説明

アルカリ現像型感光性ペースト組成物

【課題】セルロース系バインダーを含み、良好な印刷性、パターン性を有し、さらに、熱分解性が良好なアルカリ現像型感光性ペースト組成物を提供する。
【解決手段】(A)無機粉末と、(B)化1で表されるセルロース誘導体に(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートを付加させて得られる酸価が25〜80mgKOH/gの(メタ)アクリル変性セルロース系誘導体と、(C)分子内にアセタール基および/またはヘミアセタール基を含有する重合性モノマーと、(D)光重合開始剤を含有してなるアルカリ現像型感光性ペースト組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ現像型感光性ペースト組成物に関し、更に詳細には、電子材料分野においてフォトリソグラフィー法によるパターン形成に用いられるアルカリ現像型感光性ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイパネル、蛍光表示管、電子部品などにおける導体パターンや誘電体パターンの形成には、一般に極めて多量の金属粉またはガラス粉末を含有する導電性ペーストまたはガラスペーストを用いてスクリーン印刷法によってパターン形成が行われていた。しかし、近年、電子部品等においてはパターンの高精細化が要求されており、従来のスクリーン印刷法によるパターン形成は、熟練を要し、また印刷時におけるかすれや滲み、スクリーンの伸縮に起因する位置合わせ精度等に問題があって、高精細パターンへの対応が困難である。
【0003】
このようなことから、微細なパターンを形成できるフォトリソグラフィー法により配線パターンを形成する技術が開発されている。そして、このフォトリソグラフィー法によるパターン形成のための感光性ペースト組成物が各種提案されている。例えば、特許文献1、2には、セルロース系バインダーを用いたアルカリ現像型感光性ペースト組成物が開示されている。これらの感光性ペースト組成物は、印刷特性に優れ、パターンの高密度化、ファインライン化が可能である。
【0004】
また、感光性ペースト組成物に要求される特性の一つとして、焼成時の熱分解性に優れていることが挙げられる。焼成時の分解性の向上を図ることを目的として、例えば、特許文献3には、「アセタール結合及び/又はヘミアセタールエステル結合を有する架橋体並びに無機フィラーを必須とすることを特徴とする架橋された成形体」が開示されている。かかる成形体においては、分解特性のよい架橋体を使用することにより分解温度の低減を実現しているが、アクリル系のバインダー樹脂が必要となる。アクリル系のバインダー樹脂は溶解性が良好であるため、ペースト中に多くの樹脂を添加する必要があり、粘性が高くなるため、印刷性が悪く、特に版離れが悪くなる問題がある。また、アルカリ現像の場合、多量の樹脂を含むことから官能基に結合したアルカリ金属による灰分の増加が避けられない。
【特許文献1】特開2000-298336号公報
【特許文献2】特開2000-198338号公報
【特許文献3】特開2003-268124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、セルロース系バインダーを用いたアルカリ現像型感光性ペースト組成物であって、これら組成物の利点である、良好な印刷性、パターン性を有し、さらに、熱分解性が良好なアルカリ現像型感光性ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアルカリ現像型感光性ペースト組成物は、(A)無機粉末と、(B)化1で表されるセルロース誘導体に(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートを付加させて得られる酸価が25〜80mgKOH/gの(メタ)アクリル変性セルロース系誘導体と、(C)分子内にアセタール基および/またはヘミアセタール基を含有する重合性モノマーと、(D)光重合開始剤を含有していることを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基、カルボキシメチル基、−CO−R−COOHを示し、前記Rは炭素数1〜4の脂肪族アルキレン、炭素数6〜8の脂肪族シクロアルキレン基、炭素数6〜10のフェニレン基からなる無水カルボン酸および/または置換基を持つ無水カルボン酸より誘導される残基を示す。
【0009】
アルカリ現像型感光性ペースト組成物全体に占める(A)成分の含有量は、体積率で12%〜30%であることが好ましい。また、(B)成分は、ルイス塩基および/または金属エステルを用いて(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートが付加されているものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアルカリ現像型感光性ペースト組成物を、フォトリソグラフィーに用いた場合、パターンの高密度化、ファインライン化に対応することが可能であり、また、焼成特性も良く脱灰性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のアルカリ現像型感光性ペースト組成物は、(A)無機粉末と、(B)化1で表されるセルロース誘導体に(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートを付加させて得られる酸価が25〜80mgKOH/gの(メタ)アクリル変性セルロース系誘導体と、(C)分子内にアセタール基および/またはヘミアセタール基を含有する重合性モノマーと、(D)光重合開始剤を含有していることを特徴とする。
【0012】
【化2】

【0013】
化1において、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基、カルボキシメチル基、−CO−R−COOHを示し、前記Rは炭素数1〜4の脂肪族アルキレン、炭素数6〜8の脂肪族シクロアルキレン基、炭素数6〜10のフェニレン基からなる無水カルボン酸および/または置換基を持つ無水カルボン酸より誘導される残基を示す。
【0014】
本発明の(A)無機粉末として使用される粉末は特に限定されないが、金属粉末、酸化物粉末、金属塩粉末などが例示される。
【0015】
金属粉末としては、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Ni、Al、W、MoおよびMnより選ばれた金属、これら金属の混合物、これら金属の合金を含有する導電性粉末を使用することができる。金属の混合物としては、Ag−Pd、Ag−Pt、Ag−Pt−Pd、Mo−Mnなど2種類以上併用したものが一般的に例示される。金属粉末の粒径は特に限定されないが、ペースト組成物としての印刷性、特にブレードコート性に適するために印刷ライン幅以下の粒径が好ましく、ファイン化された印刷が求められることから、平均粒径が1〜5μmの金属粉末が特に好ましい。
【0016】
酸化物粉末としては、Si、Pb、Zn、B、Al、Ca、MgおよびBaより選ばれた元素の酸化物の粉末を使用することができる。加えて、これら酸化物粉末を含有するガラスも、無機粉末として使用することができる。これらの酸化物粉末又は酸化物粉末を含有するガラスは、誘電体層を形成するため、または焼成後において基板と導電性粉末を焼結させて強固に膜を接着させるために有用である。
【0017】
上記酸化物粉末を含有するガラスとして、B・Bi系、PbO・B系、PbO・SiO系、PbO・B・SiO系、PbO・Al・SiO系、ZnO・PbO・B系、ZnO・B系、CaO・B系、CaO・B・SiO系、CaO・PbO・SiO系、CaO・PbO・B・SiO系、MgO・B・SiO系、MgO・PbO・SiO系、MgO・PbO・B・SiO系などのガラスを1種類以上含有するものを使用することができる。上記酸化物粉末または酸化物粉末を含有するガラスは、誘電体層の形成もしくは焼成後の導体と基板との接着性を得るものである。
【0018】
金属塩粉末としては、マンガン酸、コバルト酸、ニッケル酸、鉄リン酸などのアルカリ金属塩およびそれらの複合物を使用することができる。
【0019】
上述の無機粉末は、さらに必要に応じて、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Ni、Al、W、MoおよびMnの金属粉末の酸化物、珪化物、水酸化物およびBiなどを併用することもできる。これらは、比較的低温で焼成する場合に、金属の焼結を促進したり、ガラスの軟化点を下げたり、焼成時に含有している酸素の放出により脱バインダーを促進する等の効果がある。
【0020】
ここで、(A)無機粉末はペースト中に体積率として12%〜30%であることが好ましい。無機粉末が12%未満の場合、パターンの切断などの欠陥が発生しやすく、30%を超えると流動性が低下することで印刷性が低下したり、UV硬化性が悪くなることがある。
【0021】
(B)(メタ)アクリル変性セルロース誘導体は化1で表されるセルロース誘導体に(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートを付加させて得られる。(B)成分は、未硬化時にはアルカリ可溶性で、光重合により硬化した部分がアルカリ不溶化する樹脂である。
【0022】
化1の誘導体におけるR、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基、カルボキシメチル基、−CO−R−COOHを示し、前記Rは炭素数1〜4の脂肪族アルキレン、炭素数6〜8の脂肪族シクロアルキレン基、炭素数6〜10のフェニレン基からなる無水カルボン酸および/または置換基を持つ無水カルボン酸より誘導される残基を示している。上記の中で、水素もしくはヒドロキシアルキル基によりもたらされる水酸基、カルボキシメチル基および/または無水カルボン酸残基は(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートを付加させるために必須である。上記炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜8のアシル基はペーストとして使用される溶媒、モノマーとの混和性を制御するために適宜導入される。
【0023】
(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートを付加させた(メタ)アクリル変性セルロース誘導体にはカルボキシメチル基や無水カルボン酸残基であるカルボキシル基が残存していることが必須であり、残存量を制御することが必要である。(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートの付加に際しては、ルイス塩基を使用することがペーストの安定性を維持する上で好ましい。ここで、反応に使用したルイス塩基は(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートの付加反応を促進するだけでなく、残存カルボン酸とイオン対もしくは錯塩を形成し、(C)成分のアセタール基および/またはヘミアセタール基が酸により影響されることを削減し、非焼成状態での安定性を向上させ、また同モノマーや溶媒との混和性も向上させ、ペーストの印刷特性やパターン性を大きく向上させる。
【0024】
ルイス塩基としては、アミン、ホスフィンを例示することができる。この中でも、脂肪族三級アミン、芳香族アミンが好ましく、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルアルキレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロオクタンがコストの観点から特に好ましい。ルイス塩基の含有量は、付加させる(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレート100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましく、2〜5重量部が特に好ましい。ルイス塩基の含有量が1重量部より低くなると、未反応物が増加し揮発成分が増えるだけでなく、(C)成分との混和性も低下し、一方含有量が5重量部より高くなるとコストが大きくなる。
【0025】
また、ルイス塩基と同様に金属エステルも使用することができる。金属エステルとしては特に限定されないが、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ラウレートを例示することができる。この中でもコストの点からジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0026】
(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートの付加により得られる(メタ)アクリル変性セルロース誘導体に残存するカルボン酸基の量は、酸価に換算して25〜80mgKOH/gとする。ここで、酸価が25mgKOH/g未満であるとアルカリ現像性が低下し良好な現像パターンを得るのが難しい。また、酸価が80mgKOH/gを超えるとアルカリ現像によりパターンが消失するだけでなく、(C)成分との混和性も低下する。
【0027】
ここで、(B)(メタ)アクリル変性セルロース誘導体は(A)無機粉末を除くペースト成分を100重量部とした場合に、5〜20重量部の範囲で使用することができ、5重量部未満であると乾燥膜強度が低下するため使用しにくくなり、アルカリ現像でもパターン剥がれが生じやすい。20重量部を超えると、粘度が増大することにより印刷時の型離れが悪くなり、印刷性・塗工性が低下する。
【0028】
(C)分子内にアセタール基および/またはヘミアセタール基を含有する重合性モノマーは特に限定されないが、化2で示される官能基を有していることが好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
ここで、Rは水素、炭素数1〜8のアルキル基およびシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族アルキル基であって、他の官能基を有していても良い。重合性モノマーに含まれる重合官能基は特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基、アリル基がコストの点で好ましく、官能基を2個以上有していることが特に好ましい。
【0031】
上記重合性モノマーの製造方法は特に限定されないが、ビニルエーテル化合物に(メタ)アクリル酸を付加させることにより合成することができ、使用できるビニルエーテルとしては特に限定されないが、エチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、アリルビニルエーテル、グリセリンジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルが例示される。
【0032】
(c)成分は、(B)成分の(メタ)アクリル変性セルロース系誘導体からなる樹脂を希釈し、粘度の調整を行うと同時に、硬化部分の物性を調節するために添加される。(C)成分は(A)無機粉末を除くペースト成分を100重量部とした場合に、10〜40重量部の範囲で使用することができ、10重量部未満であると焼成時の残渣が大きくなる。一方、40重量部を超えると他成分との相溶性が悪くなり、タック性が残るなど印刷性・塗工性が低下する。
【0033】
(D)光重合開始剤としては、(B)成分に付加された(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート基および/またはグリシジル(メタ)クリレート基、(C)成分に含まれる(メタ)アクリロイル基を反応させ、露光部を硬化させるものであればよく、ベンジル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、ベンジルケタール類、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、チオキサントン類やその誘導体などの公知化合物を使用することができる。
【0034】
ここで(D)成分は(A)無機粉末を除くペースト成分を100重量部とした場合に、3〜20重量部の範囲で使用することができ、3重量部未満であると硬化不良からパターンの解像度が低下することがある。一方、20重量部を超えると、ペーストの保存安定性が低下し、また過剰硬化によりパターンのアルカリ現像性が低下することがある。
【0035】
さらに、本発明には硬化皮膜と適用される基材との親和性や製造工程で必要とされる膜強度の実現や塗工時の粘度を調整するために、(C)成分以外の重合性モノマーをさらに添加することもできる。添加できる重合性モノマーとしては、特に限定されないが、炭素数1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1〜8のアルコキシエチレンオキサイド誘導体(メタ)アクリレート、炭素数6〜8の芳香族アルコシキエチレンオキサイド誘導体(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド誘導体(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド誘導体トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド誘導体トリ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキシド誘導体トリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキシド誘導体トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
【0036】
また、本発明には塗工時の特性を制御するために芳香族類、エーテル類、アルコール類、エステル類、ケトン類等の溶剤を添加することもできる。添加できる溶剤は特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ターピネオール、ジヒドロキシターピネオール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの酢酸エステル、ペンタンジオールアルキルエーテル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレートが例示される。
【実施例】
【0037】
以下に本発明の好ましい実施例を説明するが、本発明では下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更と修正が可能である。
1.(B)成分の合成例
<合成例1>
セパラブルフラスコにHQ(ハイドロキノン)0.037g、ECA(ジエチレングリコーモノエチルエーテルアセテート)54.8g を入れかき混ぜながらHP-50(信越化学製カルボン酸変性セルロース)30gを加えた。攪拌羽、冷却管、温度計をセットしオイルバス110℃で加温した。
【0038】
1時間後、透明の「のり状」になった後、GMA(グリシジルメタクリレート)6.5gとDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン)0.26gを加えそのまま15時間攪拌反応をした後冷却して容器へ取り出した。得られた樹脂の酸価は38mgKOH/gであった。これを樹脂溶液1とする。
【0039】
<合成例2>
セパラブルフラスコにHQ(ハイドロキノン)0.04g、ECA(ジエチレングリコーモノエチルエーテルアセテート)61.0g を入れかき混ぜながらHP-50(信越化学製カルボン酸変性セルロース)30gを加えた。攪拌羽、冷却管、温度計をセットしオイルバス110℃で加温した。
【0040】
1時間後、透明の「のり状」になった後、80℃まで冷却しメタクリロイロキシエチルイソシアネート(カレンズMOI、昭和電工製)10.6gとジブチル錫ジラウレート0.02gを加え5時間反応後、冷却して容器へ取り出した。得られた樹脂の酸価は62mgKOH/gであった。これを樹脂溶液2とする。
【0041】
<合成例3>
セパラブルフラスコにHQ(ハイドロキノン)0.015g、ECA(ジエチレングリコーモノエチルエーテルアセテート)22.8g を入れかき混ぜながらHP-50(信越化学製カルボン酸変性セルロース)10gを加えた。攪拌羽、冷却管、温度計をセットしオイルバス110℃で加温した。
【0042】
1時間後、透明の「のり状」になった後、GMA(グリシジルメタクリレート)1.7gとDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン)0.065gを加えた。15時間反応後、80℃まで冷却しメタクリロイロキシエチルイソシアネート(カレンズMOI、昭和電工製)3.6gとジブチル錫ジラウレート0.008gを加え5時間反応後、冷却して容器へ取り出した。得られた樹脂の酸価は37mgKOH/gであった。これを樹脂溶液3とする。
【0043】
<比較合成例1>
セパラブルフラスコにHQ(ハイドロキノン)0.013g、ECA(ジエチレングリコーモノエチルエーテルアセテート)13.3g、を入れかき混ぜながらHP-50(信越化学製カルボン酸変性セルロース)10gを加えた。攪拌羽、冷却管、温度計をセットしオイルバス110℃で加温した。
【0044】
1時間後、透明の「のり状」になった後、GMA(グリシジルメタクリレート)3.3gを加えた。そのまま15時間反応後、冷却して容器へ取り出した。得られた樹脂の酸価は50mgKOH/gであった。これを樹脂溶液4とする。
【0045】
<比較合成例2>
セパラブルフラスコにHQ(ハイドロキノン)0.028g、ECA(ジエチレングリコーモノエチルエーテルアセテート)41.7g を入れかき混ぜながらHP-50(信越化学製カルボン酸変性セルロース)25gを加えた。攪拌羽、冷却管、温度計をセットしオイルバス110℃で加温した。
【0046】
1時間後、透明の「のり状」になった後、GMA(グリシジルメタクリレート)1.4gとDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン)0.06gを加えそのまま15時間攪拌反応をした後冷却して容器へ取り出した。得られた樹脂の酸価は83mgKOH/gであった。これを樹脂溶液5とする。
【0047】
<比較合成例3>
セパラブルフラスコにHQ(ハイドロキノン)0.015g、ECA(ジエチレングリコーモノエチルエーテルアセテート)23.6g を入れかき混ぜながらHP-50(信越化学製カルボン酸変性セルロース)10gを加えた。攪拌羽、冷却管、温度計をセットしオイルバス110℃で加温した。
【0048】
1時間後、透明の「のり状」になった後、GMA(グリシジルメタクリレート)2.2gとDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン)0.08gを加えた。15時間反応後、80℃まで冷却しメタクリロイロキシエチルイソシアネート(カレンズMOI、昭和電工製)3.6gとジブチル錫ジラウレート0.008gを加え5時間反応後、冷却して容器へ取り出した。得られた樹脂の酸価は21mgKOH/gであった。これを樹脂溶液6とする。
2.(C)成分の合成例
<合成例4>
トルエン360mLにアクリル酸64.8g(2eq)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル63.6g(1eq)とHQ(ヒドロキノン)0.13g(メタクリル酸とトリビニルエーテルの合計重量の1000ppm)を溶解し、90〜100℃で4時間反応を行なった。トルエンをエバポレーターで留去し121gの目的物を得た。得られたアセタール基を含有する重合性モノマーを化合物1とする。
【0049】
<合成例5>
トルエン360mLにアクリル酸50g(2eq)、トリエチレングリコールジビニルエーテル75.6g(1eq)とHQ(ヒドロキノン)0.13g(メタクリル酸とジビニルエーテルの合計重量の1000ppm)を溶解し、90〜100℃で4時間反応を行なった。トルエンをエバポレーターで留去し120gの目的物を得た。得られたアセタール基を含有する重合性モノマーを化合物2とする。
3.実施例
実施例1〜6、比較例1〜6について、表1に示した組成を予備混合した後、EXAKT社製セラミック3本ロールで混錬しペースト化した。得られたペーストは、#325メッシュステンレススクリーンを用い、ガラス基板上にベタ印刷した後、80℃×10分間乾燥させ、図1に示すクロムマスク10をのせて、150mJの平行光で露光した。次いで、0.5Wt%のNa2CO3水溶液でシャワーリングして現像した。図1は、クロムマスク1の上面図を示す。クロムマスク10は、ライン幅Wとギャップ幅Gが異なる2種の領域1,2を有する。第1の領域1はライン幅W及びギャップ幅Gが共に50μmであり、第2の領域2はライン幅W及びギャップ幅Gが共に75μmである。図2は、領域1の一部を拡大して示す上面図であり、ライン幅Wおよびギャップ幅Gが示す幅を明記している。
【0050】
現像物のライン形成性の評価としてライン幅W及びギャップ幅Gが共に50μmの第1の領域1とライン幅W及びギャップ幅Gが共に75μmの第2の領域2とについてライン形成性を評価した。評価はラインの形状を目視で観察することにより行った。
【0051】
評価基準は以下のとおりである。
【0052】
○:全体がパターン化され、未露光部は完全にエッチングされ、断線、短絡線等の欠陥がない。
【0053】
△:全体がパターン化されているが、未露光部のエッチングが不十分での短絡やオーバーエッチによる断線等の欠陥がある。
【0054】
×:エッチングができない、又は全体が溶解してしまって現像ができない。
【0055】
また上記評価にて○となったものはパターン化した硬化物を削り取りTG/DTAにより25℃から580℃まで10℃/minで昇温したときの最終重量減少を100%として90%減量時点と50%減量時点での温度を測定した。
【0056】
以上の評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

表1に示す結果からわかるように、実施例1〜6及び比較例1はラインギャップ性について比較例2〜6と比較して優れていた。比較例2では、無機粉末が少ないためラインに欠陥が生じたと考察される。比較例3では無機粉末が多いため有機成分が不足してパターン流れを生じたと考察される。比較例4では樹脂溶液4合成時にルイス塩基を使用しておらず、相溶性不足によりライン欠陥が生じたと考察される。比較例5では樹脂溶液5の酸価が高すぎるためアルカリ溶液への溶解性が大きくパターン流れが生じたと考察される。比較例6では現像が出来なかった。これは、樹脂溶液6の酸価が低すぎるためであると解される。
【0058】
熱分解性については、実施例1〜6では50%重量減少の温度が224℃〜273℃であり90%重量減少の温度が421℃〜442℃であった。一方、比較例1では50%重量減少の温度が358℃、90%重量減少の温度が488℃と各実施例と比較していずれも高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のアルカリ現像型感光性ペースト組成物は、電子材料の分野におけるフォトリソグラフィー法によるパターン形成に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】クロムマスクの形状を示す上面図である。
【図2】図1のクロムマスクの部分拡大図である。
【符号の説明】
【0061】
1 第1の領域
2 第2の領域
10 クロムマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機粉末と、(B)化1で表されるセルロース誘導体に(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートを付加させて得られる酸価が25〜80mgKOH/gの(メタ)アクリル変性セルロース系誘導体と、(C)分子内にアセタール基および/またはヘミアセタール基を含有する重合性モノマーと、(D)光重合開始剤を含有してなるアルカリ現像型感光性ペースト組成物。
【化1】


(ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基、カルボキシメチル基、−CO−R−COOHを示し、前記Rは炭素数1〜4の脂肪族アルキレン、炭素数6〜8の脂肪族シクロアルキレン基、炭素数6〜10のフェニレン基からなる無水カルボン酸および/または置換基を持つ無水カルボン酸より誘導される残基を示す。)
【請求項2】
アルカリ現像型感光性ペースト組成物全体に占める(A)成分の含有量が体積率で12%〜30%である、請求項1に記載のアルカリ現像型感光性ペースト組成物。
【請求項3】
(B)成分は、ルイス塩基および/または金属エステルを用いて(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートおよび/またはグリシジル(メタ)クリレートが付加されている、請求項1又は2に記載のアルカリ現像型感光性ペースト組成物。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−129503(P2008−129503A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316956(P2006−316956)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【出願人】(397059571)京都エレックス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】