説明

アルキレングリコールの調製方法

触媒の存在下で、対応するアルキレンカーボネートと水とを反応させることを含み、触媒は、固体支持体上に固定された、1つまたは複数の陽性部位を有するバイカーボネートを活性相として含む、アルキレングリコールの調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応するアルキレンカーボネートの触媒加水分解による、アルキレングリコールの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキレングリコール、特にモノアルキレングリコールには、確立された商業的関心がある。例えばモノアルキレングリコールは、例えば繊維またはボトル用のポリアルキレンテレフタレートの製造において、溶媒としておよび基材として凍結防止組成物に使用されている。
【0003】
アルキレンオキシドの液相加水分解によるアルキレングリコールの製造が知られている。この加水分解は、大過剰の水、例えばアルキレンオキシド1モル当たり、20から25モルの水を添加することで、通常実施される。この反応は、求核置換反応と考えられ、この求核置換反応により、アルキレンオキシドの開環が生じ、水が求核剤として作用する。主として形成されるモノアルキレングリコールもまた、求核剤として作用するので、通常モノアルキレングリコール、ジアルキレングリコールおよびより高級なアルキレングリコールの混合物が形成される。モノアルキレングリコールへの選択性を高めるためには、アルキレンオキシドの加水分解と競合する、一次生成物とアルキレンオキシドとの間の二次反応を抑制する必要がある。
【0004】
二次反応を抑制するために有効な一手段は、反応混合物中に存在する水の相対量を増加することである。この処置は、モノアルキレングリコールの生成に対する選択性を改善するが、生成物を回収するために多量の水を取り除かなければならないという点で問題が生じる。
【0005】
大過剰の水を使用する必要なしに、反応選択性を増加させるための代替手段を発見することにかなりの努力がなされてきた。アルキレンオキシドの、アルキレングリコールへの加水分解は、触媒系において水の過剰量をより少量にして実施することができる。したがって、このような努力は通常、より活性のある加水分解触媒の選択に集中し、様々な触媒が文献に開示されてきた。
【0006】
加えて、アルキレンオキシドからアルキレングリコールを生成する方法は、2段階の工程を含み、当技術分野で記載されてきた。このような工程は、触媒の存在下でのアルキレンオキシドと二酸化炭素の反応と、次にてこれに続く、生成したアルキレンカーボネートの熱的または触媒的加水分解とを含む。このような2段階工程の例は、特開昭57−106631号公報、特開昭59−013741号公報および米国特許第6080897号明細書に記載のものを含む。
【0007】
アルキレンカーボネートの加水分解に適切な触媒は、米国特許第4283580号明細書に記載されており、この明細書では、置換または非置換のエチレンカーボネートと水の反応による、置換または非置換のエチレングリコールの生成において、金属または化合物の形態のモリブデンまたはタングステンを触媒として使用することを対象としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−106631号公報
【特許文献2】特開昭59−013741号公報
【特許文献3】米国特許第6080897号明細書
【特許文献4】米国特許第4283580号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アルキレンカーボネートの加水分解は進歩しているにもかかわらず、所望する生成物を容易に精製することができる触媒系の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、アルキレンカーボネートの、対応するアルキレングリコールへの加水分解(すなわち、アルキレンカーボネートと水の触媒転換)は、固体支持体上に固定されたバイカーボネートによって効率的に触媒できることが現在になって判明した。したがって本発明は、対応するアルキレンカーボネートと水とを、触媒存在下で反応させることを含み、触媒は、固体支持体上に固定された、1つまたは複数の陽性部位を有するバイカーボネートを活性相として含む、アルキレングリコールの調製方法を提供する。
【0011】
この不均一系により、所望の生成物を触媒組成物から容易に分離することが可能となる。アルキレングリコールの精製に一般的に必要とされる高温での、触媒組成物の存在下での生成物の蒸留なしに、このような分離を達成することができる。さらなる利点は、同じ反応器容量に対し、触媒濃度が極めてより高いことである。バイカーボネートを活性相として有することの利点は、触媒から浸出し得る唯一の生成物が二酸化炭素および水であり、反応の副生成物または試薬は留まる。したがって正体不明の分子が、生成物流の一部となることがない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法において出発物質として使用されるアルキレンカーボネートは、従来の定義、すなわちこの分子中にカーボネート基を有する化合物という定義である。
【0013】
特に適切であるのは、五員環アルキレンカーボネート環(1,3−ジオキソラン−2−オン)を有する、一般式(I)
【0014】
【化1】

(式中、RからRは、水素原子または場合によって置換された、1から6個の炭素原子を有するアルキル基を独立して表す)のアルキレンカーボネートである。R、R、Rおよび/またはRで表される任意のアルキル基は、1から3個の炭素原子を有することが好ましい。ヒドロキシ基などの不活性な部分が、置換基として存在してもよい。好ましくは、R、RおよびRは、水素原子を表し、Rは非置換のC−Cアルキル基を表し、より好ましくは、R、R、RおよびRはすべて水素原子を表す。
【0015】
したがって、適切なアルキレンカーボネートの例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートおよび2,3−ブチレンカーボネートを含む。本発明において、一般式(II)の最も好ましいアルキレンカーボネートは、エチレンカーボネート(式中、R、R、RおよびRはすべて水素原子を表す)である。
【0016】
アルキレンカーボネートの調製は、当業者には周知である。アルキレンカーボネートは、触媒の存在下で、対応するアルキレンオキシドと二酸化炭素を接触させることを含む方法により調製することができる。
【0017】
特に適切であるのは、一般式(II)
【0018】
【化2】

(式中、RからRは、対応するアルキレンカーボネートのRからRに対応する)のアルキレンオキシドである。したがって適切なアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシドを含む。本発明において、一般式(II)の最も好ましいアルキレンオキシドは、エチレンオキシド(式中、R、R、RおよびRはすべて水素原子を表す)である。
【0019】
アルキレンオキシドの調製は、当業者には周知である。エチレンオキシドの場合、周知のエチレン直接酸化、すなわち銀系触媒、さらに多くの場合有機モデレーター、例えば有機ハロゲン化物なども利用することによって、空気酸化または酸素酸化で調製することができる(例えばKirk Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、9巻、923−940頁を参照されたい)。
【0020】
本発明による触媒は、固体支持体上に固定され、1つまたは複数の陽性部位を有するバイカーボネートを活性相として含む。触媒の活性に対しては、活性相としてバイカーボネートから開始する必要はない。固体支持体上に固定したヒドロキシ基またはカーボネート基から開始することも可能である。これらの基は、この反応の活性相としてのバイカーボネートに対する前駆体と考えられる。触媒反応の初期段階において、ヒドロキシ基またはカーボネート基は、アルキレンカーボネートの変換時に形成される多量のCOおよび水またはアルコールの存在によって、バイカーボネートの活性相に変換される。
【0021】
本発明の方法に使用するバイカーボネートの量は、0.0001から0.5mol/molアルキレンカーボネートの範囲であることが適切である。バイカーボネートは、0.001から0.1mol/molアルキレンカーボネートの範囲の量で存在するのが好ましい。
【0022】
固体支持体は、1つまたは複数の陽性部位を有する支持体である。1つまたは複数の陽性部位を有する適切な固体支持体は、無機の性質のもの、例えば炭素、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、ガラスおよびヒドロタルサイトなどの粘土などが含まれる。このような固体支持体は吸着、反応またはグラフトにより結合したカチオンを有することができる。さらに、固定された錯体化大員環、例えばクラウンエーテルなども、本発明による1つまたは複数の陽性部位を有する固体支持体として考えられる。なぜならこれらの物質は、カチオンと結合することができるからである。この固体支持体は、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、第四級アルセノニウムカチオン、第四級スチボニウムカチオンまたは第三級スルホニウムカチオン、または錯体化大員環を含有することが好ましい。カチオンは、第四級アンモニウムイオンまたは第四級ホスホニウムイオンであることがより好ましい。
【0023】
本発明において、カチオンがポリマー骨格に結合している強塩基性イオン交換樹脂を含む固体支持体を使用することが有利である。ポリマー骨格は、ポリアルキレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂などを含めた高分子量ポリマーおよびコポリマーを含み得る。適切な市販のイオン交換樹脂としては、ポリアクリレートまたはスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーをポリマー骨格として含むものが挙げられる。シリカ系ポリマー骨格を有する樹脂、例えばポリシロキサンなど、およびポリマー骨格にビニルピリジンモノマーを組み込んだ樹脂もまた使用し得る。本発明の方法に適切な市販のイオン交換樹脂は、Lewatit 500KR(Lewatitは商標)、Amberlite IRA−900、Amberlite IRA−458(Amberliteは商標)、Amberjet4200、Amberjet4400(Amberjetは商標)、DOWEX 1x16(DOWEXは商標)、Reillex HPQ(Reillexは商標)、Marathon−A、Marathon−MSA(Marathonは商標)およびDELOXAN AMP(DELOXANは商標)を含むが、これらに限らない。他の適切なイオン交換樹脂は、NishikuboらによるJ.Polym.Sci.、Part A:Polym.Chem.、(1993年)、31巻、939−947頁に記載の方法に従い作製したものを含む。このような樹脂は、いわゆるスペーサー群を有し、ポリマー骨格にカチオンが結合している化学構造を含む。スペーサー群は、1個または複数の酸素原子で場合によって中断されているアルキレン基を含有するのが適切である。
【0024】
バイカーボネートまたはその前駆体の1つであるヒドロキシルまたはカーボネートは、当業者に知られている任意の技法により固体支持体上に固定することができる。これらの技法は、細孔容積含浸、含浸、沈殿およびイオン交換を含む。バイカーボネートまたはその前駆体の1つは、イオン交換を介して固体支持体上に固定するのが好ましい。イオン交換は、固体支持体と溶液を接触させることを含む。バイカーボネートを固定する好ましいケースでは、溶液が過剰の炭酸水素ナトリウムを含んでもよいし、またはCOで水飽和していてもよい。COで飽和した水溶液を使用する場合、流出液のpHがCO飽和溶液のpHと同様になるまで交換反応を反復する。このステップの後に水による洗浄のステップが続く。イオン交換は、好ましくは0℃から100℃の範囲、より好ましくは20℃から90℃の範囲の温度において行われる。イオン交換は、大気圧で行われるのが好ましい。
【0025】
本発明の方法は、加水分解法に適切な任意の反応系で実施することができる。
【0026】
本発明の方法で使用されるアルキレンカーボネートは、精製したアルキレンカーボネートまたは他の任意の適切なアルキレンカーボネートを含み得る。アルキレンカーボネートは、アルキレンカーボネート製造単位からの粗生成物であってもよく、この場合対応するアルキレンオキシドを、触媒の存在下で二酸化炭素と接触させる。触媒がこの粗生成物に依然として存在する場合もある。
【0027】
反応器へ供給する水の総量は、少なくとも0.5mol/molアルキレンカーボネートの量であるのが好ましく、少なくとも1mol/molアルキレンカーボネートの量であるのが好ましい。反応器へ供給する水の総量は、好ましくは最大限で20mol/molアルキレンカーボネートの量、より好ましくは最大限で5mol/molアルキレンカーボネートの量、さらにより好ましくは最大限で2mol/molアルキレンカーボネートである。
【0028】
本発明の方法は、バッチ操作で行うことができる。しかし、特に大規模な実施形態に対しては、この工程を持続的に操作することが好ましい。
【0029】
このような連続的工程は、固定床反応器内で実施することができ、この固定床反応器は、上向流または下向流で操作される。反応器の他の選択肢としては、バブルカラム反応器および流動床反応器が挙げられる。
【0030】
本発明の反応器は、等温性、断熱性または複合型の条件下で維持することができる。等温性の反応器は、一般的にシェル型および管型の反応器、主に多管状型であり、これら反応器においては、管が触媒を含有し、冷却剤が管外側を通過する。断熱性反応器は、冷却されず、断熱性反応器から排出される生成物流を別の熱交換器で冷却してもよい。
【0031】
反応産出物の一部を、同じ反応器の少なくとも1つの入口に戻して再利用することは本発明の方法にとって有利となり得る。なぜなら反応器の先端部と底部の間に生じる恐れのあるいずれの温度差も最小限に抑えることができるからである。このようにすれば、反応温度を維持するための外部温度制御の必要性が、従来の反応器と比べ低減される。これは、等温条件が好まれる場合特に有利である。反応産出物の再利用部分は、反応産出物が反応器から排出された後に、再利用されない部分から有利に分離してもよいし、またはもう1つの方法として、再利用されない反応産出物の部分が取り除かれる出口とは異なる反応器の出口を介して、反応産出物の再利用部分を反応器から有利に分離することもできる。使用する他の反応パラメータを考慮に入れて最適の性能が得られるように、再利用する反応産出物の混合物の量を変化させることもできる。
【0032】
上記の第4族または第3族を含有する触媒を用いる特定の方法において、時折生じ得る問題が、生成物流の中に少量の不純物が存在することである。例えば、第四級アンモニウムまたはホスホニウム基を含む塩基性基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂が、触媒グループ用の固体支持体として用いられる場合、運転中に少量のアミンまたはホスフィンが、樹脂から生成物流へと浸出しやすいことが判明した。生成物流中の他の不純物は、本方法に使用する水に添加してもよい腐蝕阻害剤から発生するアミンを含み得る。最終製品に到達するこうした混入物の量は全般的にごくわずかであるが、混入物は最終製品の品質に影響を及ぼす恐れがあるので、製品の品質に影響を及ぼさないように、量を可能な限り低いところまで減らすことが望ましいこともある。例えば、トリメチルアミン(TMA)および/またはジメチルアミン(DMA)は、10ppmまでの量で最終製品に到達し得るが、TMAの魚臭い匂いは、1ppbという低量でも感知することができる。
【0033】
このような混入物を除去するのに効果的な処置は、酸性種、特に強酸性イオン交換樹脂を含有する後反応器床を使用することにより、このイオン交換樹脂に効果的に混入物を捕捉させることである。強酸性イオン交換樹脂は、スルフォン型であってよい。市販の例は、AMBERLYST15、AMBERJET1500H、AMBERJET1200H、DOWEX MSC−1、DOWEX50W、DIANON SK1B、LEWATIT VP OC1812、LEWATIT S100MBおよびLEWATIT S100 G1の商標で知られているものである。このような強酸性イオン交換樹脂は、H型、および、Na型などの塩型で入手可能である。後反応器保護床内で強酸性樹脂のH型しか使用しない場合、生成物流は後反応器保護床を通過後に酸性となり得る。強酸性イオン交換樹脂のH型および塩型の混合物を使用することは、生成物流のpHが中性に近い状態で維持されるという利点がある。
【0034】
このような後反応器床は、本反応による方法が実施される加水分解反応器床の後に設置してもよい。アルキレンカーボネートが加水分解を受け、対応するアルキレングリコールを形成する反応器床の後に強酸性の後反応器床を設置するさらなる利点は、残っているアルキレンカーボネートは、生成物であるアルキレングリコールの生成物流中に依然として存在する場合があり、このいずれもがアルキレングリコールへと加水分解されることである。
【0035】
運転中の強酸性イオン交換樹脂の消耗および交換または再生を考慮して、後反応器床を2個以上の別の容器で操作し、2個の容器の間で工程を切り換え、このようにして連続運転を維持することが有利である。
【0036】
消耗した強酸性イオン交換樹脂は、HClおよびHSOなどの酸で処理することによって再生することができる。0.1から2Nの熱硫酸が有効であることが証明されている。
【0037】
依然として運転中に生じ得る触媒のいかなる膨潤にも対応するように、反応器の容量は、中の触媒が占める容積よりも、好ましくは10から70容積%を超える範囲で大きいことが有利である。
【0038】
本発明による、アルキレンカーボネートの触媒加水分解に適切な反応温度は、一般的に20から200℃の範囲であり、60から130℃の範囲の温度が好ましい。
【0039】
反応圧力は通常、100から5000kPaの範囲、好ましくは200から3000kPaの範囲、最も好ましくは200から1500kPaの範囲から選択される。
【0040】
以下の例は、本発明を例示するものである。
【0041】
触媒の調製
クロライド形態での第四級アンモニウムタイプの湿ったイオン交換樹脂150ml(Amberjet4200、ex Rohm & Haas、交換性能1.3meq/ml)を水で満たしたガラス管内でスラリー化した。このクロライドアニオンを炭酸水素ナトリウム溶液(水2500g中、10モル倍過剰)で、約5時間(液空間速度:4l/lh)処理することによって交換を行った。次に、この交換樹脂を1200mlの水で約2時間(液空間速度:4l/lh)洗浄した。この生成した触媒中のAmberjet4200からのクロライドアニオンは、所望のバイカーボネートアニオンとほぼ完全に交換され、最終のクロライド内容物は、100ppm未満であった。
【0042】
実験1
実験は、120mlガラスオートクレーブ内で行った。反応器を35gのエチレンカーボネートおよび21.5gの水で満たした。加水分解触媒を十分な量加えることにより、4.1mmolの触媒を得た。反応器は、COでパージし、4.5bar(450kPa)のCO雰囲気により加圧した。反応器の内容物を110℃に加熱する一方で、圧力を4.5barで維持した。30分間という一定の時間の間隔をあけて試料を取り、ガス液体クロマトグラフィー(GLC)で分析した。結果を表Iに示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実験2
調製したAmberjet4200/バイカーボネート触媒(1.3meq/mlのIER性能)を、固定床栓流反応器で、連続流の条件下で2000時間を超えて試験した。触媒の性能は、2つの異なる実験で、2つの液空間速度(LHSV)、0.51および0.75l/l/hで試験した。
【0045】
触媒性能は、熱オイルシステムを用いた加熱式ジャケットを備えた、縦65cm、横0.5インチ(1.27cm)のHoke管内に、20mlの触媒を設置することによって試験した。17.5重量%のECを含むエチレンカーボネート(EC)/水の混合物は、触媒床上をおよそ90℃の温度および1000kPaの圧力で、少なくとも2000時間の間、HPLCポンプで下流に送り出した。この反応温度は、熱オイルシステムの温度により制御した。触媒床の中央に、熱電対と共に温度計保護管を設置し、床温度を測定した。反応器流出液を冷却し、生成物容器内に採取し、この容器からGLC分析用の試料を取り出した。結果を表IIにまとめる。
【0046】
【表2】

【0047】
表IIに提示された結果は、触媒の活性が長時間持続することを明らかに実証するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で、対応するアルキレンカーボネートと水とを反応させることを含み、触媒は、固体支持体上に固定された、1つまたは複数の陽性部位を有するバイカーボネートを活性相として含む、アルキレングリコールの調製方法。
【請求項2】
固体支持体が強塩基性イオン交換樹脂であり、前記強塩基性イオン交換樹脂においてカチオンがポリマー骨格に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体支持体が、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、第四級アルセノニウムカチオン、第四級スチボニウムカチオンまたは第三級スルホニウムカチオンを含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
固体支持体が、第四級アンモニウムカチオンまたは第四級ホスホニウムカチオンを含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、固体支持体上に固定された、カーボネート基、バイカーボネート基またはヒドロキシル基を最初に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
40から200℃の範囲の温度および100から5000kPaの範囲の圧力で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アルキレンカーボネートがエチレンカーボネートである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
触媒の存在下で、対応するアルキレンオキシドと二酸化炭素とを接触させることによってアルキレンカーボネートを調製するステップ、
次いで、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法により、アルキレンカーボネートと、水および/またはアルコールとを反応させるステップ
を含む、アルキレングリコールの調製方法。

【公表番号】特表2010−502677(P2010−502677A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527146(P2009−527146)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059385
【国際公開番号】WO2008/028953
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】