説明

アリールO−グルコシドの製造方法

【課題】高効率かつ迅速にアリールO−グルコシドを提供する。
【解決手段】下記式で表されるように、糖供与体とフェノール類とを所定のルイス酸存在下の溶媒中でグリコシル化反応させ、グリコシル化反応させた化合物Aのアセチル基を脱保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽電子放射断層画像撮影法(PET:Positron Emission Tomography)の放射性診断剤に適用可能なアリールO−グルコシドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層画像撮影法は、11C、18F、13N、15O、76Br、124Iなどの短寿命ポジトロン放出核を含有する分子およびその標的分子の生体内分布を解析できる分子イメージング法である。非侵襲的な手法であることからヒトへの適用が可能であり、がんなどの診断に広く用いられている。
【0003】
現在、保険適用下、国内で臨床使用されている唯一のPETトレーサーは、下記式1に示す2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース(化合物1)(以下、[18F]FDGという。)であり、これを用いて100以上の医療施設で主としてがんの診断が行われている。[18F]FDGは、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノピラノース(化合物2)の2位の水酸基をトリフルオロメタンスルホン酸エステルとした前駆体に対して、Kryptofix 2.2.2(商標)の存在下、[18F]フルオリドアニオンを作用させることにより18F基を導入して1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−β−D−グルコピラノース(化合物3)とした後、酸性条件下で4つのアセチル基を脱保護して合成される(式1)。この合成法はキット化されており、実際の現場では自動合成が行われている。
【0004】
【化1】

【0005】
化合物3を糖供与体として使用してグリコシル化反応を行えば、新たにさまざまな18F含有PETトレーサーの開発が可能となり、化合物3は各種PETトレーサー合成の新たな共通中間体となりうる。しかし、化合物3のように2位にフルオロ基を有する1−O−アセチル化糖のグリコシル化は極めて反応性に乏しく困難であり、式2〜式5に示すようにこれまでには限られた例しか報告されていない(非特許文献1−4参照。)。これらの例において、1−O−アセチル化糖の反応性が乏しいことから、式4、5に示すように一旦対応する1−ブロモ化糖を調製し、これを活用するケースが見られる(非特許文献3,4参照。)。
【0006】
【化2】

【0007】
一方、2位のフルオロ基のない1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−D−グルコピラノースは反応性が高く、これを糖供与体とするフェノール類とのグリコシル化反応は速やかに進行することが知られている。例えば、2−ナフトールとの反応では、触媒量(20 mol%)のルイス酸(TMSOTf−AgClO)を用いることで、アリールC−グリコシドが高収率に得られることが報告されている(非特許文献5,6)。この反応は、一旦対応するアリールO−グリコシドが生成したのち、糖が転位してアリールC−グリコシドを与えるものである(O→Cグリコシド転位反応)。
【0008】
【化3】

【0009】
【非特許文献1】M. Patt, et al., Appl. Radiat. Isot., 57, 705-712 (2002).
【非特許文献2】S. Maschauer, et al., J. Labelled Compd. Radiopharm., 48, 701-719 (2005).
【非特許文献3】S. Maschauer, et al., J. Labelled Compd. Radiopharm., 49, 101-108 (2006).
【非特許文献4】O. Prante, et al., Bioconjugate Chem., 18, 254-262 (2007).
【非特許文献5】K. Toshima, et al., Tetrahedron Lett., 33, 2175-2178 (1992).
【非特許文献6】T. J. Brenstrum and M. A. Brimble, ARKIVOC, 2, 37-48 (2001).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アリールO−グルコシドは医薬組成物として極めて有用であるため、これらの18F含有PETトレーサーが期待されている。しかし、上述したように2位にフルオロ基を有する1−O−アセチル化糖のグリコシル化は極めて反応性に乏しく、これまでにフェノール類とのグリコシル化反応の成功例は報告されていない。
【0011】
また、2位にフルオロ基を有する1−O−アセチル化糖のグリコシル化反応を、非特許文献5,6に記載された2位にフルオロ基が存在しない1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−D−グルコピラノースを糖供与体として用いた反応条件と同条件あるいは化学当論量以上のルイス酸反応剤を用いて行っても、アリールC−グリコシドどころか初期生成物であるアリールO−グリコシドさえも満足に得ることができないことが分かった。
【0012】
さらに、放射性18Fは短寿命(半減期は約110分)であるため18F含有PETトレーサーの合成は放射性18F導入後短時間で行わなければならず、アリールO−グルコシドを高効率に得ることが困難であった。
【0013】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高効率かつ迅速にアリールO−グルコシドを得ることができるアリールO−グルコシドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本件発明者らは、様々な観点から鋭意研究を重ねてきた結果、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−グルコピラノースを糖供与体として用い、所定のルイス酸存在下でフェノール類と反応させることで、高効率かつ迅速にアリールO−グルコシドを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明に係るアリールO−グルコシドの製造方法は、SnCl−AgClO、SnCl−AgClO・HO、SnCl−AgClO、SnCl−AgOTf、SnCl−AgOCOCF、TMSOTf−AgClO、CpHfCl−AgClO、Sc(OTf)からなる群より選択される一のルイス酸存在下で、下記式(I)で表される糖供与体とフェノール類とをグリコシル化反応させるグリコシル化反応工程と、前記グリコシル化反応させた化合物のアセチル基を脱保護する脱保護工程とを有する。
【0016】
【化4】

[式中、Fは放射性又は非放射性のフッ素を表す。]
【0017】
また、本発明に係るアリールO−グルコシドは、下記式(II)で表される。
【0018】
【化5】

[式中、Fは放射性又は非放射性のフッ素を表し、Arはアリール基を表す。]
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、適切なルイス酸を反応剤として使用することで、これまで困難であった1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−グルコピラノースを糖供与体として用いた各種フェノール類との高効率かつ迅速なアリールO−グリコシル化反応を実現し、アリールO−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコシドを高効率かつ迅速に得ることができる。
【0020】
また、[18F]FDGの合成中間体である1,3,4,6−テトラ−O-アセチル−2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−β−D−グルコピラノースを糖供与体として用いることにより、各種[18F]アリールO−FDGを簡便に合成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の具体例として示すアリールO−グルコシドの製造方法は、下記式(8)で表されるように、糖供与体とフェノール類とを所定のルイス酸存在下でグリコシル化反応させ、グリコシル化反応させた化合物Aのアセチル基を脱保護するものである。
【0022】
【化6】

【0023】
この製造方法では、陽電子放射断層画像撮影法(PET:Positron Emission Tomography)の放射性診断剤として汎用されている2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース(以下、[18F]FDGという。)の合成中間体である1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−β−D−グルコピラノースを糖供与体として用いるが、この糖供与体には放射性18Fが導入されているため、短時間に目的とする[18F]アリールO−FDGを合成しなければならない。
【0024】
そこで、本合成例では、所定のルイス酸存在下で糖供与体とフェノール類とを反応させる。これにより、2位にフルオロ基が存在するために反応性が著しく低下している糖供与体を活性化させると共に、高効率かつ迅速にフェノール配糖体を得ることができる。
【0025】
ルイス酸としては、SnCl2、SnCl、AgClO、AgClO・HO、AgOTf、AgOCOCF、CpHfCl、Sc(OTf)、BFOEt、Sn(OTf)、Yb(OTf)等を挙げることができる。ここで、短時間にフェノール配糖体を得るために、SnCl−AgClO、SnCl−AgClO・HO、SnCl−AgClO、SnCl−AgOTf、SnCl−AgOCOCF、TMSOTf−AgClO、CpHfCl−AgClO、Sc(OTf)等の1種又は2種以上のルイス酸を使用することが好ましい。例えば2種のルイス酸を使用する場合、第1のルイス酸及びフェノール類が加えられた溶液に第2のルイス酸を加えることで、2種のルイス酸を組み合わせて使用することができる。
【0026】
また、実際、[18F]FDGの合成中間体である1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−β−D−グルコピラノースは極微量であるため、本合成例ではルイス酸を大過剰に用いる。具体的には、糖供与体に対して5モル当量以上のルイス酸を用いることができる。
【0027】
溶媒としては、CHCl、CHCN、ClCHCHCl等を使用することが好ましい。また、溶媒の水分子を吸着させるためにモレキュラーシーブスを共存させてもよい。
【0028】
また、本合成例においては、糖供与体とフェノール類とを室温以上でグリコシル化反応させることが好ましい。糖供与体は2位にフルオロ基が存在して安定なため、糖供与体が分解しない80℃程度でもグリコシル化反応させることができ、迅速に反応を進行させることができる。
【0029】
グリコシル化反応により生成された化合物Aは、塩基性条件下においてアセチル基を脱保護することができる。具体的には、化合物Aをメタノールで溶解させた溶液にナトリウムメトキシドを加えて反応させる。これによりアリールO−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコシドを得ることができる。
【0030】
本合成例で用いられるフェノール類としては、フェノール、クレゾール、メトキシフェノール、ブロモフェノール、キシレノール、エチルフェノール、ナフトール、レソルシノール、ヒドロキノン、サリチルアルコール及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0031】
また、本合成例により得られるアリールO−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコシドのアリール基としては、下記式(III)〜(V)で表される基等を挙げることができる。
【0032】
【化7】

[式中、Rは、水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン基又はアルキル基を示す。]
【0033】
このようにアリールO−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコシドを迅速かつ高効率に製造することにより、様々なPETトレーサーを提供することができる。
【実施例1】
【0034】
[4−メトキシフェニル2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコピラノシドの合成]
下記(式9)のように4−メトキシフェニル2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコピラノシドを合成した。
【0035】
【化8】

【0036】
1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−グルコピラノースを糖供与体として用い、これと4−メトキシフェノールとを所定条件下(下記表1に示すエントリー1〜エントリー21)でアリールO−グリコシル化反応させた。その後塩基性条件下で4つのアセチル基を脱保護して4−メトキシフェニル2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコピラノシドを合成した。
【0037】
ここで、グリコシル化反応の条件としてルイス酸の種類及び使用量、反応溶媒、反応温度、反応時間等を検討した。また、短寿命である18F含有PETトレーサー合成への応用を考慮し(18Fの半減期は約110分)、迅速(30分以内)に進行する反応条件を検討した。また、実際のPETトレーサー合成では、18F含有糖供与体は極微量であるので、ルイス酸及びフェノール類は大過剰用いてもよいこととした。
【0038】
(エントリー1)
アルゴン雰囲気下、20mLの2口丸底フラスコに4−メトキシフェノール(和光純薬工業株式会社製)62.1mg(500μmol)及び過塩素酸銀(Sigma-Aldrich社製)104mg(501μmol)を入れ、これに無水ジクロロメタン0.5mLを加え、室温にて5分間撹拌した。これに四塩化スズ(Sigma-Aldrich社製)のジクロロメタン溶液(1.0M)0.5mL(500μmol)を加え、室温にて10分間撹拌した。
【0039】
反応容器を40℃の油浴を用いて1分間暖めたのち、そのままの温度で反応溶液に1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−グルコピラノース(合成品:文献S. Maschauer, et al., J. Labelled Compd. Radiopharm., 48, 701-719 (2005)に記載の方法に従い合成)35.0mg(99.9μmol)を無水ジクロロメタン1.0mLに溶解して加え、40℃にて30分間撹拌した。
【0040】
30分の攪拌ののち、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。混合物をセライト濾紙で濾過し、生成物を酢酸エチルを用いて抽出(×3)したのち、有機層を飽和食塩水で洗浄した(×1)。抽出液をロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮し、得られた残渣にメタノール2.0mLを加えた。この溶液にナトリウムメトキシド27.0mg(500μmol)を加え、室温にて30分間撹拌した。反応溶液にアンバーライト120(商標)(H)を加えたのち、このイオン交換樹脂を濾過により除いた。濾液をロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル4g、ジクロロメタン/アセトン=2/1)により精製した。得られた4−メトキシフェニル2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコピラノシドの収量は、20.6mg(収率71.5%、α/β=74/26)であった。α/β比はH NMRの糖部1位水素のピークの積分比から算出した。
【0041】
(エントリー2)
溶媒についてCHClの代わりにCHCNを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0042】
(エントリー3)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにSnCl−AgClOを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0043】
(エントリー4)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにSnCl−AgOTfを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0044】
(エントリー5)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにSnCl−AgOCOCFを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0045】
(エントリー6)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにSnClのみを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0046】
(エントリー7)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにTMSOTf−AgClOを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0047】
(エントリー8)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにTMSOTf−AgClOを用い、溶媒についてCHClの代わりにCHCNを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0048】
(エントリー9)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにCpHfCl−AgClOを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0049】
(エントリー10)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにBF・OEtを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0050】
(エントリー11)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにSn(OTf)を用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0051】
(エントリー12)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにSc(OTf)を用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0052】
(エントリー13)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにYb(OTf)を用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0053】
(エントリー14)
温度について40℃の代わりに室温で反応させた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0054】
(エントリー15)
溶媒についてCHClの代わりにClCHCHClを用い、温度について40℃の代わりに60℃で反応させた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0055】
(エントリー16)
反応時間について30分間の代わりに10分間で反応させた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0056】
(エントリー17)
反応時間について30分間の代わりに60分間で反応させた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0057】
(エントリー18)
ルイス酸についてSnCl−AgClO(5モル当量−5モル当量)の代わりにSnCl−AgClO(5モル当量−10モル当量)を用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0058】
(エントリー19)
ルイス酸についてSnCl−AgClO(5モル当量−5モル当量)の代わりにSnCl−AgClO(5モル当量−25モル当量)を用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0059】
(エントリー20)
溶媒についてモレキュラーシーブス(MS4A)を共存させた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0060】
(エントリー21)
ルイス酸についてSnCl−AgClOの代わりにSnCl−AgClO・HOを用いた以外は、エントリー1と同様にして合成を行った。
【0061】
表1に各条件下での4−メトキシフェニル2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコピラノシドの収率を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の結果から、ルイス酸としてSnCl−AgClO、SnCl−AgClO・HO、SnCl−AgClO、SnCl−AgOTf、SnCl−AgOCOCF、TMSOTf−AgClO、CpHfCl−AgClO、Sc(OTf)等を用いることにより、30分の反応時間でもアリールO−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコシドを得ることが可能であることが分かる。また、室温以上でアリールO−グリコシル化反応させることにより、迅速に反応が進行することが分かる。
【0064】
また、表2〜表5に4−メトキシフェニル3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコピラノシド、及びこれを脱保護した4−メトキシフェニル2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコピラノシドの物性を示す。各化合物の物性は、核磁気共鳴分析(1H NMR,13C NMR,19F NMR)、赤外分光分析(IR)、及び高分解能質量分析(HRMS)により測定した。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
[他のフェノールでの合成例]
表6に表1のエントリー1と同様の条件下で4−メトキシフェノールの代わりに他のフェノールを用いて反応を行った場合(式10)のアリールO−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコシドの収率を示す。
【0070】
【化9】

【0071】
【表6】

【0072】
表6の結果から、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−グルコピラノースを糖供与体として用い、これとフェノール、ブロモフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール等のフェノール類とをアリールO−グリコシル化反応させることにより、アリールO−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコシドを得ることが可能であることが分かる。
【0073】
また、表7〜表22に上記糖供与体とエントリー31〜エントリー34に示すフェノール類とがアリールO−グリコシル化反応したアリールO−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコピラノシド、及びこれを脱保護したアリールO−2−デオキシ−2−フルオロ−D−グルコシドの物性を示す。各物質の物性は、核磁気共鳴分析(1H NMR)、及び赤外分光分析(IR)により測定した。
【0074】
【表7】

【0075】
【表8】

【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
【表11】

【0079】
【表12】

【0080】
【表13】

【0081】
【表14】

【0082】
【表15】

【0083】
【表16】

【0084】
【表17】

【0085】
【表18】

【0086】
【表19】

【0087】
【表20】

【0088】
【表21】

【0089】
【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SnCl−AgClO、SnCl−AgClO・HO、SnCl−AgClO、SnCl−AgOTf、SnCl−AgOCOCF、TMSOTf−AgClO、CpHfCl−AgClO、Sc(OTf)からなる群より選択される一のルイス酸存在下で、下記式(I)で表される糖供与体とフェノール類とをグリコシル化反応させる反応工程と、
前記グリコシル化反応させた化合物のアセチル基を脱保護する脱保護工程と
を有するアリールO−グルコシドの製造方法。
【化1】

[式中、Fは放射性又は非放射性のフッ素を表す。]
【請求項2】
前記反応工程では、室温以上でグリコシル化反応させることを特徴とする請求項1記載のアリールO−グルコシドの製造方法。
【請求項3】
前記反応工程では、前記ルイス酸と前記フェノール類とを加えた溶液中に、前記糖供与体を加えることを特徴とする請求項1又は2記載のアリールO−グルコシドの製造方法。
【請求項4】
前記反応工程では、CHCl、CHCN、ClCHCHClからなる群より選択される一の溶媒が用いられることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のアリールO−グルコシドの製造方法。
【請求項5】
前記フェノール類は、フェノール、クレゾール、メトキシフェノール、ブロモフェノール、キシレノール、エチルフェノール、ナフトール、レソルシノール、ヒドロキノン、サリチルアルコール及びこれらの誘導体であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載のアリールO−グルコシドの製造方法。
【請求項6】
下記式(II)で表されるアリールO−グルコシド。
【化2】

[式中、Fは放射性又は非放射性のフッ素を表し、Arはアリール基を表す。]
【請求項7】
前記アリール基は、下記式(III)〜(V)で表されることを特徴とする請求項6記載のアリールO−グルコシド。
【化3】

[式中、Rは、水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン基又はアルキル基を示す。]

【公開番号】特開2009−184953(P2009−184953A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25704(P2008−25704)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】