説明

アルカリイオン水スプレー装置

【課題】電解アルカリイオン水を用いることにより、人体に対する刺激性が殆どなく、着用している衣服に対しても問題なく噴霧することができ、また、適用対象物において十分な消臭・抗菌効果を期待することができるアルカリイオン水スプレー装置を提供する。
【解決手段】化学的なアルカリ剤を用いることなく、原料水に対し電気分解処理を行い、物理的に水酸イオンを多くすることによって、水素イオン濃度でいうところのアルカリ性を呈する電解アルカリイオン水を、内壁面を合成樹脂によってコーティングした金属製容器内に充填するとともに、噴射ガスとして窒素ガスを充填し、噴霧時における電解アルカリイオン水の霧化液滴の50%以上が、粒径55μm以下となるノズルを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服や靴等の消臭及び抗菌、或いは、食用油の酸化・劣化防止を目的として使用することができるスプレー装置、特に、電解アルカリイオン水を噴霧させることにより、消臭・抗菌効果、食用油の酸化・劣化防止効果を期待できるアルカリイオン水スプレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、衣服、寝具、カーテン、絨毯、その他の布製の家具や身の回り品等を対象とする消臭スプレー剤として、様々な種類のものが存在している。それらのスプレー剤は、通常、噴射ガスとともに金属製容器内に充填されたエアゾールタイプのスプレー装置として、或いは、プラスチック製容器内に充填された手動ポンプ式スプレー装置として、市場に供給されている。消臭スプレー剤に使用されている有効成分としては、一般に、シクロデキストリン等の消臭成分や、有機系の除菌成分、及び、合成香料類などが配合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−24865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の消臭スプレー剤は、噴霧した時の水滴が大きく、対象物が濡れて色が濃くなってしまうため、衣服に噴霧した場合には、乾くまで着用できず、また、着用したまま噴霧することができないという問題がある。また、同一の対象物に対して繰り返し噴霧すると、消臭スプレー剤の残留成分が蓄積し、乾燥後において輪染みができてしまうという問題があった。更に、従来の布製品用の消臭スプレー剤は、一般に刺激性が強く、安全性の観点から人体や愛玩動物に向けて直接噴霧することが禁じられているものが多い。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決すべくなされたものであって、電解アルカリイオン水を用いることにより、人体に対する刺激性が殆どなく、着用している衣服に対しても問題なく噴霧することができ、また、適用対象物において十分な消臭・抗菌効果を期待することができるほか、食用油の酸化劣化防止効果をも期待することができるアルカリイオン水スプレー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアルカリイオン水スプレー装置は、内壁面を合成樹脂によってコーティングした金属製容器内に、電解アルカリイオン水を充填するとともに、噴射ガスとして窒素ガスを充填し、噴霧時における電解アルカリイオン水の霧化液滴の50%以上が、粒径55μm以下となるノズルを備えていることを特徴としている。尚、ここに言う「電解アルカリイオン水」とは、化学的なアルカリ剤を用いることなく、原料水に対し電気分解処理を行い、物理的に水酸イオンを多くすることによって、水素イオン濃度でいうところのアルカリ性を呈する水を意味する。
【0007】
本発明においては、電解アルカリイオン水として、どのような方法によって製造されたものでも用いることができるが、特開平8−24865号公報に記載されている方法によって製造したもの、より具体的には、pH12以上であり、結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解処理して得られたアルカリ性のイオン水に、結晶性粘土鉱物をさらに溶解させるとともに、所定の電極側に供給して電気分解処理することにより生成したものを使用することが好ましい。この方法によって製造した電解アルカリイオン水は、熱的、時間的に安定しており、他の方法によって製造した電解アルカリイオン水と異なり、一年間室温で放置した場合でもpH値は初期の値に保持されるという点で、非常に優れている。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態のアルカリイオン水スプレー装置は、衣服、寝具、カーテン、絨毯、その他の布製の家具や身の回り品等を対象とする消臭・除菌用スプレー装置として好適に用いることができる。尚、上記方法によって製造した電解アルカリイオン水は、人体に対する刺激性がほとんどなく、衣服に適用するときは、着用したままでも安全に使用することができる。また、脇の下や、首周り、足など、人体の皮膚に向けて直接噴霧することもできる。更に、布製品に限らず、靴や鞄などの革製品、ガラス製或いは陶磁器製の食器類、金属製のカトラリー、木製のまな板、プラスチック製の調理器具等、様々な物品を対象とする消臭・除菌用スプレー装置として使用することができる。
【0009】
更に、使用中の揚げ油の油面に向けて電解アルカリイオン水を適量噴霧することにより、揚げ油の酸化を好適に防止することができ、所定時間毎に(例えば、揚げ物作業を1時間実施する度に)噴霧を継続して行うことにより、揚げ油の劣化を好適に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本発明「アルカリイオン水スプレー装置」を実施するための形態について説明する。本発明の第1の実施形態に係るアルカリイオン水スプレー装置は、内壁面を合成樹脂によってコーティングした金属製容器内に、電解アルカリイオン水を充填するとともに、噴射ガスとして窒素ガスを充填し、噴霧時における電解アルカリイオン水の霧化液滴の50%以上が、粒径55μm以下となるノズルを備えている。
【0011】
本実施形態においては、上記のような条件で電解アルカリイオン水を噴霧できるノズルとして、株式会社丸一製のエアゾールスプレー装置用バルブボタン(製品番号:321−M90−231−1(0.3))を使用している。このバルブボタンは、ノズル孔径が0.3mmで、噴射液の流路(噴霧口の手前側)内の2箇所に、噴射液をスクリュー状に回転させるための溝が形成されているダブルブレイクアップ型のバルブボタンである。内圧を0.50〜0.70MPa(25℃)に調整して電解アルカリイオン水及び窒素ガスを充填した金属製容器に、上記バルブボタンを取り付けることにより、噴霧される電解アルカリイオン水の霧化液滴の50%以上を、粒径55μm以下とすることができる。
【0012】
電解アルカリイオン水を充填する金属製容器として、合成樹脂によって内壁面をコーティングしたものを用いる理由は、電解アルカリイオン水が容器の金属部分と接触すると、錆が発生したり、腐食するという問題があるほか、電解アルカリイオン水のpHが低下し、機能が劣化するという問題があるからである。本実施形態のように、合成樹脂によって内壁面をコーティングした容器を用いれば、かかる問題を好適に回避することができる。合成樹脂によるコーティングの具体的な方法としては、例えば、パウダーコート、或いは、エポキシユリアコート等のコーティング方法が好適である。
【0013】
また、従来のスプレー装置においては、窒素ガスのほか、液化プロパンガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、炭酸ガスなどが噴射ガスとして一般的に使用されているが、本実施形態において、LPG、DME、或いは、炭酸ガスを噴射ガスとして使用することには問題がある。例えば、LPGと電解アルカリイオン水とをスプレー容器内に充填すると、容器内において分離してしまい、使用時においてLPGのみが噴射されてしまうという問題があり、人体に向けて噴射した場合、刺激性が強く、最悪の場合、凍傷を負わせてしまう可能性がある。また、DMEは、金属製容器の内壁面にコーティングした合成樹脂を剥離させてしまう可能性があるほか、電解アルカリイオン水の機能を劣化させてしまうという問題がある。更に、炭酸ガスは電解アルカリイオン水と反応してpHを低下させてしまうという問題がある。噴射ガスとして窒素ガスを用いた場合、上記のような問題は発生せず、好適に用いることができる。
【0014】
電解アルカリイオン水としては、化学的なアルカリ剤を用いることなく、原料水に対し電気分解処理を行い、物理的に水酸イオンを多くすることによって、水素イオン濃度でいうところのアルカリ性を呈する水であれば、どのようなものでも用いることができるが、本実施形態においては、pH12以上であり、結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解処理して得られたアルカリ性のイオン水に、結晶性粘土鉱物をさらに溶解させるとともに、所定の電極側に供給して電気分解処理することにより生成したものを使用する。
【0015】
この方法によって製造した電解アルカリイオン水は、イソ吉草酸を始めとする体臭の原因物質に対して有効に作用し、消臭効果を期待できることがわかっているほか、高いpHによる除菌効果も期待することができる。また、還元作用による各種食品(特に食用油)の酸化・劣化防止効果を期待することができる。そして、この方法によって製造した電解アルカリイオン水は、熱的、時間的に安定しており、他の方法によって製造した電解アルカリイオン水と異なり、一年間室温で放置した場合でもpH値は初期の値に保持されるという点で、非常に優れている。
【0016】
本実施形態のアルカリイオン水スプレー装置は、衣服、寝具、カーテン、絨毯、その他の布製の家具や身の回り品等を対象とする消臭・除菌用スプレー装置として好適に用いることができる。尚、上記方法によって製造した電解アルカリイオン水は、人体に対する刺激性がほとんどなく、衣服に適用するときは、着用したままでも安全に使用することができる。また、顔面、脇の下、首周り、足など、人体の皮膚に向けて直接噴霧することもできる。更に、布製品に限らず、靴や鞄などの革製品、ガラス製或いは陶磁器製の食器類、金属製のカトラリー、木製のまな板、プラスチック製の調理器具等、様々な物品を対象とする消臭・除菌用スプレー装置として使用することができる。
【0017】
また、使用中の揚げ油の油面に向けて電解アルカリイオン水を適量噴霧することにより、揚げ油の酸化を好適に防止することができ、所定時間毎に(例えば、揚げ物作業を1時間実施する度に)噴霧を継続して行うことにより、揚げ油の劣化を好適に防止することができる。更に、本実施形態のアルカリイオン水スプレー装置によって噴霧された電解アルカリイオン水は、粒子が小さく、均一であるため、高温の揚げ油に噴霧した際の油はねが、従来の手動ポンプ式スプレー装置で噴霧した場合に比べ、1/10に抑えられ、安全である。
【0018】
以下、本発明に係るアルカリイオン水スプレー装置の効果について、本発明の発明者らが行った試験の結果を、実施例1〜6として説明する。
【実施例1】
【0019】
(消臭効果の試験1: イソ吉草酸/電解アルカリイオン水と水道水)
結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解処理して得られたアルカリ性のイオン水に、結晶性粘土鉱物をさらに溶解させるとともに、所定の電極側に供給して電気分解処理することにより生成したpH12以上の電解アルカリイオン水(特開平8−24865号公報に記載されている方法によって製造した電解アルカリイオン水)について、イソ吉草酸(人体から生じる悪臭の代表的な成分)に対する消臭効果の試験を行った。
【0020】
25×40cmの袋体を3つ(袋体A〜C)を用意し、各袋体内に空気3L、及び、イソ吉草酸(ガス)15ppmをそれぞれ封入するとともに、袋体Aには上記電解アルカリイオン水5mLを添加し、袋体Bには水道水5mLを添加した。袋体Cは、空気及びイソ吉草酸のみとした。封入後、各袋体を3回振り、その後静置し、5分後、及び、10分後に各袋体内のイソ吉草酸の濃度をガス検知管それぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
イソ吉草酸は、水に対して溶解性があるため、水道水を封入した袋体Bにおいても、イソ吉草酸ガスが水に吸収されて濃度が低下したが、上記電解アルカリイオン水を封入した袋体Aにおいては、それよりも更にイソ吉草酸ガス濃度が低下した。この試験結果から、上記電解アルカリイオン水は、イソ吉草酸に対する消臭効果(即ち、人体臭に対する消臭効果)を有していることが確認された。
【実施例2】
【0023】
(消臭効果の試験2: イソ吉草酸/エアゾールスプレー装置と手動ポンプ式スプレー装置)
上記電解アルカリイオン水を窒素ガス(噴射ガス)とともに金属製容器内に充填したエアゾールスプレー装置(第1の実施形態として説明したアルカリイオン水スプレー装置)(本発明)と、上記電解アルカリイオン水を充填した手動ポンプ式のスプレー装置(トリガーを引くことにより、容器内へ空気を導入して容器内圧力を上昇させ、当該上昇した圧力によって容器内の液体をノズルから噴射するスプレー装置)(比較例)とを用いてイソ吉草酸に対する消臭効果の試験を行った。
【0024】
まず、容積10Lのステンレス製容器を2つ(容器A、容器B)用意し、各容器内にイソ吉草酸(液体)を0.5mLずつ入れ、蓋をして静置し、容器内においてイソ吉草酸を揮発させてガスを充満させた。5分後に各容器内におけるイソ吉草酸のガス濃度を測定し(第1回測定)、次いで、容器A及び容器Bの蓋を開け、容器A内にエアゾールスプレー装置(本発明)を用いて上記電解アルカリイオン水を約4.5g噴射し(噴射時間:5秒)、容器B内に手動ポンプ式のスプレー装置(比較例)を用いて上記電解アルカリイオン水を4.5g噴射した(噴射回数:8回)。そして、容器A及び容器Bの蓋を閉め、5分間静置した後、再度、各容器内におけるイソ吉草酸のガス濃度を測定した(第2回測定)。その結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
上記の通り、エアゾールスプレー装置を用いた容器Aでは、イソ吉草酸ガス濃度は1/17まで低下し、手動ポンプ式スプレー装置を用いた容器Bでは、ガス濃度は7/17まで低下した。全く同一の電解アルカリイオン水を、同量噴射したにも拘わらず、エアゾールスプレー装置を用いた場合と、手動ポンプ式スプレー装置を用いた場合とでは、消臭効果において7倍の開きが生じた。この結果から、エアゾールスプレー装置を用いて電解アルカリイオン水を噴射させると、手動ポンプ式スプレー装置を用いる場合よりも、極めて高い消臭効果を期待できることが確認された。
【実施例3】
【0027】
(消臭効果の試験3: メルカプタン/エアゾールスプレー装置と手動ポンプ式スプレー装置)
第1の実施形態として説明したアルカリイオン水スプレー装置)(本発明)と、上記電解アルカリイオン水を充填した手動ポンプ式のスプレー装置(比較例)とを用いて4大悪臭として知られるメルカプタンに対する消臭効果の試験を行った。
【0028】
まず、容積10Lのステンレス製容器を2つ(容器C、容器D)用意し、各容器内に0.5%t−ブチルメルカプタン溶液を1mLずつ入れ、蓋をして静置し、容器内においてメルカプタンを揮発させて充満させた。3分後に各容器内におけるメルカプタン濃度を測定し(第1回測定)、次いで、容器C及び容器Dの蓋を開け、容器C内にエアゾールスプレー装置(本発明)を用いて上記電解アルカリイオン水を約9g噴射し(噴射時間:10秒)、容器D内に手動ポンプ式スプレー装置(比較例)を用いて上記電解アルカリイオン水を9g噴射した(噴射回数:12回)。そして、容器C及び容器Dの蓋を閉め、3分間静置した後、再度、各容器内におけるメルカプタン濃度を測定した(第2回測定)。その結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
上記の通り、エアゾールスプレー装置を用いた容器Aでは、メルカプタンをほぼ完全に除去させることができた。また、手動ポンプ式スプレー装置を用いた容器Bにおいても、メルカプタン濃度は大幅に低下した。これらの結果から、上記電解アルカリイオン水は、メルカプタンに対しても十分な消臭効果を期待できることが確認された。また、全く同一の電解アルカリイオン水を、同量噴射したにも拘わらず、エアゾールスプレー装置を用いた場合と、手動ポンプ式スプレー装置を用いた場合とでは、消臭効果において差が生じた。この結果から、エアゾールスプレー装置を用いて電解アルカリイオン水を噴射させると、手動ポンプ式スプレー装置を用いる場合よりも、極めて高い消臭効果を期待できることが確認された。
【実施例4】
【0031】
(噴霧時における水分付着量の試験1: 靴の中敷きシート/エアゾールスプレー装置と手動ポンプ式スプレー装置)
第1の実施形態として説明したアルカリイオン水スプレー装置)(本発明)と、上記電解アルカリイオン水を充填した手動ポンプ式のスプレー装置(比較例)とを用いて、靴の中敷きシートに向けて噴霧した場合の水分付着量(濡れ具合)の試験を行った。
【0032】
まず、靴の中敷きシート(大きさ:5×10cm、厚さ:1mm)を2枚(シートE、シートF)用意し、シートEにエアゾールスプレー装置(本発明)を用いて上記電解アルカリイオン水を0.20g噴射し、シートFに手動ポンプ式スプレー装置(比較例)を用いて上記電解アルカリイオン水を0.20g噴射した。そして、各シートの上にコットン不織布(吸水性シート)を載せて10秒間押さえ、コットン不織布に吸収された水分量を測定した。その結果は次の通りであった。
【0033】
シートE(本発明/エアゾール): 0.08g
シートF(比較例/手動ポンプ式): 0.19g
【0034】
エアゾールスプレー装置(本発明)を用いて電解アルカリイオン水を噴射した場合、細かい霧が均一に分散し、シートEへの水分付着量は噴射量の半分以下となり、「濡れ感」はあまり感じられなかった。これに対し、手動ポンプ式スプレー装置(比較例)を用いて噴射したシートFにおいては、噴射量の95%が付着し、「濡れ感」が明確に感じられ、また、付着した液滴の大きさや付着部位にばらつきがみられた。
【0035】
このように、エアゾールスプレー装置を用いた場合には、対象物の表面において「濡れ感」があまり感じられないため、噴霧後、靴の中敷きシートを靴の中に装着し、すぐに靴を履いた場合でも、べたつかず、使用感が良好で、靴下に輪染みができることもない。また、エアゾールスプレー装置によって噴霧された電解アルカリイオン水の粒子は非常に小さくなるため、靴の中敷きシートの内部にまで均一に浸透し、電解アルカリイオン水の粒子が悪臭成分に対して高い頻度で接触し、悪臭成分を取り囲むような状態となり、その結果、高い消臭効果を期待できる。
【実施例5】
【0036】
(噴霧時における水分付着量の試験2: 脇の下用汗取りパッド/エアゾールスプレー装置と手動ポンプ式スプレー装置)
第1の実施形態として説明したアルカリイオン水スプレー装置)(本発明)と、上記電解アルカリイオン水を充填した手動ポンプ式のスプレー装置(比較例)とを用いて、脇の下用汗取りパッドに向けて噴霧した場合の水分付着量(濡れ具合)の試験を行った。
【0037】
まず、脇の下用汗取りパッド(大きさ:7×13.5cm、厚さ:1mm)を2枚(パッドG、パッドH)用意し、パッドGにエアゾールスプレー装置(本発明)を用いて上記電解アルカリイオン水を0.42g噴射し、パッドHに手動ポンプ式スプレー装置(比較例)を用いて上記電解アルカリイオン水を0.41g噴射した。そして、各パッドの上にコットン不織布(吸水性シート)を載せて10秒間押さえ、コットン不織布に吸収された水分量を測定した。その結果は次の通りであった。
【0038】
パッドG(本発明/エアゾール): 0.15g
パッドH(比較例/手動ポンプ式): 0.25g
【0039】
エアゾールスプレー装置(本発明)を用いて電解アルカリイオン水を噴射した場合、細かい霧が均一に分散し、パッドGへの水分付着量は噴射量の約1/3となり、「濡れ感」はあまり感じられなかった。これに対し、手動ポンプ式スプレー装置(比較例)を用いて噴射したパッドHにおいては、噴射量の約60%が付着し、「濡れ感」が明確に感じられ、また、付着した液滴の大きさや付着部位にばらつきがみられた。
【0040】
このように、エアゾールスプレー装置を用いた場合には、対象物の表面において「濡れ感」があまり感じられないため、噴霧後、脇の下用汗取りパッドを上衣の脇部分に装着し、すぐに着用した場合でも、べたつかず、使用感が良好で、シャツや下着に輪染みができることもない。また、エアゾールスプレー装置によって噴霧された電解アルカリイオン水の粒子は非常に小さくなるため、脇の下用汗取りパッドの内部にまで均一に浸透し、電解アルカリイオン水の粒子が悪臭成分に対して高い頻度で接触し、悪臭成分を取り囲むような状態となり、その結果、高い消臭効果を期待できる。
【実施例6】
【0041】
(噴霧時における霧化粒子径の測定試験: エアゾールスプレー装置と手動ポンプ式スプレー装置)
第1の実施形態として説明したアルカリイオン水スプレー装置)(本発明)と、上記電解アルカリイオン水を充填した手動ポンプ式のスプレー装置(比較例)とを用いて、噴霧時における霧化粒子径の測定を行った。
【0042】
表面が平滑な金属製の板を2枚(金属板I、金属板J)用意し、室温25℃の条件下において、金属板Iから30cm離れた位置から金属板Iに向けて、エアゾールスプレー装置(本発明)によって上記電解アルカリイオン水を4.0g噴射し(噴射時間:5秒)、また、金属板Jから30cm離れた位置から金属板Jに向けて、手動ポンプ式スプレー装置(比較例)によって上記電解アルカリイオン水を4.0g噴射し(噴射回数:5回)、各金属板I、Jに付着した電解アルカリイオン水の水滴の大きさを、レーザー解析粒度分布測定装置(東日コンピューターアプリケーションズ株式会社製 LDSA−2400 V−1.22)を用いて測定した。その結果は次の通りであった。
【0043】
金属板I(本発明/エアゾール): 52.60μm(平均)
金属板J(比較例/手動ポンプ式): 84.12μm(平均)
【0044】
エアゾールスプレー装置(本発明)によって電解アルカリイオン水を噴霧した場合、霧化液滴の平均粒径は、上記の通り52.60μmとなり、また、霧化液滴の50%以上が粒径55μm以下となることが確認された。また、下の写真(エアゾールスプレー装置(本発明)から噴霧された電解アルカリイオン水の水滴が付着した金属板Iを撮影した写真)に示すように、本発明のエアゾールスプレー装置を用いて噴霧すると、噴射パターンが広く、霧の拡散性が高いので水滴が均一に分散して付着することが確認された。

【0045】
一方、手動ポンプ式スプレー装置(比較例)によって電解アルカリイオン水を噴霧した場合、霧化液滴の粒径は本発明による場合と比べてはるかに大きく、また、下の写真(手動ポンプ式スプレー装置(比較例)から噴霧された電解アルカリイオン水の水滴が付着した金属板Jを撮影した写真)に示すように、手動ポンプ式スプレー装置を用いて噴霧すると噴射パターンが狭く、水滴の大きさや付着部位にばらつきがみられた。

【0046】
上記実施例1〜6の試験結果を総合して考察すると、エアゾールスプレー装置(本発明)を用いて電解アルカリイオン水を噴霧すると、霧化液滴の50%以上を、粒径55μm以下とすることができることが確認され、また、エアゾールスプレー装置(本発明)を用いて電解アルカリイオン水を噴霧した際、その霧化液滴の50%以上が粒径55μm以下となった場合、手動ポンプ式スプレー装置(比較例)を用いて電解アルカリイオン水を噴霧した場合と比べ、極めて高い消臭・抗菌効果を期待できるほか、対象物の表面において「濡れ感」を感じさせない状態で噴霧することができ、手動ポンプ式スプレー装置では期待することができない優れた効果を奏することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面を合成樹脂によってコーティングした金属製容器内に、電解アルカリイオン水を充填するとともに、噴射ガスとして窒素ガスを充填し、
噴霧時における電解アルカリイオン水の霧化液滴の50%以上が、粒径55μm以下となるノズルを備えていることを特徴とするアルカリイオン水スプレー装置。
【請求項2】
前記電解アルカリイオン水が、pH12以上であり、結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解処理して得られたアルカリ性のイオン水に、結晶性粘土鉱物をさらに溶解させるとともに、所定の電極側に供給して電気分解処理することにより生成したものであることを特徴とする、請求項1に記載のアルカリイオン水スプレー装置。

【公開番号】特開2011−167665(P2011−167665A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36343(P2010−36343)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(504373864)明広商事株式会社 (43)
【出願人】(591087703)株式会社アロンワールド (13)
【出願人】(595058808)日本瓦斯株式会社 (13)
【Fターム(参考)】