説明

アリールアルデヒドを水素化するための触媒、その使用、及び方法

本発明は、カルボキシアリールアルデヒドをヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸への選択性で水素化するための触媒及びその使用並びに方法を提供する。この触媒はイリジウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシアリールアルデヒドを、ヒドロキシアルキル芳香族カルボン酸への選択性で水素化するための方法、触媒、及び触媒の使用、並びに幾つかの態様においては、場合によっては芳香族カルボン酸の存在下においてイリジウム又はロジウムを含む触媒を用いて、カルボキシベンズアルデヒドを、ヒドロキシメチル安息香酸を含む生成物に転化させることに関する。
【背景技術】
【0002】
p−及びm−ヒドロキシメチル安息香酸(それぞれpHMBA及びmHMBA)のようなヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸は、対応するポリベンゾエート及びポリ(p−メチレンベンゾエート)のホモポリマーを合成するため、並びにUS−4,528,361におけるようにラクタムと共重合させるための重要な原材料である。US−4,448,987においては、レニウム触媒を用いるアリールジカルボン酸の選択水素化によってヒドロキシメチルアリールモノカルボン酸を製造することが開示されている。ヒドロキシメチル安息香酸はまた、パラ又はメタキシレンのようなキシレン類の、テレ及びイソフタル酸(これらは繊維、包装、及び成形樹脂用途のために用いられるポリエチレンテレフタレート及びコポリエステルを製造するための原材料である)のような芳香族カルボン酸への酸化における副生成物として生成する。
【0003】
US−3,584,039においては、第VIII族金属触媒の存在下、昇温及び昇圧下において、その水溶液を水素と接触させることによる4−カルボキシベンズアルデヒド(4CBA)を含む粗又は不純テレフタル酸生成物の精製において、pHMBAがp−トルイル酸(pTOL)と組み合わせて得られることが開示されている。4CBAはpHMBAに水素化され、これが水素化分解によってpTOLに転化する。US−4,933,492においては、例えばメタキシレンを含むか又はこれから誘導される供給材料をmHMBA及びm−トルイル酸(mTOL)に酸化することによって得られる3−カルボキシベンズアルデヒド(3CBA)を含む不純イソフタル酸を水素化することが開示されている。
【0004】
中国特許出願200710047875.7及び2007100439350.2(公開番号CN−101428226A及びCN−101347737A)においては、減少した水素消費で4CBAをHMBAに選択水素化することによって4CBAで汚染されたテレフタル酸を精製するための触媒としての、活性炭又はチタニアに担持されているパラジウム、及びルテニウム、ニッケル、亜鉛、又は銅が開示されている。US−4,260,817においては、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムの2以上を含む炭素担持触媒を用いて、アルデヒド置換基をヒドロキシメチル基に、次にアルキル基に水素化する(例えば、4CBA→pHMBA→pTOL)ことによって4CBAのようなアルデヒド不純物を有するテレフタル酸を精製することが記載されている。この触媒は、ヒドロキシメチル基のアルキル基への転化を推進すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,528,361号明細書
【特許文献2】米国特許第4,448,987号明細書
【特許文献3】米国特許第3,584,039号明細書
【特許文献4】米国特許第4,933,492号明細書
【特許文献5】中国特許公開101428226号
【特許文献6】中国特許公開101347737号
【特許文献7】米国特許第US−4,260,817号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
芳香族カルボン酸の精製における適用性を有するプロセスのように、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸を製造するための改良された方法が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルデヒド置換基のヒドロキシル基への水素化に関して選択性である触媒の存在下におけるカルボキシアリールアルデヒドの水素化によるヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸の改良された製造を提供する。本発明方法の幾つかの態様にしたがって製造されるヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸は、好ましくは、公知の触媒を用い、他の事項は同一であるものよりも多く、幾つかの態様においてはアルキルアリールモノカルボン酸よりも多く生成する。また、選択性は、カルボキシル基のアルキルへの転化が優勢でなく、したがってヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸への選択性でのカルボキシアリールアルデヒドの水素化が、存在する場合には芳香族カルボン酸の実質的な転化なしに進行するようなものである。水素化副生成物及び存在していてもよい芳香族カルボン酸を含む反応混合物からのヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸の分離は、ヒドロキシアルキルアリール酸と対応する芳香族酸及びアルキルアリールモノカルボン酸のような他の種の溶解度の違いによって促進される。また、水素化生成物とテレフタル酸又はイソフタル酸のような芳香族カルボン酸との共結晶化における違いも、芳香族カルボン酸が存在する本発明の幾つかの態様において向上した分離に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一態様においては、本発明は、カルボキシアリールアルデヒドを含む供給流を、イリジウム又はロジウムを含む触媒の存在下で水素と接触させて、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸を含む生成物を形成することを含む、ヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸を製造する方法を提供する。好ましい態様においては、触媒は更にパラジウムを含み、及び/又は、触媒の存在下における供給流と水素の接触は芳香族カルボン酸の存在下で行う。触媒がイリジウム又はロジウムに加えてパラジウムを含む本発明の幾つかの態様は、パラジウムのみを含む触媒を用い他の事項は同一である場合よりも大きなヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸への選択率を与える。
【0009】
より具体的な態様においては、本発明は、カルボキシベンズアルデヒドを含む供給流を、イリジウム又はロジウム、好ましくはイリジウム又はロジウムに加えてパラジウムを含む触媒の存在下で水素と接触させて、ヒドロキシメチル安息香酸を含む生成物を形成することを含む、ヒドロキシメチル安息香酸を製造する方法を提供する。触媒がイリジウム又はロジウムとパラジウムを含む態様においては、ヒドロキシメチル安息香酸への選択率は、パラジウム、イリジウム、又はロジウム単独を有し、他の事項が同一である触媒のものよりも高い。
【0010】
本発明の幾つかの態様はまた、カルボキシアリールアルデヒドを水素と接触させる間に芳香族カルボン酸を存在させる方法も提供する。好ましくは、かかる方法においては、カルボキシアリールアルデヒドは、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸への選択性で、且つアルキル芳香族又は環水素化種への芳香族カルボン酸の実質的な損失なしに転化する。芳香族カルボン酸は、本方法のためのカルボキシアリールアルデヒド含有供給流の一部としてか、又は他の源から存在させることができる。
【0011】
他の態様においては、本発明は、芳香族カルボン酸、及び少なくとも1種類の芳香族アルデヒドを含む不純物を含む供給流を、イリジウム又はロジウムを含む触媒の存在下で水素と接触させて、芳香族カルボン酸及びヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸を含む生成物をそれへの向上した選択率で形成することを含む、芳香族カルボン酸を製造する方法を提供する。幾つかの態様においては、本発明による選択水素化は、例えばp−若しくはm−キシレン又はそれらの部分酸化誘導体の酸化によって製造される不純又は粗テレフタル酸又はイソフタル酸(TA又はIA)のようなアリールアルデヒド不純物を含むか、或いは、例えばカルボキシベンズアルデヒド、芳香族ジアルデヒド、又は両方のようなアルデヒド不純物、特に例えばp−キシレン若しくはその部分酸化誘導体或いは組合せを含む供給材料の酸化によって得られる粗TA及び4CBAを含む不純物を含む不純芳香族カルボン酸の、アルデヒド不純物のpHMBAへのそれへの向上した選択率での水素化による精製において適用される。
【0012】
本発明による方法にはまた、好ましくは、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸を好ましくはアルキルアリールモノカルボン酸よりも多く含む液相を固相生成物から分離する固−液分離法によって、反応生成物混合物からヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸を分離することを含ませることもできる。かかる方法による分離は、他のプロセス操作又は工程と適合しうる溶媒中におけるアルキルアリールモノカルボン酸又は芳香族カルボン酸よりも大きなヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸の溶解度によって促進される。本発明は、アルキルアリールモノカルボン酸のレベルがその分離を簡単にするか又は不要にするのに十分に低く、それによって簡単な分離装置、低下した圧力、又は分離のための他のより温和な条件の利用を可能にする態様を包含する。
【0013】
本発明によるか又はこれにしたがって用いる触媒はイリジウム又はロジウムを含む。幾つかの態様に関する好ましい触媒は更にパラジウムを含む。カルボキシアリールアルデヒドを含む供給流を芳香族カルボン酸の存在下で水素と接触させる場合には、担持触媒が好ましい。かかる態様においては、粒子状担体材料上に担持されているイリジウム及びパラジウムを含む触媒が好ましい。
【0014】
より詳しくは、本発明は、アリールアルデヒドをヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸への選択性で水素化誘導体へ転化させるための方法、触媒、及び触媒の使用を提供する。更に、カルボキシル基の水素化分解及び芳香環の環水素化は出発カルボキシアリールアルデヒドのアルデヒド基の水素化と比べて優勢でないので、芳香族カルボン酸の存在下での水素化は酸に対する悪影響なしに行うことができる。この点に関し、文脈によって他に示されていない限りにおいては、ここで用いる芳香族カルボン酸という用語は、カルボン酸基以外の置換基を有しない芳香族カルボン酸を指すと理解される。
【0015】
本発明方法からの反応混合物中に存在するヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸及び他の生成物若しくは化合物の水性溶媒及び他の溶媒中での異なる溶解度によって、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸生成物又は他の種の分離及び回収を容易にするか又は向上する機会が与えられる。カルボキシアリールアルデヒド不純物含有供給材料から芳香族カルボン酸を製造又は精製するための方法において本発明を適用すると、従来の方法と比べて向上したカルボキシアリールアルデヒドの水素化誘導体の分離を与えることができる。幾つかの態様においてはより低圧の分離が容易であり、プロセスの柔軟性並びに簡単な分離方法及び装置が与えられる。
【0016】
本発明にしたがって用いるのに好適なカルボキシアリールアルデヒド出発物質は、カルボン酸及びアルデヒド基で置換されている芳香環を含む。具体例としては、2−カルボキシベンズアルデヒド、3CBA、4CBA、ジカルボキシベンズアルデヒド(例えば、2,4−、2,5−、及び3,4−ジカルボキシベンズアルデヒド)のようなカルボキシベンズアルデヒド、及び3,4−無水物、並びにカルボキシナフトアルデヒドが挙げられる。カルボキシアリールアルデヒド供給物質又は出発物質は純粋か又は比較的純粋な形態であってよく、或いは、芳香族カルボン酸、及びカルボキシアリールアルデヒドが少量か又は1重量%未満の量しか存在しないアルキル置換アレーンの部分酸化生成物のような他の芳香族種を含んでいてもよい。
【0017】
カルボキシアリールアルデヒド含有出発物質を、本発明にしたがってイリジウム又はロジウムを含む触媒の存在下で水素と接触させる。接触は、好ましくは任意の形態で存在するアルデヒド出発物質を用いて行う。好ましくは、反応のために好適な溶媒中に溶解したカルボキシアリールアルデヒドを含む溶液、或いは出発物質の他の液相形態を用いる。カルボキシアリールアルデヒド溶液に関しては、水、低級アルキルモノカルボン酸、安息香酸、及びこれらの組合せが好ましく、水、及び水性の低級アルキルモノカルボン酸、特に酢酸が好ましい。溶媒中のカルボキシアリールアルデヒドの濃度は重要ではなく、所望のように変化させることができる。濃度は、一般には、出発物質が実質的に溶解するのに十分に低く、実用的なプロセス運転並びに溶媒の効率的な使用及び取扱いのために十分に高いものである。実用的な用途のためには、プロセス温度において溶液100重量部あたり約60重量部以下のカルボキシアリールアルデヒドを含む溶液が好適である。前段の合成から存在する不純物又は副生成物又は中間体のような少量で存在する芳香族カルボン酸及びカルボキシアリールアルデヒドの精製を伴う態様においては、カルボキシアリールアルデヒドは、千又は数百又は数十重量ppm(ppmw)程度の低い量で反応溶液中に存在していてよい。而して、好ましい供給溶液は、約370℃以下の温度において、約0.001重量%程度の少量乃至約60重量%以上の程度の多量、より好ましくは約0.01〜約50重量%のカルボキシアリールアルデヒドを含んでいてよい。
【0018】
カルボキシアリールアルデヒド含有出発物質と水素との接触は、バッチ、半連続、又は連続モードで行うことができる。接触は、好ましくはカルボキシアリールアルデヒドをヒドロキシアルキル芳香族酸へ、好ましくはそれへの選択性で転化させるのに有効な温度及び圧力を含む水素化条件下で行う。溶液の形態の出発物質を用いる場合には、温度は好ましくは約25〜約400℃、より好ましくは約100℃〜約370℃、より好ましくは約325℃までである。約95%以上のカルボキシアリールアルデヒドの転化率のためには、約200〜約300℃の温度が最も好ましい。液相系においては、水素との接触は、好ましくは液相を保持するのに十分な圧力において行う。全圧は、プロセスに導入される水素及び運転温度において反応混合物から蒸発除去される1種類又は複数の溶媒の蒸気の分圧の合計に少なくとも等しく、好ましくはこれよりも高い。好ましい圧力は、少なくとも大気圧、より好ましくは約500psig(約3450kPa)、更により好ましくは約1000psig(約7000kPa)、乃至約3000psig(約20800kPa)、より好ましくは約1500psig(約10400kPa)である。水素分圧は、好ましくは約1psi(約7kPa)、より好ましくは約10psi(約70kPa)、乃至約1000psi(約6890kPa)、より好ましくは500psi(約3450kPa)である。触媒の存在下で供給材料を水素と接触させるための滞留時間は重要ではない。
【0019】
本発明にしたがうカルボキシアリールアルデヒドの転化は、好都合には、供給材料、触媒、及び水素を、用いるか又は存在させることができる他の物質と一緒にそこに好適に加え、反応条件下で接触及び保持することができ、ここから反応混合物を排出するか或いはその成分を分離することができる好適な反応区域内で行う。任意の好適な反応区域を用いることができ、一般的な例は、撹拌タンク、パイプ、スラリー、バブルカラム、又は他の好適な反応器構成の内部容積である。反応器は、水素化を行う温度及び圧力、並びに酸性又は酸素化反応物質及び生成物の腐食性に耐えることができるものである。好適な反応器としては、固定床反応器、及び撹拌又は流動化触媒を用いて運転するように適合されているものが挙げられる。段階的又は仕切られた反応区域及び反応器の組合せもまた好適である。
【0020】
プロセスにおいて用いる水素は二水素であり、好都合には気体形態で用いる。また、プロセス条件下で二水素を解離するギ酸及びギ酸塩のような非気体種を用いることもできる。
【0021】
本発明による触媒はイリジウム又はロジウムを含む。イリジウム又はロジウム及び担体材料を含む担持触媒が好ましい。本発明の幾つかの態様による触媒には、1種類以上の更なる金属を含ませることができる。好ましい触媒は、イリジウム又はロジウムの一方又は両方に加えてパラジウムを含む。また、ニッケル、銅、亜鉛、ロジウム、及びそれらの組合せ、或いはパラジウムとの組み合わせも、有益な性能を与えることができる。
【0022】
担持触媒に関する金属装填量は重要ではない。実用的な装填量は、担体及び1種類又は複数の触媒金属の合計重量を基準として約0.1重量%〜約10重量%の範囲である。好ましい触媒は、約0.1〜約5重量%、より好ましくは約0.2〜約3重量%の1種類又は複数の金属を含む。
【0023】
本発明にしたがって用いる担持触媒又は成分は、任意の形態であってよいが、好ましくは粉末、粒子、ペレット、顆粒、球体(微小球体を含む)、多孔質粒子、ナノチューブ、コロイド状及び非コロイド状粉末などのような固体粒状物を含む担体材料を含む。好適な担体材料としては、炭素、炭化ケイ素、並びに、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、シリカ−アルミナ、チタニア、及びジルコニアのような耐熱性金属酸化物が挙げられる。好ましい担体は、プロセス条件及び操作工程への曝露を含む使用中における好適な性能のための物理的完全性及び金属装填量を保持する。好ましい担体としては、炭素、並びにα−アルミナ、シリカ、酸化セリウム、及びチタニア(ルチル、アナターゼ、及びそれらの複合形態を含む)のような金属酸化物が挙げられる。また、ゼオライト担体も有用であるが、本発明にしたがって用いるためには更なる安定化が有効である可能性がある。好適である可能性がある他の担体としては、高強度で酸安定性の炭化ケイ素、ジルコニア、γ−アルミナ、及び酸化亜鉛が挙げられる。商業的に入手できる炭素担体の例は、約1m/g又は更には1m/g未満乃至約1600m/gのBET表面積を有する。金属酸化物担体の表面積は、ルチルチタニアの場合の約1m/g乃至シリカに関する約500m/gまでの範囲である。
【0024】
イリジウム又はロジウム或いは組合せを含み、1種類以上の更なる金属を更に含む担持組成物は、任意の好適な方法によって製造することができる。通常は、ペレット、顆粒、押出物、又は所期の使用方法及び条件に適した他の固体形態のような担体粒子を、水、又は担体に対して不活性で容易に除去される他の溶媒中の1種類又は複数の触媒金属化合物の1種類以上の溶液と接触させ、その後、例えば雰囲気温度又は昇温において乾燥することによって溶媒を除去する。2種類以上の金属を用いる製造に関しては、全ての触媒金属塩又は化合物の単一の溶液を用いることができ、個々の触媒金属塩又は組合せの溶液を用いる同時又は逐次含侵も可能である。担体を製造するために好適な触媒金属化合物は周知であり、硝酸塩及び塩化物が挙げられ、具体例は酢酸イリジウム、イリジウム(III)アセチルアセトナート、塩化イリジウム(III)、及び酢酸ロジウム(III)(これらは全て水溶性である)である。また、ヘキサ(アセタト)−μ−オキソトリス(アクア)トリロジウム(III)アセテートも好適であり、固体形態又は水溶液で用いることができる。塩化パラジウム及び硝酸パラジウムは、パラジウム含有触媒を製造するために有用な塩の例である。
【0025】
担体を、丁度担体を湿潤させる量の1種類又は複数の触媒金属化合物の溶液と接触させ、得られる湿潤担体を乾燥する初期湿潤(乾燥)含侵法は、触媒の製造に適している。また、触媒金属粒子によって担体表面上に薄い連続又は不連続層又は被覆を形成する卵殻型含侵も好適である。炭素担体に関しては、主として例えば担持触媒粒子の体積の最も外側の10〜20%の担体表面上に1種類又は複数の触媒金属が分散しているもののような卵殻型含侵が、幾つかの態様において好ましい。また、所謂卵黄型、卵白型、及び均一分散も意図されている。また、触媒金属化合物の溶液を担体上に噴霧するような他の方法もまた好適であり、担体の孔容積よりも大きい体積の金属溶液を用いる湿潤含侵、浸漬、又はディッピングのような過剰溶液法も同様である。
【0026】
また所望の場合には、空気又は窒素の存在下での高温か焼、及び水素による還元のような後処理を用いることもでき、興味深い有利性又は特徴を有する触媒を得ることができる。
【0027】
本発明にしたがって用いる触媒は、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸への選択性でカルボキシアリールアルデヒドの水素化誘導体への高い転化率を与えることができる。而して、本発明方法の生成物はヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸を含み、通常はアルキルアリールモノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸も含む。カルボキシアリールアルデヒド出発物質の転化率は、反応温度、滞留時間、及び具体的な触媒組成のようなファクターによって数パーセントから実質的に完全な転化までの範囲にすることができる。水素化誘導体への転化率は、好ましくは、少なくとも80%、又はより好ましくは90%、乃至95〜100%程度の高さまでの範囲である。イリジウム又はロジウムとパラジウムを含む触媒を用いる態様においては、カルボキシアリールアルデヒドの転化率は好ましくは少なくとも95%である。好ましい態様における選択率は、プロセスの反応生成物中のヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸とカルボキシアリールアルデヒド出発物質とのモル比が、水素化金属がイリジウム、ロジウム、又はパラジウムのいずれか単独である触媒を用い、カルボキシアリールアルデヒドの転化率などの他の事項が同一である場合よりも多いようなものである。より好ましくは、イリジウム又はロジウムをパラジウムと組み合わせて含む触媒を用いるカルボキシアリールアルデヒドの転化率は、プロセスの反応生成物中のヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸とカルボキシアリールアルデヒド出発物質とのモル比が、少なくとも約0.25:1、特に少なくとも約0.3:1であるようなものである。理論的には、モル比は1:1の上限を有するが、実施上は約0.85:1以下、より通常的には約0.65:1以下である。
【0028】
4CBAを水素化するためにイリジウム又はロジウムとパラジウムを含む触媒を用いる態様においては、pHMBAへの選択性でカルボキシアリールアルデヒドの高い転化率が達成される。かかる結果は、接触中に芳香族カルボン酸が存在しても又は存在しなくても達成される。好ましくは、pHMBAの収量は、水素化金属が、イリジウム、ロジウム、又はパラジウム単独である触媒を用い、他の事項が同一である場合よりも多い。より好ましくは、イリジウム又はロジウムとパラジウムを含む触媒を用いる4CBAの転化率は、生成物pHMBAと供給流中の4CBAのモル比が、少なくとも約0.25:1、より好ましくは少なくとも約0.35:1であるようなものである。pHMBAとpTOL及びpHMBAの合計とのモル比は、少なくとも約0.3:1、より好ましくは約0.33:1〜約0.85:1である。
【0029】
ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸は、任意の好適な手段によって反応混合物から回収される。水性溶媒中でのヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸の溶解度は、カルボキシアリールアルデヒド出発物質のもの、並びにアルキルアリールモノカルボン酸、アリールモノカルボン酸、及びジカルボン酸のような他の転化生成物の溶解度よりも大きい。したがって、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸は、結晶化のような固−液分離法によって他の生成物から都合よく分離することができる。ヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸への選択性の結果としてヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸に比べてアルキルアリールモノカルボン酸の生成が減少することと総合すれば、水性又は他の溶媒中でのヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸の溶解度によって、雰囲気圧力又は従来用いられているものよりも低い圧力での分離を可能にすることができ、これによって簡単な分離装置及び方法を使用することが可能になる。イリジウム又はロジウムを含む触媒の存在下でのカルボキシアリールアルデヒド含有出発物質と水素との接触を水溶液中で行う本発明方法においては、ヒドロキシアルキルアリール生成物は、好ましくは、反応混合物の温度を低下させ、圧力を低下させ、或いは両方を行って、アルキルアリールモノカルボン酸及び芳香族カルボン酸のようなより容易に固体として結晶化する副生成物の分離を促進させ、一方でヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸を液体反応混合物又は回収のために用いる他の水性溶媒中の溶液中に保持することによって、反応溶液から回収する。結晶化温度は、好ましくは約20℃、より好ましくは90℃、乃至約200℃、より好ましくは約175℃の範囲である。温度は、好都合には、フラッシング又は他の方法で反応混合物上の圧力を減少させることによって低下させる。
【0030】
例えば芳香族カルボン酸及び副生成物のカルボキシアリールアルデヒドを含む粗又は不純生成物の精製におけるようにカルボキシアリールアルデヒドを芳香族カルボン酸の存在下で水素化する態様においては、好ましい触媒組成物はイリジウム又はロジウムとパラジウムを含む。イリジウム又はロジウムとパラジウムは、触媒がヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸への選択性でカルボキシアリールアルデヒドの水素化誘導体への転化に関して活性であるような量で存在させる。イリジウム、ロジウム、又はこれらの組合せとパラジウムとのモル比は、それぞれ金属として計算して、約1:100〜100:1の範囲であってよい。本発明にしたがって用いるのに好ましい触媒は、イリジウム又はロジウムとパラジウムを、約1:1〜約1:100、より好ましくは約1:5〜約1:75のモル(原子)比で含む。幾つかの態様において好ましい触媒は、約10〜約50モルのパラジウムに対して約1モルのイリジウム又はロジウム、好ましくはイリジウムを含む。担持触媒組成物は、好ましくは、炭素、より好ましくは約100〜1600m/gの表面積を有する炭素を含む担体上に担持されているイリジウム又はロジウムとパラジウムを含む。特に好ましい担体は、約700〜1400m/gのBET表面積を有するヤシ殻炭を含む。同じ担体上にイリジウム、ロジウム、又はこれらの組合せとパラジウム又は他の更なる1種類又は複数の金属が担持されている触媒が最も好ましいが、金属が異なる担体組成物上に担持されているか或いは組成又は特性が異なる担体上に部分的に担持されている触媒を用いることができる。かかる用途に関しては、触媒は最も好ましくは、粒子状形態で、例えばペレット、押出物、球体、又は顆粒として用いるが、他の固体形態もまた好適である。
【0031】
芳香族アルデヒド不純物を有する芳香族カルボン酸の精製においては、固定床の使用のための触媒の粒径は、好ましくは、反応速度が物質移動の制限によって大きく悪影響を受けないが、触媒粒子の床がプロセスのために好適な反応器内に容易に保持され、水性溶媒中に溶解している芳香族カルボン酸及びカルボキシアリールアルデヒドを含む液相反応溶液又は混合物が、望ましくない圧力降下を起こさずに床を通して流れるのを可能にするように選択される。好ましくは、触媒粒子は、2メッシュのスクリーンを通過するが24メッシュのスクリーン(米国篩シリーズ)上に保持され、より好ましくは4メッシュのスクリーンを通過するが12メッシュ、最も好ましくは8メッシュのスクリーン上に保持される。
【0032】
本発明のこれらの態様による芳香族カルボン酸の存在下でのカルボキシアリールアルデヒド含有出発物質と水素との接触は、昇温及び昇圧において行う。温度は好ましくは約180〜約370℃の範囲であり、約200〜約325℃がより好ましい。テレフタル酸の精製における4CBAの水素化のためには約275〜約315℃のようなこの範囲のより上の部分の温度が好ましく、一方、3CBAの水素化によるイソフタル酸の精製のためには約190〜約245℃のようなより低い温度が最も好ましい。水素との接触は、好ましくは、反応区域内に液相反応溶液又は混合物を保持するのに十分な圧力下で行う。全圧は、プロセスに導入される水素及び運転温度において反応混合物から蒸発除去される1種類又は複数の溶媒蒸気の分圧の合計に少なくとも等しく、好ましくはこれよりも高い。好ましい圧力は、約350psig(約2510kPa)、より好ましくは約400psig(約2860kPa)、乃至約2000psig(約13900kPa)、より好ましくは約1500psig(約10400kPa)である。本発明によるテレフタル酸の精製のための4CBAの水素化においては約1000〜約1500psig(約7000〜10400kPa)の全圧が最も好ましく、イソフタル酸の精製における3CBAの水素化のためには約350〜約500psig(約2510〜3550kPa)が最も好ましい。
【0033】
カルボキシアリールアルデヒド及び芳香族カルボン酸を含む供給流の水素化のためか、或いは芳香族カルボン酸の存在下におけるカルボキシアリールアルデヒドのこれ以外の水素化のための固定床運転のために好ましい反応器構成は、反応器を使用する際に縦方向に配置される実質的に中心の軸を有する円筒形の反応器である。上向流及び下向流反応器を用いることができる。触媒は、通常は、反応器内において、それを通して反応溶液を比較的自由に流動させながら床内に粒子を保持するための機械的支持材によって保持されている粒子の1以上の固定床内に存在させる。しばしば単一の触媒床が好ましいが、同一か又は異なる触媒の複数の床、或いは例えば粒径、触媒金属、又は金属装填量に関して異なる触媒組成物、或いは触媒及び触媒の物理的完全性を保護するための研磨剤のような他の材料が積層されている単一の床を用いることもできる。平坦なメッシュスクリーン又は適当に離隔している平行な針金から形成されているグリッドの形態の機械的支持材が好適である。他の有用な触媒保持手段の例としては、管状スクリーン及び多孔板支持材が挙げられる。触媒床のための機械的支持材は、好適には酸性の反応溶液との接触による腐食に耐え、触媒床を効率的に保持するのに十分に強靱な材料で構成する。触媒床のための支持材は、通常は約1mm以下の開口を有し、ステンレススチール、チタン、又はハステロイCのような金属で構成される。
【0034】
かかる態様においては、カルボキシアリールアルデヒドを含む不純芳香族カルボン酸の溶液を、好ましくは、反応容器に、反応容器の頂部又は頂部付近の位置において昇温及び昇圧で加え、溶液を、水素ガスの存在下において反応容器内に含まれる触媒床を通して下向きに流し、カルボキシアリールアルデヒドのアルデヒド置換基をアルコールに水素化する。かかる態様においては、反応器は幾つかのモードで運転することができる。1つのモードにおいては、所定の液体レベルを反応器内に保持することができ、所定の反応器圧力のために、所定の液体レベルを保持するのに十分な速度で水素を供給することができる。実際の反応器圧力と、反応器のヘッドスペース内に存在する気化反応溶液の蒸気圧との間の差は、ヘッドスペース内の水素分圧である。或いは、水素を窒素又は水蒸気のような不活性ガスと混合して供給することができ、この場合には、実際の反応器圧力と、存在する気化反応溶液の蒸気圧との間の差は、水素及びそれに混合する不活性ガスの合計分圧である。後者の場合には、水素分圧は、混合物中に存在する既知の相対量の水素及び不活性ガスから計算することができる。
【0035】
他の運転モードにおいては、反応器に液体反応混合物を充填して反応器の蒸気スペースがないようにすることができる。かかる態様においては、反応器は液体で満たされたシステムとして運転し、溶解した水素は流量制御によって反応器に供給される。溶液中の水素の濃度は、反応器への水素の流速を調節することによって調節することができる。所望の場合には、溶液の水素濃度から疑似水素分圧値を計算し、次にこれを反応器への水素流速と相関させることができる。
【0036】
水素分圧を調節することによってプロセス制御を行うように運転する場合には、反応器中の水素分圧は、好ましくは、反応器の圧力定格、出発物質の選択、触媒の活性及び経年数、並びに当業者に公知の他の考察事項によって、約10〜約200psi(約69〜1380kPa)又はそれ以上である。供給溶液中の水素濃度の直接調節によってプロセス制御を行う運転モードにおいては、水素濃度は通常は水素に関する飽和未満であり、反応器それ自体は液体で満たされる。而して、反応器への水素の流速を調節することによって、溶液中の水素濃度の所望の制御が得られる。
【0037】
かかる態様における触媒の重量あたり1時間あたりのカルボキシアリールアルデヒドを含む芳香族カルボン酸出発物質の重量として表す空間速度は、通常は約1hr−1〜約25hr−1、好ましくは約2hr−1〜約15hr−1である。触媒床内における供給材料を含む液体流の滞留時間は、空間速度と共に変動する。
【0038】
本発明のかかる態様にしたがって、非置換芳香族カルボン酸並びにイリジウム又はロジウムとパラジウムを含む触媒の存在下でカルボキシアリールアルデヒドを水素と接触させた後、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸、例えばmHMBA又はpHMBAのようなヒドロキシメチル安息香酸、及びイソフタル酸又はテレフタル酸のような芳香族カルボン酸を含む液体反応混合物を冷却して、精製された固体の芳香族カルボン酸を液体反応混合物から分離し、その中にヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸及び存在する可能性がある他の可溶性水素化種が溶解した状態で保持されているしばしば母液とも呼ばれる液体混合物を残留させる。分離は、通常は精製された芳香族カルボン酸の結晶化を起こすのに十分に低い結晶化温度に冷却し、それによって液相内に固体生成物を生成させることによって行う。結晶化温度は、不純物及び水素化から得られるそれらの還元生成物が液相中に溶解した状態で保持されるのに十分に高いものである。芳香族カルボン酸生成物に関する結晶化温度は、一般に180℃以下、好ましくは約150℃以下の範囲である。テレフタル酸に関する結晶化温度は、一般にイソフタル酸に関するものよりも高い。連続運転においては、分離は、通常は、水素化反応器から水素化反応溶液を取り出し、1以上の結晶化容器内において芳香族カルボン酸を結晶化させることを含む。一連の段階又は別の結晶化容器内で行う場合には、異なる段階又は容器における温度は同一であっても異なっていてもよく、好ましくはそれぞれの段階又は容器から次段のものへと低下する。本発明の好ましい態様においては、4CBAのようなカルボキシアリールアルデヒドの転化率、及びヒドロキシアルキルアリールカルボン酸、例えばpHMBAへの選択率は十分に高く、pTOL(pTOLはテレフタル酸と共結晶化する傾向がpHMBAよりも強い)のようなアルキルアリールカルボン酸は、1以上の結晶化工程、最も好ましくは1つ又は複数の最終工程を雰囲気圧力以下、より好ましくは約0〜約15psig(約100〜200kPa)で行うことができるのに十分に少ない量で存在する。その後、精製され結晶化した芳香族カルボン酸生成物を母液から回収する。精製され結晶化した生成物の回収は、通常は遠心分離又は濾過によって行う。
【0039】
本発明にしたがって有用な反応器及び触媒床の構成並びに運転の詳細並びに結晶化及び生成物回収方法及び装置は、US−4,629,715;US−4,892,972;US−5,175,355;US−5,354,898;US−5,362,908;及びUS−5,616,792(参照として本明細書中に包含する);において更に詳細に記載されている。
【0040】
粗又は不純芳香族カルボン酸の精製のために本発明を実施する場合には、芳香族カルボン酸は、一般に1以上の芳香環及び1〜約4個のカルボン酸基を含む。例としては、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、及びナフタレンジカルボン酸が挙げられる。好ましい芳香族カルボン酸は、単一の芳香環を有するジカルボン酸、特にテレフタル酸である。商業的な実施においては、これらの酸は、しばしば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、並びにジメチル及びジエチルナフタレンのような酸化可能な置換基を有する芳香族化合物を含む供給材料の金属触媒酸化によって得られる。
【0041】
不純芳香族カルボン酸組成物はまたカルボキシアリールアルデヒドも含む。不純芳香族カルボン酸はまた1種類以上の他の不純物も含む。酸化可能な置換基を有する芳香族化合物を含む供給材料の液相酸化によって得られる粗生成物を含む不純芳香族カルボン酸の場合には、不純物は酸化副生成物又は中間体を含む。p−キシレンのような供給材料の液相酸化によって得られる粗テレフタル酸生成物の場合には、酸化の通常の中間体又は副生成物は4CBAを含み、またpHMBA、pTOL、p−ジヒドロキシメチルベンゼン、トルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、2,6−ジカルボキシフルオレノン、2,6−ジカルボキシアントロキノン、2,4’,5−トリカルボキシビフェニル、2,5−ジカルボキシフェニル−4−カルボキシフェニルメタン、3,4’−及び4,4’−ジカルボキシビフェニル、及び2,6−ジカルボキシフルオレンの1以上も含む可能性がある。
【0042】
本発明のこの態様にしたがって処理する不純芳香族カルボン酸中に存在するカルボキシアリールアルデヒドの量は変動する。一般に、本発明の有効性に障害を与えることなく任意の量のかかる不純物が存在していてよい。アルキル芳香族供給材料の液相酸化において得られる芳香族カルボン酸は、しばしば1〜2重量%程度の不純物を含み、商業的な運転においては約500ppmw〜約1重量%がより通常的である。本発明のかかる態様において用いるのに好ましい触媒は、1モルのイリジウム、ロジウム、又はこれらの組合せに対して約5、より好ましくは約10、乃至約75、より好ましくは約50モルのパラジウムを含む。イリジウムはロジウムよりも好ましい。かかる態様における最良の結果は炭素上に担持されている触媒を用いて達成され、チタニア及び酸安定性の炭化ケイ素担体も良好な結果を与える。
【0043】
本発明のより具体的な態様においては、本発明にしたがって精製される不純芳香族カルボン酸生成物は、カルボン酸基に酸化することができる置換基を有する少なくとも1種類の芳香族化合物を含む供給材料の液相酸化によって得られる粗芳香族カルボン酸生成物を含む。かかる酸化は、通常は、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相反応混合物中で、酸化剤として酸素を用い、重金属触媒の存在下において行う。
【0044】
かかる粗芳香族酸生成物を製造するための供給材料は、一般に、カルボン酸基に酸化することができる少なくとも1つの基で置換されている芳香族炭化水素を含む。1つ又は複数の酸化可能な置換基は、メチル、エチル、又はイソプロピル基のようなアルキル基であってよい。置換基としてはまた、ヒドロキシアルキル、ホルミル、又はケト基のような既に酸素を含む1種類以上の基を挙げることができる。複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。供給材料化合物の芳香族部分はベンゼン環であってよく、或いはナフタレン環のように二又は多環であってよい。供給材料化合物の芳香族部分上の酸化可能な置換基の数は、芳香族部分上の利用できる部位の数と等しくてよいが、一般に全てのかかる部位よりも少なく、好ましくは1〜約4、より好ましくは1〜3である。例としては、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、1−ホルミル−4−メチルベンゼン、1−ヒドロキシメチル−4−メチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1−ホルミル−2,4−ジメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、並びに、アルキル、アシル、ホルミル、及びヒドロキシメチル置換ナフタレン、例えば2,6−及び2,7−ジメチルナフタレン、2−アシル−6−メチルナフタレン、2,6−ジエチルナフタレン、2−ホルミル−6−メチルナフタレン、及び2−メチル−6−エチルナフタレンが挙げられる。
【0045】
対応する芳香族供給材料前駆体の酸化による粗芳香族酸生成物の製造、例えばメタ二置換ベンゼンからのイソフタル酸、パラ二置換ベンゼンからのテレフタル酸、1,2,4−三置換ベンゼンからのトリメリット酸、二置換ナフタレンからのナフタレンジカルボン酸の製造のためには、比較的純粋な供給材料、より好ましくは所望の酸に対応する前駆体の含量が少なくとも約95重量%、より好ましくは少なくとも98%、又は更に多い供給材料を用いることが好ましい。テレフタル酸を製造するために用いるのに好ましい芳香族供給材料はパラキシレンを含む。イソフタル酸のために好ましい供給材料はメタキシレンを含む。
【0046】
液相酸化のために用いる酸化剤は、好ましくは気体形態である分子酸素を含む。酸素源としては空気が好都合に用いられる。また、酸素富化空気、純粋酸素、及び少なくとも約10%の分子酸素を含む他の気体混合物も有用である。
【0047】
かかる酸化において用いる触媒は、芳香族炭化水素供給材料の芳香族カルボン酸への酸化を触媒するのに有効な材料を含む。好ましくは、触媒は液体酸化反応体中に可溶で、触媒、酸素、及び液体供給流の間の接触を促進させるが、不均一触媒又は触媒成分を用いることもできる。通常は、触媒は、約23〜約178の範囲の原子量を有する金属のような少なくとも1種類の重金属成分を含む。例としては、コバルト、マンガン、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、セリウム、又はハフニウムのようなランタニド金属が挙げられる。好ましくは、コバルト及びマンガンの一方又は両方を含む触媒を用いる。これらの金属の可溶性形態としては、臭化物、アルカノエート、及びブロモアルカノエートが挙げられ、具体例としては、コバルトの酢酸塩及び臭化物、酢酸ジルコニウム、並びにマンガンの酢酸塩及び臭化物が挙げられる。
【0048】
幾つかの触媒、特にコバルト、マンガン、又はこれらの組合せを含むものに関しては、促進剤も用いる。促進剤は、好ましくは望ましくないタイプ又はレベルの副生成物を生成させることなく、1種類又は複数の触媒金属の酸化活性を促進し、好ましくは液体反応混合物中に可溶の形態で用いる。好ましくは、促進剤は、元素形態、イオン形態、及び有機形態などの臭素を含む。例としては、Br、HBr、NaBr、KBr、NHBr、ブロモベンゼン、臭化ベンジル、ブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、テトラブロモエタン、二臭化エチレン、及び臭化ブロモアセチルが挙げられる。他の好適な促進剤としては、アルデヒド及びケトン、例えばアセトアルデヒド及びメチルエチルケトンが挙げられる。また、いずれも2007年11月22日に公開のWO−2007/133978及びWO−2007/133973、並びに2008年11月13日に公開のWO−2008/137491に開示されているような臭素を含まない触媒も好適である。
【0049】
用いる場合には、望ましくは、供給材料、可溶性触媒材料、及び促進剤に対する溶媒をプロセスにおいて用いる。水性カルボン酸、特に低級アルキル(例えばC1〜6)モノカルボン酸を含む溶媒は、通常の酸化反応条件下で僅かしか酸化されない傾向があり、酸化における触媒効果を促進させることができるので好ましい。好適なカルボン酸溶媒の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、及びこれらの混合物が挙げられる。幾つかの態様においては水が有用である。また、酸化反応条件下でモノカルボン酸に酸化される共溶媒材料を、そのままか又はカルボン酸と組み合わせて用いて良好な結果を得ることもできる。
【0050】
供給材料、触媒、酸素、及び溶媒の割合は重要ではなく、当該割合は供給材料及び所期の生成物の選択だけでなく、プロセス装置及び運転ファクターの選択によっても変動する。溶媒と供給材料との重量比は、好適には約1:1〜約30:1の範囲である。酸素は、通常は、少なくとも供給材料を基準として化学量論量であるが、液体から塔頂気相に放出される未反応の酸素が気相の他の成分と引火性の混合物を形成する程は多くない量で用いる。触媒は、好適には供給材料の重量を基準として約100〜約3000ppmの1種類又は複数の触媒金属を与える重量で用いる。また、促進剤の濃度は、一般に液体供給材料の重量を基準として約100〜約3000ppmの範囲であり、1mg原子の触媒金属あたり約0.1〜約2mg原子の促進剤が好適に用いられる。
【0051】
芳香族酸及び副生成物のカルボキシアリールアルデヒドを含む粗生成物への芳香族供給材料の酸化は、酸化反応条件下で行う。約120〜約250℃の範囲の温度が一般的に好適であり、約150〜約230℃が好ましい。反応容器内の圧力は、少なくとも、容器内に供給流及び溶媒を含む実質的な液相を保持するのに十分に高いものである。一般に、約5〜約35kg/mゲージ圧の圧力が好適であり、特定のプロセスのために好適な圧力は、供給流及び溶媒の組成、温度、及び他のファクターによって変動する。反応容器内における溶媒の滞留時間は、所定の処理量及び条件に適するように変動させることができ、約20〜約150分が一定範囲のプロセスに一般的に適している。酢酸溶媒中でのプソイドクメンの酸化によるトリメリット酸の製造におけるように芳香族酸生成物が反応溶媒中に実質的に可溶であるプロセスに関しては、液体中の固体濃度は無視できるものである。キシレン類のイソフタル酸又はテレフタル酸への酸化のような他のプロセスにおいては、固体含量は約50重量%程度の高さであってよい。好ましい条件及び運転パラメーターは、異なる生成物及びプロセスによって変動し、好ましい範囲内又はその外側で変動させることができる。
【0052】
かかる液相酸化プロセスの粗芳香族カルボン酸生成物は、副生成物のカルボキシアリールアルデヒドを含み、通常は他の中間体及び副生成物も含む。これらの中間体及び副生成物の例としては、アルデヒド及びケトン、例えば上記に記載のようなカルボキシベンズアルデヒド、フルオレノン、及びジカルボキシアントロキノンが挙げられる。供給材料、運転パラメーター、及びプロセス効率によって2重量%以下又は更にそれ以上の不純物レベルは非通常的なものではなく、所望のカルボン酸生成物又はその下流の生成物の生成物品質に影響を与えるのに十分なものである可能性がある。
【0053】
特定の態様においては、本発明は、パラキシレン又はその部分酸化誘導体或いはこれらの組合せを含む芳香族炭化水素供給流の液相酸化によって得られるテレフタル酸及び副生成物の4CBAを含む粗芳香族カルボン酸生成物からテレフタル酸を含む精製芳香族カルボン酸を製造するために用いる。酢酸又は酢酸水溶液が好ましい溶媒であり、約2:1〜約5:1の溶媒:供給流の比が好ましい。触媒は、好ましくは、コバルト、マンガン、又はこれらの組合せを含み、好ましくは溶媒中に可溶の臭素源を促進剤として用いる。コバルト及びマンガンは、好ましくは供給流の重量を基準として約100〜約800ppmwを与える量で用いる。臭素は、好ましくは、臭素と触媒金属との原子比が約0.1:1〜約1.5:1となるように存在させる。
【0054】
酸素含有ガスを、1モルの芳香族供給材料あたり少なくとも約3モルの分子酸素を与えるのに有効な速度で、且つ同時に反応器オフガスを除去して液体反応体の上方の蒸気空間中の未反応酸素が引火性限界より低くなるようにしながら液相反応混合物に供給する。酸素源として空気を用いる場合には、限界値は凝縮性化合物の除去後に測定して約8モル%である。
【0055】
酸化は、好ましくは、約160〜約225℃の温度において、約5〜約20kg/mゲージ圧の圧力下で行う。これらの条件において、液体中で酸素と供給材料を接触させて、通常は微粉砕形態の固体テレフタル酸結晶を形成する。沸騰液体スラリーの固体含量は通常は約40重量%以下の範囲であり、含水量は通常は溶媒重量を基準として約5〜約20重量%である。反応熱を制御するために液体を沸騰させることによって、溶媒及び反応水を含む液体の気化性成分が気化する。未反応の酸素及び気化した液体成分が、液体から液体の上方の反応器空間中に放出される。他の種、例えば窒素、及び酸素源として空気を用いる場合には存在する他の不活性ガス、炭素酸化物、及び気化副生成物、例えば酢酸メチル及び臭化メチルも、塔頂蒸気中に存在する可能性がある。
【0056】
酸化からの粗生成物は、通常は低下した温度及び圧力における結晶化によって液体反応混合物から分離し、得られる固体を濾過又は遠心分離によって回収する。回収される粗テレフタル酸は、通常は約500〜約5000ppmwの範囲の量の4CBAを含む。本発明による粗生成物の精製によって、通常は、精製テレフタル酸中の4CBAのレベルが、約100ppmwより低く、好ましくは約25ppmw以下に減少する。
【0057】
更に実施例において本発明の幾つかの態様及び形態を記載するが、これらは例示の目的のために示すものであり、限定ではない。
【実施例】
【0058】
実施例1及び2に関する基本手順:
触媒1〜4及び比較触媒Aを含む実施例1及び2における触媒は、初期湿潤法によって調製した担持触媒であった。それぞれW.C. Heraeusからの酢酸イリジウム、硝酸パラジウム、及び酢酸ロジウムの水溶液、並びにGCN-3070と名付けられたNoritからの粒状ヤシ殻炭素を用いた。炭素は、水吸収によって測定して0.60mL/gの孔容積を有していた。
【0059】
秤量の前に空気中120℃において乾燥した秤量量の炭素をガラスバイアル内に配置し、担体試料の孔容積と等しい体積の金属塩溶液の一方又は両方をボトルに加えることによって含侵を行った。炭素試料に溶液を加えた後、ボトルを回転台上で少なくとも1時間転動させて、炭素粒子の外側上に過剰の湿分を均一に展開させ、1種類又は複数の溶液を炭素の孔に浸透させた。転動させた後、触媒試料を空気中110℃において2時間乾燥し、100mL/分の窒素流下300℃において2時間か焼し、100mL/分の窒素中7%水素の流れの中で250℃において5時間還元し、機械粉砕ミルを用いて粉末に粉砕した。下表に報告するイリジウム、ロジウム、及びパラジウムの重量%及びモル比を有する触媒を製造した。
【0060】
【表1】

【0061】
それぞれ50mLの容積を有する並行磁気撹拌ステンレススチールバッチ反応器を用いて接触水素化実験を行った。反応器にテフロンインサートライナーを取り付けた。反応器に、固体触媒、15mLの脱イオン水、及び約15mg(約0.1ミリモル)の4−カルボキシベンズアルデヒドを室温において充填した。実施例2においては、反応器への充填物に約1.5g(約9ミリモル)のテレフタル酸も含ませた。次に、反応器を窒素でパージし、窒素で30barに加圧することによって漏れに関して試験し、次に圧力を解放し、水素で10barに加圧し、30〜45分間かけて275℃に加熱し、275〜282℃に20分間保持し、次に冷却した。加熱中は、反応器に取り付けた背圧調節器を90barに設定して、反応器を有効に密閉した。
【0062】
冷却の後、反応器の内容物をジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈して有機固形分を溶解した。溶液を、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、4CBA、テレフタル酸(TA)、pTOL、安息香酸(BA)、及びpHMBAに関して分析した。
【0063】
実施例1:
比較触媒A並びに触媒2及び3を用いて、水中での4CBAの水素化反応を行った。結果を表1に報告する。
【0064】
【表2】

【0065】
全ての触媒は実質的に100%の4CBAの転化率を示したが、選択率において相違していた。イリジウム及びパラジウムを含む触媒2及び3は、パラジウムしか含まず、主としてpTOLを生成した比較触媒Aよりも遙かに高いpHMBAへの選択率を示した。イリジウム及びパラジウムを含む触媒はいずれも、pTOLよりも多いpHMBAを生成した。
【0066】
実施例2:
上記に記載のようにして、しかしながら比較触媒A、触媒2、3、及び4、並びに比較目的のために乾燥して粉末に粉砕したBASFの「タイプD」と示される商業的な0.5重量%Pd/炭素触媒を用い、TAの存在下で、水中での4CBAの水素化反応を行った。
【0067】
【表3】

【0068】
表から明らかなように、反応は97〜99%の4CBAの転化率まで進行した。Pd−Ir触媒及びPd−Rh触媒を用いた反応は、pTOLよりも遙かに多い量のpHMBAを生成したが、Ir又はRhを用いない比較触媒はpHMBAよりも多いpTOLを生成した。
【0069】
実施例3及び4に関する基本手順:
触媒試料は、Johnson Mattheyから入手したPd(NO(14重量%のPd)及び酢酸イリジウム(5重量%のIr、50%酢酸溶液中)の貯蔵溶液、並びにAlfa Aesarから入手したヘキサ(アセタト)−μ−オキソトリス(アクア)トリロジウム(III)アセテート([Rh(OOCCH−μ−O(HO)]OAc)から調製した。
【0070】
これらの実施例における触媒を用い、約0.25重量%の4CBA、並びに約0.1重量%のpTOL、pHMBA、及び安息香酸(BA)のような他の不純物を含む435gの粗テレフタル酸、及び1015gの水を用いて接触水素化実験を行った。粗テレフタル酸及び水を1ガロンのチタンオートクレーブ反応器に充填した。反応器の内容物を300rpmで撹拌し、容器の圧力を500psi(約690kPa)低下させることによって、0.42モルに対応する体積の20℃の水素ガスを300mLの容器から反応器に加えた。反応器を290℃に加熱してテレフタル酸を溶解し、その後、撹拌速度を100rpmに増加させ、試験する触媒試料を、個々の実施例においてより詳細に記載するように反応器に加えた。
【0071】
触媒を加えた後の種々の時間において液体試料を取り出し、以下の化合物:4−カルボキシベンズアルデヒド(4CBA)、4−ヒドロキシメチル安息香酸(pHMBA)、p−トルイル酸(pTOL)、及び安息香酸(BA)に関して分析した。結果を表3及び4に示す。4CBAの転化率が93〜98%の間である場合には、通常の4CBAの転化率を基準として触媒の比較が可能なように試料を選択した。選択率は、生成したモル数を転化した4CBAのモル数で割った値として定義した。一例として、p−ヒドロキシメチル安息香酸(pHMBA)への選択率は以下のようにして求めた。
【0072】
【化1】

【0073】
実施例3:
触媒5〜8及び比較触媒Bは、使用前にオーブン内で空気中110℃において少なくとも2時間乾燥し、使用するまで密閉容器内で乾燥雰囲気中に貯蔵した30〜70メッシュの炭素粒子(Norit GCN3070)から調製した。初期湿潤点まで水を加えることによって測定した炭素の水吸収量は1.0cc−水/g−炭素であると求められた。
【0074】
触媒を調製するために、乾燥した担体の一部に、室温において、Pd(NO溶液、又は溶解したPd(NO及び酢酸イリジウムの両方を含む溶液を含侵させた。溶液には、0.5重量%のPd及び表3に報告するイリジウム含量を有する最終触媒を生成する量の金属を含ませた。脱イオン水の含量は、溶液の体積が含侵する量の炭素担体の水吸収体積と等しくなるようなものであった。含侵は、含侵中に炭素を頻繁に混合しながら、ピペットを用いて金属溶液を炭素にゆっくりと且つ均一に加えることによって行った。
【0075】
含侵した材料をオーブン内で空気中110℃において2時間乾燥し、次に炉の内部のステンレススチール管中に装填した。管を通して100標準cm/分(sccm)のヘリウムを流し始めた。次に、管を300℃に加熱し、ヘリウム流下において300℃に2時間保持した。温度を200℃に低下させ、ヘリウムを流すのを停止し、100sccmの水素ガスを流し始めた。管を275℃に加熱し、水素流下においてこの温度に2時間保持し、ヘリウム流下で室温に冷却した後に取り出した。
【0076】
水素化実験においては、触媒試料を、液体レベルの上方のヘッドスペース内の反応容器内に取り付けた固体保持器具から液相反応混合物中に直接放出した。
実験の結果を表3に報告する。
【0077】
【表4】

【0078】
表3から明らかなように、pHMBA選択率は、イリジウムのパラジウムに対する原子比が1:10〜25の範囲を超えて低下すると増加し、パラジウムが唯一の水素化金属であった比較触媒Bのものよりも高かった。また、BA選択率はこの範囲にわたって低下した。
【0079】
実施例4:
触媒試料9〜13及び比較触媒Cは、30〜70メッシュの炭素粒子と同様の方法で空気中で乾燥し貯蔵したBASFから入手した4〜8メッシュの粒状炭素を用いて調製した。この炭素の水吸収量は0.8cc−水/g−炭素であると求められた。
【0080】
乾燥した4〜8メッシュの炭素の一部に、室温において、Pd(NOの水溶液、溶解したPd(NO及び酢酸イリジウムの両方を含む溶液、又は溶解したPd(NO及び[Rh(OOCCH−μ−O(HO)]OAcの両方を含む溶液のいずれかを含侵させた。これらの溶液には、0.5重量%のPd及び表4に与えるイリジウム又はロジウムの含量を有する最終触媒を生成するのに適当な量の金属を含ませた。溶液の脱イオン水含量は、溶液の体積が含侵する量の炭素担体の水吸収体積と等しくなるようなものであった。含侵は上記に記載のようにして行った。
【0081】
含侵した材料をオーブン内で空気中110℃において2時間乾燥し、炉の内部のステンレススチール管中に装填した。実施例1及び2と同様に管を通してヘリウムを流し始めた。次に、管を300℃に加熱し、ヘリウム流下において300℃に2時間保持した。温度を250℃に低下させ、ヘリウム流を停止し、水素ガスを流し始めた。管を275℃に加熱し、水素流下において275℃に2時間保持し、ヘリウム流下で室温に冷却し、取り出した。
【0082】
触媒試料を、チタンバスケット内において、水素の存在下で30重量%のテレフタル酸を含む水溶液と混合して290℃において加熱することによって72時間経時変化させた。水素化実験においては、それを通して水を自由に流すことができる14メッシュのチタンワイヤースクリーンバスケット中に10mLの触媒試料を装填した。試料を含むバスケットを、実験用の液体をそこまで充填するレベルの上方の反応器内に配置し、反応器が所定温度に達したら、スクリーンバスケットを液体反応混合物中に降下させた。
【0083】
実験の結果を表4に報告する。
【0084】
【表5】

【0085】
表4から明らかなように、触媒9〜13を用いたpHMBA選択率は比較触媒Cの選択率よりも向上した。実施例3における触媒5及び6と同様に、Pd:Irの原子比が増加するとpHMBAへの選択率は増加し、BA選択率は低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシアリールアルデヒドを含む供給流を、水素化反応条件下、イリジウム又はロジウムを含む触媒の存在下において水素と接触させて、ヒドロキシアルキル芳香族モノカルボン酸を含む生成物を形成することを含む、ヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸の製造方法。
【請求項2】
触媒がイリジウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が更にパラジウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
供給流が4−カルボキシベンズアルデヒドを含み、生成物がp−ヒドロキシメチル安息香酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒がイリジウム又はロジウムとパラジウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
触媒が担持触媒である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
供給流と水素の接触を芳香族カルボン酸の存在下で行う、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
供給流と水素の接触を芳香族カルボン酸の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
供給流が4CBAを含み、テレフタル酸の存在下で水素と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水性溶媒中に溶解している4CBA及びテレフタル酸を含む供給流を触媒の存在下で水素と接触させて、p−ヒドロキシメチル安息香酸及びテレフタル酸を含む液相反応混合物を与え、テレフタル酸を含む固体を液相反応混合物から結晶化させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
固体テレフタル酸と、溶解しているp−ヒドロキシメチル安息香酸を含む液相を分離する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
芳香族カルボン酸及びカルボキシアリールアルデヒドを含む不純物を含む供給流を、パラジウムとイリジウム又はロジウムを含む触媒の存在下において、水素化条件下で水素と接触させて芳香族カルボン酸及びヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸を含む生成物を形成することを含み、供給流中のカルボキシアリールアルデヒドに対する生成物中のヒドロキシアルキルアリールモノカルボン酸のモル比が少なくとも約0.25である芳香族カルボン酸の製造方法。
【請求項13】
供給流の少なくとも一部を含む液相を触媒の存在下で水素と接触させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
供給流を触媒の存在下で水素と接触させることによって得られる液体反応混合物を処理して芳香族カルボン酸を含む固体を結晶化させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
分離が、約15psig(220kPa)以下の圧力下において液体反応混合物から固体芳香族カルボン酸を結晶化させることを含む少なくとも1つの工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
触媒がイリジウム又はロジウム1モルあたり約5〜約75モルのパラジウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
供給流が、芳香族カルボン酸及び少なくとも1種類のアルキルアレーン又はその部分酸化誘導体の酸化によって得られる不純物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
供給流がテレフタル酸及び4−カルボキシベンズアルデヒドを含み、生成物がp−トルイル酸よりも多いテレフタル酸及びp−ヒドロキシメチル安息香酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
触媒が、イリジウムとパラジウムとのモル比が約1:5〜約1:50となるような量でイリジウム及びパラジウムが存在する、パラジウム、イリジウム、及び炭素担体を含む担持触媒である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
供給流がイソフタル酸及び3−カルボキシベンズアルデヒドを含み、生成物がイソフタル酸及びm−ヒドロキシメチル安息香酸を含む、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2013−506668(P2013−506668A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532122(P2012−532122)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/049477
【国際公開番号】WO2011/041151
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】