説明

アルキド樹脂の製造方法

【課題】芳香族炭化水素に替わる還流溶剤を用いた、芳香族炭化水素の含有量を著しく低減できるアルキド樹脂であって、塗料化した場合に芳香族炭化水素の含有量を100ppm以下に低減できるアルキド樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】炭素数7〜13の脂肪族炭化水素および/または脂環式炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素の含有量が100ppm以下、好ましくは炭素数9〜11の脂肪族炭化水素および/または脂環式炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素の含有量が10ppm以下の還流溶剤(I)の存在下、好ましくは後記する原料成分(II)100重量部に対して0.5〜5重量部の還流溶剤(I)の存在下で、動植物油あるいはその脂肪酸(A)と、多価アルコール(B)と、多価カルボン酸(C)と、必要によりフェノール樹脂(D)を含有する原料成分(II)を反応させるアルキド樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数7〜13の脂肪族炭化水素および/または炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素の含有量が100ppm以下の還流溶剤の存在下で、動植物油あるいはその脂肪酸と多価アルコールと多価カルボン酸、もしくは、動植物油あるいはその脂肪酸と多価アルコールと多価カルボン酸とフェノール樹脂を含有する原料成分を反応させるアルキド樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキド樹脂の製造方法の1つに、ソルベント法がある。このソルベント法とは、カルボン酸とアルコールとのエステル化反応で生起する縮合水を効率良く反応系外に排出するために、還流溶剤(水と共沸しうる溶剤)をその反応系に添加して蒸発させ、冷却塔で凝縮した後にデカンターと呼ばれる溶剤−水分離器で縮合水と還流溶剤を分離する方法である(例えば、特許文献1参照。)。アルキド樹脂を製造する際、180〜250℃の高温でエステル化反応を実施するが、ソルベント法を用いないと副反応である動植物油あるいは脂肪酸の熱重合が生起するために分子量がより高くなる傾向にある。従って、一般的にアルキド樹脂を製造する場合はソルベント法を用いる。このソルベント法で使用される還流溶剤としては、水と共沸しうるキシレンやトルエンなどの芳香族炭化水素が一般的であった。
【0003】
昨今の環境問題から、アルキド樹脂を主原料として使用する塗料、特に建築塗料あるいは建設機械塗料などは、塗料中に含有する芳香族炭化水素を100ppm以下に低減することが求められている。しかしながら、ソルベント法の還流溶剤としてキシレンやトルエンなどを用いる限り、減圧留去する方法を用いたとしても、塗料中に含有する芳香族炭化水素を100ppm以下に低減することは困難であった。このため、芳香族炭化水素の含有量が著しく低減されたアルキド樹脂を容易に製造できるアルキド樹脂の製造方法を見出すことが急務であった。
【0004】
【特許文献1】特公平01−022287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、塗料中に含有する芳香族炭化水素を100ppm以下に低減することが容易な、芳香族炭化水素の含有量が著しく低減されたアルキド樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、炭素数7〜13の脂肪族炭化水素および/または脂環式炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素が100ppm以下の溶剤を還流溶剤として用いれば、ソルベント法により支障なくアルキド樹脂を製造することができると共に、芳香族炭化水素の含有量を著しく低減でき、これを用いることにより塗料中の芳香族炭化水素も容易に100ppm以下に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、炭素数7〜13の脂肪族炭化水素および/または脂環式炭化水素(以下、脂肪族系炭化水素と略記する。)を含有し、かつ芳香族炭化水素の含有量が100ppm以下の還流溶剤(I)の存在下で、動植物油あるいはその脂肪酸(A)と、多価アルコール(B)と、多価カルボン酸(C)を含有する原料成分(II)を反応させることを特徴とするアルキド樹脂の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルキド樹脂の製造方法は、キシレンやトルエンなどの芳香族炭化水素を還流溶剤として使用していないにもかかわらず、ソルベント法により支障なくアルキド樹脂を製造することができ、しかも、炭素数7〜13の脂肪族系炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素が100ppm以下の還流溶剤の存在下でアルキド樹脂を製造するため、芳香族炭化水素の含有量が著しく低減されたアルキド樹脂を製造することが容易で、塗料中に含有する芳香族炭化水素を100ppm以下に低減することが求められている塗料、特に建築塗料あるいは建設機械塗料などに好適に使用しうるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる炭素数7〜13の脂肪族系炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素が100ppm以下の還流溶剤(I)としては、炭素数7〜13の脂肪族炭化水素および/または炭素数7〜13の脂環式炭化水素を90重量%以上、好ましくは95重量%以上含有する脂肪族系炭化水素溶剤であって、かつ芳香族炭化水素の含有量が100ppm以下の溶剤であればよく、例えば、イソオクタン、イソデカン等の脂肪族炭化水素や、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,2−ジメチル−4−エチルシクロヘキサン,1,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素や、これらの混合物であって、かつ芳香族炭化水素の含有量が100ppm以下である脂肪族系炭化水素溶剤が挙げられ、なかでも、沸点が100〜140℃と還流条件に適当で、容易に縮合水を反応系外に除去できることから、炭素数9〜11の脂肪族系炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素の含有量が10ppm以下の還流溶剤が好ましい。好ましい還流溶剤の具体例としては、商品名「スワクリーン150」(丸善石油化学株式会社製;炭素数9〜11の脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素を合計で95重量%以上含有し、且つ芳香族炭化水素の含有量が10ppm以下の脂肪族系炭化水素溶剤)、商品名「アイソパーG」(エクソンモービル株式会社製;炭素数9〜11の脂肪族炭化水素を95重量%以上含有し、且つ芳香族炭化水素の含有量が10ppm以下の脂肪族系炭化水素溶剤)などが挙げられる。
【0010】
還流溶剤(I)として、炭素数6以下の脂肪族系炭化水素を10重量%を超えて含有する溶剤を用いた場合には、沸点が低くなるため、縮合水を反応系外に除去しにくくなるため、好ましくない。また、還流溶剤(I)として、炭素数14以上の脂肪族系炭化水素を10重量%を超えて含有する溶剤を用いた場合には、沸点が高くなるため還流しにくく、やはえい縮合水を反応系外に除去しにくくなるため、好ましくない。
【0011】
更に、還流溶剤(I)として、炭素数7〜13の脂肪族系炭化水素を90重量%以上含有するが、芳香族炭化水素の含有量が100ppmを越える溶剤、例えば芳香族炭化水素を1〜5重量%程度含有する通常の市販の脂肪族系炭化水素溶剤を用いた場合には、芳香族炭化水素を100ppm以下に低減することが困難となる。
【0012】
本発明で用いる原料成分(II)に含有される動植物油あるいはその脂肪酸(A)としては、例えば、亜麻仁油、大豆油、サフラワー油、支那桐油、あさみ油、えの油、トール油、米糠油、ひまし油、脱水ひまし油、菜種油、綿実油、やし油、魚油、いか肝油などの動植物油ならびにそれらの脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、ハイ・ジエン脂肪酸などヨウ素価〔単位は100gの試料に結合したヨウ素の質量(g)〕が100以上の脂肪酸などが挙げられる。これら種々の動植物油あるいはその脂肪酸は組み合わせた形で併用することも可能である。
【0013】
本発明で用いる原料成分(II)に含有される多価アルコール(B)としては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、2,4,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ブチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイドの付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイドの付加物などの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの三価以上の多価アルコール等が挙げられ、これらの多価アルコールは通常単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これら多価アルコール(B)としては、なかでも、二価アルコールを必須の多価アルコール成分とし、必要に応じて3価以上の多価アルコールを併用することが好ましい。
【0014】
また、前記多価アルコール(B)には、必要に応じて、カルボン酸基を含む多価アルコールを多価アルコールとして用いてもよく、特に代表的なものを例示すれば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジフェノール酸などが挙げられる。
【0015】
本発明で用いる原料成分(II)に含有される多価カルボン酸(C)としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、「無水ハイミック酸」〔日立化成工業(株)製5−ノリボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物〕、トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ピロメリット酸、不飽和脂肪酸から誘導されたダイマー酸類、あるいはこれらの無水物などが挙げられ、当然のことながら、これらの多価カルボン酸は通常単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これら多価カルボン酸(C)としては、なかでも、二価カルボン酸を必須の多価カルボン酸成分とし、必要に応じて3価以上の多価カルボン酸を併用することが好ましい。
【0016】
また、前記多価カルボン酸(C)には、必要に応じて、安息香酸、パラ−ターシャリーブチル安息香酸、ロジン類など一価カルボン酸を併用してもよい。ここで用いるロジン類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、および、これらロジン類を蒸留等により精製したもの等が挙げられる。
【0017】
本発明の製造方法では、得られるアルキド樹脂を用いた塗膜の硬度、耐薬品性等を向上させる目的で、原料成分(II)として、動植物油あるいはその脂肪酸(A)、多価アルコール(B)および多価カルボン酸(C)と共に、フェノール樹脂(D)を含有する原料成分を用いることができる。この際のフェノール樹脂(D)の使用量としては、得られるアルキド樹脂の分子量あるいは粘度を考慮すれば、動植物油あるいはその脂肪酸(A)と多価アルコール(B)と多価カルボン酸(C)とフェノール樹脂(D)を含有する原料成分100重量部に対して1〜10重量部となる範囲が好ましく、3〜7重量部となる範囲がより好ましい。
【0018】
ここで用いることのできるフェノール樹脂(D)としては、特に限定されないが、なかでもレゾール型フェノール樹脂が好ましく、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア水溶液等のアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂や、ノボラック型フェノール樹脂のレゾール化物等が挙げられる。
【0019】
これらレゾール型フェノール樹脂のなかでも、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)をF/P(モル比)が1.5〜3.0となる範囲でアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂が好ましい。これらレゾール型フェノール樹脂の平均核体数としては、平均1〜10核体のものを通常用いるが、なかでも平均3〜6核体のものを主な成分とするものが好ましい。重量平均分子量としては、200〜1,600のものが挙げられるが、なかでも700〜1,300のものが好ましい。
【0020】
前記のフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、アミルフェノール、p−ターシャリーブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、ビスフェノールAなどが挙げられ、そのなかでもp−ターシャリーブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等のパラ位に炭素原子数4〜12の置換基を持つアルキルフェノールが好ましい。
【0021】
また、前記のホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒドの供給物質が包含され、ホルムアルデヒド、バラホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0022】
従来のソルベント法によるアルキド樹脂の製造方法では、動植物油と多価アルコールのアルコール交換反応後に、多価カルボン酸、必要により、更に多価アルコールおよび/またはフェノール樹脂をエステル化反応せしめる工程、もしくは、動植物油の脂肪酸と多価カルボン酸と多価アルコール、必要により、更にフェノール樹脂をエステル化反応せしめる工程にて、アルキド樹脂の製造に用いる原料成分の合計100重量部に対して、5〜10重量部の芳香族炭化水素を還流溶剤として添加する。
【0023】
しかしながら、本発明のアルキド樹脂の製造方法では、炭素数7〜13の脂肪族系炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素の含有量が100ppm以下の還流溶剤(I)は、従来使用していた芳香族炭化水素のアニリン点(キシレン:10.3℃)に比べて高い〔本発明で用いる還流溶剤(I)として好ましい「スワクリーン150」のアニリン点は55℃、「アイソパーG」のアニリン点は78℃。〕。このようにアニリン点の高い溶剤をソルベント法の還流溶剤として用いる本発明の製造方法では、アルキド樹脂と還流溶剤(I)の相溶性ならびにカルボン酸とアルコールとのエステル化反応で生起する縮合水を効率良く反応系外に排出することを考慮すれば、アルキド樹脂の製造に用いる原料成分(II)100重量部に対して、還流溶剤(I)の添加量を0.5〜5重量部とすることが好ましく、1〜3.5重量部とすることがより好ましい。
【0024】
本発明のアルキド樹脂の製造方法で得られるアルキド樹脂としては、特に建築塗料あるいは建設機械塗料などの塗料を始め、インキ、接着剤としても用いることができる。
【実施例】
【0025】
以下に参考例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれ制限されるものではない。なお、例中の部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0026】
実施例1
攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに大豆油505部、水酸化リチウム0.13部およびペンタエリスリトール152部を仕込んで250℃で1時間アルコール交換反応を行った後に、180℃まで冷却した。次いで、エチレングリコール42部、無水フタル酸349部および丸善石油化学株式会社製「スワクリーン150」31部を加えた後、220℃まで3時間を要して徐々に昇温させ、更に220℃で10時間脱水反応を行い、次いで酢酸ブチルで不揮発分を50%に調整して、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価35.0mgKOH/g、重量平均分子量35,400、数平均分子量5,200〔東ソー(株)社製GPC「HLC−8220」を用いてGPCを測定。以降のGPCは同装置を用いて測定した。〕なるアルキド樹脂(1)の溶液2,000部を得た。
【0027】
得られたアルキド樹脂溶液(1)の芳香族炭化水素含有量をGC−MASS〔島津製作所(株)社製GCMS「QP2010」〕を用いて定量分析により求めた(以降の芳香族炭化水素の定量分析についても同装置を用いて測定した。〕ところ、5ppmであった。
【0028】
実施例2
攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに亜麻仁油380部、トール油脂肪酸132部、トリメチロールプロパン181部および水酸化リチウム0.20部を仕込んで260℃で1時間アルコール交換反応を行った後に、180℃まで冷却した。次いで、大日本インキ化学工業(株)製レゾール型フェノール樹脂「ベッカサイトM−342」(固形分75.0%)300部、無水フタル酸232部およびエクソンモービル株式会社製「アイソパーG」57部を加えた後、220℃まで5時間を要して徐々に昇温させ、更に240℃で10時間脱水反応を行い、次いで酢酸ブチルで不揮発分を60%に調整して、酸価15.0mgKOH/g、水酸基価20.0mgKOH/g、重量平均分子量165,000、数平均分子量3,200なるアルキド樹脂(2)の溶液2,000部を得た。得られたアルキド樹脂溶液(2)の芳香族炭化水素含有量をGC−MASSで測定したところ、4ppmであった。
【0029】
比較例1
攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに大豆油505部、水酸化リチウム0.13部およびペンタエリスリトール152部を仕込んで250℃で1時間アルコール交換反応を行った後に、180℃まで冷却した。次いで、エチレングリコール46部、無水フタル酸349部およびキシレン31部を加えた後、220℃まで3時間を要して徐々に昇温させ、更に220℃で8時間脱水反応を行い、次いでキシレンで不揮発分を50%に調整して、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価35.0mgKOH/g、重量平均分子量32,000、数平均分子量5,000なるアルキド樹脂(1′)の溶液2,000部を得た。得られたアルキド樹脂溶液(1′)の芳香族炭化水素含有量をGC−MASSで測定したところ、50.2%であった。
【0030】
比較例2
攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに大豆油505部、水酸化リチウム0.13部およびペンタエリスリトール152部を仕込んで250℃で1時間アルコール交換反応を行った後に、180℃まで冷却した。次いで、エチレングリコール42部、無水フタル酸349部およびエクソンモービル株式会社製「Napper11」(炭素数7〜13の脂肪族炭化水素を90重量%以上含有するが、芳香族炭化水素を1重量%程度含有する脂肪族炭化水素系溶剤)31部を加えた後、220℃まで3時間を要して徐々に昇温させ、更に220℃で8時間脱水反応を行い、次いで酢酸ブチルで不揮発分を50%に調整して、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価35.0mgKOH/g、重量平均分子量40,000、数平均分子量5,500なるアルキド樹脂(2′)の溶液2,000部を得た。得られたアルキド樹脂溶液(2′)の芳香族炭化水素含有量をGC−MASSで測定したところ、600ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のアルキド樹脂の製造方法で得られるアルキド樹脂を塗料中に使用すれば、塗料中に含有する芳香族炭化水素を100ppm以下に低減することが可能になると共に、PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)の非対象物質となるため、昨今の化学物質管理あるいは環境の問題に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数7〜13の脂肪族炭化水素および/または脂環式炭化水素を含有し、かつ芳香族炭化水素の含有量が100ppm以下の還流溶剤(I)の存在下で、動植物油あるいはその脂肪酸(A)と、多価アルコール(B)と、多価カルボン酸(C)を含有する原料成分(II)を反応させることを特徴とするアルキド樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記還流溶剤(I)が、炭素数9〜11の脂肪族炭化水素および/または脂環式炭化水素である請求項1に記載のアルキド樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記還流溶剤(I)中における芳香族炭化水素の含有量が、10ppm以下である請求項1または2に記載のアルキド樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記原料成分(II)が、動植物油あるいはその脂肪酸(A)と、多価アルコール(B)と、多価カルボン酸(C)と共に、フェノール樹脂(D)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルキド樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記還流溶剤(I)の使用量が、原料成分(II)100重量部に対して、0.5〜5重量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルキド樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−79186(P2009−79186A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251225(P2007−251225)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】