説明

アルカリミネラル水生成装置及びアルカリミネラル水生成方法

【課題】 少ない消費電力でカルシウムやマグネシウムを多く含むアルカリミネラル水を容易に生成する。
【解決手段】 水道水供給管5を介して水道水を浄水部10に供給し、浄水部10で水道水のカルキ臭や異物を除去する。得られた水を導水管6を介して無隔膜電解槽20内に供給し、アルカリ性水と酸性水とに電気分解する。得られた酸性水を、酸性水導管7を介して、粒径を0.6mm以下としたサンゴ石(ミネラル供給材32)が360ミリリットル充填されているミネラルカートリッジ30内に供給する。酸性水中にミネラルが溶出してミネラル水となり、このミネラル水にアルカリ水を混合してアルカリ性のアルカリミネラル水が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気分解によりミネラル水を生成するアルカリミネラル水生成装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ミネラル水を得る方法として、実開平4−99287号公報に示されるように調整装置によって調整された酸性水をミネラルを付与する岩石等を介して通水したり、特開平3−238084号公報に示されるように電気分解して得られた酸性水を炭酸カルシウムを充填した充填搭に通水し、カルシウムイオンを含む水にアルカリ性水を混合したりする方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】カルシウム等のミネラルは酸に溶解し易いことから上記の方法が行われているが、隔膜型の電解槽では、pH値3.5以下の酸性水を生成するのに、消費電力が大きく、しかも、岩石等では、酸性水を通してもカルシウム等はほとんど溶出しないという課題がある。また、従来の装置にあっては詰り等が生じた場合に部品の交換が簡単に行えないという課題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明に係るアルカリミネラル水生成装置は、原水を浄化する浄化部と、この浄化部の下流側に設けられ前記浄化された水をアルカリ性水と酸性水とに電気分解する電解槽と、この電解槽の下流側に設けられ前記電解槽からの酸性水をミネラル供給材に接触せしめるミネラル供給部と、このミネラル供給部からのミネラル水溶液と前記電解槽からのアルカリ性水とを合流せしめる合流部にてアルカリミネラル水生成装置を構成した。
【0005】また、本発明に係る他のアルカリミネラル水生成装置は、原水を浄化する浄化部と、この浄化部の下流側に設けられ前記浄化された水をアルカリ性水と酸性水とに電気分解する電解槽と、この電解槽の下流側に設けられ前記電解槽からの酸性水をミネラル供給材に接触せしめるミネラル供給部と、このミネラル供給部からのミネラル水溶液を前記電解槽に供給する戻し手段にてアルカリミネラル水生成装置を構成した。
【0006】電解槽としては、無隔膜電解槽を用いることで低pH値の酸性水を効率よく得ることができ、電解槽から導出されるアルカリ水導管に捨て水用コックを設けることで、好みのミネラル濃度とすることができる。
【0007】また、浄化部及びミネラル供給部をカートリッジタイプとすることで、部材の交換を容易に行え、更に浄化部内に活性炭を設けることで水道水中の濁度成分、残留塩素、カビ臭を取り除くことができ、ミネラル供給部内に活性炭を設けることで上流側の電解槽で発生した次亜塩素酸を取り除くことができ、また浄化部及びミネラル供給部内に中空糸膜を設けることで雑菌を除去することができる。尚、ミネラル供給材としてはサンゴ石、リン酸カルシウムまたは麦飯石等が好ましい。
【0008】また、本発明に係るアルカリミネラル水生成方法は、原水を浄化した後、この浄化した水をアルカリ性水と酸性水とに電気分解し、得られた酸性水をミネラル供給材に接触させてミネラル水溶液を得た後、このミネラル水溶液に前記アルカリ性水を合流させてアルカリミネラル水を得るようにした。
【0009】ここで、電気分解はミネラル水溶液に対して行うようにしてもよい。更に、電気分解によって得られる酸性水のpH値は3.5以下、好ましくは3.0以下である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施形態に係るアルカリミネラル水生成装置の説明図である。
【0011】製造装置1は浄水カートリッジ10と、無隔膜電解槽20と、ミネラルカートリッジ30とから構成される。浄水カートリッジ10は、ケース11内に水供給管5を介して供給される水道水(原水)についたカルキ臭を取り除くための活性炭12と、水道水中に含まれる異物を除去するための中空糸膜13とを設けて構成されている。
【0012】無隔膜電解槽20は、陽極板21と陰極板22とを近接して平行に配置して構成される。陽極板21には下流側エッジ21aよりも上流側に、強酸性水回収用スリット23を設け、水の電気分解により生成され陽極板21の表面に沿って流れる水素イオンリッチ水の層が陽極板21の下流側エッジ21aに到達する前に強酸性水層を選択的に回収するようにしている。この無隔膜電解槽20によれば、少ない消費電力でpH値の低い(例えば、3.5以下)酸性水を得ることができる。
【0013】ミネラルカートリッジ30は、ケース31内にミネラル供給材32と活性炭と中空糸膜33とを設けて構成されている。ミネラル供給材32としては、サンゴ石、ハイドロキシアパタイト粒又は粒状麦飯石を所定の粒径にしたものを用いる。
【0014】ミネラルカートリッジ30は、後述するように酸性水を流通させるので、カートリッジ30内での雑菌の繁殖を抑制することができ、また中空糸膜33によってミネラル水中に雑菌が流出することを防止できる。
【0015】尚、中空糸膜33或いは活性炭はミネラルカートリッジ30内ではなく、独立させて、ミネラルカートリッジ30の下流側、例えばアルカリ水とミネラル水の合流部より下流に設けてもよく、この場合、最前段の浄水部を省略することが可能である。また、中空糸膜33を設けるときには、水の電気分解により発生したガスがミネラルカートリッジ30内に流入するため、ガスだけを選択的に通過させる脱気膜やエア抜き弁を設けるのが好ましい。
【0016】上記した浄水カートリッジ10と無隔膜電解槽20の上流側とは、導水管6で接続され、無隔膜電解槽20のスリット23とミネラルカートリッジ30とは、酸性水導管7で接続されている。また、無隔膜電解槽20の下流側には、アルカリ水導管8が設けられ、ミネラルカートリッジ30の下流側には、ミネラル水導管9が設けられ、このミネラル水導管9とアルカリ水導管8とが合流部40で合流している。尚、合流部40には本実施例では流量調整弁を設けている。
【0017】図2は本発明の第1の実施形態に係るアルカリミネラル水生成装置のブロック構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0018】第1の実施形態におけるアルカリミネラル水(電解水)の生成方法を図2を参照して説明する。水道水供給管5を介して毎分2.0リットルの流量の水道水を浄水部10に供給し、浄水部10で水道水のカルキ臭や異物を除去する。
【0019】上記のようにして得られた水を導水管6を介して無隔膜電解槽20内に供給し、アルカリ性水と酸性水とを3:1の分配比に電気分解する。このときの消費電力は31ワットであった。
【0020】次に、上記のようにして得られた酸性水を、酸性水導管7介して、粒径を0.6mm以下としたサンゴ石(ミネラル供給材)が360ミリリットル充填されているミネラルカートリッジ30内に供給する。そのため、サンゴ石に接触しながら流れる酸性水中にミネラルが溶出し、ほぼ中性のミネラル水が得られる。
【0021】その後、ミネラル水導管9を介して供給されるミネラル水とアルカリ水導管8を介して供給されるアルカリ水とを混合してアルカリ性のアルカリミネラルを得る。
【0022】上記アルカリミネラル水の生成工程において、原水(水道水)、酸性水、アルカリ水、ミネラル水、アルカリミネラル水を、それぞれ採取したときの、pH値、Ca濃度(mg/dm3 )及びMg濃度(mg/dm3 )の測定値を表1に示す。
【0023】
【表1】


【0024】なお、表2及び表3は、それぞれミネラル供給材としてハイドロキシアパタイト(第三リン酸カルシウム粒径0.5〜2.0mm)及び粒状麦飯石(粒径0.5〜2.0mm)を用いたときのpH値、Ca濃度(mg/dm3 )及びMg濃度(mg/dm3 )の測定値である。なお、ハイドロキシアパタイト及び粒状麦飯石充填量は何れも360ミリリットルである。
【0025】
【表2】


【0026】
【表3】


【0027】この実施形態によれば、酸性水を炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムからなるミネラル供給材と接触させてカルシウムやマグネシウムを溶出させた後、アルカリ性水を混合するので、カルシウムやマグネシウムに富んだアルカリミネラル水が得られる。同時に、530mVあった水道水の酸化還元電位がアルカリミネラル水では5mVに低下した。
【0028】表4は第1の実施形態と同じ装置を用い、ミネラル供給材としてサンゴ石200ミリリットルを用い、酸性水のpH値を変えたときのアルカリミネラル水のpH値、Ca濃度(mg/dm3 )及びMg濃度(mg/dm3 )の測定値である。
【0029】
【表4】


【0030】この表4から カルシウム等のミネラル成分を確実に溶出させるには、ミネラルカートリッジを通過する酸性水のpH値が3.5以下、好ましくは3.0以下であることがわかる。これは、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等(サンゴ石等はこれらの混合物である)の溶出量が、水中の水素イオン濃度に大きく支配されていることによる。
【0031】なお、表5は、そのときの水道水のpH値、Ca濃度(mg/dm3 )及びMg濃度(mg/dm3 )の測定値である。
【0032】
【表5】


【0033】図3は本発明の第2の実施形態に係るアルカリミネラル水生成方法に用いる実験用の製造装置のブロック構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0034】この第2の実施形態においては、ミネラルカートリッジ30で得られたミネラル水を無隔膜電解槽20に戻すポンプ35又はエゼクタを設けた。次にこの第2実施形態におけるアルカリミネラル水(電解水)の生成方法を説明する。
【0035】水道水供給管5を介して毎分2.0リットルの流量の水道水を浄水部10に供給し、浄水部10で水道水のカルキ臭や異物を除去する。
【0036】上記のようにして得られた水を導水管6を介して無隔膜電解槽20内に供給し、アルカリ性水と酸性水とを3:1の分配比に電気分解する。なお、このときの消費電力は31ワットである。
【0037】次に、上記のようにして得られた酸性水を酸性水導管7介して、粒径を0.6mm以下としたサンゴ石(ミネラル供給材)が360ミリリットル充填されているミネラルカートリッジ30内に供給する。そのため、サンゴ石に接触しながら流れる酸性水中にミネラルが溶出し、ほぼ中性のミネラル水が得られる。
【0038】その後、このミネラル水導管9を介して供給されるミネラル水をポンプ35(又はアスピレータ効果を利用したエゼクタ等)を用いて無隔膜電解槽20内に戻し、導水管6を介して供給された水と合流させ、この合流水を電気分解してアルカリ水導管8を介してアルカリ性のアルカリミネラル水を得る。
【0039】この生成方法は、ミネラル水を無隔膜電解槽20内に戻すので、酸性水のpH値が低くなり難い水道水に対して、すなわちアルカリ度が高く電解され難い水道水に対して有効である。
【0040】上記アルカリミネラル水の生成工程において、原水(水道水)、合流水、酸性水、ミネラル水、アルカリミネラル水を、それぞれ採取したときの、pH値、Ca濃度(mg/dm3 )及びMg濃度(mg/dm3 )の測定値を表6に示す。
【0041】
【表6】


【0042】この第2の実施形態によれば、ミネラル水を無隔膜電解槽20内に戻すので、第1実施形態よりもカルシウム及びマグネシウム濃度を増加させることができる。
【0043】図4は本発明の第3の実施形態に係るアルカリミネラル水生成方法に用いる実験用の製造装置のブロック構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0044】この第3の実施形態においては、アルカリ水導管にアルカリ水を捨てるための捨て水コックを設けた。
【0045】この第3の実施形態のアルカリミネラル水(電解水)の生成方法は、第1の実施形態の場合と同じであるの説明を省略するが、この第3の実施形態におけるアルカリミネラル水(電解水)の生成方法によれば、ミネラル水と混合するアルカリ水の量を調整することができるので、好みのミネラル濃度及び好みのpHのアルカリミネラル水を容易に得ることができる。
【0046】表7は、上記アルカリミネラル水の生成工程において、捨て水の量(dm3/min)に対応するアルカリミネラル水のpH値、Ca濃度(mg/dm3 )及びMg濃度(mg/dm3 )の測定値である。
【0047】
【表7】


【0048】なお、表8は、そのときの水道水のpH値、Ca濃度(mg/dm3 )及びMg濃度(mg/dm3 )の測定値である。
【0049】
【表8】


【0050】なお、上記各実施形態においては、ミネラル供給材としてサンゴ石、ハイドロキシアパタイト(第三リン酸カルシウム)及び粒状麦飯石を用いたが、これらの他に牛骨粉、魚骨粉、カキ殻、真珠貝、卵殻カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウムのような炭酸系、リン酸系のミネラルでもよい。また、人体に必須の微量元素を含む天然鉱物等を同時に充填してもよい。
【0051】
【発明の効果】以上に説明したように本発明のアルカリミネラル水生成装置によれば、少ない消費電力でpH値3.0以下の酸性水を生成でき、しかもカルシウム等の溶出量が、水中の水素イオン濃度に大きく支配されるミネラル供給材を用いているため、カルシウムやマグネシウムを多く含むアルカリミネラル水を容易に生成することができる。
【0052】また、ポンプやエゼクターにてミネラル水を無隔膜電解槽20内に戻すようにすれば、アルカリ度が高く電解しにくい水道水を容易に電解することができる。
【0053】また、電解槽から導出されるアルカリ水導管の途中に捨て水用コックを設けることで、好みのpH度及びミネラル度の飲料水を得ることができる。
【0054】更に、浄化部やミネラル供給部をカートリッジタイプとすることで、一般家庭において使用しやすいアルカリミネラル水生成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアルカリミネラル水生成装置の説明図
【図2】本発明の第1の実施形態に係るアルカリミネラル水生成装置のブロック構成図
【図3】本発明の第2の実施形態に係るアルカリミネラル水生成装置のブロック構成図
【図4】本発明の第3の実施形態に係るアルカリミネラル水生成装置のブロック構成図
【符号の説明】
5…水供給管、6…導水管、7…酸性水導管、8…アルカリ水導管、9…ミネラル水導管、10…浄水器、11…ケース、12…活性炭、13,33…中空糸膜、20…無隔膜電解槽、30…ミネラルカートリッジ、31…ミネラル供給材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 原水を浄化する浄化部と、この浄化部の下流側に設けられ前記浄化された水をアルカリ性水と酸性水とに電気分解する電解槽と、この電解槽の下流側に設けられ前記電解槽からの酸性水をミネラル供給材に接触せしめるミネラル供給部と、このミネラル供給部からのミネラル水溶液と前記電解槽からのアルカリ性水とを合流せしめる合流部とからなることを特徴とするアルカリミネラル水生成装置。
【請求項2】 原水を浄化する浄化部と、この浄化部の下流側に設けられ前記浄化された水をアルカリ性水と酸性水とに電気分解する電解槽と、この電解槽の下流側に設けられ前記電解槽からの酸性水をミネラル供給材に接触せしめるミネラル供給部と、このミネラル供給部からのミネラル水溶液を前記電解槽に供給する戻し手段とからなることを特徴とするアルカリミネラル水生成装置。
【請求項3】 請求項1に記載のアルカリミネラル水生成装置において、前記電解槽からのアルカリ水導管には捨て水用コックが設けられていることを特徴とするアルカリミネラル水生成装置。
【請求項4】 請求項1または請求項2に記載のアルカリミネラル水生成装置において、前記電解槽は無隔膜電解槽であることを特徴とするアルカリミネラル水生成装置。
【請求項5】 請求項1または請求項2に記載のアルカリミネラル水生成装置において、前記浄化部及びミネラル供給部はカートリッジタイプであることを特徴とするアルカリミネラル水生成装置。
【請求項6】 請求項1または請求項2に記載のアルカリミネラル水生成装置において、前記浄化部及びミネラル供給部には活性炭及び中空糸膜が配置されていることを特徴とするアルカリミネラル水生成装置。
【請求項7】 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアルカリミネラル水生成装置において、前記ミネラル供給材はサンゴ石、リン酸カルシウムまたは麦飯石であることを特徴とするアルカリミネラル水生成装置。
【請求項8】 原水を浄化する工程と、浄化した水をアルカリ性水と酸性水とに電気分解する工程と、得られた酸性水をミネラル供給材に接触させてミネラル水溶液を得る工程と、このミネラル水溶液に前記アルカリ性水を合流させてアルカリミネラル水を得る工程とを備えることを特徴とするアルカリミネラル水生成方法。
【請求項9】 請求項8に記載のアルカリミネラル水生成方法において、前記電気分解はミネラル水溶液に対しても行われることを特徴とするアルカリミネラル水生成方法。
【請求項10】 請求項8に記載のアルカリミネラル水生成方法において、前記電気分解によって得られた酸性水のpH値は3.5以下であることを特徴とするアルカリミネラル水生成方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開平9−271777
【公開日】平成9年(1997)10月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−82172
【出願日】平成8年(1996)4月4日
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)