説明

アルカリ性コーティング組成物の殺カビ性および殺藻性仕上げのための組成物

【課題】コーティング組成物中に用いるための、良好な殺バクテリア、殺カビおよび殺藻活性を有する防腐剤を提供する。
【解決手段】a)少なくとも1種のイソチアゾロン、b)少なくとも1種の第四アンモニウム化合物、およびc)亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩放出性化合物および亜硫酸水素塩放出性化合物からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の安定剤を含み、殺藻性トリアジンの存在を除く、コーティング組成物のための防腐剤。本防腐剤は、アルカリ性コーティング組成物上または中におけるカビ、藻およびバクテリアの成長を阻害する。さらに、本防腐剤の製造方法、コーティング組成物におけるその使用、および保存組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性コーティング組成物上またはその中に存在するカビ、藻およびバクテリアの生育を阻害する防腐剤に関する。本発明は、さらに、防腐剤の製造方法、コーティング組成物中におけるその使用、および保存組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム防腐剤は、塗料、色材、下塗り(render)、ワニス、プラスチック、繊維、フィラーおよびシーラントのようなコーティング組成物を、微生物の攻撃および分解から保護する。屋内および屋外領域のためのかかる組成物を仕上げるために、一連の殺微生物(殺バクテリア、殺カビおよび殺藻)的に活性な物質が用いられ、それらは一般に、中性または弱アルカリ性表面に適用されたときに良好な保護を提供する。この適用分野における既知の殺生剤の例は、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール(カルベンダジム)、2−メルカプトピリジンN−オキシド(特に、亜鉛塩:亜鉛ピリチオン)およびブチルカルバミン酸ヨードプロピニル(IPBC)のような殺カビ剤、または1,1−ジメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)尿素(ジウロン)、メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン(イルガロール(Irgarol)1051、モット(Mott))およびN2−tert−ブチル−N4−エチル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(テルブトリン(terbutryne)のような殺藻剤である。これらの既知の殺微生物剤は、とりわけ、特許文献1および2に記載されている。
【0003】
コーティング組成物に採用される殺微生物剤は、カビ(例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・フニキュロスム(Penicillium funiculosum))(アルテルナリア(Alternaria)種を含む)、および藻に対して活性でなければならない。実際、広範な活性をカバーする活性物質の混合物を用いることが有利であることが証明されている。アルテルナリアギャップを閉じるために、フィルム防腐剤は、また、イソチアゾロン−3−オン(イソチアゾロン類)、例えば、1,2−プロピレングリコール中のほぼ45%濃度の溶液の形態で名称カトン(Kathon)893の下で入手可能なN−オクチルイソチアゾロンを用いている。
【0004】
さらに、活性物質の組合せであるテルブトリン+カトン893を有する製品も知られている。しかしながら、これらの製品は、溶媒(VOC)が少ないかまたはないという製品についての市場の要求を満たさない多量の溶媒または乳化剤を含有している。また、この製品の安定性は、満足できないものである。すなわち、本願の出願人による研究は、カトン893およびテルブトリンを含む水性分散体は十分に貯蔵安定性ではないことを立証している。例えば、テルブトリンとカトン893の組合せ(または溶媒のない変形のカトン893T)は初期には均質で白味の水性分散体に変換することができるが、かかる水性分散体は十分には安定でない。ある時間経過後(すなわち、室温でほぼ6ヶ月後)、コンシステンシーが変化し、不均質な粒状分散体が生成する。しかしながら、不均質な分散体は、沈殿物を形成し、容器中で活性物質の不均一な分布をもたらす。そのような製品は、色材、下塗りおよび他のコーティングには用いることができない。最終製品のコンシステンシーが悪影響を受け、不適切な適用量という危険が存在する。
【0005】
特許文献3は、特にアルカリ性コーティングのための、防腐剤に関するものであり、これは、1種またはそれ以上の第四アンモニウム化合物および1種またはそれ以上の特定のアルカリ化剤を含む。特許文献4は、殺藻性トリアジン、殺カビ性イソチアゾロンおよび、分散安定剤として例えば亜硫酸塩を含む殺カビおよび殺藻活性を有する水性分散体を開示している。これらの組成物は、コーティング組成物中に良好ないし十分に良好な殺微生物活性を有するが、それらのコーティング材料中への含め入れ能と、それらが例えば下塗りの処理性に悪影響を及ぼすことが、不利である。さらに、これらの組成物は、時に、保存されたコーティング組成物の粘度の望ましくない増加をもたらす。
【0006】
鉄系建築材料の存在下で、亜鉛ピリチオンは、さらに、容易に変色をもたらし、加水分解の結果、高アルカリ性基材上で可溶性となり、したがって容易に浸出する。ブチルカルバミン酸ヨードプロピニルを含有する組成物は、特にUVに曝されたとき、容易に変色し、アルカリに対して耐性でなく、浸出に対し十分に耐性でない。高濃度の塩化ベンザルコニウムおよびベンザルコニウム水ガラスは、保存された下塗りにおいて顕著な粘度上昇を示す。他の保存剤とのある種の組合せにおいて、殺微生物的に仕上げられたコーティング組成物の灰色着色も観察される。
【特許文献1】DE4242389A1
【特許文献2】DE19705085A1
【特許文献3】DE10144187A1
【特許文献4】DE10237264A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、コーティング組成物中に用いるための、良好な殺バクテリア、殺カビおよび殺藻活性を有する防腐剤を提供するという目的を基礎とするものである。
【0008】
防腐剤は、
アルテルナリア種を含むカビおよび藻に対して殺微生物活性であるべきであり、
(高)アルカリ性条件下でさえ、浸出に対し耐性があり、すなわち、アルカリ性下塗りに好適でもあり、アルカリ性表面、特に高アルカリ性表面上で使用され得るべきであり、
特にUVに曝されたとき、変色を生じる傾向がないものであるべきであり、
液状濃縮物(例えば分散体)として調製し得(すなわち、自動計量システムを使用する結果として必要な、ポンプ搬送され得)るべきであり、
発泡がないものであるべきであり、
容器中で10以下のpHを有すべきであり、
低温、および熱帯性条件を含む高温で貯蔵安定性であるべきであり、
コーティング組成物(例えば、塗料、下塗り)の他の成分と相容性であるべきであり、
コーティング材料に含められたとき、粘度のかなりの変化をもたらさないものであるべきであり(下塗りの良好な適用性が確保されなければならないからである)、
コーティング組成物中で環境危険でない、すなわち廃水中のコーティング組成物の挙動が水危険有害性クラス(water hazard class)2を超えるほど不利でないものであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、先行技術の問題点は、今や、
a)少なくとも1種のイソチアゾロン、
b)少なくとも1種の第四アンモニウム化合物、および
c)亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩放出性化合物および亜硫酸水素塩放出性化合物からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の安定剤
を含む防腐剤であって、該防腐剤中の殺藻性トリアジンの存在を除く防腐剤によって解決できることがわかった。本発明は、とりわけ、驚くべきことに本発明に係る防腐剤の殺藻活性が殺藻性トリアジンの不存在下であっても良好であることが見いだされたということに基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
a)イソチアゾロン
本発明に従い使用されるイソチアゾロンは、イソチアゾリン−3−オンであり、N−オクチルイソチアゾロン、N−メチルイソチアゾロン、4,5−ジクロロ−N−オクチルイソチアゾロン、ベンゾイソチアゾロン、およびN−ブチルベンゾイソチアゾロンの中から選ばれる。カトン893が特に好ましい。
【0011】
b)第四アンモニウム化合物
本発明に係る防腐剤は、少なくとも1種の第四アンモニウム化合物を含む。第四アンモニウム化合物は、例えば、ベタインまたは両性イオン性化合物であり得る。このコンテキストにおいて、部分的にまたは全体にアニオンとカチオンに解離する形態で水溶液中に存在する第四アンモニウム化合物(第四アンモニウム塩)が好ましい。
【0012】
好ましい第四アンモニウム塩は、式[R1234N]+[X]-および[N−R5−ピリジニウム]+[X]-で記述され、ここで、R1〜R5は、同じかまたは異なり得、C1〜C30−アルキル、−アルケニルおよび−アリール、並びにO、S、NおよびPから選ばれる1種またはそれ以上の原子を含有していてもよい混合基の中から選ばれ、1つまたはそれ以上のR1〜R4は水素でもあり得、ただし、基R1〜R4の少なくとも1つはH以外である。Xは、(無機酸または有機酸の)アニオンである。このコンテキストにおいて、第四アンモニウム塩のアニオンおよびカチオンの両方は、化学量論[A(n+)m[K(m+)nをもたらす多価イオンであり得る。
【0013】
本発明に従い好ましく用いられる第四アンモニウムカチオンは、[R1N(CH33+[X]-、[R1NH3+[X]-、[R1(アリールCH2)NH2+[X]-、[R1(アリールCH2)N(CH32+[X]-、[R12N(CH32+[X]-および[N−R5−ピリジニウム]+[X]-であり、ここで、R1、R2およびR5は、互いに独立に、C1〜C30−アルキル、C6〜C12−アリールおよび−(CH2−CHR6O)n−R7の中から選ばれ、ここで、nは、1〜20の数であり、R6およびR7は、同じか、または異なり得、Hおよび/またはC1〜C4−アルキルであり、アリールは、任意的に置換されたアリール基を表す。
【0014】
本発明に従い用いられる第四アンモニウム塩のカチオンの例は、式[R1N(CH33+に相当し、ここで、R1は、C6〜C12−アルキル、−ヒドロキシアルキルもしくはポリオキシアルキル基、または6個〜12個の炭素原子を含有する任意的に置換された芳香族基である。本発明による第四アンモニウム塩のさらに好ましいカチオンは、C8〜C18−アルキルベンジルアンモニウム、ベンザルコニウム、ジデシルおよびジオクチルジメチルアンモニウム、ジデシルメチルポリ(オキシエチル)アンモニウム、セチルピリジニウム、セチルトリメチルアンモニウム、およびベンジル−脂肪−アルキル−ビス(ヒドロキシエチル)アンモニウム、並びにそれらの混合物であり、防腐剤は、特に好ましくは、ベンザルコニウム塩とジアルキルジメチルアンモニウム塩の混合物のように、これら好ましいカチオンの2種、3種または4種の混合物を含む。このコンテキストにおいて、カチオンは、例えばポリヘキサメチレンビグアニド(バントシルIB)における場合のように、ポリマーとして存在し得る。
【0015】
本発明に従い用いられる第四アンモニウム塩のアニオンの例およびアニオンの種類は、水酸化物、硫酸塩、硫酸水素塩、メト硫酸塩、エト硫酸塩、ラウリル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸塩、セルロース硫酸塩、スルファミン酸塩、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、亜硝酸塩、硝酸塩、オルソケイ酸塩(例えば、オルソケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸カリウム、オルソケイ酸マグネシウム、およびオルソケイ酸アルミニウム)、二ケイ酸塩、メタケイ酸塩、ヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト等の層状ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、アルキルリン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ホスフィン酸塩、チオシアン酸塩(ロダン化物)、亜鉛酸塩、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩(例えば、ゼオライト)、チオ硫酸エステル(例えば、DE−A−4122962およびDE−A−3307733由来のブンテ塩)、安息香酸塩、乳酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシレート)、サリチル酸塩のようなカルボン酸塩、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジンN−オキシドのようなメルカプト化合物、ジチオカルバミン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、サッカリン酸塩のような脂肪酸アニオン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩のようなスルホン酸塩、およびフェニルフェノール酸塩のようなフェノール酸塩である。さらに、使用し得るアニオンは、また、第四アンモニウム塩のカチオンと中性塩を形成し得る既知のアニオン界面活性剤である(第四アニオン界面活性剤複合体)。殊に好ましいアニオンは塩化物である。
【0016】
本発明のコンテキストにおいて、イソチアゾロンの定義には、また、チオ硫酸誘導体であるいわゆるブンテ塩を形成する溶液状態のイソチアゾロン−3−オンと亜硫酸塩との組合せが含まれる。これらのブンテ塩は、出発のイソチアゾロン−3−オンと亜硫酸塩との組合せと平衡にあるイソチアゾロン−3−オンの付加物である。例えば、イソチアゾロン−3−オンと亜硫酸塩を組み合わせることにより調製される溶液において、イソチアゾロン−3−オンは、HPLCのような分析技術を用いて定量的に測定される。
【0017】
殊に好ましい第四アンモニウム塩の例は、ベンザルコニウム塩、例えば、塩化ベンザルコニウム、チオシアン酸ベンザルコニウム、ケイ酸ベンザルコニウム、ジデシルジメチルアンモニウム塩およびポリヘキサメチレンビグアニド塩である。50%濃度の塩化ベンザルコニウム水溶液の使用が殊に好ましい。
【0018】
c)安定剤
本発明による安定剤は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩放出性化合物および亜硫酸水素塩放出性化合物からなる群の中から選ばれる。その例は、重亜硫酸アルカリ金属(例えば、Na225、K225)、亜硫酸水素アルカリ金属または他の金属塩もしくはこれら亜硫酸塩の金属塩錯体、さらには、有機カルボニル化合物の重亜硫酸塩(重亜硫酸アルデヒド)のような、溶液状態で亜硫酸塩を放出する物質である。重亜硫酸ナトリウムの使用が特に好ましい。
【0019】
成分a)〜c)の好ましい量および混合比(重量%で)は、
【表1】

【0020】
適切であれば、本発明に係る防腐剤は、d)アルコール系および/またはe)水系の形態で存在し、さらに下記を含む(重量%で):
【表2】

【0021】
好ましい態様において、防腐剤は、2種の水および/またはアルコールベースで存在し、
a)8〜18重量%、好ましくは10〜14重量%のイソチアゾロン、
b)20〜40重量%、好ましくは24〜33重量%の第四アンモニウム化合物および
c)3〜8重量%、好ましくは4〜7重量%の安定剤、
並びに
d)10〜18重量%、好ましくは12〜16重量%の脂肪族アルコール、および/または
e)20〜55重量%、好ましくは30〜50重量%の水
を含む。
【0022】
好ましい態様において、本発明に係る防腐剤は、分散体の形態で存在する。好適な添加剤は、当業者に知られている。特に、a)イソチアゾロンおよびb)第四アンモニウム化合物を含む水性分散体が、上記成分c)により、分散体中で安定化できることが、驚くべきことに、見いだされた。安定性の向上は、とりわけ、防腐剤が、上記安定剤を添加しない場合よりも長期間均質なままにあるということにより明らかとなる。
【0023】
成分a)、b)およびc)、並びに適切であれば、d)および/またはe)のほかに、本発明に係る防腐剤に1種またはそれ以上の機能性添加剤を添加することができる。好適な添加剤の例は、
フィラー、例えばカオリン、シリカゲル(例えば、エーロジル(Aerosil)200)、炭酸カルシウム、二酸化チタン、
溶媒、例えばアルコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコールのようなグリコール、グリコールエーテル、
保湿剤、
増粘剤/粘度調整剤、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、
湿潤剤、例えば、ノニオン系界面活性剤、
分散剤、顔料分散性分配剤(pigment dispersing distributor)、および
アルカリ化剤、例えば、アルカリ金属水ガラス、アルカリ金属水酸化物
である。
【0024】
このコンテキストにおいて、亜鉛ピリチオンおよび/またはカルベンダジムを含まない防腐剤が好ましい。
【0025】
さらに、本発明は、
初めに水を導入し、
安定剤を含め(例えば、攪拌により)、
イソチアゾロンを含め(例えば、攪拌により)、
シリカゲルを含め、
その混合物に第四アンモニウム化合物(例えば、50%濃度の塩化ベンザルコニウム水溶液の形態にある)を添加し、および
上記成分を攪拌して白色ペーストを得る
という、本発明に係る防腐剤の製造方法に関する。
【0026】
さらに、本発明に係る防腐剤は、また、さらなる活性物質、例えばブチルカルバミン酸ヨードプロピル(IPBC)、銅ピリチオン、テブコナゾール、イプコナゾール、ベトキサジン、チオシアン酸アルカリ金属、銅塩、亜鉛塩および/または亜鉛酸化物を含むことができる。
【0027】
本発明は、さらに、屋内または屋外領域のための工業材料中またはその上における本発明に係る防腐剤の使用に、特に、塗料、色材、下塗り、ワニス、フィラー、シーラント、プラスチック、コンパウンド材料、木材、コンクリート、石材、紙、ボード、皮革、繊維製品、糊および接着剤の殺微生物的仕上げのための使用に関する。
【0028】
コーティング組成物のためのベース材料として好適な分散体は、例えば、DE−A−3711680およびEP−A−0328335に、並びにカルシュテン(Karsten)、ワニス用ベース材料の表(Lackrohstoff-Tabellen)、クルツ・ビンツェンツ・フェルラーク(Kurt Vinzenz Verlag)2000、特に最後に記載した刊行物の364頁(ポリ(メタ)アクリレートホモポリマーおよびコポリマー分散体)および451頁(シリコーン系分散体)に記載されている。ポリマー分散体または合成樹脂分散体を含む好ましい塗料および下塗りは、
50重量%以下、好ましくは30重量%以下、殊に好ましくは15重量%以下のポリマー含有率を有するアクリレートまたは全アクリレート系塗料および下塗り、
50重量%以下、好ましくは30重量%以下、殊に好ましくは15重量%以下のポリマー含有率を有するアクリル/スチレンコポリマー系塗料および下塗り
50重量%以下、好ましくは30重量%以下、殊に好ましくは15重量%以下のポリマー含有率を有するシリコーン樹脂系塗料および下塗り、
適切であれば少量(好ましくは10重量%以下、殊に好ましくは5重量%)の全アクリレート分散体もしくはアクリル/スチレンコポリマー分散体をともに有する、カリウム水ガラスに基づくシリケート(例えばセメント)系塗料および下塗り
である。
【0029】
本発明に係る防腐剤は合成樹脂もしくはポリマー分散体を含むコーティング組成物に好ましく用いられるが、そのような分散体の存在は必須のものではなく、これが、代替の態様において、本発明に係る防腐剤を含むコーティング組成物が合成樹脂またはポリマー分散体を含まない理由である。
【0030】
好ましい態様において、防腐剤により殺微生物性(特に殺カビ性)仕上げを付与された組成物は、少なくとも9、より好ましくは10.0〜13.5、特に10.5〜13、例えば11〜12.5および11.2〜11.8のpHを有する。
【0031】
好ましくは、組成物は、それが、0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、特に0.2〜2重量%、例えば0.3〜1.0重量%の防腐剤を含むように調製され、0.4重量%以下の使用濃度が好ましい。
【0032】
本発明の好ましい態様において、本発明に従い防腐剤により仕上げられる組成物は、屋内または屋外領域のためのラッカーまたは塗料の形態で存在する。そのような場合、かかる組成物は、合成樹脂分散体(有機バインダーとして)および本発明に係る防腐剤に加えて、1種またはそれ以上の他の有機バインダー、顔料、フィラーおよび添加剤を含み、用語「添加剤」は、増粘剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、接着促進剤、スリップ剤もしくは艶消し剤のような表面改質剤、流れ補助剤およびフィルム形成補助剤、乾燥剤、皮張り防止剤、光安定剤、腐食防止剤、難燃剤およびパック防腐剤(pack preservative)を含む。本発明に従い防腐剤により仕上げられ、ラッカーの形態で存在する組成物の例(バインダーの種類によりグループ分けする)は、全アクリレート分散体ラッカー、スチレンアクリレート分散体ラッカー、アルキッド樹脂分散体ラッカーおよびポリウレタン分散体ラッカーである。本発明に従い防腐剤により仕上げられ、塗料の形態で存在する組成物の例(バインダーの種類によりグループ分けする)は、全アクリレート分散体塗料、スチレンアクリレート分散体塗料、シリコーン樹脂分散体塗料、シリコーン樹脂変性全アクリレート分散体塗料、シリケート塗料および合成樹脂変性シリケート塗料である。
【0033】
さらなる態様において、本発明に係る防腐剤は、既にアルカリ性pHにもたらせられた材料、例えば下塗り、特にシリケート下塗り中に含められる。しかしながら、本発明に従い仕上げられた組成物は、また、下塗りの調製に用いられるコンパウンド(下塗りのベース)の形態で存在し得る。
【0034】
本コンテキストにおいて、用語「下塗り」は、湿式下塗り、すなわち合成樹脂下塗りのような液状処理状態にあるコーティング材料、また乾式下塗り、すなわち石灰ウォッシュ、石膏プラスター下塗りまたはセメント下塗りのような、水と混合されて処理可能な液体状態となる粒状乾燥下塗り材の双方を含む。本発明に従い防腐剤により仕上げられ、下塗りの形態で存在する組成物の成分の例は、石灰、セメント、石膏、硬石膏、バインダーとしての有機ポリマーもしくはコポリマー、砂のような添加剤、並びに空気連行剤、液化剤、促進剤添加剤、抑制剤、封止助剤、凍結防止剤および可塑化ポリマー添加剤のような下塗りの物性を変性する添加剤である(また、ブラショルツ(Brasholz)、塗料コーティング技術ハンドブック(Handbuch der Anstrich-Beschichtungstechnik)、バウフェルラーク(Bauverlag)GmbH、第2版、1989;レンプの塗料およびインキ辞典(Roempp-Lexikon Lacke und Druckfarben)、ゲオルク・シーム・フェルラーク(Georg Thieme Verlag)1998、キーワード「Putze」(下塗り)をも参照のこと)。本発明に従い防腐剤により仕上げられ、下塗りの形態で存在する組成物の例(バインダーの種類によりグループ分け)は、シリケート下塗り、石灰ウォッシュ、石膏プラスター下塗り、セメント下塗りおよびこれらの合成樹脂変性タイプのような無機的に結合される下塗り、並びに全アクリレート分散体下塗り、スチレンアクリレート分散体下塗り、アクリレートコポリマー分散体下塗り、シリコーン樹脂分散体下塗り、シリコーン樹脂変性全アクリレート分散体下塗り、ポリ酢酸ビニル分散体下塗り、ポリ酢酸ビニルコポリマー分散体下塗り、およびポリプロピオン酸ビニル/アクリレートコポリマー分散体下塗りである。
【0035】
本発明に係る防腐剤および組成物は、上記要求を満たす。すなわち、本防腐剤は、安価であり、いくつかの場合には商業的に入手可能であるか、または簡単な方法により商業的に入手できる物質から容易に調製することができ、ヒトに対する毒性および環境毒性について既に研究され、評価されている物質が用いられているので、問題なく市場に導入することができる。
【0036】
驚くべきことに、第四アンモニウム化合物と組成物の他の成分との、および/またはアルカリ性基材との接触における、良好ないし十分な相容性(長期安定性)も見いだされている。
【0037】
DE10144187A1の防腐剤と比較して、本発明に係る防腐剤は、浸出に対しより耐性があり、コーティング組成物中での変色がより少なく、より効果的であり、コーティング材料(例えば、下塗り)中により容易に含めることができ(コーティング材料中に含められたとき、本防腐剤は、例えばより小さな粘度変化を示し、これにより建築現場での作業がより複雑でなくなる)、他の活性物質および機能性添加剤とより相容性であり、濃縮物の形態にあってさえ、良好な貯蔵安定性を示す。本防腐剤は、アルカリ化剤(これは取り扱いについて利点を有する)を含むことは必須でなく、均質であり、シリカゲルとの混合物としてさえ、容易に塗ることができ、また、殺微生物的に仕上げられた下塗りの塗り性に悪影響を持たない。
【0038】
さらに、DE10144187A1およびDE10237264A1の防腐剤と比較して、本発明に係る防腐剤は、活性、安定性および使用特性(コーティング材料に含められたとき粘度増加がない)に関し顕著な利点を有する。
【0039】
本発明の利点は、特に以下の例からわかることができる。全ての部は、重量による。
【実施例】
【0040】
例1:本発明に係る防腐剤Aおよび方法
【表3】

【0041】
まず、精製水を反応容器に導入し、重亜硫酸ナトリウムを加える。この混合物を、ほとんど全ての固形分が溶解するまで、ほぼ10分間攪拌する。ついで、カトン893を加え、この混合物を10分間攪拌する。このプロセス中、溶液の温度は、若干上昇する。しかる後、エーロジル200を加え、この混合物を、全てが均質に分布するまで、攪拌する。最後に、塩化ベンザルコニウムを加え、攪拌をほぼ30分間続行する。これにより、白色ペースト(防腐剤A)が得られる。
【0042】
未仕上げ材料(商業的に入手し得る下塗り、PH11.5)を、別々のバッチで、異なる濃度の本発明に係る防腐剤Aで処理する。
【0043】
殺カビ性および殺藻性仕上げについての試験は、以下に記載する標準的な試験方法により行った。アルテルナリア・アルテルナタ(Alternaria alternata)(DSM62010)を第3の試験微生物として、併せて試験した。
【0044】
試験は、試料を調製し、湿式下塗り中で3ヶ月または5ヶ月貯蔵後に1回行った。
【0045】
試験方法1
カビによる攻撃に対する耐性の測定
適用分野
カビによる攻撃に対するファサードコート(facade coat)の耐性を測定するための実験室法。この方法のために、標準化された紙上のファサードコートを試験基材として用い、アスペルギルス・ニガー(AN、ATCC6275)、ペニシリウム・フニキュロスム(PF、ATCC36839)およびアルテルナリア・アルテルナタ(AL)を試験カビとして用いた。
【0046】
実験は、ペトリ皿中、デキストロース培地上で行った。
【0047】
試料の調製
仕上げるべき材料1000gを、別々のバッチで、好適な攪拌器を用い、種々の濃度の試験殺カビ剤と混合し、均質化した。
【0048】
試験対象物の調製
90×270mmサイズの紙基材(シュライヒャー&シュル(Schleicher & Schuell)No.2589B/X24078)を試験材料で塗布する。塗料または下塗り試料を、ナイフを用いて、250μmの湿潤層厚にコートとして塗布する。ナイフは、幅が少なくとも6.5cmの開口を有するものでなければならない。下塗りの場合、層厚は、実際の条件下の場合のように、粒径に依存する。ついで、以下試験試料と称する塗布した基材を、水平位置で、5日間乾燥する。
【0049】
試験試料の予備処理
試験試料の予備処理は、実際の条件下であり得る天候の影響の結果としての殺微生物の除去を模擬することが意図されている。この目的のために、試験試料を、1l/分の流量で流れる15±5℃の水道水中で72時間(下塗りの場合、336時間)浸出に供した後、2日間乾燥する。浸出処理のための容器の、流れ方向における断面は、1000±500cm2であるべきである。次に、予備処理した試験試料から直径5cmの試料を打ち抜き、少なくとも10kGyを用い、Co60源で滅菌する。
【0050】
試験手順
接種とインキュベーション
ペトリ皿内で固化したサブローデキストロース寒天を0.2mlの胞子懸濁液(107胞子/ml)で接種し、滅菌ドリガルスキースパチュラまたは角度を形成する滅菌ガラス棒を用いて播種する。
【0051】
しかる後、予備処理した試料を、ピンセットを用いて、接種した培地の表面に均一に置く。試料が培地の表面と十分に接触するように注意しなければならない。ついで、培地を30±2℃で3週間インキュベートする。
【0052】
評価
1週間、2週間および3週間後、試料をカビの成長について調べる。それらは、目視で、あるいは汚染を排除することが要求されるなら、拡大鏡を用いて、評価される。評価を実質的に妨害する程度に汚染が観察されるならば、実験は評価され得ず、繰り返さなければならない。試料の評価は、以下の評価スケールに基づく。
【表4】

【0053】
試験方法2
藻によるコロニー形成に対する耐性の測定
適用分野
藻によるコロニー形成に対するファサードコートの耐性を測定するための実験室法。この方法において、標準化された紙上のファサードコートを試験基材として用い、セネデスムス・カヴオラツス(Scenedesmus cavuolatus)(CS、クロレラ・フスカ(Chlorella fusca)を試験藻として用いた。
【0054】
実験は、ペトリ皿中、藻用の培地上で行った。
【0055】
試料の調製
仕上げるべき材料1000gを、別々のバッチで、好適な攪拌器を用い、種々の濃度の試験殺微生物剤と混合し、均質化した。
【0056】
試験対象物の調製
90×270mmサイズの紙基材(シュライヒャー&シュルNo.2589B/X24078)を試験物質で塗布する。塗料または下塗り試料を、ナイフを用いて、250μmの湿潤層厚にコートとして塗布する。ナイフは、幅が少なくとも6.5cmの開口を有するものでなければならない。下塗りの場合、層厚は、実際の条件下の場合のように、粒径に依存する。ついで、以下試験試料と称する塗布した基材を、水平位置で、5日間乾燥する。
【0057】
試験試料の予備処理
試験試料の予備処理は、実際の条件下であり得る天候の影響の結果としての殺微生物の除去を模擬することが意図されている。この目的のために、試験試料を、1l/分の流量で流れる15±5℃の水道水中で72時間(下塗りの場合、336時間)浸出に供した後、2日間乾燥する。浸出処理のための容器の、流れ方向における断面は、1000±500cm2であるべきである。次に、予備処理した試験試料から直径5cmの試料を打ち抜き、少なくとも10kGyを用い、Co60源で滅菌する。
【0058】
試験手順
接種とインキュベーション
試料を、滅菌条件下で、藻用の培地上に置き、各藻懸濁液0.5mlで中央に接種する。
【0059】
藻懸濁液の混合物をドリガルスキースパチュラまたは角度の付いた滅菌ガラス棒を用いて表面上に分布させる。
【0060】
22±2℃での成長相中、塗布試料を、ペトリ皿中で、約1000Luxの強さを有する光(通常の蛍光灯、タイプD67デイライト)にさらす。それぞれの場合12時間露光と12時間の暗所での貯蔵のサイクルを用いる。
【0061】
評価
2週間後、藻による試料のコロニー形成を調べ、評価する。評価は目視により行う。評価は、以下の評価スケールに基づく:
グループ1(IZ)
試験試料上に藻のコロニー形成なし。
【0062】
阻害領域(IZ=mmでの阻害領域の直径)の形成または試験試料のエッジと接する培地上での藻コロニー形成。
【0063】
これらのグループの塗料は、語句「藻によるコロニー形成に対し効果的に仕上げられた」により特徴付けることができる。
【0064】
グループ2(C)
試験試料上の藻による可視的コロニー形成
− = コロニー形成なし、
+ = 幾分かのコロニー形成
++ = 穏やかなコロニー形成
+++ = 顕著なコロニー形成。
【0065】
例2:結果
2A:殺カビ性仕上げ
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【0066】
2B:殺藻性仕上げ
【表11】

【表12】

【0067】
2C:5ヶ月貯蔵
【表13】

【表14】

【0068】
結果は、本発明に係る防腐剤Aは浸出処理に72時間供した後であってさえ、3ヶ月または5ヶ月の貯蔵後において下塗り中でなお十分に有効であることを確認するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種のイソチアゾロン、
b)少なくとも1種の第四アンモニウム化合物、および
c)亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩放出性化合物および亜硫酸水素塩放出性化合物からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の安定剤
を含み、殺藻性トリアジンの存在を除く、コーティング組成物のための防腐剤。
【請求項2】
前記イソチアゾロンが、N−オクチルイソチアゾロン、4,5−ジクロロオクチルイソチアゾロン、ベンゾイソチアゾロン、N−ブチルベンゾイソチアゾロンおよびN−メチルイソチアゾロンの中から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の防腐剤。
【請求項3】
前記安定剤が、二酸化硫黄、二酸化硫黄水溶液、亜硫酸アルカリ金属、亜硫酸水素アルカリ金属および重亜硫酸アルカリ金属の中から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の防腐剤。
【請求項4】
前記第四アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、チオシアン酸ベンザルコニウム、ケイ酸ベンザルコニウム、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアニド塩の中から選ばれ、塩化ベンザルコニウムが特に好ましいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項5】
a)1〜30重量%のイソチアゾロン、
b)2〜60重量%の第四アンモニウム塩および
c)0.5〜15重量%の安定剤
を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項6】
水ベースおよび/またはアルコールベースで存在し、かつ
a)8〜18重量%、好ましくは10〜14重量%のイソチアゾロン、
b)20〜40重量%、好ましくは24〜33重量%の第四アンモニウム化合物および
c)3〜8重量%、好ましくは4〜7重量%の安定剤、
並びに
d)10〜18重量%、好ましくは12〜16重量%の脂肪族アルコール、および/または
e)20〜55重量%、好ましくは30〜50重量%の水
を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項7】
a)10〜14重量%のN−オクチルイソチアゾロン、
b)24〜33重量%の塩化ベンザルコニウム、
c)4〜7重量%の重亜硫酸ナトリウム、
d)12〜16重量%の1,2−プロピレングリコールおよび
e)30〜50重量%の水
を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項8】
フィラー、保湿剤、増粘剤/粘度調整剤、湿潤剤、分散剤、顔料分散剤およびアルカリ化剤の中から選ばれる1種もしくはそれ以上の機能性添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項9】
a)初めに水を導入し、
b)安定剤を含め、
c)イソチアゾロンを含め、
d)シリカゲルを含め、
e)その混合物に第四アンモニウム化合物を添加し、および
f)前記成分を攪拌する
請求項1〜8のいずれか1項に記載の防腐剤を製造する方法。
【請求項10】
屋内領域および特に屋外領域のためのコーティング組成物を殺微生物的に仕上げるための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の防腐剤の使用。
【請求項11】
前記防腐剤の使用濃度が、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜2重量%、特に0.8〜1.5重量%であることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
慣用の成分に加えて、0.1〜10重量%の請求項1〜9のいずれか1項に記載の防腐剤を含有する屋内領域および特に屋外領域のためのコーティング組成物。
【請求項13】
シリケート系または合成樹脂系下塗りであることを特徴とする請求項12に記載のコーティング組成物。

【公開番号】特開2007−84823(P2007−84823A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−254297(P2006−254297)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(399035504)エール・リキード・サンテ(アンテルナスィオナル) (26)
【Fターム(参考)】