説明

アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体、及びそれを有効成分とする荷電制御剤、静電荷像現像用トナー

【課題】耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高く、耐環境性及び保存安定性に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーに使用可能な荷電制御剤の成分である新規化合物を提供する。
【解決手段】アルキルサリチル酸から得られる9配位子とアルミニウム6原子を核とするアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体において、前記6核錯体は3座のアルキルサリチル酸から得られる3配位子とアルミニウム3原子を核とするアルキルサリチル酸アルミニウムの3核錯体を2つ構成し、その2つの3核錯体を少なくとも2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子とヒドロキシルアニオンから得られる配位子がアルミニウム原子に架橋配位しているアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規物質であって、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電潜像を現像するトナーの帯電量を制御し得る荷電制御剤に有用なアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体、及びその製造方法、並びにその荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子の結晶に対し、同一の分子でも分子配列が異なる(結晶多形)と結晶の色、溶剤に対する溶解度、熱的な安定性(融点、昇華点、分解点)が大幅に異なることが知られ、この結晶多形を利用した応用技術は医薬品や有機顔料の開発に広く用いられている。結晶多形を得る手法として、種々の溶媒から再結晶を行うことが知られている。
【0003】
電子写真法を利用した複写機等においては、無機または有機光導電性物質を含有する感光層を備えた感光体上に形成された静電潜像を可視化するために、着色剤、定着用の樹脂等を有する種々の乾式或いは湿式トナーが用いられている。このようなトナーの帯電性は、静電潜像を現像するシステムにおいて最も重要な因子である。そこでトナーの帯電量を適切に制御するために、トナー中に、正電荷または負電荷付与性の荷電制御剤が加えられることが多い。
【0004】
従来実用化されている荷電制御剤として、トナーに正電荷を付与するものには、特許文献1等に開示されているニグロシン系染料などがある。またトナーに負電荷を付与するものとしては、特許文献2、特許文献3、特許文献4等に示されている含金属錯塩染料などがある。しかしながら、以上のような荷電制御剤の多くは、構造が複雑で安定性に乏しく、例えば機械的摩擦や衝撃、温度や湿度の条件の変化、電気的衝撃や光照射等により分解または変質し、荷電制御性が失われやすいものであった。また、こうした従来の荷電制御剤の多くは有色であり、フルカラートナーには不向きであった。
【0005】
このような問題点を解決する手段として、例えば、特許文献5にはアルキル基及び/またはアラルキル基で置換されていてもよい芳香族オキシカルボン酸のアルミニウム化合物を含有する静電荷像現像用トナーが開示されている。また、特許文献6にはアルキルサリチル酸またはアルキルヒドロキシナフトエ酸を用いたヒドロキシアルミニウム錯体化合物が提案されている。
これらはカラートナー用として使用できる利点は有するが、耐熱性、特に熱安定性が不十分であり、更に樹脂に対する均一分散性、又は荷電制御性において、帯電の立ち上がり速度において改善が必要なものであった。
【0006】
【特許文献1】特公昭41−2427号公報
【特許文献2】特公昭41−20153号公報
【特許文献3】特公昭43−17955号公報
【特許文献4】特公昭45−26478号公報
【特許文献5】特開昭63−208865号公報
【特許文献6】特開平5−197207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、荷電制御剤としての用途に最適な新規物質を提供することにある。さらには、樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高く、温度や湿度の変化に対する荷電制御の安定性(耐環境性)及び荷電制御特性の経時安定性(保存安定性)に優れると共に、特に耐熱性の優れた無彩色の荷電制御剤、並びに帯電の立ち上がり速度が高く、温度や湿度の変化に対する帯電安定性(耐環境性)及び帯電特性の経時安定性(保存安定性)に優れると共に、特に様々な有彩色又は無彩色のトナーとして使用可能な静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0008】
本発明者らは、荷電制御剤に用いられるアルキルサリチル酸アルミニウムの結晶形と荷電制御特性に着目して開発を行い、次の結論に至った。アルキルサリチル酸アルミニウム錯体の熱安定性を向上させる為には分子の多核形成による巨大分子化が必須条件と考え、アルコール系、エーテル系、ケトン系、有機顔料で用いる溶剤系を鋭意検討した。その結果、公知の方法で得られたアルキルサリチル酸アルミニウム錯体またアルミニウム塩を、特定の溶媒を用い、再結晶することにより、新規なアルミニウム6核錯体を見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を解決するためになされた特許請求の範囲の請求項1に係るアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体は、
アルキルサリチル酸から得られる9配位子とアルミニウム6原子を核とするアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体において、前記6核錯体は3座のアルキルサリチル酸から得られる3配位子とアルミニウム3原子を核とするアルキルサリチル酸アルミニウムの3核錯体を2つ構成し、その2つの3核錯体を少なくとも2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子とヒドロキシルアニオンから得られる配位子がアルミニウム原子に架橋配位していることを特徴とする。
前記6核錯体は、その2つの3核錯体を、更にカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子で架橋配位してもよい。
【0010】
同じく、請求項2に係るアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体は、請求項1に記載のアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体であって、前記アルキルサリチル酸アルミニウムの3核錯体が下記式(I)
【化1】

(式(I)中、Rは炭素数2〜8のアルキル基を示す。)
で表されるジアルキルサリチル酸アルミニウムの3核錯体であり、2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子Xが下記の式(II)
【化2】

2座のジアルキルサリチル酸から得られる配位子で表され、ヒドロキシルアニオンから得られる配位子Yが下記の式(III)
【化3】

で表され、更にカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子Zが下記の式(IV)
【化4】

で表され、架橋配位していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係るアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体は、同じく請求項1または2に記載のアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体であって、前記ジアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体が下記の式(V)
【化5】

(式(V)中、Rは炭素数2〜8のアルキル基を示し、Xは前記式(II)を示し、Yは前記式(III)を示し、Zは前記式(IV)を示す)で表されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係るアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、同じく請求項1〜3のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体であって、前記アルキルサリチル酸が3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係るアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、請求項2〜4のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体であって、前記カルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子がジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれるカルボニル基またはスルホニル基を有する有機溶剤から得られる配位子であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係るアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、請求項2〜5のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体であって、前記式(IV)のpが1であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係るアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、請求項1〜6のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体であって、前記6核錯体の粉末X線CuKαの回折スペクトルにおけるブラック角2θが5°以上7°未満に主要な2つのピークを示すことを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る荷電制御剤は、請求項1〜7のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体を有効成分とすることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る静電荷像現像用トナーは、請求項8に記載の荷電制御剤並びに着色剤及びトナー用バインダー樹脂を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項10に係る請求項1に記載のアルキルサリチル酸アルミニウム錯体の製造方法は、3,5−ジアルキルサリチル酸のアルミニウム化合物を、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれる溶液中で、再結晶工程を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項11に係る請求項1に記載のアルキルサリチル酸アルミニウム錯体の製造方法は、3,5−ジアルキルサリチル酸を、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれる溶液中でアルミニウム付与剤と反応させること特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の新規化合物であるアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は良好な熱安定性を有し、荷電制御剤として用いる場合、トナー混練時やトナー定着時に、高温にさらされても、安定に存在し、良好な特性を維持できる。
【0021】
本発明の荷電制御剤は、耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高いため電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高く、耐環境性及び保存安定性に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーに使用可能である。トナーに用いる場合、トナー用樹脂等の樹脂に対する分散性が向上して樹脂中に均一に分散させ易くなり、トナーの帯電の立ち上がり速度を高め、トナーの耐環境性及び保存安定性を向上させることができる。
【0022】
本発明の静電荷像現像用トナーは、含有する荷電制御剤の耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高いため電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高く、温度や湿度の変化に対する帯電安定性(耐環境性)及び帯電特性の経時安定性(保存安定性)に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーとして使用可能である。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0023】
本発明の新規化合物であるアルミニウム6核錯体の構造は、X線回折により特定される。特定されたアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体の立体構造を模式化した概念図を図1に示す。但し、アルミニウム原子間の結合を線で表わし、3座のアルキルサリチル酸から得られる配位子、2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子X、ヒドロキシルアニオンから得られる配位子Y、カルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子Zを省略して表記している。
【0024】
前記アルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体は、アルキルサリチル酸アルミニウムの3核錯体が前記式(I)で表される3核錯体であり、2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子Xが前記式(II)で表され、ヒドロキシルアニオンから得られる配位子Yが前記式(III)で表され、更にカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子Zが前記式(IV)で表され、架橋配位していることを特徴とするアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体が好ましい。
【0025】
アルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体は具体的には前記式(V)で表され、製造工程と構造を、例えば、従来のボントロンE−88をジメチルスルホキシド溶液から再結晶した結晶について説明する。
【0026】
ボントロンE−88(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム3:1型化合物)をジメチルスルホキシドに溶解し、120℃以上に加熱すると、新規白色結晶形に形成し始め、冷却することにより、結晶が得られる。この結晶は、6つのアルミニウム(Al)を核とする6核錯体(分子量=3310)である。この6核錯体は3座のアルキルサリチル酸の配位により、3つのAl原子を頂点とした2つの3核錯体を形成し、両者の頂点は2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子で架橋されている。さらに、2座のヒドロキシルアニオン(水酸イオン)から得られる配位子と2座のジメチルスルホキシドから得られる配位子も2座のアルキルサリチル酸同様に架橋に関与している。
ただ、前記式(IV)に示すカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子(例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンを示す。)は、構造の必須要件でなく、乾燥条件を調整することにより、結晶内から取り除くことができる。
【0027】
前記説明中に述べた3座のアルキルサリチル酸から得られる配位子並びに2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子は下記に示すとおりである。
【0028】
3座のアルキルサリチル酸から得られる配位子は、下記式(VI)である。
【化6】

【0029】
2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子は、下記式(VII)である。
【化7】

【0030】
上記式(VII)も含めてこの明細書において、下記の理由により、アルミニウム原子と各配位子との結合子を共有結合と配位結合とを区別せずに、両方の結合を含んだ形で線表記をしている。つまり、この錯体のジアルキルサリチル酸のカルボキシル基並びヒドロキシル基(水酸基)の関係において、例えば下記式(VIII)に記載の構造中のカルボキシル残基のC−O結合子の長さとC=O結合子の長さとはほぼ同等になっているためである。
【0031】
【化8】

【0032】
平面的な構造記載による従来の配位結合や共有結合という概念だけに本件の構造はとどまらないと推定できる。
【0033】
このアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体を有効成分とする荷電制御剤は、優れた耐熱性を有するとともに、樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高いため電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高く、耐環境性及び保存安定性に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーに使用可能である。
【0034】
本発明のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、公知のアルキルサリチル酸のアルミニウム塩やアルミニウム錯体など(アルキルサリチル酸アルミニウム化合物と称す。)を特定の有機溶媒を用い、再結晶処理を行うことにより、新規な結晶変態が構成された錯体となったものである。
【0035】
再結晶工程は、公知の方法、公知の装置を用いることができ、原料となるアルキルサリチル酸アルミニウム化合物に溶媒添加ステップ、アルキルサリチル酸アルミニウム化合物を加熱し溶解するステップ、溶解液を冷却するステップおよび得られたアルキルサリチル酸アルミニウム錯体を固液分離ステップからなる再結晶工程を少なくとも1つ有している。得られた結晶を更に複数段繰り返すことも含まれる。
加熱ステップと冷却ステップの間に濾過ステップを置くことも可能である。
また、再結晶工程に続き、得られた結晶を乾燥する工程が重要である。
【0036】
上記の溶媒添加ステップに用いられる有機溶剤としては、原料となるアルキルサリチル酸アルミニウム化合物に対しての充分な実用性の溶解性がある有機溶剤で、カルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤である。すなわち、前記式(I)の3核錯体構造を架橋できる特性基を有することが必要である。
【0037】
このような溶媒としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、2−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンのようなアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドのようなスルホキシド系溶媒;及びジオキサンから選ばれた、少なくとも一種であることが好ましい。
特にジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれるカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤が好ましい。
【0038】
原料のアルキルサリチル酸アルミニウム化合物としては、公知のアルキルサリチル酸のアルミニウム塩やアルミニウム錯体である。例えば、アルキルサリチル酸を有機溶媒、水−有機溶媒、または水中で、十分なアルカリを加えて溶解したものに対し、アルミニウム化剤を、アルキルサリチル酸:アルミニウムのモル比が3:1〜3:2になるように加えて加熱し、生成した沈殿物を瀘取して洗浄することによって得ることができる。アルキルサリチル酸とアルミニウムとの存在比が2:1型、3:2型、3:1型アルキルサリチル酸アルミニウム化合物が例示できる。
【0039】
アルキルサリチル酸アルミニウム化合物が対イオンを有する場合は、H;NH4+;アルカリ金属(Na、K等)に基づくカチオン;有機アミン(脂肪族第1級アミン、脂肪族第2級アミン、脂肪族第3級アミン等)に基づくカチオン;第4級有機アンモニウムイオン等のカチオン、又はヒドロキシアニオン、硫酸イオン、ハロゲンイオン等アニオンとすることができる。
【0040】
アルミニウム化剤としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、t−ブトキシアルミニウム及び塩基性酢酸アルミニウム等のアルミニウム化合物等を例示することができる。
【0041】
アルキルサリチル酸の置換基Rはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、オクチル基などの炭素数2〜8アルキル基、具体的には3,5−ジエチルサリチル酸、3,5−ジプロピルサリチル酸、3,5−ジブチルサリチル酸、3,5−ジオクチルサリチル酸、5−オクチルサリチル酸等を例示できる。3,5−ジプロピルサリチル酸、3,5−ジブチルサリチル酸等のジアルキルサリチル酸が好適であり、3,5−tert−ジブチルサリチル酸が特に好ましい。
【0042】
市販されているアルキルサリチル酸アルミニウム化合物としては、オリヱント化学工業社製の商品名 BONTRON E−88を例示できる。
【0043】
本発明の再結晶工程は、原料のアルキルサリチル酸アルミニウム化合物の製造工程と連続して行うことができる。このような工程として、3、5−ジアルキルサリチル酸を、本発明に用いられる溶液以外の溶剤(水または有機溶剤並びに水−有機溶剤)中で前記のアルミニウム付与剤と反応させた後、ジメチルスルホキシドを用いて再結晶することを例示できる。
【0044】
更に本発明のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体の製造方法としては、本発明に用いられる溶液(例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれるカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤)中で、アルキルサチリル酸と前記のアルミニウム付与剤と加熱反応させることによって得られる。得られた結晶を遊離な溶媒を取り除くため乾燥することにより、実用的に用いられる結晶が得られる。本製造工程には洗浄工程や精製工程を含んでよい。
【0045】
再結晶並びに反応で得られたアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、単結晶をX線回折分析で構造が特定される。
【0046】
本発明のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、前記式(I)で表されるアルキルサリチル酸アルミニウム3核錯体構造を2つ有し、Xには前記式(II)のアルキルサリチル酸から得られる配位子が架橋配位し、Yには前記式(III)のヒドロキシルアニオンから得られる配位子が架橋配位し、Zには前記式(IV)の有機溶剤から得られる配位子が架橋配位しているアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体であり、四方から結合し、強固な分子構造を取っている。
【0047】
また配位子による架橋配位結合により、前記式(I)のアルキル錯体同士が堅く結合することができる。更に前記式(IV)のpが1であることが好ましい。錯体構造が更に安定化する。但し、有機溶剤から得られる配位子を脱離させても支障がない。
【0048】
本発明のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、熱分析において、選択溶剤によって、特定の温度に安定域が存在する。例えば、130〜270℃を開示できる。従って、従来のボントロンE−88の熱分析は、前記の温度範囲では、重量減少が見られ、別の結晶形であることが示され、本発明の6核錯体が耐熱性の必須用途に好適であることが分かる。溶媒配位子がジメチルスルホキシドから得られる配位子の場合、170〜270℃の安定域が存在する。
【0049】
アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体は、粉末X線の測定をすると、再結晶試料の回折ピークは高角側まで延びていて、結晶性が高く、特徴的なピークを有する。粉末X線CuKαの回折スペクトルにおけるブラック角(2θ)が5°以上7°未満に主要な2つのピークを示すことが好ましい。このようなピークとして、5.4°のピーク並びに6.0°のピークが特定される。また、更に12.3°のピークが好適に含まれてよい。
これに対し、市販品のボントロンE−88を、クロロホルムを用いて再結晶したものは、低角側に4.5°のピーク並びに5.5°のピークが検出され、高角側にハローである回折パターンしかなく、結晶性が悪いことを示す。
【0050】
(荷電制御剤)
本発明の荷電制御剤は、本発明の新規化合物であるアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体を有効成分とする荷電制御剤である。
【0051】
この荷電制御剤は、不純物が少なく高純度であり、耐熱性が良好であり、電荷付与性が高く、電荷付与量のばらつきが小さく、耐環境性及び保存安定性に優れ、様々な有彩色又は無彩色のトナーに用いることができる。更に、帯電性が高く、立ち上がりの速い帯電を実現することができるので、電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高い。トナーに用いる場合、トナー用樹脂等の樹脂に対する分散性が向上して樹脂中に均一に分散させることができる。
【0052】
(静電荷像現像用トナー)
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくともこのアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体を有効成分とする荷電制御剤並びに着色剤及び樹脂を備えてなるものであることが好ましい。より具体的には、トナーは、例えばトナー用樹脂100重量部に対して、荷電制御剤0.1〜10重量部、着色剤0.5〜10重量部が、含有されたものである。
【0053】
前記の荷電制御剤を用いて調製した静電荷像現像用トナーは、静電潜像を現像する際に低速であっても高速であっても帯電の立ち上がりが速い。更に十分な荷電量を帯電させることができ、安定して帯電を維持できる。
【0054】
この静電荷像現像用トナーは、例えば次のように製造される。すなわち、トナー用樹脂、着色剤、及び本発明の荷電制御剤、並びに必要に応じて磁性材料(例えば、鉄、コバルト、フェライト等の強磁性材料製の微粉体)、流動性改質剤(例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン)、オフセット防止剤(例えば、ワックス、低分子量のオレフィンワックス)等をボールミルその他の混合機により十分混合した後、その混合物を加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融混練し、その混練物を冷却固化させた後、その固化物を粉砕及び分級することにより、平均粒径5〜20μmのトナーを得ることができる。
【0055】
また、結着樹脂溶液中に材料を分散した後、噴霧乾燥することにより得る方法、結着樹脂を構成すべき単量体に所定材料を混合して乳化懸濁液とした後に重合させてトナーを得る重合法トナー製造法(例えば、特開平1−260461号公報、特開平2−32365号公報記載の方法)によっても、この静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【0056】
例えば懸濁重合法においては、重合単量体、着色剤及び荷電制御剤、並びに必要に応じて重合開始剤、架橋剤、離型剤、及びその他の添加剤を均一に溶解又は分散させて単量体組成物とした後、この単量体組成物を、分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な分散機を用いて分散させると共に重合反応を行なわせることにより、所望の粒径を有するトナー粒子を得ることが可能である。
【0057】
重合トナー用の樹脂を形成するための重合性単量体の例としては、スチレン、メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のビニル系単量体が挙げられる。
【0058】
前記分散安定剤としては、各種界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)や有機又は無機分散剤等を使用することができる。有機分散剤の例としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。無機分散剤の例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウムのようなリン酸多価金属塩微粉体;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような炭酸塩微粉体;メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムのような無機分散剤等を挙げることができる。
【0059】
前記重合開始剤としては、2,2’−アゾイソブチロニトリル、アゾビスブチロニトリルのようなアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシドのような過酸化物系重合開始剤等を例示することができる。
【0060】
この静電荷像現像用トナーは、2成分現像剤として用いることができる。その場合、このトナーとキャリア粉とを混合して、現像剤を調製する。この現像剤は、例えば2成分磁気ブラシ現像法等により現像する際に、使用される。
【0061】
キャリア粉として、公知のものが全て使用可能であり、特に限定されない。具体的には、粒径50〜200μm程度の鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉、ガラスビーズであってもよく、これらの表面をアクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ化エチレン系樹脂等でコーティングしたものであってもよい。
【0062】
この静電荷像現像用トナーは、1成分現像剤として用いることもできる。その場合、前記のようにしてトナーを製造する際に、例えば鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉等の強磁性材料製の微粉体を添加分散させて、現像剤を調製する。この現像剤は、例えば接触現像法、ジャンピング現像法等により現像する際に、使用される。
【0063】
静電荷像現像用トナーに含有されるトナー用結着樹脂は、公知の合成樹脂、天然樹脂が用いられる。結着樹脂は、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体のようなスチレン系共重合体が挙げられる。このようなスチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、アクリルアミドのような二重結合を有するモノカルボン酸類、及びその置換体;マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルのような二重結合を有するジカルボン酸類、及びその置換体;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルのようなビニルエステル類;エチレン、プロピレン、ブチレンのようなエチレン系オレフィン類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンのようなビニルケトン類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
【0064】
更に、結着樹脂は、架橋剤で架橋されたスチレン系樹脂であってもよい。架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンのジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、結着樹脂は、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂であってもよい。
【0066】
本発明のトナーにおいては、着色剤として、公知の多数の染料、顔料を用いることができる。カラートナーに用い得るものの具体例は次の通りである。すなわち、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)、チタンブラック、黒色酸化鉄、キノフタロン、ハンザイエロー、ローダミン6Gレーキ、キナクリドン、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー及び銅フタロシアニングリーン等の有機顔料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料等の各種の油溶性染料や分散染料のほか、染料や顔料が高級脂肪酸や合成樹脂等で加工されたものが挙げられる。
【0067】
本発明の静電荷像現像用トナーには、上記のような着色剤を、例えば単独で又は2種以上配合して使用することができる。フルカラー用の三原色トナーの調整に好適に使用し得るのは、分光特性が良好な染料、顔料である。また、有彩色のモノカラートナーには、着色剤として、同色系の顔料と染料、例えばローダミン系の顔料と染料、キノフタロン系の顔料と染料、フタロシアニン系の顔料と染料を、適宜配合して用いることができる。
【0068】
なお、静電荷像現像用トナーは、更に、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、パラフィンワックス、パラフィンラテックス、マイクロクリスタリンワックスで例示される炭素数8以上のパラフィン;ポリプロピレン、ポリエチレンワックスで例示されるポリオレフィンが好ましい。これらの離型剤は、単独でまたは複数混合して用いられる。その添加量は0.3〜10重量%の範囲が好ましい。離型剤は、その添加量が0.3重量%未満であると、画像を定着させる際に離型剤として十分に作用しない。また10重量%を超えると、トナー表面上の離型剤露出が多くなるため、帯電不良を生じ、現像剤担持体からのトナー飛散や画質低下を生じたり、トナー粒子相互間の付着力、層形成部材や現像剤担持体との相互作用が大きくなるため、クリーニング性を低下させたりする。
【0069】
前記ワックスは、重量平均分子量3000〜10000のワックスであると、離型剤として良好に働きトナーのオフセット性を一層向上させるため、一層好ましい。
【0070】
静電荷像現像用トナーは、磁性材料を含む磁性トナーを、含有していてもよい。磁性材料は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、亜鉛などの元素を含む金属酸化物が挙げられる。これら磁性材料は、窒素吸着法によるBET(ブルナウア・エメット・テラー)比表面積が、1〜20m/gであり、モース硬度が5〜7の磁性粉であることが好ましい。磁性材料の形状としては、八面体、六面体、球状、針状、燐片状などがあるが、八面体、六面体、球状等の異方性の少ないものが好ましい。等方性の形状を有するものは、トナー中の結着樹脂やワックスに対しても良好な分散を達成できる。上記磁性材料の平均粒径は、0.05〜1.0μmであることが好ましい。
【0071】
この磁性材料は、トナー用結着樹脂100重量部に対して、50〜200重量部含有されていることが好ましく、70〜150重量部含有されているとなお一層好ましい。50重量部未満であると、トナーの搬送性が不十分で現像剤担持体上の現像剤層にむらが生じ、画像むらとなり易い上、現像剤の帯電の過剰な上昇に起因する画像濃度の低下が生じやすくなる。一方、200重量部を超えると、現像剤の帯電が充分に得られなくなるために、画像濃度低下が生じやすくなる。
【0072】
静電荷像現像用トナーは、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上のため、無機微粉体又は疎水性無機微粉体を含有していてもよい。このような粉体として、シリカ微粉末、酸化チタン微粉体、及びそれらの疎水化物が挙げられる。この粉体は、単独でまたは複数混合して用いてもよい。
【0073】
シリカ微粉体は、乾式法と呼ばれる蒸気相酸化によりケイ素ハロゲン化物から生成させた乾式シリカ;ヒュームドシリカと称される乾式シリカ;乾式法により塩化アルミニウムや塩化チタンのような金属ハロゲン化合物と、ケイ素ハロゲン化合物とから、シリカと他の金属酸化物との複合微粉体を生成させた乾式シリカ;水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカが用いられる。中でも、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、またNaO、SO2−等の製造残渣の少ない乾式シリカが好ましい。
【0074】
シリカ微粉体は、疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理は、シリカ微粉体と反応したりまたは物理吸着したりする有機ケイ素化合物等で処理するというものであり、好ましくはケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式微粉体を、シランカップリング剤で処理した後、またはシランカップリング剤で処理すると同時に、シリコーンオイルのような有機ケイ素化合物で処理する方法である。
【0075】
疎水化処理に使用されるシランカップリング剤として、例えば、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個のケイ素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0076】
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとして、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0077】
静電荷像現像用トナーは、必要に応じ外部添加剤を含有していてもよい。外部添加剤として、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤、現像性向上剤のような働きをする樹脂微粒子や無機微粒子が挙げられる。
【0078】
流動性付与剤として、酸化チタン、酸化アルミニウムが挙げられ、中でも疎水性のものが好ましい。滑剤として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。また研磨剤として、例えば酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムが挙げられる。
導電性付与剤として、例えばカーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫が挙げられる。現像性向上剤として、逆極性の白色微粒子、及び黒色微粒子が、少量用いられる。
【0079】
次に、本発明の静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法について詳細に説明する。
画像形成方法は、潜像保持体上に潜像を形成する潜像形成工程、該潜像保持体上に、現像剤担持体上で層形成された現像剤を用いて、潜像を現像してトナー像を形成する現像工程、該トナー像を転写体上に転写する転写工程、引続くクリーニング工程、及び転写体上のトナー画像を熱定着する定着工程の順で行われるものである。
【0080】
潜像形成工程は、公知の方法、例えば電子写真法や静電記録法によって、感光層または誘電体層等とそれを支持する円筒状基体とからなる潜像保持体上に、静電潜像を形成するというものである。感光層は、有機系化合物、アモルファスシリコンのような材質で形成されたものである。この感光層を支持する円筒状基体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を押出し成型した後、表面加工して得たものが使用される。
【0081】
現像工程は、回転している円筒体状の現像ロールである現像剤担持体上に、弾性ブレード等の層形成ブレードにより現像剤で薄層を形成し、現像部に搬送した後、現像ロールと潜像保持体との間にバイアス電圧を印加すると、静電潜像が現像剤により現像され、トナー像が形成されるというものである。現像に際し、現像ロールと静電潜像を保持する潜像保持体とは、現像部で接触され、または一定の間隔をあけて設置される。
【0082】
現像剤担持体の一例である一成分現像剤担持体は、シリコーンゴムのような弾性体スリーブ、アルミニウム、ステンレス(SUS)のような金属やセラミックスを引抜したスリーブ、及びトナーの搬送性や帯電性を制御するため基体表面の酸化または研磨、ブラスト処理のような表面処理や樹脂によるコーティングを施したスリーブが使用される。現像ロールへのトナー層の形成は、層形成ブレードをスリーブ表面に当接させることにより行われる。層形成ブレードが弾性ブレードである場合、その材質は、シリコーンゴム、ウレタンゴムのようなゴム弾性体であることが好ましく、トナー帯電量をコントロールするために有機物または無機物が添加・分散された弾性体であってもよい。
【0083】
現像剤担持体の別な一例である二成分現像剤担持体は、アルミニウム、SUS、真鍮のような金属製のスリーブ、及び現像剤の搬送性や帯電性を制御するために基体表面の酸化、研磨、ブラスト処理のような表面処理を施したスリーブが使用される。現像ローラへの現像剤形成は、層形成ブレードをスリーブ表面から、僅かに離して行われる。
【0084】
転写工程は、潜像保持体上のトナー画像を、転写体である紙に転写するというものである。転写の手段は、例えば、潜像保持体にロール転写器を圧接させる接触型の手段、コロトロンを用いる非接触型の手段が挙げられるが、小型の装置で行われる点で接触型の手段が好ましい。
【0085】
クリーニング工程は、転写工程にて転写されずに残ったトナーをクリーナーにより除去するというものである。クリーニングする手段は、クリーニングブレード、またはクリーニングロールを用いる手段が挙げられる。クリーニングブレードは、シリコーンゴムやウレタンゴムのような弾性ゴム製のものが使用される。
【0086】
定着工程は、転写体に転写されたトナー画像を、定着器で定着するというものである。定着する手段は、ヒートロールを用いる熱定着方式が好ましいが、圧力定着方式であってもよい。
【実施例】
【0087】
実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の記述においては、「重量部」を「部」と略す。また、下記の略語を用いる。
DMSO:ジメチルスルホキシド、
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、
DMA:N,N−ジメチルアセトアミド、
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0088】
製造例1〜8並びに比較製造例1は、本発明の新規化合物であるアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体の製造についてのものである。
【0089】
(製造例1)DMSO精密再結晶工程
オートクレーブに、DMSO40mlと、ボントロンE−88 367mg(原料の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 商標:BONTRON E−88 オリヱント化学工業社製の商品名)を仕込み、120℃において2時間攪拌後、攪拌をやめ、0.5度/時で室温まで冷却し、白色単結晶10.2mgを得た。
得られた単結晶を用い、X線結晶構造解析を行い、6核錯体であることを確認した。
また、熱分析を測定した。
【0090】
製造例1の結晶学的パラメータを表1に示す。
【表1】

【0091】
上記錯体は、本発明の6核錯体と、遊離の8分子のDMSOが測定されている。
製造例1のX線結晶構造解析の結果の立体構造を模式化して図2に示す。
【0092】
(a)熱分析A
本発明のアルキルサリチル酸アルミニウム錯体を示差熱天秤(TG-DTA)Thermo plus TGA8120(リガク社製の商品名)を用い、TG/DTAを測定した。
測定条件
測定雰囲気: 空気
昇温速度: 10 K/min
測定温度帯: 30 °C 〜480 °C
基準試料: Al
【0093】
遊離のDMSOを取り除くために、得られた白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体8.0mgを得た。得られた6核錯体の元素分析と原子吸光を測定し、下記の表2に示した。
(b)元素分析
本発明のアルキルサリチル酸アルミニウム錯体を元素分析測定器2400シリーズIICHNS/O(パーキンエルマー社製の商品名)を用い、炭素(C)、水素(H)、イオウ(S)の重量比率を測定した。
(c)原子吸光分析
本発明のアルキルサリチル酸アルミニウム錯体を原子吸光測定器Spectr AA 220FS(VARIAN社製の商品名)を用い、アルミニウムの重量比率を測定した。
【0094】
【表2】

尚、理論値の分子式はC141204333Al6である。
【0095】
(製造例2) DMSOの簡易再結晶工程
製造例1で得られたアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体を、より簡易な装置で簡便に製造する方法を以下に示す。50mlフラスコに、DMSO10mlを加え、ボントロンE−88(オリエント化学工業社製の商品名)393mgを仕込み、加熱した。その後、放冷した。得られた結晶を濾過し、乾燥して、白色結晶153mgを得た。粉末X線回折を測定し、図3並び図4に示した。また、熱分析を測定した結果を図6に示した。(熱分析A条件)
また比較として、ボントロンE−88の粉末X線回折を測定し、図3に示した。
【0096】
粉末X線の測定結果より、本発明の6核錯体は、図3に示す前記6核錯体の粉末X線CuKαの回折スペクトルにおけるブラック角2θが5°以上7°未満に主要な2つのピークを示している。(Bとして範囲を記載している。)更に詳細に説明する5.4°、6.0°、12.3°に特徴的なピークが認められるとともに高角領域にまで回折ピークが認められ、ボントロンE−88よりも結晶性が高い事が明らかである。
【0097】
更に下記にしめすクロロホルム再結晶は低角側の2つのピーク(4.5°、5.5°:Aと表示)が認められ、高角側はハローな回折パターンのみで結晶性が非常に悪いことが示唆される。また、熱分析の結果でも170〜250℃領域に熱的に安定な領域が認められ、製造例1の精密再結晶で得られた結晶と同等の熱安定性を有する事が確認できた。これらの事より、本化合物は製造例1で得られた化合物と同様に、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体の構造を有していると考えられる。
【0098】
得られた白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体120mgを得た。得られた化合物の元素分析と原子吸光分析の結果、C:63.21、H:8.11、S:3.51、Al:6.15であり、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体の理論値と近似値である事が確認できた。
【0099】
(製造例3) DMAの簡易再結晶工程
製造例2のDMSO10mlをDMA40mlに代え、ボントロンE−88 807mgを仕込み、その他は製造例2と同様にし、再結晶品を得た。得られた結晶を製造例2と同様に乾燥した。白色結晶5.7mgを得た。粉末X線を測定し、図4に示した。粉末X線の測定結果より、本化合物は5.4°、6.0°、12.3°に特徴的なピークが認められるとともに高角領域にまで回折ピークが認められ、製造例2で得られた化合物と同様に、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体の構造を有していると考えられる。
【0100】
得られた白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体4.3mgを得た。
【0101】
(製造例4) NMPの簡易再結晶工程
製造例2のDMSO10mlをNMP5mlに代え、ボントロンE−88 518mg)を仕込み、その他は製造例2と同様にし、再結晶品を得た。得られた結晶を製造例2と同様に乾燥した。白色結晶9.8mgを得た。
【0102】
得られた白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体6.4mgを得た。
【0103】
(製造例5) ジオキサンの簡易再結晶工程
製造例2のDMSO10mlを1,4−ジオキサン20mlに代え、ボントロンE−88 1384mgに代えて、その他は製造例2と同様にし、再結晶品を得た。得られた結晶を製造例2と同様に乾燥した。白色結晶524mgを得た。熱分析を測定した結果を図7に示す。(熱分析A条件)、熱分析の結果、130〜230℃領域に熱的に安定な領域が認められ、製造例2で得られた結晶と同等の熱安定性を有する事が確認できた。
【0104】
得られた白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体440mgを得た。
【0105】
(製造例6) DMFの簡易再結晶工程
製造例2のDMSO10mlをDMF10mlに代え、ボントロンE−88 407mgに代えて、その他は製造例2と同様にし、再結晶品を得た。得られた結晶を製造例2と同様に乾燥した。白色結晶156mgを得た。
【0106】
得られた白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体123mgを得た。
【0107】
(製造例7) DMSOの反応−簡易再結晶工程
(1)3,5−ジブチルサリチル酸とアルミニウム化剤の反応
3,5−ジ-t-ブチルサリチル酸40g(0.16mol)をジメチルスルホキシド500mlに溶解し、これに、20%水酸化ナトリウム水溶液32g(0.16mol)を加えた。これを加熱後に、更に、10%硫酸アルミニウム水溶液182.5g(0.053mol)を滴下した。滴下終了後に120℃で2時間反応し、放冷後に濾過し、得られたウエットの白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体28.0gを得た。熱分析を測定した。(熱分析B条件)、製造例2の6核錯体も同条件で測定して結果を図8に示す。
【0108】
製造例7で得られた6核錯体は、製造例2で得られた6核錯体と同様な熱分析を示した。従って、製造例7で得られた6核錯体は製造例1で得られた化合物と同様に、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体の構造を有していると考えられる。
【0109】
(a)熱分析B
本発明のアルキルサリチル酸アルミニウム錯体を示差熱天秤(TG-DTA)EXSTAR6000(セイコーインスツル社製の商品名)を用い、TG/DTAを測定した。
測定条件
測定雰囲気: 空気
昇温速度: 10 K/min
測定温度帯: 30℃〜480℃
基準試料: Al
【0110】
(製造例8) 水系の反応−DMSO簡易再結晶工程
(1)3,5−ジイソプロピルサリチル酸とアルミニウム化剤の反応
3,5−ジ-イソプロピルサリチル酸35.6g(0.16mol)を水500mlに分散し、これに、20%水酸化ナトリウム水溶液32g(0.16mol)を加えた。これを加熱後に、更に、10%硫酸アルミニウム水溶液182.5g(0.053mol)を滴下した。滴下終了後に2時間反応し、放冷後に濾過、水洗して得られた固形物を80℃で乾燥した。
【0111】
(2)ジイソプロピルサリチル酸アルミニウム化合物の再結晶並びに乾燥
得られたジイソプロピルサリチル酸アルミニウム化合物3.2gをジメチルスルホキシド27mlに加え、120℃に加熱して溶解させた。120℃でしばらく撹拌した後に溶液が白濁したのを確認後に放冷した。放冷後に濾過し、固形物を80℃で乾燥した。白色結晶850mgを得た。
【0112】
得られた白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体630mgを得た。
【0113】
(比較製造例1) クロロホルムによる再結晶
50mlフラスコに、クロロホルム25mlを加え、ボントロンE−88 210mg(オリエント化学工業社製商品名)を仕込み、加熱した。その後、放冷した。得られた結晶を濾過し、乾燥して、白色結晶10mgを得た。粉末X線を測定し、図3に示した。
【0114】
得られた白色結晶を200℃20時間乾燥し、溶媒を除去し、アルキルサリチル酸アルミニウム化合物8.8mgを得た。
【0115】
実施例1〜5及び比較例1〜2は静電荷像現像用トナーについてのものである。
【0116】
(実施例1)
スチレン−アクリル共重合樹脂(アルマテックスCPR600B 三井化学社製商品名)・・・100部
カーボンブラック(MA−100 三菱化成社製商品名)・・・6部
低重合ポリプロピレン(ビスコール550−P 三洋化成社製商品名)・・・2部
荷電制御剤(製造例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体)・・・1部
【0117】
上記配合物を高速ミキサーで均一にプレミキシングした。次いで、その混合物をエクストルーダで溶融混練し、冷却後、振動ミルで粗粉砕した。得られた粗砕物を分級機付きのエアージェットミルを用いて微粉砕することにより、粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナーを得た。得られたトナー5部に対し、ノンコートフェライトキャリヤ(F−150 パウダーテック社製商品名)95部を混合して現像剤を調製した。
【0118】
本現像剤をポリ瓶中に計量し、標準条件(20℃−60%RH)でこのポリ瓶を回転数100rpmのボールミルで回転させて本現像剤を撹拌することによりこれを帯電させ現像剤の経時帯電量を測定した。経時帯電量の測定結果を表3に示す。
【0119】
【表3】

【0120】
また、本現像剤をポリ瓶中に計量し、低温低湿(5℃−30%RH)及び高温高湿(35℃−90%RH)の各雰囲気中で前記ポリ瓶を回転数100rpmのボールミルで回転させて本現像剤を10分間撹拌することによりこれを帯電させ、それぞれの帯電量を測定した。帯電量の環境安定性についての測定結果を表4に示す。
【0121】
【表4】

【0122】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性、帯電の安定性及び持続性が良好で、画像濃度低下のない良質な画像が得られた。オフセット現象も全く観測されなかった。
【0123】
(比較例1) ボントロン E−88
実施例1の荷電制御剤(製造例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体)を、ボントロン E−88(オリヱント化学工業社製商品名)に代える以外は、実施例1と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例1と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した。それぞれの測定結果を表5及び表6に示す。
【0124】
【表5】

【0125】
【表6】

【0126】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、帯電の安定性及び持続性が不良であり、特に高温高湿下において画質の低下が認められた。
【0127】
(比較例2) ボントロン E−88のクロロホルム処理品
実施例1の荷電制御剤(製造例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体)を、比較製造例1で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物に代える以外は、実施例1と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例1と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した。それぞれの測定結果を表7及び表8に示す。
【0128】
【表7】

【0129】
【表8】

【0130】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、帯電の安定性及び持続性が不良であり、特に高温高湿下において画質の低下が認められた。
【0131】
(実施例2)
ポリエステル樹脂(ダイアクロンER561 三菱化学社製商品名)・・・100部
油溶性マゼンタ色染料(オイルピンク#312 オリヱント化学工業社製商品名)・・・6部
低重合ポリプロピレン(ビスコール550−P 三洋化成社製商品名)・・・2部
製造例3で得られた荷電制御剤 ・・・1部
【0132】
上記配合物を実施例1と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性マゼンタ色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例1と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した結果を表9及び表10に示す。
【0133】
【表9】

【0134】
【表10】

【0135】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性が良好で、而も分光特性に優れ、重ね合わせによる混色に適した透明性のある、鮮明なマゼンタ色の画像が得られた。
【0136】
(実施例3)
ポリエステル樹脂(ダイアクロンER561 三菱化学社製商品名)・・・100部
フタロシアニン系染料(バリファストブルー2606 オリヱント化学工業社製商品名)・・・ 6部
低重合ポリプロピレン(ビスコール550−P 三洋化成社製商品名)・・・2部
製造例4で得られた荷電制御剤 ・・・1部
【0137】
上記配合物を実施例1と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性シアン色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例1と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した結果を表11及び表12に示す。
【0138】
【表11】

【0139】
【表12】

【0140】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性が良好で、而も分光特性に優れ、重ね合わせによる混色に適した透明性のある、鮮明なシアン色の画像が得られた。
【0141】
(実施例4)
スチレン−アクリル共重合樹脂(アルマテックスCPR600B(商品名) 三井化学社製)・・・100部
カーボンブラック(MA−100 三菱化成社製商品名)・・・6部
低重合ポリプロピレン(ビスコール550−P 三洋化成社製商品名)・・・5部
製造例5で得られた荷電制御剤・・・2部
【0142】
上記配合物を実施例1と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例1と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した。それぞれの測定結果を表13及び表14に示す。
【0143】
【表13】

【0144】
【表14】

【0145】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性、帯電の安定性及び持続性が良好で、画像濃度低下のない良質な画像が得られた。オフセット現象も全く観測されなかった。
【0146】
(実施例5)
スチレン・・・80部
n−ブチルメタクリレート・・・20部
カーボンブラック(MA−100 三菱化学社製商品名)・・・5部
2,2’−アゾイソブチロニトリル・・・1.8部
荷電制御剤(製造例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム錯体)・・・1部
上記配合物を高速ミキサーで均一にプレミキシングして重合性単量体組成物を得た。
【0147】
一方、濃度0.1mol/lの第三リン酸ナトリウム水溶液100mLを蒸留水600mLにより希釈し、この液を攪拌しながら、この液に対し、濃度1.0mol/lの塩化カルシウム水溶液18.7mlを徐々に加えた。更に、この混合液を攪拌しながら、この混合液に対し、濃度20重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.15gを加えて分散液を調製した。
【0148】
この分散液を前記重合性単量体組成物に加えてTK式ホモミキサー(特殊機化工社製)により高速攪拌しながら温度65℃に昇温させ、昇温後30分間攪拌した後、更に80℃まで昇温させ、通常の攪拌機により回転数100rpmで攪拌し、温度80℃のまま6時間重合させた。
【0149】
重合終了後、反応混合物を冷却して固形物を濾別し、その濾取物を濃度5重量%の塩酸水溶液中に浸漬させることにより、分散剤として利用したリン酸カルシウムを分解した。得られた固形物を、洗浄液が中性となるまで水洗し、脱水、乾燥させることにより、平均粒径13μmの黒色トナーを得た。
【0150】
得られた重合トナー5部に対して、フェライトキャリヤ(パウダーテック社製、商品名:F−150)95部を混合して現像剤を調製し、実施例1と同様に測定した経時帯電量及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表15及び表16に示す。
【0151】
【表15】

【0152】
【表16】

【0153】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性が良好で、而も分光特性に優れ、重ね合わせによる混色に適した透明性のある、鮮明な黒色の画像が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、耐熱性、帯電特性、環境安定性に優れた荷電制御剤に好適な新規化合物であるアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体を提供する。また、本発明の荷電制御剤は有害な重金属を含んでいないため環境に与える負荷も小さい。更に、本発明の荷電制御剤は無色または淡色であるためカラートナーに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】アルキルサリチル酸アルミニウム錯体の立体構造の概念図である。
【図2】X線結晶構造解析の結果を模式した立体構造の概念図である。
【図3】市販品E−88,比較製造例1で得られた試料(クロロホルム)、製造例2で得られた試料(ジメチルスルホキシド)のX線回折図である。
【図4】製造例2で得られた試料(ジメチルスルホキシド)と製造例3で得られた試料(N,N−ジメチルアセトアミド)のX線回折図である。
【図5】E−88と製造例1で得られた試料の熱分析図(熱分析A条件)である。
【図6】比較製造例1で得られた試料と製造例2で得られた試料の熱分析図(熱分析A条件)である。
【図7】製造例5で得られた試料の熱分析図(熱分析A条件)である。
【図8】製造例7で得られた試料と製造例2で得られた試料の熱分析図(熱分析B条件)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルサリチル酸から得られる9配位子とアルミニウム6原子を核とするアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体において、前記6核錯体は3座のアルキルサリチル酸から得られる3配位子とアルミニウム3原子を核とするアルキルサリチル酸アルミニウムの3核錯体を2つ構成し、その2つの3核錯体を少なくとも2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子とヒドロキシルアニオンから得られる配位子がアルミニウム原子に架橋配位していることを特徴とするアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体。
【請求項2】
前記アルキルサリチル酸アルミニウムの3核錯体が下記式(I)で表される3核錯体であり、2座のアルキルサリチル酸から得られる配位子Xが下記の式(II)で表され、ヒドロキシルアニオンから得られる配位子Yが下記の式(III)で表され、更にカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子Zが下記の式(IV)で表され、架橋配位していることを特徴とする請求項1に記載のアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体。
【化1】

(式(I)中、Rは炭素数2〜8のアルキル基を示す。)

【化2】

【化3】

【化4】

(式(IV)中、B=Oはカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子、p=0または1を示す。)
【請求項3】
前記アルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体が下記の式(V)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のアルキルサリチル酸アルミニウムの6核錯体。
【化5】

(式(V)中、Rは炭素数2〜8のアルキル基を示し、Xは、式(II)を示し、Yは式(III)を示し、Zは式(IV)を示す。)
【化6】

【化7】

【化8】

(式(IV)中、B=Oはカルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子、p=0または1を示す。)
【請求項4】
前記アルキルサリチル酸が3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体。
【請求項5】
前記カルボニル基またはスルフィン基を有する有機溶剤から得られる配位子がジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれるカルボニル基またはスルホニル基を有する有機溶剤から得られる配位子であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体。
【請求項6】
式(IV)のpが1であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体。
【請求項7】
前記6核錯体の粉末X線CuKαの回折スペクトルにおけるブラック角2θが5°以上7°未満に主要な2つのピークを示すことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のアルキルサリチル酸アルミニウム6核錯体を有効成分とする荷電制御剤。
【請求項9】
請求項8に記載の荷電制御剤並びに着色剤及びトナー用バインダー樹脂を含む静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
3,5−ジアルキルサリチル酸のアルミニウム化合物を、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれる溶液中で、再結晶工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルキルサリチル酸アルミニウム錯体の製造方法。
【請求項11】
3,5−ジアルキルサリチル酸を、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドンから選ばれる溶液中でアルミニウム付与剤と反応させることを特徴とする請求項1に記載のアルキルサリチル酸アルミニウム錯体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−6714(P2010−6714A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164805(P2008−164805)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】