説明

アルカリ形燃料電池システム

【課題】アルカリ形燃料電池が有する電極の湿度(水分含有量)を最適に調整することにより、高い出力電圧を安定して維持することのできるアルカリ形燃料電池システムを提供する。
【解決手段】アノード極、アニオン伝導性電解質膜およびカソード極をこの順で備えるアルカリ形燃料電池を含む燃料電池部101と、アノード極に還元剤を供給するための還元剤供給部102と、カソード極に酸化剤を供給するための酸化剤供給部103と、アノード極に供給される還元剤の流量および/または湿度を調整するための第1調整部104と、アノード極から排出される還元剤の相対湿度Hを少なくとも検出する第1検出部105と、第1調整部104および第1検出部105に接続され、第1検出部105による検出結果に基づいて、第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度の調整を制御するための第1制御部106とを備えるアルカリ形燃料電池システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ形燃料電池が有する電極の湿度(水分含有量)を最適に調整することができるアルカリ形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、小型軽量化や高出力密度を実現できる可能性を有していることから、携帯用電子機器用の新規電源や家庭用コジェネレーションシステムなどへの用途展開が精力的に進められている。燃料電池は、発電主要部として、電解質膜をアノード極およびカソード極で挟持した構成の膜電極複合体(MEA)を備えており、電解質膜の種類によって、固体高分子形燃料電池(直接形燃料電池を含む)、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、アルカリ形燃料電池などに分類される。
【0003】
アルカリ形燃料電池は、電解質膜としてアニオン交換膜を用いた、電荷キャリアが水酸化物イオン(OH-)である燃料電池である(たとえば、特許文献1参照)。アルカリ形燃料電池においては、次のような電気化学反応により電力が取り出される。すなわち、カソード極に酸化剤および水(この水は、アノード極で生じ、電解質膜を透過した水であり得る)を供給すると、下記式(1):
カソード極:1/2O2+H2O+2e → 2OH- (1)
で表される触媒反応によりOH-が生成される。このOH-は、水分子との水和状態で電解質膜を介してアノード極側に伝達される。一方、アノード極では、供給された還元剤(燃料)、たとえばH2ガスとカソード極から伝達されたOH-とが、下記式(2):
アノード極:H2+2OH- → 2H2O+2e (2)
で表される触媒反応を起こし、水および電子を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−135137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記式(2)に示されるように、アルカリ形燃料電池のアノード極では、反応により水が発生するが、その水の生成量はアノード極−カソード極間に流れる電流量の増減に応じて増減し、したがって、アノード極の湿度(水分含有量)も増減することになる。このようなアノード極の湿度変動は、燃料電池の出力電圧の低下を招き得る。すなわち、アノード極の湿度が過度に高くなると、水膜状となってアノード極の細孔を閉塞させ、還元剤の供給が阻害される、いわゆる「フラッディング」が生じる。また、湿度が過度に低くなると、電解質膜が乾燥した状態(以下、「ドライアップ」ともいう)になることによって電解質膜のアニオン伝導抵抗が増加する。「フラッディング」および「ドライアップ」はともに燃料電池の出力電圧を低下させる要因となる。
【0006】
一方、上記式(1)に示されるように、アルカリ形燃料電池のカソード極では、反応により水が消費されるが、その水の消費量はアノード極−カソード極間に流れる電流量の増減に応じて増減し、したがって、カソード極の湿度(水分含有量)も増減することになる。このようなカソード極の湿度変動もまた、燃料電池の出力電圧の低下を招き得る。すなわち、カソード極の湿度が過度に高くなると、水膜状となってカソード極の細孔を閉塞させ、酸化剤の供給が阻害される「フラッディング」が生じる。また、湿度が過度に低くなると、「ドライアップ」が生じて電解質膜のアニオン伝導抵抗が増加する。
【0007】
従来のアルカリ型燃料電池でも、「ドライアップ」および「フラッディング」を抑制するため、アノード極に供給する還元剤の湿度、および/または、カソード極に供給する酸化剤の湿度を一定値(たとえば、相対湿度=100〔%RH〕)に調節することが行なわれてきたが、アルカリ形燃料電池の動作状態が変わることによって、上述のように、アノード極−カソード極間に流れる電流量の増減すると、アルカリ形燃料電池の電極の湿度(水分含有量)が変動するため、電極の湿度(水分含有量)を最適な状態に維持することができないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、アルカリ形燃料電池が有する電極の湿度(水分含有量)を最適に調整することにより、高い出力電圧を安定して維持することのできるアルカリ形燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アルカリ形燃料電池のアノード極に供給される還元剤の流量(アノード極に導入される直前の流量)をNt、その還元剤の湿度をφw(ただし、0≦φw≦1)とすると、この還元剤の水分含有量はφw×Ntである。そして、アノード極内で生成する水の量をNrとすると、アノード極内での還元剤の流量はおよそNtであり、その水分含有量はφw×Nt+Nrと計算される。そうすると、アノード極内での還元剤の湿度(アノード極の湿度と実質的に同じとみなすことができる。)は、下記式(3):
アノード極内での還元剤の湿度=(φw×Nt+Nr)/Nt
=φw+Nr/Nt (3)
と算出できる。
【0010】
上記式(3)は、アノード極の湿度が、還元剤の流量Ntおよび/またはアノード極に導入される還元剤の湿度φwの調整により制御可能であることを意味している。そして、アノード極の湿度(アノード極内での還元剤の湿度)は、アノード極から排出される還元剤の湿度から把握することができる。また、アノード極−カソード極間に流れる電流量が増加してアノード極内で生成する水の量Nrが増加すると、アノード極の湿度が上昇することもわかる。
【0011】
また、アルカリ形燃料電池のカソード極に供給される酸化剤の流量(カソード極に導入される直前の流量)をNt’、その酸化剤の湿度をφw’(ただし、0≦φw’≦1)とすると、この酸化剤の水分含有量はφw’×Nt’である。そして、カソード極内で消費される水の量をNr’とすると、カソード極内での酸化剤の流量はおよそNt’であり、その水分含有量はφw’×Nt’−Nr’と計算される。そうすると、カソード極内での酸化剤の湿度(カソード極の湿度と実質的に同じとみなすことができる。)は、下記式(4):
カソード極内での酸化剤の湿度=(φw’×Nt’−Nr’)/Nt
=φw’−Nr’/Nt’ (4)
と算出できる。
【0012】
上記式(4)は、カソード極の湿度が、酸化剤の流量Nt’および/またはカソード極に導入される酸化剤の湿度φw’の調整により制御可能であることを意味している。そして、カソード極の湿度(カソード極内での酸化剤の湿度)は、カソード極から排出される酸化剤の湿度から把握することができる。また、アノード極−カソード極間に流れる電流量が増加してカソード極内で消費される水の量Nr’が増加すると、カソード極の湿度が低下することもわかる。本発明は、本発明者らによる以上のような着想に基づき、さらに種々の検討を重ねてなされたものである。
【0013】
すなわち本発明は、アルカリ形燃料電池の電極(アノード極および/またはカソード極)の湿度を最適に調整することができるアルカリ形燃料電池システムを提供するものであり、具体的には下記〔A〕および〔B〕のアルカリ形燃料電池システムを提供する。
【0014】
〔A〕アノード極、アニオン伝導性電解質膜およびカソード極をこの順で備えるアルカリ形燃料電池を含む燃料電池部と、アノード極に還元剤を供給するための還元剤供給部と、カソード極に酸化剤を供給するための酸化剤供給部と、アノード極に供給される還元剤の流量および/または湿度を調整するための第1調整部と、アノード極から排出される還元剤の相対湿度Hを少なくとも検出する第1検出部と、第1調整部および第1検出部に接続され、第1検出部による検出結果に基づいて、第1調整部による還元剤の流量および/または湿度の調整を制御するための第1制御部とを備えるアルカリ形燃料電池システム。
【0015】
第1検出部は、アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δi(以下、単にΔiという)および出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔV(以下、単にΔVという)をさらに検出するものであることが好ましい。
【0016】
上記〔A〕のアルカリ形燃料電池システムは、たとえば次のような制御によりアノード極の湿度の調整を行なう。
【0017】
(a)第1検出部によって検出された相対湿度Hが所定値AH(ただし、AHは100%RHより小さい値である。)以下である場合には、第1制御部は、第1調整部が還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御し、相対湿度Hが所定値BH(ただし、BHは100%RHより大きい値である。)以上である場合には、第1制御部は、第1調整部が還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する。
【0018】
ここで相対湿度Hとは、アルカリ形燃料電池の温度に置かれた還元剤が水蒸気として含むことができる水重量の最大値に対する、還元剤に含まれる水重量の比を百分率で表したものと定義され、100%RHより大きい値とは、還元剤に含まれる水重量が、アルカリ形燃料電池の温度に置かれた還元剤が水蒸気として含むことができる水重量の最大値より大きい場合となる。
【0019】
相対湿度Hの所定値AHは、好ましくは80〜95〔%RH〕の範囲内であり、所定値BHは、好ましくは105〜150〔%RH〕の範囲内である。
【0020】
(b)第1検出部によって検出されたΔiがCi〜Di(ただし、Ciは負の値であり、Diは正の値である。)の範囲内である場合において、第1検出部によって検出された相対湿度Hが所定値EH(ただし、EHは100%RHより小さい値である。)以下である場合には、第1制御部は、第1調整部が還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御する。一方、第1検出部によって検出された相対湿度Hが所定値FH(ただし、FH=100%RHである。)以上である場合には、第1制御部は、第1検出部がΔVを検出するように制御するとともに、該ΔVが所定値GV(ただし、GVは負の値である。)未満である場合には、第1調整部が還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する。
【0021】
(c)第1検出部によって検出されたΔiがCi〜Di(ただし、Ciは負の値であり、Diは正の値である。)の範囲内である場合において、第1検出部によって検出されたΔVが所定値GV(ただし、GVは負の値である。)未満である場合には、第1制御部は、第1検出部が相対湿度Hを検出するように制御するとともに、該相対湿度Hが所定値EH(ただし、EHは100%RHより小さい値である。)以下である場合には、第1調整部が還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御する。一方、相対湿度Hが所定値FH(ただし、FH=100%RHである。)以上である場合には、第1調整部が還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する。
【0022】
上記(b)および(c)のアノード極の湿度制御において、Δiの所定値Ciは、好ましくは−50〜−25〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、所定値Diは、好ましくは+25〜+50〔mA/cm2・min〕の範囲内である。相対湿度Hの所定値EHは、好ましくは80〜95〔%RH〕の範囲内である。また、ΔVの所定値GVは、好ましくは−50〜−2〔mV/min〕の範囲内である。
【0023】
第1検出部によって検出されたΔiが所定値Ciより小さい場合には、第1制御部は、第1調整部が還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御し、第1検出部によって検出されたΔiが所定値Diより大きい場合には、第1制御部は、第1調整部が還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御することが好ましい。
【0024】
上記〔A〕のアルカリ形燃料電池システムが有するアルカリ形燃料電池は、アノードセパレータ、アノード極、アニオン伝導性電解質膜、カソード極およびカソードセパレータをこの順で備えるものであることができる。還元剤供給部は、たとえば、還元剤を保持する還元剤供給源とアルカリ形燃料電池のアノードセパレータとを接続する配管を含むものであることができる。この場合、第1調整部は、該配管に備えられた流量調整弁および/または調湿器であることができる。
【0025】
〔B〕アノード極、アニオン伝導性電解質膜およびカソード極をこの順で備えるアルカリ形燃料電池を含む燃料電池部と、アノード極に還元剤を供給するための還元剤供給部と、カソード極に酸化剤を供給するための酸化剤供給部と、カソード極に供給される酸化剤の流量および/または湿度を調整するための第2調整部と、カソード極から排出される酸化剤の相対湿度H’を少なくとも検出する第2検出部と、第2調整部および第2検出部に接続され、第2検出部による検出結果に基づいて、第2調整部による酸化剤の流量および/または湿度の調整を制御するための第2制御部とを備えるアルカリ形燃料電池システム。
【0026】
第2検出部は、アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δi’(以下、単にΔi’という)および出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔV’(以下、単にΔV’という)をさらに検出するものであることが好ましい。
【0027】
上記〔B〕のアルカリ形燃料電池システムは、たとえば次のような制御によりカソード極の湿度の調整を行なう。
【0028】
(a’)第2検出部によって検出された相対湿度H’が所定値AH’(ただし、AH’は100%RHより小さい値である。)以下である場合には、第2制御部は、第2調整部が酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御し、第2検出部によって検出された相対湿度H’が所定値BH’(ただし、BH’は100%RHより大きい値である。)以上である場合には、第2制御部は、第2調整部が酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する。
【0029】
ここで相対湿度H’とは、アルカリ形燃料電池の温度に置かれた酸化剤が水蒸気として含むことができる水重量の最大値に対する、酸化剤に含まれる水重量の比を百分率で表したものと定義され、100%RHより大きい値とは、酸化剤に含まれる水重量が、アルカリ形燃料電池の温度に置かれた酸化剤が水蒸気として含むことができる水重量の最大値より大きい場合となる。
【0030】
相対湿度H’の所定値AH’は、好ましくは70〜95〔%RH〕の範囲内であり、所定値BH’は、好ましくは105〜130〔%RH〕の範囲内である。
【0031】
(b’)第2検出部によって検出されたΔi’がCi’〜Di’(ただし、Ci’は負の値であり、Di’は正の値である。)の範囲内である場合において、第2検出部によって検出された相対湿度H’が所定値EH’(ただし、EH’は100%RHより小さい値である。)以下である場合には、第2制御部は、第2調整部が酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する。一方、第2検出部によって検出された相対湿度H’が所定値FH’(ただし、FH’=100%RHである。)以上である場合には、第2制御部は、第2検出部がΔV’を検出するように制御するとともに、該ΔV’が所定値GV’(ただし、GV’は負の値である。)未満である場合には、第2調整部が酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する。
【0032】
(c’)第2検出部によって検出されたΔi’がCi’〜Di’(ただし、Ci’は負の値であり、Di’は正の値である。)の範囲内である場合において、第2検出部によって検出されたΔV’が所定値GV’(ただし、GV’は負の値である。)未満である場合には、第2制御部は、第2検出部が相対湿度H’を検出するように制御するとともに、該相対湿度H’が所定値EH’(ただし、EH’は100%RHより小さい値である。)以下である場合には、第2調整部が酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する。一方、相対湿度H’が所定値FH’(ただし、FH’=100%RHである。)以上である場合には、第2調整部が酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する。
【0033】
上記(b’)および(c’)のカソード極の湿度制御において、Δi’の所定値Ci’は、好ましくは−50〜−25〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、所定値Di’は、好ましくは+25〜+50〔mA/cm2・min〕の範囲内である。相対湿度H’の所定値EH’は、好ましくは70〜95〔%RH〕の範囲内である。また、ΔV’の所定値GV’は、好ましくは−50〜−2〔mV/min〕の範囲内である。
【0034】
第2検出部によって検出されたΔi’が所定値Ci’より小さい場合には、第2制御部は、第2調整部が酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御し、第2検出部によって検出されたΔi’が所定値Di’より大きい場合には、第2制御部は、第2調整部が酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御することが好ましい。
【0035】
上記〔B〕のアルカリ形燃料電池システムが有するアルカリ形燃料電池は、アノードセパレータ、アノード極、アニオン伝導性電解質膜、カソード極およびカソードセパレータをこの順で備えるものであることができる。酸化剤供給部は、たとえば、酸化剤供給源とアルカリ形燃料電池のカソードセパレータとを接続する配管を含むものであることができる。この場合、第2調整部は、該配管に備えられた流量調整弁および/または調湿器であることができる。
【0036】
本発明のアルカリ形燃料電池システムにおいて、燃料電池部は、直列または並列に電気的に接続された2以上のアルカリ形燃料電池を含むことができる。本発明のアルカリ形燃料電池システムに用いられる還元剤は好ましくは水素ガスであり、酸化剤は好ましくは空気である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、アルカリ形燃料電池の動作状態を反映するアノード極から排出される還元剤の湿度および/またはカソード極から排出される酸化剤の湿度、さらにはアノード極とカソード極との間を流れる電流値、出力電圧値を検出し、それに基づき、アノード極に供給する還元剤および/またはカソード極に供給する酸化剤の湿度や流量を調整することで、アルカリ形燃料電池が有する電極(アノード極および/またはカソード極)の湿度(水分含有量)を最適に調整することができ、もって高い出力電圧を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムの構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムに用いるアルカリ形燃料電池の好ましい一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムの構成の他の一例を示す概略図である。
【図11】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の一例を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図15】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図16】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図17】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。
【図18】本発明に係るアルカリ形燃料電池システムの構成の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1の実施形態>
[a]アルカリ形燃料電池システムの構成
図1は、本発明に係る上記アルカリ形燃料電池システム〔A〕の構成の一例を示す概略図である。図1に示されるアルカリ形燃料電池システム100は、アルカリ形燃料電池が有するアノード極の湿度を最適に調整することが可能なシステムであり、アルカリ形燃料電池を含む燃料電池部101;燃料電池部101に接続され、アルカリ形燃料電池のアノード極に還元剤を供給するための還元剤供給部102;燃料電池部101に接続され、アルカリ形燃料電池のカソード極に酸化剤を供給するための酸化剤供給部103;還元剤供給部102に接続され、アノード極に供給される還元剤の流量および/または湿度を調整するための第1調整部104;燃料電池部101に接続され、アルカリ形燃料電池のアノード極から排出される還元剤の相対湿度Hを少なくとも検出する第1検出部105;ならびに、第1調整部104および第1検出部105に接続され、第1検出部105による検出結果に基づいて、第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度の調整を制御するための第1制御部106を含む。
【0040】
第1検出部105は、アノード極から排出される還元剤の相対湿度Hのほか、好ましくは、アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δiおよび出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔVをさらに検出するものである。
【0041】
なお以下では、アノード極に供給される還元剤の湿度(相対湿度)を還元剤の「入口側湿度(入口側相対湿度)」とも称し、アノード極から排出される還元剤の湿度(相対湿度H)を還元剤の「出口側湿度(出口側相対湿度H)」とも称する。
【0042】
本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによれば、還元剤の出口側相対湿度H、さらにはΔiおよびΔVのような電池特性を検出し、当該検出結果に基づいてリアルタイムにアルカリ形燃料電池のアノード極に供給される還元剤の流量および/または湿度(入口側湿度)の最適化を行なうことができるため、アノード極の湿度が最適化され、結果、上述したアノード極への還元剤の供給を阻害させる「フラッディング」および電解質膜の水分が過少となりアニオン伝導抵抗を増加させる「ドライアップ」の未然防止または改善を図ることが可能になる。これにより、安定して高い出力電圧を維持することができる。
【0043】
(燃料電池部)
燃料電池部101はアルカリ形燃料電池から構成される。アルカリ形燃料電池とは、電解質膜としてアニオン伝導性電解質膜(アニオン交換膜)を備えた、電荷キャリアが水酸化物イオン(OH-)である燃料電池である。アルカリ形燃料電池は、アノード極、アニオン伝導性電解質膜およびカソード極をこの順で有する膜電極複合体(MEA)を発電主要部として備える。
【0044】
図2は、本発明のアルカリ形燃料電池システムに用いるアルカリ形燃料電池の好ましい一例を示す概略断面図であり、アルカリ形燃料電池の単セル構造を示したものである。図2に示されるアルカリ形燃料電池200は、アノード極202、アニオン伝導性電解質膜201およびカソード極203をこの順で有する膜電極複合体(MEA)210と、アノード極202の外面に積層されるアノードセパレータ204と、カソード極203の外面に積層されるカソードセパレータ205とを備える。アノードセパレータ204およびカソードセパレータ205のMEA側表面には、それぞれ還元剤、酸化剤をアノード極202、カソード極203に導入するための還元剤流路206、酸化剤流路207が設けられている。
【0045】
(1)アニオン伝導性電解質膜
アニオン伝導性電解質膜201としては、OH-イオンを伝導でき、かつ、アノード極202とカソード極203との間の短絡を防止するために電気的絶縁性を有する限り特に制限されないが、アニオン伝導性固体高分子電解質膜を好適に用いることができる。アニオン伝導性固体高分子電解質膜の好ましい例は、たとえば、パーフルオロスルホン酸系、パーフルオロカルボン酸系、スチレンビニルベンゼン系、第4級アンモニウム系の固体高分子電解質膜(アニオン交換膜)が挙げられる。また、ポリアクリル酸に濃厚水酸化カリウム溶液を含浸させた膜やアニオン伝導性固体酸化物電解質膜をアニオン伝導性電解質膜201として用いることもできる。
【0046】
アニオン伝導性電解質膜201は、アニオン伝導率が10-5S/cm以上であることが好ましく、パーフルオロスルホン酸系高分子電解質膜などのアニオン伝導率が10-3S/cm以上の電解質膜を用いることがより好ましい。アニオン伝導性電解質膜201の厚みは、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜200μmである。
【0047】
(2)アノード極およびカソード極
アニオン伝導性電解質膜201の一方の面に形成されるアノード極202および他方の面に形成されるカソード極203には、触媒(それぞれアノード触媒、カソード触媒)と電解質(それぞれアノード電解質、カソード電解質)とを含有する多孔質層からなる触媒層(それぞれアノード触媒層、カソード触媒層)が少なくとも設けられる。これらの触媒層は、アニオン伝導性電解質膜201の表面に接して積層される。アノード触媒は、アノード極202に供給された還元剤とOH-とから、水および電子を生成する反応を触媒する。アノード電解質は、アニオン伝導性電解質膜201から伝導してきたOH-を触媒反応サイトへ伝導する機能を有する。一方、カソード触媒は、カソード極203に供給された酸化剤および水と、アノード極202から伝達された電子とから、OH-を生成する反応を触媒する。カソード電解質は、生成したOH-をアニオン伝導性電解質膜201へ伝導する機能を有する。
【0048】
アノード触媒およびカソード触媒としては、従来公知のものを使用することができ、たとえば、白金、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銀、ルテニウム、イリジウム、モリブデン、マンガン、これらの金属化合物、およびこれらの金属の2種以上を含む合金からなる微粒子が挙げられる。合金は、白金、鉄、コバルト、ニッケルのうち少なくとも2種以上を含有する合金が好ましく、たとえば、白金−鉄合金、白金−コバルト合金、鉄−コバルト合金、コバルト−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金等、鉄−コバルト−ニッケル合金が挙げられる。アノード触媒とカソード触媒とは同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0049】
アノード触媒およびカソード触媒は、担体、好ましくは導電性の担体に担持されたものを用いることが好ましい。導電性担体としては、たとえば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、活性炭等の導電性カーボン粒子が挙げられる。また、気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー等の炭素繊維を用いることもできる。
【0050】
アノード電解質およびカソード電解質としては、アニオン伝導性固体高分子電解質膜を構成する電解質と同様のものを用いることができる。アノード触媒層およびカソード触媒層における触媒と電解質との含有比は、重量基準で、通常5/1〜1/4であり、好ましくは3/1〜1/3である。
【0051】
アノード極202およびカソード極203はそれぞれ、アノード、カソード触媒層上に積層されるアノードガス拡散層、カソードガス拡散層を備えていてもよい。これらのガス拡散層は、アノード極202、カソード極203に供給される還元剤または酸化剤を面内において拡散させる機能を有するとともに、アノード触媒層、カソード触媒層と電子の授受を行なう機能を有する。
【0052】
アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層は、導電性を有する多孔質層であることができ、具体的には、たとえば、カーボンペーパー;カーボンクロス;カーボン粒子を含有するエポキシ樹脂膜;金属または合金の発泡体、焼結体または繊維不織布などであることができる。アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層の厚みはそれぞれ、厚み方向に対して垂直な方向(面内方向)への還元剤または酸化剤の拡散抵抗を低減させるために、10μm以上であることが好ましく、厚み方向への拡散抵抗を低減させるために、1mm以下であることが好ましい。アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層の厚みは、より好ましくは100〜500μmである。
【0053】
(3)アノードセパレータおよびカソードセパレータ
図2に示されるように、アルカリ形燃料電池は、通常、膜電極複合体210のアノード極202上に配置される、還元剤をアノード極202へ導入するためのアノードセパレータ204およびカソード極203上に配置される、酸化剤をカソード極203に導入するためのカソードセパレータ205を備える。アノードセパレータ204およびカソードセパレータ205はそれぞれ、膜電極複合体210側の面に還元剤または酸化剤を流通させるための溝からなる流路(それぞれ還元剤流路206、酸化剤流路207)を備えるものであることができる。当該流路は、1または2以上の溝から構成することができ、その形状は特に制限されず、ライン状、サーペンタイン状等であることができる。後述する還元剤供給部と還元剤流路206とを接続することにより、還元剤を還元剤流路206に流通させて、アノード極202に還元剤を供給することができる。同様に、後述する酸化剤供給部と酸化剤流路207とを接続することにより、酸化剤を酸化剤流路207に流通させて、カソード極203に酸化剤を供給することができる。
【0054】
アノードセパレータ204およびカソードセパレータ205の材質は特に制限されず、たとえば、カーボン材料、導電性高分子、各種金属、ステンレスに代表される合金などの導電性材料のほか、各種プラスチック材料などの非導電性材料が挙げられる。なかでも、アノードセパレータ204およびカソードセパレータ205に集電機能を付与できることから、導電性材料を用いることが好ましい。非導電性材料を用いる場合には、アノード極およびカソード極に別途、触媒層やガス拡散層上に積層される上記導電性材料からなる集電体(集電層)が設けられる。あるいは、アノードセパレータ204およびカソードセパレータ205を導電性材料から構成し、それらの外側または膜電極複合体210と各セパレータとの間に集電体を別途設けてもよい。アノードセパレータ204とカソードセパレータ205(またはアノード集電体とカソード集電体)とを電気的に接続することにより、アノード極とカソード極との電気的接続を行なうことができる。
【0055】
還元剤(燃料)としては、たとえば、H2ガス、炭化水素ガス、アンモニアガスなどを用いることができる。なかでも、H2ガスを用いることが好ましい。酸化剤としては、たとえば、O2ガスや、空気等のO2を含むガスなどを用いることができる。なかでも、空気が好ましく用いられる。
【0056】
燃料電池部101は、アルカリ形燃料電池を2以上備えることができる。2以上のアルカリ形燃料電池は、互いに直列に電気的接続されていてもよいし、並列に電気的接続されていてもよく、あるいはこれらの両者の電気的接続を含んでいてもよい。たとえば、図2に示されるような単セルの複数を直列に積層した燃料電池スタックや、図2に示されるような単セルの複数を同一平面上に配置し、これらを並列に電気的接続した平面状集積電池、および該平面状集積電池の複数を直列に積層した燃料電池スタックなどを挙げることができる。
【0057】
(還元剤供給部および酸化剤供給部)
還元剤供給部102は、アルカリ形燃料電池のアノード極に還元剤を供給するための部位であり、たとえば、還元剤供給源(還元剤収容タンクなど)とアルカリ形燃料電池のアノード側(より具体的にはアノードセパレータの還元剤流路)とを接続する配管であることができる。また、酸化剤供給部103は、アルカリ形燃料電池のカソード極に酸化剤を供給するための部位であり、たとえば、酸化剤供給源(酸化剤収容タンクなど)とアルカリ形燃料電池のカソード側(より具体的にはカソードセパレータの酸化剤流路)とを接続する配管であることができる。還元剤供給部102および酸化剤供給部103の材質は特に制限されず、高分子材料、金属、合金などであってよい。還元剤供給部102および酸化剤供給部103には、必要に応じて、還元剤または酸化剤の流動を促進するポンプやファンが設けられてもよい。
【0058】
(第1調整部)
第1調整部104は、還元剤供給部102を流通する(アノード極に供給されることとなる)還元剤の流量あるいは湿度(相対湿度)、またはこれらの双方を調整するための部位であり、還元剤供給部102に接続される。第1調整部104は、たとえば、還元剤供給部102内に設けられた、還元剤の流量を調整する流量調整弁あるいは還元剤の湿度を調整する調湿器、またはこれらの双方であることができる。流量調整弁および調湿器は従来公知のものであってよい。
【0059】
調湿器の具体例を挙げれば、たとえば次のようなものが挙げられる。
1)温度制御可能な水浴を有しており、還元剤を水浴中の水中へバブリングさせることにより加湿を行なう装置。水浴の温度を調整することにより、還元剤の湿度を増減させることができる。
【0060】
2)還元剤供給部102内を流通する還元剤に対して、温度制御された霧状(スプレー状)の水を吹き込む装置。この装置においても水温の調整により、還元剤の湿度を増減させることができる。
【0061】
3)細孔に水を含む多孔質金属(発泡金属など)を備え、該細孔内に還元剤を通過させることにより加湿を行なう装置。この装置においても多孔質金属の温度調整により、還元剤の湿度を増減させることができる。
【0062】
上記のような、温度により還元剤の湿度を調整する調湿器を用いる場合には、第1調整部104は、調湿器の温度(水温、多孔質金属の温度等)を検知するための温度検知手段(温度センサ)を具備するとともに、燃料電池部101は、アルカリ形燃料電池内(特にアノード極)の温度を検知するための温度検知手段(温度センサ)を具備することが好ましい。この場合、後述する第1制御部106は、両者の温度検知手段による温度検知結果に基づき、調湿器が所望の温度調整を行なうように制御する。具体的には、調湿器の温度を高く/低くすることにより、還元剤の湿度を増加/低下させることができる。
【0063】
第1調整部104によって調節される「還元剤の湿度」は、下記式(5):
還元剤の湿度=〔第1調整部(調湿器)の温度における水の飽和蒸気圧〕/〔アルカリ形燃料電池の温度における水の飽和蒸気圧〕 (5)
により定義される。
【0064】
なお、ある温度Tにおける水の飽和蒸気圧は、各温度における水の飽和蒸気圧を記録したテーブルを第1制御部106に備え、それを参照することにより求めたり、近似的に下記式(6):
温度Tにおける水の飽和蒸気圧=6.11×10{7.5T/(T+237.3)}〔hPa〕 (6)
を用いて算出したりすることで得ることができる。得られた還元剤の湿度を参照することにより、第1調整部104による還元剤の湿度調整を好適な範囲内で行なうことが可能になる。
【0065】
なお、第1調整部104は、任意で、調整後(または調整前後)の還元剤の流量および/または湿度(すなわち、入口側湿度)を検知する検知器を有していてもよい。この場合、当該検知器の検知結果を参照することにより、第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度調整を好適な範囲内で行なうことが可能になる。
【0066】
(第1検出部)
第1検出部105は、燃料電池部101に接続される、アルカリ形燃料電池のアノード極から排出される還元剤の相対湿度H(出口側相対湿度H)を少なくとも検出するための部位である。本発明において、出口側相対湿度Hは、アルカリ燃料電池にフラッディングもしくはドライアップがすでに生じているか(あるいはそのような兆候が認められるか)否かを判断するためのパラメータである。出口側相対湿度Hを検出し、この検出結果に基づき、アノード極に供給される還元剤の流量および/または湿度を適切に調整することにより、フラッディングもしくはドライアップの改善を図ることができる。
【0067】
第1検出部105は、アノードセパレータ204が有する還元剤流路206の出口側端部または当該端部に接続される、還元剤を外部に排出するための還元剤排出部に設けられる湿度計を含むものであることができる。還元剤の相対湿度Hの検出を行なう湿度計としては、たとえば、タスコジャパン株式会社製「高精度圧力露点プローブTMS−442−5」などの湿度計を利用することができる。たとえば、湿度計を還元剤排出部内に設置し、湿度計および還元剤排出部を、アルカリ形燃料電池の温度より高い温度に保持することで、水の凝結を伴うことなく、100%RH以上の相対湿度Hを計測することができる。
【0068】
第1検出部105は、アルカリ形燃料電池のフラッディングまたはドライアップ状態を判断するための他のパラメータとして、アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δiおよび出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔVをさらに検出するものであることが好ましい。Δiはアルカリ燃料電池がフラッディングまたはドライアップを生じる方向へ向かっているか否かを判断するために有効なパラメータである。また、ΔVはフラッディングを判断するために有効なパラメータである。
【0069】
ここでΔiは、下記式(7):
Δi=(i1−i0)/(t1−t0)〔mA/cm2・min〕 (7)
〔i0は測定開始時間t0(min)における電流量(mA/cm2)であり、i1は測定終了時間t1における電流量である。〕
で表される。測定時間(すなわち、t1−t0)は、1〜10分の間で任意の測定時間を選択することができる。電流量i0、i1は、通常用いられている電流計やテスター等を用いて測定することができる。好ましくは、回路内に直接組み込んで電流量を常時測定することができる電流計が用いられる。
【0070】
ΔVは、下記式(8):
ΔV=(V1−V0)/(t1−t0)〔mV/min〕 (8)
〔V0は測定開始時間t0(min)における電圧量(mV)であり、V1は測定終了時間t1における電圧量である。〕
で表される。測定時間(すなわち、t1−t0)は、1〜10分の間で任意の測定時間を選択することができる。電圧量V0、V1は、通常用いられている電圧計やテスター等を用いて測定することができる。好ましくは、回路内に直接、並列に組み込んで電圧量を常時測定することができる電圧計が用いられる。
【0071】
なお、上述のように、燃料電池部101は、アルカリ形燃料電池を2以上備えることができる。この場合、ΔiやΔV値は、それぞれのアルカリ形燃料電池ごとに測定されてもよいが、接続関係や制御の容易性の観点から、2以上のアルカリ形燃料電池を1つの燃料電池とみなして、全体としてのΔiやΔV値を測定することが好ましい。
【0072】
(第1制御部)
第1制御部106は、第1検出部105から出力される検出結果信号(相対湿度H、または、相対湿度H、ΔiおよびΔV値)に基づいて、第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度の調整を制御する部位であり、第1調整部104および第1検出部105に接続される。第1調整部104および燃料電池部101が上述の温度検知手段を備える場合には、これらとも接続され、温度検知手段からの検知信号に基づいて、調湿器による温度調整を制御する。具体的には、第1制御部106は、第1検出部105から出力される検出結果信号を、後述するフローに従って逐次受信し、受信された相対湿度H、Δi、ΔV値と、予め設定した所定値との大小関係を判定する(この点については後で詳述する。)。この判定結果に基づき、アノード極の湿度が最適になるよう第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度の調整の制御を行なう。第1制御部106としては、特に制限されず、たとえば、パーソナルコンピュータなどを用いることができる。
【0073】
(その他の構成部位)
本実施形態のアルカリ形燃料電池システム(後述する他の実施形態についても同様である。)は、上記で述べたもの以外の他の構成部位を含むことができる。たとえば、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムは、通常、アルカリ形燃料電池のアノードセパレータを通過した還元剤を外部に排出するための還元剤排出部、および、カソードセパレータを通過した酸化剤を外部に排出するための酸化剤排出部を備える。還元剤排出部および酸化剤排出部はそれぞれ、アノードセパレータの還元剤流路、カソードセパレータの酸化剤流路の出口側端部に接続することができる。また、燃料電池部から排出された還元剤を放出できる程度まで希釈するための希釈部、あるいは、燃料電池部から排出された還元剤を還元剤供給部に戻すためのリサイクル用配管が設けられてもよい。
【0074】
[b]アノード極の湿度制御
次に、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御について、いくつかの例を示して詳細に説明する。なお、下記に例示するアノード極の湿度制御フローは、アルカリ形燃料電池の稼動中、所定の時間間隔を設けて繰り返し行なうことが好ましい。
【0075】
(アノード極湿度制御フロー1)
図3は、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の一例を示すフローチャートである。図3に示される湿度制御においては、まず、第1検出部105により出口側相対湿度Hが検出される。そして、検出されたHが所定値AH(ただし、AHは100%RHより小さい値である。)以下であるか否か、および、所定値BH(ただし、BHは100%RHより大きい値である。)以上であるか否か(換言すれば、Hが100%RHを含むAH超BH未満の範囲内でないかどうか)が、第1制御部106により判定される(ステップS301)。この判定結果に基づき、第1制御部106は、第1調整部104を次のように制御する。
【0076】
〔1〕Hが所定値AH以下である場合には、アノード極に供給される還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度(入口側湿度)の増加を行なうように制御する(ステップS302)。このような制御は、本発明では「H≦AH」との判定結果が「ドライアップ(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。「H≦AH」(排出された還元剤の相対湿度が過度に低いこと)は、アノード極内の湿度が十分に高くないことを意味しているといえるからである。
【0077】
〔2〕Hが所定値BH以上である場合には、アノード極に供給される還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度(入口側湿度)の低減を行なうように制御する(ステップS303)。このような制御は、本発明では「H≧BH」との判定結果が「フラッディング(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。「H≧BH」(排出された還元剤の相対湿度が過度に高いこと)は、アノード極内の湿度が過度に高くなっていることを意味しているといえるからである。
【0078】
このように、本例のアノード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生(またはその傾向)を改善するために適用することができる。すなわち、本例の湿度制御は、相対湿度Hの検出結果に基づいて、フィードバック制御を行なうものである。本例のアノード極の湿度制御は、出口側相対湿度Hのみを検出すればよいため、迅速な制御を行なうことができる点において有利である。
【0079】
アノード極の湿度制御は、アノード極に供給される還元剤の流量調整のみで行なってもよいし、還元剤の湿度調整のみで行なってもよいし、流量および湿度の双方を調整することにより行なってもよい(後述する他の湿度制御フローにおいても同様である。)。還元剤の流量調整は、アノード極の湿度制御を容易、かつ迅速に行なうことができる点で有利である。一方、還元剤の湿度調整は、アノード極の湿度制御を高い精度で行なうことができる点で有利である。
【0080】
なお、アノード極の湿度を低減させるために還元剤の流量を増加させる場合においては、還元剤の利用効率を考慮して、還元剤の流量を極端に大きくすることは避けることが好ましい。一方、アノード極の湿度を増加させるために還元剤の流量を低減させる場合においては、要求される電力量を供給できなくなるおそれがあることから、還元剤の流量を極端に小さくすることは避けることが好ましい。また、アノード極の湿度を低減させるために還元剤の湿度(入口側湿度)を低減させる場合においては、還元剤の湿度を極端に小さくすることは避けることが好ましい。アノード極の入口側の湿度が極端に低くなることによってアノード極の入口側と出口側との間で極端な湿度差が生じ、ひいては反応量に極端な差が生じて、燃料電池の劣化が生じやすくなるためである。このような適切な範囲内での還元剤の流量および/または湿度の調整は、たとえば、上述した調整後(または調整前後)の還元剤の流量および/または湿度を検知する検知器の検知結果に基づく制御により達成することができる。以上の還元剤の流量および湿度の下限値および上限値に関する事項は、後述する他の湿度制御フローにおいても当てはまる。
【0081】
所定値AHは、好ましくは80〜95〔%RH〕の範囲内であり、より好ましくは90〜95〔%RH〕の範囲内である。また、所定値BHは、好ましくは105〜150〔%RH〕の範囲内であり、より好ましくは105〜130〔%RH〕の範囲内である。
【0082】
本例の湿度制御において、検出されたHがAH<H<BHを満たす場合には、ドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)は生じていないと判断して、次回のHの検出時まで第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度の調整を実施しないことができる。
【0083】
(アノード極湿度制御フロー2)
図4は、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。図4に示される湿度制御においては、まず、第1検出部105によりΔiが検出される。そして、検出されたΔiが0を含むCi〜Di(ただし、Ciは負の値であり、Diは正の値である。)の範囲内であるか否かが、第1制御部106により判定される(ステップS401)。ΔiがCi〜Diの範囲内である場合(すなわち、アルカリ形燃料電池の動作状態の変化がほぼなく、電流量の増減によるアノード極で生成する水の量の変化がほぼないと判断できる場合)、第1制御部106は、第1検出部105が出口側相対湿度Hを検出するように制御する(なお、ΔiがCi〜Diの範囲内でない場合については後述。)。そして、検出されたHが所定値AH(AHは上記と同じ意味である。)以下であるか否か、および、所定値BH(BHは上記と同じ意味である。)以上であるか否か(換言すれば、HがAH超BH未満の範囲内でないかどうか)が、第1制御部106により判定される(ステップS402)。この判定結果に基づき、第1制御部106は、第1調整部104等を次のように制御する。
【0084】
〔1〕Hが所定値AH以下である場合には、第1制御部106は、アノード極に供給される還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS403)。このような制御は、本発明では「H≦AH」との判定結果が「ドライアップ(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。「H≦AH」(排出された還元剤の相対湿度が過度に低いこと)は、アノード極内の湿度が十分に高くないことを意味しているといえるからである。
【0085】
〔2〕Hが所定値BH以上である場合には、第1制御部106は、アノード極に供給される還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度(入口側湿度)の低減を行なうように制御する(ステップS404)。このような制御は、本発明では「H≧BH」との判定結果が「フラッディング(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。「H≧BH」(排出された還元剤の相対湿度が過度に高いこと)は、アノード極内の湿度が過度に高くなっていることを意味しているといえるからである。
【0086】
検出されたHがAH<H<BHを満たす場合には、ドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)は生じていないと判断して、次回のΔiの検出時まで第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度の調整を実施しないことができる。
【0087】
以上のフロー制御により、電流量の増減によるアノード極で生成する水の量の変化がほぼない場合において生じ得るドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)を改善することができる。
【0088】
Δiの所定値Ciは、好ましくは−50〜−25〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、より好ましくは−40〜−30〔mA/cm2・min〕の範囲内である。所定値Diは、好ましくは+25〜+50〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、より好ましくは+30〜+40〔mA/cm2・min〕の範囲内である。
【0089】
ここで、図5を参照して、検出されたΔiがCi〜Diの範囲内でない場合においては、第1制御部106は、第1調整部104を次のように制御することが好ましい。
【0090】
〔1〕Δiが所定値Ciより小さい場合には、アノード極に供給される還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS501)。このような制御は、本発明では「Δi<Ci」との判定結果が「ドライアップを生じる方向へ向かっている」と判断されることに基づく。「Δi<Ci(電流値の低下)」は、アノード極での反応により生成する水量の低下、ひいてはアノード極の湿度の低下をもたらし、結果、ドライアップを生じやすいからである。
【0091】
〔2〕Δiが所定値Diより大きい場合には、アノード極に供給される還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS502)。このような制御は、本発明では「Δi>Di」との判定結果が「フラッディングを生じる方向へ向かっている」と判断されることに基づく。「Δi>Di(電流値の上昇)」は、アノード極での反応により生成する水量の増加、ひいてはアノード極の湿度の増加をもたらし、結果、フラッディングを生じやすいからである。
【0092】
このように、本例の湿度制御では、Δiおよび相対湿度Hをこの順で検出し、アノード極の湿度の最適化を行なう。これらの特性をリアルタイムに検出することにより、アノード極の湿度状態を把握することができ、これに応じてアノード極の湿度を最適に制御することができる。Δiの検出結果に基づくアノード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生の未然防止に有効であり、相対湿度Hの検出結果に基づくアノード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生(またはその傾向)を改善するのに有効である。このように本例の湿度制御は、Δiの検出結果に基づくフィードフォワード制御と相対湿度Hの検出結果に基づくフィードバック制御の2つの制御手法を組み合わせたものである。
【0093】
(アノード極湿度制御フロー3)
図6は、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。図6に示される湿度制御においては、まず、第1検出部105によりΔiが検出される。そして、検出されたΔiが0を含むCi〜Di(CiおよびDiは上記と同じ意味である。)の範囲内であるか否かが、第1制御部106により判定される(ステップS601)。ΔiがCi〜Diの範囲内である場合、第1制御部106は、第1検出部105が出口側相対湿度Hを検出するように制御する(なお、ΔiがCi〜Diの範囲内でない場合については後述。)。そして、検出されたHが所定値EH(ただし、EHは100%RHより小さい値である。)以下であるか否か、および、所定値FH(ただし、FH=100%RHである。)以上であるか否か(換言すれば、HがEH超FH未満の範囲内でないかどうか)が、第1制御部106により判定される(ステップS602)。この判定結果に基づき、第1制御部106は、第1調整部104等を次のように制御する。
【0094】
〔1〕Hが所定値EH以下である場合には、第1制御部106は、アノード極に供給される還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS603)。このような制御は、本発明では「H≦EH」との判定結果が「ドライアップ(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。
【0095】
〔2〕Hが所定値FH以上である場合には、第1制御部106は、第1検出部105がΔVを検出するように制御する。そして、検出されたΔVが所定値GV(ただし、Gvは負の値である。)未満であるか否かが、第1制御部106により判定される(ステップS604)。検出されたΔVが所定値Gv未満の場合には、アノード極に供給される還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS605)。このような制御は、本発明では、「H≧FH」およびそれに続く「ΔV<GV」との判定結果が「電圧値の低下がドライアップではなく、フラッディングによるもの」と判断されることに基づく。すなわち、「ΔV<GV」(電圧値の低下)との判定結果はドライアップまたはフラッディングが生じていること、あるいはその傾向にあることを意味するが、「H≧FH」との判定結果はドライアップ(あるいはその傾向)が生じていないことを意味している。
【0096】
一方、ステップS604において検出されたΔVがGV以上である場合には、還元剤の流量および/または湿度の調整は不要である。「ΔV≧GV」との判定結果は、電圧値が増加しており、ドライアップまたはフラッディング(あるいはそのような傾向)を生じていないと判断されるためである。
【0097】
〔3〕ステップS602において検出されたHがEH<H<FHを満たす場合には、ドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)は生じていないと判断して、次回のΔiの検出時まで第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度の調整を実施しないことができる。
【0098】
相対湿度Hの所定値EHは、好ましくは80〜95〔%RH〕の範囲内であり、より好ましくは90〜95〔%RH〕の範囲内である。また、ΔVの所定値GVは、好ましくは−50〜−2〔mV/min〕の範囲内であり、より好ましくは−30〜−10〔mV/min〕の範囲内である。
【0099】
ここで、図7を参照して、検出されたΔiがCi〜Diの範囲内でない場合においては、上述のアノード極湿度制御フロー2と同様、第1制御部106は、第1調整部104を次のように制御することが好ましい。
【0100】
〔1〕Δiが所定値Ciより小さい場合には、アノード極に供給される還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS701)。
【0101】
〔2〕Δiが所定値Diより大きい場合には、アノード極に供給される還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS702)。
【0102】
このように、本例の湿度制御では、Δi、相対湿度HおよびΔVをこの順で検出し、アノード極の湿度の最適化を行なう。これらの特性をリアルタイムに検出することにより、アノード極の湿度状態を把握することができ、これに応じてアノード極の湿度を最適に制御することができる。Δiの検出結果に基づくアノード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生の未然防止に有効であり、相対湿度HおよびΔVの検出結果に基づくアノード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生(またはその傾向)を改善するのに有効である。このように本例の湿度制御は、Δiの検出結果に基づくフィードフォワード制御と相対湿度HおよびΔVの検出結果に基づくフィードバック制御の2つの制御手法を組み合わせたものである。特に、本例によれば、ステップS602において「H≧FH」でないと判定されれば、ΔVの検出は不要であり、比較的簡便にアノード極の湿度の最適化を行なうことができる。
【0103】
(アノード極湿度制御フロー4)
図8は、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるアノード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。図8に示される湿度制御においては、まず、第1検出部105によりΔiが検出される。そして、検出されたΔiが0を含むCi〜Di(CiおよびDiは上記と同じ意味である。)の範囲内であるか否かが、第1制御部106により判定される(ステップS801)。ΔiがCi〜Diの範囲内である場合、第1制御部106は、第1検出部105がΔVを検出するように制御する(なお、ΔiがCi〜Diの範囲内でない場合については後述。)。そして、検出されたΔVが所定値Gv(Gvは上記と同じ意味である。)未満であるか否かが、第1制御部106により判定される(ステップS802)。この判定結果に基づき、第1制御部106は、第1調整部104等を次のように制御する。
【0104】
〔1〕ΔVが所定値Gv未満である場合には、第1制御部106は、第1検出部105が出口側相対湿度Hを検出するように制御する。そして、検出されたHが所定値EH(EHは上記と同じ意味である。)以下であるか否か、および、所定値FH(FHは上記と同じ意味である。)以上であるか否か(換言すれば、HがEH超FH未満の範囲内でないかどうか)が、第1制御部106により判定される(ステップS803)。検出されたHが所定値EH以下である場合には、第1制御部106は、アノード極に供給される還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS804)。このような制御は、本発明では「H≦EH」との判定結果が「ドライアップ(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。
【0105】
一方、ステップS803にて検出されたHが所定値FH以上である場合には、第1制御部106は、アノード極に供給される還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS805)。このような制御は、本発明では、「ΔV<GV」およびそれに続く「H≧FH」との判定結果が「電圧値の低下がドライアップではなく、フラッディングによるもの」と判断されることに基づく。すなわち、「ΔV<GV」(電圧値の低下)との判定結果はドライアップまたはフラッディングが生じていること、あるいはその傾向にあることを意味するが、「H≧FH」との判定結果はドライアップ(あるいはその傾向)が生じていないことを意味している。
【0106】
〔2〕ステップS803において検出されたHがEH<H<FHを満たす場合には、ドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)は生じていないと判断して、次回のΔiの検出時まで第1調整部104による還元剤の流量および/または湿度の調整を実施しないことができる。
【0107】
〔3〕ステップS802において検出されたΔVが所定値Gv以上である場合には、還元剤の流量および/または湿度の調整は不要である。「ΔV≧GV」との判定結果は、電圧値が増加しており、ドライアップまたはフラッディング(あるいはそのような傾向)を生じていないと判断されるためである。
【0108】
図9に示されるように、本例の湿度制御においても、検出されたΔiがCi〜Diの範囲内でない場合においては、第1制御部106は、上述のアノード極湿度制御フロー2および3と同様の制御を行なうことが好ましい。すなわち、Δiが所定値Ciより小さい場合には、アノード極に供給される還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御し(ステップS901)、Δiが所定値Diより大きい場合には、還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS902)ことが好ましい。
【0109】
このように、本例の湿度制御では、Δi、ΔVおよび相対湿度Hをこの順で検出し、アノード極の湿度の最適化を行なう。これらの特性をリアルタイムに検出することにより、アノード極の湿度状態を把握することができ、これに応じてアノード極の湿度を最適に制御することができる。Δiの検出結果に基づくアノード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生の未然防止に有効であり、相対湿度HおよびΔVの検出結果に基づくアノード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生(またはその傾向)を改善するのに有効である。このように本例の湿度制御は、Δiの検出結果に基づくフィードフォワード制御と相対湿度HおよびΔVの検出結果に基づくフィードバック制御の2つの制御手法を組み合わせたものである。特に、本例によれば、ステップS802において「ΔV<GV」でない(すなわち、「ΔV≧GV」)と判断されれば、出口側相対湿度Hの検出は不要であり、比較的簡便にアノード極の湿度の最適化を行なうことができる。
【0110】
<第2の実施形態>
[a]アルカリ形燃料電池システムの構成
図10は、本発明に係る上記アルカリ形燃料電池システム〔B〕の構成の一例を示す概略図である。図10に示されるアルカリ形燃料電池システム1000は、アルカリ形燃料電池が有するカソード極の湿度を最適に調整することが可能なシステムであり、アルカリ形燃料電池を含む燃料電池部1001;燃料電池部1001に接続され、アルカリ形燃料電池のアノード極に還元剤を供給するための還元剤供給部1002;燃料電池部1001に接続され、アルカリ形燃料電池のカソード極に酸化剤を供給するための酸化剤供給部1003;酸化剤供給部1003に接続され、カソード極に供給される酸化剤の流量および/または湿度を調整するための第2調整部1004;燃料電池部1001に接続され、アルカリ形燃料電池のカソード極から排出される酸化剤の相対湿度H’を少なくとも検出する第2検出部1005;ならびに、第2調整部1004および第2検出部1005に接続され、第2検出部1005による検出結果に基づいて、第2調整部1004による酸化剤の流量および/または湿度の調整を制御するための第2制御部1006を含む。
【0111】
第2検出部1005は、カソード極から排出される酸化剤の相対湿度H’のほか、好ましくは、アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δi’および出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔV’をさらに検出するものである。
【0112】
なお以下では、カソード極に供給される酸化剤の湿度(相対湿度)を酸化剤の「入口側湿度(入口側相対湿度)」とも称し、カソード極から排出される酸化剤の湿度(相対湿度H’)を酸化剤の「出口側湿度(出口側相対湿度H’)」とも称する。
【0113】
本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによれば、酸化剤の出口側相対湿度H’、さらにはΔiおよびΔVのような電池特性を検出し、当該検出結果に基づいてリアルタイムにアルカリ形燃料電池のカソード極に供給される酸化剤の流量および/または湿度(入口側湿度)の最適化を行なうことができるため、カソード極の湿度が最適化され、結果、上述したカソード極への酸化剤の供給を阻害させる「フラッディング」および電解質膜の水分が過少となりアニオン伝導抵抗を増加させる「ドライアップ」の未然防止または改善を図ることが可能になる。これにより、安定して高い出力電圧を維持することができる。
【0114】
本実施形態のアルカリ形燃料電池システムが備える燃料電池部、還元剤供給部および酸化剤供給部の構成は、上記第1の実施形態で説明したものと同様であることができる。
【0115】
(第2調整部)
第2調整部1004は、酸化剤供給部1003を流通する(カソード極に供給されることとなる)酸化剤の流量あるいは湿度(相対湿度)、またはこれらの双方を調整するための部位であり、酸化剤供給部1003に接続される。第2調整部1004は、上記第1の実施形態で説明した第1調整部と同様、たとえば、酸化剤供給部1003内に設けられた、酸化剤の流量を調整する流量調整弁あるいは酸化剤の湿度を調整する調湿器、またはこれらの双方であることができる。流量調整弁および調湿器は従来公知のものであってよい。調湿器の具体例も第1調整部と同様である。
【0116】
第2調整部1004によって調節される「酸化剤の湿度」は、下記式(9):
酸化剤の湿度=〔第2調整部(調湿器)の温度における水の飽和蒸気圧〕/〔アルカリ形燃料電池の温度における水の飽和蒸気圧〕 (9)
により定義される。
【0117】
第2調整部1004は、任意で、調整後(または調整前後)の酸化剤の流量および/または湿度(すなわち、入口側湿度)を検知する検知器を有していてもよい。この場合、当該検知器の検知結果を参照することにより、第2調整部1004による酸化剤の流量および/または湿度調整を好適な範囲内で行なうことが可能になる。
【0118】
(第2検出部)
第2検出部1005は、燃料電池部1001に接続される、アルカリ形燃料電池のカソード極から排出される酸化剤の相対湿度H’(出口側相対湿度H’)を少なくとも検出するための部位である。本発明において、出口側相対湿度H’は、アルカリ燃料電池にフラッディングもしくはドライアップがすでに生じているか(あるいはそのような兆候が認められるか)否かを判断するためのパラメータである。出口側相対湿度H’を検出し、この検出結果に基づき、カソード極に供給される酸化剤の流量および/または湿度を適切に調整することにより、フラッディングもしくはドライアップの改善を図ることができる。
【0119】
第2検出部805は、図2を参照して、カソードセパレータ205が有する酸化剤流路207の出口側端部または当該端部に接続される、酸化剤を外部に排出するための酸化剤排出部に設けられる湿度計を含むものであることができる。酸化剤の相対湿度H’の検出を行なう湿度計としては、たとえば、タスコジャパン株式会社製「高精度圧力露点プローブTMS−442−5」などの湿度計を利用することができる。たとえば、湿度計を酸化剤排出部内に設置し、湿度計および酸化剤排出部を、アルカリ形燃料電池の温度より高い温度に保持することで、水の凝結を伴うことなく、100%RH以上の相対湿度H’を計測することができる。
【0120】
第2検出部1005は、アルカリ形燃料電池のフラッディングまたはドライアップ状態を判断するための他のパラメータとして、アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δi’および出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔV’をさらに検出するものであることが好ましい。Δi’はアルカリ燃料電池がフラッディングまたはドライアップを生じる方向へ向かっているか否かを判断するために有効なパラメータである。また、ΔV’はフラッディングを判断するために有効なパラメータである。Δi’およびΔV’はそれぞれ、第1の実施形態におけるΔiおよびΔVと同様、上記式(7)および(8)で定義される。
【0121】
(第2制御部)
第2制御部1006は、第2検出部1005から出力される検出結果信号(相対湿度H’、または、相対湿度H’、Δi’およびΔV’値)に基づいて、第2調整部1004による酸化剤の流量および/または湿度の調整を制御する部位であり、第2調整部1004および第2検出部1005に接続される。第2調整部1004および燃料電池部1001が、第1の実施形態において説明したような温度検知手段を備える場合には、これらとも接続され、温度検知手段からの検知信号に基づいて、調湿器による温度調整を制御する。具体的には、第2制御部1006は、第2検出部1005から出力される検出結果信号を、後述するフローに従って逐次受信し、受信された相対湿度H’、Δi’、ΔV’値と、予め設定した所定値との大小関係を判定する(この点については後で詳述する。)。この判定結果に基づき、カソード極の湿度が最適になるよう第2調整部1004による酸化剤の流量および/または湿度の調整の制御を行なう。第2制御部1006としては、特に制限されず、たとえば、パーソナルコンピュータなどを用いることができる。
【0122】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、還元剤(燃料)としては、たとえば、H2ガス、炭化水素ガス、アンモニアガスなどを用いることができる。なかでも、H2ガスを用いることが好ましい。酸化剤としては、たとえば、O2ガスや、空気等のO2を含むガスなどを用いることができる。なかでも、空気が好ましく用いられる。
【0123】
[b]カソード極の湿度制御
次に、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御について、いくつかの例を示して詳細に説明する。なお、下記に例示するカソード極の湿度制御フローは、アルカリ形燃料電池の稼動中、所定の時間間隔を設けて繰り返し行なうことが好ましい。
【0124】
(カソード極湿度制御フロー1)
図11は、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の一例を示すフローチャートである。図11に示される湿度制御においては、まず、第2検出部1005により出口側相対湿度H’が検出される。そして、検出されたH’が所定値AH’(ただし、AH’は100%RHより小さい値である。)以下であるか否か、および、所定値BH’(ただし、BH’は100%RHより大きい値である。)以上であるか否か(換言すれば、H’が100%RHを含むAH超BH未満の範囲内でないかどうか)が、第2制御部1006により判定される(ステップS1101)。この判定結果に基づき、第2制御部1006は、第2調整部1004を次のように制御する。
【0125】
〔1〕H’が所定値AH’以下である場合には、カソード極に供給される酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度(入口側湿度)の増加を行なうように制御する(ステップS1102)。このような制御は、本発明では「H’≦AH’」との判定結果が「ドライアップ(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。「H’≦AH’」(排出された酸化剤の相対湿度が過度に低いこと)は、カソード極内の湿度が十分に高くないことを意味しているといえるからである。
【0126】
〔2〕H’が所定値BH’以上である場合には、カソード極に供給される酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度(入口側湿度)の低減を行なうように制御する(ステップS1103)。このような制御は、本発明では「H’≧BH’」との判定結果が「フラッディング(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。「H’≧BH’」(排出された酸化剤の相対湿度が過度に高いこと)は、カソード極内の湿度が過度に高くなっていることを意味しているといえるからである。
【0127】
このように、本例のカソード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生(またはその傾向)を改善するために適用することができる。すなわち、本例の湿度制御は、相対湿度H’の検出結果に基づいて、フィードバック制御を行なうものである。本例のカソード極の湿度制御は、出口側相対湿度H’のみを検出すればよいため、迅速な制御を行なうことができる点において有利である。
【0128】
カソード極の湿度制御は、カソード極に供給される酸化剤の流量調整のみで行なってもよいし、酸化剤の湿度調整のみで行なってもよいし、流量および湿度の双方を調整することにより行なってもよい(後述する他の湿度制御フローにおいても同様である。)。酸化剤の流量調整は、カソード極の湿度制御を容易、かつ迅速に行なうことができる点で有利である。一方、酸化剤の湿度調整は、カソード極の湿度制御を高い精度で行なうことができる点で有利である。
【0129】
なお、カソード極の湿度を増加させるために酸化剤の流量を増加させる場合においては、酸化剤供給のためにファンなどの補機を用いたときに補機の電力ロスが大きくなることから、酸化剤の流量を極端に大きくすることは避けることが好ましい。一方、カソード極の湿度を低減させるために酸化剤の流量を低減させる場合においては、要求される電力量を供給できなくなるおそれがあることから、酸化剤の流量を極端に小さくすることは避けることが好ましい。また、カソード極の湿度を増加させるために酸化剤の湿度(入口側湿度)を増加させる場合においては、酸化剤の湿度を極端に大きくすることは避けることが好ましい。カソード極の入口側の湿度が極端に高くなることによってカソード極の入口側と出口側との間で極端な湿度差が生じ、ひいては反応量に極端な差が生じて、燃料電池の劣化が生じやすくなるためである。このような適切な範囲内での酸化剤の流量および/または湿度の調整は、たとえば、上述した調整後(または調整前後)の酸化剤の流量および/または湿度を検知する検知器の検知結果に基づく制御により達成することができる。以上の酸化剤の流量および湿度の下限値および上限値に関する事項は、後述する他の湿度制御フローにおいても当てはまる。
【0130】
所定値AH’は、好ましくは70〜95〔%RH〕の範囲内であり、より好ましくは85〜95〔%RH〕の範囲内である。また、所定値BH’は、好ましくは105〜130〔%RH〕の範囲内であり、より好ましくは105〜115〔%RH〕の範囲内である。
【0131】
本例の湿度制御において、検出されたH’がAH’<H’<BH’を満たす場合には、ドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)は生じていないと判断して、次回のH’の検出時まで第2調整部1004による酸化剤の流量および/または湿度の調整を実施しないことができる。
【0132】
(カソード極湿度制御フロー2)
図12は、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。図12に示される湿度制御においては、まず、第2検出部1005によりΔi’が検出される。そして、検出されたΔi’が0を含むCi’〜Di’(ただし、Ci’は負の値であり、Di’は正の値である。)の範囲内であるか否かが、第2制御部1006により判定される(ステップS1201)。Δi’がCi’〜Di’の範囲内である場合(すなわち、アルカリ形燃料電池の動作状態の変化がほぼなく、電流量の増減によるカソード極で消費される水の量の変化がほぼないと判断できる場合)、第2制御部1006は、第2検出部1005が出口側相対湿度H’を検出するように制御する(なお、Δi’がCi’〜Di’の範囲内でない場合については後述。)。そして、検出されたH’が所定値AH’(AH’は上記と同じ意味である。)以下であるか否か、および、所定値BH’(BH’は上記と同じ意味である。)以上であるか否か(換言すれば、H’がAH’超BH’未満の範囲内でないかどうか)が、第2制御部1006により判定される(ステップS1202)。この判定結果に基づき、第2制御部1006は、第2調整部1004等を次のように制御する。
【0133】
〔1〕H’が所定値AH’以下である場合には、第2制御部1006は、カソード極に供給される酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS1203)。このような制御は、本発明では「H’≦AH’」との判定結果が「ドライアップ(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。「H’≦AH’」(排出された酸化剤の相対湿度が過度に低いこと)は、カソード極内の湿度が十分に高くないことを意味しているといえるからである。
【0134】
〔2〕H’が所定値BH’以上である場合には、第2制御部1006は、カソード極に供給される酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度(入口側湿度)の低減を行なうように制御する(ステップS1204)。このような制御は、本発明では「H’≧BH’」との判定結果が「フラッディング(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。「H’≧BH’」(排出された酸化剤の相対湿度が過度に高いこと)は、カソード極内の湿度が過度に高くなっていることを意味しているといえるからである。
【0135】
検出されたH’がAH’<H’<BH’を満たす場合には、ドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)は生じていないと判断して、次回のΔi’の検出時まで第2調整部1004による酸化剤の流量および/または湿度の調整を実施しないことができる。
【0136】
以上のフロー制御により、電流量の増減によるカソード極で消費される水の量の変化がほぼない場合において生じ得るドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)を改善することができる。
【0137】
Δi’の所定値Ci’は、好ましくは−50〜−25〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、より好ましくは−40〜−30〔mA/cm2・min〕の範囲内である。所定値Di’は、好ましくは+25〜+50〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、より好ましくは+30〜+40〔mA/cm2・min〕の範囲内である。
【0138】
ここで、図13を参照して、検出されたΔi’がCi’〜Di’の範囲内でない場合においては、第2制御部1006は、第2調整部1004を次のように制御することが好ましい。
【0139】
〔1〕Δi’が所定値Ci’より小さい場合には、カソード極に供給される酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS1301)。このような制御は、本発明では「Δi’<Ci’」との判定結果が「フラッディングを生じる方向へ向かっている」と判断されることに基づく。「Δi’<Ci’(電流値の低下)」は、カソード極での反応により消費される水量の低下、したがってカソード極の湿度の増加をもたらし、結果、フラッディングを生じやすいからである。
【0140】
〔2〕Δi’が所定値Di’より大きい場合には、カソード極に供給される酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS1302)。このような制御は、本発明では「Δi’>Di’」との判定結果が「ドライアップを生じる方向へ向かっている」と判断されることに基づく。「Δi’>Di’(電流値の上昇)」は、カソード極での反応により消費される水量の増加、したがってカソード極の湿度の低下をもたらし、結果、ドライアップを生じやすいからである。
【0141】
このように、本例の湿度制御では、Δi’および相対湿度H’をこの順で検出し、カソード極の湿度の最適化を行なう。これらの特性をリアルタイムに検出することにより、カソード極の湿度状態を把握することができ、これに応じてカソード極の湿度を最適に制御することができる。Δi’の検出結果に基づくカソード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生の未然防止に有効であり、相対湿度H’の検出結果に基づくカソード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生(またはその傾向)を改善するのに有効である。このように本例の湿度制御は、Δi’の検出結果に基づくフィードフォワード制御と相対湿度H’の検出結果に基づくフィードバック制御の2つの制御手法を組み合わせたものである。
【0142】
(カソード極湿度制御フロー3)
図14は、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。図14に示される湿度制御においては、まず、第2検出部1005によりΔi’が検出される。そして、検出されたΔi’が0を含むCi’〜Di’(Ci’およびDi’は上記と同じ意味である。)の範囲内であるか否かが、第2制御部1006により判定される(ステップS1401)。Δi’がCi’〜Di’の範囲内である場合、第2制御部1006は、第2検出部1005が出口側相対湿度H’を検出するように制御する(なお、Δi’がCi’〜Di’の範囲内でない場合については後述。)。そして、検出されたH’が所定値EH’(ただし、EH’は100%RHより小さい値である。)以下であるか否か、および、所定値FH’(ただし、FH’=100%RHである。)以上であるか否か(換言すれば、H’がEH’超FH’未満の範囲内でないかどうか)が、第2制御部1006により判定される(ステップS1402)。この判定結果に基づき、第2制御部1006は、第2調整部1004等を次のように制御する。
【0143】
〔1〕H’が所定値EH’以下である場合には、第2制御部1006は、カソード極に供給される酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS1403)。このような制御は、本発明では、「H’≦EH’」との判定結果が「ドライアップ(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。
【0144】
〔2〕H’が所定値FH’以上である場合には、第2制御部1006は、第2検出部1005がΔV’を検出するように制御する。そして、検出されたΔV’が所定値GV’(ただし、Gv’は負の値である。)未満であるか否かが、第2制御部1006により判定される(ステップS1404)。検出されたΔV’が所定値Gv’未満の場合には、カソード極に供給される酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS1405)。このような制御は、本発明では、「H’≧FH’」およびそれに続く「ΔV’<GV’」との判定結果が「電圧値の低下がドライアップではなく、フラッディングによるもの」と判断されることに基づく。すなわち、「ΔV’<GV’」(電圧値の低下)との判定結果はドライアップまたはフラッディングが生じていること、あるいはその傾向にあることを意味するが、「H’≧FH’」との判定結果はドライアップ(あるいはその傾向)が生じていないことを意味している。
【0145】
一方、ステップS1404において検出されたΔV’がGV’以上である場合には、酸化剤の流量および/または湿度の調整は不要である。「ΔV’≧GV’」との判定結果は、電圧値が増加しており、ドライアップまたはフラッディング(あるいはそのような傾向)を生じていないと判断されるためである。
【0146】
〔3〕ステップS1402において検出されたH’がEH’<H’<FH’を満たす場合には、ドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)は生じていないと判断して、次回のΔi’の検出時まで第2調整部1004による酸化剤の流量および/または湿度の調整を実施しないことができる。
【0147】
相対湿度H’の所定値EH’は、好ましくは70〜95〔%RH〕の範囲内であり、より好ましくは85〜95〔%RH〕の範囲内である。また、ΔV’の所定値GV’は、好ましくは−50〜−2〔mV/min〕の範囲内であり、より好ましくは−30〜−10〔mV/min〕の範囲内である。
【0148】
ここで、図15を参照して、検出されたΔi’がCi’〜Di’の範囲内でない場合においては、上述のカソード極湿度制御フロー2と同様、第2制御部1006は、第2調整部1004を次のように制御することが好ましい。
【0149】
〔1〕Δi’が所定値Ci’より小さい場合には、カソード極に供給される酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS1501)。
【0150】
〔2〕Δi’が所定値Di’より大きい場合には、カソード極に供給される酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS1502)。
【0151】
このように、本例の湿度制御では、Δi’、相対湿度H’およびΔV’をこの順で検出し、カソード極の湿度の最適化を行なう。これらの特性をリアルタイムに検出することにより、カソード極の湿度状態を把握することができ、これに応じてカソード極の湿度を最適に制御することができる。Δi’の検出結果に基づくカソード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生の未然防止に有効であり、相対湿度H’およびΔV’の検出結果に基づくカソード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生(またはその傾向)を改善するのに有効である。このように本例の湿度制御は、Δi’の検出結果に基づくフィードフォワード制御と相対湿度H’およびΔV’の検出結果に基づくフィードバック制御の2つの制御手法を組み合わせたものである。特に、本例によれば、ステップS1402において「H’≧FH’」でないと判定されれば、ΔV’の検出は不要であり、比較的簡便にカソード極の湿度の最適化を行なうことができる。
【0152】
(カソード極湿度制御フロー4)
図16は、本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによるカソード極の湿度制御の別の一例を示すフローチャートである。図16に示される湿度制御においては、まず、第2検出部1005によりΔi’が検出される。そして、検出されたΔi’が0を含むCi’〜Di’(Ci’およびDi’は上記と同じ意味である。)の範囲内であるか否かが、第2制御部1006により判定される(ステップS1601)。Δi’がCi’〜Di’の範囲内である場合、第2制御部1006は、第2検出部1005がΔV’を検出するように制御する(なお、Δi’がCi’〜Di’の範囲内でない場合については後述。)。そして、検出されたΔV’が所定値Gv’(Gv’は上記と同じ意味である。)未満であるか否かが、第2制御部1006により判定される(ステップS1602)。この判定結果に基づき、第2制御部1006は、第2調整部1004等を次のように制御する。
【0153】
〔1〕ΔV’が所定値Gv’未満である場合には、第2制御部1006は、第2検出部1005が出口側相対湿度H’を検出するように制御する。そして、検出されたH’が所定値EH’(EH’は上記と同じ意味である。)以下であるか否か、および、所定値FH’(FH’は上記と同じ意味である。)以上であるか否か(換言すれば、H’がEH’超FH’未満の範囲内でないかどうか)が、第2制御部1006により判定される(ステップS1603)。検出されたH’が所定値EH’以下である場合には、第2制御部1006は、カソード極に供給される酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS1604)。このような制御は、本発明では、「H’≦EH’」との判定結果が「ドライアップ(あるいはその傾向)を生じている」と判断されることに基づく。
【0154】
一方、ステップS1603にて検出されたH’が所定値FH’以上である場合には、第2制御部1006は、カソード極に供給される酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する(ステップS1605)。このような制御は、本発明では、「ΔV’<GV’」およびそれに続く「H’≧FH’」との判定結果が「電圧値の低下がドライアップではなく、フラッディングによるもの」と判断されることに基づく。すなわち、「ΔV’<GV’」(電圧値の低下)との判定結果はドライアップまたはフラッディングが生じていること、あるいはその傾向にあることを意味するが、「H’≧FH’」との判定結果はドライアップ(あるいはその傾向)が生じていないことを意味している。
【0155】
〔2〕ステップS1603において検出されたH’がEH’<H’<FH’を満たす場合には、ドライアップおよびフラッディング(またはその傾向)は生じていないと判断して、次回のΔi’の検出時まで第2調整部1004による酸化剤の流量および/または湿度の調整を実施しないことができる。
【0156】
〔3〕ステップS1602において検出されたΔV’が所定値Gv’以上である場合には、酸化剤の流量および/または湿度の調整は不要である。「ΔV’≧GV’」との判定結果は、電圧値が増加しており、ドライアップまたはフラッディング(あるいはそのような傾向)を生じていないと判断されるためである。
【0157】
図17に示されるように、本例の湿度制御においても、検出されたΔi’がCi’〜Di’の範囲内でない場合においては、第2制御部1006は、上述のカソード極湿度制御フロー2および3と同様の制御を行なうことが好ましい。すなわち、Δi’が所定値Ci’より小さい場合には、カソード極に供給される酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御し(ステップS1701)、Δi’が所定値Di’より大きい場合には、酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する(ステップS1702)ことが好ましい。
【0158】
このように、本例の湿度制御では、Δi’、ΔV’および相対湿度H’をこの順で検出し、カソード極の湿度の最適化を行なう。これらの特性をリアルタイムに検出することにより、カソード極の湿度状態を把握することができ、これに応じてカソード極の湿度を最適に制御することができる。Δi’の検出結果に基づくカソード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生の未然防止に有効であり、相対湿度H’およびΔV’の検出結果に基づくカソード極の湿度制御は、ドライアップおよびフラッディングの発生(またはその傾向)を改善するのに有効である。このように本例の湿度制御は、Δi’の検出結果に基づくフィードフォワード制御と相対湿度H’およびΔV’の検出結果に基づくフィードバック制御の2つの制御手法を組み合わせたものである。特に、本例によれば、ステップS1602において「ΔV’<GV’」でない(すなわち、「ΔV’≧GV’」)と判断されれば、出口側相対湿度H’の検出は不要であり、比較的簡便にカソード極の湿度の最適化を行なうことができる。
【0159】
<第3の実施形態>
図18は、本発明に係るアルカリ形燃料電池システムの構成の他の一例を示す概略図である。図18に示されるアルカリ形燃料電池システム1800は、アルカリ形燃料電池が有するアノード極およびカソード極の湿度を最適に調整することが可能なシステムであり、上記第1および第2の実施形態を組み合わせたものといえる。
【0160】
図18に示されるアルカリ形燃料電池システム1800は、アルカリ形燃料電池を含む燃料電池部1801;燃料電池部1801に接続され、アルカリ形燃料電池のアノード極に還元剤を供給するための還元剤供給部1802;燃料電池部1801に接続され、アルカリ形燃料電池のカソード極に酸化剤を供給するための酸化剤供給部1803;還元剤供給部1802に接続され、アノード極に供給される還元剤の流量および/または湿度を調整するための第1調整部1804a;酸化剤供給部1803に接続され、カソード極に供給される酸化剤の流量および/または湿度を調整するための第2調整部1804b;燃料電池部1801に接続され、アルカリ形燃料電池のアノード極から排出される還元剤の相対湿度Hおよびカソード極から排出される酸化剤の相対湿度H’を少なくとも検出する検出部1805;ならびに、第1調整部1804a、第2調整部1804bおよび検出部1805に接続され、検出部1805による検出結果に基づいて、第1調整部1804aによる還元剤の流量および/または湿度の調整、ならびに、第2調整部1804bによる酸化剤の流量および/または湿度の調整を制御するための制御部1806を含む。
【0161】
検出部1805は、アノード極から排出される還元剤の相対湿度Hおよびカソード極から排出される酸化剤の相対湿度H’のほか、好ましくは、アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δi(=Δi’)および出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔV(=ΔV’)をさらに検出するものである。
【0162】
本実施形態のアルカリ形燃料電池システムによれば、還元剤の出口側相対湿度H、酸化剤の出口側相対湿度H’さらにはΔiおよびΔVのような電池特性を検出し、当該検出結果に基づいてリアルタイムにアルカリ形燃料電池のアノード極に供給される還元剤の流量および/または湿度(入口側湿度)、さらにはカソード極に供給される酸化剤の流量および/または湿度(入口側湿度)の最適化を行なうことができるため、アノード極、さらにはカソード極の湿度が最適化され、その結果、フラッディングおよびドライアップの未然防止または改善をより効果的に図ることが可能になる。これにより、安定して高い出力電圧を維持することができる。
【0163】
本実施形態のアルカリ形燃料電池システムが備える燃料電池部、還元剤供給部および酸化剤供給部の構成は、上記第1の実施形態で説明したものと同様であることができる。第1調整部1804aおよび第2調整部1804bもまた、それぞれ第1の実施形態における第1調整部104、第2の実施形態における第2調整部1004と同様であることができる。
【0164】
検出部1805は、アノード極から排出される還元剤の相対湿度Hを検出する第1検出部と、カソード極から排出される酸化剤の相対湿度H’を検出する第2検出部の、独立した2つの検出部から構成されていてもよい。
【0165】
制御部1806は、第1調整部1804aによる還元剤の流量および/または湿度の調整と、第2調整部1804bによる酸化剤の流量および/または湿度の調整とをそれぞれ独立に制御できるものであり、第1調整部1804aによる還元剤の流量および/または湿度の調整を制御する制御部と、第2調整部1804bによる酸化剤の流量および/または湿度の調整を制御する制御部の、独立した2つの制御部から構成されていてもよい。
【0166】
本実施形態のアルカリ形燃料電池システムは、上述したアノード極の湿度制御とカソード極の湿度制御とを、アルカリ形燃料電池の稼動中、それぞれ独立に並行して実施する。具体的なアノード極の湿度制御フローおよびカソード極の湿度制御フローは上述のとおりである。
【実施例】
【0167】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0168】
〔アルカリ形燃料電池システムの作製〕
<実施例1>
以下の手順でアルカリ形燃料電池システムを作製した。
【0169】
(1)膜電極複合体の作製
芳香族ポリエーテルスルホン酸と芳香族ポリチオエーテルスルホン酸との共重合体をクロロメチル化した後、アミノ化することにより、触媒層用のアニオン伝導性固体高分子電解質を得た。これをテトラヒドロフランに添加することにより、5重量%アニオン伝導性固体高分子電解質溶液を得た。
【0170】
Pt担持量が50重量%のPt/Cである触媒担持カーボン粒子(田中貴金属社製「TEC10E50E」)と、上記で得られた電解質溶液とを、重量比で2/0.2となるように混合し、さらにイオン交換水およびエタノールを添加することにより、アノード触媒層用の触媒ペーストを作製した。
【0171】
同様に、Pt担持量が50重量%のPt/Cである触媒担持カーボン粒子(田中貴金属社製「TEC10E50E」)と、上記で得られた電解質溶液とを、重量比で2/0.2となるように混合し、さらにイオン交換水およびエタノールを添加することにより、カソード触媒層用の触媒ペーストを作製した。
【0172】
次に、アノードガス拡散層としてカーボンペーパー(東レ社製「TGP−H−060」、厚み約190μm)を縦23mm×横23mmのサイズに切り出し、そのアノードガス拡散層の一方の面に、上記のアノード触媒層用の触媒ペーストを触媒量が0.5mg/cm2となるように、縦23mm×横23mmのウィンドウを有したスクリーン印刷版を用いて塗布し、室温にて乾燥させることにより、アノードガス拡散層であるカーボンペーパーの片面の全面にアノード触媒層が形成されたアノード極を作製した。得られたアノード極の厚みは約200μmであった。
【0173】
同様に、カソードガス拡散層としてカーボンペーパー(東レ社製「TGP−H−060」、厚み約190μm)を縦23mm×横23mmのサイズに切り出し、そのカソードガス拡散層の一方の面に、上記のカソード触媒層用の触媒ペーストを触媒量が0.5mg/cm2となるように、縦23mm×横23mmのウィンドウを有したスクリーン印刷版を用いて塗布し、室温にて乾燥させることにより、カソードガス拡散層であるカーボンペーパーの片面の全面にカソード触媒層が形成されたカソード極を作製した。得られたカソード極の厚みは約200μmであった。
【0174】
次に、50mm×50mmのサイズに切り出したフッ素樹脂系高分子電解質(旭化成社製「アシプレックス」)をアニオン伝導性固体高分子電解質膜として用い、上記アノード極と電解質膜と上記カソード極をこの順で、それぞれの触媒層が電解質膜に対向するように重ね合わせた後、130℃、10kNで2分間の熱圧着を行なうことにより、アノード極およびカソード極を電解質膜に接合し、膜電極複合体を得た。上記重ね合わせは、アノード極とカソード極の電解質膜の面内における位置が一致するように、かつアノード極と電解質膜とカソード極の中心が一致するように行なった。
【0175】
(2)アルカリ形燃料電池の作製
上記膜電極複合体を、市販の燃料電池セル(エレクトロケム社製)を分解して取り出した部品と組み合わせて燃料電池を作製した。具体的には、まず、アノード極側集電体(エンドプレート)/カーボン製アノード極セパレータ(ガスフロープレート)/ポリテトラフルオロエチレン製ガスケット/膜電極複合体/ポリテトラフルオロエチレン製ガスケット/カーボン製カソード極セパレータ(ガスフロープレート)/カソード極側集電体(エンドプレート)の順に積層した。なお、両ガスケットの中心部には貫通孔が形成されているため、得られた積層体において、各極セパレータと膜電極複合体とは接触している。最後に、M3のボルトおよびナットを用いて5N・mで締め付けることによって、アルカリ形燃料電池を得た。
【0176】
(3)アルカリ形燃料電池システムの作製
作製したアルカリ形燃料電池を燃料電池部101として用い、図1と同様の構成のアルカリ形燃料電池システムを作製した。具体的には次のとおりである。
【0177】
還元剤供給部102としてのステンレス製の配管を燃料電池部101のアノード極セパレータに還元剤を供給できるように接続するとともに、酸化剤供給部103としてのステンレス製の配管を燃料電池部101のカソード極セパレータに酸化剤を供給できるように接続した。還元剤供給部102としてのステンレス製の配管は、第1調整部104としての流量調整弁および調湿器を有している。調湿器は、温度制御可能な水浴を有しており、還元剤を水浴中の水中へバブリングさせることにより加湿を行なうタイプである。第1検出部105として、アノード極セパレータが有する還元剤流路の出口側端部に湿度計(タスコジャパン株式会社製「高精度圧力露点プローブTMS−442−5」)を設置するとともに、電流計および電圧計を、燃料電池部101のアノード極側集電体およびカソード極側集電体に接続した(電流計は燃料電池に対して直列、電圧計は燃料電池に対して並列に接続)。また、第1制御部106としてのパーソナルコンピュータを第1検出部105に接続して第1検出部105からの電気信号を受信可能にするとともに、第1調整部104に接続して、第1検出部105からの情報に基づき第1調整部104に制御情報を送信可能とした。また、燃料電池内部の温度をモニターするために、アノード極セパレータ内部の膜電極複合体近傍に温度センサを設置するとともに、調湿器内部の水浴の温度をモニターするための温度センサを該水浴中に設置した。これらの温度センサの検知結果を第1制御部106に送信できるようにした。
【0178】
<実施例2>
上記実施例1の(1)〜(2)の方法で作製したアルカリ形燃料電池を燃料電池部1001として用い、図10と同様の構成のアルカリ形燃料電池システムを作製した。具体的には次のとおりである。
【0179】
還元剤供給部1002としてのステンレス製の配管を燃料電池部1001のアノード極セパレータに還元剤を供給できるように接続するとともに、酸化剤供給部1003としてのステンレス製の配管を燃料電池部1001のカソード極セパレータに酸化剤を供給できるように接続した。酸化剤供給部1003としてのステンレス製の配管は、第2調整部1004としての流量調整弁および調湿器を有している。調湿器は、温度制御可能な水浴を有しており、酸化剤を水浴中の水中へバブリングさせることにより加湿を行なうタイプである。第2検出部1005として、カソード極セパレータが有する酸化剤流路の出口側端部に湿度計(タスコジャパン株式会社製「高精度圧力露点プローブTMS−442−5」)を設置するとともに、電流計および電圧計を、燃料電池部1001のアノード極側集電体およびカソード極側集電体に接続した(電流計は燃料電池に対して直列、電圧計は燃料電池に対して並列に接続)。また、第2制御部1006としてのパーソナルコンピュータを第2検出部1005に接続して第2検出部1005からの電気信号を受信可能にするとともに、第2調整部1004に接続して、第2検出部1005からの情報に基づき第2調整部1004に制御情報を送信可能とした。また、燃料電池内部の温度をモニターするために、カソード極セパレータ内部の膜電極複合体近傍に温度センサを設置するとともに、調湿器内部の水浴の温度をモニターするための温度センサを該水浴中に設置した。これらの温度センサの検知結果を第2制御部1006に送信できるようにした。
【0180】
<比較例1>
第1調整部104および第1制御部106を有しないこと以外は実施例1と同様にしてアルカリ形燃料電池システムを作製した。
【0181】
〔アノード極の湿度制御実験およびその評価〕
(1)図5に示されるフローチャートに従うアノード極の湿度制御
<実施例A−1>
実施例1で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=300mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力増加要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を600mA/cm2まで増加させ、時刻T2までこの電流量を維持した(T1−T0=5分)。
【0182】
以上の発電操作において、図5に示されるフローチャートに従い、次のようなアノード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ciは−30mA/cm2・min、Diは30mA/cm2・min、AHは90%RH、BHは110%RHに設定した。時刻T0〜T1における1分間、第1検出部105により電流量を測定して、電流量の単位時間当たりの変化量Δiを検出し、「Δi>Di」との判定結果に基づき(ステップS401)、第1制御部106による制御により、還元剤の流量を2倍に増加させることにより、アノード極の湿度を低減させた(ステップS502)。このようなアノード極の湿度制御の結果、時刻T1〜T2において、安定した出力電圧を維持することができた。
【0183】
次に、時刻T2における電子機器からの出力低減要請に基づき、時刻T2から時刻T3にかけて直線的に電流量を600mA/cm2から300mA/cm2まで低下させ、以後この電流量を維持した(T3−T2=5分)。
【0184】
以上の発電操作において、図5に示されるフローチャートに従い、次のようなアノード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ciは−30mA/cm2・minに設定した。時刻T2〜T3における1分間、第1検出部105により電流量を測定し、電流量の単位時間あたりの変化量Δiを検出し、「Δi<Ci」との判定結果に基づき(ステップS401)、第1制御部106による制御により、還元剤の流量を半減させ、発電初期の流量に戻すことにより、アノード極の湿度を増加させた(ステップS501)。このようなアノード極の湿度制御の結果、時刻T3以降において、安定した出力電圧を維持することができた。
【0185】
<実施例A−2>
ステップS502において、還元剤の流量を増加させる代わりに、還元剤の相対湿度を初期値の約95%となるように調整し、アノード極の湿度を低減させた以外は実施例A−1と同様にしてアノード極の湿度制御を行なった。また、ステップS501において、還元剤の流量を低減させる代わりに、還元剤の相対湿度を増加させ、発電初期の相対湿度に戻すことにより、アノード極の湿度を増加させた以外は実施例A−1と同様にしてアノード極の湿度制御を行なった。このようなアノード極の湿度制御の結果、時刻T1〜T2および時刻T3以降において、安定した出力電圧を維持することができた。なお、相対湿度の増減は、第1調整部104の調湿器の温度を調整することにより行なった。
【0186】
<比較例X−1>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システム(第1調整部104および第1制御部106を有しない。)を用いたこと以外は実施例A−1と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加/低減要請に応じて、実施例A−1と同様に電流量を増加/低下させたが、発電開始以降、還元剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例A−1およびA−2の初期値と同じである)。結果、時刻T1〜T2において、フラッディングが原因と見られる出力電圧の漸次的な低下が認められた。また、時刻T3以降においては、ドライアップが原因と見られる出力電圧の漸次的な低下が認められた。
【0187】
<実施例A−3>
実施例1で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=300mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力増加要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を700mA/cm2まで増加させ、以後この電流量を維持した。
【0188】
以上の発電操作において、図5に示されるフローチャートに従い、次のようなアノード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ciは−30mA/cm2・min、Diは30mA/cm2・min、AHは90%RH、BHは110%RHに設定した。時刻T1以後における1分間、第1検出部105により電流量を測定し、電流量の単位時間当たりの変化量Δi=10mA/cm2・minとの検出結果から、「Ci≦Δi≦Di」との判定結果を得た(ステップS401)。続いて、当該判定結果に基づき相対湿度Hを測定し(測定時間1分)、相対湿度H=115%RHとの検出結果から、「H≧BH」との判定結果を得た(ステップS402)。
【0189】
当該判定結果に基づき、第1制御部106による制御により、還元剤の流量を約2倍に増加させることにより、アノード極の湿度を減少させた(ステップS404)。なお、以上のような図5に示される一連のフローを終了した後、図5のフローを複数回実施して、流量の微小な増減を行ない、流量を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。以上のようなアノード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0190】
<実施例A−4>
ステップS404において、還元剤の流量を増加させる代わりに、還元剤の相対湿度を初期値の約95%となるように調整し、アノード極の湿度を減少させた以外は実施例A−3と同様にしてアノード極の湿度制御を行なった。なお、相対湿度を初期値の約95%となるように減少させた後、図5のフローを複数回実施して、相対湿度の微小な増減を行ない、相対湿度を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。このようなアノード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0191】
<比較例X−2>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システム(第1調整部104および第1制御部106を有しない。)を用いたこと以外は実施例A−3と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加要請に応じて、実施例A−3と同様に電流量を700mA/cm2まで増加させたが、発電開始以降、還元剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例A−3およびA−4の初期値と同じである)。結果、時刻T1以降、時間の経過とともに、フラッディングが原因と見られる出力電圧の低下が徐々に顕著になっていった。
【0192】
<実施例A−5>
実施例1で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=700mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力低減要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を200mA/cm2まで低下させ、以後この電流量を維持した。
【0193】
以上の発電操作において、図5に示されるフローチャートに従い、次のようなアノード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ciは−30mA/cm2・min、Diは30mA/cm2・min、AHは90%RH、BHは110%RHに設定した。時刻T1以後における1分間、第1検出部105により電流量を測定し、電流量の単位時間当たりの変化量Δi=10mA/cm2・minとの検出結果から、「Ci≦Δi≦Di」との判定結果を得た(ステップS401)。続いて、当該判定結果に基づき相対湿度Hを測定し(測定時間1分)、相対湿度H=85%との検出結果から、「H≦AH」との判定結果を得た(ステップS402)。
【0194】
当該判定結果に基づき、第1制御部106による制御により、還元剤の流量を約60%に減少させることにより、アノード極の湿度を増加させた(ステップS403)。流量を約60%倍に減少させた後、図5のフローを複数回実施して、流量の微小な増減を行ない、流量を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。以上のようなアノード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0195】
<実施例A−6>
ステップS403において、還元剤の流量を減少させる代わりに、還元剤の相対湿度を初期値の約104%となるように調整し、アノード極の湿度を増加させた以外は実施例A−5と同様にしてアノード極の湿度制御を行なった。なお、相対湿度を初期値の約104%となるように増加させた後、図5のフローを複数回実施して、相対湿度の微小な増減を行ない、相対湿度を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。このようなアノード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0196】
<比較例X−3>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システム(第1調整部104および第1制御部106を有しない。)を用いたこと以外は実施例A−5と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加要請に応じて、実施例A−5と同様に電流量を200mA/cm2まで低下させたが、発電開始以降、還元剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例A−5およびA−6の初期値と同じである)。結果、時刻T1以降、時間の経過とともに、ドライアップが原因と見られる出力電圧の低下が徐々に顕著になっていった。
【0197】
(2)図7に示されるフローチャートに従うアノード極の湿度制御
<実施例B−1>
実施例1で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=300mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力増加要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を700mA/cm2まで増加させ、以後この電流量を維持した。
【0198】
以上の発電操作において、図7に示されるフローチャートに従い、次のようなアノード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ciは−30mA/cm2・min、Diは30mA/cm2・min、EHは90%RH、FHは100%RH、GVは−30mV/minに設定した。時刻T1以後における1分間、第1検出部105により電流量を測定し、電流量の単位時間当たりの変化量Δi=10mA/cm2・minとの検出結果から、「Ci≦Δi≦Di」との判定結果を得た(ステップS401)。続いて、当該判定結果に基づき相対湿度Hを測定し(測定時間1分)、相対湿度H=100%RHとの検出結果から、「H≧FH」との判定結果を得た(ステップS402)。さらに続いて、当該判定結果に基づき出力電圧値を測定し(測定時間1分)、出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔV=−60mV/minとの検出結果から、「ΔV<GV」との判定結果を得た(ステップS404)。
【0199】
当該判定結果に基づき、第1制御部106による制御により、還元剤の流量を約2.3倍に増加させることにより、アノード極の湿度を減少させた(ステップS405)。流量を約2.3倍に増加させた後、図7のフローを複数回実施して、流量の微小な増減を行ない、流量を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。以上のようなアノード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0200】
<実施例B−2>
ステップS405において、還元剤の流量を増加させる代わりに、還元剤の相対湿度を初期値の約95%となるように調整し、アノード極の湿度を減少させた以外は実施例B−1と同様にしてアノード極の湿度制御を行なった。なお、相対湿度を初期値の約95%となるように減少させた後、図7のフローを複数回実施して、相対湿度の微小な増減を行ない、相対湿度を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。このようなアノード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0201】
<比較例X−2>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システム(第1調整部104および第1制御部106を有しない。)を用いたこと以外は実施例B−1と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加要請に応じて、実施例B−1と同様に電流量を700mA/cm2まで増加させたが、発電開始以降、還元剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例B−1およびB−2の初期値と同じである)。結果、時刻T1以降、時間の経過とともに、フラッディングが原因と見られる出力電圧の低下が徐々に顕著になっていった。
【0202】
<実施例B−3>
実施例1で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=700mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力低減要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を200mA/cm2まで低下させ、以後この電流量を維持した。
【0203】
以上の発電操作において、図7に示されるフローチャートに従い、次のようなアノード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ciは−30mA/cm2・min、Diは30mA/cm2・min、EHは90%RH、FHは100%RH、GVは−30mV/minに設定した。時刻T1以後における1分間、第1検出部105により電流量を測定し、電流量の単位時間当たりの変化量Δi=10mA/cm2・minとの検出結果から、「Ci≦Δi≦Di」との判定結果を得た(ステップS401)。続いて、当該判定結果に基づき相対湿度Hを測定し(測定時間1分)、相対湿度H=85%RHとの検出結果から、「H≦EH」との判定結果を得た(ステップS402)。
【0204】
当該判定結果に基づき、第1制御部106による制御により、還元剤の流量を約60%に減少させることにより、アノード極の湿度を増加させた(ステップS403)。流量を約60%倍に減少させた後、図7のフローを複数回実施して、流量の微小な増減を行ない、流量を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。以上のようなアノード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0205】
<実施例B−4>
ステップS403において、還元剤の流量を減少させる代わりに、還元剤の相対湿度を初期値の約104%となるように調整し、アノード極の湿度を増加させた以外は実施例B−3と同様にしてアノード極の湿度制御を行なった。なお、相対湿度を初期値の約104%となるように増加させた後、図7のフローを複数回実施して、相対湿度の微小な増減を行ない、相対湿度を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。このようなアノード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0206】
<比較例X−3>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システム(第1調整部104および第1制御部106を有しない。)を用いたこと以外は実施例B−3と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加要請に応じて、実施例B−3と同様に電流量を200mA/cm2まで減少させたが、発電開始以降、還元剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例B−3およびB−4の初期値と同じである)。結果、時刻T1以降、時間の経過とともに、ドライアップが原因と見られる出力電圧の低下が徐々に顕著になっていった。
【0207】
〔カソード極の湿度制御実験およびその評価〕
(1)図13に示されるフローチャートに従うカソード極の湿度制御
<実施例C−1>
実施例2で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=300mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力増加要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を600mA/cm2まで増加させ、時刻T2までこの電流量を維持した(T1−T0=5分)。
【0208】
以上の発電操作において、図13に示されるフローチャートに従い、次のようなカソード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ci’は−30mA/cm2・min、Di’は30mA/cm2・min、AH’は90%RH、BH’は110%RHに設定した。時刻T0〜T1における1分間、第2検出部1005により電流量を測定して、電流量の単位時間当たりの変化量Δi’を検出し、「Δi’>Di’」との判定結果に基づき(ステップS1201)、第2制御部1006による制御により、酸化剤の流量を2倍に増加させることにより、カソード極の湿度を増加させた(ステップS1302)。このようなカソード極の湿度制御の結果、時刻T1〜T2において、安定した出力電圧を維持することができた。
【0209】
次に、時刻T2における電子機器からの出力低減要請に基づき、時刻T2から時刻T3にかけて直線的に電流量を600mA/cm2から300mA/cm2まで低下させ、以後この電流量を維持した(T3−T2=5分)。
【0210】
以上の発電操作において、図13に示されるフローチャートに従い、次のようなカソード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ci’は−30mA/cm2・min、Di’は30mA/cm2・min、AH’は90%RH、BH’は110%RHに設定した。時刻T2〜T3における1分間、第2検出部1005により電流量を測定し、電流量の単位時間あたりの変化量Δi’を検出し、「Δi’<Ci’」との判定結果に基づき(ステップS1201)、第2制御部1006による制御により、酸化剤の流量を半減させ、発電初期の流量に戻すことにより、カソード極の湿度を減少させた(ステップS1301)。このようなカソード極の湿度制御の結果、時刻T3以降において、安定した出力電圧を維持することができた。
【0211】
<実施例C−2>
ステップS1302において、酸化剤の流量を増加させる代わりに、酸化剤の相対湿度を初期値の約105%となるように調整し、カソード極の湿度を増加させた以外は実施例C−1と同様にしてカソード極の湿度制御を行なった。また、ステップS1301において、酸化剤の流量を減少させる代わりに、酸化剤の相対湿度を減少させ、発電初期の相対湿度に戻すことにより、カソード極の湿度を増加させた以外は実施例C−1と同様にしてカソード極の湿度制御を行なった。このようなカソード極の湿度制御の結果、時刻T1〜T2および時刻T3以降において、安定した出力電圧を維持することができた。なお、相対湿度の増減は、第2調整部1004の調湿器の温度を調整することにより行なった。
【0212】
<比較例Y−1>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システムを用いたこと以外は実施例C−1と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加/低減要請に応じて、実施例C−1と同様に電流量を増加/低下させたが、発電開始以降、酸化剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例C−1およびC−2の初期値と同じである)。結果、時刻T1〜T2において、ドライアップが原因と見られる出力電圧の漸次的な低下が認められた。また、時刻T3以降においては、フラッディングが原因と見られる出力電圧の漸次的な低下が認められた。
【0213】
<実施例C−3>
実施例2で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=300mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力増加要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を700mA/cm2まで増加させ、以後この電流量を維持した。
【0214】
以上の発電操作において、図13に示されるフローチャートに従い、次のようなカソード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ci’は−30mA/cm2・min、Di’は30mA/cm2・min、AH’は90%RH、BH’は110%RHに設定した。時刻T1以後における1分間、第2検出部1005により電流量を測定し、電流量の単位時間当たりの変化量Δi’=10mA/cm2・minとの検出結果から、「Ci’≦Δi’≦Di’」との判定結果を得た(ステップS1201)。続いて、当該判定結果に基づき相対湿度Hを測定し(測定時間1分)、相対湿度H’=115%RHとの検出結果から、「H’≧BH’」との判定結果を得た(ステップS1202)。
【0215】
当該判定結果に基づき、第2制御部1006による制御により、酸化剤の流量を半減させることにより、カソード極の湿度を減少させた(ステップS1204)。なお、以上のような図13に示される一連のフローを終了した後、図13のフローを複数回実施して、流量の微小な増減を行ない、流量を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。以上のようなカソード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0216】
<実施例C−4>
ステップS1204において、酸化剤の流量を半減させる代わりに、酸化剤の相対湿度を初期値の約95%となるように調整し、カソード極の湿度を減少させた以外は実施例C−3と同様にしてカソード極の湿度制御を行なった。なお、相対湿度を初期値の約95%となるように減少させた後、図13のフローを複数回実施して、相対湿度の微小な増減を行ない、相対湿度を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。このようなカソード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0217】
<比較例Y−2>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システムを用いたこと以外は実施例C−3と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加要請に応じて、実施例C−3と同様に電流量を700mA/cm2まで増加させたが、発電開始以降、酸化剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例C−3およびC−4の初期値と同じである)。結果、時刻T1以降、時間の経過とともに、フラッディングが原因と見られる出力電圧の低下が徐々に顕著になっていった。
【0218】
<実施例C−5>
実施例2で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=700mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力低減要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を200mA/cm2まで低下させ、以後この電流量を維持した。
【0219】
以上の発電操作において、図13に示されるフローチャートに従い、次のようなカソード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ci’は−30mA/cm2・min、Di’は30mA/cm2・min、AH’は90%RH、BH’は110%RHに設定した。時刻T1以後における1分間、第2検出部1005により電流量を測定し、電流量の単位時間当たりの変化量Δi’=10mA/cm2・minとの検出結果から、「Ci’≦Δi’≦Di’」との判定結果を得た(ステップS1201)。続いて、当該判定結果に基づき相対湿度H’を測定し(測定時間1分)、相対湿度H’=85%RHとの検出結果から、「H’≦AH’」との判定結果を得た(ステップS1202)。
【0220】
当該判定結果に基づき、第2制御部1006による制御により、酸化剤の流量を約3.8倍に増加させることにより、カソード極の湿度を増加させた(ステップS1203)。流量を約3.8倍に増加させた後、図13のフローを複数回実施して、流量の微小な増減を行ない、流量を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。以上のようなカソード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0221】
<実施例C−6>
ステップS1203において、酸化剤の流量を増加させる代わりに、酸化剤の相対湿度を初期値の約104%となるように調整し、カソード極の湿度を増加させた以外は実施例C−5と同様にしてカソード極の湿度制御を行なった。なお、相対湿度を初期値の約104%となるように増加させた後、図13のフローを複数回実施して、相対湿度の微小な増減を行ない、相対湿度を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。このようなカソード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0222】
<比較例Y−3>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システムを用いたこと以外は実施例C−5と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加要請に応じて、実施例C−5と同様に電流量を200mA/cm2まで低下させたが、発電開始以降、酸化剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例C−5およびC−6の初期値と同じである)。結果、時刻T1以降、時間の経過とともに、ドライアップが原因と見られる出力電圧の低下が徐々に顕著になっていった。
【0223】
(2)図15に示されるフローチャートに従うカソード極の湿度制御
<実施例D−1>
実施例2で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=300mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力増加要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を700mA/cm2まで増加させ、以後この電流量を維持した。
【0224】
以上の発電操作において、図15に示されるフローチャートに従い、次のようなカソード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ci’は−30mA/cm2・min、Di’は30mA/cm2・min、EH’は90%RH、FH’は100%RH、GV’は−30mV/minに設定した。時刻T1以後における1分間、第2検出部1005により電流量を測定し、電流量の単位時間当たりの変化量Δi’=10mA/cm2・minとの検出結果から、「Ci’≦Δi’≦Di’」との判定結果を得た(ステップS1401)。続いて、当該判定結果に基づき相対湿度H’を測定し(測定時間1分)、相対湿度H’=100%RHとの検出結果から、「H’≧FH’」との判定結果を得た(ステップS1402)。さらに続いて、当該判定結果に基づき出力電圧値を測定し(測定時間1分)、出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔV’=−60mV/minとの検出結果から、「ΔV’<GV’」との判定結果を得た(ステップS1404)。
【0225】
当該判定結果に基づき、第2制御部1006による制御により、酸化剤の流量を半減させることにより、カソード極の湿度を減少させた(ステップS1405)。流量を半減させた後、図15のフローを複数回実施して、流量の微小な増減を行ない、流量を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。以上のようなカソード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0226】
<実施例D−2>
ステップS1405において、酸化剤の流量を半減させる代わりに、酸化剤の相対湿度を初期値の約95%となるように調整し、カソード極の湿度を減少させた以外は実施例D−1と同様にしてカソード極の湿度制御を行なった。なお、相対湿度を初期値の約95%となるように減少させた後、図15のフローを複数回実施して、相対湿度の微小な増減を行ない、相対湿度を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。このようなカソード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0227】
<比較例Y−2>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システムを用いたこと以外は実施例D−1と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加要請に応じて、実施例D−1と同様に電流量を700mA/cm2まで増加させたが、発電開始以降、酸化剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例D−1およびD−2の初期値と同じである)。結果、時刻T1以降、時間の経過とともに、フラッディングが原因と見られる出力電圧の低下が徐々に顕著になっていった。
【0228】
<実施例D−3>
実施例2で作製したアルカリ形燃料電池システムにおけるアルカリ形燃料電池のアノード極側集電体とカソード極側集電体とを電子機器を介して接続するとともに、アノード極セパレータに還元剤(H2)を、カソード極セパレータに酸化剤(空気)を供給して、発電を開始した。この際、還元剤および酸化剤の流量および相対湿度、アノード極−カソード極間の電流量、ならびにアルカリ形燃料電池内の温度を一定に制御した(電流量=700mA/cm2、アルカリ形燃料電池内の温度=50℃)。その後、時刻T0における電子機器からの出力低減要請に基づき、時刻T0から時刻T1にかけて直線的に電流量を200mA/cm2まで低下させ、以後この電流量を維持した。
【0229】
以上の発電操作において、図15に示されるフローチャートに従い、次のようなカソード極の湿度制御を行なった。なお、所定値Ci’は−30mA/cm2・min、Di’は30mA/cm2・min、EH’は90%RH、FH’は100%RH、GV’は−30mV/minに設定した。時刻T1以後における1分間、第2検出部1005により電流量を測定し、電流量の単位時間当たりの変化量Δi’=10mA/cm2・minとの検出結果から、「Ci’≦Δi’≦Di’」との判定結果を得た(ステップS1401)。続いて、当該判定結果に基づき相対湿度H’を測定し(測定時間1分)、相対湿度H’=85%RHとの検出結果から、「H’≦EH’」との判定結果を得た(ステップS1402)。
【0230】
当該判定結果に基づき、第2制御部1006による制御により、酸化剤の流量を約3.8倍に増加させることにより、カソード極の湿度を増加させた(ステップS1403)。流量を約3.8倍に増加させた後、図15のフローを複数回実施して、流量の微小な増減を行ない、流量を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。以上のようなカソード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0231】
<実施例D−4>
ステップS1403において、酸化剤の流量を減少させる代わりに、酸化剤の相対湿度を初期値の約104%となるように調整し、カソード極の湿度を増加させた以外は実施例D−3と同様にしてカソード極の湿度制御を行なった。なお、相対湿度を初期値の約104%となるように増加させた後、図15のフローを複数回実施して、相対湿度の微小な増減を行ない、相対湿度を微調整(最適化)した。フロー終了から次のフロー開始までの時間間隔は5分とした。このようなカソード極の湿度制御の結果、出力電圧の低下が収まり、安定した出力電圧を達成することができた。
【0232】
<比較例Y−3>
比較例1で作製したアルカリ形燃料電池システムを用いたこと以外は実施例D−3と同様にして発電操作を行なった。電子機器からの出力増加要請に応じて、実施例D−3と同様に電流量を200mA/cm2まで減少させたが、発電開始以降、酸化剤の流量および相対湿度は一定に維持した(これらの一定値は実施例D−3およびD−4の初期値と同じである)。結果、時刻T1以降、時間の経過とともに、ドライアップが原因と見られる出力電圧の低下が徐々に顕著になっていった。
【符号の説明】
【0233】
100,1000,1800 アルカリ形燃料電池システム、101,1001,1801 燃料電池部、102,1002,1802 還元剤供給部、103,1003,1803 酸化剤供給部、104,1804a 第1調整部、105 第1検出部、106 第1制御部、200 アルカリ形燃料電池、201 アニオン伝導性電解質膜、202 アノード極、203 カソード極、204 アノードセパレータ、205 カソードセパレータ、206 還元剤流路、207 酸化剤流路、210 膜電極複合体、1004,1804b 第2調整部、1005 第2検出部、1006 第2制御部、1805 検出部、1806 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード極、アニオン伝導性電解質膜およびカソード極をこの順で備えるアルカリ形燃料電池を含む燃料電池部と、
前記アノード極に還元剤を供給するための還元剤供給部と、
前記カソード極に酸化剤を供給するための酸化剤供給部と、
前記アノード極に供給される還元剤の流量および/または湿度を調整するための第1調整部と、
前記アノード極から排出される還元剤の相対湿度Hを少なくとも検出する第1検出部と、
前記第1調整部および前記第1検出部に接続され、前記第1検出部による検出結果に基づいて、前記第1調整部による前記還元剤の流量および/または湿度の調整を制御するための第1制御部と、
を備えるアルカリ形燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1検出部は、前記アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δiおよび出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔVをさらに検出するものである請求項1に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1検出部によって検出された相対湿度Hが所定値AH(ただし、AHは100%RHより小さい値である。)以下である場合には、前記第1制御部は、前記第1調整部が還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御し、
前記第1検出部によって検出された相対湿度Hが所定値BH(ただし、BHは100%RHより大きい値である。)以上である場合には、前記第1制御部は、前記第1調整部が還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する請求項1に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1検出部によって検出されたΔiがCi〜Di(ただし、Ciは負の値であり、Diは正の値である。)の範囲内である場合において、
前記第1検出部によって検出された相対湿度Hが所定値EH(ただし、EHは100%RHより小さい値である。)以下である場合には、前記第1制御部は、前記第1調整部が還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御し、
前記第1検出部によって検出された相対湿度Hが所定値FH(ただし、FH=100%RHである。)以上である場合には、前記第1制御部は、前記第1検出部がΔVを検出するように制御するとともに、該ΔVが所定値GV(ただし、GVは負の値である。)未満である場合には、前記第1調整部が還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する請求項2に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項5】
前記第1検出部によって検出されたΔiがCi〜Di(ただし、Ciは負の値であり、Diは正の値である。)の範囲内である場合において、
前記第1検出部によって検出されたΔVが所定値GV(ただし、GVは負の値である。)未満である場合には、前記第1制御部は、前記第1検出部が相対湿度Hを検出するように制御するとともに、該相対湿度Hが所定値EH(ただし、EHは100%RHより小さい値である。)以下である場合には、前記第1調整部が還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御し、該相対湿度Hが所定値FH(ただし、FH=100%RHである。)以上である場合には、前記第1調整部が還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する請求項2に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1検出部によって検出されたΔiが所定値Ciより小さい場合には、前記第1制御部は、前記第1調整部が還元剤の流量の低減および/または還元剤の湿度の増加を行なうように制御し、
前記第1検出部によって検出されたΔiが所定値Diより大きい場合には、前記第1制御部は、前記第1調整部が還元剤の流量の増加および/または還元剤の湿度の低減を行なうように制御する請求項4または5に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項7】
相対湿度Hの所定値AHが80〜95〔%RH〕の範囲内であり、所定値BHが105〜150〔%RH〕の範囲内である請求項3に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項8】
Δiの所定値Ciが−50〜−25〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、所定値Diが+25〜+50〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、相対湿度Hの所定値EHが80〜95〔%RH〕の範囲内であり、ΔVの所定値GVが−50〜−2〔mV/min〕の範囲内である請求項4〜6のいずれかに記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項9】
前記アルカリ形燃料電池は、アノードセパレータ、アノード極、アニオン伝導性電解質膜、カソード極およびカソードセパレータをこの順で備える請求項1〜8のいずれかに記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項10】
前記還元剤供給部は、還元剤供給源と前記アノードセパレータとを接続する配管を含み、
前記配管は、前記第1調整部としての流量調整弁および/または調湿器を具備する請求項9に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項11】
アノード極、アニオン伝導性電解質膜およびカソード極をこの順で備えるアルカリ形燃料電池を含む燃料電池部と、
前記アノード極に還元剤を供給するための還元剤供給部と、
前記カソード極に酸化剤を供給するための酸化剤供給部と、
前記カソード極に供給される酸化剤の流量および/または湿度を調整するための第2調整部と、
前記カソード極から排出される酸化剤の相対湿度H’を少なくとも検出する第2検出部と、
前記第2調整部および前記第2検出部に接続され、前記第2検出部による検出結果に基づいて、前記第2調整部による前記酸化剤の流量および/または湿度の調整を制御するための第2制御部と、
を備えるアルカリ形燃料電池システム。
【請求項12】
前記第2検出部は、前記アルカリ形燃料電池のアノード極とカソード極との間を流れる電流値の単位時間当たりの変化量Δi’および出力電圧値の単位時間当たりの変化量ΔV’をさらに検出するものである請求項11に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項13】
前記第2検出部によって検出された相対湿度H’が所定値AH’(ただし、AH’は100%RHより小さい値である。)以下である場合には、前記第2制御部は、前記第2調整部が酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御し、
前記第2検出部によって検出された相対湿度H’が所定値BH’(ただし、BH’は100%RHより大きい値である。)以上である場合には、前記第2制御部は、前記第2調整部が酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する請求項11に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項14】
前記第2検出部によって検出されたΔi’がCi’〜Di’(ただし、Ci’は負の値であり、Di’は正の値である。)の範囲内である場合において、
前記第2検出部によって検出された相対湿度H’が所定値EH’(ただし、EH’は100%RHより小さい値である。)以下である場合には、前記第2制御部は、前記第2調整部が酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御し、
前記第2検出部によって検出された相対湿度H’が所定値FH’(ただし、FH’=100%RHである。)以上である場合には、前記第2制御部は、前記第2検出部がΔV’を検出するように制御するとともに、該ΔV’が所定値GV’(ただし、GV’は負の値である。)未満である場合には、前記第2調整部が酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する請求項12に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項15】
前記第2検出部によって検出されたΔi’がCi’〜Di’(ただし、Ci’は負の値であり、Di’は正の値である。)の範囲内である場合において、
前記第2検出部によって検出されたΔV’が所定値GV’(ただし、GV’は負の値である。)未満である場合には、前記第2制御部は、前記第2検出部が相対湿度H’を検出するように制御するとともに、該相対湿度H’が所定値EH’(ただし、EH’は100%RHより小さい値である。)以下である場合には、前記第2調整部が酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御し、該相対湿度H’が所定値FH’(ただし、FH’=100%RHである。)以上である場合には、前記第2調整部が酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御する請求項12に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項16】
前記第2検出部によって検出されたΔi’が所定値Ci’より小さい場合には、前記第2制御部は、前記第2調整部が酸化剤の流量の低減および/または酸化剤の湿度の低減を行なうように制御し、
前記第2検出部によって検出されたΔi’が所定値Di’より大きい場合には、前記第2制御部は、前記第2調整部が酸化剤の流量の増加および/または酸化剤の湿度の増加を行なうように制御する請求項14または15に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項17】
相対湿度H’の所定値AH’が70〜95〔%RH〕の範囲内であり、所定値BH’が105〜130〔%RH〕の範囲内である請求項13に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項18】
Δi’の所定値Ci’が−50〜−25〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、所定値Di’が+25〜+50〔mA/cm2・min〕の範囲内であり、相対湿度H’の所定値EH’が70〜95〔%RH〕の範囲内であり、ΔV’の所定値GV’が−50〜−2〔mV/min〕の範囲内である請求項14〜16のいずれかに記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項19】
前記アルカリ形燃料電池は、アノードセパレータ、アノード極、アニオン伝導性電解質膜、カソード極およびカソードセパレータをこの順で備える請求項11〜18のいずれかに記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項20】
前記酸化剤供給部は、酸化剤供給源と前記カソードセパレータとを接続する配管を含み、
前記配管は、前記第2調整部としての流量調整弁および/または調湿器を具備する請求項19に記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項21】
前記燃料電池部は、直列または並列に電気的に接続された2以上の前記アルカリ形燃料電池を含む請求項1〜20のいずれかに記載のアルカリ形燃料電池システム。
【請求項22】
前記還元剤が水素ガスであり、前記酸化剤が空気である請求項1〜21のいずれかに記載のアルカリ形燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−169079(P2012−169079A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27474(P2011−27474)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】