説明

アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法

化学薬品の使用量をできるだけ低減し、簡易、かつ、効率よく実施できるアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法を提供する。
アルカリ可溶型感光性樹脂の付着した被洗浄体(80)に、ドライアイス噴射装置(40)内でドライアイス粒子を噴射する。剥離片は電解酸性水槽(60)及び、回収槽(70)でフィルター回収を行う。次いで被洗浄体(80)は電解酸性水噴霧装置(50)内で剥離残渣の洗浄を行い、水洗槽(90)にて電解酸性水の中和及び洗浄を行う。なお、アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離、及び、回収に使用した電解酸性水は再利用可能であるため、廃液の排出量を大幅に削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プリント配線基板の製造工程において、硬化したアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離、及び剥離片の回収を簡易に行えるようにした剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ可溶型感光性樹脂は、主にステンレスを含む鉄含有製品及び燐青銅などの銅含有製品の装飾加工、銅箔を用いた半導体やプリント配線基板の回路形成などする際の、エッチング用マスク材やメッキ用マスク材として利用されている。しかし、エッチング及びメッキ処理後、プリント配線基板からアルカリ可溶型感光性樹脂を剥離する工程においては、前記感光性樹脂の剥離から廃液処理に至るまで、大量の薬品による化学反応をベースとする処理が組み込まれている。
【0003】
一方、最近になり、地球環境の汚染問題が浮上し、大気汚染では、オゾン層の破壊の元凶としてのトリクロロエタン、トリクロロエチレンの使用禁止、河川の汚染では、工場排水基準や産業廃棄物規制などで環境を保護している。
【0004】
しかしながら、大量の水で希釈してCODやBOD等の汚染基準をクリアーするには限界がきており、工場からの排水の総量規制が導入されている。そのため、例えばプリント配線基板の製造工程においては、アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離工程において化学薬品を大量に使用するため、現状のままでは、その生産量を制限せざるを得なくなりつつあり、現在使用している薬品のみによる加工方法の見直しがせまられている。
【0005】
廃液を発生させない付着物の洗浄方法として、薬品などを使用しない乾式でおこなう方法が考えられる。乾式による方法としては、例えば、ドライアイスを用いた洗浄技術が知られており、様々な分野で用途に応じた発明がなされている。
【0006】
例えば、下記特許文献1には、樹脂原料の低温粉砕装置内に付着した樹脂付着物を剥離する工程において、ドライアイス粒子群を被洗浄表面に衝突させて、被洗浄面の樹脂付着物を剥離することが開示されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、ドライアイス粒子による洗浄能力を高めるために、被洗浄面に付着している付着物に界面活性剤、アルカリビルダー、石鹸などの洗浄剤を十分含浸させることで、ドライアイスによる付着物除去効果を向上させることが開示されている。
【0008】
また、下記特許文献3には、半導体基板上のフォトレジストを剥離する工程において、被洗浄体に含水処理、及び凍結処理による前処理を実施した後、ドライアイス粒子を噴射させて半導体基板上の付着物を除去することが開示されている。
【特許文献1】特公平4−51233号公報
【特許文献2】特開平6-182306号公報
【特許文献3】特開2000−58494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、例えば、プリント配線基板の製造工程においては、エッチング後に残ったアルカリ可溶型感光性樹脂をプリント配線基板から剥離するため、化学薬品が大量に使用されている。
【0010】
しかしながら、従来の化学薬品のみを用いた剥離方法では、同時に大量の廃液が排出されるため、環境に与える負荷が大きい。更に、剥離片は薬品により溶解された、ドロ状となっているため、これらの回収及び廃棄処理に大きな手間と負担が課せられていた。
【0011】
そこで、廃液の排出量の低減し、剥離片が容易に回収、処理ができるようにするため、現在の薬品使用による剥離方法にかえて、乾式での洗浄が可能であるドライアイスを用いることに着目した。
【0012】
このドライアイスを用いた付着物の剥離方法は様々な分野で使用されている。しかしながら、上記特許文献1のように、被洗浄体にドライアイス粒子を噴射するだけでは、感光性樹脂を完全に剥離することができず、残渣の様なものが残ってしまう。更には、被洗浄体にドライアイス粒子を噴射することで結露が発生してしまうが、被洗浄体が金属製品である場合、錆の発生により、被洗浄体を損傷させてしまうという問題点もあった。また、上記特許文献2、3のように付着物に前処理を施すことで、ドライアイス粒子による剥離効果を向上させることは可能であるが、前処理工程が必要であり、時間及びコストを要するという問題点があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、化学薬品の使用量をできるだけ低減し、簡易、かつ、効率よく実施できるアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するにあたって、本発明の第1は、アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法は、アルカリ可溶型感光性樹脂が付着した被洗浄体にドライアイス粒子を噴射した後に、電解酸性水による洗浄を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、アルカリ可溶型感光性樹脂の付着した被洗浄体にドライアイス粒子を噴射させることで、アルカリ可溶型感光性樹脂は冷却されるが、急激な温度変化により微細な亀裂が発生する。そして、このドライアイス粒子は高速で噴射されているため、その衝撃力とドライアイスが昇華する際に発生する膨張エネルギーで被洗浄体に付着している前記感光性樹脂を効果的に剥離除去することができる。また、ドライアイスは昇華性の物質であるため、対象物表層に達すると気化して炭酸ガスとなるため、被洗浄体を破損させることなく、アルカリ可溶型感光性樹脂を剥離できる。
【0016】
しかしながら、ドライアイス粒子の噴射だけでは、アルカリ可溶型感光性樹脂を完全に剥離することができない。微細なアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離残渣、色素のような痕、結露により生じる錆、及び水滴の痕などが被洗浄体表面に残ってしまうが、このアルカリ可溶型感光性樹脂は酸性領域で凝固する性質であるため、電解酸性水による洗浄を行うことで、アルカリ可溶型感光性樹脂を剥離することがでる。また、色素のような痕、結露により生じる錆、及び水滴の痕なども同時に洗浄することができるので、清浄な加工表面が得られる。また、ここで使用する電解酸性水は、予め20〜70℃程度に加熱されたものであることが好ましく、剥離残渣の除去、及び結露より形成される水膜などの除去に対し、優れた効果を発揮することができる。
【0017】
また、本発明のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法の第2は、アルカリ可溶型感光性樹脂が付着した被洗浄体にドライアイス粒子を噴射した後に、電解アルカリ性水又はアルカリ性薬品による洗浄を行うことを特徴とする。
【0018】
処理スピードによってはドライアイス粒子の噴射だけでは、被洗浄体表面からアルカリ可溶型感光性樹脂を完全に剥離することができない場合がある。一方、アルカリ可溶型感光性樹脂であるため、強アルカリ性の水である電解アルカリ性水や、アルカリ性薬品溶液を用いて、溶解除去できる。
【0019】
したがって、処理スピードによってはドライアイス粒子を噴射した後に、更に、電解アルカリ性水又はアルカリ性薬品溶液で洗浄することにより、被洗浄体表面からアルカリ可溶型感光性樹脂を完全に剥離することができ、清浄な加工表面が得られ、また、ドライアイス粒子の噴射により、被洗浄体表面から、アルカリ可溶型感光性樹脂の大部分を剥離できるため、たとえ、アルカリ性薬品(化学薬品)を用いたとしても、その使用量を極めて低減できる。
【0020】
また、上記第2の発明において、被洗浄体を電解アルカリ性水又はアルカリ性薬品溶液で洗浄した後、更に電解酸性水による洗浄を行うことが好ましい。
【0021】
前述したように、アルカリ可溶型感光性樹脂は酸性領域では凝固する性質があるため、電解アルカリ性水やアルカリ性薬品溶液を用いて剥離残渣を溶解させた後、更に電解酸性水を噴霧して、被洗浄体を酸性領域とすることにより、電解アルカリ性水やアルカリ性薬品溶液に溶解した剥離片を、凝固、凝縮させることができ、剥離残渣の除去をより効率的に実施することができると共に、廃液処理が容易なものとなる。また、色素のような痕、結露による錆、及び水滴の痕なども同時に除去することができるので、清浄な加工表面を得ることができる。
【0022】
また、本発明においては、被洗浄体にドライアイス粒子を噴射する際、その周囲を回収用カバーで覆っておき、かつ、剥離、飛散したアルカリ可溶型感光性樹脂を回収用カバー内から吸引して回収できるように構成されていることが好ましい。
【0023】
高速のドライアイス粒子を衝突させてアルカリ可溶型感光性樹脂を被洗浄体から剥離しているため、剥離片は周囲にかなり飛散してしまう。そこで被洗浄体にドライアイス粒子を噴射する際、その周囲を回収カバーで包み込み、回収カバー内から吸引して剥離片を回収するように構成することで、周囲へ飛散させることなく効率的に剥離片を回収することができる。
【0024】
また、本発明においては、前記回収用カバーの少なくとも表面が、フッ素樹脂又はシリコン樹脂で形成されていることが好ましい。フッ素樹脂又はシリコン樹脂は他の物質との反応性が低いため、壁面に剥離した被洗浄体の再付着を防止することができるので、回収カバーの汚染を抑えることができる。
【0025】
また、本発明においては、吸引されたアルカリ可溶型感光性樹脂を、吸引された前記感光性樹脂を、サイクロン流による遠心力を利用した回収方法、エアーフィルターによる回収方法、及び、電解酸性水が貯留された水槽内に導入して凝固沈殿させる回収方法から選ばれた少なくとも一種以上の方法で回収することが好ましい。剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂は水分を含んでいないため、サイクロン流による遠心力やエアーフィルターによって容易に回収することができる。また、上述のようにアルカリ可溶型感光性樹脂は酸性領域で凝固するため、電解酸性水が貯留された水槽内へ導入し、凝固沈殿させることで容易に剥離片を回収することができる。そして、上記アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離で用いた電解酸性水、及び回収に使用した電解酸性水は剥離片を溶解させることがないため、フィルターろ過して剥離片を回収した後、再利用可能であり、廃液の排出量を大幅に削減できる。
【0026】
また、本発明のドライアイス粒子の噴射工程において、直径が5〜50μmのドライアイス粒子を用い、噴射圧を0.01〜5.0MPa、噴射時間を5〜120秒とすることが好ましい。これによれば、被洗浄体を損傷させず、効果的にアルカリ可溶型感光性樹脂を剥離させることができる。
【0027】
また、本発明で使用する電解酸性水は、pHが4.0以下であり、残留塩素濃度が15ppm以下であることが好ましい。
【0028】
電解酸性水のpHを4.0以下とすることで、アルカリ可溶型感光性樹脂の凝固、凝縮を効果的に実施することができるので、剥離、回収を容易におこなうことができる。また、残留塩素濃度を15ppm以下とすることで、塩基性炭酸塩の発生や、被洗浄体の腐食を抑えることができる。
【0029】
また、この電解酸性水は陰極と陽極の間にイオン透過性の膜、又は中性膜を有する電解槽を用いて、水を電気分解して陽極側から得られるものが好ましい。
【0030】
電解質として、塩化ナトリウムや、塩化カリウムなどの塩化物系の化合物を用いた場合は、低電圧での電気分解では塩素ガスが発生するため、高電圧、例えば20V〜60Vの加電圧で電気分解をおこなうことが好ましい。また、電解質として、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムなどの硫化物系の化合物を用いた場合は、電気分解による塩素ガスの発生はないため、5V〜50Vの低電圧での電気分解であっても好適に実施することができる。
【0031】
また、本発明で使用する電解アルカリ性水は、pHが10.0以上、酸化還元電位が−50mV以下であることが好ましい。
【0032】
そして、この電解アルカリ性水は、陰極と陽極の間にイオン透過性の膜、又は中性膜を有する電解槽を用いて、水を5〜60Vの電圧で電気分解して陰極側から得られるものが好ましい。
【0033】
更に、本発明において、被洗浄体の性状に応じて、被洗浄体を搬送しながら、その上下両面からドライアイス粒子を噴射して剥離させるか、被洗浄体の上下面のうち、一方の面をベルト状の搬送機構で支持し、残った他方の面からドライアイス粒子を噴射して剥離させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離工程において、前記感光性樹脂の付着した被洗浄体にドライアイスを噴射し剥離片の回収を行った後、電解酸性水による洗浄を行うことで、従来の薬品による剥離方法に比べ、剥離片の回収が容易に行える。
【0035】
更に、本発明で使用している電解酸性水は再利用することができるため、廃液をほとんど排出することがなく、工場排水を低減できる。また、廃液中の剥離片は、ほぼ全て回収することができるため、廃液処理も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に使用する電解酸性水、及び電解アルカリ性水を製造するための装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に使用するアルカリ可溶型感光性樹脂を剥離するためのシステムの一例を示す概略図である。
【図3】本発明に使用するドライアイス噴射装置40の一例を示す概略図である。
【図4】本発明に使用するドライアイス噴射装置40の別の一例を示す概略図である。
【図5】本発明に使用する回収槽70の一例を示す概略図である。
【図6】本発明に使用する回収槽70の別の一例を示す概略図である。
【図7】本発明に使用するアルカリ可溶型感光性樹脂を剥離するためのシステムの別の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0037】
12.電解槽
13.陰極
14.陽極
17.隔膜
18.陰極室
19.陽極室
23.電解アルカリ性水導出管
26.電解酸性水導出管
40.ドライアイス噴射装置
41.リングコンベヤー
42.ベルトコンベヤー
43.ドライアイス粒子噴射ノズル
44.回収カバー
45.吸引管
50.電解酸性水噴霧装置
51.噴霧機
52、61、72、73.フィルター槽
55.電解アルカリ性水噴霧装置
60.電解酸性水槽
70.回収槽
71.吸引機
74.エアーフィルター
75.噴霧機
80.被洗浄体
90.水洗槽
P1〜P4.ポンプ
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明で用いる電解酸性水とは、基本的には、水を電解槽で電気分解することにより得られる強酸性イオン水であり、電解アルカリ性水とは、基本的に水を電解槽で電気分解することにより得られる強アルカリ性イオン水である。
【0039】
図1には、本発明で用いる好ましい電解水を製造するための装置として、陽極と陰極との間にイオン透過性の膜を有する電解槽を用いた装置の一例が示されている。
【0040】
この装置は、原水導入管1、連結管6、その途中に設けられたフィルター槽5、電解槽12、電解アルカリ水導出管23、及び電解酸性水導出管26とで主として構成されている。ここで、原水導入管1は、減圧弁2、圧力スイッチ3、電磁弁4を介してフィルター槽に連結され、更に連結管6を通して電解槽12に連結されている。
【0041】
電解槽12は、円筒状のステンレス電極、又はチタン+白金電極からなる陰極13と、この陰極13よりも直径の小さい円筒状のチタン+白金電極からなる陽極14とを同心上に配置し、それらの上下端面を環状の蓋体15、16で封止した構造になっている。また、陰極13と陽極14との間には、同じく円筒状の隔膜17がその両端を蓋体15、16に支持されて設置されており、電解槽12内を、外側の陰極室18と、内側の陽極室19とに、容積比45:55の比率で区画している。なお、図1のような円筒状隔壁で仕切られた電解槽に限らず、平板状隔膜で陽極室と陰極室とに仕切った、平板型電解槽を用いることができ、その場合は、陽極室と陰極室の容積比を5:5となるようにすることが好ましい。
【0042】
そして隔膜17は、陽イオンを陽極室19側から陰極室18側に透過しており、陰イオンを陰極室18側から陽極室19側に透過している。
【0043】
連結管6は、その先端が6a、6bに分岐し、一方の管6aは、電解槽12底部の蓋体16に設けられた陰極室18内への導入路20に連結し、他方の管6bは、上記蓋体16に設けられた陽極室19内への導入路21に連結しており、いずれも同径で同圧の原水が導入する構造となっている。
【0044】
また、電解槽12の上部の蓋体15には、陰極室18から電解アルカリ性水を取り出すための導出路22が形成しており、これに電解アルカリ性水導出管23が連結し、流量制御弁28(流量調整弁は電解槽導入前でもよい)を介して電解アルカリ性水を供給するようになっている。更に、上部の蓋体15には、陽極室19から電解酸性水を取り出すための導出路25が形成され、これに電解酸性水導出管26が連結し、流量制御弁29(流量調整弁は電解槽導入前でもよい)を介して電解酸性水を供給するようになっている。
【0045】
なお、電解槽12には、陽極14と陰極13とに電力を供給する電源30と、この電源30からの電力を制御する制御装置31とが設けられている。また、図示されてはいないが、陽極室19には、陽極14の軸方向に沿って隔膜を保持する樹脂製治具が配置されている。
【0046】
したがって、原水を原水導入管1から、減圧弁2、圧力スイッチ3、電磁弁4を介してフィルター槽5に導入すると、原水は隔膜17が目詰まりしないようにここで10μm以上の大きさの粒子は捕捉されて通過して、連結管6より流出する。
【0047】
連結管6より流出した原水は、分岐管6a,6bに分岐されて、電解槽12の陰極室18、及び陽極室19にそれぞれ同圧、同量で流入する。陽極室19に流れ込んだ原水は陽極室19内を流れる。電解槽12では、陽極14と陰極13との間で電圧が印加され、原水の電解が行われる。このとき、電圧50〜60V、電流15〜25Aとなるように制御装置31で電力を調整し、陽極室19からは電解酸性水が1.5〜2.0リットル/分の流速で吐出し、陰極室18からは電解アルカリ性水が1.5〜2.0リットル/分の流速で吐出するように流量を調整する。
【0048】
このような方法によって、pHが4.0以下であり、かつ、残留塩素濃度が15ppm以下である電解酸性水、及びpHが10.0以上であり、かつ、酸化還元電位が−50mV以下である電解アルカリ性水を製造することができる。
【0049】
電解酸性水、及び電解アルカリ性水を製造する際に、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩化物系の化合物;硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムなどの硫化物系の化合物を電解質として用いるが、どちらも化合物も電解質として好適に利用できる。
【0050】
しかし、電解質として塩化物系の化合物を用いた場合、低電圧による電気分解では塩素ガスが同時に生成されるため、高電圧での電気分解が必要である。よって、電解質として塩化物系の化合物を用いた場合、電気分解の加電圧として、20〜60Vであることが好ましく、50〜60Vであることがより好ましい。
【0051】
一方、電解質として硫化物系の化合物を用いた場合、塩素ガスなどの有毒性ガスを発生することがないため、低電圧での電気分解でも好適に実施することができるので、電気分解の加電圧として、5〜50Vであることが好ましく、10〜20Vであることがより好ましい。
【0052】
また、本発明で用いることのできるアルカリ性薬品溶液とは、水酸化ナトリウム溶液や炭酸カリウム溶液などの、従来、アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離に使用してきた強アルカリ性の化学薬品であり、特に限定はない。
【0053】
本発明において、電解酸性水、電解アルカリ性水、又はアルカリ性薬品溶液による剥離残渣の除去は、一般的には、シャワリングにより行うのが好ましいが浸積による超音波洗浄であってもよい。
【0054】
図2には、本発明を実施するための好ましいアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離装置全体の概要を示す一例が示されている。
【0055】
すなわち、この好ましいシステム全体は、基本的には、回収カバーに覆われたドライアイス噴射装置40、電解酸性水噴霧装置50、ドライアイス噴射装置40から剥離された剥離片を回収するための電解酸性水槽60、ドライアイス噴射装置40内で剥離させた剥離片を回収するための回収槽70で主に構成されている。
【0056】
被洗浄体80(以下、単に被洗浄体という)は、リングコンベアー41に設置され、ドライアイス噴射装置40へ搬送され、ドライアイス粒子の噴射が行われる。
【0057】
被洗浄体としては例えば、メッキもしくはエッチング処理の行われた後のプリント配線基板、SUS板、燐青銅板、ハステロイ板(ニッケル合金)などが挙げられる。
【0058】
ドライアイス噴射装置40で使用するドライアイス粒子は粒子径が5〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。ドライアイス粒子の粒径が50μm以上であると被洗浄体を損傷させてしまい、また、5μm以下であると洗浄効果が乏しく、殆どアルカリ可溶型感光性樹脂を剥離することができないため好ましくない。
【0059】
また、噴射圧は0.01〜5.0MPaであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.7MPaであり、更に好ましくは0.015〜0.025である。噴射圧が5.0MPa以下であれば、被洗浄体を損傷させることなく、アルカリ可溶型感光性樹脂を剥離することができ、特に、0.7MPa以下であれば、基板表面に装飾した金属膜が薄膜であっても、金属膜が延びることがないため、寸法精度を損なうことがない。また、噴射圧が0.01MPa以上であれば、被洗浄体表面から大半のアルカリ可溶型感光性樹脂を剥離除去できるので、電解酸性水、電解アルカリ性水、アルカリ薬品などの使用量を低減でき、後の工程の剥離残渣の除去作業が容易となる。
【0060】
また、噴射時間は5〜120秒であることが好ましく、被洗浄物のサイズにもよるが、30〜50秒であることがより好ましい。噴射時間が120秒以上であると、被洗浄体に、霜のように結露が発生しやすく、水滴の痕等の発生量が多くなり、また、5秒以下であるとアルカリ可溶型感光性樹脂を十分に剥離することができないことがある。
【0061】
前記ドライアイス噴射装置40は、被洗浄体の性状に応じて図3もしくは図4の装置となっている。被洗浄体が薄板で破損しやすい製品である場合、図3に示す装置では、被洗浄体の上下面のうち一方の面がベルトコンベヤー42で支持され、残った他方の面にドライアイス粒子噴射ノズル43が設置されており、ドライアイス粒子を噴射する構造となっている。また、被洗浄体が破損しにくい製品である場合、図4に示すように被洗浄体の上下面にドライアイス粒子噴射ノズル43が設置されており、被洗浄体の上下面に対しドライアイス粒子を噴射する構造となっている。
【0062】
このドライアイス粒子噴射ノズル43の形状は、広範囲の面積に対応出来るフラット型ノズル、より強い噴射圧を確保出来るコーン型ノズル、ドライアイスの噴出スピードを確保できる円筒型ノズルを利用することができ、好ましくはドライアイスの噴出スピードを確保できる円筒型ノズルである。
【0063】
ドライアイス噴射装置40は外周部が回収カバー44で覆われており、剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂の周囲への飛散を防止すると共に、回収カバー44の上下に設置された吸引管45より、剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂をドライアイス噴射装置40の外部に設置した吸引機71から吸引して、回収槽70にて剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂の回収を行うと共にドライアイス粒子噴射の際に発生する炭酸ガスの排気を行う。排気された炭酸ガスは石灰水を環流したスクラバーなどで処理される。
【0064】
また、回収カバー44の少なくとも表面は、フッ素樹脂又はシリコン樹脂で形成されていることが好ましい。フッ素樹脂又はシリコン樹脂は他の物質との反応性が低いため、壁面に剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂の再付着を防止することができ、回収カバー壁面の汚染を抑えることができる。
【0065】
回収槽70は、家電の掃除機のようにエアーフィルターだけで回収する槽でも良いが、直ぐに目詰まりすることが想定されるので、サイクロン型掃除機のようなサイクロン流による遠心力を利用した回収機構や、図5に示した回収槽もしくは、図6に示した回収槽を用いることが好ましく、図5及び図6は回収槽どちらも好適に使用することができる。
【0066】
まず、図5の回収槽によるアルカリ可溶型感光性樹脂の回収方法ついて説明する。図5の回収槽は電解酸性水で満たされており、吸引された剥離片を電解酸性水へ導入して、凝固、沈殿させることができる。回収槽底部からの配管はポンプP1を介してフィルター槽72に接続しておりフィルター槽72で、剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂の回収をおこなう。そして、フィルター槽72からの配管は回収槽70上部へ接続しており、ここでの電解酸性水は再利用できる構成となっている。
【0067】
また、図6の回収槽では噴霧機75から電解酸性水を噴霧し、剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂を凝集させ、吸引機71の前方に設置されたエアーフィルター74で剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂を回収する構造となっている。電解酸性水を噴霧させるため、回収槽下部には電解酸性水が貯留してしまうが、回収槽底部から貯留した電解酸性水を引き抜くための配管がポンプP2を介してフィルター槽73に接続しており、フィルター槽73で、電解酸性水の噴霧により回収槽内に脱落したアルカリ可溶型感光性樹脂の回収をおこない、フィルター槽73からの配管が噴霧機75へ接続した構成となっており、ここでの電解酸性水は再利用できる。
【0068】
また、図5及び図6での回収槽で使用する電解酸性水は、効率的に剥離片の回収を実施するため、pHが4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
【0069】
また、ドライアイス噴射装置40は外周部が回収カバーで覆われている構造となっている。剥離片の一部がドライアイス噴射装置の出入り口部から飛散してしまうことがあるため、外部へ飛散した剥離片を回収するため、ドライアイス噴射装置40の下部に電解酸性水を貯留させた電解酸性水槽60(図1参照)を用いて剥離片の回収を行う。電解酸性水槽60底部からの配管がポンプP3を介してフィルター槽61に接続しており、フィルター槽61で、剥離、飛散したアルカリ可溶型感光性樹脂の回収をおこなう。そして、フィルター槽61からの配管は電解酸性水槽60上部へ接続しており、ここでの電解酸性水は再利用して使用できる。
【0070】
回収槽70及び電解酸性水槽60で使用する電解酸性水は効率よく剥離片を回収するため、pHが4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
【0071】
ドライアイス噴射装置40でドライアイス粒子の噴射がされ、アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離された被洗浄体は次に電解酸性水噴霧装置50へ運ばれる。
【0072】
電解酸性水噴霧装置50では、噴霧機51から電解酸性水が被洗浄体に対して噴霧する構造となっている。電解酸性水装置内に貯留した電解酸性水は装置底部から、貯留した電解酸性水を引き抜くための配管がポンプP4を介してフィルター槽52に接続している。フィルター槽52で、剥離したアルカリ可溶型感光性樹脂の回収をおこなっており、フィルター槽52からの配管が噴霧機51に接続しており、電解酸性水を再利用して使用できる構成となっている。
【0073】
ここで使用する電解酸性水は、剥離残渣を効率よく剥離するため、pHは4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。また、温度は20〜70℃に加熱されたものであることが好ましいが、35〜45℃に加熱されたものは剥離残渣の除去に優れた効果を発揮することができ、また、電解酸性水の蒸発による減少も起こりにくいため、より好ましい。
【0074】
また、噴霧時間は5〜120秒であることが好ましく、30〜80秒であることがより好ましい。120秒以上であると、洗浄効率が悪くなり、また、5秒以下であると剥離残渣を殆ど除去することができないため好ましくない。
【0075】
次いで、電解酸性水噴霧装置50で電解酸性水の噴霧された被洗浄体は水洗槽90へ移り、被洗浄体表面に付着している電解酸性水の中和洗浄が行なわれる。その後、次工程へ移り、図示しない乾燥工程に運ばれる。
【0076】
このようにしてアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離は終了する。
【0077】
また、図7には、本発明を実施するための好ましいアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離装置全体の概要を示す別の一例が示されている。なお、以下のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離装置の説明においては、前記剥離装置と同一部分には同符合を付して、その説明を省略することにする。
【0078】
この剥離装置は基本的には、回収カバーに覆われたドライアイス噴射装置40、電解アルカリ性水噴霧装置55、電解酸性水噴霧装置50、ドライアイス噴射装置40から剥離された剥離片を回収するための電解酸性水槽60、ドライアイス噴射装置40内で剥離させた剥離片を回収するための回収槽70で主に構成されており、図1に示した剥離装置との変更点として、ドライアイス噴射装置40の後に、電解アルカリ性水噴霧装置55が新たに設置されている点である。ここでは被洗浄体に電解アルカリ性水に噴霧が実施されており、ドライアイス粒子の噴射剥離により剥離しきれなかったアルカリ可溶型感光性樹脂の溶解がおこなわれる。
【0079】
剥離残渣を効率的に溶解させるため、電解アルカリ性水のpHは10.0以上であることが好ましく、11.0以上であることがより好ましい。また、電解アルカリ性水は温度を20〜70℃に加熱したものであることが好ましく、50〜60℃に加熱されたものであることが、剥離残渣の膨潤力に優れているため、より好ましく使用することができる。
【0080】
噴霧時間は10〜60秒であることが好ましく、30〜50秒であることがより好ましい。60秒以上であると電解アルカリ性水が空気酸化することによりpHが低下して洗浄効率が悪くなり、また電解アルカリ性水の消費量も増えるため、コスト的な負担が増加し、また10秒以下であると殆ど効果が見られないため好ましくない。
【0081】
次いで、電解酸性水噴霧装置50へ移され、剥離残渣の除去、表面洗浄が実施される。その後、水洗槽90へ移され、被洗浄体表面に付着している電解酸性水の中和洗浄が行なわれ、次工程へ移り、図示しない乾燥工程に運ばれ、このようにしてアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離が終了される。
【0082】
このように、ドライアイス噴射後の剥離残渣を処理する際、電解酸性水による洗浄を行う前に予め、電解アルカリ性水による洗浄を実施することで、電解酸性水による剥離残渣の処理をより効率的に実施することができる。
【0083】
また、アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離工程で使用する電解酸性水は、剥離片を溶解させることがないため、剥離片をフィルターろ過などで除去することにより再利用することができ、廃水の排出量を極めて低減できる。
【0084】
更に、水洗槽90より排出される排水は微弱な酸性水であり、容易に処理することができる。電解酸性水とは基本的には水であるため、例えば、電解酸性水を生成する際、対極側の陰極で同時に生成される電解アルカリ性水と混合して中和処理することができ、また有機物を多く含む場合は、中和処理後、活性汚泥等を用い有機物を処理させるなどの操作をおこなうことで、容易に処理できる。
【0085】
また、電解アルカリ性水噴霧装置55より排出される電解アルカリ性水にはアルカリ可溶型感光性樹脂が溶解しているが、アルカリ可溶型感光性樹脂は酸性領域で凝固、凝縮する性質があり、また、電解水は中性に戻りやすい性質を有しているため、pHを下げて酸性領域にすることは容易であり、溶解している剥離片の回収を実施することができる。電解アルカリ性水も電解酸性水同様、基本的には水であるため、例えば、電解アルカリ性水を生成する際、対極側の陽極で同時に生成される電解酸性水と混合し、水溶液のpHを4.0以下とすることで、溶解していた剥離片を析出させることができ、ろ過処理などの操作により容易に溶解していた剥離片を回収することができる。剥離片の回収後、再度電解アルカリ性水などのアルカリ水を加え、中和処理するなどの操作をおこなうことで、容易に処理できる。
【0086】
また、本発明の別の態様では、図示しないが、図7の電解アルカリ性水噴霧装置55をアルカリ性薬品溶液噴霧槽としてもよい。この態様においては、アルカリ性薬品溶液噴霧槽にて、被洗浄体へのアルカリ性薬品溶液の噴霧がなされており、ドライアイス粒子の噴射剥離により剥離しきれなかったアルカリ可溶型感光性樹脂の溶解がおこなわれる。
【0087】
剥離残渣を効率的に溶解させるため、アルカリ性薬品溶液のpHは10.0以上であることが好ましく、11.0以上であることがより好ましい。また、アルカリ性薬品溶液は温度を20〜70℃に加熱したものであることが好ましく、50〜60℃に加熱されたものであることが、剥離残渣の膨潤力に優れているため、より好ましく使用することができる。
【0088】
噴霧時間は10〜60秒であることが好ましく、30〜50秒であることがより好ましい。60秒以上であると電解アルカリ性水が空気酸化することによりpHが低下して洗浄効率が悪くなり、またアルカリ性薬品溶液の消費量も増えるため、コスト的な負担や排水量が増加し、また10秒以下であると殆ど効果が見られないため好ましくない。
【0089】
次いで、電解酸性水噴霧装置へ移され、剥離残渣の除去、表面洗浄が実施される。その後、水洗槽へ移され、被洗浄体表面に付着している電解酸性水の中和洗浄が行なわれ、次工程へ移り、乾燥工程に運ばれ、このようにしてアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離が終了される。
【0090】
なお、アルカリ性薬品溶液噴霧槽から排出される廃液にはアルカリ性薬品溶液にはアルカリ可溶型感光性樹脂が溶解しているが、アルカリ可溶型感光性樹脂は酸性領域で凝固、凝縮する性質があるため、pHを下げて酸性領域を下げて酸性領域とすることで、溶解している剥離片の回収を実施することができる。そして、剥離片の回収後、再度アルカリ性薬品溶液などのアルカリ水を加え、中和処理するなどの操作をおこなうことで、容易に処理できる。また、従来のアルカリ性薬品の使用量に比較して著しく使用量を低下させることが可能であるため、排水処理の負荷を激減させることが可能となる。
【0091】
このように、アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離、及びその回収にドライアイス粒子、電解酸性水、電解アルカリ性水、アルカリ性薬品溶液を用いることで、従来の薬品のみによる剥離方法に比べ容易にアルカリ可溶型感光性樹脂を剥離することができると共に、剥離片の回収、及び廃液の処理が容易なものとなる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
(プリント配線基板の製作)
プリント配線基板(基板材質:ガラスエポキシ樹脂)の表面にパネルメッキ法により、厚み(基材からの総厚み)23μmの銅膜を形成し、更にこの表面にポジ形のアルカリ可溶型感光性樹脂(日立化成製)をラミネートしたものを使用した。そして、この基板にパターンの切られたマスクを被せ、紫外線照射を行った。未硬化部分を30℃に加熱した炭酸ナトリウム1%水溶液で膨潤させ除去した。硬化したアルカリ可溶型感光性樹脂をマスク材とし、塩化第二鉄液によるエッチングを行った。
【0094】
(電解酸性水及び電解アルカリ性水の製造)
電解原水としてイオン交換水、電解質として塩化ナトリウムを用いて、図1に示した装置を使用して、電圧60V、電流22A、酸性イオン水の流量1.8リットル/分、アルカリイオン水の流量2.0リットル/分の条件で電解を行い、電解酸性水、及び電解アルカリ性水を製造した。こうして得られた電解酸性水、及び電解アルカリ性水について、酸化還元電位(ORP)、残留塩素濃度(ppm)、pHを測定し、その結果を表1に示した。
【0095】
【表1】

ここで、pH及び酸化還元電位は、堀場製作所製のpH/イオンメーターを用いて測定した。
【0096】
〔実施例1〕
図2に示すリングコンベアー41に600mm角に調整した上記プリント配線基板を設置搬送し、ドライアイス噴射装置40で、平均粒径30μm程度のドライアイスを、ノズル形状が円筒型のものを用いて、噴射圧0.7MPaで15秒間プリント配線基板の両面に対し噴射した。そして、飛散した剥離片は図5の回収槽70と、電解酸性水槽60で回収した。
【0097】
次いで、40℃の電解酸性水を、0.15MPaの水圧で、20秒間噴霧した。
【0098】
続いて、上水を0.15Mpaの水圧で、30秒間、水洗装置による洗浄を行い、十分乾燥させた後、基板の状態観察を行った。
【0099】
〔実施例2〕
図7に示すリングコンベアー41に600mm角に調整した上記プリント配線基板を設置搬送し、ドライアイス噴射装置40で、平均粒径30μm程度のドライアイスを、ノズル形状が円筒型のものを用いて、噴射圧0.7MPaで15秒間プリント配線基板の両面に対し噴射した。そして、飛散した剥離片は図5の回収槽70と、電解酸性水槽60で回収した。
【0100】
次いで、50℃の電解アルカリ性水を0.15Mpaの水圧で30秒間噴霧した。
【0101】
続いて、40℃の電解酸性水を、0.15MPaの水圧で、20秒間、噴霧したのち、上水を0.15Mpaの水圧で、30秒間、水洗装置による洗浄を行い、十分乾燥させた後、基板の状態観察を行った。
【0102】
〔実施例3〕
円筒型のノズル形状のものを用い、ドライアイスの噴射圧を0.016MPaとし、噴射時間を60秒間とした以外は、実施例1と同様にして実施例3のプリント配線基板を製造し、十分乾燥させた後、基板の状態観察を行った。
【0103】
〔実施例4〕
円筒型のノズル形状のものを用い、ドライアイスの噴射圧を0.016MPaとし、噴射時間を60秒間とした以外は、実施例2と同様にして実施例4のプリント配線基板を製造し、十分乾燥させた後、基板の状態観察を行った。
【0104】
(観察項目)
剥離残渣の確認、打痕の有無、水滴の痕の有無、剥離片の回収確認を30倍の実体顕微鏡、及び目視より行った。
【0105】
(観察結果)
実施例1〜4のプリント配線基板上に剥離残渣、打痕、水滴の痕、及び微細な傷はなく、清浄な表面状態を得ることができた。また、実施例1、2に関しては薄板基板の場合銅箔が延びる現象が見受けられたが、実施例3、4のプリント配線基板は、銅膜が延びることがなく、寸法精度の極めて良好なものであった。
【0106】
ここで、実施例1、2と、実施例3、4との違いは、ドライアイス粒子を噴射する装置の相違で、実施例1、2で使用した噴射装置は、エアーコンプレッサーのエアー圧でドライアイス粒子を噴射するもの、実施例3、4で使用した噴射装置は、ブロワーを利用し、ドライアイス粒子を圧力ではなく粒子速度を上げて噴射するものである。そして、実施例3、4で使用した噴射装置の方が、被洗浄体が薄板の場合は良好であった。
【0107】
以上の結果より、本発明のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法によれば、プリント配線基板からアルカリ可溶型感光性樹脂を容易に剥離させることができ、また、清浄な加工表面を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、例えば、プリント配線基板の製造において、工業廃水の排出量を大幅に抑えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離工程において、前記感光性樹脂が付着した被洗浄体にドライアイス粒子を噴射した後に、電解酸性水による洗浄を行うことを特徴とするアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項2】
アルカリ可溶型感光性樹脂の剥離工程において、前記感光性樹脂が付着した被洗浄体にドライアイス粒子を噴射した後に、電解アルカリ性水又はアルカリ性薬品溶液による洗浄を行うことを特徴とするアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項3】
前記被洗浄体を電解アルカリ性水又はアルカリ性薬品溶液で洗浄した後、更に電解酸性水による洗浄を行う請求項2に記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項4】
前記被洗浄体にドライアイス粒子を噴射する際、その周囲を回収用カバーで覆っておき、かつ、剥離、飛散した前記感光性樹脂を回収用カバー内から吸引して回収する請求項1〜3のいずれか一つに記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項5】
前記回収用カバーの少なくとも表面が、フッ素樹脂又はシリコン樹脂で形成されている請求項4記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項6】
吸引された前記感光性樹脂を、サイクロン流による遠心力を利用した回収方法、エアーフィルターによる回収方法、及び、電解酸性水が貯留された水槽内に導入して凝固沈殿させる回収方法から選ばれた少なくとも一種以上の方法で回収する請求項4又は5に記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項7】
前記ドライアイス粒子の噴射工程において、直径が5〜50μmのドライアイス粒子を用い、噴射圧を0.01〜5.0MPa、噴射時間を5〜120秒とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項8】
前記電解酸性水のpHが4.0以下、残留塩素濃度が15ppm以下である請求項1、3〜7のいずれか1つに記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項9】
前記電解アルカリ性水のpHが10.0以上、酸化還元電位が−50mV以下である請求項2〜8のいずれか1つに記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項10】
前記被洗浄体を、搬送しながら、その上下両面からドライアイス粒子を噴射する請求項1〜9のいずれかに記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。
【請求項11】
前記被洗浄体の上下面のうち一方の面をベルト状の搬送機構で支持し、残った他方の面からドライアイス粒子を噴射する請求項1〜9のいずれか1つに記載のアルカリ可溶型感光性樹脂の剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/084831
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510765(P2006−510765)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003863
【国際出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(506200359)特定非営利活動法人病院地域医療推進協議会 (2)
【Fターム(参考)】