アルキルベンゼンヒドロペルオキシドの製造方法
アルキルベンゼンヒドロペルオキシドの製造方法において、(i) sec-ブチルベンゼン、(ii)全供給原料の10質量%より大きい量のクメン及び(iii) 全供給原料の20質量%までの量のイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの少なくとも一種を含む供給原料を下記の一般式(I)の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させる。その接触をsec-ブチルベンゼン及びクメンをそれらの関連ヒドロペルオキシドに変換する条件下で行なう。
[式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、但し、R1及びR2 が共有結合により互いに結合し得ることを条件とし、Q1及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、lは0、1、又は2であり、mは1〜3であり、かつR3 はR1についてリストされたもののいずれかであってもよい]
[式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、但し、R1及びR2 が共有結合により互いに結合し得ることを条件とし、Q1及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、lは0、1、又は2であり、mは1〜3であり、かつR3 はR1についてリストされたもののいずれかであってもよい]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2008年8月26日に出願された先の米国仮特許出願第61/091,850号(これが参考として本明細書にそのまま含まれる)の利益を主張する。
本発明はアルキルベンゼンヒドロペルオキシドを製造し、必要により得られるヒドロペルオキシドをフェノールに変換するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノールは化学工業における重要な製品である。例えば、フェノールはフェノール樹脂、ビスフェノールA、ε-カプロラクタム、アジピン酸、及び可塑剤の製造に有益である。
現在、フェノールの製造のための最も普通の経路はホック方法である。これはクメンを製造するためのプロピレンによるベンゼンのアルキル化、続いて相当するヒドロペルオキシドへのクメンの酸化次いで等モル量のフェノール及びアセトンを製造するためのそのヒドロペルオキシドの開裂を伴なう3工程方法である。しかしながら、フェノールについての世界の需要はアセトンについての需要よりも迅速に増大しつつある。加えて、ブテンのコストに対するプロピレンのコストが、プロピレンの発展する不足のために、おそらく増大する。こうして、供給原料としてプロピレンに代えて、又はそれだけではなくブテンを使用し、メチルエチルケトンを同時製造する方法がフェノールの製造の魅力的な別の経路であるかもしれない。
フェノール及びメチルエチルケトンがホック方法の変化(sec-ブチルベンゼンが酸化されてsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドを得、そのヒドロペルオキシドが所望のフェノール及びメチルエチルケトンに分解される)により同時製造し得ることが知られている。このような方法の総説が“フェノール”と題するProcess Economics Report No. 22B (the Stanford Research Institute により1977年12月に発行)の113-122頁及び261-263頁に記載されている。
フェノールと変化する量のメチルエチルケトン及びアセトンの混合物がクメン及びsec-ブチルベンゼンを含む供給原料を酸化し、次いで得られるヒドロペルオキシドを開裂することにより製造し得ることがまた知られている。供給原料中のクメン対sec-ブチルベンゼンの質量比を調節することにより、生成物中のアセトン対メチルエチルケトンの比が市場の条件に応じて変化し得る。欧州特許出願公開第1,088,809 号及び米国特許第7,282,613号を参照のこと。
しかしながら、アルキルベンゼン前駆体又はその一種としてsec-ブチルベンゼンを使用するフェノールの製造はクメンをベースとする方法では存在しないか、又はそれ程ひどくはない或る種の問題により伴なわれる。例えば、クメンと較べて、sec-ブチルベンゼンから相当するヒドロペルオキシドへの酸化が触媒の不在下で非常に遅く、しかも不純物の存在に非常に敏感である。結果として、米国特許第6,720,462 号及び同第6,852,893 号はアルキルベンゼン、例えば、sec-ブチルベンゼンの酸化を促進するための触媒として、環状イミド、例えば、N-ヒドロキシフタルイミドの使用を提案していた。
sec-ブチルベンゼンはベンゼンを酸触媒上でn-ブテンでアルキル化することにより製造し得る。その化学はエチルベンゼン及びクメンの製造に非常に似ている。しかしながら、アルキル化剤の炭素数が増大するにつれて、生成物異性体の数がまた増大する。例えば、エチルベンゼンは一種の異性体を有し、またプロピルベンゼンは2種の異性体(クメン及びn-プロピルベンゼン)を有するが、ブチルベンゼンは4種の異性体(n-、イソ-、sec-、及びt-ブチルベンゼン)を有する。これらの副生物、特にイソ-ブチルベンゼン及びt-ブチルベンゼンは、sec-ブチルベンゼンに非常に近い沸点を有し、それ故、蒸留によりsec-ブチルベンゼンから分離するのに困難である。
【0003】
【0004】
加えて、ベンゼンアルキル化工程におけるsec-ブチルベンゼン製造は純粋なn-ブテン供給原料を使用することにより最大にし得るが、実際には一層経済的なブテン供給原料、例えば、ラフィネート(Raffinete)-2を使用することが望ましい。代表的なラフィネート-2は0-1%のブタジエン及び0-5%のイソブテンを含む。供給原料中にこの増大されたイソブテンを用いると、イソ-ブチルベンゼン及びt-ブチルベンゼンの一層高い製造が不可避である。しかしながら、イソブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンはsec-ブチルベンゼンから相当するヒドロペルオキシドへの酸化のインヒビターであることが知られている。過去に、これがフェノールをsec-ブチルベンゼンから製造するためのホック方法の使用を著しく誘発しなかった。
2007年11月17日に公開された、本件出願人の米国特許出願公開第2007/0265476号において、本発明者らは下記の式のアルキルベンゼン供給原料、例えば、sec-ブチルベンゼンが環状イミド触媒、例えば、N-ヒドロキシフタルイミドの存在下で酸化される場合に、酸化の速度がsec-ブチルベンゼンの3質量%程度に高いレベルでさえもイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼン不純物の存在により実質的に影響されないことを示した。
【0005】
【化1】
【0006】
式中、R1及び R2 は夫々独立に1個から4個までの炭素原子を有するアルキル基を表す。特許出願第2007/0265476 号はアルキルベンゼン供給原料がまたクメンを含んでもよいことを示すが、それはクメンが供給原料の10%を超えず、好ましくは8%を超えず、更に好ましくは5%を超えない量でわずかに存在すべきであることを教示している。更に、sec-ブチルベンゼン酸化工程についてのクメンの存在の影響についての情報が特許出願第2007/0265476 号に提示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、クメン及びsec-ブチルベンゼンの混合物が環状イミド触媒、例えば、N-ヒドロキシフタルイミドの存在下で酸化される場合に、20質量%までの少量のイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンの混入がクメン及びsec-ブチルベンゼンの転化率並びに所望のヒドロペルオキシドへの選択率の両方を有意に改良することが予期せずに今わかった。
一局面において、本発明はアルキルベンゼンヒドロペルオキシドの製造方法にあり、その方法は(i) sec-ブチルベンゼン、(ii)全供給原料の10質量%より大きい量のクメン及び(iii) 全供給原料の20質量%までの量のイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの少なくとも一種を含む供給原料を下記の一般式(I)の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させることを含む。
【0008】
【化2】
【0009】
式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、但し、R1及びR2 が共有結合により互いに結合し得ることを条件とし、
Q1及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、
X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YはO又はOHであり、
kは0、1、又は2であり、
lは0、1、又は2であり、
mは1〜3であり、かつ
R3 はR1についてリストされたもののいずれかであってもよく、また前記接触は前記sec-ブチルベンゼン及びクメンを関連ヒドロペルオキシドに変換する条件下で行なわれる。
一実施態様において、前記環状イミドが一般式(II)に従う。
【0010】
【化3】
【0011】
式中、R7、R8、R9、及びR10 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、
X及びZの夫々が独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YがO又はOHであり、
kが0、1、又は2であり、かつ
lが0、1、又は2である。
都合良くは、前記環状イミドがN-ヒドロキシフタルイミドを含む。
都合良くは、前記供給原料が約1質量%から約15質量%まで、例えば、約1質量%から約10質量%までのイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンを含む。両方の異性体が存在する場合、質量%範囲は2種の異性体の合わされた質量を基準とする。
都合良くは、前記供給原料が約15質量%から約50質量%までのクメンを含む。
都合良くは、前記接触が約90℃〜約150℃、例えば、約100℃〜約140℃、例えば、約115℃〜約130℃の温度で行なわれる。典型的には、前記接触が約15kPa〜約500kPaの圧力、例えば、約15kPa〜約150kPaの圧力で行なわれる。
【0012】
都合良くは、前記環状イミドが前記接触中の前記供給原料中のsec-ブチルベンゼン及びクメンの約0.05質量%〜約5質量%、例えば、約0.1質量%〜約1質量%の量で存在する。
典型的には、その方法が前記接触により生成されたヒドロペルオキシドを開裂してフェノール、アセトン及びメチルエチルケトンを生成することを更に含む。
都合良くは、開裂が触媒の存在下で行なわれる。一実施態様において、開裂が均一触媒、例えば、硫酸、過塩素酸、リン酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸、塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄の少なくとも一種の存在下で行なわれる。別の実施態様において、開裂が不均一触媒、例えば、スメクタイトクレーの存在下で行なわれる。
都合良くは、開裂が約40℃〜約120℃の温度及び/又は約100kPa〜約1000kPaの圧力及び/又は約1hr-1〜約50hr-1の毎時の液空間速度(LHSV)(ヒドロペルオキシドを基準とする)で行なわれる。
一実施態様において、その方法は開裂により生成されたフェノールをビスフェノールAに変換することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】0質量%、5質量%及び20質量%のtert-ブチルベンゼン(TBB)を含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関する流れについての時間(TOS)に対するクメン転化率を比較するグラフである。
【図2】0質量%、5質量%及び20質量%のtert-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関するクメン転化率に対するクメンヒドロペルオキシド(CHP)選択率を比較するグラフである。
【図3】0質量%、5質量%及び20質量%のtert-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関する流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン(SBB)転化率を比較するグラフである。
【図4】0質量%、5質量%及び20質量%のtert-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関するsec-ブチルベンゼン転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド(SBBHP)選択率を比較するグラフである。
【図5】0質量%、5質量%及び20質量%のイソ-ブチルベンゼン(イソBB)を含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関する流れについての時間に対するクメン転化率を比較するグラフである。
【図6】0質量%、5質量%及び20質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関するクメン転化率に対するクメンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図7】0質量%、5質量%及び20質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関する流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン転化率を比較するグラフである。
【図8】0質量%、5質量%及び20質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関するsec-ブチルベンゼン転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図9】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)を用い(w)、また用いずに(wo)、かつ5質量%のtert-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関する流れについての時間に対するクメン転化率を比較するグラフである。
【0014】
【図10】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のtert-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関するクメン転化率に対するクメンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図11】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のtert-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関する流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン転化率を比較するグラフである。
【図12】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のtert-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関するsec-ブチルベンゼン転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図13】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のイソ-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関する流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン転化率を比較するグラフである。
【図14】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のイソ-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関するsec-ブチルベンゼン転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図15】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のイソ-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関する流れについての時間に対するクメン転化率を比較するグラフである。
【図16】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のイソ-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関するクメン転化率に対するクメンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
クメン及びsec-ブチルベンゼンの混合物を相当するヒドロペルオキシドに酸化し、必要により得られるヒドロペルオキシドをフェノールに変換するための方法が本明細書に記載される。その方法は環状イミドを酸化触媒として使用し、このような混合供給原料の接触酸化により、20質量%までの少量のイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンの混入がクメン及びsec-ブチルベンゼンの転化率並びに所望のヒドロペルオキシドへの選択率の両方を有意に改良するという予期しない知見に基づく。
アルキルベンゼン供給原料
本法に使用されるアルキルベンゼン供給原料は全供給原料の10質量%より大きい量のsec-ブチルベンゼンとクメンの混合物並びに全供給原料の20質量%までの量のイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの少なくとも一種を含む。最大20質量%がイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの合わされた量(両方が存在する場合)に適用される。更に典型的には、供給原料が約15質量%から約50質量%まで、例えば、約20質量%から約40質量%までのクメン及び約1質量%から約15質量%まで、例えば、約1質量%から約10質量%までのイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンを含み、残部がsec-ブチルベンゼンである。
アルキルベンゼン供給原料はベンゼンをC3 アルキル化剤とC4 アルキル化剤の混合物でアルキル化することにより生成でき、そのC3 アルキル化剤の量はアルキルベンゼン生成物中のクメンの必要とされる量を生成するように調節される。また、供給原料中のクメン成分及びブチルベンゼン成分が別々のアルキル化操作で生成でき、次いで必要な比率で混合されて所望の供給原料組成物を生成し得る。
【0016】
クメン成分及びブチルベンゼン成分が同時に、又は逐次生成されるのかにかかわらず、ベンゼン水素原子に代えてプロピル基を置換し得るあらゆるC3 化合物がC3 アルキル化剤として使用し得る。こうして、例えば、C3 アルキル化剤はプロピルハライド、プロピルアルコール及びプロピレンの一種以上を含み得る。一般に、C3 アルキル化剤はプロピレンを含む。
同様に、C4 アルキル化剤は一種以上のブチルハライド、ブチルアルコール及び/又はC4 オレフィンを含み得る。一般に、C4 アルキル化剤は少なくとも一種の線状ブテン、即ち、ブテン-1、ブテン-2又はこれらの混合物を含む。しかしながら、本法に使用されるアルキルベンゼン供給原料はsec-ブチルベンゼンに加えてイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンを含むので、C4 アルキル化剤はまた通常少なくとも若干のイソ-ブテンを含む。これが本法の利点である。何とならば、殆どの市販のC4 オレフィン流が線状ブテンとイソ-ブテンの混合物を含むからである。例えば、下記のC4 炭化水素混合物がオレフィン;スチームクラッキングされた粗ブテン流、ラフィネート-1(ブタジエンをスチームクラッキングされた粗ブテン流から除去するための溶剤抽出又は水素化後に残る生成物)及びラフィネート-2(スチームクラッキングされた粗ブテン流からのブタジエン及びイソブテンの除去後に残る生成物)を生成するためにスチームクラッキングを使用するあらゆる製油所で一般に入手し得る。一般に、これらの流れは下記の表1に示された質量範囲内の組成を有する。
表1
【0017】
【0018】
その他の製油所混合C4 流、例えば、ナフサ及びその他の製油所供給原料の接触クラッキングにより得られるものは、典型的には下記の組成を有する:
プロピレン 0-2 質量%
プロパン 0-2 質量%
ブタジエン 0-5 質量%
ブテン-1 5-20 質量%
ブテン-2 10-50 質量%
イソブテン 5-25 質量%
イソ-ブタン 10-45 質量%
n-ブタン 5-25 質量%
メタノールの如き酸素化物から低級オレフィンへの変換から得られるC4 炭化水素フラクションは更に典型的には下記の組成を有する:
プロピレン 0-1 質量%
プロパン 0-0.5 質量%
ブタジエン 0-1 質量%
ブテン-1 10-40 質量%
ブテン-2 50-85 質量%
イソブテン 0-10 質量%
n- + イソ-ブタン 0-10 質量%
【0019】
先のC4 炭化水素混合物のいずれか一種又はあらゆる混合物が本法でC4 アルキル化剤として使用し得る。しかしながら、或る場合には、これらの混合物をアルキル化の前に一つ以上の前処理工程にかけてブタジエンを除去し、かつ/又はイソブテンレベルを低下することが有利であるかもしれない。例えば、ブタジエンが抽出又はブテン-1への選択的水素化により除去でき、一方、イソブテンレベルが選択的二量体化又はMTBEを生成するためのメタノールとの反応により低下し得る。都合良くは、本法に使用されるC4 アルキル化剤が約5質量%から約0.5質量%以上までのイソ-ブテン及び0.1質量%未満のブタジエンを含む。
その他の炭化水素成分に加えて、市販のC3 及びC4 炭化水素混合物は典型的にはそのアルキル化プロセスに有害であり得るその他の不純物を含む。例えば、製油所C3 及びC4 炭化水素流は典型的には窒素不純物及び硫黄不純物を含み、一方、酸素化物変換プロセスにより得られるC3 及びC4 炭化水素流は典型的には未反応の酸素化物及び水を含む。こうして、アルキル化工程の前に、これらの混合物がまたブタジエン除去及びイソブテン除去に加えて、硫黄除去、窒素除去及び酸素化物除去の一つ以上にかけられてもよい。硫黄不純物、窒素不純物、酸素化物不純物の除去は苛性処理、水洗、蒸留、モレキュラーシーブを使用する吸着及び/又は膜分離の一つ又はこれらの組み合わせにより都合良く行なわれる。水がまた典型的には吸着により除去される。
都合良くは、本法のアルキル化工程又は夫々のアルキル化工程への供給原料が1000ppm未満、例えば、500ppm未満、例えば、100ppm未満の水及び/又は100ppm未満、例えば、30ppm未満、例えば、3ppm未満の硫黄及び/又は10ppm未満、例えば、1ppm未満、例えば、0.1ppm未満の窒素を含む。
C3 アルキル化工程及びC4 アルキル化工程が同時又は逐次に行なわれるかにかかわらず、そのアルキル化工程又は夫々のアルキル化工程で使用されるアルキル化触媒は都合良くはMCM-22ファミリーの結晶性モレキュラーシーブである。本明細書に使用される“MCM-22 ファミリー物質”(又は“MCM-22 ファミリーの物質”もしくは“MCM-22 ファミリーのモレキュラーシーブ”)という用語は、
・普通の第一級(first degree)結晶性ビルディングブロック単位セル(その単位セルはMWWフレームワークトポロジーを有する)からつくられたモレキュラーシーブ(単位セルは原子の空間配置であり、これは三次元空間中でタイルにされた場合に結晶構造を記載する。このような結晶構造が“ゼオライトフレームワーク型のアトラス”, 第五編, 2001(その全内容が参考として含まれる)に説明されている);
・一つの単位セル厚さ、好ましくは一つのc-単位セル厚さの単層を形成する、このようなMWWフレームワークトポロジー単位セルの2次元のタイリング(tiling)である、普通の第二級(second degree)ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ;
・一つ以上の単位セル厚さの層である、普通の第二級ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ(一つより多い単位セル厚さの層が一単位セル厚さの少なくとも二つの単層を積み重ね、充填し、又は結合することからつくられる。このような第二級ビルディングブロックの積み重ねは規則的な様式、不規則な様式、ランダム様式、又はこれらのあらゆる組み合わせであってもよい);及び
・MWWフレームワークトポロジーを有する単位セルのあらゆる規則的又はランダムな2次元又は3次元の組み合わせによりつくられたモレキュラーシーブ
の一つ以上を含む。
【0020】
MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブは12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有するこれらのモレキュラーシーブを含む。その物質を特性決定するのに使用されるX線回折データは通常の技術により、入射放射線としての銅のK-α二重線及び収集システムとしてのシンチレーションカウンター及び関連コンピュータを備えたディフラクトメーターを使用して得られる。
MCM-22ファミリーの物質として、MCM-22 (米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH-3 (米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ-25 (米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB-1 (欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ-1 (米国特許第6,077,498号に記載されている), ITQ-2 (国際特許公開WO97/17290に記載されている)、MCM-36 (米国特許第5,250,277号に記載されている)、MCM-49 (米国特許第5,236,575号に記載されている)、MCM-56 (米国特許第5,362,697号に記載されている)、UZM-8 (米国特許第6,756,030号に記載されている)、及びこれらの混合物が挙げられる。MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブがアルキル化触媒として好ましい。何とならば、それらがその他のブチルベンゼン異性体と較べて、sec-ブチルベンゼンの生成に高度に選択的であるとわかったからである。モレキュラーシーブは(a) MCM-49、(b) MCM-56 並びに(c) MCM-49 及びMCM-56のイソタイプ、例えば、ITQ-2から選ばれることが好ましい。
そのアルキル化触媒は未結合形態もしくは自己結合形態のモレキュラーシーブを含むことができ、又はモレキュラーシーブは最終アルキル化触媒が、例えば、2〜80質量%のシーブを含むように通常の様式で酸化物バインダー、例えば、アルミナと合わされる。
一実施態様において、触媒が未結合であり、バインダーと配合された触媒の圧潰強度より極めて優れている圧潰強度を有する。このような触媒は都合良くは気相結晶化方法、特に気相結晶化方法が起こる際にその合成混合物中に使用される苛性アルカリがゼオライト結晶中に残ることを防止する気相結晶化方法により調製される。
【0021】
アルキル化プロセスにおける使用の前に、結合形態又は未結合形態の、MCM-22ファミリーのゼオライトが、そのsec-ブチルベンゼン選択率を改良する条件下で液体形態又は蒸気形態の、水と接触されてもよい。水接触の条件は厳密に調節されないが、sec-ブチルベンゼン選択率の改良がゼオライトを、好ましくは少なくとも0.5時間の時間、例えば、約2時間〜約24時間の時間にわたって、少なくとも0℃、例えば、約10℃から約50℃の温度で水と接触させることにより一般に達成し得る。典型的には、水接触が触媒の質量をゼオライトの初期の質量を基準として30〜75質量%増大するように行なわれる。
使用されるアルキル化条件はクメン及びブチルベンゼンが単一アルキル化プロセス又は別々のプロセスで生成されるのかに依存する。しかしながら、いずれの場合でも、条件は都合良くは約60℃から約260℃まで、例えば、約100℃〜約200℃の温度及び/又は7000kPa以下、例えば、約1000kPaから約3500kPaまでの圧力及び/又は約0.1hr-1〜約50hr-1、例えば、約1hr-1〜約10hr-1の毎時の質量空間速度 (WHSV) (C3 アルキル化剤及び/又はC4アルキル化剤を基準とする)及び/又は約1から約20まで、好ましくは約3から約10まで、更に好ましくは約4から約9までのベンゼン対アルキル化剤のモル比を含む。
【0022】
反応体は気相中又は部分的もしくは完全に液相中にあってもよく、ニート、即ち、その他の物質との意図的な混合又は希釈のないものであってもよく、又はそれらはキャリヤーガスもしくは希釈剤、例えば、水素もしくは窒素の助けによりゼオライト触媒組成物と接触させられる。反応体は少なくとも部分的に液相中にあることが好ましい。
アルキル化工程は一種以上のモノアルキルベンゼンに対し高度に選択的であるが、アルキル化反応からの流出物は通常若干のポリアルキル化生成物だけでなく、未反応の芳香族供給原料及び所望のモノアルキル化種を含むであろう。未反応の芳香族供給原料は通常蒸留により回収され、アルキル化反応器に循環される。ベンゼン蒸留からのボトムは更に蒸留されてモノアルキル化生成物をポリアルキル化生成物及びその他のヘビーから分離する。アルキル化反応流出物中に存在するポリアルキル化生成物の量に応じて、ポリアルキル化生成物を追加のベンゼンでトランスアルキル化して所望のモノアルキル化種の生成を最大にすることが望ましいかもしれない。
追加のベンゼンによるトランスアルキル化は典型的にはアルキル化反応器とは別の、トランスアルキル化反応器中で、好適なトランスアルキル化触媒、例えば、MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ、ゼオライトベータ、MCM-68(米国特許第6,014,018号を参照のこと)、ゼオライトY又はモルデナイト上で行なわれる。トランスアルキル化反応は典型的には少なくとも部分液相条件(これは好適には100℃〜300℃の温度及び/又は1000kPa〜7000kPaの圧力及び/又は全供給原料につき1hr-1〜50hr-1の毎時の質量空間速度及び/又は1〜10のベンゼン/ポリアルキル化ベンゼン質量比を含む)下で行なわれる。
アルキルベンゼン酸化
本法における酸化工程は上記されたような混合クメン/ブチルベンゼン供給原料を下記の一般式(I)の環状イミドを含む触媒の存在下で、酸素含有ガス、例えば、空気と接触させることにより行なわれる。
【0023】
【化4】
【0024】
式中、R1及びR2の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、但し、R1及びR2が共有結合により互いに結合し得ることを条件とし、Q1及びQ2の夫々は独立にC、CH、N、及びCR3から選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、lは0、1、又は2であり、mは1〜3であり、かつR3はR1についてリストされた物(基、又は原子)のいずれかであってもよい。“基”、及び“置換基”という用語はこの明細書中に互換可能に使用される。この開示の目的のために、“ヒドロカルビル基”は水素原子及び20個までの炭素原子を含み、かつ線状、分岐、又は環状、そして環状の場合、芳香族又は非芳香族であってもよい基であると定義される。“置換ヒドロカルビル基”はヒドロカルビル基中の少なくとも1個の水素原子が少なくとも1個の官能基で置換された基又は少なくとも1個の非炭化水素原子もしくは基がヒドロカルビル基内に挿入された基である。都合良くは、R1及びR2の夫々が独立に脂肪族アルコキシ基もしくは芳香族アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシ-カルボニル基及び炭化水素基から選ばれ、これらの基の夫々が1〜20個の炭素原子を有する。
一般に、酸化触媒として使用される環状イミドは下記の一般式に従う。
【0025】
【化5】
【0026】
式中、R7、R8、R9、及びR10の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、かつlは0、1、又は2である。都合良くは、R7、R8、R9、及びR10の夫々が独立に脂肪族アルコキシ基もしくは芳香族アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシ-カルボニル基及び炭化水素基から選ばれ、これらの基の夫々が1〜20個の炭素原子を有する。
一つの実用的な実施態様において、環状イミド触媒がN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)を含む。
酸化工程に適した条件は約70℃〜約200℃、例えば、約90℃〜約130℃の温度及び/又は約0.5気圧〜約20気圧(50〜2000kPa)の圧力を含む。酸化反応は都合良くは接触蒸留ユニット中で行なわれ、通過当りの転化率が副生物の生成を最小にするために50%以下に保たれることが好ましい。
酸化工程はアルキルベンゼン混合物中のクメン及びsec-ブチルベンゼンをそれらの夫々のヒドロペルオキシドに変換する。しかしながら、その酸化プロセスはまた副生物として水及び有機酸(例えば、酢酸又はギ酸)を生成する傾向があり、これらが触媒を加水分解することができ、またヒドロペルオキシド種の分解をもたらし得る。こうして、一実施態様において、酸化工程で使用される条件、特に圧力及び酸素濃度は、反応媒体中の水及び有機酸の濃度を50ppm以下に維持するように調節される。このような条件は典型的には酸化を比較的低い圧力、例えば、300kPa以下、例えば、約100kPa〜約200kPaで行なうことを含む。更に、酸化が0.1〜100%の広い酸素濃度範囲にわたって行ない得るが、比較的低い酸素濃度、例えば、酸素含有ガス中21体積%以下、例えば、約0.1体積%から約21体積%まで、一般に約1体積%から約10体積%の酸素で作業することが好ましい。加えて、水及び有機酸の所望の低レベルを維持することはストリッピングガスを酸化工程中に反応媒体中に通すことにより促進されるかもしれない。一実施態様において、ストリッピングガスが酸素含有ガスと同じである。別の実施態様において、ストリッピングガスが酸素含有ガスとは異なり、反応媒体及び環状イミド触媒に不活性である。好適なストリッピングガスとして、不活性ガス、例えば、ヘリウム及びアルゴンが挙げられる。
【0027】
酸化プロセスを低圧及び低い酸素濃度で作業し、また水及び有機酸を反応媒体からストリッピングすることにより作業することの追加の利点は軽質ヒドロペルオキシド(例えば、エチルヒドロペルオキシド又はメチルヒドロペルオキシド)、軽質ケトン(例えば、メチルエチルケトン)、軽質アルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)及び軽質アルコール(例えば、エタノール)が生成される際にそれらが反応生成物から除去されることである。こうして、軽質ヒドロペルオキシドは有害であり、しかも液体生成物中のそれらの濃度があまりにも高くなる場合に安全上の心配を課する。また、軽質のヒドロペルオキシド、アルコール、アルデヒド及びケトンは有機酸及び水の生成の前駆体であり、その結果、これらの種を酸化媒体から除去することが酸化反応速度及び選択率並びに環状イミド触媒の安定性を改良する。実際に、データはNHPIによるsec-ブチルベンゼンの酸化を100psig(790kPa)で行なう場合にこれらの軽質種及び水の90モル%以上が反応器中に残り、一方、大気圧では、これらの種の95モル%以上が酸化反応器から除去されることを示す。
【0028】
酸化生成物
酸化プロセスの生成物はクメンヒドロペルオキシド及びsec-ブチルヒドロペルオキシドの混合物であり、次いでこれらが酸開裂によりフェノール及びアセトンとメチルエチルケトンの混合物に変換し得る。
その開裂反応は都合良くはヒドロペルオキシドを液相中で約20℃〜約150℃、例えば、約40℃〜約120℃の温度、及び/又は約50kPa〜約2500kPa、例えば、約100kPa〜約1000kPaの圧力及び/又はヒドロペルオキシドを基準として約0.1hr-1〜約1000hr-1、好ましくは約1hr-1〜約50hr-1の毎時の液空間速度(LHSV)で触媒と接触させることにより行なわれる。ヒドロペルオキシドは開裂反応に不活性の有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、フェノール、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキサノン及びsec-ブチルベンゼン中で希釈されて熱除去を助けることが好ましい。開裂反応は都合良くは接触蒸留ユニット中で行なわれる。
開裂工程で使用される触媒は均一触媒又は不均一触媒であってもよい。
好適な均一開裂触媒として、硫酸、過塩素酸、リン酸、塩酸及びp-トルエンスルホン酸が挙げられる。塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄がまた有効な均一開裂触媒である。好ましい均一開裂触媒は硫酸である。
sec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂における使用に適した不均一触媒として、スメクタイトクレー、例えば、米国特許第4,870,217号(テキサコ)(その全開示が参考として本明細書に含まれる)に記載されたような、酸性モンモリロナイトシリカ-アルミナクレーが挙げられる。
今、本発明が下記の非限定実施例を参照して更に特別に記載される。
【実施例】
【0029】
例1:クメン/sec-ブチルベンゼン混合物の無触媒酸化に関するtert-ブチルベンゼンの効果
20質量%のクメン及び80質量%のsec-ブチルベンゼンからなるアルキルベンゼン混合物を変化する量のtert-ブチルベンゼンと合わせて(a)0質量%、(b)5質量%及び(c)20質量%のtert-ベンゼンを含む3種の異なる酸化供給原料を生成した。夫々の供給原料を下記の酸化操作にかけた。
その供給原料150gを撹拌機、熱伝対、ガス入り口、サンプリングポート及び水除去のためのディーンスタークトラップを含む冷却器を備えたパール反応器に計り取った。反応器及び内容物を700rpmで撹拌し、5分間にわたって250cc/分の流量の窒素でスパージした。次いで反応器を窒素で40psig(380kPa)に加圧し、窒素スパージを維持しながら、反応器を130℃に加熱した。反応温度に達した時、ガスを窒素から空気に切り替え、反応器を6時間にわたって250cc/分の空気でスパージした。サンプルを時間毎に採取した。6時間後、ガスを逆に窒素に切り替え、加熱を止めた。反応器が冷却した時、それを圧力解除し、内容物を除去した。
流れに関する時間に対する転化率並びに夫々の供給原料のクメン成分及びsec-ブチルベンゼン成分に関する転化率に対するヒドロペルオキシド選択率を測定し、結果を図1〜4に示す。図1及び3から、5質量%、そして特に20質量%のtert-ブチルベンゼンの添加がクメン及びsec-ブチルベンゼンの両方の転化率のレベルを有意に低下したことがわかるであろう。更に、5質量%のtert-ブチルベンゼンの添加がヒドロペルオキシド選択率に効果を殆ど有さなかったが、20質量%のtert-ブチルベンゼンの添加がクメンヒドロペルオキシド及びsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドの両方への選択率を著しく低下した(図2及び4)。
【0030】
例2:クメン/sec-ブチルベンゼン混合物の無触媒酸化に関するイソ-ブチルベンゼンの効果
アルキルベンゼン混合物を変化する量のイソ-ブチルベンゼンと合わせて(a)0質量%、(b)5質量%及び(c)20質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む酸化供給原料を生成した以外は、例1の操作を繰り返した。結果を図5〜8に示す。再度、5質量%、そして特に20質量%のイソ-ブチルベンゼンの添加がクメン及びsec-ブチルベンゼンの両方の転化率のレベルを有意に低下した(図5及び7)。加えて、5質量%のイソ-ブチルベンゼンの添加がヒドロペルオキシド選択率に効果を殆ど有さなかったが、20質量%のイソ-ブチルベンゼンの添加がクメンヒドロペルオキシド及びsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドの両方への選択率を著しく低下した(図6及び8)。
【0031】
例3:クメン/sec-ブチルベンゼン混合物のNHPI触媒酸化に関するtert-ブチルベンゼンの効果
20質量%のクメン及び80質量%のsec-ブチルベンゼンからなるアルキルベンゼン混合物を変化する量のtert-ブチルベンゼンと合わせて(a)0質量%及び(b)5質量%のtert-ベンゼンを含む2種の異なる酸化供給原料を生成した。夫々の供給原料を下記の酸化操作にかけた。
その供給原料150gを撹拌機、熱伝対、ガス入り口、サンプリングポート及び水除去のためのディーンスタークトラップを含む冷却器を備えたパール反応器に0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)とともに計り取った。反応器及び内容物を700rpmで撹拌し、5分間にわたって250cc/分の流量の窒素でスパージした。次いで反応器を窒素で40psig(380kPa)に加圧し、窒素スパージを維持しながら、反応器を130℃に加熱した。反応温度に達した時、ガスを窒素から空気に切り替え、反応器を4時間にわたって250cc/分の空気でスパージした。サンプルを時間毎に採取した。4時間後、ガスを逆に窒素に切り替え、加熱を止めた。反応器が冷却した時、それを圧力解除し、内容物を除去した。
流れに関する時間に対する転化率並びに夫々の供給原料のクメン成分及びsec-ブチルベンゼン成分に関する転化率に対するヒドロペルオキシド選択率を測定した。結果を図9〜12にプロットし、これらはまたNHPI触媒の不在下で基本供給原料(tert-ブチルベンゼンを添加しなかった)で得られた結果を示す。図9及び11から、tert-ブチルベンゼンの不在下では、NHPI触媒の添加がクメン及びsec-ブチルベンゼンの両方の転化率のレベルを改良したが、この改良が5質量%のtert-ブチルベンゼンの添加により有意に高められたことがわかるであろう。更に、NHPI触媒の添加が基本クメン/sec-ブチルベンゼン供給原料でヒドロペルオキシド選択率に効果を殆ど有さなかったが、5質量%のtert-ブチルベンゼンを含む供給原料では、NHPIの添加がsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドへの選択率を有意に増大し、またクメンヒドロペルオキシドへの選択率をそれ程増大しなかった(図10及び12)。
【0032】
例4:クメン/sec-ブチルベンゼン混合物のNHPI触媒酸化に関するイソ-ブチルベンゼンの効果
アルキルベンゼン混合物を変化する量のイソ-ブチルベンゼンと合わせて(a)0質量%及び(b)5質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む酸化供給原料を生成した以外は、実施例3の操作を繰り返した。結果を図13〜16に示し、これらはまたNHPI触媒の不在下の基本供給原料(イソ-ブチルベンゼンを添加しなかった)で得られた結果を示す。図13及び15から、イソ-ブチルベンゼンの不在下では、NHPI触媒の添加がsec-ブチルベンゼン及びクメンの両方の転化率のレベルを改良したが、この改良が5質量%のイソ-ブチルベンゼンの添加により有意に高められたことがわかるであろう。更に、NHPI触媒の添加が基本クメン/sec-ブチルベンゼン供給原料でヒドロペルオキシド選択率に効果を殆ど有さなかったが、5質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む供給原料では、NHPIの添加がsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドの両方への選択率を有意に増大した(図14及び16)。
本発明が特別な実施態様を参照して記載され、説明されたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも説明されていない変化に適合することを認めるであろう。この理由のために、本発明の真の範囲を決める目的のために特許請求の範囲のみが参考にされるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2008年8月26日に出願された先の米国仮特許出願第61/091,850号(これが参考として本明細書にそのまま含まれる)の利益を主張する。
本発明はアルキルベンゼンヒドロペルオキシドを製造し、必要により得られるヒドロペルオキシドをフェノールに変換するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノールは化学工業における重要な製品である。例えば、フェノールはフェノール樹脂、ビスフェノールA、ε-カプロラクタム、アジピン酸、及び可塑剤の製造に有益である。
現在、フェノールの製造のための最も普通の経路はホック方法である。これはクメンを製造するためのプロピレンによるベンゼンのアルキル化、続いて相当するヒドロペルオキシドへのクメンの酸化次いで等モル量のフェノール及びアセトンを製造するためのそのヒドロペルオキシドの開裂を伴なう3工程方法である。しかしながら、フェノールについての世界の需要はアセトンについての需要よりも迅速に増大しつつある。加えて、ブテンのコストに対するプロピレンのコストが、プロピレンの発展する不足のために、おそらく増大する。こうして、供給原料としてプロピレンに代えて、又はそれだけではなくブテンを使用し、メチルエチルケトンを同時製造する方法がフェノールの製造の魅力的な別の経路であるかもしれない。
フェノール及びメチルエチルケトンがホック方法の変化(sec-ブチルベンゼンが酸化されてsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドを得、そのヒドロペルオキシドが所望のフェノール及びメチルエチルケトンに分解される)により同時製造し得ることが知られている。このような方法の総説が“フェノール”と題するProcess Economics Report No. 22B (the Stanford Research Institute により1977年12月に発行)の113-122頁及び261-263頁に記載されている。
フェノールと変化する量のメチルエチルケトン及びアセトンの混合物がクメン及びsec-ブチルベンゼンを含む供給原料を酸化し、次いで得られるヒドロペルオキシドを開裂することにより製造し得ることがまた知られている。供給原料中のクメン対sec-ブチルベンゼンの質量比を調節することにより、生成物中のアセトン対メチルエチルケトンの比が市場の条件に応じて変化し得る。欧州特許出願公開第1,088,809 号及び米国特許第7,282,613号を参照のこと。
しかしながら、アルキルベンゼン前駆体又はその一種としてsec-ブチルベンゼンを使用するフェノールの製造はクメンをベースとする方法では存在しないか、又はそれ程ひどくはない或る種の問題により伴なわれる。例えば、クメンと較べて、sec-ブチルベンゼンから相当するヒドロペルオキシドへの酸化が触媒の不在下で非常に遅く、しかも不純物の存在に非常に敏感である。結果として、米国特許第6,720,462 号及び同第6,852,893 号はアルキルベンゼン、例えば、sec-ブチルベンゼンの酸化を促進するための触媒として、環状イミド、例えば、N-ヒドロキシフタルイミドの使用を提案していた。
sec-ブチルベンゼンはベンゼンを酸触媒上でn-ブテンでアルキル化することにより製造し得る。その化学はエチルベンゼン及びクメンの製造に非常に似ている。しかしながら、アルキル化剤の炭素数が増大するにつれて、生成物異性体の数がまた増大する。例えば、エチルベンゼンは一種の異性体を有し、またプロピルベンゼンは2種の異性体(クメン及びn-プロピルベンゼン)を有するが、ブチルベンゼンは4種の異性体(n-、イソ-、sec-、及びt-ブチルベンゼン)を有する。これらの副生物、特にイソ-ブチルベンゼン及びt-ブチルベンゼンは、sec-ブチルベンゼンに非常に近い沸点を有し、それ故、蒸留によりsec-ブチルベンゼンから分離するのに困難である。
【0003】
【0004】
加えて、ベンゼンアルキル化工程におけるsec-ブチルベンゼン製造は純粋なn-ブテン供給原料を使用することにより最大にし得るが、実際には一層経済的なブテン供給原料、例えば、ラフィネート(Raffinete)-2を使用することが望ましい。代表的なラフィネート-2は0-1%のブタジエン及び0-5%のイソブテンを含む。供給原料中にこの増大されたイソブテンを用いると、イソ-ブチルベンゼン及びt-ブチルベンゼンの一層高い製造が不可避である。しかしながら、イソブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンはsec-ブチルベンゼンから相当するヒドロペルオキシドへの酸化のインヒビターであることが知られている。過去に、これがフェノールをsec-ブチルベンゼンから製造するためのホック方法の使用を著しく誘発しなかった。
2007年11月17日に公開された、本件出願人の米国特許出願公開第2007/0265476号において、本発明者らは下記の式のアルキルベンゼン供給原料、例えば、sec-ブチルベンゼンが環状イミド触媒、例えば、N-ヒドロキシフタルイミドの存在下で酸化される場合に、酸化の速度がsec-ブチルベンゼンの3質量%程度に高いレベルでさえもイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼン不純物の存在により実質的に影響されないことを示した。
【0005】
【化1】
【0006】
式中、R1及び R2 は夫々独立に1個から4個までの炭素原子を有するアルキル基を表す。特許出願第2007/0265476 号はアルキルベンゼン供給原料がまたクメンを含んでもよいことを示すが、それはクメンが供給原料の10%を超えず、好ましくは8%を超えず、更に好ましくは5%を超えない量でわずかに存在すべきであることを教示している。更に、sec-ブチルベンゼン酸化工程についてのクメンの存在の影響についての情報が特許出願第2007/0265476 号に提示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、クメン及びsec-ブチルベンゼンの混合物が環状イミド触媒、例えば、N-ヒドロキシフタルイミドの存在下で酸化される場合に、20質量%までの少量のイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンの混入がクメン及びsec-ブチルベンゼンの転化率並びに所望のヒドロペルオキシドへの選択率の両方を有意に改良することが予期せずに今わかった。
一局面において、本発明はアルキルベンゼンヒドロペルオキシドの製造方法にあり、その方法は(i) sec-ブチルベンゼン、(ii)全供給原料の10質量%より大きい量のクメン及び(iii) 全供給原料の20質量%までの量のイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの少なくとも一種を含む供給原料を下記の一般式(I)の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させることを含む。
【0008】
【化2】
【0009】
式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、但し、R1及びR2 が共有結合により互いに結合し得ることを条件とし、
Q1及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、
X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YはO又はOHであり、
kは0、1、又は2であり、
lは0、1、又は2であり、
mは1〜3であり、かつ
R3 はR1についてリストされたもののいずれかであってもよく、また前記接触は前記sec-ブチルベンゼン及びクメンを関連ヒドロペルオキシドに変換する条件下で行なわれる。
一実施態様において、前記環状イミドが一般式(II)に従う。
【0010】
【化3】
【0011】
式中、R7、R8、R9、及びR10 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、
X及びZの夫々が独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YがO又はOHであり、
kが0、1、又は2であり、かつ
lが0、1、又は2である。
都合良くは、前記環状イミドがN-ヒドロキシフタルイミドを含む。
都合良くは、前記供給原料が約1質量%から約15質量%まで、例えば、約1質量%から約10質量%までのイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンを含む。両方の異性体が存在する場合、質量%範囲は2種の異性体の合わされた質量を基準とする。
都合良くは、前記供給原料が約15質量%から約50質量%までのクメンを含む。
都合良くは、前記接触が約90℃〜約150℃、例えば、約100℃〜約140℃、例えば、約115℃〜約130℃の温度で行なわれる。典型的には、前記接触が約15kPa〜約500kPaの圧力、例えば、約15kPa〜約150kPaの圧力で行なわれる。
【0012】
都合良くは、前記環状イミドが前記接触中の前記供給原料中のsec-ブチルベンゼン及びクメンの約0.05質量%〜約5質量%、例えば、約0.1質量%〜約1質量%の量で存在する。
典型的には、その方法が前記接触により生成されたヒドロペルオキシドを開裂してフェノール、アセトン及びメチルエチルケトンを生成することを更に含む。
都合良くは、開裂が触媒の存在下で行なわれる。一実施態様において、開裂が均一触媒、例えば、硫酸、過塩素酸、リン酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸、塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄の少なくとも一種の存在下で行なわれる。別の実施態様において、開裂が不均一触媒、例えば、スメクタイトクレーの存在下で行なわれる。
都合良くは、開裂が約40℃〜約120℃の温度及び/又は約100kPa〜約1000kPaの圧力及び/又は約1hr-1〜約50hr-1の毎時の液空間速度(LHSV)(ヒドロペルオキシドを基準とする)で行なわれる。
一実施態様において、その方法は開裂により生成されたフェノールをビスフェノールAに変換することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】0質量%、5質量%及び20質量%のtert-ブチルベンゼン(TBB)を含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関する流れについての時間(TOS)に対するクメン転化率を比較するグラフである。
【図2】0質量%、5質量%及び20質量%のtert-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関するクメン転化率に対するクメンヒドロペルオキシド(CHP)選択率を比較するグラフである。
【図3】0質量%、5質量%及び20質量%のtert-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関する流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン(SBB)転化率を比較するグラフである。
【図4】0質量%、5質量%及び20質量%のtert-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関するsec-ブチルベンゼン転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド(SBBHP)選択率を比較するグラフである。
【図5】0質量%、5質量%及び20質量%のイソ-ブチルベンゼン(イソBB)を含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関する流れについての時間に対するクメン転化率を比較するグラフである。
【図6】0質量%、5質量%及び20質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関するクメン転化率に対するクメンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図7】0質量%、5質量%及び20質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関する流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン転化率を比較するグラフである。
【図8】0質量%、5質量%及び20質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の無触媒空気酸化に関するsec-ブチルベンゼン転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図9】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)を用い(w)、また用いずに(wo)、かつ5質量%のtert-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関する流れについての時間に対するクメン転化率を比較するグラフである。
【0014】
【図10】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のtert-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関するクメン転化率に対するクメンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図11】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のtert-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関する流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン転化率を比較するグラフである。
【図12】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のtert-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関するsec-ブチルベンゼン転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図13】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のイソ-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関する流れについての時間に対するsec-ブチルベンゼン転化率を比較するグラフである。
【図14】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のイソ-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関するsec-ブチルベンゼン転化率に対するsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【図15】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のイソ-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関する流れについての時間に対するクメン転化率を比較するグラフである。
【図16】0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミドを用い、また用いずに、かつ5質量%のイソ-ブチルベンゼンを用い、また用いないの両方で混合クメン及びsec-ブチルベンゼン供給原料の空気酸化に関するクメン転化率に対するクメンヒドロペルオキシド選択率を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
クメン及びsec-ブチルベンゼンの混合物を相当するヒドロペルオキシドに酸化し、必要により得られるヒドロペルオキシドをフェノールに変換するための方法が本明細書に記載される。その方法は環状イミドを酸化触媒として使用し、このような混合供給原料の接触酸化により、20質量%までの少量のイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンの混入がクメン及びsec-ブチルベンゼンの転化率並びに所望のヒドロペルオキシドへの選択率の両方を有意に改良するという予期しない知見に基づく。
アルキルベンゼン供給原料
本法に使用されるアルキルベンゼン供給原料は全供給原料の10質量%より大きい量のsec-ブチルベンゼンとクメンの混合物並びに全供給原料の20質量%までの量のイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの少なくとも一種を含む。最大20質量%がイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの合わされた量(両方が存在する場合)に適用される。更に典型的には、供給原料が約15質量%から約50質量%まで、例えば、約20質量%から約40質量%までのクメン及び約1質量%から約15質量%まで、例えば、約1質量%から約10質量%までのイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンを含み、残部がsec-ブチルベンゼンである。
アルキルベンゼン供給原料はベンゼンをC3 アルキル化剤とC4 アルキル化剤の混合物でアルキル化することにより生成でき、そのC3 アルキル化剤の量はアルキルベンゼン生成物中のクメンの必要とされる量を生成するように調節される。また、供給原料中のクメン成分及びブチルベンゼン成分が別々のアルキル化操作で生成でき、次いで必要な比率で混合されて所望の供給原料組成物を生成し得る。
【0016】
クメン成分及びブチルベンゼン成分が同時に、又は逐次生成されるのかにかかわらず、ベンゼン水素原子に代えてプロピル基を置換し得るあらゆるC3 化合物がC3 アルキル化剤として使用し得る。こうして、例えば、C3 アルキル化剤はプロピルハライド、プロピルアルコール及びプロピレンの一種以上を含み得る。一般に、C3 アルキル化剤はプロピレンを含む。
同様に、C4 アルキル化剤は一種以上のブチルハライド、ブチルアルコール及び/又はC4 オレフィンを含み得る。一般に、C4 アルキル化剤は少なくとも一種の線状ブテン、即ち、ブテン-1、ブテン-2又はこれらの混合物を含む。しかしながら、本法に使用されるアルキルベンゼン供給原料はsec-ブチルベンゼンに加えてイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンを含むので、C4 アルキル化剤はまた通常少なくとも若干のイソ-ブテンを含む。これが本法の利点である。何とならば、殆どの市販のC4 オレフィン流が線状ブテンとイソ-ブテンの混合物を含むからである。例えば、下記のC4 炭化水素混合物がオレフィン;スチームクラッキングされた粗ブテン流、ラフィネート-1(ブタジエンをスチームクラッキングされた粗ブテン流から除去するための溶剤抽出又は水素化後に残る生成物)及びラフィネート-2(スチームクラッキングされた粗ブテン流からのブタジエン及びイソブテンの除去後に残る生成物)を生成するためにスチームクラッキングを使用するあらゆる製油所で一般に入手し得る。一般に、これらの流れは下記の表1に示された質量範囲内の組成を有する。
表1
【0017】
【0018】
その他の製油所混合C4 流、例えば、ナフサ及びその他の製油所供給原料の接触クラッキングにより得られるものは、典型的には下記の組成を有する:
プロピレン 0-2 質量%
プロパン 0-2 質量%
ブタジエン 0-5 質量%
ブテン-1 5-20 質量%
ブテン-2 10-50 質量%
イソブテン 5-25 質量%
イソ-ブタン 10-45 質量%
n-ブタン 5-25 質量%
メタノールの如き酸素化物から低級オレフィンへの変換から得られるC4 炭化水素フラクションは更に典型的には下記の組成を有する:
プロピレン 0-1 質量%
プロパン 0-0.5 質量%
ブタジエン 0-1 質量%
ブテン-1 10-40 質量%
ブテン-2 50-85 質量%
イソブテン 0-10 質量%
n- + イソ-ブタン 0-10 質量%
【0019】
先のC4 炭化水素混合物のいずれか一種又はあらゆる混合物が本法でC4 アルキル化剤として使用し得る。しかしながら、或る場合には、これらの混合物をアルキル化の前に一つ以上の前処理工程にかけてブタジエンを除去し、かつ/又はイソブテンレベルを低下することが有利であるかもしれない。例えば、ブタジエンが抽出又はブテン-1への選択的水素化により除去でき、一方、イソブテンレベルが選択的二量体化又はMTBEを生成するためのメタノールとの反応により低下し得る。都合良くは、本法に使用されるC4 アルキル化剤が約5質量%から約0.5質量%以上までのイソ-ブテン及び0.1質量%未満のブタジエンを含む。
その他の炭化水素成分に加えて、市販のC3 及びC4 炭化水素混合物は典型的にはそのアルキル化プロセスに有害であり得るその他の不純物を含む。例えば、製油所C3 及びC4 炭化水素流は典型的には窒素不純物及び硫黄不純物を含み、一方、酸素化物変換プロセスにより得られるC3 及びC4 炭化水素流は典型的には未反応の酸素化物及び水を含む。こうして、アルキル化工程の前に、これらの混合物がまたブタジエン除去及びイソブテン除去に加えて、硫黄除去、窒素除去及び酸素化物除去の一つ以上にかけられてもよい。硫黄不純物、窒素不純物、酸素化物不純物の除去は苛性処理、水洗、蒸留、モレキュラーシーブを使用する吸着及び/又は膜分離の一つ又はこれらの組み合わせにより都合良く行なわれる。水がまた典型的には吸着により除去される。
都合良くは、本法のアルキル化工程又は夫々のアルキル化工程への供給原料が1000ppm未満、例えば、500ppm未満、例えば、100ppm未満の水及び/又は100ppm未満、例えば、30ppm未満、例えば、3ppm未満の硫黄及び/又は10ppm未満、例えば、1ppm未満、例えば、0.1ppm未満の窒素を含む。
C3 アルキル化工程及びC4 アルキル化工程が同時又は逐次に行なわれるかにかかわらず、そのアルキル化工程又は夫々のアルキル化工程で使用されるアルキル化触媒は都合良くはMCM-22ファミリーの結晶性モレキュラーシーブである。本明細書に使用される“MCM-22 ファミリー物質”(又は“MCM-22 ファミリーの物質”もしくは“MCM-22 ファミリーのモレキュラーシーブ”)という用語は、
・普通の第一級(first degree)結晶性ビルディングブロック単位セル(その単位セルはMWWフレームワークトポロジーを有する)からつくられたモレキュラーシーブ(単位セルは原子の空間配置であり、これは三次元空間中でタイルにされた場合に結晶構造を記載する。このような結晶構造が“ゼオライトフレームワーク型のアトラス”, 第五編, 2001(その全内容が参考として含まれる)に説明されている);
・一つの単位セル厚さ、好ましくは一つのc-単位セル厚さの単層を形成する、このようなMWWフレームワークトポロジー単位セルの2次元のタイリング(tiling)である、普通の第二級(second degree)ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ;
・一つ以上の単位セル厚さの層である、普通の第二級ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ(一つより多い単位セル厚さの層が一単位セル厚さの少なくとも二つの単層を積み重ね、充填し、又は結合することからつくられる。このような第二級ビルディングブロックの積み重ねは規則的な様式、不規則な様式、ランダム様式、又はこれらのあらゆる組み合わせであってもよい);及び
・MWWフレームワークトポロジーを有する単位セルのあらゆる規則的又はランダムな2次元又は3次元の組み合わせによりつくられたモレキュラーシーブ
の一つ以上を含む。
【0020】
MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブは12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有するこれらのモレキュラーシーブを含む。その物質を特性決定するのに使用されるX線回折データは通常の技術により、入射放射線としての銅のK-α二重線及び収集システムとしてのシンチレーションカウンター及び関連コンピュータを備えたディフラクトメーターを使用して得られる。
MCM-22ファミリーの物質として、MCM-22 (米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH-3 (米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ-25 (米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB-1 (欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ-1 (米国特許第6,077,498号に記載されている), ITQ-2 (国際特許公開WO97/17290に記載されている)、MCM-36 (米国特許第5,250,277号に記載されている)、MCM-49 (米国特許第5,236,575号に記載されている)、MCM-56 (米国特許第5,362,697号に記載されている)、UZM-8 (米国特許第6,756,030号に記載されている)、及びこれらの混合物が挙げられる。MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブがアルキル化触媒として好ましい。何とならば、それらがその他のブチルベンゼン異性体と較べて、sec-ブチルベンゼンの生成に高度に選択的であるとわかったからである。モレキュラーシーブは(a) MCM-49、(b) MCM-56 並びに(c) MCM-49 及びMCM-56のイソタイプ、例えば、ITQ-2から選ばれることが好ましい。
そのアルキル化触媒は未結合形態もしくは自己結合形態のモレキュラーシーブを含むことができ、又はモレキュラーシーブは最終アルキル化触媒が、例えば、2〜80質量%のシーブを含むように通常の様式で酸化物バインダー、例えば、アルミナと合わされる。
一実施態様において、触媒が未結合であり、バインダーと配合された触媒の圧潰強度より極めて優れている圧潰強度を有する。このような触媒は都合良くは気相結晶化方法、特に気相結晶化方法が起こる際にその合成混合物中に使用される苛性アルカリがゼオライト結晶中に残ることを防止する気相結晶化方法により調製される。
【0021】
アルキル化プロセスにおける使用の前に、結合形態又は未結合形態の、MCM-22ファミリーのゼオライトが、そのsec-ブチルベンゼン選択率を改良する条件下で液体形態又は蒸気形態の、水と接触されてもよい。水接触の条件は厳密に調節されないが、sec-ブチルベンゼン選択率の改良がゼオライトを、好ましくは少なくとも0.5時間の時間、例えば、約2時間〜約24時間の時間にわたって、少なくとも0℃、例えば、約10℃から約50℃の温度で水と接触させることにより一般に達成し得る。典型的には、水接触が触媒の質量をゼオライトの初期の質量を基準として30〜75質量%増大するように行なわれる。
使用されるアルキル化条件はクメン及びブチルベンゼンが単一アルキル化プロセス又は別々のプロセスで生成されるのかに依存する。しかしながら、いずれの場合でも、条件は都合良くは約60℃から約260℃まで、例えば、約100℃〜約200℃の温度及び/又は7000kPa以下、例えば、約1000kPaから約3500kPaまでの圧力及び/又は約0.1hr-1〜約50hr-1、例えば、約1hr-1〜約10hr-1の毎時の質量空間速度 (WHSV) (C3 アルキル化剤及び/又はC4アルキル化剤を基準とする)及び/又は約1から約20まで、好ましくは約3から約10まで、更に好ましくは約4から約9までのベンゼン対アルキル化剤のモル比を含む。
【0022】
反応体は気相中又は部分的もしくは完全に液相中にあってもよく、ニート、即ち、その他の物質との意図的な混合又は希釈のないものであってもよく、又はそれらはキャリヤーガスもしくは希釈剤、例えば、水素もしくは窒素の助けによりゼオライト触媒組成物と接触させられる。反応体は少なくとも部分的に液相中にあることが好ましい。
アルキル化工程は一種以上のモノアルキルベンゼンに対し高度に選択的であるが、アルキル化反応からの流出物は通常若干のポリアルキル化生成物だけでなく、未反応の芳香族供給原料及び所望のモノアルキル化種を含むであろう。未反応の芳香族供給原料は通常蒸留により回収され、アルキル化反応器に循環される。ベンゼン蒸留からのボトムは更に蒸留されてモノアルキル化生成物をポリアルキル化生成物及びその他のヘビーから分離する。アルキル化反応流出物中に存在するポリアルキル化生成物の量に応じて、ポリアルキル化生成物を追加のベンゼンでトランスアルキル化して所望のモノアルキル化種の生成を最大にすることが望ましいかもしれない。
追加のベンゼンによるトランスアルキル化は典型的にはアルキル化反応器とは別の、トランスアルキル化反応器中で、好適なトランスアルキル化触媒、例えば、MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ、ゼオライトベータ、MCM-68(米国特許第6,014,018号を参照のこと)、ゼオライトY又はモルデナイト上で行なわれる。トランスアルキル化反応は典型的には少なくとも部分液相条件(これは好適には100℃〜300℃の温度及び/又は1000kPa〜7000kPaの圧力及び/又は全供給原料につき1hr-1〜50hr-1の毎時の質量空間速度及び/又は1〜10のベンゼン/ポリアルキル化ベンゼン質量比を含む)下で行なわれる。
アルキルベンゼン酸化
本法における酸化工程は上記されたような混合クメン/ブチルベンゼン供給原料を下記の一般式(I)の環状イミドを含む触媒の存在下で、酸素含有ガス、例えば、空気と接触させることにより行なわれる。
【0023】
【化4】
【0024】
式中、R1及びR2の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、但し、R1及びR2が共有結合により互いに結合し得ることを条件とし、Q1及びQ2の夫々は独立にC、CH、N、及びCR3から選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、lは0、1、又は2であり、mは1〜3であり、かつR3はR1についてリストされた物(基、又は原子)のいずれかであってもよい。“基”、及び“置換基”という用語はこの明細書中に互換可能に使用される。この開示の目的のために、“ヒドロカルビル基”は水素原子及び20個までの炭素原子を含み、かつ線状、分岐、又は環状、そして環状の場合、芳香族又は非芳香族であってもよい基であると定義される。“置換ヒドロカルビル基”はヒドロカルビル基中の少なくとも1個の水素原子が少なくとも1個の官能基で置換された基又は少なくとも1個の非炭化水素原子もしくは基がヒドロカルビル基内に挿入された基である。都合良くは、R1及びR2の夫々が独立に脂肪族アルコキシ基もしくは芳香族アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシ-カルボニル基及び炭化水素基から選ばれ、これらの基の夫々が1〜20個の炭素原子を有する。
一般に、酸化触媒として使用される環状イミドは下記の一般式に従う。
【0025】
【化5】
【0026】
式中、R7、R8、R9、及びR10の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、もしくは基SO3H、NH2、OH及びNO2、又は原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、YはO又はOHであり、kは0、1、又は2であり、かつlは0、1、又は2である。都合良くは、R7、R8、R9、及びR10の夫々が独立に脂肪族アルコキシ基もしくは芳香族アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシ-カルボニル基及び炭化水素基から選ばれ、これらの基の夫々が1〜20個の炭素原子を有する。
一つの実用的な実施態様において、環状イミド触媒がN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)を含む。
酸化工程に適した条件は約70℃〜約200℃、例えば、約90℃〜約130℃の温度及び/又は約0.5気圧〜約20気圧(50〜2000kPa)の圧力を含む。酸化反応は都合良くは接触蒸留ユニット中で行なわれ、通過当りの転化率が副生物の生成を最小にするために50%以下に保たれることが好ましい。
酸化工程はアルキルベンゼン混合物中のクメン及びsec-ブチルベンゼンをそれらの夫々のヒドロペルオキシドに変換する。しかしながら、その酸化プロセスはまた副生物として水及び有機酸(例えば、酢酸又はギ酸)を生成する傾向があり、これらが触媒を加水分解することができ、またヒドロペルオキシド種の分解をもたらし得る。こうして、一実施態様において、酸化工程で使用される条件、特に圧力及び酸素濃度は、反応媒体中の水及び有機酸の濃度を50ppm以下に維持するように調節される。このような条件は典型的には酸化を比較的低い圧力、例えば、300kPa以下、例えば、約100kPa〜約200kPaで行なうことを含む。更に、酸化が0.1〜100%の広い酸素濃度範囲にわたって行ない得るが、比較的低い酸素濃度、例えば、酸素含有ガス中21体積%以下、例えば、約0.1体積%から約21体積%まで、一般に約1体積%から約10体積%の酸素で作業することが好ましい。加えて、水及び有機酸の所望の低レベルを維持することはストリッピングガスを酸化工程中に反応媒体中に通すことにより促進されるかもしれない。一実施態様において、ストリッピングガスが酸素含有ガスと同じである。別の実施態様において、ストリッピングガスが酸素含有ガスとは異なり、反応媒体及び環状イミド触媒に不活性である。好適なストリッピングガスとして、不活性ガス、例えば、ヘリウム及びアルゴンが挙げられる。
【0027】
酸化プロセスを低圧及び低い酸素濃度で作業し、また水及び有機酸を反応媒体からストリッピングすることにより作業することの追加の利点は軽質ヒドロペルオキシド(例えば、エチルヒドロペルオキシド又はメチルヒドロペルオキシド)、軽質ケトン(例えば、メチルエチルケトン)、軽質アルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)及び軽質アルコール(例えば、エタノール)が生成される際にそれらが反応生成物から除去されることである。こうして、軽質ヒドロペルオキシドは有害であり、しかも液体生成物中のそれらの濃度があまりにも高くなる場合に安全上の心配を課する。また、軽質のヒドロペルオキシド、アルコール、アルデヒド及びケトンは有機酸及び水の生成の前駆体であり、その結果、これらの種を酸化媒体から除去することが酸化反応速度及び選択率並びに環状イミド触媒の安定性を改良する。実際に、データはNHPIによるsec-ブチルベンゼンの酸化を100psig(790kPa)で行なう場合にこれらの軽質種及び水の90モル%以上が反応器中に残り、一方、大気圧では、これらの種の95モル%以上が酸化反応器から除去されることを示す。
【0028】
酸化生成物
酸化プロセスの生成物はクメンヒドロペルオキシド及びsec-ブチルヒドロペルオキシドの混合物であり、次いでこれらが酸開裂によりフェノール及びアセトンとメチルエチルケトンの混合物に変換し得る。
その開裂反応は都合良くはヒドロペルオキシドを液相中で約20℃〜約150℃、例えば、約40℃〜約120℃の温度、及び/又は約50kPa〜約2500kPa、例えば、約100kPa〜約1000kPaの圧力及び/又はヒドロペルオキシドを基準として約0.1hr-1〜約1000hr-1、好ましくは約1hr-1〜約50hr-1の毎時の液空間速度(LHSV)で触媒と接触させることにより行なわれる。ヒドロペルオキシドは開裂反応に不活性の有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、フェノール、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキサノン及びsec-ブチルベンゼン中で希釈されて熱除去を助けることが好ましい。開裂反応は都合良くは接触蒸留ユニット中で行なわれる。
開裂工程で使用される触媒は均一触媒又は不均一触媒であってもよい。
好適な均一開裂触媒として、硫酸、過塩素酸、リン酸、塩酸及びp-トルエンスルホン酸が挙げられる。塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄がまた有効な均一開裂触媒である。好ましい均一開裂触媒は硫酸である。
sec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂における使用に適した不均一触媒として、スメクタイトクレー、例えば、米国特許第4,870,217号(テキサコ)(その全開示が参考として本明細書に含まれる)に記載されたような、酸性モンモリロナイトシリカ-アルミナクレーが挙げられる。
今、本発明が下記の非限定実施例を参照して更に特別に記載される。
【実施例】
【0029】
例1:クメン/sec-ブチルベンゼン混合物の無触媒酸化に関するtert-ブチルベンゼンの効果
20質量%のクメン及び80質量%のsec-ブチルベンゼンからなるアルキルベンゼン混合物を変化する量のtert-ブチルベンゼンと合わせて(a)0質量%、(b)5質量%及び(c)20質量%のtert-ベンゼンを含む3種の異なる酸化供給原料を生成した。夫々の供給原料を下記の酸化操作にかけた。
その供給原料150gを撹拌機、熱伝対、ガス入り口、サンプリングポート及び水除去のためのディーンスタークトラップを含む冷却器を備えたパール反応器に計り取った。反応器及び内容物を700rpmで撹拌し、5分間にわたって250cc/分の流量の窒素でスパージした。次いで反応器を窒素で40psig(380kPa)に加圧し、窒素スパージを維持しながら、反応器を130℃に加熱した。反応温度に達した時、ガスを窒素から空気に切り替え、反応器を6時間にわたって250cc/分の空気でスパージした。サンプルを時間毎に採取した。6時間後、ガスを逆に窒素に切り替え、加熱を止めた。反応器が冷却した時、それを圧力解除し、内容物を除去した。
流れに関する時間に対する転化率並びに夫々の供給原料のクメン成分及びsec-ブチルベンゼン成分に関する転化率に対するヒドロペルオキシド選択率を測定し、結果を図1〜4に示す。図1及び3から、5質量%、そして特に20質量%のtert-ブチルベンゼンの添加がクメン及びsec-ブチルベンゼンの両方の転化率のレベルを有意に低下したことがわかるであろう。更に、5質量%のtert-ブチルベンゼンの添加がヒドロペルオキシド選択率に効果を殆ど有さなかったが、20質量%のtert-ブチルベンゼンの添加がクメンヒドロペルオキシド及びsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドの両方への選択率を著しく低下した(図2及び4)。
【0030】
例2:クメン/sec-ブチルベンゼン混合物の無触媒酸化に関するイソ-ブチルベンゼンの効果
アルキルベンゼン混合物を変化する量のイソ-ブチルベンゼンと合わせて(a)0質量%、(b)5質量%及び(c)20質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む酸化供給原料を生成した以外は、例1の操作を繰り返した。結果を図5〜8に示す。再度、5質量%、そして特に20質量%のイソ-ブチルベンゼンの添加がクメン及びsec-ブチルベンゼンの両方の転化率のレベルを有意に低下した(図5及び7)。加えて、5質量%のイソ-ブチルベンゼンの添加がヒドロペルオキシド選択率に効果を殆ど有さなかったが、20質量%のイソ-ブチルベンゼンの添加がクメンヒドロペルオキシド及びsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドの両方への選択率を著しく低下した(図6及び8)。
【0031】
例3:クメン/sec-ブチルベンゼン混合物のNHPI触媒酸化に関するtert-ブチルベンゼンの効果
20質量%のクメン及び80質量%のsec-ブチルベンゼンからなるアルキルベンゼン混合物を変化する量のtert-ブチルベンゼンと合わせて(a)0質量%及び(b)5質量%のtert-ベンゼンを含む2種の異なる酸化供給原料を生成した。夫々の供給原料を下記の酸化操作にかけた。
その供給原料150gを撹拌機、熱伝対、ガス入り口、サンプリングポート及び水除去のためのディーンスタークトラップを含む冷却器を備えたパール反応器に0.1質量%のN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)とともに計り取った。反応器及び内容物を700rpmで撹拌し、5分間にわたって250cc/分の流量の窒素でスパージした。次いで反応器を窒素で40psig(380kPa)に加圧し、窒素スパージを維持しながら、反応器を130℃に加熱した。反応温度に達した時、ガスを窒素から空気に切り替え、反応器を4時間にわたって250cc/分の空気でスパージした。サンプルを時間毎に採取した。4時間後、ガスを逆に窒素に切り替え、加熱を止めた。反応器が冷却した時、それを圧力解除し、内容物を除去した。
流れに関する時間に対する転化率並びに夫々の供給原料のクメン成分及びsec-ブチルベンゼン成分に関する転化率に対するヒドロペルオキシド選択率を測定した。結果を図9〜12にプロットし、これらはまたNHPI触媒の不在下で基本供給原料(tert-ブチルベンゼンを添加しなかった)で得られた結果を示す。図9及び11から、tert-ブチルベンゼンの不在下では、NHPI触媒の添加がクメン及びsec-ブチルベンゼンの両方の転化率のレベルを改良したが、この改良が5質量%のtert-ブチルベンゼンの添加により有意に高められたことがわかるであろう。更に、NHPI触媒の添加が基本クメン/sec-ブチルベンゼン供給原料でヒドロペルオキシド選択率に効果を殆ど有さなかったが、5質量%のtert-ブチルベンゼンを含む供給原料では、NHPIの添加がsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシドへの選択率を有意に増大し、またクメンヒドロペルオキシドへの選択率をそれ程増大しなかった(図10及び12)。
【0032】
例4:クメン/sec-ブチルベンゼン混合物のNHPI触媒酸化に関するイソ-ブチルベンゼンの効果
アルキルベンゼン混合物を変化する量のイソ-ブチルベンゼンと合わせて(a)0質量%及び(b)5質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む酸化供給原料を生成した以外は、実施例3の操作を繰り返した。結果を図13〜16に示し、これらはまたNHPI触媒の不在下の基本供給原料(イソ-ブチルベンゼンを添加しなかった)で得られた結果を示す。図13及び15から、イソ-ブチルベンゼンの不在下では、NHPI触媒の添加がsec-ブチルベンゼン及びクメンの両方の転化率のレベルを改良したが、この改良が5質量%のイソ-ブチルベンゼンの添加により有意に高められたことがわかるであろう。更に、NHPI触媒の添加が基本クメン/sec-ブチルベンゼン供給原料でヒドロペルオキシド選択率に効果を殆ど有さなかったが、5質量%のイソ-ブチルベンゼンを含む供給原料では、NHPIの添加がsec-ブチルベンゼンヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドの両方への選択率を有意に増大した(図14及び16)。
本発明が特別な実施態様を参照して記載され、説明されたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも説明されていない変化に適合することを認めるであろう。この理由のために、本発明の真の範囲を決める目的のために特許請求の範囲のみが参考にされるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルベンゼンヒドロペルオキシドの製造方法であって、(i) sec-ブチルベンゼン、(ii)全供給原料の10質量%より大きい量のクメン及び(iii) 全供給原料の20質量%までの量のイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの少なくとも一種を含む供給原料を下記の一般式(I)の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させ、前記接触を前記sec-ブチルベンゼン及びクメンを関連ヒドロペルオキシドに変換する条件下で行なうことを特徴とする上記方法。
【化1】
[式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、但し、R1及びR2 が共有結合により互いに結合し得ることを条件とし、
Q1及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、
X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YはO又はOHであり、
kは0、1、又は2であり、
lは0、1、又は2であり、
mは1〜3であり、かつ
R3 はR1についてリストされたもののいずれかであってもよい]
【請求項2】
前記環状イミドが一般式(II)に従う、請求項1記載の方法。
【化2】
[式中、R7、R8、R9、及びR10の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、
X及びZの夫々が独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YがO又はOHであり、
kが0、1、又は2であり、かつ
lが0、1、又は2である]
【請求項3】
前記環状イミドがN-ヒドロキシフタルイミドを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記供給原料が1質量%から15質量%までのイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記供給原料が15質量%から50質量%までのクメンを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記接触を90℃〜150℃の温度で行なう、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記接触を100℃〜140℃の温度で行なう、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記接触を115℃〜130℃の温度で行なう、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記接触を15kPa〜500kPa、好ましくは15kPa〜150kPaの圧力で行なう、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記環状イミドが前記接触中の前記供給原料中のsec-ブチルベンゼン及びクメンの0.05質量%〜5質量%、好ましくは0.1質量%〜1質量%の量で存在する、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記接触により生成されたヒドロペルオキシドを開裂してフェノール、アセトン及びメチルエチルケトンを生成することを更に含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記開裂を触媒の存在下で行なう、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が不均一触媒である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記不均一触媒がスメクタイトクレーを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記開裂を40℃〜120℃の温度及び/又は100kPa〜1000kPaの圧力及び/又は1hr-1〜50hr-1の毎時の液空間速度(LHSV)(ヒドロペルオキシドを基準とする)で行なう、請求項11から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記開裂により生成されたフェノールをビスフェノールAに変換することを更に含む、請求項11から15のいずれか1項記載の方法。
【請求項1】
アルキルベンゼンヒドロペルオキシドの製造方法であって、(i) sec-ブチルベンゼン、(ii)全供給原料の10質量%より大きい量のクメン及び(iii) 全供給原料の20質量%までの量のイソ-ブチルベンゼン及びtert-ブチルベンゼンの少なくとも一種を含む供給原料を下記の一般式(I)の環状イミドを含む触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させ、前記接触を前記sec-ブチルベンゼン及びクメンを関連ヒドロペルオキシドに変換する条件下で行なうことを特徴とする上記方法。
【化1】
[式中、R1 及びR2 の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、但し、R1及びR2 が共有結合により互いに結合し得ることを条件とし、
Q1及びQ2 の夫々は独立にC、CH、N及びCR3から選ばれ、
X及びZの夫々は独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YはO又はOHであり、
kは0、1、又は2であり、
lは0、1、又は2であり、
mは1〜3であり、かつ
R3 はR1についてリストされたもののいずれかであってもよい]
【請求項2】
前記環状イミドが一般式(II)に従う、請求項1記載の方法。
【化2】
[式中、R7、R8、R9、及びR10の夫々は独立に1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基、又は基SO3H、NH2、OH、及びNO2 或いは原子H、F、Cl、Br、及びIから選ばれ、
X及びZの夫々が独立にC、S、CH2、N、P及び周期律表の4族の元素から選ばれ、
YがO又はOHであり、
kが0、1、又は2であり、かつ
lが0、1、又は2である]
【請求項3】
前記環状イミドがN-ヒドロキシフタルイミドを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記供給原料が1質量%から15質量%までのイソ-ブチルベンゼン及び/又はtert-ブチルベンゼンを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記供給原料が15質量%から50質量%までのクメンを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記接触を90℃〜150℃の温度で行なう、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記接触を100℃〜140℃の温度で行なう、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記接触を115℃〜130℃の温度で行なう、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記接触を15kPa〜500kPa、好ましくは15kPa〜150kPaの圧力で行なう、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記環状イミドが前記接触中の前記供給原料中のsec-ブチルベンゼン及びクメンの0.05質量%〜5質量%、好ましくは0.1質量%〜1質量%の量で存在する、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記接触により生成されたヒドロペルオキシドを開裂してフェノール、アセトン及びメチルエチルケトンを生成することを更に含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記開裂を触媒の存在下で行なう、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が不均一触媒である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記不均一触媒がスメクタイトクレーを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記開裂を40℃〜120℃の温度及び/又は100kPa〜1000kPaの圧力及び/又は1hr-1〜50hr-1の毎時の液空間速度(LHSV)(ヒドロペルオキシドを基準とする)で行なう、請求項11から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記開裂により生成されたフェノールをビスフェノールAに変換することを更に含む、請求項11から15のいずれか1項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−525195(P2011−525195A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516900(P2011−516900)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050481
【国際公開番号】WO2010/027562
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050481
【国際公開番号】WO2010/027562
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】
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