説明

アルカノールアミドに由来するエポキシ樹脂の付加物及びその製造方法

アルカノールアミドのグリシジルエーテル又はグリシジルエステルを含むエポキシ樹脂材料(A)と分子当たり2個又はそれ以上の、反応性水素原子はエポキシ基と反応性である反応性水素原子を有する化合物を含む化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含む付加物及びその製造方法。(i)前記付加物と、(ii)前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂から、硬化性エポキシ樹脂組成物を製造できる。このような硬化性組成物から、コーティング、電気用若しくは構造用の積層品、電気用若しくは構造用の複合材料、フィラメント巻き線、成形品、注型品及びカプセル封入品のような物品を含む硬化エポキシ樹脂を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にエポキシ樹脂の付加物(アダクト)に関する。更に詳しくは、本発明は、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドから形成された付加物並びにそれらを含むエポキシ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、最も広く用いられているエンジニアリング樹脂の一つであり、高強度繊維を含む複合材料に使用されることでよく知られている。エポキシ樹脂は、ガラス状網状構造を形成し、優れた耐蝕性及び耐溶剤性、良好な付着性、比較的高いガラス転移温度並びに適度な電気的性質を示す。残念ながら、比較的高いガラス転移温度(>100℃)を有する架橋したガラス状エポキシ樹脂は脆い。ガラス転移温度が高いエポキシ樹脂の不良な衝撃強度は、構造材料としての、そして複合材料へのエポキシ樹脂の使用を制限する。エポキシ樹脂の別の主要用途はコーティングの作成である。このコーティングでは良好な付着性、硬度及び耐蝕性が達成できるが、特にガラス転移温度が高い場合には、靭性及び耐衝撃性にかなりの改善の余地がある。更に、芳香族エポキシ樹脂を用いて作成されたコーティングは、直射日光暴露中にチョーキングを受ける。これは、屋外用途でのこのようなコーティングの使用を著しく制限する。
【0003】
非特許文献1は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルとブレンドして使用される、主鎖の二重結合を介してエポキシ化された植物油を開示している。
【0004】
特許文献1は、アルケン酸によるアルコールのエステル化によって得られた生成物を、末端二重結合を介してエポキシ化し、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルとブレンドして使用できることを開示している。
【0005】
特許文献2は、ルイス酸触媒の存在下におけるヒマシ油とエピハロヒドリンとの反応によってヒマシ油のポリハロヒドリンエステルの形成した後に、それを脱ハロゲン化水素化することによって、ヒマシ油のポリ(グリシジルエーテル)を製造することを開示している。
【0006】
特許文献3は、ビスフェノールジグリシジルエーテル、ヒマシ油ポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類、脂肪酸及びダイマー酸をベースとする高固形分のコーティング組成物を開示している。
【0007】
非特許文献2は、ヒマシ油グリシジルエーテル、エポキシ樹脂UVR 6100及び光重合開始剤UVI 6990から製造されたコーティングを開示している。
【0008】
従来のエポキシ樹脂付加物及びそれらの製造方法は種々の参考文献に記載されている。例えばジエチレントリアミンとビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの付加物が非特許文献3に記載されている。D.E.H.(登録商標)52(The Dow Chemical Company, Midland, Michiganによって製造販売)はジエチレントリアミンとビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの付加生成物の市販品である。
【0009】
非特許文献4は、エポキシ樹脂のアミン付加物を記載している。エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラグリシジル4,4’−ジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp−アミノフェノール、エポキシフェノール若しくはクレゾールノボラック、水素化されたビスフェノールAジグリシジルエーテル又はそれらの任意の組合せから選ばれる。アミンは脂肪族、脂環式、芳香族又はアルキル芳香族ジアミンであることができる。
【0010】
非特許文献5は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルと、アニリン、p−クロロアニリン、ベンジルアミン及びシクロヘキシルアミンを含む第一モノアミンとの付加物の合成及び分析による特性決定を記載している。
【0011】
エポキシ樹脂を含む熱硬化樹脂の典型的な要求性能は、高い軟化点(>200℃)、低い燃焼性、耐加水分解性、耐薬品性及び耐溶剤性並びに温度変化によって安定な誘電性である。エポキシ樹脂はこれらの性質を示すことができるが、種々のエポキシ系は反応速度が遅いために硬化サイクルが遅いという欠点を有する場合がある。
【0012】
種々のエポキシ系の他の欠点は、溶剤の使用、結果として生じる反応副生成物及び/又は不充分なUV安定性である。溶剤及び反応副生成物は硬化中に不所望の化学薬品の暴露及び放出並びに気泡形成を引き起こすおそれがある。不充分なUV安定性も、エポキシ系の最終用途も制限し、ほとんどの屋外用途におけるそれらの使用を妨げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 00118751(H.Bjornberg;Novel Primary Epoxides;2000年4月6日)
【特許文献2】NL 6602411(Poly(glycidyl ethers);1966年8月8日)
【特許文献3】米国特許第4,786,666号(J.L.Cecil,W.J.Kurnik,D.E.Babcock;Coating Compositions Containing Glycidyl Ethers of Fatty Esters;1988年11月22日)
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Frischinger,P.Muturi,S Dirlikov,Two Phase Interpenetrating Epoxy Themosets that Contain Epoxidized Triglyceride Oils.Part II.Applications,Advances in Chemistry Series(1995),239(Interpenetrating Polymer Networks),539-56
【非特許文献2】S.F.Thames,H.Yu,R.Subraminian,Cationic Ultraviolet Curable Coatings from Castor Oil,Journal of Applied Polymer Science (2000),77(1),8-13
【非特許文献3】Henry Lee and Kris Neville,Handbook of Epoxy Resins,McGraw Hill,Inc.,New York(1967),7-15〜7-19
【非特許文献4】Daniel A.Scola,Developments in Reinforced Plastics 4,Elsevier Applied Science Publishers Ltd.,England,pages 196-206(1984)
【非特許文献5】J.Klee,et al.,Crosslinked Epoxies,Walter de Gruyter and Co.,Berlin,pages47-54(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、粘度を低下させ且つ溶剤の必要性を排除するなどの方法で、エポキシ樹脂の加工の分野における改善に対するニーズがある。また、UV安定性及び可撓性並びに耐損傷性の改善のような、エポキシ樹脂コーティングの性能を改善するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一面において、本明細書に開示した態様は、アルカノールアミドのグリシジルエーテル又はグリシジルエステルを含むエポキシ樹脂材料(A)と分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含んでなる付加物(アダクト)に関する。
【0017】
別の面において、本明細書に開示した態様は、アルカノールアミドのグリシジルエーテル又はグリシジルエステルを含むエポキシ樹脂材料(A)、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む化合物(B)及び前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を含んでなる付加物に関する。
【0018】
更に別の面において、本明細書に開示した態様は前記付加物の製造方法に関する。
【0019】
更に別の面において、本明細書に開示した態様は前記付加物及び樹脂化合物(D)を含んでなる硬化性エポキシ樹脂組成物に関し、前記樹脂化合物(D)はエポキシ樹脂材料(A)以外であって且つエポキシ樹脂(C)以外である1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む。
【0020】
更に別の面において、本明細書に開示した態様は前記硬化性エポキシ樹脂組成物の製造方法に関する。
【0021】
別の面において、本明細書に開示した態様は前記方法によって製造された硬化エポキシ樹脂に関する。
【0022】
更に別の面において、本明細書に開示した態様は前記硬化エポキシ樹脂を含んでなる物品に関する。
【0023】
本発明の他の面及び利点は、以下の説明及び添付した特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一面において、本明細書中に開示した態様は、エポキシ樹脂コーティングの加工及び性能の改善に関する。より詳しくは、本明細書に開示した態様は、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル及びグリシジルエステルの新規付加物に関する。これらのグリシジルエーテル及びグリシジルエステルは、他のエポキシ樹脂と組合せて使用でき、得られるエポキシ樹脂コーティング、複合材料、接着剤、電子機器及び成形品の加工、UV安定性及び可撓性/耐損傷性を改善することができる。
【0025】
前述のように、本発明の付加物は、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテルアミド又はグリシジルエステルアミドを含むエポキシ樹脂材料(A)と、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含むことができる。
【0026】
本明細書中で使用する用語「付加物(adduct)」は単一の反応生成物を生じる2種又はそれ以上の異なる分子の直接付加による生成物を意味する。得られる生成物又は付加物は反応体とは異なる分子種と考えられる。
【0027】
本発明において有用なエポキシ樹脂材料(A)に関しては、本発明の付加物は種油アルカノールアミド、例えば同時係属出願である米国特許出願第 号(代理人整理番号第65426)(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載された、種油をベースとするアルカノールアミドに基づくエポキシ樹脂を使用する。別の態様において、本発明の付加物は非種油アルカノールアミド、例えば同時係属出願である米国特許出願第 号(代理人整理番号第65843)(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載された、非種油をベースとするアルカノールアミドに基づくエポキシ樹脂を使用する。
【0028】
同時係属出願である米国特許出願第 号及び第 号(それぞれ、代理人整理番号第65426及び第65843)(これらを引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されるように、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドを含むエポキシ樹脂は、改善された性質を有し且つ前記同時係属特許出願に記載された有利な方法によって形成できることが判明した。本発明のエポキシ樹脂材料(A)として有用なエポキシ樹脂を形成するための前記方法は、存在する任意のアミド結合の加水分解を回避し、理論値の少なくとも80%又はそれ以上に達するエポキシ化をもたらす。このような方法の結果として、前記同時係属特許出願に開示されたアルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル及びグリシジルエステルを含むエポキシ樹脂は極めて低い塩化物(イオン性塩化物、加水分解性塩化物及び総塩化物を含む)含量と高いジグリシジルエーテル含量を有することができ、それによって、従来のエポキシ樹脂硬化剤に対する反応性が増大し、電位腐蝕性(potential corrosivity)が低下し且つ機械的性質及び電気的性質が改善されたエポキシ樹脂を提供できる。
【0029】
本明細書に開示した態様は、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドを含むエポキシ樹脂を使用して、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を含む化合物と反応させて、付加物を製造する。これらの付加物は、1種又はそれ以上のエポキシ樹脂並びに、任意的に、硬化剤及び/又は触媒とブレンドして、硬化性エポキシ樹脂組成物を形成できる。この硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることによって、硬化エポキシ樹脂を得ることができる。
【0030】
一面において、本明細書に開示した態様は、エポキシ樹脂コーティングの加工及び性能の改善に関する。更に詳しくは、本明細書に開示した態様は、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル及びグリシジルエステルの新規付加物に関する。これらのグリシジルエーテル及びグリシジルエステルは、他のエポキシ樹脂と組合せて使用でき、得られるエポキシ樹脂コーティング、複合材料、接着剤、電子機器及び成形品の加工、UV安定性及び可撓性/耐損傷性を改善することができる。
【0031】
本発明において有用なエポキシ樹脂材料(A)の一例として、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドが、例えば式I:
【0032】
【化1】

【0033】
{式中、R1及びR4は多価ヒドロカルビレン部分(moiety)であり;R2は水素又は一価アルキル部分であり;R3は存在しないか又は多価ヒドロカルビレン部分であり;R5はH、一価アルキル部分又は式II:
−R4−O−R6
式II
[式中、R4は前述の通りであり;R6は以下に定義する通りである]
で表される部分であり;R6は式III又は式IV:
【0034】
【化2】

【0035】
[式中、R7は水素又は炭素数1〜約4の脂肪族炭化水素基であり;R8は多価ヒドロカルビレン部分である]
の部分であり;m、n及びoは独立して0又は1であるが、m、n及びoの和はゼロより大きい正の整数である}
で表すことができる脂肪酸エステル、脂肪酸及び脂肪酸トリグリセリド(A)に由来するグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドを含むエポキシ樹脂を含む本発明に使用できる。
【0036】
本発明に更なる面は、m、n及びoの和がゼロである式Iで表されるグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドと混合された、前記グリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドを含む。これらの組成物は、いずれの場合も、総組成物重量に基づき、好ましくは70重量%又はそれ以上、より好ましくは90重量%超の、m、n及びoの和がゼロより大きいグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドを含む。
【0037】
他の態様において、本明細書に開示した本発明のエポキシ樹脂付加物の製造に有用なエポキシ樹脂材料(A)は、例えば式V:
【0038】
【化3】

【0039】
{式中、R11は一価又は多価ヒドロカルビレン部分であり;R12は多価ヒドロカルビレン部分であり;R13はH、一価アルキル部分又は式VI:
−R12−O−R14
式VI
[式中、R12は前に定義した通りであり、R14は式VII又は式VIIIで表される部分であり]:
【0040】
【化4】

【0041】
[式中、R15は水素又は炭素数1〜約4の脂肪族炭化水素基であり;R16は多価ヒドロカルビレン部分である]
の部分であり;qは1〜4の整数である}
で表されることができるアルカノールアミドに由来するグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドを含むエポキシ樹脂のようなアルカノールアミドに由来する1種又はそれ以上のグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミドであることができる。
【0042】
或る態様において、本明細書に開示したグリシジルエーテル及びエステルアミド組成物は、以下:アルカノールアミドに由来するモノグリシジルエーテル又はエステル;アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル又はエステルのオリゴマー;及びそれらの組合せの1種又はそれ以上を更に含むことができる。
【0043】
一般に、本明細書中に記載した本発明のエポキシ樹脂材料(A)として有用なグリシジルエーテル及びグリシジルエステルアミドは、(a)OH若しくはCOOH官能基化アルカノールアミド又はその混合物を(b)エピハロヒドリン並びに(c)固体の形態の塩基性作用物質と反応させることを含んでなる方法(例えばエポキシ化反応法)によって製造できる。この方法は、以下の成分:(d)溶媒;(e)触媒及び/又は(f)脱水剤の任意の1種又はそれ以上を任意的に含むことができる。
【0044】
官能基化飽和脂肪酸エステル、脂肪酸及び脂肪酸トリグリセリドは、例えば脂肪酸エステル、脂肪酸又は脂肪酸トリグリセリドのアミノリシス[例えば同時係属出願である米国特許出願第 号(代理人整理番号第65426)(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されている]によって形成できる。アミノリシスは脂肪酸エステル又は脂肪酸トリグリセリドと、アミノジオール及びトリオール、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)1−プロピル]アミン、2−アミノ−2−メチルー1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチルエタノールなどとの反応を含むことができる。
【0045】
グリシジルエーテル及びエステル(A)の製造方法は官能基化アルカノールアミド脂肪酸エステル又は脂肪酸トリグリセリドとエピハロヒドリンとの第1の反応によるハロヒドリン中間体の形成を含む。次に、ハロヒドリン中間体を塩基性作用物質と反応させて、前記ハロヒドリン中間体をエポキシ樹脂最終生成物(グリシジルエーテル及び/又はグリシジルエステルエポキシ樹脂)に転化させる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物を触媒として用い且つ化学量論量又はそれ以上の量で用いる場合には、官能基化アルカノールアミド脂肪酸エステル又は脂肪酸トリグリセリドとエピハロヒドリンとの第1の反応により、ハロヒドリン中間体をその場で(in situ)生成させ、次いで塩基性作用物質を添加することなく、ハロヒドリン中間体をエポキシ樹脂最終生成物に転化させる。
【0046】
式Iで表される官能基化アルカノールアミド脂肪酸エステル、脂肪酸及び脂肪酸トリグリセリドからの代表的なグリシジルエーテル及びエステル並びに式Vで表されるアルカノールアミドのグリシジルエーテル又はエステルとしては、下記式で示されるものが挙げられる。
【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
他の成分もグリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミド(A)中に微量で存在できる。微量成分の量及び型はグリシジルエーテル及びエステル(A)中に存在する成分の具体的な化学構造及びグリシジルエーテル及びエステル(A)の製造に使用する方法によって異なり得る。一般に、グリシジルエーテル及びエステル(A)は、グリシジルエーテル及びエステル(A)の総重量に基づき、トレース量(極微量)〜約40%未満、好ましくはトレース量〜約5%の微量成分を含むことができる。微量成分の例としては、モノグリシジルエーテル又はエステル、ジグリシジルエーテル又はエステル、オリゴマー、クロロヒドリン中間体及びそれらの任意の組合せが挙げられる。「トレース量(極微量)」とは、例えばガスクロマトグラフ分析、高圧液体クロマトグラフ分析又はゲル透過クロマトグラフ分析のようなルーチン分析法によって測定できる検出限界量を意味する。
【0051】
脂肪酸トリグリセリドのアルコーリシスを用いて、アミノリシスに使用するメチルエステルを形成することもできるし、或いはアルコーリシス工程を経ずに直接、脂肪酸トリグリセリドに対してアミノリシスを行うこともできる。
【0052】
式Vで表されるアルカノールアミドからのグリシジルエーテル又はエステルは、本明細書中に記載した付加物組成物の極限の性質に有利な影響を与えるように、変更できる。例えばモノグリシジルエーテル若しくはジグリシジルエーテルがより多く且つ/又はオリゴマーを含まないかオリゴマーが少ない反応体は、一般に、液体及びより低粘度の付加物又はより低い融点の付加物に有利であるが、低い官能価を有する(エポキシ基と反応性の活性水素原子がより少ない)。逆に、モノグリシジルエーテル若しくはジグリシジルエーテルがより少なく且つ/又はオリゴマーがより多い反応体は、一般に、より高粘度の付加物又はより高い融点の付加物に有利であり、高い官能価を有する。
【0053】
更に、存在するモノグリシジルエーテル又はジグリシジルエーテルの量の変更を用いて、付加物組成物の前記性質の他に、付加物組成物の製造方法に使用する反応体の性質に影響を及ぼすこともできる。例えばより高いモノグリシジルエーテル又はジグリシジルエーテル含量は、付加生成物の製造方法に使用するエポキシ樹脂反応体の官能価の減少に有利である。
【0054】
前述のように、本発明の付加物は、前記グリシジルエーテル及びエステル(A)を、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む化合物(B)と反応させることによって、形成できる。
【0055】
化合物(B)は、エポキシ基と反応性の2個又はそれ以上の水素を含む1種又はそれ以上の化合物を含むことができ、以下の化合物:(a)ジ−及びポリフェノール;(b)ジ−及びポリカルボン酸;(c)ジ−及びポリメルカプタン;(d)ジ−及びポリアミン;(e)第一モノアミン;(f)スルホンアミド;(g)アミノフェノール;(h)アミノカルボン酸;(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸;(j)スルファニルアミド;及びそれらの混合物の1種又はそれ以上を含むことができる。
【0056】
本明細書に開示した本発明の態様において有用な化合物(B)を用いて、グリシジルエーテル及びグリシジルエステル、エポキシ樹脂材料(A)と反応させて、本発明の付加物を形成する。化合物(B)は、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を有する少なくとも1種の化合物を含む。反応性水素原子は、成分(A)のグリシジルエーテル及びエステル中に含まれるエポキシ基のようなエポキシ基と反応性である。
【0057】
本明細書で使用する用語「反応性水素原子」は、水素原子がエポキシ基と反応性であることを意味する。反応性水素原子は、付加物を形成する反応においてはエポキシ基と非反応性であるが1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を用いて付加物を硬化させる後のプロセスにおいてはエポキシ基と反応性であることができる水素原子を含む他の水素原子とは異なる。
【0058】
付加物を形成する反応において、使用反応条件下でエポキシ基とはるかに反応性である他の官能基が存在する場合には、水素原子は、付加物を形成するプロセスにおいてはエポキシ基と非反応性であるが、エポキシ樹脂を用いて付加物を硬化させる後のプロセスにおいて反応性であることができる。例えば化合物(B)は、使用反応条件下で一方の官能基が他方の官能基よりもエポキシ基と本質的に反応性である、それぞれが少なくとも1個の反応性水素原子を有する2個の異なる官能基を有することができる。このような反応条件としては、エポキシ基と他方の官能基の反応性水素原子との反応よりも、エポキシ基と一方の官能基の反応性水素原子との反応に有利である触媒の使用が考えられる。
【0059】
他の非反応性水素原子は、付加物の製造プロセスにおけるエポキシド開環反応中に形成される第二ヒドロキシル基中の水素原子を含むこともできる。
【0060】
分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を有する少なくとも1種の化合物を含む化合物(B)は、化合物(B)の構造内に脂肪族、脂環式又は芳香族基を更に含むことができる。脂肪族基は分岐鎖でも非分岐鎖でもよい。脂肪族又は脂環式基も飽和でも不飽和でもよく、反応体及び生成物を含む本発明の付加物の製造プロセスに対して不活性の(反応性でない)1個又はそれ以上の置換基を含むことができる。置換基は、置換基の化学構造によって、末端炭素原子に結合することもできるし、2つの炭素原子の間に存在することもできる。このような不活性置換基の例としては、ハロゲン原子、好ましくは塩素若しくは臭素、ニトリル、ニトロ、アルキルオキシ、ケト、エーテル(−O−)、チオエーテル(−S−)又は第三アミンが挙げられる。芳香環が化合物(B)の構造内に存在する場合には、それはN、O、Sなどのような1つ又はそれ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0061】
化合物(B)の例としては、(a)ジ−及びポリフェノール、(b)ジ−及びポリカルボン酸、(c)ジ−及びポリメルカプタン、(d)ジ−及びポリアミン、(e)第一モノアミン、(f)スルホンアミド、(g)アミノフェノール、(h)アミノカルボン酸、(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸、(j)スルファニルアミドのような化合物、及び(k)このような化合物の任意の2種又はそれ以上の任意の組合せなどが挙げられる。
【0062】
ジ−及びポリフェノールの例としては、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レソルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールA、4,4’−チオジフェノール、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’−ジメトキシビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−α−シアノスチルベン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメトキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブロモ−5−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4−ニトロフェノール、1,3−ジヒドロキシ−4−シアノフェノール、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジシクロペンタジエン又はそのオリゴマー及びフェノール又は置換フェノール縮合生成物並びにそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0063】
ジ−及びポリカルボン酸の例としては、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、ジシクロペンタジエンジカルボン酸、トリス(カルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシ−α−メチルスチルベン、1,4−ビス(4−カルボキシフェニル)−トランス−シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ジカルボキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジカルボキシ−4−メトキシベンゼン、1,3−ジカルボキシ−4−ブロモベンゼン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0064】
ジ−及びポリメルカプタンの例としては、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、4,4’−ジメルカプトジフェニルメタン、4,4’−ジメルカプトジフェニルオキシド、4,4’−ジメルカプト−α−メチルスチルベン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジメルカプトジフェニル、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,2’−ジメルカプトジエチルエーテル、1,2−ジメルカプトプロパン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、トリス(メルカプトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メルカプトフェニル)シクロヘキサン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0065】
ジ−及びポリアミンの例としては、1,2−ジアミノベンゼン、イソホロンジアミン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルオキシド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノスチルベン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)−トランス−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(アミノフェニル)メタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス(アミノプロピル)エーテル、ビス(アミノプロピル)スルフィド、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,2’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0066】
第一モノアミンの例としては、アニリン、4−クロロアニリン、4−メチルアニリン、4−メトキシアニリン、4−シアノアニリン、2,6−ジメチルアニリン、4−アミノジフェニルオキシド、4−アミノジフェニルメタン、4−アミノジフェニルスルフィド、4−アミノベンゾフェノン、4−アミノジフェニル、4−アミノスチルベン、4−アミノ−α−メチルスチルベン、メチルアミン、4−アミノ−4’−ニトロスチルベン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アミノノルボルナン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0067】
第一モノアミンは、本発明の開示の特殊な種類の化合物(B)を表す。本明細書中に開示した態様によれば、第一モノアミンとグリシジルエーテル及びエステル(A)との反応では、付加物中に存在する反応性水素原子(例えば第一モノアミンを化合物(B)として使用する場合にはアミン水素原子)に関して実質的に二官能性である付加物(即ち付加物が約2の官能価を有する)を生成する。この付加物を用いてエポキシ樹脂を硬化させる場合には、付加物は線状連鎖延長剤の役割を果たす。結果として、付加物は、エポキシ樹脂構造を架橋せずに、エポキシ樹脂構造を線状に連鎖延長する。第二ジアミンのような他の種類の化合物(B)も、エポキシ樹脂を硬化させるための線状連鎖延長剤として使用できる付加物を形成するのに使用できる。
【0068】
アンモニアは本発明の別の特殊な種類の化合物(B)を表す。アンモニアは液化アンモニア(NH3)又は水酸化アンモニウム(NH4OH)の形態で使用できる。水酸化アンモニウムを使用する場合は、反応混合物中の水酸化アンモニウム並びにグリシジルエーテル及びエステルエポキシ樹脂(A)の溶解度を改善する溶媒を使用するのが有用なことが多い。
【0069】
スルホンアミドの例としては、フェニルスルホンアミド、4−メトキシフェニルスルホンアミド、4−クロロフェニルスルホンアミド、4−ブロモフェニルスルホンアミド、4−メチルスルホンアミド、4−シアノスルホンアミド、2,6−ジメチルフェニルスルホンアミド、4−スルホンアミドジフェニルオキシド、4−スルホンアミドジフェニルメタン、4−スルホンアミドベンゾフェノン、4−スルホニルアミドジフェニル、4−スルホンアミドスチルベン、4−スルホンアミド−α−メチルスチルベン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0070】
アミノフェノールの例としては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2−メトキシ−4−ヒドロキシアニリン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシアニリン、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシアニリン、2,6−ジブロモ−4−ヒドロキシアニリン、5−ブチル−4−ヒドロキシアニリン、3−フェニル−4−ヒドロキシアニリン、4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)フェノール、4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)フェノール、4−(4−アミノフェノキシ)フェノール、4−((4−アミノフェニル)チオ)フェノール、(4−アミノフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4−((4−アミノフェニル)スルホニル)フェノール、4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモフェノール、N−メチル−p−アミノフェノール、4−アミノ−4’−ヒドロキシ−α−メチルスチルベン、4−ヒドロキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0071】
アミノカルボン酸の例としては、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸、3,5−ジメチル−4−アミノ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−アミノ安息香酸、2,6−ジブロモ−4−アミノ安息香酸、5−ブチル−4−アミノ安息香酸、3−フェニル−4−アミノ安息香酸、4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)安息香酸、4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)安息香酸、4−(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4−((4−アミノフェニル)チオ)安息香酸、(4−アミノフェニル)(4−カルボキシフェニル)メタノン、4−((4−アミノフェニル)スルホニル)安息香酸、4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ安息香酸、N−メチル−4−アミノ安息香酸、4−アミノ−4’−カルボキシ−α−メチルスチルベン、4−カルボキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン、グリシン、N−メチルグリシン、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−アミノヘキサン酸、4−ピペリジンカルボン酸、5−アミノフタル酸及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0072】
フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸の例としては、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、5−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−フェニル−4−ヒドロキシ安息香酸、4−(1−(3−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)安息香酸、4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)安息香酸、4−(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、4−((4−ヒドロキシフェニル)チオ)安息香酸、(4−ヒドロキシフェニル)(4−カルボキシフェニル)メタノン、4−((4−ヒドロキシフェニル)スルホニル)安息香酸、4−(1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ安息香酸、4−ヒドロキシ−4’−カルボキシ−α−メチルスチルベン、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシ−α−メチルスチルベン、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル−2−シクロヘキサンカルボン酸、4−ヒドロキシフェノキシ−2−プロパン酸及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0073】
スルファニルアミドの例としては、o−スルファニルアミド、m−スルファニルアミド、p−スルファニルアミド、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸、2,6−ジメチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、3−メチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、5−メチル−3−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、3−フェニル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、4−(1−(3−スルホンアミドフェニル)−1−メチルエチル)アニリン、4−(1−(4−スルホンアミドフェニル)エチル)アニリン、4−(4−スルホンアミドフェノキシ)アニリン、4−((4−スルホンアミドフェニル)チオ)アニリン、(4−スルホンアミドフェニル)(4−アミノフェニル)メタノン、4−((4−スルホンアミドフェニル)スルホニル)アニリン、4−(1−(4−スルホンアミド−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモアニリン、4−スルホンアミド−1−N−メチルアミノベンゼン、4−アミノ−4’−スルホンアミド−α−メチルスチルベン、4−スルホンアミド−4’−アミノ−α−メチルスチルベン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0074】
化合物(B)として有用な、2個又はそれ以上の水素原子を含む化合物は、[エポキシ基と反応性の水素(付加物を形成するためのエポキシド開環反応によって形成される第2ヒドロキシル基を除く)の当量]対[エポキシドの当量]を約2:1〜約100:1とするのに充分な量で使用できる。他の態様においては、2個又はそれ以上の水素を含む化合物は、[エポキシ基と反応性の水素(付加物を形成するためのエポキシド開環反応によって形成される第2ヒドロキシル基を除く)の当量]対[エポキシドの当量]を約3:1〜約60:1とするのに、更に他の態様では約4:1〜約40:1とするのに充分な量で使用できる。
【0075】
付加物の製造方法は、脂肪酸エステル、脂肪酸及び脂肪酸トリグリセリドの少なくとも1種をベースとするアルカノールアミドのグリシジルエーテル又はエステルを含む少なくとも1種のエポキシ樹脂材料(A)と、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む化合物(B)とを反応させることを含んでなる。
【0076】
この方法は、一般に、約0℃〜約260℃;好ましくは約20℃〜約200℃;より好ましくは約35℃〜約160℃の温度で実施できる。
【0077】
この方法は、一般に、約5分〜約1週間;好ましくは約30分〜約72時間;最も好ましくは約60分〜約48時間で完了させることができる。
【0078】
本発明の他の態様において、付加物組成物は、(A)アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル及びエステルアミド組成物(モノグリシジルエーテル及びエステル並びに/又はオリゴマーを更に含むことができる)並びに(C)1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を、(B)エポキシ樹脂と反応性の2個又はそれ以上の水素を含む1種又はそれ以上の前記化合物とを反応させることによって形成できる。
【0079】
本明細書中に開示した態様によれば、付加物は、グリシジルエーテル及びエステル(A)、化合物(B)及び、更に、エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を含むことができる。
【0080】
樹脂化合物(C)として使用できるエポキシ樹脂は、分子当たりの平均1個超のエポキシ基を有する任意のエポキシド含有化合物であることができる。エポキシ基は、任意の酸素、硫黄若しくは窒素原子又は−CO−O−基の炭素原子に結合した単結合酸素原子に結合することができる。酸素、硫黄、窒素原子又は−CO−O−基の炭素原子は、脂肪族、脂環式、多脂環式又は芳香族炭化水素基に結合することができる。脂肪族、脂環式、多脂環式又は芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素、臭素若しくは塩素;ニトロ基を含む(これらに限定するものではないが)任意の不活性置換基で置換されることもできるし;或いは脂肪族、脂環式、多脂環式又は芳香族炭化水素基は、平均で1個より多い−(O−CHRa−CHRat−基[式中、各Raは独立して水素原子又は1〜2個の炭素原子を含むアルキル若しくはハロアルキル基であり(但し、Ra基は1つだけがハロアルキル基であることができる)、tは1〜約100、好ましくは1〜約20、より好ましくは1〜約10、最も好ましくは1〜約5の値を有する]を含む化合物の末端炭素原子に結合することもできる。
【0081】
樹脂化合物(C)として使用できるエポキシ樹脂のより具体的な例としては、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール);1,3−ジヒドロキシベンゼン(レソルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、水素化ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールA、4,4’−チオジフェノール;4,4’−スルホニルジフェノール;2,2’−スルホニルジフェノール;4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン;3,3’−5,5’−テトラクロロビスフェノールA;3,3’−ジメトキシビスフェノールA;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド;4,4’−ジヒドロキシスチルベン;4,4’−ジヒドロキシ−α−シアノスチルベン;N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド;4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン;4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルアゾキシベンゼン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルアセチレン;4,4’−ジヒドロキシカルコン;4−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシベンゾエート;1,4−ブタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;ジプロピレングリコール;ポリ(プロピレングリコール);チオグリコールのジグリシジルエーテル;トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル;フェノール又はアルキル若しくはハロゲン置換フェノール−アルデヒド酸触媒縮合生成物(ノボラック樹脂)のポリグリシジルエーテル;4,4’−ジアミノジフェニルメタン;4,4’−ジアミノスチルベン;N,N’−ジメチル−4,4’−ジアミノスチルベン;4,4’−ジアミノベンズアニリド;4,4’−ジアミノビフェニルのテトラグリシジルアミン;ジシクロペンタジエン若しくはそのオリゴマーとフェノール又はアルキル若しくはハロゲン置換フェノールとの縮合生成物のポリグリシジルエーテル;並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0082】
樹脂化合物(C)として使用できるエポキシ樹脂はエポキシ樹脂と芳香族ジ及びポリヒドロキシル又はカルボン酸含有化合物との高度化反応(advanced reaction)の生成物を含むこともできる。芳香族ジ及びポリヒドロキシル又はカルボン酸含有化合物との反応に使用するエポキシ樹脂はジ又はポリグリシジルエーテルを含む前記エポキシ樹脂を含むことができる。
【0083】
芳香族ジ−及びポリヒドロキシル又はカルボン酸含有化合物の例としては、ヒドロキノン、レソルシノール、カテコール、2,4−ジメチルレソルシノール;4−クロロレソルシノール;テトラメチルヒドロキノン;ビスフェノールA;4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン;4,4’−チオジフェノール;4,4’−スルホニルジフェノール;2,2’−スルホニルジフェノール;4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン;4,4’−ビス(4(4−ヒドロキシフェノキシ)−フェニルスルホン)ジフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィド;3,3’,3,5’−テトラクロロ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;3,3’,3,5’−テトラブロモ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;3,3’−ジメトキシ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタレート;N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド;ビス(4’−ヒドロキシビフェニル)テレフタレート;4,4’−ジヒドロキシフェニルベンゾエート;ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジイミン;1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;フロログルシノール;ピロガロール;2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン;トリス(ヒドロキシフェニル)メタン;ジシクロペンタジエンジフェノール;トリシクロペンタジエンジフェノール;テレフタル酸;イソフタル酸;4,4’−ベンズアニリドジカルボン酸;4,4’−フェニルベンゾエートジカルボン酸;4,4’−スチルベンジカルボン酸;アジピン酸;及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0084】
前記高度化反応生成物の製造は、通常はエポキシ樹脂を分子当たり平均1個超の反応性水素原子を有する1種又はそれ以上の適当な化合物と合することを含む既知の方法を用いて実施できる。反応性水素原子は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応性の水素原子である。分子当たり1個超の反応性水素原子を有する化合物の、エポキシ樹脂に対する比は、一般に約0.01:1〜約0.95:1、好ましくは約0.05:1〜約0.8:1、より好ましくは約0.10:1〜約0.5:1[(反応性水素原子の当量)対(エポキシ樹脂中のエポキシ基の当量)]である。
【0085】
分子当たり平均1個超の反応性水素原子を有する化合物の例としては、ジヒドロキシ芳香族、ジチオール、ジスルホンアミド若しくはジカルボン酸化合物、或いは1個の第一アミン若しくはアミド基、2個の第二アミン基、1個の第二アミン基と1個のフェノール性ヒドロキシ基、1個の第二アミン基と1個のカルボン酸基又は1個のフェノール性ヒドロキシ基と1個のカルボン酸基を含む化合物及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0086】
高度化反応は、加熱及び混合しながら、溶媒の存在下又は不存在下で実施できる。
【0087】
高度化反応は、大気圧、過圧又は減圧下で約20℃〜約260℃、好ましくは約80℃〜約240℃、より好ましくは約100℃〜約200℃の温度において実施できる。
【0088】
高度化反応を完了させるのに必要な時間は、使用温度、分子当たり1個超の反応性水素原子を有する使用化合物の化学構造及び使用エポキシ樹脂の化学構造のような要因によって異なる。温度が高いほど必要な反応時間を短縮でき、温度が低いほど必要な反応時間が長くなると考えられる。
【0089】
一般に、高度化反応完了のための時間は、約5分〜約24時間、好ましくは約30分〜約8時間、より好ましくは約30分〜約4時間の範囲であることができる。
【0090】
高度化反応には触媒も添加できる。触媒の例としては、ホスフィン類、第四アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物及び第三アミンが挙げられる。触媒は、エポキシ樹脂の総重量に基づき、約0.01重量%〜約3重量%、好ましくは約0.03重量%〜約1.5重量%、より好ましくは約0.05重量%〜約1.5重量%の量で使用できる。
【0091】
本発明において有用な高度化反応に関する他の詳細は、米国特許第5,736,620号及びHandbook of Epoxy Resins,Henry Lee and Kris Nevilleに示されており、これらを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0092】
本発明の付加物は、グリシジルエーテル及びエステル(A)、化合物(B)及び、任意的に、エポキシ樹脂化合物(C)の反応生成物である。
【0093】
(A)と(B)との反応、又は(A)及び(B)と(C)との反応によって形成される付加物は、本質的にエポキシ基を含まずに、エポキシ基と反応性の活性水素原子を含むことができる。
【0094】
(A)と(B)との反応、又は(A)及び(B)と(C)との反応によって形成される付加物を用いて、熱硬化性(硬化性)混合物を形成できる。例えばこれらの付加物を1種又はそれ以上のエポキシ樹脂と合して、熱硬化性混合物を形成できる。本明細書に記載した熱硬化性混合物はエポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤及び/又は触媒を含むこともできる。
【0095】
熱硬化性(硬化性)混合物は硬化させて硬化生成物を形成することもできる。例えば硬化生成物としては、電気用又は構造用の積層品又は複合材料、フィラメント巻き線、成形品、注型品、カプセル封入品などが挙げられる。
【0096】
本発明によれば、充分な量のグシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミド(A)及びエポキシ樹脂化合物(C)(使用したとき)並びに過剰量の化合物(B)を反応に供給して、本発明の付加物を形成する。反応の最後には、グリシジルエーテル及びエステルアミド(A)並びにエポキシ樹脂(C)(使用する場合)のエポキシ基の本質的に全てが、化合物(B)中の反応性水素原子と反応している。未反応の化合物(B)は反応の最後に除去することもできるし、付加生成物の一部として残ることもできる。
【0097】
一般に、化合物(B)とグリシジルエーテル及びエステルアミド(A)の比は、約2:1〜約100:1、好ましくは約3:1〜約60:1、より好ましくは約4:1〜約40:1[(化合物(B)中の反応性水素原子の当量)対(グリシジルエーテル及びエステル(A)並びに樹脂化合物(C)(使用する場合)中のエポキシ基の当量)]である。
【0098】
本明細書に記載した付加物の製造には触媒を使用できる。触媒の例としては、ホスフィン類、第四アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物及び第三アミン並びにそれらの任意の混合物が挙げられる。触媒を使用する場合には、その使用量は、付加物の製造に使用する個々の反応体及び使用触媒の型によって異なる。一般に、触媒は、付加物の総重量に基づき、約0.01重量%〜約1.5重量%、好ましくは約0.03重量%〜約0.75重量%の量で使用できる。
【0099】
本明細書中に記載した付加物の態様を形成する反応には、1種又はそれ以上の溶媒が存在できる。1種又はそれ以上の溶媒の存在は、反応体の溶解度を改善でき、又は反応体が固体の形態である場合には、他の反応体との混合を容易にするために固体反応体を溶解させることができる。溶媒の存在は、付加物形成反応を減速するために、例えば付加物形成反応によって発生する熱を制御するために、又は付加生成物の構造に影響を及ぼす可能性がある反応体の有効濃度を低下させる(例えばオリゴマー成分の量がより少ない付加物を生成する)ために、反応体濃度を稀釈することもできる。
【0100】
溶媒は、付加物の形成プロセスに実質的に不活性な(例えば反応体、中間生成物(存在する場合)及び最終生成物に不活性な)任意の溶媒であることができる。本発明において有用な適当な溶媒の例としては、脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族及び脂環式炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族ニトリル、環状エーテル、グリコールエーテル、エステル、ケトン、アミド、スルホキシド及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0101】
溶媒の好ましい例としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドフラン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、二塩化エチレン、メチルクロロホルム、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0102】
溶媒は、反応完了時に、常法、例えば真空蒸留を用いて除去できる。或いは、溶媒は付加生成物中に残して、溶媒含有付加物を生成することもでき、それは後で、例えばコーティング又はフィルムの作成に使用できる。
【0103】
本発明の付加物形成反応の条件は、使用する反応体の型及び量、触媒を使用する場合には触媒の型及び量、溶媒を使用する場合には溶媒の型及び量、並びに使用する反応体の添加方法のような要因によって異なり得る。
【0104】
例えば本発明の付加物の形成反応は大気圧(例えば760mmHg)、過圧又は減圧下で、約0℃〜約260℃、好ましくは約20℃〜約200℃、より好ましくは約35℃〜約160℃の温度において実施できる。
【0105】
本発明の付加物の形成反応を完了させるのに必要な時間は、前述の要因だけでなく、使用温度によっても異なる。温度が高いほど必要な時間が短く、温度が低いほど必要な時間が長い。一般に、本発明の付加物の形成反応を完了させるための時間は、好ましくは約5分〜約1週間、より好ましくは約30分〜約72時間、最も好ましくは約60分〜48時間である。
【0106】
本発明の付加物の形成反応の時間及び温度は、本発明の付加物の形成における成分の分布に多大な影響を及ぼすと考えられる。例えばより高い反応温度、より短い反応時間を用い、且つ化合物(B)が反応性水素原子を、分子当たり2個だけ有する材料を含む場合には、反応は、オリゴマー成分をより多く含む付加物の形成に有利である。化合物(B)が分子当たり2個超の反応性水素原子を有する材料を含む場合には、反応は分岐した又は架橋した成分をより多く含む付加物の形成に有利である。
【0107】
グリシジルエーテル及びエステル(A)は化合物(B)と直接混合させる、化合物(B)にインクレメント的に(段階的に)添加する、又は化合物(B)に連続的に添加することができる。更に、1種又はそれ以上の溶媒をグリシジルエーテル及びエステル(A)並びに/又は化合物(B)に添加してから、グリシジルエーテル及びエステル(A)と化合物(B)を混合することもできる。
【0108】
グリシジルエーテル及びエステル(A)のインクレメント的添加を用いる場合には、添加したインクレメントの全て又は一部を反応させてから、次のインクレメントを添加することができる。過剰量の化合物(B)と反応させるグリシジルエーテル及びエステル(A)のインクレメント的添加は一般に、オリゴマー成分の量がより少ないか又はオリゴマー成分を含まない、末端エポキシ基が化合物(B)との開環反応において反応した材料を含む付加物の形成に有利である。
【0109】
(1)付加物の成分の分布、(2)付加物の反応性又は(3)付加物の物理的性質を変更するために、種々の後処理を本発明の付加物の製造方法に適用できる。
【0110】
例えばアルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル及びエステル(成分(A)として)とシクロヘキシルアミン(化合物(B)として)との反応によって製造される付加物に関しては、シクロヘキシルアミンに由来する化学量論的大過剰量の第一アミン基が、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル又はエステルに由来するエポキシ基と反応する場合には、反応はオリゴマー成分含量が少ない付加物の形成をもたらすと考えられる。最終生成物は、付加物の一部として、未反応の化合物(B)としての高濃度のシクロヘキシルアミンも含むと考えられる。従って、真空蒸留のような付加物の後処理を用いて、未反応の化合物(B)をストリップすることができる。
【0111】
付加物成分の分布の変更には、他の後処理方法、例えば再結晶、クロマトグラフ分離、抽出、ゾーン精製(refining)、結晶精製、薄膜蒸留(wiped film distillation)、単蒸留、選択的化学誘導体化(preferential chemical derivatization)及び付加物の1種又はそれ以上の成分の除去並びにそれらの任意の組合せも使用できる。
【0112】
本明細書に開示した態様によれば、本発明の付加物を形成するためのグリシジルエーテル及びエステル(A)と化合物(B)との反応は開環反応を伴う。開環反応の間に、グリシジルエーテル及びエステル(A)中のエポキシ基が化合物(B)中の反応性水素原子と反応して、グリシジルエーテル及びエステル(A)の残基構造と化合物(B)の残基構造との結合として特有の2−ヒドロキシルプロピル官能基を生じる。
【0113】
本発明の付加物のこの型の構造の一例はアルカノールアミド(A)に由来するグリシジルエーテル及びエステルとシクロヘキシルアミン(化合物(B)として)との反応によって示す(部分構造のみを式XVIIとして以下に示す):
【0114】
【化8】

【0115】
化合物(B)は、(f)スルホンアミド、(g)アミノフェノール、(h)アミノカルボン酸、(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸及び(j)スルファニルアミドのような、2つの官能基を有する化合物であることができる。これらの化合物は異なるエポキシ樹脂硬化反応性を有する異なる官能基を有する付加物を生成するのに使用できる。
【0116】
この型の付加物の一例は、アミノフェノール化合物、p−N−メチルアミノメチルフェノール(化合物(B)として)とグリシジルエーテル及びエステル(A)との反応生成物である。この反応は更なるフェノール性ヒドロキシル末端基を有する付加物を生成する。この反応は、緩和な条件下で、例えば(a)触媒を用いることなく、(b)低温(例えば約25℃〜約50℃)において、(c)長い反応時間、(d)化学量論的大過剰の化合物(B)へのグリシジルエーテル及びエステル(A)のインクレメント的添加又は低速の連続的添加を用いて且つ(e)グリシジルエーテルアミド及びグリシジルエステルアミド(A)並びに化合物(B)の両者を溶媒中に存在させて、実施する。以下の付加物構造は、フェノール性ヒドロキシル末端基を含む付加物を示す(部分構造のみを式XVIIIとして以下に示す):
【0117】
【化9】

【0118】
1つの官能基がもう1つの官能基よりもエポキシ基に対して有利である触媒反応も使用できる。例えばそれぞれが少なくとも1つの反応性水素原子を有する少なくとも2つの異なる官能基を含む化合物(B)を用いて本明細書中に記載した付加物の態様を形成する場合には、他方の型の官能基の反応性水素原子とエポキシ基との反応よりも一方の型の官能基の反応性水素原子とエポキシ基との反応に有利な触媒を使用できる。
【0119】
付加物は、各エポキシ樹脂のエポキシ基の1つがそれぞれ化合物(B)中の反応性水素原子と既に反応している少なくとも2つの異なるエポキシ樹脂分子からのエポキシ基の反応に由来するオリゴマー成分を含むこともできる。
【0120】
この型の付加物の一例は、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル及びエステルとシクロヘキシルアミンとの反応生成物である。以下の付加物構造は、下記式XIX(部分構造のみを示す)に示すように、エポキシ基の1つがそれぞれシクロヘキシルアミンと既に反応している、一つのアルカノールアミドに由来する二つの異なるポリグリシジルエーテルからの少なくとも2つのエポキシ基から導かれるオリゴマー成分において示す:
【0121】
【化10】

【0122】
[式中、nは1又はそれ以上の値を有する]。
【0123】
付加物は、以下の反応:
(1)エポキシ基と付加物中に含まれる2−ヒドロキシプロピル結合のヒドロキシル基との反応;
(2)3つの異なるエポキシ樹脂と化合物(B)からの3つの反応性水素原子との反応
から導かれる少なくとも1つの分岐した又は架橋された構造も含むこともできる。
【0124】
前記反応(1)の一例は、アルカノールアミドのジグリシジルエーテルとシクロヘキシルアミンとの付加物中のヒドロキシル基と、エポキシ基の1つにシクロヘキシルアミンが既に付加している第2のアルカノールアミドジグリシジルエーテルからのエポキシ基との反応であり、下記式XX(部分構造のみを示す)によって示される:
【0125】
【化11】

【0126】
前記反応(2)の一例は、アルカノールアミドのジグリシジルエーテルとジエチレントリアミンとの付加物のアミノ水素と、ジエチレントリアミン部分の別のアミノ水素と既に反応している第2のアルカノールアミドジグリシジルエーテルのエポキシ基との反応であり、下記式XXI(部分構造のみを示す)によって示される:
【0127】
【化12】

【0128】
更に、若干のマイナー構造、例えばエポキシ基の加水分解に由来する1,2−グリコール基、又は中間体ハロヒドリン分子のヒドロキシル基へのエピハロヒドリンの付加に由来するハロメチル基が、本明細書中に記載した付加物の態様中に存在することもできる。ジグリシジルエーテルの付加物中の主鎖ヒドロキシル基の反応によって、他のマイナー構造が形成され得る。例えば第2ヒドロキシル基と一部の化合物(B)中に存在するカルボン酸基との反応により、付加物中に主鎖エステル結合が形成される。
【0129】
付加物は未反応の化合物(B)を含むこともできる。従って、グリシジルエーテルとシクロヘキシルアミンとの反応の前記例において、使用した化学量論的過剰のシクロヘキシルアミンが除去されない場合には、それは付加生成物の一部となる。
【0130】
本発明の開示の硬化性エポキシ樹脂組成物は、(a)前述の本発明の付加物と(b)エポキシ樹脂化合物(D)を含んでなる。前記付加物は、グリシジルエーテル又はエステル(A)と化合物(B)(いずれも前述の通り)の少なくとも1種の反応生成物を含む。前記エポキシ樹脂化合物(D)は、1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む。硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化時に、アルカノールアミドに由来するグリシジルエーテル又はエステルを含む硬化エポキシ樹脂を生成する。
【0131】
用語「硬化性」(「熱硬化性」とも称する)は、組成物が、組成物を硬化又は熱硬化状態(state or condition)にするであろう条件に供することができることを意味する。
【0132】
用語「硬化(された)」又は「熱硬化(された)」は、L.R,Whittington[Whittington’s Dictionary of Plastics(1968),239ページ]によって以下のように定義されている:”完成品としての最終状態で実質的に不融性且つ不溶性である樹脂又はプラスチック化合物。熱硬化性樹脂は多くの場合、その製造又は加工中のある段階で液体であり、熱、触媒作用又は他の任意の化学的手段によって硬化される。完全に硬化した後、熱硬化性樹脂は熱によって再軟化させることができない。通常は熱可塑性である一部のプラスチックは他の材料による架橋によって熱硬化性にすることができる。”
本発明の一つの態様は、本発明の付加物と樹脂化合物(D)とを、各成分ともに硬化性エポキシ樹脂組成物を生成するのに充分な量で、混合することによって製造された、本発明の開示の硬化性エポキシ樹脂組成物である。本発明の開示の硬化性エポキシ樹脂組成物に樹脂化合物(D)として使用できるエポキシ樹脂は、分子当たり平均1個超のエポキシ基を有する任意のエポキシド含有化合物であることができる。このエポキシ樹脂の例には、前述のエポキシ樹脂化合物(C)及びエポキシ樹脂材料(A)に適当なエポキシ樹脂が含まれる。
【0133】
一般に、本発明の開示の付加物と樹脂化合物(D)の比は、硬化に使用する条件において、約0.60:1〜約1.50:1、好ましくは約0.95:1〜約1.05:1[(付加物中に存在する反応性水素原子の当量)対(樹脂化合物(D)中のエポキシ基の当量)]である。
【0134】
本発明の好ましい硬化性エポキシ樹脂組成物は本発明の付加物と樹脂化合物(D)を含んでなる。樹脂化合物(D)は、前記グリシジルエーテル(A)から選ばれた1種又はそれ以上のエポキシ樹脂、例えば前記の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂はアルカノールアミド官能基化脂肪酸エステル又は脂肪酸トリグリセリドに由来するグリシジルエーテルを含む。
【0135】
本発明の別の好ましい硬化性エポキシ樹脂組成物は本発明の開示の付加物及び樹脂化合物(D)を含んでなる。前記樹脂化合物(D)は1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含み、前記付加物はグリシジルエーテル(A)と化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含む。化合物(B)は脂肪族若しくは脂環式ジアミン、脂肪族若しくは脂環式ポリアミン又はそれらの任意の組合せを含む。
【0136】
本明細書中に記載した硬化性組成物の別の態様は、前述の1種又はそれ以上の付加物並びに1種又はそれ以上のグリシジルエーテル及びエステル(A)と1種又はそれ以上のエポキシ樹脂(D)とのブレンドを含むことができる。例えば硬化性組成物は脂肪族若しくは脂環式ジアミン、脂肪族若しくは脂環式ポリアミン又はそれらの任意の組合せの1種又はそれ以上の付加物並びに1種若しくはそれ以上のグリシジルエーテル(A)と芳香族ビスフェノール(例えばビスフェノールA)の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂とのブレンドを含むことができる。その結果得られる硬化性組成物は、所望の耐候性(耐紫外線性、防湿性など)レベルを保持しながら機械的性質を向上させるのに充分な量で芳香族基を含む熱硬化マトリックスを生じることができる。
【0137】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化方法は、所定の硬化圧力において所定の温度で所定の時間実施できる。一般に、硬化圧力は大気圧(例えば760mmHg)、過圧若しくは減圧であることができ;温度は約0℃〜約300℃、好ましくは約25℃〜約250℃、より好ましくは約50℃〜約200℃の温度であることができる。
【0138】
硬化を完了させるのに必要な時間は、使用温度によって異なり得る。温度が高いほど必要な時間が一般に短く、温度が低いほど必要な時間が一般に長い。一般に、硬化を完了させるのに必要な時間は、約1分〜約48時間、好ましくは約15分〜約24時間、より好ましくは約30分〜約12時間である。
【0139】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を部分硬化させ(B段階)、次いでその後硬化プロセスを完了させることも操作可能である。
【0140】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化剤及び/又は硬化触媒も、使用する個々の付加物及びエポキシ樹脂によって量が異なるという認識のもとで、硬化性エポキシ樹脂組成物を効果的に硬化させる量で含むことができる。
【0141】
硬化剤及び/又は触媒の例としては、脂肪族、脂環式、多脂環式若しくは芳香族第一モノアミン;脂肪族、脂環式、多脂環式若しくは芳香族第一及び第二ポリアミン;カルボン酸及びその無水物;芳香族ヒドロキシル含有化合物;イミダゾール類;グアニジン類;尿素−アルデヒド樹脂;メラミン−アルデヒド樹脂;アルコキシル化尿素−アルデヒド樹脂;アルコキシル化メラミン−アルデヒド樹脂;アミドアミン類;エポキシ樹脂付加物;並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0142】
硬化剤の特に好ましい例としては、例えばメチレンジアニリン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、メチロール化尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メチロール化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、スルファニルアミド、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、t−ブチルトルエンジアミン、ビス−4−アミノシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、トリス−3−アミノプロピルアミン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0143】
硬化触媒の特に好ましい例としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテル、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、四塩化珪素、塩化第二錫、四塩化チタン、三塩化アンチモン、三フッ化ホウ素モノエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、ピリジン−ボラン錯体、ジエタノールアミンボレート、フルオロホウ酸亜鉛、金属アシレート、例えばオクタン酸第一錫若しくはオクタン酸亜鉛及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0144】
硬化触媒は硬化性エポキシ樹脂組成物を効果的に硬化させるであろう量で使用できる。硬化触媒の量は硬化性エポキシ樹脂組成物中に使用する個々の付加物、エポキシ樹脂及び硬化剤(使用する場合)によっても異なるであろう。
【0145】
一般に、硬化触媒は、総硬化性エポキシ樹脂組成物の約0.001〜約2重量%の量で使用できる。更に、1種又はそれ以上の硬化触媒を用いて、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化プロセスを促進するか又は他の方法で変更することができる。
【0146】
硬化剤は、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させるために、付加物と共に使用できる。硬化剤と付加物の合計量は、約0.60:1〜約1.50:1、好ましくは約0.95:1〜約1.05:1(硬化剤及び付加物中の反応性水素原子の総当量に基づく)である。
【0147】
硬化性エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の添加剤、例えば硬化促進剤、溶剤若しくは希釈剤、改質剤(例えば流れ調整剤及び/若しくは増粘剤)、強化材、充填剤、顔料、染料、離型剤、湿潤剤、安定剤、難燃剤、界面活性剤又はそれらの任意の組合せとブレンドすることもできる。
【0148】
添加剤は、本発明の硬化性樹脂組成物の製造への使用前に、付加物と、もしくは樹脂化合物(D)と、又は付加物及び樹脂化合物(D)の両者と、ブレンドすることができる。
【0149】
これらの添加剤は、機能的等価量(functionally equivalent amount)で添加でき、例えば顔料及び/又は染料は、組成物に所望の色を与えるであろう量で添加することができる。一般に、添加剤の量は、硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づき、約0重量%〜約20重量%、好ましくは約0.5重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約3重量%であることができる。
【0150】
本発明において使用できる硬化促進剤としては、例えばモノ、ジ、トリ及びテトラフェノール類;塩素化フェノール類;脂肪族又は脂環式モノ又はジカルボン酸;芳香族カルボン酸;ヒドロキシ安息香酸;ハロゲン化サリチル酸;ホウ酸;芳香族スルホン酸;イミダゾール類;第三アミン;アミノアルコール;アミノピリジン類;アミノフェノール類;メルカプトフェノール類;及びそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0151】
特に適当な硬化促進剤としては、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−メチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、4−ニトロフェノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、吉草酸、シュウ酸、安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸、5−クロロサリチル酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ安息香酸、4−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノ)フェノール、4−ジメチルアミノピリジン、4−アミノフェノール、2−アミノフェノール、4−メルカプトフェノール又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0152】
本発明において使用できる溶剤又は希釈剤の例としては、例えば脂肪族及び芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族ニトリル、環状エーテル、グリコールエーテル、エステル、ケトン、アミド、スルホキシド及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0153】
特に適当な溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、二塩化エチレン、メチルクロロホルム、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、スルホラン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0154】
増粘剤及び流れ調整剤のような改質剤は、硬化性エポキシ樹脂ブレンド組成物の総重量に基づき、0重量%〜約10重量%、好ましくは約0.5重量%〜約6重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約4重量%の量で使用できる。
【0155】
本発明において使用できる強化材としては、織物、マット、モノフィラメント、マルチフィラメント、一方向繊維、ロービング、ランダム繊維若しくはフィラメント、無機充填剤若しくはホイスカー又は中空球の形態の天然及び合成繊維が挙げられる。他の適当な強化材としては、ガラス、セラミック、ナイロン、レーヨン、コットン、アラミド、グラファイト、ポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0156】
本発明において使用できる充填剤としては、例えば無機酸化物、セラミック微小球、プラスチック微小球、ガラス微小球、無機ホイスカー、炭酸カルシウム及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0157】
充填剤は、硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づき、約0重量%〜約95重量%、好ましくは約10重量%〜約80重量%、より好ましくは約40重量%〜約60重量%の量で使用できる。
【0158】
本発明の付加物は、硬化エポキシ樹脂の製造(例えば具体的には、完全に硬化された脂環式/脂肪族硬化エポキシ樹脂(芳香環を含まない)の製造)のための硬化剤として有用である。
【0159】
付加物は、例えば(a)熱硬化ポリウレタン及びポリウレアウレタンのための反応体として且つ(b)熱硬化ポリウレタン及びポリウレアウレタンの製造において有用なジオール/ポリオール用の開始剤としても使用できる。
【0160】
付加物は、例えばコーティング、特に耐溶剤性、防湿性、耐摩耗性及び耐候性が優れた保護コーティング中に使用することもできる。本発明の付加物の他の用途としては、例えば電気用又は構造用の積層品又は複合材料、フィラメント巻き線、成形品、注型品、カプセル封入品などの作成が挙げられる。
【実施例】
【0161】
実施例及び比較実験中においては、以下の標準的な分析装置及び方法を用いる:
エポキシド%/エポキシ当量重量(equivalent weight)(EWW)の分析
標準的な滴定法を用いて、種々のエポキシ樹脂中のエポキシド%を測定した。サンプルを秤量し(約0.1〜0.2gの範囲)、ジクロロメタン(15mL)中に溶解させた。酢酸中の臭化テトラエチルアンモニウム溶液(15mL)をサンプルに加えた。得られた溶液を3滴のクリスタルバイオレット溶液(酢酸中0.1%w/v)で処理し、Metrohm 665 Dosimat滴定装置(Brinkmann)上で酢酸中0.1N過塩素酸で滴定した。ジクロロメタン(15mL)及び酢酸中の臭化テトラエチルアンモニウム溶液(15mL)を含むブランクサンプルの滴定により、溶媒バックグラウンドに関する補正を行った。この滴定のための一般的な方法は、科学文献、例えばJay,R.R.,”Direct Titration of Epoxy Compounds and Aziridines”,Analytical Chemistry,36,3,667-668(March,1964)に記載されている。
【0162】
以下の実施例及び比較実験は、本発明を更に詳細に説明するものであるが、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。
【0163】
実施例1
A.メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の合成
1Lの3口底ガラス反応器に、窒素下でエピクロロヒドリン(226.2g,2.444モル)、水酸化ナトリウム(ペレット、無水、試薬用,≧98%)(53.8g,1.344モル)及び硫酸ナトリウム(粒状,無水)(104.1g,0.733モル)を装入した。反応器に凝縮器(−3℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及びスターラーアセンブリ(stirrer assembly)(TEFLON(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した。メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオール(82.97g,ヒドロキシル当量0.60)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。使用したメチルヒドロキシルメチルステアレートアミドトリオールは、主にメチルヒドロキシルメチルステアレートアミドトリオール(ヒドロキシル当量重量138.288)からなる真空蒸留生成物である。このアミドトリオールの高圧液体クロマトグラフ(HPLC)分析は41.4面積%及び47.5面積%のアミドトリオールの対の存在を示し、残りは、0.34面積%〜2.41面積%の範囲の14種の微量成分であった。エポキシ化反応に用いたガラス器具は、全て、オーブン中で150℃において≧48時間、予備乾燥した。撹拌及び加熱を開始して、エピクロロヒドリン中水酸化ナトリウム及び硫酸ナトリウムの25℃スラリーを生成した。15分後、撹拌スラリーは40℃の平衡に保ち、反応器中の撹拌スラリーへのメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールの滴加を開始した。メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールの205分の滴加の間中、反応温度は40℃に保持した。添加終了時に、生成物は粘稠なライトタン色のスラリーであった。追加のエピクロロヒドリン(75.0g)を添加して、粘度を低下させた。反応生成物は、次の15.25時間、40℃に保持し、次いでHPLCのためにサンプリングした。アミドトリオールの完全な転化が達成され、77.6面積%を構成するジグリシジルエーテルの単一生成物ピーク(2つの異性体はHPLC分析条件下では分割していない)、それに伴う、異性体モノグリシジルエーテルと考えられる6.86面積%及び8.30面積%を構成する1対のほとんど分割されていない生成物ピークが示され、残りが0.42面積%〜1.69面積%の範囲の7種の微量生成物ピークであった。薄いタン色のスラリーの加熱を止め、続いてメチルイソブチルケトン(400ml)を添加し、反応器から加熱マントルを取り除き、反応器外部をファンで25℃に冷却した。生成物スラリーを4つの高密度ポリエチレンボトル中に均等に分割し、ボトルをシールし、3000rpmにおいて1時間遠心分離した。明澄な液体の最上層を、真空を用いて、600mlの粗フリット(coarse fritted)ガラス漏斗上に支持された珪藻土の1.5インチパッドを通してデカントした。珪藻土の床は、0.5インチのCELITE 545、続いて0.5インチのCELITE標準Super−Cel、次いで0.5インチのCELITE 545を詰めることによって調製した。ろ液は透明で、明るいアンバー色の液体であった。ボトル中に残った固体を、新鮮なメチルイソブチルケトンで等しく稀釈し(各ボトルを250gの総重量まで満たした)、次いで機械的振盪機上に1時間置き、続いて前述と同様に遠心分離及びデンカントを行った。合した濾液は透明なライトアンバー色の溶液であった。70℃の最大油浴温度を用いた濾液の回転蒸発によって揮発分の大部分を除去し、続いて140℃の最大油浴温度を用いて1時間保持したところ、透明なライトアンバーイエロー色の液体111.8gが得られた。GC分析は、軽沸成分が全て除去されたことを示した。得られた生成物の1対のアリコートの滴定は平均20.93%のエポキシド(エポキシ当量重量205.1)を示した。KClプレート上のアミドトリオール反応体及びそのトリグリシジルエーテルの両者のニートな薄膜の赤外線分光光度分析により、下記構造を確認した:
(1)1645.2cm-1(トリグリシジルエーテル)及び1621.8cm-1(アミドトリオール反応体)におけるトリグリシジルエーテル中のアミド結合の完全性の保持;
(2)アミドトリオール反応体中における3366.1cm-1のヒドロキシル基の転化と、トリグリシジルエーテル中に存在する3451.6cm-1のごくわずかなヒドロキシル吸収;
(3)トリグリシジルエーテル中における1109.5cm-1の強い脂肪族エーテルC−O伸縮の出現;
(4)トリグリシジルエーテル中における1253.2cm-1、910.6cm-1及び848.8cm-1のエポキドエーテルC−O伸縮の出現;
(5)アミドトリオール反応体及びトリグリシジルエーテル生成物の両者のわずかな吸収(それぞれ1737.0cm-1及び1733.4cm-1)(これは微量のエステル官能価を示すと考えられる)の保持。
【0164】
B.ジエチレントリアミンとメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂との付加物の製造及び特性決定
1Lの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でジエチレントリアミン(474.98g,4.605モル)を装入した。反応器に、凝縮器(0℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及びスターラーアセンブリ(TEFLON(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した。前記パートAからのメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の一部(37.88g,エポキシ当量0.1842)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。サーモスタット制御加熱マントルを用いて撹拌及び加熱を開始して、75℃の溶液を生成した。75℃の反応温度を保持しながら、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の滴加を開始した。162分後、滴加を完了させた。イエロー色の撹拌溶液を次の20.5時間、75℃に保持し、続いて114℃の最大油浴温度を用いて回転蒸発を行い、過剰のジエチレントリアミンのほとんどを除去したら114℃に1時間保持した。合計55.61gの透明なイエロー色の液体付加物を回収した。付加生成物のアリコートのHPLC分析は、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の完全な転化を達成したことを示し、異性体ジグリシジルエーテルの付加物と考えられる73.7面積%を構成する単一生成物と、それに伴って、異性体モノグリシジルエーテルの付加物と考えられる23.1面積%を構成する単一ピークが示され、残りは3.2面積%を構成する1つの微量生成物ピークであった。付加生成物の一部をゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分析した。Waters Ultrahydrogel Linear 120及び150カラムを、示差屈折率検出器(Agilent 1100 Differential Refractive Index)と直列で用いた。カラムを、クロマトグラフ用オーブン中で40℃に保持した。使用した溶離剤は、流速1mL/分の、0.1M塩化ナトリウム及び0.1Mエチレンジアミンを含む50:50水:イソプロパノールである。注入容量は100μLとした。サンプルを、0.1M塩化ナトリウム及び0.1Mエチレンジアミングリコールを含む50:50水:イソプロパノール中で0.24〜0.28%の濃度に稀釈した。Polymer Laboratoriesポリエチレングリコールスタンダートセット,PEG 10,Lot 16を用いて、較正を行った。以下の結果が得られた(Mn、Mw、Mw/Mn、Mp並びにMz及びMz+1の相対標準偏差(RSD)は6%未満であった):
n=1210 Mp=1040
w=1720 Mz=4150
w/Mn=1.42 Mz+1=11000
【0165】
付加生成物の一部を酢酸(25mL)に加え、次いで酢酸中過塩素酸(0.1)及びクリスタルバイオレット指示薬を用いて滴定した。この滴定からのデータを用いた計算から、87.84のアミン水素当量重量が示された。滴定の繰り返しにより、91.07、89.24及び89.15のアミン水素当量重量が示された。4つの値は、全て、酢酸(25mL)ブランクの滴定補正後の値である。平均すると、アミン水素当量重量は89.33であった。
【0166】
実施例2−イソホロンジアミンとメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂との付加物の製造及び特性決定
1Lの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でイソホロンジアミン(470.60g,2.7634モル)を装入した。反応器に、凝縮器(0℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及びスターラーアセンブリ(TEFLON(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した。実施例1Aからのメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の一部(37.88g,エポキシ当量0.1842)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。サーモスタット制御加熱マントルを用いて撹拌及び加熱を開始して、75℃の溶液を生成した。75℃の反応温度を保持しながら、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の滴加を開始した。177分後、滴加を完了させた。イエロー色の撹拌溶液を次の18.25時間、75℃に保持し、続いて114℃の最大油浴温度を用いて回転蒸発を行い、過剰のイソホロンジアミンのほとんどを除去したら114℃に1時間保持した。合計71.45gの透明なイエロー色の液体付加物を回収した。付加生成物のアリコートのHPLC分析は、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の完全な転化が達成されたことを示し、62.1面積%、14.3面積%及び10.2面積%を構成する主要生成物ピークが示され、残りは、3.9面積%、3.9面積%及び5.6面積%を構成する3つの微量生成物ピークであった。付加生成物の一部をゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分析した。Waters Ultrahydrogel Linear 120及び150カラムを、示差屈折率検出器(Agilent 1100 Differential Refractive Index)と直列で用いた。カラムを、クロマトグラフ用オーブン中で40℃に保持した。使用した溶離剤は、流速1mL/分の、0.1M塩化ナトリウム及び0.1Mエチレンジアミンを含む50:50水:イソプロパノールである。注入容量は100μLとした。サンプルを、0.1M塩化ナトリウム及び0.1Mエチレンジアミンを含む50:50水:イソプロパノール中で0.24〜0.28%の濃度に稀釈した。Polymer Laboratoriesポリエチレングリコールスタンダートセット,PEG 10,Lot 16を用いて、較正を行った。以下の結果が得られた(Mn、Mw、Mw/Mn、Mp並びにMz及びMz+1の相対標準偏差(RSD)は6%未満であった):
n=1530 Mp=1360
w=2180 Mz=4570
w/Mn=1.43 Mz+1=10100
【0167】
付加生成物の一部を酢酸(25mL)に加え、次いで酢酸中過塩素酸(0.1N)及びクリスタルバイオレット指示薬を用いて滴定した。この滴定からのデータを用いた計算から、116.69のアミン水素当量重量が示された。滴定の繰り返しにより、118.00のアミン水素当量重量が示された。いずれの値も、酢酸(25mL)ブランクの滴定補正後の値である。平均すると、アミン水素当量重量は117.35であった。
【0168】
実施例3−ジエチレントリアミン付加物とメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂との付加物によって硬化された、ビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むコーティングの作成及び試験
13.0g(エポキシ当量0.069)の商用グレードのビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.331エポキシ樹脂,The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から入手可能,エポキシ当量重量188.5)、6.16g(アミン水素当量0.069)の実施例1パートBからのジエチレントリアミン付加物(アミン水素当量重量89.22)、4.11gのベンジルアルコール(付加物と予備混合)及び3滴のBYK−310”表面改質剤”(ポリエステル改質ポリジメチルシロキサン表面改質剤,BYK Chemie USA)を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、2枚の磨かれていない冷間圧延鋼プレートに適用し、次いで室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが1.89milであった。
【0169】
これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=180秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=3H
コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=破損なし
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=評価3B(破損5〜15%)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=200+
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=104及び16in.lbs.
結果を表Iに要約する。
【0170】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジエチレントリアミン付加物、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部を、2枚の磨かれていないTru Aluminumコイルコートホワイトパネル(3インチ×6インチ×0.038インチ,ACT Laboratories)に適用した。これらのパネル上に得られたコーティングはまた、室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。硬化後、コーティングの光沢度を、ASTM Method D-523に従って光沢計を用いて測定した。塗布パネルの20°、60°及び85°の角度における平均光沢度(%光反射率)はそれぞれ、17.8%、44.4%及び76.57%であった。次いで、パネルを、ASTM Method G−53に記載された装置中に入れ、60℃における4時間の紫外線暴露と50℃における4時間の水分凝縮を反復サイクルで交互に行った。この装置内での紫外線照射は、340nmの波長で動作するUV−A型ランプの配列から行った。光沢度に対するこれらの条件の影響を測定するために、パネルを、概ね100時間毎に装置から一時的に取り出し、測定を行った。結果を表IIIに要約する。
【0171】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジエチレントリアミン付加物、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部も、2枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B-K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=1.9時間
指触乾燥時間(dust free time)=2.25時間
硬化乾燥時間(dry-through time)=2.4時間
結果を表IIに要約する。
【0172】
実施例4−イソホロンジアミン付加物とメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂との付加物によって硬化された、ビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むコーティングの作成及び試験
12.0g(エポキシ当量0.064)の商用グレードのビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.331エポキシ樹脂,The Dow Chemical Companyから入手可能,エポキシ当量重量188.5)、7.47g(アミン水素当量0.064)の実施例2からのイソホロンジアミン付加物(アミン水素当量重量117.35)、4.98gのベンジルアルコール(付加物と予備混合)及び3滴のBYK−310”表面改質剤”(ポリエステル改質ポリジメチルシロキサン表面改質剤,BYK Chemie USA)を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、2枚の磨かれていない冷間圧延鋼プレートに適用し、次いで室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが1.89milであった。
【0173】
これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=185秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=3H
コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=離層
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=評価1B(破損35〜65%)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=200+
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=64及び8in.lbs.
結果を表Iに要約する。
【0174】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、イソホロンジアミン付加物、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部を、2枚の磨かれていないTru Aluminumコイルコートホワイトパネル(3インチ×6インチ×0.038インチ,ACT Laboratories)に適用した。これらのパネル上に得られたコーティングはまた、室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。硬化後、コーティングの光沢度を、ASTM Method D−523に従って光沢計を用いて測定した。塗布パネルの20°、60°及び85°の角度における平均光沢度(%光反射率)はそれぞれ、17.8%、44.4%及び76.57%であった。次いで、パネルを、ASTM Method G−53に記載された装置中に入れ、60℃における4時間の紫外線暴露と50℃における4時間の水分凝縮を反復サイクルで交互に行った。この装置内での紫外線照射は、340nmの波長で動作するUV−A型ランプの配列から行った。光沢度に対するこれらの条件の影響を測定するために、パネルを、概ね100時間毎に装置から一時的に取り出し、測定を行った。結果を表IIIに要約する。
【0175】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジエチレントリアミン付加物、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部も、2枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B−K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=5時間
指触乾燥時間(dust free time)=6.25時間
硬化乾燥時間(dry-through time)=11.5時間
結果を表IIに要約する。
【0176】
比較例A−ジエチレントリアミンで硬化されたビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むコーティングの作成及び試験
25.0g(エポキシ当量0.133)の商用グレードのビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.331エポキシ樹脂,The Dow Chemical Companyから入手可能,エポキシ当量重量188.5)、2.73g(アミン水素当量0.133)のジエチレントリアミン(アミン水素当量重量20.6)、1.82gのベンジルアルコール(ジエチレントリアミンと予備混合)及び3滴のBYK−310”表面改質剤”(ポリエステル改質ポリジメチルシロキサン表面改質剤,BYK Chemie USA)を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、2枚の磨かれていない冷間圧延鋼プレートに適用し、次いで室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが1.89milであった。これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=198秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=4H
コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=離層
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=評価OB(破損>65%)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=200+
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=52及び<4in.lbs.
結果を表Iに要約する。
【0177】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジエチレントリアミン、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部を、2枚の磨かれていないTru Aluminumコイルコートホワイトパネル(3インチ×6インチ×0.038インチ,ACT Laboratories)に適用した。これらのパネル上に得られたコーティングも、室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。硬化後、コーティングの光沢度を、ASTM Method D-523に従って光沢計を用いて測定した。塗布パネルの20°、60°及び85°の角度における平均光沢度(%光反射率)は、それぞれ、17.8%、44.4%及び76.57%であった。次いで、パネルを、ASTM Method G-53に記載された装置中に入れ、60℃における4時間の紫外線暴露と50℃における4時間の水分凝縮を反復サイクルで交互に行った。この装置内での紫外線照射は、340nmの波長で動作するUV−A型ランプの配列から行った。光沢度に対するこれらの条件の影響を測定するために、パネルを、概ね100時間毎に装置から一時的に取り出し、測定を行った。
結果を表IIIに要約する。
【0178】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジエチレントリアミン、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部も、2枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B−K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=3.6時間
指触乾燥時間(dust free time)=5.6時間
硬化乾燥時間(dry-through time)=8.1時間
結果を表IIに要約する。
【0179】
比較実験B−イソホロンジアミンで硬化されたビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むコーティングの作成及び試験
25.00g(エポキシ当量0.1326)の商用グレードのビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.331エポキシ樹脂,The Dow Chemical Companyから入手可能,エポキシ当量重量188.5)、5.64g(アミン水素当量0.1325)のイソホロンジアミン(アミン水素当量重量42.58)、3.76gのベンジルアルコール(イソホロンジアミンと予備混合)及び3滴のBYK−310”表面改質剤”(ポリエステル改質ポリジメチルシロキサン表面改質剤,BYK Chemie USA)を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、3枚の磨かれていない冷間圧延鋼プレートに適用し、次いで室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが1.84milであった。これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=188秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=2H
コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=破損なし
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=評価46(破損<5%)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=200+
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=160及び12in.lbs.
結果を表Iに要約する。
【0180】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、イソホロンジアミン、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部を、3枚の磨かれていないTru Aluminumコイルコートホワイトパネル(3インチ×6インチ×0.038インチ,ACT Laboratories)に適用した。これらのパネル上に得られたコーティングも、室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。硬化後、コーティングの光沢度を、ASTM Method D-523に従って光沢計を用いて測定した。塗布パネルの20°、60°及び85°の角度における平均光沢度(%光反射率)は、それぞれ、93.3%、100.0%及び100.0%であった。次いで、パネルを、ASTM Method G-53に記載された装置中に入れ、60℃における4時間の紫外線暴露と50℃における4時間の水分凝縮を反復サイクルで交互に行った。この装置内での紫外線照射は、340nmの波長で動作するUV−A型ランプの配列から行った。光沢度に対するこれらの条件の影響を測定するために、パネルを、概ね100時間毎に装置から一時的に取り出し、測定を行った。結果を表IIIに要約する。
【0181】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、イソホロンジアミン、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部をまた、2枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B-K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=3.9時間
指触乾燥時間(dust free time)=8.1時間
硬化乾燥時間(dry-through time)=12.75時間
結果を表IIに要約する。
【0182】
比較例C−ビスフェノールAジグリシジルエーテルとジエチレントリアミンで硬化された、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂とのブレンドを含むコーティングの作成及び試験
20.00g(エポキシ当量0.106)の商用グレードのビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.331エポキシ樹脂,The Dow Chemical Companyから入手可能,エポキシ当量重量188.5)、6.00g(エポキシ当量0.0292)の実施例1からのメチルヒドロキシルメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂(エポキシ当量重量205.61)、2.79g(アミン当量0.1354)のジエチレントリアミン(アミン水素当量重量20.6)、6.19gのベンジルアルコール及び3滴のBYK−310”表面改質剤”(ポリエステル改質ポリジメチルシロキサン表面改質剤,BYK Chemie USA)を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この配合物は、実施例3と同量の種油アミドセグメント及び同量のベンジルアルコール溶媒キャリヤー(それぞれ、14.4重量%及び17.7重量%)を含むように作られている。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、3枚の磨かれていない冷間圧延鋼プレートに適用し、次いで室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが1.63milであった。これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=160秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=4H
コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=39mm破損
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=4B(〜5%破損)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=2200摩擦
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=761<4in.lbs.
結果を表Iに要約する。
【0183】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂、ジエチレントリアミン、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部を、4枚の磨かれていないTru Aluminumコイルコートホワイトパネル(3インチ×6インチ×0.038インチ,ACT Laboratories)に適用した。これらのパネル上に得られたコーティングも、室温で5日間、続いて60℃で1日間さらに80℃で2日間硬化させた。硬化後、コーティングの光沢度を、ASTM Method D-523に従って光沢計を用いて測定した。塗布パネルの20°、60°及び85°の角度における平均光沢度(%光反射率)は、それぞれ、27.9%、55.4%及び88.7%であった。次いで、パネルを、ASTM Method G-53に記載された装置中に入れ、60℃における4時間の紫外線暴露と50℃における4時間の水分凝縮を反復サイクルで交互に行った。この装置内での紫外線照射は、340nmの波長で動作するUV−A型ランプの配列から行った。光沢度に対するこれらの条件の影響を測定するために、パネルを、概ね100時間毎に装置から一時的に取り出し、測定を行った。
結果を表IIIに要約する。
【0184】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂、ジエチレントリアミン、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部も、3枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B-K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=4.0時間
指触乾燥時間(dust free time)=4.5時間
硬化乾燥時間(dry-through time)=9.2時間
結果を表IIに要約する。
【0185】
実施例5−ビス(ヘキサメチレン)トリアミンとメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂との付加物の製造及び特性決定
1Lの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でビス(ヘキサンメチレン)トリアミン(991.87g,4.605モル)を装入した。反応器に、凝縮器(0℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及びスターラーアセンブリ(TEFLON(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した。実施例1Aの方法を用いて製造したメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂(エポキシ当量重量205.38)の一部(37.83g,エポキシ当量0.1842)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。サーモスタット制御加熱マントルを用いて撹拌及び加熱を開始して、75℃の溶液を生成した。75℃の反応温度を保持しながら、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の滴加を開始した。3.5時間後、滴加を完了させた。ライトアンバー色の撹拌溶液を次の18.9時間、75℃に保持し、続いて35℃の凝縮器温度及び170℃の最大油浴温度を用いて回転蒸発を行い、170℃に20分間保持し、その時点でビス(ヘキサメチレン)トリアミンの蒸留が止まった。合計97.49gの透明なアンバー色の液体付加物を回収した。付加生成物のアリコートのHPLC分析は、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の完全な転化が達成されたことを示した。付加生成物の一部を酢酸(25mL)に加え、次いで酢酸中の過塩素酸(0.1)及びクリスタルバイオレット指示薬を用いて滴定した。この滴定からのデータを用いた計算により、アミン水素当量重量91.38を示した。この滴定の繰り返しにより、92.21のアミン水素当量重量が得られた。いずれの値も、酢酸(25mL)ブランクの滴定補正後の値である。平均してアミン水素当量重量は91.80であった。
【0186】
実施例6−トリエチレンテトラミンとメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂との付加物の製造及び特性決定
1Lの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でトリエチレンテトラミン(673.44g,4.605モル)を装入した。反応器に凝縮器(0℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及びスターラーアセンブリ(TEFLON(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した。実施例1Aの方法を用いて製造したメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂(エポキシ当量重量205.38)の一部(37.83g,エポキシ当量0.1842)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。サーモスタット制御加熱マントルを用いて撹拌及び加熱を開始して、75℃の溶液を生成した。75℃の反応温度を保持しながら、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の滴加を開始した。2.8時間後、滴加を完了させた。ライトイエロー色の撹拌溶液を次の17.2時間、75℃に保持し、続いて125〜128℃の油浴温度を用いて回転蒸発を行って、過剰のトリエチレンテトラミンのほとんどを除去した。続いて、油浴温度を140℃に上昇させ、同温度に30分間保持し、その時点でトリエチレンテトラミンの蒸留が止まった。合計73.62gの透明なイエロー色の液体付加物を回収した。付加生成物のアリコートのHPLC分析は、ヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の完全な転化が達成されたことを示した。付加生成物の一部を酢酸(25mL)に加え、次いで酢酸中の過塩素酸(0.1)及びクリスタルバイオレット指示薬を用いて滴定した。この滴定からのデータを用いた計算により、アミン水素当量重量75.21を示した。この滴定の繰り返しにより、82.06のアミン水素当量重量が得られた。いずれの値も、酢酸(25mL)ブランクの滴定補正後の値である。平均してアミン水素当量重量は78.63であった。
【0187】
実施例7−過剰トリエチレンテトラミンの不完全除去を伴う、トリエチレンテトラミンとメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂との付加物の製造及び特性決定
1Lの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でトリエチレンテトラミン(673.44g,4.605モル)を装入した。反応器に、凝縮器(0℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及びスターラーアセンブリ(TEFLON(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した。実施例1Aの方法を用いて製造したメチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂(エポキシ当量重量205.38)の一部(37.83g,エポキシ当量0.1842)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。サーモスタット制御加熱マントルを用いて撹拌及び加熱を開始して、75℃の溶液を生成した。75℃の反応温度を保持しながら、メチルヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の滴加を開始した。2.8時間後、滴加を完了させた。ライトイエロー色の撹拌溶液を次の17.3時間、75℃に保持し、続いて124〜127℃の油浴温度を用いて回転蒸発を行って、過剰のトリエチレンテトラミン563.5gを受け器中に除去した。合計147.07gの透明なイエロー色の液体付加物を回収した。付加生成物のアリコートのHPLC分析は、ヒドロキシメチルステアレートアミドトリオールのエポキシ樹脂の完全な転化が達成されたことを示した。付加生成物の一部を酢酸(25mL)に加え、次いで酢酸中の過塩素酸(0.1)及びクリスタルバイオレット指示薬を用いて滴定した。この滴定からのデータを用いた計算により、アミン水素当量重量45.51を示した。この滴定の繰り返しにより、44.68のアミン水素当量重量が得られた。いずれの値も、酢酸(25mL)ブランクの滴定補正後の値である。平均してアミン水素当量重量は45.10であった。
【0188】
実施例8−種油(又は種子油)(seed oil)ジグリシジルエーテルのビス(ヘキサメチレン)トリアミン付加物によって硬化されたビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むコーティングの作成及び試験
22.00g(エポキシ当量0.1167)の商用ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.331エポキシ樹脂,The Dow Chemical Companyから入手可能,エポキシ当量重量188.5)、10.71g(アミン水素当量0.1167)の実施例5からのビス(ヘキサメチレン)トリアミン付加物(アミン水素当量重量91.80)、及び3滴のBYK−310を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、3枚の磨き冷間圧延鋼プレート(0.8mm×102mm×305mm;Bonderite 1000、燐酸鉄及びP−60クロムを塗布)に適用し、次いで60℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが3.37milであった。これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=65秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=1H
1/8インチ・コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=100mm破損
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=評価5B(破損なし)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=>200
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=84及び4in.lbs.
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン付加物及びBYK−310を含む混合物の一部を、4枚の磨かれていないTru Aluminumコイルコートホワイトパネル(3インチ×6インチ×0.038インチ,ACT Laboratories)に適用した。これらのパネル上に得られたコーティングも、60℃で2日間硬化させた。硬化後、コーティングの光沢度を、ASTM Method D−523に従って光沢計を用いて測定した。塗布パネルの20°、60°及び85°の角度における平均光沢度(%光反射率)はそれぞれ、1.4%、7.0%及び51.2%であった。
【0189】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン付加物及びBYK−310を含む混合物の一部も、2枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B-K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=1.7時間
指触乾燥時間(dust free time)=2.8時間
硬化乾燥時間(dry-through time)=17.8時間
【0190】
実施例9−種油グリシジルエーテルのビス(ヘキサメチレン)トリアミン付加物によって硬化された、12−ヒドロキシメチルステアレートアミドポリオールのグリシジルエーテルを含むコーティングの作成及び試験
22.00g(エポキシ当量0.1114)の12−ヒドロキシメチルステアレートアミドポリオールのグリシジルエーテル(エポキシ当量重量197.4)、10.23g(アミン水素当量0.1114)の実施例5からのビス(ヘキサメチレン)トリアミン付加物(アミン水素当量重量91.80)及び3滴のBYK−310を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、3枚の磨き冷間圧延鋼プレート(0.8×102×305mm;Bonderite 1000、燐酸鉄及びP−60クロムを塗布)に適用し、次いで60℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが1.02milであった。これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=37秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=<4B
1/8インチ・コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=破損なし
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=評価3B(破損5〜15%)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=>200
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=>160in.lbs.(いずれの場合も)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン付加物及びBYK−310を含む混合物の一部を、4枚の磨かれていないTru Aluminumコイルコートホワイトパネル(3インチ×6インチ×0.038インチ,ACT Laboratories)に適用した。これらのパネル上に得られたコーティングはまた、60℃で2日間硬化させた。硬化後、コーティングの光沢度を、ASTM Method D-523に従って光沢計を用いて測定した。塗布パネルの20°、60°及び85°の角度における平均光沢度(%光反射率)は、それぞれ、1.8%、8.7%及び25.7%であった。
【0191】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン付加物及びBYK−310を含む混合物の一部も、2枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B−K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=1.6時間
指触乾燥時間(dust free time)=2.8時間
硬化乾燥時間(dry-though time)=21.7時間
【0192】
実施例10−種油グリシジルエーテルのトリエチレンテトラミン付加物によって硬化されたビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むコーティングの作成及び試験
15.00g(エポキシ当量0.0796)の商用ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.(登録商標)331エポキシ樹脂,The Dow Chemical Company;エポキシ当量重量188.5)、6.26g(アミン水素当量0.0796)の実施例6からのトリエチレンテトラミン付加物(アミン水素当量重量78.66)、4.17gのベンジルアルコール(前記付加物と予備混合)及び3滴のBYK−310を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、3枚の磨き冷間圧延鋼プレート(0.8mm×10mm2×305mm;Bonderite 1000、燐酸鉄及びP−60クロムを塗布)に適用し、次いで60℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが1.66milであった。これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=166秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=1H
1/8インチ・コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=破損なし
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=評価5B(破損なし)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=>200
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=148及び80in.lbs.
【0193】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、トリエチレンテトラミン付加物、ベンジルアルコール及びBYK−310を含む混合物の一部も、2枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B−K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=1.6時間
指触乾燥時間(dust free time)=1.9時間
硬化乾燥時間(dry-through time)=4.7時間
【0194】
実施例11−種油グリシジルエーテルのトリエチレンテトラミン付加物によって硬化されたビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むコーティングの作成及び試験
25.00g(エポキシ当量0.1326)の商用ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.(登録商標)331エポキシ樹脂,The Dow Chemical Company;エポキシ当量重量188.5)、5.98g(アミン水素当量0.1326)の実施例7からのトリエチレンテトラミン付加物(アミン水素当量重量45.095)、及び3滴のBYK−310を合し、一緒に撹拌して、均質混合物を得た。この混合物の一部を、No.48BYKドローダウンバーを用いて、3枚の磨き冷間圧延鋼プレート(0.8mm×102mm×305mm;Bonderite 1000、燐酸鉄及びP−60クロムを塗布)に適用し、次いで60℃で2日間硬化させた。得られた硬化コーティングは平均厚さが2.53milであった。これらのコーティングについて、以下の性質が得られた:
振り子硬度(ASTM Method D4366-95-Method A)=126秒
鉛筆硬度(ASTM Method D3363)=1H
1/8インチ・コニカルマンドレル曲げ(ASTM Method D522-93a)=88mm破損
クロスハッチ付着性(ASTM Method 3359)=評価5B(破損なし)
メチルエチルケトン往復摩擦(ASTM Method D4752-87)=>200
直接衝撃強度及び逆衝撃強度(ASTM Method D2794)=48及び>4in.lbs.
【0195】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、トリエチレンテトラミン付加物及びBYK−310を含む混合物の一部を、4枚の磨かれていないTru Aluminumコイルコートホワイトパネル(3インチ×6インチ×0.038インチ,ACT Laboratories)に適用した。これらのパネル上に得られたコーティングも、60℃で2日間硬化させた。硬化後、コーティングの光沢度を、ASTM Method D−523に従って光沢計を用いて測定した。塗布パネルの20°、60°及び85°の角度における平均光沢度(%光反射率)はそれぞれ、4.1%、21.9%及び33.7%であった。
【0196】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、トリエチレンテトラミン付加物及びBYK−310を含む混合物の一部も、2枚のガラス乾燥ストリップに適用し、それから、B−K Drying Recorder(Paul N.Gardner Company,Inc.)を用いて以下の結果を得た:
指触硬化時間(set to touch time)=2.0時間
指触乾燥時間(dust free time)=3.3時間
硬化乾燥時間(dry-through time)=>24時間
【0197】
【表1】

【0198】
【表2】

【0199】
【表3】

【0200】
有利なことに、本明細書に開示した態様は、エポキシ樹脂コーティングに、以下:コーティング配合物への溶剤の必要性を排除できるより低い粘度(VOCを含まない);多くの工業用途、海洋用途及び自動車用途における多重コーティングの必要性を排除できる、優れたUV安定性と良好な付着性及び耐蝕性の組合せ;並びに改善された可撓性及び損傷許容性の1つ又はそれ以上を与えることができる。更に、本明細書に記載した組成物は、より高い架橋密度(改善された熱安定性)、主鎖の構造設計による改善された反応性、より高いエポキシ化度(より少ない副生成物)及びグリシジルエーテル官能価を有することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂材料(A)及び化合物(B)の少なくとも1種の反応生成物を含んでなる付加物であって、エポキシ樹脂材料(A)がアルカノールアミドのグリシジルエーテル又はアルカノールアミドのグリシジルエステルを含み、化合物(B)が分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を有する化合物を含み、そして当該反応性水素原子がエポキシ基と反応性である付加物。
【請求項2】
前記アルカノールアミドが種油ベースのアルカノールアミド又は非種油ベースのアルカノールアミドである請求項1に記載の付加物。
【請求項3】
前記化合物(B)が(a)ジ−又はポリフェノール;(b)ジ−又はポリカルボン酸;(c)ジ−又はポリメルカプタン;(d)ジ−又はポリアミン;(e)第一モノアミン;(f)スルホンアミド;(g)アミノフェノール;(h)アミノカルボン酸;(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸;(j)スルファニルアミド;及び(k)それらの任意の組合せの少なくとも1種を含む請求項1に記載の付加物。
【請求項4】
前記化合物(B)が脂肪族若しくは脂環式ジアミン、脂肪族若しくは脂環式ポリアミン又はそれらの任意の組合せを含む請求項3に記載の付加物。
【請求項5】
化合物(B)のエポキシ樹脂材料(A)に対する比が約2:1〜約100:1[(化合物(B)中の反応性水素原子の当量)対(エポキシ樹脂材料(A)中のエポキシ基の当量)]である請求項1に記載の付加物。
【請求項6】
エポキシ樹脂材料(A)及び化合物(B)の少なくとも1種を反応させることを含んでなる付加物の製造方法であって、エポキシ樹脂材料(A)が脂肪酸エステル、脂肪酸及び脂肪酸トリグリセリドの少なくとも1種をベースとするアルカノールアミドのグリシジルエーテル又はエステルを含み、前記化合物(B)が、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を含み、その反応性水素原子がエポキシ基と反応性である付加物の製造方法。
【請求項7】
前記方法を約0〜約260℃の温度で実施する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂材料(A)を、(i)化合物(B)と直接混合するか、(ii)化合物(B)にインクレメント的に添加するか、又は(iii)化合物(B)に連続的に添加する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂材料(A)が少なくとも1種の溶媒を更に含み;且つ/又は前記化合物(B)が少なくとも1種の溶媒を更に含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
エポキシ樹脂材料(A)、化合物(B)及びエポキシ樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を含んでなる付加物であって、エポキシ樹脂材料(A)が脂肪酸エステル、脂肪酸及び脂肪酸トリグリセリドの少なくとも1種からの、アルカノールアミドのグリシジルエーテル又はエステルを含み、化合物(B)が、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含み、そして樹脂化合物(C)が前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含んでなる付加物。
【請求項11】
エポキシ樹脂材料(A)、化合物(B)及びエポキシ樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を反応させることを含んでなる付加物の製造方法であって、エポキシ樹脂材料(A)が脂肪酸エステル、脂肪酸及び脂肪酸トリグリセリドの少なくとも1種からの、アルカノールアミドのグリシジルエーテル又はエステルを含み、化合物(B)が分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含み、そして樹脂化合物(C)が前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含んでなる付加物の製造方法。
【請求項12】
(a)請求項1又は10に記載の付加物及び(b)前記エポキシ樹脂材料(A)以外であり且つ前記エポキシ樹脂(C)以外の、1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む樹脂化合物(D)を含んでなる硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記付加物中の化合物(B)が脂肪族若しくは脂環式ジアミン、脂肪族若しくは脂環式ポリアミン又はそれらの任意の組合せを含む請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記付加物と前記樹脂化合物(D)の比が約0.60:1〜約1.50:1[(付加物中の反応性水素原子の当量)対(樹脂化合物(D)中のエポキシ基の当量)]である請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
硬化剤、硬化触媒又は線状連鎖延長剤を更に含む請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記線状連鎖延長剤が、前記エポキシ樹脂材料(A)と前記材料(B)との反応生成物であり;前記エポキシ樹脂材料(A)がアルカノールアミド、飽和脂肪酸エステル及び脂肪酸トリグリセリドのうち少なくとも1種のグリシジルエーテル又はエステルを含み;且つ前記材料(B)が第一モノアミン又は第二ジアミンを含む請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
約0℃〜約300℃の温度において実施する請求項12に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化方法。
【請求項18】
前記方法が、B段階で部分硬化させ、次いでその後で完全硬化させることを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
コーティング、電気用若しくは構造用の積層品、電気用若しくは構造用の複合材料、フィラメント巻き線、成形品、注型品及びカプセル封入品のうち少なくとも1つである請求項17に記載の方法によって製造される硬化エポキシ樹脂を含む物品。

【公表番号】特表2011−521080(P2011−521080A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510609(P2011−510609)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/044290
【国際公開番号】WO2009/143038
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】