説明

アルカリ乾電池

【課題】アルカリ乾電池において、誤って電池を逆接続した場合や過充電した場合に発生するガスの抑制と漏液の抑制とを図り、電池の安全性を確保できるようにすることを目的とする。
【解決手段】有底筒状の正極缶体に、中空円筒状の正極合剤と、正極合剤の中空部分に配置された負極合剤と、正極と負極との間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液と、を収容したアルカリ乾電池であって、正極合剤の外周面の少なくとも一部に高抵抗部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ乾電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ乾電池では、誤って電池を逆接続や過充電した場合にはその構造上の理由から水素ガスが発生するおそれがあり、水素ガスが発生すると内圧が上昇して危険な状態に陥るので、水素ガスが発生してもアルカリ乾電池の安全性を確保できるように工夫されている。
【0003】
詳細には、アルカリ乾電池では、負極の活物質として亜鉛を用い、電解液として強アルカリ電解液を用いており、電解液は負極に接触している。アルカリ乾電池を誤って逆接続や過充電した場合には、通常の電池反応とは反対の反応が進行し、負極側では亜鉛電析反応が進行する。亜鉛電析後には水素過電圧以上に負極電位が下がることで水素発生電位に到達し、水素ガスが発生する場合がある。アルカリ乾電池は密閉されているので、アルカリ乾電池内で水素ガスが発生するとアルカリ乾電池内の気圧が上昇し、アルカリ乾電池の危険性が高い状態に陥ってしまう。アルカリ乾電池では、万一アルカリ乾電池の内圧が上昇したときには、安全弁が開いてアルカリ乾電池内の気圧を下げるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−98452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成のアルカリ乾電池を誤って逆接続や過充電した場合には、発生するガスは安全弁の開裂によって放出され、アルカリ乾電池内の気圧の上昇は抑制される。しかしながら、逆接続に伴うガス発生反応は抑制していないので、逆接続に伴う電池内部反応が急速に進行した場合には、ガス放出と共に電解液が漏出する可能性があった。
【0006】
また、上記構成のアルカリ乾電池を、水中ライトやカメラを水中で撮影する際に用いる水中ハウジングのような気密性の高い構造を有する構造体で逆接続や過充電した場合には、アルカリ乾電池から放出されるガスにより構造体の内圧が上昇し、高気密構造体自体が破損する可能性があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、アルカリ乾電池において逆接続や過充電によって発生するガスの抑制と、漏液の抑制をすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアルカリ乾電池は、有底筒状の正極缶体に、中空円筒状の正極と、前記正極の中空部分に配置された負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液と、を収容したアルカリ乾電池であって、前記正極の外周面の少なくとも一部に高抵抗部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルカリ乾電池が逆接続状態となっても、水素ガス発生を抑制し、アルカリ電解液が漏出することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態における単3形アルカリ乾電池の構成を示す半断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明を完成させるに至った経緯を示す。
【0012】
上述のように、アルカリ乾電池を誤って逆接続や過充電した場合には、水素ガスが発生するおそれがある。水素ガスが発生すると内圧が上昇して危険な状態に陥るので、水素ガスが発生してもアルカリ乾電池の安全性を確保できるように工夫されている。しかし、ガス発生そのものを抑制しているわけではない。以下では、本発明者らが考えている事項を説明する前に、まず、アルカリ乾電池を逆接続させるとアルカリ電解液が漏れる理由を示す。
【0013】
例えば複数のアルカリ乾電池を直列に接続させる回路において、1本のみ逆に接続させて回路を構成した場合を考える。このとき、逆接続させたアルカリ乾電池では、そのアルカリ乾電池とは逆に接続されたことになる他のアルカリ乾電池の電圧が強制的に加わる。その結果、逆接続させたアルカリ乾電池では、通常とは逆の反応が進行する。すなわち、負極側では亜鉛電析反応が進行し、水素過電圧以上に負極電位が下がることで水素発生電位に到達して水素ガスが発生する。一方、正極側では正極活物質の酸化反応が進行し、酸素発生過電圧以上に正極電位が上昇することで酸素発生電位に到達し、酸素ガスが発生する。
【0014】
本発明者らは、逆接続状態において水素ガス発生している負極に電解液に溶存させた酸素ガスを供給した場合、負極側の水素ガス発生が停止することを確認している。また本願発明者らは、逆接続状態において正極側での酸素ガス発生は、正極缶体1の内壁表面で気泡として発生することを確認している。
【0015】
以上の事実をふまえて、本発明者らは、アルカリ乾電池の逆接続放電の際には、正極缶体1内壁表面で気泡として発生した酸素ガスは負極側へ到達しにくく、負極側の水素ガスの発生を抑制できないのみならず、正極側の酸素ガスの発生も加わることで、アルカリ電解液が漏れやすくなると考えた。
【0016】
そして、本発明者らは詳細検討した結果、正極の構成を工夫すれば逆接時における水素ガスの発生を抑制できることを見い出した。以下では、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における単3形アルカリ乾電池の構成を示す半断面図である。
【0018】
単3形アルカリ乾電池は、図1に示すように、一端(図1における下端)が封じられた筒状の正極缶体1を備えており、正極缶体1の外周面には外装ラベル8が被覆されている。正極缶体1は正極端子と正極集電体とを兼ねており、正極缶体1には中空円筒状の正極2が内接している。正極2の中空部にはセパレータ4が設けられており、セパレータ4は一端が封じられた筒状に形成されており、セパレータ4の中空部には負極3が設けられている。以上より、正極缶体1では、周縁から中心に向かうに従って、正極2、セパレータ4および負極3の順に配置されている。
【0019】
正極缶体1の開口(図1における上端)は、組立封口体9により封じられている。組立封口体9は、釘型の負極集電体6と負極端子板7と樹脂性の封口体5とが一体化されたものであり、負極端子板7は負極集電体6に電気的に接続されており、封口体5は負極集電
体6および負極端子板7に物理的に固定されている。単3形アルカリ乾電池を製造する際には、まず正極2および負極3等の発電要素を正極缶体1内に収容し、次に組立封口体9を用いて正極缶体1の開口を封じる。
【0020】
正極2、負極3およびセパレータ4には、アルカリ電解液(不図示)が含まれている。アルカリ電解液としては、水酸化カリウムを30〜40重量%含有し、酸化亜鉛を1〜3重量%含有する水溶液が用いられる。
【0021】
本実施形態における単3形アルカリ乾電池の構成要素を順に説明する。
【0022】
正極缶体1は、例えば、ニッケルがめっきされた鋼板を用いて特開昭60−180058号公報または特開平11−144690号公報に記載の公知の方法を用いて所定の寸法および形状にプレス成形して得られる。
【0023】
正極2には、例えば、電解二酸化マンガンの粉末などの正極活物質、黒鉛粉末などの導電剤、およびアルカリ電解液の混合物が含まれている。また適宜、ポリエチレン粉末等の結着剤またはステアリン酸塩等の滑沢剤が正極2に添加されていても差し支えない。なお、正極2の詳細については、あとで記述する。
【0024】
負極3としては、例えば、アルカリ電解液にポリアクリル酸等のゲル化剤を添加してゲル状に加工し、そのゲル状の物質に亜鉛(負極の活物質)を分散させたものが用いられる。また、亜鉛デンドライトの発生を抑制するためには、微量のケイ酸またはその塩などのケイ素化合物を負極3に適宜添加するとよい。
【0025】
セパレータ4としては、例えば、ポリビニルアルコール繊維およびレーヨン繊維を主体として混抄した不織布が用いられる。セパレータ4は、例えば、特開平6−163024号公報または特開2006−32320号公報に記載の公知の方法により得られる。
【0026】
封口体5の中央には負極集電体6を圧入する貫通孔(不図示)が設けられており、貫通孔の周囲には安全弁として機能する中空円筒状の薄肉部(不図示)が設けられており、中空円筒状の薄肉部の外周には外周縁部(不図示)が連続して形成されている。封口体5は、例えば、ナイロンまたはポリプロピレンなどを所定の寸法および形状に射出成形して得られる。
【0027】
負極集電体6は、真鍮等の金属線材を所定の寸法の釘型にプレス加工して製造される。
【0028】
負極端子板7には、正極缶体1の開口を封じる端子部(不図示)と、端子部(不図示)から延びており封口体5に接触する周縁鍔部とが設けられている。その周縁鍔部には封口体5の安全弁が作動した際の圧力を逃がすガス孔(不図示)が複数個設けてある。負極端子板7は、例えば、ニッケルがめっきされた鋼板またはスズがめっきされた鋼板などを所定の寸法および形状にプレス成形して得られる。
【0029】
本実施の形態における正極は、少なくとも一部に高抵抗部を有する。ここで、アルカリ乾電池が逆接続状態となった場合には、負極電位が水素発生電位に到達し負極側から水素ガスが発生するだけでなく、正極電位は上昇して酸素発生電位に到達し正極側から酸素ガスが発生する。通常では正極側の酸素ガスは反応抵抗が低い正極缶体1の内壁側から多く発生する。上記構成では、正極に含まれる導電剤が部分的に少ない部位、つまり高抵抗部を設けることにより、正極での酸素ガス発生箇所を分散することが可能となる。具体的には、正極内部からの酸素ガス発生が可能となる。ここで酸素ガス発生箇所である正極缶の内壁と正極との界面に比べて正極内部の比表面積は大きいので、発生酸素ガスは電解液中
に溶存し、負極側に到達することが出来る。その結果、負極側からの水素ガス発生反応を抑制することが出来、逆接続時における内圧の上昇を抑制することが可能となり、逆接続時におけるアルカリ電解液の漏れを抑制することができる。
【0030】
本実施形態における正極には、従来の単3形アルカリ乾電池における正極と同じく、正極缶体1内に積層状に装填された複数の中空円筒状の正極ペレットからなり、正極ペレットには電解二酸化マンガンの粉末などの正極活物質以外に、導電剤として黒鉛粉末など炭素材料(カーボン)が含まれている。
【0031】
なお、上記高抵抗部は正極全体の50%以下であると、正極缶体1ならびに正極ペレットを含む正極全体における抵抗成分の分布が均質化されるため、従来酸素発生が集中していた箇所に該当する高抵抗部での酸素発生は確実に低減することができ、逆接続時に発生する酸素ガスの発生箇所を正極全体に分散する効果が得られるという点で好ましい。
【0032】
また、正極缶体1側に相当する正極ペレット外周面の導電剤の含有量が他の位置の正極ペレットより少なく、高抵抗部が正極缶体に接触する側の部位に配置されていると、酸素発生箇所が正極缶体と正極ペレットの外周面との接触する部位に集中することなく正極全体に分散されることから酸素の気泡化を防ぎ、電解液中に溶存しやすくなるため、発生した酸素は効率的に負極側で吸収されるという点で好ましい。
【0033】
さらに、正極缶体1内に積層上に装填された複数(3つ以上)の正極ペレットにおいて、積層の両端に位置する正極ペレットの導電剤含有量が他の位置の正極ペレットよりも少なく、高抵抗部が正極缶体の開口部側および底部側の少なくとも一方に設けられていると、電解液が多く存在するために集中していた酸素発生箇所を正極全体に分散されることから気泡化を防ぎ、溶存酸素化しやすくなるため、発生した酸素は効率的に負極側で吸収されるという点で好ましい。
【0034】
また、正極合剤を構成するペレット数は、黒鉛含有量の分布条件を満たすものであれば、ペレット数に制限はなく効果が得られる。
【0035】
正極を構成する合剤の抵抗の高低においては、正極ペレットの正極缶体に接触する側(中空形状ペレットの外側)と負極対向側(中空形状ペレットの内側)から採取した粉体を用いて平板ペレットを作製し、JISK7194などに記載の四探針法による直流抵抗測定により抵抗の高低を測定できる。
【実施例】
【0036】
本発明の実施例を以下に示す。本実施例では、以下に示す方法に従って単3形アルカリ乾電池を製造した後、製造した単3形アルカリ乾電池を逆接続させて漏液の有無を確認した。
【0037】
(実施例1)
まず、亜鉛の重量に対して0.003重量%のAl、0.015重量%のBiおよび0.020重量%のInを含有する亜鉛合金の粒子を、ガスアトマイズ法によって作製した。その後、篩を用いて、作製した亜鉛合金の粒子を分級させた。この分級により、35〜300メッシュの粒度範囲を有し、且つ、200メッシュ(75μm)以下の粒径を有する亜鉛合金の粒子の比率が30%である負極活物質を得た。
【0038】
その後、34.5重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む)の100重量部に対して、合計重量が2.2重量部となるようにポリアクリル酸とポリアクリル酸ナトリウムとを加えて混合し、ゲル化させた。これにより、ゲル状の電解液を得た。その後
、得られたゲル状の電解液を24時間静置して十分に熟成させた。
【0039】
そして、上記で得たゲル状の電解液に、そのゲル状の電解液の所定量に対して重量比で2.00倍の上記亜鉛合金の粒子と、その亜鉛合金の粒子100重量部に対してリン酸系界面活性剤(平均分子量が約210のアルコールリン酸エステルナトリウム)0.05重量部とを十分に混合した。これにより、ゲル状の負極を得た。
【0040】
次に、電解二酸化マンガン(東ソー(株)製 HHTF(品番))および黒鉛(日本黒鉛工業(株)製 SP−20(品番))を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛を配合した粒状物を中空円筒型の内側に、黒鉛を配合していない粒状物を外側に同じ重量ずつ配置し、加圧成形した。このようにして、内周面に比べて外周面の抵抗が高い正極ペレットを得た。
【0041】
続いて、評価用の単3形アルカリ乾電池の作製を行った。具体的には、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極ペレット(1個の重量が2.95g)を4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。なお、封口板側からそれぞれペレットA、ペレットB、ペレットCおよびペレットDとした。そして、この正極ペレットの内側にセパレータ4と正極缶体1の底部を絶縁するための底紙とを挿入した後、電解液(34.5重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))を1.5g注液した。注液後、セパレータ4の内側にゲル状の負極3を6.2g(亜鉛合金の粒子の重量は4.1g)充填した。その後、封口体5、負極端子板7および負極集電体6が一体化された組立封口体9を用いて正極缶体1の開口を封じた。具体的には、負極集電体6を負極3に差し込み、封口体5の端部を介して正極缶体1の開口の縁に負極端子板7の周縁部をかしめつけて負極端子板7を正極缶体1の開口に密着させた。それから、正極缶体1の外表面に外装ラベル8を被覆し、実施例にかかる単3形アルカリ乾電池を作製し、電池No.1とした。
【0042】
ここで、封口体5としては、6,6−ナイロンを材料として作製した。負極集電体6としては、太さ(φ)が1.425mmであり長さが33mmの釘状で、負極集電体6の重量に対して、Cuの含有重量が65%である真鍮線を用いた。真鍮線の不純物を被覆するため、負極集電体の表面に、厚さが1.0μmとなるようにスズが電解めっきされたものを用いた。セパレータ4としては、クラレ(株)製のアルカリ乾電池用セパレータ(ビニロンとテンセル(登録商標)とからなる複合繊維)を用いた。
【0043】
(実施例2)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉および黒鉛を重量比97:3の割合で配合し、混合粉を得た。そしてこの混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛との配合比94:6である粒状物を中空円筒型の内側に、97
:3である粒状物を外側に同じ重量ずつ配置し、加圧成形した。このようにして、内周面に比べて外周面の抵抗が高い正極ペレットを得た。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.2を作製した。
【0044】
(実施例3)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物をそれぞれ中空円筒型に加圧成形し、正極ペレットを得た。
【0045】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、正極缶体の両端に相当する2個は黒鉛を配合しないペレットを、中心部分に相当する2個は黒鉛との配合比が94:6である正極合剤ペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.3を作製した。
【0046】
(実施例4)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉および黒鉛を重量比97:3の割合で配合し、混合粉を得た。そしてこの混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物をそれぞれ中空円筒型に加圧成形し、正極ペレットを得た。
【0047】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極合剤ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、正極缶体の両端に相当する2個は黒鉛との配合比が97:3である正極合剤ペレットを、中心部分に相当する2個は黒鉛との配合比が94:6であるペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.4を作製した。
【0048】
(実施例5)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉および黒鉛を重量比97:3の割合で配合し、混合粉を得た。そしてこの混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛との配合比94:6である粒状物を中空円筒型の内側に、97:3である粒状物を外側に同じ重量ずつ配置し加圧成形することで、内周面に比べて外周面の抵抗が高い正極ペレットを得た。また、得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛との配
合比97:3である粒状物のみを中空円筒型に加圧成形し、正極合剤ペレットを得た。
【0049】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、中心部分に相当する2個は黒鉛との配合比94:6である粒状物を中空円筒型の内周側に、97:3である粒状物を外周側に配置した正極ペレットを、正極缶体の両端に相当する2個は黒鉛との配合比が97:3であるペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.5を作製した。
【0050】
(実施例6)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比90:10の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物をそれぞれ中空円筒型に加圧成形し、正極ペレットを得た。
【0051】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、正極缶体の両端に相当する2個は黒鉛を配合しないペレットを、中心部分に相当する2個は黒鉛との配合比が90:10である正極合剤ペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.6を作製した。
【0052】
(実施例7)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比90:10の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉および黒鉛を重量比95:5の割合で配合し、混合粉を得た。そしてこの混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物をそれぞれ中空円筒型に加圧成形し、正極ペレットを得た。
【0053】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極合剤ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、正極缶体の両端に相当する2個は黒鉛との配合比が95:5である正極合剤ペレットを、中心部分に相当する2個は黒鉛との配合比が90:10であるペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.7を作製した。
【0054】
(実施例8)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比90:10の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉および黒鉛を重量比95:5の割合で配合し、混合粉を得た。そしてこの混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnO
を2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛との配合比90:10である粒状物を中空円筒型の内側に、黒鉛を配合していない粒状物を外側に同じ重量ずつ配置し加圧成形することで、内周面に比べて外周面の抵抗が高い正極ペレットを得た。また、得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛との配合比95:5である粒状物のみを中空円筒型に加圧成形し、正極合剤ペレットを得た。
【0055】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、中心部分に相当する2個は黒鉛との配合比90:10である粒状物を中空円筒型の内周側に、黒鉛を配合していない粒状物を外周側に配置した正極ペレットを、正極缶体の両端に相当する2個は黒鉛との配合比が95:5であるペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.8を作製した。
【0056】
(実施例9)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比90:10の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。黒鉛との配合比90:10である粒状物を中空円筒型の内側に、黒鉛を配合していない粒状物を外側に同じ重量ずつ配置し加圧成形することで、内周面に比べて外周面の抵抗が高い正極ペレットを得た。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.9を作製した。
【0057】
(実施例10)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比90:10の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉および黒鉛を重量比95:5の割合で配合し、混合粉を得た。そしてこの混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛との配合比90:10である粒状物を中空円筒型の内側に、95:5である粒状物を外側に同じ重量ずつ配置し、加圧成形した。このようにして、内周面に比べて外周面の抵抗が高い正極ペレットを得た。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.10を作製した。
【0058】
(比較例1)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒し、得られた粒状物を加圧して中空円筒型に成形した。このようにして、正極ペレットを得た。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.11を作製した。
【0059】
(比較例2)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛を配合した粒状物を中空円筒型の外側に、黒鉛を配合していない粒状物を内側に同じ重量ずつ配置し、加圧成形した。このようにして、外周面に比べて内周面の抵抗が高い正極ペレットを得た。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.12を作製した。
【0060】
(比較例3)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉および黒鉛を重量比97:3の割合で配合し、混合粉を得た。そしてこの混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物のうち、黒鉛との配合比94:6である粒状物を中空円筒型の外側に、97:3である粒状物を内側に同じ重量ずつ配置し、加圧成形した。このようにして、外周面に比べて内周面の抵抗が高い正極ペレットを得た。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.13を作製した。
【0061】
(比較例4)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物をそれぞれ中空円筒型に加圧成形し、正極ペレットを得た。
【0062】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、正極缶体の両端部分に相当する2個は黒鉛との配合比が94:6である正極合剤ペレットを、中心部分に相当する2個は黒鉛を配合しないペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.14を作製した。
【0063】
(比較例5)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比94:6の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉および黒鉛を重量比97:3の割合で配合し、混合粉を得た。そしてこの混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを
2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物をそれぞれ中空円筒型に加圧成形し、正極ペレットを得た。
【0064】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、正極缶体の両端に相当する2個は黒鉛との配合比が94:6であるペレットを、中心部分に相当する2個は黒鉛との配合比が97:3である正極ペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.15を作製した。
【0065】
(比較例5)
電解二酸化マンガンおよび黒鉛を重量比90:10の割合で配合し、混合粉を得た。そして、この混合粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。一方で、電解二酸化マンガン粉100重量部に対し電解液(39重量%の水酸化カリウム水溶液(ZnOを2重量%含む))1.5重量部とポリエチレンバインダー0.2重量部とを混合した後、ミキサーで均一に撹拌且つ混合して一定の粒度に整粒した粒状物を用意した。得られた2種類の粒状物をそれぞれ中空円筒型に加圧成形し、正極ペレットを得た。
【0066】
続いて、図1に示すように、正極缶体1の内部に、上記で得られた正極ペレット(1個の重量が2.95g)のうち、正極缶体の両端部分に相当する2個は黒鉛との配合ひが90:10である正極合剤ペレットを、中心部分に相当する2個は黒鉛を配合しないペレットを、合計4個挿入し、正極缶体1内で再加圧することによって正極缶体1の内面に密着させた。それ以外は全て電池No.1と同様にして、電池No.16を作製した。
【0067】
(電池評価)
実施例の電池(新品の電池)を16Ωの外部抵抗を介して、4個の電池を直列に接続した回路を構成し、放電を行なった。そして、電池No.6での容量を「100%」として、放電率を求めた。
【0068】
次に、実施例の電池No.1〜電池No.10(新品の電池)を強制的に充電し、逆接続を想定したガス発生漏液試験を行った。評価方法は、16Ωの外部抵抗に3個の電池を直列に接続した回路を構成し、その回路内に1個の試験電池を逆方向にさらに接続し、試験電池が充電される状態で最大1時間の放電を行い、アルカリ乾電池の漏液の有無を調べた。比較例の電池No.11〜16に対しても、同様の試験を行って漏液の有無を調べた。ここでは、抵抗器を介して電池3個を直列に接続し、1個を逆方向に接続したものを1セットとし、各10セット(単3形アルカリ乾電池の総数はそれぞれ40個)ずつ試験して漏液の発生率(%)を求めた。表1にこれら電池の試験結果を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
電池No.11によると、正極合剤の黒鉛配合比が均質の場合、逆接続による漏液発生率は80%と高い。
【0071】
電池No.1〜電池No.2および電池No.9〜電池No.10によると、円筒型正極合剤の外周部の黒鉛配合比を減らすことで、放電率は若干低下するが、逆接続による漏液を抑制する効果がある。
【0072】
電池No.3〜電池No.4および電池No.6〜電池No.7によると、円筒型正極の黒鉛配合比を変化させたペレットのうち、黒鉛配合比を減らしたペレットを正極缶体1の両端に配置することで(ペレットA、ペレットD)、放電率は若干低下するが、逆接続による漏液を抑制する効果がある。
【0073】
電池No.5および電池No.8によると、円筒型正極の外周部の黒鉛配合比を減らし、且つ、黒鉛配合比を減らしたペレットを正極缶体1の両端に配置する、実施例2ならびに実施例4の両方の特徴を持たせることによって、放電率は若干低下するが、逆接続による漏液を抑制する効果がある。
【0074】
電池No.12〜電池No.16によると、黒鉛配合比を減らした円筒型正極を正極缶体1の中央部に配置した場合には(ペレットB、ペレットC)、放電率は92%以下に下がった。特にペレット内側部分の黒鉛配合比を下げた比較例4及び5においては、放電率の低下が大きく、90%を下回った。それと同時に、比較例2〜5における逆接続時の漏液を抑制する効果は殆ど無かった。
【0075】
このように実施例の電池No.1〜電池No.10と比較例の電池No.11〜電池No.16とにおいて漏液の発生率に差が生じた理由としては、上記実施形態で記載したメカニズムに因るものであると推察した。
【0076】
具体的には、単3形アルカリ乾電池を逆に接続して過充電させると、電池内部の負極から水素ガスが発生し、正極から酸素ガスが発生する。酸素ガスは正極缶の内側から、特に
正極缶体1の両端内側から多く発生する。これは正極において最も抵抗の低い箇所であり、酸素発生箇所が集中しているために気泡化していると予測できる。
【0077】
このとき、電池No.1および電池No.2、電池No.9、電池No.10では、正極ペレットの電池缶体内側と接触する側の黒鉛を減少させて抵抗を上げたので、過放電時の酸素ガス発生箇所は電池缶体内側に集中せず、正極合剤内部でも酸素ガス発生が生じたため、電解液中の溶存酸素として負極の水素ガス発生抑制に至ったと予測できる。
【0078】
また、電池No.3および電池No.4、電池No.6、電池No.7では、電池缶体の中で特に低抵抗な箇所である缶体両端部分の正極ペレットの黒鉛を減少させて抵抗を上げたので、過充電時の酸素ガスの発生箇所は正極全体に分散され、正極合剤内部でも生じたため、電解液中の溶存酸素として存在することで負極側へ到達し、負極の水素ガス発生抑制に至ったと予測できる。
【0079】
さらに、電池No.5および電池No.8では、正極合剤ペレットの電池缶体内側と接触する側の黒鉛を減少させ、且つ、電池缶体の中で特に低抵抗な箇所である缶体両端部分の正極ペレットの黒鉛を減少させて抵抗をあげたので、過充電時の酸素ガス発生箇所が正極全体に分散し、正極合剤内部でも生じたため、電解液中の溶存酸素として負極の水素ガス発生抑制に至ったと予測できる。
【0080】
一方、電池No.11〜電池No.13では、正極ペレットの電池缶体内側と接触する側の黒鉛含有量は同様に含んでおり、抵抗は変わらず過充電時の酸素ガス発生箇所が電池缶体内側に集中したため、気泡化し、電解液中に溶存酸素としては存在しにくく、負極の水素ガス発生抑制が出来なかったと考えられる。
【0081】
また、電池No.11、電池No.14および電池No.15では、電池缶体内部でも特に低抵抗な箇所である缶体両端部分の正極ペレットに含まれる黒鉛含有量は従来どおりであり、低抵抗箇所の抵抗に変化が無かったため、酸素ガス発生反応が集中、気泡化したため、電解液中に存在しにくく、負極の水素ガス発生抑制が出来なかったと考えられる。
【0082】
また、電池No.16では、電池缶体内部でも特に低抵抗な箇所である缶体両端部分の正極ペレットに含まれる黒鉛含有量は従来よりも増加しており、低抵抗箇所の抵抗がさらに低下したため、酸素ガス発生反応が集中、気泡化したため、電解液中に存在しにくく、負極の水素ガス発生抑制が出来なかったと考えられる。
【0083】
電池No.11に比べて電池No.12〜電池No.16の漏液率が低いのは、放電率の低下にみられるように、電池としての抵抗が上昇しているため、負極側の水素ガス発生反応自体が若干緩やかになったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明は、逆接続時の安全性の向上を図るアルカリ乾電池について有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 正極缶体
2 正極
2−A 正極ペレットA
2−B 正極ペレットB
2−C 正極ペレットC
2−D 正極ペレットD
3 負極
4 セパレータ
5 封口体
6 負極集電体
7 負極端子板
8 外装ラベル
9 組立封口体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の正極缶体に、中空円筒状の正極と、前記正極の中空部分に配置された負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液と、を収容したアルカリ乾電池であって、
前記正極の外周面の少なくとも一部に高抵抗部を有するアルカリ乾電池。
【請求項2】
前記正極は正極活物質と導電剤とを含み、前記高抵抗部はその導電剤量が正極の他の部位に比べて少ない請求項1に記載のアルカリ乾電池。
【請求項3】
前記外周面の高抵抗部が正極全体の50%以下である請求項1または2に記載のアルカリ乾電池。
【請求項4】
前記高抵抗部が、正極缶体に接触する側の部位に配置された請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ乾電池。
【請求項5】
前記高抵抗部が、正極缶体の開口部側の部位および底部側の部位の少なくとも一方である請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ乾電池。
【請求項6】
前記正極が、正極缶体内に積層状に充填された複数の中空円筒状正極ペレットからなり、正極缶体の開口部側および底部側に位置するペレットの導電剤量が他の位置のペレットの導電剤量より少ない請求項5に記載のアルカリ乾電池。

【図1】
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【公開番号】特開2013−20866(P2013−20866A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154535(P2011−154535)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】