説明

アルカリセルロースの製造方法

【課題】セルロースの重合度の低下が少なく、かつ塩基の使用量の少ないアルカリセルロースの製造方法、及び得られたアルカリセルロースを用いるセルロースエーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】[1]セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5モルの塩基化合物存在下、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10質量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、該セルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程1、及び得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程1で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程2を有するアルカリセルロースの製造方法、及び[2]前記製造方法で製造されたアルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させる、セルロースエーテルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリセルロースの製造方法、及びセルロースエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエーテルは、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配合成分や分散剤、改質剤、凝集剤等に用いられ、その用途は多岐にわたる。このセルロースエーテルの製造原料となるセルロースは、結晶性が高く、反応性に乏しいため、セルロースエーテルの製造に際しては、その結晶性を低減し、反応性を改善する必要がある。
そこで、一般的なセルロースエーテルの製造方法としては、セルロースと大量の水及び大過剰のアルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合してアルカリセルロースとする、アルセル化又はマーセル化と呼ばれるセルロースの活性化処理の後、エーテル化する方法が行われている。
しかしながら、この方法では、アルセル化の際に使用する大過剰のアルカリ金属水酸化物に起因して大量の塩が副生するため、その副生塩を除去するための精製負荷が問題になる。そこで、アルカリ金属水酸化物量の低減を目的としたアルカリセルロースやセルロース誘導体の製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、60〜80メッシュのパルプに30〜70%の比較的高濃度の苛性アルカリ溶液を、煙霧状に飛散させながら供給、混合、反応させるアルカリセルロースの製造方法が開示されている。
特許文献2には、易砕セルロースと固体の苛性アルカリとの混合物を摩砕する、保存時の重合度の低下が少ないアルカリセルロースの製造方法が開示されている。
特許文献3には、アルカリと水の存在下で、機械的処理を施すことにより、効果的にアルカリ置換を行い、置換基が均一に分散したアルカリセルロースを製造する方法が開示されている。
また、特許文献4には、低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、グリシドールと反応させるセルロース誘導体の製造方法が開示されており、特許文献5には、低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、グリシジルトリアルキルアンモニウム塩と反応させる、カチオン化セルロースの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭38−4800号公報
【特許文献2】特公昭42−800号公報
【特許文献3】特開2011−37924号公報
【特許文献4】特開2009−114375号公報
【特許文献5】特開2009−102587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、アルセル化時に使用する大過剰のアルカリ金属水酸化物の使用量の低減を目的としているが、その効果は十分ではない。
特許文献2の方法は、従来のアルセル化同様、大過剰の苛性アルカリを用いている。
特許文献3、4及び5の方法は、アルセル化の際の金属水酸化物使用量の低減が可能であるものの、セルロースの結晶構造をほぐす際に、セルロースの重合度の低下を伴うという課題があることが明らかになった。
本発明は、セルロースの重合度の低下が少なく、かつ塩基の使用量の少ないアルカリセルロースの製造方法、及び得られたアルカリセルロースを用いるセルロースエーテルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]下記工程1及び2を有するアルカリセルロースの製造方法。
工程1:セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5モルの塩基化合物の存在下、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10質量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、該セルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程
工程2:工程1で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程1で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30質量%〜100質量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程
[2]前記[1]の製造方法で製造されたアルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させる、セルロースエーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアルカリセルロースの製造方法によれば、塩基化合物の使用量を低減しつつ、セルロースの重合度低下を抑制して、効率的にアルカリセルロースを製造することができる。また、得られたアルカリセルロースを用いて効率的にセルロースエーテルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例16で用いたリボンミキサー型反応装置の反応容器部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[アルカリセルロースの製造方法]
本発明のアルカリセルロースの製造方法は、下記工程1及び2を有する。
工程1:セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5モルの塩基化合物の存在下、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10質量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、該セルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程
工程2:工程1で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程1で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程
以下、各工程、及び用いられる原料等について、詳細に説明する。
【0010】
<工程1>
工程1は、セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5モルの塩基化合物の存在下、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10質量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、該セルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程である。
工程1において、実質的に水が存在しない条件下で、塩基化合物と共にセルロース含有原料の粉砕を行うことにより、粉砕後のセルロース含有原料中に、塩基化合物を均一に分散させることができる。また実質的に水が存在しない条件下で粉砕を行うことにより、効率的に粉砕することができ、その結果、粉砕時におけるセルロース含有原料中のセルロースの重合度低下を抑制することができる。
【0011】
(セルロース含有原料)
本発明に用いられるセルロース含有原料は、該原料中のα−セルロース含有量が20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、75質量%以上がより更に好ましい。α−セルロース含有量の上限は100質量%である。ここで、α−セルロース含有量は、ISO692に従って得られるアルカリ可溶分値;S10(20℃)、及びS18(20℃)の値を用いて、以下の計算式(1)で求めることができる。
α−セルロース含有量(質量%)=100−(S18+S10)/2 (1)
パルプの場合、α−セルロース含有量は、一般には75〜99質量%であり、他の成分は水の他、ごく少量の低重合度セルロース、ヘミセルロース、及びリグニン等を含む。木材を蒸解・漂白した市販のパルプにおいては、低重合度セルロースの含量はごく少量であるので、パルプ中のセルロース含有量とα−セルロース含有量は、略同一として扱うことができる。
セルロース含有原料中のセルロース(以下「原料セルロース」ともいう)の平均重合度は本発明の製造方法には影響を与えず、特に限定されない。しかし、本発明の製造方法の特徴は、アルカリセルロース製造時における重合度低下が小さいことであることから、本発明の製造方法は、特に平均重合度が高いアルカリセルロース又はセルロースエーテルを所望する場合に顕著な効果を発揮する。
この観点から、原料セルロースの平均重合度は、100以上であることが好ましく、入手の容易さの観点から、10000以下が好ましい。原料セルロースの平均重合度は、より好ましくは200〜5000、更に好ましくは500〜3000、より更に好ましくは1000〜2000である。
本発明において、平均重合度とは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいい、具体的には実施例に記載の方法により算出される。
【0012】
セルロースは、結晶部位及びアモルファス部位からなるが、原料セルロースにおいて結晶性部位が占める比率、すなわち結晶化度に、特に限定はない。しかしながら、通常、セルロースの低結晶化処理には、セルロース鎖の切断による重合度低下が伴う。上記の平均重合度が高いアルカリセルロース又はセルロースエーテルを得る観点から、本発明においては、重合度低下の少ない、即ち低結晶化処理が行われていないもしくは、短時間しか行われておらず、より結晶化度が高いセルロースを含有するセルロース含有原料を用いることが好ましい。一方、結晶化度が95%を超える極めて結晶化度の高いセルロース含有原料の入手も困難である。よって、原料セルロースの結晶化度は、好ましくは10〜95%、より好ましくは20〜95%、更に好ましくは50〜90%、より更に好ましくは60〜80%である。
本発明において、セルロースの結晶化度とは原料セルロースのI型結晶構造に由来する結晶化度を示し、X線結晶回折測定の結果から下記計算式(2)により求められる。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (2)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
市販のパルプ又は粉末セルロースにも少量のアモルファス部が存在するため、それらの結晶化度は、上記計算式(2)によれば、概ね60〜80%の範囲に含まれる。
【0013】
セルロース含有原料の種類には特に制限はなく、各種木材チップ;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等が挙げられる。これらの中では、セルロース純度、重合度、及び入手の容易さの観点から、パルプ類が好ましい。
セルロース含有原料の形状は、後述する粉砕を行う装置内への導入に支障がない限り特に限定されないが、操作上の観点から、シート状セルロース含有原料や、シート状セルロース含有原料を裁断又は粗粉砕して得られるペレット状又はチップ状セルロース含有原料、又は微粉砕して得られる粉末状セルロース含有原料であることが好ましい。これらの中でも、より高重合度のセルロースを原料として用いる観点及び操作の容易さの観点からチップ状セルロース含有原料が好ましい。
チップ状セルロース含有原料は、シュレッダー(例えば、株式会社明光商会製、商品名:「MSX2000−IVP440F」)や、シートペレタイザー(例えば、株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220」)を用いることにより得ることができる。
【0014】
チップ状セルロース含有原料のチップの大きさは、粉砕をより効率的に行う観点から、好ましくは0.6〜100mm角、より好ましくは0.8〜30mm角、更に好ましくは1〜10mm角である。上記範囲にシート状セルロース含有原料を裁断又は粗粉砕することにより、必要に応じて行う乾燥処理を効率的に行うことができ、また粉砕時の負荷を軽減することができる。
【0015】
セルロース含有原料中の水分量は、原料セルロースの重合度低下抑制の観点から後述する粉砕を実質的に水が存在しない状況で行う必要があることから、原料セルロースに対して10質量%以下である。水分量の下限は原料セルロースに対して0質量%であるが、セルロース含有原料中の水分を0質量%にすることは困難であるため、該水分量は原料セルロースに対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜7質量%であることがより好ましく、1〜6質量%であることが更に好ましい。セルロース含有原料中の水分量が、上記範囲を超える場合であっても、粉砕を行う前に、公知の乾燥操作を行い、後述する粉砕時の系内水分量を後述する水分量の範囲内に調整することによって、用いることができる。
セルロース含有原料中の水分量は、市販の赤外線水分計を用いて測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0016】
(塩基化合物)
工程1で用いられる塩基化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類等が挙げられる。これらの中ではアルカリ金属水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらの塩基化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
粉砕時の塩基化合物の量は、原料セルロースを構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」ともいう)1モルあたり0.6〜1.5モルである。原料セルロースを構成するAGU(以下「原料セルロースのAGU」ともいう)1モルあたりの塩基化合物の量が0.6モル以上であれば、工程2においてアルカリセルロースが速やかに生成する。この観点から、粉砕時の塩基化合物の量は、原料セルロースのAGU1モルあたり、0.7モル以上が好ましく、0.8モル以上がより好ましい。また、原料セルロースのAGU1モルあたりの塩基化合物の量が1.5モル以下であれば、後述するアルカリセルロースとエーテル化剤との反応(以下「エーテル化反応」ともいう)時の収率(エーテル化剤基準)が高く、また、反応終了後に中和を行った場合でも塩の生成量が少ないため、精製の省略が可能であるし、精製を行った場合でも精製負荷は低減できる。この観点から、粉砕時の塩基化合物の量は、原料セルロースのAGU1モルあたり、好ましくは1.3モル以下、より好ましくは1.2モル以下である。また、前記の観点から、粉砕時の塩基化合物の量は、原料セルロースのAGU1モルあたり、好ましくは0.7〜1.3モル、より好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0018】
塩基化合物の添加方法に特に限定はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。塩基化合物を一括添加する場合は、塩基化合物をセルロース含有原料中に均一に分散させる観点から、塩基化合物をセルロース含有原料中に添加後、撹拌混合するか、又はセルロース含有原料を撹拌しながら、塩基化合物を添加し混合することが好ましい。
塩基化合物の添加は、後述する粉砕を行う装置の中で行ってもよいし、別途撹拌及び混合を行う装置で行ってもよい。
撹拌及び混合を行う装置としては、塩基化合物をセルロース含有原料中に分散可能な装置であれば特に限定はない。例えば、リボン型混合機、パドル型混合機、円錐遊星スクリュー型混合機、粉体、高粘度物質、樹脂等の混錬に用いられるニーダー等の混合機が挙げられる。これらの中では、水平軸型パドル型混合機がより好ましく、具体的には、チョッパー翼を有する水平軸型のパドル型混合機であるレディゲミキサー(中央機工株式会社製;特徴的なスキ状ショベルを用いる混合機、チョッパー翼を設置可能)、プロシェアミキサー(太平洋機工株式会社製;独自形状のショベル翼による浮遊拡散混合と多段式チョッパー翼による高速剪断分散の2つの機能を備えた混合機)が特に好ましい。
【0019】
塩基化合物を添加する際の塩基化合物の形態に特に制限はないが、後述する粉砕時の効率の観点から、固体であることが好ましい。塩基化合物を固体の状態で添加する場合、製造時の取り扱い性の観点、及び塩基化合物をセルロース含有原料中に均一に分散させる観点から、塩基化合物はペレット状、粒状又は粉末状であることが好ましく、操作上の観点からペレット状又は粒状であることがより好ましい。なお、塩基化合物が固体であることは、水分を含まないことを意味しない。空気中の水分の吸湿等により、塩基化合物が水分を含有していてもよい。
【0020】
(水分量)
工程1は、原料セルロースに対する水分量が10質量%以下の条件下で行われる。
工程1を行う際の系内の水分量が、原料セルロースに対して10質量%以下であれば、セルロース含有原料の粉砕効率がよいため短時間で粉砕を行うことができ、また塩基水溶液存在下でのセルロースのグルコシド結合の切断が抑制されるため原料セルロースの重合度の低下が少ない。この観点から、系内の水分量は、原料セルロースに対して7質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。水分量の下限は0質量%である。セルロース含有原料から完全に水分を除去するためには、操作に多大なコストがかかるため、水分量は原料セルロースに対して0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また原料セルロースに対する水分量は、粉砕効率、重合度の低下抑制、及び操作コストの観点から0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましく、1〜6質量%が更に好ましい。
工程1の粉砕時の水分量の測定は、セルロース含有原料の水分量測定と同様に行うことができる。なお、本発明において、粉砕前、または粉砕初期の水分量は、特に塩基化合物としてペレット状または粒状の塩基化合物を用いた場合、塩基化合物がセルロース含有原料中に均一に分散されておらず、サンプルを採取する部位によって水分値が変化する可能性がある。よって、本発明においては、工程1の粉砕終了後のセルロース粉末混合物中の水分量の測定値を、工程1の粉砕時の水分量とする。
【0021】
(粉砕)
粉砕操作は、セルロース含有原料を粉末化し、かつ塩基化合物を粉末化されたセルロース含有原料中に可及的に均一に分散させて、セルロース粉末混合物を得る操作である。この粉砕によって、セルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る。塩基化合物として固体の塩基化合物を用いた場合は、粉砕によって同時に塩基化合物の粉末化も進行する。
セルロース粉末混合物中のセルロース含有原料(以下「粉末セルロース」ともいう)のメジアン径が150μm以下であれば、工程2におけるアルカリセルロース化が速やかに進行する。この観点から、粉末セルロースのメジアン径は、130μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、110μm以下が更に好ましく、100μm以下がより更に好ましく、80μm以下がより更に一層好ましい。一方、粉末セルロースのメジアン径が10μm以上であれば、粉砕時のセルロースの重合度低下が少なく好ましい。この観点から、粉末セルロースのメジアン径は、20μm以上がより好ましく、30μm以上が更に好ましく、40μm以上がより更に好ましく、50μm以上がより更に一層好ましい。アルカリセルロース化の速度及び収率の向上、及び粉砕時の重合度低下抑制の観点から、粉末セルロースのメジアン径は、10〜150μmが好ましく、20〜130μmがより好ましく、30〜120μmが更に好ましく、30〜110μmがより更に好ましく、40〜100μmがより更に一層好ましく、50〜80μmが特に好ましい。本発明における粉末セルロースのメジアン径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
用いられる粉砕機に特に制限はなく、セルロース含有原料を所望のメジアン径に粉末化でき、塩基化合物をセルロース含有原料中に可及的に分散可能な装置であればよい。
粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミル等が挙げられる。これらの中では、セルロース含有原料の粉砕効率、及び生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミルが更に好ましく、振動ロッドミルがより更に好ましい。
【0023】
粉砕方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
粉砕に用いる装置及び/又は媒体の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、セルロース含有原料の粉砕効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスがより好ましい。
セルロース含有原料の粉砕効率の観点から、用いる装置が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、ロッドの外径としては、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望とする粉末セルロースの粒子径への効率的な低下ができるとともに、ロッドのかけら等が混入してセルロースが汚染されるおそれが少ない。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%である。充填率がこの範囲内であれば、セルロース含有原料とロッドとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容器の容積に対するロッドの見かけの体積をいう。
【0024】
粉砕時の温度に特に限定はないが、操作コスト及び原料セルロースの重合度低下抑制の観点から、−100〜200℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、30〜70℃が更に好ましい。
粉砕の時間は、粉末セルロースのメジアン径が所望の値になるよう、適宜調整すればよい。粉砕の時間は、用いる粉砕機や使用するエネルギー量等によって変わるが、通常1分〜12時間であり、粉末セルロースのメジアン径の低下量の観点、及び原料セルロースの重合度低下抑制の観点から、5分間〜3時間が好ましく、8分間〜1時間がより好ましく、10分間〜30分間が更に好ましい。
粉砕時においては、着色や原料セルロースの重合度の低下を避ける観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0025】
通常、粉砕の初期段階ではセルロース含有原料は繊維状の形状を有し、粉砕と共に繊維状のセルロース含有原料が減少し、粉末状のセルロース含有原料が増加する。またこの繊維状のセルロース含有原料の減少と共に、セルロース含有原料の嵩密度が増大する。ここでセルロース粉末混合物中における粉末状のセルロース含有原料の含有量が多いほど、工程2におけるアルカリセルロース化の速度及び収率が高い。よって、工程2におけるアルカリセルロース化をより効率的に行う観点、及び粉砕時の重合度低下抑制の観点から、粉砕後のセルロース粉末混合物の嵩密度は、好ましくは100〜750kg/m3、より好ましくは150〜500kg/m3、更に好ましくは200〜350kg/m3の範囲である。
【0026】
<工程2>
工程2は、工程1で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程1で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程である。
(水分量)
セルロース粉末混合物中の水分量を、工程1で用いたセルロース含有原料中のセルロース(原料セルロース)に対して30〜100質量%に調整することで、原料セルロースの一部又は全部は、アルカリセルロースへと変化する。
調整後の水分量が原料セルロースに対して30質量%以上であれば、後述するアルカリセルロース化指数の高い粉末状のアルカリセルロースが収率よく生成する。この観点から、調整後の水分量は、原料セルロースに対して35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、調整後の水分量が原料セルロースに対して100質量%以下であれば、アルカリセルロース化指数の高い粉末状のアルカリセルロースが収率よく生成し、かつ後述するエーテル化反応によって、高い収率(エーテル化剤基準)でセルロースエーテルを得ることができる。この観点から、調整後の水分量が原料セルロースに対して70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが好ましい。アルカリセルロース化指数を高める観点から、セルロース粉末混合物の水分量は、原料セルロースに対して35〜70質量%に調整することが好ましく、40〜60質量%に調整することがより好ましい。
水をセルロース粉末混合物中に均一に分散させる観点から、水をセルロース粉末混合物中に添加後、撹拌混合するか、又はセルロース粉末混合物を撹拌しながら、水を添加し混合することが好ましい。
撹拌及び混合を行う装置は、水とセルロース粉末混合物を混合可能な装置であれば特に限定はない。具体例は、前記塩基化合物の撹拌及び混合の欄で記載した装置と同様である。
水の添加方法に特に限定はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。水を添加する場合は、噴霧することが好ましい。
【0027】
(熟成)
本発明においては、アルカリセルロースの生成速度を加速する目的で、前記の工程2におけるセルロース粉末混合物中の水分調整後に、熟成を行うことが好ましい。本発明において熟成とは、水分調整後のセルロース粉末混合物を、撹拌しながら、又は撹拌せずに、所定の時間、特定温度下に置くことをいう。
熟成時の温度は、アルカリセルロースの生成速度の観点から、35℃以上が好ましく、38℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましく、50℃以上がより更に好ましい。また、熟成時の温度は、アルカリセルロースの重合度低下を抑制する観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、75℃以下が更に好ましく、70℃以下がより更に好ましい。熟成時の温度は、アルカリセルロースの生成速度及び重合度維持の観点から、35〜90℃が好ましく、38〜80℃がより好ましく、40〜75℃が更に好ましく、50〜70℃がより更に好ましい。
【0028】
熟成を行う装置に特に限定はない。熟成を行う装置の具体例は、前記塩基化合物の撹拌及び混合の欄で記載した装置と同様である。作業の簡便さの観点から、前記セルロース粉末混合物に水を添加し、撹拌及び混合を行った装置と同一装置内で行うことが好ましい。
熟成時間は、熟成温度及び粉末セルロースのメジアン径等によりアルカリセルロース化の速度が変化することから、それに応じて適宜変更することができる。通常、室温においても24時間以内にアルカリセルロース化指数の増大が飽和に達する。よって生産性の観点から、熟成を行う場合の熟成時間は、通常24時間以下であり、12時間以下がより好ましく、6時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。後述するアルカリセルロース化指数の高い粉末状のアルカリセルロースを収率よく生成させる観点から、熟成を行う場合熟成時間は0.1時間以上、好ましくは、0.2時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上である。上記観点から、熟成を行う場合の熟成時間は、通常0.1〜24時間であり、アルカリセルロース化を十分に進行させる観点及び生産性の観点から、0.2〜12時間が好ましく、0.5〜6時間がより好ましく、1〜3時間が更に好ましい。
上記の塩基化合物の添加、水の添加、及び熟成は、生成するアルカリセルロースの着色を避ける観点、及び粉末セルロースや生成するアルカリセルロースの重合度の低下を避ける観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0029】
(アルカリセルロース)
上記工程2により、粉末状のアルカリセルロースが粉末状混合物(以下、「アルカリセルロース含有粉末混合物」ともいう)として得られるが、この混合物はそのまま、又は必要に応じて公知の方法により精製を行って、アルカリセルロースとの反応により得られる種々のセルロース誘導体の原料として用いることができる。
工程2における粉末セルロースからアルカリセルロースへの変化は、X線結晶回折測定により観測することができる。
アルカリセルロース含有粉末混合物には、粉末状のアルカリセルロースと、アルカリセルロースに変化していない粉末セルロースが存在する。そこで、本発明においては便宜的に、粉末状のアルカリセルロースと粉末セルロースの比率を、アルカリセルロース含有粉末混合物のX線結晶回折測定の結果から下記計算式(3)により求められるアルカリセルロース化指数によって表す。
アルカリセルロース化指数=2.2805×{I20.8/(I20.8+I22.6)}−0.54052 (3)
〔式中、I22.6は、X線回折における粉末セルロースのセルロースI型結晶格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I20.8はアルカリセルロース(回折角2θ=20.8°)の回折強度を示す。〕
アルカリセルロース含有粉末混合物のアルカリセルロース化指数は、0〜1の数であり、アルカリセルロースの比率の増加とともに増大する。
本発明の製造方法によれば、粉末セルロースの重合度低下を抑制しつつ、アルカリセルロース化指数の高いアルカリセルロース含有粉末混合物を得ることができる。
アルカリセルロース化指数が高いほど、アルカリセルロース含有粉末混合物中のアルカリセルロース量は多く、後述するエーテル化反応が均質に進行する。よって、アルカリセルロース化指数が高ければ、例えば親水性エーテル化剤を用いた場合に、十分な量の親水性エーテル基が導入され、得られるセルロースエーテルの水に対する溶解性は高く、不溶物は少なくなる。
【0030】
[セルロースエーテルの製造方法]
本発明のセルロースエーテルの製造方法は、前記の本発明方法で製造されたアルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させることを特徴とする。種々のエーテル化剤を選択して反応させることにより、種々のセルロースエーテルを効率よく製造することができる。
【0031】
(エーテル化剤)
本発明で用いられるエーテル化剤は、アルカリセルロースと反応してセルロースエーテルを製造しうる反応部位を有する化合物であればよく、公知のセルロースエーテルの製造原料である種々のエーテル化剤を用いることができる。このようなエーテル化剤としては、アルカリセルロースとの反応部位としてエポキシ基又はハロゲン原子を有する、下記一般式(I)で表されるエーテル化剤が挙げられる。
W−Y (I)
(式中、Wは、エポキシ基又はハロゲン原子を示し、Yは下記一般式(II)で表される基、スルホ基、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、及び炭素数1〜18のアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は水素原子を示す。ただし、Wがハロゲン原子であって、Yが水素原子である場合を除く。)
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、R1〜R3は、各々独立に、炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Z-は1価の負電荷を有する原子又は基を示す。)
一般式(I)において、Yである炭素数1〜18の炭化水素基としては、本発明方法で得られるセルロースエーテルの極性溶媒への溶解性の観点から、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、その炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜3である。
Yの炭素数1〜18のアルコキシ基としては、前記極性溶媒への溶解性の観点から、炭化水素鎖が直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコキシ基が好ましい。
Yのスルホ基及びカルボキシ基は、エーテル化剤の保存安定性の観点から、アルカリ金属の塩であることが好ましい。
【0034】
一般式(II)のR1〜R3である炭素数1〜3の炭化水素基としては、原料の入手の容易さの観点から、メチル基が特に好ましい。
また、一般式(II)のZ-としては、ハロゲン化物イオン等の無機イオン、アルキル硫酸イオンや脂肪酸イオン等の有機イオンが挙げられるが、入手の容易さ、本発明方法で得られるセルロースエーテルの水溶性の観点から、ハロゲン化物イオン及び炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンが好ましく、ハロゲン化物イオンがより好ましい。
ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられるが、化学的安定性及び入手の容易さの観点から、塩化物イオン及び臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
Wがハロゲン原子である場合、エーテル化剤の保存安定性の観点から、Wは塩素又は臭素であることが好ましく、塩素であることがより好ましい。
【0035】
一般式(I)で表されるエーテル化剤の具体例としては、(i)エポキシアルカン、(ii)アルキルグリシジルエーテル、(iii)ハロゲン化アルキル、(iv)アルキルハロヒドリンエーテル、(v)スルホ基とエポキシ基を有する化合物、(vi)水酸基とエポキシ基を有する化合物、(vii)ハロゲン原子とカルボキシ基を有する化合物、(viii)ハロヒドリン基を有する化合物、 (ix)スルホ基とハロヒドリン基を有する化合物、(x)ハロヒドリン基とハロヒドリン基以外に水酸基を有する化合物、(xi)一般式(II)で表される基とエポキシ基を有する化合物、(xii)一般式(II)で表される基とハロゲン原子を有する化合物、 (xiii)一般式(II)で表される基とハロヒドリン基を有する化合物等が挙げられる。
(i)エポキシアルカンとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、ブチレンオキシド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシオクタデカン等の炭素数2〜20のエポキシアルカンが挙げられる。
(ii)アルキルグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、n−ペンチルグリシジルエーテル、イソペンチルグリシジルエーテル、n−オクチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、n−デシルグリシジルエーテル、イソデシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、イソステアリルグリシジルエーテル等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0036】
(iii)ハロゲン化アルキルとしては、メチルクロリド、エチルクロリド、エチルブロミド、オクチルクロリド、ステアリルクロリド等の炭素数1〜18のハロゲン化アルキル等が挙げられる。
(iv)アルキルハロヒドリンエーテルとしては、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−メトキシプロパン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−エトキシプロパン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−プロポキシプロパン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロパン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−オクトキシプロパン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−オクタデシロキシプロパン等の炭素数1〜18のアルキルハロヒドリンエーテルが挙げられる。
(v)スルホ基とエポキシ基を有する化合物としては、1−スルホ−19,20−エポキシエイコサン、1−スルホ−9,10−エポキシデカン、1−スルホ−5,6−エポキシへキサン、1−スルホ−3,4−エポキシブタン、グリシジルスルホン酸、及びそれらのナトリウム塩又はカリウム塩等が挙げられる。
【0037】
(vi)水酸基とエポキシ基を有する化合物としては、1−ヒドロキシ−19,20−エポキシエイコサン、1−ヒドロキシ−9,10−エポキシデカン、1−ヒドロキシ−5,6−エポキシへキサン、1−ヒドロキシ−3,4−エポキシブタン、グリシドール等が挙げられる。
(vii)ハロゲン原子とカルボキシ基を有する化合物としては、クロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸、4−クロロブタン酸、8−クロロオクタン酸、18−クロロステアリン酸、及びそれらのナトリウム、又はカリウム塩等が挙げられる。
(viii)ハロヒドリン基を有する化合物としては、2−クロロエタノール、1−クロロ−2−ヒドロキシプロパン、1−クロロ−2−ヒドロキシブタン、1−クロロ−2−ヒドロキシヘキサン、1−クロロ−2−ヒドロキシオクタン、1−クロロ−2−ヒドロキシデカン、1−クロロ−2−ヒドロキシドデカン、1−クロロ−2−ヒドロキシオクタデカン等が挙げられる。
(ix)スルホ基とハロヒドリン基を有する化合物としては、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−スルホプロパン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−スルホブタン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−6−スルホヘキサン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−12−スルホドデカン、1−クロロ−2−ヒドロキシ−18−スルホオクタデカン、及びそれらのナトリウム塩又はカリウム塩等が挙げられる。
(x)ハロヒドリン基とハロヒドリン基以外に水酸基を有する化合物としては、1−クロロ−2,3−ジヒドロキシプロパン、1−クロロ−2,4−ジヒドロキシブタン、1−クロロ−2,18−ジヒドロキシオクタデカン等が挙げられる。
【0038】
(xi)一般式(II)で表される基とエポキシ基を有する化合物としては、19,20−エポキシエイコサン−1−トリメチルアンモニウム、9,10−エポキシデカン−1−トリメチルアンモニウム、7,8−エポキシオクタン−1−トリメチルアンモニウム、5,6−エポキシへキサン−1−トリメチルアンモニウム、4,5−エポキシペンタン−1−トリメチルアンモニウム、3,4−エポキシブタン−1−トリメチルアンモニウム、グリシジルトリメチルアンモニウム、グリシジルトリエチルアンモニウム、又はグリシジルトリプロピルアンモニウムの塩化物塩、臭化物塩、メチル硫酸塩等が挙げられる。
(xii)一般式(II)で表される基とハロゲン原子を有する化合物としては、1−クロロメタン−1−トリメチルアンモニウム、1−クロロエタン−2−トリメチルアンモニウム、1−クロロプロパン−3−トリメチルアンモニウム、1−クロロブタン−4−トリメチルアンモニウム、1−クロロヘキサン−6−トリメチルアンモニウム、1−クロロオクタデカン−18−トリメチルアンモニウム、の塩化物塩、臭化物塩、又はメチル硫酸塩等が挙げられる。
(xiii)一般式(II)で表される基とハロヒドリン基を有する化合物としては、1−クロロ−2−ヒドロキシプロパン−3−トリメチルアンモニウム、1−クロロ−2−ヒドロキシブタン−4−トリメチルアンモニウム、1−クロロ−2−ヒドロキシオクタン−8−トリメチルアンモニウム、1−クロロ−2−ヒドロキシオクタデカン−18−トリメチルアンモニウム、の塩化物塩、臭化物塩、又はメチル硫酸塩等が挙げられる。
【0039】
これらの中では、反応性及び入手の容易性の観点から、(i)エポキシアルカン、(ii)アルキルグリシジルエーテル、(iii)ハロゲン化アルキル、(iv)アルキルハロヒドリンエーテル、(v)スルホ基とエポキシ基を有する化合物、(vi)水酸基とエポキシ基を有する化合物、(vii)ハロゲン原子とカルボキシ基を有する化合物、(ix)スルホ基とハロヒドリン基を有する化合物、(xi)一般式(II)で表される基とエポキシ基を有する化合物、(xiii)一般式(II)で表される基とハロヒドリン基を有する化合物が好ましく、(i)エポキシアルカン、(v)スルホ基とエポキシ基を有する化合物、(vi)水酸基とエポキシ基を有する化合物、(vii)ハロゲン原子とカルボキシ基を有する化合物、(ix)スルホ基とハロヒドリン基を有する化合物、(xi)一般式(II)で表される基とエポキシ基を有する化合物、(xiii)一般式(II)で表される基とハロヒドリン基を有する化合物がより好ましく、(i)酸化エチレン、酸化プロピレン等の炭素数2〜5のエポキシアルカン、(v)グリシジルスルホン酸ナトリウム塩、(vi)グリシドール、(vii)クロロ酢酸、クロロ酢酸ナトリウム塩、 (ix)1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−スルホプロパンナトリウム塩、(xi)グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物塩、(xiii)1−クロロ−2−ヒドロキシプロパン−3−トリメチルアンモニウム塩化物塩が更に好ましく、酸化エチレン、酸化プロピレン、グリシドール、クロロ酢酸、クロロ酢酸ナトリウム塩、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物塩、1−クロロ−2−ヒドロキシプロパン−3−トリメチルアンモニウム塩化物塩がより更に好ましい。
これらエーテル化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
エーテル化剤の使用量に限定はなく、所望するエーテル基の導入量、及び反応の収率に応じて適宜調整すればよい。本発明方法で得られるセルロースエーテルのエーテル基の導入量が、セルロースエーテルの主鎖を構成するセルロースのAGU1モルあたり0.001モル以上であれば水溶性がよく、また50モル以下であれば、エーテル化反応において高い収率(エーテル化剤基準)で反応が進行する。この観点から、エーテル化剤の使用量は、エーテル化の原料として用いたアルカリセルロース含有粉末混合物中の原料セルロースのAGUの量と、アルカリセルロースのセルロース骨格を構成するAGUの量との合計量(以下「アルカリセルロース含有粉末混合物のAGU」ともいう)1モルあたり0.001〜50モルが好ましく、0.005〜10モルがより好ましく、0.01〜5モルが更に好ましく、0.1〜3モルがより更に好ましい。
【0041】
エーテル化剤が、本発明のアルカリセルロースとの反応部位としてハロゲン原子を有する場合、反応の進行と共にハロゲン化水素が発生するため、アルカリセルロース含有粉末混合物中の塩基化合物が消費される。よって、エーテル化剤が、本発明のアルカリセルロースとの反応部位としてハロゲン原子を有し、該エーテル化剤の添加モル数が、工程1で加えた塩基化合物のモル数を超える場合には、エーテル化反応の際、塩基化合物を添加することが好ましい。添加する塩基化合物の量は、該エーテル化剤と工程1で加えた塩基化合物のモル数の差分に対して50〜150モル%であることが好ましく、80〜120モル%であることがより好ましく、90〜110モル%であることが更に好ましい。
エーテル化剤がカルボキシ基等の酸型官能基を有する場合もまた、該エーテル化剤添加時に、アルカリセルロース含有粉末混合物中の塩基化合物が消費される。よって、エーテル化剤が酸型官能基を有する場合にも、エーテル化反応の際、塩基化合物を添加することが好ましい。添加する塩基化合物の量は、該エーテル化剤に対して1〜100モル%であることが好ましく、10〜99モル%であることがより好ましく、50〜90モル%であることが更に好ましい。
エーテル化反応の際に添加可能な塩基化合物の種類、及びその好ましい様態は、前記[アルカリセルロースの製造方法]で記載した塩基化合物、及びその好ましい様態と同様である。アルカリセルロースの製造時に用いた塩基化合物と同一の塩基化合物を用いることが好ましい。
【0042】
エーテル化剤をアルカリセルロース含有粉末混合物に添加する際、添加方法には特に制限はなく、一括、分割、連続的添加でも、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。エーテル化剤をアルカリセルロース含有粉末混合物中に効率的に分散させるという観点からは、アルカリセルロース含有粉末混合物を撹拌しながら、エーテル化剤を連続的あるいは分割添加することが好ましい。添加時のエーテル化剤の形態にも特に制限はない。エーテル化剤が液体状態である場合にはそのまま用いてもよいし、粘度の低減等による取り扱い性の向上のために、水等の良溶媒で希釈した形で用いてもよい。
【0043】
(溶媒)
エーテル化反応は、アルカリセルロース含有粉末混合物とエーテル化剤からなる混合物の撹拌を容易にする目的で、非水溶媒の存在下に行うこともできる。非水溶媒の存在下でエーテル化反応を行うことによって、得られるセルロースエーテルの水溶性を向上させることができる。
非水溶媒としては、例えば、一般にアルカリセルロースとエーテル化剤の反応の際に用いられるようなイソプロパノールやtert−ブタノール等の2級又は3級の炭素数3〜4の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3〜6のケトン;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、エーテル化剤の反応収率の観点、及び得られるセルロースエーテルの水溶性の観点よりtert−ブタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリルが好ましく、非水溶媒の安全性の観点より、tert−ブタノール、イソプロパノール、エチレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。
【0044】
これらの非水溶媒の使用量は、得られるセルロースエーテルの水溶性、生産性及びエーテル化剤の反応収率の観点から、工程1の原料セルロースに対し、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは10〜50質量%であり、12〜30質量%が特に好ましい。
アルカリセルロースとエーテル化剤の反応時の状態としては、スラリー状態や粘度の高い状態又は凝集状態とはならずに、流動性のある粉末状態を保つことが好ましい。
【0045】
(反応装置)
エーテル化反応の装置としては、アルカリセルロース含有粉末混合物とエーテル化剤の混合、撹拌が可能なレディゲミキサー、ハイスピードミキサー等のミキサーや、粉体、高粘度物質、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を挙げることができる。エーテル化反応の装置は、用いるエーテル化剤が反応温度において、気体である場合には、密閉性が高く、かつ圧力条件下の反応に耐えうる耐圧装置であることが好ましい。
【0046】
(反応条件)
エーテル化反応時の温度は、用いるエーテル化剤の反応性等により適宜調整すればよく、特に限定されない。エーテル化反応時の温度は、反応速度、及びエーテル化剤又は本発明の製造方法で得られるアルカリセルロースの分解抑制の観点から、0〜200℃が好ましく、20〜100℃がより好ましく、30〜80℃が更に好ましい。
反応時間は、エーテル化剤の反応速度、所望のエーテル基の導入量等により適宜調整すればよい。反応時間は通常0.1〜72時間であり、エーテル化剤の反応収率及び生産性の観点から、0.2〜36時間が好ましく、0.5〜18時間がより好ましく、1〜12時間が更に好ましい。
なお、エーテル化反応時には、着色を避ける観点、及び本発明のアルカリセルロース並びに本発明の方法により得られるセルロースエーテルの重合度の低下を抑制する観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
反応条件においてエーテル化剤が気体である場合、反応は加圧条件下で行うことが好ましい。圧力はエーテル化剤の沸点等により適宜調整すればよい。反応時の圧力は通常0.001〜10MPa(ゲージ圧)であり、エーテル化反応の速度、及び設備負荷の観点から、0.005〜1MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、0.02〜0.5MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0047】
(後処理)
エーテル化反応終了後は、必要に応じて塩基化合物の酸による中和、及び含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等での洗浄等といった公知の精製操作を行なって、セルロースエーテルを単離することもできる。
【0048】
(カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース等の製造)
本発明のセルロースエーテルの製造方法において、前記方法で製造されたアルカリセルロースと反応させるエーテル化剤として、酸化エチレンを用いると、ヒドロキシエチルセルロースを効率的に製造することができる。また、エーテル化剤として、酸化プロピレンを用いると、ヒドロキシプロピルセルロースを効率的に製造することができる。
更に、得られたヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースと、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物、1−クロロ−2−ヒドロキシプロパン−3−トリメチルアンモニウム塩化物塩等のカチオン性基を含むエーテル化剤とを反応させて、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース又はカチオン化ヒドロキシエチルセルロースを製造することができる。
前記のカチオン性基を含むエーテル化剤とヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースとの反応における、反応温度、反応時間、反応装置及びそれらの好ましい様態は、前記のエーテル化の反応温度、反応時間、反応装置及びそれらの好ましい様態と同様である。
【0049】
本発明の製造方法によれば、生産性が高く効率的に、製造時における原料セルロースの重合度低下を抑えたアルカリセルロースの製造が可能である。また、得られたアルカリセルロースを用いて効率的にセルロースエーテルを製造することができる。得られたセルロースエーテルは、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物や、乳液、クリーム等の化粧料組成物、及び衣料用柔軟剤組成物等の配合成分として利用が可能であり、また高分子活性剤、分散剤、乳化剤、改質剤、凝集剤、粘度調整剤等として幅広い分野で利用することができる。
【0050】
上述した実施の形態に関し、本発明は以下の製造方法を開示する。
<1> 下記工程1及び2を有するアルカリセルロースの製造方法。
工程1:セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6モル以上1.5モル以下である塩基化合物の存在下、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10質量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、該セルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程
工程2:工程1で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程1で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30質量%以上100質量%以下に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程
【0051】
<2> 工程1における粉砕時の塩基化合物が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、及び3級アミンからなる群から選ばれる1種以上の塩基化合物、好ましくはアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる1種以上の塩基化合物、より好ましくはアルカリ金属水酸化物からなる群から選ばれる1種以上の塩基化合物、更に好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる1種以上の塩基化合物である、前記<1>に記載のアルカリセルロースの製造方法。

<3> 工程1における粉砕時の塩基化合物の量が、セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.7モル以上、好ましくは0.8モル以上、1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である、前記<1>又は<2>に記載のアルカリセルロースの製造方法。

<4> 工程1における粉砕時の水分量が0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、7質量%以下、好ましくは6質量%以下である、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。

<5> 工程1における粉砕後のセルロース含有原料のメジアン径が、10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、より更に好ましくは50μm以上、130μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは110μm以下、更に好ましくは100μm以下、より更に好ましくは80μm以下である、前記<1>〜<4>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。

<6> 工程2において、水添加後のセルロース粉末混合物中の水分量が、工程1で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して35質量%以上、好ましくは40質量%以上、70質量%以下、好ましくは60質量%以下である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。
【0052】
<7> 工程2の水の添加後に、35℃以上90℃以下で、0.1時間以上24時間以下熟成を行う、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。

<8> 熟成時の温度が38℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、80℃以下、好ましくは75℃以下、より好ましくは、70℃以下である、前記<7>に記載のアルカリセルロースの製造方法。

<9> 熟成時間が0.2時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、12時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは3時間以下である、前記<7>又は<8>に記載のアルカリセルロースの製造方法。

<10> セルロース粉末混合物の嵩密度が100kg/m3、好ましくは150kg/m3、より好ましくは200kg/m3、750kg/m3以下、好ましくは500kg/m3以下、より好ましくは350kg/m3以下である、前記<1>〜<9>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。

<11> 工程1におけるセルロース含有原料中の水分量が、該セルロースに対して0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは6質量%以下である、前記<1>〜<10>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。

<12> 工程1の粉砕を、粉砕機、好ましくはロールミル、竪型ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌式ミル、及び圧密せん断ミルからなる群から選ばれる粉砕機、より好ましくは容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミル、更に好ましくは容器駆動式ミル、より更に好ましくは振動ボールミル、振動ロッドミル、又は振動チューブミル、特に好ましくは振動ロッドミルで行う、前記<1>〜<11>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。

<13> 工程1のセルロース含有原料中のセルロースの平均重合度が、100以上、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1000以上、10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下である、前記<1>〜<12>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。

<14> 工程1のセルロース含有原料中のセルロースの結晶化度が、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である、前記<1>〜<13>のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。
【0053】
<15> 前記<1>〜<14>のいずれかに記載の製造方法で製造されたアルカリセルロースとエーテル化剤、好ましくは下記一般式(I)
W−Y (I)
(式中、Wは、エポキシ基又はハロゲン原子を示し、Yは下記一般式(II)で表される基、スルホ基、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、及び炭素数1〜18のアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、又は水素原子を示す。ただし、Wがハロゲン原子であって、Yが水素原子である場合を除く。)
【0054】
【化2】

【0055】
(式中、R1〜R3は、各々独立に、炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Z-は1価の負電荷を有する原子又は基を示す。)
で表されるエーテル化剤とを反応させる、セルロースエーテルの製造方法。

<16> 一般式(I)のYにおける炭化水素基の炭素数が1以上、10以下、好ましくは6以下、より好ましくは3以下である、前記<15>に記載のセルロースエーテルの製造方法。

<17> 一般式(I)のYにおけるスルホ基及びカルボキシ基が、アルカリ金属の塩である、前記<15>又は<16>に記載のセルロースエーテルの製造方法。

<18> 一般式(II)におけるR1〜R3の炭化水素基がメチル基である、前記<15>又は<16>に記載のセルロースエーテルの製造方法。

<19> 一般式(I)におけるWがエポキシ基、塩素又は臭素である、前記<15>〜<18>のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。
【0056】
<20> 前記一般式(I)で表されるエーテル化剤が、エポキシアルカン、アルキルグリシジルエーテル、ハロゲン化アルキル、アルキルハロヒドリンエーテル、スルホ基とエポキシ基を有する化合物、水酸基とエポキシ基を有する化合物、ハロゲン原子とカルボキシ基を有する化合物、スルホ基とハロヒドリン基を有する化合物、前記一般式(II)で表される基とエポキシ基を有する化合物、及び前記一般式(II)で表される基とハロヒドリン基を有する化合物からなる群から選ばれる1種以上のエーテル化剤、好ましくはエポキシアルカン、スルホ基とエポキシ基を有する化合物、水酸基とエポキシ基を有する化合物、ハロゲン原子とカルボキシ基を有する化合物、スルホ基とハロヒドリン基を有する化合物、前記一般式(II)で表される基とエポキシ基を有する化合物、及び前記一般式(II)で表される基とハロヒドリン基を有する化合物からなる群から選ばれる1種以上のエーテル化剤、より好ましくは炭素数2〜5のエポキシアルカン、グリシジルスルホン酸ナトリウム塩、グリシドール、クロロ酢酸、クロロ酢酸ナトリウム塩、1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−スルホプロパンナトリウム塩、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物塩、及び1−クロロ−2−ヒドロキシプロパン−3−トリメチルアンモニウム塩化物塩からなる群から選ばれる1種以上のエーテル化剤、更に好ましくは、酸化エチレン、酸化プロピレン、グリシドール、クロロ酢酸、クロロ酢酸ナトリウム塩、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物塩、及び1−クロロ−2−ヒドロキシプロパン−3−トリメチルアンモニウム塩化物塩からなる群から選ばれる1種以上のエーテル化剤である、前記<15>に記載のセルロースエーテルの製造方法。
【0057】
<21> エーテル化剤の使用量が、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の方法で製造されたアルカリセルロースを含む混合物中の、セルロースのアンヒドログルコース単位及びアルカリセルロースのアンヒドログルコース単位の合計量1モルあたり、0.001モル以上、好ましくは0.005モル以上、より好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、50モル以下、好ましくは10モル以下、より好ましくは5モル以下、更に好ましくは3モル以下である、前記<15>〜<20>のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。

<22> セルロース含有原料中のセルロースに対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、100質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下の非水溶媒の存在下、アルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させる、前記<15>〜<21>のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。

<23>非水溶媒が、2級又は3級の炭素数3又は4の低級アルコール、炭素数3〜6のケトン、エーテル、及び非プロトン性極性溶媒からなる群から選ばれる1種以上の溶媒、好ましくはtert−ブタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びアセトニトリルからなる群から選ばれる1種以上の溶媒、より好ましくは、tert−ブタノール、イソプロパノール及びエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる1種以上の溶媒である、前記<22>に記載のセルロースエーテルの製造方法。

<24>エーテル化反応における反応温度が、0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である、前記<15>〜<23>のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。

<25>エーテル化反応の反応時間が0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上、72時間以下、好ましくは36時間以下、より好ましくは18時間以下、更に好ましくは12時間以下である、前記<15>〜<24>のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。
【実施例】
【0058】
以下の実施例において、「%」は特に断らない場合、及び結晶化度(%)を除き、「質量%」を意味する。実施例で原料パルプ中のセルロース(原料セルロース)含有量として、α−セルロース含有量を用いた。またエーテル化工程におけるアルカリセルロース含有粉末混合物のAGU量は、前記α−セルロース含有量、及びエーテル化工程における仕込み量から算出した。
実施例において行った測定法の詳細を以下に纏めて示す。
【0059】
(1)原料パルプのα−セルロース含有量の算出
原料パルプのα−セルロース含有量は、分析値(S18@20℃(ISO692)、及びS10@20℃(ISO692))を用いて、前記計算式(1)から算出した。
乾燥後のチップ状パルプのα−セルロース含有量は、上記で得られた値及び乾燥時の水分減量から算出した。
(2)結晶化度の算出
実施例及び比較例におけるパルプのセルロースの結晶化度は、それぞれのパルプのX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X−RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定し、前記計算式(2)に基づいて算出した。測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kV,管電流:120mA ,測定範囲:2θ= 5〜45°,X線のスキャンスピード: 10°/minで測定した。測定用のサンプルは面積320mm2×厚さ1mm のペレットを圧縮し作製した。
【0060】
(3)水分量の測定
パルプの水分量の測定には、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、製品名「FD−610」)を使用した。120℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が 0.1%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量の値を、パルプ中の原料セルロースに対する質量%に換算し、パルプの水分量とした。
工程1の粉砕時の水分量は、測定サンプルとしてパルプの代わりに粉砕終了後のセルロース粉末混合物を用いた他は、前記パルプの水分量の測定と同様に行い、測定された水分量の値を、原料セルロースに対する質量%に換算し、粉砕時の水分量とした。
(4)セルロース粉末混合物の嵩密度の測定
ホソカワミクロン株式会社製の「パウダーテスター」を用いて測定した。測定は、ふるいを振動させて、サンプルをシュートを通じ落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、該容器中のサンプルの質量を測定することにより算出した。ただし綿状化したサンプルについては、ふるいを通さずにシュートを通じ落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、該容器中のサンプルの質量を測定することにより算出した。
【0061】
(5)粉末セルロースのメジアン径の測定
粉末セルロースのメジアン径は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、製品名「LA−920」)を用い、セルロース粉末混合物をエタノール中に分散させて測定した。具体的にはメジアン径の測定前に、セルロース粉末混合物をエタノールに添加して添加後の透過率が70〜95%になる濃度に調整し、1分間超音波分散処理を行って、水酸化ナトリウム(NaOH)の溶解、及び粉末セルロースの分散を行った後、測定を行った。
(6)アルカリセルロース化指数の算出
(実施例1〜11、及び比較例1〜6のアルカリセルロース化指数の算出)
セルロース粉末混合物に水を添加、混合して得られたアルカリセルロース含有粉末混合物から1gをサンプリングし、これを密閉容器中で1時間室温で静置後、X線回折強度測定を行い、得られた測定結果と前記計算式(3)に基づいて算出した。
X線回折強度測定の操作は、用いるサンプルがパルプではなく、アルカリセルロース含有粉末混合物である点を除き、前記「(2)結晶化度の算出」に記載した操作と同様に行った。
(実施例12〜16のアルカリセルロース化指数の算出)
実施例12〜16のアルカリセルロース化指数の算出は、熟成終了から10分以内にX線回折強度測定を行った点を除き、実施例1と同様の方法で行った。
【0062】
(7)置換基の導入量の算出
(7−1)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース中の置換基導入量の算出
本発明の製造方法で得られたカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(以下「C−HPC」ともいう。セルロースと、酸化プロピレン及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを反応させて得られるセルロースエーテル)に導入されたカチオン性の官能基の、C−HPCの主鎖であるセルロース骨格を構成するAGUあたりの数の平均値(以下「カチオン基の置換度」とも言う)、及びC−HPCに導入されたプロピレンオキシ基の、C−HPCの主鎖を構成するAGUあたりの数の平均値(以下「プロピレンオキシ基の置換度」ともいう)は、元素分析による塩素元素量の測定値、及び分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなくC−HPCであることを除き、第十五改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルセルロースの分析法に従って得られた値から求めた。
具体的には、実施例で得られたC−HPCの水溶液を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−HPCを得た。得られたC−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、精製C−HPC中に含まれるカチオン基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(4)から、C−HPC単位質量中に含まれるカチオン基の量(a(モル/g))を求めた。
a(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100 ) (4)
【0063】
次に分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、第十五改正日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、精製C−HPC中のヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(5)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(−OC36OH)=75.09〕(b(モル/g))を求めた。
b(モル/g)=ガスクロマトグラフ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100) (5)
得られたa及びbと下記計算式(6)、(7)からC−HPCのカチオン基の置換度(k)及びプロピレンオキシ基の置換度(m)を算出した。
a=k/(162+k×151.5+m×58) (6)
b=m/(162+k×151.5+m×58) (7)
〔式中、kは、C−HPCのカチオン基の置換度を示す。mはプロピレンオキシ基の置換度を示す。〕
【0064】
(7−2)ヒドロキシエチルセルロースのエチレンオキシ基の置換度の算出
本発明の製造方法で得られたヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」ともいう)中に存在するエチレンオキシ基の、HECの主鎖であるセルロース骨格を構成するAGUあたりの数の平均値(以下、「エチレンオキシ基の置換度」ともいう)は、分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく、HECである点、ヨウ化プロピルではなくヨウ化エチルを用いて検量線を作成し、ヨウ化プロピルの代わりにヨウ化エチルを定量する点を除き、第十五改正日本薬局方に記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に準じて行い、得られた精製HEC中のヒドロキシエトキシ基含有量(%)から置換度を算出した。
【0065】
(7−3)カルボキシメチルセルロースのカルボキシメチル基の置換度の算出
本発明の製造方法で得られたカルボキシメチルセルロース(以下「CMC」ともいう)中に存在するカルボキシメチル基の、CMCの主鎖であるセルロース骨格を構成するAGUあたりの数の平均値(以下、「カルボキシメチル基の置換度」ともいう)は、以下の方法により測定した。
本発明の実施例において得られたCMC中のすべてのカルボキシメチル基は、ナトリウム塩を形成していると考えられ、かつ、反応及び中和で生成した副生塩は、精製によって除去されている。よって、精製、乾燥後のCMC中に含まれたナトリウムの数を測定し、これをカルボキシメチル基の数と見なして、カルボキシメチル基の置換度を算出した。
具体的には、精製、乾燥後のCMC試料を、マイクロウェーブ湿式灰化装置(PROLABO社製、商品名:「A−300」)を用いて硫酸−過酸化水素で湿式分解した後、原子吸光装置(株式会社日立製作所製、商品名:「Z−6100型」)を用いて原子吸光法によりNa含量(%)を測定し、下記式(8)により置換度を算出した。
置換度(DS)=(162×Na含量(%))/(2300−80×Na含量(%)) (8)
(式(8)中の162は、アンヒドログルコース単位の分子量の値を示す。2300は、ナトリウムの原子量に百分率とするための100を乗じた値を示す。また、80は、セルロースの水酸基の水素とカルボキシメチル基(ナトリウム塩)が置換したときの分子量の増加分の値を示す。)
【0066】
(8)平均重合度の測定(銅−アンモニア法)
(8−1)パルプの粘度平均重合度の測定
実施例及び比較例においてセルロース含有原料として用いるパルプ中のセルロースの粘度平均重合度は、以下に示す方法によって測定した。
((i)測定用溶液の調製)
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を加えて、メスフラスコの標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したパルプ(105℃、20kPaで12時間減圧乾燥したもの)を加え、メスフラスコの標線まで上記アンモニア水を満たした。空気が入らないように密封し、マグネチックスターラーで12時間撹拌して溶解した。同じように添加するパルプ量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
((ii)粘度平均重合度の測定)
上記(i)で得られた測定用溶液(銅アンモニア水溶液)をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20士0.1℃)中で1時間静置したのち、液の流下速度を測定した。種々のパルプ濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とパルプ無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を以下の式より求めた。
ηsp/c=(t/t0−1)/c
(式中、cはパルプ濃度(g/dL)である。)
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、以下の式より粘度平均重合度(DPv)を求めた。
DPv=2000×[η]
(式中、2000はセルロースに固有の係数である。)
【0067】
(8−2)アルカリセルロース含有粉末混合物中のアルカリセルロース及びセルロースの粘度平均重合度の測定
実施例又は比較例で得られたアルカリセルロース含有粉末混合物中のアルカリセルロース及びセルロースの粘度平均重合度は、以下の方法でアルカリセルロースを精製セルロースに変換した後、前記(8−1)パルプの粘度平均重合度の測定と同様の操作を行って、粘度平均重合度を算出した。
((iii)精製セルロースへの変換方法)
実施例又は比較例で得られたアルカリセルロース含有混合物1gを水50mLに分散させ、酢酸で中和した後、3000rpm,(2000×g)で1分間遠心分離を行い固液分離を行って、固体のセルロースを得た。得られたセルロースを水50mLに分散させて遠心分離による固液分離を行う操作を3回繰り返し、更にアセトン50mLに分散させて遠心分離による固液分離を行い、105℃、20kPaで12時間減圧乾燥を行って、精製セルロースを得た。
【0068】
(8−3)セルロースエーテルの粘度平均重合度の測定
((iv)測定溶液の調製)
精秤したパルプの代わりに精秤したC−HPC、HEC、又はCMCを用いた点を除き、上記(i)の測定用溶液の調製と同様にして測定溶液を調製した。
((v)粘度平均重合度の測定)
測定溶液の濃度としてセルロース換算濃度(g/dL)を用いた点を除き、上記(ii)の粘度平均重合度の測定と同様にして測定した。ここで、セルロース換算濃度(Ccell)とは、測定溶液1dL中に含まれるセルロース骨格部分の質量(g)をいい、下記計算式(9)で定義される。
cell=u×162/(162+k×151.5+m×58+p×44+q×81) (9)
〔式中、uは測定溶液の調製時に用いた精秤したC−HPC、HEC又はCMCの質量(g)を示し、k、mは、それぞれ前記計算式(6)、(7)で求められたカチオン基の置換度、プロピレンオキシ基の置換度、pはエチレンオキシ基の置換度を、qはカルボキシメチル基の置換度を示し、測定対象がC−HPCである時p=q=0であり、測定対象がHECである時、k=m=q=0であり、測定対象がCMCの時、k=m=p=0である。〕
【0069】
(9)セルロースエーテルの水可溶分率の算出
精製したC−HPC、HEC、又はCMC0.5gを50mLスクリュー管に秤量し、イオン交換水49.5gを加えて、マグネチックスターラーで12時間撹拌して溶解させた。この溶液を50mL遠沈管に移し、3000rpm(2000×g)で20分間遠心分離を行った。上澄み液5mLを減圧乾燥(105℃、3時間)して固形分質量を求め、下記式(10)により水可溶分率を算出した。
水可溶分率(%)=(上澄み液5mL中の固形分質量(g)×10/試料質量)×100 (10)
【0070】
実施例1(アルカリセルロースの製造)
シート状木材パルプ〔テンベック(Tembec)社製、Biofloc HV+、平均重合度1500、α−セルロース含有量93.0%、結晶化度65%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
得られたチップ状パルプ500gを減圧乾燥機(アドバンテック東洋株式会社製、商品名;VO−320)の中に入れ、105℃、20kPa、窒素流通下の条件で2時間減圧乾燥し、平均重合度1500、α−セルロース含有量96.4%、結晶化度65%、水分含量3.6%の乾燥チップ状パルプを得た。
【0071】
(工程1)
上記で得られた乾燥チップ状パルプ100gと水酸化ナトリウム(NaOH;東ソー株式会社製、商品名;トーソーパール、平均粒径0.7mm粒状)23.8g(AGU1モルあたり1.0モル相当量)を、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入し、15分間粉砕(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)してセルロース粉末混合物(1)(嵩密度250kg/m3、セルロース粉末のメジアン径65.3μm)を得た。
【0072】
(工程2)
得られたセルロース粉末混合物(1)を乳鉢に移し、セルロース粉末混合物中の水分量が原料セルロースに対して30%になるように、水25.4gを噴霧にて添加し、20℃にて乳棒で5分間混合し、アルカリセルロース含有粉末混合物(1)(アルカリセルロース化指数0.88、アルカリセルロース並びにセルロースの平均重合度:1179)を得た。結果を表1に示す。
【0073】
実施例2〜10(アルカリセルロースの製造)
原料パルプ、工程1で使用した乾燥チップ状パルプ、NaOH添加量、粉砕時間、工程2における水添加量を表1に示した値に変えた点を除き、実施例1と同様の操作を行ってアルカリセルロース含有粉末混合物(2)〜(10)を得た。結果を表1に示す。
【0074】
実施例11
(工程1)
工程1の原料として実施例1で得られた乾燥チップ状パルプ100gに水6.2gを添加した水分含量10%のチップ状パルプ106.2gを用いた点、粉砕時間を12分とした点を除き、実施例1と同様の操作を行って、セルロース粉末混合物を得た。
(工程2)
セルロース粉末混合物中の水分量が原料セルロースに対して30%になる様、水19.3gを噴霧して添加した点を除き、実施例1と同様の操作を行って、アルカリセルロース含有粉末混合物(11)を得た。結果を表1に示す。
【0075】
比較例1及び2(アルカリセルロースの製造:工程2における水分量の影響)
原料パルプ、工程1で使用した乾燥チップ状パルプ、粉砕時間、及び工程2における水添加量を表1に示した値に変えた点を除き、実施例1と同様の操作を行って、アルカリセルロース含有粉末混合物(17)及び(18)を得た。結果を表1に示す。
比較例3(アルカリセルロースの製造:粉砕後の粉末セルロースの粒径の影響)
工程1における粉砕時間を変えた点を除き、実施例9と同様の操作を行って、アルカリセルロース含有粉末混合物(19)を得た。結果を表1に示す。
比較例4及び5(アルカリセルロースの製造:粉砕時の塩基化合物量の影響)
工程1におけるNaOH量を変えた点、及び比較例5では更に粉砕時間を変えた点を除き、実施例10と同様の操作を行って、アルカリセルロース含有粉末混合物(20)及び(21)を得た。結果を表1に示す。
【0076】
比較例6(アルカリセルロースの製造:粉砕時水分量の影響)
(工程1)
工程1の原料として実施例1で得られた乾燥チップ状パルプ100gに水25.5gを添加した水分含量30%のチップ状パルプ125.5gを用いた点、粉砕時間を32分とした点を除き、実施例1の工程1と同様の操作を行った。
(工程2)
工程2において水を添加しなかった点を除き、実施例1の工程2と同様の操作を行って、アルカリセルロース含有粉末混合物(22)を得た。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例12(アルカリセルロースの製造)
工程1における粉砕時間、工程2における水添加量を表2に示した値に変えた点を除き、実施例1の工程1及び工程2と同様の操作を行ってアルカリセルロース粉末混合物を得た。
(熟成)
その後、得られたアルカリセルロース粉末混合物から1gを採取して50mLのスクリュー管(株式会社マルエム製、商品名;No.7)に入れ、窒素置換後密閉して、40℃の恒温槽中で1時間熟成を行い、アルカリセルロース含有粉末混合物(12)を得た。
得られた粉末混合物のアルカリセルロース及びセルロースの平均重合度、並びにアルカリセルロース化指数を表2に示す。
【0079】
実施例13〜15(アルカリセルロースの製造)
熟成時の温度、及び時間を表2に示した値に変えた点を除き、実施例12と同様の操作を行ってアルカリセルロース含有粉末混合物(13)〜(15)を得た。結果を表2に示す。
実施例16(アルカリセルロースの製造)
工程1における粉砕時間、工程2における水添加量を表2に示した値に変えた点を除き、実施例1の工程1及び工程2と同様の操作を行ってアルカリセルロース含有粉末混合物を得た。
(熟成)
その後、得られたアルカリセルロース含有粉末混合物を図1に示す耐圧性を備えたリボンミキサー型反応装置(日東高圧株式会社製、容量1.1L)に入れ、窒素置換後、60℃まで昇温し、2時間、窒素雰囲気下で撹拌しながら熟成を行い、アルカリセルロース含有粉末混合物(16)を得た。結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
表1、2に示した結果から、本発明の製造方法によれば、原料セルロースからの重合度の低下を抑制し、かつアルカリセルロース化指数の高い粉末状のアルカリセルロースを効率的に製造できることが分かる。
【0082】
実施例17(ヒドロキシエチルセルロース(HEC)の製造)
実施例2で得られたアルカリセルロース含有粉末混合物(2)(実施例2の工程2終了後、室温で1時間静置したもの)100gを実施例16で用いた耐圧性を備えたリボンミキサー型反応装置に仕込んだ。窒素置換後、撹拌を行いながら40℃まで昇温し、圧力を0.05MPa(ゲージ圧)に保ちながら、酸化エチレン(EO)52.7g(アルカリセルロース含有粉末混合物のAGU1モルあたり3.0モル相当量)を5時間で添加し反応させることで、粗ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を得た。
この粗HEC10.0gを採取して酢酸で中和した。エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製HECを得た。
分析の結果、エチレンオキシ基の置換度は2.5であり、添加したEO基準の収率は83%であった。得られた精製HECの水可溶分量は、93.4%であった。
【0083】
実施例18〜21(HECの製造)
アルカリセルロース含有粉末混合物(2)の代わりに、実施例4、5、8又は9で得られたアルカリセルロース含有粉末混合物(4)、(5)、(8)又は(9)を用いた点、用いたアルカリセルロース含有粉末混合物の量、及びEO量を、表3に示すように変えた点を除いて、実施例17と同様の操作を行って、精製HECを得た。結果を表3に示す。
【0084】
実施例22(HECの製造)
アルカリセルロース含有粉末混合物(2)の代わりに、実施例16で得られたアルカリセルロース含有粉末混合物(16)(熟成終了直後のもの)を用いた点、用いたアルカリセルロース含有粉末混合物の量、及びEO量を、表3に示すように変えた点を除いて、実施例17と同様の操作を行って、精製HECを得た。結果を表3に示す。
【0085】
比較例7(HECの製造:粉砕時の塩基化合物量の影響)
アルカリセルロース含有粉末混合物(2)100gの代わりに、比較例5で得られたアルカリセルロース含有粉末混合物(21)を134g用いた点、及びEOを、76.7g(AGU1モルあたり3.0モル相当量)用いた点を除いて、実施例17と同様の操作を行って、精製HECを得た。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
表3に示した結果から、本発明の製造方法で得られるセルロースエーテルは、原料セルロースからの重合度低下が少なく、塩基の使用量が少ないため塩の含有量が少なく、かつ水溶性に優れることが分かる。水溶性が向上する理由は定かではないが、本発明の粉末状のアルカリセルロースが高いアルカリセルロース化指数を示していることから、親水性置換基が、セルロース全体に均質に導入された結果であると推察される。
【0088】
比較例8(HECの製造:工程2における水分量の影響)
(アルカリセルロースの製造)
シート状木材パルプ〔テンベック社製、Biofloc HV+、平均重合度1407、α−セルロース含有量93.0%、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
得られたチップ状パルプ500gを減圧乾燥機(アドバンテック東洋株式会社製、商品名;VO−320)の中に入れ、105℃、20kPa、窒素流通下の条件で2時間減圧乾燥し、平均重合度1407、α−セルロース含有量94.9%、結晶化度74%、水分含量5.1%の乾燥チップ状パルプを得た。
【0089】
(工程1)
上記で得られた乾燥チップ状パルプを用いて実施例1の工程1と同様の操作を行い、セルロース粉末混合物(23)(嵩密度290kg/m3、セルロース粉末のメジアン径64.5μm)を得た。
(工程2)
得られたセルロース粉末混合物(23)を乳鉢に移し、セルロース粉末混合物中の水分量が原料セルロースに対して105%になる様、水94.5gを噴霧にて添加し、20℃にて乳棒で5分間混合し、アルカリセルロース含有粉末混合物(23)を得た。
(ヒドロキシエチル化反応工程)
上記で得られたアルカリセルロース含有粉末混合物(23)100gを、実施例16で用いた耐圧性を備えたリボンミキサー型反応装置に仕込んだ。窒素置換後、撹拌を行いながら40℃まで昇温し、圧力を0.05MPa(ゲージ圧)に保ちながら、EO35.4g(アルカリセルロース含有粉末混合物のAGU1モルあたり3.0モル相当量)を8.5時間で添加し、反応させて粗HECを得た。その後、実施例16と同様の中和、精製操作を行って精製HECを得た。エチレンオキシ基の置換度は1.6、添加したEO基準の収率は53%であった。得られた精製HECの水可溶分量は、42%であった。
【0090】
実施例23(C−HPCの製造)
シート状木材パルプ〔テンベック社製、Biofloc HV+、平均重合度1481、α−セルロース含有量93.0%、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
得られたチップ状パルプ500gを減圧乾燥機(アドバンテック東洋株式会社製、商品名;VO−320)の中に入れ、105℃、20kPaの条件で窒素を流しながら2時間減圧乾燥し、平均重合度1481、α−セルロース含有量95.4%、結晶化度74%、水分含量4.6%の乾燥チップ状パルプを得た。
(工程1)
上記で得られた乾燥チップ状パルプを用いて実施例1の工程1と同様の操作を行い、セルロース粉末混合物(24)(嵩密度250kg/m3、セルロース粉末のメジアン径65.3μm)を得た。
(工程2)
工程1で得られたセルロース粉末混合物(24)を乳鉢に移し、セルロース粉末混合中の水分量が原料セルロースに対して57%になるように、水50gを噴霧にて添加し、20℃にて乳棒で5分間混合し、アルカリセルロース含有粉末混合物(24)を得た(アルカリセルロース化指数0.88、アルカリセルロース並びにセルロースの平均重合度:1172)。
【0091】
(ヒドロキシプロピル化反応工程)
上記工程2で得られたアルカリセルロース含有粉末混合物(24)を還流管と滴下ロートを取り付けたニーダー(株式会社入江商会製、PNV−1型、容積1.0L)に仕込み、酸化プロピレン102.7g(アルカリセルロース含有粉末混合物のAGU1モルあたり3.0モル相当量)を投入し、攪拌を行いながら50℃にて9時間反応させた。反応は、酸化プロピレンを2時間かけて34.2gを滴下した後、50℃にて1時間熟成を行い、これを3回繰り返した。
(カチオン化反応工程)
上記工程3で得られた反応混合物3gを乳鉢にとり、65% 3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液(四日市合成株式会社製)0.95g(ヒドロキシプロピル化で得られた反応混合物中のセルロース骨格を含む化合物のセルロース骨格を構成するAGU1モルあたり0.5モル相当量)を添加して、5分間混合後、50mLのスクリュー管(株式会社マルエム製、商品名;No.7)に移し、窒素置換後密閉して、50℃、7時間反応させることで粗カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(C−HPC)を製造した。
この粗C−HPC3.0gを採取して乳酸で中和した。プロピレンオキシ基及びカチオン基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPCを得た。
得られた精製C−HPCの元素分析より、塩素元素含有量は4.8%であった。また、ヒドロキシプロポキシ基含有量は、33.5%であった。また、プロピレンオキシ基の置換度は1.3、カチオン基の置換度は0.3であった。結果を表4に示す。
【0092】
実施例24(C−HPCの製造)
(チップ化工程)
実施例23と同様の操作を行って、乾燥チップ状パルプを得た。
(工程1)
上記で得られた乾燥チップ状パルプ920gと水酸化ナトリウム(NaOH;東ソー株式会社製、商品名;トーソーパール、平均粒径0.7mm粒状)158.9g(AGU1モルあたり0.7モル相当量)を、バッチ式振動ミル振動ロッドミル(中央化工機株式会社製、商品名;FV―10、全容器量35L、ロッド径;30mm、使用ロッド数63本、ロッド長さ510mm、ロッド断面形状が円形のSUS304製、充填率70%)に投入し、振幅8mm、20Hzにて、10〜40℃で30分間粉砕(振動数20Hz、振幅8mm、温度10〜40℃)してセルロース粉末混合物(25)(嵩密度333kg/m3、セルロース粉末のメジアン径48.9μm)を得た。
【0093】
(工程2)
上記工程(1)で得られたセルロース粉末混合物(25)390.5gを混合機(株式会社マツボー製、「レディゲミキサー」、容量5L)に投入し、主翼250rpm、チョッパー翼2500rpmで撹拌しながら、セルロース粉末混合物中の水分量が原料セルロースに対して33%になるように、水110.9gを噴霧にて添加し、内温を50℃に昇温し、2時間撹拌熟成を行って、アルカリセルロース含有粉末混合物(25)を得た(アルカリセルロース化指数0.78)。
【0094】
(ヒドロキシプロピル化反応工程)
上記で得られたアルカリセルロース含有粉末混合物501.4gを上記レディゲミキサー内で、主翼50rpm、チョッパー翼400rpmで撹拌しながら非水溶媒としてイソプロパノール50g(原料セルロースに対して15%)を添加し、10分間攪拌した後、酸化プロピレン250.6g(アルカリセルロース含有粉末混合物のAGU1モルあたり2.1モル相当量)を5時間で滴下した。滴下終了後50℃で2時間熟成した。反応終了後、減圧下でイソプロパノールを留去した。
(カチオン化反応工程)
上記で得られた反応混合物398gをハイスピードミキサー(株式会社深江パウテック製、「FLFS-GS-2J」、容量2L)に投入し、主翼528rpm、チョッパー翼1800rpmで撹拌しながら65% 3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液(四日市合成株式会社製)124.8g(ヒドロキシプロピル化で得られた反応混合物中のセルロース骨格を含む化合物のセルロース骨格を構成するAGU1モルあたり0.4モル相当量)を噴霧添加して、60℃、3時間反応させることで粗C−HPCを製造した。
その後、上記ハイスピードミキサー内で乳酸を噴霧添加して中和した。プロピレンオキシ基及びカチオン基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPCを得た。
得られたC−HPCのプロピレンオキシ基の置換度は2.1、カチオン基の置換度は0.4であった。結果を表4に示す。
【0095】
実施例25(C−HPCの製造)
ヒドロキシプロピル化反応工程で非水溶媒を用いなかった点を除いて、実施例24と同様の操作を行って、精製C−HPCを得た。
得られたC−HPCのプロピレンオキシ基の置換度は2.1、カチオン基の置換度は0.4であった。結果を表4に示す。
【0096】
実施例26(カルボキシメチルセルロースの製造)
シート状木材パルプ〔テンベック社製、Biofloc HV+、平均重合度1481、α−セルロース含有量93.0%、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
得られたチップ状パルプ500gを減圧乾燥機(アドバンテック東洋株式会社製、商品名;VO−320)の中に入れ、105℃、20kPaの条件で窒素を流しながら2時間減圧乾燥し、平均重合度1481、α−セルロース含有量95.4%、結晶化度74%、水分含量4.6%の乾燥チップ状パルプを得た。
(工程1)
上記で得られた乾燥チップ状パルプ100gと水酸化ナトリウム(NaOH;東ソー株式会社製、商品名;トーソーパール、平均粒径0.7mm粒状)24.1g(AGU1モルあたり1.05モル相当量)を、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入し、15分間粉砕(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)してセルロース粉末混合物(26)(嵩密度260kg/m3、セルロース粉末のメジアン径68.0μm)を得た。
(工程2)
工程1で得られたセルロース粉末混合物(26)を乳鉢に移し、セルロース粉末混合中の水分量が原料セルロースに対して73%になるように、水65.1gを噴霧にて添加し、20℃にて乳棒で5分間混合し、アルカリセルロース含有粉末混合物(26)を得た(アルカリセルロース化指数0.98、アルカリセルロース並びにセルロースの平均重合度:1235)。
【0097】
(カルボキシメチル化反応工程)
上記乳鉢へ、モノクロロ酢酸ナトリウム60.1g(アルカリセルロース含有粉末混合物のAGU1モルあたり1.00モル相当量)を添加し、20℃にて乳棒で5分間混合した。得られた上記混合物を1Lニーダー(株式会社入江商会製、商品名:「PNV−1型」)に仕込み、ニーダー内を減圧(約50kPa)し、次いで窒素で常圧まで戻す操作を行った。この減圧と窒素によって常圧に戻す操作を3回繰り返して窒素置換した。その後、60℃に昇温し3時間攪拌した。添加したモノクロロ酢酸の98%以上が消費されていることをHPLCで確認して、室温まで冷却し、生成物をニーダーから取り出した。次に、生成物を70%メタノール水溶液1000mlに分散した後、酢酸3.7gを加えて余剰の水酸化ナトリウムを中和した。次に、70%メタノール水溶液3000mlを添加し、攪拌することで、副生塩及び未反応物等を溶出させた。得られたスラリーをろ過(ろ紙として東洋濾紙株式会社製、商品名:「定性濾紙No.2」を使用)し、ろ過ケーキを、アセトン1000mlで洗浄し、60℃、窒素気流下、減圧条件(約70kPa)で15時間乾燥して、127.6gのCMCを得た。得られたCMCのカルボキシメチル基の置換度は0.64であった。結果を表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
表4より、本発明の製造方法で得られるアルカリセルロースに各種エーテル化剤を反応させることで、水溶性に優れるセルロースエーテルが得られることが明らかである。また、反応時に非水溶媒を用いることによって、更に水溶性に優れるセルロースエーテルが得られることが明らかである。
【符号の説明】
【0100】
1:反応容器
2:攪拌翼
3:原料仕込み口
4:酸化エチレン仕込み口
5:酸化エチレン抜き出し口
6:熱媒入口
7:熱媒出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1及び2を有するアルカリセルロースの製造方法。
工程1:セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.6〜1.5モルの塩基化合物の存在下、及び該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10質量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、該セルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程
工程2:工程1で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程1で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して30〜100質量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程
【請求項2】
工程2の水の添加後に、35〜90℃で0.1〜24時間熟成を行う、請求項1に記載のアルカリセルロースの製造方法。
【請求項3】
セルロース粉末混合物の嵩密度が100〜750kg/m3である、請求項1又は2に記載のアルカリセルロースの製造方法。
【請求項4】
工程1におけるセルロース含有原料中の水分量が、該セルロースに対して0〜10質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。
【請求項5】
塩基化合物がアルカリ金属の水酸化物である、請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリセルロースの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で製造されたアルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させる、セルロースエーテルの製造方法。
【請求項7】
セルロース含有原料中のセルロースに対して1〜100質量%の非水溶媒の存在下、アルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させる、請求項6に記載のセルロースエーテルの製造方法。
【請求項8】
エーテル化剤が、酸化エチレン、酸化プロピレン、グリシドール、クロロ酢酸、クロロ酢酸ナトリウム塩、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物塩、及び1−クロロ−2−ヒドロキシプロパン−3−トリメチルアンモニウム塩化物塩からなる群より選ばれる1種類以上である、請求項6又は7に記載のセルロースエーテルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−246479(P2012−246479A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103660(P2012−103660)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】