説明

アルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法

【課題】アルカリ性カルシウム水溶液を長期間にわたって連続的に効率良く製造することができる方法を提供する。
【解決手段】アルカリ性カルシウム水溶液製造装置10は、上下方向に開口した通水孔12を有する通水板13により内部が上方空間14と下方空間17とに区画されている容器11と、通水板13の上面に配置された粒状カルシウム化合物19とを含む。このアルカリ性カルシウム水溶液製造装置10の水導入口18より水を容器11の内部に連続的に導入し、この水と粒状カルシウム化合物19との接触によって生成して通水板13の通水孔12を通って下方空間17に下降するカルシウム化合物小粒子20との接触により生成するアルカリ性カルシウム水溶液を通水板13の通水孔12を介し、粒状カルシウム化合物19と接触させながら上方空間に上昇させ、次いでアルカリ性カルシウム水溶液を水溶液取出口15より取り出すことからなるアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵、野菜、果実、肉類などの生鮮食品もしくは食器や調理具などの食品に直接触れる食品用器具の除菌・静菌剤として有用なアルカリ性カルシウム水溶液を連続的に製造するための方法に関する。本発明はまた、アルカリ性カルシウム水溶液を用いた卵および野菜の洗浄方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
生鮮食品や食品用器具の除菌・静菌剤として、次亜塩素酸ナトリウム水溶液などの次亜塩素酸塩水溶液が知られている。しかし次亜塩素酸塩水溶液は、塩素に似た強い刺激臭を感じさせるという問題がある。このため、刺激臭が少なく、人体に対する安全性が比較的高い、アルカリ性カルシウム水溶液を除菌・静菌剤として用いることが検討されている。
【0003】
特許文献1には、アルカリ性カルシウム水溶液を用いて卵を洗浄殺菌する方法が開示されている。この特許文献1には、アルカリ性カルシウム水溶液の製造方法として、卵殻焼成酸化カルシウムや貝殻焼成酸化カルシウムなどの酸化カルシウムを水道水に懸濁させた懸濁液を静置し、その懸濁液の上清を水道水で適宜希釈する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、アルカリ性カルシウム水溶液を用いて食品を抗菌する方法が記載されている。この特許文献2には、アルカリ性カルシウム水溶液の製造方法として、貝殻焼成酸化カルシウムを充填したカラムに通水する方法が記載されている。この特許文献2の添付図面の図1に記載されている上記のアルカリ性カルシウム水溶液の製造方法に用いる装置は、カラム頂部から水を供給し、生成したアルカリ性カルシウム水溶液をカラム底部から取り出す構成となっており、酸化カルシウムとアルカリ性カルシウム水溶液の取出口との間には、茶パック、濾紙などの透水性シートが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−14688号公報
【特許文献2】特開2002−338416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の酸化カルシウム懸濁液の上清を水道水で希釈するアルカリ性カルシウム水溶液の製造方法は、懸濁液の上清を得るのに時間が掛かり、また、連続的にアルカリ性カルシウム水溶液を製造することが困難であるという問題がある。このため連続的に、かつ効率良く卵を洗浄するためには有利とは言えない。
【0007】
これに対して、特許文献2に記載の酸化カルシウムを充填したカラムに通水する方法は、連続的にアルカリ性カルシウム水溶液を製造できるという利点がある。しかし、特許文献2に記載されている装置では、通水中に酸化カルシウムの粒子が透水性シートを目詰まりさせやすく、長期間にわたって連続してアルカリ性カルシウム水溶液を製造するのが難しい。このため、長期間にわたって連続的に食品を洗浄するには有利とは言えない。
【0008】
従って、本発明の目的は、所望のアルカリ度を示すアルカリ性カルシウム水溶液を長期間にわたって連続的に効率良く製造することができる方法、およびその方法により製造されたアルカリ性カルシウム水溶液を用いる卵および野菜の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上下方向に開口した通水孔を有する通水板により内部が上方空間と下方空間とに区画され、上方空間に接する壁面には水溶液取出口が備えられ、そして該下方空間に接する壁面には水導入口が備えられた容器を用意し、この容器の通水板の上面に通水孔よりも粒径が大きい粒状酸化カルシウムや粒状水酸化カルシウムなどの粒状カルシウム化合物を配置して、水導入口より水を容器内部に連続的に導入することにより、高いアルカリ度を示すアルカリ性カルシウム水溶液を長期間にわたって連続的に効率良く製造することが可能となることを見出した。これは、水導入口により導入された水と粒状カルシウム化合物との接触により粒状カルシウム化合物が溶解して部分的に脱落もしくは崩壊して生成するカルシウム化合物小粒子が通水板の通水孔を通って下方空間に下降し、下方空間にてカルシウム化合物小粒子と水との接触により生成したアルカリ性カルシウム水溶液が通水板の通水孔を通って上方空間を上昇し、通水板の上面に配置されている粒状カルシウム化合物に接触して、pHがさらに高められるためであると考えられる。
【0010】
すなわち、本発明は、上下方向に開口した通水孔を有する通水板により内部が上方空間と下方空間とに区画され、該上方空間に接する壁面には水溶液取出口が備えられ、そして該下方空間に接する壁面には水導入口が備えられた容器を用意し、この容器の通水板の上面に通水孔よりも粒径が大きい粒状酸化カルシウムおよび粒状水酸化カルシウムからなる群より選ばれる粒状カルシウム化合物を配置することによりアルカリ性カルシウム水溶液の製造装置を構成した後、該アルカリ性カルシウム水溶液の製造装置の水導入口より水を容器内部に連続的に導入し、この水と粒状カルシウム化合物との接触による粒状カルシウム化合物の部分的な脱落もしくは崩壊により生成し、通水板の通水孔を通って下方空間に下降するカルシウム化合物小粒子との接触により生成するアルカリ性カルシウム水溶液を通水板の通水孔を介し、粒状カルシウム化合物と接触させながら上方空間に上昇させ、次いでアルカリ性カルシウム水溶液を水溶液取出口より取り出すことからなるアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法にある。
【0011】
本発明の好ましい態様は、次の通りである。
(1)粒状カルシウム化合物が、日本石灰協会標準試験方法(2006年)で規定されている活性度試験方法により測定された、粒状カルシウム化合物50gでの活性度が10〜300mLの範囲にある。
(2)さらに、水溶液取出口から取り出したアルカリ性カルシウム水溶液のpHを測定し、そのpHの値に基づいて、該アルカリ性カルシウム水溶液を水で希釈する工程を含む。
【0012】
本発明はまた、上記本発明のアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法によって取り出したアルカリ性カルシウム水溶液を卵殻の表面に接触させる卵の洗浄方法にもある。
【0013】
本発明はさらに、上記本発明のアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法によって取り出したアルカリ性カルシウム水溶液を野菜の表面に接触させる野菜の洗浄方法にもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法を利用することによって、生鮮食品や食品用器具の除菌・静菌剤として有用なアルカリ性カルシウム水溶液を長期間にわたって連続的に効率良く製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の方法の実施に用いることができるアルカリ性カルシウム水溶液製造装置の一例の構成図である。
【図2】図1のアルカリ性カルシウム水溶液製造装置の通水板周囲の拡大図である。
【図3】本発明の方法により製造されたアルカリ性カルシウム水溶液を水で希釈して、卵の洗浄を行なうシステムの一例の構成図である。
【図4】本発明の方法により製造されたアルカリ性カルシウム水溶液を、別に用意した希釈装置を用いて水で希釈する希釈アルカリ性カルシウム水溶液製造システムの一例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、アルカリ性カルシウム水溶液の製造原料として、粒状酸化カルシウムおよび粒状水酸化カルシウムからなる群より選ばれる粒状カルシウム化合物を用いる。粒状カルシウム化合物は、日本石灰協会標準試験方法(2006年)で規定されている活性度試験方法により測定された、粒状カルシウム化合物50gでの活性度が10〜300mLの範囲にあることが好ましく、20〜200mLの範囲にあることがより好ましく、20〜100mLの範囲にあることが特に好ましい。粒状カルシウム化合物は、粒状酸化カルシウムであることが好ましく、貝殻もしくは卵殻を焼成して得られた粒状酸化カルシウムであることがより好ましい。
【0017】
次に、本発明を添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法の実施に用いることができるアルカリ性カルシウム水溶液製造装置を説明する構成図であり、図2は、図1のアルカリ性カルシウム水溶液製造装置の通水板周囲の拡大図である。
【0018】
図1において、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置10は、容器11とその内部に配置された粒状カルシウム化合物19とから構成されている。
【0019】
容器11は、上下方向に開口した通水孔12を有する通水板13により内部が上方空間14と下方空間17とに区画されている。上方空間14は側壁面に水溶液取出口15が備えられ、頂部に粒状カルシウム化合物導入口16が備えられている。下方空間17には、側壁面に水導入口18が備えられている。通水孔12の口径は、1〜10mmの範囲であることが好ましく、1〜5mmの範囲にあることがより好ましい。上方空間14と下方空間17との容積比(上方空間:下方空間)は、50:50〜90:10の範囲にあることが好ましい。
【0020】
粒状カルシウム化合物19は、通水板13の上面に配置されている。
【0021】
図1のアルカリ性カルシウム水溶液製造装置10において、水導入口18より下方空間17に連続的に導入された水は、通水板13の通水孔12を通って上方空間14に上昇して、粒状カルシウム化合物19に接触する。水と粒状カルシウム化合物19とが接触すると、図2に示すように、粒状カルシウム化合物19が溶解して部分的に脱落もしくは崩壊し、粒径が通水板13の通水孔12の口径よりも相対的に小さいカルシウム化合物小粒子20が生成する。生成したカルシウム化合物小粒子20は、通水板13の通水孔12を通って下方空間17に下降する。
【0022】
下方空間17に下降したカルシウム化合物小粒子20は、粒子径が粒状カルシウム化合物19よりも小さく、水との反応性が高い。このため、下方空間17に導入された水がカルシウム化合物小粒子20に接触すると、速やかにアルカリ性カルシウム水溶液が生成する。下方空間17にて生成したアルカリ性カルシウム水溶液は、通水板13の通水孔12を通って上方空間14を上昇し、通水板13の上面に配置されている粒状カルシウム化合物19に接触して、カルシウム濃度、すなわちpHがさらに高められる。こうして生成した高pHのアルカリ性カルシウム水溶液21は、水溶液取出口15より取り出される。
【0023】
このように、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置10では、下方空間17に導入された水を反応性が高いカルシウム化合物小粒子20に接触させた後、粒状カルシウム化合物19に接触させるので、高pHのアルカリ性カルシウム水溶液を比較的短時間で多量に製造することが可能となる。また、下方空間17内のカルシウム化合物小粒子20は、アルカリ性カルシウム水溶液と共に上昇しても、通水板13の上に配置された粒状カルシウム化合物19がフィルターとして機能して、その大部分が粒状カルシウム化合物19にて捕捉されるので、水溶液取出口15より取り出されるアルカリ性カルシウム水溶液には、カルシウム化合物小粒子20が殆ど混入しない。
【0024】
本発明の方法により製造されたアルカリ性カルシウム水溶液は、除菌・静菌剤として、卵、野菜、果実、肉類などの生鮮食品もしくは食器や調理具などの食品に直接触れる食品用器具の洗浄に有利に使用することができる。アルカリ性カルシウム水溶液を生鮮食品や食品用器具に接触させる方法としては、アルカリ性カルシウム水溶液を生鮮食品や食品用器具に噴霧する方法、アルカリ性カルシウム水溶液に生鮮食品や食品用器具を浸漬させる方法などの方法を用いることができる。アルカリ性カルシウム水溶液は、そのまま使用してもよいし、希釈して使用してもよい。
【0025】
次に、本発明の方法により製造されたアルカリ性カルシウム水溶液を用いて、食品もしくは食品用器具を洗浄する方法について、洗浄対象物が卵である場合を例にとり、添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
図3は、本発明の方法により製造されたアルカリ性カルシウム水溶液を水で希釈して、卵の洗浄を行なうシステムを説明する構成図である。図3において、卵洗浄システムは、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置10と卵洗浄装置30とからなる。
【0027】
アルカリ性カルシウム水溶液製造装置10は図1に示したものを用いている。
【0028】
卵洗浄装置30は、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置10の水溶液取出口15に接続する配水管31と、配水管31の先端に取り付けられた噴霧器35と、卵36を搬送するためのコンベア37とから構成されている。配水管31は、希釈用水導入口32と、希釈用水導入口32の位置より下流側に付設されたpH計33と、pH計33で測定されたpH値情報に基づいて、希釈用水導入口32から配水管31に導入する希釈用水量を調節する流量調節バルブ34とを備えている。
【0029】
図3において、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置10の水溶液取出口15から取り出されたアルカリ性カルシウム水溶液21は配水管31に送られる。配水管31には、pH計33で測定されたpH値情報に基づいて流量調節バルブ34により調整された量の希釈水が希釈用水導入口32から導入され、配水管31においてアルカリ性カルシウム水溶液はpHが通常は11.0〜12.0の範囲となるように希釈される。次いで、pHが調整されたアルカリ性カルシウム水溶液は、噴霧器35に送られ、コンベア37にて搬送されている卵36の卵殻に噴霧され、卵殻表面が洗浄される。
【0030】
図3の卵洗浄装置では、アルカリ性カルシウム水溶液を配水管内で希釈しているが、アルカリ性カルシウム水溶液を別に用意した希釈装置に移して希釈してもよい。
【0031】
図4は、本発明の方法により製造されたアルカリ性カルシウム水溶液を、別に用意した希釈装置を用いて水で希釈する希釈アルカリ性カルシウム水溶液製造システムを説明する構成図である。図4において、希釈アルカリ性カルシウム水溶液製造システムは、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置40と希釈装置44とからなる。
【0032】
アルカリ性カルシウム水溶液製造装置40は、水導入口41が容器底部の中央に備えられていて、容器底面42が水導入口41に向けて下方に傾斜していて、カルシウム化合物小粒子20が、水導入口41に向けて下降し易いように構成されている。この他の点については、図1のアルカリ性カルシウム水溶液製造装置10と同じであるため、同一部分に図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0033】
希釈装置44は、配水管43を介して、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置40の水溶液取出口15に接続するアルカリ性カルシウム水溶液導入口45と、希釈用水導入口46と、希釈水溶液取出口47と、希釈水溶液取出口47に付設されたpH計48と、pH計48で測定されたpH値情報に基づいて、希釈用水導入口46からの希釈装置44に導入する希釈用水量を調節する流量調節バルブ49と撹拌機50とを備えている。
【0034】
図4において、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置40の水溶液取出口15から取り出されたアルカリ性カルシウム水溶液21は、配水管43を介して、希釈装置44に送られる。希釈装置44には、pH計48で測定されたpH値情報に基づいて流量調節バルブ49により調整された量の希釈水が希釈用水導入口46から導入され、希釈装置44において希釈水とアルカリ性カルシウム水溶液とが撹拌機50で撹拌混合され、アルカリ性カルシウム水溶液のpHが調整される。次いで、pHが調整されたアルカリ性カルシウム水溶液は、希釈水溶液取出口47より取り出される。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
容量が50Lの容器11に、通水孔12の口径が3mmの通水板13を設置した。次いで、通水板13の上に、粒状物酸化カルシウム5kgを配置して、図1に示すアルカリ性カルシウム水溶液製造装置10を作成した。
【0036】
粒状酸化カルシウムは、ホタテ貝殻を1100℃の温度で焼成して得た、活性度が80mLで粒子径が3〜5mmのものを用いた。なお、活性度は石灰協会標準試験方法(2006年)で規定されている活性度試験方法に従って、下記の方法により測定した。
【0037】
[活性度の測定方法]
(1)粒状酸化カルシウムを4760μmのふるいを全通するまで粗粉砕した後、1000μmのふるいでふるって、ふるい下を取り除いたものを測定試料とする。
(2)5Lビーカーに蒸留水4Lを取り、加熱して水温40℃に保温する。
(3)撹拌機を撹拌羽根の下端とビーカーの底面との距離が20mmとなるように、ビーカーの中央にセットする。
(4)撹拌羽根を回転数350rpmで撹拌すると共に、フェノールフタレイン指示薬をビーカーに2〜3滴を加える。
(5)測定試料50gをビーカーに一度に投入する。
(6)測定試料投入から1分間経過後毎に、溶液がわずかに赤色を持続するように4N塩酸を滴下する。
(7)10分間に滴下した4N塩酸量の総量を活性度(mL)とする。
【0038】
アルカリ性カルシウム水溶液製造装置10の水導入口18に、水を5L/分の流量にて連続的に導入して、水溶液取出口15から取り出されたアルカリ性カルシウム水溶液のpHを測定した。表1に、アルカリ性カルシウム水溶液の製造開始から、0分(直後)、5分、10分、20分、30分後に得られたアルカリ性カルシウム水溶液のpHを示す。
【0039】
[比較例1]
粒状酸化カルシウムを多数個の通水孔を有する不織布製袋に入れて通水板13の上に配置し、酸化カルシウムの小粒子がアルカリ性カルシウム水溶液製造装置10の下方空間に下降しないようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、アルカリ性カルシウム水溶液を製造し、水溶液取出口15から取り出されるアルカリ性カルシウム水溶液のpHを測定した。表1に、アルカリ性カルシウム水溶液が水溶液取出口15から取り出せるようになってから、0分(直後)、10分、20分、30分後に水溶液取出口15から取り出されたアルカリ性カルシウム水溶液のpHを示す。
【0040】
表1
────────────────────────────────────────
実施例1 比較例1
────────────────────────────────────────
0分 7.2 6.8
5分 12.8 −
10分 12.6 10.8
20分 12.5 10.3
30分 12.5 10.3
────────────────────────────────────────
【0041】
表1の結果から明らかなように、粒状酸化カルシウムを通水板の上にそのまま配置して、アルカリ性カルシウム水溶液製造装置の下方空間に酸化カルシウムの小粒子が下降するようにした場合(実施例1)は、粒状酸化カルシウムを不織布製袋に入れて、酸化カルシウム小粒子がアルカリ性カルシウム水溶液製造装置の下方空間に下降しないようにした場合(比較例1)と比較して、生成するアルカリ性カルシウム水溶液のpHが高い。
【符号の説明】
【0042】
10 アルカリ性カルシウム水溶液製造装置
11 容器
12 通水孔
13 通水板
14 上方空間
15 水溶液取出口
16 粒状カルシウム化合物導入口
17 下方空間
18 水導入口
19 粒状カルシウム化合物
20 カルシウム化合物小粒子
21 アルカリ性カルシウム水溶液
30 卵洗浄装置
31 配水管
32 希釈用水導入口
33 pH計
34 流量調節バルブ
35 噴霧器
36 卵
37 コンベア
40 アルカリ性カルシウム水溶液製造装置
41 水導入口
42 容器底面
43 配水管
44 希釈装置
45 アルカリ性カルシウム水溶液導入口
46 希釈用水導入口
47 希釈水溶液取出口
48 pH計
49 流量調節バルブ
50 撹拌機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に開口した通水孔を有する通水板により内部が上方空間と下方空間とに区画され、該上方空間に接する壁面には水溶液取出口が備えられ、そして該下方空間に接する壁面には水導入口が備えられた容器を用意し、この容器の通水板の上面に通水孔よりも粒径が大きい粒状酸化カルシウムおよび粒状水酸化カルシウムからなる群より選ばれる粒状カルシウム化合物を配置することによりアルカリ性カルシウム水溶液の製造装置を構成した後、該アルカリ性カルシウム水溶液の製造装置の水導入口より水を容器内部に連続的に導入し、この水と粒状カルシウム化合物との接触による粒状カルシウム化合物の部分的な脱落もしくは崩壊により生成し、通水板の通水孔を通って下方空間に下降するカルシウム化合物小粒子との接触により生成するアルカリ性カルシウム水溶液を通水板の通水孔を介し、粒状カルシウム化合物と接触させながら上方空間に上昇させ、次いでアルカリ性カルシウム水溶液を水溶液取出口より取り出すことからなるアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法。
【請求項2】
粒状カルシウム化合物が、日本石灰協会標準試験方法(2006年)で規定されている活性度試験方法により測定された、粒状カルシウム化合物50gでの活性度が10〜300mLの範囲にある請求項1に記載のアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法。
【請求項3】
さらに、水溶液取出口から取り出したアルカリ性カルシウム水溶液のpHを測定し、そのpHの値に基づいて、該アルカリ性カルシウム水溶液を水で希釈する工程を含む請求項1に記載のアルカリ性カルシウム水溶液の製造取り出し方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造取り出し方法によって取り出したアルカリ性カルシウム水溶液を卵殻の表面に接触させる卵の洗浄方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造取り出し方法によって取り出したアルカリ性カルシウム水溶液を野菜の表面に接触させる野菜の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−270082(P2010−270082A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125186(P2009−125186)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(510187152)ナチュラルジャパン株式会社 (3)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】