説明

アルカリ中で安定なアルコキシラート

一般式(I)で示されるC2n+1O(A)(B)R (I)[ここでRはC1〜6−アルキル又はベンジルであり、Aはエチレンオキシであり、BはC3〜6−アルキレンオキシ又はその混合物であり、その際に基A及びB ランダム分布、交互又は2つもしくはそれ以上のブロックの形で任意の順序で存在していてよい、nは4〜8の範囲内の整数であり、xは0〜25の範囲内の数であり、yは0〜10の範囲内の数であり、その場合にx+yは少なくとも3である]で示されるアルカノールを含まないアルコキシラートが記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ中で安定なアルコキシラート、それらの製造方法、それらの使用並びにアルコキシラートを含有している配合物に関する。
【0002】
表面の迅速な湿潤は、毎日の生活の多くの分野において及び多くの工業的プロセスにおいて、例えば基体の清浄化又はコーティングの際に、中心的な役割を果たす。故に多くの配合物中で、異なる多量のエタノール又はイソプロパノールのようなアルコールが、例えば界面張力又は表面張力を低下させ、ひいては配合物の湿潤能を改善するために、使用される。その際に水性配合物にしばしばより多量のこれらのアルコールを混合することが普通である。しかしながら、アルコールの生理学的作用は憂慮されるべきであり、かつそのような配合物の使用者の暴露はアルコールの高い蒸気圧によって高い。故に、今日、例えば使用者により直接に取り扱われる配合物中に、僅かな量に過ぎないアルコールが存在するか又はアルコールが存在しないべきである。極めて迅速に湿潤する配合物のため、例えば印刷工業における保湿剤又はコーティング配合物、例えば噴霧塗装用の添加剤のためには、しかしながらこれらは依然として必要な成分である。
【0003】
数年来、アセチレン及びアルデヒドから製造されることができる極めて疎水性のコンパクトなアルコールの極めて良好な湿潤作用が公知である。この場合に特にジヒドロキシアルキンが重要である。しかしながらこれらの生成物は、全ての洗剤配合物と相溶性でなく、かつしばしば可溶化剤、例えばクメンスルホネート、エチレングリコール等の助けを借りてのみ使用されることができる。しばしば、その際に湿潤助剤と比較してより多量の可溶化剤が使用されなければならないので、ジヒドロキシアルキンの使用により高い一連のコストとなる。そのうえ、湿潤助剤の作用はより多量の可溶化剤とブレンドする場合に劣悪化する。
【0004】
水性配合物の湿潤速度を高めるための常用の方法は、界面上に蓄積し、かつその際に界面張力を低下させる界面活性剤の使用にある。水性配合物へのアルコール、例えばエタノール又はイソプロパノールの混合により、生じる水/溶剤−混合物は水に比較してより低い表面張力を有し、ひいては改善される湿潤挙動を示す一方で、界面活性剤系の使用の際の湿潤又は表面被覆は時間依存性である。界面活性剤分子は、まず最初に表面上へ拡散し、かつそこで界面膜を形成しなければならず、それにより界面張力もしくは表面張力が水及び空気の接触の場合に低下する。極めて迅速なプロセス、例えばカーテンコーティング−プロセスにおける塗料の、例えば噴霧プロセス又は湿潤プロセスの場合に、表面張力又は界面張力が界面活性剤系により平衡値に低下される時間が決定的である。界面活性剤系の動力学はその場合に湿潤速度にとって大きく重要である。
【0005】
目下のところ、低級アルコールのアルコールエトキシラートは適している湿潤剤として使用される。しかしながらそのような生成物は、製造に制約されてしばしば、迅速な湿潤に再び決定的に寄与し、かつ場合により極めて短い湿潤時間でただ一つの湿潤成分であるアルコール量を含有する。
【0006】
4〜8−アルキルグリコール又はC4〜8−ジグリコールに対して、1〜8の平均アルコキシル化度までの、C2〜5−アルコキシドでのC4〜8−アルキルグリコール又はC4〜8−ジグリコールのアルコキシル化により得ることができるアルキルグリコールアルコキシラート又はアルキルジグリコールアルコキシラートの、水性配合物中での使用は、WO 03/60049から公知である。
【0007】
しかしながらアルカリ性配合物中でポリアルコキシラートは、しばしば十分に安定ではない。ポリアルコキシラートの化学的不安定性は、末端アルコール官能基の脱プロトン化の結果としての鎖分解に基づく。
【0008】
本発明の課題は、界面張力の減少及び界面張力の調節の促進のために、例えば水性界面活性剤配合物又は水性分散液中で使用されることができ、かつアルカリ性媒体に対して改善された安定性を示す、アルカノールを含まないアルコキシラートの提供である。アルカリに対する安定性の改善に、好ましくは異なる基体表面の湿潤挙動の本質的な妨害が付随して現れるべきではない。
【0009】
前記課題は、本発明によれば、一般式(I)
2n+1O(A)(B)R (I)
[ここで次の意味を有する:
RはC1〜6−アルキル又はベンジルであり、
Aはエチレンオキシであり、
BはC3〜6−アルキレンオキシ又はそれらの混合物であり、
その場合に基A及びBは、ランダム分布、交互又は2つもしくはそれ以上のブロックの形で任意の順序で存在していてよい、
nは4〜8の範囲内の整数であり、
xは0〜25の範囲内の数であり、
yは0〜10の範囲内の数であり、
その場合にx+yは少なくとも3である]で示されるアルカノールを含まないアルコキシラートにより解決される。
【0010】
その際に、Rは線状又は分枝鎖状であってよいC1〜6−アルキル基であるか、又はベンジル基である。好ましくは、Rは、C1〜3−アルキル基、特に線状のC1〜3−アルキル基、殊にメチル、エチル又はプロピル、特別にメチルである。
【0011】
Bは、C3〜6−アルキレンオキシ又はそれらの混合物、好ましくはプロピレンオキシ又はブチレンオキシ、特にプロピレンオキシを意味する。
【0012】
xは0〜25、好ましくは3〜25、特に好ましくは5〜15、殊に5〜12の範囲内の数である。
【0013】
yは0〜10、好ましくは0、1又は2の範囲内の数である。
【0014】
基C2n+1は、線状又は1回もしくは複数回分枝鎖状のアルキル基であってよく、その際に線状又は分枝鎖状のアルキル基の混合物も存在していてよい。特に好ましくは、線状の、ひいては末端のアルキル基が存在する。
【0015】
一般式(I)の本発明による化合物は、例えば、単位A及びBに相当するアルキレンオキシドでの一般式C2n+1OHのアルコールのアルコキシル化により得られる。その際に、アルコキシル化に例えば硫酸ジメチルでの、エーテル化が続く。
【0016】
x及びyの値は平均値である、それというのもアルカノールのアルコキシル化の際に通例アルコキシル化度の分布が得られるからである。故に、x及びyは整数値から偏差を示しうる。アルコキシル化度の分布はある程度、異なるアルコキシル化触媒の使用により調節されることができる。エチレンオキシドに加えて、1つ又はそれ以上のより長鎖のアルキレンオキシドもアルコキシル化に使用される場合には、異なるアルキレンオキシド基はランダム分布、交互又は2つもしくはそれ以上のブロックの形で任意の順序で存在していてよい。特に好ましくは、エチレンオキシドのみでアルコキシル化されるので、純粋な(ポリ)エチレンオキシド−基が存在する。同族体分布の平均値は、示された数x及びyにより表される。
【0017】
アルコキシル化は、例えば、アルカリ性触媒、例えばアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属アルコラートの使用下に実施されることができる。これらの触媒の使用により、特にアルコキシル化度の分布の、特別な性質が生じる。
【0018】
そのうえ、アルコキシル化は、それから生じる特別な性質を有するルイス−酸性触媒反応の使用下に、特にBF×HPO、BFジエーテラート、BF、SbCl、SnCl×2HO、ハイドロタルサイトの存在で、実施されることができる。触媒として適しているのは、また、複金属シアン化物(Doppelmetallcyanid)(DMC)−化合物である。
【0019】
その場合に過剰のアルコールは留去されることができるか、又はアルコキシラートは、二段プロセスにより取得されることができる。例えばEO及びPOからの、混合されたアルコキシラートの製造も可能であり、その場合にアルカノール基に、まず最初にプロピレンオキシド−ブロック及び引き続いてエチレンオキシド−ブロックが接続されることができるか、又はまず最初にエチレンオキシド−ブロック及びついでプロピレンオキシド−ブロックが接続されることができる。ランダム/統計学的分布も可能である。好ましい反応条件は以下に示されている。
【0020】
好ましくはアルコキシル化は、好都合にはアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の形で、アルカノールR−OHの量に対して、通例0.1〜1質量%の量で添加される強塩基により触媒される(G.Gee 他, J. Chem. Soc. (1961), 1345頁; B. Wojtech, Makromol. Chem. 66, (1966), 180頁参照)。
【0021】
付加反応の酸性触媒反応も可能である。ブレーンステッド酸に加えて、ルイス酸、例えばAlCl又はBFも適している。(P.H.Plesch, The Chemistry of Cationic Polymerization, Pergamon Press, New York (1963)参照)。
【0022】
DMC−化合物として、当業者に公知の原則的に全ての適している化合物が使用されることができる。
【0023】
触媒として適しているDMC−化合物は、例えばWO 99/16775及びDE-A-10117273に記載されている。特に、アルコキシル化のためには次の一般式の複金属シアン化物−化合物が触媒として適している:
[M(CN)(A)・fM・h(HO)・eL・kP
ここで
・Mは、Zn2+、Fe2+、Fe3+、Co3+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Sn2+、Pb2+、Mo4+、Mo6+、Al3+、V4+、V5+、Sr2+、W4+、W6+、Cr2+、Cr3+、Cd2+、Hg2+、Pd2+、Pt2+、V2+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、La3+、Ce3+、Ce4+、Eu3+、Ti3+、Ti4+、Ag、Rh2+、Rh3+、Ru2+、Ru3+からなる群から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
・Mは、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Mn2+、Mn3+、V4+、V5+、Cr2+、Cr3+、Rh3+、Ru2+、Ir3+からなる群から選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
・A及びXは互いに独立して、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸塩イオン、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、シアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオン、硝酸イオン、ニトロシルイオン、硫酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン又は炭酸水素イオンからなる群から選択されるアニオンであり、
・Lは、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、ポリエーテル、エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素、アミド、第一アミン、第二アミン及び第三アミン、ピリジン−窒素を有する配位子、ニトリル、硫化物、リン化物、ホスフィット、ホスファン、ホスホネート及びホスフェートからなる群から選択される、水と混和性の配位子であり、
・kは、0より大きいか又は0に等しい分数又は整数であり、かつ
・Pは、有機添加剤であり、
・a、b、c、d、g及びnは、化合物(I)の電気的中性が保証されているように選択されており、その際にc=0であってよく、
・e、配位子分子の数は、0より大きいか又は0の分数又は整数であり、
・f、h及びmは、互いに独立して0より大きいか又は0の分数又は整数である。
【0024】
有機添加剤Pとして次のものを挙げることができる:ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアルキレングリコールソルビタンエステル、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)、ポリアクリル酸、ポリ(アクリルアミド−コ−マレイン酸)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ(N−ビニルピロリドン−コ−アクリル酸)、ポリビニルメチルケトン、ポリ(4−ビニルフェノール)、ポリ(アクリル酸−コ−スチレン)、オキサゾリンポリマー、ポリアルキレンイミン、マレイン酸−及び無水マレイン酸コポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアセテート、イオン性表面−及び界面活性な化合物、胆汁酸又はその塩、エステル又はアミド、多価アルコールのカルボン酸エステル及びグリコシド。
【0025】
これらの触媒は結晶質又は無定形であってよい。kがゼロに等しい場合には、結晶質の複金属シアン化物−化合物が好ましい。kがゼロより大きい場合には、結晶質の、部分結晶質の、並びに実質的に無定形の触媒が好ましい。
【0026】
変性された触媒の中には異なる好ましい実施態様が存在する。好ましい一実施態様は、kがゼロより大きい前記式の触媒である。前記の好ましい触媒は、少なくとも1つの複金属シアン化物−化合物、少なくとも1つの有機の配位子及び少なくとも1つの有機添加剤Pを含有する。
【0027】
好ましい他の実施態様の場合に、kはゼロに等しく、場合によりeもゼロに等しく、かつXは専らカルボン酸イオン、好ましくはギ酸イオン、酢酸イオン及びプロピオン酸イオンである。そのような触媒はWO 99/16775に記載されている。この実施態様の場合に、結晶質の複金属シアン化物−触媒が好ましい。さらに、WO 00/74845に記載されているような、結晶質であり、かつ小板状である複金属シアン化物−触媒が好ましい。
【0028】
場合により有機配位子L並びに有機添加剤Pを含有していてよい、変性された触媒の製造は、金属塩−溶液とシアノメタノラート−溶液との合一により行われる。引き続いて、有機配位子及び場合により有機添加剤が添加される。触媒製造の好ましい一実施態様の場合に、例えばPCT/EP01/01893に記載されたように、まず最初に不活性な複金属シアン化物−相が製造され、これは引き続いて再結晶により活性な複金属シアン化物相へ変換される。
【0029】
触媒の好ましい他の実施態様の場合に、f、e及びkはゼロに等しくない。これらは、水と混和性の有機配位子(一般的に0.5〜30質量%の量で)及び有機添加剤(一般的に5〜80質量%の量で)を含有する複金属シアン化物−触媒であり、例えばWO 98/06312に記載されている。前記触媒は、US 5,158,922に記載されているように、激しく撹拌しながら(Turraxを用いて24000rpm)又は撹拌しながら製造されることができる。
【0030】
特に触媒としてアルコキシル化のために適しているのは、亜鉛、コバルト又は鉄又はそれらの2つを含有する複金属シアン化物−化合物である。特に適しているのは、例えば紺青である。
【0031】
好ましくは結晶質のDMC−化合物が使用される。好ましい一実施態様において、別の金属塩成分として酢酸亜鉛を含有する触媒としてZn−Co−型の結晶質のDMC−化合物が使用される。そのような化合物は、単斜晶構造で結晶化し、かつ小板状の晶癖を有する。そのような化合物は、例えばWO 00/74845又はPCT/EP01/01893に記載されている。
【0032】
触媒として適しているDMC−化合物は、原則的に当業者に公知の全ての種類で製造されることができる。例えば、DMC−化合物は、直接沈殿、"初期湿潤(incipient wetness)"−法により、前駆物質−相の製造及び引き続いて再結晶により、製造されることができる。
【0033】
DMC−化合物は、粉末、ペースト又は懸濁液として使用されることができるか又は成形体へ成形されることができるか、成形体、フォーム等中へ導入されることができるか又は成形体、フォーム等上に塗布されることができる。
【0034】
最終量パラメーターに対するアルコキシル化に使用される触媒−濃度は、典型的には2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、特に500ppm未満、特に好ましくは100ppm未満、例えば50ppm未満である。
【0035】
付加反応は、約90〜約240℃、好ましくは120〜180℃の温度で、密閉容器中で実施される。アルキレンオキシド又は異なるアルキレンオキシドの混合物は、本発明によるアルカノール混合物及びアルカリからなる混合物に、選択された反応温度で支配的なアルキレンオキシド混合物の蒸気圧下に供給される。所望の場合には、アルキレンオキシドは不活性ガスで約30〜60%までで希釈されることができる。それにより、アルキレンオキシドの爆発のような重付加に対する付加的な安全性が与えられる。
【0036】
アルキレンオキシド混合物が使用される場合には、異なるアルキレンオキシド構成要素が事実上ランダムに分布されているポリエーテル鎖が形成される。ポリエーテル鎖に沿った構成要素の分布の変化は、成分の異なる反応速度に基づいてもたらされ、かつ、プログラム制御された組成のアルキレンオキシド混合物の連続供給によっても任意に達成されることができる。異なるアルキレンオキシドが連続して反応される場合には、アルキレンオキシド−構成要素のブロック状分布を有するポリエーテル鎖が得られる。
【0037】
ポリエーテル鎖の長さは、反応生成物の内部で、本質的には添加量からもたらされる化学量論的な値に相当する平均値付近でランダムに変動する。
【0038】
一般式(I)の化合物の製造のためには、C4〜8−アルキルグリコール又はC4〜8−アルキルジグリコールに対して、好ましくは1〜24もしくは23の平均アルコキシル化度までの、C2〜5−アルコキシドでのC4〜8−アルキルグリコール又はC4〜8−アルキルジグリコールのアルコキシル化により得ることができるアルキルグリコールアルコキシラート又はアルキルジグリコールアルコキシラートも使用されることができる。これらはついでエーテル化され、その際に末端ヒドロキシル基中でHはRにより置換される。
【0039】
次の説明は、同じようにアルキルジグリコール、例えばアルキルグリコールもしくはそれらのアルコキシラートに関する。
【0040】
母体となるアルキルグリコールは、線状又は分枝鎖状のアルキルグリコールであってよい。グリコールへのC4〜8−アルキル基の結合は、末端で又はアルキル鎖に沿った他の位置で行われることができる。好ましくは、線状のアルキルグリコール、特に線状の末端アルキルグリコールが重要である。好ましくは、アルキルグリコールのアルキル基は炭素原子5〜8個を有する。アルコキシル化度は、グリコールもしくはジグリコールに対して、好ましくは平均して2〜24もしくは1〜23、特に好ましくは4〜14もしくは3〜13である。その際にアルコキシル化のために、好ましくはC2〜4−アルコキシドが使用されることができる。好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はそれらの混合物が使用される。特に好ましくはエチレンオキシドが使用される。好ましい範囲は、アルキルグリコールアルコキシラート及びアルキルジグリコールアルコキシラートにもそれ自体として関係する。
【0041】
製造はここでは、アルコールを含まない、好ましくは純粋なアルキルグリコール及びアルキルジグリコールから出発し、かつ前記のように、アルカノールから出発しないで、アルコキシル化により行われる。故に、生成物混合物はまた残留しているアルカノールを含有しないのではなくて、せいぜいアルキルグリコールを含有する。アルキルグリコールにとってアルコキシル化度の特異的な分布がもたらされる。製造方法により、アルキルグリコールアルコキシラートはアルコールを含まない。
【0042】
アルコキシラートは、アルコキシドとのオリゴマー反応生成物又はポリマー反応生成物である。当業者に公知の重合の速度論に基づいて、必然的に同族体のランダム分布となり、その平均値が通常示される。同族体の頻度分布は、特に低いアルコキシル化度の場合に出発物質を含む。触媒の選択により、確かに分布は、ある程度影響を受けうるが、しかし分布曲線の原理について何も変わらない。純粋なアルキルオリゴグリコールは、蒸留による又はクロマトグラフィーによる後処理によってのみ製造されることができ、故に高価である。そのうえ、同族体の分布が凝集挙動に有利な影響を有することが示されている。
【0043】
この実施態様において記載されたエーテル化されたアルコキシラートは、アルコールを含有することなく、凝集挙動及び他の本発明による性質にとって重要な同族体分布を有する。
【0044】
他の方法により得られる生成物は、残っているアルカノールが含まれない。
【0045】
“アルカノールを含まない”という表現は、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定可能な量のアルカノール、特にC2n+1OHを有しないアルコキシラートに関する。
【0046】
アルコキシル化度の分布の決定は、クロマトグラフィーによる方法により行われることができる。
【0047】
アルカノールアルコキシラート及びアルキルグリコールアルコキシラートの間の比較については、WO 03/60049が指摘される。
【0048】
生成物混合物中にアルコールが存在しないので、これは大体において臭いを含まない。式(I)の化合物は、−特に挙げられた用途において−界面活性剤との組合せで使用されることができる。界面活性剤として、本発明によれば、水5g/lの量で溶解されて20℃で45mN/m未満の界面張力を示す全ての界面活性剤が使用されることができる。界面活性剤は、一般的に、アルコキシル化アルコール、アミド、酸、ベタイン、アミノキシド又はアミン、しかしまたジヒドロキシアルキン及び誘導体及びそれらの混合物であってよい。界面張力の最終レベルの調節の速度は、その際に分子構造、例えば連鎖長及びアルコールの分枝度、アルコキシラートの長さ及び溶媒化、界面活性剤濃度及び界面活性剤凝集に依存しうる。一般的に、より小さな凝集体はより大きな凝集体よりも迅速に拡散する。
【0049】
好ましくは界面活性剤は非イオン性界面活性剤であり、かつ平均して3〜40、好ましくは4〜15、特に5〜12のアルコキシル化度を有する、C9〜20−、好ましくはC9〜15−、特にC9〜13−アルカノールの、C2〜5−、好ましくはC2〜4−アルコキシラート、及びそれらの混合物から選択されている。これらは線状又は分枝鎖状のアルカノールであってよい。分枝鎖状アルコールの場合に、分枝度は、好ましくは1.1〜1.5の範囲内である。アルコキシル化は、任意のC2〜4−アルコキシド及びそれらの混合物を用いて行われることができる。例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドを用いてアルコキシル化されることができる。特に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はそれらの混合物が使用される。エチレンオキシドが殊に好ましい。そのような非イオン性界面活性剤は公知であり、かつ例えばEP-A 0 616 026及びEP-A 0 616 028に記載されている。これらの刊行物においてより短鎖のアルキルアルコキシラートも挙げられている。
【0050】
界面活性剤として使用される非イオン性界面活性剤は、ジヒドロキシアルキン又はそれらの誘導体によっても置換されていてよい。さらに低泡性又は抑泡性の界面活性剤が重要である、EP-A 0 681 865も参照。低泡性及び抑泡性の界面活性剤は当業者に公知である。
【0051】
本発明は、アルカリ性の、溶剤又は希釈剤を含有する配合物中のアルカノールを含まないアルコキシラートの使用にも関する。その際に、これらは特に配合物の湿潤作用の改善のために使用される。配合物は通例、水又は有機の溶剤又は希釈剤を含有する。これらの配合物のpH−値は好ましくは10を上回り、特に12を上回る。
【0052】
適している配合物は、例えばアルコキシラート並びに少なくとも1つの界面活性剤及び水を含有する。
【0053】
本発明はさらに、本発明によるアルコキシラートを含有している、洗剤、脱脂剤、金属清浄化(Metallreinigungs-)剤又は湿潤剤又は植物保護配合物に関する。
【0054】
本発明はさらに、本発明によるアルコキシラートを含有している、ラッカー、ペイント配合物、噴霧用途、鉱物後処理、印刷工業、製紙工業及び木材工業用の又は被覆用の配合物、コーティング剤、接着剤、革処理剤、金属処理剤、金属加工剤、発泡助剤又は繊維処理剤に関する。
【0055】
コーティング剤は例えば、噴霧用途用の配合物であってよい。
【0056】
塗料配合物は特に、ブレードコーティング、スプレーコーティング又はカーテンコーティングにより塗布される塗料配合物であってよい。
【0057】
前記課題はさらに、本発明によれば、特に通常1秒未満の短い時間での、界面張力の減少のため及び水性界面活性剤配合物又は水性分散液における界面張力の調節の促進のための前記アルコキシラートの使用により解決される。
【0058】
前記課題はさらに、水性湿潤剤における湿潤速度を高めるための前記アルコキシラートの使用により解決される。
【0059】
本発明によるアルコキシラートは、高動的な(hochdynamische)配合物が、特にアルカリ性条件下で、使用される全ての分野の試剤の配合物に利用されることができる。このための例は次の通りである:
・多目的洗剤、金属加工を含めて工業的な及び施設向きの分野における清浄化のための噴霧洗剤、
・印刷工業における印刷ローラー洗剤及び印刷プレート洗剤、
・ラッカー、ペイント配合物、例えば紙用の、コーティング剤、例えば紙塗工塗料(Papierstreichfarben)、木材結合剤、特にホルムアルデヒド樹脂、塗料工業及びフィルム工業における、例えば分散形の、接着剤、
・噴霧用途用の配合物、
・金属処理もしくは金属加工、例えば防食配合物、切削助剤、研削助剤又はボーリング助剤、ボーリング液及び潤滑剤もしくは冷却潤滑剤、
・繊維工業における配合物、
・例えばシアン化物法による、鉱石の浸出のための配合物、
・微粒状の顔料及びデンプンを結合させるための顔料又は粒子の親水化のための配合物。
【0060】
そのような配合物は通常、別の成分、例えば界面活性剤、錯化剤、ポリマー及び他の成分を含有する。
【0061】
一般的に、本発明による混合物は、界面活性物質の作用が、特にアルカリ性条件下で、必要である全ての範囲内で使用されることができる。
【0062】
非界面活性剤構造の使用により、本発明による配合物は、例えばEP-A 0 616 026に記載された系と比較してより良好な環境適合性及び皮膚相溶性を有する。普通の可溶化剤、例えばクメンスルホネートとは異なり、界面活性剤との相互作用は特異的に行われる。それ故、本発明により使用されるアルコキシル化されるアルキルグリコールは、界面の被覆に積極的に決定的な影響を及ぼし、かつ界面平衡の調節を促進する。
【0063】
アルコール残留含量が本発明による混合物又は配合物中に存在することは、本発明によれば不必要であり、かつ望ましくない。一実施態様によれば、本発明による混合物、試剤及び配合物は、アルコール及び好ましくはまたアルキルグリコールもしくはジグリコール、特にC4〜8−アルキルグリコール及びC9〜13−アルカノールを含まない。本発明によれば、通常低級アルコールアルコキシラートの場合に製造に制約されて生成物中に含まれているアルコールの残留含量なしに、本発明によるアルキルグリコールアルコキシラートの使用により高い界面動力学を有する界面活性剤配合物が配合されることができることが見出された。
【0064】
本発明による湿潤作用はその場合に、表面張力の動的測定により、例えば泡沫圧力張力計(Blasendrucktensiometer)の使用により決定されることができる。相応する手順は、例えばS.S. Dukhen, G. Kretzschmar, R. Miller (編), Dynamics of adsorption at liquid interfaces, Elsevier, 1995に記載されている。表面上への湿潤作用はその場合に、界面張力の動的測定により決定されることができる。そのような一方法は、ビデオを用い、時間解像されたぬれ角測定(Randwinkelmessung)である。
【0065】
本発明は、表面精密加工におけるアルコキシラートの使用にも関する。本発明はそれ故、水、顔料、結合剤及び、顔料に対して0.05〜5質量%の本発明によるアルコキシラートを含有する水性の塗工−分散液であるコーティング剤に関する。配合物はその場合に、天然又は合成の結合剤又はそれらの混合物を含有していてよい。別の可能な成分はレオロジー助剤(Rheologiehilfsmittel)、分散剤、増粘剤等である。
【0066】
コーティング剤において、目下、"スプレーコーティング"−法における液滴の大きさが、噴霧−ラッカー又は−ペイント配合物の同時に低い泡欠乏の場合に著しい影響を受けうる。
【0067】
コーティング剤中で使用される顔料は、通常主成分である。通常使用される全ての顔料、例えば炭酸カルシウム類、カオリン、タルク、二酸化チタン、セッコウ、白亜、カーボンブラック又は合成顔料が単独で又は混合物で使用されることができる。
【0068】
アルコキシラートは、配合物に対して、通常0.05〜5%の量で、好ましくは0.1〜2%の量で使用される。その場合に、アルコキシラートは、配合物の製造プロセスの間に直接にも(及び/又は)、塗工液の成分(例えば顔料スラリー及び/又は結合剤)との混合物でも添加されることができる。
【0069】
実施例
本発明は、以下に例に基づいてより詳細に説明される:
例1
化学安定性
本発明によるアルキルアルコキシラート(ヘキサノール+9 EO、硫酸ジメチルでメチル化)を、5%NaOH中に溶解させる。異なる時間後のGPC−検査からは、ピーク構造の変化が観察されることができないことがわかる。
【0070】
例2
界面活性作用
本発明によるアルコキシラート(上記参照)の0.5%溶液から、界面張力を泡沫圧力張力計(Tz. H. Iliev, C.D. Dushkin, Colloid Polym. Sci 270 (1992) 370)を用いて時間解像して決定する。72mN/mから32mN/mへの界面張力の低下が最初の20ms以内で見出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
2n+1O(A)(B)R (I)
[ここで次の意味を有する:
RはC1〜6−アルキル又はベンジルであり、
Aはエチレンオキシであり、
BはC3〜6−アルキレンオキシ又はそれらの混合物であり、
その場合に基A及びBは、ランダム分布、交互又は2つのもしくはそれ以上のブロックの形で任意の順序で存在していてよい、
nは4〜8の範囲内の整数であり、
xは0〜25の範囲内の数であり、
yは0〜10の範囲内の数であり、
その場合にx+yは少なくとも3である]で示される、アルカノールを含まないアルコキシラート。
【請求項2】
一般式(I)中で
RがC1〜3−アルキルであり、
BがC3〜4−アルキレンオキシであり、
xが3〜25の範囲内の数であり、
yが0〜5の範囲内の数である、
請求項1記載のアルコキシラート。
【請求項3】
一般式(I)で示される化合物が、一般式(II)
2n+1O(A)(B)H (II)
で示される化合物から、単位A及び/又はBの母体となるアルキレンオキシドでのC4〜8−アルキルグリコール又はC4〜8−アルキルジグリコールのアルコキシル化により得ることができるアルキルグリコールアルコキシラート又はアルキルジグリコールアルコキシラートの形で誘導される、請求項1又は2記載のアルコキシラート。
【請求項4】
一般式(I)の化合物が、DMC−触媒されるアルコキシル化により製造可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載のアルコキシラート。
【請求項5】
一般式(II)
2n+1O(A)(B)H (II)
[ここで基は前記の意味を有する]で示される化合物を、末端ヒドロキシル基の水素原子がRにより置換されるアルキル化剤でエーテル化することにより、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシラートを製造する方法。
【請求項6】
アルカリ性の、溶剤又は希釈剤、好ましくは水を含有している配合物中での請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシラートの使用。
【請求項7】
アルコキシラートを配合物の湿潤作用の改善に利用する、請求項6記載の使用。
【請求項8】
界面張力の減少及び水性界面活性剤配合物又は水性分散液中での界面張力の調節の促進のため、顔料又は粒子の親水化のため又は微粒状の顔料及び塵芥の結合のための、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシラートの使用。
【請求項9】
請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシラート、少なくとも1つの界面活性剤並びに水を含有している、配合物。
【請求項10】
請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシラートを含有している、洗剤、脱脂剤、金属清浄化剤又は湿潤剤又は植物保護配合物。
【請求項11】
請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシラートを含有している、ラッカー、ペイント配合物、噴霧用途、鉱物後処理、印刷工業、製紙工業及び木材工業用の又は被覆用の配合物、コーティング剤、接着剤、革処理剤、金属処理剤、金属加工剤、発泡助剤又は繊維処理剤。
【請求項12】
水性湿潤剤における湿潤速度を高めるための、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシラートの使用。
【請求項13】
水、顔料、結合剤及び、顔料に対して0.05〜5質量%の請求項1から4までのいずれか1項記載のアルコキシラートを含有する水性配合物である、請求項11記載のコーティング剤。
【請求項14】
噴霧用途用の配合物である、請求項13記載のコーティング剤。
【請求項15】
ブレードコーティング又はカーテンコーティングにより塗布される塗料配合物である、請求項11記載の塗料配合物。

【公表番号】特表2007−505069(P2007−505069A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525731(P2006−525731)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009904
【国際公開番号】WO2005/026094
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】