説明

アルカリ可溶型感光性着色組成物およびカラーフィルタ

【課題】本発明は、顔料濃度が高い場合であっても、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生が少ないアルカリ可溶型感光性着色組成物を提供することを主目的としている。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、バインダー樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、溶剤と、を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物であって、上記バインダー樹脂が、フェノキシエチル基を有するフェノキシエチル基含有モノマーと、酸基を有する酸基含有モノマーと、を共重合させてなる共重合体を主鎖構造として含むバインダー樹脂用共重合体を含有するものであることを特徴とするアルカリ可溶型感光性着色組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料濃度が高い場合であっても、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生が少ないアルカリ可溶型感光性着色組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
【0003】
このような着色層の形成方法としては、顔料を含有する着色層用感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法が一般的に用いられている。
しかしながら、このようなフォトリソグラフィー法に用いられる着色層用感光性樹脂組成物については、カラーフィルタの色再現性向上のため、そこに含まれる顔料の高濃度化が要求されている。そして、その顔料の高濃度化に伴い、感光性や溶解性などの着色層形成性に寄与する成分が相対的に減少した結果、現像後に着色層用感光性樹脂組成物が残渣として残存し易くなるといった問題があった。
【0004】
また、フォトリソグラフィー法に用いられる着色層用感光性樹脂組成物の塗布方法としては、透明基板上に着色層用感光性樹脂組成物が均一な膜厚となるように塗布することが容易であるといった利点からスピンコート法が一般的に用いられてきたが、近年のカラーフィルタの大型化に伴い透明基板を安定的に回転させること等が困難となったことからダイコート法による塗布が検討されている。
【0005】
しかしながら、透明基板は分割されたシート状であるため、ダイコート法により着色層用感光性樹脂組成物を塗布する場合には、各透明基板の入れ替えの際にダイからの着色層用感光性樹脂組成物の吐出が停止することになる。すなわち、ダイリップの先端は、着色層用感光性樹脂組成物の吐出時には湿潤し、着色層用感光性樹脂組成物の吐出停止時には乾燥することを繰り返すことになる。このため、着色層用感光性樹脂組成物の顔料が高濃度である場合には、着色層用感光性樹脂組成物がダイリップ先端で乾燥した際に顔料濃度が急激に増加し、顔料を中心とした凝集塊である乾燥凝集塊が発生しやすいという問題があった。これらの凝集塊は、ダイリップ先端に付着し、筋の発生原因となったり、着色層用感光性樹脂組成物を吐出した際にリップ先端から剥離して透明基板上に移動し異物欠陥となるといった問題があった。そして、このような異物欠陥や筋が頻発するとカラーフィルタの歩留まりが低下するといった問題があった。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献1〜3では、着色層用感光性樹脂組成物に含まれるバインダー樹脂や分散剤を特定の構造を有するものとすることで、現像性を向上させ残渣の発生を抑制する方法が開示されている。
しかしながら、このような方法を用いることにより、確かに残渣の発生を低減させる効果が認められるものの、着色層用感光性樹脂組成物の溶剤への溶解性が低くなる傾向があり、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生を抑制することができないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−276878号公報
【特許文献2】特開平4−369653号公報
【特許文献3】特開平8−292316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、顔料濃度が高い場合であっても、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生が少ないアルカリ可溶型感光性着色組成物を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、バインダー樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、溶剤と、を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物であって、上記バインダー樹脂が、フェノキシエチル基を有するフェノキシエチル基含有モノマーと、酸基を有する酸基含有モノマーと、を共重合させてなる共重合体を主鎖構造として含むバインダー樹脂用共重合体を含有するものであることを特徴とするアルカリ可溶型感光性着色組成物を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記バインダー樹脂がフェノキシエチル基を含むものであることにより、顔料濃度が高い場合であっても、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができる。その結果、カラーフィルタをダイリップからの乾燥凝集塊の落下による異物欠陥や、乾燥凝集塊の付着しているダイリップによる塗布によって発生する塗膜(着色層)上の筋(ムラ)の発生の少ないものとすることができ、カラーフィルタを歩留まり良く製造することができる。
【0011】
本発明においては、上記バインダー樹脂用共重合体に含まれるフェノキシエチル基含有モノマーの含有量が、上記バインダー樹脂用共重合体中に10質量%〜85質量%の範囲内であることが好ましい。上記フェノキシエチル基含有モノマーが、上記バインダー樹脂用共重合体中に上述した範囲で含まれることにより、より乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるからである。
【0012】
本発明においては、上記バインダー樹脂用共重合体が、上記共重合体に、エポキシ基およびエチレン性不飽和二重結合を有するエポキシ化合物が付加されてなるエポキシ化合物付加共重合体であることが好ましい。上記バインダー樹脂用共重合体が、上記エポキシ化合物付加共重合体であることにより、硬化性および密着性等に優れたものとすることができるからである。
【0013】
本発明においては、上記バインダー樹脂用共重合体の酸価が50mgKOH/g〜150mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。上記酸価が、上述した範囲内であることにより、密着性に優れた着色層とすることができ、かつ、現像性に優れたものとすることができるからである。
【0014】
本発明においては、上記バインダー樹脂用共重合体の重量平均分子量が5000〜20000の範囲内であることが好ましい。上記バインダー樹脂用共重合体の重量平均分子量が上述した範囲であることにより、密着性に優れた着色層とすることができ、かつ、現像性に優れたものとすることができるからである。
【0015】
本発明は、上述したアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0016】
本発明によれば、上記着色層が上述したアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成されたものであることにより、乾燥凝集塊由来の異物や筋の少ないものとすることができる。また、異物が少ないことにより歩留まりの高いものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、顔料濃度が高い場合であっても、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生が少ないアルカリ可溶型感光性着色組成物を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、アルカリ可溶型感光性着色組成物、およびそれを用いたカラーフィルタに関するものである。
以下、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物およびカラーフィルタについて説明する。
【0020】
A.アルカリ可溶型感光性着色組成物
まず、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物について説明する。本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物は、バインダー樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、溶剤と、を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物であって、上記バインダー樹脂が、フェノキシエチル基を有するフェノキシエチル基含有モノマーと、酸基を有する酸基含有モノマーと、を共重合させてなる共重合体を主鎖構造として含むバインダー樹脂用共重合体を含有するものであることを特徴とするものである。
【0021】
本発明によれば、上記バインダー樹脂がフェノキシエチル基を含むものであることにより、顔料濃度が高い場合であっても、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができる。その結果、カラーフィルタをダイリップからの乾燥凝集塊の落下による異物欠陥や、乾燥凝集塊の付着しているダイリップによる塗布によって発生する塗膜(着色層)上の筋(ムラ)の発生の少ないものとすることができ、カラーフィルタを歩留まり良く製造することができる。
ここで、上記バインダー樹脂が、フェノキシエチル基を有するフェノキシエチル基含有モノマーと、酸基を有する酸基含有モノマーと、を共重合させてなる共重合体を主鎖構造として含むバインダー樹脂用共重合体を含有することにより、上述したような効果を奏する理由については、以下のように推察される。
【0022】
すなわち、カラーフィルタの着色層作製に一般的に用いられるバインダー樹脂は、熱安定性等に優れるという利点を有することから、通常、ベンジルメタクリレート、スチレン等の芳香族モノマーを重合してなる樹脂が用いられることが多い。
しかしながら、これらの芳香族モノマーを用いてバインダー樹脂とした場合、そのバインダー樹脂は、嵩高い芳香環を主鎖近くに有するものとなることにより剛直なポリマーとなり、樹脂の自由度が低いものとなる結果、アルカリ可溶型感光性着色組成物において通常用いられる高極性溶剤に対する親和性を十分に高いものとすることができないという欠点を有する。
これに対して、本発明におけるフェノキシエチル基は、酸素原子を有するためバインダー樹脂を比較的極性の高いものとすることができる。また、フェノキシエチル基は、芳香環が酸素原子およびエチル基を介して主鎖に結合するものであるため芳香環の位置の自由度が高く、芳香環が主鎖から離れて位置することを可能とする。このため、樹脂の自由度が高いものとなり、バインダー樹脂を溶剤への親和性を高いものとすることができる結果、顔料濃度が高い場合であっても、顔料等の固形分を溶剤中に分散しやすくさせ、凝集等を抑制させることができる。そして、その結果、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるのである。
【0023】
本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物は、バインダー樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、溶剤とを少なくとも有するものである。
以下、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物の各成分について詳細に説明する。
【0024】
1.バインダー樹脂
本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれるバインダー樹脂は、バインダー樹脂用共重合体を含むものである。
【0025】
(1)バインダー樹脂用共重合体
本発明に用いられるバインダー樹脂用共重合体は、上記共重合体を主鎖構造として含むものである。
【0026】
(a)共重合体
本発明における共重合体は、フェノキシエチル基含有モノマーと、酸基含有モノマーと、を共重合させてなるものである。
【0027】
(i)フェノキシエチル基含有モノマー
本発明におけるフェノキシエチル基含有モノマーは、フェノキシエチル基およびエチレン性不飽和二重結合を有し、上記酸基含有モノマーと共重合可能なものであれば良い。
このようなフェノキシエチル基含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(1)で示すものを用いることができる。
【0028】
【化1】

【0029】
(式(1)中、Xは水素原子またはメチル基を示す。nは、1〜4の整数を示す。)
【0030】
本発明においては、なかでも、式(1)中のnが1である2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、特に、Xがメチル基である2−フェノキシエチルメタクリレートであることが好ましい。
フェノキシエチル基含有モノマーとして、上述した化合物を用いることにより、より乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるからである。
なお、これらのフェノキシエチル基含有モノマーは単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
【0031】
本発明におけるフェノキシエチル基含有モノマーの含有量としては、乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるものであれば良いが、具体的には、上記バインダー樹脂用共重合体中に、10質量%〜85質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも15質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましく、特に20質量%〜75質量%の範囲内であることが好ましい。上記フェノキシエチル基含有モノマーが、上記バインダー樹脂用共重合体中に上述した範囲で含まれることにより、より乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるからである。
なお、上記バインダー樹脂用共重合体中の上記フェノキシエチル基含有モノマーの含有量とは、上記バインダー樹脂用共重合体に含まれる、上記フェノキシエチル基含有モノマー由来成分の質量の割合を言うものである。
【0032】
(ii)酸基含有モノマー
本発明における酸基含有モノマーは、酸基およびエチレン性不飽和二重結合を有するものであり、上記フェノキシエチル基含有モノマーと共重合可能なものであれば良い。
本発明においては、共重合体のモノマー成分として酸基含有モノマーを用いることにより、バインダー樹脂をアルカリ現像性に優れたものとすることができる。
【0033】
本発明における酸基含有モノマーが含むことができる酸基としては、特に限定されるものではないが、カルボキシル基が好ましい。
【0034】
このような酸基含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸およびこれらの無水物を挙げることができ、なかでも、(メタ)アクリル酸を好ましく用いることができる。酸基含有モノマーとして、上述した化合物を用いることにより、密着性に優れた着色層とすることができ、かつ、現像性に優れたものとすることができるからである。
なお、これらの酸基含有モノマーは単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
【0035】
本発明における酸基含有モノマーの含有量としては、乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるものであれば良いが、具体的には、上記バインダー樹脂用共重合体中に、10質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも12質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましく、特に12質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。酸基含有モノマーの含有量が、上記バインダー樹脂用共重合体中に上述した範囲で含まれることにより、密着性に優れた着色層とすることができ、かつ、現像性に優れたものとすることができるからである。
【0036】
(iii)共重合体
本発明における共重合体は、上記フェノキシエチル基含有モノマーおよび酸基含有モノマーを構成単位として少なくとも有するものであれば特に限定されるものではなく、他の構成単位を有するものであっても良い。
【0037】
このような他の構成単位としては、不飽和二重結合を有し、上述したフェノキシエチル基含有モノマーおよび酸基含有モノマーと共重合することができるものであれば良く、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0038】
本発明における共重合体は、上記フェノキシエチル基含有モノマーおよび酸基含有モノマーがランダムに配置されたランダム共重合体であっても良く、上記フェノキシエチル基含有モノマーおよび酸基含有モノマーが、それぞれ連続して重合した領域を有するブロック共重合体であっても良い。
【0039】
本発明における共重合体の製造方法としては、上述したフェノキシエチル基含有モノマーおよび酸基含有モノマーを構成単位として有する共重合体を製造することができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の重合方法を用いることができ、例えばビニル基を有する化合物の重合に一般的に用いられる方法であるラジカル重合、アニオン重合、リビングラジカル重合等を用いることができる。
【0040】
(b)バインダー樹脂用共重合体
本発明に用いられるバインダー樹脂用共重合体は、上記共重合体を主鎖構造として含むものである。
本発明においては、なかでも、上記バインダー樹脂用共重合体が、上記共重合体にエポキシ基およびエチレン性不飽和二重結合を有するエポキシ基含有化合物が付加されてなるもの、すなわち、上記共重合体に含まれる酸基に、上記エポキシ基含有化合物に含まれるエポキシ基を反応させてなるエポキシ化合物付加共重合体であることが好ましい。これにより、エチレン性不飽和二重結合が付加されるため、さらに硬化性および密着性に優れたものとすることができるからである。また、上記共重合体に含まれる酸基と上記エポキシ基とが反応し、水酸基が生成されるため、上記バインダー樹脂用共重合体が水酸基を有するものとすることができ、現像性に優れたものとすることができるからである。
【0041】
このようなエポキシ基含有化合物としては、上記共重合体に含まれる酸基と反応し、上記共重合体に付加し、上記バインダー樹脂用共重合体をエチレン性不飽和二重結合を有するエポキシ化合物付加共重合体とすることができるものであれば良い。
具体的には、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンを挙げることができる。
なお、これらのエポキシ基含有化合物は単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
【0042】
本発明におけるエポキシ基含有化合物の付加量、すなわち、上記バインダー樹脂用共重合体に付加されたエチレン性不飽和二重結合の含有量としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、具体的には、酸基含有モノマーにより、上記バインダー樹脂用共重合体に導入された酸基の10モル%〜100モル%の範囲内であることが好ましく、なかでも、15モル%〜80モル%の範囲内であることが好ましく、特に、20モル%〜60モル%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述した範囲であることにより、密着性に優れ、かつ、現像性に優れたものとすることができるからである。
【0043】
本発明におけるバインダー樹脂用共重合体の重量平均分子量としては、乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるものであれば良いが、具体的には5000〜20000の範囲内であることが好ましく、なかでも、6000〜18000の範囲内であることが好ましく、特に、7000〜15000の範囲内であることが好ましい。上記重量平均分子量が上述した範囲であることにより、密着性に優れ、かつ、現像性に優れたものとすることができるからである。具体的には、上記重量平均分子量が上記範囲より小さいと、アルカリ水溶液への溶解性が大きく、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、露光箇所の着色層も溶解してしまい、上記着色層の密着性が低いものとなってしまう可能性があるからである。また、上記範囲より大きいと、アルカリ水溶液への溶解性が低くなり、現像に要する時間が長いものとなる可能性や、溶剤への溶解性が低下し、ダイリップにおける乾燥凝集塊の発生率が高くなる可能性があるからである。
なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0044】
本発明におけるバインダー樹脂用共重合体の酸価としては、乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるものであれば良いが、具体的には、50mgKOH/g〜150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、なかでも、55mgKOH/g〜130mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、特に、60mgKOH/g〜110mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。上記酸価が、上述した範囲内であることにより、密着性に優れた着色層とすることができ、かつ、現像性に優れたものとすることができるからである。具体的には、上記酸価が上記範囲より大きいと、アルカリ水溶液への溶解性が高すぎるため、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、露光箇所の着色層も溶解してしまい、上記着色層の密着性が低いものとなってしまう可能性があるからである。また上記範囲より小さいと、アルカリ水溶液への溶解性が低いものとなり、現像に要する時間が長いものとなる可能性があるからである。
なお、上記酸価はJIS K 0070に従って測定することができる。
【0045】
本発明におけるバインダー樹脂用共重合体の含有量としては、固形分中に、5質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも8質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、特に10質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、より乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることができるからである。
なお、固形分とは、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる溶剤以外の全てをいうものである。
【0046】
(2)バインダー樹脂
本発明に用いられるバインダー樹脂は、上記バインダー樹脂用共重合体を含むものであるが、必要に応じて、その他の樹脂を含むものであっても良い。
このようなその他の樹脂としては、カラーフィルタの着色層形成に一般的に用いられるものを使用することができ、具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノボラック系樹脂などの感光性または非感光性の樹脂を挙げることができる。
【0047】
2.顔料
本発明に用いられる顔料としては、公知の顔料を用いることができる。本発明において使用可能な有機顔料の具体例を下記表1および表2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
また、用いることができる無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、ベンガラ、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
なお、これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
また、本発明に用いられる顔料の分散平均粒径としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常、0.01μm〜0.15μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01μm〜0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0052】
本発明に用いられる顔料の含有量としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なるが、固形分中に、1質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、特に15質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より多いと、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、乾燥凝集塊が発生する可能性や、現像性が低下する可能性があるからである。また、上記範囲より少ないと、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、着色層を発色が十分なものとすることができない可能性があるからである。
【0053】
3.顔料分散剤
本発明に用いられる顔料分散剤としては、公知の顔料分散剤を使用することができる。具体的には、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、変性ポリエステル、変性ポリアミド等の高分子分散剤、リン酸エステル、アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の界面活性剤や顔料誘導体を挙げることができる。本発明においては、これらの中でも、高分子分散剤が好ましく、具体的な商品名としては、Ciba EFKA−100、Ciba EFKA−400、Ciba EFKA−401、Ciba EFKA−4046、Ciba EFKA−4047、Ciba EFKA−4300、Ciba EFKA−4330、Ciba EFKA−4340(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、Disperbyk111、Disperbyk161、Disperbyk165、Disperbyk167、Disperbyk182、Disperbyk2000、Disperbyk2001、BYK−LPN6919、BYK−LPN21116(以上、ビックケミー社製)、SOLSPERSE24000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE28000(以上、ルーブリゾール社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB827、アジスパーPB880(味の素ファインテクノ(株)製)等を挙げることができる。
【0054】
本発明に用いられる顔料分散剤の含有量としては、上記顔料を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、固形分中に、0.1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも1質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さいと、上記顔料を均一に分散することが困難になり、上記範囲より大きいと、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の現像性が低下したり、未露光部分での残渣が残存する可能性があるからである。
【0055】
4.溶剤
本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる溶剤は、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されるものではない。
【0056】
具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;および、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0057】
本発明に用いられる溶剤の含有量としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物中に60質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。このような含有量であることにより、塗布に適した粘度とすることができるからである。
【0058】
5.アルカリ可溶型感光性着色組成物
本発明に用いられるアルカリ可溶型感光性着色組成物は、バインダー樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、溶剤とを含むものであるが、必要に応じて、多官能性モノマーや光開始剤、および添加剤等を含むものであっても良い。
【0059】
本発明に用いられる多官能性モノマーは、複数の重合性の官能基を有し、光照射により、上記多官能性モノマー同士または上記バインダー樹脂と重合することができるものであれば良い。
このような多官能性モノマーとしては、通常、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが用いられる。
【0060】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
また、上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0062】
これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0063】
本発明に用いられる多官能性モノマーの含有量としては、所望の硬度の着色層とすることができるものであれば良く、固形分中に、5質量%以上であることが好ましく、なかでも9質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合があるからである。また、上記範囲より多いと、未露光箇所分でも現像できなくなる可能性があるからである。
【0064】
本発明に用いられる光開始剤としては、光照射により、上記多官能性モノマー同士を重合することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なものを用いることができる。具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4´−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン‐1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブチキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、1,2−オクタジオン等の光開始剤を挙げることができる。本発明においては、これらの光開始剤を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
このような光開始剤の含有量としては、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を所望の硬化速度で光硬化することができるものであれば良く、固形分中に、0.1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.7質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0066】
本発明における添加剤としては、増感剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤等などが挙げられる。
【0067】
上記増感剤としては、カラーフィルタの着色層の形成に一般的に用いられるものを使用することができ、例えば脂肪族あるいは芳香族の単、多官能チオール化合物や芳香族アミン系化合物等を挙げることができる。このような増感剤の含有量としては、固形分中に0.01質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.7質量%〜3質量%の範囲内であることが好ましい。
【0068】
本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物の製造方法としては、バインダー樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、溶剤とを均一に混合あるいは分散することができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の混合手段あるいは分散手段を用いることができる。
【0069】
B.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述したアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とするものである。
【0070】
このような本発明のカラーフィルタについて図を参照して説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、上記透明基板1上にパターン状に形成され、開口部を備える遮光部2と、上記開口部に形成され、赤色パターン3R、緑色パターン3Gおよび青色パターン3Bから構成される着色層3と、上記着色層3上に形成された保護膜4と、を有するものである。
ここで、上記着色層3は、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成されたものである。
【0071】
本発明によれば、上記着色層が上述したアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成されたものであることにより、乾燥凝集塊由来の異物や筋の少ないものとすることができる。また、異物が少ないことにより歩留まりの高いものとすることができる。
【0072】
本発明のカラーフィルタは、上記着色層を有するものであるが、通常、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、開口部を備える遮光部と、を有するものである。
以下、本発明のカラーフィルタの各構成について説明する。
【0073】
1.着色層
本発明に用いられる着色層は、上述したアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成されたものである。
【0074】
このような本発明に用いられる着色層の配列としては、一般的なカラーフィルタの着色層が有するものとすることができ、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
【0075】
上記着色層の厚みとしては、通常、1μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
【0076】
本発明に用いられる着色層の形成方法は、上記透明基板上に、精度よく形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、通常、フォトリソグラフィー法が用いられる。本発明においては、なかでも上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を、上記透明基板上に、ダイコート法によって塗布する塗布工程と、塗布されたアルカリ可溶型感光性着色組成物を乾燥させた後、フォトリソグラフィー法により露光および現像を行う露光・現像工程とにより形成する方法が好ましい。
本発明においては、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物が、上述したアルカリ可溶型感光性着色組成物であるため、このようなアルカリ可溶型感光性着色組成物をダイコート法を用いて塗布した際に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに発生することを抑制することができる。このため、ダイリップに付着した上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物による筋の発生や、乾燥凝集物が混入することによる異物欠陥の発生防止を容易に図ることができるからである。このため、本発明のカラーフィルタを、異物欠陥の少ないものとすることができ、さらに歩留まりが向上することから高生産性のものとすることができるからである。またダイコート法を用いることにより、サイズの大きな基板であっても容易に、かつ少量で塗布することができるからであるからである。
【0077】
2.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、上記着色層以外に、通常、透明基板、遮光部を有するものであるが、必要に応じて、オーバーコート層、透明電極層や配向膜、柱状スペーサ等が形成されたものであっても良い。
なお、このような透明基板、遮光部、オーバーコート層、透明電極層、配向膜、および柱状スペーサとしては、一般的なカラーフィルタにおいて用いられているものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0078】
本発明のカラーフィルタの製造方法としては、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いたフォトリソグラフィー法によって、上記着色層を形成するものであれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタの製造方法を用いることができる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0081】
[実施例1〜7および比較例1〜3]
1.バインダー樹脂A〜Jの作製
重合槽に、溶媒を300g仕込み、窒素雰囲気下で下記表3に示す主鎖合成温度に昇温した後、フェノキシエチルメタクリレート(PhEMA)、メチルメタクリレート(MMA)、メタクリル酸(MAA)、ベンジルメタクリレート(BzMA)、スチレン(St)およびアゾイソブチロニトリル(AIBN)を下記表3に示す組成で含む主鎖形成用混合物を、それぞれ1.5時間かけて連続的に滴下した。
その後、上記主鎖合成温度を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノールを添加して重合を停止した。
【0082】
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてグリシジルメタクリレート(GMA)を下記表3に示す組成で添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミンを添加して110℃で15時間付加反応させ、バインダー樹脂用共重合体(バインダー樹脂A〜J)を得た。また、その共重合体を単離し、重量平均分子量(Mw)および酸価(AV)(単位、mgKOH/g)を測定した結果を表3に示す。
なお、上記重量平均分子量の測定方法は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム−21H(Shodex GPC System−21H)により重量平均分子量を測定した。また酸価の測定方法は、JIS K 0070に基づいて測定した。
【0083】
なお、溶媒としては、それぞれ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、および、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)/プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)=1/1の混合溶媒(PGMEA/MFG)を用いた。
また、表3における主鎖形成用混合物の各成分、エポキシ基含有化合物、トリエチルアミン、およびp−メトキシフェノールの数値は、配合の割合を重量部で表したものである。
【0084】
【表3】

【0085】
2.アルカリ可溶型感光性着色組成物
実施例1〜7および比較例1〜3として、それぞれ上記バインダー樹脂A〜Jを用い、下記に示す組成を、ビーズミルを使用して均一に混合分散してアルカリ可溶型感光性着色組成物を調製した。
なお、固形分換算とは、各成分中の固形分の重量部で表したものである。
【0086】
<アルカリ可溶型感光性着色組成物の組成>
・上記バインダー樹脂:7.7重量部(固形分換算)
・ジペンタエリストールヘキサアクリレート(DPHA):3.3重量部
・イルガキュア369(チバスペシャリティーケミカルズ社製、IRGACURE369):1重量部
・イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカルズ社製、IRGACURE907):1重量部
・ピグメントレッド177(赤色顔料、P.R.177):0.7重量部
・ピグメントレッド254(赤色顔料、P.R.254):5.6重量部
・ピグメントイエロー139(黄色顔料、P.Y.139):0.7重量部
・分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk161):2.0重量部(固形分換算)
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):60.8重量部
【0087】
[評価]
実施例および比較例で得られたアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて、着色層の形成を行い、現像性、密着性、再溶解性について評価を行った。
【0088】
1.着色層の形成
アルカリ洗浄済みのガラス基板上に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物をスピンコーティングし、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物からなる着色層形成用層を形成した後、室温3分間、80℃のホットプレート上で3分間加熱することによりプリベイクさせ、乾燥させた。
次いで、乾燥後の上記着色層形成用層を、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cmでマスク露光し硬化させた。
次いで、0.05wt%水酸化カリウム(KOH)を現像液として用いてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理を行った。その後、パターン形成された基板を230℃のオーブン内で30分間ポストベイクした。ポストベイク後の着色層形成用層からなる着色層の膜厚は、1.9μmであった。
【0089】
2.評価
アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成された着色層について、現像性、密着性、現像形態および溶剤再溶解性について評価を行った。
【0090】
(1)現像性
上記着色層の形成において、未露光部が溶解し、現像されるまでの時間を測定し、下記基準で評価を行った。現像の終了は、目視により判断した。結果を表4に示す。
・○:10秒〜30秒で現像が終了する。
・△:31秒〜60秒で現像が終了する。
・×:60秒以内で現像が終了しない。
【0091】
(2)密着性
1μm〜100μmの線幅のラインパターンを露光し、現像後に溶解されずに密着しているラインパターンの最小線幅を測定し、下記基準で評価した。結果を表4に示す。
・○:10μm以下の線幅のラインが密着している。
・△:10μmより大きく、20μm以下の線幅のラインが密着している。
・×:20μm以下の線幅のラインが密着しない。
【0092】
(3)現像形態
上記着色層の形成において、未露光部が現像されるときの、現像のされ方を観察し、溶解型か、剥離型かを観察した。結果を表4に示す。
なお、溶解型とは、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物からなる着色層形成用層が徐々に溶解される現像状態をいうものであり、剥離型とは、徐々に溶解される溶解型とは異なり、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の塊が上記カラーフィルタ上から剥離するように現像される現像状態をいうものである。
【0093】
(4)乾燥塗膜の溶剤再溶解性
ダイコート法における異物欠陥発生の有無を評価する代替法として、乾燥塗膜の溶剤再溶解性評価を行った。評価方法としては、ガラス基板上に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を、塗布し、恒温恒湿オーブンを用いて、25℃、湿度55%の条件下で、30分風乾したのち、乾燥塗膜が付着したガラス基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に10分間浸漬した。このとき、乾燥塗膜の再溶解状態により、下記の3段階で評価した。結果を表4に示す。
・○:浸漬中に乾燥塗膜がすべて溶解する。
・△:10分間浸漬後も、乾燥塗膜の一部が残る。
・×:10分間浸漬後も乾燥塗膜がほとんどもしくは全く溶解しない。
【0094】
【表4】

【0095】
表4に示すように、実施例では現像性に優れるアルカリ可溶型感光性着色組成物とすることができ、さらに密着性および溶剤再溶解性に優れる着色層とすることができた。これにより、例え、ダイコート法を用いて着色層を形成した場合であっても、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生が少ないものとすることが確認できた。また、同時に密着性および現像性に優れるものとすることができた。
一方、比較例では、現像性および密着性に優れるものとすると共に、溶剤再溶解性、すなわち、乾燥凝集塊の発生を少ないものとすることができなかった。
【符号の説明】
【0096】
1…透明基板
2…遮光部
3…着色層
4…保護膜
10…カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、溶剤と、を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物であって、
前記バインダー樹脂が、フェノキシエチル基を有するフェノキシエチル基含有モノマーと酸基を有する酸基含有モノマーとを共重合させてなる共重合体を主鎖構造として含むバインダー樹脂用共重合体を含有するものであることを特徴とするアルカリ可溶型感光性着色組成物。
【請求項2】
前記バインダー樹脂用共重合体に含まれるフェノキシエチル基含有モノマーの含有量が、前記バインダー樹脂用共重合体中に10質量%〜85質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶型感光性着色組成物。
【請求項3】
前記バインダー樹脂用共重合体が、前記共重合体に、エポキシ基およびエチレン性不飽和二重結合を有するエポキシ化合物が付加されてなるエポキシ化合物付加共重合体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルカリ可溶型感光性着色組成物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂用共重合体の酸価が50mgKOH/g〜150mgKOH/gの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のアルカリ可溶型感光性着色組成物。
【請求項5】
前記バインダー樹脂用共重合体の重量平均分子量が5000〜20000の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のアルカリ可溶型感光性着色組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−217529(P2010−217529A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64447(P2009−64447)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】