説明

アルキル化触媒及びアルキル化フェノールの製造方法

アルキル化触媒は金属酸化物からなり、表面積/体積比が約950〜約4000m/mである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル化触媒に関し、特に酸化マグネシウム又は酸化鉄を含有するアルキル化触媒、その製造方法及びアルキル化反応における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オルト−アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は様々な目的に有用である。例えば、オルト−クレゾールは有用な消毒薬及び木材防腐剤である。これは、フェノール類とメタノールとの気相反応によって製造されることが多い。別のアルキル化反応では、オルト−クレゾールとフェノールはいずれも2,6−キシレノールに変換できる。このキシレノールモノマーは重合させてポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを形成することができ、このポリマーはある種の高性能熱可塑性製品における主要な成分である。
【0003】
アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は通常、前駆体であるヒドロキシ芳香族化合物の第一又は第二アルコールによるアルキル化によって製造される。このアルキル化は、マグネシウム系又は鉄系化合物のような適切な触媒の存在下で行わなければならない。
【0004】
産業界では、マグネシウム系触媒の性能を最適化することに多大な労力が払われている。通常、触媒が高い活性をもつことが極めて重要である。すなわち、できるだけ長い活性寿命を有していなければならない。また、触媒は非常に良好なオルト選択性を有していなければならない。従前使用されてきたオルト−アルキル化触媒の多くでは、有用性に乏しいパラ−アルキル化生成物が高割合で生成していた。
【0005】
一例を挙げると、酸化マグネシウム触媒の存在下でフェノールをメタノールでアルキル化したとき、望ましい生成物であるオルト−クレゾール(o−クレゾール)と2,6−キシレノールが生成するが、このアルキル化反応ではまたパラ−クレゾール(p−クレゾール)、2,4−キシレノール及びメシトール(2,4,6−トリメチルフェノール)のようなパラ−置換化合物もかなりの量で生成し得る。幾つかの最終用途では、これらのパラ−置換化合物は非置換パラ位を含有する対応する化合物と比べて有用性が格段に低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
選択性、活性及び触媒寿命の改良がなされてきているが、アルキル化工程の効率を改良するために、改良された選択性、活性及び触媒寿命に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
アルキル化触媒は金属酸化物を含んでなり、この触媒は約950〜約4000m/mの表面積/体積比及び/又は約0.7〜約1.0のアスペクト比を有する。
【0008】
アルキル化方法は金属酸化物を含んでなるアルキル化触媒の存在下でヒドロキシ芳香族化合物とアルキルアルコールとを反応させることを含んでおり、このアルキル化触媒は約950〜約4000m/mの表面積/体積比及び/又は約0.7〜約1.0のアスペクト比を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は、アルキル化触媒存在下でのアルキルアルコールとヒドロキシ芳香族化合物との気相反応によって製造される。予想外のことに、約950〜約4000m/mの表面積/体積比及び/又は約0.7〜約1.0のアスペクト比を有する触媒を使用すると、この反応の選択性が改良されることが発見された。この表面積/体積比及び/又はアスペクト比は触媒の非充填嵩密度を増大させる。非充填嵩密度が増大すると、反応器に装填することができる触媒の量が増大するが、驚くべきことにこれは選択性と生産性に負の影響を与えることがなく、かつ触媒の交換の時間を延長し、従って全体的効率が増大することになる。
【0010】
本明細書でペレットとは、幾何学的形状に関して制限されることなく触媒の密に充填した小さい塊と定義される。本明細書で非充填嵩密度とは、ある一定の体積中にランダムに配列されたペレットの密度と定義される。これは、ある一定の体積中にランダムではなく配列されたペレットの密度と定義することができる充填嵩密度と対照的である。これらはいずれも、各ペレットの平均密度(単位体積当たりの重量)であるペレット密度と対照的である。
【0011】
ヒドロキシ芳香族化合物としては、1以上のヒドロキシ官能基と6〜約20個の炭素を有する芳香族化合物がある。このヒドロキシ芳香族化合物は1個の芳香環又は縮合していてもいなくてもよい複数の芳香環を含み得る。ヒドロキシ芳香族化合物は1以上のオルト水素を有している。また、このヒドロキシ芳香族化合物はヒドロキシ官能基に対してメタ位及び/又はパラ位で置換されていてもよい。好ましいヒドロキシ芳香族化合物としてフェノール及びo−クレゾールがある。
【0012】
アルキルアルコールとしては、1〜約10個の炭素を有する飽和及び不飽和アルキルアルコールがある。このアルキルアルコールは枝分かれ又は非枝分かれの第一又は第二アルコールであり得る。アルキルアルコールの具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、など、及び上記アルキルアルコールを1種以上含む組合せがある。好ましいアルキルアルコールはメチルアルコール(すなわちメタノール)である。
【0013】
アルキル化触媒は主要な構成成分として1種以上の金属酸化物を含んでいる。この金属酸化物は、マグネシウム試薬、鉄試薬又はこれらの混合物からなる金属酸化物前駆体から得ることができる。酸化マグネシウムを生成するいかなるマグネシウム試薬でも使用することができる。同様に、酸化鉄を生じるあらゆる鉄試薬を使用することができる。好ましいマグネシウム試薬としては、限定されることはないが、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、及び以上のものの混合物がある。このマグネシウム試薬は通例粉末の形態である。塩基性炭酸マグネシウムは好ましいマグネシウム試薬である。塩基性炭酸マグネシウムは「炭酸マグネシウム水酸化物」といわれることがある。当業者は、塩基性炭酸マグネシウムの正確な式がある程度変化することを理解している。
【0014】
触媒の製造に使用する鉄試薬の例としては、限定されることはないが、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第一鉄、硫酸第一鉄及び塩化第一鉄がある。これらの中で、硝酸第二鉄が特に好ましい。さらに、酸化鉄はFeO、Fe、Fe、又はこれらの混合物の任意の形態であることができる。
【0015】
一つの実施形態において、マグネシウム試薬中の塩化物のレベルは百万部当たり約250部(ppm)未満、好ましくは約125ppm未満、より好ましくは約100ppm未満である(本明細書で使用する場合、「塩化物」とは、塩の形態で存在することが多い塩素イオンをいう)。マグネシウム試薬中のカルシウムのレベルは約2500ppm未満、好ましくは約1000ppm未満であるべきである。幾つかの実施形態では、カルシウムのレベルは約750ppm未満である。(代わりに、不純物のこれらのレベルは、カ焼の結果生じる酸化マグネシウムの形態に関して規定することができる。カ焼した酸化物中の不純物の閾値レベルは塩基性炭酸マグネシウム試薬の場合の約2倍、例えば最も広い場合で塩化物が約500ppm未満でカルシウムが約5000ppm未満であろう。)
マグネシウム試薬中の塩化物とカルシウムのレベルは一般的な分析法で決定することができる。例えば、カルシウムレベルは滴定技術又はある種の形態の分光法、例えば誘導結合プラズマ原子発光分光法で決定することができる。塩化物のレベルは通常、滴定又はイオンクロマトグラフィーによって決定する。このタイプのマグネシウム試薬は請求により販売元から入手可能である。
【0016】
アルキル化触媒は金属酸化物前駆体を1種以上の充填材及び任意の細孔形成剤とドライブレンドすることによって形成される。用語「充填材」は、このタイプの触媒に配合するものとして当技術分野で公知の各種の潤滑剤、結合材及び充填材を含めて意味する。触媒組成物中に存在する充填材の総量は、通常、充填材とマグネシウム試薬の総重量を基準にして約20重量%以下である。幾つかの実施形態において、充填材のレベルは約10重量%以下である。本触媒組成物中に使用する充填材の例としては、グラファイト、及びポリフェニレンエーテル(PPE)がある。ポリフェニレンエーテルは通常総重量を基準にして約10重量%以下の量で使用され、一方グラファイトは通常約5重量%以下の量で使用される。
【0017】
任意の細孔形成剤は、触媒中における細孔の形成を補助することができる物質であり、好ましくはワックス及び多糖からなる群から選択される。ワックスは、1種類以上のパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、微晶質ワックス、モンタンワックス、などから選択することができる。多糖は、1種類以上のセルロース、カルボキシルメチルセルロース、酢酸セルロース、デンプン、クルミ粉末、クエン酸、ポリエチレングリコール、シュウ酸、ステアリン酸などから選択することができる。また、陰イオン性及び陽イオン性界面活性剤、通例、中和された酸種、例えばカルボン酸、リン酸、及びスルホン酸種を含有する長鎖(C10−28)炭化水素も有用である。
【0018】
細孔形成剤の量は、カ焼後に約100〜約400オングストロームの細孔直径の分布をもたらす量であり、通例金属酸化物前駆体、充填材及び細孔形成剤の総重量を基準にして約100ppm〜10wt%、通常約100ppm〜5wt%の範囲であり、好ましくは約2wt%以下の量である。幾つかの実施形態において、アルキル化触媒は二峰性分布の細孔を有している。第1のより小さい直径の細孔分布はカ焼工程中に金属酸化物前駆体から得られ、すなわちこれらの細孔は細孔形成剤を含有しない金属酸化物前駆体のカ焼で得られるものと類似の寸法であると考えられる。第2のより大きな直径の細孔分布は細孔形成剤試薬自体の添加とカ焼の結果であり、すなわちこれらの細孔直径は細孔形成剤を含有しない金属酸化物前駆体のカ焼後には実質的な量で見られないと考えられる。好ましくは、二峰性分布の細孔は、細孔の第1の分布が100オングストローム未満の平均細孔直径を有し、細孔の第2の分布が100オングストロームより大きく400オングストローム未満の平均直径を有するものである。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「ドライブレンド(する)」とは、懸濁ブレンド又は沈殿のような「湿式」技術を使用することなく、最初に個々の成分を乾燥状態で互いに混合する一般的な技術を指す。リボンブレンダーのようなあらゆるタイプの機械的ミキサー又は配合機を使用することができる。当業者はこのタイプの材料をドライブレンドするための一般的なパラメーターに通じている。これらの成分は、緊密なブレンドが得られ、充填材及び任意の細孔形成剤が充分に分散するまで混合するべきである。ブレンドする時間は通例、約5〜約60回転/分(rpm)の軸速度で約10分〜約2時間の範囲である。
【0020】
金属酸化物前駆体、充填材(又は複数の充填材)及び任意の細孔形成剤のドライブレンドが完了した後、ブレンドされた固体の触媒組成物は粉末の形態である。この粉末は通常嵩密度が約0.1〜約0.5グラム/立方センチメートル(g/cm)の範囲、好ましくは約0.25〜約0.5g/cmの範囲である。通例、次いでこの粉末をさらに加工処理した後、所望の形態に賦形する。これら追加の加工処理する段階の非限定例には、ふるい分け(より狭い粒子分布を得るため)、ミル加工、及び圧縮がある。
【0021】
幾つかの好ましい実施形態では、ドライブレンドした後触媒組成物を圧密化する。圧密化装置は当技術分野で公知である。工業用圧密化系がAllis−Chalmers、Gerteis Macshinen,Jona,Switzerland及びFitzpatrick Co.,Elmhurst,Illのような様々な販売元から入手可能である。圧密機は通常ローラーを介して粉末化材料を供給することによって機能する。
【0022】
適切な圧密化装置の一つの具体例は「ChilsonatorTM」として公知である。かかる系では、最初に触媒粉末を急速に回転する垂直送りねじによって圧密化ロールに供給する。この送りねじは粉末をロールニップ中に押し込む。これらのロールは材料を圧縮して連続した固体のシートにする。
【0023】
殆どの実施形態で、触媒組成物をドライブレンドした後追加の加工処理をする前に脱気する。この段階は、組成物が後に圧密化ローラーを通過しなければならない場合殊に重要である。脱気は、粉末の内部から混入ガス(主として空気)を強制的に除去することによって材料の嵩密度をさらに増大する。脱気系は当技術分野で公知であり、様々な販売元から入手可能である。真空脱気は一つの一般的な技術である。真空は、配合装置から他の加工処理操作に至る粉末の通路に沿って様々な点でかけることができる。通常、真空は圧密化ローラーの位置に極めて近接した点で(そしてその前に)かける。真空の程度は、加工処理される粉末の量、その圧縮性、それが含有している充填材のタイプ、及び粉末の密度のような各種の要因に依存する。通常、真空度は水銀柱約5インチ(12.7cm)〜約25インチ(63.5cm)の範囲である。
【0024】
圧密化によって形成された触媒材料の固体シートは次に各種の技術により造粒することができる。通例、この造粒した材料をサイズ分離する。その後、この所望の触媒顆粒は、直接賦形操作に、又は貯蔵施設に搬送することができる。触媒の形状は本発明にとって重要ではなく、その触媒をその後のアルキル化操作に用いる際の様式に依存する。触媒はペレット又は「タブレット」に圧縮することが非常に多い。この作業は、米国特許第4900708号に記載されているように慣用のペレット化装置(例えば、Betapress)によって達成することができる。次に、賦形した触媒組成物をカ焼する。カ焼は通常、金属酸化物前駆体を、この触媒中の活性種である金属酸化物に変換するのに充分な温度に触媒を加熱することによって行う。カ焼により、触媒の表面積が増大する。カ焼温度は多少変化し得るが、通常は約350〜約550℃の範囲である。カ焼雰囲気は酸化性、不活性、又は還元性でよい。また、触媒はアルキル化反応の開始時にカ焼することができる。言い換えると、カ焼はアルキル化供給材料、すなわち、ヒドロキシ芳香族化合物及びアルキルアルコールの存在下で行うことができる。
【0025】
触媒ペレットの表面積は、BET分析法に基づいて約100〜約300平方メートル/グラム(m/g)である。未カ焼のペレットのペレット密度は約1.3〜約2.1g/cmである。この範囲内でペレットは約1.4g/cm以上、好ましくは約1.6g/cm以上のペレット密度を有する。また、この範囲内でペレットは、約2.0g/cm以下、好ましくは約1.9g/cm以下のペレット密度を有する。表面積/体積比が約950m/m未満のペレットの場合、反応の選択性はペレット密度が約1.6g/cmより高くなると低下することが知られている。驚くべきことに、表面積/体積比が約950m/mより大きいペレットは、反応の選択性に負の影響を及ぼすことなく約1.6g/cm以上のペレット密度を有することができる。
【0026】
一つの実施形態において、触媒ペレットの表面積/体積比は約950〜約4000m/mである。この範囲内で、触媒ペレットは好ましくは約1100m/m以上、より好ましくは約1300m/m以上の表面積/体積比を有する。また、この範囲内で、触媒ペレットは約3800m/m以下、より好ましくは約3000m/m以下の表面積/体積比を有する。
【0027】
別の実施形態において、触媒ペレットはアスペクト比が約0.7〜約1.0である。この範囲内で、アスペクト比は好ましくは約0.72以上、より好ましくは約0.75以上である。また、この範囲内で、アスペクト比は好ましくは約0.95以下、より好ましくは約0.90以下である。本発明で、アスペクト比とは、長さ対直径又は長さ対幅の比として定義される。
【0028】
触媒ペレットは非充填嵩密度が約900〜約1200キログラム/立方メートル(kg/m)である。この範囲内で、非充填嵩密度は好ましくは約920以上、より好ましくは約950kg/m以上である。また、この範囲内で、非充填嵩密度は好ましくは約1180以下、より好ましくは約1150kg/m以下である。
【0029】
一つの実施形態において、触媒ペレットは直径が約1.0〜約4.0ミリメートル、高さが約2.0〜約3.0ミリメートルである。
【0030】
アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は、金属酸化物を含んでなるアルキル化触媒の存在下でヒドロキシ芳香族化合物をアルキルアルコールと反応させることによって形成されるが、ここでアルキル化触媒は約950〜約4000m/mの表面積/体積比、約0.7〜約1.0のアスペクト比又はこれらの組合せを有する。反応の温度は約420℃以上、好ましくは約440〜約500℃である。このアルキル化反応は水蒸気の存在下で行ってもよい。水蒸気の量は反応体の総重量を基準にして約1〜約35重量パーセント(wt%)でよいが、好ましくは反応体の総重量を基準にして約5〜25wt%である。
【0031】
ある収量のオルト−アルキル化生成物を得るためには、アルキル化しようとするフェノール上の各オルト位に対して1モル以上のアルコール、好ましくは1〜3モルのアルコールを使用する。例えば、1分子当たり2つのオルト−水素を有するフェノールをメチル化してある収量の2,6−キシレノールを製造するには、フェノール各1モルに対して2〜6モルのメタノールを使用するのが望ましく、高めの収量と選択率は高めのメタノール対フェノール比で得られる。
【0032】
アルキル化反応は一般に、技術水準で充分に記載されている反応器系で実施する。反応器で発生する蒸気を凝縮させ、生成物は結晶化、蒸留、等のような慣用法で分離する。反応は大気圧で進行するが、これより高いか又は低い圧力も使用できる。
【0033】
アルキル化技術は、当技術分野で一般に公知であり、前掲の米国特許第4554267号及び同第3446856号に記載されている。適切な方法はまた米国特許第4933509号、同第4900708号、同第4554266号、同第4547480号、同第4048239号、同第4041085号及び同第3974229号にも記載されている。
【0034】
アルキル化芳香族ヒドロキシ化合物の具体例としては、限定されることはないが、o−、m−及びp−クレゾール、2,3−、2,4−、2,5−、3,4−及び3,5−キシレノール、トリメチルフェノール、テトラメチルフェノール、n−及びイソ−プロピルフェノール、n−、イソ−及びtert−ブチルフェノール、など、並びに上記アルキル化芳香族ヒドロキシ化合物を1種以上含む組合せ及び反応生成物がある。加えて、アルキル化芳香族ヒドロキシ化合物には、同じ芳香環上に2種以上の異なるアルキル置換基を有する芳香族化合物も含まれ、同様に使用できる。
【0035】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げる。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、アルキル化フェノールの製造を例示する単なる代表例である。
【実施例】
【0036】
酸化マグネシウムを含むアルキル化触媒を2つの異なるサイズを有するペレットに形成し、404℃で16時間0.12g/g/hrのWHSVの窒素流下でカ焼した。第1の実施例で使用したカ焼したペレットのペレットサイズは直径が2.96ミリメートルで高さが2.32ミリメートルであり、第2の実施例で用いたカ焼したペレットのペレットサイズは直径が4.45ミリメートルで高さが2.95ミリメートルであった。第1の実施例のペレットはアスペクト比が0.78、表面積/体積比が1400m/mであった。第2の実施例のペレットはアスペクト比が0.66、表面積/体積比が900m/mであった。触媒を、アルキル化反応に使用する実験室規模の反応器中に装填した。アルキル化反応では、メタノールとフェノールを1.4の重量比で含む供給原料を用いた。この供給原料は20重量%の水も含有していた。反応温度は約440℃、圧力は170kPaであった。反応中のWHSVは2.1g/g/hrであった。
【0037】
下記表1に、150時間を超える実験時間後に得られた反応の選択率、フェノール使用率及びメタノール使用率をまとめて示す。選択率は(流出液モル(p−クレゾール+2,4−キシレノール+メシトール))/(流出液モル(フェノール+o−クレゾール+2,6−キシレノール))×100と定義される。フェノール使用率は(使用したフェノール/生成した2,6−キシレノール)×100と定義される。メタノール使用率は(使用したメタノール/生成した2,6−キシレノール)×100と定義される。
【0038】
【表1】

上の表の結果が明らかに示しているように、1400m/mの表面積/体積比と0.78のアスペクト比を有するペレットは、900m/mの表面積/体積比と0.66のアスペクト比を有するペレットと比べて増大した選択率を示し、2,6−キシレノールの生成に対するフェノール及びメタノール使用率が大幅に減少している。
【0039】
表4に、上記ペレットに対して決定された非充填嵩密度(UPBD)を示す。
【0040】
【表2】

上の表の結果が明らかに示しているように、1400m/mの表面積/体積比と0.78のアスペクト比を有するペレットは、900m/mの表面積/体積比と0.66のアスペクト比を有するペレットと比べて増大した非充填嵩密度を示す。非充填嵩密度が増大すると、従来の触媒と比較して反応器に装填することができる触媒の量が増大する。装填量が増大すると、触媒材料の使用率が低下すると共に反応器サイクル時間が長くなり、その結果より効率的な方法となる。
【0041】
本明細書で引用した特許は全て援用により本明細書の内容の一部をなす。
【0042】
代表的な実施形態に関連して本発明を説明してきたが、当業者には了解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であり、またその要素に代えて等価物を使用することができる。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正をなすことができる。従って、本発明は、本発明を実施するのに最良と考えられる態様として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に入る全ての実施形態を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を含んでなるアルキル化触媒であって、1000〜4000平方メートル/立方メートルの表面積/体積比、0.3〜0.9のアスペクト比又はこれらの組合せを有する、前記触媒。
【請求項2】
金属酸化物が酸化マグネシウム、酸化鉄又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の触媒。
【請求項3】
触媒が、カ焼後に直径約100〜約400オングストロームの細孔を有する、請求項1又は請求項2記載の触媒。
【請求項4】
触媒が二峰性分布の細孔を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の触媒。
【請求項5】
触媒が、約100〜約300平方メートル/グラムの表面積を有するペレットの形態である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の触媒。
【請求項6】
触媒が、約0.9〜約1.30グラム/立方センチメートルのペレット密度を有するペレットの形態である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の触媒。
【請求項7】
触媒が、約900〜約1200キログラム/立方メートルの非充填嵩密度を有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の触媒。
【請求項8】
触媒が、約2.8〜約3.5ミリメートルの直径及び約2.0〜約2.6ミリメートルの高さを有するペレットの形態である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の触媒。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のアルキル化触媒の存在下でヒドロキシ芳香族化合物をアルキルアルコールと反応させることを含んでなるアルキル化方法。
【請求項10】
約420℃以上の温度で反応させる、請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2007−516063(P2007−516063A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518661(P2006−518661)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/019795
【国際公開番号】WO2005/009936
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】