説明

アルキレンオキサイド付加物の製造方法

【課題】 優れた乳化性を有するアルキレンオキサイド付加物を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】 アルキレンオキサイド付加物の製造方法は、アルキレンオキサイドAOおよびアルキレンオキサイドAOを供給して付加反応させる工程1を含む方法である。AOの炭素数はAOの炭素数よりも小さく、Ts、Tf、T1、T2の各々の時点で供給されるAOおよびAOとの重量比を、[AO/AO]Ts、[AO/AO]Tf2、[AO/AO]T1および[AO/AO]T2として、下記数式を同時に満足する。
0<[AO/AO]Ts<1 (A)
1<[AO/AO]Tf2<100 (B)
0.8<[AO/AO]T2/[AO/AO]T1<10 (C)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレンオキサイド付加物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、活性水素含有化合物に対して、複数のアルキレンオキサイドを供給して付加反応させる工程を含むアルキレンオキサイド付加物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール類等の活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドを付加させてなるアルキレンオキサイド付加物は、洗浄剤、乳化剤、分散剤、油相成分調整剤、浸透剤、ポリマー原料等の様々な用途で有用で汎用されている。
代表的なアルキレンオキサイド付加物であるエチレンオキサイド付加物は、洗浄剤、乳化剤、分散剤、油相成分調整剤、浸透剤等の様々な産業用途で界面活性剤として使用されている。しかし、エチレンオキサイド付加物は乳化・分散性能に優れるが、凝固点が高く低温安定性が悪いといった欠点がある。
【0003】
これらの欠点を改良するために、複数のアルキレンオキサイドの共重合付加物が提案されてきた。このような共重合付加物の代表的なものとして、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合付加物がある。一般的に、ポリオキシエチレン鎖中にプロピレンオキサイドを導入すると、低温での流動性や安定性が向上し、低起泡性が発現する等のメリットが生じる。しかしながら、一方、ポリオキシエチレン鎖中にプロピレンオキサイドを導入することで、エチレンオキサイド付加物に比べて乳化性や増粘性能が低下するといったデメリットも生じることが知られている。
このエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合付加物の性能最適化のために、様々な構造設計が検討されてきている。たとえば、特許文献1には、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加物;特許文献2には、アルコールに対して最初にエチレンオキサイド、次いでプロピレンオキサイドの順に付加させて得られるブロック付加物;特許文献3には、アルコールに対して最初にプロピレンオキサイド、次いでエチレンオキサイドの順に付加させて得られるブロック付加物;特許文献4には、アルコールに対して最初にエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加を行い、次にエチレンオキサイドのブロック付加物;特許文献5には、アルコールに対して最初にエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加を行い、次にエチレンオキサイドを付加を行い、さらにプロピレンオキサイドを付加させて得られるブロック付加物;特許文献6には、アルコールに対して最初にエチレンオキサイド、次いでプロピレンオキサイドの付加を行い、次いでエチレンオキサイドを付加させて得られるブロック付加物等が開示されている。
【0004】
しかしながら、これらのエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合付加物は、低起泡性、乳化性、分散性、増粘性等のいずれの要求特性をも十分に満足するものではない。また、特許文献5および6の構造物に関しては、反応プロセスが多段階で製造時間が長い、といった製造上の問題もあった。また、特許文献7には、水および溶剤を含有した均一透明性に優れた流動性の良い高級アルコール系アルキレンオキサイド付加物中間体組成物が提案されているが、性能に直接寄与しない水または溶剤類が混入するので好ましくない。
このように、特許文献1〜7のアルキレンオキサイド付加物では、乳化性やその製造について種々の問題があるが、従来のアルキレンオキサイド付加物を使用せざるを得ないというのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−303825号公報
【特許文献2】特公昭63−12192号公報
【特許文献3】特開昭53−58508号公報
【特許文献4】特開平10−46189号公報
【特許文献5】特開平10−130690号公報
【特許文献6】特開平10−195499号公報
【特許文献7】特開昭51−13394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた乳化性を有するアルキレンオキサイド付加物を簡便に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、活性水素含有化合物に対して複数のアルキレンオキサイドを供給して付加反応させる工程において、複数のアルキレンオキサイドの重量比を変化させ、ある一定の範囲内に制御することによって上記課題を解決するという知見が得られ、本発明を完成した。
本発明にかかるアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、活性水素含有化合物に対して、アルキレンオキサイドAOおよびアルキレンオキサイドAOを供給して付加反応させる工程1を含む、アルキレンオキサイド付加物の製造方法であって、
【0008】
Oの炭素数はAOの炭素数よりも小さく、
OおよびAOの供給開始時をTs、AOの供給終了時をTf、AOの供給終了時をTfとし、TsとTfとの間にあり且つTsとTfとの間にある時間T1およびT2が、Ts<T1<T2<Tf≦Tfおよび(T2−T1)/Tf=0.01の関係にあるとき、
【0009】
Ts、Tf、T1、T2の各々の時点で供給されるAOおよびAOとの重量比を、[AO/AO]Ts、[AO/AO]Tf2、[AO/AO]T1および[AO/AO]T2として、下記数式(A)〜(C):
0<[AO/AO]Ts<1 (A)
1<[AO/AO]Tf2<100 (B)
0.8<[AO/AO]T2/[AO/AO]T1<10 (C)
を同時に満足する。
【0010】
アルキレンオキサイド付加物の製造方法が下記(1)〜(6)のうちの少なくとも1つの要件を満足すると好ましい。
(1)下記数式(A−1)および/または(B−1)をさらに満足する。
0.1<[AO/AO]Ts<0.5 (A−1)
2<[AO/AO]Tf2<20 (B−1)
(2)下記数式(C−1)をさらに満足する。
0.9<[AO/AO]T2/[AO/AO]T1<1.2 (C−1)
(3)AOがエチレンオキサイドであり、AOがプロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種である。
【0011】
(4)前記活性水素含有化合物が、アルコール類、フェノール類、アミン類、カルボン酸類およびアミド類から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。
(5)前記付加反応を触媒の存在下で行う。
(6)前記工程1の後に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程2をさらに含む。
上記(6)において、前記工程2の後に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程3をさらに含むとさらに好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、優れた乳化性を有するアルキレンオキサイド付加物を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で供給されたAOおよびAОとの重量比[AO/AО]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示すグラフである。
【図2】実施例11で供給されたAOおよびAОとの重量比[AO/AО]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示すグラフである。
【図3】比較例1で供給されたAOおよびAОとの重量比[AO/AО]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法は、活性水素含有化合物に対して、アルキレンオキサイドAOおよびアルキレンオキサイドAO(ここで、AOの炭素数はAOの炭素数よりも小さい。)を供給して付加反応させる工程1を含む製造方法である。以下では、簡単のために、「AОおよびAO」を「アルキレンオキサイドA」ということがある。
また、上記工程1の後に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程2をさらに含むとよい。上記工程2の後に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程3をさらに含むとよい。
【0015】
〔工程1〕
本発明の製造方法における活性水素含有化合物としては、たとえば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基等の活性水素基を分子中に1個以上有する化合物であればよい。活性水素含有化合物としては、たとえば、アルコール類、フェノール類、アミン類、カルボン酸類、アミド類等が挙げられ、これらの化合物を1種または2種以上を併用してもよい。
上記アルコール類としては、特に限定はないが、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、へキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノールおよびトリアコサノール等の直鎖アルカノール;2−エチルへキサノール、2−プロピルヘプタノール、2−ブチルオクタノール、1−メチルヘプタデカノール、2−ヘキシルオクタノール、1−ヘキシルヘプタノール、イソデカノール、イソトリデカノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール等の分岐アルカノール;ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、へキサデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール、エイセノール、ドコセノール、テトラコセノール、ペンタコセノール、ヘキサコセノール、ヘプタコセノール、ヘプタコセノール、オクタコセノール、ノナコセノールおよびトリアコンセノール等の直鎖アルケノール;イソヘキセノール、2−エチルへキセノール、イソトリデセノール、1−メチルヘプタデセノール、1−ヘキシルヘプテノール、イソトリデセノールおよびイソオクタデセノール等の分岐アルケノール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;ブチルエチルプロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,6−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール等の炭素数4〜20のアルカンジオール;ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸とのモノまたはジエステル化物、β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール類;トリメチロールエタン、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、果糖、ショ糖、デキストロース、フラクトース、メチルグルコシド、ヒドロキシエチルグルコキシド、ひまし油、硬化ひまし油等の3価以上のアルコール類;ポリビニルアルコール;これらの上記化合物が有する酸素原子の1個以上が硫黄原子に置換したチオアルコール類等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記フェノール類としては、特に限定はないが、たとえば、フェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ジノニルフェノール、ナフトール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、トリフェノール、テトラフェノール、ノボラック、レゾール、レゾルシン、マンニッヒ化合物等;これらの上記化合物が有する酸素原子の1個以上が硫黄原子に置換したチオフェノール類等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
上記アミン類としては、特に限定はないが、たとえば、アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンおよびブタノールアミン等のアルカノールアミン;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクタデシルアミン、ラウリルアミン、エイコシルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、パーム油アミン、大豆油アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、2−エチルヘキシルメチルアミン、メチルオクタデシルアミンおよびオクタデシルエチルアミン等のジアルキルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン等の脂肪族アミン;アニリン、N−メチルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、N−エチルトルイジン、p−トルイルアミン、2,3−キシリノアミノ、2,4−キシリノアミン、ジフェニルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、ジ−o−トルイルアミンおよびフェニルトルイルアミン等のアリールアミン、ベンジルアミン、ベンジルメチルアミンおよびo−トルイルメチルアミン等のアリールアルキルアミン、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリンおよびジフェニルエーテルジアミン等のアリーレンポリアミン等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記カルボン酸類としては、特に限定はないが、たとえば、脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸等が挙げられ、脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、オクタデカン酸、ステアリン酸びエイコサン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸およびマレイン酸等のジカルボン酸;ヘキサントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸等が挙げられる。また、芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、4−メチル安息香酸、2,3,4−トリクロロ安息香酸およびナフタレンカルボン酸等のモノカルボン酸;例えば、フタル酸、テレフタル酸およびトリクロロベンゼンジカルボン酸、m−トルエンジカルボン酸およびナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸;トリメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸およびナフタレンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
上記アミド類としては、特に限定はないが、たとえば、アセタミド、エチルアミド、プロピルアミド、メチルエチルアミド、ブチルアミド、ベンゾアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明のアルキレンオキサイドAとしては、特に限定はないが、たとえば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO;たとえば、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンnオキサイド、イソブチレンオキサイド等)、1−ブテンオキサイド、2−ブテンオキサイド、トリメチルエチレンオキサイド、テトラメチルエチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、α−メチルスチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピフルオロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシドール、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−クロルエチルグリシジルエーテル、o−クロロフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、メタクリルクロリドエポキシド、シクロヘキセンオキシド、ジヒドロナフタリンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1、4−エポキシシクロヘキサン、トリフルオロプロピレンオキサイド、ブタジエンモノオキサイド、1、1−ジフェニルエチレンオキサイド等が挙げられる。
アルキレンオキサイドAが、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれる2種であると汎用性に優れるので好ましい。また、アルキレンオキサイドAのうちで、AOがエチレンオキサイドであり、AOがプロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドのうちの1種である組合せを満足すると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化性が優れるため好ましい。AOがプロピレンオキサイドであると乳化性に優れるためさらに好ましい。
【0019】
活性水素含有化合物に対して供給するアルキレンオキサイドAの付加モル数としては、特に限定はないが、活性水素含有化合物1モルに対して、好ましくは1〜100モル、より好ましくは1〜90モル、さらに好ましくは1〜80モル、特に好ましくは1〜70モル、最も好ましくは2〜70モルである。アルキレンオキサイドAの付加モル数が1未満であると、乳化性が十分ではないことがある。一方、アルキレンオキサイドAの平均付加モル数が100超であると、ハンドリング性が低いことがある。
本発明の製造方法は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、特に限定はないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の水酸化物;酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の酸化物;金属カリウム、金属ナトリウム等のアルカリ金属;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属の水素化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ(土類)金属の炭酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の硫酸塩;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機スルホン酸;パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム等の芳香族スルホン酸塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物;鉄粉、アルミニウム粉、アンチモン粉、塩化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化コバルト(III)、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、臭化アンチモン(III)、四塩化スズ、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル等のルイス酸;硫酸、過塩素酸等のプロトン酸;過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の過塩素酸塩;カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド等のアルカリ(土類)金属のアルコキシド;カリウムフェノキシド、カルシウムフェノキシド等のアルカリ(土類)金属のフェノキシド;珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、ゼオライト等の珪酸塩;水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物、金属イオン添加酸化マグネシウム、焼成ハイドロタルサイト等のAl−Mg系複合酸化物またはそれらの表面改質物、ランタノイド系錯体等が挙げられる。これらの触媒は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0020】
触媒の使用量については、特に限定はないが、活性水素含有化合物100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.001〜8重量部、さらに好ましくは0.01〜6重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部、最も好ましくは0.05〜3重量部である。触媒の使用量が0.001重量部未満であると付加反応が十分に進行しないことがある。一方、触媒の使用量が10重量部超であるとアルキレンオキサイド付加物が着色し易くなるおそれがある。
本発明の製造方法では、活性水素含有化合物、触媒等の原料を反応容器に仕込み、そしてその反応容器に対して脱ガス処理や脱水処理が行われると好ましい。脱ガス処理は、たとえば減圧脱気方式、真空脱気方式等で行われる。また、脱水処理は、たとえば加熱脱水方式、減圧脱水方式、真空脱水方式等で行われる。
【0021】
本発明の製造方法では、その製造形式については特に限定はなく、連続式でもバッチ式でもよい。反応容器については、特に限定はないが、たとえば、攪拌翼を備えた槽型反応容器やマイクロリアクター等を挙げることができる。攪拌翼としては、特に限定はないが、マックスブレンド翼、トルネード翼、フルゾーン翼、パドル多段翼、タービン翼等を挙げることができる。
本発明の製造方法では、付加反応を減圧状態から開始してもよいし、大気圧の状態から開始してもよいし、さらには加圧状態から開始してもよい。大気圧状態や加圧状態から開始する場合には不活性ガスの雰囲気下で行われることが好ましい。付加反応が不活性ガスの雰囲気下で行われるとAОやAO等のアルキレンオキサイドと酸素との副反応等に起因して生成する不純物を十分に除去することが可能となり、また、安全性の観点からも有用であるので好ましい。不活性ガスとしては特に限定はないが、たとえば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。これらの不活性ガスは1種または2種以上を併用してもよい。不活性ガスの雰囲気下における反応容器内の酸素濃度については、特に限定はないが、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、さらに好ましくは3体積%以下、特に好ましくは1体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下である。反応容器内の酸素濃度が10体積%超であると不純物を十分に除去できないことがあり、また安全性の観点からも好ましくないことがある。
【0022】
反応容器内の初期圧力については、特に限定はないが、たとえば、ゲージ圧で好ましくは0〜3.0MPa、より好ましくは0〜2.0MPa、さらに好ましくは0〜1.5MPa、特に好ましくは0〜1.0MPa、最も好ましくは0〜0.5MPaである。反応容器内の初期圧力が0MPa未満であると、不純物の発生量が多くなることがある。一方、反応容器内の初期圧力が3.0MPa超であると、反応速度が遅くなることがある。
活性水素含有化合物に対してアルキレンオキサイドAを供給すると、付加反応が生起する。ここでAОとAOとはほぼ同時に供給されるので、得られるアルキレンオキサイド付加物中に形成されたポリオキシアルキレン基は、ランダム付加によって生成したものとなり易く、好ましい。
【0023】
アルキレンオキサイドAを供給する方法については特に限定はないが、1)AОとAOとをそれぞれ異なる供給ラインから活性水素含有化合物に対して連続的に供給する方法や、2)AОとAOとをそれぞれ異なるラインから供給しインラインで混合したものを活性水素含有化合物に対して連続的に供給する方法や、3)AОとAOとのそれぞれの一部を予め混合したものをまず一括して活性水素含有化合物に対して供給し、次いで、残部のAОおよび残部のAOをそれぞれ異なる供給ラインから活性水素含有化合物に対して連続的に供給する方法や、4)AОとAOとを予め混合した混合物をいくつか準備し、これらの混合物を何段階かに分けてアルコールに対して順次供給する方法等が挙げられる。
工程1では、供給されるAОとAOとの重量比を変化させながら供給することが好ましい。
【0024】
工程1では、供給されるAОとAOとの重量比を初期供給時には、AOの重量比がAOより大きく、供給後半時にはAОの重量比がAОより大きくなるように制御されることがより好ましい。
ここで、AOおよびAОの供給開始時をTs、AОの供給終了時をTf、AОの供給終了時をTfとし、TsとTfとの間にあり且つTsとTfとの間にある時間T1およびT2が、Ts<T1<T2<Tf≦Tfおよび(T2−T1)/Tf=0.01の関係にあると設定するとき、Ts、Tf、T1、T2の各々の時点で供給されるAOとAОの重量比を、[AO/AО]Ts、[AO/AО]Tf2、[AO/AО]T1および[AO/AО]T2として、下記数式(A)〜(C)を同時に満足するとよい。
0<[AO/AО]Ts<1 (A)
1<[AO/AО]Tf2<100 (B)
0.8<[AO/AО]T2/[AO/AО]T1<10 (C)
【0025】
数式(A)は、好ましくは0.02<[AO/AО]Ts<0.9、さらに好ましくは0.05<[AO/AО]Ts<0.8、特に好ましくは0.08<[AO/AО]Ts<0.7、最も好ましくは0.1<[AO/AО]Ts<0.5である。[AO/AО]Tsが0であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化性が優れないことがある。一方、[AO/AО]Tsが1以上であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。
数式(B)は、好ましくは1.2<[AO/AО]Tf2<80、さらに好ましくは1.5<[AO/AО]Tf2<60、特に好ましくは1.8<[AO/AО]Tf2<40、最も好ましくは2<[AO/AО]Tf2<20である。[AO/AО]Tf2が1以下であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化性および増粘性能が低いことがある。一方、[AO/AО]Tf2が100以上であると、AOおよびAОの供給の制御が困難となることがある。
【0026】
数式(C)は、好ましくは0.8<[AO/AО]T2/[AO/AО]T1<5.0、さらに好ましくは0.8<[AO/AО]T2/[AO/AО]T1<2.0、特に好ましくは0.9<[AO/AО]T2/[AO/AО]T1<1.2、最も好ましくは1.0≦[AO/AО]T2/[AO/AО]T1<1.2である。[AO/AО]T2/[AO/AО]T1が0.8以下であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。[AO/AО]T2/[AO/AО]T1が10以上であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の低温流動性が優れないことがある。
数式(A)〜(C)の意味するところを大まかに言えば、AOおよびAОの供給開始時期から供給終了時期にかけて、AOの重量比を徐々に増加させていくように制御することである。但し、(T2−T1)/Tf=0.01の関係を満足するような微小な時間範囲においては、AOの重量比が一時的に減少する場合も許容される。
【0027】
アルキレンオキサイドAの供給速度に関しては、数式(A)〜(C)を同時に満足するように調整されればよく、特に限定はないが、たとえば、1)供給開始時のアルキレンオキサイドAの供給速度が速く、徐々に供給速度を遅くする(アルキレンオキサイドAを供給開始時に多量に供給し、供給終了時には量を減らす)方法や、2)供給開始時のアルキレンオキサイドAの供給速度が遅く、徐々に供給速度を速くする(アルキレンオキサイドAを供給開始時は少量を供給し、供給終了時には量を増やす)方法や、3)AOの供給速度を供給開始時には遅く、時間の経過と共に徐々に供給速度を速くする一方、AОの供給速度を供給開始時には速く、時間の経過と共に徐々に供給速度を遅くする(AOを供給開始時は少量を供給し、供給終了時には量を増やす一方、AОを供給開始時に多量に供給し、供給終了時には量を減らす)方法や、4)AОの供給速度を一定に保ち、供給開始時のAOの供給速度を遅く、時間の経過と共に徐々に供給速度を速くする方法や、5)AOの供給速度を一定に保ち、供給開始時のAОの供給速度を速く、時間の経過と共に徐々に供給速度を遅くする方法等が挙げられる。このように数式(A)〜(C)を同時に満足するように調整することによって、アルキレンオキサイド付加物を簡便に製造することができる。
付加反応時の反応容器内の圧力は、アルキレンオキサイドAの供給速度、反応温度、触媒量等に影響される。付加反応時の反応容器内の圧力は特に限定はないが、ゲージ圧で好ましくは0〜5.0MPa、より好ましくは0〜4.0MPa、さらに好ましくは0〜3.0MPa、特に好ましくは0〜2.0MPa、最も好ましくは0.1〜1.0MPaである。付加反応時の反応容器内の圧力が0MPa未満であると、反応速度が遅くなることがある。一方、付加反応時の反応容器内の圧力が5.0MPa超であると、製造が困難であることがある。
【0028】
アルキレンオキサイドAの付加反応の反応温度としては特に限定はないが、好ましくは70〜240℃、より好ましくは80〜220℃、さらに好ましくは90〜200℃、特に好ましくは100〜190℃、最も好ましくは110〜180℃である。反応温度が70℃未満であると、付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応温度が240℃超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の着色およびアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が促進されることがある。
上記付加反応に要する時間(反応時間)については特に限定はないが、好ましくは0.1〜100時間、より好ましくは0.1〜80時間、さらに好ましくは0.1〜60時間、特に好ましくは0.1〜40時間、最も好ましくは0.5〜30時間である。反応時間が0.1時間未満であると、付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応時間が100時間超であると、生産効率が悪くなることがある。
【0029】
アルキレンオキサイドAの供給が完了すると反応容器内の内圧はアルキレンオキサイドAが消費されることにより徐々に低下していく。アルキレンオキサイドAの付加反応は内圧の変化が認められなくなるまで継続することが好ましい。アルキレンオキサイドAの付加反応は一定時間における内圧の変化が認められなくなった時点で反応を終了する。必要に応じて加熱減圧操作等を実施し、未反応のアルキレンオキサイドAを回収してもよい。
アルキレンオキサイドAの付加反応においては、必要に応じて不活性溶媒を用いることができる。たとえば、活性水素含有化合物としてトリアコンセノール等の常温で固体のものを用いる場合には反応前に予め不活性溶媒に溶解して用いることが好ましく、これにより反応性をより十分に向上できるとともに、ハンドリング性が高い。また、不活性溶媒を用いると除熱効果も期待できる。
【0030】
不活性溶媒としては特に限定はないが、たとえば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;スルホラン、ジメチルスルホンホキシド等のスルホン類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、芳香族炭化水素類が好ましく、より好ましくはトルエンである。
不活性溶媒の使用量としては、特に限定はないが、活性水素含有化合物を溶解するのに使用する場合には、活性水素含有化合物100重量部に対して、好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは10〜500重量部、さらに好ましくは10〜400重量部、特に好ましくは10〜300重量部、最も好ましくは10〜200重量部である。不活性溶媒の量が活性水素含有化合物100重量部に対して1000重量部超であると、付加反応を十分に進行させることができないことがある。一方、不活性溶媒の量が10重量部未満であると、活性水素含有化合物を十分に溶解することができないことがある。なお、不活性溶媒を使用した場合には、付加反応後に除去することが好ましい。不活性溶媒の除去によって、不活性溶媒の残存に起因する不純物の発生を十分に防ぐことができ、各種物性により優れた活性水素含有化合物を得ることができる。溶媒の除去工程については、後述するとおりである。
【0031】
アルキレンオキサイドAの付加反応の終了後は、必要に応じて、触媒を中和および/または除去したり、不活性溶媒を除去したりすると好ましい。
触媒の中和は、触媒が主にアルカリ触媒である場合に限られ、通常の方法により行えばよいが、たとえば、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、アクリル酸、メタクリル酸等の酸を添加して行うことが好ましい。
【0032】
触媒の中和は不活性ガスの雰囲気下で行われると好ましい。不活性ガスとしては、特に限定はないが、たとえば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
触媒の中和時の温度としては、特に限定はないが、好ましくは50〜200℃、より好ましくは50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、特に好ましくは60〜170℃、最も好ましくは60〜160℃である。触媒の中和時の温度が50℃未満であると、中和に要する時間が長くなることがある。一方、触媒の中和時の温度が200℃超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の着色およびアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が促進されることがある。
【0033】
触媒の中和により、上記付加反応により得られる反応生成物のpHが好ましくは4〜10に調整され、さらに好ましくは5〜8、特に好ましくは6〜8である。また、触媒中和の際に、必要に応じて、キノン類やフェノール類等の酸化防止剤を併用することもできる。
中和により生成した中和塩は、さらに固液分離してもよい。中和により生成した中和塩の固液分離の方法としては、濾過や遠心分離等が挙げられる。濾過は、たとえば、濾紙、濾布、カートリッジフィルター、セルロースとポリエステルとの2層フィルター、金属メッシュ型フィルター、金属焼結型フィルター等を用いて、減圧または加圧下で温度20〜140℃の条件下で行うとよい。遠心分離は、たとえば、デカンターや遠心清澄機等の遠心分離器を用いて行うとよい。また、必要に応じて、固液分離前の液100重量部に対して水を1〜30重量部程度添加することもできる。上記固液分離として、特に濾過を行う際には、濾過助剤を使用すると濾過速度が向上するので好適である。
【0034】
濾過助剤としては、特に限定はないが、たとえば、セライト、ハイフロースーパーセル、セルピュアの各シリーズ(Advanced Minerals Corporation製)、シリカ#645、シリカ#600H、シリカ#600S、シリカ#300S、シリカ#100F(中央シリカ社製)、ダイカライト(グレフコ社製)等の珪藻土;ロカヘルプ(三井金属鉱業社製)、トプコ(昭和化学社製)等のパーライト;KCフロック(日本製紙社製)、ファイブラセル(Advanced Minerals Corporation製)等のセルロース系濾過助剤;サイロピュート(富士シリシア化学社製)等のシリカゲル等が挙げられる。これらの濾過助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
濾過助剤は、予め濾紙等のフィルター面に濾過助剤層を形成するプレコート法を用いてもよいし、濾液に直接添加するボディーフィード法を用いてもよいし、これら両方を併用してもよい。濾過助剤の使用量としては、固液分離前の液100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜1.5重量部である。また、濾過処理速度は、濾面の大きさ、減圧度または加圧度、処理湿度等にも依存するが、好ましくは100kg/m・hr以上、より好ましくは300kg/m・hr以上であり、さらに好ましくは、500kg/m・hr以上である。
【0035】
アルカリ触媒の除去については、特に限定はないが、たとえば、アルカリ触媒を吸着剤に吸着させた後、固液分離する方法が好ましい。
吸着剤としては、たとえば、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の珪酸塩、活性白土、酸性白土、シリカゲル、イオン交換樹脂等が挙げられる。市販の吸着剤としては、たとえば、キョーワード600、700(協和化学社製)、ミズカライフP−1、P−1S、P−1G、F−1G(水澤化学社製)、トミタ−AD600、700(富田製薬社製)等の珪酸塩;アンバーリスト(ローム・アンド・ハース社製)やアンバーライト(ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン(三菱化学社製)、ダウエックス(ダウケミカル社製)等のイオン交換樹脂等が挙げられる。これらの吸着剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0036】
吸着剤の使用量は、たとえば、アルカリ触媒100重量部に対して、好ましくは100〜5000重量部、より好ましくは300〜3000重量部である。
アルカリ触媒の除去条件としては、特に限定はないが、たとえば、減圧、常圧または加圧のいずれかの圧力条件下において、吸着剤を温度20〜140℃で5〜120分間攪拌混合した後、アルカリ触媒が吸着された吸着剤を上記固液分離方法により分離する方法や、予めカラム等に吸着剤を充填しておいて、温度20℃〜140℃で反応混合物を通過させてアルカリ触媒を吸着させて、アルカリ触媒を除去する方法等が挙げられる。この際、さらに必要により、反応混合物100重量部に対して、水やエタノールに代表される低級アルコール等の水溶性溶剤を1〜20重量部添加してもよい。
【0037】
アルカリ触媒の除去後の残存量については、特に限定はないが、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。
不活性溶媒の除去は、たとえば、蒸留により行うことが好ましい。
【0038】
なお、触媒の中和および/または除去と不活性溶媒の除去とを行う場合、各工程の順序は特に限定はなく、たとえば、触媒の中和および/または除去を行った後に、不活性溶媒の除去を行うと、得られるアルキレンオキサイド付加物の精製効率に優れるために好ましい。
本発明の製造方法において、未反応で残存する活性水素含有化合物の含有量としては、特に限定はないが、得られるアルキレンオキサイド付加物100重量部に対して、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.01重量部以下、さらに好ましくは0.001重量部以下、特に好ましくは0.0001重量部以下、最も好ましくは0.00001重量部以下である。未反応で残存する活性水素含有化合物の含有量が、アルキレンオキサイド付加物100重量部に対して1重量部超であると、臭気が発生することがある。
工程1で得られるアルキレンオキサイド付加物は、低温流動性および増粘性能にも優れる。
【0039】
〔工程2および工程3〕
次に、工程2を行う場合、工程1の後に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して、工程1で得られるアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基に対して付加反応させる。
工程2で付加反応させるアルキレンオキサイドの付加モル数としては、特に限定はないが、活性水素含有化合物1モルに対して、好ましくは1〜50モル、より好ましくは1〜40モル、さらに好ましくは1〜30モル、特に好ましくは1〜20モル、最も好ましくは1〜10モルである。アルキレンオキサイドの付加モル数が1未満であると、乳化性が十分ではないことがある。一方、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が50超であると、ハンドリング性が低いことがある。
【0040】
工程2では、工程1で得られる反応混合物そのままに対して付加反応を行ってもよく、反応混合物に対して、上述する触媒の中和および/または除去を行ったり、不活性溶媒を除去したりした後処理を済ませてから、付加反応を行ってもよい。
さらに、工程3を行う場合、工程2の後に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して、工程2で得られるアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基に対して付加反応させる。
【0041】
工程3で付加反応させるアルキレンオキサイドの付加モル数としては、特に限定はないが、活性水素含有化合物1モルに対して、好ましくは1〜50モル、より好ましくは1〜40モル、さらに好ましくは1〜30モル、特に好ましくは1〜20モル、最も好ましくは1〜10モルである。アルキレンオキサイドの付加モル数が1未満であると、乳化性が十分ではないことがある。一方、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が50超であると、ハンドリング性が低いことがある。
工程3では、工程2で得られる反応混合物そのままに対して付加反応を行ってもよく、反応混合物に対して、上述する触媒の中和および/または除去を行ったり、不活性溶媒を除去したりした後処理を済ませてから、付加反応を行ってもよい。
【0042】
本発明の製造方法が、工程1の後に工程2をさらに含む場合や、工程2の後に工程3をさらに含む場合には、得られるアルキレンオキサイド付加物の曇点をさらに高めることができ、アルキレンオキサイド付加物の使用温度域を広くして、多種多様な用途に用いることができる。また、付加するアルキレンオキサイドの種類によって、増粘性や低温流動性を様々に制御、向上されることができる。工程2および工程3で供給するアルキレンオキサイドがエチレンオキサイドであると、得られるアルキレンオキサイド付加物は乳化性とともに増粘性能に優れる。また、工程2および工程3で供給するアルキレンオキサイドがプロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドであると、得られるアルキレンオキサイド付加物は乳化性とともに低温流動性に優れる。
【0043】
〔アルキレンオキサイド付加物〕
本発明の製造方法で得られるアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量としては、特に限定はないが、好ましくは200〜10000、より好ましくは200〜8000、さらに好ましくは200〜6000、特に好ましくは200〜4000、最も好ましくは200〜2000である。重量平均分子量が200未満であると、アルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。重量平均分子量が10000超であると、ハンドリング性が低いことがある。重量平均分子量の測定方法は、実施例で詳しく説明する。
本発明においては、アルキレンオキサイド付加物の曇点の測定方法としては、測定対象のアルキレンオキサイド付加物の曇点範囲に応じて、以下に示す測定方法を選択する。
【0044】
本発明のアルキレンオキサイド付加物の曇点は、通常、アルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液を調製し加温して一旦液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を曇点とする方法を用いて測定する。上記曇点としては、好ましくは0〜95℃、より好ましくは0〜90℃、さらに好ましくは0〜85℃、特に好ましくは0〜80℃、最も好ましくは0〜75℃の範囲である。上記曇点が0℃未満であると、アルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。一方、上記曇点が95℃超であると、アルキレンオキサイド付加物のハンドリング性が低いことがある。
本発明では、上記曇点が40℃未満または80℃超である場合は、曇点が測定不能な場合や、測定可能であっても測定値の信頼性に欠ける場合があるので、上記に示す曇点の測定方法とは異なる以下に示す測定方法を選択し、その測定方法で得られた値を曇点とする。
【0045】
上記曇点が40℃未満のときは、アルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液が室温で既に濁っていて測定不能な場合がある。そのために、上記曇点が40℃未満の場合は、アルキレンオキサイド付加物の曇点は、以下で詳しく説明するブチルジグリコール法(BDG法)により測定した値とする。BDG法により測定したアルキレンオキサイド付加物の曇点は、好ましくは0〜95℃、より好ましくは20〜95℃、さらに好ましくは20〜90℃、特に好ましくは20〜85℃、最も好ましくは20〜80℃である。BDG法により測定した曇点が0℃未満であると、アルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。一方、BDG法により測定した曇点が95℃超であると、アルキレンオキサイド付加物のハンドリング性が低いことがある。
一方、アルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液の曇点が80℃超の場合は、アルキレンオキサイド付加物の曇点は、以下の実施例で詳しく説明する硫酸カリウム水溶液を溶媒とした方法により測定した値とする。本発明のアルキレンオキサイド付加物の1重量%濃度水溶液の曇点が80℃超のときは、以下で詳しく説明する硫酸カリウム水溶液を溶媒とした方法(硫酸カリ法)により測定するとよい。硫酸カリ法により測定したアルキレンオキサイド付加物の曇点は、好ましくは0〜95℃、より好ましくは20〜95℃、さらに好ましくは20〜90℃、特に好ましくは20〜85℃、最も好ましくは20〜80℃である。硫酸カリ法により測定した曇点が0℃未満であると、アルキレンオキサイド付加物の乳化性が低いことがある。一方、硫酸カリ法により測定した曇点が95℃超であると、アルキレンオキサイド付加物のハンドリング性が低いことがある。
【0046】
本発明で得られたアルキレンオキサイド付加物は、衣料用液体または粉体洗剤、家庭用洗剤、台所用洗剤、固体洗浄剤、シャンプー等の各種洗浄剤の有効成分、消泡剤、抑泡剤、潤滑剤、繊維油剤、紙薬剤、機械・金属用洗浄剤、脱樹脂剤、脱墨剤、脱脂剤、減水剤、凝集剤、分散剤、乳化重合剤、乳化剤、可溶化剤、懸濁剤、増粘剤、ゲル化剤、帯電防止剤、表面処理剤等や、それらの有効成分として使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下に、アルキレンオキサイド付加物の実施例を、その比較例とともに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
〔重量平均分子量〕
アルキレンオキサイド付加物を不揮発分濃度が約0.2質量%濃度となるようにテトラヒドロフランに溶かした後、以下の測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定した。次いで、分子量既知のポリエチレングリコールのGPC測定結果から、検量線を作成し、重量平均分子量を算出した。
(測定条件)
機器名:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:KF−G、KF−402HQ、KF−403HQ各1本ずつを直列に連結(いずれもShodex社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
注入量:10μl
溶離液の流量:0.3ml/分
温度:40℃
【0049】
〔曇点の測定〕
アルキレンオキサイド付加物の1重量%水溶液を調製し、加温して一旦液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度Tを測定した。ここで、T=40〜80℃の範囲にある場合は、アルキレンオキサイド付加物の曇点とした。
実施例5および比較例5のアルキレンオキサイド付加物では、Tが40℃未満であったので、以下のブチルジグリコール法(BDG法)により測定した値を曇点とした。
【0050】
(BDG法)
n−ブチルジグリコール(別名:2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル)の25重量%水溶液にアルキレンオキサイド付加物を添加して曇点試験液を調製した。その際、曇点試験液中のアルキレンオキサイド付加物の濃度が10重量%となるように調整した。次いで、加温して一旦曇点試験液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を曇点とした。
(硫酸カリ法)
硫酸カリウムの5重量%水溶液にアルキレンオキサイド付加物を添加して曇点試験液を調製した。その際、曇点試験液中のアルキレンオキサイド付加物の濃度が1重量%となるように調整した。次いで、加温して一旦曇点試験液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を曇点とした。
【0051】
〔実施例1〕
アルキレンオキサイドAOとしてのエチレンオキサイドおよびアルキレンオキサイドAOとしてのプロピレンオキサイドの供給ラインを各々接続した1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給開始した。エチレンオキサイドでは、10g/hの供給速度から供給を開始して、徐々に供給量を増加させて、最終70g/hの供給速度で供給を完了し、約170分間で総量110gを供給した。また、プロピレンオキサイドでは、70g/hの供給速度で供給を開始し、徐々に供給量を減少させて、最終14g/hの供給速度で供給を完了し、約160分間で総量63gを供給した。プロピレンオキサイドの供給完了時におけるエチレンオキサイドの供給速度は50g/hだった。
【0052】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[AO/AO]TSは0.14であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[AO/AO]Tf2は3.6であった。エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給は、0.9<[AO/AO]T2/[AO/AO]T1<1.2の条件を満たしていた。実施例1で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[AO/AO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示す概略図を図1に示す。供給時間と重量比[AO/AO]とは、一次関数の関係にあることが分かる。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
【0053】
得られたアルキレンオキサイド付加物のプロピレンオキサイド付加モル数は3であり、エチレンオキサイド付加モル数は7であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は683であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して57℃であった。
【0054】
〔実施例2〜10〕
実施例2〜10では、実施例1において、表1に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様にアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表1および2に示す。
以下に示す表において、EOはエチレンオキサイド、POは1,2−プロピレンオキサイド、BOは1,2−ブチレンオキサイドをそれぞれ示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
〔実施例11〕
0.5Lの混合槽を接続した1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、アルキレンオキサイドAOとしてのエチレンオキサイドおよびアルキレンオキサイドAOとしてのプロピレンオキサイドの混合液を3回に分けて混合槽で作製して供給した。まず、1回目には、エチレンオキサイド15gおよびプロピレンオキサイド33gを混合した液を60分間で供給した。次に、2回目には、エチレンオキサイド35gおよびプロピレンオキサイド20gを混合した液を50分間で供給し、最後の3回目には、エチレンオキサイド60gおよびプロピレンオキサイド10gを混合した液を50分間で供給した。供給したエチレンオキサイドの総量は110gであり、供給したプロピレンオキサイドの総量は63gであった。
【0058】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[AO/AO]Tsは0.45であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[AO/AO]Tf2は6.0であった。エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給は、0.9<[AO/AO]T2/[AO/AO]T1<10の条件を満たしていた。実施例11で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[AO/AO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示す概略図を図2に示す。図2からは、供給時間と重量比[AO/AO]とは、階段関数の関係にあることが分かる。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
【0059】
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数は3であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は682であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して56℃であった。
【0060】
〔実施例12〕
1Lのオートクレーブに、実施例1で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約40分間でエチレンオキサイド39gを供給した。
【0061】
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。エチレンオキサイドの供給を開始してから80℃に冷却するまでの総反応時間は140分であった。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、実施例1で得られたアルキレンオキサイド付加物にさらに2モルのエチレンオキサイドを付加したアルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は772であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して76℃であった。
【0062】
〔実施例13〕
1Lのオートクレーブに、実施例12で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約50分間でプロピレンオキサイド23gを供給した。
【0063】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、実施例12で得られたアルキレンオキサイド付加物にさらに1モルのプロピレンオキサイドを付加したアルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は887であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して78℃であった。
【0064】
〔比較例1〕
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、アルキレンオキサイドAOとしてのエチレンオキサイドおよびアルキレンオキサイドAOとしてのプロピレンオキサイドを同時に供給開始した。エチレンオキサイドでは、37g/hの供給速度を維持して供給し、約180分間で総量110gを供給した。プロピレンオキサイドでは、22g/hの供給速度を維持して供給し、約170分間で総量63gを供給した。
【0065】
供給開始から供給終了までに供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[AO/AO]は1.68で一定であった。比較例1で供給されたエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[AO/AO]について、供給開始時から供給終了時までの経時変化を示す概略図を図3に示す。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のプロピレンオキサイド付加モル数は3であり、エチレンオキサイド付加モル数は7であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して56℃であった。
【0066】
〔比較例2〜10〕
比較例2〜10では、比較例1において、表2に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、比較例1と同様にアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ得て、物性等も比較例1と同様に評価した。その結果を表3および4に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
〔比較例11〕
1Lのオートクレーブに、比較例1で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム1.0gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約40分間でエチレンオキサイド39gを供給した。
【0070】
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、比較例1で得られたアルキレンオキサイド付加物にさらに1モルのエチレンオキサイドを付加したアルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は772であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して76℃であった。
【0071】
〔比較例12〕
1Lのオートクレーブに、比較例11で得られたアルキレンオキサイド付加物300gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約50分間でプロピレンオキサイド23gを供給した。
【0072】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、比較例11で得られたアルキレンオキサイド付加物にさらに1モルのプロピレンオキサイドを付加したアルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は888であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して79℃であった。
【0073】
〔比較例13〕
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、約110分間でプロピレンオキサイド63gを供給した。内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約150分間でエチレンオキサイド110gを供給した。
【0074】
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。AOおよびAOの供給を開始してから80℃に冷却するまでの総反応時間は360分であった。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック付加体であり、エチレンオキサイド付加モル数は7であり、プロピレンオキサイド付加モル数は2であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は683であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して51℃であった。
【0075】
〔比較例14〕
1Lのオートクレーブに、ノニルフェノール(分子量220)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、約130分間でプロピレンオキサイド53gを供給した。内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約120分間でエチレンオキサイド100gを供給した。
【0076】
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。AOおよびAOの供給を開始してから80℃に冷却するまでの総反応時間は360分であった。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック付加体であり、エチレンオキサイド付加モル数は5であり、プロピレンオキサイド付加モル数は2であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は412であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して42℃であった。
【0077】
〔比較例15〕
1Lのオートクレーブに、グリセリン(分子量92)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、約400分間でプロピレンオキサイド189gを供給した。内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約340分間でエチレンオキサイド287gを供給した。
【0078】
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。AOおよびAOの供給を開始してから80℃に冷却するまでの総反応時間は850分であった。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック付加体であり、エチレンオキサイド付加モル数は5であり、プロピレンオキサイド付加モル数は3であった。
【0079】
得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は610であった。曇点はアルキレンオキサイド付加物の1%濃度水溶液で測定して44℃であった。
実施例1〜13で得られた本発明のアルキレンオキサイド付加物および比較例1〜15で得られたアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ用いて、下記の方法で、乳化力(乳化性)、低温流動点(低温流動性)および水溶液粘度(増粘性)を評価した。
【0080】
〔乳化力の測定(乳化性)〕
キシレン40gおよび水56gにアルキレンオキサイド付加物4gを添加し、室温でTKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用いて、4500rpmで5分間撹拌乳化した。作製した乳化物を50℃雰囲気下で1時間静置後の乳化層、離水層を測定して乳化性能を評価した。乳化力は下記式により計算され、乳化力の値が大きいほど乳化性に優れる。
乳化力(%)=(仕込水量−離水量)(ml)/仕込水量(ml)×100
乳化力が90%以上であれば、アルキレンオキサイド付加物は乳化性に優れる。一方、乳化力が90%未満であれば、アルキレンオキサイド付加物は乳化性が十分でない。
【0081】
〔低温流動点の測定(低温流動性)〕
JIS K2269の方法に準拠した手法を用いて測定した。すなわち、試験管にとった45mlのアルキレンオキサイド付加物を45℃に加温し、次いで寒剤を用いた冷却浴で冷却した。2.5℃下がるごとに試験管を冷却浴から取り出し、アルキレンオキサイド付加物が5秒間全く動かなくなったときの温度を読み取り、その値に2.5℃を加えて低温流動点とした。低温流動点の値が小さいほど低温流動性に優れる。
【0082】
〔水溶液粘度の測定(増粘性)〕
50重量%のアルキレンオキサイド付加物を調製し、25℃雰囲気下でB型粘度計((株)東京計器製:BL型)を用いて測定した。水溶液粘度の値が大きいほど増粘性に優れる。
アルキレンオキサイド付加物の評価結果を表5に示す。実施例1および実施例11のアルキレンオキサイド付加物は比較例1のそれと基本構造が対応する。実施例2〜10のアルキレンオキサイド付加物は比較例2〜10のものに対応する。実施例12と13のアルキレンオキサイド付加物は比較例11と12のものに対応する。また、実施例1〜3のアルキレンオキサイド付加物は比較例13〜15のものにも対応する。
【0083】
【表5】

【0084】
以上の評価結果から、実施例1および11では、比較例1よりも増粘性および乳化性に優れる。実施例2〜10では、各々対応する比較例2〜10よりも増粘性および乳化性に優れる。実施例12と13では、各々対応する比較例11と12よりも増粘性および乳化性に優れる。また、実施例1〜3では、各々対応する比較例13〜15よりも低温流動性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素含有化合物に対して、アルキレンオキサイドAOおよびアルキレンオキサイドAOを供給して付加反応させる工程1を含む、アルキレンオキサイド付加物の製造方法であって、
Oの炭素数はAOの炭素数よりも小さく、
OおよびAOの供給開始時をTs、AOの供給終了時をTf、AOの供給終了時をTfとし、TsとTfとの間にあり且つTsとTfとの間にある時間T1およびT2が、Ts<T1<T2<Tf≦Tfおよび(T2−T1)/Tf=0.01の関係にあるとき、
Ts、Tf、T1、T2の各々の時点で供給されるAOおよびAOとの重量比を、[AO/AO]Ts、[AO/AO]Tf2、[AO/AO]T1および[AO/AO]T2として、下記数式(A)〜(C):
0<[AO/AO]Ts<1 (A)
1<[AO/AO]Tf2<100 (B)
0.8<[AO/AO]T2/[AO/AO]T1<10 (C)
を同時に満足する、アルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項2】
下記数式(A−1)および/または(B−1)をさらに満足する、請求項1に記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
0.1<[AO/AO]Ts<0.5 (A−1)
2<[AO/AO]Tf2<20 (B−1)
【請求項3】
下記数式(C−1)をさらに満足する、請求項1または2に記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
0.9<[AO/AO]T2/[AO/AO]T1<1.2 (C−1)
【請求項4】
Oがエチレンオキサイドであり、AOがプロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種である、請求項1〜3のいずれかにアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項5】
前記活性水素含有化合物が、アルコール類、フェノール類、アミン類、カルボン酸類およびアミド類から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項6】
前記付加反応を触媒の存在下で行う、請求項1〜5のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項7】
前記工程1の後に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程2をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項8】
前記工程2の後に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドのうちの1種を供給して付加反応させる工程3をさらに含む、請求項7に記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−100257(P2013−100257A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198511(P2012−198511)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】