説明

アリールアミンポリマー、有機電界発光素子材料、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機ELディスプレイ及び有機EL照明

【課題】正孔輸送能及び電気化学的安定性に優れたアリールアミンポリマーを提供。
【解決手段】式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位を有するアリールアミンポリマーにおいて、Ar及び/又はArに置換基として架橋性基を備えさせる。


(Ar〜Arは、芳香族炭化水素基又芳香族複素環基を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアリールアミンポリマーに関し、特に、有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層として有用なアリールアミンポリマー、該アリールアミンポリマーを含有する有機電界発光素子材料、有機電界発光素子用組成物及び有機電界発光素子、並びに、この有機電界発光素子を備えた有機ELディスプレイ及び有機EL照明に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(即ち、有機電界発光素子)の開発が行われている。有機電界発光素子における有機薄膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。
【0003】
湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層及びその形成用の塗布液に様々な機能をもった複数の材料を混合することが容易である等の利点がある。しかし、湿式成膜法は積層化が困難である。このため、真空蒸着法により製造した素子に比べて湿式成膜法で製造した素子は駆動安定性に劣り、一部を除いて実用レベルに至っていない。特に、湿式成膜法では、有機溶剤及び水系溶剤を使用するなどして二層の積層は可能であるが、三層以上の積層化は困難であった。
【0004】
このような積層化における課題を解決するために、特許文献1および特許文献2では、下記のようなフルオレン環及び架橋性基を有するアリールアミンポリマー(Q−1)及び(Q−2)が提案され、これらの架橋性基が反応した場合に得られる網目状ポリマーが有機溶剤に不溶となることを利用して積層化を行う構成が開示されている。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

【0007】
また、特許文献3には、アリールアミンポリマーの側鎖にフルオレン環を導入することが提案されている。ただし特許文献3には、アリールアミンポリマーに架橋性基を導入することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008−032843号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008−038747号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004−014985号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フルオレン環は平面的な環であり、環全体にHOMO(highest occupied molecular orbital;最高被占軌道)やLUMO(lowest unoccupied molecular orbital;最低空軌道)が広がっている。このため、フルオレン環を有するアリールアミンポリマーは、通常、電荷輸送能に優れる。したがって特許文献1,2に記載のアリールアミンポリマー(Q−1)及び(Q−2)も電荷輸送能を有すると推察される。ただし、アリールアミンポリマー(Q−1)及び(Q−2)ではフルオレン環が主鎖のみに存在するため、電荷のほとんどは主鎖を伝って輸送されるものと考えられる。
【0010】
一方、アリールアミンポリマー(Q−1)及び(Q−2)が架橋により網目状ポリマーとなると、その主鎖構造がまがったりねじれたりして、主鎖におけるHOMOやLUMOの広がりが阻害される。このため、アリールアミンポリマー(Q−1)及び(Q−2)が電荷輸送能を有するとしても、架橋後の網目状ポリマーが十分な電荷輸送能を有するとは限らない。むしろ、上記のアリールアミンポリマー(Q−1)及び(Q−2)は電荷輸送のほとんどを主鎖が担うべき分子構造となっていることから、アリールアミンポリマー(Q−1)及び(Q−2)が架橋した網目状ポリマーの電荷輸送能は著しく小さくなる傾向がある。このため、特許文献1,2記載の技術により得られる有機電界発光素子の駆動電圧は高く、発光効率は低く、駆動寿命は短いという課題があった。
【0011】
さらに、特許文献3には側鎖にフルオレン環を有するアリールアミンポリマーが例示されているが、塗布後に不溶とするための架橋性基などの記載はなく、特許文献3に記載の技術では、塗布法による積層化は困難であった。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、正孔輸送能及び電気化学的安定性に優れ、積層化が可能であり、通電によって分解などが起こりにくく、均質な膜質を提供しうるアリールアミンポリマーと、該アリールアミンポリマーを含有する有機電界発光素子材料及び有機電界発光素子用組成物を提供することを目的とする。
本発明はまた、低い電圧で駆動可能で、発光効率が高く、駆動安定性が高い、有機電界発光素子並びにそれを備えた有機ELディスプレイ及び有機EL照明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、側鎖にフルオレン環を有し、且つ架橋性基を有する特定の構造を有するアリールアミンポリマーが、架橋をさせて有機溶剤に不溶とした後も、高い正孔輸送能及び電気化学的安定性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を有するアリールアミンポリマーであって、Ar及び/又はArに置換基として架橋性基を有することを特徴とするアリールアミンポリマーに存する。
【化3】

(式(1)及び式(2)中、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、R〜Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、R5Aは、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、m及びnは、各々独立に、1以上の整数を表す。)
【0015】
このとき、本発明のアリールアミンポリマーは、重量平均分子量(Mw)が20,000以上であり、分散度(Mw/Mn;Mnは数平均分子量を表す。)が2.5以下であることが好ましい。
また、前記架橋性基が、下記架橋性基群Tの中から選ばれる基であることが好ましい。
【0016】
【化4】

(前記式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
【0017】
本発明の別の要旨は、本発明のアリールアミンポリマーからなることを特徴とする有機電界発光素子材料に存する。
【0018】
本発明の更に別の要旨は、本発明のアリールアミンポリマーを含有することを特徴とする有機電界発光素子用組成物に存する。
【0019】
本発明の更に別の要旨は、基板と、陽極と、1層又は2層以上の有機層と、陰極とをこの順に備える有機電界発光素子において、該有機層の少なくとも一層が本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含むことを特徴とする有機電界発光素子に存する。
また、本発明の有機電界発光素子においては、前記網目状ポリマーを有する層が、正孔注入層又は正孔輸送層であることが好ましい。
さらに、本発明の有機電界発光素子は、前記の正孔注入層及び正孔輸送層並びに発光層を備え、前記の正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成されていることが好ましい。
【0020】
本発明の更に別の要旨は、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする有機ELディスプレイに存する。
【0021】
さらに、本発明の別の要旨は、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする有機EL照明に存する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のアリールアミンポリマー、有機電界発光素子材料及び有機電界発光素子用組成物によれば、正孔輸送能及び電気化学的安定性に優れ、積層化が可能であり、通電によって分解などが起こりにくく、均質な膜質の膜を形成できる。
本発明の有機電界発光素子、有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、低い電圧で駆動可能で、発光効率が高く、かつ駆動安定性が高いという優れた性能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態としての有機電界発光素子の層構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例で作製した測定用素子の層構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施例5及び比較例4において測定した電流−電圧特性を示す図である。なお、縦軸は電流密度[A/cm]を表し、横軸は電圧[V]を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
【0025】
[1.アリールアミンポリマーの構成]
本発明のアリールアミンポリマーは、少なくとも下記式(1)で表される繰り返し単位(以下、適宜「繰り返し単位(1)」という。)及び下記式(2)で表される繰り返し単位(以下、適宜「繰り返し単位(2)」という。)を有するアリールアミンポリマーであって、Ar及び/又はArに置換基として架橋性基を有する。
【化5】

(式(1)及び式(2)中、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、R〜Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、R5Aは、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、m及びnは、各々独立に、1以上の整数を表す。)
【0026】
繰り返し単位(1)はフルオレン環を側鎖に有する。このようにフルオレン環を側鎖に有していることにより、アリールアミンポリマーを架橋した後でもフルオレン環のHOMO及びLUMOの広がりが阻害されず、膜の電荷輸送能を高く維持できる。具体的には、電荷移動度を高い値に保つことができる。このため、アリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーにより層を形成した場合、この層が低い電圧でも電流を流通させうるものとなる。
【0027】
一方、繰り返し単位(2)は、その主鎖及び/又は側鎖に架橋性基を有する。これによりアリールアミンポリマーは架橋できるようになる。架橋した網目状ポリマーは溶剤に対して溶解し難くなるため、湿式成膜法による積層が容易となる。また、主鎖及び/又は側鎖にフルオレン環を有する繰り返し単位が架橋性基を有するとフルオレン環のHOMO及びLUMOの広がりが阻害される可能性があるが、本発明のように架橋性基を有する繰り返し単位(2)とは別に、側鎖にフルオレン環を有する繰り返し単位(1)を有することにより、側鎖に存在するフルオレン環のHOMO及びLUMOの広がりが架橋により阻害されることを防止できる。このため、アリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーにより層を形成した場合、この層の上に任意の層を簡単に積層できると共に、この層に低電位でも安定して電流を流通させることができる。
【0028】
・Ar〜Arの説明
式(1)及び式(2)において、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0029】
Ar〜Arを構成する置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基、及びビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。
【0030】
Ar〜Arを構成する置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
【0031】
中でも、溶解性及び耐熱性の点から、Ar〜Arは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基が好ましい。
【0032】
さらに、Arにおける芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基、並びにAr及び/又はArにおける芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい、架橋性基以外の置換基としては、特に制限はないが、例えば、下記置換基群Zから選ばれる基が挙げられる。なお、Ar〜Arは、置換基を1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。2個以上有する場合、1種類を有していてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で有していてもよい。
【0033】
(置換基群Z)
例えばメチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキル基;
例えばビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基;
例えばエチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基;
例えばメトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基;
例えばフェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールオキシ基;
例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基;
例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基;
例えばジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上であり、通常36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
例えばフェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常7以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基;
例えばアセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアシル基;
例えばフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
例えばトリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基;
例えばメチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基;
例えばフェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基;
例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基;
例えばトリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基;
シアノ基;
例えばフェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素環基;
例えばチエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。
【0034】
これらの置換基の中でも、溶解性の点から、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
また、上記各置換基がさらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
Ar〜Arの置換基の式量としては、さらに置換した置換基を含めて、500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。置換基の式量が大きすぎると電荷輸送能が低下する可能性がある。
【0035】
なお、m及びnが2以上である場合、繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)はそれぞれ2個以上のAr及びArを有することになる。その場合、Ar同士及びAr同士は、それぞれ、同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、Ar同士、Ar同士は、それぞれ互いに直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
【0036】
・m及びnの説明
式(1)においてmはArの繰り返し数を表す。また、式(2)においてnはArの繰り返し数を表す。m及びnは、具体的には、1以上であり、通常6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4以下の整数を表す。m及びnが大きすぎると、電荷輸送能が低下する可能性がある。なお、m及びnは同じでもよく、異なっていてもよい。
【0037】
上記式(1)における−(Ar−、及び上記式(2)における−(Ar−の特に好ましい具体例を以下に示すが、本発明における−(Ar−及び−(Ar−はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<具体例群>
【化6】

(R21〜R24は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。)
【0039】
Ar及びArはp−フェニレン基であることが、耐久性に優れるため特に好ましい。また、Ar及びArは9,9−ジアルキル−2,7−フルオレンであることが、架橋前の溶解性に優れるため特に好ましい。
【0040】
イオン化ポテンシャルが浅くなり陽極からの電荷注入能に優れる観点から、(S−1)、(S−2)及び(S−5)が好ましく、(S−1)がより好ましい。また、分子軌道の広がりが大きくなり、電荷輸送能に優れる観点からは、(S−3)、(S−4)及び(S−6)が好ましく、(S−3)がより好ましい。
また、合成の簡便な点、各繰り返し単位のエネルギー準位が同程度となり、電荷輸送能が高い点で、−(Ar−と−(Ar−とは同様の構造を有することが好ましい。
【0041】
本発明のアリールアミンポリマーは、2種以上の式(1)で表される繰り返し単位及び2種以上の式(2)で表される繰り返し単位を有するものであってもよい。また、本発明のアリールアミンポリマーにおいては、そのポリマー主鎖中で、交互に2種以上の異なる(Arを交互に配置することもできる。例えば、m=1である式(1)で表される繰り返し単位とm=2である式(1)で表される繰り返し単位とを交互に配置させると、下記式のように表すことができる。
【0042】
【化7】

【0043】
例えば上記式のような構造を有することにより、異なる特性の繰り返し単位をポリマーの規則性を失わずに共存させることができる。従って、2種の式(1)で表される繰り返し単位及び2種の式(2)で表される繰り返し単位を有するアリールアミンポリマーである場合、式(1)で表される繰り返し単位及び2種の式(2)で表される繰り返し単位とを交互に配置することが好ましい。
中でも、合成が簡便である点から、2種の式(1)で表される繰り返し単位及び2種の式(2)で表される繰り返し単位を有するアリールアミンポリマーである場合、それらをランダムに配置することが好ましい。
【0044】
・R〜Rの説明
式(1)においてR〜Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0045】
〜Rを構成する置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキル基などが挙げられる。
【0046】
〜Rを構成する置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基などが挙げられる。
【0047】
〜Rを構成する置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基などが挙げられる。
【0048】
中でも、R及びRとしては、電荷輸送性が高い点で水素原子が好ましい。また、R及びRとしては、架橋による不溶化前の溶解性及び酸化還元安定性が高められる点でアルキル基が好ましい。
【0049】
〜Rにおけるアルキル基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基は、Ar〜Arにおける芳香族炭化水素または芳香族複素環が有していてもよい置換基(但し、Ar及び/又はArにおける架橋性基を除く)と同様である。
【0050】
さらに式量に関していえば、R〜Rの式量は、通常1以上であり、通常500以下、好ましくは250以下、より好ましくは100以下である。R〜Rの式量が大きすぎると電荷輸送能が低下する可能性がある。
【0051】
なお、RとRと、及び、RとRとは、それぞれ直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
また、R、R、R及びRは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0052】
・R5Aの説明
式(1)においてR5Aは、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。中でも、R5Aは直接結合であることが好ましいが、R5Aが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である場合、その具体例及び好ましい例は、Ar〜Arと同様である
【0053】
・架橋性基の説明
本発明のアリールアミンポリマーは、Ar及び/又はArに架橋性基を有する。ここで「架橋性基」とは、近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。例えば、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、近傍に位置する他の分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基が挙げられる。架橋性基としては、例えば、以下の架橋性基群Tに示す基が挙げられる。
【0054】
[架橋性基群T]
【化8】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。なお、アルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基及び置換基としては、例えば、R〜Rにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。)
【0055】
中でも架橋性基としては、例えばエポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合によって架橋する基が好ましい。反応性が高く不溶化が容易なためである。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点ではオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化を招く可能性のあるヒドロキシル基が生成しにくい点では、酸素原子を介してビニル基が結合するビニルエーテル基が特に好ましい。
また、例えばシンナモイル基などのアリールビニルカルボニル基、ベンゾシクロブテン環由来の基等の環化付加反応する基は、電気化学的安定性をさらに向上させる点では好ましい。
【0056】
なお、本発明のアリールアミンポリマーが有する架橋性基の種類は、1種類であってもよく、2種類以上が任意の組み合わせ及び任意の比率で併用されていてもよい。
【0057】
分子内において、架橋性基はAr及び/又はAr中の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に直接結合してもよいが、適切な2価の基を介して結合していてもよい。この2価の基としては、−O−基、−C(=O)−基又は置換基を有していてもよい−CH−基からなる群より選ばれる基を任意の組み合わせ、比率及び順番で1〜30個連結してなる2価の基が好ましい。
【0058】
これら2価の基を介する架橋性基、即ち、架橋性基を含む基の具体例は以下の通りである。ただし、本発明は以下の例示物に限定されるものではない。
【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

【0062】
上述した繰り返し単位(1)の中でも下記式(1−1)で表される繰り返し単位が好ましい。また、上述した繰り返し単位(2)の中でも下記式(2−1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化12】

【0063】
(式(1−1)及び式(2−1)中、R11及びR12は、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を表し、Ar21〜Ar23は、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を置換基として有してもよい芳香族炭化水素基または炭素数1〜12のアルキル基を置換基として有してもよい芳香族複素環基を表し、Qは、直接結合、−O−基、−C(=O)−基、及び、置換基を有していてもよい−CH−基からなる群より選ばれる基を、任意の組み合わせ、任意の比率及び任意の順番で、1〜30個連結してなる2価の基を表し、p及びqは、各々独立に、1〜4の整数を表す。)
【0064】
・R11およびR12の説明
式(1−1)中、R11およびR12は、炭素数1〜12のアルキル基を表す。なお、R11とR12とは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0065】
・Ar21〜Ar23の説明
式(1−1)及び式(2−1)中、Ar21〜Ar23は、炭素数1〜12のアルキル基を置換基として有してもよい芳香族炭化水素基または炭素数1〜12のアルキル基を置換基として有してもよい芳香族複素環基を表す。芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、前記のAr〜Arと同様であり、また好ましい例も同様である。さらに、Ar21〜Ar23における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有してもよい置換基は、炭素数1〜12のアルキル基であり、好ましい例も前記Ar〜Arの場合と同様である。
【0066】
・Qの説明
式(2−1)中、Qは、直接結合、−O−基、−C(=O)−基、及び、置換基を有していてもよい−CH−基からなる群より選ばれる基を、任意の組み合わせ、任意の比率及び任意の順番で、1〜30個連結してなる2価の基を表す。
【0067】
・p及びqの説明
式(1−1)及び式(2−1)中、p及びqは、各々独立に、1〜4の整数を表す。
【0068】
ところで、式(2−1)で表される繰り返し単位は、その側鎖にベンゾシクロブテン環を含む基を有する。ベンゾシクロブテン環を含む基は、架橋をする際に、必ずしも後述の架橋反応促進剤を必要としないため、本発明のアリールアミンポリマーを用いて有機層を形成しても、通電によって架橋反応促進剤が分解することを避けることができる。
さらに、有機層を形成した後に架橋性基が有機層に残存した場合、他の架橋性基、例えばカチオン重合性基は極性が高く、電荷のトラップや劣化の原因となりやすいが、ベンゾシクロブテン環を含む基は極性が小さいため、素子特性に対する悪影響が少ないものと推測される。
ベンゾシクロブテン環を含む基が架橋されると、新規な化学結合として環を形成する。その為、本発明のアリールアミンポリマーを架橋させて形成される層(架橋層に相当)は、電気化学的に安定であり、この層を有する有機電界発光素子は、電流効率が高く、また寿命が長いと推測される。
【0069】
【化13】

【0070】
本発明のアリールアミンポリマーが有する架橋性基の数は、アリールアミンポリマーの分子量1000あたり、通常0.01個以上、好ましくは0.05個以上であり、また、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0個以下である。この範囲の下限値を下回ると網目状ポリマーの不溶化が不十分となり、ひいては網目状ポリマーで形成される層(架橋層)の不溶化が不十分となって、湿式成膜法で多層積層構造が形成できなくなる可能性がある。一方、この範囲の上限値を上回ると、クラックによって平坦な架橋層が得られなかったり、また、架橋密度が大きくなりすぎたり、架橋層中に未反応の架橋性基が増えて、製造する素子の寿命に影響を及ぼしたりする可能性がある。
【0071】
ここで、アリールアミンポリマーの分子量1000あたりの架橋性基の数は、アリールアミンポリマーからその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出することができる。例えば、後述の実施例1で用いたアリールアミンポリマー(H1)の場合、末端基を除いた繰り返し単位(1)及び(2)の合計式量は468.87であり、また架橋性基の数は1分子当たり平均0.2個である。これを単純比例により計算すると、分子量1000あたりの架橋性基の数は、0.43個と算出される。
【0072】
【化14】

【0073】
・繰り返し単位(1)の例
以下、繰り返し単位(1)の例を示す。ただし、本発明は以下の例示物に限定されるものではない。
【0074】
【化15】

【0075】
【化16】

【0076】
【化17】

【0077】
【化18】

【0078】
・繰り返し単位(2)の例
以下、繰り返し単位(2)の例を示す。ただし、本発明は以下の例示物に限定されるものではない。
【0079】
【化19】

【0080】
【化20】

【0081】
【化21】

【0082】
【化22】

【0083】
【化23】

【0084】
・本発明のアリールアミンポリマーの具体例
以下、本発明のアリールアミンポリマーの具体例を示す。ただし、本発明は以下の例示物に限定されるものではない。
【0085】
【化24】

【0086】
【化25】

【0087】
【化26】

【0088】
【化27】

【0089】
さらに本発明のアリールアミンポリマーの具体例としては、後述の[I.ポリマーの合成]の項に記載のアリールアミンポリマーが挙げられる。
【0090】
・アリールアミンポリマーに関するその他の事項
本発明のアリールアミンポリマーにおいて、繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)は各々2種以上存在していてもよい。この際、繰り返し単位(1)同士及び繰り返し単位(2)同士は、例えばAr〜Ar、R〜R、m、nのいずれか又は全てが異なることで、それぞれ異なる繰り返し単位になっていてもよい。
【0091】
また、本発明のアリールアミンポリマーにおいて、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)との比率は、架橋性基の数が前記の範囲に収まるように適切に定めればよいが、「繰り返し単位(1)の数」/{繰り返し単位(1)、繰り返し単位(2)、及びその他の繰り返し単位の合計数}で表される比率が、通常0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上で、通常0.995以下、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下である。繰り返し単位(1)が少なすぎると、本発明のアリールアミンポリマーの特徴である優れた電荷輸送能が得られない可能性があるためである。
一方、「繰り返し単位(2)の数」/{繰り返し単位(1)、繰り返し単位(2)及びその他の繰り返し単位の合計数}で表される比率が、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、通常0.9以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下である。繰り返し単位(2)が少なすぎると、架橋性基数を含む割合が少なくなり、架橋層の有機溶剤に対する不溶性が低減して、積層できなくなる可能性がある。また、繰り返し単位(2)が多すぎると、架橋性基が多過ぎるため、クラックが生じて平坦な膜が形成されなかったり、架橋層中の網目状ポリマーが著しく凝集して電荷輸送能を低下したり、架橋密度が大きくなりすぎて架橋層中の未反応架橋性基が増えて酸化還元安定性が低下して、製造する素子の寿命に影響を及ぼしたりする可能性がある。
【0092】
本発明のアリールアミンポリマーは、繰り返し単位として、通常は繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)のみを有するが、本発明の効果を著しく損なわない限り、繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)以外にも繰り返し単位を有していてもかまわない。ただし、本発明の効果をより顕著に発揮する観点からは、本発明のアリールアミンポリマーが含む繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)以外の繰り返し単位の量、は少ないことが好ましい。具体的には、「その他の繰り返し単位の数」/{繰り返し単位(1)、繰り返し単位(2)、その他の繰り返し単位の合計数}で表される比率が、0.7以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。
【0093】
本発明のアリールアミンポリマーの重量平均分子量Mwは、通常10000以上、好ましくは20000以上であり、通常2000000以下、好ましくは1000000以下である。また、本発明のアリールアミンポリマーの数平均分子量Mnは、通常3000以上、好ましくは6000以上であり、通常1000000以下、好ましくは500000以下である。重量平均分子量又は数平均分子量がこの範囲の下限値を下回ると、架橋層の有機溶剤に対する不溶性が低減して、積層できなくなる可能性があり、ガラス転移温度が低下して耐熱性が損なわれる可能性がある。また、この範囲の上限値を上回ると架橋前においても有機溶剤に溶解せずに、平坦な膜が得られない可能性がある。
【0094】
さらに、本発明のアリールアミンポリマーにおける分散度(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。アリールアミンポリマーの分散度がこの範囲の上限値を上回ると精製が困難となったり、溶剤溶解性が低下したり、電荷輸送能が低下したりする可能性がある。なお、分散度の下限に制限は無いが、通常1.0以上、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上である。
【0095】
アリールアミンポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、通常、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなる。具体的な測定方法としては、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量および数平均分子量を測定できる。
【0096】
本発明のアリールアミンポリマーのイオン化ポテンシャルは、電荷輸送能が優れる点、陽極側からの電荷注入に優れる点、陰極側への電荷注入に優れる点で、通常4.7eV以上、好ましくは5.0eV以上であり、また、通常5.8eV以下、好ましくは5.5eV以下である。
【0097】
・本発明のアリールアミンポリマーの利点
本発明のアリールアミンポリマーは、式(1)に示されるとおり側鎖にフルオレン基を有する繰り返し単位(1)を有しているため、従来よりも高い電荷移動度を有し、正孔輸送能に優れる。さらに、本発明のアリールアミンポリマーは、分子量1000あたりの架橋性基の数が増加しても、電荷移動度に対する影響が小さい。
また、架橋前の状態では溶剤に対して高い溶解性を有し、成膜時の表面平坦性に優れ、均質な膜質で成膜可能である。
さらに、架橋後には有機溶剤に対して溶解し難くなるため積層化が可能である。また、架橋により分子間の結合が強固になるため、網目状ポリマーの電気的安定性は良好であり、通電による分解などは起こりにくい。
【0098】
このような優れた性質を有するため、本発明のアリールアミンポリマーは、有機電界発光素子材料として用いて好適である。
また、本発明のアリールアミンポリマーは、有機電界発光素子だけに限らず、その他、例えば電子写真感光体、有機電界発光素子、光電変換素子、有機太陽電池、有機整流素子等にも有効に利用することができる。
【0099】
[2.アリールアミンポリマーの製造方法]
本発明のアリールアミンポリマーの製造方法は特には制限されず、本発明のアリールアミンポリマーが得られる限り任意である。例えば、Suzuki反応による重合方法、Grignard反応による重合方法、山本重合法による重合方法、Ullmann反応による重合方法、Buchwald−Hartwig反応による重合方法等などによって製造できる。
【0100】
Ullmann反応による重合方法及びBuchwald−Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、式(1a)で表されるフルオレンアミン及び式(2a)で表されるアリールアニリンに、(Ar−X及び(Ar−X(なお、XはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を表す。)で表されるハロゲン化アリールをそれぞれ反応させる。これにより、式(1b)又は式(2b)で表される二級アミン化合物が得られる。そして、得られた式(1b)又は式(2b)で表される二級アミン化合物をさらに反応させることにより、本発明のアリールアミンポリマーが製造される。
なお、以下の反応式においては、R5Aが直接結合の場合の各化合物及び反応を記載しているが、R5Aが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であっても、以下に示す反応と同様の反応により、本発明のアリールアミンポリマーを製造することができる。
【0101】
【化28】

【0102】
なお、(Arと(Arとが同じ場合、次式のように一工程で合成される。
【化29】

【0103】
また、次式のようにポリマー主鎖中で、交互に2種の異なる(Arを交互に配置することもできる。
【化30】

式中、Z−NHは前記式(1a)及び(1b)を表し、Z、Zは(Arを表し、Z、Zは互いに異なる)
【0104】
なお前記の重合方法において、通常、各工程における、N−Ar結合、N−Ar結合、及びN−Ar結合を形成する反応は、例えば炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、必要に応じて、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。
【0105】
Suzuki反応のよる重合方法の場合、例えば、式(1a)で表されるフルオレンアミン及び式(2a)で表されるアリールアニリンに、Ar−X(なおXはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を表す。)で表されるハロゲン化アリールをそれぞれ反応させる。これにより、式(1c)又は式(2c)で表される二級アミン化合物が得られる。そして、得られた二級アミン化合物を例えばZ−(BR)等のホウ素誘導体(なおRは任意の置換基であり、通常、ヒドロキシル基又は環を形成してもよいアルコシキル基を表し、Zは(Arまたは(Arの部分構造を表す。)と反応させることにより、本発明のアリールアミンポリマーが合成される。
なお、以下の反応式においては、R5Aが直接結合の場合の各化合物及び反応を記載しているが、R5Aが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であっても、以下に示す反応と同様の反応により、本発明のアリールアミンポリマーを製造することができる。
【0106】
【化31】

【0107】
なお前記の重合方法において、通常、ハロゲン化物との反応工程は、例えば炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、必要に応じて、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。さらにホウ素誘導体との反応工程では、例えば4級アンモニウム塩、炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基、及び、銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒の存在下で行うことができる。
【0108】
[3.有機電界発光素子用組成物]
本発明のアリールアミンポリマーは、上述したように、有機電界発光素子を構成する層の材料として用いることができる。この場合、通常は、少なくとも本発明のアリールアミンポリマーを含有する有機電界発光素子用組成物(以下、適宜「本発明の有機電界発光素子用組成物」と言う。)を用意し、この有機電界発光素子用組成物を用いて成膜を行う。
【0109】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、陽極と陰極との間に配置された有機層を有する有機電界発光素子において、通常、有機層を湿式成膜法により形成する際の組成物として用いられる。中でも、本発明の有機電界発光素子用組成物は、有機層のうち正孔注入層又は正孔輸送層を形成するために用いられることが好ましく、正孔輸送層を形成するために用いられることがより好ましい。
なお、ここでは、有機電界発光素子における陽極−発光層間に存在する層が1層である場合には、この層を「正孔輸送層」と称し、2層以上存在する場合には、陽極に接している層を「正孔注入層」と称し、それ以外の層を総称して「正孔輸送層」と称す。また、陽極−発光層間に設けられた層を総称して「正孔注入・輸送層」と称する場合がある。
【0110】
・アリールアミンポリマー
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明のアリールアミンポリマーを少なくとも1種含有する。なお、本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明のアリールアミンポリマーを1種類含有するものであってもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含有するものであってもよい。
【0111】
本発明の有機電界発光素子用組成物が含有する本発明のアリールアミンポリマーの量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。本発明のアリールアミンポリマーが少なすぎると有機電界発光素子の電荷輸送層として好ましい膜厚を得ることが困難となる可能性があり、多すぎると有機電界発光素子用組成物の粘度が著しく上昇し取り扱いが困難となる可能性がある。
【0112】
・溶剤
本発明の有機電界発光素子用組成物は、通常、溶剤を含有する。この溶剤は、本発明のアリールアミンポリマーを溶解するものが好ましい。具体的には、本発明のアリールアミンポリマーを、通常0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶剤が好適である。
【0113】
溶剤の例を挙げると、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶剤;1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等のエステル系溶剤;などの有機溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0114】
中でも、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤としては、20℃における表面張力が、通常40dyn/cm未満、好ましくは36dyn/cm以下、より好ましくは33dyn/cm以下である溶剤が好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物を塗布後、アリールアミンポリマーを架橋して層を形成する場合、下地との親和性が高いことが好ましい。膜質の均一性は有機電界発光素子の発光の均一性及び安定性に大きく影響するためである。したがって、湿式成膜法に用いる有機電界発光素子用組成物には、よりレベリング性が高く均一な塗膜を形成しうるように表面張力が低いことが求められる。そこで前記のような低い表面張力を有する溶剤を使用することにより、本発明のアリールアミンポリマーを含有する均一な層を形成することができ、ひいては均一な架橋層を形成できるようにすることが好ましいのである。
【0115】
低表面張力の溶剤の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶剤、安息香酸エチル等のエステル系溶剤、アニソール等のエーテル系溶剤、トリフルオロメトキシアニソール、ペンタフルオロメトキシベンゼン、3−(トリフルオロメチル)アニソール、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等が挙げられる。
【0116】
また一方で、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤としては、25℃における蒸気圧が、通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下であり、通常0.1mmHg以上であるものが好ましい。このような溶剤を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適で、本発明のアリールアミンポリマーの性質に適した有機電界発光素子用組成物を調製することができるからである。
このような溶剤の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メチシレン等の芳香族系溶剤、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤が挙げられる。
【0117】
ところで、水分は有機電界発光素子の性能劣化を引き起こす可能性があり、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性がある。そこで、湿式成膜中に残留する水分をできる限り低減するために、前記の溶剤の中でも、25℃における水の溶解度が1重量%以下であるものが好ましく、0.1重量%以下である溶剤がより好ましい。
【0118】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。これにより形成される層の平坦さ及び均一さを良好にすることができる。
【0119】
・その他の成分
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明のアリールアミンポリマー及び溶剤以外にその他の成分を含有していてもよい。
【0120】
その他の成分としては例えば添加剤が挙げられ、添加剤の例を挙げれば架橋を促進するための添加物(架橋促進剤)等が挙げられる。
架橋を促進する添加物の具体例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤又は重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤などが挙げられる。なお、これらは1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0121】
また添加剤を含有する場合、溶剤としては、本発明のアリールアミンポリマーと添加剤との双方を、通常0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上溶解しうる溶剤を使用することが好ましい。アリールアミンポリマーや添加剤が保存時に析出することを防止するためである。
【0122】
さらに、本発明の有機電界発光素子用組成物は、形成しようとする有機層の種類等に応じて、本発明のアリールアミンポリマー以外のポリマー、発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、電子受容性化合物などを含有していてもよい。
なお、本発明の有機電界発光素子用組成物は、その他の成分を、1種類だけ含有していてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含有していてもよい。
【0123】
・成膜方法
本発明の有機電界発光素子用組成物は、通常、所定の塗布対象面に湿式成膜法により塗布し、その後アリールアミンポリマーを架橋させることにより、所望の有機層を架橋層として形成する。
【0124】
塗布対象面としては、例えば基板や他の層の上(表面)など、形成する有機層の下層に該当する層の表面に塗布する。本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて形成される有機層は正孔輸送層であることが好ましいので、通常は、この有機層は正孔注入層上に形成されるか、陽極上に形成される。以下、正孔輸送層を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0125】
湿式成膜法の例を挙げると、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷等の、溶剤を含有するインク(有機電界発光素子用組成物に相当する。)を用いて塗布する方法をいう。中でもパターニングのし易さという点で、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法、インクジェット法、又はフレキソ印刷法が好ましい。さらにその中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。これは、有機電界発光素子に用いられる湿式成膜用組成物特有の液性に合うためである。
【0126】
本発明の有機電界発光素子用組成物を塗布した後には、通常、塗布された膜内のアリールアミンポリマーを架橋させる。これは、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて塗布された膜の成分が、その上に形成される層に溶け出さないようにするためである。具体例を挙げると、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて正孔輸送層を形成し、その正孔輸送層上に発光層を形成する場合、発光層を塗布するための塗布組成物に、形成された正孔輸送層が溶解しないようにするためである。このため、本発明の有機電界発光素子用組成物を塗布後、本発明のアリールアミンポリマーに架橋を起こさせ、膜の溶解性を低下させることが好ましい。
【0127】
架橋を起こさせるには、例えば、加熱を行ったり、光等の電磁エネルギー照射を行ったりすればよい。これらの加熱及び電磁エネルギー照射は、それぞれ、単独で行ってもよく、複数の手段を任意に組み合わせて行ってもよい。組み合わせて行う場合、実施する順序は特に限定されない。また、加熱と電磁エネルギー照射とを組み合わせて行うことも可能である。
【0128】
加熱により架橋を起こさせる場合、架橋が進行すれば加熱条件に特に制限は無いが、加熱温度としては、通常120℃以上、好ましくは150℃以上、また、通常400℃以下、好ましくは300℃以下に、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層を加熱する。低温すぎると架橋が進行しない可能性があり、高温すぎると素子の劣化等を招く可能性がある。
また、加熱時間は、通常1分以上、好ましくは5分以上であり、通常24時間以下、好ましくは3時間以下である。時間が短すぎると架橋が十分に進行しない可能性があり、長すぎるとコストアップを招く可能性がある。
加熱手段としては特に限定されないが、形成された層を有する積層体を、例えばホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱したりするなどの手段が用いられる。
具体的な加熱条件を挙げると、例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0129】
また、光などの電磁エネルギー照射により架橋を起こさせる場合、架橋が進行すれば照射条件に特に制限は無い。
電磁エネルギーの照射方法としては、光を照射する場合、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法;前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置等を用いて照射する方法;などが挙げられる。また、光以外の電磁エネルギー照射を行う場合、例えば、マグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置(いわゆる電子レンジ)を用いて照射する方法などが挙げられる。
照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましく、通常0.1秒以上、好ましくは1分以上であり、通常10時間以下、好ましくは1時間以下照射する。時間が短すぎると架橋が十分に進行しない可能性があり、長すぎるとコストアップを招く可能性がある。
【0130】
上述した加熱及び電磁エネルギー照射は、実施後に得られる有機層が含有する水分の量、及び/又は、表面に吸着する水分の量を低減させるため、例えば窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。また同様の目的で、加熱及び/又は電磁エネルギー照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも有機発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
【0131】
[4.有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、基板と、陽極と、1層又は2層以上の有機層と、陰極とをこの順に備え、有機層の少なくとも一層が、本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含む層、すなわち架橋層である。
【0132】
前記の有機層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層などが挙げられる。本発明の有機電界発光素子は、これらの有機層の中でも正孔注入層及び/又は正孔輸送層に本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含んでいることが好ましく、正孔輸送層に本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含んでいることがより好ましい。これにより、寿命が長く、電圧が低く、さらに電力効率が高い有機電界発光素子を実現できる。
【0133】
また本発明の有機電界発光素子は、少なくとも正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を有し、これら全てが湿式成膜法で形成されることが好ましい。本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含む層の有機溶剤に対する優れた不溶性を活用し、積層を容易に行うためである。なお、このような有機電界発光素子において、陽極と陰極との間の有機層を湿式成膜法で形成する場合は、後述する各層の材料を溶剤へ分散又は溶解させて湿式成膜用組成物(上述した有機電界発光素子用組成物もこれに相当する。)を調製し、この湿式成膜用組成物を用いて成膜すればよい。
【0134】
以下、図面を用いて、本発明の有機電界発光素子の一実施形態につき、その層構成及びその一般的形成方法等を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
図1は、本実施形態の有機電界発光素子の層構成を模式的に示す断面図である。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
【0135】
(基板1)
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものである。
基板1の材料は制限されないが、例えば、石英、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。これらの材料は何れか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0136】
基板1の形状も制限されないが、例としては、板、シート、フィルム、箔等、或いはこれらの二種以上を組み合わせた形状等が挙げられる。
中でも、基板1としては、ガラス基板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂基板が好ましい。
【0137】
ただし、合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意することが望ましい。基板1のガスバリア性が小さすぎると、基板1を通過した外気により有機電界発光素子が劣化する可能性があるからである。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に例えば緻密なシリコン酸化膜等を設けることにより、ガスバリア性を確保することが好ましい。
【0138】
基板1の厚さは制限されないが、通常1μm以上、好ましくは50μm以上、また、通常50mm以下、好ましくは3mm以下の範囲が望ましい。基板1が薄過ぎると機械的強度が低くなる場合があり、厚過ぎると素子の重量が増加し過ぎる場合がある。
なお、基板1は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいが、異なる材料からなる層であってもよい。
【0139】
(陽極2)
基板1の上には、陽極2が形成される。陽極2は発光層5側の層(通常は正孔注入層3又は正孔輸送層4)への正孔注入の役割を果たすものである。
【0140】
陽極2の材料は、導電性を有する材料であれば任意であるが、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子;などが挙げられる。なお、これらの材料は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0141】
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また例えば、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等の導電性粒子を用いて陽極2を形成する場合には、適切なバインダー樹脂溶液にこれらを分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成したりすることもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0142】
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とする。この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。一方、不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2の厚みは基板1と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0143】
なお、陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
更には、陽極2を上述の基板1と一体に形成し、陽極2が基板1を兼ねる構成としてもよい。
【0144】
また、陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2の表面を、紫外線(UV)処理したり、オゾン処理したり、プラズマ処理(例えば、酸素プラズマ処理、アルゴンプラズマ処理)したりすることが好ましい。
【0145】
(正孔注入層3)
陽極2の上には、通常、正孔注入層3が形成される。正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する機能を有する層である。
この機能を発現するため、正孔注入層3は本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含む層であることが好ましい。
【0146】
正孔注入層3の形成方法は特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から、湿式成膜法により形成することが好ましい。また湿式成膜法は、従来の真空蒸着法と比較して、均質で欠陥がない薄膜が得られ、形成のための時間が短く、工業的にも優れている。
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3の材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層用組成物)を用意し、この正孔注入層用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。さらに、正孔注入層用組成物が本発明のアリールアミンポリマーを含有する場合、塗布後には架橋を行わせる。
【0147】
・正孔輸送性化合物
上述したように、正孔注入層3には本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含有させることが好ましい。この場合、前記の網目状ポリマーは正孔輸送性化合物として機能する。また、この場合に使用される正孔注入層用組成物は、本発明のアリールアミンポリマーを含有する組成物(即ち、本発明の有機電界発光素子用組成物)となる。
【0148】
また、正孔注入層3を形成するために、本発明のアリールアミンポリマー以外の正孔輸送性化合物を用いることも可能である。この場合、正孔輸送性化合物としては、正孔輸送能を有する化合物であれば低分子化合物を用いてもよく、高分子化合物を用いてもよい。
正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から、4.5eV以上6.0eV以下のイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。この観点から、正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン化合物、シラザン化合物、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン化合物、フタロシアニン誘導体などが挙げられる。
【0149】
中でも非晶質性である点、及び、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物がより好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なるポリマー)がさらに好ましい。
【0150】
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【化32】

【0151】
(式(3)中、Ar及びArは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Xは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0152】
【化33】

【0153】
(上記各式中、Ar10〜Ar14、Ar16〜Ar19は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わし、Ar15及びAr20は各々独立して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R10及びR11は、各々独立して、水素原子または任意の置換基を表わす。)
【0154】
Ar〜Ar20は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。これらはそれぞれ同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、これらの基は更に置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下が好ましい。
【0155】
Ar及びArとしては、芳香族三級アミン高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、フェニル基(ベンゼン環由来の基)、ナフチル基(ナフタレン環由来の基)がより好ましい。
【0156】
また、Ar〜Arとしては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、フェナントレン環由来の基が好ましく、フェニレン基(ベンゼン環由来の基)、ビフェニレン基(ベンゼン環由来の基)、ナフチレン基(ナフタレン環由来の基)がより好ましい。
【0157】
式(3)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
なお、正孔輸送性化合物は、何れか1種類を含有していてもよく、2種類以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
【0158】
正孔注入層用組成物中の正孔輸送性化合物(本発明のアリールアミンポリマーを含む。)の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上であり、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。濃度が小さすぎると形成される正孔注入層3に欠陥が生じる可能性があり、濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性がある。
【0159】
・電子受容性化合物
正孔注入層3は電子受容性化合物を含有することが好ましく、したがって正孔注入層用組成物も電子受容性化合物を含有していることが好ましい。電子受容性化合物としては、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子を受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物がさらに好ましい。
【0160】
電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、及び、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素等が挙げられる。なお、電子受容性化合物は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0161】
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化するため、正孔注入層3の導電率を向上させることができる。
電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
【0162】
・溶剤
正孔注入層用組成物が含有する溶剤のうち少なくとも1種は、正孔注入層3の材料を溶解しうる溶剤であることが好ましい。
また、溶剤の沸点は、通常110℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは200℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは300℃以下である。溶剤の沸点が低すぎると形成した膜の乾燥速度が速く、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度が高くなり、他の層や基板1(例えば、ガラス基板)に悪影響を与える可能性がある。
【0163】
溶剤の例を挙げると、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。具体的に、エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。また、エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。さらに、芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。また、アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。またその他、ジメチルスルホキシド、等も溶剤として用いることができる。
【0164】
上述した溶剤の中でも、正孔注入層3の材料を溶解する能力(溶解能)、若しくは材料との親和性が高い溶剤の方が好ましい。正孔注入層用組成物の濃度を任意に設定して、成膜工程の効率に優れる濃度の組成物を調製できるためである。
なお、溶剤は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0165】
・その他の成分
正孔注入層3の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔輸送性化合物及び電子受容性化合物以外に、さらにその他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0166】
・成膜方法
正孔注入層用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布し、乾燥することによって正孔注入層3を形成する。塗布後、通常は加熱等により乾燥を行う。加熱工程において使用する加熱手段は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。ただし、正孔注入層用組成物が本発明のアリールアミンポリマーを含有する場合には、塗布後に架橋を行わせるようにする。
【0167】
なお、真空蒸着法による層形成の場合には、まず材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気する。その後、るつぼを加熱して(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱し蒸発させて正孔注入層3の形成に用いることもできる。
【0168】
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。膜厚が薄すぎると正孔注入能が不十分になる可能性があり、厚すぎると抵抗が高くなる可能性がある。
なお、正孔注入層3は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいし、異なる材料からなる層であってもよい。
【0169】
(正孔輸送層4)
正孔輸送層4は、通常、正孔注入層3が有る場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成される。正孔輸送層4は、正孔輸送能が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料で形成することが好ましい。そのために、正孔輸送層4は、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくい材料で形成することが好ましい。さらに、多くの場合、正孔輸送層4は発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
【0170】
これらの機能を発現するため、正孔輸送層4は、本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含有することが好ましい。この場合、正孔輸送層4は、本発明の有機電界発光素子用組成物を上述したように塗布した後、本発明のアリールアミンポリマーを架橋して形成することができる。
【0171】
また、正孔輸送層4は、本発明のアリールアミンポリマー以外の化合物により形成することもできる。この場合も通常は、本発明のアリールアミンポリマーを用いる場合と同様に、湿式成膜法を用いる。具体的には、正孔輸送層4の材料を適切な溶剤(正孔輸送層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔輸送層用組成物)を用意し、この正孔輸送層用組成物を適切な手法により、正孔輸送層4の下層に該当する層(通常は、陽極2又は正孔注入層3)上に塗布し、乾燥することにより正孔輸送層4を形成する。さらに、成膜後、架橋させてもよい。
【0172】
本発明のアリールアミンポリマー以外に正孔輸送層4の材料となる化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル等のカルバゾール誘導体等が挙げられる。
さらに、正孔輸送層4の材料となる化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等の高分子材料も挙げられる。
なお、これらの化合物は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0173】
また、本発明のアリールアミンポリマー以外の化合物を用いる場合であっても、正孔輸送層4は、架橋性化合物を熱及び/又は活性エネルギー線(紫外線、電子線、赤外線、マイクロ波等)の照射等により架橋して得られる架橋層であることが好ましい。この場合、架橋性基としては、特に限定されるものではないが、例えば、不飽和二重結合、環状エーテル、ベンゾシクロブタン等を含む基が好ましい。
【0174】
前記のような架橋が可能な架橋性化合物の例としては、前述した架橋性基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーが挙げられるが、中でもポリマーが好ましい。架橋性化合物の具体例としては、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、2,4,6−トリフェニルピリジン誘導体、C60誘導体、オリゴチオフェン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体誘導体等が挙げられる。中でも、電気化学的安定性及び電荷輸送能が高いという理由から、トリフェニルアミンの部分構造と架橋性基とを有する化合物が特に好ましい。
なお、架橋性化合物は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0175】
正孔輸送層4の成膜は、通常、本発明の有機電界発光素子用組成物の成膜方法として説明した方法に沿って行なえばよい。
また、正孔輸送層4は、正孔注入層3と同様にして、真空蒸着法で形成することも可能である。
【0176】
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。膜厚が薄すぎると陽極2の特性が影響する可能性があり、厚すぎると膜質が悪くなる可能性がある。
【0177】
(発光層5)
正孔注入層3の上、又は正孔輸送層4を設けた場合には正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極2,9間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
【0178】
発光層5は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔移動の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子移動の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。更に、発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層5を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
【0179】
・発光材料
発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。その例を挙げると、蛍光発光材料(蛍光色素ともいう。)、燐光発光材料などが挙げられるが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
【0180】
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、クリセン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0181】
また、燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
一方、錯体の配位子としては、例えば、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子がより好ましい。ここで、(ヘテロ)アリール基とは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0182】
一方、燐光発光材料としては、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0183】
発光材料の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上であり、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする可能性がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、発光材料の精製が困難となったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、発光材料は、いずれか1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0184】
発光層5における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、通常35重量%以下、好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0185】
・正孔輸送性化合物
発光層5には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、高分子化合物としては、例えば、本発明のアリールアミンポリマーを用いることができる。また、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層の項において正孔輸送性化合物として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72−74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
なお、発光層5において、正孔輸送性化合物は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0186】
発光層5における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0187】
・電子輸送性化合物
発光層5には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。
【0188】
なお、発光層5には、電子輸送性化合物を、1種類のみ含有させてもよいが、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含有させてもよい。
【0189】
発光層5における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにすることが好ましい。
【0190】
・発光層5の形成方法
発光層5は、通常、湿式成膜法で形成する。この場合でも、上述したように本発明のアリールアミンポリマーを架橋させた網目状ポリマーを含んで構成することにより正孔注入層3及び正孔輸送層4は溶剤に溶解し難くなっているため、発光層5を容易に積層することができる。
【0191】
湿式成膜法により発光層5を形成する場合、上述の材料を適切な溶剤(発光層用溶剤)に溶解させて発光層用組成物を調製し、その組成物を塗布し、乾燥する。また、必要に応じて塗布後には架橋を行なうようにしてもよい。成膜、乾燥、架橋などは、正孔注入層3及び正孔輸送層4などと同様に行なえばよい。
【0192】
発光層5を湿式成膜法で形成するための溶剤としては、発光層5の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。ただし、前述の発光材料、正孔輸送性化合物及び電子輸送性化合物を溶解することが可能なものが好ましい。具体的な溶解性としては、常温・常圧下で、発光材料、正孔輸送性化合物或いは電子輸送性化合物を、通常0.01重量%以上、中でも0.05重量%以上、特には0.1重量%以上溶解することが好ましい。
発光層用溶剤は、好適には、有機電界発光素子用組成物に含有させる溶剤と同様のものが挙げられる。なお、発光層用溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0193】
発光層用組成物に対する発光層用溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下の範囲である。なお、発光層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにすることが好ましい。
【0194】
湿式成膜法では、通常、発光層用組成物の塗布後、得られた塗膜を乾燥し、発光層用溶剤を除去することにより、発光層5が形成される。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
なお、他の有機層を本発明に係る湿式成膜法で形成する場合は、発光層5の形成に蒸着法又はその他の方法を用いてもよい。
【0195】
発光層5の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層5の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
【0196】
(正孔阻止層6)
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔が陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
【0197】
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体;ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体;ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報);3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報);バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0198】
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。正孔阻止層6が薄過ぎると正孔阻止能力不足による発光効率の低下が生じる場合があり、正孔阻止層6が厚過ぎると、素子の電圧が高くなる場合がある。
【0199】
(電子輸送層7)
発光層5と後述の電子注入層8との間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させる役割を有する。
【0200】
電子輸送層7を構成する材料に求められる物性としては、電界を与えられた電極2,9間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができることが挙げられる。このような条件を満たす材料としては電子輸送性化合物が挙げられる。その中でも、通常、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。その例を挙げると、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層7の材料は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0201】
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0202】
(電子注入層8)
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5へ注入する役割を果たす層である。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。
例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。この場合、電子注入層8の膜厚は0.1nm以上5nm以下が好ましい。
【0203】
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
【0204】
なお、電子注入層8の材料は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0205】
(陰極9)
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料と同様のものを用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましい。その例を挙げると、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適切な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極9の材料は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0206】
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層(図示せず。)を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0207】
(その他の層)
本発明に係る有機電界発光素子は、その要旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層3〜8の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
【0208】
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。電子阻止層は、正孔注入層3又は正孔輸送層4と発光層5との間に設けられる層である。この電子阻止層は、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3又は正孔輸送層4に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを果たすものである。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
【0209】
電子阻止層の材料に求められる特性としては、正孔輸送能が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、発光層5を湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共ポリマー(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
【0210】
なお、電子阻止層の材料は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0211】
さらに陰極9と発光層5又は電子輸送層7との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化リチウム(LiO)、炭酸セシウム(II)(CsCO)等で形成された極薄絶縁膜(厚さは通常0.1nm〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters,1997年,Vol.70,pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,Vol.44,pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
【0212】
また、以上説明した層構成において、基板1以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3及び陽極2の順に設けてもよい。
【0213】
更には、例えば少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。 また、例えば基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0214】
更には、有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各構成要素1〜9には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0215】
(本発明の有機電界発光素子の利点)
本発明の有機電界発光素子は、本発明のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含む層を備えるため、本発明のアリールアミンポリマーの優れた性質を活かして、低い電圧で駆動可能であり、発光効率が高く、駆動安定性が高いなどの様々利点を発揮できる。また、通常は本発明の有機電界発光素子は、耐熱性が高く、さらに、定電流駆動時の発光輝度の低下、電圧上昇、非発光部分(ダークスポット)の発生、短絡欠陥等が抑制される。
【0216】
したがって、本発明の有機電界発光素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や、面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は高いものである。
【0217】
[5.有機ELディスプレイ]
本発明の有機ELディスプレイは、上述のような本発明の有機電界発光素子を備えるものである。有機ELディスプレイの型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイを形成することができる。
【0218】
[6.有機EL照明]
本発明の有機EL照明は、上述のような本発明の有機電界発光素子を備えるものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例】
【0219】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、dbaはジベンジリデンアセトンを表し、tBuはt−ブチル基を表し、THFはテトラヒドロフランを表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、iPrはi−プロピル基を表し、Phはフェニル基を表し、Acはアセチル基を表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、TBABはテトラブチルアンモニウムブロマイドを表し、DMEはジメトキシエタンを表し、TfOは無水トリフルオロメタンスルホン酸を表し、DMFはジメチルフォルムアミドを表し、dppfは1,1’−ジフェニルホスフィノフェロセンを表し、NBSはN−ブロモスクシンイミドを表す。
【0220】
[I.ポリマーの合成]
(合成例1)
【化34】

【0221】
反応容器内にフッ化カリウム(23.01g)を仕込み、減圧下、加熱乾燥と窒素置換とを繰り返して系内を窒素雰囲気とした。3−ニトロフェニルボロン酸(6.68g)、4−ブロモ−ベンゾシクロブテン(7.32g)、及び脱水テトラヒドロフラン(50ml)を仕込み、撹拌した。そこへ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.21g)を加え、さらに系内を十分に窒素置換して、室温でトリ−t−ブチルホスフィン(0.47g)を加え、添加終了後、そのまま1時間攪拌させた。反応終了後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、目的物1(8.21g)を得た。
【0222】
(合成例2)
【化35】

【0223】
目的物1(8.11g)、テトラヒドロフラン36ml、エタノール36ml、及び10%Pd/C(1.15g)を仕込み、70℃で加熱撹拌した。そこへヒドラジン一水和物(10.81g)をゆっくり滴下した。2時間反応後、放冷し、反応液をセライトでろ過して濾液を濃縮した。この濾液に酢酸エチルを加え、水で洗浄し、有機層を濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することにより、目的物2(4.90g)を得た。
【0224】
(合成例3)
【化36】

【0225】
2−ニトロフルオレン(25.0g)、1−ブロモヘキサン(58.61g)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(7.63g)、及びジメチルスルホキシド(220ml)を仕込み、17M水酸化ナトリウム水溶液(35ml)をゆっくり滴下し、室温で3時間反応させた。反応液に、酢酸エチル(200ml)および水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、目的物3(44.0g)を得た。
【0226】
(合成例4)
【化37】

【0227】
目的物3(44.0g)、テトラヒドロフラン(120ml)、及びエタノール(120ml)に10%Pd/C(8.6g)を加え、50℃で加熱攪拌した。そこへ、ヒドラジン一水和物(58.0g)をゆっくり滴下し、この温度で3時間反応した。反応液を放冷し、セライトによる減圧濾過し、ろ液を濃縮して残渣をメタノールを添加し、晶出した結晶を濾取して乾燥することにより、目的物4(34.9g)を得た。
【0228】
(合成例5)
【化38】

【0229】
窒素を通じた200mL4つ口フラスコにジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(212mg、0.03等量)、及びヨウ化銅(104mg、0.02等量)を入れ、これにあらかじめ窒素をバブリングして脱気したジオキサン75mLを入れて攪拌した。この液にトリ−t−ブチルホスフィン(331mg、0.06等量)を添加して15分、室温で攪拌した。この溶液にジ−i−プロピルアミン(3.31g、1.2等量)、4−ブロモベンゾシクロブテン5.00g(1.0等量)、及び1,7−オクタジイン20.3g(7.0等量)を加えて室温下9時間反応させた。得られた反応混合物を400Paの減圧下、バス温60℃で軽沸分を留去した後、飽和食塩水50mL、1N塩酸5mLを添加し、酢酸エチル(30mL)で3回抽出し、得られた酢酸エチル層を飽和食塩水(30mL)で2回洗浄した。酢酸エチル層を濃縮すると粗成生物(7.7g)が得られた。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶剤:n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶剤)にて精製することにより2.78g(48.9%収率、ガスクロマトグラフィーで分析した純度95.4%)の目的物5を無色の油状物として得た。
【0230】
(合成例6)
【化39】

【0231】
窒素を通じた100mL4つ口フラスコにm−ヨウ化ニトロベンゼン(3.64g、1.1等量)、炭酸カリウム(5.06g、2.75等量)、ヨウ化銅(111mg、0.044等量)、トリフェニルホスフィン307mg(0.088等量)、5%Pd/C623mg(Pdとして0.022等量)を入れ、これにあらかじめ窒素をバブリングして脱気したジメトキシエタン/水=1/1(体積比)の混合溶剤を95mL入れて室温下、1時間攪拌した。この液に目的物5(2.77g、1.0等量)をジメトキシエタン2mLに溶解させた溶液を添加し、70℃のバス(内温63℃)で7時間加熱反応した。得られた反応混合物は、セライトを通してろ過した後、エバポレーターで濃縮、1N塩酸25mLを添加して酢酸エチル(30mL)で3回抽出、得られた酢酸エチル層を飽和食塩水(20mL)で3回洗浄した。酢酸エチル層を濃縮して得られた粗生成物を酢酸エチル−n−ヘキサンの混合溶剤から再結晶して2.50g(57.1%収率、液体クロマトグラフィーで分析した純度99.5%)の目的物6をごく薄い黄色の針状結晶として得た。
【0232】
(合成例7)
【化40】

【0233】
100mLナスフラスコに目的物6(2.31g)、テトラヒドロフラン15mL、及びエタノール15mLを添加して溶解させた。この溶液に水素化触媒としてラネーニッケル1.07g(日興リカ社製、R−200)を添加、水素で3回置換後、水素下、室温で35時間反応させた。反応液を、セライトを通してろ過、濃縮して2.8gの粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶剤:n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶剤)にて精製することにより1.72g(80.1%収率、液体クロマトグラフィーで分析した純度99.1%)の目的物7を白色の針状結晶として得た。
【0234】
(合成例8)
【化41】

【0235】
窒素気流中、3−ブロモスチレン(5.0g)、3−ニトロフェニルボロン酸(5.5g)、トルエン:エタノール(80ml:40ml)、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(20ml)を仕込み、60℃に加熱下、30分間撹拌して脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.95g)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、反応液に塩化メチレン(100ml)および水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン)で精製することにより、目的物8(5.5g)を得た。
【0236】
(合成例9)
【化42】

【0237】
窒素気流中、目的物8(2.5g)、酢酸(60ml)、エタノール(60ml)、1N塩酸(2ml)、水(8ml)および還元鉄(12.4g)を仕込み、1時間加熱還流した。室温で反応液を濾過し、酢酸エチル(100ml)および水(100ml)を加え攪拌後、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で中和し、分液し、水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、目的物9(2.1g)を得た。
【0238】
(合成例10)
【化43】

【0239】
窒素気流中、1,2−ジブロモベンゼン(21.0g)、3−メトキシフェニルボロン酸(29.9g)、トルエン:エタノール(147ml:147ml)、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(295ml)を仕込み、60℃に加熱下、30分間撹拌して脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(6.17g)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、水を加え攪拌後、分液し、水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン)で精製することにより、中間体1(15.5g)を得た。
【0240】
中間体1(15.5g)を塩化メチレン(70ml)に溶解させ、濃硫酸(1.4g)を添加した。塩化鉄(21.6g)を少量ずつゆっくりと加えた。7時間、反応後、塩化メチレン(100ml)を加え、冷メタノールに添加し、析出している結晶を濾別した。粗結晶を塩化メチレン(250ml)に溶解させ、1N塩酸(100ml)にて洗浄し、有機層をセライト濾過したのちに濃縮し、メタノールで懸洗して中間体2(7.41g)を得た。
【0241】
中間体2(7.41g)を塩化メチレン(110ml)に溶解させ、氷冷下、三臭化ホウ素(1M塩化メチレン溶液:65ml)を加えて、3時間攪拌した。反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。析出した結晶を塩化メチレン/酢酸エチル(5/1)溶液にて懸洗し、中間体3(6.58g)を得た。
【0242】
中間体3(6.58g)に塩化メチレン(130ml)を加え、無水トリフルオロメタンスルホン酸(17.8g)を添加した。さらにピリジン(4.4g)をゆっくりと加え、室温にて5時間反応した。析出している結晶を濾別し、水洗、メタノール懸洗、塩化メチレン/メタノール(1/9)懸洗2回を行い、中間体4(5.9g)を得た。
【0243】
窒素気流中、中間体4(3.88g)、4−ニトロフェニルボロン酸(2.72g)、トルエン:エタノール(48ml:48ml)、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(24ml)を仕込み、40℃に加熱下、30分間撹拌して脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.53g)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、水を加え攪拌後、析出している結晶を濾別した。さらに酢酸エチルで懸洗することにより、中間体5(2.35g)を得た。
【0244】
中間体5(2.35g)をN,N−ジメチルホルムアミド(195ml)に溶解させ、5%Pd/C(1.06g)を仕込み、水素で系内を置換後、水素下、70℃で4時間反応させた。反応液を窒素置換後、セライト濾過し、濾液を約30mlまで濃縮し、メタノールに添加した。さらに水を添加して晶出した結晶を濾別することにより、目的物10(1.03g)を得た。
【0245】
(合成例11)
【化44】

【0246】
目的物10(1.82g)、2−ブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(3.7g)、およびtert−ブトキシナトリウム(0.94g)、及びトルエン(25ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.09g)のトルエン4ml溶液に、ジフェニルホスフィノフェロセン(0.20g)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、5時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、テトラヒドロフランを加えてセライト濾過し、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、得られた粗結晶をn−ヘキサン、メタノールにて懸洗して、目的物11(1.34g)を得た。
【0247】
(合成例12)
【化45】

【0248】
目的物10(0.50g)、3−(3−ブロモフェニル)ベンゾシクロブテン(0.63g)、tert−ブトキシナトリウム(0.26g)、及びトルエン(15ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.02g)のトルエン1ml溶液に、ジフェニルホスフィノフェロセン(0.05g)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、6時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、テトラヒドロフランを加えてセライト濾過し、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することにより、目的物12(0.12g)を得た。
【0249】
(合成例13)
【化46】

【0250】
窒素気流中、目的物8(2.8g)、4−ブロモベンゾシクロブテン(3.65g)、炭酸カリウム(2.73g)、(n−CBr(2.67g)、脱水DMF(76ml)、及びパラジウム触媒 Pd(diphenylClNOH)Cl15.1mgを130℃8時間反応後、室温で反応液に酢酸エチル(100ml)および水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml)で2回抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、目的物13(trans、1.7g、LC:98%)を得た。
【0251】
(合成例14)
【化47】

【0252】
窒素気流中、目的物13(1.6g)、酢酸(30ml)、エタノール(30ml)、塩酸(1N、1ml)、水(4ml)および還元鉄(5.5g)を2時間還流した。室温で反応液を濾過し、酢酸エチル(100ml)および水(100ml)を加え攪拌後、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で中和し、分液し、水層を酢酸エチル(50ml)で2回抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製することにより、目的物14(1.3g)を得た。
【0253】
(合成例15)
【化48】

【0254】
反応容器内に3−ブロモフェニルボロン酸(10.0g)、m−ジヨードベンゼン(8.21g)、炭酸ナトリウム(15.83g)、トルエン(150mL)、エタノール(150mL)、水(75mL)を仕込み、減圧脱気を行った後、窒素雰囲気下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.726g)を加えた。80℃で約4.5時間攪拌した後、室温まで放冷した。反応液に水を加え、酢酸エチル−ヘキサン混合溶剤で抽出後、得られた有機層を濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製し、目的物15(7.39g)を得た。
【0255】
(合成例16)
【化49】

【0256】
窒素雰囲気下、p−ジブロモベンゼン(50g)、THF(740mL)を仕込み、−78℃に冷却した。1.55Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液(125.7mL)を約40分かけて滴下した。さらに約1時間攪拌した後、アントラキノン(15.44g)を加えた。さらに約3時間攪拌後、約1時間かけて室温まで昇温した。さらに約3.5時間撹拌した後、水(100mL)を加え、THFを減圧留去した。酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮した。得られた粗生成物を、塩化メチレン−ヘキサン混合溶剤で懸濁洗浄した後、次いでメタノールで懸濁洗浄することにより、目的物16(25.8g)を得た。
【0257】
(合成例17)
【化50】

【0258】
窒素雰囲気下、目的物16(25.7g)、酢酸(400mL)、及び亜鉛粉末(27.4g)を仕込み、加熱還流した。8時間後、酢酸(190mL)を追加し、さらに約8時間加熱還流した。室温まで放冷し、水(400mL)を加え、ろ取、水洗した。得られた固体を塩化メチレン(2.5L)に懸濁し、不溶物をろ別し、ろ液を濃縮した。得られた粗生成物を塩化メチレン(3L)に溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン)で精製した後、塩化メチレンで懸濁洗浄、次いでクロロホルム懸濁洗浄を行うことにより、目的物17(10.7g)を得た。
【0259】
(合成例18)
【化51】

【0260】
窒素雰囲気下、m−ジブロモベンゼン(25g)、THF(370mL)を仕込み、−78℃に冷却した。1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液(61mL)を約10分かけて滴下した。さらに約1時間攪拌した後、アントラキノン(7.72g)を加えた。さらに約1時間攪拌後、約1時間かけて室温まで昇温した。さらに約3.5時間撹拌した後、水(150mL)を加え、THFを減圧留去した。酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮した。得られた粗生成物を、塩化メチレン−ヘキサン混合溶剤で懸濁洗浄することにより、目的物18(17.4g)を得た。
【0261】
(合成例19)
【化52】

【0262】
窒素雰囲気下、目的物18(17.4g)、酢酸(242mL)、及び亜鉛粉末(18.6g)を仕込み、加熱還流した。10.5時間後、室温まで放冷し、水(250mL)を加え、ろ取、水洗した。得られた固体を塩化メチレン(500mL)に懸濁し、不溶物をろ別し、ろ液を濃縮し、ヘキサンで懸濁洗浄した。得られた粗生成物を塩化メチレン(200mL)に溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン)に供した。得られた固体を1,2−ジメトキシエタン(102mL)に加熱還流下で完全に溶解させ、ゆっくりと室温まで冷却し、析出した固体をろ取することにより、目的物19(3.7g)を得た。
【0263】
(合成例20)
【化53】

【0264】
反応容器内に1,3,5−トリブロモベンゼン(22g)、3−ビフェニルボロン酸(4.95g)、トルエン(110ml)、及びエタノール(100ml)を仕込み窒素バブリングを10分行い脱気を行った。別の容器に炭酸ナトリウム(7.9g)と水(38ml)を加え攪拌しながら、窒素バブリングにより脱気を行った。この水溶液を反応容器に加え、すぐにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(866mg)を加えて昇温し加熱還流を行った。反応終了後、反応液に水を加え、トルエンで抽出した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン)にて精製し、目的物20(7.51g)を得た。
【0265】
(合成例21)
【化54】

【0266】
目的物20(7.0g)、ビス(ピナコラト)ジボロン(11.68g)酢酸カリウム(9.71g)、ジメチルフォルムアミド(100ml)を加え窒素バブリングをしながら攪拌を開始した。15分後、窒素バブリングをフローに変え、PdCl(dppf)・CHCl(660mg)を加え80℃まで昇温した。反応終了後放冷し、ジクロロメタンと水により抽出洗浄を行い、硫酸ナトリウムにより乾燥後濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することにより、目的物21(10g)を得た。
【0267】
(合成例22)
【化55】

【0268】
反応容器内に目的物21(5.8g)、4−ブロモヨードベンゼン(7.5g)、トルエン(72ml)、及びエタノール(72ml)を仕込み窒素バブリングを10分行い脱気を行った。別の容器に炭酸ナトリウム(7.6g)と水(36ml)を加え攪拌しながら、窒素バブリングにより脱気を行った。この水溶液を反応容器に加え、すぐにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.0g)を加えて昇温し加熱還流を行った。反応終了後、反応液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、目的物22(3.9g)を得た。
【0269】
(合成例23)
【化56】

【0270】
反応容器内にトルエン(100ml)、エタノール(50ml)、4−ブロモフェニルボロン酸(9.99g)、1,3−ジヨードベンゼン(8.41g)、炭酸ナトリウム(8.41g)、及び水35mlを仕込み、窒素を吹き込み系内を十分に窒素雰囲気として、撹拌した。そこへ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.884g)を加えて昇温し、7時間加熱還流させた。
反応終了後、反応液に水を加えトルエンで抽出した。得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)にて精製し、目的物23(3.54g)を得た。
【0271】
(合成例24)
【化57】

【0272】
2−ブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(5.91g)、ジフェニルアミン(2.37g)、tert−ブトキシカリウム(2.8g)、及び1,4−ジオキサン(100ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.34g)の1,4−ジオキサン25ml溶液に、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.303g)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、3時間、加熱還流反応した。さらに、2−ブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(1.2g)を添加後、3時間、加熱還流反応した。反応液を放冷後、ろ過により不溶物を除き、カラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物24(12g)を得た。
【0273】
(合成例25)
【化58】

【0274】
目的物24(5.7g)、N,N−ジメチルホルムアミド(100ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、−5℃まで冷却した。窒素気流中、N−ブロモスクシンイミド(4.02g)のN,N−ジメチルホルムアミド(40ml)溶液を、反応液の温度を0℃以下に保ちながら滴下した。−5℃で2.5時間攪拌した。反応後、酢酸エチル及び水を加え、有機層を濃縮、カラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物25(6.4g)を得た。
【0275】
(合成例26)
【化59】

【0276】
4−ブロモ−ベンゾシクロブテン(1.4g)、ジフェニルアミン(1.3g)、tert−ブトキシナトリウム(1.6g)、及びトルエン(50ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.16g)のトルエン(7ml)溶液に、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.19g)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、8.5時間、加熱還流反応した。反応液を放冷後、ろ過により不溶物を除き、カラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物26(1.77g)を得た。
【0277】
(合成例27)
【化60】

【0278】
目的物26(1.65g)、及びN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、−5℃まで冷却した。窒素気流中、N−ブロモスクシンイミド(2.16g)のN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)溶液を、反応液の温度を0℃以下に保ちながら滴下した。−5℃で1時間攪拌した。反応後、塩化メチレン及び水を加え、有機層を濃縮、カラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物27(2.13g)を得た。
【0279】
(合成例28)
【化61】

【0280】
窒素雰囲気下の反応容器中にジクロロメタン(200ml)を加え、N−フェニルカルバゾール(2.29g)とビス(ピリジン)ヨードニウムテトラフロロボラート(7.76g)を溶解させた。次に、氷冷下でトリフロロメタンスルホン酸(1.75ml)を滴下投入し、徐々に室温まで上げながら一昼夜攪拌した。反応終了後、反応液に0.5Mチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物のジクロロメタン溶液にメタノールを加えて再沈殿させ、メタノール還流条件で沈殿物を洗浄し、目的物28(4.00g)を得た。
【0281】
(合成例29)
【化62】

【0282】
目的物28(4.00g)、p−ブロモフェニルボロン酸(3.05g)、トルエン(30ml)、エタノール(15ml)、及び2.6M炭酸ナトリウム水溶液(20ml)を加え、超音波洗浄器で振動を与えながら真空脱気し、窒素で系内を置換した。そこへ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.27g)を加え75℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、反応液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン)にて単離し、熱ジメトキシエタンからの再結晶精製により目的物29(2.25g)を得た。
【0283】
(合成例30)
【化63】

【0284】
窒素雰囲気下の反応容器中にジエチルエーテル(100ml)を加え、3,3’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル(9.00g)を溶解させ、−78℃に冷却した。そこへ1.6M n−ブチルリチウム ヘキサン溶液(40ml)を15分かけて滴下投入し、−78℃で1時間攪拌した後、0℃まで昇温して更に2時間攪拌した。一方、窒素雰囲気下でホウ酸トリメチル(33ml)をジエチルエーテル(160ml)に溶かし−78℃に冷却した溶液を別の容器で調製し、そこへ上述の混合液を45分かけて滴下投入し、液温度を徐々に室温に戻しながら4時間攪拌した。反応終了後、0℃で反応液に3N塩酸(144ml)を徐々に加え、室温で4時間攪拌後、白色沈殿を3Gガラスロートで回収した。水とジエチルエーテルで洗浄後乾燥し、目的物30(3.16g)を得た。
【0285】
(合成例31)
【化64】

【0286】
目的物30(2.85g)、p−ヨードブロモベンゼン(6.68g)、トルエン(40ml)、エタノール(20ml)、及び2.6M炭酸ナトリウム水溶液(30ml)を加え、超音波洗浄器で振動を与えながら真空脱気し、窒素で系内を置換した。そこへ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.41g)を加え75℃で6時間加熱撹拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え、トルエン層を0.1N塩酸と水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)にて単離し、目的物31(3.01g)を得た。
【0287】
(合成例32)
【化65】

【0288】
合成例4で得られた目的物4(3.64g、10.4mmol)、合成例2で得られた目的物2(0.51g、2.6mmol)、4,4’−ジブロモビフェニル(2.03g、13mmol)、tert−ブトキシナトリウム(2.88g、30.0mmol)、及びトルエン(20ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.148g、0.0143mmol)のトルエン15ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.210g、0.104mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(1.91g、6.1mmol)を追添加した。1時間加熱還流した後、重合が始まったことが確認できたので、さらに、4,4’−ジブロモビフェニル(0.041g、0.13mmol)を追添加し、さらに1時間加熱還流反応させた。反応液を放冷して、反応液をメタノール200ml中に滴下し、粗ポリマー1を晶出させた。
【0289】
得られた粗ポリマー1をトルエン200mlに溶解させ、ブロモベンゼン(2.04g、13mmol)、tert−ブトキシナトリウム(1.50g、16mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.108g、10.4 mmol)のトルエン10ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.026g、13mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(3.82g、22.6mmol)のトルエン(2ml)溶液を添加し、さらに、8時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、メタノールに滴下し、エンドキャップした粗ポリマー1を得た。
【0290】
このエンドキャップした粗ポリマー1をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的ポリマー1を得た(1.01g)。なお、目的ポリマー1の重量平均分子量及び数平均分子量を測定したところ、以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=43300
数平均分子量(Mn)=26400
分散度(Mw/Mn)=1.2
【0291】
(合成例33〜39)
合成例32の合成法に従い、モノマー体(即ち、目的物4、目的物2及び4,4’−ジブロモビフェニル)を下記表−1の化合物に変え、目的ポリマー2〜7及びAを得た。得られた目的ポリマーについても表−1にまとめた。
【0292】
【化66】

【0293】
【表1】

【0294】
(合成例40)
【化67】

【0295】
合成例4で得られた目的物4(7.5g、21.5mmol)、合成例2で得られた目的物2(0.22g、1.1mmol)、4,4’−ジブロモスチルベン(3.82g、11.3mmol)、tert−ブトキシナトリウム(6.95g、72.3mmol)、及びトルエン(120ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.06g、0.06mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.33g、0.45mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、3時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(3.31g、10.6mmol)を追添加した。1.5時間加熱還流した後、重合が始まったことが確認できたので、さらに、4,4’−ジブロモビフェニル(0.07g、0.2mmol)を1.5時間おきに計3回追添加した。4,4’−ジブロモビフェニルを全量添加後、さらに1時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマー8を晶出させた。
【0296】
得られた粗ポリマー8をトルエン180mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.71g、4.5mmol)、tert−ブトキシナトリウム(3.5g、36.4mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.12g、0.1mmol)のトルエン10ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.18g、0.9mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(3.82g、22.6mmol)のトルエン(2ml)溶液を添加し、さらに、8時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(250ml/50ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー8を得た。
【0297】
このエンドキャップした粗ポリマー8をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的ポリマー8を得た(0.9g)。なお、目的ポリマー8の重量平均分子量及び数平均分子量を測定したところ、以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=60000
数平均分子量(Mn)=27000
分散度(Mw/Mn)=2.2
【0298】
(合成例41〜46)
合成例40の合成法に従い、モノマー体を下記表−2の化合物に変え、アリールアミンポリマーとして目的ポリマー9〜14を得た。得られた目的ポリマーについても表−2にまとめた。
【0299】
【化68】

【0300】
【表2】

【0301】
(合成例47〜56)
合成例32、40の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表−3に従い、各種アリールアミンポリマー目的物15〜24を得た。得られたポリマーについて表−3にまとめた。
【0302】
【化69】

【0303】
【表3】

【0304】
(合成例57)
合成例32、40の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表−4に従い、アリールアミンポリマー目的物25を得た。得られたポリマーについて表−4にまとめた。
【0305】
【化70】

【0306】
【表4】

【0307】
(合成例58〜60)
合成例32、40の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表−5に従い、アリールアミンポリマー目的物26、B及びCを得た。得られたポリマーについて表−5にまとめた。
【0308】
【化71】

【0309】
【表5】

【0310】
(合成例61)
合成例32、40の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表−6に従い、アリールアミンポリマー目的物27を得た。得られたポリマーについて表−6にまとめた。
【0311】
【化72】

【0312】
【表6】

【0313】
(合成例62)
合成例32、40の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表−7に従い、アリールアミンポリマー目的物28を得た。得られたポリマーについて表−7にまとめた。
【0314】
【化73】

【0315】
【表7】

【0316】
(合成例63)
【化74】

窒素気流中、化合物1(10.0g)、化合物2(5.08g)、トルエン:エタノール(100ml:50ml)及びNaCO(2M)30mlの混合物を、60℃に加熱下30分間撹拌し、Pd(PPh1.5gを加え、6時間還流して反応させた。室温まで放冷した後、反応液に塩化メチレン(100ml)および水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を塩化メチレン(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=15/1)で精製することにより、淡黄色結晶の化合物3(11.0g)を得た。
【0317】
(合成例64)
【化75】

化合物3(10.3g)、テトラヒドロフラン(50ml)及びエタノール(50ml)の混合物に10%Pd/C(4.6g)を加え、さらに50℃でNHNHO(16.3g)をゆっくり滴下し、この温度で3時間反応させた。室温で反応液を濾過し、濾液を濃縮し、メタノールを入れ懸濁洗浄した。そして、濾取、乾燥することにより、化合物4(8.5g)を得た。
【0318】
(合成例65)
【化76】

化合物4(3.877g、9.109mmol)、化合物5(0.271g、1.388mmol)、化合物6(1.64g、5.248mmol)、tert−ブトキシナトリウム(2.96g、30.77mmol)及びトルエン(30ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.1g、0.096mmol)のトルエン2ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.156g、0.77mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.0時間、加熱還流反応させた。化合物4〜6が消失したことを確認し、化合物7(1.24g、5.248mmol)を追添加した。4時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマーDを晶出させた。
【0319】
得られた粗ポリマーDをトルエン120mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.33g、2.99mmol)、tert−ブトキシナトリウム(2.96g、33.77mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.1g、0.096mmol)のトルエン1ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.156g、0.77mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(2.06g、10.496mmol)のトルエン(3ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応させた。反応液を放冷し、エタノール/水(250ml/50ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーDを得た。
【0320】
このエンドキャップした粗ポリマーDをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的ポリマーDを得た(1.9g)。
重量平均分子量(Mw)=39000
数平均分子量(Mn)=21600
分散度(Mw/Mn)=1.8
【0321】
(合成例66)
【化77】

化合物8(13.2g)及び塩化メチレン(120ml)の混合物に室温で臭素(25.0g)含有の塩化メチレン40mlを滴下し、30℃で48時間反応させた。反応後、析出物を濾取、メタノールで懸濁洗浄した。そして、濾取、乾燥することにより、化合物9(10.5g)を得た。
【0322】
(合成例67)
【化78】

窒素気流中、化合物9(10.5g)、化合物10(26.1g)、ジメチルスルホキシド(250ml)、テトラブチルアンモニウムブロミド(2.3g)に水酸化ナトリウム7.2gの11ml水溶液をゆっくり滴下、その後50℃で3時間反応した。室温まで放冷した後、反応液をろ過、ろ液に酢酸エチル(200ml)および水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=15/1)で精製することにより、淡黄色固体の化合物11(13.6g)を得た。
【0323】
(合成例68)
【化79】

化合物12(16.2g、82.97mmol)、ブロモベンゼン(12.38g、78.82mmol)、tert−ブトキシナトリウム(21.5g、224.0mmol)及びトルエン(300ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.26g、0.249mmol)のトルエン5ml溶液に、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.55g、0.996mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、3.0時間、加熱還流反応した。室温まで放冷した後、反応液に酢酸エチル(200ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=4/1)で精製することにより、淡黄色油状の化合物13(18.8g)を得た。
【0324】
(合成例69)
【化80】

化合物11(8.83g、17.16mmol)、化合物13(4.89g、18.0mmol)、tert−ブトキシナトリウム(4.45g、46.33mmol)及びトルエン(160ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.09g、0.086mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.139g、0.69mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、3.0時間、加熱還流反応した。室温まで放冷した後、反応液に酢酸エチル(200ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=4/1)で精製することにより、淡黄色油状の化合物14(12.0g)を得た。
【0325】
(合成例70)
【化81】

化合物14(12.0g)、テトラヒドロフラン(65ml)及びエタノール(65ml)の混合物に10%Pd/C(0.64g)を加え、50℃に昇温した後、NHNHO(9.7g)をゆっくり滴下し、50℃で8時間反応させた。室温で反応液を濾過し、濾液に酢酸エチル(200ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することにより、化合物15(9.7g)を得た。
【0326】
(合成例71)
【化82】

化合物11(4.80g、9.33mmol)、ジフェニルアミン(1.58g、9.33mmol)、tert−ブトキシナトリウム(1.26g、13.1mmol)及びトルエン(45ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。
一方、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(54mg、0.09mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(76mg、0.36mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、6時間、加熱還流反応した。室温まで放冷した後、活性白土及びトルエンを加え攪拌した。濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=4/1)で精製することにより、淡黄色油状の化合物16(3.63g)を得た。
【0327】
(合成例72)
【化83】

化合物16(3.63g)、テトラヒドロフラン(23ml)及びエタノール(23ml)の混合物に20%Pd/C(0.4g)を加え、50℃に昇温した後、NHNHO(6.8g)をゆっくり滴下し、50℃で4時間反応させた。室温で反応液を濾過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製することにより、化合物17(2.85g)を得た。
【0328】
(合成例73)
【化84】

化合物15(3.403g、5.04mmol)、化合物17(1.0g、1.746mmol)、4,4’−ジブロモビフェニル(1.06g、3.394mmol)、tert−ブトキシナトリウム(2.1g、21.72mmol)及びトルエン(30ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.07g、0.068mmol)のトルエン2ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.11g、0.543mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2.5時間、加熱還流反応した。化合物15及び17が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(1.03g)を追添加した。30分間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマーEを晶出させた。
【0329】
得られた粗ポリマーEをトルエン120mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.21g)、tert−ブトキシナトリウム(2.1g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.07g)のトルエン1ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.11g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(1.15g)のトルエン(3ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応させた。反応液を放冷し、エタノール/水(250ml/50ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーEを得た。
【0330】
このエンドキャップした粗ポリマーEをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的ポリマーEを得た(2.3g)。
重量平均分子量(Mw)=31900
数平均分子量(Mn)=21260
分散度(Mw/Mn)=1.5
【0331】
(比較例用ポリマー)
合成例32、40の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表−8に従い、各種比較ポリマー1〜3を得た。得られたポリマーについて表−8にまとめた。
【化85】

【0332】
【表8】

【0333】
[II.有機電界発光素子の評価]
[有機電界発光素子の作製]
(実施例1)
以下に説明する要領で、図1に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成し、ITO基板を得た。
パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0334】
下の構造式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子材料(重量平均分子量:26500,数平均分子量:12000)、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート及び安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を調製した。この正孔注入層形成用塗布液を下記の成膜条件で陽極2上にスピンコートにより塗布して、膜厚30nmの正孔注入層3を得た。
【0335】
【化86】

【0336】
<正孔注入層形成用塗布液>
溶剤 安息香酸エチル
塗布液濃度 P1:2.0重量%
A1:0.8重量%
【0337】
<正孔注入層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 3時間
【0338】
引き続き、以下の構造式に示すアリールアミンポリマー(H1)(合成例32で合成された目的ポリマー1と同様の構造式であるポリマー:重量平均分子量43000、分散度1.6)を含有する有機電界発光素子用組成物として正孔輸送層用組成物を調製し、下記の成膜条件でスピンコートにより塗布して、加熱により架橋させることにより膜厚20nmの正孔輸送層4を形成した。
【0339】
【化87】

【0340】
<有機電界発光素子用組成物>
溶剤 トルエン
固形分濃度 0.4重量%
【0341】
<正孔輸送層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
【0342】
次に、発光層5を形成するにあたり、以下に示す有機化合物(C1)、(C2)および(D1)を用いて下記に示す発光層用組成物を調製し、以下に示す成膜条件で正孔輸送層4上にスピンコートして膜厚50nmで発光層5を得た。
【0343】
【化88】

【0344】
<発光層用組成物>
溶剤 キシレン
塗布液濃度 有機化合物(C1):1.0重量%
有機化合物(C2):1.0重量%
有機化合物(D1):0.1重量%
【0345】
<発光層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 減圧下(0.1MPa)、130℃、1時間
【0346】
ここで、発光層5までを成膜した基板を、真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が1.3×10−4Pa以下になるまで排気した後、下記に示す構造を有する有機化合物(C3)を真空蒸着法によって発光層5の上に積層し、正孔阻止層6を得た。蒸着速度は1.4〜1.5Å/秒の範囲で制御し、膜厚は5nmとした。また、蒸着時の真空度は1.3×10−4Paであった。
【0347】
【化89】

【0348】
続いて、下記に示す構造を有する有機化合物(C4)を加熱して正孔阻止層6上に蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した。蒸着時の真空度は1.3×10−4Pa、蒸着速度は1.6〜1.8Å/秒の範囲で制御し、膜厚は30nmとした。
【0349】
【化90】

【0350】
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を一度取り出し、別の蒸着装置に設置し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、装置内の真空度が2.3×10−4Pa以下になるまで排気を行った。
【0351】
電子注入層8として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.1Å/秒、0.5nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。蒸着時の真空度は2.6×10−4Paであった。
次に、陰極9としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度1.0〜4.9Å/秒の範囲で制御し、膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。蒸着時の真空度は2.6×10−4Paであった。以上の2層の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0352】
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
【0353】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光特性は以下の通りである。
100cd/mでの電圧:5.8V
100cd/mでの輝度:17.9cd/A
100cd/mでの電力効率:9.7lm/W
素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、有機化合物(D1)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.304,0.628)であった。
【0354】
(実施例2)
実施例1において、正孔輸送層4を以下の要領で形成したほかは、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。
【0355】
以下の構造式に示すアリールアミンポリマー(H2)(合成例33で合成された目的ポリマー2と同様の構造式であるポリマー:重量平均分子量42000、分散度2.5)を含有する有機電界発光素子用組成物として正孔輸送層用組成物を調製し、下記の成膜条件でスピンコートにより塗布して、加熱により架橋させることにより膜厚20nmの正孔輸送層4を形成した。
【0356】
【化91】

【0357】
<有機電界発光素子用組成物>
溶剤 トルエン
固形分濃度 0.4重量%
【0358】
<正孔輸送層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
【0359】
このようにして得られた2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子の発光特性は以下の通りである。
100cd/mでの電圧:5.1V
100cd/mでの輝度:24.1cd/A
100cd/mでの電力効率:14.9lm/W
素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、有機化合物(D1)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.299,0.628)であった。
【0360】
(比較例1)
実施例1において、正孔輸送層4を以下の要領で形成したほかは、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。
【0361】
以下の構造式に示す比較ポリマー(H3)((比較例用ポリマー)の項で合成された比較ポリマー2と同様の構造式であるポリマー:重量平均分子量47000、分散度1.6)を含有する有機電界発光素子用組成物として正孔輸送層用組成物を調製し、下記の成膜条件でスピンコートにより塗布して、加熱により架橋させることにより膜厚20nmの正孔輸送層を形成した。
【0362】
【化92】

【0363】
<有機電界発光素子用組成物>
溶剤 トルエン
固形分濃度 0.4重量%
【0364】
<正孔輸送層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
【0365】
このようにして得られた2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子の発光特性は以下の通りである。
100cd/mでの電圧:5.3V
100cd/mでの輝度:13.0cd/A
100cd/mでの電力効率:7.8lm/W
素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、有機化合物(D1)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.304,0.628)であった。
【0366】
(実施例1,2及び比較例1のまとめ)
実施例1、実施例2、および比較例1において作製した有機電界発光素子の特性、および初期輝度を2500cd/mとして直流駆動試験を行い、輝度が半減するまでの時間(駆動寿命)を表−9にまとめる。なお、直流駆動試験とは、室温で輝度が初期輝度になる直流電流を流し続けて光らせる試験である。
【表9】

【0367】
表1より、本発明に基づいて作製された有機電界発光素子は低電圧、高効率、長寿命であることが分かる。
【0368】
[III.電荷移動度の評価]
[電荷移動度測定用素子の作成]
図2は実施例3,4及び比較例2,3で作製した測定用素子の層構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品。)に、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングしてITO層を陽極2として形成し、ITO基板を得た。
このITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させた。
【0369】
次に、表−10に示すように、サンプル層10の材料をトルエンに溶解させて塗布液を調製し、これを、陽極2上に、スピナ回転数:1500rpm、スピナ回転時間:30秒、スピンコート雰囲気:窒素中との条件でスピンコートし、ベークを行い、サンプル層(有機電界発光素子の正孔輸送層に相当する。)10を形成した。なお、それぞれの塗布液には、トルエンに対して0.03〜0.04重量%の表面平滑剤を添加した。表面平滑剤としては、KF−96−10cs(信越シリコーン社製)を使用した.
【0370】
【表10】

【0371】
サンプル層10を形成した素子を、真空蒸着層内に設置した。その際、陰極蒸着用のマスクである2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させた。また、内部はスクロールポンプにより装置の粗排気を行った後、ターボ分子ポンプにより装置内の真空度が9.9×10−4Pa以下になるまで排気した。
その後、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.6〜16.0Å/秒、真空度2.0〜25×10−4Paで制御して膜厚40〜80nmのアルミニウム層を陰極9として形成した。なお、以上のアルミニウム層の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0372】
引き続き、測定用素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(スリーボンド社製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、測定用素子を、陰極9が蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。以上の様にして、2mm×2mmのサイズの素子面積を有する測定用素子を作製した。
【0373】
[電荷移動度の測定]
実施例3及び4、並びに、比較例2及び3で作製した測定用素子を用いて、電荷移動度の測定を以下の通りおこなった。
電荷移動度の測定方法としては、飛行時間測定法(ToF法)を用いて測定した。測定用素子の陽極2側が高電位となるように電界強度E(V/cm)をかけた。次に、測定用素子面の陽極2に、Nd:YAGナノ秒パルスレーザーを用いて、第三高調波である355nmの波長の光を短時間照射した。そのとき発生する過渡光電流を検出し、その屈曲点を飛行時間ttr(s)とした。この飛行時間ttrと電界強度E(=V/d,V:測定用素子の陽極2と陰極9との間の電位差,d:測定用素子のサンプル層10の膜厚)から、次式を用いることにより、電荷移動度μを算出した。
【0374】
【数1】

【0375】
複数の電界強度で測定を行い、得られた電荷移動度μと電界強度Eと、下記のPoole−Frenkelの式を用いて、電界強度が160kV/cmに置ける電荷移動度を算出した。
【0376】
【数2】

【0377】
結果を表−11に示す。
【表11】

【0378】
表−11より、架橋性基を含む繰り返し単位の割合が同じ場合、本発明のアリールアミンポリマーは電荷移動度が大きいことがわかる。
【0379】
[IV.電流−電圧特性の評価]
(実施例5)
以下に説明する要領で、図2に示す単層構造の測定用素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成し、ITO基板を得た。
パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0380】
以下の構造式に示すアリールアミンポリマー(H4)(合成例56で合成された目的ポリマー24と同様の構造式であるポリマー:重量平均分子量23100、分散度1.7)2重量%と、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.06重量%を、溶剤としてのトルエンに溶解した後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、塗布組成物を作製した。この塗布組成物を上記ITO基板上にスピンコートした。スピンコートは気温23℃、相対湿度60%の大気中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。スピンコート後、オーブンにて常圧大気雰囲気中、230℃で1時間加熱した。このようにして、サンプル層(有機電界発光素子の正孔注入層に相当する。)10を形成した。
【0381】
【化93】

【化94】

【0382】
続いて、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させた。油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、クライオポンプを用いて装置内の真空度が3×10−4Pa以下になるまで排気した。
陰極9としてアルミニウムをモリブデンボートにより加熱し、蒸着速度0.5〜5Å/秒、真空度2〜3×10−4Paで制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。以上の陰極9の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの素子面積を有する測定用素子が得られた。
【0383】
得られた測定用素子をKeithley社製2400型ソースメーターに接続し、電圧を順次印加していき電流値を読み取った。この素子の電流−電圧特性を図4に表す。
【0384】
(比較例4)
アリールアミンポリマー(H4)を以下の構造式(H5)((比較例用ポリマー)の項で合成された比較ポリマー3と同様の構造式であるポリマー:重量平均分子量28000、分散度1.7)のものに代えた以外は、実施例5と同様にして、図2に示す測定用素子を作製した。
【0385】
【化95】

【0386】
得られた測定用素子を2400型ソースメーター(Keithley社製)に接続し、電圧を順次印加していき電流値を読み取った。この素子の電流−電圧特性を図4に表す。
【0387】
(実施例5及び比較例4のまとめ)
図4に示すが如く、本発明のアリールアミンポリマーを用いた実施例5の測定用素子は、比較例4の測定用素子に比べて、低い電圧で電流が流れた。このことから、本発明のアリールアミンポリマーは、電荷輸送能に優れることは明らかである。
【0388】
<有機電界発光素子の作製>
(実施例6)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
実施例1と同様にして用意したITOパターニング基板上に、まず、下の構造式(H6)に示すアリールアミンポリマー(重量平均分子量:60100、数平均分子量:34100)、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートおよび安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を調製した。この塗布液を下記条件で陽極2上にスピンコートにより成膜して、膜厚45nmの正孔注入層3を得た。
【化96】

<正孔注入層形成用塗布液>
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 H6:2.0重量%
A1:0.4重量%
<正孔注入層3の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 1時間
【0389】
引き続き、以下の構造式(H7)に示すポリマー(重量平均分子量:68000、数平均分子量:35000)を含有する正孔輸送層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜して、加熱により重合させることにより膜厚20nmの正孔輸送層4を形成した。
【化97】

<正孔輸送層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 1.4重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 30℃、1時間、窒素中
【0390】
次に、以下の構造式に示す、化合物(C5)、および(D2)を含有する発光層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜を行い、加熱することで膜厚40nmの発光層5を形成した。
【化98】

<発光層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 C5:3.40重量%
D2:0.34重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1200rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 130℃、1時間、減圧下(0.1MPa)
【0391】
ここで、発光層5までを成膜した基板を、真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が2.0×10−4Pa以下になるまで排気した後、下記に示す構造を有する有機化合物(C6)を真空蒸着法にて蒸着速度を0.8〜1.2Å/秒の範囲で制御し、発光層5の上に積層させ、膜厚10nmの正孔阻止層6を得た。
【化99】

電子輸送層7以降は実施例1と同様にして有機電界素子を作製した。
このようにして得られた2mm×2mmサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子の発光特性を表−12に示す。
【0392】
(比較例5)
実施例6において正孔注入層形成用組成物にアリールアミンポリマー(H6)の代わりに比較ポリマー(H8)(重量平均分子量:63600、数平均分子量:35100)を用いた他は、実施例6と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【化100】

得られた素子の発光特性を表−12に示す。
【0393】
【表12】

表−12に示すが如く、本発明のアリールアミンポリマー用いて作製した有機電界発光素子は駆動電圧が低く、電流効率が高く、更に駆動寿命が長いことが分かる。
【0394】
(実施例7)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
実施例1と同様にして用意したITOパターニング基板上に、まず、以下の構造式(H6)に示すアリールアミンポリマー(重量平均分子量:60100、数平均分子量:34100)、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートおよび安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を調製した。この塗布液を下記条件で陽極2上にスピンコートにより成膜して、膜厚45nmの正孔注入層3を得た。
【化101】

<正孔注入層形成用塗布液>
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 H6:2.0重量%
A1:0.4重量%
<正孔注入層3の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 1時間
【0395】
引き続き、以下の構造式(H9)に示すアリールアミンポリマー(重量平均分子量:41000、数平均分子量:28000)を含有する正孔輸送層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜して、加熱により重合させることにより膜厚20nmの正孔輸送層4を形成した。
【化102】

<正孔輸送層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 1.4重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 230℃、1時間、窒素中
【0396】
次に、以下の構造式に示す、化合物(C6)及び(D2)を含有する発光層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜を行い、加熱することで膜厚40nmの発光層5を形成した。
【化103】

<発光層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 C7:3.20重量%
D2:0.32重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1200rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 130℃、1時間、減圧下(0.1MPa)
【0397】
正孔阻止層6以降は実施例6と同様にして有機電界素子を作製した。
このようにして得られた2mm×2mmサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子の発光特性を表−13に示す。
【0398】
(比較例6)
実施例7において正孔輸送層形成用組成物にアリールアミンポリマー(H9)の代わりに比較ポリマー(H7)を用いた他は、実施例6と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【化104】

得られた素子の発光特性を表−13に示す。
【0399】
【表13】

【0400】
表−13に示すが如く、本発明のアリールアミンポリマー用いて作製した有機電界発光素子は駆動電圧が低く、電流効率が高いことが分かる。
【0401】
(実施例8)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
実施例1と同様にして用意したITOパターニング基板上に、まず、以下の構造式(H10)に示すアリールアミンポリマー(重量平均分子量:31900、数平均分子量:21260)、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートおよび安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を調製した。この塗布液を下記条件で陽極2上にスピンコートにより成膜して、膜厚35nmの正孔注入層3を得た。
【化105】

<正孔注入層形成用塗布液>
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 H10:2.0重量%
A1:0.4重量%
<正孔注入層3の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 1時間
【0402】
引き続き、以下の構造式(H7)に示すポリマー(重量平均分子量:68000、数平均分子量:35000)を含有する正孔輸送層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜して、加熱により重合させることにより膜厚15nmの正孔輸送層4を形成した。
【化106】

<正孔輸送層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 1.2重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 230℃、1時間、窒素中
【0403】
次に、以下の構造式に示す、化合物(C8)、(C9)及び(D3)を含有する発光層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜を行い、加熱することで膜厚40nmの発光層5を形成した。
【化107】

<発光層形成用塗布液>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 C8:3.75重量%
C9:1.25重量%
D3:0.25重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 130℃、1時間、減圧下(0.1MPa)
【0404】
正孔阻止層6以降は実施例6と同様にして有機電界素子を作製した。
このようにして得られた2mm×2mmサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子の発光特性を表−14に示す。
【0405】
(比較例7)
実施例8において正孔注入層形成用組成物にアリールアミンポリマー(H10)の代わりに比較ポリマー(H8)を用いた他は、実施例8と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【化108】

得られた素子の発光特性を表−14に示す。
【0406】
【表14】

【0407】
表−14に示すが如く、本発明のアリールアミンポリマーを用いて作製した有機電界発光素子は、駆動寿命が長いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0408】
本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や、面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0409】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 サンプル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を有するアリールアミンポリマーであって、
Ar及び/又はArに置換基として架橋性基を有する
ことを特徴とするアリールアミンポリマー。
【化1】

(式(1)及び式(2)中、
Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
〜Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
5Aは、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
m及びnは、各々独立に、1以上の整数を表す。)
【請求項2】
重量平均分子量(Mw)が20,000以上であり、
分散度(Mw/Mn;Mnは数平均分子量を表す。)が2.5以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のアリールアミンポリマー。
【請求項3】
前記架橋性基が、下記架橋性基群Tの中から選ばれる基である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアリールアミンポリマー。
【化2】

(前記式中、
〜Rは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表し、
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアリールアミンポリマーからなる
ことを特徴とする有機電界発光素子材料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアリールアミンポリマーを含有する
ことを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
【請求項6】
基板と、陽極と、1層又は2層以上の有機層と、陰極とをこの順に備える有機電界発光素子において、
該有機層の少なくとも一層が、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアリールアミンポリマーを架橋した網目状ポリマーを含む
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項7】
前記網目状ポリマーを有する層が、正孔注入層又は正孔輸送層である
ことを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記の正孔注入層及び正孔輸送層並びに発光層を備え、
前記の正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成された
ことを特徴とする請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備える
ことを特徴とする有機ELディスプレイ。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備える
ことを特徴とする、有機EL照明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−155985(P2010−155985A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276927(P2009−276927)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】