説明

アルカリ金属とアルカリ金属合金を含有するシリカゲル組成物

【課題】金属反応性を著しく喪失することなく容易に取り扱うことができる形態でアルカリ金属及びアルカリ金属合金を提供する。
【解決手段】液状1族金属をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な等温条件下での不活性雰囲気中において、液状1族金属とシリカゲルを混合させることによって得られる生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物であって、乾燥酸素と反応する該組成物、又は、乾燥酸素と反応しない該組成物であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に関連する出願のデータは次の通りである。本願は、下記の仮出願に基づく優先権の利益を請求するものである:60/524038(出願日:2003年11月24日)、60/561886(出願日:2004年4月14日)、60/578818(出願日:2004年6月14日)、60/611701(出願日:2004年9月22日)、60/611700(出願日:2004年9月22日)。これらの出願の明細書の全開示内容も本願明細書の一部を成すものである。
【0002】
本発明は、アルカリ金属若しくはアルカリ金属合金とシリカゲルとの相互作用(interaction)によって調製されるシリカゲル組成物に関する。該組成物は、改良された取扱特性を有すると共に、中性のアルカリ金属若しくはその合金の反応性を保持する。
【背景技術】
【0003】
周期表の1族のアルカリ金属及びアルカリ金属の合金は、これらが金属状態又は中性状態にあるときは、非常に高い反応性を示す。アルカリ金属及びこれらの合金は空気や湿気に対して非常に高い反応性を示し、これらの原因物質に曝されると、自然に発火する。これらの金属と合金の反応性に関連する固有の危険性を回避するために、この種の中性の金属又は合金は真空中又はオイルのような不活性液体中に保存しなければならない場合が多く、これによって、酸化若しくはその他の反応を引き起こす大気とこれらの金属や合金との接触が防止される。例えば、ナトリウム金属はヌジョール油(Nujol oil)中に貯蔵しなければならない場合が多く、該油は、ナトリウム金属を化学反応での使用に供する前に、望ましくない不純物を回避するために除去されなければならない。このことは、該金属の輸送と用途における重大な制約因子となっている。
【0004】
アルカリ金属をシリカゼオライト(例えば、ZMS−5)と組み合わせる技術は多くの研究所において広範囲に研究されている。例えば、最近になって、純粋なシリカゼオライトはセシウムを蒸気相から12モル%の量まで吸収することができ、又、同等量のその他のアルカリ金属(リチウムを除く)を吸収できることが示されている。純粋なシリカゼオライトでアルカリ金属をカプセル化する従来の研究によれば、この種の合体物は水と発熱的に反応して水素を定量的に発生するということが明らかにされている。この点に関しては、次の文献を参照されたい:A.S.イチムラ、J.L.ダイ、M.A.キャンブラー及びL.A.ビレスクサ、「無機電解質に関して」、J. Am. Chem. Soc.、第124巻、第1170頁〜第1171頁(2002年);D.P.ベルネット、A.S.イチムラ、S.A.ウルビン及びJ.L.ダイ、「純粋なシリカゼオライトへアルカリ金属を添加することによって形成される無機電解質」、Chem. Mater. 、第15巻、第1441頁〜第1448頁(2003年)。しかしながら、ゼオライト組成物によって吸収されるナトリウムの濃度は、実用に供するためには低すぎる。さらに、この場合の反応は、孔径が制限されたゼオライトの細孔内での遅いナトリウム拡散を伴って比較的遅い。
【0005】
レビーらによって、シリカ上へ分散させたカリウム金属を、有機合成における反応試薬として使用することが報告されている:Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 、第20巻(1981年)、第1033頁。カリウム金属をシリカゲル上へ分散させることによって無定形物質が形成されることが知られている(CAS登録No.7631−86−9;実際は、内部表面積を有さないコロイドシリカである)。以下に示すように、この物質と水やベンゾフェノンとの反応性が例証されている。この点に関しては、ラッセルらによる次の文献を参照されたい:オルガノメタリックス(Organometallics)、2002年、第21巻、第4113頁〜第4128頁、スキーム3。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、当該分野においては、金属反応性を著しく喪失することなく容易に取り扱うことができる形態でアルカリ金属及びアルカリ金属合金を得ることができる技術が要請されており、本発明はこのような要請に応えるためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液状1族金属をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な等温条件下での不活性雰囲気中において、液状1族金属とシリカゲルを混合させることによって得られる生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物に関する。調製される1族金属/シリカゲル組成物は乾燥酸素と反応する。この組成物は「段階0の物質」と呼ぶ。
【0008】
本発明は、液状1族金属をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な発熱条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させることによって得られる生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物にも関する。この1族金属/シリカゲル組成物は乾燥酸素と反応しない。この組成物は「段階 I の物質」と呼ぶ。
【0009】
さらに、本発明は、液状1族金属若しくは液状1族金属合金をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な発熱条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させて得られる混合物を約215℃〜約400℃の温度まで加熱することによって調製される生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物に関する。この1族金属/シリカゲル組成物は乾燥酸素と反応しない。この組成物は「段階 II の物質」と呼ぶ。
【0010】
また、本発明は、液状1族金属若しくは液状1族金属合金をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させて得られる混合物を約400℃よりも高温まで加熱することによって調製される生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物にも関する。この1族金属/シリカゲル組成物は乾燥酸素と反応しない。この組成物は「段階 III の物質」と呼ぶ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
添付図面について簡単に説明する。
図1は、微量の1:1NaK/シリカゲル試料(8.9mg)についての示差走査熱分析(DSC)のダイヤグラムである。
図2は、微量の1:1NaK/シリカゲル試料(5.7mg)についてのDSCのダイヤグラムである。
図3は、微量の1:1セシウム/シリカゲル試料(6.7mg)についてのDSCのダイヤグラムである。
図4は、NaK組成を有する合金で被覆したシリカゲル粒子を、段階 I の緩やかに凝集した光沢のある黒色粉末への変換を示す。
図5は、微量の混合物(Na 2.4mg及びシリカゲル3.9mg)につぃてのDSCのダイヤグラムである。
図6は、段階 II のNa/シリカゲル物質に水を添加した後の水素によるバルーンの膨張を示す。
図7は、段階0の物質を、真空下又は不活性雰囲気下において約140℃で一夜加熱した結果を示すDSCのダイヤグラムである。
図8は、本発明による段階 I の物質を用いてアントラセンを還元して得られたアントラセンラジカルアニオンの光学スペクトルを示す。
図9は、本発明による1族金属/シリカゲル組成を有する混合床カラムを通過させることによるTHF中でのアントラセンのバーチ還元の生成物のH−NMRスペクトルを示す。
図10A〜図10Cは、バッチ法によるベンジルクロリドの還元生成物の分析結果を示すチャートである。
図11A〜図11Cは、本発明による段階 I の物質とフェニルスルフィドをバッチ法によって一夜反応させて得られた生成物の分析結果を示すチャートである。
【0012】
1族金属類:アルカリ金属及びアルカリ金属合金
アルカリ金属類は、周期表の1族に属する金属である。本明細書においては、「1族金属」又は「1族金属類」という用語は、本発明によるシリカゲル組成物に使用してもよいアルカリ金属及びアルカリ金属の合金を記載するために用いる。これらのアルカリ金属類には、ナトリウム(Na)、カリウム(K)ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)が含まれる。これらのアルカリ金属の中でも、本発明によるシリカゲル組成物に使用するためにはナトリウムとカリウムが好ましく、特にナトリウムが好ましい。
【0013】
本発明によるシリカゲル組成物においては、アルカリ金属合金を使用してもよい。アルカリ金属合金としては、2種若しくはそれ以上のアルカリ金属の合金、例えば、ナトリウム−カリウム合金(NaK)が好ましく、特にNaKが好ましい。その他の好ましいアルカリ金属合金は、カリウム、セシウム及びルビジウムを相互に含有する合金類であり、特にこれらの元素とナトリウムとの合金が好ましい。アルカリ金属合金は、本願の明細書と特許請求の範囲において定義されて用いられる「1族金属」に包含される。
【0014】
本発明による1族金属/シリカゲル組成物の調製に際しては、一般的には1族金属をシリカゲルと混合する。液状の1族金属の粘度は、少なくともシリカゲルによって吸収されるのに十分低い粘度にすべきである。この条件を達成する1つの方法は、シリカゲルと混合する前のアルカリ金属を不活性雰囲気中において加熱する方法である。あるいは、調製されるべき物質の段階に応じて、固体状の1族金属をシリカゲルと混合し、該混合物を加熱することによってアルカリ金属を溶融させてもよい。
【0015】
アルカリ金属をシリカゲル中へ導入する別の方法は、ゼオライトに関連しておこなわれているように、蒸気相からの導入法であり、このような方法は次の文献に記載されている:A.S.イチムラ、J.L.ダイエ、M.A.キャンブロー及びL.A.ビレスクサ、J. Am. Chem. Soc. 、第124巻、第1170頁〜第1171頁(2002年);D.P.ウェルネット、A.S.イチムラ、S.A.ウルビン及びJ.L.ダイエ、Chem. Mater. 、第15巻、第1411頁〜第1448頁(2003年)。別の方法においては、1族金属は、金属−アンモニア溶液からシリカゲルに沈着させることができる。この方法に関しては次の文献を参照されたい:M.マケスヤ及びK.グララ、Syn. Lett. 、1997年、第267頁〜第268頁、「液状アンモニア中における高表面ナトリウムの簡便な調製;アシロイン反応における利用」。金属−アンモニア溶液は、金属とシリカゲルの混合に際してのこれらの凝集を回避し、金属とシリカゲルとの均質な混合物を調製するために使用することができる。しかしながら、実際上は、金属−アンモニア溶液法を利用して1族金属とシリカゲルを混合する場合、金属−アンモニア溶液のかなりの分解によってアミドが生成する。これに対して、本発明においては、好ましいことには、液状の1族金属とシリカゲルを単に接触させるだけで、長時間を要する蒸気蒸着法や金属−アンモニア法を回避することができる。
【0016】
以下に説明するように、少なくとも段階0の物質に対しては、一般に1族金属は、室温(25℃)よりも約15℃高い範囲内の融点を有することが好ましい。例えば、セシウム及びルビジウムの融点はそれぞれ28.5℃及び38.5℃である。一般的には、2種以上のアルカリ金属の合金は、室温又は室温に近い温度において、好ましくは液状である。好ましい低融点合金は、NaとKのモル比が0.5〜3.0の種々のナトリウム−カリウム合金(NaK)であり、より好ましくは該モル比が2:1のNaKである。モル比が0.5〜2.5の全てのNaK合金は、−12.6℃の共晶溶融点で溶融を開始する。モル比が約0.12〜3.1の合金の溶融は25℃で完結する。アルカリ金属のその他の2成分合金、例えば、CsとRb,K又はNaとの合金、及びRbとNa又はKとの合金は室温よりも低温又は室温よりも幾分高い温度で溶融するので、これらの合金もこのような目的のために使用するのに適当である。これらの4種のアルカリ金属の内の3種から調製される3成分合金又は4成分合金も十分に低い温度において溶融することによって、本発明による1族金属/シリカゲル組成物を形成する。
【0017】
シリカゲル
シリカゲルは多孔質形態の非晶質シリカである。シリカゲルは、99%以上のSiOとして文献等に記載されているさらさらした粉末である。シリカゲルは容易に入手できる安価な物質である。シリカゲルの一般的な細孔体積及び表面積はそれぞれ約0.6〜約1.2cm/g及び約300〜約750m/gである。シリカゲルは一般に次のメッシュサイズ(mesh size)で入手することができる:3〜8、6〜16、14〜20、14〜42、30〜60、28〜200及び約325程度のメッシュサイズ。シリカゲルはその多孔性に起因して、多量の吸着物質を取り込むことができる。本発明によるシリカゲル組成物に使用されるシリカゲルとしては、50〜1000Åの孔径を有するものが好ましい。好ましくは、該孔径は100〜300Åの範囲にあってもよい。より好ましくは、シリカゲルの平均孔径は約150Åである。好ましいシリカゲルには、「ダビシル(Davisil)(登録商標)」のグレード646及び50である。これらの製品はいずれも30〜60メッシュの製品であり、この種の製品は化学品供給業者、例えば、アルドリッチ社等から入手してもよく、又、WRグレース社のダビソン化学部門から直接入手してもよい(該製品は、孔径が150Åで、メッシュサイズが30〜60の粒状純白物であって、指示薬は含有しない)。この種のシリカゲルの別の供給業者は、マルチソーブ社のイーグル化学部門である。
【0018】
購入時のシリカゲルは、さらさらした粉末であるが、一般に多量のガス状物質(例えば、水蒸気及び空気等)を含有している。好ましくは、この種のガス状物質は、シリカゲルとアルカリ金属若しくはその合金を混合して本発明による組成物を調製する前に除去される。シリカゲルは当該分野において既知の方法による脱ガス処理に付してもよい。例えば、ガス状物質を除去するために、シリカゲルを排気可能なフラスコ内において真空下で加熱してもよい。この場合、加熱手段としては、最初は熱風ドライヤーを使用し、次いでトーチ(torch)を用いてもよい。この種の加熱手段によって、約300℃の温度を達成することができる。又、シリカゲルを空気中において600℃又はそれよりも高温(900℃)で加熱することによって(か焼処理)、ガス状物質を容易に除去すると共に活性サイトに保護膜を形成させることも可能であり、実際上、この方法は好ましい方法である。シリカゲルを600℃又はそれよりも高温に加熱することによって、孔内又はシリカゲル格子内のSi−OHサイトの少なくとも一部が、脱水を伴って、シロキサン基(Si−O−Si)へ変化すると考えられる。シリカゲルを上記の温度よりも低温での加熱処理に付すことによっても使用可能な出発物質が得られるが、アルカリ金属の一部は欠陥であるSi−OH基との反応によって不活性化すると考えられる。一般に、シリカゲルは、本発明による1族金属/シリカゲル組成物を調製するまでは、室温まで冷却させる。
【0019】
アルカリ金属及びアルカリ金属合金を含有するシリカゲル組成物
アルカリ金属又は適当な形態のこれらの等価物の利用能は化学工業及び水素の製造分野において依然として必要とされている。このような要請に応えるために、本発明は、シリカゲルとアルカリ金属若しくはアルカリ金属合金を含有する1族金属/シリカゲル組成物を提供する、本発明による組成物は、段階0、 I 、II 及び III の物質として記載される。これらの物質は、調製法と化学的反応性の点で相違する。これらの連続的な段階における各々の物質は、以下に説明する方法を利用することにより、直接的に調製してもよく、あるいは、先行する段階の物質から調製してもよい。段階0の物質は、例えば、NaとKの液状合金を用いて調製してもよい。即ち、該合金は等温条件下(好ましくは、室温又はこれよりも幾分高い温度)においてシリカゲル(多孔性SiO)によって急激に吸収されて、親金属の還元能の大部分を保有する緩やかに凝集した粗密状態の黒色粉末を形成する。段階0の物質は、シリカゲルの孔内に吸収された中性の1族金属の小さなクラスター(cluster)を有すると考えられる。段階0の物質は発火性物質であるが、空気中での爆発性は1族の親金属に比べて低い。段階 I の物質は、段階0の物質を140℃で一夜加熱することによって調製してもよい。段階 I の物質は、乾燥空気中での安定性が不確定な緩やかな粗密状の黒色粉末である。段階 I の物質を400℃に加熱することによって、段階 II の物質が得られるが、該物質も緩やかな粗密状の黒色粉末である。段階 II の物質を400℃よりも高温に加熱することによって段階 III の物質が形成される(この場合、1族金属の一部が放出される)。段階 I、 II 及び III の物質は、1族金属の吸着後にシリカゲルの還元をもたらすと考えられる。本発明による好ましい1族金属/シリカゲル組成物は、ナトリウム、カリウム又はナトリウム−カリウム合金を含有する組成物であるが、ナトリウム及びナトリウム−カリウム合金を含有する組成物が最も好ましい。
【0020】
以下に説明するように、NaK及びセシウムを種々の配合量と質量比で含有する多数の組成物の試料を示差走査熱分析(DSC)によって調べた。−25℃〜0℃において、NaKをシリカゲルの細孔内で溶融させたときに吸収される熱を利用することによって、シリカゲル中に金属として保持されたカプセル化金属量を決定した。この過程は、5℃〜650℃にわたる幅の広い発熱ピークとして現れる。同一試料の冷却と再加熱によって、有意な熱ピークは観測されなかった。このことは、熱処理によって細孔内のカプセル化金属とシリカゲルとの反応がもたらされて段階 II の物質及びその後の段階 III の物質が形成されることを示す(但し、両者の境界は鮮明ではない)。この段階 II の物質から段階 III の物質への変換は、該物質の水素生成能に有意な変化はもたらさない。
【0021】
本発明による1族金属/シリカゲル組成物はシリカゲルとこれに吸着された1族金属を含有する。1族金属の添加量は、実際に使用するシリカゲルの孔径と孔密度によって左右される。一般的には、1族金属は、本発明による組成物中に約50重量%までの濃度で存在していてもよい。好ましくは、金属の含有量は30〜40重量%である。本発明による段階 I、 II 及びIII の物質においては、金属の含有量が約40重量%よりも多くなると、シリカゲルの細孔内に遊離の金属が存在するようになる。
【0022】
本発明による1族金属/シリカゲル組成物は水と容易に反応することによって、ガス状水素をほぼ定量的な収率(一般的には約95%)で生成する。本発明による1族金属/シリカゲル組成物の調製法と特性については以下に説明するが、該組成物は、輸送と取り扱いが容易なクリーン水素源及び有機化合物の多種多様な反応における強力な還元剤として将来的に有望である。以下の表 I には、段階0、I、II 及び III の物質の調製法と用途をまとめて示す。
【0023】
【表1】

【0024】
前述のように、本発明による全ての1族金属/シリカゲル組成物を調製するためには、シリカゲルを1族金属と混合する前に、脱ガス処理と保護膜形成処理に付すことが好ましい。一般的には、本発明による物質の調製においては、最初にシリカゲルを空気中で約600℃又はそれよりも高温に加熱して水分を除去すると共にシリカゲルの脱ガス処理をおこなうことによって欠陥サイトを最小限にする。シリカゲルの乾燥処理、脱ガス処理及び/又は保護膜形成処理をおこなう当該分野において知られている別の方法を使用してもよい。
【0025】
本発明による段階0の物質は低融点を有する1族金属を明らかに含有しており、該金属は、反応を伴わないか、又はシリカゲル格子中への金属の再分布を伴わないで、シリカゲルの細孔内に吸収される。従って、該金属は、シリカゲル中に含まれる開放孔や溝(channel)内において、ナノメーターサイズのアルカリ金属粒子又はアルカリ金属合金粒子として観測される。本発明による段階0の物質は、液状の1族金属又は液状の1族金属合金がシリカゲルの細孔内へ吸収されるのに十分な等温条件下で該液状金属又は該液状金属合金(例えば、NaK)をシリカゲルと混合させて得られる生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物である。段階0の物質を調製するための好ましい1族金属には、低融点を有する1族金属(例えば、セシウム)又はNaK合金が含まれる。段階0の物質である1族金属/シリカゲル組成物は乾燥Oと反応し、この点で該物質は段階 I 、II 及び III の物質と相違する。段階0の物質は乾燥空気と反応するので、該物質は真空中又は酸素不含雰囲気中若しくは不活性ガス中において取り扱わなければならない。段階0の物質は空気中においては自然発火するが、閉鎖容器(例えば、ねじ込み式上蓋を有するバイアル)中において、上記条件下で保存することができる。
【0026】
段階0の物質を調製するためには、1族金属とシリカゲルを等温条件下(好ましくは室温又はこれよりも幾分高い温度)での不活性雰囲気中において、アルカリ金属又はその合金がシリカ中へ十分に吸収される時間にわたって混合させる。この混合操作は不活性雰囲気中、例えば、グローブボックス(glove box)又はグローブバッグ(glove bag)内でおこなわなければならない。好ましい段階0の物質の生成中においては、液状の1族金属(例えば、NaK)を室温下においてシリカゲル床上へ注いでもよい。この混合物を撹拌処理(好ましくは、かき混ぜ又は振盪)に付すことによって良好な混合を達成する。好ましくは、著しい反応熱又は相当な量の発熱を伴うことなく液状の1族金属を多孔性シリカゲル中へ吸収させる。
【0027】
使用する1族金属に応じて、段階0の物質を形成させるための液状1族金属の吸収は、好ましくは室温(25℃)から15℃の範囲内でおこなう。一般的な工程においては、発熱量が非常に少ないので、混合物は著しく加温されることはないが、さらさらした性状であって個々の粒子が光沢のある表面を有する非晶質の黒色粉末である生成物に変換される。該混合物は、アルカリ金属又はその合金がシリカゲル中へ吸収されるか又は滲透するのに十分な時間にわたって撹拌される。一般的には、混合時間は調製されるべきバッチのサイズによって左右され、数分間〜数時間の範囲で変化させてもよい。(この混合時間は、本発明によるいずれの1族金属/シリカゲル組成物の調製に対しても実際に当てはまる。)
【0028】
段階0の物質の調製に際しては、反応によって発生する熱又は反応用の熱は調整されるか又は消散される。調製時の著しい温度上昇は避けるべきである。好ましい実施態様においては、段階0の物質は室温(25℃)に近い温度において生成する。一般に、この温度よりも著しく高い温度まで加熱すると、段階 I の物質が生成する。調製時の温度は、シリカゲルを、例えば、金属製のトレー上に広げるか、又はシリカゲルをかき混ぜるか、あるいは反応容器を冷却することによって調整してもよい。しかしながら、反応温度は、1族金属が液体状態を保持することによってシリカゲルに吸収されるように調整されるべきである。段階0の物質は、室温で保存すると経時的にゆっくりと段階 I の物質へ変化することに注意すべきである。もっとも、以下に説明するように、加熱しない限り、段階 II の物質まで変化することはない。
【0029】
段階0の物質は、水と発熱的に反応する光沢のある黒色粉末である。段階0の物質のDSCは、アルカリ金属がシリカゲル中に中性状態で存在することを示す。段階0の物質の正確な組成は明確には知られていないが、該物質の融点が、最も一般的な1族金属合金(例えば、NaK)の融点よりも低く、このことは、1族金属合金の小さな粒子がシリカゲルの細孔内に存在することを示すものである。
【0030】
図4は、NaK合金が室温でシリカゲル中に吸収されて緩やかで光沢のある黒色粉末である段階0の物質が生成することを示す。図4に示すように、フラスコ(A)は、混合直後のシリカゲルであって、NaKで被覆されたシリカゲルを保有する。フラスコ(B)は、フラスコ(A)内の試料を数分間振盪させて得られた最終的な緩やかな黒色物質を保有する。該物質は明らかに均質であって、容易に注ぎ移すことができる黒色粉末である。
【0031】
段階0の物質は、本発明による1族金属/シリカゲル組成物の内で最も反応性の高い物質である。低融点を有するアルカリ金属又はその合金をシリカゲルへ添加することによって、著しい発熱を伴うことなく段階0の物質が生成するので、該物質は、アルカリ金属の有する還元能の大部分を保持する。該物質は空気や湿気に対して反応性を示すので、該物質の取り扱いには注意すべきであり、又、該物質を多量の空気や湿気と接触させてはならない。このような制限にもかかわらず、段階0の物質は高還元性クロマトグラフィーにおいて有用である。本発明による1族金属/シリカゲル組成物の充填カラムの多孔性によって、親金属又は親合金によっては得られないような還元性環境がもたらされる。後述するように、このことに起因して、段階0の物質は、水から水素を製造するために使用することができるだけでなく、純粋なアルカリ金属の場合のようにして、多数の還元性有機化合物に対する還元剤として使用することができる。
【0032】
段階 I の物質
本発明による段階 I の物質は、液状の1族金属とシリカゲルを、該液状金属シリカゲルの細孔内へ吸収されるのに十分な発熱条件下で混合させることによって得られる生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物である。段階 I で製造される1族金属/シリカゲル組成物は乾燥Oとは反応しない。段階 I の物質においては、アルカリ金属又はその合金は、バルク金属の特性(例えば、融解性)を失った形態へ変換される。活性な還元性物質が分散された骨組の大部分はSiOである。段階 I の物質に関する対分布関数実験によれば、結晶化度を伴わない支配的なケイ素と酸素のピークが示されており、このことは、アルカリ金属がイオン化されてアルカリカチオンを形成すると共に、放出された電子はシリカの骨組み又は空隙内へ移動したことを示すものである。対分布関数に関しては、次の文献を参照されたい:ビリンゲら、Chem. Commun. 、2004年、第749頁〜第760頁。
【0033】
本発明による段階 I の物質は、液状の1族金属を不活性雰囲気中において、該金属の融点又はそれよりも幾分高い温度でシリカゲルと混合して該金属をシリカゲルの細孔内へ吸収させることによって調製してもよい。1族金属は、先に説明した別の方法の内の1つの方法、例えば、該金属を蒸気として添加する方法によってシリカゲルと混合してもよい。次いでこの混合物を1族金属の融点よりも幾分高い温度(即ち、約70℃〜150℃)に保持して数分間〜数時間にわたる撹拌処理に付する。一般的に言えば、反応時間が高いほど、原料の転化時間はより短くなる。段階 I の物質を生成する反応は穏やかな発熱反応である。この反応を大規模に実施する場合には、発生する熱を除去する金属製パン(pan)内に収容したシリカゲルへ液状の金属又は合金を添加する態様が好ましい。この反応によってアルカリ金属−シリカゲル格子が形成される。この反応の発熱特性に起因して、段階 I の物質は段階0の物質とは異なったものとなる。発熱曲線よりも高い温度に加熱する場合には、段階 I の物質を、加熱温度に応じて、段階 II の物質又は段階 III の物質へ転化されることができる。
【0034】
低融点を有する1族金属を、か焼処理と脱ガス処理に付して閉鎖環境下(例えば、三角フラスコ内)に存在させたシリカゲルへ添加する場合には、アルカリ金属はシリカゲル又はその欠陥サイトとの間の発熱反応に起因して、反応系は加温される。これによって、段階0の物質と段階 I の物質の混合物が形成される。段階 I の物質の最も簡単で直接的な調製法は、段階0の物質を不活性雰囲気下において140℃で一夜加熱する方法である。この場合、別の加熱温度と加熱時間を採用してもよいが、段階 II の物質の生成をもたらす過熱を回避するように注意すべきである。均質な生成物を保証するためには、加熱過程中に撹拌手段を採用すべきである。
【0035】
段階 I の物質は非晶質の光沢がある黒色粉末である。該粉末は乾燥空気と直ちに反応することはないが、水とは発熱的に反応する。段階 I の物質のDSCは、シリカゲル中に1族金属がほとんど又は全く存在しないことを示す。段階 I の物質と段階0の物質の相違点は、前者が乾燥空気中で取り扱うことができ、しかも通常の実験室等の空気中においては発火や急激な分解を伴わずに迅速に移動させることができることである。段階 I の物質は、乾燥酸素と反応する段階0物質とは対照的に、乾燥酸素雰囲気中において数時間〜数日間保存しても変化せず、液状の水と反応して、調製直後の当該物質の場合と同量の水素ガスを発生する。
【0036】
段階 I の物質は反応性化学の分野において活性還元剤として多くの用途を有しており、以下に説明する段階 II の物質よりも優れた還元剤であり、又、バルク還元及びクトマトグラフ還元における試薬として選択することができる。
【0037】
段階 II の物質
本発明による段階 II の物質は、液状の1族金属とシリカゲルを、該金属若しくはその合金をシリカゲルの細孔内へ吸収されるのに十分な発熱条件下で混合して得られる混合物を約215℃〜約400℃まで加熱することによって調製される生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物である。例えば、閉鎖容器内において、ナトリウムとシリカゲルの混合物中のナトリウムを溶融させ、該混合物を400℃で一夜加熱することによってナトリウムをシリカゲルの細孔中へ完全に包含させて段階 II のナトリウム/シリカゲル組成物を調製することができる。段階 II のナトリウム含有物質に関する予備的な対分布関数実験によれば、ナノサイズの結晶性ケイ化ナトリウム(化学量論組成がNaSiである化合物、例えば、NaSi)がシリカゲル組成物中に存在し、ナトリウム金属は存在しないことが判明した。
【0038】
約215℃〜約400℃の温度へ加熱する過程において、発熱反応が開始し、段階 II の物質が形成される。段階 I の物質は段階 II の物質へ変換される。全ての1族金属はシリカゲル中へ取り込まれ、得られる物質の空気に対する感受性は低下する。より高い融点を有する1族金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)は、段階0又は段階 I の物質を生成する温度においては、一般的にはシリカゲルを湿潤化させない。ナトリウム、カリウム及び他の融点の高い1族金属は段階 II の物質を形成させる。この反応によってアルカリ金属−シリカゲル格子(例えば、上記の例におけるケイ化ナトリウム)が形成される。段階 I の物質を加熱することによって調製される段階 II の物質の安定性と反応性は、より融点の高いアルカリ金属(例えば、ナトリウム又はカリウム)とシリカゲル混合物を加熱することによって得られる物質の場合と類似する。
【0039】
前述のように、段階 II の物質は、段階0の物質又は段階 I の物質を不活性雰囲気下においてゆっくりと又は段階的に400℃まで加熱することによって調製することができる。より融点の高いアルカリ金属であるナトリウム及びカリウムの場合には、か焼処理に付した後、脱ガス処理に付したシリカゲルの存在下で、該金属をその融点よりも高い温度まで加熱した後、時々振盪させながら400℃までゆっくりと加熱する。一般的な加熱過程においては、パイレックス(登録商標)ガラス製三角フラスコ内に密封した製造原料を150℃、200℃、250℃及び300℃においてそれぞれ1〜3時間加熱した後、400℃で一夜加熱する。この場合、各温度での加熱処理が終了した時点において、フラスコの内容物を激しく振盪させることによって、該内容物の過度の凝集を防止する。得られる生成物は緩やかに凝集した黒色粉末であって、均一性を維持した状態で容易に注ぎ出すことができる。昇温速度が過度に速すぎるか、又は溶融金属とシリカゲルが激しく混合されない場合には、生成物は手動による粉砕処理を必要とする凝集塊を含むようになる。
【0040】
純粋なナトリウムとシリカゲルの混合物の示差走査熱分析(DSC)曲線を図5に示す。図5は、Na(2.4mg)とシリカゲル(3.9mg)との混合物のDSC曲線を示す。反応の全発熱量は約−90±10kJ/モルNaである。98℃における初期の曲線(510)に現れるNaの溶融時の吸熱量(113J/g Na)は、発熱ピークとして現れる反復曲線には存在しないことに留意すべきである。このことは、Naが最初の加熱過程においてシリカゲルと反応してケイ化物(NaSi)を生成したことを示すものである。ナトリウムとシリカゲルとの段階 II における反応によって、約90kJ/モルNaの熱が発生する。98℃における初期曲線に現れるNa金属の溶融時の吸熱量は、その後の過程においては存在せず、このことは、該金属がシリカゲルと反応したことを示す。反応生成物は確実に同定されたものではないが、Naとシリカゲルは、使用したシリカゲルの細孔(孔径:15nm)内にケイ化ナトリウム(全組成:NaSi)を生成すると共に、ケイ酸ナトリウムを生成すると考えられる。X線粉末回折線によれば、該生成物は依然として非晶質である。
【0041】
段階 II の物質は、非晶質の光沢のない黒色粉末である。製造された段階 II の1族金属/シリカゲル組成物は乾燥O又は乾燥空気とは反応しない。段階 II の物質は乾燥空気含有雰囲気中における取り扱いが容易である。緩やかに凝集した黒色粉末である段階 II の物質は、開放した周囲環境下においても取り扱いが容易であり、又、閉鎖容器内のような低湿度条件下で保存しても経時的に変化しない。実際は、段階 II の物質は、本発明による1族金属/シリカゲル組成物の中では最も反応性が低い。しかしながら、該物質は水とは急速に反応してほぼ定量的に純粋な水素ガスを生成する。
【0042】
図6は、本発明による段階 II のナトリウム/シリカゲル組成物の試料に水を添加した後の水素を含むバルーンの膨張を示す。段階 II の組成物は約30〜40重量%の金属を含有する。水を添加する前の状態を表す画像(A)に示すように、バルーンは乾燥粉末を真空下で保有する。画像(B)は、水を添加してから2分間経過後のバルーンを示す。この時点では、還元されたシリカゲルと水は泡立っている。p=1気圧で25℃の条件下においては、1グラムの粉末から約170cmのHが発生する。この物質は、簡便で可搬性のクリーン水素源であり、該水素源から発生するガス状生成物は水素と水蒸気だけである。
【0043】
段階 II の物質は、本発明による1族金属/シリカゲル組成物の中で最も反応性の低い物質であるが、該物質は不動化(passive)還元剤として反応性化学の分野及び水素製造の分野において多くの用途を有する。段階 II の物質は空気中の湿気を吸収してゆっくりと分解するが、発火せず、通常の実験室等の空気中において容易に搬送させることができる。この物質の還元能は他の段階の物質のように強くはないが、アルカリ金属の有する強力な還元力を必要としない多くの還元反応において有用である。例えば、段階 II の物質は、プロトン源の存在下において、アントラセンをジヒドロアントラセンへ還元させるが、この反応は、段階 I の物質を用いる場合に比べて遅い。段階 II の物質は周囲空気に対して感受性がないために、該物質は、水との反応によって水素を製造する場合の好ましい反応試薬となる。
【0044】
段階 III の物質
本発明による段階 III の物質は、液状の1族金属とシリカゲルを、該金属がシリカゲルの細孔内に吸収されるのに十分な発熱条件下で混合して得られる混合物を約400℃よりも高い温度(好ましくは、約500℃よりも高い温度)まで加熱することによって調製される生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物である。製造される段階 III の1族金属/シリカゲル組成物は乾燥Oとは反応しない。
【0045】
本発明による他の1族金属/シリカゲル組成物を調製する場合のように、段階 III の物質を製造するためには、1族金属とシリカゲルを不活性雰囲気下又は真空下で混合させる。好ましい製造法においては、上記混合物を約215℃〜400℃まで加熱し(この処理によって段階 II の物質が生成する)、次いで、数時間かけて約400℃〜600℃までゆっくりと加熱する。温度が400℃よりも高くなると、急激な発熱反応が発生する。この反応によって、ケイ素分に富むケイ化物を含有するアルカリ金属−シリカゲル生成物が形成される。段階 III の物質は、乾燥空気と反応しない非晶質の光沢のない黒色粉末である。この反応を段階 II 又は III まで加熱によっておこなう場合には、反応の発熱特性に起因して、大規模な製造を実施するに際して熱反応が制御できなくなる事態を防止するために発生する熱を除去する手段が必要である。さらに、混合が効率的におこなわれない場合には、加熱によってアルカリ金属の蒸気が発生する。従って、当業者には理解されるように、大規模な製造の場合には密閉系が必要となる。
【0046】
段階 III の物質は反応性化学の分野におけるドーピング物質として多くの用途を有しており、又、水素の製造分野においても有用である。
【0047】
前述のように、本発明による種々の段階の1族金属/シリカゲル組成物は、各々の逐次的段階に対して連続的に調製してもよい。例えば、モル比が1:1のナトリウムとカリウムの液状物を25℃でシリカゲルへ添加することによってさらさらした黒色粉末(段階0の物質)を形成させる。この場合、密閉容器内において該物質を400℃で一夜加熱して反応をおこなうことによって低還元性粉末(段階 II の物質)が得られる。さらに、400℃よりも高い温度で加熱して反応をおこなうことによって段階 III の物質が調製される。図1に示す示差走査熱分析(DSC)曲線は、NaKとシリカゲルとの発熱反応が少なくとも2段階で起こることを示す。図1は、1:1NaK/シリカゲル試料(8.9mg)のDSC曲線を示す。図中、上部の曲線(110)は新鮮な室温での試料に関するものであり、下部の曲線(120)は、冷却した試料を再分析した結果を示すものである。挿入図(130)は、添加した金属の約50%に相当する溶融吸熱量を示す第一の曲線の低温領域の拡大図である。発熱過程に対するΔHの合計値は、金属1モルあたり−100kJ〜−125kJに相当する。
【0048】
図2は、NaKと等量のシリカゲルを用いて調製した1族金属/シリカゲル組成物に関する類似のDSC曲線を示す。即ち、図2は、1:1NaK/シリカゲル試料(5.7mg)に関するDSC曲線を示す。図中、上部の曲線(210)は新鮮な室温での試料に関するものであり、下部の曲線(220)は、冷却した試料を再分析した結果を示すものである。挿入図(230)は、添加した金属の約10%に相当する溶融吸熱量を示す第一の曲線の低温領域の拡大図である。発熱過程に対するΔHの合計値は、金属1モルあたり−75kJ〜−100kJに相当する。段階0の物質は、室温又は室温に近い温度において、著しい発熱を伴うことなく生成する。段階 II の物質は215℃〜400℃での加熱によって自然に生成し、又、段階 III の物質は400℃〜600℃での加熱によって得られる最終生成物である。
【0049】
1族金属/シリカゲル組成物の反応化学
本発明による全ての1族金属/シリカゲル組成物は水と発熱的に反応することによって、1族金属に基づいて実質上定量的な収率で水素を生成する。即ち、都合のよいことには、本発明による組成物は1族金属の反応性を保持する。段階0の物質は乾燥空気中において手短に取り扱うことができるが、該物質は酸素とはゆっくりと反応し、又、湿気とは急速に反応する。これとは対照的に、段階 I、 II 及びIII の1族金属/シリカゲル組成物は乾燥酸素に対しては全く反応性を示さない。
【0050】
本発明による段階 I、 II 及びIII の1族金属/シリカゲル組成物は比較的無毒性であり、又、激しい反応性を示さないが、強い塩基性を示し、水と反応してアルカリ金属水酸化物を生成する。金属の含有量が高くなると(約35%又はそれよりも高い濃度)、水との反応生成物は、塩基性の金属ケイ酸塩として完全に可溶性となる。
【0051】
本発明による各段階の1族金属/シリカゲル組成物は、アルカリ金属及びその合金の場合に知られている方法と同様にして、多数の還元性有機物質に対して反応性を示す還元剤として使用してもよい。例えば、1族金属/シリカゲル組成物は、所謂バーチ(Birch)還元において一般的におこなわれている芳香族化合物を該化合物のラジカルアニオンへ還元するために使用してもよい(バーチ還元においては、一般的にはアルカリ金属−アンモニア溶液が使用されている)。バーチ還元は、液体アンモニア中のアルカリ金属による芳香族化合物の一般的な還元法である。理論的観点と製造的観点からのバーチ還元についてはいくつかの概説において議論されている。例えば、下記の文献を参照されたい:G.W.ワット、Chem. Rev. 、第46巻、第317頁(1950年);A.J.バーチ、Quart. Rev. (ロンドン)、第4巻、第69頁(1950年);A.J.バーチ及びH.F.スミス、Quart. Rev. (ロンドン)、第12巻、第17頁(1958年);C.D.グッチェ及びH.H.ペーター、Org. Syntheses、Coll. 、第4巻、第887頁(1963年)。本発明による1族金属/シリカゲル組成物は、バーチ還元におけるナトリウムの代わりに容易に使用することができる。実施例10においては、本発明による1族金属/シリカゲル組成物を用いたバーチ還元について説明する。
【0052】
同様にして、激しい還元反応、例えば、ハロゲン化有機化合物(例えば、PCB等)のウルツ(Wurtz)還元は制御された条件下でおこなってもよい。ウルツ還元は、2モルの有機ハロゲン化物(RX)を2モルのナトリウムを反応させることによる2個の有機ラジカル(R)のカップリングである:
【化1】

この反応に関しては、次の文献を参照されたい:A.ウルツ、Ann. Chim. Phys. [3]、第44巻、第275頁(1855年);Ann. 、第96巻、第364頁(1855年);J.L.バルデル、Comp. Organometal. Chem. 、第1巻、第52頁(1982年);W.E.リンドセル、Comp. Organometal. Chem. 、第1巻、第193頁(1982年);B.J.ウェイクフィールド、Comp. Organometal. Chem. 、第7巻、第45頁(1988年);D.C.ビリントン、Comp. Org. Syn. 、第3巻、第413頁〜第423頁(1991年)。本発明による1族金属/シリカゲル組成物は、ウルツ反応やその他の脱ハロゲン化反応におけるナトリウムの代わりに容易に使用することができる。本発明による組成物は、無機ハロゲン化物の脱ハロゲン化にも使用できる。実施例11においては、本発明による1族金属/シリカゲル組成物を用いたウルツ還元について説明する。
【0053】
石油の脱硫反応のように工業的に有用な反応も、本発明による1族金属/シリカゲル組成物を用いて実施してもよい。例えば、本発明による組成物は、フェニルスルフィドからの脱硫によってビフェニルを製造する改良法において使用してもよい。この改良法には次の反応をおこなうことが含まれる(式中、M-SGは本発明による1族金属/シリカゲル組成物を示す):
【化2】

【0054】
本発明による1族金属/シリカゲル組成物を使用することにより、該組成物の安全な取り扱いに起因して、対応するアルカリ金属又はその合金の場合に比べて安全な条件下での前記のようなアルカリ金属反応の実施が可能となる。又、該組成物を使用することにより、1族金属のみを用いる対応する反応の場合よりも、一般に高い収率で生成物が得られる。
【0055】
段階 I の物質、例えば、段階 I のNaK/シリカゲル組成物は調製が非常に容易であって、1族の親金属の大部分の還元能を維持しているので、強力で簡便な還元剤として使用することができる。多種多様な有機化合物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた溶液を、段階 I の粉末を充填した小さなガラス製カラム中を通過させることによって、該有機化合物を還元することができる。あるいは、該有機化合物のTHF溶液を段階 I の物質と共に撹拌することによってバッチ反応も簡単に実施することができる。例えば、以下に示すように、ベンゾフェノン(1)はラジカルアニオン(ケチル)に還元され、ベンジルクロリド(2)はウルツ還元によってビベンジル(3)を生成し、又、ジベンゾチオフェン(4)はラジカルアニオンに還元されて最終的には出発物質を含有しない生成物の混合物を生成する。その他の反応には、ジクロロベンゼンから対応するカップリング生成物が得られるウルツ還元、及びアントラセンからジヒドロアントラセンが得られるバーチ還元等が含まれる。
【0056】
【化3】

【0057】
前述のように、段階 II のナトリウム/シリカゲル組成物は、段階 I の物質に比べて、空気中での取り扱いが容易である。該組成物と水との反応による水素の製造は定量的であり、又、該組成物は、段階 I の物質に関連して先に説明した多数の有機化合物の還元反応において使用することができる。例えば、該組成物はベンゾフェノン(1)をラジカルアニオンへ還元し、又、ベンジルクロリド(2)をビベンジル(3)に変換させる。段階 I 及びII の物質を用いるその他の多数の反応が可能である。上記の代表的な還元反応は、本発明による1族金属/シリカゲル組成物は芳香族化合物を還元してラジカルアニオン若しくはジアニオンを生成すること、C−S結合を切断すること、及び芳香族クロリドを完全に脱ハロゲン化することを示す。従って、この種の物質は脱ハロゲン化によるPCBの分解反応及び脱硫反応に利用することができる。1族金属/シリカゲル組成物の強力な還元特性に起因して、従来からNa-K又はアルカリ金属-アンモニア溶液を用いて還元されている有機化合物及び無機化合物の還元のために、該組成物を充填したクロマトグラフカラムを使用することが可能となる。
【0058】
本発明による4種の段階の全ての還元シリカゲル組成物の主要な用途は、潜在的燃料貯蔵及び自動車用燃料電池に必要な水素ガスの製造にある。例えば、大量の還元シリカゲル粉末は、保持タンク内のコンベヤートレー(conveyor tray)に貯蔵することができる。水の添加によって、純粋な水素ガスと水蒸気が発生する。全ての段階の物質は、使用したアルカリ金属から製造される水素をほぼ定量的に発生する。この水素ガスを使用して自動車用燃料電池を作動させる。例えば、1族金属/シリカゲル組成物は保持タンク内のコンベヤートレーに貯蔵することができる。次いで、水を添加して該組成物と混合することによって水素を発生させる。該水素は抽出して圧縮化又は加圧化することができる。圧縮化水素は自動車用燃料電池に充填される。この時点での使用済み粉末はシリカゲル又は可溶化金属ケイ酸塩であり、これらの粉末は新たな1族金属を用いる再活性化処理に付すか、又は別の目的に使用される。
【0059】
本発明の別の実施態様は、1族金属のこぼれ屑及び消費操作後の残留類似物を清掃するためのシリカゲルの使用に関する。この実施態様は、本発明による組成物の調製に関連して言及したシリカゲルの吸着性を利用するものである。実施例8において説明するように、グローブボックス内でセシウム金属を用いる実験をおこなった際に、数グラムのセシウムがグローブボックス内の床にこぼれた。セシウムのこぼれ屑は「キムワイプ・ティッシュ」を用いて拭き取ったが、該汚染ティッシュは、ヘリウムで満たしたグローブボックスから取り出す際に発火するおそれがあった。このため、空気中で発火する前に該ボックスから安全な場所へ移動させるのに十分に安定な状態を維持できるようにするために、シリカゲルを用いてセシウムを吸収させることを試みた。このことから、金属若しくはその他の物質のこぼれ屑、特に液体状若しくは溶融して液状化するアルカリ金属のような反応性金属のこぼれ屑を清掃するためにシリカゲルを使用する技術がもたらされた。融点の高いアルカリ金属を取り扱う場合には、掃除操作が実行できるように該金属を加熱によって液体状態にしなければならない。
【0060】
アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム等)を用いて活性物質を供給する組成物、例えば、脱臭剤組成物中の芳香性成分を蒸発させる組成物が米国特許出願第10/248,765号明細書(「活性物質の供給系」)に記載されており、該明細書も本明細書の一部を成すものである。本発明による段階 I 、II 及びIII の組成物はこれらの安定性に起因して、この種の活性成分(例えば、芳香性成分等)と適合性がある。さらに別の実施態様においては、本発明は、本発明による1族金属/シリカゲル組成物を含有するこの種の組成物に関する。例えば、脱臭剤組成物は、本発明による還元シリカゲル約5〜15重量%、芳香性成分10〜30重量%並びに中和剤及び/又は有機酸約75重量%まで含有する。芳香性成分のほかに、脱臭剤組成物は別の活性成分、例えば、消毒剤、界面活性剤及び着色剤若しくは染料を含有していてもよい。1族金属/シリカゲル組成物と水との反応によって、芳香性成分又はその他の活性成分は分配される。
【実施例】
【0061】
実施例1
例示的なシリカゲルとして、グレース-デビソン社製の「ダビシル」(30〜50メッシュ)を使用した。該シリカゲルはさらさらした粉末であって、99+パーセントのSiOである。しかしながら、該粉末は多量のガス状物質(水蒸気及び空気)を含有した。この種のガス状物質を除去するために、該シリカゲルを排気可能な三角フラスコ内において、真空下で加熱した。加熱手段として、最初は熱風ドライヤーを使用し、次いでトーチを使用した。加熱温度は約300℃に達した。前述のように、シリカゲルの脱ガス処理は、空気中において600℃又はそれよりも高温に加熱するか焼処理によってより容易におこなうことができる。この場合、活性サイトの不動態化(passivation)を伴う。
【0062】
実施例2
本発明による1族金属/シリカゲル組成物の1つの重要な特徴は、水の添加によって、純粋な水素ガスを定量的に生成する特性を有することである。1族金属/シリカゲル組成物の還元力は、排気処理に付した該組成物の試料へ水を添加したときに発生する水素を、改造テプラーポンプを用いて捕集することによって決定した。還元力は、等量の水素を発生させるために使用したアルカリ金属又はその合金の量(重量%)で定義される。このことは、既知量の試料を脱ガス処理に付した水と反応させたときに生成する水素を捕集することによって証明した。水素は、水銀を充填した改造テプラーポンプを使用し、較正したピペット内へ捕集した。水素の生成量は、一般に金属のみによって生成される量に等しい。このような分析は、全ての段階の還元シリカゲル試料に対しておこなった。例えば、NaKを40重量%含有する段階 I のシリカゲル試料が、該量のNaKのみによって生成される水素の量と同量の水素を生成するならば、還元力は40%となる。生成するアルカリ金属水酸化物の全量は、HClの添加と水酸化ナトリウムを用いる逆滴定によって決定した。滴定と還元力から得られるアルカリ金属の全百分率の間の差は、SiOH基と他の水素源の濃度の尺度となり得る。アルカリ金属は、試料の調製時にこの種の基と反応して水素を発生させる。この反応は、アルカリ金属又はその合金とシリカゲルとの混合時に生成する検出可能な量のガスの起源となる。
【0063】
実施例3
ステンレス鋼製のパンを使用し、内部にヘリウムを満たしたグローブボックス内において、脱ガス処理とか焼処理に付したシリカゲル(14g)を、パスツールピペットから供給されたNaK(9.7g)と混合することによって段階0の物質を調製した。この場合、NaKは、シリカゲルで覆われたパンの種々の領域へ滴下することによって添加した。合金の滴下によってシリカゲルは湿潤化され、該混合物をスパチュラで押しつぶすことによって合金のシリカゲルへの混入を促進した。生成物は温まらず、非常に光沢のある表面を有した。このことは、生成物の表面上に遊離の金属が存在することを示すものであり、NaKはシリカゲルの細孔中へ完全には吸収されなかった。生成物の試料(3.6mg)をDSC用パンに入れて該熱分析をおこなった。DSCは約−55℃〜60℃の温度範囲に10分間保持した後、これを繰り返した。次いで、試料を450℃まで2回加熱した。溶融による吸熱量は、金属1gあたり約135Jであった。この吸熱量は、添加した金属に基づいて予測された値よりも幾分高い値である。秤量した質量は予想値とは一致せず、濃度に不均一性がみられた。試料を60℃まで加熱して10分間保持し、次いでこれを繰り返すことによって、ΔH溶融=61.4J/g 金属の値が得られた。このことは、か焼効果が既にもたらされて試料が次の段階の物質に変換されたことを示す。試料の還元力は、排気処理に付した試料へ水を添加して発生する水素を改造テプラーポンプ内へ捕集することによって決定した。この還元力は、同量の水素を生成するのに必要な1族金属の量として定義される。同じ試料(21mg)からのHの発生量は37%の還元力をもたらした。この値は、所定の金属濃度(40重量%)に一致する。
【0064】
実施例4
段階0の物質から段階 I の物質への変換は、試料をエージング(aging)処理又は均一な加熱処理に付すことによっておこなうことができる。段階0の物質を真空下又は不活性雰囲気下において、撹拌しながら約140℃で一夜加熱することによって段階 I の物質が生成した。DSCによれば、この過程において溶融吸熱量はほとんど又は全く認められなかった(図7参照)。段階0の物質は、粒径が小さいために、バルクの立ち上がり温度(−13℃)ではなくて、−25℃で溶融を開始した。段階0の物質のΔH(117J/g 金属)に比べて段階 I の物質のΔHは小さく(9J/g 金属)、このことは、当該金属の大部分がアルカリ金属カチオンへ変換されたことを示すものである。シリカゲル粒子の細孔中又は表面上に遊離のアルカリ金属が明らかに存在しないことに起因して、この段階においては、乾燥空気中での酸化は全くおこなわれない。
【0065】
実施例5
段階 II の物質の調製は、段階0及び段階 I の物質を400℃まで連続的に加熱するか、又は高融点アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)を使用することによりおこなうことができる。脱ガス処理とか焼処理に付したシリカゲル13.5gを秤量し、これにナトリウム金属7.3gを添加した。このシリカゲルを減圧下(3.5×10−5torr)で加熱することによる脱ガス処理に付した。シリカゲルとナトリウムとの混合物を150℃で1時間加熱した後、激しく撹拌し、次いで200℃で1.5時間加熱した。この場合、約30分ごとに激しく撹拌した。最後に、得られた物質を300℃で一夜加熱した。緩く凝集してさらさらした粉末が形成された。400℃まで昇温させ、該粉末をさらに3時間加熱した。
【0066】
実施例6
シリカゲル中にNaKを包含させた物質を調製するために、600℃でのか焼処理に付したシリカゲル(3.00g)を、NaK(3.012g)を収容した三角フラスコ内へ入れた。NaK合金は、Na(5.562g)とK(9.433g)から調製した。得られたマスは、約50ミリモルのNaと約50ミリモルのKから成るNaK及び50ミリモルのSiOから構成された。従って、試料中の金属とSiとのモル比は2:1である。室温では、このシリカゲルは黒色化を開始し、数分以内に均一で光沢のある流動性黒色粉末に変化した。この場合、発熱量は検出されなかった。得られた物質から、H分析用試料(22.6mg)を採取した。Hの発生は、T=296.6K及びPatm=738.9torr の条件下でおこなった。353マイクロモルの金属に相当するH(176.5マイクロモル)が発生した。このHの発生量はシリカゲル中の金属の濃度(48.4重量%)に相当する(所定の初期添加量:50重量%)。得られた試料を制御された条件下で加熱することによって、段階 I 及び II の物質を調製した。しかしながら、該物質の調製中にフラスコを加熱することによって、強い発熱反応が開始して金属が突沸し、フラスコの内部は該金属によって被覆された。
【0067】
実施例7
種々の量の金属+シリカゲルを用いることによって、アルカリ金属の濃度が20〜50重量%である多数の組成物を調製した。Naとシリカゲルを混合して調製した1つの試料は45.6%の還元力を示した。還元力は、一般に、添加した金属量に基づいて得られる最大値の94%又はそれよりも高い値である。残余の2〜6%は、アルカリ金属と欠陥サイトとの反応に相当する。種々の処置(例えば、酸素への暴露又は加熱等)に付した後の還元力を測定することによって、当該試料の安定性に関する情報を得た。この試料の還元力は、48時間後には僅かに44%まで低下するに過ぎなかった。この場合の還元力の全喪失量が1.6%であるということは、湿分の不存在下での酸素との反応がほとんど発生しなかったことを示す。室温又はこれに近い温度で液体である種々の組成比の他のNa−K合金を使用することも可能である。例えば、NaKを用いて調製した還元シリカは、実施例5で得られた試料と類似の結果を示した。この試料は、ヘリウムで満たしたグローブボックス内の三角フラスコ内において、シリカゲル8412mgをNaK433mgに添加することによって調製した。NaKとシリカゲルの質量比を1:1にする2種の別の試料も調製した。さらに、NaKとシリカゲルの質量比を1:4にする試料も調製した。これらの全ての試料は、さらさらした状態の黒色粉末である段階 I の物質を形成した。該粉末は乾燥空気中において安定であった。又、これらの試料をグローブボックス内において長期間貯蔵したところ、特性に関して検知できる変化は認められなかった。
【0068】
実施例8
実験に際して、ヘリウムで満たしたグローブボックス内において液状Csのこぼれ液が生じた。この事故に起因して、アルカリ金属の有効な掃除法が見出された。Csのこぼれ液へシリカゲルを注ぎかけ、キムワイプ(Kimwipe)を用いてかき混ぜた。Cs金属の全てのこぼれ液はシリカゲル中へ吸収され、シリカゲルは黒色に変化した。従って、シリカゲルは、融点の低いアルカリ金属及び共晶合金(例えば、NaK等)に対する理想的な掃除材料である。
【0069】
実施例9
図3に示すように、純粋なセシウムの挙動はNaK合金の挙動に類似する。図3において、DSCダイヤグラムは、1:1セシウム/シリカゲル試料に関する記録曲線を示す。この場合、上部の曲線(310)は新鮮な室温での試料に関するものであり、下部の曲線(320)は、試料を冷却した後、分析を繰り返したときの曲線である。発熱過程に対するΔHの総和は約−120kJ/mol 金属に相当した。溶融発熱が不存在のとき、セシウム金属は発熱する。しかしながら、50重量%のCsはシリカ1モルあたり0.5モルよりも少ないCsを含有するので、DSC実験においては、Cs金属の溶融吸熱は観測されなかった。セシウムを添加した4種の試料を調製した。2種の試料は蒸気相添加によって調製し、1種の試料はシリカゲルへのセシウム金属の直接添加によって調製した。これらの3種の試料はさらさらした粉末として調製された。蒸気相添加による2種の試料は室温及び40℃においてそれぞれ調製した。蒸気相添加によって20重量%未満のセシウムを添加することによって、青色の還元シリカが形成された。セシウムの濃度がこれよりも高くなると、さらさらした黒色粉末が得られた。段階 I の物質を加熱することによって、段階 II 及び/又は段階 III の還元されたCs含有シリカゲルが発熱を伴って形成された。例えば、図3は、段階 I のCs-シリカゲル(1:1)を650℃まで加熱した後、冷却した試料を再加熱したDSC実験の結果を示すが、この図から明らかなように、最初の加熱によって発熱反応がもたらされるが、このような発熱反応は再加熱した試料の場合には見られない。このことは、段階 I の物質から段階 III の物質への変換はおこなわれるが、段階 III の物質のさらなる有意な反応はおこらないことを示すものである。
【0070】
実施例10
段階0から段階 II までの全てのアルカリ金属-シリカゲル粉末は、バーチ還元によって、アントラセンをラジカルアニオンへ還元させることができる。この還元は、溶液が濃い青色を示すことによって観測され、又、この還元反応は、生成物の光学的吸収スペルトルを得ることによって証明された(図8参照)。図8は、本発明による段階 I の物質(M-SG)によるアントラセンの還元によって得られるアントラセンラジカルアニオンの光学的吸収スペクトルを示す。このスペクトルは、該アニオンの既知のスペクトルと実質上同一である。このラジカルアニオンは、溶液中で長時間にわたって存続するのに十分安定である。この反応は、種々の反応形式、例えば、バッチ反応、積層クロマトグラフィーカラム(市販のシリカゲル上に積層させたアルカリ金属-シリカゲル)及び混合クロマトグラフィーカラム(市販のシリカゲルと均一に混合したアルカリ金属-シリカゲル;一般的な混合比は50:50である)等によって実施することができる。積層クロマトグラフィーカラム又は混合床クロマトグラフィーをアルカリ金属-シリカゲルと併用することによりアントラセンを還元させ、生成するラジカルアニオンをその保留水(retained water)によってプロトン化させることができる。予想されるように、生成物は9, 10 - ジヒドロアントラセンである。上記の反応は次の反応式によって表される:
【0071】
【化4】

【0072】
図9は、本発明による1族金属/シリカゲル組成物を含む混合床カラムをアントラセンのTHF溶液を通過させることによっておこなわれたアントラセンのバーチ還元生成物のH-NMRスペクトルを示す。段階 I の物質を用いたこの場合の所望の生成物の収率は92%であり、又、全溶離時間は2分未満であった。別の実験においては、100%の収率が得られた。これらの結果は、ラジカルアニオンを容易に形成する反応体に対するバーチ還元の効率を例証するものである。t−ブタノールによってプロトン化されたバルクの反応生成物のGC-MS分析によれば、主としてアントラセンと9, 10−ジヒドロアントラセンのみが示された。段階 I の物質の代わりに段階 II の物質を用いたカラムクロマトグラフィーによる生成物の収率が低くなることに注目すべきであり、このことは、この反応性の低い還元シリカゲルを用いる還元速度が遅いことを示す。図中に示すデータは、段階 I の物質、即ち、NaK/シリカゲル(NaKの含有量:約30〜40重量%)を用いた反応に関するものである。
【0073】
実施例11
アルカリ金属と有機化合物との最も古い反応の内の一つはウルツ反応である。この反応においては、クロロカーボンの脱ハロゲン化によってカップリングがもたらされて新たな炭素-炭素結合が形成される。しかしながら、塊状のアルカリ金属と純粋なクロロカーボンを使用する場合には、反応は爆発的におこなわれて危険である。以下に示すように、このカップリング反応は、10mlのTHFにベンジルクロリドを約130mg溶解させた
溶液を使用し、段階 I の物質であるNaK/シリカゲル(NaKの含有量:約30〜40重量%)を約1.3g用いる還元によっておこなった。しかしながら、小さなカラムを急速に通過させる場合には、部分的な還元(約30%)がもたらされた。しかしながら、段階 I 及び段階0の物質であるNaK/シリカゲル(NaKの含有量:約30〜40重量%)を用いる別の実験においては、反応液のカラム中の急速な通過によって、完全で100%の収率がもたらされた。従って、反応体の所望の生成物への転化率はカラムの通過時間によって変化する。バルク還元は、段階 I の物質であるNaK/シリカゲルとの撹拌を3時間おこなった後で発生する。GC-MSとH-NMRによって検出された唯一の生成物はビベンジルであった(図10A〜10C参照)。図10A〜10Cは、バッチ法によるベンジルクロリドの還元によって得られる生成物の分析結果を示す。図10Aは、GCチャートにおいて単一のピークが出現したことを示し、図10Bは、GC生成物のマススペクトルを示し、又、図10Cは生成物のH-NMRスペクトルを示す。図10Bに示すMSはビベンジルのMSに正確に一致する。4.6ppmの位置に反応体であるベンジルクロリドの全く出現しないことに注意すべきである。
【0074】
その他の脱ハロゲン化反応には、1, 2−ジクロロベンゼンの脱塩素化反応(この反応は、カラム法の場合は部分的におこなわれ、バッチ法の場合は完全におこなわれる)が含まれる。これらの試験結果は、芳香族及び脂肪族のハロカーボンが、本発明による1族金属/シリカゲル組成物によって容易に脱ハロゲン化されることを示す。
【0075】
【化5】

【0076】
実施例12
炭化水素硫化物からの脱硫は多くの問題をもたらし、又、無数の生成物を生成する。従って、フェニルスルフィドと段階 I の物質であるNaK/シリカゲル(NaKの含有量:約30〜40重量%)をバッチ反応させることによって、以下に示すように、ビフェニルのみが生成するということは驚くべきことであった。このことは、GC-MSとH-NMRによって証明された(図11A〜図11C参照)。図11A〜11Cは、フェニルスルフィドと本発明による段階 I の物質とのバッチ反応を一夜おこなって得られた生成物の分析結果を示す。図11Aは、GCチャートにおいて単一のピークが出現したことを示し、図11Bは、GC生成物のマススペクトルを示し、又、図11Cは生成物のH-NMRスペクトルを示す。図11Cに示すH-NMRスペクトルは主としてビフェニルのスペクトルであるが、該スペクトルは、測定に使用したジュウテロン-クロロホルムに由来するクロロホルム及び僅かに残存するフェニルスルフィド反応体が存在することも示す。7.3ppm周辺の化学シフトの領域においてスペクトルが重なり合うために、収率を正確に求めることはできないが、生成物のほとんどはビフェニルである。同様にして、ジベンゾチオフェンから硫黄は完全に除去された(このプロセスは炭化水素の脱硫においては特に困難なプロセスである)。H-NMRスペクトルは別の生成物の存在を示すが、GC-MSによれば、主要な生成物はビフェニルである。
【0077】
【化6】

【0078】
実施例13
本発明による1族金属/シリカゲル組成物を使用する場合の当初の重要な問題点は、還元シリカ組成物中に1族金属が金属性の状態で存在するかどうかということであった。このことを確認するために、微細に分割したナトリウムとシリカゲルの試料を調製した。ナトリウムは容易に凝集するために、ナトリウムの試料は、凍結させたナトリウムのアンモニア溶液からアンモニアを蒸発させることによって調製した。得られた試料の3箇所の部分をDSCに付した。98℃でナトリウムを溶融させた時に吸収される熱を用いてサンプル中のナトリウムの量を測定した。この分析においては、幅広い発熱ピークが100℃〜490℃の温度範囲にわたって観測され、又、280℃においては、未知物に起因する鋭いピークもみられた。試料を冷却させた後、再加熱したところ、熱的ピークは観測されなかった。このことは、熱処理によって遊離のナトリウムが完全に除去されたことを示すもので、この原因はナトリウムがシリカと反応するためであると考えられる。さらに、固体状態のNaのNMRは、還元シリカゲル組成物中には金属性のナトリウムが存在しないことを示した。さらに又、生成物「還元シリカ」と水との反応熱を概算することが可能であった。還元シリカと水との反応熱(発熱)は、Na1モルあたり約−136±18kJであり、この値は純粋なナトリウムの反応熱の約75%である。従って、本発明による1族金属/シリカゲル組成物は水と反応するときに相当な量の熱を発生する。
【0079】
生成した水酸化ナトリウムの全量は、HClの添加及び水酸化ナトリウムを用いる逆滴定によって決定した。この結果と還元力との差はSiOH基の濃度の尺度になると考えられる。1族金属は調製中に該基と反応して水素を放出させる。この反応は、ナトリウムがシリカゲルの存在下で溶融するときに発生する多量のガスの原因であると考えられる。
【0080】
実施例14:50%ナトリウム-カリウム還元シリカゲルの調製
最初に、シリカゲル(約40g)を空気中において600℃で一夜加熱することによって、シリカゲル中に含まれるガスを放出させた。この処理に付したシリカゲル(3.0g)を長い首を装着させた三角フラスコ内に入れ、高真空下(2×10−5torr)において約300℃まで加熱することによる脱ガス処理にさらに付した。次に、該フラスコを排気口を介してヘリウムを満たしたグローブボックス内へ移した。次いで、モル比が1:1のNaK(3.0g)を、シリカゲルを保有する該フラスコ内へ添加することによって、質量比が50:50のシリカゲル/NaK混合物を調製した。この時点において、NaKはシリカゲル表面の湿潤化を開始させ、シリカゲルは黒色に変化した。グローブボックスから取り出したフラスコを約2×10−5torr まで排気させた。試料全体が被覆されてさらさらした黒色粉末(段階 I の物質)になるのに十分な活性化がもたらされるように僅かな撹拌力を混合物に印可させた。反応中、検出可能な熱は発生しなかった。ヒートガン(heat gun)を用いて加温した第二の試料は自然に発熱的に反応し、フラスコは接触することができないほど熱くなった。この反応によって段階 I の物質はその他の形態(段階 II 又は段階 III の物質)へ変換されると考えられる。
【0081】
実施例15:ナトリウム含有シリカゲルの調製
最初に、シリカゲル(2.25g)をフラスコ内に入れて真空下で加熱することによって、シリカゲルの脱ガス処理をおこなった。ガスが発生しなくなって、フラスコ内の圧力が3×10−5torr になった後、フラスコを加熱源から移動させた。次に、フラスコを排気口を介してヘリウムを満たしたグローブボックス内へ移した後、Na(1.135g)をフラスコ内へ添加した。次いで、液体アンモニア(NH)をポンプでフラスコ内へフリーズ(freeze)輸送させる操作を1回おこなった後、液体アンモニアをNa-シリカゲル粉末上で蒸留させることによって、次式で表される触媒分解反応を発生させた。
【化7】

【0082】
触媒分解反応中に多量のHが発生したので、実験ラインを段階的にポンプで排気した。次に、残存するNHを除去した後、フラスコを3×10−5torr まで排気した。次いで、フラスコを真空条件下でヒートガンを用いて加熱した後、フラスコをグローブボックス内へ戻した。試料を5個のバイアル(vial)内へ分配した。第一のバイアル(449mg)をグローブボックスから取り出し、室温下で保存した。第二のバイアル(509mg)、第三のバイアル(603mg)及び第四のバイアル(653mg)をブローブボックス内のフリーザー内へ移した。第五の試料(122mg)は、1000mlの水を入れたビーカー内へ放出させる前に、密封バイアル内へいれた。
【0083】
実施例16:ナトリウム含有還元シリカゲルの調製
最初に、99%シリカゲル(30〜50メッシュ)2.2786gを三角フラスコ内へ入れた。フラスコを真空条件下で加熱して脱気処理をおこなった。加熱は、最初はヒートガンを用いておこない、次いでトーチを用いておこなった。トーチの燃料(O)の供給量は、トーチの炎の先端部が黄色になるように調整した。シリカゲルの加熱と脱気処理をおこなった後、約2.145g(2.5cm)のシリカゲルが残存した。次に、フラスコをさらに加熱し、2×10−5torr の圧力まで排気した。加熱後、Na(980mg)をシリンダー内へ転がして入れ、次いでフラスコ内へ添加した。Naの目標量は1.0gであった。フラスコ内でNaが溶融すると、フラスコ内の圧力は約10−3torr に変化した。さらなるガスが発生したので、フラスコは真空下で断続的に90分間加熱した。フラスコを室温まで冷却した後、2×10−5torr の状態で密封した。次いで、フラスコ壁上に残存するNaがシリカゲルの表面上へ蒸着されるまでフラスコを加熱した。最後に、フラスコを210℃の加熱炉内に一夜保持した。得られた試料は4個のバイアル内へ分配した。僅かの残存物を含有する試料をそれぞれ812mg、771mg、823mg及び525mg保有する4個のバイアルをフリーザー内へ移した。
【0084】
実施例17:芳香性試験
実施例2において調製したNa/シリカゲル混合物の2種の試料をフリーザーから取り出した。第一の試料の重量は520mgであった。ポンプを使用して、柑橘類オイル芳香剤(684mg)の所定圧(2×10−5torr)までの凍結移送を3回おこなった後、ヘリウムを満たしたグローブボックス内へ移した。Na/シリカゲル混合物の第一の試料をグローブボックス内の柑橘類オイルへ添加した。この試料を、液体NHで冷却しながら排気処理に付した。次いで、試料を室温まで暖めた後、Naとシリカゲルとの反応によって生成したガス類及び柑橘類オイルを測定した。試料を室温で110分間保持して反応を観察した。次いで、試料を液体窒素で冷却させ、水分を5分間にわたって試料上へ凝縮させた。試料を暖めることによって、試料と水との反応を惹起させた。全てのガス類は捕集して測定した。
【0085】
第二の試料を秤量した(109.7mg)。ポンプを使用して、柑橘類オイル芳香剤(161mg)の所定圧(2×10−5torr)までの凍結移送を3回おこなった後、ヘリウムを満たしたグローブボックス内へ移した。Na/シリカゲル混合物の第一の試料をグローブボックス内の柑橘類オイルへ添加した。この試料を、液体NHで冷却しながら排気処理に付した。次いで、試料を室温まで暖めた後、Naとシリカゲルとの反応によって生成したガス類及び柑橘類オイルを測定した。試料を室温で110分間保持して反応を観察した。次いで、試料を液体窒素で冷却させ、水分を5分間にわたって試料上へ凝縮させた。試料を暖めることによって、試料と水との反応を惹起させた。全てのガス類は捕集して測定した。
【0086】
実施例18:脱臭剤組成物
クエン酸0.8g、重炭酸ナトリウム0.35g、ナトリウム含有還元シリカゲル0.11g及び芳香剤0.27gを含有する第一の脱臭剤組成物、クエン酸0.8g、重炭酸ナトリウム0.35g、ナトリウム含有還元シリカゲル0.11g及び芳香剤0.35gを含有する第二の脱臭剤組成物、並びにクエン酸0.8g、重炭酸ナトリウム0.35g、ナトリウム含有還元シリカゲル0.11g及び芳香剤0.5gを含有する第三の脱臭剤組成物を調製した。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】微量の1:1NaK/シリカゲル試料(8.9mg)についてのDSCのダイヤグラムである。
【図2】微量の1:1NaK/シリカゲル試料(5.7mg)についてのDSCのダイヤグラムである。
【図3】微量の1:1セシウム/シリカゲル試料(6.7mg)についてのDSCのダイヤグラムである。
【図4】NaK組成を有する合金で被覆したシリカゲル粒子を、段階 I の緩やかに凝集して光沢のある黒色粉末への変換を示す。
【図5】微量の混合物(Na 2.4mg及びシリカゲル3.9mg)につぃてのDSCのダイヤグラムである。
【図6】段階 II のNa/シリカゲル物質に水を添加した後の水素によるバルーンの膨張を示す。
【図7】段階0の物質を、真空下又は不活性雰囲気下において約140℃で一夜加熱した結果を示すDSCのダイヤグラムである。
【図8】本発明による段階 I の物質を用いてアントラセンを還元して得られたアントラセンラジカルアニオンの光学スペクトルを示す。
【図9】本発明による1族金属/シリカゲル組成を有する混合床カラムを通過させることによるTHF中でのアントラセンのバーチ還元の生成物のH−NMRスペクトルを示す。
【図10A】実施例11で調製した生成物のGCチャートを示す。
【図10B】実施例11で調製した生成物のマススペクトルを示す。
【図10C】実施例11で調製した生成物のH-NMRスペクトルを示す。
【図11A】実施例12で調製した生成物のGCチャートを示す。
【図11B】実施例12で調製した生成物のマススペクトルを示す。
【図11C】実施例12で調製した生成物のH-NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状1族金属をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な等温条件下での不活性雰囲気中において、液状1族金属とシリカゲルを混合させることによって得られる生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物であって、乾燥酸素と反応する該組成物。
【請求項2】
シリカゲルが50〜1000Åの孔径を有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
シリカゲルが約150Åの平均孔径を有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
1族金属が、ルビジウム、セシウム、及び2種以上の1族金属の合金から成る群から選択される金属である請求項1記載の組成物。
【請求項5】
1族金属が、ナトリウム−カリウム合金である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
1族金属の含有量が50重量%までである請求項1記載の組成物。
【請求項7】
液状1族金属若しくは液状1族金属合金をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な発熱条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させることによって得られる生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物であって、乾燥酸素と反応しない該組成物。
【請求項8】
シリカゲルが約50〜1000Åの孔径を有する請求項7記載の組成物。
【請求項9】
シリカゲルが約150Åの平均孔径を有する請求項7記載の組成物。
【請求項10】
1族金属が、ルビジウム、セシウム、及び2種以上の1族金属の合金から成る群から選択される金属である請求項7記載の組成物。
【請求項11】
1族金属が、ナトリウム−カリウム合金である請求項7記載の組成物。
【請求項12】
1族金属の含有量が50重量%までである請求項7記載の組成物。
【請求項13】
液状1族金属若しくは液状1族金属合金をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な発熱条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させて得られる混合物を約215℃〜約400℃の温度まで加熱することによって調製される生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物であって、乾燥酸素と反応しない該組成物。
【請求項14】
多孔性シリカゲルの細孔が約50〜1000Åの平均孔径を有する請求項13記載の組成物。
【請求項15】
多孔性シリカゲルが約150Åの平均孔径を有する請求項13記載の組成物。
【請求項16】
1族金属が、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから成る群から選択される金属又は2種以上の1族金属の合金である請求項13記載の組成物。
【請求項17】
1族金属が、ナトリウム、カリウム又はナトリウム−カリウム合金である請求項13記載の組成物。
【請求項18】
1族金属の含有量が50重量%までである請求項13記載の組成物。
【請求項19】
1族金属の含有量が30〜40重量%である請求項18記載の組成物。
【請求項20】
液状1族金属若しくは液状1族金属合金をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な発熱条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させて得られる混合物を約400℃よりも高温まで加熱することによって調製される生成物を含有する1族金属/シリカゲル組成物であって、乾燥酸素と反応しない該組成物。
【請求項21】
多孔性シリカゲルの細孔が約50〜1000Åの平均孔径を有する請求項20記載の組成物。
【請求項22】
多孔性シリカゲルが約150Åの平均孔径を有する請求項20記載の組成物。
【請求項23】
1族金属が、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及び2種以上の1族金属の合金から成る群から選択される請求項20記載の組成物。
【請求項24】
1族金属が、ナトリウム、カリウム又はナトリウム−カリウム合金である請求項23記載の組成物。
【請求項25】
1族金属の含有量が50重量%までである請求項20記載の組成物。
【請求項26】
1族金属の含有量が30〜40重量%である請求項25記載の組成物。
【請求項27】
液状1族金属とシリカゲルを等温条件下で不活性雰囲気中又は真空中において接触させることによって、1族金属をシリカゲルの細孔中へ吸収させる工程を含む段階0の1族金属/シリカゲル組成物の製造方法。
【請求項28】
請求項27記載の段階0の1族金属/シリカゲル組成物を140℃の温度において、段階0の1族金属/シリカゲル組成物が段階 I の1族金属/シリカゲル組成物に変換されるのに必要な時間と条件下で加熱する工程を含む段階 I の1族金属/シリカゲル組成物の製造方法。
【請求項29】
請求項27記載の段階0の1族金属/シリカゲル組成物を約215℃〜約400℃の温度において、段階0の1族金属/シリカゲル組成物が段階 II の1族金属/シリカゲル組成物に変換されるのに必要な時間と条件下で加熱する工程を含む段階 II の1族金属/シリカゲル組成物の製造方法。
【請求項30】
請求項27記載の段階0の1族金属/シリカゲル組成物を500℃よりも高温において、段階0の1族金属/シリカゲル組成物が段階 III の1族金属/シリカゲル組成物に変換されるのに必要な時間と条件下で加熱する工程を含む段階 III の1族金属/シリカゲル組成物の製造方法。
【請求項31】
液状1族金属若しくは液状1族金属合金をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な発熱条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させる工程を含む段階 I の1族金属/シリカゲル組成物の製造方法。
【請求項32】
液状1族金属をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な発熱条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させて得られる混合物を約215℃〜約400℃の温度まで加熱する工程を含む段階 II の1族金属/シリカゲル組成物の製造方法。
【請求項33】
液状1族金属をシリカゲルの細孔へ吸収させるのに十分な発熱条件下において、液状1族金属とシリカゲルを混合させて得られる混合物を約500℃よりも高温まで加熱する工程を含む段階 III の1族金属/シリカゲル組成物の製造方法。
【請求項34】
請求項1記載の1族金属/シリカゲル組成物を水と接触させる工程を含む水素ガスの製造方法。
【請求項35】
請求項7記載の1族金属/シリカゲル組成物を水と接触させる工程を含む水素ガスの製造方法。
【請求項36】
請求項13記載の1族金属/シリカゲル組成物を水と接触させる工程を含む水素ガスの製造方法。
【請求項37】
請求項20記載の1族金属/シリカゲル組成物を水と接触させる工程を含む水素ガスの製造方法。
【請求項38】
アルカリ金属の存在下での芳香族化合物のバーチ還元反応であって、該反応を請求項1記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とするバーチ還元反応。
【請求項39】
アルカリ金属の存在下での芳香族化合物のバーチ還元反応であって、該反応を請求項7記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とするバーチ還元反応。
【請求項40】
アルカリ金属の存在下での芳香族化合物のバーチ還元反応であって、該反応を請求項13記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とするバーチ還元反応。
【請求項41】
アルカリ金属の存在下での芳香族化合物のバーチ還元反応であって、該反応を請求項20記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とするバーチ還元反応。
【請求項42】
アルカリ金属の存在下でのハロゲン化有機化合物の脱ハロゲン化反応であって、該反応を請求項1記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とする脱ハロゲン化反応。
【請求項43】
アルカリ金属の存在下でのハロゲン化有機化合物の脱ハロゲン化反応であって、該反応を請求項7記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とする脱ハロゲン化反応。
【請求項44】
アルカリ金属の存在下でのハロゲン化有機化合物の脱ハロゲン化反応であって、該反応を請求項13記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とする脱ハロゲン化反応。
【請求項45】
アルカリ金属の存在下でのハロゲン化有機化合物の脱ハロゲン化反応であって、該反応を請求項20記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とする脱ハロゲン化反応。
【請求項46】
アルカリ金属の存在下でのハロゲン化有機化合物のウルツ反応であって、該反応を請求項1記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とするウルツ反応。
【請求項47】
アルカリ金属の存在下でのハロゲン化有機化合物のウルツ反応であって、該反応を請求項7記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とするウルツ反応。
【請求項48】
アルカリ金属の存在下でのハロゲン化有機化合物のウルツ反応であって、該反応を請求項13記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とするウルツ反応。
【請求項49】
アルカリ金属の存在下でのハロゲン化有機化合物のウルツ反応であって、該反応を請求項20記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とするウルツ反応。
【請求項50】
スルフィド結合を有する有機化合物のアルカリ金属の存在下での脱硫化反応であって、該反応を請求項1記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とする脱硫化反応。
【請求項51】
スルフィド結合を有する有機化合物のアルカリ金属の存在下での脱硫化反応であって、該反応を請求項7記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とする脱硫化反応。
【請求項52】
スルフィド結合を有する有機化合物のアルカリ金属の存在下での脱硫化反応であって、該反応を請求項13記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とする脱硫化反応。
【請求項53】
スルフィド結合を有する有機化合物のアルカリ金属の存在下での脱硫化反応であって、該反応を請求項20記載の1族金属/シリカゲル組成物の存在下でおこなうことを特徴とする脱硫化反応。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate


【公開番号】特開2011−178659(P2011−178659A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−109562(P2011−109562)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2006−541648(P2006−541648)の分割
【原出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(506174429)
【氏名又は名称原語表記】Michael LEFENFELD
【出願人】(506249392)
【氏名又は名称原語表記】James L. DYE
【Fターム(参考)】