説明

アルカリイオン伝導セラミックス膜を使用したバイオディーゼルの製造方法

【課題】バイオディーゼルの製造において生成するグリセリンのアルカリ塩をグリセリンに変換してバイオディーゼルから分離する方法を提供する。
【解決手段】原料であるトリグリセリドおよびアルコールは電解槽12にてバイオディーゼルとグリセリンのアルカリ塩の混合物40に変換され、混合物40はアルカリイオン伝導セラミックス膜42を有する電解槽14の陽極室44に供給される。電解槽14においてグリセリンのアルカリ塩はグリセリンに変換されてバイオディーゼルと共に取り出され、沈殿槽68にてバイオディーゼル70と純粋なグリセリン72とにを分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年1月11日付で出願された米国仮特許出願60/758246号の優先権に基づく出願であり、参照により本願発明に引用される。
【0002】
本発明は、アルカリイオン伝導セラミックス膜を有する電解セルを使用したバイオディーゼルの化学合成に関する。本発明は、更に、バイオディーゼル製造におけるグリセリン副生成物からアルカリイオンを分離する方法も含む。
【背景技術】
【0003】
バイオディーゼル(バイオディーゼル油)は、ディーゼル油、JP−8、標準的なガソリンの代替品など代替品であり、米国および世界において一般的になりつつあり、市場にも普及しつつある。現在のバイオディーゼルの製造方法としては、Biodiesel Production Technology、NREL、2004年7月号(NREL/SR−510−36244)にその概要が記載されている。バイオディーゼルはトリグリセリドから誘導される長鎖脂肪酸のモノアルキルエステルから成る燃料として定義される。モノアルキルエステルは、メタノール、エタノール等の直鎖アルコールとトリグリセリドとの反応生成物であり、グリセリン(グリセリン又はグリセロールとも言う)及び長鎖脂肪酸のエステルが形成される。トリグリセリドは、種々の原料の植物油や動物性脂肪から得られる。本発明において、脂肪または脂肪酸、植物油、動物性脂肪などもトリグリセリドと同じ意味で使われる。バイオディーゼルは、R’OOCRの一般式を有し、ここでR’は直鎖低級アルキル基、RはC14−C24の炭化水素基を表す。バイオディーゼルの1つの製造方法として、水酸化物塩を使用してトリグリセリドとメタノールとを以下の反応式(1)に示すように反応させる。
【0004】
【化1】

【0005】
ここで、RはR,R又はRを示し、これらは同一または異なってもよいC14−C24炭化水素であり、R’はメチル基、エチル基などの非分岐直鎖の低級アルキル基である。
【0006】
反応式(1)のプロセスにおいてトリグリセリドとアルコールとの反応の触媒としてNaOH/KOHを使用し、グリセリン系エステルとバイオディーゼルとの2相乳化系を形成する。2相混合物は水で洗浄してバイオディーゼルを分離する。このプロセスは煩雑であり、複雑であり、効率が悪く、製造コストがかかる。
【0007】
バイオディーゼルは、以下の反応式(2)に示すように、トリグリセリドとアルカリメトキシドやアルカリエトキシドのようなアルカリアルコキシドとの反応からも製造できsる。
【0008】
【化2】

【0009】
ここで、RはR,R又はRを示し、これらは同一または異なってもよいC14−C24炭化水素であり、R’はメチル基、エチル基などの非分岐直鎖の低級アルキル基である。
【0010】
アルカリアルコキシドを使用した工業的プロセスは、金属ナトリウムや水銀アマルガム等の金属アルカリ金属を必要とする。このようなプロセスは安全面での重要性が必要であり、金属ナトリウムを扱うためのインフラ整備が必要で、コストがかかり、及び/又は製品がしばしば水銀に汚染される。
【0011】
それゆえ、より経済性に優れた製造経路を提供するために、この分野におけるバイオディーゼル合成のための装置や方法の改良や他の方法が望まれている。
【0012】
アルカリ水酸化物またはアルカリアルコキシドを触媒として使用することを排除した又は制限したバイオディーゼル製造装置や方法の改良が望まれている。更に、グリセリン副生成物からナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリイオンを分離する工程をバイオディーゼル製造と結びつけた本分野での改良も望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、電気化学的プロセスを使用し、現場で発生させたアルカリアルコキシドを使用してバイオディーゼルを合成する方法および装置を提供することである。グリセリン副生成物からアルカリイオンを分離する方法も提案される。これらの方法は、電解セル中のアルカリイオン伝導セラミックス膜を使用することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のバイオディーゼル製造方法および装置において、2つの電解セルを使用する。第1の電解セルは、アルカリイオンを選択的に透過させる第1のアルカリイオン伝導セラミックス膜を有する。第1の電解セルのセラミックス膜は、電気化学的活性な第1のアノードを有する第1陽極液室と電気化学的活性な第1のカソードを有する第1陰極液室とを分離する。第1の陽極液室に水酸化アルカリ溶液を供給する。アルカリアルコラートを作動開始時に供給し、陰極液室の溶液伝導度を高めて維持する。アルコールおよびトリグリセリドを第1の陰極液室に供給する。アルコールは、直鎖でC〜Cの低級アルコールで、置換されていても非置換であってもよい。アルコールは、1つより多い水酸基を有してもよい。アルコールの代表例としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール及びプロピレングリコールが挙げられる。ある実施態様として、トリグリセリドが植物油または動物性脂肪などの種々の源から得られたものである。
【0015】
第1の電解セルに電流を負荷した際、水酸化物アニオンは第1のアノードにおいて酸化されて、酸素ガスと水を生成する。電位の影響で、アルカリイオンは、第1のアルカリイオン伝導セラミックス膜を介して第1陽極液室から第1陰極液室に移送される。アルカリイオン存在下におけるアルコールは、第1陰極液室で還元されてアルカリアルコキシドと水素ガスを形成する。アルカリアルコキシドは、トリグリセリドと反応してバイオディーゼルとグリセリンのアルカリ塩との混合物を形成する。
【0016】
第2の電解セルは、アルカリイオンを選択的に透過させる第2のアルカリイオン伝導セラミックス膜を有する。第2の電解セルのセラミックス膜は、電気化学的活性な第2のアノードを有する第2陽極液室と電気化学的活性な第1のカソードを有する第2陰極液室とを分離する。
【0017】
第1の陰極液室から取出したバイオディーゼルとグリセリンのアルカリ塩との混合物を、第2の陽極液室に供給する。第2の陽極液室に水素ガスを供給する。第2の陰極液室に水を供給する。
【0018】
第2の電解セルに電流を負荷した際、水素ガスは第2のアノードにおいて酸化されて、水素イオンを生成する。この反応は第2のアノードと関連する適切な触媒を使用することにより容易となる。水素イオンはグリセリンのアルカリ塩と反応して純粋なグリセリンを形成する。電位の影響で、アルカリイオンは、第2のアルカリイオン伝導セラミックス膜を介して第2陽極液室から第2陰極液室に移送される。第2の陰極液室においてアルカリイオン存在下で水が分解され、アルカリ水酸化物溶液と水素ガスを形成する。バイオディーゼルおよび純粋なグリセリンは第2の陽極液室から取出される。それらは、必要であれば沈殿槽で容易に分離される。
【0019】
装置および製造方法の効率を高めるため、第1の陰極液室で発生する水素ガスは第2の陽極液室に導入される。同様に、第2の陰極液室で発生する水素ガスは第2の陽極液室に導入される。
【0020】
第2の陰極液室で製造されるアルカリ水酸化物溶液は取除かれて、第1の陽極液室に導入されてもよい。アルカリ水酸化物と共に第1の陽極液室で生じる水は取除かれ、第2の陰極液室に導入されてもよい。
【0021】
本明細書を通じて参照される要旨、効果または類似の用語については、本発明を実施するに当たっての全ての要旨および効果について述べているわけではなく、また、個々の実施態様について述べているわけではない。むしろ、それらの要旨および効果を参照する用語は、本発明の少なくとも1つの実施態様を含んだ態様における特徴、効果性能であると考えるべきである。それゆえ、明細書を通じた本発明の特徴や効果や類似の用語の説明は、必ずしも同一の実施形態を参照しなくてもよく、全ての実施態様を参照すべきである。
【0022】
更に、本発明に記載される要旨、特徴、効果および性質は、種々の適切な方法により1つ以上の実施態様を使用して組合されてもよい。当業者は、特定の実施態様の1つ以上の特徴または効果が無い態様においても、本発明を実施できることを理解するであろう。他の例では、本発明の実施態様に無いある実施態様において、更なる特徴や効果を追加してもよい。
【0023】
本発明の他の技術効果および要旨は、以下の図面による記載および発明の詳細な説明により更に明らかになるであろう。更に、上記および他の要旨および技術効果は、以下の図面、記載および請求の範囲、さらに以下に示す発明の実施により習得できるであろう。
【発明の効果】
【0024】
本発明の方法および装置によれば、現場で発生させたアルカリアルコキシドを使用してバイオディーゼルを合成でき、グリセリン副生成物からアルカリイオンを分離することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のバイオディーゼル製造のための電解装置を示す概略図
【図2】図1に示すバイオディーゼル製造のための電解装置で使用される第1の電解セルを示す概略図
【図3】図1に示すバイオディーゼル製造のための電解装置で使用される第2の電解セルを示す概略図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記および他の要旨および技術効果をより容易に理解するために、上述の簡単な説明よりもより具体的な説明を、添付の図面に記載された具体的な実施態様を参照して以下に記述する。なお、これらの図面は、本発明の具体的な実施態様の例示として記載されたに過ぎず、本発明の要旨をこれらに限定するものではない。本発明は添付の図面を使用しながら、更に具体的で詳細な記載および説明がなされる。
【0027】
本発明の好ましい実施態様は、同種の構成要素を同一の符号を付すことによって示された図面を参照することによって、理解を深めることが出来る。以下に記載され図に示される本発明の構成要素は、種々の異なる形状に配置および設計変更が可能であると理解されるべきである。従って、図1〜3に代表されるような方法及びセルの実施態様の以下のより詳細な記載は、本発明の要旨を限定するために記載されているものではなく、本発明の好ましい実施態様の単なる代表例である。
【0028】
図1は、本発明のバイオディーゼル製造のための電解セル装置およびプロセス10を示した概略図である。バイオディーゼル製造のための電解セル装置およびプロセス10は、第1の電解セル12と第2の電解セル14とから成る。第1の電解セル12の詳細は図2に、第2の電解セル14の詳細は図3にそれぞれ示す。
【0029】
第1の電解セル12は、第1のアルカリイオン伝導セラミックス膜16によって、第1の電解セル12を第1陽極液室18と第1陰極液室20とに分離される。第1陽極液室18は、電気化学的活性な第1のアノード22を有して酸化反応を行い、第1陰極液室20は電気化学的活性な第1のカソード24を有して還元反応を行う。第1のアルカリイオン伝導セラミックス膜16は、第1の陽極液室18から第1の陰極液室20に、電位差28(図2)の影響によりアルカリイオン(M)26を選択的に移送し、一方の室から他方の室への水の移送を防ぐ。
【0030】
第1陽極液室18にアルカリ水酸化物水溶液(MOH)30を供給することにより、第1の電解セル12が作動する。アルカリ水酸化物水溶液30は、バイオディーゼル製造のための電解セル装置およびプロセス10以外で発生したアルカリ水酸化物を含んでいるいかなる供給源のものであってもよい。ある実施態様において、水酸化ナトリウムがアルカリ水酸化物として使用されるが、他のアルカリ水酸化物であってもよく、もちろんこれらに限定されないが、水酸化リチウムや水酸化カリウムを使用してもよい。
【0031】
仕込みのトリグリセリド及びアルコール32は、第1陰極液室20に供給される。アル
コールとしては、直鎖でC〜Cの低級アルコールが好ましく使用される。アル
コール1はつより多い水酸基を有してもよい。アルコールの例としては、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ヘキサノール、ブタノール、エチレングリコール及びプロピレングリコールが挙げられる。便宜上、以下において、アルコールとしてメタノールを参照して説明するが、もちろん、本発明の要旨であるバイオディーゼル製造に使用される単なるアルコールの例として説明されるものであって、これに限定されるものではない。当業者ならば、メタノールに加えてそれ以外のアルコールを使用しても、バイオディーゼル製造のための装置およびプロセスで使用できることは理解できるであろう。
【0032】
作動中、アルカリイオン源は、第1のアルカリイオン伝導セラミックス膜16を介して第1陽極液室18から第1陰極液室20に移送されるアルカリイオン26によって供給される。トリグリセリドは、種々の供給源の植物油および動物性脂肪から得られる。トリグリセリドは、代表的に以下の一般式を有する。
【0033】
【化3】

【0034】
、R及びRはC14〜C24のそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭化水素基である。トリグリセリドの化学式は[C][OCR]とも表す。ここで、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭化水素基である。
【0035】
第1のアノード22は、後述するように種々の材料から成っていてもよい。ある実施態様において、第1のアノード22は、先端金属酸化物被覆チタンから形成される。第1のカソード24は、後述するように種々の材料から成っていてもよい。ある実施態様において、第1のカソード24は、ニッケル/ステンレススチールから形成される。
【0036】
電位差28の影響により、電気化学的反応が第1のアノード22及び第1のカソード24において生じる。水酸化物イオンの酸化により水素ガス34と水36が形成する反応が第1のアノード22において起こり、アルコールの還元により水素ガス38とメトキシドイオン(CH)が形成する反応が第1のカソード24において起こる。メトキシドイオンは利用できるアルカリイオンと反応してアルカリメトキシド(CHOM)を形成する。アルカリメトキシドは上記式(2)に示すようにトリグリセリドと反応して、バイオディーゼル(CHOOCR)とグリセリンのアルカリ塩(C(OM))の混合物40を形成する。
【0037】
第1の電解セル12における化学反応を以下にまとめる。
【0038】
第1のアノード/陽極液室における反応:
【0039】
[化4]
12MOH→12M+12OH
12OH→3O+12e+6H
【0040】
第1のカソード/陰極液室における反応:
【0041】
[化5]
12CHOH+12e→12CH+6H
12CH+12M→12CHOM
4[C][OCR]+12CHOM→
12CHOOCR+4C(OM)
【0042】
第1の電解セル12における全体の反応:
【0043】
[化6]
4[C][OCR]+12CHOH+12MOH →
3O+6H+6HO+12CHOOCR+4C(OM)
【0044】
第1陰極液室20における反応の1つによってアルカリメトキシドが製造される。第1の電解セル12を使用するプロセスにおいて、アルカリ水酸化物水溶液とメタノールとからアルカリメトキシド溶液を形成する。この方法は、金属アルカリ金属とメタノールを使用する方法や、水銀アマルガムとメタノールとを使用する方法などの既存のアルカリメトキシドを製造する方法と比較して、より安全で汚染の少ない方法である。
【0045】
ナトリウム等の金属アルカリは、非常に反応性が高く、自然発火性があり、高価な化学薬品である。それらの貯蔵および輸送には、大掛かりで入念な安全性および制御手段が必要となる。水銀アマルガム法は、アルカリメトキシド製造において、水銀の痕跡程度の残留が生じやすく、さらに、環境保護のための手段が要求される。本発明の方法は、金属アルカリや水銀アマルガムの使用を避けるため、そのようなリスクはなく、安価であり、環境に優しい方法である。
【0046】
第2の電解セル14は、第2陽極液室44と第2陰極液室46とを有し、両者は第2のアルカリイオン伝導セラミックス膜42を使用することにより分離されている。第2陽極液室44は酸化反応が行われる電気化学的活性な第2のアノード48を有し、第2陰極液室46は還元反応が行われる電気化学的活性な第2のカソード50を有する。第2のアルカリイオン伝導セラミックス膜42は、第2の陽極液室44から第2の陰極液室46に、電位差54(図3)の影響によりアルカリイオン(M)52を選択的に移送し、一方の室から他方の室への水の移送を防ぐ。ある実施態様において、第2のアルカリイオン伝導セラミックス膜42は、ナノサイズの多孔性を有するセラミック酸化物から成っていてもよく、アルカリイオンは膜42に沿って拡散してもよい。
【0047】
第2の電解セル14は、第1の陰極液室20で製造されたバイオディーゼルとグリセリンのアルカリ塩との混合物40を、第2の陽極液室44に供給することによって作動させる。水素ガス56も第2の陽極液室44に供給される。
【0048】
水58は第2陰極液室46に供給される。作動中、アルカリイオン源は、第2のアルカリイオン伝導セラミックス膜42を介して第2陽極液室44から第2陰極液室46に移送されるアルカリイオン52によって供給される。
【0049】
第2のアノード48は、後述するように種々の材料から成っていてもよい。ある実施態様において、第2のアノード48は、先端金属酸化物被覆チタンから形成される。第2のアノード48は水素ガスを酸化して水素イオンを形成するのを容易にする触媒を有していてもよい。第2のカソード50は、後述するように種々の材料から成っていてもよい。ある実施態様において、第2のカソード50は、ニッケル/ステンレススチールから形成される。
【0050】
電位差54の影響により、電気化学的反応が第2のアノード48及び第2のカソード50において生じる。水素ガスの酸化により水素イオンが形成する反応が第2のアノード48において起こる。水素イオンはグリセリンのアルカリ塩と交換反応によりグリセリン(glycerine)が形成される(グリセリン(glycerin)又はグリセロールとしても知られている)。水の還元により水素ガス62が形成され、第2のカソード50において水酸化物イオンが生じる。水酸化物イオンは利用できるアルカリイオンと反応してアルカリ水酸化物(MOH)溶液を形成する。アルカリ水酸化物溶液は取り除かれ、第1の電解セル12にアルカリ水酸化物溶液30として移送される。第2陰極液室46で発生する水素ガス62と第1陽極液室20で発生する水素ガス38とは、第2陽極液室44に供給されるために一緒にされる。
【0051】
第2の電解セル14における化学反応を以下にまとめる。
【0052】
第2のアノード/陽極液室における反応:
【0053】
[化7]
6H→12e+12H
4C(OM)+12H→4C(OH)+12M
【0054】
第2のカソード/陰極液室における反応:
【0055】
[化8]
12HO+12e→12OH+6H
12OH+12M→12MOH
【0056】
第2の電解セル14における全体の反応:
【0057】
[化9]
12HO+4C(OM)→12MOH+4C(OH)
【0058】
未反応または過剰の水素ガス64は集められて第2陽極液室44から取り除かれる。水素ガス64は、PEM燃料セルや他の当業者に公知のエネルギー発生プロセスにおける燃料として供給されてもよい。これにより、電解プロセス操作に必要なエネルギーを相殺することが出来る。水素ガス64は、当業者に公知の化学的プロセス操作に使用されてもよい。
【0059】
バイオディーゼル及びグリセリン66は第2陽極液室44から取り除かれ、更なる加工または分離プロセスに供される。図1に示す実施態様において、バイオディーゼル及びグリセリン66は沈殿槽68に供給され、バイオディーゼル70が純粋なグリセリン72から分離される。
【0060】
本発明の装置および方法10における第1の電解セル12及び第2の電解セル14を組合せた全体の化学反応は、次のようになる。
【0061】
[化10]
6HO+12CHOH+4[C][OCR]
3O+6H+12CHOOCR+4C(OM)
【0062】
上記の全化学反応式から、ある量の水がメタノール及びトリグリセリドに加えて必要である。水の一部は第1陽極液室18で生成する水36によって賄われるが、更なる水74の追加が必要である。
【0063】
本発明は、バイオディーゼル製造の副生成物であるグリセリンからアルカリイオンを分離するプロセスも含んでもよい。この方法では、グリセリンのアルカリ塩を含むグリセリン副生成物を、図3に示すような第2の電解質セル14に類似の電解せるに供給して純粋化してもよい。上述のように、第2の電解質セル14に関連して、水素ガスが陽極液室で酸化されて水素イオンが生成し、グリセリン副生成物中のアルカリ金属イオンと置き換わることにより、純粋なグリセリンが得られる。フリーなアルカリイオンは、アルカリイオン伝導性セラミックス膜を介して陽極液室から陰極液室に移送され、水酸化物イオンと結合してアルカリ水酸化物溶液を形成する。
【0064】
ここで、膜を参照しながら本願において使用される「実質的に水に対して不透過」の語は、少量の水が膜を介して透過してもよいことを意味し、透過する量が本発明の実用性を減少させるような程度の量であってはならない。膜を参照しながら使用される「基本的に水に対して不透過」の語は、膜を介して水が透過しないか、通常の測定方法では検出できないほどの量の水が透過する場合を意味する。「実質的に」及び「基本的に」という語は本明細書の他の部分においても同様の意味の強調語として使用される。
【0065】
本発明の方法および装置に効果的に使用される電極は電気伝導性で、一般的に媒体中、それが露出されている状態で実質的に安定である。当業者には公知である種々の好適な電極材料および電極材料の組合せが、本発明の要旨の範囲内において使用できる。ある実施態様において、アノード材料は以下に示す材料:寸法安定性アノード(DSA、通常、酸化ルテニウム被覆チタンまたはRuO/Ti)、ニッケル、コバルト、タングステン酸ニッケル、チタン酸ニッケル、白金および他の貴金属、白金メッキチタン等の支持材に貴金属メッキされたもの、チタンが主となる金属酸化物、ステンレススチール、鉛、二酸化鉛、グラファイト、タングステンカーバイド及び二酸化チタンの少なくとも1つから成る。ある実施態様において、カソード材料は以下に示す材料:ニッケル、コバルト、白金、銀、ニッケルを少量(例えば3重量%)含有するチタニウムカーバイド、FeAl、NiAl、ステンレススチール、ペロブスカイトセラミックス及びグラファイトの少なくとも1つから成る。ある実施態様において、電極は、電極の電気的効率とコストとのバランスにより、コスト的に最も効果的な組合せで選択される。
【0066】
電極材料は、当業者に理解できる様な本発明の要旨の範囲内の適当な形状であってもよい。ある実施態様において、電極材料の形状は、緻密または多孔性固体形状、基板上に配置された緻密または多孔性層形状、穿孔した形状、メッシュなどの引き伸ばされた形状またはそれらの組合せの少なくとも1種である。
【0067】
本発明のある実施態様において、電極材料と、使用状況下で電気伝導度の低い非電極材料との複合材を電極材料として使用してもよい。当業者には理解できるであろう種々の絶縁性非電極材料が知られている。ある実施態様において、非電極材料が、セラミックス材料、ポリマー、及び/又はプラスチックスの少なくとも1つを有する。これらの非電極材料もまた、媒体中、それが露出されている状態で実質的に安定であるように選択される。
【0068】
電極材料、形状、配置などの変更を含む他の設計変更は、本発明の要旨を超えない範囲において当業者によって行われることが出来る。
【0069】
本発明の方法および装置において使用されるセラミックス膜16及び42は、アルカリカチオン伝導性であり、セラミックス膜の緻密層により、陰極液から陽極液を物理的に分離する。ある実施態様において、図1に示すバイオディーゼル製造のための電解装置で使用される第1の電解セルを示す概略図は、リチウムイオン、ナトリウムイオン又はカリウムイオンを伝導する。ある実施態様において、セラミックス膜を含むセルから印加した電圧および電流を取除いた際にボルタ電池反応を最小とするために低い又は無視し得る電気伝導度を有するセラミックス膜を使用することが有利である。本発明のある実施態様において、少なくとも陰極液および陽極液の両方の溶媒成分を実質的に透過させないセラミックス膜を使用することが有利である。
【0070】
ある実施態様において、Naイオン伝導性セラミックス膜が、少なくとも1つの以下に示す特徴や使用性能を示す:約100℃未満の温度にてアルカリイオン伝導性を示す;低電気伝導度;アルカリイオン伝導度が約90%を超える(高移送);他のアルカリ又は非アルカリカチオンと比較して、高アルカリカチオン(例えばNa)選択性;アルカリイオン含有塩および弱または強有機酸または無機酸薬品溶液における安定性;理論的密度の約95%よりも大きい密度を有する;実質的に水輸送に対して不透過;酸、アルカリ、苛性、腐食性および薬品に対する耐薬品性。
【0071】
本発明におけるセラミックス膜のある実施態様として、セラミックス膜は、添加している2価カチオン、3価カチオン、4価カチオン又は溶液に存在する溶解した固形物の付着物、汚れの付着および沈殿による実質的な影響を受けない。
【0072】
種々のアルカリイオン伝導性セラミックス膜が当分野で知られており、本発明におけるセラミックス膜を構築するのに適当であることは当業者に理解できるであろう。本発明の実施態様において、アルカリイオン伝導性セラミックス膜は、電気的絶縁材で且つイオン伝導材であるような固体電解質材料であってもよい。多くの実施態様において、アルカリイオン伝導性セラミックス膜は、媒体中、それが露出されている状態で実質的に安定である。ある実施態様においてアルカリイオン伝導性セラミックス膜によって伝導するアルカリイオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン又はカリウムイオンである。他の好ましい材料は当業者に公知であり、本発明で好ましく使用できる。本発明におけるアルカリイオン伝導性セラミックス膜のある実施態様において、アルカリイオン伝導性セラミックス膜は、常温〜85℃において、Naイオン伝導度が約1×10−4〜1×10−1S/cmであり、Naイオン移送効率は約90%を超える。
【0073】
ある実施態様において、本発明におけるアルカリイオン伝導性セラミックス膜は、アルカリイオン超伝導型材である。特定のアルカリイオン伝導体であってもよい。例えば、アルカリイオン伝導性セラミックス膜は、固体MSICON(Metal Super Ion CONducting)材料(MはNa、K又はLiである)。ある実施態様では、アルカリイオン伝導性セラミックス膜は、式M1+xSi3−x12且つ0≦x≦3で示され、MはLi、Na、K又はこれらの組合せ、MがZr、Ge、Ti、Sn、Hf及びそれらの混合物から選択される材料;Na1+zZr2−z12且つ0≦x≦2.0で示され、LがCr,Yb,Er、Dy、Sc、Fe、In、Y及びそれらの混合物から選択される材料;または、式MIIRESi12で示され、MIIがLi、Na又はこれらの組合せ、REがY又は希土類元素材料で示される材料である。
【0074】
ある実施態様において、MSICON材料がナトリウム選択性の場合、NaSICON型(Sodium Super Ion CONducting)と称する。NaSICON材は、以下の少なくとも1種を含む:式NaRESi12で示される材料;又は非化学量論的Na不足材料であって、式(NaRESi121−δ(RE・2SiOδ且つREがNd、Dy、Sm又はそれらの組合せで且つδが化学量論からの偏差の値で示される材料。これらの材料は米国特許第5580430号明細書に記載されており、参照により本発明に包含する。また、ある実施態様において、NaSICON材が、Zr不足材料(又はNa過剰材料)の非化学量論材料であって、Na1+xZr2−x/3Si3−z12−2x/3且つ1.55≦x≦3で示される少なくとも1種を有する。ある実施態様において、NaSICONが、非化学量論的Na不足材料であって、式Na1+x(AZr2−y)(Si3−z)O12−δ且つAがYb、Er、Dy、Sc、In、Y及びそれらの混合物から選択され、1.8≦x≦2.6で、0≦y≦0.2で、x<zで、δは電気的中性を維持するように選択される材料を少なくとも1つ含む。その具体的態様としては、NaSICON材が、式Na3.1ZrSi2.30.712−δで示されるNa不足材料を含む。
【0075】
他のNaSICON型材の例としては、H.Y−P.Hong著「Crystal structures and crystal chemistry in the system Na1+xZrSi3−x12」、Materials Research Bulletin,Vol.11,pp.173−182,1976;J.B.Goodenough et al.、著「Fast Na−ion transport skelton structures」,Materials Research Bulletin,Vol.11,pp.203−220,1976; J.J.Bentzen et al.著「The preoaration and characterization of dense, highly conductive NaGdSi12 nasicon(NGS)」、Materials Research Bulletin,Vol.15,pp.1737−1745,1980;C.Delmas et al.著「Cryastal chemistry of the Na1+xZr2−x(PO(L=Cr,In,Yb) solid solutions」、Materials Research Bulletin,Vol.16,pp.285−290,1981;V.von Alpen et al.著「Compositional dependence of the electrochemical structural parameters in the NASICON system(Na1+xSiZr3−x12」、Solis State Ionics,Vol.3/4,pp.215−218,1981;S.Fujitsu et al.著「Conduction paths in sintered ionic conductive material Na1+xZr2−x(PO」、Materials Research Bulletin,Vol.16,pp.1299−1309,1981;Y.Saito et al.著「Ionic conductivity of NASICON−type conductors Na1.50.5Zr1.5(PO(M=Al3+,Ga3+,Cr3+,Sc3+,Fe3+,In3+,Yb3+,Y3+)」、Solis State Ionics,Vol.58,pp.327−331,1992; J.Alamo著「chemistry and properties of solids with the [NZP] skeleton」、Solis State Ionics,Vol.63−65,pp.547−561,1993;K.Shimazu著「Electrical conductivity and Ti4+ ion substitution range in NASICON systemm」、Solis State Ionics,Vol.79,pp.106−110,1995;Y.Miyajima著「Ionic conductivity of NASICON−type Na1+xZr2−x12(M=Yb,Er,Dy)」、Solis State Ionics,Vol.84,pp.61−64,1996等に記載されている。これらの文献は参照により本発明に包含する。
【0076】
アルカリイオン伝導性セラミックス膜は、本発明の製造方法および装置において使用されるための当業者に理解されるであろう種々の好適な形状で使用され、また製造される。ある実施態様では、セラミックス膜の形状が、一体化した平板幾何学形状、平板幾何学形状体に支持された構造、一体化したチューブ幾何学形状、チューブ幾何学形状体に支持された構造、一体化したハニカム幾何学形状、ハニカム幾何学形状体に支持された構造の少なくとも1つである。支持構造体は、多孔性支持体上に支持されたアルカリイオン伝導性セラミックス材料の緻密層から成っていてもよい。
【0077】
多孔性支持体のための種々の形状がこの分野では知られており、セラミック膜のための多孔性支持体を提供する好適な形状は、例えば、連続した開放性の孔を有しており完全に密な状態より低い密度の焼結されたセラミック層、孔のある形状の層、穿孔された形状の層、メッシュを含む引き伸ばされた形状の層、これらの組合せなどが挙げられる。ある実施態様では、多孔性支持体の多孔性は、実質的に連続な開放性の孔構造であり、セラミック膜の両サイドの液体溶液が、アルカリカチオン伝導性セラミックス材料の緻密層の広い面積において密接に接することが出来るような構造であり、例えば、連続的な開放性孔が約30〜90体積%の割合で存在する。ある実施態様において、支持されるべき構造体のための多孔性支持体は、アルカリカチオン伝導性セラミックス材料の緻密層の片側に存在させてもよい。また、ある実施態様において、支持されるべき構造体のための多孔性支持体は、アルカリカチオン伝導性セラミックス材料の緻密層の両側に存在させてもよい。
【0078】
ある実施態様において、セラミックス膜は異なるアルカリカチオン伝導性セラミックス膜の組合さった2以上の層から成っていてもよい。そのような複合セラミックス膜層としては、NaSICON材と、これに限定されないがβ−アルミナ等の他のセラミックスとの組合せがあげられる。そのような層において、それぞれを結合させる方法としては、これに限定されないが、共焼成、さらに引き続いて焼結する方法が挙げられる。他の適当な結合方法も当業者に公知であり、本発明に含まれる。
【0079】
種々の多孔性支持材が知られており、支持構造を有するセラミックス膜の多孔性支持材料として好適に供給される。支持材としては、電極材料、NaSICON材、β−アルミナ、βII−アルミナ、他のカチオン伝導性材料、プラスチック及びセラミックス材料などの非伝導性材料、金属および金属アロイ等が挙げられる。モノリシック(一体化)構造を有するアルカリカチオン伝導性セラミックス材料の緻密層の厚さは、約0.3〜5mm、であり、ある態様においては約0.1〜1.5mmである。支持構造体中のアルカリカチオンイオン伝導材の緻密層の厚さは、通常、約25μm〜約2mmであり、ある態様においては約0.5〜1.5mmである。約25μm〜約0.5mmの薄い厚さの層も製造可能であることは、当業者に理解できるであろう。ある実施態様では、セラミックス膜が構造的に多孔性であるカソード及びアノードによって支持される。すなわち、膜の形状および/またはカソード及び/又はアノードの形状の両方の性質を有するものである。ある実施態様において、多孔性支持材は膜と同じ熱膨張率を有し、膜に良好に接着され、良好な機械的強度を有する。支持構造体としてのセラミックス膜の構築に使用される層の数や形状は、本発明の要旨の範囲内で種々変更できることは当業者に理解できるであろう。
【0080】
本発明におけるセラミックス膜の実施態様において、セラミックス膜がアルカリカチオンイオン伝導性セラミックス材と非伝導材との複合体であってもよく、非伝導体としては、使用状況下でイオンや電気伝導性の低い材料である。絶縁性の非導電材料は種々知られており、当業者に公知である。ある実施態様では、非導電材料が、この種の分野において好適であるセラミックス材、ポリマー及び/又はプラスチックの少なくとも1種である。
【0081】
本発明におけるセラミックス膜として、セラミックス−ポリマー積層複合膜も特に好適に使用でき、その例として、特に限定されないが、米国特許第5290405明細書に記載の膜が挙げられ、そのすべてを参照により本発明に包含する。セラミックス−ポリマー積層複合膜は、通常、イオン選択性ポリマーをアルカリカチオン伝導性セラミックス材料の上に積層してなる、ある実施態様において、セラミックス−ポリマー積層複合膜のアルカリカチオン伝導性セラミックス材料は、NaSICON型材料またはβアルミナの少なくとも1つを含む。イオン選択性ポリマー材料は、Naイオンに対する選択性が低いという欠点を有するが、耐薬品性に優れているという利点も有する。それゆえ、化学的に安定なイオン選択性ポリマー層とカチオン伝導性セラミックス材料から成るセラミックス−ポリマー積層複合膜は、本発明において好適に使用される。ある実施態様において、セラミックス−ポリマー積層複合膜に使用されるイオン選択性ポリマーは、過フッ化スルホン酸ポリマーのポリ電解質、カルボン酸ポリマー電解質、Nafion(登録商標)材(DuPont Fluoroproducts社製、Fayetteville、ノースカロライナ州)、ポリ塩化ビニル(PVC)、マトリックス系ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー等が挙げられる。
【0082】
ある実施態様において、セラミックス−ポリマー積層複合膜は、当業者には理解されるであろう以下の特徴や使用性能:高耐薬品性、高イオン伝導性、セラミックス膜への良好な接着性および/または不純物に対する防汚染などの少なくとも1つを有する。
【0083】
本発明の製造方法または装置において、カソードとアノードの何れもがセラミックス膜に直接接触している必要はない。陰極液および陽極液の両方がイオン伝導性であり、電気的な観点から、電極はNaイオン伝導性セラミックス膜から離れていてもよい。そのような場合、電極ではない多孔性支持体上に薄フィルム状で緻密な膜が配置される。
【0084】
アルカリカチオン伝導性セラミックス膜の製造方法として種々のセラミックス粉末の加工方法が知られていることは当業者には理解でき、その方法としては、高温固体反応方法、共沈殿方法、熱水方法、ゾル−ゲル方法などが挙げられる。ある実施態様において、アルカリカチオン伝導性セラミックス材料の合成として、高温固体反応方法が有利である。特に、NaSICON型材料としては、個々の構成要素の単酸化物および/または炭酸塩などの原料前駆体の混合物を、所望の比率にてポリエチレン容器中のメタノール中に混合し、約60℃にて乾燥させて溶媒を蒸発除去し、乾燥した前駆体の混合物を約800〜1200℃の温度範囲(組成物による)で焼結させ、更に、安定化ジルコニア又はアルミナ若しくは他の当業者には公知の媒体と一緒に粉砕し、必要な粒径分布を達成する。必要な粒径分布を達成したら、振動ミル、摩擦ミル、ジェットミル、ボールミル又は他の公知の粉砕方法によって、必要に応じて安定化ジルコニア、アルミナまたは他の当業者に公知の媒体を使用して、焼成粉末を粉砕する。
【0085】
上述の素材形成に必要とされる様なセラミックス粉末と共に加工される種々のポリマーが知られていることは当業者には理解でき、例えば、これに限定されるわけではないが、ポリアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリエチレングリコール、DURAMAX(登録商標)バインダー(Rohm and Hass Company社製、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)、POLYOX(登録書票)Resin(Dow Chemical Company社製、ミッドランド、ミシガン州)等が挙げられる。
【0086】
上述の素材形成に必要とされるで挙げられたセラミックス膜の加工方法として、種々の公知のセラミックス形成加工方法が知られていることは当業者には理解でき、例えば、これに限定されるわけではないが、テープキャスト法、カレンダー法、エンボス加工、パンチング、レーザーカッティング、溶媒接着法、積層法、熱積層法、押出法、共押出法、延伸製膜法、スリップキャスト法、ゲルキャスト法、ダイカスト法、加圧成形法、平衡加圧成形法、熱平衡加圧成形法、1軸加圧成形法、ゾル−ゲル法などが挙げられる。形成されたセラミックス膜素材は、セラミックス膜中の個々の成分のロスを最小とするように大気中または制御環境下における当業者には公知の常法の熱加工法を使用して、焼結してセラミックス膜を形成する。
【0087】
ある実施態様において、ダイ加圧成形法および必要に応じてそれに引き続いて平衡加圧成形法によってセラミックス膜の素材形成を行うことが有利な場合がある。また、他の実施態様において、テープキャスト法、パンチング、レーザーカッティング、溶媒接着法、熱積層法または当御者に公知の他の方法を組合せて使用することにより、多通路装置としてのセラミックス膜の素材形成を行うことが有利な場合がある。特に、NaSICON型材料として、セラミックス膜の素材形成において、ダイで加圧成形して素材形成した後に平衡加圧成形し、更に大気中で約925〜1300℃の温度で約8時間焼結することによって、アルカリカチオン伝導性セラミック材料の緻密層を有する焼結セラミックス膜構造を形成できる。通常のX線回折分析法により、焼結セラミックス膜中のアルカリカチオン伝導性セラミック材料の結晶構造や相純度を同定することが出来る。
【0088】
ある実施態様において、本発明の製造方法および装置に使用されるセラミック膜が蒸着法によって多孔性支持体上に形成されてもよく、その蒸着法としては、物理的蒸着法、化学的蒸着法、スパッタリング法、熱スプレー法、プラズマスプレー法などが挙げられる。 蒸着法による多孔質支持体上に形成されるセラミックス膜の厚さは、通常、約1〜100μmであるが、当業者に公知のように種々変更できる。
【0089】
本発明の製造方法および装置の1実施態様において、セルは連続式で作動してもよい。連続式の場合、セルは、まず最初に陽極液と陰極液を充填させ、作動中に更なる追加溶液をセルに供給し、セルを休止させることなく生成物、副生物および/または希釈された溶液をセルから除去する。片方または両方の室中が空の状態にならないように、溶液の必要に応じて及び/又はセル中の溶液濃度を所望の濃度に維持するために、供給される溶液の流れを開始または停止させ、断続的に反応溶液を供給してもよい。
同様に、陽極液室および陰極液室からの溶液の除去は、連続的であっても断続的であってもよい。
【0090】
セルに追加および/またはセルから除去する溶液の制御は適切な手段によりなされる。そのような手段としては、1人以上のオペレーターによる手動制御と、センサー、電気バルブ、実験室ロボット等をコンピュータ制御またはアナログ式制御下で行う自動制御が挙げられる。自動制御において、タイマー、出口センサー又は他の手段を基に、コンピューター又はコンピューターコントローラーから送られる信号に従ってバルブや栓が開閉される。自動制御システムの例については、この分野においてよく知られている。手動制御と自動制御を組合せて使用することも可能である。また、定常状態を維持するために単位時間当りに供給または除去されるそれぞれの溶液の量は、使用するセル及び定常状態流を達成するために設定された系内に供給または系内から除去される溶液流に関して、実験的に決定されてもよい。
【0091】
他の実施態様としては、系がバッチ式である。バッチ式において、陽極液および陰極液はセルに供給され、陽極液室および陰極液室中の生成物の濃度が所望の濃度に達するまでセルを作動させる。生成物を回収するためにセルを空にし、再度セルに充填を行って操作を再開する、また、連続式とバッチ式とを組合せて使用してもよい。更に、どちらの方法においても、溶液の供給は、予め調製された溶液またはその場で形成される溶液を使用して行われてもよい。
【0092】
連続式およびバッチ式の両方とも溶液の動的流れを有すると考えるべきである。連続式の場合、陽極液として形成された溶液が添加され、ナトリウム濃度がある一定の濃度または濃度範囲に維持される。バッチ式の場合、ナトリウム塩の所定量が使用され陰極液室に膜を介して透過されるために、補充されてない陽極液室のナトリウムが欠乏する。従って、陽極液室のナトリウム濃度が所定濃度に減少したら、又は陰極液中の生成物濃度が所定濃度に到達したら運転を停止する。
【0093】
本発明において、いくつかの具体的な実施態様を示したが、これらは単なる例示であって、本発明の要旨から逸脱しない範囲において、多くの変更が可能であるり、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンのアルカリ塩をグリセリンに変換する方法であって、当該方法は、(a)アノードを有する陽極液室と、カソードを有する陰極液室と、陽極液室と陰極液室とを分離し、アルカリイオンを選択的に透過できるように設計されたアルカリイオン伝導セラミックス膜とから成る電解セルを得る工程と、(b)陽極液室にC(OM)を導入する工程と、(c)陽極液室に水素ガスを導入する工程と、(d)陰極液室に水を導入する工程と、(e)電解セルに電流を印荷する工程であって、当該電流印荷工程によって(i)陽極液室内の水素ガスを酸化して水素イオンを発生させることによりC(OM)+3H→C(OH)+3Mの反応を容易に行い、(ii)発生したアルカリイオン(M)を陽極液室から陰極液室にアルカリイオン伝導セラミックス膜を介して移送し、(iii)陰極液室内でアルカリイオンの存在下、M+HO+e→MOH+1/2Hの式に従って水を分解する電流印荷工程と、(f)陽極液室からグリセリン(C(OH))を除去する工程とから成るグリセリンのアルカリ塩をグリセリンに変換する方法。
【請求項2】
アノードが水素ガスを水素イオンに酸化するのを容易にする触媒から成る請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−177202(P2012−177202A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−104745(P2012−104745)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【分割の表示】特願2008−550449(P2008−550449)の分割
【原出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508011511)セラマテック・インク (29)
【Fターム(参考)】