アルカリ骨材反応判定方法
【課題】コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を簡単に、かつ精度よく判定することができるアルカリ骨材反応判定方法を提案すること。
【解決手段】コンクリート構造物から試験コアを採取するコア採取過程と、前記試験コアに縦波弾性波を発生させる励振過程と、前記縦波弾性波を受信する受信過程と、受信された信号を分析して前記試験コア中の縦波弾性波の伝播速度を求める分析過程と、前記分析過程で得られた縦波弾性波の伝播速度から前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定する判定過程とを含むアルカリ骨材反応判定方法であって、前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の時期の縦波弾性波の伝播速度が所定の値以上である場合には健全なコンクリート構造物と判定するものであるアルカリ骨材反応判定方法。
【解決手段】コンクリート構造物から試験コアを採取するコア採取過程と、前記試験コアに縦波弾性波を発生させる励振過程と、前記縦波弾性波を受信する受信過程と、受信された信号を分析して前記試験コア中の縦波弾性波の伝播速度を求める分析過程と、前記分析過程で得られた縦波弾性波の伝播速度から前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定する判定過程とを含むアルカリ骨材反応判定方法であって、前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の時期の縦波弾性波の伝播速度が所定の値以上である場合には健全なコンクリート構造物と判定するものであるアルカリ骨材反応判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ骨材反応判定方法に関するものである。
なお、アルカリ骨材反応とは、セメントコンクリートに含有されるアルカリ成分(NaとK)が、非晶質のシリカなどの反応性鉱物を含む骨材と反応し、アルカリシリカゲルを生成することを言う。
【背景技術】
【0002】
アルカリ骨材反応を起こす鉱物は、不安定なシリカ鉱物(クリストバライト、トリジマイト、オパールなど)、結晶性の石英であっても、微細な結晶粒や歪んだ結晶格子をもつものであり、これら以外に、シリケート鉱物や非晶質の火山ガラスなどがある。これらの鉱物は、火山岩(例えば安山岩)やチャートのような堆積岩に含まれている。
この種の鉱物を多く含む骨材をコンクリートに使用した場合、コンクリート中のNaOHやKOHを主成分とする空隙水が、骨材中の反応性の高い上記シリカ鉱物などと反応して、骨材の周囲にアルカリシリカゲルを生成する。アルカリシリカゲルは吸水・膨潤する性質があり、コンクリートに異常な膨張やそれに伴うひび割れを発生させる。
このアルカリ骨材反応が起きると、無筋コンクリートや鉄筋量の少ないコンクリート構造物では、網の目状または亀甲状のひび割れが発達し、鉄筋コンクリートおよびPCコンクリート構造物では、軸方向鉄筋やPC鋼材に沿った方向性のあるひび割れが生じる。
近年、アルカリ骨材反応により過大な膨張が生じた構造物には、コンクリート強度の低下、鉄筋とかぶりとの付着力の低下、曲げ加工部や圧接部での鉄筋破断などの損傷が確認されており、構造物の維持管理において、アルカリ骨材反応が生じているか否か、あるいは、生じている場合には、その損傷はどの程度であるのか、また、将来的にどの程度進行するのかを予測することが非常に重要である。
【0003】
上記アルカリ骨材反応によって生じるコンクリート表面の変状(例えば、ひび割れ、変色、ゲルの滲出)は、アルカリ骨材反応に特有なものであるので、劣化がある程度進行した段階(加速期や劣化期)では、目視調査のみでも比較的高い確度で原因を特定できる場合がある。
しかし、潜伏期(アルカリ骨材反応は生じているが、外観上の変化が見られない時期)あるいは進展期の初期においては、荷重や支持条件の変化によって生じる構造的なひび割れや、コンクリートの収縮など材料に起因するひび割れ、あるいは、施工の不具合によって生じたひび割れ等と区別することが困難な場合がある。
【0004】
目視による判定が困難な場合には、一般的には、構造物から採取したコアの強度試験、あるいは、コアの膨張率試験が行われる。
コアの強度試験では、非特許文献4に示されるように、圧縮強度と静弾性係数の結果からアルカリ骨材反応が生じているか否かを判断する。劣化が相当に進行していれば静弾性係数が顕著に低下するため判定は可能であるが、外来アルカリなどによって、将来的にアルカリ骨材反応を生じる可能性があっても、それが顕在化する以前であれば、強度試験だけから判定することは難しい。
一方、コアの残存膨張試験は、採取したコアにコンタクトゲージ測定用のポイントを接着したステンレス製バンドを巻き付け、各種養生条件の下でポイント間の長さ変化を測定し、コンクリートの膨張率を経時的に測定するものである。この試験方法には、コア採取後の促進養生方法や判定基準が異なる幾つかの方法(例えば、JCI−DD2法、デンマーク法、及びカナダ法など)がある。
【0005】
特許文献1には、コンクリートの促進膨張試験によって得られたコンクリートの膨張量の変化と水酸化アルカリ濃度の相関関係を用いて、アルカリシリカ反応による劣化進行を予測する方法が提案されている。
また、非特許文献1には、アルカリ骨材反応を生じたコンクリート構造物のコア試料による膨張量の測定方法が詳しく説明されている。
さらに、非特許文献2には、北陸地方の特徴である安山岩粒子が主要な反応性骨材である川砂及び非晶質なシリカからなるガラス砂について、デンマーク法、JIS A 1146法、及びASTM C 1260法による調査が報告されている。
また、非特許文献3には、北陸地方でコンクリート骨材として使われる河川砂利について、カナダ法による調査が報告されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−274291号公報
【非特許文献1】耐久性診断研究委員会報告書(社団法人 日本コンクリート工学協会 1989年6月)
【非特許文献2】「促進養生試験による骨材のアルカリシリカ反応性評価」(鳥居和之外、コンクリート工学年次論文集 Vol.26 No.1, 2004 )
【非特許文献3】「コアによるコンクリート構造物のアルカリシリカ反応の判定」(野村昌弘外、コンクリート工学年次論文集 Vol.23 No.1, 2001 )
【非特許文献4】小林一輔、森弥広、野村謙二:圧縮載荷試験によるアルカリ骨材反応の診断方法、土木学会論文集、No.460/V・18、pp.151-154、1993.2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1に記載されている方法を、以下に簡単に紹介する。
図16は、反応性コアの膨張特性概略図である。コアを採取直後から湿度100%に近い状態で標準養生すると、一定量の膨張が生じる。さらにその状態で促進養生をすると、コンクリート中に残存している反応性物質による膨張が生じる。前者は、既に発生しているアルカリ骨材反応の尺度となり、解放膨張と呼ばれる。後者は、構造物が将来膨張する危険度を示す尺度で、残存膨張と呼ばれる。
図17は、膨張特性からアルカリ骨材反応の進行を判定する原理を説明する図である。同じ膨張率であっても、解放膨張率の割合が大きい場合は、アルカリ骨材反応は終了期に近いと判断し、逆に、残存膨張率の割合が大きい場合は、構造物の損傷が将来拡大する余地があると判断する。
【0008】
ただし、得られた結果の解釈については、以下のような課題がある。
解放膨張率は、既に発生しているアルカリ骨材反応の尺度になると言われているが、統計的なデータはほとんど無い。例えば、本願発明の試験例を記載した図12における標準養生中の膨張量が解放膨張量に相当するものであるが、その数値は高々200μm乃至500μm程度であり、コア採取後の保管状況によっては乾燥の影響によって容易に変動してしまう値であり、過去に受けた損傷程度については分からない場合が多い。
一方、残存膨張率は、今後の劣化進行を予測する上で役に立つ指標であるが、既に反応が収束している場合には、コアはほとんど膨張せず、健全なコンクリートとの識別ができない可能性がある。
なお、コアの残存膨張試験および判定に要する時間は、最も一般的に実施されているJCI−DD2法で、約半年を要する。
【0009】
上記のような場合、偏光顕微鏡や粉末X線回折による岩種判定、アルカリ含有量分析、シリカゲルの確認等を行えば、劣化原因がアルカリ骨材反応であるかどうかを判定することはできるが、これらの方法は、専門的な知識や技術が必要であり、その判定基準も定量的なものとは言えない。また、試料数が多い場合などは、迅速に判定することも困難である。仮に、劣化原因がアルカリ骨材反応であることは分かっても、過去の損傷程度や今後の劣化進行の可能性について知ることはできない。
【0010】
本発明は、上述した背景技術が有する問題点に鑑み成されたものであって、コンクリート構造物にアルカリ骨材反応が生じているか否か、また、過去に受けたアルカリ骨材反応による損傷の程度、さらには、将来的にアルカリ骨材反応による劣化が進行するか否かを、簡便に、しかも早期に判定することのできるアルカリ骨材反応判定方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題は、下記の〔1〕〜〔7〕の本発明に係るアルカリ骨材反応判定方法によって解決された。すなわち、
〔1〕 コンクリート構造物から試験コアを採取するコア採取過程と、前記試験コアに縦波弾性波を発生させる励振過程と、前記縦波弾性波を受信する受信過程と、受信された信号を分析して前記試験コア中の縦波弾性波の伝播速度を求める分析過程と、前記分析過程で得られた縦波弾性波の伝播速度から前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定する判定過程とを含む、アルカリ骨材反応判定方法。
〔2〕 前記励振過程が、所定の重さと形状の物体を所定の高さから前記試験コアに落下させて縦波弾性波を励振させる過程であり、前記受信過程が、励振された前記縦波弾性波を前記試験コアに設けられた加速度センサで受信する過程であり、前記分析過程が、受信された前記縦波弾性波の周波数分析を行い、ピーク周波数から縦波弾性波の伝播速度を求める過程である、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔3〕 前記励振過程が、前記試験コアに設けられた送信器からパルス弾性波を送る過程であり、前記受信過程が、前記試験コアに設けられた受信器で前記パルス弾性波を受信する過程であり、前記分析過程が、前記送信器で送信した信号と前記受信器で受信した信号の到達時間差に基づいて縦波弾性波の伝播速度を求める過程である、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔4〕 前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の時期の縦波弾性波の伝播速度が所定の値以上である場合には、健全なコンクリート構造物と判定するものである、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔5〕 前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の期間の縦波弾性波の伝播速度が上昇している場合には、既にかなりのアルカリ骨材反応により損傷を受けた構造物(劣化期にあるコンクリート構造物)と判定するものである、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔6〕 前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の期間の縦波弾性波の伝播速度が低下している場合には、今後、アルカリ骨材反応による劣化進行が予測される構造物(潜伏期にあるコンクリート構造物)と判定するものである、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔7〕 前記試験コアの膨張量測定を行い解放膨張量及び/ 又は残存膨張量を求める膨張量測定過程をさらに含み、前記膨張量測定過程の結果もふまえて前記判定過程において前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定する、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明に係るアルカリ骨材反応判定方法によれば、コンクリート構造物にアルカリ骨材反応が生じているか否か、また、過去に受けたアルカリ骨材反応による損傷の程度、さらには、将来的にアルカリ骨材反応による劣化が進行するか否かを、簡便に、しかも早期に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、上記した本発明に係るアルカリ骨材反応判定方法の有効性を示す、試験例について説明する。
【0014】
試験用のコンクリートは、次のようにして作製された。
セメントは普通ポルトランドセメント、細骨材は非反応性の陸砂、粗骨材は反応性骨材(化学法試験の結果、無害ではないと判定された骨材)及び非反応性骨材を容積比5:5で混合して使用した。
アルカリ骨材反応を促進させるために、等価アルカリ量が8.0kg/m3となるようにNaOHを練混ぜ水に添加した。
対比試験用に、アルカリを添加しない正常なコンクリートも用意した。
【0015】
コンクリート供試体の仕様は、表1及び表2に示したとおりであった。
【表1】
【表2】
【0016】
図1に使用したコンクリート供試体の側面図(A)、正面図(B)を示す。供試体はポストテンション方式で作製したPC(プレストレストコンクリート)供試体で、使用したPC鋼材はφ11mmのPC鋼棒であった。
【0017】
上記コンクリート供試体について、脱型後に28日間湿布養生を行い、その後、湿度98%、温度40℃の恒温室にて促進アルカリ骨材反応養生を行った。
そして、促進養生をさせる前のコンクリート供試体(試料No.0:潜伏期相当)と、アルカリ骨材反応によりひび割れが顕在化したコンクリート供試体(試料No.1:進展期相当)と、アルカリ骨材反応により劣化が相当進行したコンクリート供試体(試料No.2:劣化期相当)、及び正常なコンクリート供試体(健全)から、各々試験コアを採取した。
試験コアの採取は、図1に示す位置で行われた。試験コアは、それぞれ直径が100mmで、長さが300mmであった。
【0018】
上記のようにして採取した試験コアについて、JCI−DD2法に準拠して、膨張量試験を行うと共に、試験コア中の弾性波の伝播速度を、下記の二つの方法で計測した。
【0019】
図2は、試験コア中の弾性波の伝播速度を測定する第1の方法の概念図である。
この方法においては、試験コア1の両端面に電気・音響トランデューサ2,2を密着させて設けておく。そして、パルス信号発生器3からパルス信号を一方の電気・音響トランスデューサ2に送り、試験コア1の一端で弾性波を発生させる(励振過程)。そして、試験コア1内を伝播し、他端に到達した音響信号は他方の電気・音響トランスデューサ2で電気信号に変換される(受振過程)。パルス信号発生器3からの入力パルス信号S1と、電気信号に変換された受信信号S2が分析器4に送られる。分析器4で信号が解析され、試験コア内を透過した弾性波の伝播速度の計算や周波数分析等が行われる(分析過程)。弾性波の伝播速度は、例えば、信号パルスの立ち上がり時点の遅れに基づいて、公知の技術を用いて容易に求めることができる。
【0020】
図3は、促進養生をさせる前のコンクリート供試体(試料No.0:潜伏期相当)から採取した試験コア1中を伝播した弾性波の受信信号の例である。図4は、アルカリ骨材反応が進行し、膨張量が2860μmであるコンクリート供試体(試料No.1:進展期相当)から採取した試験コア1中を伝播した弾性波の受信信号の例である。また、図5と図6は、それぞれ図3と図4の信号の周波数スペクトラムである。
【0021】
上記図3の受信信号と比べて、上記図4の受信信号の信号強度は非常に小さくなっている。また、図6の周波数分布からは図5で見られる150kHz付近の高周波成分が消失していることが分かる。これは、アルカリ骨材反応の進行により生成した微細なひび割れやアルカリシリカゲルを透過する際に、弾性波が吸収される、あるいは散乱するなどして減衰したためと考えられる。
このように出力信号の波形が崩れていると、パルス入力時間と透過したパルスの立ち上り時間の差から弾性波の伝播速度を求めることが困難な場合もある。パルス入力強度を大きくする、あるいは試験コア長さを短くするなどの方法で出力波形の立ち上り時間を見やすくすることは可能であるが、試験条件が変化するため望ましくない。
【0022】
上記のことから、図2のパルスを透過させる方法では、透過パルスの立ち上がり時間が正確に読み取れず、また、計測者による誤差が生じることもある。さらに、計測装置の時間軸分解能(サンプリング周波数)によっては、精度が期待できない場合もある。
【0023】
図7は、試験コア中の弾性波の伝播速度を測定する第2の方法の概念図である。
この方法においては、試験コア1の任意の点、例えば試験コア1の片側端面に加速度センサ5を密着させて設けておく。そして、試験コア1の一方の端面を上方に向けて、かつ試験コア1の振動を減衰させないように、すなわち、自由振動が可能なように試験コア1を支持しておく。
この状態で、試験コア1から所定距離、例えば30cmの高さから、所定の物体6、例えば直径20mm、質量30g程度の鋼球を落として試験コア1の端面に当てて、試験コア1を自由振動させる(励振過程)。入力された弾性波は、試験コア1の両端面を往復し、試験コア全体は自由振動する。そして、その振動を上記加速度センサ5で検出する(受振課程)。
なお、自由振動をさせるためには、必ずしも上記の鋼球を使う必要はなく、鉄製あるいはプラスチック製のハンマー等により打撃する方法でも良いが、条件を規格化するために、所定の重さと形状の物体を所定の高さから落下させる方法を採用することは好ましい。
【0024】
長さがLの円筒形物体の端面に円筒軸の方向に衝撃を加えたときに、円筒体の中に励起される弾性波の自由振動の応答周波数ピークfは、その物体の縦波弾性波速度Vと、次の式の関係にある。
V=2fL
従って、自由振動の応答周波数ピークfを検出することにより、縦波弾性波速度Vを求めることができる(分析過程)。
試験コアの寸法がφ50〜100mm、長さ100〜400mm程度であれば、検出される応答周波数ピークfは数kHzから数十kHzの範囲内の値となる。サンプリング間隔は数十μs、解析に必要なデータ数は2000個程度である。
【0025】
図8は、促進養生をさせる前のコンクリート供試体(試料No.0:潜伏期相当)から採取した試験コア1の自由振動を加速度センサ5で受信した信号の例である。図9は、アルカリ骨材反応が進行し、膨張量が5000μmであるコンクリート供試体(試料No.2:劣化期相当)から採取した試験コア1の自由振動を加速度センサ5で受信した信号の例である。図10と図11は、それぞれ図8と図9の信号の周波数スペクトラムである。
【0026】
上記図11の場合、上記図10に比べて、応答周波数ピークが下がっている。これは、アルカリ骨材反応が進むと、アルカリシリカゲルや微細ひび割れの生成によって、試験コア1の縦波弾性波速度Vが小さくなり、この結果、応答周波数ピークが下がると考えられる。
【0027】
図12は、試料No.0(潜伏期相当)と、試料No.1(進展期相当)と、試料No.2(劣化期相当)と、正常なコンクリート(健全)について、それぞれ試験コアの膨張量試験を行い、解放膨張量及び残存膨張量を、材齢の関数として示した図である。
なお、膨張量試験は、上記したようにJCI−DD2法に準拠して行った。
【0028】
試料No.0(潜伏期相当:黒菱形印)の試験コアの膨張量測定では、促進養生後の膨張量の立ち上がりが大きいが、試料No.1(進展期相当:白丸印)ではその立ち上がりが小さくなり、試料No.2(劣化期相当:黒三角印)では殆ど立ち上がらず、正常なコンクリート(健全:バツ印)と明確に区別を付けることができないことが分かる。
すなわち、膨張量測定では、調査時までにどの程度すでに膨張していたかが不明であり、例えばアルカリ骨材反応が収束していると、劣化原因がアルカリ骨材反応であっても、試験コアは膨張せず、アルカリ骨材反応を検出することができないことが分かる。
【0029】
図13は、試料No.0(潜伏期相当)と、試料No.1(進展期相当)と、試料No.2(劣化期相当)と、正常なコンクリート(健全)について、上記膨張量試験と並行して、それぞれの試験コアについて図2に示した方法で超音波パルス伝播速度の測定を行い、材齢の関数としてその測定値を示した図である。
また、図14は、試料No.0(潜伏期相当)と、試料No.1(進展期相当)と、試料No.2(劣化期相当)と、正常なコンクリート(健全)について、上記膨張量試験と並行して、それぞれの試験コアについて図7に示した方法で縦弾性波伝播速度の測定を行い、材齢の関数としてその測定値を示した図である。
【0030】
一般に、コンクリート構造物が健全な状態にある場合の伝播速度(例えば、竣工時の伝播速度など)は不明であるが、コンクリートの配合条件が既知の場合には、その伝播速度の推定が可能である。
例えば、試験に使用した骨材を用いて、水セメント比と単位粗骨材量を変化させ、アルカリを添加しないコンクリート供試体を作製し、超音波パルス伝播速度を計測したところ、図15に示したような結果を得た。
今回の試験に使用したコンクリートの配合は、表2の通りW/C=50%、単位粗骨材量380L/m3であるから、図15から健全な状態の超音波パルス伝播速度は約4500m/sと推定できる。この推定結果は、図13に示す正常なコンクリート(健全:バツ印)の伝播速度とほぼ一致している。
同様の推定方法によって、試験に使用したコンクリート配合の健全な状態における縦弾性波伝播速度は、約4200m/sと推定できる。
【0031】
上記図13、図14から、少なくとも材齢90日(標準養生40日+促進養生50日)以降であれば、全ての試料について、アルカリ骨材反応が生じたコンクリートと正常なコンクリートとを明確に区別できることが分かる。
すなわち、正常なコンクリート(健全:バツ印)のみが推定された伝播速度(約4500m/s、あるいは約4200m/s)から低下しておらず、図13において4500m/s程度、図14において4100m/s強を保持している。これに対して、アルカリ骨材反応が生じたコンクリートは、コア採取時の劣化状態によらず伝播速度が低下し、図13において4000m/s強、図14においては3400m/s程度となっている。
特に、膨張率試験では区別できなかった劣化期相当のコンクリート(No.2:黒三角印)と正常なコンクリート(健全:バツ印)を明瞭に区別できる。
上記のことより、所定の時期、例えば促進養生開始から50日後に測定した伝播速度が、配合条件から推定される伝播速度の95%以上(例えば、パルス弾性波の入力による計測の場合に4200m/s以上、衝撃弾性波の入力による計測の場合には4000m/s以上)なら、健全なコンクリート構造物であると判定することが可能である。
【0032】
また、図13、図14から、解放膨張試験の間、すなわちコア抜き直後から解放膨張が終了する材齢40日程度の間において伝播速度が上昇して現れるのは、試料No.2(劣化期相当:黒三角印)の試料のみであり、他は概ね伝播速度の変化は見られないことが分かる。
上記のことから、所定の期間、例えば構造物から採取した試験コアについて、コア抜き直後と解放膨張終了時(材齢40日程度)の伝播速度を比較し、伝播速度が上昇しているようであれば、過去に既にかなりのアルカリ骨材反応により損傷を受けた構造物(劣化期にあるコンクリート構造物)と判定することが可能である。なお、劣化が相当に進んだ試料において、解放膨張試験期間中に膨張を示しながらも、伝播速度が上昇する原因については不明であるが、例えば、試験中の湿潤条件下でコア供試体自体が吸水した、あるいはアルカリシリカゲルが吸水膨潤することによりコア供試体中の微細ひび割れが充填されたことなどが考えられる。
【0033】
さらに、図13、図14から、解放膨張終了後、促進養生の初期の段階(促進養生開始後30〜50日)において急激に伝播速度が低下して現れるのは、試料No.0(潜伏期相当:黒菱形印)の試料のみであり、他は、大きな伝播速度の変化は認められないことが分かる。
上記のことから、所定の期間、例えば構造物から採取した試験コアについて、解放膨張終了直後と促進養生30〜50日後(材齢70〜80日)の伝播速度を比較し、伝播速度が低下しているようであれば、今後、アルカリ骨材反応により劣化進行が予想される構造物(潜伏期にあるコンクリート構造物)と判定することが可能である。なお、潜伏期の試料において、この間に伝播速度の低下が現れるのは、促進養生によって急激に試料のアルカリ骨材反応が進行し、アルカリシリカゲルやひび割れ、亀裂の生成のためであると考えられる。
【0034】
なお、上記した劣化期にあるコンクリート構造物との判定、あるいは潜伏期にあるコンクリート構造物との判定は、所定期間における伝播速度の上昇あるいは低下をもって判定を行うものであり、必ずしも配合条件からの伝播速度推定は必要でない。
【0035】
また、上記試験例の如く、試験コアに対する膨張量試験と並行して上記伝播速度の測定を行うこととすると、膨張量の試験からは将来の膨張性有無に関する情報が得られ、伝播速度の測定値およびその変化からは現時点までにアルカリ骨材反応による損傷を受けたか否か、また、どの程度の損傷であるかに関する情報が得られ、両者の情報から総合的に判定することにより、より高い確度でコンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定することが可能である。
【0036】
なお、図2のパルス透過法に比べて、図7の鋼球落下による衝撃弾性波法の方が、入力する弾性波のエネルギーが大きく、試験コアを自由振動させることになるため、コンクリート内の平均的な剛性率をよく捉えることができ、また、同じ試験コアで複数回同様の計測をする場合の結果(例えば、応答周波数ピークの測定結果)の再現性は高く、計測者による読み取り誤差も少なくなる。
【0037】
また、図13と図14より、パルス透過法に比べて、鋼球落下による衝撃弾性波法の方が、アルカリ骨材反応による伝播速度の低下を捉えやすい傾向があることが分かる。これは、次の理由によるものと考えられる。
鋼球φ10〜20mmを用いた場合、入力できる弾性波の波長は数十cmであり、φ100mmの試験コアの寸法より十分に長い。このため、衝撃弾性波法では棒を伝わる縦波の速度が求められていることになる。一方、パルス透過法では使用している弾性波の波長は数cmであり、実体波P波速度が算出されている。
実体波P波速度VPと棒を伝播する縦波の速度V1との間には、以下の数1のような関係がある。
【数1】
両者の関係はポアソン比によって決まるが、アルカリ骨材反応を生じたコンクリートのポアソン比についてはこれまでに知見が得られていない。
試験コアではないが、同時に作製したテストピースの強度試験結果によれば、劣化前のコンクリートで0.2程度(この時、棒を伝わる縦波の速度は実体波P波速度の0.95倍)、アルカリ骨材反応により5000μm程度膨張したコンクリートで0.3程度(この時、棒を伝わる縦波の速度は実体波P波速度の0.86倍)であった。このため、棒を伝播する縦波の速度として算出される衝撃弾性波法の方が、アルカリ骨材反応による伝播速度の低下が現れ易かったと考えられる。
【0038】
以上、本発明に係るアルカリ骨材反応判定方法の試験例を記載したが、本発明は、何ら上記の試験例に限定されず、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは当然である。
例えば、本発明を実施するに当たって、弾性波の伝播速度を検出する方法は、上記図2及び図7に基づいて説明した方法に限られない。例えば、図2の方法の場合、入力信号はパルスに限られず、連続波を採用し、応答関数から伝播速度を求めたり、図7の方法の場合、複数の加速度計を取り付け、振動モードを明確にし、V=2fLの式が成立するモードの振動の周波数を検出する等の変更を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】コンクリート供試体の側面図(A)、正面図(B)である。
【図2】試験コア中の弾性波の伝播速度を測定する第1の方法を示した概念図である。
【図3】促進養生をさせる前のコンクリート供試体から採取した試験コア中を伝播した弾性波の受信信号の例である。
【図4】アルカリ骨材反応が進行したコンクリート供試体から採取した試験コア中を伝播した弾性波の受信信号の例である。
【図5】図3の信号の周波数スペクトラムである。
【図6】図4の信号の周波数スペクトラムである。
【図7】試験コア中の弾性波の伝播速度を測定する第2の方法を示した概念図である。
【図8】促進養生をさせる前のコンクリート供試体から採取した試験コアの自由振動を加速度センサで受信した信号の例である。
【図9】アルカリ骨材反応が進行したコンクリート供試体から採取した試験コアの自由振動を加速度センサで受信した信号の例である。
【図10】図8の信号の周波数スペクトラムである。
【図11】図9の信号の周波数スペクトラムである。
【図12】潜伏期相当の試料と、進展期相当の試料と、劣化期相当の試料と、正常なコンクリートについて、膨張量を材齢の関数として測定した例である。
【図13】潜伏期相当の試料と、進展期相当の試料と、劣化期相当の試料と、正常なコンクリートについて、超音波パルス伝播速度を材齢の関数として測定した例である。
【図14】潜伏期相当の試料と、進展期相当の試料と、劣化期相当の試料と、正常なコンクリートについて、縦弾性波伝播速度を材齢の関数として測定した例である。
【図15】コンクリート配合条件と超音波パルス伝播速度の関係を示した図である。
【図16】反応性コアの膨張特性概略図である。
【図17】膨張特性からアルカリ骨材反応の進行を判定する原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
1 試験コア
2 電気・音響トランデューサ
3 パルス信号発生器
4 分析器
5 加速度センサ
6 鋼球
S1 入力パルス信号
S2 受信信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ骨材反応判定方法に関するものである。
なお、アルカリ骨材反応とは、セメントコンクリートに含有されるアルカリ成分(NaとK)が、非晶質のシリカなどの反応性鉱物を含む骨材と反応し、アルカリシリカゲルを生成することを言う。
【背景技術】
【0002】
アルカリ骨材反応を起こす鉱物は、不安定なシリカ鉱物(クリストバライト、トリジマイト、オパールなど)、結晶性の石英であっても、微細な結晶粒や歪んだ結晶格子をもつものであり、これら以外に、シリケート鉱物や非晶質の火山ガラスなどがある。これらの鉱物は、火山岩(例えば安山岩)やチャートのような堆積岩に含まれている。
この種の鉱物を多く含む骨材をコンクリートに使用した場合、コンクリート中のNaOHやKOHを主成分とする空隙水が、骨材中の反応性の高い上記シリカ鉱物などと反応して、骨材の周囲にアルカリシリカゲルを生成する。アルカリシリカゲルは吸水・膨潤する性質があり、コンクリートに異常な膨張やそれに伴うひび割れを発生させる。
このアルカリ骨材反応が起きると、無筋コンクリートや鉄筋量の少ないコンクリート構造物では、網の目状または亀甲状のひび割れが発達し、鉄筋コンクリートおよびPCコンクリート構造物では、軸方向鉄筋やPC鋼材に沿った方向性のあるひび割れが生じる。
近年、アルカリ骨材反応により過大な膨張が生じた構造物には、コンクリート強度の低下、鉄筋とかぶりとの付着力の低下、曲げ加工部や圧接部での鉄筋破断などの損傷が確認されており、構造物の維持管理において、アルカリ骨材反応が生じているか否か、あるいは、生じている場合には、その損傷はどの程度であるのか、また、将来的にどの程度進行するのかを予測することが非常に重要である。
【0003】
上記アルカリ骨材反応によって生じるコンクリート表面の変状(例えば、ひび割れ、変色、ゲルの滲出)は、アルカリ骨材反応に特有なものであるので、劣化がある程度進行した段階(加速期や劣化期)では、目視調査のみでも比較的高い確度で原因を特定できる場合がある。
しかし、潜伏期(アルカリ骨材反応は生じているが、外観上の変化が見られない時期)あるいは進展期の初期においては、荷重や支持条件の変化によって生じる構造的なひび割れや、コンクリートの収縮など材料に起因するひび割れ、あるいは、施工の不具合によって生じたひび割れ等と区別することが困難な場合がある。
【0004】
目視による判定が困難な場合には、一般的には、構造物から採取したコアの強度試験、あるいは、コアの膨張率試験が行われる。
コアの強度試験では、非特許文献4に示されるように、圧縮強度と静弾性係数の結果からアルカリ骨材反応が生じているか否かを判断する。劣化が相当に進行していれば静弾性係数が顕著に低下するため判定は可能であるが、外来アルカリなどによって、将来的にアルカリ骨材反応を生じる可能性があっても、それが顕在化する以前であれば、強度試験だけから判定することは難しい。
一方、コアの残存膨張試験は、採取したコアにコンタクトゲージ測定用のポイントを接着したステンレス製バンドを巻き付け、各種養生条件の下でポイント間の長さ変化を測定し、コンクリートの膨張率を経時的に測定するものである。この試験方法には、コア採取後の促進養生方法や判定基準が異なる幾つかの方法(例えば、JCI−DD2法、デンマーク法、及びカナダ法など)がある。
【0005】
特許文献1には、コンクリートの促進膨張試験によって得られたコンクリートの膨張量の変化と水酸化アルカリ濃度の相関関係を用いて、アルカリシリカ反応による劣化進行を予測する方法が提案されている。
また、非特許文献1には、アルカリ骨材反応を生じたコンクリート構造物のコア試料による膨張量の測定方法が詳しく説明されている。
さらに、非特許文献2には、北陸地方の特徴である安山岩粒子が主要な反応性骨材である川砂及び非晶質なシリカからなるガラス砂について、デンマーク法、JIS A 1146法、及びASTM C 1260法による調査が報告されている。
また、非特許文献3には、北陸地方でコンクリート骨材として使われる河川砂利について、カナダ法による調査が報告されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−274291号公報
【非特許文献1】耐久性診断研究委員会報告書(社団法人 日本コンクリート工学協会 1989年6月)
【非特許文献2】「促進養生試験による骨材のアルカリシリカ反応性評価」(鳥居和之外、コンクリート工学年次論文集 Vol.26 No.1, 2004 )
【非特許文献3】「コアによるコンクリート構造物のアルカリシリカ反応の判定」(野村昌弘外、コンクリート工学年次論文集 Vol.23 No.1, 2001 )
【非特許文献4】小林一輔、森弥広、野村謙二:圧縮載荷試験によるアルカリ骨材反応の診断方法、土木学会論文集、No.460/V・18、pp.151-154、1993.2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1に記載されている方法を、以下に簡単に紹介する。
図16は、反応性コアの膨張特性概略図である。コアを採取直後から湿度100%に近い状態で標準養生すると、一定量の膨張が生じる。さらにその状態で促進養生をすると、コンクリート中に残存している反応性物質による膨張が生じる。前者は、既に発生しているアルカリ骨材反応の尺度となり、解放膨張と呼ばれる。後者は、構造物が将来膨張する危険度を示す尺度で、残存膨張と呼ばれる。
図17は、膨張特性からアルカリ骨材反応の進行を判定する原理を説明する図である。同じ膨張率であっても、解放膨張率の割合が大きい場合は、アルカリ骨材反応は終了期に近いと判断し、逆に、残存膨張率の割合が大きい場合は、構造物の損傷が将来拡大する余地があると判断する。
【0008】
ただし、得られた結果の解釈については、以下のような課題がある。
解放膨張率は、既に発生しているアルカリ骨材反応の尺度になると言われているが、統計的なデータはほとんど無い。例えば、本願発明の試験例を記載した図12における標準養生中の膨張量が解放膨張量に相当するものであるが、その数値は高々200μm乃至500μm程度であり、コア採取後の保管状況によっては乾燥の影響によって容易に変動してしまう値であり、過去に受けた損傷程度については分からない場合が多い。
一方、残存膨張率は、今後の劣化進行を予測する上で役に立つ指標であるが、既に反応が収束している場合には、コアはほとんど膨張せず、健全なコンクリートとの識別ができない可能性がある。
なお、コアの残存膨張試験および判定に要する時間は、最も一般的に実施されているJCI−DD2法で、約半年を要する。
【0009】
上記のような場合、偏光顕微鏡や粉末X線回折による岩種判定、アルカリ含有量分析、シリカゲルの確認等を行えば、劣化原因がアルカリ骨材反応であるかどうかを判定することはできるが、これらの方法は、専門的な知識や技術が必要であり、その判定基準も定量的なものとは言えない。また、試料数が多い場合などは、迅速に判定することも困難である。仮に、劣化原因がアルカリ骨材反応であることは分かっても、過去の損傷程度や今後の劣化進行の可能性について知ることはできない。
【0010】
本発明は、上述した背景技術が有する問題点に鑑み成されたものであって、コンクリート構造物にアルカリ骨材反応が生じているか否か、また、過去に受けたアルカリ骨材反応による損傷の程度、さらには、将来的にアルカリ骨材反応による劣化が進行するか否かを、簡便に、しかも早期に判定することのできるアルカリ骨材反応判定方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題は、下記の〔1〕〜〔7〕の本発明に係るアルカリ骨材反応判定方法によって解決された。すなわち、
〔1〕 コンクリート構造物から試験コアを採取するコア採取過程と、前記試験コアに縦波弾性波を発生させる励振過程と、前記縦波弾性波を受信する受信過程と、受信された信号を分析して前記試験コア中の縦波弾性波の伝播速度を求める分析過程と、前記分析過程で得られた縦波弾性波の伝播速度から前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定する判定過程とを含む、アルカリ骨材反応判定方法。
〔2〕 前記励振過程が、所定の重さと形状の物体を所定の高さから前記試験コアに落下させて縦波弾性波を励振させる過程であり、前記受信過程が、励振された前記縦波弾性波を前記試験コアに設けられた加速度センサで受信する過程であり、前記分析過程が、受信された前記縦波弾性波の周波数分析を行い、ピーク周波数から縦波弾性波の伝播速度を求める過程である、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔3〕 前記励振過程が、前記試験コアに設けられた送信器からパルス弾性波を送る過程であり、前記受信過程が、前記試験コアに設けられた受信器で前記パルス弾性波を受信する過程であり、前記分析過程が、前記送信器で送信した信号と前記受信器で受信した信号の到達時間差に基づいて縦波弾性波の伝播速度を求める過程である、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔4〕 前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の時期の縦波弾性波の伝播速度が所定の値以上である場合には、健全なコンクリート構造物と判定するものである、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔5〕 前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の期間の縦波弾性波の伝播速度が上昇している場合には、既にかなりのアルカリ骨材反応により損傷を受けた構造物(劣化期にあるコンクリート構造物)と判定するものである、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔6〕 前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の期間の縦波弾性波の伝播速度が低下している場合には、今後、アルカリ骨材反応による劣化進行が予測される構造物(潜伏期にあるコンクリート構造物)と判定するものである、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
〔7〕 前記試験コアの膨張量測定を行い解放膨張量及び/ 又は残存膨張量を求める膨張量測定過程をさらに含み、前記膨張量測定過程の結果もふまえて前記判定過程において前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定する、前記〔1〕のアルカリ骨材反応判定方法。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明に係るアルカリ骨材反応判定方法によれば、コンクリート構造物にアルカリ骨材反応が生じているか否か、また、過去に受けたアルカリ骨材反応による損傷の程度、さらには、将来的にアルカリ骨材反応による劣化が進行するか否かを、簡便に、しかも早期に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、上記した本発明に係るアルカリ骨材反応判定方法の有効性を示す、試験例について説明する。
【0014】
試験用のコンクリートは、次のようにして作製された。
セメントは普通ポルトランドセメント、細骨材は非反応性の陸砂、粗骨材は反応性骨材(化学法試験の結果、無害ではないと判定された骨材)及び非反応性骨材を容積比5:5で混合して使用した。
アルカリ骨材反応を促進させるために、等価アルカリ量が8.0kg/m3となるようにNaOHを練混ぜ水に添加した。
対比試験用に、アルカリを添加しない正常なコンクリートも用意した。
【0015】
コンクリート供試体の仕様は、表1及び表2に示したとおりであった。
【表1】
【表2】
【0016】
図1に使用したコンクリート供試体の側面図(A)、正面図(B)を示す。供試体はポストテンション方式で作製したPC(プレストレストコンクリート)供試体で、使用したPC鋼材はφ11mmのPC鋼棒であった。
【0017】
上記コンクリート供試体について、脱型後に28日間湿布養生を行い、その後、湿度98%、温度40℃の恒温室にて促進アルカリ骨材反応養生を行った。
そして、促進養生をさせる前のコンクリート供試体(試料No.0:潜伏期相当)と、アルカリ骨材反応によりひび割れが顕在化したコンクリート供試体(試料No.1:進展期相当)と、アルカリ骨材反応により劣化が相当進行したコンクリート供試体(試料No.2:劣化期相当)、及び正常なコンクリート供試体(健全)から、各々試験コアを採取した。
試験コアの採取は、図1に示す位置で行われた。試験コアは、それぞれ直径が100mmで、長さが300mmであった。
【0018】
上記のようにして採取した試験コアについて、JCI−DD2法に準拠して、膨張量試験を行うと共に、試験コア中の弾性波の伝播速度を、下記の二つの方法で計測した。
【0019】
図2は、試験コア中の弾性波の伝播速度を測定する第1の方法の概念図である。
この方法においては、試験コア1の両端面に電気・音響トランデューサ2,2を密着させて設けておく。そして、パルス信号発生器3からパルス信号を一方の電気・音響トランスデューサ2に送り、試験コア1の一端で弾性波を発生させる(励振過程)。そして、試験コア1内を伝播し、他端に到達した音響信号は他方の電気・音響トランスデューサ2で電気信号に変換される(受振過程)。パルス信号発生器3からの入力パルス信号S1と、電気信号に変換された受信信号S2が分析器4に送られる。分析器4で信号が解析され、試験コア内を透過した弾性波の伝播速度の計算や周波数分析等が行われる(分析過程)。弾性波の伝播速度は、例えば、信号パルスの立ち上がり時点の遅れに基づいて、公知の技術を用いて容易に求めることができる。
【0020】
図3は、促進養生をさせる前のコンクリート供試体(試料No.0:潜伏期相当)から採取した試験コア1中を伝播した弾性波の受信信号の例である。図4は、アルカリ骨材反応が進行し、膨張量が2860μmであるコンクリート供試体(試料No.1:進展期相当)から採取した試験コア1中を伝播した弾性波の受信信号の例である。また、図5と図6は、それぞれ図3と図4の信号の周波数スペクトラムである。
【0021】
上記図3の受信信号と比べて、上記図4の受信信号の信号強度は非常に小さくなっている。また、図6の周波数分布からは図5で見られる150kHz付近の高周波成分が消失していることが分かる。これは、アルカリ骨材反応の進行により生成した微細なひび割れやアルカリシリカゲルを透過する際に、弾性波が吸収される、あるいは散乱するなどして減衰したためと考えられる。
このように出力信号の波形が崩れていると、パルス入力時間と透過したパルスの立ち上り時間の差から弾性波の伝播速度を求めることが困難な場合もある。パルス入力強度を大きくする、あるいは試験コア長さを短くするなどの方法で出力波形の立ち上り時間を見やすくすることは可能であるが、試験条件が変化するため望ましくない。
【0022】
上記のことから、図2のパルスを透過させる方法では、透過パルスの立ち上がり時間が正確に読み取れず、また、計測者による誤差が生じることもある。さらに、計測装置の時間軸分解能(サンプリング周波数)によっては、精度が期待できない場合もある。
【0023】
図7は、試験コア中の弾性波の伝播速度を測定する第2の方法の概念図である。
この方法においては、試験コア1の任意の点、例えば試験コア1の片側端面に加速度センサ5を密着させて設けておく。そして、試験コア1の一方の端面を上方に向けて、かつ試験コア1の振動を減衰させないように、すなわち、自由振動が可能なように試験コア1を支持しておく。
この状態で、試験コア1から所定距離、例えば30cmの高さから、所定の物体6、例えば直径20mm、質量30g程度の鋼球を落として試験コア1の端面に当てて、試験コア1を自由振動させる(励振過程)。入力された弾性波は、試験コア1の両端面を往復し、試験コア全体は自由振動する。そして、その振動を上記加速度センサ5で検出する(受振課程)。
なお、自由振動をさせるためには、必ずしも上記の鋼球を使う必要はなく、鉄製あるいはプラスチック製のハンマー等により打撃する方法でも良いが、条件を規格化するために、所定の重さと形状の物体を所定の高さから落下させる方法を採用することは好ましい。
【0024】
長さがLの円筒形物体の端面に円筒軸の方向に衝撃を加えたときに、円筒体の中に励起される弾性波の自由振動の応答周波数ピークfは、その物体の縦波弾性波速度Vと、次の式の関係にある。
V=2fL
従って、自由振動の応答周波数ピークfを検出することにより、縦波弾性波速度Vを求めることができる(分析過程)。
試験コアの寸法がφ50〜100mm、長さ100〜400mm程度であれば、検出される応答周波数ピークfは数kHzから数十kHzの範囲内の値となる。サンプリング間隔は数十μs、解析に必要なデータ数は2000個程度である。
【0025】
図8は、促進養生をさせる前のコンクリート供試体(試料No.0:潜伏期相当)から採取した試験コア1の自由振動を加速度センサ5で受信した信号の例である。図9は、アルカリ骨材反応が進行し、膨張量が5000μmであるコンクリート供試体(試料No.2:劣化期相当)から採取した試験コア1の自由振動を加速度センサ5で受信した信号の例である。図10と図11は、それぞれ図8と図9の信号の周波数スペクトラムである。
【0026】
上記図11の場合、上記図10に比べて、応答周波数ピークが下がっている。これは、アルカリ骨材反応が進むと、アルカリシリカゲルや微細ひび割れの生成によって、試験コア1の縦波弾性波速度Vが小さくなり、この結果、応答周波数ピークが下がると考えられる。
【0027】
図12は、試料No.0(潜伏期相当)と、試料No.1(進展期相当)と、試料No.2(劣化期相当)と、正常なコンクリート(健全)について、それぞれ試験コアの膨張量試験を行い、解放膨張量及び残存膨張量を、材齢の関数として示した図である。
なお、膨張量試験は、上記したようにJCI−DD2法に準拠して行った。
【0028】
試料No.0(潜伏期相当:黒菱形印)の試験コアの膨張量測定では、促進養生後の膨張量の立ち上がりが大きいが、試料No.1(進展期相当:白丸印)ではその立ち上がりが小さくなり、試料No.2(劣化期相当:黒三角印)では殆ど立ち上がらず、正常なコンクリート(健全:バツ印)と明確に区別を付けることができないことが分かる。
すなわち、膨張量測定では、調査時までにどの程度すでに膨張していたかが不明であり、例えばアルカリ骨材反応が収束していると、劣化原因がアルカリ骨材反応であっても、試験コアは膨張せず、アルカリ骨材反応を検出することができないことが分かる。
【0029】
図13は、試料No.0(潜伏期相当)と、試料No.1(進展期相当)と、試料No.2(劣化期相当)と、正常なコンクリート(健全)について、上記膨張量試験と並行して、それぞれの試験コアについて図2に示した方法で超音波パルス伝播速度の測定を行い、材齢の関数としてその測定値を示した図である。
また、図14は、試料No.0(潜伏期相当)と、試料No.1(進展期相当)と、試料No.2(劣化期相当)と、正常なコンクリート(健全)について、上記膨張量試験と並行して、それぞれの試験コアについて図7に示した方法で縦弾性波伝播速度の測定を行い、材齢の関数としてその測定値を示した図である。
【0030】
一般に、コンクリート構造物が健全な状態にある場合の伝播速度(例えば、竣工時の伝播速度など)は不明であるが、コンクリートの配合条件が既知の場合には、その伝播速度の推定が可能である。
例えば、試験に使用した骨材を用いて、水セメント比と単位粗骨材量を変化させ、アルカリを添加しないコンクリート供試体を作製し、超音波パルス伝播速度を計測したところ、図15に示したような結果を得た。
今回の試験に使用したコンクリートの配合は、表2の通りW/C=50%、単位粗骨材量380L/m3であるから、図15から健全な状態の超音波パルス伝播速度は約4500m/sと推定できる。この推定結果は、図13に示す正常なコンクリート(健全:バツ印)の伝播速度とほぼ一致している。
同様の推定方法によって、試験に使用したコンクリート配合の健全な状態における縦弾性波伝播速度は、約4200m/sと推定できる。
【0031】
上記図13、図14から、少なくとも材齢90日(標準養生40日+促進養生50日)以降であれば、全ての試料について、アルカリ骨材反応が生じたコンクリートと正常なコンクリートとを明確に区別できることが分かる。
すなわち、正常なコンクリート(健全:バツ印)のみが推定された伝播速度(約4500m/s、あるいは約4200m/s)から低下しておらず、図13において4500m/s程度、図14において4100m/s強を保持している。これに対して、アルカリ骨材反応が生じたコンクリートは、コア採取時の劣化状態によらず伝播速度が低下し、図13において4000m/s強、図14においては3400m/s程度となっている。
特に、膨張率試験では区別できなかった劣化期相当のコンクリート(No.2:黒三角印)と正常なコンクリート(健全:バツ印)を明瞭に区別できる。
上記のことより、所定の時期、例えば促進養生開始から50日後に測定した伝播速度が、配合条件から推定される伝播速度の95%以上(例えば、パルス弾性波の入力による計測の場合に4200m/s以上、衝撃弾性波の入力による計測の場合には4000m/s以上)なら、健全なコンクリート構造物であると判定することが可能である。
【0032】
また、図13、図14から、解放膨張試験の間、すなわちコア抜き直後から解放膨張が終了する材齢40日程度の間において伝播速度が上昇して現れるのは、試料No.2(劣化期相当:黒三角印)の試料のみであり、他は概ね伝播速度の変化は見られないことが分かる。
上記のことから、所定の期間、例えば構造物から採取した試験コアについて、コア抜き直後と解放膨張終了時(材齢40日程度)の伝播速度を比較し、伝播速度が上昇しているようであれば、過去に既にかなりのアルカリ骨材反応により損傷を受けた構造物(劣化期にあるコンクリート構造物)と判定することが可能である。なお、劣化が相当に進んだ試料において、解放膨張試験期間中に膨張を示しながらも、伝播速度が上昇する原因については不明であるが、例えば、試験中の湿潤条件下でコア供試体自体が吸水した、あるいはアルカリシリカゲルが吸水膨潤することによりコア供試体中の微細ひび割れが充填されたことなどが考えられる。
【0033】
さらに、図13、図14から、解放膨張終了後、促進養生の初期の段階(促進養生開始後30〜50日)において急激に伝播速度が低下して現れるのは、試料No.0(潜伏期相当:黒菱形印)の試料のみであり、他は、大きな伝播速度の変化は認められないことが分かる。
上記のことから、所定の期間、例えば構造物から採取した試験コアについて、解放膨張終了直後と促進養生30〜50日後(材齢70〜80日)の伝播速度を比較し、伝播速度が低下しているようであれば、今後、アルカリ骨材反応により劣化進行が予想される構造物(潜伏期にあるコンクリート構造物)と判定することが可能である。なお、潜伏期の試料において、この間に伝播速度の低下が現れるのは、促進養生によって急激に試料のアルカリ骨材反応が進行し、アルカリシリカゲルやひび割れ、亀裂の生成のためであると考えられる。
【0034】
なお、上記した劣化期にあるコンクリート構造物との判定、あるいは潜伏期にあるコンクリート構造物との判定は、所定期間における伝播速度の上昇あるいは低下をもって判定を行うものであり、必ずしも配合条件からの伝播速度推定は必要でない。
【0035】
また、上記試験例の如く、試験コアに対する膨張量試験と並行して上記伝播速度の測定を行うこととすると、膨張量の試験からは将来の膨張性有無に関する情報が得られ、伝播速度の測定値およびその変化からは現時点までにアルカリ骨材反応による損傷を受けたか否か、また、どの程度の損傷であるかに関する情報が得られ、両者の情報から総合的に判定することにより、より高い確度でコンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定することが可能である。
【0036】
なお、図2のパルス透過法に比べて、図7の鋼球落下による衝撃弾性波法の方が、入力する弾性波のエネルギーが大きく、試験コアを自由振動させることになるため、コンクリート内の平均的な剛性率をよく捉えることができ、また、同じ試験コアで複数回同様の計測をする場合の結果(例えば、応答周波数ピークの測定結果)の再現性は高く、計測者による読み取り誤差も少なくなる。
【0037】
また、図13と図14より、パルス透過法に比べて、鋼球落下による衝撃弾性波法の方が、アルカリ骨材反応による伝播速度の低下を捉えやすい傾向があることが分かる。これは、次の理由によるものと考えられる。
鋼球φ10〜20mmを用いた場合、入力できる弾性波の波長は数十cmであり、φ100mmの試験コアの寸法より十分に長い。このため、衝撃弾性波法では棒を伝わる縦波の速度が求められていることになる。一方、パルス透過法では使用している弾性波の波長は数cmであり、実体波P波速度が算出されている。
実体波P波速度VPと棒を伝播する縦波の速度V1との間には、以下の数1のような関係がある。
【数1】
両者の関係はポアソン比によって決まるが、アルカリ骨材反応を生じたコンクリートのポアソン比についてはこれまでに知見が得られていない。
試験コアではないが、同時に作製したテストピースの強度試験結果によれば、劣化前のコンクリートで0.2程度(この時、棒を伝わる縦波の速度は実体波P波速度の0.95倍)、アルカリ骨材反応により5000μm程度膨張したコンクリートで0.3程度(この時、棒を伝わる縦波の速度は実体波P波速度の0.86倍)であった。このため、棒を伝播する縦波の速度として算出される衝撃弾性波法の方が、アルカリ骨材反応による伝播速度の低下が現れ易かったと考えられる。
【0038】
以上、本発明に係るアルカリ骨材反応判定方法の試験例を記載したが、本発明は、何ら上記の試験例に限定されず、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは当然である。
例えば、本発明を実施するに当たって、弾性波の伝播速度を検出する方法は、上記図2及び図7に基づいて説明した方法に限られない。例えば、図2の方法の場合、入力信号はパルスに限られず、連続波を採用し、応答関数から伝播速度を求めたり、図7の方法の場合、複数の加速度計を取り付け、振動モードを明確にし、V=2fLの式が成立するモードの振動の周波数を検出する等の変更を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】コンクリート供試体の側面図(A)、正面図(B)である。
【図2】試験コア中の弾性波の伝播速度を測定する第1の方法を示した概念図である。
【図3】促進養生をさせる前のコンクリート供試体から採取した試験コア中を伝播した弾性波の受信信号の例である。
【図4】アルカリ骨材反応が進行したコンクリート供試体から採取した試験コア中を伝播した弾性波の受信信号の例である。
【図5】図3の信号の周波数スペクトラムである。
【図6】図4の信号の周波数スペクトラムである。
【図7】試験コア中の弾性波の伝播速度を測定する第2の方法を示した概念図である。
【図8】促進養生をさせる前のコンクリート供試体から採取した試験コアの自由振動を加速度センサで受信した信号の例である。
【図9】アルカリ骨材反応が進行したコンクリート供試体から採取した試験コアの自由振動を加速度センサで受信した信号の例である。
【図10】図8の信号の周波数スペクトラムである。
【図11】図9の信号の周波数スペクトラムである。
【図12】潜伏期相当の試料と、進展期相当の試料と、劣化期相当の試料と、正常なコンクリートについて、膨張量を材齢の関数として測定した例である。
【図13】潜伏期相当の試料と、進展期相当の試料と、劣化期相当の試料と、正常なコンクリートについて、超音波パルス伝播速度を材齢の関数として測定した例である。
【図14】潜伏期相当の試料と、進展期相当の試料と、劣化期相当の試料と、正常なコンクリートについて、縦弾性波伝播速度を材齢の関数として測定した例である。
【図15】コンクリート配合条件と超音波パルス伝播速度の関係を示した図である。
【図16】反応性コアの膨張特性概略図である。
【図17】膨張特性からアルカリ骨材反応の進行を判定する原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
1 試験コア
2 電気・音響トランデューサ
3 パルス信号発生器
4 分析器
5 加速度センサ
6 鋼球
S1 入力パルス信号
S2 受信信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物から試験コアを採取するコア採取過程と、前記試験コアに縦波弾性波を発生させる励振過程と、前記縦波弾性波を受信する受信過程と、受信された信号を分析して前記試験コア中の縦波弾性波の伝播速度を求める分析過程と、前記分析過程で得られた縦波弾性波の伝播速度から前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定する判定過程とを含むことを特徴とする、アルカリ骨材反応判定方法。
【請求項2】
前記励振過程が、所定の重さと形状の物体を所定の高さから前記試験コアに落下させて縦波弾性波を励振させる過程であり、前記受信過程が、励振された前記縦波弾性波を前記試験コアに設けられた加速度センサで受信する過程であり、前記分析過程が、受信された前記縦波弾性波の周波数分析を行い、ピーク周波数から縦波弾性波の伝播速度を求める過程であることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定方法。
【請求項3】
前記励振過程が、前記試験コアに設けられた送信器からパルス弾性波を送る過程であり、前記受信過程が、前記試験コアに設けられた受信器で前記パルス弾性波を受信する過程であり、前記分析過程が、前記送信器で送信した信号と前記受信器で受信した信号の到達時間差に基づいて縦波弾性波の伝播速度を求める過程であることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材判定方法。
【請求項4】
前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の時期の縦波弾性波の伝播速度が所定の値以上である場合には、健全なコンクリート構造物と判定するものであることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定方法。
【請求項5】
前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の期間の縦波弾性波の伝播速度が上昇している場合には、既にかなりのアルカリ骨材反応により損傷を受けた構造物(劣化期にあるコンクリート構造物)と判定するものであることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定法。
【請求項6】
前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の期間の縦波弾性波の伝播速度が低下している場合には、今後、アルカリ骨材反応により劣化進行が予想される構造物(潜伏期にあるコンクリート構造物)と判定するものであることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定法。
【請求項7】
前記試験コアの膨張量測定を行い解放膨張量及び/又は残存膨張量を求める膨張量測定過程をさらに含み、前記膨張量測定過程の結果もふまえて前記判定過程において前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定することを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定方法。
【請求項1】
コンクリート構造物から試験コアを採取するコア採取過程と、前記試験コアに縦波弾性波を発生させる励振過程と、前記縦波弾性波を受信する受信過程と、受信された信号を分析して前記試験コア中の縦波弾性波の伝播速度を求める分析過程と、前記分析過程で得られた縦波弾性波の伝播速度から前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定する判定過程とを含むことを特徴とする、アルカリ骨材反応判定方法。
【請求項2】
前記励振過程が、所定の重さと形状の物体を所定の高さから前記試験コアに落下させて縦波弾性波を励振させる過程であり、前記受信過程が、励振された前記縦波弾性波を前記試験コアに設けられた加速度センサで受信する過程であり、前記分析過程が、受信された前記縦波弾性波の周波数分析を行い、ピーク周波数から縦波弾性波の伝播速度を求める過程であることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定方法。
【請求項3】
前記励振過程が、前記試験コアに設けられた送信器からパルス弾性波を送る過程であり、前記受信過程が、前記試験コアに設けられた受信器で前記パルス弾性波を受信する過程であり、前記分析過程が、前記送信器で送信した信号と前記受信器で受信した信号の到達時間差に基づいて縦波弾性波の伝播速度を求める過程であることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材判定方法。
【請求項4】
前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の時期の縦波弾性波の伝播速度が所定の値以上である場合には、健全なコンクリート構造物と判定するものであることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定方法。
【請求項5】
前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の期間の縦波弾性波の伝播速度が上昇している場合には、既にかなりのアルカリ骨材反応により損傷を受けた構造物(劣化期にあるコンクリート構造物)と判定するものであることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定法。
【請求項6】
前記判定過程が、前記分析過程で得られた所定の期間の縦波弾性波の伝播速度が低下している場合には、今後、アルカリ骨材反応により劣化進行が予想される構造物(潜伏期にあるコンクリート構造物)と判定するものであることを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定法。
【請求項7】
前記試験コアの膨張量測定を行い解放膨張量及び/又は残存膨張量を求める膨張量測定過程をさらに含み、前記膨張量測定過程の結果もふまえて前記判定過程において前記コンクリート構造物のアルカリ骨材反応の進行状況を判定することを特徴とする、請求項1記載のアルカリ骨材反応判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−128846(P2008−128846A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314793(P2006−314793)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【Fターム(参考)】
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