説明

アリール縮合スピロ環化合物

本発明は、新規クラスのアリール縮合スピロ環化合物に関する。これらの化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することができ、腫瘍性細胞の最終分化及び細胞増殖の停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導すること、それによって、このような細胞の増殖を阻害することにおける使用に適している。したがって、本発明の化合物は、腫瘍性細胞の増殖を特徴とする腫瘍を有する患者を治療するのに有用である。本発明の化合物はまた、TRX−媒介性疾患、例えば、自己免疫、アレルギー性疾患及び炎症性疾患の予防及び治療において、中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の予防及び/又は治療において有用であってもよい。本発明はさらに、本発明の化合物を含む医薬組成物、及び行うのが容易であり、in vivoでこれらの化合物の治療上有効量をもたらす、これらの医薬組成物の安全な投与計画を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリール縮合スピロ環化合物の新規クラスに関する。これらの化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害でき、腫瘍性細胞の最終分化及び細胞増殖の停止及び/又はアポトーシスの選択的誘導、それによる、このような細胞の増殖の阻害における使用に適している。したがって、本発明の化合物は、腫瘍性細胞の増殖を特徴とする腫瘍を有する患者の治療において有用である。本発明の化合物はまた、TRX媒介性疾患、例えば、自己免疫疾患、アレルギー性疾患及び炎症性疾患の予防及び治療において、また中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の予防及び/又は治療において有用であってもよい。
【背景技術】
【0002】
HDACの阻害は、腫瘍抑制に関連する遺伝子の発現を含めた遺伝子発現を抑制し得る。ヒストン脱アセチル化酵素の阻害は、腫瘍サプレッサー遺伝子のヒストン脱アセチル化酵素媒介性転写抑制をもたらし得る。例えば、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害は、癌、血液疾患、(例えば、造血)及び遺伝子関連代謝疾患を治療する方法を提供し得る。より具体的には、転写調節は、細胞分化、増殖及びアポトーシスにおける主要な事象である。ヒストンアセチル化及び脱アセチル化が、細胞において転写調節がなされる機構であるという、いくつかの系統の証拠がある。(グルンステイン(Grunstein),M.、Nature、389:349〜52頁(1997))。これらの作用は、ヌクレオソーム中のコイル状DNAのヒストンタンパク質の親和性を変更することによるクロマチンの構造の変化を通じて生じると考えられている。5種のヒストンが同定されている。ヒストンH2A、H2B、H3及びH4が、ヌクレオソームに見られ、H1は、ヌクレオソーム間に位置するリンカーである。各ヌクレオソームは、そのコア内に、H1を除く各ヒストンの種類を2個含み、H1はヌクレオソーム構造の外側部分に単一で存在する。ヒストンタンパク質が低アセチル化されている場合には、ヒストンの、DNAリン酸骨格に対する、より大きな親和性があると考えられる。この親和性によって、DNAがヒストンにより堅固に結合され、DNAを転写調節エレメント及び機構に近づきにくくする。
【0003】
アセチル化状態の調節は、2種の酵素複合体、ヒストンアセチル化酵素(HAT)とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)間の活性のバランスによって起こる。
【0004】
低アセチル化状態は、結合しているDNAの転写を阻害すると考えられる。この低アセチル化状態は、HDAC酵素を含む大きな多タンパク質複合体によって触媒される。特に、HDACは、クロマチンコアヒストンからのアセチル基の除去を触媒するとわかっている。
【0005】
いくつかの例では、HAT又はHDAC活性の混乱が、悪性表現型の発生に関与しているとわかっている。例えば、急性前骨髄球性白血病では、PMLとRARαの融合によって生じるオンコプロテインが、HDACの補充によって特定の遺伝子の転写を抑制するようである(Lin、R.J.ら、Nature391:811〜14頁(1998))。このようにして、腫瘍性細胞は、分化を完了することができず、結果として、白血病細胞株の過剰の増殖につながる。
【0006】
開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,369,108号、同5,932,616号、同5,700,811号、同6,087,367号及び同6,511,990号は、腫瘍性細胞の最終分化、細胞増殖停止又はアポトーシスを選択的に誘導するのに有用なヒドロキサム酸誘導体を開示する。これらのヒドロキサム酸誘導体は、その抗腫瘍薬としての生物活性に加え、さまざまなチオレドキシン(TRX)媒介性疾患及び状態、例えば、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、酸化ストレスと関連している疾患又は細胞過剰増殖を特徴とする疾患を治療又は予防するために有用であると、最近同定された(2003年2月15日に出願された、米国出願第10/369,094号、その全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。さらに、これらのヒドロキサム酸誘導体は、中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患を治療するために、脳癌を治療するために有用であると同定されている(2002年10月16日に出願された、米国出願第10/273,401号、その全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0007】
ヒドロキサム酸部分を含有する化合物のさまざまな適用を考慮して、特性の改善された、例えば、効力の高められた、又はバイオアベイラビリティーが増大した新規阻害剤の開発が非常に望ましい。
【発明の開示】
【0008】
発明の要旨
本発明は、アリール縮合スピロ環化合物の新規クラスに関する。癌を治療するために使用できるこれらの化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害し、腫瘍性細胞の最終分化及び細胞増殖の停止及び/又はアポトーシスの選択的誘導、それによるこのような細胞の増殖の阻害における使用に適している。したがって、本発明の化合物は、腫瘍性細胞の増殖を特徴とする腫瘍を有する患者の治療において有用である。本発明の化合物はまた、TRX媒介性疾患、例えば、自己免疫疾患、アレルギー性疾患及び炎症性疾患の予防及び治療において、また中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の予防及び/又は治療において有用であり得る。本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物及び行うのが容易であり、in vivoでこれらの化合物の治療上有効量をもたらす、これらの医薬組成物の安全な投与計画をさらに提供する。
【0009】
本発明は、本明細書に詳述される、以下の構造式によって表される化合物及びその薬学的に許容される塩、溶媒和物及び水和物に関する。
【0010】
【化1】

【0011】
本発明の前記及びその他の目的、特徴及び利点は、以下の本発明の実施形態のより詳しい説明から明らかとなる。
【0012】
発明の詳細な記載
本発明は、アリール縮合スピロ環化合物の新規クラスに関する。本発明の化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害でき、腫瘍性細胞の最終分化及び細胞増殖の停止及び/又はアポトーシスの選択的誘導、及びそれによる、このような細胞の増殖の阻害、における使用に適している。したがって、本発明の化合物は、被験体における癌の治療において有用である。本発明の化合物はまた、TRX媒介性疾患、例えば、自己免疫疾患、アレルギー性疾患及び炎症性疾患の予防及び治療において、また中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の予防及び/又は治療において有用である。
【0013】
本発明は、以下の構造式:
【0014】
【化2】

[式中、Xは
【0015】
【化3】

【0016】
であり;
A、B、D、E、G、J、K、M及びPは、独立して、CR、NR1a、C(O)及びOより選択され;
Rは、NH又はOHであり;
【0017】
【化4】

【0018】
は、Rより選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、アリール又はヘテロアリールであり;
【0019】
【化5】

【0020】
は、アリール又はヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、
1)水素、
2)C−Cアルキル、
3)(CR10
4)(CRC(O)R
5)(CRC(O)OR
6)(CRC(O)NR
7)(CRS(O)
8)(CROR
9)(CRNR(SO)R
10)(CRNR
11)(CRNRC(O)OR
12)ハロ、又は
13)アリールであり;
各R1aは、独立して、
1)水素、
2)C−Cアルキル、
3)(CR10
4)(CRC(O)R
5)(CRC(O)OR
6)(CRC(O)NR、又は
7)(CRS(O)であり;
は、結合、−(CR11)r−、−C(O)NR−、−NRC(O)−又は−C(O)−であり、ここで、rは、1、2又は3であり;
は、
1)水素、
2)非置換又は置換C−Cアルキル、
3)非置換又は置換アリール、
4)非置換又は置換ヘテロアリール、
5)ハロ、
6)CN、
7)アミド、
8)カルボキシル、
9)C−Cアルコキシ、
10)C−Cハロアルキル、
11)C−Cハロアルキルオキシ、
12)C−Cヒドロキシアルキル、
13)C−Cアルケニル、
14)C−Cアルキニル、
15)C−Cアルキル−C(=O)O−、
16)C−Cアルキル−C(=O)−、
17)ヒドロキシアルコキシ、
18)−NHSO
19)−SONH、
20)C−Cアルキル−NHSO−、
21)C−Cアルキル−SONH−、
22)C−Cアルキルスルホニル、
23)C−Cアルキルアミノ、
24)ジ(C−C)アルキルアミノ、又は
25)L−R12であり;
各Rは、独立して、
1)H、
2)C−Cアルキル、
3)アリール、又は
4)ヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、アリール又はヘテロシクリルは、C−Cアルキルで置換されていてもよく;
各Rは、独立して、C−Cアルキル、アリール、ヘテロアリール又はハロより選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、
1)水素、
2)C−Cアルキル、又は
3)アリールであり;
各Rは、独立して、
1)水素、
2)C−Cアルキル、
3)アリール、
4)OR11
5)ハロ、又は
6)NR11であり、ここで、アルキル又はアリールは、C−Cアルキル、アリール、ヘテロアリール及びハロからなる群より選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;
各Rは、独立して、水素、OH、NR11、ニトロ、CN、アミド、カルボキシル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルキルオキシ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキル−C(=O)O−、C−Cアルキル−C(=O)−、C−Cアルキニル、ハロ基、アミド、ヒドロキシアルコキシ、−NR11SO、−SONR11、C−Cアルキル−NR11SO−、C−Cアルキル−SONR11−、C−Cアルキルスルホニル、C−Cアルキルアミノ又はジ(C−C)アルキルアミノであり;
各R10は、独立して、置換されていてもよい、
1)アリール、及び
2)ヘテロシクリルであり;
各R11は、独立して、水素、C−Cアルキル又はアリールであり、ここで、該アルキル及びアリール基は置換されていてもよく;
は、
1)結合、
2)C−Cアルキレン、
3)C−Cアルキニル、
4)C−Cアルケニル、
5)−O−、
6)−S−、
7)−NH−、
8)−C(=O)NH−、
9)−NHC(=O)−、
10)−NHC(=O)NH−、
11)−SONH−、
12)−NHSO−、
13)−SO−、
14)−C(=O)−、又は
15)−C(=O)O−であり;
12は、
1)置換又は非置換ヘテロアリール、
2)置換又は非置換ヘテロシクリル、
3)置換又は非置換アリール、及び
4)置換又は非置換C−Cシクロアルキルであり;
nは、独立して、0、1、2、3及び4より選択され;
qは、1、2、3又は4である]
によって表される化合物又はその立体異性体又は薬学的に許容される塩に関する。
【0021】
本発明の一実施形態では、RはNHである。
【0022】
本発明のもう1つの実施形態では、
【0023】
【化6】

【0024】
はヘテロアリールである。本発明の一クラスでは、
【0025】
【化7】

【0026】
はピリジニルである。
【0027】
本発明のもう1つの実施形態では、
【0028】
【化8】

【0029】
はアリールである。本発明の一クラスでは、
【0030】
【化9】

【0031】
はフェニルである。
【0032】
本発明のもう1つの実施形態では、Rは、水素、非置換若しくは置換アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。本発明の一クラスでは、Rは、フェニル又はチエニルである。
【0033】
本発明のもう1つの実施形態では、Lは結合である。
【0034】
本発明のもう1つの実施形態では、Xの制限しない例として、以下が挙げられる:
【0035】
【化10】

【0036】
本発明の化合物の制限しない実施例を表す具体的な実施形態は、以下の実験の項に提供される。
【0037】
本発明の化合物の具体的な実施例として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:
N−(2−アミノフェニル)−6−(1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
6−(1−アセチル−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)−N−(2−アミノフェニル)ニコチンアミド;
6−(1−アセチル−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)−N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]ニコチンアミド;
6−(1−アセチル−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)−N−[2−アミノ−5−(3−チエニル)フェニル]ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル}ニコチンアミド;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−6−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(1’H−スピロ[インデノ[2,1−b]ピリジン−9,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(1,3−ジエチル−4,5−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[シクロペンタ[c]ピラゾール−6,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1’H−スピロ[イソインドール−1,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
(3R)−1’−(5−{[(2−アミノフェニル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−N−メチル−2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−カルボキサミド;
N−[2−アミノ−5−(3−チエニル)フェニル]−6−(4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1’H−スピロ[クロメン−2,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−6−(1−オキソ−1,4−ジヒドロ−1’H−スピロ[イソクロメン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
エチル[1’−(5−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イル]カルバメート;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−6−(6−メトキシ−1−オキソ−4−フェニル−1,4−ジヒドロ−1H’−スピロ[イソクロメン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[1,4−ベンゾジアゼピン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(1−イソプロピル−6−メトキシ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−[5−(ベンジルアミノ)−1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル]ニコチンアミド;
N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]−6−(1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]−6−(1’H−スピロ[1−ベンゾフラン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]−6−[1−(メチルスルホニル)−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル]ニコチンアミド;
t−ブチル1’−(5−{[(2−アミノフェニル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−カルボキシレート;
N−(2−アミノフェニル)−6−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−4−(1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−イルメチル)ベンズアミド;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−4−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イルカルボニル)ベンズアミド;
N−(4−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}フェニル)−2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;
又はその立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【0038】
化学定義
本明細書で用いる場合、「アルキル」とは、特定の数の炭素原子を有する、分枝及び直鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むものとする。例えば、「C−C10アルキル」におけるようなC−C10は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素を、直線又は分枝配置で有する基を含むよう定義される。例えば、「C−C10アルキル」は、具体的に、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどを含む。用語「シクロアルキル」とは、特定の数の炭素原子を有する、単環式飽和脂肪族炭化水素基を意味する。シクロアルキルは、例えば、メチレン、エチレン又はプロピレン架橋で架橋されて(すなわち、二環式部分を形成して)いてもよい。架橋は、置換されていてもよいし、分枝していてもよい。シクロアルキルは、フェニルなどのアリール基とともに縮合されていてもよく、シクロアルキル置換基は、シクロアルキル基を介して結合しているということは理解される。例えば、「シクロアルキル」として、シクロプロピル、メチルシクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。本発明の一実施形態では、用語「シクロアルキル」は、直前に記載される基を含み、単環式不飽和脂肪族炭化水素基をさらに含む。例えば、この実施形態において定義される「シクロアルキル」として、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロブテニルなどが挙げられる。一実施形態では、炭素原子の数が特定されていない場合には、「アルキル」とは、C−C12アルキルを指し、さらなる一実施形態では、「アルキル」とは、C−Cアルキルを指す。一実施形態では、炭素原子の数が特定されていない場合には、「シクロアルキル」とは、C−C10シクロアルキルを指し、さらなる一実施形態では、「シクロアルキル」とは、C−Cシクロアルキルを指す。一実施形態では、「アルキル」の例として、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル及びi−ブチルが挙げられる。
【0039】
用語「アルキレン」とは、特定の数の炭素原子を有する炭化水素ジラジカル基を意味する。例えば、「アルキレン」は、−CH−、−CHCH−などを含む。一実施形態では、炭素原子の数が特定されていない場合には、「アルキレン」とは、C−C12アルキレンを指し、さらなる一実施形態では、「アルキレン」とは、C−Cアルキレンを指す。
【0040】
語句「アルキルアリール」、「アルキルシクロアルキル」及び「アルキルヘテロシクリル」で用いる場合に、用語「アルキル」とは、アルキル部の部分を指し、アリール及びヘテロアリール部の部分における原子数は記載しない。一実施形態では、炭素原子の数が特定されていない場合には、「アルキルアリール」、「アルキルシクロアルキル」及び「アルキルヘテロシクリル」の「アルキル」とは、C−C12アルキルを指し、さらなる一実施形態では、この用語は、C−Cアルキルを指す。
【0041】
炭素原子の数が特定されていない場合には、用語「アルケニル」とは、2〜10個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合とを含む、直鎖、分枝又は環状の、非芳香族炭化水素基を指す。1つの炭素−炭素二重結合が存在することが好ましいが、最大4つの非芳香族炭素−炭素二重結合が存在してもよい。したがって、「C−Cアルケニル」とは、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する。アルケニル基として、エテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニル及びシクロヘキセニルが挙げられる。アルケニル基の直鎖、分枝又は環状部は、二重結合を含んでいてもよく、置換アルケニル基が示される場合には置換されていてもよい。
【0042】
用語「アルキニル」とは、2〜10個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素間三重結合とを含む、直鎖、分枝又は環状の炭化水素基を指す。最大3つの炭素間三重結合が存在してもよい。したがって、「C−Cアルキニル」とは、2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する。アルキニル基として、エチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニルなどが挙げられる。アルキニル基の直鎖、分枝又は環状部は、三重結合を含んでいてもよく、置換アルキニル基が示される場合には置換されていてもよい。
【0043】
特定の場合には、置換基は、ゼロを含むさまざまな炭素、例えば、(C−C)アルキレン−アリールで定義してもよい。アリールがフェニルであるととられる場合には、この定義はフェニル自体並びに−CHPh、−CHCHPh、CH(CH)CHCH(CH)Phなどを含む。
【0044】
一実施形態では、本明細書で用いる場合、「アリール」は、少なくとも1つの環が芳香族性であり、各環において最大7個の原子からなる任意の安定な単環式又は二環式炭素環を意味するものとする。このようなアリール要素の例として、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル及びビフェニルが挙げられる。アリール置換基が二環式であり、1つの環が非芳香族である場合には、結合は芳香環を介したものであると理解される。
【0045】
もう1つの実施形態では、「アリール」とは、5〜14個の炭素原子の芳香環であり、インダンなどの5又は6員のシクロアルキル基と縮合している炭素環式芳香基を含む。炭素環式芳香基の例として、それだけには限らないが、フェニル、ナフチル、例えば、1−ナフチル及び2−ナフチル;アントラセニル、例えば、1−アントラセニル、2−アントラセニル;フェナントレニル;フルオレノニル、例えば、9−フルオレノニル、インダニルなどが挙げられる。炭素環式芳香基は、以下に記載される、指定された数の置換基で置換されていてもよい。
【0046】
用語ヘテロアリールとは、本明細書で用いる場合、少なくとも1つの環が芳香族性であり、O、N及びSからなる群より選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、各環において最大7個の原子からなる安定な単環式又は二環式環を表す。もう1つの実施形態では、用語ヘテロアリールとは、5〜14個の炭素の環原子と、O、N又はSより選択される1〜4個のヘテロ原子からなる単環式、二環式又は三環式芳香環を指す。この定義の範囲内のヘテロアリール基として、それだけには限らないが、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが挙げられる。以下の複素環についての定義と同様、「ヘテロアリール」はまた、任意の窒素含有ヘテロアリールのN−オキシド誘導体を含むと理解される。ヘテロアリール置換基が二環式であり、一方の環が非芳香族であるか、又はヘテロ原子を含まない場合は、結合は、それぞれ、芳香環を介するか、又はヘテロ原子含有環を介すると理解される。
【0047】
もう1つの実施形態では、「ヘテロアリール」とは、5〜14個の炭素の環原子と、O、N又はSより選択される1〜4個のヘテロ原子からなる単環式、二環式又は三環式芳香環である。ヘテロアリールの例として、それだけには限らないが、ピリジル、例えば、2−ピリジル(α−ピリジルとも呼ばれる)、3−ピリジル(β−ピリジルとも呼ばれる)及び4−ピリジル((γ−ピリジル)とも呼ばれる);チエニル、例えば、2−チエニル及び3−チエニル;フラニル、例えば、2−フラニル及び3−フラニル;ピリミジル、例えば、2−ピリミジル及び4−ピリミジル;イミダゾリル、例えば、2−イミダゾリル;ピラニル、例えば、2−ピラニル及び3−ピラニル;ピラゾリル、例えば、4−ピラゾリル及び5−ピラゾリル;チアゾリル、例えば、2−チアゾリル、4−チアゾリル及び5−チアゾリル;チアジアゾリル;イソチアゾリル;オキサゾリル、例えば、2−オキサゾイル、4−オキサゾイル及び5−オキサゾイル;イソキサゾイル;ピロリル;ピリダジニル;ピラジニルなどが挙げられる。上記で定義される複素環芳香族基(又はヘテロアリール)は、芳香基について以下に記載される、指定された数の置換基で置換されていてもよい。
【0048】
一実施形態では、「ヘテロアリール」はまた、1つ以上のその他のヘテロアリール又は非芳香族複素環式環と縮合しているヘテロアリールである「縮合多環式芳香族」を含んでもよい。例として、キノリニル及びイソキノリニル、例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル、5−キノリニル、6−キノリニル、7−キノリニル及び8−キノリニル、1−イソキノリニル、3−キノリニル、4−イソキノリニル、5−イソキノリニル、6−イソキノリニル、7−イソキノリニル及び8−イソキノリニル;ベンゾフラニル、例えば、2−ベンゾフラニル及び3−ベンゾフラニル;ジベンゾフラニル、例えば、2,3−ジヒドロベンゾフラニル;ジベンゾチオフェニル;ベンゾチエニル、例えば、2−ベンゾチエニル及び3−ベンゾチエニル;インドリル、例えば、2−インドリル及び3−インドリル;ベンゾチアゾリル、例えば、2−ベンゾチアゾリル;ベンゾオキサゾリル、例えば、2−ベンゾオキサゾリル;ベンズイミダゾリル、例えば、2−ベンゾイミダゾリル;イソインドリル、例えば、1−イソインドリル及び3−イソインドリル;ベンゾトリアゾリル;プリニル;チアナフテニル、ピラジニルなどが挙げられる。縮合多環式芳香環系は、本明細書において記載される、指定された数の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
用語「複素環」又は「ヘテロシクリル」とは、本明細書で用いる場合、O、N及びSからなる群より選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、3〜10員の芳香族又は非芳香族複素環を意味するものとし、二環式基を含む。非芳香族複素環は、フェニル又は芳香複素環などの芳香族アリール基と縮合していてもよい。
したがって、「ヘテロシクリル」とは、上記のヘテロアリール並びにそのジヒドロ及びテトラヒドロ類似体を含む。「ヘテロシクリル」のさらなる例として、それだけには限らないが、以下のアゼチジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロチエニル及びそれらのN−オキシドが挙げられる。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子を介してか、又はヘテロ原子を介して生じてもよい。
【0050】
一実施形態では、「複素環」(本明細書において「ヘテロシクリル」とも呼ばれる)とは、5〜14個の炭素の環原子と、O、N、S又はPより選択される1〜4個のヘテロ原子からなる単環式、二環式又は三環式飽和又は不飽和環である。複素環式環の例として、それだけには限らないが、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、ピペラジニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロドロピラニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロピラジニル、テトラヒドロピラジニル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジルなどが挙げられる。
【0051】
「アルキルアリール基」(アリールアルキル)とは、芳香族基、好ましくは、フェニル基で置換されているアルキル基である。好ましいアルキルアリール基は、ベンジル基である。適した芳香族基は、本明細書に記載されており、適したアルキル基は、本明細書に記載されている。アルキルアリール基の適した置換基は、本明細書に記載されている。
【0052】
「アルキルヘテロシクリル」基とは、ヘテロシクリル基で置換されているアルキル基である。適したヘテロシクリル基は、本明細書に記載されており、適したアルキル基は本明細書に記載されている。アルキルヘテロシクリル基の適した置換基は、本明細書に記載されている。
【0053】
「アルキルシクロアルキル基」とは、シクロアルキル基で置換されているアルキル基である。適したシクロアルキル基は、本明細書に記載されており、適したアルキル基は、本明細書に記載されている。アルキルシクロアルキル基の適した置換基は、本明細書に記載されている。
【0054】
「アリールオキシ基」とは、酸素を介して化合物と結合しているアリール基(例えば、フェノキシ)である。
【0055】
「アルコキシ基」(アルキルオキシ)とは、本明細書で用いる場合、酸素原子を介して化合物と結合している、直鎖又は分枝C−C12又は環状C−C12アルキル基である。アルコキシ基の例として、それだけには限らないが、メトキシ、エトキシ及びプロポキシが挙げられる。
【0056】
「アリールアルコキシ基」(アリールアルキルオキシ)とは、アリールアルキルのアルキル部で酸素を介して化合物と結合しているアリールアルキル基である(例えば、フェニルメトキシ)。
【0057】
「アリールアミノ基」とは、本明細書で用いる場合、窒素を介して化合物を結合しているアリール基である。
【0058】
本明細書で用いる場合、「アリールアルキルアミノ基」とは、アリールアルキルのアルキル部で窒素を介して化合物と結合しているアリールアルキル基である。
【0059】
「アルキルスルホニル基」とは、本明細書で用いる場合、スルホニル基の硫黄を介して化合物と結合しているアルキル基である。
【0060】
本明細書で用いる場合、多くの部分又は基は、「置換されているか、置換されていない」のいずれかであるとされる。ある部分(基)が置換されているといわれる場合には、置換にとって利用可能であると当業者に公知の、任意の基の部分が置換され得ることを意味する。語句「1個以上の置換基で置換されていてもよい」とは、1個の置換基、2個の置換基、3個の置換基、4個の置換基又は5個の置換基を意味する。例えば、置換可能な基は、水素以外の基(すなわち、置換基)で置き換えられる水素原子であってもよい。複数の置換基が存在してもよい。複数の置換基が存在する場合には、置換基は同一であっても異なっていてもよく、置換は任意の置換可能部位において存在してもよい。置換についてのこのような方法は、当技術分野では周知である。本発明の範囲を制限するとは考えてはならない、例示目的で、置換基である基のいくつかの実施例として、以下がある:アルキル基(1個以上の置換基で置換されていてもよい)、アルコキシ基(置換されていてもよい)、ハロゲン又はハロ基(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−COH、−COOH、アミノ、アジド、N−アルキルアミノ又はN,N−ジアルキルアミノ(アルキル基も置換されていてもよい)、N−アリールアミノ又はN,N−ジアリールアミノ(アリール基も置換されていてもよい)、エステル(−C(O)−OR(ここで、Rは、アルキル、アリールなどの基であってもよく、これらは置換されていてもよい)、尿素(−NHC(O)−NHR(ここで、Rは、アルキル、アリールなどの基であってもよく、これらは置換されていてもよい)、カルバメート(−NHC(O)−OR(ここで、Rはアルキル、アリールなどの基であってもよく、これれは置換されていてもよい)、スルホンアミド(−NHS(O)R、(ここで、Rは、アルキル、アリールなどの基であってもよく、これらは置換されていてもよい)、アルキルスルホニル(置換されていてもよい)、アリール(置換されていてもよい)、シクロアルキル(置換されていてもよい)、アルキルアリール(置換されていてもよい)、アルキルヘテロシクリル(置換されていてもよい)、アルキルシクロアルキル(置換されていてもよい)及びアリールオキシ。
【0061】
化学的に安定であり、容易に入手可能な出発材料から当技術分野で公知の方法によって容易に合成できる化合物を提供するために、当業者によって、1個以上の炭素原子の変わりに、1個以上のシリコン(Si)原子を、本発明の化合物に組み込んでもよいということは理解される。炭素とシリコンは、その共有結合半径が異なり、これが類似のCエレメント及びSiエレメント結合を比較した場合に、結合距離及び立体配置の相違をもたらす。これらの相違は、炭素と比較した場合の、シリコン含有化合物の大きさ及び形のわずかな変化をもたらす。当業者ならば、大きさ及び形の相違は、効力、可溶性、非標的活性の欠如、パッケージング能力などのわずかな又は劇的な変化をもたらし得るということは理解されよう(ディアス(Diass)、J.O.ら、オルガノメタリクス(Organometallics)(2006)5:1188〜1198頁;ショウエル(Showell)、G.A.ら、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorganic & Medicinal Chemistry letters)(2006)16:2555〜2558頁)。
【0062】
立体化学
多数の有機化合物は、平面偏光の面を回転する能力を有する光学的に活性な形で存在する。光学的に活性な化合物の説明では、接頭辞D及びL又はR及びSは、そのキラル中心(複数のキラル中心)についての分子の絶対配置を示すために用いられる。接頭辞d及びl又は(+)及び(−)は、(−)を有するか又は、化合物が左旋性であることを意味する化合物によって、平面偏光の回転の符号を指定するために用いられる。(+)又はdの接頭辞をつけた化合物は、右旋性である。立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、所与の化学構造については、それらが、互いに重ね合わせることができない鏡像であるという点を除いて同一である。特定の立体異性体は、鏡像異性体と呼んでもよく、このような異性体の混合物は鏡像異性体混合物と呼ばれることも多い。鏡像異性体の50:50混合物は、ラセミ混合物と呼ばれる。本明細書に記載される多数の化合物は、1つ以上のキラル中心を有してもよく、それ故、異なる鏡像異性体の形で存在してもよい。必要に応じて、キラル炭素はアスタリスク()で指定されてもよい。キラル炭素との結合が、本発明の式において直線として表される場合には、キラル炭素の(R)及び(S)の両配置、したがって、両鏡像異性体及びそれらの混合物が式内に包含されると理解される。当技術分野で用いられるように、キラル炭素についての絶対配置を指定することが望まれる場合には、キラル炭素との結合の1つ(面より上の原子との結合)を楔として表してもよく、その他のもの(面より下の原子との結合)を短い平行線の連続又は楔として表してもよい。Cahn−Inglod−Prelogシステムを用いて、キラル炭素に(R)又は(S)配置を割り当ててもよい。
【0063】
本発明のHDAC阻害剤が1つのキラル中心含む場合には、化合物は2種の鏡像異性体の形で存在し、本発明は両鏡像異性体及び鏡像異性体の混合物、例えば、ラセミ混合物と呼ばれる特定の50:50混合物を含む。鏡像異性体は、当業者に公知の方法、例えば、結晶化によって分離してもよいジアステレオ異性体の塩を形成すること(シーアールシー・ハンドブック・オブ・オプティカル・レゾルーションズ・バイア・ジアステレメリック・サルツ・フォーメーション・バイ・デイビッド・コズマ(CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation by David Kozma)(CRC Press、2001)参照);例えば、結晶化、ガス−液体若しくは液体クロマトグラフィーによって分離してもよいジアステレオ異性体誘導体又は複合体を形成すること;鏡像異性体特異的試薬との一方の鏡像異性体の選択的反応、例えば、酵素的エステル化;又はキラル環境における、例えば、キラル支持体、例えば、結合しているキラルリガンドを含むシリカでの、又はキラル溶媒の存在下での、ガス−液体若しくは液体クロマトグラフィーによって分割してもよい。当然のことではあるが、所望の鏡像異性体が、前記の分離手順の1つによって別の化学的実在物に変換される場合には、所望の鏡像異性体の形を遊離させるためにさらなるステップが必要である。或いは、光学的に活性な試薬、基質、触媒若しくは溶媒を用いる不斉合成によって、又は不斉転換によって、ある鏡像異性体を、別のものに変換することによって、特定の鏡像異性体を合成してもよい。
【0064】
本発明の化合物のキラル炭素での特定の絶対配置の指定は、指定の鏡像異性体の形の化合物が鏡像異性体過剰(ee)にあること、言い換えれば、その他の鏡像異性体を実質的に含まないことを意味すると理解される。例えば、「R」の形の化合物は、「S」の形の化合物を実質的に含まず、したがって、「S」の鏡像異性体過剰にある。逆に、「S」の形の化合物は、実質的に「R」の形の化合物を含まず、したがって、「R」の形の鏡像異性体過剰にある。鏡像異性体過剰は、本明細書で用いる場合、50%を超える特定の鏡像異性体の存在である。特定の実施形態では、特定の絶対配置が指定される場合には、表される化合物の鏡像異性体過剰は少なくとも約90%である。
【0065】
本発明の化合物が2個以上のキラル炭素を有する場合には、3種以上の光学異性体を有していてもよく、ジアステレオ異性体の形で存在してもよい。例えば、2個のキラル炭素がある場合には、化合物は最大4種の光学異性体及び2対の鏡像異性体((S,S)/(R,R)及び(R,S)/(S,R))を有していてもよい。鏡像異性体の対(例えば、(S,S)/(R,R))は、互いに鏡像立体異性体である。鏡像でない立体異性体(例えば、(S,S)及び(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオ異性体の対は、当業者に公知の方法、例えば、クロマトグラフィー又は結晶化によって分離してもよく、各対内の個々の鏡像異性体は、上記のように分離してもよい。本発明は、このような化合物の各ジアステレオ異性体及びそれらの混合物を含む。
【0066】
本明細書で用いる場合、「冠詞」及び「不定冠詞」は、文脈が明確に他を示すのでない限り、単数及び複数の言及を含む。したがって、例えば、「活性剤」又は「薬理学的に活性な薬剤」と不定冠詞を付していう場合、単一の活性剤並びに2種以上の異なる活性剤を組合せて包含し、「担体」と不定冠詞を付して言う場合、2種以上の担体の混合物並びに単一の担体などを包含する。
【0067】
本発明はまた、本明細書に開示される本発明の化合物のプロドラッグを包含するものとする。任意の化合物のプロドラッグは、薬理学的技術上周知の方法を用いて調製してもよい。
【0068】
本発明は、上記の化合物に加え、このような化合物の相同体及び類似体の使用を包含するものとする。これに関連して、相同体とは、上記の化合物に対して実質的な構造類似性を有する分子であり、類似体とは、構造類似性に関わらず、実質的な生物学的類似性を有する分子である。
【0069】
薬学的に許容される塩
本明細書に記載される本発明の化合物は、上記のように、その薬学的に許容される塩の形で調製してもよい。薬学的に許容される塩とは、本化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒物学的効果を付与しない塩である。このような塩の例として、酸付加塩、有機及び無機塩、例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、リン酸などであってもよい酸付加塩がある。薬学的に許容される塩はまた、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどといった有機塩基を処理することによって調製してもよい。薬学的に許容される塩はまた、基本的なアニオン、例えば、塩素、臭素及びヨウ素より形成される塩であってもよい。
【0070】
開示される活性化合物はまた、上記のように、その水和物の形で調製してもよい。用語「水和物」とは、それだけには限らないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物などを含む。
【0071】
開示される活性化合物はまた、上記のように、任意の有機又は無機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールなどのアルコール、アセトンなどのケトン、芳香族溶媒などを含む溶媒和物の形で調製してもよい。
【0072】
開示される活性化合物はまた、任意の固体又は液体の物理的形で調製してもよい。例えば、本化合物は、結晶形であってもよいし、非晶形であってもよいし、任意の粒径を有していてもよい。さらに、化合物粒子は微粉化してもよいし、塊になっていてもよく、粒子状顆粒、粉末、オイル、油性懸濁液又は任意のその他の形の固体若しくは液体の物理的形状であってもよい。
【0073】
本発明の化合物はまた、多形を示していてもよい。本発明はさらに、本発明の化合物の種々の多形を含む。用語「多形」とは、X線回析、IRスペクトル、融点などの特定の物理的特性を有する特定の結晶状態の物質を指す。
【0074】
本明細書で用いる場合、「冠詞」及び「不定冠詞」は、文脈が明確に他を示すのでない限り、単数及び複数の言及を含む。したがって、例えば、「活性剤」又は「薬理学的に活性な薬剤」と不定冠詞を付していう場合、単一の活性剤並びに2種以上の異なる活性剤を組合せて包含し、「担体」と不定冠詞を付して言う場合、2種以上の担体の混合物並びに単一の担体などを包含する。
【0075】
治療方法
本発明はまた、本発明の化合物を用いる方法に関する。本明細書において実証されるように、本発明の化合物は、癌の治療にとって有用である。さらに、置換ニコチンアミドが有用であってもよいさまざまなその他の疾患がある。限定しない例として、本明細書に記載されるチオレドキシン(TRX)媒介性疾患及び本明細書に記載される中枢神経系(CNS)の疾患がある。
【0076】
1.癌の治療
本明細書において実証されるように、本発明の化合物は、癌の治療にとって有用である。したがって、一実施形態では、本発明は、治療を必要とする被験体に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、該被験体において癌を治療する方法に関する。
【0077】
用語「癌」とは、腫瘍性細胞、例えば、充実腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫などの増殖によって引き起こされる任意の癌を指す。特に、本発明の化合物、組成物及び方法によって治療してもよい癌として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;:気管支原性肺癌(扁平細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌、非小細胞肺)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管腺癌、インスリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫)、結腸、直腸、結腸直腸;尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セミノーマ、奇形腫、胚性期癌、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、間質性細胞癌腫、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝細胞腫(肝細胞癌)、胆管癌、胆芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨腫及び巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、メニンギオサルコーマ(meningiosarcoma)、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形神経膠芽腫、乏突起膠腫、シュワン腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前腫瘍性子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌、[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類の癌腫]、顆粒膜−莢膜細胞腫瘍、セルトリ−ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫);血液学的:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄性増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、ほくろ異形成母斑、脂肪腫、アンジオーマ、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;及び副腎:神経芽細胞腫。したがって、本明細書において提供される用語「癌性細胞」として、上記で同定される状態のいずれか1種を起こしている細胞が挙げられる。
【0078】
一実施形態では、本化合物は、それだけには限らないが、急性白血病及び慢性白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)及びヘアリー細胞白血病を含めた白血病;リンパ腫、例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ増殖性ウイルス(HTLV)と関連しているリンパ腫、例えば、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫、大細胞型リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫;中皮腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;多発性骨髄腫;小児充実腫瘍、例えば、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍及び軟組織肉腫、よく見られる成人の充実腫瘍、例えば、頭頸部癌(例えば、口腔、喉頭及び食道)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸及び結腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫及びその他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌及び甲状腺癌をはじめとする癌の治療において有用である。
【0079】
2.チオレドキシン(TRX)媒介性疾患の治療
もう1つの実施形態では、本発明の化合物を、チオレドキシン(TRX)媒介性疾患又は障害の治療を必要とする被験体に、治療上有効な量の1種以上の本発明の化合物を投与することを含む、前記被験体において、チオレドキシン(TRX)媒介性疾患又は障害を治療する方法において用いる。TRX媒介性疾患の例として、それだけには限らないが、急性及び慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、酸化ストレスと関連している疾患、及び細胞過剰増殖を特徴とする疾患が挙げられる。
【0080】
制限しない例として、関節の炎症状態、例えば、関節リウマチ(RA)及び乾癬性関節炎;炎症性腸疾患、例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞媒介性乾癬を含む)及び炎症性皮膚疾患、例えば、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹;血管炎(例えば、壊死性皮膚及び過敏性血管炎);好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎;皮膚又は臓器の白血球浸潤を伴う癌、虚血傷害、例えば、脳虚血(例えば、外傷の結果としての脳傷害、てんかん、出血又は卒中、それらの各々が神経変性をもたらし得る);HIV、心不全、慢性、急性又は悪性肝疾患、自己免疫甲状腺炎;全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、肺疾患(例えば、ARDS);急性膵炎;筋萎縮性側索硬化症(ALS);アルツハイマー病;悪液質/食欲不振症;喘息;アテローム性動脈硬化症;慢性疲労症候群、発熱;糖尿病(例えば、インスリン糖尿病又は若年発症型糖尿病);糸球体腎炎;移植片対宿主拒絶反応(例えば、移植において);ヘモホラジックショック(hemohorragic shock);痛覚過敏:炎症性腸疾患;多発性硬化症;ミオパシー(例えば、特に、敗血症における筋タンパク質代謝);骨粗しょう症;パーキンソン病;疼痛;早産;乾癬;再灌流傷害;サイトカイン誘導性毒性(例えば、敗血症性ショック、内毒素ショック);放射線療法に由来する副作用、一時的な顎関節疾患、腫瘍転移;又は筋挫傷、捻挫、軟骨傷害、熱傷などの外傷、整形外科手術、感染又はその他の疾患過程に起因する炎症性症状がある。アレルギー性疾患及び状態としては、それだけには限らないが、呼吸器アレルギー性疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺炎、過敏性間質性肺炎、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎)、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺線維症又は関節リウマチと関連しているILD、全身性紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎又は皮膚筋炎);全身性アナフィラキシー又は過敏性反応、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対する)、昆虫刺傷アレルギーなどが挙げられる。
【0081】
3.中枢神経系(CNS)の疾患の治療
もう1つの実施形態では、本発明の化合物を、中枢神経系の疾患の治療を必要とする被験体に、治療上有効な量の任意の1種以上の本発明の化合物を投与することを含む、前記被験体において、中枢神経系の疾患を治療する方法において用いる。
【0082】
特定の実施形態では、CNS疾患は、神経変性疾患である。さらなる一実施形態では、神経変性疾患は、遺伝性神経変性疾患、例えば、ポリグルタミン増大疾患である遺伝性神経変性疾患である。一般に、神経変性疾患は、以下のように分類できる:
I.その他の目立った神経学的兆候のない、進行性認知症を特徴とする障害、例えば、アルツハイマー病;アルツハイマー型の老年性認知症;及びピック病(葉性萎縮症)。
II.進行性認知症と、その他の目立った神経学的異常が組み合わさった症候群、例えば、A)主に成人に表れる症候群(例えば、ハンチントン病、認知症と、運動失調及び/又はパーキンソン病、進行性核上性麻痺(スティール−リチャードソン−オルシェフスキー)、びまん性レビー小体病、及び皮質歯状核黒質変性症の症状が組み合わさった多系統萎縮症);及びB)主に小児又は若年成人に現われる症候群(例えば、ハラーホルデン−スパッツ病及び進行性家族性ミオクローヌスてんかん)。
III.姿勢及び運動の段階的に発生する異常の症候群、例えば、振戦麻痺(パーキンソン病)、線条体黒質変性症、進行性核上性麻痺、捻転ジストニア(捻転痙攣;変形性ジストニア)、痙性斜頚及びその他のジスキネジア、家族性振戦及びジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群。
IV.進行性運動失調の症候群、例えば、小脳変性症(例えば、小脳皮質変性症及びオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA));及び脊髄小脳変性症(フリードライヒ失調症及び関連障害)。
V.中枢自律神経系不全の症候群(シャイ−ドレーガー症候群)。
VI.感覚的変化を伴わない筋力低下及び消耗の症候群(運動ニューロン病、例えば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症(例えば、小児性脊髄性筋萎縮症(ウェルドニッヒ・ホフマン)、若年性脊髄性筋萎縮症(ウォルファルト−クーゲルベルグ−ベランダー)及びその他の形の家族性脊髄性筋萎縮症)、原発性側索硬化症、及び遺伝性痙性対麻痺。
VII.感覚的変化を伴う筋力低下及び消耗(進行性神経筋萎縮症;慢性家族性多発ニューロパシー)が組み合わさった症候群、例えば、腓骨筋萎縮症(シャルコー−マリー−トゥース)、肥大性間質性多発ニューロパシー(デジュリーヌ−ソッタ)、及び種々の形の慢性進行性ニューロパシー。
VIII.進行性失明の症候群、例えば、網膜の色素性変性症(網膜色素変性症)、及び遺伝性視神経萎縮症(レーバー病)。
【0083】
定義:
用語「治療」とは、その種々の文法上の形で、本発明に関連して、病状、疾患進行、疾患原因物質(例えば、細菌若しくはウイルス)又はその他の異常な状態の悪影響を、予防(すなわち、化学的予防)、治癒、逆転、減弱化、軽減、最小化、抑制又は停止することを指す。例えば、治療は、疾患の一症状(すなわち、必ずしもすべての症状ではない)を軽減すること又は疾患の進行を減弱化することを含んでもよい。いくつかの本発明の方法は、病原因子の物理的除去を含むので、技術者ならば、それらは、本発明の化合物が、病原因子に対する曝露の前に(予防的処置)、曝露と同時に投与される状況及び本発明の化合物が、病原因子に対す曝露後(かなり後であっても)に投与される状況において、同様に効果的であるということは認識するであろう。
【0084】
癌の治療とは、本明細書で用いる場合、哺乳類、例えば、ヒトにおいて、癌転移を含めた癌の進行を部分的に又は完全に阻害、遅延又は予防すること;癌転移を含めた癌の再発を阻害、遅延又は予防すること;癌の発生又は発達を予防(化学的予防)することを指す。
【0085】
本明細書で用いる場合、用語「治療上有効な量」とは、所望の治療効果又は生物学的効果を達成する任意の量を包含するものとする。治療効果は、治療されている疾患若しくは障害又は望まれる生物学的効果に応じて変わる。そのようなものとして、治療効果は、疾患若しくは障害と関連する症状の重篤度の低下及び/又は疾患の進行の阻害(部分若しくは完全)であってもよい。治療反応を引き出すのに必要とされる量は、被験体の年齢、健康、大きさ及び性別に基づいて決定できる。また、最適量は、治療に対する被験体の反応のモニタリングに基づいて決定してもよい。
【0086】
本発明では、化合物を、癌を治療又は予防するために用いる場合には、所望の生物学的反応とは、哺乳類、例えば、ヒトにおいて、癌転移を含めた癌進行を部分又は完全に阻害、遅延又は予防すること;癌転移を含めた癌の再発を阻害、遅延又は予防すること;癌の発生又は発達を予防(化学的予防)することである。
【0087】
さらに、本発明では、化合物を、チオレドキシン(TRX)媒介性疾患及び状態を治療及び/又は予防するために用いる場合には、治療上有効な量とは、所望の治療効果を引き出すために、治療を必要とする被験体において、生理学的に適したレベルのTRXを調節、例えば、増大、低減させるか、又は維持する量である。治療効果は、治療されている特定のTRX媒介性疾患又は状態に応じて変わる。そのようなものとして、治療効果は、疾患若しくは障害と関連する症状の重篤度の低下及び/又は疾患若しくは疾患の進行の阻害(部分若しくは完全)であってもよい。
【0088】
さらに、本発明では、化合物を、中枢神経系(CNS)の疾患又は障害を治療及び/又は予防するために用いる場合には、治療上有効な量とは、治療されている特定の疾患又は障害に応じて変わる。そのようなものとして、治療効果は、疾患若しくは障害と関連する症状の重篤度の低下及び/又は疾患若しくは障害の進行の阻害(部分若しくは完全)であってもよい。
【0089】
さらに、治療上有効な量は、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害する量であってもよい。
【0090】
さらに、治療上有効な量は、腫瘍性細胞の最終分化、細胞増殖の停止及び/若しくはアポトーシスを選択的に誘導する量又は腫瘍細胞の最終分化を誘導する量であってもよい。
【0091】
本発明の方法は、癌を有するヒト患者の治療又は化学的予防を対象とする。しかし、本方法はまた、その他の被験体における癌の治療においても有効であると思われる。「被験体」とは、本明細書で用いる場合、哺乳類などの動物、例えば、それだけには限らないが、霊長類(例えば、ヒト)、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又はその他のウシ亜科の動物、ヤギ・ヒツジ類、ウマ科、イヌ科、ネコ科、げっ歯類若しくはネズミ種を指す。
【0092】
ヒストン脱アセチル化酵素及びヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
本明細書において実証されるように、本発明の化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤としての改善された活性を示す。したがって、一実施形態では、本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素を、有効量の1種以上の本発明の化合物と接触させることを含む、ヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する方法に関する。
【0093】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)とは、その用語を本明細書で用いる場合には、ヌクレオソームのコアヒストンのアミノ末端テールにおいてリジン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素である。そのようなものとして、HDACは、ヒストンアセチル化酵素(HAT)と一緒になって、ヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンアセチル化は、遺伝子発現に影響を及ぼし、HDACの阻害剤、例えば、ヒドロキサム酸ベースのハイブリッド極性化合物スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、in vitroで形質転換された細胞の増殖停止、分化及び/又はアポトーシスを誘導し、in vivoで腫瘍増殖を阻害する。HDACは、構造相同性に基づいて3つのクラスに分類することができる。クラスIHDAC(HDAC1、2、3及び8)は、酵母RPD3タンパク質に対して類似性を有し、核に局在し、転写コリプレッサーと会合している複合体中に見られる。クラスIIHDAC(HDAC4、5、6、7及び9)は、酵母HDA1タンパク質と類似しており、核と細胞質の両方の細胞内局在を有する。クラスI及びIIHDACの両方とも、ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤、例えば、SAHAによって阻害される。クラスIIIHDACは、酵母SIR2タンパク質と関連する、構造的に離れたクラスのNAD依存性酵素を形成し、ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤によって阻害されない。
【0094】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤又はHDAC阻害剤は、本明細書で用いる場合、in vivo、in vitro又はその両方においてヒストンの脱アセチル化を阻害できる化合物である。そのようなものとして、HDAC阻害剤は、少なくとも1種のヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する。少なくとも1種のヒストンの脱アセチル化を阻害した結果として、アセチル化ヒストンの増大が生じ、アセチル化ヒストンの蓄積が、HDAC阻害剤の活性を評価するための適した生物学的マーカーである。したがって、アセチル化ヒストンの蓄積についてアッセイできる手順を用いて、注目する化合物のHDAC阻害活性を調べてもよい。ヒストン脱アセチル化酵素活性を阻害できる化合物はまた、その他の基質と結合してもよく、そのようなものとして、その他の生物学的に活性な分子、例えば、酵素を阻害できるということは理解される。また、本発明の化合物は、上記で示される任意のヒストン脱アセチル化酵素又は任意のその他のヒストン脱アセチル化酵素を阻害できるということも理解されなければならない。
【0095】
例えば、HDAC阻害剤を投与されている患者において、末梢単核細胞における、並びにHDAC阻害剤で治療された組織におけるアセチル化ヒストンの蓄積を、適した対照に対して調べてもよい。
【0096】
特定の化合物のHDAC阻害活性は、例えば、少なくとも1種のヒストン脱アセチル化酵の阻害を示す酵素アッセイを用いてin vitroで調べてもよい。さらに、特定の組成物で処理された細胞におけるアセチル化ヒストンの蓄積を調べることによって、化合物のHDAC阻害活性を決定してもよい。
【0097】
アセチル化ヒストンの蓄積についてのアッセイは、文献においてよく知られている。例えば、マークス(Marks),P.A.ら、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティチュート(Journal of the National Cancer Institute)92:1210〜1215頁、2000、バトラー(Butler),L.M.ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)60:5165〜5170頁(2000)、リコン(Richon),V.M.ら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)95:3003〜3007頁、1998及びヨシダ(Yoshida),M.ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)265:17174〜17179、1990参照のこと。
【0098】
例えば、HDAC阻害剤化合物の活性を調べるための酵素アッセイは以下のとおりに実施してもよい。手短には、アフィニティー精製されたヒトエピトープタグを付けた(Flag)HDAC1に対するHDAC阻害剤化合物の効果を、基質の不在下で酵素調製物を、示される量の阻害化合物とともに氷上で約20分間インキュベートすることによってアッセイしてもよい。基質([H]アセチル標識されたマウス赤白血病細胞由来のヒストン)を加えてもよく、このサンプルを30μLという総容積で、37℃で20分間インキュベートしてもよい。次いで、反応を停止してもよく、遊離された酢酸塩を抽出してもよく、放射能放出量をシンチレーションカウントによって求めてもよい。HDAC阻害化合物の活性を調べるのに有用な代替アッセイとして、BIOMOL Research Laboratories,Inc.,Plymouth Meeting,PAから入手可能な「HDAC蛍光活性アッセイ」;Drug Discovery Kit−AK−500」がある。
【0099】
In vivo研究は、以下のとおり実施してもよい。動物、例えば、マウスに、HDAC阻害化合物を腹腔内注射してもよい。選択した組織、例えば、脳、脾臓、肝臓などを、投与後、所定の時間で単離してもよい。ヒストンは、本質的に、ヨシダ(Yoshida)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)265:17174〜17179頁、1990によって記載されるように組織から単離してもよい。等量のヒストン(約1μg)を、15%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動してもよく、Hybond−Pフィルター(Amershamから入手可能)にトランスファーしてもよい。フィルターは、3%ミルクでブロッキングしてもよく、ウサギ精製ポリクローナル抗アセチル化ヒストンH4抗体(αAc−H4)及び抗アセチル化ヒストンH3抗体(αAc−H3)(Upstate Biotechnology,Inc.)を用いてプローブしてもよい。アセチル化ヒストンのレベルは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:5000)及びSuperSingal化学発光基質(Pierce)を用いて可視化してもよい。ヒストンタンパク質のローディングコントロールとして、並行ゲルを流し、クマシーブルー(CB)で染色してもよい。
【0100】
さらに、ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤は、p21WAF1遺伝子の発現をアップレギュレートすることがわかっている。p21WAF1タンパク質は、標準法を用いて、種々の形質転換された細胞においてHDAC阻害剤とともの培養の2時間以内に誘導される。p21WAF1遺伝子の誘導は、この遺伝子のクロマチン領域におけるアセチル化ヒストンの蓄積と関連している。したがって、p21WAF1の誘導は、形質転換された細胞におけるHDAC阻害剤によって引き起こされるG1細胞周期停止と関与していると認識されてもよい。
【0101】
併用療法
本発明の化合物は、単独で投与してもよいし、又は治療されている疾患若しくは障害に適したその他の療法と組合せて投与してもよい。別個の投与製剤が用いられる場合には、本発明の化合物及びその他の治療薬を、本質的に同じ時間に(同時に)投与してもよいし、別個にずれた時間で(連続して)投与してもよい。薬剤の組合せは、すべてのこれらの投与計画を含むと理解される。これら種々の方法での投与は、本発明の化合物及びその他の治療薬の有益な治療効果が、実質的に同じ時間に患者によって認識される限り、本発明に適している。一実施形態では、このような有益な効果は、各活性薬剤の標的血中レベル濃度が実質的に同じ時間に維持される場合に達成される。
【0102】
本化合物はまた、既知治療薬及び抗癌剤との組み合わせで有用であり得る。例えば、本化合物は、既知抗癌剤との組み合わせで有用である。目下のところ開示される化合物の、その他の抗癌剤又は化学療法薬との組合せは、本発明の範囲内である。このような薬剤の例は、V.T.デビタ(Devita)及びS.ヘルマン(Hellman)(編)による、キャンサー・プリンシプルズ・アンド・プラクティス・オブ・オンコロジー(Cancer Principles and Practice of Oncology)第6版(2001年2月15日)、Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見ることができる。当業者ならば、薬物及び関与する癌の個々の特徴に基づいて、どの組み合わせの薬剤が有用であるかを見分けることができる。このような抗癌剤として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤及びその他の血管新生阻害剤、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、アポトーシス誘導剤、細胞周期チェックポイントを干渉する薬剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤及び癌ワクチン。本化合物は、放射線療法と同時投与される場合に特に有用である。
【0103】
一実施形態では、本化合物はまた、以下をはじめとする既知抗癌剤との組合せにおいて有用であり得る:エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤及びその他の血管新生阻害剤。
【0104】
「エストロゲン受容体モジュレーター」とは、機序に関わらず、エストロゲンの、受容体との結合を干渉するか、阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレーターの例として、それだけには限らないが、ジエチルスチベストロール、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルオキシメステロン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン及びSH646が挙げられる。
【0105】
その他のホルモン剤として、以下が挙げられる:アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール及びテトラゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール及びミフェプリストン。
【0106】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とは、機序に関わらず、アンドロゲンの、受容体との結合を干渉するか、阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレーターの例として、フィナステリド及びその他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール及び酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0107】
「レチノイド受容体モジュレーター」とは、機序に関わらず、レチノイドの、受容体との結合を干渉するか、阻害する化合物を指す。このようなレチノイド受容体モジュレーターの例として、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチル−オルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド及びN−4−カルボキシフェニルレチナミドが挙げられる。
【0108】
「細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤」とは、細胞死を引き起こすか、又は細胞が機能するのを直接的に干渉することによって主に細胞増殖を阻害するか、又は有糸分裂を阻害若しくは干渉する化合物、例えば、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、低酸素で活性化可能な化合物、微小管阻害剤/微小管安定化剤、有糸分裂キネシンの阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、有糸分裂進行に関与しているキナーゼの阻害剤、代謝拮抗剤、生物応答修飾剤、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血性増殖因子、モノクローナル抗体標的治療薬、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤及びユビキチンリガーゼ阻害剤を指す。
【0109】
細胞傷害剤の例として、それだけには限らないが、セルテネフ、カケクチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、ダカルバジン、プロカルバジン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール、ラニムスチン、ホテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、ポルフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファアミド、GPX100、(トランス、トランス、トランス)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、アントラセンジオン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、プリカトマイシン(plicatomycin)、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755及び4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニルダウノルビシン(WO00/50032参照のこと)が挙げられる。
【0110】
低酸素で活性化可能な化合物の一例として、トリラパザミンがある。
【0111】
プロテアソーム阻害剤の例として、それだけには限らないが、ラクタシスチン及びボルテゾミブが挙げられる。
【0112】
微小管阻害剤/微小管安定化剤の例として、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、ビノレルビン、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP−16)及びテニポシド(VM−26))、パクリタキセル、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポシロン(例えば、米国特許第6,284,781号及び同6,288,237号参照のこと)及びBMS188797が挙げられる。
【0113】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの例として、トポテカン、ヒカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャートリュウシン(chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a、5aB、8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロオキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−デ]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン及びジメスナがある。
【0114】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例は、PCT公開WO01/30768、WO01/98278、WO03/050,064、WO03/050,122、WO03/049,527、WO03/049,679、WO03/049,678及びWO03/39460並びに係属PCT出願番号US03/06403(2003年3月4日出願された)、US03/15861(2003年5月19日に出願された)、US03/15810(2003年5月19日に出願された)、US03/18482(2003年6月12日に出願された)及びUS03/18694(2003年6月12日に出願された)に記載されている。一実施形態では、有糸分裂キネシンの阻害剤として、それだけには限らないが、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤、Kif14の阻害剤、Mphosph1の阻害剤及びRab6−KIFLの阻害剤が挙げられる。
【0115】
「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤」の例として、それだけには限らないが、SAHA、TSA、オキサムフラチン、PXD101、MG98、バルプロ酸及びスクリプタイドが挙げられる。その他のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のさらなる参照は、以下の原稿に見ることができる;ミラー(Miller)、T.A.らジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)46(24):5097〜5116頁(2003)。
【0116】
「有糸分裂進行に関与しているキナーゼの阻害剤」として、それだけには限らないが、オーロラキナーゼの阻害剤、ポロ様キナーゼの阻害剤(PLK;特に、PLK−1の阻害剤)、bub−1の阻害剤及びbub−R1の阻害剤が挙げられる。「オーロラキナーゼ阻害剤」の一例として、VX−680がある。
【0117】
「抗増殖剤」として、アンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチド、例えば、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231及びINX3001並びに代謝拮抗剤、例えば、エノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキサート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビン・オクホスフェート(cytarabine ocfosfate)、ホステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクチナサイジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン(6−TG)、メルカプトプリン(6−MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2−CDA)、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシ−メチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スウェインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン及び3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒドチオセミカルバゾンが挙げられる。
【0118】
モノクローナル抗体標的治療薬の例として、癌細胞特異的又は標的細胞特異的モノクローナル抗体と結合している細胞傷害剤又は放射性同位元素を有する治療薬が挙げられる。例として、ベキサールが挙げられる。
【0119】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害剤を指す。使用してもよいHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例として、それだけには限らないが、ロバスタチン(メバコール(登録商標);米国特許第4,231,938号、同4,294,926号及び同4,319,039号参照のこと)、シンバスタチン(ゾコール(登録商標);米国特許第4,444,784号、同4,820,850号及び同4,916,239号を参照のこと)、プラバスタチン(プラバコール(登録商標);米国特許第4,346,227号、同4,537,859号、同4,410,629号、同5,030,447号及び同5,180,589号参照のこと)、フルバスタチン(レスコール(登録商標);米国特許第5,354,772号、同4,911,165号、同4,929,437号、同5,189,164号、同5,118,853号、同5,290,946号及び同5,356,896号参照のこと)及びアトルバスタチン(リピトール(登録商標);米国特許第5,273,995号、同4,681,893号、同5,489,691号及び同5,342,952号参照のこと)が挙げられる。本方法において使用してもよいこれらの及びさらなるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式は、M.ヤルパニ(Yalpani)、「コレステロール・ロワーリング・ドラッグス(Cholesterol Lowering Drugs)」、ケミストリー・アンド・インダストリー(Chemistry & Industry)、85〜89頁(1996年2月5日)の87頁及び米国特許第4,782,084号及び同4,885,314号に記載されている。本明細書で用いる場合、用語HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、薬学的に許容されるラクトン及びオープンアシッド形(すなわち、ラクトン環が開環されて遊離酸を形成している)並びにHMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の塩及びエステルの形のすべてを含み、したがって、このような塩、エステル、オープンアシッド及びラクトンの形の使用は本発明の範囲内に含まれる。
【0120】
「プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤」とは、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ酵素のうち任意の1種又は任意の組合せを阻害する化合物、例えば、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ(FPTアーゼ)、ゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼI型(GGPTアーゼ−I)及びゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼII型(GGPTアーゼ−II、Rab GGPTアーゼとも呼ばれる)を指す。
【0121】
プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の例は、以下の刊行物及び特許に見ることができる:WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987、米国特許第5,420,245号、同5,523,430号、同5,532,359号、同5,510,510号、同5,589,485号、同5,602,098号、欧州特許公報0618221号、同0675112号、同0604181号、同0696593号、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514、米国特許第5,661,152号、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736、米国特許第5,571,792号、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436及び米国特許第5,532,359号。血管新生に対するプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の役割の一例については、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(European Journal of Cancer)第35巻、第9号、1394〜1401頁(1999)参照のこと。
【0122】
「血管新生抑制剤」とは、機序にかかわらず、新しい血管の形成を阻害する化合物を指す。血管新生抑制剤の例としては、それだけには限らないが、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤、上皮由来、繊維芽細胞由来又は血小板由来増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、エリスロポエチン(エポエチン−α)、顆粒球−CSF(フィルグラスチム)、顆粒球、マクロファージ−CSF(サルグラモスチム)、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)様アスピリン及びイブプロフェン並びに選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤様セレコキシブ及びロフェコキシブ(PNAS、第89巻、7384頁(1992);JNCI、第69巻、475頁(1982);アーカイブ・オブ・オフタルモロジー(Archive of Opthalmology)第108巻、573頁(1990);アナトミカル・レコード(Anatomical Record)、第238巻、68頁(1994);FEBSレターズ(FEBS Letters)、第372巻、83頁(1995);クリニカル・オルソパイディクス(Clinical Orthopaedics)第313巻、76頁(1995);ジャーナル・オブ・モレキュラー・エンドクリノロジー(Journal of Molecular Endocrinology)、第16巻、107頁(1996);ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー(Japanese Journal of Pharmacology)、第75巻、105頁(1997);キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、第57巻、1625頁(1997);セル(Cell)、第93巻、705頁(1998);インターナショナル・ジャーナル・オブ・モレキュラー・メディシン(International Journal of Molecular Medicine)、第2巻、715頁(1998);ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第274巻、9116頁(1999))、ステロイド性抗炎症薬(例えば、副腎皮質ステロイド、ミネラルコルチコイド、デキサミタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾン)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンジオテンシンIIアンタゴニスト(フェルナンデス(Fernandez)ら、ジャーナル・オブ・ラボラトリー・アンド・クリニカル・メディシン(Journal of Laboratory and Clinical Medicine)、105:141〜145頁(1985)参照のこと)及びVEGFに対する抗体(ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、第17巻、963〜968頁(1999年10月);キム(Kim)ら、ネイチャー(Nature)、362、841〜844頁(1993);WO00/44777及びWO00/61186参照のこと)が挙げられる。
【0123】
血管新生を調節又は阻害し、また、本発明の化合物と併用してもよいその他の治療薬として、血液凝固及び繊維素溶解システムを調節又は阻害する薬剤が挙げられる(クリニカル・ケミストリー・アンド・ラボラトリー・メディシン(Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)38:679〜692頁(2000)における総説を参照のこと)。血液凝固及び繊維素溶解経路を調節又は阻害するような薬剤の例として、それだけには限らないが、ヘパリン(スロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Thrombosis and Haemostasis)80:10〜23頁(1998)参照)、低分子量ヘパリン及びカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビン活性化可能繊維素溶解阻害剤[TAFIa]の阻害剤としても知られる)(スロンボシス・リサーチ(Thrombosis Research)101:329〜354頁(2001)参照のこと)が挙げられる。TAFIa阻害剤は、PCT公開WO03/013,526及び米国特許出願番号60/349,925号(2002年1月18日に出願された)に記載されている。
【0124】
「細胞周期チェックポイントを干渉する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを伝達するプロテインキナーゼを阻害し、それによって癌細胞をDNA損傷剤に対して感作させる化合物を指す。このような薬剤として、ATR、ATM及びChk1及びChk2キナーゼの阻害剤並びにcdk及びcdcキナーゼ阻害剤が挙げられ、7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(Cyclacel)及びBMS−387032によって具体的に示される。
【0125】
「受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤」とは、RTK、ひいては、発癌及び腫瘍進行に関与している機序を阻害する化合物を指す。このような薬剤として、c−Kit、Eph、PDGF、Flt3及びc−Metの阻害剤が挙げられる。さらなる薬剤として、ブメ−ジェンセン(Bume−Jensen)及びハンター(Hunter)、ネイチャー(Nature)、411:355〜365頁、2001によって記載されて示されるRTKの阻害剤が挙げられる。
【0126】
「細胞増殖及び生存シグナル伝達経路の阻害剤」とは、細胞表面受容体及びそれらの表面受容体のシグナル変換カスケード下流を阻害する医薬品を指す。このような薬剤として、EGFRの阻害剤の阻害剤(例えば、ゲフィチニブ及びエルロチニブ)、ERB−2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ)、IGFRの阻害剤、CD20の阻害剤(リツキシマブ)、サイトカイン受容体の阻害剤、METの阻害剤、PI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)、セリン/トレオニンキナーゼ(例えば、それだけには限らないが、例えば、WO03/086404、WO03/086403、WO03/086394、WO03/086279、WO02/083675、WO02/083139、WO02/083140及びWO02/083138)に記載されるようなAktの阻害剤)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040及びPD−098059)及びmTORの阻害剤(例えば、ワイエス(Wyeth)CCI−779及びアリアド(Ariad)AP23573)が挙げられる。このような薬剤は、小分子阻害剤化合物及び抗体アンタゴニストを含む。
【0127】
「アポトーシス誘導剤」として、TNF受容体ファミリーメンバーのアクチベーターが挙げられる(TRAIL受容体を含む)。
【0128】
本発明はまた、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの組合せを包含する。この明細書の目的上、COX−2の選択的阻害剤であるNSAIDは、細胞又はミクロソームアッセイによって評価される、COX−1のIC50を上回るCOX−2のIC50の比によって測定される、少なくとも100倍の、COX−1を上回るCOX−2の阻害に対する特異性を有するものとして定義される。このような化合物として、それだけには限らないが、すべて参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,474,995号、同5,861,419号、同6,001,843号、同6,020,343号、同5,409,944号、同5,436,265号、同5,536,752号、同5,550,142号、同5,604,260号、同5,698,584号、同5,710,140号、WO94/15932、米国特許第5,344,991号、同5,134,142号、同5,380,738号、同5,393,790号、同5,466,823号、同5,633,272号及び同5,932,598号に開示されるものが挙げられる。
【0129】
本治療方法において特に有用であるCOX−2の阻害剤として、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン及び5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン又はその薬学的に許容される塩がある。
【0130】
COX−2の特異的阻害剤として記載されており、ひいては、本発明において有用である化合物として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:パラコキシブ、セレブレックス(登録商標)及びベクストラ(登録商標)又はその薬学的に許容される塩。
【0131】
血管新生抑制剤のその他の例として、それだけには限らないが、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクタ−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸マンノペンタオースホスフェート、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が挙げられる。
【0132】
上記で用いた「インテグリン遮断薬」とは、生理学的リガンドの、αvβ3インテグリンとの結合を選択的に拮抗、阻害、又は対抗する化合物、生理学的リガンドの、αvβ5インテグリンとの結合を選択的に拮抗、阻害、又は対抗する化合物、生理学的リガンドの、αvβ3インテグリン及びαvβ5インテグリンの両方との結合を拮抗、阻害、又は対抗する化合物及び毛細血管内皮細胞上に発現される特定のインテグリン(類)の活性を拮抗、阻害、又は対抗する化合物を指す。この用語はまた、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1及びα6β4インテグリンのアンタゴニストも指す。この用語はまた、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1及びα6β4インテグリンの任意の組合せのアンタゴニストも指す。
【0133】
チロシンキナーゼ阻害剤のいくつかの具体的な例として、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、イマチニブ(STI571)、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン及びEMD121974が挙げられる。
【0134】
抗癌化合物以外の化合物との組合せも、本方法に包含される。例えば、本件特許請求される化合物の、PPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの組合せは、特定の悪性腫瘍の治療において有用である。PPAR−γ及びPPAR−δとは、核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ及びδである。内皮細胞上でのPPAR−γの発現及び血管新生におけるその関与は、文献に報告されている(ジャーナル・オブ・カルディオバスキュラー・ファルマコロジー(Journal of Cardiovascular Pharmacology)1998;31:909〜913頁;ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)1999;274:9116〜9121頁;インベスティゲーション・オフタルモロジー・アンド・ビジュアル・サイエンス(Investigation Ophthalmology and Visual Science)2000;41:2309〜2317頁参照のこと)。より最近、PPAR−γアゴニストは、in vitroでVEGFに対する血管新生反応を阻害することがわかり、トログリタゾン及びマレイン酸ロシグリタゾンは両方とも、マウスにおいてレチナール新血管新生の発生を阻害する(アーカイブ・オブ・オフタルモロジー(Archive of Ophthalmology)2001;119:709〜717頁)。PPAR−γアゴニスト及びPPAR−γ/αアゴニストの例として、それだけには限らないが、チアゾリジンジオン(例えば、DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン及びピオグリタゾン)、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンズイソオキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN09/782,856に開示される)及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(USSN60/235,708及び60/244,697に開示される)が挙げられる。
【0135】
本発明のもう1つの実施態様は、ここで開示される化合物の、癌の治療のための遺伝子療法との併用である。癌を治療するための遺伝子戦略の概観については、ホール(Hall)ら(アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス(American Journal of Human Genetics)61:785〜789頁、1997)及びクフェ(Kufe)ら(キャンサー・メディシン(Cancer Medicine)、第5版、876〜889頁、BCデッカー(Decker)、ハミルトン(Hamilton)2000)参照のこと。遺伝子療法は、任意の腫瘍抑制遺伝子を送達するために使用してもよい。このような遺伝子の例として、それだけには限らないが、組換えウイルス媒介性遺伝子導入によって送達されてもよいp53(例えば、米国特許第6,069,134号参照のこと)、Duc−4、NF−1、NF−2、RB、WT1、BRCA1、BRCA2、uPA/uPARアンタゴニスト(ジーン・セラピー(Gene Therapy)、1998年8月;5(8):1105〜13頁中、「アデノウイルス・メディエイテッド・デリバリー・オブ・ア・ユーピーエー/ユーピーエーアール・アンタゴニスト・サプレセズ・アンギオジェネシス−ディペンデント・チューモア・グロース・アンド・ディセミネーション・イン・マイス(Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice)」、及びインターフェロンγ(ジャーナル・オブ・イムノロジー(Journal of Immunology)2000;164:217〜222頁)が挙げられる。
【0136】
本発明の化合物はまた、固有の多剤耐性(MDR)、特に、輸送体タンパク質の高レベルの発現と関連しているMDRの阻害剤と併用投与してもよい。このようなMDR阻害剤として、p−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤、例えば、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853及びPSC833(valspodar)が挙げられる。
【0137】
本発明の化合物は、本発明の化合物の、単独又は放射線療法とともの使用に起因し得る、悪心又は嘔吐、例えば、急性、遅発性、晩期及び先行嘔吐を治療するための制吐剤と併用してもよい。嘔吐の予防又は治療には、本発明の化合物をその他の制吐剤、特に、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン及びザチセトロン(zatisetron)、GABAB受容体アゴニスト、例えば、バクロフェン、コルチコステロイド、例えば、デカドロン(デキサメタゾン)、ケナログ、アリストコート、ナサリド(Nasalide)、プレフェリド(Preferid)、ベネコルテン(Benecorten)又は米国特許第2,789,118号、同2,990,401号、同3,048,581号、同3,126,375号、同3,929,768号、同3,996,359号、同3,928,326号及び同3,749,712号に開示されるものなどのその他のもの;抗ドーパミン、例えば、フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン及びメソリダジン)、メトクロプラミド又はドロナビノールと併用してもよい。一実施態様では、本化合物の投与に起因し得る嘔吐の治療又は予防のための、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト及びコルチコステロイドから選択される制吐剤をアジュバンととして投与する。
【0138】
本発明の化合物と組合せたニューロキニン−1受容体アンタゴニストの使用は、例えば、米国特許第5,162,339号、同5,232,929号、同5,242,930号、同5,373,003号、同5,387,595号、同5,459,270号、同5,494,926号、同5,496,833号、同5,637,699号、同5,719,147号;欧州特許公報EP0360390、同0394989、同0428434、同0429366、同0430771、同0436334、同0443132、同0482539、同0498069、同0499313、同0512901、同0512902、同0514273、同0514274、同0514275、同0514276、同0515681、同0517589、同0520555、同0522808、同0528495、同0532456、同0533280、同0536817、同0545478、同0558156、同0577394、同0585913、同0590152、同0599538、同0610793、同0634402、同0686629、同0693489、同0694535、同0699655、同0699674、同0707006、同0708101、同0709375、同0709376、同0714891、同0723959、同0733632及び同0776893;PCT国際特許公報WO90/05525、同90/05729、同91/09844、同91/18899、同92/01688、同92/06079、同92/12151、同92/15585、同92/17449、同92/20661、同92/20676、同92/21677、同92/22569、同93/00330、同93/00331、同93/01159、同93/01165、同93/01169、同93/01170、同93/06099、同93/09116、同93/10073、同93/14084、同93/14113、同93/18023、同93/19064、同93/21155、同93/21181、同93/23380、同93/24465、同94/00440、同94/01402、同94/02461、同94/02595、同94/03429、同94/03445、同94/04494、同94/04496、同94/05625、同94/07843、同94/08997、同94/10165、同94/10167、同94/10168、同94/10170、同94/11368、同94/13639、同94/13663、同94/14767、同94/15903、同94/19320、同94/19323、同94/20500、同94/26735、同94/26740、同94/29309、同95/02595、同95/04040、同95/04042、同95/06645、同95/07886、同95/07908、同95/08549、同95/11880、同95/14017、同95/15311、同95/16679、同95/17382、同95/18124、同95/18129、同95/19344、同95/20575、同95/21819、同95/22525、同95/23798、同95/26338、同95/28418、同95/30674、同95/30687、同95/33744、同96/05181、同96/05193、同96/05203、同96/06094、同96/07649、同96/10562、同96/16939、同96/18643、同96/20197、同96/21661、同96/29304、同96/29317、同96/29326、同96/29328、同96/31214、同96/32385、同96/37489、同97/01553、同97/01554、同97/03066、同97/08144、同97/14671、同97/17362、同97/18206、同97/19084、同97/19942及び同97/21702;及び英国特許公報第2266529号、同2268931号、同2269170号、同2269590号、同2271774号、同2292144号、同2293168号、同2293169号及び同2302689号に十分に記載されている。このような化合物の調製は、参照により本明細書に組み込まれる前記の特許及び刊行物に十分に記載されている。
【0139】
一実施態様では、本発明の化合物と併用するためのニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、米国特許第5,719,147に記載される、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0140】
本発明の化合物はまた、貧血の治療において有用な薬剤とともに投与してもよい。このような貧血治療薬として、例えば、連続赤血球新生受容体アクチベーター(例えば、エポエチンα)がある。
【0141】
本発明の化合物はまた、好中球減少症の治療において有用である薬剤とともに投与してもよい。このような好中球減少症治療薬として、例えば、好中球の産生及び機能を調節する造血増殖因子、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子、(G−CSF)がある。G−CSFの例として、フィルグラスチムが挙げられる。
【0142】
本発明の化合物はまた、免疫増強薬、例えば、レバミソール、カルメットゲラン桿菌、オクトレオチド、イソプリノシン及びザダキシンとともに投与してもよい。
【0143】
本発明の化合物はまた、ビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホネート、ビスホスホン酸及びジホスホン酸を含むと理解される)と組合せて、癌、例えば、骨癌を治療又は予防するのに有用であり得る。ビスホスホネートの例として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:エチドロネート(ダイドロネル)、パミドロネート(アレディア)、アレンドロネート(フォサマックス)、リセドロネート(アクトネル)、ゾレドロネート(ゾメタ)、イバンドロネート(ボニバ)、インカドロネート又はシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネート及びチルドロネート並びにありとあらゆるその薬学的に許容される塩、誘導体、水和物及び混合物。
【0144】
本発明の化合物はまた、アロマターゼ阻害剤と組合せて、乳癌を治療又は予防するのに有用であってもよい。アロマターゼ阻害剤の例として、それだけには限らないが、アナストロゾール、レトロゾール及びエキセメスタンが挙げられる。
【0145】
本発明の化合物はまた、siRNA治療薬と組合せて、癌を治療又は予防するのに有用であってもよい。
【0146】
本発明の化合物はまた、腫瘍性細胞の最終分化を誘導する化合物と組合せて、癌を治療又は予防するのに有用であってもよい。適した分化剤として、以下の参照文献のいずれか1つ以上に開示される化合物が挙げられ、参照文献の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
a)極性化合物(マークス(Marks)ら(1987);フレンド(Friend),C.、シェル(Scher),W.、ホランド(Holland),J.W.及びサトー(Sato),T.(1971)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)68:378−382;タナカ(Tanaka),M.、レビー(Levy),J.、テラダ(Terada),M.、ブレスロウ(Breslow),R.、リフキンド(Rifkind),R.A.及びマークス(Marks),P.A.(1975)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)72:1003−1006;リューベン(Reuben),R.C.、ワイフ(Wife),R.L.、ブレスロウ(Breslow),R.、リフキンド(Rifkind),R.A.及びマークス(Marks),P.A.(1976)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)73:862−866);
b)ビタミンD及びレチノイン酸の誘導体(アベ(Abe),E.、ミヤウラ(Miyaura),C.、サカガミ(Sakagami),H.、タケダ(Takeda),M.、コンノ(Konno),K.、ヤマザキ(Yamazaki),T.、ヨシカ(Yoshika),S.及びスダ(Suda),T.(1981)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)78:4990−4994;シュワルツ(Schwartz),E.L.、スノビー(Snoddy),J.R.、クリュイター(Kreutter),D.、ラスムッセン(Rasmussen),H.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1983)プロシーディングス・オブ・ジ・アメリカン・アソシエーション・フォー・キャンサー・リサーチ(Proceedings of the American Association for Cancer Research)24:18;タネナガ(Tanenaga),K.、ホズミ(Hozumi),M.及びサカガミ(Sakagami),Y.(1980)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)40:914−919);
c)ステロイドホルモン(ロテム(Lotem),J.及びサックス(Sachs),L.(1975)インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International Journal of Cancer)15:731−740);
d)増殖因子(サックス(Sachs),L.(1978)ネイチャー(Nature)(ロンドン)274:535、メトカルフ(Metcalf),D.(1985)サイエンス(Science)229:16−22);
e)プロテアーゼ(シェル(Scher),W.、シェル(Scher),B.M.及びワックスマン(Waxman),S.(1983)エクスペリメンタル・ヘマトロジー(Experimental Hematology)11:490−498;シェル(Scher),W.、シェル(Scher),B.M.及びワックスマン(Waxman),S.(1982)バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コニュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)109:348−354);
f)腫瘍プロモーター(ヒューバーマン(Huberman),E.及びキャラハム(Callaham),M.F.(1979)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)76:1293−1297;ロッテム(Lottem),J.及びサックス(Sachs),L.(1979)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)76:5158−5162)及び
g)DNA又はRNA合成の阻害剤(シュワルツ(Schwartz),E.L.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1982)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)42:2651−2655、テラダ(Terada),M.、エプナー(Epner),E.、ヌーデル(Nudel),U.、サルモン(Salmon),J.、フィバッチ(Fibach),E.、リフキンド(Rifkind),R.A.及びマークス(Marks)、P.A.(1978)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)75:2795−2799;モリン(Morin),M.J.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1984)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)44:2807−2812;シュワルツ(Schwartz),E.L.、ブラウン(Brown),B.J.、ニーレンバーグ(Nierenberg),M.、マルシュ(Marsh),J.C.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1983)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)43:2725−2730;スガノ(Sugano),H.、フルサワ(Furusawa),M.、カワグチ(Kawaguchi),T.及びイカワ(Ikawa),Y.(1973)ビブリオテカ・ヘマトロジカ(Bibliotheca Hematologica)39:943−954;エバート(Ebert),P.S.、ワース(Wars),I.及びブエル(Buell),D.N.(1976)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)36:1809−1813;ハヤシ(Hayashi),M.、オカベ(Okabe),J.及びホズミ(Hozumi),M.(1979)ガン(Gann)70:235−238)。
【0147】
本発明の化合物はまた、γセクレターゼ阻害剤と組合せて、癌を治療又は予防するのに有用であってもよい。
【0148】
治療上有効な量の本発明の化合物を、放射線療法と組合せて、及び/又は、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害性細胞分裂停止剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、固有の多剤耐性の阻害剤、制吐剤、貧血の治療において有用な薬剤、好中球減少症の治療において有用な薬剤、免疫増強剤、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療薬、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤及び細胞周期チェックポイントを干渉する薬剤から選択される第2の化合物と組合せて投与することを含む、癌を治療する方法が特許請求の範囲に含まれる。
【0149】
本発明の化合物はまた、以下の治療薬と組合せて、有用である:アバレリックス(プレナキシス・デポー(Plenaxis depot)(登録商標));アルデスロイキン(プロキン(Prokine)(登録商標));アルデスロイキン(プロロイキン(Proleukin)(登録商標));アレムツヅマブ(カンパス(登録商標));アリトレチノイン(パンレチン(登録商標));アロプリノール(ジロプリム(Zyloprim)(登録商標));アルトレタミン(ヘキサレン(登録商標));アミホスチン(エチオール(Ethyol)(登録商標));アナストロゾール(アリミデックス(登録商標));三酸化ヒ素(トリセノックス(登録商標));アスパラギナーゼ(エルスパール(Elspar)(登録商標));アザシチジン(ビダザ(Vidaza)(登録商標));ベバクジマブ(bevacuzimab)(アバスチン(登録商標));ベキサロテンカプセル(タルグレチン(登録商標));ベキサロテンゲル(タルグレチン(登録商標));ブレオマイシン(ブレノキサン(Blenoxane)(登録商標));ボルテゾミブ(ベルケード(登録商標));ブスルファン静脈内(ブスルフェクス(登録商標));ブスルファン経口(ミレラン(登録商標));カルステロン(メトサルブ(Methosarb)(登録商標));カペシタビン(ゼローダ(登録商標));カルボプラチン(パラプラチン(登録商標));カルムスチン(BCNU(登録商標)、BiCNU(登録商標));カルムスチン(グリアデル(登録商標));ポリフェプロサン(Polifeprosan)20インプラントととものカルムスチン(グリアデル ウエハー(登録商標));セレコキシブ(セレブレックス(登録商標));セツキシマブ(アービタックス(登録商標));クロラムブシル(ロイケラン(登録商標));シスプラチン(プラチノール(登録商標));クラドリビン(ロイスタチン(登録商標)、2−CdA(登録商標));クロファラビン(クロラー(Clolar)(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)、ネオサール(Neosar)(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン注射(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン錠剤(登録商標));シタラビン(シトサール(Cytosar)−U(登録商標));シタラビンリポソーム(デポシト(DepoCyt)(登録商標));ダカルバジン(DTIC−ドム(Dome)(登録商標));ダクチノマイシン、アクチノマイシンD(コスメゲン(登録商標));ダルベポエチンアルファ(アラネスプ(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(ダヌオキソーム(DanuoXome)(登録商標));ダウノルビシン、ダウノマイシン(ダウノルビシン(登録商標));ダウノルビシン、ダウノマイシン(セルビジン(登録商標));デニロイキンジフチトクス(オンタック(Ontak)(登録商標));デクスラゾキサン(ジネカード(Zinecard)(登録商標));ドセタキセル(タキソテール(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシンPFS(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、ルベックス(Rubex)(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシンPFS注射(登録商標));ドキソルビシンリポソーム(ドキシル(Doxil)(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(ドロモスタノロン(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(マステロン注射(登録商標));エリオットB溶液(Elliott’s B Solution(登録商標));エピルビシン(エレンス(Ellence)(登録商標));エポエチンアルファ(エポゲン(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));エストラムスチン(エムシト(Emcyt)(登録商標));リン酸エトポシド(エトポフォス(Etopophos)(登録商標));エトポシド、VP−16(ベプシド(登録商標));エキセメスタン(アロマシン(登録商標));フィルグラスチム(ニューポジェン(登録商標));フロクスウリジン(動脈内)(FUDR(登録商標));フルダラビン(フルダラ(登録商標));フルオロウラシル、5−FU(アドルシル(Adrucil)(登録商標));フルベストラント(ファスロデックス(登録商標));ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標));ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(登録商標));酢酸ゴセレリン(ゾラデックスインプラント(登録商標));酢酸ゴセレリン(ゾラデックス(登録商標));酢酸ヒストレリン(ヒストレリンインプラント(登録商標));ヒドロキシ尿素(ハイドレア(登録商標));イブリツモマブ・ティウキセタン(ゼバリン(登録商標));イダルビシン(イダマイシン(登録商標));イホスファミド(IFEX(登録商標));メシル酸イマチニブ(グリーベック(登録商標));インターフェロンアルファ2a(ロフェロンA(登録商標));インターフェロンアルファ−2b(イントロンA(登録商標));イリノテカン(カンプトサール(登録商標));レナリドマイド(レブリミド(登録商標));レトロゾール(フェマーラ(登録商標));ロイコボリン(ウェルコボリン(Wellcovorin)(登録商標)、ロイコボリン(登録商標));酢酸ロイプロリド(エリガード(登録商標));レバミソール(エルガミソル(Ergamisol)(登録商標));ロムスチン、CCNU(CeeBU(登録商標));メクロレタミン、ナイトロジェンマスタード(マスタージェン(登録商標));酢酸メゲストロール(メゲース(登録商標));メルファラン、L−PAM(アルケラン(登録商標));メルカプトプリン、6−MP(プリネトール(登録商標));メスナ(メスネックス(登録商標));メスナ(メスネックスタブ(登録商標));メトトレキサート(メトトレキサート(登録商標));メトキサレン(ウバデックス(Uvadex)(登録商標));マイトマイシンC(ムタマイシン(登録商標));ミトタン(リソドレン(登録商標));ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標));フェンプロピオン酸ナンドロロン(デュラボリン−50(登録商標));ネララビン(アラノン(Arranon)(登録商標));ノフェツモマブ(Nofetumomab)(ベルルマ(Verluma)(登録商標));オプレルベキン(ニューメガ(Neumega)(登録商標));オキサリプラチン(エロキサチン(登録商標));パクリタキセル(パキセン(Paxene)(登録商標));パクリタキセル(タキソール(登録商標));パクリタキセルタンパク質結合粒子(アブラキサン(登録商標));パリフェルミン(ケピバンス(Kepivance)(登録商標));パミドロネート(アレディア(登録商標));ペガデマーゼ(アダジェン(ペガデマーゼウシ)(登録商標));ペガスパルガーゼ(オンカスパール(Oncaspar)(登録商標));ベグフィルグラスチム(Pegfilgrastim)(ニューラスタ(登録商標));ペメトレキセド二ナトリウム(アリムタ(登録商標));ペントスタチン(ニペント(Nipent)(登録商標));ピポブロマン(ベルサイト(Vercyte)(登録商標));プリカマイシン、ミトラマイシン(ミトラシン(Mithracin)(登録商標));ポルフィマーナトリウム(フォトフリン(登録商標));プロカルバジン(マツラン(登録商標));キナクリン(アタブリン(登録商標));ラスブリカーゼ(エリテック(Elitek)(登録商標));リツキシマブ(リツキサン(登録商標));サルグラモスチム(ロイキン(登録商標));サルグラモスチム(プロキン(Prokine)(登録商標));ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標));ストレプトゾシン(ザノサール(登録商標));マレイン酸スニチニブ(ステント(Sutent)(登録商標));タルク(スクレロソール(登録商標));タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標));テモゾロミド(テモダール(登録商標));テニポシド、VM−26(ブモン(Vumon)(登録商標));テストラクトン(テスラック(Teslac)(登録商標));チオグアニン、6−TG(チオグアニン(登録商標));チオテパ(チオプレックス(Thioplex)(登録商標));トポテカン(ハイカムチン(登録商標));トレミフェン(フェアストン(登録商標));トシツモマブ(ベキサール(登録商標));トシツモマブ/I−131トシツモマブ(ベキサール(登録商標));トラスツズマブ(ヘルセプチン(登録商標));トレチノイン、ATRA(ベサノイド(登録商標));ウラシルマスタード(ウラシルマスタードカプセル(登録商標));バルルビシン(バルスター(Valstar)(登録商標));ビンブラスチン(ベルバン(Velban)(登録商標));ビンクリスチン(オンコビン(登録商標));ビノレルビン(ナベルビン(登録商標));ビノレルビン(ナベルビン(登録商標));ゾレドロネート(ゾメタ(登録商標)及びゾレドロン酸(ゾメタ(登録商標))。
【0150】
これらのアプローチすべての、本明細書に記載される、本発明の化合物と組合せた使用は、本発明の範囲内にある。
【0151】
投与量及び投与スケジュール
本発明の化合物を利用する投与計画は、種類、種、年齢、体重、性別及び治療されている癌の種類、治療される疾患の重篤度(すなわち、病期)、投与経路、患者の腎機能及び肝機能並びに用いられる個々の化合物又はその塩をはじめとする種々の因子に従って選択されてもよい。当業の医師又は獣医ならば、治療するため、例えば、疾患の進行を予防、阻害(完全又は部分的に)又は停止するための、必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0152】
経口投与には、適した一日用量は、例えば、1日1回、1日2回又は1日3回、連続で(毎日)、又は間欠的に(例えば、1週間に3〜5日)経口投与される約5〜4000mg/mである。例えば、本発明の化合物の用量は、所望の疾患を治療するために用いられる場合には、1日あたり約2mg〜約2000mgの範囲であってもよい。
【0153】
本発明の化合物は、1日1回(QD)投与してもよいし、1日2回(BID)及び1日3回(TID)など複数回の1日用量に分割してもよい。したがって、1日1回投与するには、適切に調製された医薬は、必要とされる1日用量のすべてを含む。したがって、1日2回投与するには、適切に調製された医薬は、必要とされる1日用量の半量を含む。したがって、1日3回投与するには、適切に調製された医薬は、必要とされる1日用量の1/3を含む。
【0154】
さらに、投与は連続、すなわち、毎日であってもよいし、間欠的であってもよい。用語「間欠的」又は「間欠的に」とは、本明細書で用いる場合、規則的又は不規則的のいずれかの間隔で停止すること及び開始することを意味する。例えば、HDAC阻害剤の間欠的投与は、1週間あたり1〜6日の投与であってもよいし、又は周期的な(例えば、2〜8連続週間の毎日の投与、次いで、最大1週間の投与を行わない休止期間)投与を意味してもよいし、又は隔日投与を意味してもよい。
【0155】
通常、約1.0mg/mL〜約10mg/mLの間の本発明の化合物の濃度を含む静脈内製剤を調製してもよい。一実施例では、十分な容積の静脈内製剤を、一日につき、その日の合計用量が約10〜約1500mg/mの間であるように患者に投与してもよい。
【0156】
約5〜約12の間の範囲のpHで当技術分野で周知の手順にしたがって好ましく調製された皮下製剤はまた、以下に記載される、適したバッファー及び等張剤を含む。それらは、1回以上の毎日の皮下投与、例えば、毎日、1、2又は3回で、HDAC阻害剤の1日用量を送達するよう製剤してもよい。
【0157】
本化合物はまた、適した鼻腔内ビヒクルの局所使用によって経鼻形態で、又は当業者に周知の経皮皮膚パッチの形のものを用いて経皮経路によって投与してもよい。経皮送達システムの形で投与されるには、投与量の投与は、当然、投与計画を通じて間欠的ではなく連続となる。
【0158】
本明細書に記載される、種々の投与様式、投与量及び投与スケジュールは、単に具体的な実施形態を示すということは当業者には明らかであるはずであり、本発明の広範な範囲の制限と考えられてはならない。投与量及び投与スケジュールの任意の順列、変化及び組合せが本発明の範囲内に含まれる。
【0159】
用語「投与」及びその変形(例えば、化合物を「投与すること」)とは、本発明の化合物に関連して、化合物又は化合物のプロドラッグを治療を必要とする動物の系に導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグが、1種以上のその他の活性薬剤(例えば、細胞傷害剤など)と組合せて提供される場合には、「投与」及びその変形は、本化合物又はそのプロドラッグ及びその他の薬剤の同時導入及び逐次導入を含むよう各々理解される。
【0160】
本明細書で用いる場合、用語「組成物」とは、特定の成分を指定量含む製剤並びに指定量の特定の成分の組合せに直接的又は間接的に起因する任意の製剤を包含するものとする。
【0161】
用語「治療上有効な量」とは、本明細書で用いる場合、研究者、獣医、医師又はその他の臨床医によって求められている、組織、系、動物又はヒトにおける生物学的反応又は医学的反応を誘発する活性化合物又は医薬品の量を意味する。
【0162】
医薬組成物
本発明の化合物、及びその誘導体、断片、類似体、相同体、薬学的に許容される塩又は水和物は、経口投与に適した医薬組成物に、薬学的に許容される担体又は賦形剤とともに組み込んでもよい。このような組成物は、通常、上記のいずれかの化合物の治療上有効な量と、薬学的に許容される担体とを含む。一実施形態では、有効量は、適した腫瘍性細胞の最終分化を選択的に誘導するのに有効な量であり、患者において毒性を引き起こす量よりも少ない量である。
【0163】
担体又は希釈剤としてよく用いられる任意の不活性賦形剤、例えば、ゴム、デンプン、糖、セルロース系材料、アクリレート又はそれらの混合物などを、本発明の製剤に使用してよい。好ましい希釈剤として、微晶質セルロースがある。本組成物はさらに、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)を含んでもよく、さらに、結合剤、バッファー、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、分解防止剤、増粘剤、甘味料、フィルム形成剤又はそれらの任意の組合せより選択される1種以上の添加剤を含んでもよい。さらに、本発明の組成物は、制御放出製剤の形であっても、即時放出製剤の形であってもよい。
【0164】
一実施形態では、医薬組成物は経口投与され、したがって、経口投与に適した形で、すなわち、固体又は液体製剤として製剤される。適した固体経口製剤として、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレット剤などが挙げられる。適した液体経口製剤としては、溶液剤、懸濁液剤、分散物剤、エマルション剤、オイル剤などが挙げられる。本発明の一実施形態では、組成物は、カプセル剤に製剤される。この実施形態に従って、本発明の組成物は、本発明の化合物の他に、不活性担体又は希釈剤、ハードゼラチンカプセル剤を含む。
【0165】
本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」とは、医薬投与と適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被膜、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤など、例えば、滅菌発熱物質不含水を含むものとする。適した担体は、レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンセズ(Remington’s Pharmaceutical Sciences)の最新版、当技術分野における標準参考教本に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。このような担体又は希釈剤の好ましい例として、それだけには限らないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソーム及び非水性ビヒクル、例えば、固定油も使用してよい。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野では周知である。任意の従来媒体又は薬剤が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が考慮される。補助的な活性化合物を組成物に組み込んでもよい。
【0166】
固体担体/希釈剤として、それだけには限らないが、ゴム、デンプン(例えば、コーンスターチ、α化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース系材料(例えば、微晶質セルロース)、アクリレート(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク又はそれらの混合物が挙げられる。
【0167】
液体製剤には、薬学的に許容される担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、エマルション又はオイルであってもよい。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルがある。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、エマルション又は懸濁液、例えば、生理食塩水及び緩衝媒体が挙げられる。オイルの例としては、石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツオイル、ダイズオイル、鉱油、オリーブオイル、ヒマワリ油及び魚肝油がある。溶液又は懸濁液はまた、以下の成分を含んでよい:滅菌希釈液、例えば、注射水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶剤;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);バッファー、例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩及び張性の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、酸又は塩基、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて調整してもよい。
【0168】
さらに、組成物は、結合剤(例えば、アラビアガム、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化シリコン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、グリコール酸ナトリウムデンプン、プリモジェル)、種々のpH及びイオン強度のバッファー(例えば、トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、添加剤、例えば、表面への吸収を防ぐためのアルブミン又はゼラチン、合成洗剤(例えば、Tween20、Tween80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、透過促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、磨砕剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(例えば、スクロース、アスパルテーム、クエン酸)、矯味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバー)、保存料(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、高分子被膜(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)、被膜及びフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)及び/又はアジュバントをさらに含んでもよい。
【0169】
一実施態様では、活性化合物は、身体からの迅速な排除から化合物を保護する担体、例えば、制御放出製剤(例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達システム)を用いて調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸を使用してもよい。このような製剤の調製方法は当業者には明らかである。また、材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals、Inc.から商業的に入手してもよい。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて、感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用してよい。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載される、当業者に公知の方法に従って調製してもよい。
【0170】
投与の容易性及び投与量の均一性のためには、経口組成物を投与単位形に製剤することが特に有利である。本明細書で用いる場合、投与単位形とは、治療される被験体のための単位投与形として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の効果を生じるよう算出された所定量の活性化合物を含む。本発明の投与単位形の仕様は、活性化合物の独特の特徴及び達成されるべき個々の治療効果及び個体の治療のためのこのような活性化合物を作り上げる当該技術における固有の制限によって決定され、またこれらに直接的に応じて変わる。
【0171】
医薬組成物は、容器、パック又はディスペンサーに、投与のための使用説明書と一緒に含めてもよい。
【0172】
本発明の化合物は、治療の第1日目に静脈内に投与し、2日目及びその後のすべての継続する日数で経口投与してもよい。
【0173】
本発明の化合物は、疾患進行を防ぐこと又は腫瘍増殖を安定化することを目的として投与してもよい。
【0174】
例えば、混合、造粒又は錠剤形成プロセスによる、有効成分を含む医薬組成物の調製は、当該技術分野では十分に理解されている。有効治療成分を、薬学的に許容され、有効成分と適合する賦形剤と混合することが多い。経口投与には、有効成分を、この目的のための通常の添加剤、例えば、ビヒクル、安定剤又は不活性希釈剤と混合し、通常の方法によって投与に適した形、例えば、上記で詳述した錠剤、コーティング錠、ハード又はソフトゼラチンカプセル、水性、アルコール性又は油性溶液などに変換する。
【0175】
患者に投与される化合物の量は、患者において毒性を引き起こす量よりも少ない。特定の実施態様では、患者に投与される化合物の量は、患者の血漿中の化合物の濃度を、化合物の毒性レベルと等しくさせるか、超えさせる量よりも少ない。一実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約10nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約25nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約50nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約100nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約500nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約1,000nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約2,500nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約5,000nMで維持される。本発明の実施において患者に投与されるべき化合物の最適量は、用いられる個々の化合物及び治療されている癌の種類に応じて変わる。
【0176】
本発明はまた、治療上有効な量の式Iの化合物と、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療薬、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤、細胞周期チェックポイントを干渉する薬剤から選択される第2の化合物とを含む、癌を治療又は予防するのに有用な医薬組成物を含む。
【0177】
In Vitro法
本発明はまた、腫瘍性細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを誘導し、それによって、このような細胞の増殖を阻害するために本発明の化合物を用いる方法を提供する。これらの方法は、in vivo又はin vitroで行われてもよい。
【0178】
一実施形態では、本発明は、腫瘍性細胞を、本明細書に記載される本発明の化合物の任意の1種以上の有効量と接触させることによって、腫瘍性細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導し、それによって、このような細胞の増殖を阻害するためのin vitro法を提供する。
【0179】
特定の実施形態では、本発明は、腫瘍性細胞の最終分化を選択的に誘導し、それによって、このような細胞の増殖を阻害するin vitro法に関する。本方法は、適した条件下で、細胞を、本明細書に記載される本発明の化合物の1種以上の有効量と接触させることを含む。
【0180】
もう1つの実施形態では、本発明は、腫瘍性細胞の細胞増殖停止を選択的に誘導し、それによって、このような細胞の増殖を阻害するin vitro法に関する。本方法は、適した条件下で、細胞を、本明細書に記載される本発明の化合物の1種以上の有効量と接触させることを含む。
【0181】
もう1つの実施形態では、本発明は、腫瘍性細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、それによって、このような細胞の増殖を阻害するin vitro法に関する。本方法は、適した条件下で、該細胞を、本明細書に記載される本発明の化合物の1種以上の有効量と接触させることを含む。
【0182】
もう1つの実施形態では、本発明は、腫瘍細胞を、本明細書に記載される本発明の化合物の任意の1種以上の有効量と接触させることを含む、腫瘍における腫瘍細胞の最終分化を誘導するin vitro法に関する。
【0183】
一実施形態では、腫瘍性細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導する方法及びHDACを阻害する方法は、in vivoで、すなわち、治療を必要とする腫瘍性細胞又は腫瘍細胞を有する被験体に、化合物を投与することによって細胞を接触させることを含む。
【0184】
したがって、本発明は、被験体に、本明細書に記載される本発明の化合物の任意の1種以上の有効量を投与することによって、被験体において腫瘍性細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導し、それによって、被験体におけるこのような細胞の増殖を阻害するin vivo法を提供する。
【0185】
特定の実施形態では、本発明は、腫瘍性細胞の最終分化を選択的に誘導し、それによって被験体におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。本方法は、被験体に、本明細書に記載される本発明の化合物の1種以上の有効量を投与することを含む。
【0186】
もう1つの実施形態では、本発明は、腫瘍性細胞の細胞増殖停止を選択的に誘導し、それによって被験体におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。本方法は、被験体に、本明細書に記載される本発明の化合物の1種以上の有効量を投与することを含む。
【0187】
もう1つの実施形態では、本発明は、腫瘍性細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、それによって被験体におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。本方法は、被験体に、本明細書に記載される本発明の化合物の1種以上の有効量を投与することを含む。
【0188】
もう1つの実施形態では、本発明は、腫瘍性細胞の増殖を特徴とする腫瘍を有する患者を治療する方法に関する。本方法は、患者に、本明細書に記載される本発明の化合物の1種以上を投与することを含む。化合物の量は、このような腫瘍性細胞の最終分化を選択的に誘導し、細胞増殖停止を誘導し、かつ/又はアポトーシスを誘導し、それによって、それらの増殖を阻害するのに有効である。
【0189】
本発明は、以下の一般的なスキーム及び以下の実施例で示される。このセクションは、本発明の理解に役立つよう示されるが、決して、特許請求の範囲に示される本発明を制限しようとするものではなく、制限すると解釈されてはならない。
【0190】
共通の中間体の合成
【0191】
【化11】

【0192】
t−ブチル(2−アミノフェニル)カルバメート(A)。中間体Aは、セト(Seto),C.T.;マチアス(Mathias),J.P.;ホワイトサイド(Whitesides),G.M.モレキュラー・セルフ−アセンブリー・スルー・ハイドロゲン・ボンディング:アグリゲーション・オブ・ファイブ・モレキュル・トゥー・フォーム・ア・ディスクレート・スープラモレキュラー・ストラクチュア(Molecular self−assembly through hydrogen bonding: aggregation of five molecules to form a discrete supramolecular structure)ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of American Chemical Society)1993、115、1321によって記載される方法によって調製した。
【0193】
t−ブチル(2−{[(6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}フェニル)カルバメート(B)。CHCl(200mL)中のt−ブチル(2−アミノフェニル)カルバメートA(10g、48.0mmol)の溶液に、6−クロロニコチノイルクロリド(8.5g、48.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(10−75%EtOAc/ヘキサン)によって精製すると、Boc保護されたニコチンアミドBが得られ、MS(ESI+)によって確認した:計算値[M+Na]370.1,観測値370.1。
【0194】
【化12】

【0195】
t−ブチル(3−アミノビフェニル−4−イル)カルバメート(C)。中間体Cは、公開された手順に記載されるように、t−ブチル(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)カルバメートから調製した;アダム(Adam),G.;アラニン(Alanine),A.;ゴエッチ(Goetschi),E.;ムテル(Mutel),V.;ウォルターリング(Woltering)、T.J.プレパレーション・オブ・ベンゾジアゼピン・デリバティブス・アズ・メタボトロピック・グルタメート・レセプター・アンタゴニスツ(Preparation of benzodiazepine derivatives as metabotropic glutamate receptor antagonists)PCT国際出願(2001)WO2001029012A2参照のこと。
【0196】
350mLのジオキサン及び150mLの水中のN−Boc4−ブロモ−2−ニトロアニリン(39.0g、123mmol)、フェニルボロン酸(16.5g、135mmol)及びKCO(34.1g、247mmol)の混合物を、混合物を通して窒素を30分間バブリングすることによって脱気した。次いで、Pd(PPhを加え(4.32g、3.7mmol)、橙色の混合物を78℃に18時間加温した。冷却し、エーテル(1500mL)と水(400mL)に分配した。セライトのパッド(w/エーテル洗浄)を通して混合物を濾過した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濃縮すると、44.1gの赤味を帯びた橙色の固体が得られた。EtOAc−ヘキサン(それぞれ、約50mL+1100mL)からの再結晶化によって、明るい橙色の固体N−Boc4−フェニル−2−ニトロアニリンが得られた:MS(EI)[M+Na]計算値337.2,観測値337.2。
【0197】
400mLのEtOAc中のニトロ化合物(16.5g、52.5mmol)の溶液を、窒素で排気し、再充填した(2×)。10%Pd/C(1.60g)を加え、次いで、水素で排気し、再充填した(3×)。水素雰囲気下で一晩撹拌した。混合物をセライトのパッド(w/EtOAc、次いで、CHCl洗浄)を通して濾過し、濃縮すると、淡橙色の固体が得られた。約800mLのヘキサンとともに撹拌し、加温し、次いで、冷却し、生成物を集めた(w/冷へキサン洗浄)。得られた固体を、CHClに溶解し、濃縮すると灰白色の固体N−BOC(3−アミノビフェニル−4−イル)アミンCが得られた:H NMR(600MHz,CDCl)δ7.51(d,J=3.2Hz,2H),7.38(t,J=5.6Hz,2H),7.31(m,2H),7.22(s,1H),7.12(dd,J=8.2,2.1Hz,1H),6.45(br s,1H),1.51(s,9H);MS(EI)[M+Na]計算値285.1,観測値285.1。
【0198】
t−ブチル(3−{[(6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}ビフェニル−4−イル)カルバメート(D)。ピリジン(10mL)中のt−ブチル(3−アミノビフェニル−4−イル)カルバメートC(2.06g、7.25mmol)の溶液に、6−クロロニコチニルクロリド(1.30g、7.39mmol)を加えた。室温で4時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、溶媒を濃縮した。t−ブチル(3−{[(6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}ビフェニル−4−イル)カルバメート(D)の生成を、H NMR(600MHz,CDOD)によって確認した:δ10.84(s,1H),9.79(s,1H),9.60(s,1H),9.19−9.16(m,1H),8.59(s,1H),8.57−8.55(m,2H),8.43−8.40(m,2H),8.34−8.30(m,1H),8.25−8.21(m,2H),8.16−8.12(m,1H),2.22(s,9H)。
【0199】
【化13】

【0200】
t−ブチル[2−アミノ−4−(2−チエニル)フェニル]カルバメート(E)。中間体Eは、公開された手順に記載されるように、t−ブチル(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)カルバメートから調製した;アダム(Adam),G.;アラニン(Alanine),A.;ゴエッチ(Goetschi),E.;ムテル(Mutel),V.;ウォルターリング(Woltering),T.J.プレパレーション・オブ・ベンゾジアゼピン・デリバティブス・アズ・メタボトロピック・グルタメート・レセプター・アンタゴニスツ(Preparation of benzodiazepine derivatives as metabotropic glutamate receptor antagonists)PCT国際出願(2001)WO2001029012A2参照のこと。
【0201】
60mLのジオキサン及び60mLの水中のt−ブチル(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)カルバメート(19.4g、61.2mmol)、チオフェン−2−ボロン酸(9.94g、77.7mmol)及びKCO(22.2g、160mmol)の混合物を、混合物を通して窒素を30分間バブリングすることによって脱気した。次いで、Pd[PPh(5.25g、4.53mmol)を加え、不均一な混合物を還流に20時間加温した。この混合物を冷却し、酢酸エチルで希釈し、水及びブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濃縮した。得られた固体を、ジエチルエーテル(500mL)に溶解し、シリカのパッドを通して濾過した。減圧下で溶媒を除去すると、黄褐色の固体が得られた。この固体をさらなる精製を行わずに直接次のステップに用いた:H NMR(600MHz,CDCl):δ9.65(s,9H),8.58(d,J=8.8Hz,1H),8.39(d,J=2.1Hz,1H),7.81(dd,J=8.8,1.8Hz,1H),7.32(m,2H),7.09(dd,J=5.3,3.8Hz,1H),1.54(s,9H);MS(ESI+):計算値[M+Na]343.1,観測値343.1。
【0202】
350mLのEtOAc中のN−BOC2−ニトロ−4−(2−チエニル)アニリン(18.0g)の溶液を、窒素で排気し、再充填した(2×)。この溶液に、10%Pd/C(4.46g)を加え、反応混合物を水素で排気し、再充填した(2×)。黒色の反応混合物を、水素雰囲気下で一晩撹拌した。この混合物を、セライトのパッド(EtOAc次いで、CHCl洗浄を用いて)を通して濾過し、濃縮して、褐色を帯びた白色の固体が得られた。この固体を、エーテルを用いて粋砕し、濾過すると、灰白色のt−ブチル[2−アミノ−4−(2−チエニル)フェニル]カルバメート(E)が得られた:H NMR(600MHz,DMSO−d)δ8.31(br,1H),7.41(dd,J=5.0,0.9Hz,1H),7.26(dd,J=3.5,1.2Hz,1H),7.23(br d,J=8.5Hz,1H),7.05(dd,J=5.0,3.5Hz,1H),6.94(d,J=2.1Hz,1H),6.81(dd,J=8.2,2.1Hz,1H),4.98(s,2H),1.43(s,9H);MS(ESI+):計算値[M+Na]291.1,観測値291.1。
【0203】
t−ブチル[2−{[(6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}−4−(2−チエニル)フェニル]−カルバメート(F)。5mLのピリジン中のt−ブチル[2−アミノ−4−(2−チエニル)フェニル]カルバメート(E)(600mg、2.07mmol)及び6−クロロニコチニルクロリド(380mg、2.16mmol)の混合物を一晩撹拌し、EtOAc中に注ぎ入れ、飽和NaHCOで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮すると、BOC保護されたクロロニコチンアミド(F)が得られた:H NMR(600MHz,CDOD):δ8.95(d,J=2.3Hz,1H),8.35(dd,J=8.2Hz,2.3Hz,1H),7.85(br s,1H),7.62(d,J=8.5Hz,1H),7.55−7.51(m,2H),7.37−7.35(m,2H),7.07(dd,J=5.0Hz,3.5Hz,1H),4.59(s,1H),1.49(s,9H);MS(ESI+):計算値[M+Na]452.1,観測値452.1。
【0204】
【化14】

【0205】
t−ブチル[2−アミノ−4−(3−チエニル)フェニル]カルバメート(G)及びt−ブチル[2−{[(6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}−4−(3−チエニル)フェニル]−カルバメート(H)。中間体G及びHは、中間体E及びFの調製に用いた方法を用いて、t−ブチル(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)カルバメートから調製した。中間体G:MS(ESI+):計算値[M+Na]291.1,観測値291.1。中間体H:MS(ESI+):計算値[M+Na]452.1,観測値452.1。
【0206】
スピロ環前駆体の合成
【0207】
【化15】

【0208】
AA:1,2−ジヒドロスピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]
【0209】
合成手順については、シエ(Xie)、J.−S.、ファン(Huang),C.Q.、ファング(Fang),Y.−Y.及びシュー(Zhu),Y.−F.ア・コンベニエント・シンセシス・オブ・1’−H−スピロ−(インドリン−3,4’−ピペリジン)アンド・イッツ・デリバティブス(A Convenient Synthesis of 1′−H−Spiro−(Indoline−3,4′−piperidine)and its Derivatives)テトラヘドロン(Tetrahedron)2004、60、4875参照のこと。
【0210】
BB、1−アセチル−1,2−ジヒドロスピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]
CC、1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロスピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]
QQ、スピロ[1−ベンゾフラン−3,4’−ピペリジン]
RR、1−(メチルスルホニル)−1,2−ジヒドロスピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]
【0211】
合成手順については、ミルス(Mills),S.G.;スプリンガー(Springer),M.S.;マッコス(MacCoss),M.プレパレーション・オブ・スピロサブスティチューテッド・アザシクルス・アズ・モジュレーターズ・オブ・ケモカイン・レセプター・アクティビティー(Preparation of Spiro−substituted Azacycles as Modulators of Chemokine Receptor Activity)PCT国際出願(1998)、WO9825605A1参照のこと。
【0212】
DD:t−ブチル1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−カルボキシレート
EE:t−ブチル2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート
JJ:スピロ[クロメン−2,4’−ピペリジン]−4(3H)−オン
KK:スピロ[イソクロメン−3,4’−ピペリジン]−1(4H)−オン
MM:6−メトキシ−4−フェニルスピロ[イソクロメン3,4’−ピペリジン]−1(4H)−オン
【0213】
合成手順については、チェン(Chen),M.−H.;ジョンストン(Johnston)、D.B.R.;ナルグンド(Nargund),R.P.;パチェット(Patchett),A.A.;タタ(Tata),J.R.;ヤング(Yang),L.スピロピペリジン・アンド・ホモログス・ウィッチ・プロモート・リリース・オブ・グロウス・ホルモン(Spiro Piperidines and Homologs Which Promote Release of Growth Hormone)PCT国際出願(1994)、WO9413696A1参照のこと。
【0214】
FF:スピロ[インデノ[2,1−b]ピリジン−9,4’−ピペリジン]
【0215】
合成手順については、エバンス(Evans),B.E.ギルバート(Gilbert),K.F.;ホフマン(Hoffman),J.M.;リトル(Rittle),K.E.プレパレーション・オブ・ノーベル・スピロトリシクリック・サブスチチューテッド・アザシクロアルカン・アズ・α1aアドレノセプター・アンタゴニスツ(Preparation of novel Spirotricyclic Substituted Azacycloalkanes as α1a Adrenoceptor Antagonists)英国特許出願(2001)、GB2355457A1参照のこと。
【0216】
GG:1,3−ジエチル−4,5−ジヒドロ−1H−スピロ[シクロペンタ[c]ピラゾール−6,4’−ピペリジン]
【0217】
合成手順については、フィンケ(Finke),P.E.;ロエバック(Loebach),J.L.;パーカー(Parker),K.A.;プルマー(Plummer),C.W.;ミルス(Mills),S.G.プレパレーション・オブ・アミノ・アシッド・N−シクロペンチル・モジュレーターズ・オブ・ケモカイン・レセプター・アクティビティー(Preparation of Amino Acid N−Cyclopentyl Modulators of Chemokine Receptor Activity)米国特許出願(2005)、US2005070609A1参照のこと。
【0218】
HH:スピロ[イソインドール1,4’−ピペリジン]−3(2H)−オン
【0219】
合成手順については、フィンケ(Finke),P.E.;メウラー(Meurer),L.C.;オーテス(Oates),B.;シャー(Shah),S.K.;ロエバック(Loebach),J.L.;ミルス(Mills),S.G.;マッコス(MacCoss),M.;カストングアイ(Castonguay),L.;マルコウィッツ(Malkowitz),L.;スプリンガー(Springer),M.S.;グールド(Gould),S.L.;デマルチノ(DeMartino),J.A.アンタゴニスツ・オブ・ザ・ヒューマン・CCR5・レセプター・アズ・アンチ−HIV−1エージェンツ(Antagonists of the Human CCR5 Receptor as Anti−HIV−1 Agents)パート3:ア・プロポーズド・ファルマコフォア・モデル・フォー・1−[N−(メチル)−N−(フェニルスルホニル)アミノ]−2−(フェニル)−4−[4−(サブスチチューテッド)ピペリジン−1−イル]ブタン(A Proposed Pharmacophore Model for 1−[N−(methyl)−N−(phenylsulfonyl)amino]−2−(phenyl)−4−[4−(substituted)piperidin−1−yl]butanes)バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters)2001、11、2469参照のこと。
【0220】
II:(3R)−N−メチル−2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−カルボキサミド
【0221】
合成手順については、チェン(Chen),M.H.;ルー(Lu),Z.;ナルグンド(Nargund),R.;パチェット(Patchett),A.A.;タタ(Tata),J.R.;ウー(Wu),M.T.;ヤング(Yang),L.プレパレーション・オブ・アミノ・アシッド・ピペリジン,ピロリジン,アンド・ヘキサヒドロ−1H−アゼピン・デリバティブス・フォー・プロモーティング・リリース・オブ・グロウス・ホルモン(Preparation of Amino Acid Piperidine, Pyrrolidine、and Hexahydro−1H−azepine Derivatives for Promoting Release of Growth Hormone)PCT国際出願(1998)、WO9825897A1参照のこと。
【0222】
LL:エチル2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イルカルバメート
【0223】
合成手順については、チェン(Chen),M.−H.;ジョンストン(Johnston),D.B.R.;ナルグンド(Nargund),R.P.;パチェット(Patchett),A.A.;タタ(Tata),J.R.;ヤング(Yang),L.プレパレーション・オブ・N−(α−アミノアルカノイル)スピロピペリジンズ・アズ・グロウス・ホルモン・リリース・プロモーターズ(Preparation of N−(α−Aminoalkanoyl)spiropiperidines as Growth Hormone Release Promoters)U.S.(1996)、US5578593A参照のこと。
【0224】
NN:1−メチル−5−フェニルスピロ[1,4−ベンゾジアゼピン−3,4’−ピペリジン]−2(1H)−オン
【0225】
合成手順については、ボルツ(Boltze),K.H.;エッチェンバーグ(Etschenberg),E.;トラバー(Traber),J.;ブージェン(Buesgen),H.スピロベンゾジアゼピンズ(Spirobenzodiazepines)Ger.Offen.(1986)、DE3431195A1参照のこと。
【0226】
OO:1−イソプロピル−6−メトキシ−5−メチルスピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−2(1H)−オン
【0227】
PP:5−(ベンジルアミノ)−1−イソプロピルスピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−2(1H)−オン
【0228】
合成手順については、:イリエ(Irie),O.;イワサキ(Iwasaki),G.;マスヤ(Masuya),K.;ミヤケ(Miyake),T.;テノ(Teno),N.プレパレーション・オブ・スピロ−サブスチチューテッド・ピロロピリミジンズ・アズ・インヒビターズ・オブ・カテプシンS・アンド/オア・カテプシンK(Preparation of Spiro−Substituted Pyrrolopyrimidines as Inhibitors of Cathepsin S and/or Cathepsin K)PCT国際出願(2004)、WO2004076455A1参照のこと。
【0229】
一般手順
化合物1−20は、クロロニコチンアミド、例えば、B、D、F又はHに、スピロ環AA−RRを加えることによって調製した。次いで、TFAで処理することによってBoc保護基を除去して所望の化合物を得た。いくつかの実施例は以下のとおりである。
【実施例1】
【0230】
N−(2−アミノフェニル)−6−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル}ニコチンアミドの合成
【0231】
【化16】

【0232】
N−(2−アミノフェニル)−6−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル}ニコチンアミド(5)。DMSO/PhMe(3mLの2:1溶液)中のB、t−ブチル(2−{[6−クロロピリジン−2−イル]カルボニル}アミノ)フェニル)カルバメート(164mg、0.474mmol)の溶液に、CC、1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロスピロ[インドール−3,4’−ピペリジン](487mg、1.42mmol)を加えた。85℃で12時間後、反応混合物をDMSO(5mL)で希釈し、逆相クロマトグラフィー(0.05%TFAを含む、25〜100%MeCN/HO)によって精製した。t−ブチル(2−{[(6−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル}ピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}フェニル)カルバメート、所望のBoc保護された縮合スピロアミノニコチンアミドの生成を、MS(ESI+)によって確認した:計算値[M+H]654.3,観測値654.2。
【0233】
CHCl(4mL)中のt−ブチル(2−{[(6−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル}ピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}フェニル)カルバメートの溶液に、TFA(2mL)を滴下した。室温で1時間後、反応混合物を濃縮し、逆相クロマトグラフィー(0.05%TFAを含む、15−75%MeCN/HO)によって精製すると、TFA塩(飽和NaHCO溶液)の中和後に、97mg(37%、2段階)のN−(2−アミノフェニル)−6−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル}ニコチンアミドが得られ、MS(ESI+)によって確認した:計算値[M+H]554.2,観測値554.2。
【実施例2】
【0234】
エチル[1’−(5−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イル]カルバメートの合成
【0235】
【化17】

【0236】
エチル[1’−(5−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イル]カルバメート(13)。DMSO(1mL)中のD、t−ブチル(3−{[(6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}ビフェニル−4−イル)カルバメート(75mg、0.177mmol)の溶液に、i−PrNEt(200μL)及びLL、エチル2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イルカルバメート(122mg、0.442mmol)を加えた。85℃で8時間後、反応混合物をDMSO(5mL)で希釈し、フラッシュクロマトグラフィー(25−100%EtOAc/ヘキサン)によって精製した。エチル(1’−{5−[({4−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]ビフェニル−3−イル}アミノ)カルボニル]ピリジン−2−イル}−2,3−ジヒドロ−1’H−スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イル)カルバメート、所望のBoc保護された縮合スピロアミノビフェニルニコチンアミドの生成を、MS(ESI+)によって確認した。:計算値[M+H]662.3,観測値662.3。
【0237】
CHCl(4mL)中のエチル1’−{5−[({4−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]ビフェニル−3−イル}アミノ)カルボニル]ピリジン−2−イル}−2,3−ジヒドロ−1’H−スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イル)カルバメートの溶液に、TFA(2mL)を滴下した。室温で1時間後、反応混合物を濃縮し、逆相クロマトグラフィー(0.05%TFAを含む、25−100%MeCN/HO)によって精製すると、TFA塩(飽和NaHCO水溶液)の中和後に、109mg(44%、2段階)のエチル[1’−(5−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イル]カルバメートが得られ、MS(ESI+)によって確認した:計算値[M+H]562.3,観測値562.3。
【実施例3】
【0238】
N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]−6−(1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’イル)ニコチンアミドの合成
【0239】
【化18】

【0240】
N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]−6−(1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’イル)ニコチンアミド(18)。DMSO(4mL)中のF、t−ブチル[2−{[(6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]アミノ}−4−(2−チエニル)フェニル]カルバメート(228mg、0.530mmol)の溶液に、NEt(222μL)及びAA、1,2−ジヒドロスピロ[インドール−3,4’−ピペリジン(300mg、1.59mmol)を加えた。85℃で8時間後、反応混合物を室温に冷却し、EtOAc中に注ぎ入れ、飽和NaHCOで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濃縮すると、粗固体残渣が得られた。反応混合物をフラッシュクロマトグラフィー(0−100%EtOAc/CHCl)によって精製した。t−ブチル[2−({[6−(1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’イル)ピリジン−3−イル]カルボニル}アミノ)−4−(2−チエニル)フェニル]カルバメート、所望のBoc保護された縮合スピロアミノ2−チオフェンビアリールニコチンアミドの形成を、MS(ESI+)によって確認した。:計算値[M+H]582.2,観測値582.2。
【0241】
CHCl(4mL)中のt−ブチル[2−({[6−(1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’イル)ピリジン−3−イル]カルボニル}アミノ)−4−(2−チエニル)フェニル]カルバメートの溶液に、TFA(4mL)を滴下した。室温で1時間後、反応混合物を濃縮し、TFA塩を中和し(2N NaOH)、MS(ESI+)によって確認した。:計算値[M+H]482.2,観測値482.1。
【0242】
さらなる類似体は、上記の実施例に記載されるものと同様の手順を用いて調製した。化合物はすべて中性型である。
【0243】
【化19】

【0244】
【化20】

【0245】
【化21】

【0246】
【化22】

【実施例4】
【0247】
t−ブチル1’−(5−{[(2−アミノフェニル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−カルボキシレート及びN−(2−アミノフェニル)−6−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミドの合成
【0248】
【化23】

【0249】
t−ブチル1’−(5−{[(2−アミノフェニル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−カルボキシレート(21)。2mLのDMSO中のメチル6−クロロニコチノアート(120mg、0.70mmol)、スピロ環DD(200mg、0.590mmol)及びNEt(0.200mL)の混合物を、90℃に2日間加熱した。冷却した時点で、混合物をEtOAc中に注ぎ入れ、飽和NaHCOで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮すると、粗油性残渣が得られた。
【0250】
2mLの1:1HO/THF中、メチルエステル(65mg、0.15mmol)の溶液を、LiOH・HO(25mg、0.60mmol)で処理し、12時間撹拌し、次いで、濃縮乾固した。残渣をDMF2mLに溶解し、HOBt(50mg、0.37mmol)、EDC(100mg、0.52mmol)、ジアミン(50mg、0.46mmol)で処理し、12時間撹拌した。濃縮乾固した。残渣を、逆相HPLC(0.05%TFAを含む、20〜100%MeCN/水)によって精製し、次いで、EtOAc及び飽和NaHCO間に分配した。有機層を乾燥させ(NaSO)、濃縮すると、21が得られた;MS(ESI+):計算値[M+H]514.3,観測値514.3。
【0251】
【化24】

【0252】
N−(2−アミノフェニル)−6−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド(22)。1mLの1:1DCM/TFA中の21(4mg、0.008mmol)の混合物を3時間撹拌し、濃縮乾固すると、22のtris−TFA塩が得られた。:MS(ESI+):計算値[M+H]414.2,観測値414.2
【実施例5】
【0253】
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−4−(1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H−イルメチル)ベンズアミドの合成
【0254】
【化25】

【0255】
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−4−(1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H−イルメチル)ベンズアミド(23)。シンチレーションバイアルに、FDMPストラトスフェア樹脂(負荷1.5mmol/g)(67mg、0.10mmol)、137mg(0.5mmol)のt−ブチル(3−アミノビフェニル−4−イル)カルバメート(中間体C)、1mlのDCE中5%AcOHを加え、室温で一晩振盪させた。DCE中の5%AcOH1mlのバイアルに、106mg(0.5mmol)のNaBH(OAc)を加えた。バイアルに栓をし、ガス抜きを設け、室温で3日間反応させた。樹脂を、以下の溶媒各々で、それぞれ3回洗浄し、真空乾燥させた:DMF、MeOH、HO、MeOH、及びDCM。
【0256】
先の段階から得た樹脂(0.1mmol)を、2mlのDCM及び51mg(0.4mmol)のDIEAとともにシンチレーションバイアルに加えた。このバイアルを1分間振盪し、38mg(0.2mmol)の4−クロロメチルベンゾイルクロリドを加えた。バイアルに栓をし、ガス抜きを設け、室温で一晩反応させた。樹脂を以下の溶媒各々で、それぞれ3回洗浄し、真空乾燥させた:DCM、DMF、HO、MeOH、及びDCM。
【0257】
先の段階から得た樹脂(0.1mmol)を、214mg(1.0mmol)のプロトンスポンジ、45mg(0.3mmol)のNaI、77mg(0.5mmol)のt−ブチル2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート及び2mlのDMFとともにシンチレーションバイアルに加えた。樹脂を以下の溶剤各々で、それぞれ3回洗浄し、真空乾燥させた:DMF,HO,MeOH,及びDCM。
【0258】
先の段階から得た樹脂(0.1mmol)を、3mlの1:1DCM:TFAを用いて室温で2時間開裂した。濾液を回収し、HPLCで精製すると、生成物が白色固体として得られた:MS(ESI+):計算値[M+H]503.3,観測値503.3。
【実施例6】
【0259】
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−4−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イルカルボニル)ベンズアミドの合成
【0260】
【化26】

【0261】
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−4−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イルカルボニル)ベンズアミド(24)。ジクロロメタン3mL中の塩化テレフタロイル(50mg、0.246mmol)の撹拌溶液に、t−ブチル(3−アミノビフェニル−4−イル)カルバメートC(70mg、0.246mmol)を10分間かけてゆっくりと加え、続いてジイソプロピルエチルアミン(48μL、0.246mmol)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌させた。次いで、t−ブチル1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−カルボキシレートDD(83mg、0.246mmol)を加え、続いてジイソプロピルエチルアミン(48μL、0.246mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌させた。反応混合物は濁った。次いで、ArgonautMP−カーボネートスカベンジング(Carbonate scavenging)樹脂(255g、0.738mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。次いで、ジメチルホルムアミド3mL加えることによって混合物を完全に溶解させ、スカベンジング樹脂から濾過し、濃縮した。ジクロロメタン(1mL)を加え、撹拌して懸濁液を形成し、次いで、トリフルオロ酢酸(1mL)で処理した。この反応混合物を室温で2時間撹拌した後に濃縮し、粗残渣を逆相クロマトグラフィー(0.1%ギ酸を含む、5−70−95%アセトニトリル/水)によって精製した。適当な画分を組み合わせ、凍結乾燥した。MS(ESI+):計算値[M+H]517.3,観測値517.2。
【実施例7】
【0262】
N−(4−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}フェニル)−2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミドの合成
【0263】
【化27】

【0264】
N−(4−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}フェニル)−2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド(25)。3mLのジクロロメタン中の4−イソシアナトベンゾイルクロリド(50mg、0.275mmol)の撹拌溶液に、t−ブチル1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−カルボキシレートDD(93mg、0.275mmol)を10分間かけてゆっくりと加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌させた。次いで、t−ブチル(3−アミノビフェニル−4−イル)カルバメートC(78mg、0.275mmol)を加え、続いてジイソプロピルエチルアミン(48μL、0.275mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌させた。次いで、ArgonautMP−カーボネートスカベンジング樹脂(285mg、0.825mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。次いで、混合物をスカベンジング樹脂から濾過し、濃縮した。ジクロロメタン(1mL)を加えて撹拌し、次いで、トリフルオロ酢酸(1mL)で処理した。反応混合物を室温で2時間撹拌した後に濃縮し、粗残渣を逆相クロマトグラフィー(0.1%ギ酸を含む、5−70−95%アセトニトリル/水)によって精製した。適当な画分を組み合わせ、凍結乾燥した。MS(ESI+):計算値[M+H]532.3,観測値532.2。
【実施例8】
【0265】
新規化合物によるHdac阻害−Hdac1−Flagアッセイ:
新規化合物を、in vitro脱アセチル化アッセイを用いて、ヒストン脱アセチル化酵素、サブタイプ1(HDAC1)を阻害するその能力について試験した。このアッセイの酵素供給源は、安定に発現する哺乳類細胞から免疫精製されたエピトープタグを付けたヒトHDAC1複合体とした。基質は、アセチル化リジン側鎖を含有する市販の製品からなるものであった(BIOMOL Research Laboratories、Inc.、Plymouth Meeting、PA)。精製HDAC1複合体とともにインキュベーションすることによって基質を脱アセチル化すると、フルオロフォア(fluro phore)が生成し、これは脱アセチル化のレベルに正比例する。酵素調製のKmでの基質濃度を用いて、漸増する濃度の新規化合物の存在下で脱アセチル化アッセイを実施して、脱アセチル化反応の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)を半定量的に調べた。上記の実施例及び表に記載される本発明の化合物は、約1μM未満の濃度でヒストン脱アセチル化酵素阻害活性を示す。
【実施例9】
【0266】
細胞株におけるHDAC阻害−ATPアッセイ
本発明の新規化合物を、ヒト子宮頸癌(HeLa)及び結腸癌(HCT116)細胞の増殖を阻害するその能力について試験した。
【0267】
Vialightアッセイとも呼ばれるこのアッセイでは、細胞増殖を定量化する手段として、細胞ATPレベルを測定する。このアッセイは、Cambrex製の生物発光法(ViaLightPLUS、カタログ番号LT07−121)を用いる。ルシフェラーゼは、ATPの存在下で、ルシフェリンをオキシルシフェリン及び光に変換する。生成した光(565nMでの発光)の量を測定し、増殖の相対量と相関させる。ヒト子宮頸癌(HeLa)又は結腸癌(HCT116)細胞を、ビヒクル又は漸増する濃度の化合物とともに、48、72又は96時間インキュベートした。細胞増殖は、培養ウェルに細胞溶解試薬(Vialightアッセイキット中に提供される)を直接添加することと、それに続くATPモニタリング試薬(ルシフェラーゼ/ルシフェリンを含有)の添加によって定量化した。次いで、生成した光の量(565nMでの発光)を測定する。565nM吸光度によって測定される、生成した光の量は、培養物中の生細胞の数に正比例する。
【0268】
本発明は、その実施形態に関連して特に示され、記載されているが、当業者には、記載される本発明の意味から逸脱することなく、形及び詳細の種々の変法を行うことができるということは理解される。むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1】

[式中、Xは
【化2】

であり;
A、B、D、E、G、J、K、M及びPは、独立して、CR、NR1a、C(O)及びOより選択され;
Rは、NH又はOHであり;
【化3】

は、Rより選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、アリール又はヘテロアリールであり;
【化4】

は、アリール又はヘテロアリールであり;
各Rは、独立して、
1)水素、
2)C−Cアルキル、
3)(CR10
4)(CRC(O)R
5)(CRC(O)OR
6)(CRC(O)NR
7)(CRS(O)
8)(CROR
9)(CRNR(SO)R
10)(CRNR
11)(CRNRC(O)OR
12)ハロ、又は
13)アリールであり;
各R1aは、独立して、
1)水素、
2)C−Cアルキル、
3)(CR10
4)(CRC(O)R
5)(CRC(O)OR
6)(CRC(O)NR、又は
7)(CRS(O)であり;
は、結合、−(CR11)r−、−C(O)NR−、−NRC(O)−又は−C(O)−であり、ここで、rは、1、2又は3であり;
は、
1)水素、
2)非置換又は置換C−Cアルキル、
3)非置換又は置換アリール、
4)非置換又は置換ヘテロアリール、
5)ハロ、
6)CN、
7)アミド、
8)カルボキシル、
9)C−Cアルコキシ、
10)C−Cハロアルキル、
11)C−Cハロアルキルオキシ、
12)C−Cヒドロキシアルキル、
13)C−Cアルケニル、
14)C−Cアルキニル、
15)C−Cアルキル−C(=O)O−、
16)C−Cアルキル−C(=O)−、
17)ヒドロキシアルコキシ、
18)−NHSO
19)−SONH、
20)C−Cアルキル−NHSO−、
21)C−Cアルキル−SONH−、
22)C−Cアルキルスルホニル、
23)C−Cアルキルアミノ、
24)ジ(C−C)アルキルアミノ、又は
25)L−R12であり;
各Rは、独立して、
1)H、
2)C−Cアルキル、
3)アリール、又は
4)ヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、アリール又はヘテロシクリルは、C−Cアルキルで置換されていてもよく;
各Rは、独立して、C−Cアルキル、アリール、ヘテロアリール又はハロより選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、
1)水素、
2)C−Cアルキル、又は
3)アリールであり;
各Rは、独立して、
1)水素、
2)C−Cアルキル、
3)アリール、
4)OR11
5)ハロ、又は
6)NR11であり、ここで、アルキル又はアリールは、C−Cアルキル、アリール、ヘテロアリール及びハロからなる群より選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;
各Rは、独立して、水素、OH、NR11、ニトロ、CN、アミド、カルボキシル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルキルオキシ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキル−C(=O)O−、C−Cアルキル−C(=O)−、C−Cアルキニル、ハロ基、アミド、ヒドロキシアルコキシ、−NR11SO、−SONR11、C−Cアルキル−NR11SO−、C−Cアルキル−SONR11−、C−Cアルキルスルホニル、C−Cアルキルアミノ又はジ(C−C)アルキルアミノであり;
各R10は、独立して、置換されていてもよい、
1)アリール、及び
2)ヘテロシクリルであり;
各R11は、独立して、水素、C−Cアルキル又はアリールであり、ここで、該アルキル及びアリール基は置換されていてもよく;
は、
1)結合、
2)C−Cアルキレン、
3)C−Cアルキニル、
4)C−Cアルケニル、
5)−O−、
6)−S−、
7)−NH−、
8)−C(=O)NH−、
9)−NHC(=O)−、
10)−NHC(=O)NH−、
11)−SONH−、
12)−NHSO−、
13)−SO−、
14)−C(=O)−、又は
15)−C(=O)O−であり;
12は、
1)置換又は非置換ヘテロアリール、
2)置換又は非置換ヘテロシクリル、
3)置換又は非置換アリール、及び
4)置換又は非置換C−Cシクロアルキルであり;
nは、独立して、0、1、2、3及び4より選択され;
qは、1、2、3又は4である]
によって表される化合物又はその立体異性体又は薬学的に許容される塩。
【請求項2】
RがNHである、請求項1に記載の化合物又はその立体異性体又は薬学的に許容される塩。
【請求項3】
が結合である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
【化5】

がヘテロアリールであり、
【化6】

がアリールである、請求項3に記載の化合物又はその立体異性体又は薬学的に許容される塩。
【請求項5】
【化7】

がピリジニルであり、
【化8】

がフェニルである、請求項4に記載の化合物又はその立体異性体又は薬学的に許容される塩。
【請求項6】
が、水素、非置換若しくは置換アリール又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物又はその立体異性体又は薬学的に許容される塩。
【請求項7】
N−(2−アミノフェニル)−6−(1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
6−(1−アセチル−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)−N−(2−アミノフェニル)ニコチンアミド;
6−(1−アセチル−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)−N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]ニコチンアミド;
6−(1−アセチル−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)−N−[2−アミノ−5−(3−チエニル)フェニル]ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−{1−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル}ニコチンアミド;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−6−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(1’H−スピロ[インデノ[2,1−b]ピリジン−9,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(1,3−ジエチル−4,5−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[シクロペンタ[c]ピラゾール−6,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1’H−スピロ[イソインドール−1,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
(3R)−1’−(5−{[(2−アミノフェニル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−N−メチル−2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−カルボキサミド;
N−[2−アミノ−5−(3−チエニル)フェニル]−6−(4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1’H−スピロ[クロメン−2,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−6−(1−オキソ−1,4−ジヒドロ−1’H−スピロ[イソクロメン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
エチル[1’−(5−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,3−ジヒドロスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−3−イル]カルバメート;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−6−(6−メトキシ−1−オキソ−4−フェニル−1,4−ジヒドロ−1H’−スピロ[イソクロメン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(1−メチル−2−オキソ−5−フェニル−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[1,4−ベンゾジアゼピン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−(1−イソプロピル−6−メトキシ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(2−アミノフェニル)−6−[5−(ベンジルアミノ)−1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル]ニコチンアミド;
N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]−6−(1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]−6−(1’H−スピロ[1−ベンゾフラン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−[2−アミノ−5−(2−チエニル)フェニル]−6−[1−(メチルスルホニル)−1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−イル]ニコチンアミド;
t−ブチル1’−(5−{[(2−アミノフェニル)アミノ]カルボニル}ピリジン−2−イル)−1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−カルボキシレート;
N−(2−アミノフェニル)−6−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イル)ニコチンアミド;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−4−(1H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−2(3H)−イルメチル)ベンズアミド;
N−(4−アミノビフェニル−3−イル)−4−(2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−イルカルボニル)ベンズアミド;
N−(4−{[(4−アミノビフェニル−3−イル)アミノ]カルボニル}フェニル)−2,3−ジヒドロ−1H,1’H−スピロ[イソキノリン−4,4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド
より選択される、請求項1に記載の化合物又はその立体異性体又は薬学的に許容される塩。
【請求項8】
薬学的に有効な量の請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項9】
哺乳類における癌の治療又は予防において有用な医薬の調製のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−537529(P2009−537529A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511011(P2009−511011)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/011540
【国際公開番号】WO2007/136605
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】