)アリル化合物としては、ジ(メタ)アリルフタレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート等を例示することができる。
ビニル化合物の例は、スチレン、ジビニルベンゼン、N-ビニルピロリドン、酢酸ビニル等である。
【0029】
光硬化性樹脂組成物に含有されるエチレン性不飽和化合物の量は、光硬化性樹脂組成物に含有されるアリル系重合体とジアリルフタレート樹脂の合計100重量部に対して、1〜500重量部、例えば5〜300重量部が好ましく、特に10〜250重量部がより好ましい。
【0030】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を含んでいてもよく、特に光重合開始剤を含有することが好ましい。光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド等のリン系、チオキサントン等のイオウ系、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン等のジベンジル系が挙げられる。
光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤の量は、エチレン性不飽和化合物100重量部に対して、40重量部以下、0.1〜20重量部、例えば0.5〜15重量部であることが好ましい。
【0031】
光硬化性樹脂組成物には、光開始助剤(例えば、トリエタノールアミン等のアミン系光開始助剤)を併用してもよい。光開始助剤の量は、エチレン性不飽和化合物100重量部に対して、20重量部以下、例えば0.5〜10重量部であることが好ましい。

【0032】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、種々の添加剤、例示すれば、安定剤(例えば、ハイドロキノン、メトキノン等の重合禁止剤)、顔料(例えば、シアニンブルー、ジスアゾエロー、カーミン6b、レーキッドC、カーボンブラック、チタンホワイト)等の着色剤、充填剤、粘度調整剤などの各種添加剤を目的に応じて含有することができる。光硬化性樹脂組成物に含有される安定剤の量は、エチレン性不飽和化合物100重量部に対して、1重量部以下、例えば0.001〜0.5重量部であってよい。着色剤の量は、エチレン性不飽和化合物100重量部に対して、100重量部以下、例えば5〜80重量部であることが好ましい。
【0033】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、アリル系重合体、ジアリルフタレート樹脂、必要に応じて、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、光開始助剤、添加剤(例えば、安定剤、顔料)を混合することによって製造できる。本発明の光硬化性樹脂組成物は、光を照射することによって硬化する。硬化に用いる光は、一般に紫外線である。
光硬化性樹脂組成物を硬化反応に用いる硬化装置、また、硬化条件は特に限定されず、通常の光硬化反応に用いられる方法であればよい。
【0034】
本発明の光硬化性樹脂組成物の用途は特に限定されない。インキ(例えば、光硬化性平版用印刷インキ、シルクスクリーンインキ、グラビアインキなどの印刷インキ)、塗料(例えば、紙用、プラスチック用、金属用、木工用等の塗料、例示すれば、オーバープリントワニス)、接着剤、フォトレジストなどの技術分野において使用できる。
【0035】
例えば、インキの一般的作製方法は次のとおりである。エチレン性不飽和化合物にアリル系重合体を40℃〜140℃の温度で攪拌しながら溶解させた後、必要に応じて、安定剤(特に、ハイドロキノン、メトキノン等の重合禁止剤)および/または光重合開始剤を添加して混合物を得る。この混合物に顔料を添加することにより、インキが得られる。また、オーバープリントワニスの作成は、顔料を使用しない以外は、インキと同様の手順により行える。
【0036】
本発明のアリル系重合体を用いることで、従来課題であったプラスチックとの接着性の改善ができる。
【0037】
実施例
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(分析方法)
後述する製造例において、アリル系化合物、アリル系重合体の分析は下記に記載の方法を用いて行った。
【0039】
1)ジカルボン酸ナトリウム塩からアリル系化合物への転化率
転化率はHPLCを用いて算出した。
カラム:ダイソーパックSP−120−5ODS−P 4.6mmIDx150mmL
移動相:30mM KH2PO4水溶液/メタノール=80/20(pH2.5)
流速:1.0mL/min
温度:40℃
検出:UV,210nm
試料:試料(水層をサンプリング)を移動層で3倍希釈し測定用のサンプルとした。
【0040】
2)転化率の求め方
転化率=100−(反応後area/反応前area) x 100
3)アリル系化合物の化学純度
化学純度はGCを用いて測定した。
カラム:TC−1701(0.25 mm × 30 m,
0.25μm)
Inj:250℃
Det:250℃
Column:50℃(5min)−10℃/min−250℃(20min)−250℃(10min)
Flow:1.0kg/cm2(N2)
試料:精留後サンプル(neat)
【0041】
4)アリル系重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用いて測定した。標準ポリスチレン換算の重量平均分子量の値である。
カラム:ShodexKF−806L、KF−804、KF−803、KF−802、KF−801を直列に接続
流速:1.0mL/min
温度:40℃
検出:RID−6A
試料:試料20mgをテトラヒドロフラン8mLに溶解させ測定用のサンプルとした。
【0042】
製造例1
3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物の製造
pH測定計を備え付けた4Lのセパラブルフラスコに日立化成工業株式会社製のHN−2000(3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジカルボン酸無水物と4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジカルボン酸無水物の混合物)665g(4mol)を加え、19%NaOHaq1684g(NaOH,8mol)を滴下した。pHが7〜8となり滴下した水酸化ナトリウムが消費され、ジカルボン酸ナトリウム塩となったため反応を終了した。反応終了後、バス温40℃で塩化銅(I)を7.9g(80mmol)加え、次いで、アリルクロライド1224g(16mol)を滴下した。pHが低下(pH6.5)してきたところで19%NaOHaqの滴下を開始した。アルカリ量はpHが7〜9となるよう調節した。アリルクロライド滴下終了後、液温を徐々に55〜60℃まで昇温した。その温度で1時間熟成後、反応を終了させ冷却した(転化率97%)。冷却後反応液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。分液した有機層を2%HClaq、2%NaOHaq、水の順で洗浄した。得られた有機層からエバポレーター(バス温40℃/〜40mmHg)を用いて低沸点成分を除去後、精留することで化学純度98%の3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物(混合モル比は仕込みの比と同じであった。)889g(収率:87%)を得た(b.p.:141〜146℃/2.2〜2.4mmHg)。
【0043】
製造例2
3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物の製造
pH測定計を備え付けた4Lのセパラブルフラスコに日立化成工業株式会社製のHN−5500(3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジカルボン酸無水物と4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジカルボン酸無水物の混合物)673g(4mol)を加え、19%NaOHaq1684g(NaOH,8mol)を滴下した。pHが7〜8となり滴下した水酸化ナトリウムが消費され、ジカルボン酸ナトリウム塩となったため反応を終了した。反応終了後、バス温40℃で塩化銅(I)を7.9g(80mmol)加え、次いで、アリルクロライド1224g(16mol)を滴下した。pHが低下(pH6.5)してきたところで19%NaOHaqの滴下を開始した。アルカリ量はpHが7〜9となるよう調節した。アリルクロライド滴下終了後、液温を徐々に60℃まで昇温した。液温60℃で1時間熟成後、反応を終了させ冷却した(転化率97%)。冷却後反応液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。分液した有機層を2%HClaq、2%NaOHaq、水の順で洗浄した。得られた有機層からエバポレーター(バス温40℃/〜40mmHg)を用いて低沸点成分を除去後、精留することで化学純度93%の3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物(混合モル比は仕込みの比と同じであった。)935g(収率:89%)を得た(b.p.:108〜115℃/0.24〜0.43mmHg)。
【0044】
製造例3
ヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジアリルフタレートの製造
pH測定計を備え付けた4Lのセパラブルフラスコにヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジカルボン酸689g(4mol)を加え、19%NaOHaq1684g(NaOH,8mol)を滴下した。pHが7〜8となり滴下した水酸化ナトリウムが消費され、ジカルボン酸ナトリウム塩となったため反応を終了した。反応終了後、バス温40℃で塩化銅(I)を7.9g(80mmol)加え、次いで、アリルクロライド1224g(16mol)を滴下した。pHが低下(pH6.5)してきたところで19%NaOHaqの滴下を開始した。アルカリ量はpHが7〜9となるよう調節した。アリルクロライド滴下終了後、液温を徐々に60℃まで昇温した。液温60℃で1時間熟成後、反応を終了させ冷却した(転化率96%)。冷却後反応液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。分液した有機層を2%HClaq、2%NaOHaq、水の順で洗浄した。得られた有機層からエバポレーター(バス温40℃/〜40mmHg)を用いて低沸点成分を除去後、精留することで化学純度99%のヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジアリルフタレート828g(収率:82%)を得た(b.p.:139〜145℃/1.0〜1.8mmHgの留出分)。
【0045】
実施例1
3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物の重合体の製造
1Lのセパラブルフラスコに製造例1で得た3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物200gを加え、180℃で加熱攪拌した。反応前の初期の屈折率は1.4792であった。屈折率が1.4982となった時点で反応を終了させ(反応時間:16時間)、氷浴にて60℃まで冷却した(冷却後屈折率1.4983)。冷却後、フラスコにメタノール0.6kgを加えポリマーを沈殿させた。バス温度70℃で1時間還流させ、得られたポリマーからモノマーの抽出を実施した。モノマー抽出後に得られたポリマーを60℃で8時間減圧乾燥した。(収量:56g,収率:28%,Mw=4.3万,Mw/Mn=3.8)。
【0046】
実施例2
3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物の重合体の製造
3Lのセパラブルフラスコに製造例2で得た3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物600gを加え、180℃で加熱攪拌した。反応前の初期の屈折率は1.4690であった。屈折率が1.4839となった時点で反応を終了させ(反応時間:1.8時間)、氷浴にて60℃まで冷却した(冷却後屈折率1.4847)。冷却後、フラスコにメタノール1.8kgを加えポリマーを沈殿させた。バス温度70℃で1時間還流させ、得られたポリマーからモノマーの抽出を実施した。モノマー抽出後に得られたポリマーを60℃で8時間減圧乾燥した。(収量:150g,収率:25%,Mw=4.9万,Mw/Mn=3.6)。
【0047】
比較例1
ヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジアリルフタレート重合体の製造
3Lのセパラブルフラスコに製造例3で得たヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジアリルフタレート600gを加え、180℃で加熱攪拌した。反応前の初期の屈折率は1.4702であった。屈折率が1.4805となった時点で反応を終了させ(反応時間:0.7時間)、氷浴にて60℃まで冷却した(冷却後屈折率 1.4813)。冷却後、フラスコにメタノール1.8kgを加えポリマーを沈殿させた。バス温度60℃で1時間還流させ、得られたポリマーからモノマーの抽出を実施した。モノマー抽出後に得られたポリマーを60℃で8時間減圧乾燥した。(収量:127g,収率:21%,Mw=5.8万,Mw/Mn=3.1)。
【0048】
プラスチック基材との密着性の評価
後述する実施例3〜8、比較例2〜5において、接着性評価は実施例1〜2、比較例1で得た重合体を用い、下記に記載の方法を用いて行った。
【0049】
1)樹脂組成物の調整
下記表1〜3の配合により樹脂組成物を作成した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
2)評価基材
PET基材:東洋紡績株式会社製 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BOPETフィルム) エステル(登録商標)フィルム 品名はE5102 片面コロナ処理 厚み25μm
PP基材:東洋紡績株式会社製 二軸延伸ポリプロピレンフィルム(BOPPフィルム) パイレン(登録商標)フィルム−OT 品名はP2161 片面コロナ処理 厚み50μm
【0054】
3)UV硬化
表1〜3のように調製したビヒクルをプラスチックフィルムにコートし出力60W/cmのランプより10cmの所をコンベアに乗せ通過させ、塗膜の硬化に要したコンベアスピードをもって硬化速度とした。その硬化速度を50〜60m/minに調整した。
UV硬化装置:アイグラフィックス株式会社製コンベア型紫外線硬化装置
UV硬化条件:ランプ出力=60W/cm、ランプ距離=10cm
【0055】
4)接着性評価
プラスチックフィルムにコートした塗膜に、ニチバン製18mm幅のセロテープ(登録商標)(品番:LP−18、粘着力:4.01N/10mm)を貼り付け、親指で5回強く擦った後、セロハンテープを引き離した。評価基準は下記の通りとした。
5:急激に引き離しても剥離しないもの
4:徐々に引き離しても全く剥離しないが、急激に引き離すとわずかに剥離するもの
3:急激に引き離せば剥離するが、徐々に引き離しても全く剥離しないもの
2:徐々に引き離しても、50%程度剥離するもの
1:徐々に引き離しても剥離するもの
【0056】
接着性評価の結果を下表4に示す。
【0057】
【表4】

【0058】
一般式(I)で表されるアリル系化合物を重合して得られるアリル系重合体とジアリルフタレート樹脂を光硬化性樹脂組成物に用いることによって、プラスチック基材との接着性が優れた光硬化性樹脂組成物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の樹脂組成物は、インキ(例えば、オフセットインキ)、塗料、接着剤、フォトレジストなどに使用できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるアリル系化合物
(CHR=CR−CH−O−CO)−A (I)
[RおよびRは、それぞれ、HまたはCHを表し、
Aはアルキル置換基を有する飽和または一部不飽和の4〜8員環の環状骨格を表し、
nは2または3を表す。]
を重合して得られるアリル系重合体と
ジアリルフタレート樹脂を含んでなる光照射により硬化可能な光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
一般式(I)で表されるアリル系化合物を重合して得られるアリル系重合体が、3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3,6−エンドメチレン−3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3,6−エンドメチレン−4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートからなる群より選択される少なくとも1種以上を、重合することで得られるアリル系重合体である請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、エチレン性不飽和化合物をも含有する請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
光重合開始剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を含んでなるインキ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を含んでなる塗料。
【請求項7】
オーバープリントワニスである請求項6に記載の塗料。


【公開番号】特開2012−116868(P2012−116868A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264687(P2010−264687)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】