説明

アルカリ蓄電池用正極活物質、アルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法、アルカリ蓄電池用正極及びアルカリ蓄電池

【課題】環境依存性が低く、蓄電池として優れた電池特性を維持することのできるアルカリ蓄電池用正極活物質、及び、アルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法、及び、該正極活物質を含むアルカリ蓄電池用正極、及び、該正極活物質を正極に含むアルカリ蓄電池を提供する。
【解決手段】アルカリ蓄電池用正極活物質には、水酸化ニッケル粒子が含有されており、水酸化ニッケル粒子は、コバルト化合物被膜層により被覆されている。そして、コバルト化合物被膜層にて被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積は、コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積に対する増加量が3[m/g]以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ蓄電池に用いられるアルカリ蓄電池用正極活物質及び該アルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法、及び、該正極活物質を含むアルカリ蓄電池用正極、及び該正極活物質を正極に含むアルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、携帯用の電子機器の電源のひとつとして、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源のひとつとして、様々なアルカリ蓄電池(二次電池)が用いられている。そして、こうしたアルカリ蓄電池のうち、エネルギー密度が高く、信頼性に優れた蓄電池としてニッケル水素蓄電池がある。このニッケル水素蓄電池は、例えば、水酸化ニッケルを主成分とした正極と、水素吸蔵合金を主成分とした負極とを、セパレータを介して複数枚積層し、水酸化カリウムなどからなるアルカリ電解液とともに収納容器に収納されて構成されている蓄電池である。
【0003】
そして、このようなアルカリ蓄電池の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のアルカリ蓄電池には、正極活物質として、コバルト化合物被膜層により表面が被覆された水酸化ニッケル粒子が用いられているとともに、比表面積が8.0[m/g]以上、かつ、1.8×10[m/g]以下である正極活物質が用いられている。これにより、このアルカリ蓄電池は、分極が抑制されて正極活物質の利用率が高くなるとともに、電解液の減少が抑制されて、サイクル寿命特性が良好になるようにその電池特性が改善されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−48954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、ハイブリッド自動車の需要の高まりに伴い、ハイブリッド自動車にとってより高負荷となる使用環境、例えば酷暑地域での使用や、長時間の連続使用など、その拡大が不可避になってきている。これに伴い、ハイブリッド自動車等に搭載されるニッケル水素蓄電池としても、酷暑地域や、長時間の連続運転といった上述の使用環境に耐え得る電池特性が要求されている。そして、このような環境においては、上述の特許文献1に記載のアルカリ蓄電池を含め、その正極からの酸素ガスの発生に起因して電池内圧の上昇が早まることも懸念されている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであって、その目的は、環境依存性が低く、蓄電池として優れた電池特性を維持することのできるアルカリ蓄電池用正極活物質、及び、アルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法、及び、該正極活物質を含むアルカリ蓄電池用正極、及び、該正極活物質を正極に含むアルカリ蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、水酸化ニッケル粒子を含有するアルカリ蓄電池用正極活物質であって、前記水酸化ニッケル粒子は、コバルト化合物被膜層により被覆されており、前記コバルト化合物被膜層にて被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積は、前記コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積に対する増加量が3[m/g]以上であることを要旨とする。
【0008】
上記課題を解決するため、請求項9に記載の発明は、水酸化ニッケル粒子を含有するアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法であって、前記水酸化ニッケル粒子をコバルト化合物被膜層により被覆する工程を備え、前記被覆する工程では、前記コバルト化合物被膜層にて被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積を、前記コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積に比べて3[m/g]以上増加させるように被膜することを要旨とする。
【0009】
このような構成もしくは方法によれば、コバルト化合物被膜層によって水酸化ニッケル粒子に付与される伝導性のばらつきが少なくなる。このため多数の水酸化ニッケル粒子の充電に対する反応が各粒子間でより均等に行われるようになる。このことから、一部の水酸化ニッケル粒子に電流が集中して当該水酸化ニッケル粒子を早期に過充電させて酸素ガスの発生を促進してしまうようなおそれが抑制される。これにより、このようなアルカリ蓄電池用正極活物質を含有する正極の充電特性が良好になり、具体的には、酸素ガスの発生が抑制されて、このアルカリ蓄電池用正極活物質を含む正極が用いられる蓄電池の内圧上昇なども防ぐことができるようになる。すなわち、このアルカリ蓄電池用正極活物質により、アルカリ蓄電池の環境依存性を低くし、蓄電池として優れた電池特性を維持させることができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質において、前記比表面積の増加量が12[m/g]以下であることを要旨とする。
このような構成によれば、発泡ニッケル基板への充填が容易なペースト粘度にすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質において、前記水酸化ニッケル粒子の平均粒径をA[μm]、前記水酸化ニッケル粒子の質量に対する前記コバルト化合物被膜層に含まれているコバルトの質量の割合をB[%]とするとき、「B/A」が0.37[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下であることを要旨とする。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法において、前記被覆する工程では、前記水酸化ニッケル粒子の平均粒径をA[μm]、前記水酸化ニッケル粒子の質量に対する前記コバルト化合物被膜層に含まれているコバルトの質量の割合をB[%]としたとき、「B/A」が0.37[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下となるように被膜することを要旨とする。
【0013】
水酸化ニッケル粒子はコバルト化合物被膜層により導電性が向上し、充電特性も向上することが知られている。しかし、平均粒径が小さくなると表面積が増加しすぎて表面が好適に被膜できなくなり充電特性が低下する。逆に、平均粒径が大きくなると表面積が減少して出力特性が低下することも知られている。そこで、この構成もしくは方法によるように、水酸化ニッケル粒子の粒径に応じて、水酸化ニッケル粒子を被膜するコバルトの量を選択することなどにより、水酸化ニッケル粒子の充電特性を良好に維持することができるようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質において、前記「B/A」が0.48[%/μm]以上であることを要旨とする。
このような構成によれば、水酸化ニッケル粒子の粒径に応じて、水酸化ニッケル粒子を被膜するコバルトの量をより良好な範囲とすることができるため、より一層、水酸化ニッケル粒子の充電特性を良好にすることができるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質において、前記水酸化ニッケル粒子は、少なくともマグネシウムを固溶状態で含むことを要旨とする。
【0016】
このような構成によれば、正極の出力特性を好適なものにすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質において、前記コバルト化合物被膜層は、β型の結晶構造を有するオキシ水酸化コバルトからなることを要旨とする。
【0017】
このような構成によれば、β型の結晶構造を有するオキシ水酸化コバルトで被覆することによって容量特性、特に、高温容量特性を良好にすることができる。
上記課題を解決するため、請求項7に記載の発明は、アルカリ蓄電池用正極活物質を含有するアルカリ蓄電池用正極であって、前記アルカリ蓄電池用正極活物質として、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質が用いられていることを要旨とする。
【0018】
このような構成によれば、アルカリ蓄電池用正極を、環境依存性が低く、蓄電池として優れた電池特性を維持させるようにすることができる。これにより、このアルカリ蓄電池用正極を含むアルカリ蓄電池の性能を高く維持することができるようになる。
【0019】
上記課題を解決するため、請求項8に記載の発明は、アルカリ蓄電池用正極を備えたアルカリ蓄電池であって、前記アルカリ蓄電池用正極に含まれるアルカリ蓄電池用正極活物質として、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質が用いられていることを要旨とする。
【0020】
このような構成によれば、アルカリ蓄電池を、環境依存性が低く、蓄電池として優れた電池特性が維持できるようにすることができる。これにより、このアルカリ蓄電池の電池性能が高く維持されるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるアルカリ蓄電池用正極活物質、及び、アルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法、及び、該正極活物質を含むアルカリ蓄電池用正極、及び、該正極活物質を正極に含むアルカリ蓄電池によれば、環境依存性が低く、蓄電池として優れた電池特性を維持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のアルカリ蓄電池用正極活物質を正極に含むアルカリ蓄電池の一実施形態について、同正極活物質の「比表面積増加量」に対する「耐久内圧」及び「ペースト粘度」の関係をそれぞれ示すグラフ。
【図2】同実施形態において、「コバルトコート量/平均粒径」に対する「25℃利用率」の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかるアルカリ蓄電池用正極活物質について説明する。まず、アルカリ蓄電池用正極活物質を正極に含むアルカリ蓄電池について説明する。
アルカリ蓄電池としてのニッケル水素蓄電池は、密閉型電池であり、電気自動車やハイブリッド自動車の電源として用いられる電池である。このニッケル水素蓄電池は、例えば、水素吸蔵合金を含む負極板と、水酸化ニッケル(Ni(OH))を含む正極板とを耐アルカリ性樹脂の不織布から構成されるセパレータを介して複数枚積層した電極群を、集電板に接続し、電解液とともに樹脂製の電槽内に収容して構成される。
【0024】
次に、このニッケル水素蓄電池の作製について説明する。
[水酸化ニッケル粒子の作製]
本実施形態では、正極板に含まれる水酸化ニッケル粒子を、マグネシウムを固溶状態で含む水酸化ニッケル粒子として作製した。
【0025】
すなわち、硫酸ニッケルと硫酸マグネシウムを含む混合液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液を用意し、それぞれを、反応槽内に供給し、マグネシウムを固溶する水酸化ニッケルを作成した。その結果、水酸化ニッケル粉末の平均粒径10[μm]、水酸化ニッケル粉末に含まれる全ての金属元素(ニッケルとマグネシウム)に対するマグネシウムの割合は3[モル%]となった。なお、水酸化ニッケル粉末の平均粒径は、レーザ回析/散乱式粒度分布測定装置により測定した。
【0026】
また、CuKα線を用いたX線回折パターンを記録したところ、JCPDS無機物質ファイルの番号:14−117に記載されているXRDパターンと一致し、β−Ni(OH)型の単層からなることが確認された。すなわち、マグネシウムが水酸化ニッケルに固溶していることが確認できた。
【0027】
[正極活物質の製作]
次に、上述のようにして得られた、マグネシウムを固溶状態で含む水酸化ニッケル粒子(以下、マグネシウム固溶水酸化ニッケル粒子ともいう)の表面に、β型の結晶構造を有するオキシ水酸化コバルトの被覆層(以下、コバルト化合物被膜層ともいう)を形成する。これにより、コバルト化合物の被膜層により被覆されている水酸化ニッケル粒子から構成される正極活物質を製作した。具体的には、まず、マグネシウム固溶水酸化ニッケル粒子を含む水溶液(懸濁液)中に、水酸化ナトリウム水溶液を供給すると共に、硫酸コバルト水溶液を供給し、反応槽内に空気を供給して、反応槽内のマグネシウム固溶水酸化ニッケル粒子の表面に、β型の結晶構造を有するオキシ水酸化コバルトからなる被覆層を形成させた。
【0028】
なお、水酸化ニッケル粒子の質量(固溶体を含む場合は固溶体を含む質量)を「100」としたとき、同「100」に対応する質量に対比させた、水酸化ニッケル粒子を被膜するコバルト化合物被膜層に含まれているコバルトの質量の割合、つまりコバルトコート量が5.0[%]となるようにした。つまり、コバルト化合物の被覆量は、マグネシウム固溶水酸化ニッケル粒子の質量に対し、コバルトコート量が5.0[%]になるように調整した。また、コバルトの平均価数は2.9であった。さらに、水酸化ニッケル粒子の平均粒径は10[μm]であることから、コバルト化合物被膜層に含まれているコバルトの質量の割合(コバルトコート量)[%]/平均粒径[μm]は、0.5[%/μm](=5.0[%]/10[μm])となる。なお、コバルト化合物被膜層により被膜された水酸化ニッケル粒子におけるコバルトコート量は、ICP分析により定量できる。
【0029】
そして、このコバルト化合物被膜層により被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積は、20[m/g]であった。その一方、コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積は、14[m/g]であった。このことから、コバルト化合物被膜層の被膜により増加した水酸化ニッケル粒子の比表面積、すなわち、「コバルト化合物被膜層により被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積」と「コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積」との差から比表面積増加量を算出した。すなわち、この水酸化ニッケル粒子の比表面積増加量は、6[m/g](=20[m/g]−14[m/g])であった。なお、コバルト化合物被膜層による被膜前後の水酸化ニッケル粒子の比表面積はそれぞれ、窒素ガス吸着によるBET法を用いて測定した。
【0030】
次いで、CuKα線を使用するX線回折測定を行い、コバルト化合物被膜層の結晶構造を調査した。その結果、JCPDS無機物質ファイルの番号:7−169に記載されている六方−菱面晶の層状構造で、結晶性の高いオキシ水酸化コバルトであることが確認できた。
【0031】
[ニッケル正極の製作]
次に、正極板を構成するニッケル正極を作製した。具体的には、まず、上述のようにして得られた正極活物質粉末に、所定量の金属コバルトなどの添加剤と、水と、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの増粘剤とを加え、混練することにより、含水率が約2.6±0.2[%]であるペースト状にした。なお、ペースト粘度は、回転型粘度計にて測定することができ、同回転型粘度計における測定条件を、例えば、回転数50[rpm]、サンプル量0.5[ml]とすることでて安定した測定をすることができた。
【0032】
そして、このペーストを発泡ニッケル基板に充填し、乾燥した後、加圧成形することにより、ニッケル正極板を製作した。次いで、このニッケル正極板を所定の大きさに切断し、正極板を得ることができた。なお、ニッケル電極(正極板)の理論容量は、活物質中のニッケルが一電子反応をするものとして計算する。
【0033】
[アルカリ蓄電池の製作]
次に、公知の手法により、水素吸蔵合金を含む負極を製作した。具体的には、所定粒径に調整した水素吸蔵合金粉末を電極支持体に所定量塗工することにより、正極よりも大きい容量の負極板を得ることができた。
【0034】
次いで、上記負極板と、上記正極板とを、耐アルカリ性樹脂の不織布から構成されるセパレータを介して積層し、集電板と接続して、水酸化カリウム(KOH)を主成分とした電解液とともに樹脂製の電槽内に収容することで、角形の密閉型ニッケル水素蓄電池を作製した。
【0035】
[比表面積増加量の選択]
次に、作製されたニッケル水素蓄電池の「耐久内圧」及び「ペースト粘度」と「比表面積増加量」との関係について、図1に従って説明する。図1において、「耐久内圧」の測定値は黒塗りの菱形で示され、比表面積増加量が「0.40」,「0.40」,「1.00」,「1.60」,「3.20」,「5.65」,「6.25」,「7.55」[m/g]においてそれぞれ測定されている。また、「ペースト粘度」は白抜きの三角形で示され、比表面積増加量が「−0.20」,「0.40」,「0.40」,「0.40」,「1.00」,「1.30」,「1.60」,「5.05」,「5.65」[m/g]においてそれぞれ測定されている。また、「耐久内圧」の測定値から符号Pで示す「比表面積増加量」に対する「耐久内圧」に関するグラフが得られ、「ペースト粘度」の測定値から符号Vで示す「比表面積増加量」に対する「ペースト粘度」に関するグラフが得られた。なお、「耐久内圧」は、アルカリ蓄電池に所定の充放電試験を行った結果、測定された内圧のことであり、この「耐久内圧」はその値が低いほど、正極が発生する酸素ガスの量が少ない、つまり環境依存性が低いため、アルカリ蓄電池としての電池特性が良好であることを示す。
【0036】
すなわち、本発明者らは、「耐久内圧」と「比表面積増加量」との関係を調べることとした。そのため、コバルト化合物被膜層による被膜後の比表面積増加量が異なる評価用の水酸化ニッケル粒子を、例えば、コバルト化合物被膜層を形成される際のpHを変化させて、上述と同様の方法にて製作した。そして、このように製作した評価用の水酸化ニッケル粒子を正極に含む評価用のアルカリ蓄電池をそれぞれ製作し、それらアルカリ蓄電池の「耐久内圧」をそれぞれ測定した。その結果、本発明者らは、「比表面積増加量」が少なくとも3[m/g]以上にある場合、「耐久内圧」が低く抑えられるアルカリ蓄電池用正極を製作できることを見いだした。なお、「比表面積増加量」が3[m/g]以上である場合のコバルト化合物被膜層による被膜後の比表面積は18〜23[m/g]であった。
【0037】
すなわち、図1に示されるように、「比表面積増加量」が0〜2[m/g]の範囲にある場合、「耐久内圧」は圧力P1や、圧力P2などの高い値を示し、内圧が大きく上昇していることが示されている。一方、「比表面積増加量」が3[m/g]以上の範囲にある場合、「耐久内圧」は圧力P2よりも低い圧力P3の近傍に維持されていることが示されている。なお、8[m/g]より大きい範囲における「耐久内圧」の変化傾向は、3〜8[m/g]の範囲における「耐久内圧」の変化傾向に連続的であることが発明者らの経験上明らかである。
【0038】
本実施形態では、圧力P1と圧力P2との間には0.1[MPa]の差があり、圧力P2と圧力P3との間には0.05[MPa]の差がある。すなわち、「比表面積増加量」が3〜12[m/g]の範囲における「耐久内圧」の変化量は多くても0.05[MPa]であることが明らかであるから、同範囲における「耐久内圧」の変化率は、0.0055[MPa・g/m](≒0.05[MPa]/9[m/g])となる。より確実を期するため、「比表面積増加量」の範囲を3〜8[m/g]の範囲としたとしても、その範囲での「耐久内圧」の変化量は多くても0.05[MPa]であることから、同範囲における「耐久内圧」の変化量は、0.01[MPa・g/m](=0.05[MPa]/5[m/g])となる。
【0039】
なお、「比表面積増加量」を増やせば、水酸化ニッケル粒子間や発泡ニッケル基板との導電ネットワークがより良く形成されると考えられているが、「比表面積増加量」には制約があることが分かっている。詳述すると、「ペースト粘度」を測定すると、「ペースト粘度」は、「比表面積増加量」に応じて比例するかたちに増加していることが分かる。これは、コバルト化合物被膜層により被膜された水酸化ニッケル粒子が水を含みやすくなる、つまり、被膜により増加した表面に水分が分散して進入するため、表面上に残って水酸化ニッケル粒子間に介在する水分の量が減少するためであると考えられている。ところで、本実施形態では、ニッケル正極は、発泡ニッケル基板にペーストを充填させて製作されるが、ペースト粘度が高くなると発泡ニッケル基板へペーストを充填することが難しくなるため、良好な性能を有する正極を作成することができなくなることは、発明者らによる実験により明らかである。つまり、本実施形態においては、「比表面積増加量」が12[m/g]を越えると、「ペースト粘度」が発泡ニッケル基板へペーストを充填することが難しくなる粘度V1よりも高くなるため、良好な正極を作成することができなくなることが分かっている。すなわち、「比表面積増加量」は、12[m/g]以下であることが好ましい。
【0040】
このようなことから、発明者らは、「比表面積増加量」が3[m/g]より小さい範囲は「耐久内圧」が高くなるため好ましくない範囲と判断するとともに、12[m/g]より大きい範囲はペーストを発泡ニッケル基板に充填することが困難な範囲と判断した。そして、発明者らは、アルカリ蓄電池の「耐久内圧」を低下させることのでき、かつ、発泡ニッケル基板への充填も容易な「比表面積増加量」は、3[m/g]以上から12[m/g]以下までの範囲であることを見いだした。
【0041】
なお、コバルト化合物被膜層の被膜により比表面積を増加させるのではなく、水酸化ニッケル粒子の比表面積そのものを増加することも考えられるが、水酸化ニッケル粒子そのものの比表面積を増加させるような調製は、水酸化ニッケル粒子の出力などの特性に変化を及ぼしてしまうおそれがある。また、水酸化ニッケル粒子は、導電性の向上にコバルト化合物被膜層による被膜が必要であるため、外表面を構成するコバルト化合物被膜層によって比表面積を増加させることが適当であるとも考えられる。これらのことから、発明者らは、コバルト化合物被膜層により比表面積を増加させることとした。
【0042】
ここで、「耐久内圧」を測定するために行う、アルカリ蓄電池に対する所定の充放電試験について説明する。充放電試験は、ニッケル水素蓄電池を、環境温度「35℃」の下で、SOC(State Of Charge)が「20%〜80%」の間で変化するように行う所定の電流での充電、及び所定の電流による放電を1サイクルとし、このサイクルを1000回繰り返す試験である。その際、500回目のサイクルの後、充放電のサイクルを一時休止して、ニッケル水素蓄電池の内圧が0[MPa]になるようにする。なお、充電する所定の電流を定格容量を表す数値の3倍に相当する電流、つまり3Cとするとともに、放電させる所定の電流を定格容量を表す数値の3倍に相当する電流、つまり3Cとした。そして、この充放電試験中に測定された内圧のうちの最大値を「耐久内圧」として得た。ところで、この充放電試験は、ハイブリッド車が使用された場合にニッケル水素蓄電池に生じる充放電として使用頻度の高いパターンとして発明者らが設定したモデルに基づく試験である。また、ニッケル水素蓄電池の内圧は、発電要素の収納された密閉型の収納容器に設けられた穴に、同穴を密閉するように圧力センサを設置し、当該圧力センサによって測定した。
【0043】
[コバルトコート量/平均粒径の選択]
続いて、製作されたニッケル水素蓄電池の利用率の算出と平均粒径に対するコバルトコート量との関係について、図2に従って説明する。図2において、「25℃利用率」の測定値は白抜きの円で示されている。なお、「25℃利用率」の単位は[%]であり、「コバルトコート量/平均粒径」の単位は[%/μm]である。
【0044】
すなわち、本発明者らは、「25℃利用率」と「コバルトコート量/平均粒径」との関係を調べることとした。そのため、コバルトコート量が異なる評価用の水酸化ニッケル粒子を、上述と同様の方法にて製作した。そして、このように製作した評価用の水酸化ニッケル粒子を正極に含む評価用のアルカリ蓄電池をそれぞれ製作し、それら評価用のアルカリ蓄電池の「25℃利用率」をそれぞれ測定した。その結果、本発明者らは、「コバルトコート量/平均粒径」が所定の範囲にある場合、「25℃利用率」が高くなる、具体的には、電気自動車やハイブリッド自動車に最適な95.7[%]以上になるアルカリ蓄電池用正極を製作できることを見いだした。その結果を、表1に示す。
【0045】
【表1】

図2に示されるように、「コバルトコート量/平均粒径」の異なる複数の評価用のアルカリ蓄電池は、その「25℃利用率」の値の変化態様が「コバルトコート量/平均粒径」に対して上に凸である凸状の態様に変化することが測定された。すなわち、「コバルトコート量/平均粒径」(単に「指標」ともいう)に対する「25℃利用率」は、「指標」が0.48[%/μm]付近では約98.0[%]であり、「指標」がそれよりも小さい0.37[%/μm]付近では約96.0[%]であり、「指標」がさらに小さい0.28[%/μm]付近では約94.2[%]である。逆に、「コバルトコート量/平均粒径」に対する「25℃利用率」は、「指標」が0.48[%/μm]よりも大きい1.12[%/μm]付近では約98.7[%]であり、「指標」がそれよりも大きい1.40[%/μm]付近では約94.6[%]である。
【0046】
なお、コバルトコート量が一定であるとすると、「コバルトコート量/平均粒径」の値が大きいことは、平均粒径が小さいことを示しており、平均粒径が小さくなりすぎると、水酸化ニッケル粒子の表面にコバルト化合物被膜層を良好に被膜することができないと考えられる。逆に、「コバルトコート量/平均粒径」の値が小さいことは、平均粒径が大きいことを示しており、平均粒径が大きくなると、水酸化ニッケル粒子の表面積が減少することとなると考えられる。
【0047】
このように、「25℃利用率」は、「コバルトコート量/平均粒径」が0.37[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下の範囲で高くなり、0.37[%/μm]よりも小さい範囲、及び1.12[%/μm]よりも大きい範囲では、それぞれ小さくなることが分かった。すなわち、「25℃利用率」は、「コバルトコート量/平均粒径」が0.37[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下の範囲で高くなる、つまり、上に凸状に変化することが分かった。また、「コバルトコート量/平均粒径」は0.48[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下の範囲では「25℃利用率」が極めて良好になるため、より好ましい。
【0048】
なお、「25℃利用率」は、ニッケル水素蓄電池の構造によりその数値が変化することが予測されるが、ニッケル水素蓄電池の構造にかかわらず「コバルトコート量/平均粒径」に対する変化態様、すなわち「指標」が0.37〜1.12[%/μm]の範囲で数値が高くなる上に凸状に変化する傾向は同様である。すなわち、「コバルトコート量/平均粒径」以外の要素に変化が生じたとしても「コバルトコート量/平均粒径」が0.37〜1.12[%/μm]の範囲で「25℃利用率」が高くなる傾向であることは同様である。
【0049】
ところで、本実施形態の「25℃利用率」は、環境温度が「25℃」の下で、所定の充電容量分だけ充電したニッケル水素蓄電池から放電された容量の充電容量に対する割合であり、次式(1)により算出される。
【0050】
利用率[%]=放電容量[Ah]/充電容量[Ah]×100・・・(1)
ここで、放電容量は、環境温度が25℃の下、ニッケル水素蓄電池に所定の充電容量分を充電した後、該蓄電池から充電容量の10分の1の放電電流を放電することにより得られる容量[Ah]である。このとき放電容量は、測定された放電電流と、計測された放電開始から放電終止電圧(1V)までの時間との積により示される。なお一般に、蓄電池は放電容量が大きいほど優れていると判断される。またSOC(State Of Charge)は、蓄電池の残存容量を示すものであり、完全充電された蓄電池から放電された電気量を除いた割合を示す。すなわち、充電容量が一定であれば、放電容量が大きい、つまり利用率が高いほど、電池特性が優れた電池であるといえる。
【0051】
このことから、「コバルトコート量/平均粒径」の指標によれば、「25℃利用率」が高くなる0.37[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下の範囲で水酸化ニッケル粒子を製作すれば、当該水酸化ニッケル粒子を用いるニッケル水素蓄電池の電池特性を高くすることができる。より好適には、「コバルトコート量/平均粒径」を0.48[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下の範囲とする水酸化ニッケル粒子を製作すれば、当該水酸化ニッケル粒子を用いるニッケル水素蓄電池の電池特性をより高くすることができる。
【0052】
(作用)
ニッケル水素蓄電池は、「耐久内圧」の値が低く維持されると好適である。そして、「耐久内圧」の値は、水酸化ニッケル粒子の「比表面積増加量」が3〜12[m/g]の範囲で低く維持されることが分かった。このことから、水酸化ニッケル粒子は、コバルト化合物被膜層により被膜された比表面積が、コバルト化合物被膜層による被膜前の比表面積に対し、3〜12[m/g]の範囲で増加するように被膜されることで、当該水酸化ニッケル粒子を正極に用いたニッケル水素蓄電池の電池特性を高く維持させることができるようになる。
【0053】
また、ニッケル水素蓄電池は、「25℃利用率」の値が高く維持されると好適である。そして、「25℃利用率」は、「コバルトコート量/平均粒径」が0.37〜1.12[%/μm]の範囲で数値が高く維持されることが分かった。より好適には、「25℃利用率」は、「コバルトコート量/平均粒径」が0.48〜1.12[%/μm]の範囲で数値がより高く維持されることが分かった。このことから、水酸化ニッケル粒子は、「指標」が0.37〜1.12[%/μm]の範囲になるようにコバルト化合物被膜層により被膜されることで、当該水酸化ニッケル粒子を正極に用いたニッケル水素蓄電池の電池特性を高く維持させることができるようになる。さらには、水酸化ニッケル粒子は、「指標」が0.48〜1.12[%/μm]の範囲になるようにコバルト化合物被膜層により被膜されることで、当該水酸化ニッケル粒子を正極に用いたニッケル水素蓄電池の電池特性をより高く維持させることができるようになる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のアルカリ蓄電池用正極活物質によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積に対するコバルト化合物被膜層にて被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積の増加量を、3[m/g]以上にすることによって、コバルト化合物被膜層によって水酸化ニッケル粒子に付与される伝導性のばらつきが少なくなる。このため多数の水酸化ニッケル粒子の充電に対する反応が各粒子間でより均等に行われるようになる。このことから、一部の水酸化ニッケル粒子に電流が集中して当該水酸化ニッケル粒子を早期に過充電させて酸素ガスの発生を促進してしまうようなおそれが抑制される。これにより、このようなアルカリ蓄電池用正極活物質を含有する正極の充電特性が良好になり、具体的には、酸素ガスの発生が抑制されて、このアルカリ蓄電池用正極活物質を含む正極が用いられる電池の内圧上昇なども防ぐことができるようになる。
【0055】
また、比表面積の増加量を12[m/g]以下にすることにより、発泡ニッケル基板への充填が容易なペースト粘度にすることができる。
(2)水酸化ニッケル粒子はコバルト化合物被膜層により導電性が向上し、充電特性も向上することが知られている。しかし、水酸化ニッケル粒子は平均粒径が小さくなると表面積が増加しすぎて表面にコバルト化合物被膜層を好適に被膜できなくなり充電特性が低下する。逆に、水酸化ニッケル粒子は平均粒径が大きくなると表面積が減少して出力特性が低下することも知られている。そこで、この構成によるように、コバルトコート量/平均粒径を0.37[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]とすることで、水酸化ニッケル粒子の粒径に応じて、水酸化ニッケル粒子を被膜するコバルトの量を選択することなどにより、水酸化ニッケル粒子の充電特性を良好に維持することができるようになる。
【0056】
(3)さらに、コバルトコート量/平均粒径を0.48[%/μm]以上とすることで、水酸化ニッケル粒子の粒径に応じて、水酸化ニッケル粒子を被膜するコバルトの量をより良好な範囲とすることができるため、より一層、水酸化ニッケル粒子の充電特性を良好にすることができるようになる。
【0057】
(4)水酸化ニッケル粒子には、少なくともマグネシウムを固溶状態で含ませるようにしたことから正極板の出力特性を好適なものにすることができる。
(5)また、β型の結晶構造を有するオキシ水酸化コバルトで被覆することによっても、容量特性、特に、高温容量特性が良好となる。
【0058】
(その他の実施形態)
なお上記実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
・上記実施形態では、水酸化ニッケル粒子はマグネシウムを固溶状態で含む場合について例示したが、これに限らず、水酸化ニッケル粒子は、マグネシウムの換わりに、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)を固溶状態で含むようにしてもよい。これにより、水酸化ニッケル粒子の作製や、特性についての自由度が向上するようになる。
【0059】
・上記実施形態では、添加剤として金属コバルトを用いる場合について例示したが、これに限らず、添加剤として、酸化亜鉛、塩化亜鉛や水酸化亜鉛などの亜鉛化合物などを用いてもよい。これにより、添加剤の作製や特性についての自由度が向上するようになる。
【0060】
・上記実施形態では、水酸化ニッケル粉末の平均粒径が10[μm]である場合について例示したが、これに限らず、水酸化ニッケル粉末の平均粒径は5[μm]以上、20[μm]以下でもよい。これにより、水酸化ニッケル粒子にかかる自由度が向上する。
【0061】
・上記実施形態では、コバルトの平均価数が2.9価である場合について例示したが、これに限らず、コバルトの平均価数は2.6価以上、かつ、3.0価以下でもよい。これにより、水酸化ニッケル粒子の作成にかかる自由度が向上する。
【0062】
なお、コバルトの平均価数が3.0価よりも大きい場合、オキシ水酸化コバルトの結晶中の電荷のバランスが崩れてβ型の結晶構造からγ型の結晶構造に転移しやすくなる。γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化コバルトは、酸化力が強いため(自身は還元されやすく)自己放電が大きくなる。これにより、活物質利用率が大きく低下してしまうおそれがある。そこで、このようにコバルトの平均価数を3.0価以下とすることで、オキシ水酸化コバルトの結晶構造をβ型に維持できるようになり、自己放電が大きくなる不都合が生じるおそれのないアルカリ蓄電池用正極を得ることができるようになる。
【0063】
・上記実施形態では、コバルト化合物被膜層により被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積が20[m/g]である場合について例示した。しかしこれに限らず、コバルト化合物被膜層により被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積は、20[m/g]を含む18〜23[m/g]の範囲であってもよい。これにより、アルカリ蓄電池用正極活物質の設計自由度が向上するようになる。
【0064】
・すなわち、上記実施形態では、コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積が14[m/g]である場合について例示したが。しかしこれに限らず、コバルト化合物被膜層により被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積は、14[m/g]を含む8〜20[m/g]の範囲であってもよい。これにより、アルカリ蓄電池用正極活物質の設計自由度が向上するようになる。
【0065】
・上記実施形態では、「耐久内圧」を35℃の環境温度下で測定する場合について例示した。しかしこれに限らず、「耐久内圧」を測定する環境温度を、35℃より低い温度や、35℃よりも高い温度にしてもよい。これにより、「耐久内圧」によるニッケル水素蓄電池の評価を使用環境に応じて適切に行うことができるようになる。
【0066】
・上記実施形態では、利用率を25℃の環境温度下で測定する「25℃利用率」とした場合について例示した。しかしこれに限らず、利用率を測定する環境温度を、25℃より低い温度や、25℃よりも高い温度にしてもよい。これにより、利用率によるニッケル水素蓄電池の評価を使用環境に応じて適切に行うことができるようになる。
【0067】
・上記実施形態では、電池が二次電池である場合について例示したが、これに限らず、電池は一次電池でもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ニッケル粒子を含有するアルカリ蓄電池用正極活物質であって、
前記水酸化ニッケル粒子は、コバルト化合物被膜層により被覆されており、
前記コバルト化合物被膜層にて被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積は、前記コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積に対する増加量が3[m/g]以上である
ことを特徴とするアルカリ蓄電池用正極活物質。
【請求項2】
前記比表面積の増加量が12[m/g]以下である
請求項1に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質。
【請求項3】
前記水酸化ニッケル粒子の平均粒径をA[μm]、前記水酸化ニッケル粒子の質量に対する前記コバルト化合物被膜層に含まれているコバルトの質量の割合をB[%]とするとき、
「B/A」が0.37[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下である
請求項1又は2に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質。
【請求項4】
前記「B/A」が0.48[%/μm]以上である
請求項3に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質。
【請求項5】
前記水酸化ニッケル粒子は、少なくともマグネシウムを固溶状態で含む
請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質。
【請求項6】
前記コバルト化合物被膜層は、β型の結晶構造を有するオキシ水酸化コバルトからなる
請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質。
【請求項7】
アルカリ蓄電池用正極活物質を含有するアルカリ蓄電池用正極であって、
前記アルカリ蓄電池用正極活物質として、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質が用いられている
ことを特徴とするアルカリ蓄電池用正極。
【請求項8】
アルカリ蓄電池用正極を備えたアルカリ蓄電池であって、
前記アルカリ蓄電池用正極に含まれるアルカリ蓄電池用正極活物質として、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質が用いられている
ことを特徴とするアルカリ蓄電池。
【請求項9】
水酸化ニッケル粒子を含有するアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法であって、
前記水酸化ニッケル粒子をコバルト化合物被膜層により被覆する工程を備え、
前記被覆する工程では、前記コバルト化合物被膜層にて被膜された水酸化ニッケル粒子の比表面積を、前記コバルト化合物被膜層による被膜前の水酸化ニッケル粒子の比表面積に比べて3[m/g]以上増加させるように被膜する
ことを特徴とするアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記被覆する工程では、前記水酸化ニッケル粒子の平均粒径をA[μm]、前記水酸化ニッケル粒子の質量に対する前記コバルト化合物被膜層に含まれているコバルトの質量の割合をB[%]としたとき、「B/A」が0.37[%/μm]以上、かつ、1.12[%/μm]以下となるように被膜する
請求項9に記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−38022(P2013−38022A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175267(P2011−175267)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(399107063)プライムアースEVエナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】