説明

アルキレンオキサイド付加物およびその製造方法

【課題】 低温での流動性および保存安定性が良好で、乳化力、低粘性能に優れたアルキレンオキサイド付加物とその製造方法を提供する。
【解決手段】 アルキレンオキサイド付加物の製造方法は、アルコールに対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給して付加反応させる工程を含む方法である。供給開始時をT0、供給終了時をT100とし、T0とT100との間の時間T1およびT2が、T0<T1<T2<T100および(T2−T1)/T100=0.01の関係にあるとき、T0、T100、T1、T2の各々の時点におけるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を、[PO/EO]T0、[PO/EO]T100、[PO/EO]T1および[PO/EO]T2として、下記数式を同時に満足する。
0<[PO/EO]T0<1
1<[PO/EO]T100<100
0.8<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<10

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液における流動性に優れハンドリング性が良好で、低温での流動性および乳化力に優れたアルキレンオキサイド付加物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級アルコールにエチレンオキサイドを付加させてなるエチレンオキサイド付加物は洗浄剤、乳化剤、分散剤、油相成分調整剤、浸透剤、ポリマー原料等の様々な産業用途で有用であり汎用されている。高級アルコールのエチレンオキサイド付加物は乳化および分散性能に優れる。しかし、その凝固点が高く、低温安定性が悪いといった欠点がある。
これらの欠点を改良するために高級アルコールのエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合付加物が提案されてきた。一般的にポリオキシエチレン鎖中にプロピレンオキサイドの構造単位を導入すると低起泡性が発現し、水溶液における流動性が向上する等のメリットが生じる。しかしながら、一方ではポリオキシエチレン鎖中にプロピレンオキサイドの構造単位を導入することで、単なるエチレンオキサイド付加物と比較して乳化力が著しく低下するといったデメリットを生じる場合がある。
【0003】
この高級アルコールのエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合付加物の性能最適化のために、様々な構造設計が検討されてきた。
たとえば、特許文献1にはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加物;特許文献2にはアルコールに対して最初にエチレンオキサイド、次いでプロピレンオキサイドの順に付加させて得られるブロック付加物;特許文献3にはアルコールに対して最初にプロピレンオキサイド、次いでエチレンオキサイドの順に付加させて得られるブロック付加物;特許文献4にはアルコールに対して最初にエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加を行い、次にエチレンオキサイドのブロック付加物;特許文献5にはアルコールに対して最初にエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加を行い、次にエチレンオキサイドの付加を行い、さらにプロピレンオキサイドを付加させて得られるブロック付加物;特許文献6にはアルコールに対して最初にエチレンオキサイド、次いでプロピレンオキサイドを付加させ、次いでエチレンオキサイドを付加させて得られるブロック付加物等が開示されている。しかしながら、これらのエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合付加物は、低起泡性、乳化力、分散力、低粘性等のいずれの要求特性をも十分に満足するものではない。また、特許文献5および6の付加物に関しては、反応プロセスが煩雑で多段階であるため製造時間が長いといった製造上の問題もあった。
【0004】
また、特許文献7には水および溶剤を含有した均一透明性に優れた流動性の良い高級アルコール系アルキレンオキサイド付加物中間体組成物が提案されているが、性能に直接寄与しない水または溶剤類が混入するので好ましくない。
このように、特許文献1〜7のアルキレンオキサイド付加物にはそれぞれ問題があるが、それらの問題を抱えつつも従来のアルキレンオキサイド付加物を使用せざるを得ないというのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−303825号公報
【特許文献2】特公昭63−12192号公報
【特許文献3】特開昭53−58508号公報
【特許文献4】特開平10−46189号公報
【特許文献5】特開平10−130690号公報
【特許文献6】特開平10−195499号公報
【特許文献7】特開昭51−13394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低温流動性が良好で、乳化力、低粘性に優れたアルキレンオキサイド付加物とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、アルコールと、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドとを反応させる際、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重量比をある一定の範囲内に制御させることによって上記課題を解決するアルキレンオキサイド付加物が得られるという知見が得られ、本発明を完成した。
【0008】
本発明のアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、下記一般式(A):
ROH (A)
(Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。)
で表されるアルコールに対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給して付加反応させる工程を含む、アルキレンオキサイド付加物の製造方法であって、
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給開始時をT0、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給終了時をT100とし、T0とT100との間の時間T1およびT2が、T0<T1<T2<T100および(T2−T1)/T100=0.01の関係にあるとき、
【0009】
T0、T100、T1、T2の各々の時点で供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を、[PO/EO]T0、[PO/EO]T100、[PO/EO]T1および[PO/EO]T2として、下記数式(B)〜(D):
0<[PO/EO]T0<1 (B)
1<[PO/EO]T100<100 (C)
0.8<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<10 (D)
を同時に満足する製造方法である。
【0010】
この製造方法において、以下の(1)〜(4)のうちの少なくとも1つの要件を満足すると好ましい。
(1)下記数式(B−1)および(C−1)をさらに満足する。
0.1<[PO/EO]T0<0.5 (B−1)
2<[PO/EO]T100<20 (C−1)
(2)下記数式(D−1)をさらに満足する。
0.9<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<1.2 (D−1)
【0011】
(3)前記工程後に、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程をさらに含む。
(4)前記アルキレンオキサイドがプロピレンオキサイドである。
【0012】
本発明のアルキレンオキサイド付加物は、下記一般式(1):
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (1)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を各々示す。pおよびqは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30およびq=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物であって、
【0013】
前記アルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
【0014】
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A):
1≦E≦45 (I−A)
51≦EEO−R≦99 (II−A)
1≦EEO−OH≦49 (III−A)
51≦EOH≦99 (IV−A)
を各々満足する、アルキレンオキサイド付加物である。
【0015】
このアルキレンオキサイド付加物において、以下の1)〜5)のうちの少なくとも1つの要件を満足すると好ましい。
1)p=1〜10およびq=1〜30である。
2)前記Rの炭素数が8〜20である。
3)重量平均分子量が200〜5000である。
4)ブチルジグリコール法(BDG法)により測定される曇点が0〜95℃である。
5)下記数式(I−B)〜(IV−B)をさらに満足する。
10≦E≦35 (I−B)
60≦EEO−R≦90 (II−B)
5≦EEO−OH≦35 (III−B)
65≦EOH≦95 (IV−B)
【0016】
本発明の別のアルキレンオキサイド付加物は、上記アルキレンオキサイド付加物に、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、
下記一般式(2):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(AO)r−H (2)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、AOはオキシエチレン基およびオキシプロピレン基から選ばれる1種のオキシアルキレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30、q=1〜50およびr=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物である。ここで、前記AOがオキシプロピレン基であると好ましい。
【0017】
本発明のさらに別のアルキレンオキサイド付加物は、上記一般式(2)でAOがオキシエチレン基であるアルキレンオキサイド付加物に、プロピレンオキサイドを供給して付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、
下記一般式(3):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(EO)r−(PO)s−H (3)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。p、q、rおよびsは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30、q=1〜50、r=1〜50およびs=1〜10である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、低温流動性が良好で、乳化力、低粘性に優れるアルキレンオキサイド付加物を効率良く製造することができる。
本発明のアルキレンオキサイド付加物は、いずれも、低温流動性が良好で、乳化力、低粘性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示すグラフである。
【図2】実施例7で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示すグラフである。
【図3】比較例1で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例1で得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトルを測定した結果を示すチャート図である。
【図5】実施例1で得られたアルキレンオキサイド付加物のH−NMRスペクトルを測定した結果を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔アルキレンオキサイド付加物の製造方法〕
本発明のアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、下記一般式(A):
ROH (A)
(Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。)
で表されるアルコールに対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給して付加反応させる工程(以下では、この工程を「付加反応工程1」ということがある。)を含む製造方法である。以下では、簡単のために、「エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド」を「アルキレンオキサイドA」ということがある。
【0021】
また、上記付加反応工程1の後に、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程(以下では、この工程を「付加反応工程2」ということがある。)をさらに含むとよい。
また、上記付加反応工程2でアルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを付加反応させた後に、プロピレンオキサイドを供給して付加反応させる工程(以下では、この工程を「付加反応工程3」ということがある。)をさらに含むとよい。
一般式(A)で表されるアルコールにおけるRは、アルキル基またはアルケニル基である。また、Rは直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。
【0022】
Rの炭素数は、通常1〜30、好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜22、特に好ましくは6〜20、最も好ましくは8〜20である。Rの炭素数が30超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の疎水性が増大する。
上記アルコールとしては、特に限定はないが、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、へキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノールおよびトリアコサノール等の直鎖アルカノール;2−エチルへキサノール、2−プロピルヘプタノール、2−ブチルオクタノール、1−メチルヘプタデカノール、2−ヘキシルオクタノール、1−ヘキシルヘプタノール、イソデカノール、イソトリデカノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール等の分岐アルカノール;ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、へキサデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール、エイセノール、ドコセノール、テトラコセノール、ペンタコセノール、ヘキサコセノール、ヘプタコセノール、ヘプタコセノール、オクタコセノール、ノナコセノールおよびトリアコンセノール等の直鎖アルケノール;イソヘキセノール、2−エチルへキセノール、イソトリデセノール、1−メチルヘプタデセノール、1−ヘキシルヘプテノール、イソトリデセノールおよびイソオクタデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種または2種以上を併用してもよい。高級アルコールの製品の具体例としては、特に限定はないが、たとえば、ヤシアルコール、パームアルコール等の天然油脂由来の高級アルコールや、カルコールシリーズ(花王製)、コノールシリーズ(新日本理化製)、オキソコールシリーズ(協和発酵ケミカル製)、ネオドールシリーズ(シェル化学製)、ALFOLシリーズ(Sasol製)、EXXALシリーズ(エクソン・モービル製)等が挙げられる。これらの高級アルコールの製品は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の製造方法は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、特に限定はないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の水酸化物;酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の酸化物;金属カリウム、金属ナトリウム等のアルカリ金属;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属の水素化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ(土類)金属の炭酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の硫酸塩;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機スルホン酸;パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム等の芳香族スルホン酸塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物;鉄粉、アルミニウム粉、アンチモン粉、塩化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化コバルト(III)、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、臭化アンチモン(III)、四塩化スズ、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル等のルイス酸;硫酸、過塩素酸等のプロトン酸;過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の過塩素酸塩;カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド等のアルカリ(土類)金属のアルコキシド;カリウムフェノキシド、カルシウムフェノキシド等のアルカリ(土類)金属のフェノキシド;珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、ゼオライト等の珪酸塩;水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物、金属イオン添加酸化マグネシウム、焼成ハイドロタルサイト等のAl−Mg系複合酸化物またはそれらの表面改質物、ランタノイド系錯体等が挙げられる。これらの触媒は、1種または2種以上を併用してもよい。
触媒の使用量については、特に限定はないが、アルコール100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.001〜8重量部、さらに好ましくは0.01〜6重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部、最も好ましくは0.05〜3重量部である。触媒の使用量が0.001重量部未満であると付加反応が十分に進行しないことがある。一方、触媒の使用量が10重量部超であるとアルキレンオキサイド付加物が着色し易くなるおそれがある。
【0024】
本発明の製造方法では、アルコール、触媒等の原料を反応容器に仕込み、そしてその反応容器に対して脱ガス処理や脱水処理が行われると好ましい。脱ガス処理は、たとえば減圧脱気方式、真空脱気方式等で行われる。また、脱水処理は、たとえば加熱脱水方式、減圧脱水方式、真空脱水方式等で行われる。
本発明の製造方法では、その製造形式については特に限定はなく、連続式でもバッチ式でもよい。反応容器については、特に限定はないが、たとえば、攪拌翼を備えた槽型反応容器やマイクロリアクター等を挙げることができる。攪拌翼としては、特に限定はないが、マックスブレンド翼、トルネード翼、フルゾーン翼等を挙げることができる。
【0025】
本発明の製造方法では、付加反応を減圧状態から開始してもよいし、大気圧の状態から開始してもよいし、さらには加圧状態から開始してもよい。大気圧状態や加圧状態から開始する場合には不活性ガスの雰囲気下で行われることが好ましい。付加反応が不活性ガスの雰囲気下で行われるとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドと酸素との副反応等に起因して生成する不純物を十分に除去することが可能となり、また、安全性の観点からも有用であるので好ましい。不活性ガスとしては特に限定はないが、たとえば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。これらの不活性ガスは1種または2種以上を併用してもよい。不活性ガスの雰囲気下における反応容器内の酸素濃度については、特に限定はないが、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、さらに好ましくは3体積%以下、特に好ましくは1体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下である。反応容器内の酸素濃度が10体積%超であると不純物を十分に除去できないことがあり、また安全性の観点からも好ましくないことがある。
反応容器内の初期圧力については、特に限定はないが、たとえば、ゲージ圧で好ましくは0〜0.50MPa、より好ましくは0〜0.45MPa、さらに好ましくは0〜0.4MPa、特に好ましくは0〜0.35MPa、最も好ましくは0〜0.3MPaである。反応容器内の初期圧力が0MPa未満であると、不純物の発生量が多くなることがある。一方、反応容器内の初期圧力が0.50MPa超であると、反応速度が遅くなることがある。
【0026】
アルコールに対してアルキレンオキサイドAを供給すると、付加反応が生起する。ここでエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとは同時に供給されるので、得られるアルキレンオキサイド付加物中に形成されたポリオキシアルキレン基は、ランダム付加によって生成したものとなり易く、好ましい。
アルキレンオキサイドAを同時に供給する方法については特に限定はないが、1)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをそれぞれ異なる供給ラインからアルコールに対して同時に連続的に供給する方法や、2)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをそれぞれ異なるラインから供給しインラインで混合したものをアルコールに対して連続的に供給する方法や、3)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのそれぞれの一部を予め混合したものをまず一括してアルコールに対して供給し、次いで、残部のエチレンオキサイドおよび残部のプロピレンオキサイドをそれぞれ異なる供給ラインからアルコールに対して同時に連続的に供給する方法や、4)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを予め混合した混合物をいくつか準備し、これらの混合物を何段階かに分けてアルコールに対して順次供給する方法等が挙げられる。
【0027】
付加反応工程1では、供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を変化させながら供給することが好ましい。
付加反応工程1では、供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を供給開始時にはエチレンオキサイドの重量比が大きく、供給終了時にはプロピレンオキサイドの重量比が大きくなるように制御されることがより好ましい。
【0028】
ここで、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド(アルキレンオキサイドA)の供給開始時をT0、アルキレンオキサイドAの供給終了時をT100とし、T0とT100との間の時間T1およびT2が、T0<T1<T2<T100および(T2−T1)/T100=0.01の関係にあると設定するとき、T0、T100、T1、T2の各々の時点で供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を、[PO/EO]T0、[PO/EO]T100、[PO/EO]T1および[PO/EO]T2として、下記数式(B)〜(D)を同時に満足するとよい。
0<[PO/EO]T0<1 (B)
1<[PO/EO]T100<100 (C)
0.8<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<10 (D)
【0029】
数式(B)は、好ましくは0.02<[PO/EO]T0<0.9、さらに好ましくは0.05<[PO/EO]T0<0.8、特に好ましくは0.08<[PO/EO]T0<0.7、最も好ましくは0.1<[PO/EO]T0<0.5である。[PO/EO]T0が0であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化力、低粘性能が優れないことがある。一方、[PO/EO]T0が1以上であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。
数式(C)は、好ましくは1.2<[PO/EO]T100<80、さらに好ましくは1.5<[PO/EO]T100<60、特に好ましくは1.8<[PO/EO]T100<40、最も好ましくは2<[PO/EO]T100<20である。[PO/EO]T100が1以下であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。一方、[PO/EO]T100が100以上であると、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給の制御が困難となることがある。
【0030】
数式(D)は、好ましくは0.8<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<5.0、さらに好ましくは0.8<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<2.0、特に好ましくは0.9<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<1.2、最も好ましくは1.0≦[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<1.2である。[PO/EO]T2/[PO/EO]T1が0.8以下であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。[PO/EO]T2/[PO/EO]T1が10以上であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の低温流動性が優れないことがある。
数式(B)〜(D)の意味するところを大まかに言えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給開始時から供給終了時にかけて、プロピレンオキサイドの重量比を徐々に増加させていくように制御することである。但し、(T2−T1)/T100=0.01の関係を満足するような微小な時間範囲(たとえば、T2−T1)においては、プロピレンオキサイドの重量比が一時的に減少する場合も許容される。
【0031】
アルキレンオキサイドAの供給速度に関しては、数式(B)〜(D)を同時に満足するように調整されればよく、特に限定はないが、たとえば、1)供給開始時のアルキレンオキサイドAの供給速度が速く、徐々に供給速度を遅くする(アルキレンオキサイドAを供給開始時に多量に供給し、供給終了時には量を減らす)方法や、2)供給開始時のアルキレンオキサイドAの供給速度が遅く、徐々に供給速度を速くする(アルキレンオキサイドAを供給開始時は少量を供給し、供給終了時には量を増やす)方法や、3)プロピレンオキサイドの供給速度を供給開始時には遅く、時間の経過と共に徐々に供給速度を速くする一方、エチレンオキサイドの供給速度を供給開始時には速く、時間の経過と共に徐々に供給速度を遅くする(プロピレンオキサイドを供給開始時は少量を供給し、供給終了時には量を増やす一方、エチレンオキサイドを供給開始時に多量に供給し、供給終了時には量を減らす)方法や、4)エチレンオキサイドの供給速度を一定に保ち、供給開始時のプロピレンオキサイドの供給速度を遅く、時間の経過と共に徐々に供給速度を速くする方法や、5)プロピレンオキサイドの供給速度を一定に保ち、供給開始時のエチレンオキサイドの供給速度を速く、時間の経過と共に徐々に供給速度を遅くする方法等が挙げられる。
付加反応時の反応容器内の圧力は、アルキレンオキサイドAの供給速度、反応温度、触媒量等に影響される。付加反応時の反応容器内の圧力は特に限定はないが、ゲージ圧で好ましくは0〜5.0MPa、より好ましくは0〜4.0MPa、さらに好ましくは0〜3.0MPa、特に好ましくは0〜2.0MPa、最も好ましくは0.1〜1.0MPaである。付加反応時の反応容器内の圧力が0MPa未満であると、反応速度が遅くなることがある。一方、付加反応時の反応容器内の圧力が5.0MPa超であると、製造が困難であることがある。
【0032】
アルキレンオキサイドAの付加反応の反応温度としては特に限定はないが、好ましくは70〜240℃、より好ましくは80〜220℃、さらに好ましくは90〜200℃、特に好ましくは100〜190℃、最も好ましくは110〜180℃である。反応温度が70℃未満であると、付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応温度が240℃超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の着色およびアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が促進されることがある。
上記付加反応に要する時間(反応時間)については特に限定はないが、好ましくは0.1〜100時間、より好ましくは0.1〜80時間、さらに好ましくは0.1〜60時間、特に好ましくは0.1〜40時間、最も好ましくは0.5〜30時間である。反応時間が0.1時間未満であると、付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応時間が100時間超であると、生産効率が悪くなることがある。
【0033】
アルキレンオキサイドAの供給が完了すると反応容器内の内圧はアルキレンオキサイドAが消費されることにより徐々に低下していく。アルキレンオキサイドAの付加反応は内圧の変化が認められなくなるまで継続することが好ましい。アルキレンオキサイドAの付加反応は一定時間における内圧の変化が認められなくなった時点で反応を終了する。必要に応じて加熱減圧操作等を実施し、未反応のアルキレンオキサイドAを回収してもよい。
アルキレンオキサイドAの付加反応においては、必要に応じて不活性溶媒を用いることができる。たとえば、アルコールとしてトリアコンセノール等の常温で固体のものを用いる場合には反応前に予め不活性溶媒に溶解して用いることが好ましく、これにより反応性をより十分に向上できるとともに、ハンドリング性が高い。また、不活性溶媒を用いると除熱効果も期待できる。
【0034】
不活性溶媒としては特に限定はないが、たとえば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;スルホラン、ジメチルスルホンホキシド等のスルホン類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、芳香族炭化水素類が好ましく、より好ましくはトルエンである。
不活性溶媒の使用量としては、特に限定はないが、アルコールを溶解するのに使用する場合には、アルコール100重量部に対して、好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは10〜500重量部、さらに好ましくは10〜400重量部、特に好ましくは10〜300重量部、最も好ましくは10〜200重量部である。不活性溶媒の量がアルコール100重量部に対して1000重量部超であると、付加反応を十分に進行させることができないことがある。一方、不活性溶媒の量が10重量部未満であると、アルコールを十分に溶解することができないことがある。なお、不活性溶媒を使用した場合には、付加反応後に除去することが好ましい。不活性溶媒の除去によって、不活性溶媒の残存に起因する不純物の発生を十分に防ぐことができ、各種物性により優れたアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。溶媒の除去工程については、後述するとおりである。
【0035】
アルキレンオキサイドAの付加反応の終了後は、必要に応じて、触媒を中和および/または除去したり、不活性溶媒を除去したりすると好ましい。
触媒の中和は、触媒が主にアルカリ触媒である場合に限られ、通常の方法により行えばよいが、たとえば、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、アクリル酸、メタクリル酸等の酸を添加して行うことが好ましい。
【0036】
触媒の中和は不活性ガスの雰囲気下で行われると好ましい。不活性ガスとしては、特に限定はないが、たとえば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
触媒の中和時の温度としては、特に限定はないが、好ましくは50〜200℃、より好ましくは50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、特に好ましくは60〜170℃、最も好ましくは60〜160℃である。触媒の中和時の温度が50℃未満であると、中和に要する時間が長くなることがある。一方、触媒の中和時の温度が200℃超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の着色およびアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が促進されることがある。
【0037】
触媒の中和により、上記付加反応により得られる反応生成物のpHが好ましくは4〜10に調整され、さらに好ましくは5〜8、特に好ましくは6〜8である。また、触媒中和の際に、必要に応じて、キノン類やフェノール類等の酸化防止剤を併用することもできる。
中和により生成した中和塩は、さらに固液分離してもよい。中和により生成した中和塩の固液分離の方法としては、濾過や遠心分離等が挙げられる。濾過は、たとえば、濾紙、濾布、カートリッジフィルター、セルロースとポリエステルとの2層フィルター、金属メッシュ型フィルター、金属焼結型フィルター等を用いて、減圧または加圧下で温度20〜140℃の条件下で行うとよい。遠心分離は、たとえば、デカンターや遠心清澄機等の遠心分離器を用いて行うとよい。また、必要に応じて、固液分離前の液100重量部に対して水を1〜30重量部程度添加することもできる。上記固液分離として、特に濾過を行う際には、濾過助剤を使用すると濾過速度が向上するので好適である。
【0038】
濾過助剤としては、特に限定はないが、たとえば、セライト、ハイフロースーパーセル、セルピュアの各シリーズ(Advanced Minerals Corporation製)、シリカ#645、シリカ#600H、シリカ#600S、シリカ#300S、シリカ#100F(中央シリカ社製)、ダイカライト(グレフコ社製)等の珪藻土;ロカヘルプ(三井金属鉱業社製)、トプコ(昭和化学社製)等のパーライト;KCフロック(日本製紙社製)、ファイブラセル(Advanced Minerals Corporation製)等のセルロース系濾過助剤;サイロピュート(富士シリシア化学社製)等のシリカゲル等が挙げられる。これらの濾過助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
濾過助剤は、予め濾紙等のフィルター面に濾過助剤層を形成するプレコート法を用いてもよいし、濾液に直接添加するボディーフィード法を用いてもよいし、これら両方を併用してもよい。濾過助剤の使用量としては、固液分離前の液100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜1.5重量部である。また、濾過処理速度は、濾面の大きさ、減圧度または加圧度、処理湿度等にも依存するが、好ましくは100kg/m・hr以上、より好ましくは300kg/m・hr以上であり、さらに好ましくは、500kg/m・hr以上である。
【0039】
アルカリ触媒の除去については、特に限定はないが、たとえば、アルカリ触媒を吸着剤に吸着させた後、固液分離する方法が好ましい。
吸着剤としては、たとえば、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の珪酸塩、活性白土、酸性白土、シリカゲル、イオン交換樹脂等が挙げられる。市販の吸着剤としては、たとえば、キョーワード600、700(協和化学社製)、ミズカライフP−1、P−1S、P−1G、F−1G(水澤化学社製)、トミタ−AD600、700(富田製薬社製)等の珪酸塩;アンバーリスト(ローム・アンド・ハース社製)やアンバーライト(ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン(三菱化学社製)、ダウエックス(ダウケミカル社製)等のイオン交換樹脂等が挙げられる。これらの吸着剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0040】
吸着剤の使用量は、たとえば、アルカリ触媒100重量部に対して、好ましくは100〜5000重量部、より好ましくは300〜3000重量部である。
アルカリ触媒の除去条件としては、特に限定はないが、たとえば、減圧、常圧または加圧のいずれかの圧力条件下において、吸着剤を温度20〜140℃で5〜120分間攪拌混合した後、アルカリ触媒が吸着された吸着剤を上記固液分離方法により分離する方法や、予めカラム等に吸着剤を充填しておいて、温度20℃〜140℃で反応混合物を通過させてアルカリ触媒を吸着させて、アルカリ触媒を除去する方法等が挙げられる。この際、さらに必要により、反応混合物100重量部に対して、水やエタノールに代表される低級アルコール等の水溶性溶剤を1〜20重量部添加してもよい。
【0041】
アルカリ触媒の除去後の残存量については、特に限定はないが、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。
不活性溶媒の除去は、たとえば、蒸留により行うことが好ましい。
なお、触媒の中和および/または除去と不活性溶媒の除去とを行う場合、各工程の順序は特に限定はなく、たとえば、触媒の中和および/または除去を行った後に、不活性溶媒の除去を行うと、得られるアルキレンオキサイド付加物の精製効率に優れるために好ましい。
【0042】
本発明の製造方法において、未反応で残存するアルコールの含有量としては、特に限定はないが、得られるアルキレンオキサイド付加物100重量部に対して、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.01重量部以下、さらに好ましくは0.001重量部以下、特に好ましくは0.0001重量部以下、最も好ましくは0.00001重量部以下である。未反応で残存するアルコールの含有量が、アルキレンオキサイド付加物100重量部に対して1重量部超であると、臭気が発生することがある。
次に、付加反応工程2を行う場合、付加反応工程1の後に、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して、付加反応させる。付加反応工程2では、付加反応工程1で得られるアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基に対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのうちの1種を付加反応させる。
【0043】
付加反応工程2で用いるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのうちのいずれかであればよいが、プロピレンオキサイドであると、得られる付加物が低温流動性に優れるために好ましい。
付加反応工程2では、1)エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのうちの1種を付加反応工程1で得られる反応混合物そのままに対して供給して付加反応を行ってもよく、また、2)付加反応工程1で得られる反応混合物に対して、上述するように、触媒の中和および/または除去を行ったり、不活性溶媒を除去したりした後処理を済ませてから、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのうちの1種を供給して、付加反応を行ってもよい。
次に、付加反応工程3を行う場合は、付加反応工程2でアルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを付加した場合に限られ、付加反応工程2の後にプロピレンオキサイドを供給して付加反応させる。付加反応工程3では、付加反応工程2でエチレンオキサイドを付加して得られるアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基に対して、プロピレンオキサイドを付加反応させる。
【0044】
付加反応工程3でプロピレンオキサイドを付加すると、得られる付加物が低温流動性に優れるために好ましい。
付加反応工程3では、1)プロピレンオキサイドを付加反応工程2で得られる反応混合物そのままに対して供給して付加反応を行ってもよく、また、2)付加反応工程2で得られる反応混合物に対して、上述するように、触媒の中和および/または除去を行ったり、不活性溶媒を除去したりした後処理を済ませてから、プロピレンオキサイドを供給して、付加反応を行ってもよい。
【0045】
〔アルキレンオキサイド付加物〕
本発明のアルキレンオキサイド付加物は、下記一般式(1):
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (1)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を各々示す。pおよびqは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30およびq=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物である。
【0046】
アルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
【0047】
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A)を各々満足する。
1≦E≦45 (I−A)
51≦EEO−R≦99 (II−A)
1≦EEO−OH≦49 (III−A)
51≦EOH≦99 (IV−A)
【0048】
Rは、上記製造方法で説明したアルコールに由来する基であり、その説明も上述のとおりである。
POはオキシプロピレン基であり、pはオキシプロピレン基の平均付加モル数を表す。オキシプロピレン基の平均付加モル数pとしては、特に限定はないが、通常1〜30、好ましくは1〜25、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜12、最も好ましくは1〜10である。オキシプロピレン基の平均付加モル数が1未満であると、疎水性や基材への相溶性が十分ではないことがある。一方、オキシプロピレン基の平均付加モル数が30超であると、疎水性が強くなりすぎることがある。
【0049】
EOはオキシエチレン基であり、qはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。オキシエチレン基の平均付加モル数qとしては、特に限定はないが、通常1〜50、好ましくは1〜45、より好ましくは1〜40、さらに好ましくは1〜30、特に好ましくは1〜25、最も好ましくは1〜20である。オキシエチレン基の平均付加モル数が1未満であると、親水性や基材への相溶性が十分ではない場合がある。一方、オキシエチレン基の平均付加モル数が50超であると、親水性が強くなりすぎることがある。
[(PO)p/(EO)q]は、pモルのオキシプロピレン基とqモルのオキシエチレン基とがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。このポリオキシアルキレン基の一方の末端は、エーテル結合を介してR基と結合しており、他方の末端は水酸基となっている(以下では、この水酸基を末端水酸基ということがある。)。本発明でランダム付加とは、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基が無秩序に共重合して配列された付加状態になっていることを言う。
【0050】
通常のランダム付加を行った場合は、付加反応の進行とともに、供給されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの比率を、取り立てて変化させることはなく、ほぼ一定値が保たれるので、アルキレンオキサイド付加物のポリオキシアルキレン基のR基側、ポリオキシアルキレン基の末端水酸基側、ポリオキシアルキレン基のR基側および末端水酸基側の中間点等のポリオキシアルキレン基のどの位置であっても、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基のモル比は、ほぼ同一の値となる。
それに対して、本発明のアルキレンオキサイド付加物のポリオキシアルキレン基において、上記モル比に大きな特徴がある。すなわち、本発明のアルキレンオキサイド付加物では、上記製造方法の説明にもあるように、供給されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重量比を経時的に変化させることによって、付加反応の経過と共に形成されるポリオキシアルキレン基内の位置によって、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのモル比が異なる値となる。そして、ポリオキシアルキレン基内の位置に依存するモル比の勾配が生じるようになる。本発明のアルキレンオキサイド付加物において、具体的には、1)アルキレンオキサイド付加物のポリオキシアルキレン基のR基側では、オキシエチレン基のモル比が大きく、2)ポリオキシアルキレン基のR基側からポリオキシアルキレン基の末端水酸基側に近づくにつれてポリオキシプロピレン基のモル比が徐々に大きくなり、そして、3)ポリオキシアルキレン基の末端水酸基側ではオキシプロピレン基のモル比が大きくなる構造となる。
【0051】
本発明のアルキレンオキサイド付加物において、ポリオキシアルキレン基内の位置に依存して、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基のモル比に勾配が生じる場合、上記で説明したランダム化指数E、R基に直接結合しているEO基の百分率EEO−R、末端水酸基に直接結合しているEO基の百分率EEO−OH、およびH−NMRスペクトルのピーク面積より計算される末端水酸基の2級化率EOHは、上記数式(I−A)〜(IV−A)を各々満足する。
ランダム化指数E(%)は、通常1≦E≦45であり、好ましくは1≦E≦40、さらに好ましくは1≦E≦35、特に好ましくは5≦E≦35、最も好ましくは10≦E≦35である。Eの値が小さいほど、ポリオキシアルキレン基内のランダム化率が高いことを示している。Eが1%未満であると、反応が困難となることがある。一方、Eが45%超であると、ランダム付加とは言えず、ブロック付加である。
【0052】
PO−POは、13C−NMRスペクトルにおいてPO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される全ての積分値の和であり、74.3〜76.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
PO2は、13C−NMRスペクトルにおいてPOの2級炭素に帰属される全ての積分値の和であり、72.2〜73.8ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0053】
R基に直接結合しているオキシエチレン基の百分率EEO−R(%)は、通常51≦EEO−R≦99、好ましくは55≦EEO−R≦99、さらに好ましくは60≦EEO−R≦99、特に好ましくは60≦EEO−R≦95、最も好ましくは60≦EEO−R≦90である。EEO−Rが51%未満であると、低起泡性、低粘性に優れない場合がある。一方、EEO−Rが99%超であると、ランダム付加とは言えず、ブロック付加の構造に極めて近い。
は、13C−NMRスペクトルにおいてR基のα位炭素に帰属される全ての積分値の和であり、71.2〜72.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0054】
EO−Rは、13C−NMRスペクトルにおいてR基と直接エーテル結合したオキシエチレン基に帰属される全ての積分値の和であり、69.7〜70.3ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
末端水酸基に直接結合しているEOの百分率EEO−OH(%)は、通常1≦EEO−OH≦49、好ましくは1≦EEO−OH≦45、さらに好ましくは1≦EEO−OH≦40、特に好ましくは1≦EEO−OH≦35、最も好ましくは5≦EEO−OH≦35である。EEO−OHが1%未満であると、ランダム付加とは言えず、ブロック付加の構造に極めて近い。一方、EEO−OHが、49%超であると、低起泡性、低粘性に優れない場合がある。
【0055】
EO−OHは、13C−NMRスペクトルにおいて末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される全ての積分値の和であり、61.0〜63.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
PO−OHは、13C−NMRスペクトルにおいて末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される全ての積分値の和であり、65.0〜67.5ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0056】
末端水酸基の2級化率EOH(%)は、通常51≦EOH≦99、好ましくは55≦EOH≦99、さらに好ましくは60≦EOH≦99、特に好ましくは60≦EOH≦95、最も好ましくは65≦EOH≦95である。EOHが51%未満であると、低起泡性、低粘性に優れない場合がある。一方、EOHが99%超であると、ランダム付加とは言えず、ブロック付加の構造に極めて近い。なお、EOHを求めるためのH−NMRスペクトル測定では、アルキレンオキサイド付加物を無水トリフルオロ酢酸でトリフルオロアセチル化した試料を用いる。
2OHは、H−NMRスペクトルにおいて2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属される全ての積分値の和であり、通常5.1〜5.5ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0057】
1OHは、H−NMRスペクトルにおいて1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属される全ての積分値の和であり、通常4.3〜4.7ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
本発明のアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量としては、特に限定はないが、好ましくは200〜5000、より好ましくは200〜4000、さらに好ましくは200〜3000、特に好ましくは200〜2000、最も好ましくは200〜1500である。重量平均分子量が200未満であると、アルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。
重量平均分子量が5000超であると、ハンドリング性が低いことがある。重量平均分子量の測定方法は、実施例で詳しく説明する。
【0058】
本発明においては、アルキレンオキサイド付加物の曇点の測定方法としては、測定対象のアルキレンオキサイド付加物の曇点範囲に応じて、以下に示す測定方法を選択する。
本発明のアルキレンオキサイド付加物の曇点は、通常、アルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液を調製し加温して一旦液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を曇点とする方法を用いて測定する。上記曇点としては、好ましくは0〜95℃、より好ましくは0〜90℃、さらに好ましくは0〜85℃、特に好ましくは0〜80℃、最も好ましくは0〜75℃の範囲である。上記曇点が0℃未満であると、アルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。一方、上記曇点が95℃超であると、アルキレンオキサイド付加物のハンドリング性が低いことがある。
【0059】
本発明では、上記曇点が40℃未満または80℃超である場合は、曇点が測定不能な場合や、測定可能であっても測定値の信頼性に欠ける場合があるので、上記に示す曇点の測定方法とは異なる以下に示す測定方法を選択し、その測定方法で得られた値を曇点とする。
上記曇点が40℃未満のときは、アルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液が室温で既に濁っていて測定不能な場合がある。そのために、上記曇点が40℃未満の場合は、アルキレンオキサイド付加物の曇点は、以下の実施例で詳しく説明するブチルジグリコール法(BDG法)により測定した値とする。BDG法により測定したアルキレンオキサイド付加物の曇点は、好ましくは0〜95℃、より好ましくは20〜95℃、さらに好ましくは20〜90℃、特に好ましくは20〜85℃、最も好ましくは20〜80℃である。BDG法により測定した曇点が0℃未満であると、アルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。一方、BDG法により測定した曇点が95℃超であると、アルキレンオキサイド付加物のハンドリング性が低いことがある。
【0060】
一方、アルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液の曇点が80℃超の場合は、アルキレンオキサイド付加物の曇点は、以下の実施例で詳しく説明する硫酸カリウム水溶液を溶媒とした方法(硫酸カリ法)により測定した値とする。硫酸カリ法により測定したアルキレンオキサイド付加物の曇点は、好ましくは0〜95℃、より好ましくは20〜95℃、さらに好ましくは20〜90℃、特に好ましくは20〜85℃、最も好ましくは20〜80℃である。硫酸カリ法により測定した曇点が0℃未満であると、アルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。一方、硫酸カリ法により測定した曇点が95℃超であると、アルキレンオキサイド付加物のハンドリング性が低いことがある。
本発明の別のアルキレンオキサイド付加物(以下では、アルキレンオキサイド付加物Bということがある。)は、上記で説明したアルキレンオキサイド付加物(以下では、アルキレンオキサイド付加物Bと区別するために、アルキレンオキサイド付加物Aということがある。)に、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物である。
【0061】
アルキレンオキサイド付加物Bは、
下記一般式(2):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(AO)r−H (2)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、AOはオキシエチレン基およびオキシプロピレン基から選ばれる1種のオキシアルキレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30、q=1〜50およびr=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)で表されるアルキレンオキサイド付加物である。
【0062】
アルキレンオキサイド付加物Aとアルキレンオキサイド付加物Bとの構造上の相違点は、アルキレンオキサイド付加物Aでは、ランダム付加してなるポリオキシアルキレン基が末端となっているのに対して、アルキレンオキサイド付加物Bでは、ランダム付加してなるポリオキシアルキレン基に続いて、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基から選ばれる1種のオキシアルキレン基が平均付加モル数rで付加した(ポリ)オキシアルキレン基が付加した構造となっている点である。この(ポリ)オキシアルキレン基は、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドの付加反応によって得られる。
アルキレンオキサイド付加物Aに対して付加反応するアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのうちのいずれかであればよいが、プロピレンオキサイドであると、低起泡性、低粘性に優れるために好ましい。したがって、一般式(2)のAOとしては、オキシプロピレン基が好ましい。
【0063】
AOの平均付加モル数rは、通常1〜50、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜25、特に好ましくは1〜20、最も好ましくは1〜15である。AOの平均付加モル数が1未満であると、乳化力が十分ではないことがある。一方、AOの平均付加モル数が50超であると、ハンドリング性が低いことがある。
アルキレンオキサイド付加物Bにおいても、ランダム化指数E、R基に直接結合しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基に直接結合しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOH等が上記で説明したアルキレンオキサイド付加物Aと同様に特定の範囲にあるとよい。
【0064】
アルキレンオキサイド付加物Bのランダム化指数E(%)およびR基に直接結合しているEO基の百分率EEO−R(%)は、アルキレンオキサイド付加物Aと同様の範囲が好ましい。
アルキレンオキサイド付加物Bの末端水酸基に直接結合しているEO基の百分率EEO−OH(%)の範囲は、AOがオキシエチレン基であるのか、それとも、オキシプロピレン基であるのかで異なる。
【0065】
AOがオキシエチレン基である場合は、EEO−R(%)は、通常70≦EEO−OH≦100、好ましくは75≦EEO−OH≦100、さらに好ましくは80≦EEO−OH≦100、特に好ましくは85≦EEO−OH≦100、最も好ましくは90≦EEO−OH≦100である。EEO−OHが70%未満であると、乳化力が優れない場合がある。
また、AOがオキシプロピレン基である場合は、EEO−R(%)は、通常0≦EEO−OH≦30、好ましくは0≦EEO−OH≦25、さらに好ましくは0≦EEO−OH≦20、特に好ましくは0≦EEO−OH≦15、最も好ましくは0≦EEO−OH≦10である。EEO−OHが30%超であると、乳化力が優れない場合がある。
【0066】
アルキレンオキサイド付加物Bの末端水酸基の2級化率EOH(%)は、AOがオキシエチレン基であるのか、それとも、オキシプロピレン基であるのかで異なる。
AOがオキシエチレン基である場合は、EOH(%)は、通常0≦EOH≦30、好ましくは0≦EOH≦25、さらに好ましくは0≦EOH≦20、特に好ましくは0≦EOH≦15、最も好ましくは0≦EOH≦10である。EOH(%)が、30%超であると、低温での流動性が優れない場合がある。
【0067】
また、AOがオキシプロピレン基である場合は、EOH(%)は、通常70≦EEO−OH≦100、好ましくは75≦EEO−OH≦100、さらに好ましくは80≦EEO−OH≦100、特に好ましくは85≦EEO−OH≦100、最も好ましくは90≦EEO−OH≦100である。EOH(%)が、70%以下であると、低温での流動性が優れない場合がある。
アルキレンオキサイド付加物Bの重量平均分子量としては、特に限定はないが、たとえば、好ましくは200〜8000、より好ましくは200〜6000、さらに好ましくは200〜4000、特に好ましくは200〜3000、最も好ましくは200〜2000である。アルキレンオキサイド付加物Bの重量平均分子量が、200未満であると、アルキレンオキサイド付加物Bの乳化力が低いことがある。一方、アルキレンオキサイド付加物Bの重量平均分子量が、8000超であると、ハンドリング性に劣ることがある。
【0068】
アルキレンオキサイド付加物Bの曇点については、上記アルキレンオキサイド付加物Aの曇点について説明した範囲と同様である。
本発明のさらに別のアルキレンオキサイド付加物(以下では、アルキレンオキサイド付加物Cということがある。)としては、一般式(2)におけるAOがオキシエチレン基であるアルキレンオキサイド付加物Bに対して、さらにプロピレンオキサイドを供給して付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物である。
【0069】
アルキレンオキサイド付加物Cは、
下記一般式(3):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(EO)r−(PO)s−H (3)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。p、q、rおよびsは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30、q=1〜50、r=1〜50およびs=1〜10である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)で表されるアルキレンオキサイド付加物である。
【0070】
POの平均付加モル数sは、通常1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4、最も好ましくは1〜3である。POの平均付加モル数sが1未満であると、低温流動性に優れないことがある。一方、POの平均付加モル数sが10超であると、乳化力が十分ではないことがある。
アルキレンオキサイド付加物Cにおいても、ランダム化指数E、R基に直接結合しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基に直接結合しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOH等が上記で説明したアルキレンオキサイド付加物Aおよびアルキレンオキサイド付加物Bと同様に特定の範囲にあるとよい。
【0071】
アルキレンオキサイド付加物Cのランダム化指数E(%)およびR基に直接結合しているEO基の百分率EEO−R(%)は、アルキレンオキサイド付加物Aおよびアルキレンオキサイド付加物Bと同様の範囲が好ましい。
アルキレンオキサイド付加物Cの末端水酸基に直接結合しているEO基の百分率EEO−OHは、通常0≦EEO−OH≦30、好ましくは0≦EEO−OH≦25、さらに好ましくは0≦EEO−OH≦20、特に好ましくは0≦EEO−OH≦15、最も好ましくは0≦EEO−OH≦10である。EEO−OHが30%超であると、低温流動性が優れない場合がある。
【0072】
アルキレンオキサイド付加物Cの末端水酸基の2級化率EOH(%)は、通常70≦EEO−OH≦100、好ましくは75≦EEO−OH≦100、さらに好ましくは80≦EEO−OH≦100、特に好ましくは85≦EEO−OH≦100、最も好ましくは90≦EEO−OH≦100である。EOH(%)が、70%以下であると、低温での流動性が優れない場合がある。
アルキレンオキサイド付加物Cの重量平均分子量としては、特に限定はないが、たとえば、好ましくは200〜8000、より好ましくは200〜6000、さらに好ましくは200〜4000、特に好ましくは200〜3000、最も好ましくは200〜2000である。アルキレンオキサイド付加物Cの重量平均分子量が、200未満であると、アルキレンオキサイド付加物Cの乳化力が低いことがある。一方、アルキレンオキサイド付加物Cの重量平均分子量が、8000超であると、ハンドリング性に劣ることがある。
【0073】
アルキレンオキサイド付加物Cの曇点については、上記アルキレンオキサイド付加物Aおよびアルキレンオキサイド付加物Bの曇点について説明した範囲と同様である。
本発明のアルキレンオキサイド付加物は、衣料用液体または粉体洗剤、家庭用洗剤、台所用洗剤、固体洗浄剤、シャンプー等の各種洗浄剤の有効成分として使用することができる。また、本発明のアルキレンオキサイド付加物は、消泡剤、抑泡剤、潤滑剤、繊維油剤、紙薬剤、機械・金属用洗浄剤、脱樹脂剤、脱墨剤、脱脂剤、減水剤、凝集剤、分散剤、乳化重合剤、乳化剤、可溶化剤、懸濁剤、増粘剤、ゲル化剤、帯電防止剤、表面処理剤等や、それらの有効成分として使用することができる。
以下、用途が乳化剤、分散剤、洗浄剤および消泡剤である場合について、詳しく説明する。
【0074】
(乳化剤)
本発明の乳化剤は、上記製造方法で得られるアルキレンオキサイド付加物および/または上記アルキレンオキサイド付加物を、必須成分とする。本発明の乳化剤は、互いに混ざり合わない液体の一方を微粒子状にして他方に分散させる乳化作用を発揮し、一般には可溶化剤としても働く。この乳化作用によってエマルションが得られ、乳化重合等に利用することができる。
互いに混ざり合わない液体の組合せとしては、たとえば、水と、油性物等の液体有機物との組合せを挙げることができる。この場合、乳化剤を用いて得られるエマルションは、O/W型でもよく、W/O型でもよい。
【0075】
液体有機物は、天然由来でも合成由来でもそれらの混合物でもよく、さらには親水性、親油性のいずれでもよい。
上記親油性の液体有機物としては、特に限定はないが、たとえば、オレンジ油、松根油、はっか油、ユーカリ油、レモン油、ちょうじ葉油、ベルガモット油、ローズマリー油、パッチュリ油、ばら油、メントール油、ペパーミント油、ラベンダー油、ピネン、リモネン、ミルセン、ヘプタナール、オクタナール、シクラメンアルデヒド、イソブチルアセテート、アニソール、メントン等の香料;ジメチルシリコーン、アミノシリコーン、エポキシシリコーン、カルボキシルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等のシリコーン;アスファルト、ケロシン、ワセリン、ミネラルターペン、スピンドル油、ガソリン、流動パアフィン、マシン油、ナフテン油、ナフサ等の鉱物油;牛脂、ラード、コーン油、ダイズ油、なたね油、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油、ヤシ油等の動植物油;ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、シクロヘキサン、トリクロロフルオロエタン等の有機溶剤;ステアリン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル;ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
【0076】
本発明の乳化剤は、上記で説明したアルキレンオキサイド付加物以外のその他の界面活性剤を含んでいてもよい。その他の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれかで構成されるものであればよく、1種または2種以上を併用してもよい。このようなその他の界面活性剤の具体例を以下の洗浄剤の説明で示す。
本発明の乳化剤は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム等の水溶性高分子;エタノール、エチレングリコール等のハイドロトロープ剤;リン酸、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、塩酸、硫酸等の酸等をさらに含んでもよい。
【0077】
本発明の乳化剤に含まれる上記で説明したアルキレンオキサイド付加物の配合割合については、特に限定はないが、好ましくは乳化剤全体の5〜100重量%、より好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは40〜100重量%、最も好ましくは40〜95重量%である。乳化剤に含まれるアルキレンオキサイド付加物の配合割合が5重量%未満であると、乳化作用が十分に発揮できない場合がある。
本発明の乳化剤を配合して得られるエマルション中の本発明の乳化剤の配合割合については、特に限定はないが、好ましくはエマルション全体の1〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは5〜30重量%、最も好ましくは5〜20重量%である。本発明の乳化剤の配合割合が1重量%未満であると、乳化剤が少なすぎて、乳化効果が得られないことがある。一方、本発明の乳化剤の配合割合が50重量%超であると、多量の配合量に見合った乳化効果が得られず、経済的に不利なことがある。
【0078】
本発明の乳化剤の用途としては、特に限定はないが、たとえば、乳化重合用途;部屋、トイレ、車等で使用される芳香剤用途;シャンプー、リンス、パーマ等の化粧品用途;カーワックス、洗車機用ワックス、タイヤ・レザーワックス、コーティング剤、バンパーワックス等のポリッシュ用途;タイヤのブラダーとインナライナーとの間の離型用、アルミニウムダイキャスト用、サンダル、紳士靴、婦人靴、運動靴底のウレタンソール用、食品包装用プラスチック用等の離型用途;潤滑剤用途;コーティング剤用途;合成樹脂用途;ゴム工業用途;洗剤工業用途;金属加工用途;消泡剤用途;建築用途;塗料用途;農薬用途等として利用される。
本発明の乳化剤を乳化重合用途に用いる場合に使用される各種単量体としては、特に限定はないが、たとえば、エチレン、プロピレン、アセチレン、ブタジエン等の炭化水素系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド等のマレイミド系単量体等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0079】
(分散剤)
本発明の分散剤は、上記製造方法で得られるアルキレンオキサイド付加物および/または上記アルキレンオキサイド付加物を、必須成分とする。本発明の分散剤は、各種粉末と混合して、その分散性を高める。
上記各種粉末としては、無機化合物、有機化合物、無機化合物/有機化合物の混合物のいずれかで構成される粉末であればよく、特に限定はないが、たとえば、カーボンブラック;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリン;タルク、パイロフィライト、マイカ、マーガライト、クリントナイト、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母、パラゴライト、フロゴパイト、レピドライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等のフィロ珪酸塩;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石等;セピヲライト、パリゴルスカイト等のピオライト−パリゴスカイト;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト;オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ドデカン酸カリウム、ドデカン酸ナトリウム、牛脂硬化脂肪酸ナトリウム、牛脂硬化脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム等の脂肪酸石鹸、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等の金属石鹸;パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、みつろう、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、硬化ひまし油、12−ヒドロキシステアリン酸等のワックス;スミチオン;パラチオン;メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(例えば、シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;フッ素系樹脂(ETFE,PVDF);ポリスチレン樹脂、クロロポリスチレン樹脂、ポリ−α−メチルスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体);エチレン−酢酸ビニル系樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ロジン変性マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリブタジエン;アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂;シリコーン樹脂;ケトン樹脂;キシレン樹脂;ポリビニルブチラール樹脂;ポリアミド樹脂;変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等から構成される粉末が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0080】
各種粉末の平均粒子径については、特に限定はないが、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは0.1〜50μm、特に好ましくは0.1〜40μm、最も好ましくは0.1〜30μmである。各種粉末の平均粒子径が200μm超であると、分散効果が優れない場合がある。
各種粉末の比重については、特に限定はないが、好ましくは0.5〜5、より好ましくは0.5〜4.5、さらに好ましくは0.5〜4、特に好ましくは0.6〜3.5、最も好ましくは0.7〜3である。各種粉末の比重が0.5未満であると、分散効果が優れないことがある。一方、各種粉末の比重が5超であると、分散効果が優れないことがある。
【0081】
本発明の分散剤の配合割合としては、特に限定はないが、たとえば、各種粉末100重量部に対して、好ましくは1〜70重量部、より好ましくは1〜60重量部、さらに好ましくは5〜60重量部、特に好ましくは5〜50重量部、さらに特に好ましくは5〜40重量部、最も好ましくは5〜30重量部である。分散剤の配合割合が1重量部未満であると、分散剤が少なすぎて、分散効果が得られないことがある。一方、分散剤の配合割合が70重量部超であると、多量の配合量に見合った分散効果が得られず、経済的に不利なことがある。
【0082】
(洗浄剤)
本発明の洗浄剤は、上記製造方法で得られるアルキレンオキサイド付加物および/または上記アルキレンオキサイド付加物を、必須成分とする。
本発明の洗浄剤は、水系で使用する際の水分散性が良好という理由から、水をさらに含んでいてもよい。水の配合割合については、特に限定はないが、アルキレンオキサイド付加物100重量部に対して、好ましくは1〜100000重量部、より好ましくは10〜100000重量部、さらに好ましくは50〜100000重量部、特に好ましくは100〜100000重量部、最も好ましくは100〜10000重量部である。水の配合割合が1重量部未満であると、ハンドリング性に劣ることがある。一方、水の配合割合が、100000重量部超であると、洗浄力が低下することがある。
【0083】
本発明の洗浄剤は、上記で説明したアルキレンオキサイド付加物以外のその他の界面活性剤を含んでいてもよい。その他の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれかで構成されるものであればよく、1種または2種以上を併用してもよい。
このようなその他の界面活性剤である非イオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル;等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー;5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド付加物(付加モル数37〜43)、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド(付加モル数7〜13)/プロピレンオキサイド(付加モル数37〜43)ブロック型付加物、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド(付加モル数17〜23)/プロピレンオキサイド(付加モル数17〜23)ランダム型付加物等のポリオキシアルキレンアセチレンジオールエーテル等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0084】
このようなその他の界面活性剤である陰イオン性界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩;ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ無水マレイン酸、マレイン酸とイソブチレンとの共重合物、無水マレイン酸とイソブチレンとの共重合物、マレイン酸とジイソブチレンとの共重合物、無水マレイン酸とジイソブチレンとの共重合物、アクリル酸とイタコン酸との共重合物、メタアクリル酸とイタコン酸との共重合物、マレイン酸とスチレンとの共重合物、無水マレイン酸とスチレンとの共重合物、アクリル酸とメタアクリル酸との共重合物、アクリル酸とアクリル酸メチルエステルとの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合物、アクリル酸とマレイン酸との共重合物、アクリル酸と無水マレイン酸との共重合物のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のポリカルボン酸塩;ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のナフタレンスルホン酸塩;メラミンスルホン酸、アルキルメラミンスルホン酸、メラミンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルメラミンスルホン酸のホルマリン縮合物、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のメラミンスルホン酸塩等;リグニンスルホン酸、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のリグニンスルホン酸塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
このようなその他の界面活性剤である陽イオン性界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0085】
このようなその他の界面活性剤である両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
また、本発明の洗浄剤は、二トリロ三酢酸塩、クエン酸塩、ポリアクリル酸塩等のキレート剤;炭酸塩、珪酸塩などの無機ビルダー;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ化合物;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン;エタノール、エチレングリコール等のハイドロトロープ剤;酵素;蛍光剤;色素;香料;除菌剤;防腐剤;保湿剤;増粘剤等のその他成分をさらに含んでもよい。その他成分を配合する場合は、洗浄剤が液体洗浄剤であると、洗浄剤を構成する各成分の相溶性がよく、洗浄力が向上する場合があるために好ましい。
【0086】
本発明の洗浄剤は、目的に応じて種々の対象の洗浄に使用できる。洗浄対象としては、特に限定はないが、たとえば衣服等を洗浄する衣料用洗浄剤;頭髪、皮膚、爪、目な洗浄する頭髪用または身体用洗浄剤;食器、調理器具、野菜などを洗浄する台所用洗浄剤;壁、床、畳、家具、天井、屋根などを洗浄する住居用洗浄剤;トイレ、浴槽、浴室、換気扇、レンジ周り、流し台周り等を洗浄する硬質表面洗浄剤;自動食器洗浄機用洗浄剤;繊維用洗浄剤;自動車、航空機、車両、機械部品等を洗浄する工業用洗浄剤等が挙げられる。
【0087】
(消泡剤)
本発明の消泡剤は、上記アルキレンオキサイド付加物および/または上記製造方法で得られるアルキレンオキサイド付加物を、必須成分とする。特に、上記アルキレンオキサイド付加物の中でもアルキレンオキサイド付加物Bおよびアルキレンオキサイド付加物Cが消泡性に優れるので好ましい。さらには、アルキレンオキサイド付加物Bにおいては、一般式(2)におけるAOがオキシプロピレン基であると、特に消泡性に優れるので好ましい。
本発明の消泡剤は、水系で使用する際の水分散性が良好という理由から、水をさらに含んでいてもよい。水の配合割合については、特に限定はないが、アルキレンオキサイド付加物100重量部に対して、好ましくは1〜100000重量部、より好ましくは10〜100000重量部、さらに好ましくは50〜100000重量部、特に好ましくは100〜100000重量部、最も好ましくは100〜10000重量部である。水の配合割合が1重量部未満であると、ハンドリング性に劣ることがある。一方、水の配合割合が、10000重量部超であると、消泡力が低下することがある。
【0088】
本発明の消泡剤は、有機溶剤、鉱物油、シリコーン、動植物油等その他の公知の消泡剤等のその他成分をさらに含んでもよい。
本発明の消泡剤の使用用途としては、特に限定はないが、たとえば、アミノ酸発酵、カルボン酸発酵、酵素発酵、抗生物質発酵等の発酵工業用途;紙パルプ製造工業;建築工業;染料工業;染色工業;ゴム工業;合成樹脂工業;インキ工業;塗料工業;繊維工業等に使用することができる。
本発明の消泡剤を使用する際、消泡することが必要な水性媒体に対する配合割合については特に限定はないが、たとえば、水性媒体100重量部に対して通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.001〜1重量部、特に好ましくは0.01〜1重量部、最も好ましくは0.01〜0.1重量部である。水性媒体に対する配合割合が0.0001重量部未満であると、消泡力に劣ることがある。水性媒体に対する配合割合が10重量部超であると、ハンドリング性に劣ることがある。
【実施例】
【0089】
以下に、アルキレンオキサイド付加物の実施例を、その比較例とともに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
13C−NMR法〕
測定試料約30mgを直径5mmのNMR用試料管に秤量し、重水素化溶媒として約0.5mlの重水素化クロロホルムを加え溶解させて、13C−NMR測定装置(BRUKER社製AVANCE400,100MHz)で測定した。
【0090】
H−NMR法および2級化率算出方法]
測定試料約30mgを直径5mmのNMR用試料管に秤量し、重水素化溶媒として約0.5mlの重水素化クロロホルムを加え溶解させる。その後、約0.1mlの無水トリフルオロ酢酸を添加し、分析用試料とし、H−NMR測定装置(BRUKER社製AVANCE400,400MHz)で測定した。
【0091】
〔重量平均分子量〕
アルキレンオキサイド付加物を不揮発分濃度が約0.2質量%濃度となるようにテトラヒドロフランに溶かした後、以下の測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定した。次いで、分子量既知のポリエチレングリコールのGPC測定結果から、検量線を作成し、重量平均分子量を算出した。
(測定条件)
機器名:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:KF−G、KF−402HQ、KF−403HQ各1本ずつを直列に連結(いずれもShodex社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
注入量:10μl
溶離液の流量:0.3ml/分
温度:40℃
【0092】
〔曇点の測定〕
アルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液を調製し、加温して一旦液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度Tを測定した。ここで、T=40〜80℃の範囲にある場合は、アルキレンオキサイド付加物の曇点とした。
実施例8および10、比較例9および11のアルキレンオキサイド付加物では、上記温度範囲を満足したので、冷却して濁りが無くなる温度Tをそのまま曇点とした。
実施例1〜7および比較例1〜8のアルキレンオキサイド付加物では、Tが40℃未満であったので、以下のブチルジグリコール法(BDG法)により測定した値を曇点とする。また、実施例9および11、比較例10および12では、Tが80℃超であったので、以下の硫酸カリウム水溶液を溶媒とした方法(硫酸カリ法)により測定した値を曇点とした。
【0093】
(BDG法)
n−ブチルジグリコール(別名:2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル)の25重量%水溶液にアルキレンオキサイド付加物を添加して曇点試験液を調製した。その際、曇点試験液中のアルキレンオキサイド付加物の濃度が10重量%となるように調整した。次いで、加温して一旦曇点試験液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を曇点とした。
【0094】
(硫酸カリ法)
硫酸カリウムの5重量%水溶液にアルキレンオキサイド付加物を添加して曇点試験液を調製した。その際、曇点試験液中のアルキレンオキサイド付加物の濃度が1重量%となるように調整した。次いで、加温して一旦曇点試験液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を曇点とした。
【0095】
〔実施例1〕
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給ラインを各々接続した1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給開始した。エチレンオキサイドでは、70g/hの供給速度から供給を開始して、徐々に供給量を減少させて、最終10g/hの供給速度で供給を完了し、約170分間で総量166gを供給した。また、プロピレンオキサイドでは、10g/hの供給速度で供給を開始し、徐々に供給量を増加させて、最終65g/hの供給速度で供給を完了し、約170分間で総量94gを供給した。
【0096】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]T0は0.14であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]T100は6.5であった。エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給は、1.0≦[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<1.2の条件を満たしていた。実施例1で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示す概略図を図1に示す。図1からは、供給時間と重量比[PO/EO]とは、一次関数の関係にあることが分かる。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
【0097】
得られたアルキレンオキサイド付加物のプロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、エチレンオキサイド付加モル数(p)は7であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル(図4)およびH−NMRスペクトル(図5)の積分値を読み取り、NPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OH、N2OHは、各々4.78、0.64、0.89、1.26、0.09、1.00、0.08、1.00であった。これらの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々11.8、70.6、8.3、92.6であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は683であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1重量%濃度水溶液を調製したが、既に室温で濁っていたので、BDG法で測定して曇点57℃であった。
【0098】
〔実施例2〜6〕
実施例2〜6では、実施例1において、表1に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様にアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
〔実施例7〕
0.5Lの混合槽を接続した1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの混合液を3回に分けて混合槽で作製して供給した。まず、1回目には、エチレンオキサイド65gおよびプロピレンオキサイド12gを混合した液を60分間で供給した。次に、2回目には、エチレンオキサイド35gおよびプロピレンオキサイド30gを混合した液を40分間で供給し、最後の3回目には、エチレンオキサイド18gおよびプロピレンオキサイド68gを混合した液を55分間で供給した。供給したエチレンオキサイドの総量は118gであり、供給したプロピレンオキサイドの総量は110gであった。エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給に要した総時間は155分間であった。
【0101】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]T0は0.18であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]T100は3.80であった。エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給は、1.0≦[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<10の条件を満たしていた。実施例7で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示す概略図を図2に示す。図2からは、供給時間と重量比[PO/EO]とは、階段関数の関係にあることが分かる。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
【0102】
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々13.5、69.4、9.1、91.3であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は676であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1重量%濃度水溶液を調製したが、既に室温で濁っていたので、BDG法で測定して曇点56℃であった。
【0103】
〔実施例8〕
1Lのオートクレーブに、実施例1で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約40分間でプロピレンオキサイド51gを供給した。
【0104】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、プロピレンオキサイド付加モル数(r)は2であった。
【0105】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々11.8、70.6、1.8、97.6であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は798であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して72℃であった。
【0106】
〔実施例9〕
1Lのオートクレーブに、実施例1で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約80分間でエチレンオキサイド189gを供給した。
【0107】
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、エチレンオキサイド付加モル数(r)は7であった。
【0108】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々26.1、34.8、98.9、2.1であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は977であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液を調製して測定したが80℃超でも濁らなかったので、硫酸カリ法で測定して曇点67℃であった。
【0109】
〔実施例10〕
1Lのオートクレーブに、実施例5で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約60分間でプロピレンオキサイド22gを供給した。
【0110】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は9であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、プロピレンオキサイド付加モル数(r)は1であった。
【0111】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々12.5、71.1、1.5、98.1であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は853であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して68℃であった。
【0112】
〔実施例11〕
1Lのオートクレーブに、実施例9で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約50分間でプロピレンオキサイド18gを供給した。
【0113】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、エチレンオキサイド付加モル数(r)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(s)は1であった。
【0114】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々26.1、34.8、1.5、98.8であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は1029であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液を調製して測定したが80℃超でも濁らなかったので、硫酸カリ法で測定して曇点66℃であった。
【0115】
〔比較例1〕
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給開始した。エチレンオキサイドでは、51g/hの供給速度を維持して供給し、約170分間で総量165gを供給した。プロピレンオキサイドでは、35g/hの供給速度を維持して供給し、約170分間で総量93gを供給した。
【0116】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]T0は0.69であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]T100は0.69であった。比較例1で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[PO/EO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示す概略図を図3に示す。図3からは、供給時間とは無関係に重量比[PO/EO]は一定値にあることが分かる。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
【0117】
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は3であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は7であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々19.7、53.2、51.3、52.7であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は682であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1重量%濃度水溶液を調製したが、既に室温で濁っていたので、BDG法で測定して曇点57℃であった。
【0118】
〔比較例2〜6〕
比較例2〜6では、比較例1において、表2に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、比較例1と同様にアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ得て、物性等も比較例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
〔比較例7〕
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、約150分間でエチレンオキサイド118gを供給した。内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約150分間でプロピレンオキサイド110gを供給した。
【0121】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物はEOとPOのブロック付加体であり、エチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であった。
【0122】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々49.5、100.0、98.9、0であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は678であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1重量%濃度水溶液を調製したが、既に室温で濁っていたので、BDG法で測定して曇点55℃であった。
【0123】
〔比較例8〕
1Lのオートクレーブに、デカノール(分子量159)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、約150分間でエチレンオキサイド138gを供給した。内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約150分間でプロピレンオキサイド109gを供給した。
【0124】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物はEOとPOのブロック付加体であり、エチレンオキサイド付加モル数(p)は3であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は2であった。
【0125】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々50.3、100.0、99.1、0であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は414であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1重量%濃度水溶液を調製したが、既に室温で濁っていたので、BDG法で測定して曇点51℃であった。
【0126】
〔比較例9〕
1Lのオートクレーブに、比較例1で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約40分間でプロピレンオキサイド51gを供給した。
【0127】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、プロピレンオキサイド付加モル数(r)は2であった。
【0128】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々20.2、53.5、0.3、99.0であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は795であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して77℃であった。
【0129】
〔比較例10〕
1Lのオートクレーブに、比較例1で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約80分間でエチレンオキサイド189gを供給した。
【0130】
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、エチレンオキサイド付加モル数(r)は7であった。
【0131】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々11.8、70.6、100、0であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は980、であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液を調製して測定したが80℃超でも濁らなかったので、硫酸カリ法で測定して曇点68℃であった。
【0132】
〔比較例11〕
1Lのオートクレーブに、比較例5で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約60分間でプロピレンオキサイド22gを供給した。
【0133】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は9であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、プロピレンオキサイド付加モル数(r)は1であった。
【0134】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々20.8、72.1、1.9、98.4であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は852であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して65℃であった。
【0135】
〔比較例12〕
1Lのオートクレーブに、比較例10で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約50分間でプロピレンオキサイド18gを供給した。
【0136】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は3であり、エチレンオキサイド付加モル数(r)は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数(s)は1であった。
【0137】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々11.8、70.6、1.4、98.9であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は1029であった。曇点については、まず、アルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液を調製して測定したが80℃超でも濁らなかったので、硫酸カリ法で測定して曇点66℃であった。
実施例1〜11で得られた本発明のアルキレンオキサイド付加物および比較例1〜12で得られたアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ用いて、下記の方法で、低温流動点(低温流動性)、乳化力および水溶液粘度(低粘性)を評価した。
【0138】
〔低温流動点の測定(低温流動性)〕
JIS K2269の方法に準拠した手法を用いて測定した。すなわち、試験管にとった45mlのアルキレンオキサイド付加物を45℃に加温し、次いで寒剤を用いた冷却浴で冷却した。2.5℃下がるごとに試験管を冷却浴から取り出し、アルキレンオキサイド付加物が5秒間全く動かなくなったときの温度を読み取り、その値に2.5℃を加えて低温流動点とした。低温流動点の値が小さいほど低温流動性に優れる。
【0139】
〔乳化力の測定〕
キシレン40g、水56gにアルキレンオキサイド付加物4gを添加し、室温でTKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い4500rpm、5分間撹拌乳化した。作製した乳化物を50℃雰囲気下で1時間静置後の乳化層、離水層を測定して乳化性能を評価した。乳化力は下記する式により計算され、乳化力の値が大きいほど乳化力に優れる。
乳化力(%)=(仕込水量―離水量)(ml)/仕込水量(ml)×100
【0140】
〔水溶液粘度の測定(低粘性)〕
50重量%のアルキレンオキサイド付加物を調製し、25℃雰囲気下でB型粘度計((株)東京計器製:BL型)を用いて測定した。水溶液粘度の値が小さいほど低粘性に優れる。
評価結果を表3に示す。実施例1および7のアルキレンオキサイド付加物は比較例1および7のそれと基本構造が対応する。実施例3のアルキレンオキサイド付加物は比較例3および8に対応し、実施例2および4〜6は各々比較例2および4〜6に対応する。
【0141】
【表3】

【0142】
以上の評価結果から、実施例1および7では、比較例1よりも低温流動性および低粘性に優れ、かつ比較例7よりも乳化力に優れる。実施例3では、比較例3よりも低温流動性および低粘性に優れ、かつ比較例8よりも乳化力に優れる。実施例2および4〜6では、各々対応する比較例2および4〜6よりも低温流動性および低粘性に優れる。実施例8〜11では、各々対応する比較例9〜12よりも低温流動性および低粘性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A):
ROH (A)
(Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。)
で表されるアルコールに対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給して付加反応させる工程を含む、アルキレンオキサイド付加物の製造方法であって、
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給開始時をT0、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給終了時をT100とし、T0とT100との間の時間T1およびT2が、T0<T1<T2<T100および(T2−T1)/T100=0.01の関係にあるとき、
T0、T100、T1、T2の各々の時点で供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を、[PO/EO]T0、[PO/EO]T100、[PO/EO]T1および[PO/EO]T2として、下記数式(B)〜(D):
0<[PO/EO]T0<1 (B)
1<[PO/EO]T100<100 (C)
0.8<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<10 (D)
を同時に満足する、アルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項2】
下記数式(B−1)および(C−1):
0.1<[PO/EO]T0<0.5 (B−1)
2<[PO/EO]T100<20 (C−1)
をさらに満足する、請求項1に記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項3】
下記数式(D−1):
0.9<[PO/EO]T2/[PO/EO]T1<1.2 (D−1)
をさらに満足する、請求項1または2に記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項4】
前記工程後に、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれかにアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項5】
前記アルキレンオキサイドがプロピレンオキサイドである、請求項4に記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(1):
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (1)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を各々示す。pおよびqは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30およびq=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物であって、
前記アルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A):
1≦E≦45 (I−A)
51≦EEO−R≦99 (II−A)
1≦EEO−OH≦49 (III−A)
51≦EOH≦99 (IV−A)
を各々満足する、アルキレンオキサイド付加物。
【請求項7】
p=1〜10およびq=1〜30である、請求項6に記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項8】
前記Rの炭素数が8〜20である、請求項6または7に記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項9】
重量平均分子量が200〜5000である、請求項6〜8のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項10】
ブチルジグリコール法(BDG法)により測定される曇点が0〜95℃である、請求項6〜9のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項11】
下記数式(I−B)〜(IV−B):
10≦E≦35 (I−B)
60≦EEO−R≦90 (II−B)
5≦EEO−OH≦35 (III−B)
65≦EOH≦95 (IV−B)
をさらに満足する、請求項6〜10のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物に、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、
下記一般式(2):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(AO)r−H (2)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、AOはオキシエチレン基およびオキシプロピレン基から選ばれる1種のオキシアルキレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30、q=1〜50およびr=1〜50である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物。
【請求項13】
前記AOがオキシプロピレン基である、請求項12に記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項14】
請求項12に記載され前記AOがオキシエチレン基であるアルキレンオキサイド付加物に、プロピレンオキサイドを供給して付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物であって、
下記一般式(3):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(EO)r−(PO)s−H (3)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。p、q、rおよびsは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜30、q=1〜50、r=1〜50およびs=1〜10である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35832(P2013−35832A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154726(P2012−154726)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】