説明

アルキル化剤を用いてアルキル化物質をアルキル化するための方法

【課題】ベンゼンなどのアルキル化物質から窒素化合物を除去するための方法を提供する。
【解決手段】吸着床46は、塩基性有機窒素化合物を吸着するために用いられ、酸性モレキュラーシーブの高温吸着床72はニトリルなどの弱塩基性窒素化合物を吸着する。弱塩基性窒素化合物の吸着は、水を用いることで容易となる。高温の精留塔40からアルキル化物質ストリーム68を流動させ、高温吸着床に好適な水分濃度を適用することで、利点が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル化剤を用いてアルキル化物質をアルキル化するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学処理や精製工業において、芳香族変換プロセスにおける触媒としてのモレキュラーシーブの使用はよく知られている。商業的に非常に重要な意味を持つ芳香族変換反応には、エチルトルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、あるいは高級アルキル芳香族の生成などにおいて、またトルエン不均化、キシレン異性化、あるいはポリアルキルベンゼンのモノアルキルベンゼンへのトランスアルキル化などの不均化反応においての芳香族化合物のアルキル化が含まれる。多くの場合、このような芳香族変換プロセスに用いられる供給原料には、芳香族成分あるいはアルキル化物質が含まれ、このようなものとしてベンゼン、C2〜C20オレフィンアルキル化剤あるいはポリアルキル芳香族炭化水素トランスアルキル化剤などがある。アルキル化ゾーンにおいて、芳香族供給原料ストリーム及びオレフィン供給原料ストリームをアルキル化触媒上の気相で反応させ、エチルベンゼンあるいはクメンなどのアルキル化ベンゼンを生成する。ポリアルキル化ベンゼンを、モノアルキル化ベンゼン生成物から分離し、トランスアルキル化ゾーンへ再循環させ、トランスアルキル化触媒上の気相でベンゼンと接触させてモノアルキル化ベンゼン及びベンゼンを生成する。
【0003】
通常、このようなアルキル化あるいはトランスアルキル化反応のための触媒は、ゼオライト系モレキュラーシーブからなる。米国特許第4,891,458号明細書は、ゼオライトベータからなる触媒の存在を開示している。米国特許第5,030,786号明細書は、ゼオライトY、ゼオライトオメガ及びゼオライトベータモレキュラーシーブ触媒を用いる芳香族変換プロセスを開示している。米国特許第4,185,040号明細書は、X、Y、L、B、ZSM−5及びオメガ結晶型のモレキュラーシーブなどのゼオライトを用いて、エチルベンゼンあるいはクメンを生成するベンゼンのアルキル化を開示している。米国特許第4,774,377号明細書は、固体リン酸成分よりなる触媒上で行われ、X、Y、超安定型Y、L、オメガ、及びモルデナイト型ゼオライトを含むアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブトランスアルキル化触媒を用いるトランスアルキル化がその後に続くアルキル化を含む芳香族変換プロセスを開示している。
【0004】
アルキル化及びトランスアルキル化反応に供する芳香族供給原料において、特にベンゼン供給原料において、しばしば水分が発見される。多くの場合、ベンゼン供給原料は、例えばスチレン系単量体単位から再循環される際に、水分飽和状態である。気相あるいは液相でのアルキル化反応に用いられるモレキュラーシーブ触媒は、種々のレベルの水あるいは供給原料中の硫黄化合物に影響を受けやすい。米国特許第4,107,224号明細書は、触媒のより急速な熟成が受容可能であれば、気相反応において水及び硫化水素が許容可能である事例を開示している。米国特許第5,030,786号明細書は、液相中の反応器内容物を維持するために反応帯を操作する際に、供給原料中の水分含有量が100ppm未満、好ましくは50ppm以下になるように脱水処理をする事例を開示している。しかし、国際公開(WO)93/00992号は、開始位相において、アルキル化あるいはトランスアルキル化プロセスのためのゼオライト触媒が、その触媒組成に関して、3.5重量%より多い最小限の水分を含有している事例を開示している。欧州特許第0922020号明細書は、ベンゼンアルキル化供給原料を130℃から300℃の間の温度で乾燥させて水分含有量を200ppm未満にして不純物を吸着し、ゼオライト系アルキル化あるいはトランスアルキル化触媒の寿命時間を向上させるために固体酸を使用する事例を開示している。
【0005】
芳香族変換反応器に供給する供給原料中に存在する他の不純物、特に塩基性有機窒素化合物(ONC)などの塩基性不純物は、最新の芳香族アルキル化触媒を含む固体酸を中和する。触媒の性能と寿命が悪い影響を受ける。供給原料中の非常に低濃度の窒素でさえも、触媒の再生頻度を増加させ、その際、蓄積された窒素化合物及びコークスを触媒から焼成除去しなければならない。より多くの活性ゼオライト触媒を、芳香族変換反応に用いる際には、供給原料中の窒素不純物による触媒寿命の劣化を、より慎重に管理しなければならない。反応帯において触媒に対する窒素不純物の影響を低減させる方法が求められている。触媒寿命を低下させる塩基性窒素化合物は、インドール、ピリジン、キノリン、ジエタノールアミン(DEA)、N−ホルミルモルホリン(NFM)を含むモルホリン、及びN−メチルピロリドン(NMP)を含んでいる。NFM及びNMPは芳香族抽出剤として用いられ、DEAはしばしば芳香族供給原料ストリームを汚染する防蝕剤である。米国特許第5,220,099号明細書は、ゼオライトを用いてインドール、キノリン及びピリジン不純物を除去する方法、またトルエンを溶解水と共に用いて上記ゼオライトから不純物を脱着させる方法を教示している。国際公開WO00/35836号は、アルキル化ベンゼンを、トランスアルキル化反応器へ供給する前にモレキュラーシーブと接触させて窒素化合物を含む触媒毒を除去する方法を開示している。国際公開WO01/07383号は、アルキル化ゾーンへ供給される供給原料ストリームをゼオライトと接触させて有機結合性窒素を除去する方法を開示している。米国特許第4,846,962号明細書は、溶媒抽出油を無定形シリカアルミナあるいは結晶性ゼオライト触媒に接触させてNMPなどの塩基性窒素化合物を除去する方法を開示している。上記吸着剤は最大で30重量%の水を含有している。
【0006】
米国特許第5,271,835号明細書は、流動接触分解装置からのC〜C生成物留分内の極性不純物の存在を開示している。上記不純物には、アセトニトリルなどの弱塩基性ONCが含まれていることが発見された。アクリロニトリル及びプロピオニトリルは、芳香族アルキル化プロセスに供される供給原料として用いられる炭化水素ストリーム内にも発見することができる。これらの極性化合物は、芳香族アルキル化プロセスに用いられる触媒に引き付けられ、そして汚染する。米国特許第6,019,887号明細書は、300℃未満の温度下でカチオン非酸性ゼオライトを使用する方法を、また米国特許第6,107,535号明細書は、シリカゲルを用いて、室温下にて炭化水素ストリームからニトリルを吸着する方法を教示している。米国特許第2,999,861号明細書は、Xゼオライトを用いて、−18℃〜427℃の温度下で、ニトリル、硝酸塩及びニトロ化合物を含む弱塩基性ONCに優先して塩基性ONCを選択的に吸着する方法を教示している。米国特許第5,744,686号明細書及び第5,942,650号明細書は、ニトリルを除去する前に、ニトリルを含むベンゼンストリームから、上記ベンゼンストリームを−18℃〜204℃の温度下で非酸性モレキュラーシーブと接触させることによって水分を除去する方法を教示している。米国特許第6,617,482号明細書は、水が存在する場合、シリカの配合割合の多いゼオライトがより効果的であることを教示している。しかし、この引例においては、室温下で、水の存在下ではNFMの吸着のみが示され;水が存在しない場合のみニトリルの吸着が示される。ppm及びppbレベルの低濃度のニトリルでも、コーキングなどの他の非活性化メカニズムよりも早く、累積的にアルキル化触媒を非活性化してしまう。
【0007】
粘土あるいは樹脂製ガード床は、芳香族アルキル化供給原料ストリームからONCを吸着するための安価な手段である。アルキル化供給原料ストリームから有機性窒素を吸着する間、コークスも吸着剤上に堆積される。これらの吸着剤は、全ての吸着部分がONCあるいはコークスによって占められると使用済みとなる。使用済みの粘土及び樹脂製ガード床は、焼成処理によって再生できない。モレキュラーシーブを含むガード床は、ONC及びコークスの両方を吸着剤より焼成除去することにより再生することができる。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、炭化水素供給原料ストリームからニトリルを吸着するガード床を提供することである。
本発明のさらなる目的は、水の存在下で、アルキル化あるいはトランスアルキル化ゾーンに供給される炭化水素供給原料ストリームからニトリルを吸着するガード床を提供することである。
本発明のさらにもう一つの目的は、炭化水素供給原料ストリームからONCを互いに協力的に吸着する、組成の異なる二つのガード床を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
粘土あるいは樹脂物質などの従来の吸着剤は、水の存在下では、炭化水素ストリームからニトリルを十分には吸着しないということが発見された。さらに、酸性モレキュラーシーブ吸着剤は、低温度下では、炭化水素ストリームにおいてニトリルなどの弱塩基性ONCよりも水及び塩基性ONCを優先的に吸着するということが発見された。しかし、温度を上げることによって、水の存在下での酸性モレキュラーシーブ吸着剤のニトリル吸着能力は向上する。酸性モレキュラーシーブは、高温度下において、ニトリルを加水分解してアミンとアミドにする触媒としての機能を果たす、と仮定することができる。続いて、上記塩基性アミンあるいはアミドは酸性モレキュラーシーブ上に強力に吸着される。従って、従来の吸着床は殆どの有機性窒素不純物の吸着に用いることができ、酸性モレキュラーシーブはニトリルなどの残った弱塩基性有機窒素化合物の吸着に用いることができる。さらに、精留塔からの炭化水素ストリームは好適な水分濃度及び温度を有しており、酸性モレキュラーシーブによるニトリルの吸着を円滑にする。モレキュラーシーブは使用済みとなった後、再生することができる。さらに、水の存在は吸着剤上でのコークスの蓄積を低減させ、これにより再生サイクルの延長が可能であることも発見された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の炭化水素供給原料ストリームは概して液体であり、30wppbから1モル%のONC、通常は100wppb〜100wppmのONCを含んでいる。本発明においては、ppmレベルの濃度で存在するONCを吸着できることが示されおり、下流触媒中ではppbレベルのONC濃度も無効にすることができる。炭化水素ストリームは、飽和状態に至るまで、また飽和状態を越えて水分を含んでいる。ONC及び水を含む炭化水素供給原料ストリームは、好ましくはベンゼンを含む芳香族供給原料ストリームであって、適度にベンゼンを主成分とする。芳香族炭化水素供給原料ストリームは、通常、吸着床を通過する際に1.0重量%以下のオレフィンを含んでいる。
【0011】
ONCは、主成分として、インドール、ピリジン、キノリン、ジエタノールアミン(DEA)、N−ホルミルモルホリン(NFM)を含むモルホリン、及びN−メチルピロリドン(NMP)などの塩基性ONCを含む。ONCは、その他に、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル及びそれらの混合物などの弱塩基性ニトリルも含んでいる。塩基性ONCは、従来の粘土あるいは樹脂製吸着ガード床によく吸着される。炭化水素供給原料ストリームはこのような従来型の不純物吸着ゾーンに供給されて、塩基性ONC及び他の不純物が吸着され、塩基性ONCの減少した処理済み吸着流出物が生成される。また、ニトリルなどの弱塩基性ONCは、従来の樹脂及び粘土製吸着剤には十分に吸着されないことが発見されている。ニトリルは従来型の吸着床を通過し、アルキル化あるいはトランスアルキル化反応ゾーンなどの下流プロセスに悪影響を与える。
【0012】
塩基性ONCを除去するための粘土製吸着剤には、SC630G、SC636G及び好適なSC626GS等、Sudchemie社製の粘土製品が含まれる。Filtrol社製のF−24粘土もまた、好適である。塩基性ONCを除去するための樹脂製吸着剤には、Rohm & Haas社製、好適なA−15などのアンバーリスト系列の樹脂製品、及びPurolite International社製のCT−175等の樹脂が含まれる。その他のタイプの粘土及び樹脂製吸着剤も好適である。粘土あるいは樹脂製吸着剤は、液相中で、芳香族ストリームを少なくとも部分的に維持するのに十分な条件下で使用することができる。38℃(100°F)までの使用時温度、常圧より少し高い圧力、206kPa(30psia)までの圧力の条件で十分である。粘土及び樹脂の受容量は、吸着剤の重量に基づいて、通常、アミン6〜10重量%、NFM及びNMP1〜2重量%の範囲である。しかしこれらの条件下では、粘土及び樹脂はニトリルよりも水、NFM及びNMPを優先的に吸着する。従って、ニトリルを吸着するための他の手段を講じる必要がある。
【0013】
弱塩基性ONCの除去に適した本発明の吸着剤は、ゼオライト系モレキュラーシーブはもとより、米国特許第4,440,871、第4,310,440、及び第4,567,029各号明細書に開示されている種々の形態のシリコアルミノフォスフェート及びアルミノフォスフェートなどの酸性モレキュラーシーブを含む。ここで用いられる「モレキュラーシーブ」という用語は、ガンマアルミナなどの物質とは異なり、その性質が高結晶性であり、結晶学的に見て細孔性あるいは通孔構造を有する吸着乾燥剤の一種と定義される。この種の結晶性吸着剤において、好適なモレキュラーシーブのタイプとは、一般にゼオライトとして知られるアルミノケイ酸塩物質である。「ゼオライト」という用語は一般に、その多くが結晶性構造を有する、自然発生的及び合成水和金属アルミノケイ酸塩の群を指す。焼成形態のゼオライト系モレキュラーシーブは、以下の一般公式によって表される:


【0014】
式中、Meはカチオンであり、xは2〜無限大の値を有し、nはカチオン価数であり、yは2〜10の値を有する。通常用いられる公知のゼオライトは、シャバサイト(ゼオライトDとも呼ばれる)、クリノプチロライト、エリオナイト、フォージャサイト、ゼオライトベータ(BEA)、ゼオライトオメガ、ゼオライトX、ゼオライトY、MFIゼオライト、ゼオライトMCM−22(MWW)、フェリエライト、モルデナイト、ゼオライトA、及びゼオライトPを含む。上記ゼオライトの内の一部は、「ZEOLITE MOLECULAR SIEVES」(D. W. Breck著、John Wiley and Sons社、ニューヨーク、1974年)に詳細な説明が記載されている。
【0015】
色々な合成物質及び天然物質の間には、夫々の化学組成、結晶構造、粉末X線回折パターンなどの物理的特性の間に著しい差異が存在する。モレキュラーシーブは微細結晶の凝集体として発生し、微細粉末として合成され、そして好ましくは、大規模な吸着用途のために錠剤化あるいはペレット化される。ペレット化法は、モレキュラーシーブの収着特性が、選択性及び受容量に関して実質的に変化せずに残存するので、有効な方法であると高く評価されている。好適な吸着剤としては、アルミナあるいはシリカ結合剤を有するゼオライトYそしてゼオライトX、及びアルミナあるいはシリカ結合剤を有するベータゼオライトが含まれる。ゼオライトYは最も好適である。
【0016】
実施の形態において、モレキュラーシーブは通常、耐火性無機酸化物結合剤と組み合わせて用いられる。結合剤にはアルミナあるいはシリカが含まれるが、前者が好ましく、ガンマアルミナ、エータアルミニウムそしてそれらの混合物は特に好ましい。モレキュラーシーブは、吸着剤の5〜99重量%の範囲で存在し、耐火性無機酸化物は1〜95重量%の範囲で存在する。実施の形態において、モレキュラーシーブは吸着剤の少なくとも50重量%の分量、より好ましくは吸着剤の少なくとも70重量%の分量で存在する。
【0017】
本発明の吸着剤におけるモレキュラーシーブは酸性である。酸性レベルの基準としてシリコン対アルミニウム比率を用いる場合、シリコン対アルミニウム比率は一つの実施の形態においては100未満、別のもう一つの実施の形態においては25未満であるべきである。モレキュラーシーブに対してカチオンは望ましくない。従って、ゼオライトY及びベータゼオライトの場合、酸洗浄を行いナトリウムなどのアルカリ金属を除去し酸部位を顕出させ、これによって吸着性能を向上させるのが望ましい。骨格外に移動するアルミニウムの結合剤への流入も、酸性度を低減させるので避けなければならない。アルカリ土類元素及び希土類元素などのカチオンをゼオライトXあるいはYとある程度混和することによって、骨格アルミニウムの熱安定性及び水熱安定性を向上させ、骨格外に移動する骨格アルミニウムの量を最小限に抑えることができる。カチオンの混和程度は、吸着性能の妨げとならないよう、十分に低くしなければならない。本発明のモレキュラーシーブ吸着剤は、アルキル化あるいはトランスアルキル化ユニットなどの下流側反応器におけるアルキル化触媒と同一の組成を有している。しかし、アルキル化触媒がモレキュラーシーブ吸着剤よりも高価である場合には、アルキル化触媒及びモレキュラーシーブの組成は異なっているのが望ましい。
【0018】
前述のとおり、水の存在は、大気温度下における酸性モレキュラーシーブ上のニトリルの吸着にとってマイナスとなる。表面上は、モレキュラーシーブガード床に供給される供給原料中の水分量を最小化することは、有益であるかのように見える。水は吸着部位を巡ってONCと競合し、これによってモレキュラーシーブのONC吸着能力が低減される。また、低温度下では、水はニトリルよりも優先的に酸性モレキュラーシーブに吸着されることが確認された。しかしさらに、高温度下においては、水分濃度が過剰でなければ、酸性モレキュラーシーブがニトリルを高い割合で吸着することも確認された。特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、ニトリルは酸性モレキュラーシーブ吸着剤に吸着されるには塩基性が十分ではないと思われる。しかし、水の存在下で、ニトリルは触媒作用によって酸性モレキュラーシーブ上でアミドあるいはアミンへと加水分解される。続いて、塩基性アミドあるいはアミンが酸性モレキュラーシーブに吸着される。
【0019】
ニトリルを除去し精製される汚染炭化水素供給原料ストリームは、水の存在する高温度下、一つの実施の形態では少なくとも120℃〜300℃未満、もう一つの実施の形態では125℃よりも高く300℃未満の範囲、さらにもう一つの実施の形態においては150〜200℃の範囲の温度下で酸性モレキュラーシーブの窒素吸着ゾーンを通過する。吸着床内の圧力は、34.5kPa〜4136.9kPa(ゲージ)(5〜600psig)の範囲である。モレキュラーシーブ吸着剤に吸着されるONCの量は、再生処理が必要とされる前の段階で吸着剤の0.6〜1.0重量%に到達する。粘土製吸着剤に吸着されるONCの量は、吸着剤の1.5〜6.0重量%であり、樹脂製吸着剤に吸着されるONCの量は粘土製の吸着量の2倍である。樹脂製あるいは粘土製吸着剤はONCの吸着能力も高くかつ安価であることから、不純炭化水素ストリームは、ニトリル除去のため酸性モレキュラーシーブガード床に供給されるのに先立って、従来型の粘土製あるいは樹脂製ガード床を通過させて塩基性ONCを除去する。しかし、酸性モレキュラーシーブガード床は従来型の吸着床を通過した塩基性ONCも吸着する。酸性モレキュラーシーブ吸着床は、従来型吸着床の下流側に設置、連通させるのが望ましい。従って、従来型の吸着床からの流出液の少なくとも一部が最終的に酸性モレキュラーシーブ吸着床に供給される。さらに、従来型吸着床からの流出液の温度は大気温度と同一なので、熱交換器を従来型吸着床の下流側に、また高温吸着床の上流側に設置、連通させて上記流出液の温度を高温吸着床に適した温度へ調節する。従って、従来型吸着床からの流出液の少なくとも一部が熱交換器内にて加熱あるいは冷却され、熱交換器からの流出液の少なくとも一部が高温吸着床に供給される。実施の形態において、全てのアルキル化物質ストリームは、アルキル化及び/あるいはトランスアルキル化反応ゾーンに供給される前に、高温吸着床において脱窒素化される。
【0020】
モレキュラーシーブガード床内においては、炭化水素供給原料ストリームの水濃度は、20wppm〜500wppmの範囲、好ましくは50wppm〜150wppmの範囲である。実施の形態において、水濃度は、ニトリルのアミンあるいはアミドへの変換に関して化学量論的である。
【0021】
またさらに、モレキュラーシーブガード床内に水が存在することによって、高温度下における吸着剤上のコークス形成が低減されることが発見された。モレキュラーシーブの酸性部位上にコークスが蓄積されるとONC吸着の妨げとなり、結果的に、再生処理のサイクルを短くすることになってしまう。しかし、酸性部位上のコークス形成を低減させることにより、モレキュラーシーブガード床は再生までのサイクルを長いままに維持することができ、各再生サイクルに必要とされる負担も著しく軽減されるため、処理工程の多サイクルに亘って最大の吸着能力を維持することができる。
【0022】
従来型の粘土製あるいは樹脂製ガード床は一度使用済みになると再生ができない。代わりに、使用済みの粘土あるいは樹脂を処分しなければならない。本発明の使用済みモレキュラーシーブは再生が可能である。モレキュラーシーブガード床は、モレキュラーシーブの一つ以上の固定床を含む。操業中のモレキュラーシーブ吸着床が容量に到達する際、つまり、好ましくはONCの実質的部分が操業中の吸着床を通過し終える前に、供給原料ストリームは、吸着ゾーンの待機モレキュラーシーブ吸着床に導入される。続いて、それまで操業中だった吸着床は、内容物を分離ゾーンに通過させることによって液切りされる。あるいは、吸着床の再生処理中に工程を停止する。吸着床は、熱天然ガスストリーム、あるいはモレキュラーシーブからONCを焼成除去する炭素燃焼、あるいはその他の従来の方法によって再生される。続いて、再生された吸着床は、操業中の吸着床が容量に達するまで待機状態に置かれる。
【0023】
酸触媒によって触媒されるオレフィンアルキル化剤による芳香族化合物の選択的アルキル化において、オレフィンは2〜少なくとも20個の炭素原子を含んでおり、またオレフィンは分岐オレフィンあるいは直鎖オレフィン、つまり末端オレフィンまたは内部オレフィンである。従って、オレフィンの特定の性質は特に重要ではない。アルキル化反応に共通する事柄として、反応は、少なくとも部分的に液相である条件下で、また反応圧を調節することによって低級メンバーに対して容易に実現し得る基準下で行われる。低級オレフィン中、エチレン及びプロピレンは最も重要な化合物である。アルキル化剤を含むオレフィン供給原料ストリームは、エチレン及び/あるいはプロピレンを含んでいる。プロピレンを含むオレフィン供給原料ストリームは少なくとも65重量%の純度を有し、その残りはプロパンが高い割合を占める。また、プロピレン供給原料は99重量%以上の純度を有する。エチレン供給原料は、通常99重量%以上の純度を有する。残留オレフィン中、洗浄剤範囲のオレフィンのクラスは特に注目される。このクラスは、6〜20個の炭素原子を含みかつ内部不飽和あるいは末端不飽和のいずれかを有する直鎖オレフィンから構成される。8〜16個の炭素原子を含む直鎖オレフィンは、洗浄剤範囲のオレフィンとして特に有用であり、10〜14個の炭素原子を含むものは洗浄剤範囲のオレフィンに対して、さらに好適である。アルキル化剤は、トランスアルキル化反応ゾーンにおけるポリアルキルベンゼンのアルキル構成物質によってももたらされる。ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン及びジイソプロピルベンゼンは、こうしたアルキル化剤を提供し得るポリアルキルベンゼンの代表的な例である。
【0024】
ベンゼンは、本発明の実施においてアルキル化物質として用いられるアルキル化可能な芳香族化合物の中でも群を抜いて最も重要な化合物である。芳香族供給原料ストリームは5〜99.9モル%のベンゼンを含み、スチレンモノマー生産プラントからの再循環ストリームである。より一般的には、芳香族化合物はベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン、及びそれらの置換誘導体によって構成される群から選択される。アルキル化可能な芳香族化合物の芳香核に見られる置換基の最も重要なクラスは、1〜20個の炭素原子を含むアルキル部分である。その他の重要な置換基は、ヒドロキシル部分、及びそのアルキル基が1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ部分である。置換基がアルキルあるいはアルコキシ基である場合、フェニル部分もパラフィン鎖上で置換される。本発明の実施においては、無置換及びモノ置換ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、及びフェナントレンが最も頻繁に用いられるが、多置換芳香族化合物も用いられる。上記例に加えて、好適なアルキル化可能芳香族化合物の例としては、ビフェニル、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、その他;フェノール、クレゾール、アニソール、エトキシ−、プロポキシ−、ブトキシ−、ペントキシ−、ヘキソキシベンゼン、その他が含まれる。
【0025】
アルキル化反応ゾーンにおいては、多種類の触媒を使用することができる。反応ゾーンにおいて用いられる好適な触媒には、水分の存在による悪影響を受けない触媒が含まれる。アルキル化触媒の存在下では実質的な水分量は容認され、また望ましくもある。実質的な水分量とは、少なくとも50wppmのアルキル化ゾーンに進入する反応物質の水分濃度を指す。アルキル化反応ゾーンは、少なくて20wppm〜200wppm以上、また1000wppm以上の水分を含有する。本発明に用いられる好適な触媒は、ゼオライト系触媒である。通常、本発明の触媒は耐火性無機酸化物結合剤と組み合わせて用いられる。好適な結合剤は、アルミナあるいはシリカである。好適なゼオライトとしては、ゼオライトベータ、ZSM−5、PSH−3、MCM−22、MCM−36、MCM−49、及びMCM−56が含まれる。ゼオライトベータは米国特許第5,723,710号明細書に記載されている。好適なアルキル化触媒とは、アルミナあるいはシリカ結合剤を有するタイプYゼオライト、あるいはアルミナあるいはシリカ結合剤を有するベータゼオライトである。ゼオライトは、触媒の少なくとも50重量%の分量で存在し、さらに好ましくは触媒中少なくとも70重量%の分量で存在する。
【0026】
アルキル化反応が行われる際の特定の条件は、用いられる芳香族化合物及びオレフィンに依存する。反応は少なくとも部分的液相条件下において行われるので、少なくとも部分的に液相内にオレフィンを維持するために反応圧が調節される。高級オレフィンに対しては、反応は自生圧力下で行われる。圧力は101kPa〜13172kPaの幅広い範囲で変化する。実際問題として、標準的な圧力は、1379kPa〜6985kPa(200〜1000psig)の範囲、しかし通常は2069kPa〜4137kPa(300〜600psig)の範囲内である。しかし、強調すべきこととして、圧力は決定的に重要な意味を持つ変数というわけではなく、少なくとも部分的な液相条件を維持するために十分でありさえすればよい。アルキル化温度の代表値として、エチレンによるベンゼンのアルキル化については170〜250℃の範囲、プロピレンによるベンゼンのアルキル化については90〜160℃の範囲の温度が含まれる。C2〜C20の範囲のオレフィンによる本発明のアルキル化可能芳香族化合物のアルキル化に好適な温度範囲は、60〜400℃であり、最も通常の温度範囲は90〜250℃である。通常、反応物質は、液空間速度を0.2〜50hr-1、特に0.5〜10hr-1とするのに十分な質量流量でアルキル化ゾーンを通過する。
【0027】
本発明のプロセスに用いられるオレフィンに対するアルキル化可能芳香族化合物の割合は、好適な選択的アルキル化の程度、及び反応混合物の芳香族成分及びオレフィン成分の相対コストによって決まる。プロピレンによるベンゼンのアルキル化については、ベンゼン対オレフィン比は低くて1.5、高くて10.0であり、また2.0〜8.0の比率が望ましい。ベンゼンがエチレンによってアルキル化される場合は、ベンゼン対オレフィン比は2:1〜8:1であるのが望ましい。C6〜C20の洗浄剤範囲のオレフィンについては、通常、5:1〜高くて30:1のベンゼン対オレフィン比が、好適なアルキル化選択性を確保するために十分であり、また8:1〜20:1の範囲であればさらにいっそう望ましい。
【0028】
ベンゼンアルキル化物質及びプロピレンアルキル化剤によるクメンの生成において、プロピレン含有ストリームは、通常プロパンも含んでいる。プロピレンストリームは0〜50重量%のプロパンを、通常は0.5〜35重量%のプロパンを含んでいる。
【0029】
アルキル化反応ゾーンはしばしば、様々な好ましくない副生成物を生成する。例えば、エチレンによってエチルベンゼンを生成するベンゼンのアルキル化において、反応ゾーンは、他のエチレン縮合生成物に加えてジエチルベンゼン及びトリエチルベンゼンも生成してしまう。同様に、プロピレンによってクメンを生成するベンゼンのアルキル化において、反応ゾーンは、さらに多くの縮合生成物に加え、ジプロピルベンゼン及びトリイソプロピルベンゼンを生成してしまう。これらのポリアルキル化芳香族化合物は、トランスアルキル化反応器内でさらに芳香族物質と接触し、さらなるモノアルキル化生成物を生成する。本発明のトランスアルキル化反応ゾーンには、ゼオライト系触媒が用いられる。ゼオライトは触媒の少なくとも50重量%存在し、さらに好ましくは、触媒の少なくとも90重量%存在する。そして殆どの場合、ゼオライト系触媒は無機酸化物結合剤も含んでいる。トランスアルキル化触媒に用いられる好適な無機酸化物はアルミナであって、ガンマアルミナ、エータアルミニウム及びそれらの混合物は特に好ましい。ゼオライトは触媒の5〜99重量%の範囲で存在し、耐火性無機酸化物は1〜95重量%の範囲で存在する。好適なトランスアルキル化触媒は、アルミナあるいはシリカ結合剤を有するタイプYゼオライト、あるいはアルミナあるいはシリカ結合剤を有するベータゼオライトである。
【0030】
アルキル化反応ゾーン及びトランスアルキル化反応ゾーンにおいて、同一の触媒を用いる必要はない。このプロセスはアルキル化反応ゾーン及びトランスアルキル化反応ゾーンのいかなる配置にとっても有用である。しかし、アルミナ結合剤に含まれるベータゼオライトあるいは高Yタイプゼオライトは、アルキル化反応ゾーン及びトランスアルキル化反応ゾーンの両方において用いられた際に非常に有効に機能する。従って、本発明の好適な実施の形態において、クメンの生成においては、両反応ゾーンにおいて同一の触媒、ベータゼオライトが用いられる。一方、エチルベンゼンの場合は、アルキル化及びトランスアルキル化ゾーンにおいては、望ましくはベータゼオライト及びYタイプゼオライトをそれぞれ用いる。さらに、アルキル化反応ゾーンにおいてトランスアルキル化反応が生じ、トランスアルキル化反応ゾーンにおいてアルキル化反応が生じる。両ゾーンはまとめてアルキル化ゾーンと呼ばれる。
【0031】
酸性モレキュラーシーブ触媒を用いるアルキル化ゾーンあるいはトランスアルキル化ゾーンの第1床を、ニトリル除去のための吸着ゾーンとして使用するのが望ましい。このような場合は、吸着剤及び触媒は間隔を置いて配置される。アルキル化剤は吸着ゾーンを迂回して床間スペースに供給され、吸着ゾーンから流出する脱窒素化アルキル化物質と混合される。しかし、熱吸着ゾーン及びアルキル化ゾーンは別々の容器内に配置するのが望ましい。
【0032】
トランスアルキル化反応は、100〜390℃(212〜734°F)の温度、及び101〜13171kPa(14.7〜1910psia)の圧力を含めた幅広い作動条件下で実行される。また一方、圧力範囲は通常、反応物質が液相内に残留するように選択される。従って、トランスアルキル化反応ゾーンにとって好適な圧力範囲は、1013〜5066kPa(147〜734psia)である。0.2〜50hr-1の液空間速度が、トランスアルキル化反応ゾーンにとっては望ましく、また0.5〜5hr-1のLHSV(液空間速度)がさらに望ましい。
【0033】
トランスアルキル化及びアルキル化反応ゾーンは、望ましい運転温度及び接触段階の回数が確保できる形態で、配置、運転される。アルキル化ゾーンにおける複数の接触段階は、アルキル化触媒の複数床に反応剤を段階的に追加することによって冷却の効果をもたらすために、定期的に用いられる。反応剤を段階的に注入することによって、アルキル化触媒床間の段階を冷却する機能を果たし、温度の制御が可能となる。アルキル化触媒は通常、複数の床内に配置され、アルキル化剤の床間注入を可能にする。個々のアルキル化触媒床は、一つの容器内に、あるいは複数の容器内に配置される。本発明においては、供給原料ストリームが各反応ゾーンに個別に供給され、その流出液も別々に回収されるアルキル化ゾーン及びトランスアルキル化ゾーンのための従来型の並列配置が用いられる。またもう一つの方法としては、反応ゾーンが、トランスアルキル化ゾーンからの流出液がさらなる追加のベンゼンを伴ってアルキル化ゾーンへと供給される構図、またあるいはその反対の流れ構図である一連の流れ配置を有する。アルキル化ゾーンにおいて、ベンゼンの大過剰量は、アルキル化剤の段階間注入及びベンゼンの追加数量によって一連のアルキル化触媒床を通過する。また、個々の触媒床を急冷して、新しいベンゼンをさらに消費することなく温度制御をさらに向上させるために、アルキル化反応流出液再循環処理が有利に用いられる。一連の流れ配置において、共通容器は、一つのトランスアルキル化反応ゾーンおよび一つ以上のアルキル化反応ゾーンを含む。非常に大きなユニットについては、一つのトランスアルキル化触媒床及び一つ以上のアルキル化触媒床に対して別々の容器を用いるのが、より好適である。
【0034】
アルキル化生成物を回収するためには、分離ゾーンが用いられる。分離ゾーンにおける少なくとも一つの精留塔上の塔頂凝縮器は、塔頂ストリームからの水の分離のため、また芳香族炭化水素縮合物の一部を塔へ還流させるために用いられる。塔頂からの水の除去は、水のベンゼンに対する高溶解性のために困難である。しかし、ベンゼンストリーム内の水の一部はニトリルの除去を容易にする。ベンゼン塔の塔頂凝縮器は、水分濃度を500wppmのレベルまで低減するために用いられる。脱プロパン塔からの中間ストリームによって、50〜150wppmの水分濃度を有するベンゼンストリームが提供される。
【0035】
本発明のプロセス及び装置の実施の形態について、図面を参照してさらに説明する。図面は、本発明のいくつかの態様を説明するために提供されるものであり、請求項に述べられているような本発明の広範な範囲を限定するものではない。必要上、バルブ、ポンプ、分離器、受液器、熱交換器、その他を含む種々の付属物は図面からは省略されている。本発明の工程及び装置の明確かつ全面的な理解のために必要なこれらの容器及びラインのみが図示される。すべてのケースにおいて、工程は連続工程である。
【0036】
図1は本発明のエチルベンゼン生成の実施の形態を表している。エチレンを含むストリームはライン14のプロセスに進入し、第一及び第二アルキル化反応器20、30のそれぞれに注入される。アルキル化反応器20、30内ではトランスアルキル化反応も生じるけれども、主としてアルキル化反応が生じる。上昇流反応器としてアルキル化反応器が示される。しかし、下降流反応器もまた好適である。エチレンはアルキル化反応器20、30に注入されるが、触媒床20d-f、30d-fに導入するのに先立って、複数のライン14a-fを通じて前床空間20a-c、30a-cへと導入される。触媒床20d-f、30d-fは、ベンゼン及びエチレンをアルキル化してエチルベンゼンを生成するためのアルキル化触媒を含む。ベンゼンはライン10を通じて第一アルキル化反応器20に供給されるが、ここでベンゼンはまずライン14aを通じて導入されたエチレンと前床空間20a内で混合され、続いて触媒床20dに導入される。触媒床20dからの流出液はライン14bを通じて導入された新しいエチレンと前床空間20b内で混合され、続いて触媒床20eに導入される。上記プロセスは第一アルキル化反応器20内の床の数だけ繰り返される。アルキル化反応器20、30のそれぞれにおいては三つの触媒床が示されているが、これは数の多少に関わらず好適なものである。第一アルキル化反応器20からの中間アルキル化流出液は、ライン18を通じて第二アルキル化反応器30に導入される。熱交換器22は、流出液が前床空間30aに導入される前の段階で、ライン18内で好適なアルキル化温度になるまで冷却する。ライン14dから前床空間30aに注入されたエチレンは、ライン18を通じて導入される中間アルキル化流出液と混合され、続いて触媒床30dに導入される。触媒床30e及び30fに対しても同じプロセスが繰り返され、第二アルキル化反応器30からのアルキル化反応流出液はライン32を通じてベンゼン塔40に導入される。アルキル化反応流出液ストリームは、図示されていない圧力制御バルブを通過することによって減圧され、同じく図示されていない加熱器あるいは熱交換器、またその両方において加熱される。さらに、アルキル化反応器は数の多少に関わらず好適である。
【0037】
図1に示されるように、アルキル化反応器20、30及びトランスアルキル化反応器50が並列で操作される場合は、ライン10からのベンゼンはライン52を通じてトランスアルキル化反応器50に導入される。ライン54は、PEB塔90の塔頂からジエチルベンゼン(DEB)及びトリエチルベンゼン(TEB)のポリエチルベンゼン(PEB)塔塔頂ストリームを導入し、ライン52を通じて導入されるベンゼンと混合させ、トランスアルキル化供給原料ライン58を提供する。トランスアルキル化反応器50は、トランスアルキル化触媒の三つの触媒床50a−50cを含む。トランスアルキル化反応器50においては多かれ少なかれ触媒床が用いられる。トランスアルキル化触媒はトランスアルキル化反応を促進させ、DEB及びTEBからのエチル基はベンゼンによってトランスアルキル化され、エチルベンゼンが生成される。従って、ライン56はトランスアルキル化供給原料ライン58と比較してエチルベンゼン濃度の割合が非常に高くなっており、DEB及びTEBの割合は低くなっている。
【0038】
図1に示すようにアルキル化及びトランスアルキル化反応器は並列に配置され、三つの異なるストリームがベンゼン塔40に供給される。ライン32を通じてのアルキル化反応流出液ストリーム及びライン56を通じてのトランスアルキル化流出液ストリームは、ベンゼン、エチルベンゼン、DEB及びTEB及び重PEBをベンゼン塔40に供給する。ライン12を通じて新しく供給されるベンゼンは、粘土あるいは樹脂製吸着剤の床46を含む従来型の吸着容器44を通過して、ベンゼンストリームから塩基性ONCを含んだ不純物が吸着される。ライン48は精製された新しいベンゼンストリームをベンゼン塔40へと導入する。精製されたベンゼンストリームは、通常400〜800wppmの水分を含んでいる。ベンゼン塔40は供給原料を少なくとも二つのストリームに分離する。ベンゼンを含んだベンゼン塔塔頂ストリームはベンゼン塔からライン62を通じて凝縮器64に導入され、ここで120〜170℃の範囲の温度まで冷却される:凝縮された塔頂ストリームは、ライン66aを通じて非溶解水あるいは自由水を、ライン66bを通じて軽ガスを必要であれば分配するトラップを含む受液器66に導入される。ニトリルを含んだONCによって汚染された塔頂炭化水素ストリームはライン68を通じて熱吸着容器70へと導入され、一方で上記塔頂炭化水素ストリームの一部はベンゼン塔40へと還流する。塔頂炭化水素ストリームは50〜500wppmの水分を含んでいる。熱吸着容器70は、適切な条件下でニトリルを含んだONCを吸着する酸性モレキュラーシーブによって構成される熱吸着モレキュラーシーブ床72を含んでいる。ライン68内の塔頂炭化水素ストリームの温度及び水分濃度は、酸性モレキュラーシーブによる炭化水素ストリームからのニトリルの選択的吸着に十分に適応している。従って、ライン10内の脱窒素化ベンゼンストリームのONC含有量は30wppb未満であって、実質上ONCを含んでいない。生成物エチルベンゼン及びPEBを含んだ副生成物を含むベンゼン塔底ストリームはライン74を通じてベンゼン塔から流出し、エチルベンゼン塔80へ導入される。
【0039】
エチルベンゼン塔80はライン74を通じて導入されたベンゼン塔底ストリームを蒸留によって二つのストリームに分離する。生成物エチルベンゼンを含んだエチルベンゼン塔塔頂ストリームはライン82を通じてエチルベンゼン塔80を流出し、上記プロセスから回収される。エチルベンゼン塔底ストリームは、通常、DEB、TEB、及びブチルベンゼン、ジブチルベンゼン、トリブチルベンゼン、エチルブチルベンゼン、ジエチルブチルベンゼン、及びジフェニルエタンなどの重PEBを含んだ副生成物PEBを含んでいる。エチルベンゼン塔底ストリームはライン84を通じてエチルベンゼン塔80から流出し、PEB塔90へと導入される。
【0040】
PEB塔90は、ライン84を通じて導入されたエチルベンゼン塔底ストリームを二つのストリームに分離する。TEBより重いPEBを含んだPEB塔底ストリームはライン92を通じてPEB塔90の底部から流出し、上記プロセスからリジェクトされる。DEB及びTEBを含んだPEB塔塔頂ストリームはライン54を通じてPEB塔90を流出し、再循環され、上述のライン52を通じてトランスアルキル化反応器50に導入される供給原料と混合される。
【0041】
図1の実施の形態においては、全てのアルキル化物質がONCによって汚染されてしまった場合にアルキル化物質供給原料からONCを除去するために互いに協力し合う二つの吸着床を用いる。樹脂あるいは粘土製吸着剤によって構成される床46はONCの大部分を吸着し、一方、熱吸着モレキュラーシーブ床72はアルキル化及びトランスアルキル化触媒を被毒するニトリルを含んだ残留ONCを吸着する
【0042】
図2は、スチレン系単量体単位などの他の供給源から供給されたリサイクルベンゼンがエチルベンゼン生成のために用いられるベンゼンの総量の一部であり、かつ他の供給源から供給された上記リサイクルベンゼンのみがニトリルに汚染されている場合に有利に用いられるプロセス及び装置を示す。図2において、図1で示した同じ要素に該当はするが異なる構図において用いられている要素を示す参照番号は、全て(')の印を付してある。それ以外は、同一の参照番号は図1及び図2において同じ構成の同じ該当要素を示す。さらに、図2はアルキル化反応器及びトランスアルキル化反応器を並列に示しているが、これらは直列に操作される。
【0043】
ライン12'を通じて新しく供給されるベンゼンは、粘土あるいは樹脂製吸着剤からなる床46を含む従来型の吸着容器44を通過し、ベンゼンストリームからONCを含んだ不純物を吸着する。ライン12'を通じて供給される新しいベンゼン内にニトリルが存在するとは考えられない。精製ベンゼンストリームは通常400〜800wppmの水分を含んでいる。ライン48'は、精製ベンゼンストリームを、ライン68'を通じて供給されるベンゼン塔塔頂ストリームと混合させる。ニトリルを含有していると考えられるベンゼンの他の供給源は、ライン8を通じて熱吸着容器70に導入される。ライン8を通じて供給されるベンゼンストリームは、スチレン系単量体単位から再循環され、50〜800wppmの水分を含み、通常は水飽和の状態にある。熱吸着容器70は、適切な条件下でニトリルを含んだONCを吸着する酸性モレキュラーシーブの吸着床72を含んでいる。水分濃度が50wppm未満であれば、ベンゼンストリームに水を注入する必要がある。水分濃度が500wppmよりも上ならば、ベンゼンストリームを乾燥させるのが好適である。ライン8を通じて供給されるベンゼンストリームの温度が少なくとも120℃、好ましくは125℃より高く、かつ300℃未満である場合、適切な温度になるように加熱または冷却される。この温度範囲及び水分濃度は、酸性モレキュラーシーブによる炭化水素ストリームからのニトリルの選択的吸着に十分に適応し、またこれによって塩基性ONCも吸着する。従って、ONCの検出レベルである30wppb以下まで含有量を低減し実質上ONCを含まない脱窒素化ベンゼンストリームは、ライン23を通じて供給され、ライン48'を通じて供給される精製ベンゼンストリーム及びライン68'を通じて供給されるベンゼン塔塔頂ストリームと混合され、ライン10'を通じて窒素非含有ベンゼンストリームを提供する。
【0044】
ベンゼンストリームは、ライン10'を通じてアルキル化反応器20、30に、ライン52'を通じてトランスアルキル化反応器50に、それぞれ並行して供給される。ベンゼンはライン10'を通じてアルキル化反応器20、30に供給され、図1を参照して説明した適切な触媒を介して、ライン14によって供給されるエチレンと反応させられる。アルキル化流出液はライン32を通じてベンゼン塔40へ供給される。ライン54'を通じて供給されるPEB塔頂ストリームからのDEB及びTEBは、ライン52'を通じて供給されるベンゼンストリームと混合され、ライン58内でトランスアルキル化供給原料ストリームを生成し、続いてトランスアルキル化反応器50に供給される。反応器50内でDEB及びTEBをベンゼンと反応させることによって、ライン58内のトランスアルキル化供給原料ストリームと比較してエチルベンゼン濃度の割合が高くDEB及びTEB濃度の割合が低いトランスアルキル化流出液ストリームを生成し、ライン56へ供給する。トランスアルキル化流出液ストリームはライン56を通じてベンゼン塔40へ供給される。
【0045】
ベンゼン塔40は供給原料を少なくとも二つのストリームに分離する。ベンゼンを含んだベンゼン塔塔頂ストリームはライン62を通じてベンゼン塔から流出し、凝縮器64に導入されて、120℃〜170℃の範囲の温度まで冷却される。凝縮された塔頂ストリームは、ライン66aを通じて非溶解水を、またライン66bを通じて軽ガスを必要に応じて分配するトラップを含んだ受液器66に導入される。その大部分がベンゼンである塔頂炭化水素ストリームはライン68'を通じ、前述のようにライン10'を通じて再循環され、また上記塔頂炭化水素ストリームの一部はベンゼン塔40へと還流する。生成物エチルベンゼン及びPEBを含んだ副生成物を含むベンゼン塔底ストリームはライン74を通じてベンゼン塔から流出し、エチルベンゼン塔80へと導入される。
【0046】
エチルベンゼン塔80は、ベンゼン塔底ストリームを、生成物エチルベンゼンを含みライン82内に供給されるエチルベンゼン塔塔頂ストリーム及び副生成物PEBを含みライン84を通じてPEB塔90へ導入されるエチルベンゼン塔底ストリームに分離する。PEB塔90は、エチルベンゼン塔底ストリームを、ライン92内のTEBより重いPEBを含んだPEB塔底ストリーム及び前述のようにライン54'を通じてトランスアルキル化反応器50へ再循環されるPEB塔塔頂ストリームに分離する。
【0047】
図3は、図1と同様に操作されるが、直列で操作されるトランスアルキル化反応器50及びアルキル化反応器20、30を示す。図3において、図1で示した同じ要素に該当はするが異なる構図において用いられている要素を示す参照番号は、全て('')の印を付してある。それ以外は、同一の参照番号は図1及び図3において同じ構成の同じ該当要素を示す。トランスアルキル化反応器50からのトランスアルキル化反応流出液は、ベンゼン塔40へと導入される代わりにライン56''を通じてアルキル化反応器20へと導入される。アルキル化反応流出液はライン32''を通じて、精製ベンゼンストリームはライン48を通じて、それぞれベンゼン塔40へと導入される。ベンゼン塔塔頂ストリームからライン68を通じて供給されるベンゼンストリームは、熱吸着容器70内の熱モレキュラーシーブ吸着床72内で脱窒素化される。ライン10の脱窒素化ベンゼンストリームはライン52のトランスアルキル化供給原料へと導入され、ライン58を通じてトランスアルキル化反応器50に導入される前に、PEB塔からライン54を通じて導入されるPEB塔頂ストリームと混合される。トランスアルキル化流出液ストリームはライン56''を通じてライン10の残留脱窒素化ベンゼンストリームと混合され、続いて図1を参照して説明したようにアルキル化反応器20、30へと導入される。
【0048】
図4は本発明によるクメン生成のための装置及びプロセスに関するフロー方式を示している。ライン100のプロピレンストリームはライン102内のベンゼンストリームと混合されて、このベンゼンとプロピレンの混合物はアルキル化反応器120内の第1の触媒床にライン101を通じて送られる。このアルキル化反応器120は降流反応器として示されているが、昇流反応器でもよい。触媒床122aはプロピレンとベンゼンをアルキル化してクメンをつくりだすアルキル化触媒を含んでいる。触媒床122aからの流出液は床内スペース124aに入る。再循環されたライン106からのアルキル化流出液は熱交換器108で冷却され、供給ライン106a-e及び供給原料取り入れライン104a-eによってアルキル化反応器120に循環される。ライン100から分かれたライン104内のプロピレンは供給原料取り入れライン104a-eに送られ、その内部で供給ライン106a-eからの再循環されたアルキル化流出液と混合する。供給原料取り入れライン104a-eの再循環アルキル化流出液とプロピレンの混合物はそれぞれの床内スペース124a-eに送られて、そこで前の触媒床122a-eからの流出液とそれぞれ混合して、その後に続く触媒床122b-fに入る。アルキル化流出液はライン107を通じて、最後の触媒床122fから出て行く。アルキル化流出液の一部はライン106によってアルキル化反応器120に再循環され、別の部分はライン126を通じて脱プロパン塔130に送られる。
【0049】
ライン110の新鮮な供給原料ベンゼンは樹脂あるいは粘土吸着剤の床114を含む従来型の吸着剤容器112内で精製されて、塩基性ONCが除去される。400〜800wppmの水分を含む精製ベンゼンストリームはライン116を通じて脱プロパン塔130に行く。脱プロパン塔130はライン132で水分含量が50〜150wppmのベンゼンを含む中間物ストリームを提供し、温度は少なくとも120℃好ましくは125℃以上、170℃以下である。これらの性質を調整することによって、ライン132でニトリル類吸着のためのベンゼンストリームを調製することができる。1つの実施の形態で、ライン132内の中間物ストリームの温度は脱プロパン塔130内でリボイラー(図示せず)から発生される熱と、蒸留塔としては一般的に用いられる装置である濃縮装置(図示せず)によって脱プロパン塔130から奪われる熱の収支によって決まる。供給原料の組成あるいはその他の条件のせいでベンゼンストリーム内の水が不十分である場合、ライン132に水を注入してもよい。さらに、ライン132内の中間物ストリーム132は側流分であってもよいが、よりよい中間物カットを提供するためには分割壁塔を使用することができる。脱プロパン塔130はライン134内の塔頂ストリーム内のプロパンと過剰な水分を拒絶する。プロパンより重い炭化水素はライン136内の塔底ストリームを通じて引き出され、ベンゼン塔140に送られる。
【0050】
ベンゼン塔140はライン152内でトランスアルキル化流出液と混合された後の脱プロパン塔130の底流分をライン136を通じて受け取る。ベンゼン塔140はライン142内でベンゼンを含むベンゼン塔塔頂ストリームをつくりだすと同時に、ライン144内でエチルベンゼンとPEB類を含むベンゼン塔塔底ストリームをつくりだす。ライン142内の塔頂ベンゼンストリームには50〜150wppm程度の含量の水分を加えてもよく、温度は最低でも120℃、好ましくは125℃以上170℃以下の範囲である。ライン132内の脱プロパン塔中間物ストリームも同様の特性を有しており、ストリーム142と組み合わせられて、ライン161を通じて熱性吸着剤容器160に送られる。熱性吸着剤容器160は、ライン161の混合ベンゼンストリームからのニトリル類を含むONC除去のための、酸性モレキュラーシーブ吸着剤の床を含んでいる。ライン164内の脱ニトロ化ベンゼン流出液はライン102によってアルキル化反応器120に送られると同時に、ライン166によってトランスアルキル化反応器150に送られる。ライン166内のベンゼンストリームは重量物塔190からのライン168内のジイソプロピルベンゼン(DIB)を含む中間物ストリームと混合される。ライン154内のベンゼンとDIB混合物はトランスアルキル化反応器150に送られる。DIBはトランスアルキル化反応器150内でトランスアルキル化触媒床156上でベンゼンと反応してトランスアルキレート化し、クメンをつくりだす。ライン152内のトランスアルキル化流出液152は、ライン154内のものと比較してクメンの濃度は高く、またベンゼン及びDIBの濃度は低くなっている。
【0051】
ライン144内のベンゼン塔塔底ストリームはクメン塔180に送られる。クメン塔180は製品クメンを含むクメン塔頂ストリームを提供し、これはライン182を通じて回収される。クメンより重い炭化水素を含むライン184内のクメン塔塔底ストリームは重量物塔190に送られる。重量物塔190はライン168内でDIBを含む中間物ストリームをつくりだす。重量物塔塔頂ストリームはライン192を通じて引き出され、重量物塔塔底ストリームはライン194で引き出される。
【0052】
図5は図4と同様のフロー方式を示しているが、新鮮なベンゼンストリームが粘土あるいは樹脂吸着剤の床114を含む従来型吸着剤容器112内で精製されて、その後、脱プロパン塔130に入る前に熱性吸着剤容器160内で脱ニトロ化される点が異なっている。図4の要素と対応しているが構成が異なっている図5中の要素を示すすべての参照番号には(')が付されている。ライン110'は新鮮は供給原料としてのベンゼンを従来型吸着剤容器112に送り、ライン116'は吸着剤容器112からの精製されたベンゼンを酸性モレキュラーシーブ床162を含む熱性吸着剤容器160に送り、そして、ライン164'は脱プロパン塔130に脱ニトロ化されたベンゼンを供給する。脱プロパン塔130からのライン132'内の中間物ストリームは、ベンゼン塔140のライン142内のベンゼン塔塔頂ストリームからのベンゼンとライン102'内で混合して、アルキル化反応器120に送られる。その他の点では、図5のフロー方式は図4とほぼ同様である。
【0053】
図6は図5に示すものと同様のフロー方式を示しているが、熱性吸着剤床162''がトランスアルキル化反応器150''内に設けられている。図4の同様の要素に対応しているが構成が違っている図6の要素を示す参照番号のすべてには('')が付けられている。また、同じ参照番号は図4と図6で同じ構成を有する要素を示している。ライン110のベンゼンは粘土あるいは樹脂吸着剤の床114を含む通常の吸着剤容器112内で塩基性OCNが取り除かれる。ライン116はアルキル化反応器120からのライン126内のアルキル化流出液と共に脱プロパン塔130に精製されたベンゼンストリームを送る。ライン132''内のこの脱プロパン装置の中間物ストリームは移送されて、ライン166''を通じて分岐するライン142内のベンゼン塔頂ストリームと混合され、トランスアルキル化反応器150''に供給される。制御弁188は重量物塔190からのライン168内の重量中間物ストリーム内のDIBがどの程度ライン166''内の迂回ベンゼン塔頂ストリームと混合されるべきか、そして、どの程度がバイパスライン186を通じてライン154''をバイパスするかを制御する。トランスアルキル化反応器150''はニトリル類を含んだOCN類を吸着するための酸性モレキュラーシーブ触媒による犠牲的熱性吸着剤床162''を含んでいる。この犠牲的熱性吸着剤床162''からの脱窒供給原料は床内スペース157でバイパスライン186からのDIBと混合して、トランスアルキル化触媒の床156''に入る。DIBは床156''内のトランスアルキル化触媒上でベンゼンと反応してトランスアルキル化し、クメンをつくりだす。ライン152内のトランスアルキル化流失液はライン154内のものと比較してクメンの濃度が高く、ベンゼン及びDIBの濃度が低くなっている。ライン152内のトランスアルキル化流出液はライン136内の脱窒装置塔底ストリームと混合して、ベンゼン塔140に送られる。
【0054】
従来の吸着剤容器112内で吸着されず、ライン134内の脱窒装置塔頂ストリーム内で排斥されないライン110内の新鮮なベンゼンストリーム内のすべてのニトリル類がライン132''内の中間物ストリーム内に存在している。ニトリル類のいずれも、ライン136内の脱窒装置塔底ストリーム内に存在してはならない。そのプロセス内で残存するライン110内の新鮮な供給原料ベンゼンストリームからのニトリルのすべてはライン132''内に存在することになる。ライン166''内のフローは矢印Aの方向だけである。従って、ライン132''内のニトリル類のすべては犠牲的熱性吸着剤床162''に向けられて、ニトリルが除去されることになる。ライン166''からライン102''に移動するニトリル類は存在しない。ライン168内の重量中間物ストリーム内にはニトリル類が存在しないので、好ましくは、すべての重量中間物ストリームはバイパス・ライン186を通じて犠牲的熱性吸着剤床162''をバイパスする。
【0055】
図7のフロー方式はライン132''’内の脱窒装置中間物ストリームがライン142からのベンゼン塔頂ストリームと合流してライン102''’内でベンゼン供給原料ストリームを形成し、さらに犠牲的熱性吸着剤床162''’がアルキル化反応器120''’のリード床である点が図6のフロー方式と違っている。図6の同様の要素に対応するが構成が違っている図7の要素を示すすべての参照番号には''’が付されている。あるいは、図4と7で対応し、同じ構成を有する要素には同じ参照番号が使われている。ライン102''’内のベンゼン供給原料ストリームは矢印Bの方向だけに流れる。図6のフロー方式の場合と同様、プロセスで残存ずるライン110内の新鮮な供給原料ストリームからのニトリル類のすべてはライン132''’内に存在することになる。従って、ライン132''’内のニトリル類のすべてはアルキル化反応器120''’内で犠牲的熱性吸着剤床162''’に向けられて、ニトリル類は除去される。
【0056】
犠牲的熱性吸着剤床162''’からの脱ニトロ処理されたベンゼン流出液は床内スペース124a''’に入り、その内部でライン104a''’で希釈されたプロピレンと混合される。ライン106''’からの冷却されたアルキル化流出液は供給ライン106b''’-e''’によってアルキル化反応器120''’に再循環されて取り入れライン104b''’に入る。ライン104内のプロピレンは供給原料取り入れライン104b-eに送られて、そこで供給ライン106b''’-e''’からの再循環されたアルキル化流出液とそれぞれ混合する。再循環されたアルキル化流出液と供給原料取り入れライン104b''’-e''’内のプロピレンの混合物はそれぞれの床内スペース124b''’-e''’に向けられて、そこで先行する触媒床122b''’-e''’からの流出液とそれぞれ混合し、その後の触媒床122c''’-f''’に入る。アルキル化流出液はライン107を通じて最後の触媒床122f''’から出て行く。アルキル化流出液の一部はライン106''’によってアルキル化反応器120''’に再循環され、別の一部はライン126を通じて脱プロパン塔130に送られる。
【0057】
図8は2つの犠牲的熱性吸着剤床を用いて、図6と7のフロー方式を結びつけたフロー方式を示している。図8で図4の同様の要素に対応しているが構成が異なっている要素を示すすべての参照番号には符号†が付されている。一方、図4と8で同じ構成の対応する要素には同じ参照符号が用いられている。上で図6に関連して述べたように、トランスアルキル化反応器150†には1つの犠牲的熱性吸着剤床162aが設けられており、第2の犠牲的熱性吸着剤床162bは図7に関連して述べたようにアルキル化反応器120†に設けられている。ライン132†内の脱プロパン塔中間物ストリームは2つのストリームに分割される。ライン133を通じて運ばれるトランスアルキル化ベンゼン供給原料ストリームはライン166†を通じて送られるライン142内のベンゼン塔頂ストリームと混合され、ライン154†を通じてトランスアルキル化反応器150に送られる。酸性モレキュラーシーブ触媒の犠牲的熱性吸着剤床162aは供給原料ストリームからの二トリル類を含むONC類を吸着する。犠牲的熱性吸着剤床162aからの脱ニトロ化供給原料は床内スペース157内でバイパス・ライン186からのDIBと混合して、トランスアルキル化触媒の床156†に入る。DIBは床156†内のトランスアルキル化触媒上でベンゼンと反応してトランスアルキル化し、クメンを生成する。ライン152内のトランスアルキル化流出液は、ライン154†のものと比較してクメンの濃度がより高く、そしてベンゼンとDIBの濃度がより低くなっている。ライン152のトランスアルキル化流出液はライン136内で脱プロパン装置塔底ストリームと混合して、ベンゼン塔140に送られる。
【0058】
ライン132†ラインの脱プロパン装置塔中間物ストリームから誘導された135内の第2のストリームはライン142からのベンゼン塔頂ストリームと合流し、ライン102†内でベンゼン供給原料ストリームを形成し、そして、アルキル化反応器120†につながる第2の犠牲的熱性吸着剤床162bに運ばれる。脱ニトロ処理された犠牲的熱性吸着剤床162bからのベンゼン流出液はライン104a†によって供給されるプロピレンに混合される。図7に関連して説明したように、アルキル化反応器120†内でアルキル化が進行する。アルキル化反応器120†からの流出液はライン126で脱プロパン塔130に運ばれる。ライン166†内のベンゼンストリームは矢印Aの方向だけに流れるので、ライン102†内のベンゼン供給原料ストリームは矢印Bの方向だけに流れ、プロセスで残存しているライン110内の新鮮な供給原料ベンゼンストリームからのすべてのニトリル類はライン132†内に存在することになる。従って、ライン132†内のすべてのニトリル類はトランスアルキル反応器内の犠牲的熱性吸着剤床162aかアルキル化反応器120†内の犠牲的熱性吸着剤床162bに向けられ、二トリルを含むすべての残存ONCが30wppbのレベルまで除去される。
【0059】
図9は脱プロパン塔を用いずにクメンを生成するための本発明による追加的フロー方式を示している。図9で、図4の同様の要素と対応しているが、構成が異なっている要素を示すすべての参照符号には‡が付されている。また、図4と図9で構成が同じ要素には同じ参照符号が用いられている。400〜800wppmの範囲の水を含んでいるライン110‡内の新鮮な供給原料ベンゼンは樹脂または粘土吸着剤の床114を含む通常の吸着剤容器112内で精製されて、塩基性ONCが除去される。ライン116‡内の精製されたベンゼンストリームはオプションとしては、熱交換機117内で加熱され、ライン161‡によって熱性吸着剤容器160に送られる。熱性吸着剤容器160はライン161内の精製ベンゼンストリームからニトリルを含むOCNを除去するための酸性モレキュラーシーブ吸着剤の床162を含んでいる。ライン164‡内の脱ニトロ処理されたベンゼン流出液はアルキル化流出液とトランスアルキル化流出液ストリームを組み合わせたものと混合され、ベンゼン塔140に運ばれる。
【0060】
ベンゼン塔140はライン142‡内のベンゼンを含むベンゼン塔頂ストリームと、ライン144内のエチルベンゼン及びPEBを含むベンゼン塔塔底ストリームを生成する。ライン142‡内の塔頂ベンゼンストリームには最大500wppmの濃度の水を加えてもよく、この処理は少なくとも120℃、好ましくは125℃以上170℃以下の範囲で行われる。ライン142‡内の塔頂ベンゼンストリームの一部はライン166‡によってトランスアルキル化反応器150に向けられる。ライン168で運ばれる重量塔中間物ストリーム内のDIBはライン166‡内のベンゼンと混合されて、ライン154‡内のトランスアルキル化供給原料ストリームを生成する。DIBはトランスアルキル化反応器150内のトランスアルキル化触媒床156上でベンゼンと反応してトランスアルキレート化し、クメンをつくりだす。ライン152内のトランスアルキル化流出液はライン154‡内のものと比較して、クメン濃度が高く、そしてベンゼン濃度が低くなっている。ライン102‡内に残っているベンゼン塔頂ストリームは図4を参照して述べたように、アルキル化反応器120内でアルキル化触媒上でプロピレンと反応させられる。ライン126‡内のアルキル化流出液はライン152内のトランスアルキル化流出液と混合されて、ライン136‡の結合流出液ストリームをもたらす。
【0061】
ライン144内のベンゼン塔塔底ストリームはクメン塔180に運ばれる。クメン塔180はライン182で回収される製品クメンを含むクメン塔頂ストリームを提供する。ライン184内のクメンより重い炭化水素を含むクメン塔頂ストリームは重量物塔190に運ばれる。この重量物塔190はライン168内のDIBを含む中間物ストリームを生成する。重量物塔頂ストリーム内のより軽量の塔頂ストリームはライン192で引き出され、重量物塔底ストリームはライン194で引き出される。
【0062】
一部の図で、受容器、リボイラー、濃縮装置及び/又はリフラックス・ラインなどについて一部の装置では詳細に示してあるが、他の装置では詳細に示さない場合もある。しかしながら、説明や図でそうした詳細が示されなくても、それはそれらの装置を考慮に入れなくてもよいということを意味している訳ではなく、当業者であればどんな装置が必要であるかは知っているからに過ぎない。
【0063】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳述するが、これらの例は単に本発明の具体例を示すためのものである。
【実施例1】
【0064】
低温で水を含んだベンゼンストリームからアセトニトリルを吸着する上での酸性モレキュラーシーブの有効性を判定するためにテストを実施した。80重量%のYゼオライトと20重量%のアルミナ混合物を押し出して吸着剤を調製した。乾燥後、吸着剤を粉砕して20〜40メッシュの粒子を流体連通している8つの容器に装填した(loaded)。500wppmで水で飽和され、さらに1wppmのアセトニトリルを負荷させたベンゼン供給原料を大気温度、大気圧で8つの吸着剤容器を連続的に通過させた。
【0065】
8つの吸着剤床上で平均した吸着剤に対する吸着された窒素という意味での最終的負荷は0.125重量%であった。最初の5つの床は1日でその容量限度まで吸着して、アセトニトリルを通過させてしまったが、6番目から8番目までの床の吸着剤は2日間その容量内での吸着を行った。
【0066】
床からの吸着剤を50℃の温度で水で一時間洗浄した。その吸着剤からは窒素の97%が抽出された。従って、低温では水がアセトニトリルの吸着を弱める、及び/又はアセトニトリルに優先的に吸着される。
【実施例2】
【0067】
アセトニトリル、NMP、及びNFMに対する粘土、樹脂、及びモレキュラーシーブ吸着剤の吸着性能を比較するために一連のテストを行った。吸着剤を連続して流体連通させて配列した8つの容器に装填した。500wppm濃度の水、さらにアセトニトリル、NFM、及びNMPをそれぞれ目標として1wppmで飽和させたトルエン供給原料を大気温度、大気圧で8つの吸着剤容器を連続的に通過させた。1つの実験ではトルエンに水は含ませなかった。YゼオライトはYゼオライトを80重量%そしてアルミナ結合剤を20重量%混合したものを押し出し加工して調製した。
【0068】
表1は有機窒素不純物が選択された吸着剤床を通過するのにかかる時間を比較したものである。
【0069】
【表1】

【0070】
表1はこれらの条件下ではいずれの床も長い時間でアセトニトリルを吸着する上では有効でなかったことを示している。Yゼオライトは、最初の床の通過時間が短いので、十分に大きな床を使えば乾燥した供給原料からアセトニトリルを十分に吸着する上で有効かもしれないが、8番目の床では遅くなっており、それには理由がある。粘土吸着剤はNMP及びNFMに対しては最も有効であるように思われる。樹脂の場合は、最初の床の通過時間は短く、8番目の床では遅くなっているので、十分に大きな樹脂床を用いた場合のみ、NFMとNMPを十分に吸着するように思われる。
【実施例3】
【0071】
Yゼオライトを80重量%そしてアルミナ結合剤を20重量%混合したものを押し出し加工して調製した吸着剤に接触させた場合のアセトニトリル(ACN)のベンゼンからの除去を評価するために一連のテストを行った。この吸着剤はABDが0.625g/ccであった。すべてのテストで、吸着剤を120℃で2時間乾燥させてから、その25gを容器に装填した。これらのテストは24℃と150℃の操作温度で実施され、供給原料ベンゼン中の水分濃度はいろいろに変えて実験が行われた。
【0072】
テスト用原料はベンゼンストリームにACNを加えて、目標窒素含量を約20wppmになるように調製した。最初の時点で、ベンゼン供給原料はACNを加える前に乾燥させた。これらテストのうちの2回では、ベンゼン供給原料に水を加えて、窒素吸着に対する水の影響を調べた。4回のテストでの吸着剤の使用状況についての分析結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2から、150℃までの昇温状態で、供給原料に水を加えると吸着剤の窒素吸着容量が大きくなることは明らかである。150℃で、水分含量が50wppmの場合のテストでは、ベンゼン供給原料に水を添加しないで常温で行われるテストと比較して窒素容量が約25%上昇することが示されている。
【実施例4】
【0075】
実施例1のテスト番号2と3で用いた吸着剤を熱重量測定分析(TGA)して、それら吸着剤へのコーク沈着の程度を判定した。それら吸着剤に沈着したコークの重量%及びそれらのコークを燃焼させて吸着剤から取り除くのに要する時間を調べ、表3に示した。
【0076】
【表3】

【0077】
TGAデータから、テスト2の吸着剤からコークを燃焼除去するために、400℃を上回る温度が必要であった。さらに、150℃の温度で水添加なしで行われたテストNo.2からの吸着剤サンプルのコークレベルは約8重量%である。逆に、テストNo.3からの吸着剤は400℃より高い温度で有意な重量ロスを示さなかった。150℃、水分含量50wppmで行われたテストNo.3のこの吸着剤サンプルのコークレベルは1重量%未満と見積もられる。従って、水の添加は吸着剤でのコーク形成を85%以上減少させた。昇温状態でニトリル類を吸着する際、水が存在していると、吸着剤再生の頻度が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明におけるエチルベンゼン生成の流れ図を示している。
【図2】本発明におけるエチルベンゼン生成の流れ図を示している。
【図3】本発明におけるエチルベンゼン生成の流れ図を示している。
【図4】本発明におけるクメン生成の流れ図を示している。
【図5】本発明におけるクメン生成の流れ図を示している。
【図6】本発明におけるクメン生成の流れ図を示している。
【図7】本発明におけるクメン生成の流れ図を示している。
【図8】本発明におけるクメン生成の流れ図を示している。
【図9】本発明におけるクメン生成の流れ図を示している。
【符号の説明】
【0079】
20、30、120 アルキル化反応器
40、140 ベンゼン塔
44、112 吸着容器(吸着剤容器)
50、150、150''、150† トランスアルキル化反応器
70、160 熱吸着容器(熱性吸着容器、窒素吸着容器)
80 エチルベンゼン塔
90、190 PEB塔(重量物塔)
130 脱プロパン塔
180 クメン塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル化剤を用いてアルキル化物質をアルキル化するための方法において、
アルキル化物質と不純物を含むアルキル化物質供給ストリームを、不純物の吸着に選択性を示す粘土あるいは樹脂で構成される精製吸着剤を含む不純物吸着ゾーンに送り、前記不純物吸着ゾーンから前記アルキル化物質を含み不純物の濃度が前記アルキル化物質供給ストリーム内の不純物の濃度より低い精製アルキル化物質供給ストリームを受け取るステップと、
少なくとも20重量ppmの水とニトリル化合物を含む前記精製アルキル化物質供給ストリームの少なくとも一部を、ニトリルの吸着に選択性を示す前記精製吸着剤とは異なる脱窒吸着剤を含む窒素吸着ゾーンに送り、前記窒素吸着ゾーンから前記アルキル化物質を含むと同時にニトリル化合物の濃度が前記精製アルキル化物質供給ストリーム内のニトリル化合物の濃度より低い脱窒されたアルキル化物質ストリームを回収するステップと、
前記アルキル化剤とこれら前記ステップで得られた精製アルキル化物質供給ストリームと前記脱窒されたアルキル化物質ストリームの少なくとも一部を、アルキル化触媒を含むアルキル化反応ゾーンに送り、前記アルキル化反応ゾーンからアルキレートを含む反応流出ストリームを受け取るステップを含み、
前記窒素吸着ゾーンが前記アルキル化反応ゾーンから離れた位置に設けられていることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−6947(P2012−6947A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169723(P2011−169723)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【分割の表示】特願2006−545721(P2006−545721)の分割
【原出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】