説明

アルキレングリコールの調製方法

本発明は、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法を提供する。アルキレンオキシド反応器からのガス組成物は、カルボキシル化を促進する1種以上の触媒の存在下において、アルキレンオキシド吸収塔中で希薄吸収剤と接触する。希薄吸収剤は、少なくとも50重量%のアルキレンカーボネートおよび10重量%未満の水を含み、60℃を上回る温度でアルキレンオキシド吸収塔に供給される。アルキレンオキシドは、吸収塔中で二酸化炭素と反応し、アルキレンカーボネートを形成し、アルキレンカーボネートを含む濃厚吸収剤が吸収塔から取り出される。濃厚吸収剤の一部は、アルキレンカーボネートが1種以上の加水分解触媒の存在下において水と反応する1つ以上の加水分解反応器に供給される。加水分解反応器からの生成物流は、脱水、精製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノエチレングリコールは、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)のプラスチックおよび樹脂の製造における原材料として用いられる。これは、自動車の不凍液にも組み込まれる。
【0003】
モノエチレングリコールは、一般に、エチレンオキシドから調製され、エチレンオキシドはエチレンから調製される。エチレンおよび酸素を一般に10−30barの圧力および200−300℃の温度において、酸化銀触媒上に通し、エチレンオキシド、二酸化炭素、エチレン、酸素および水を含む生成物流を生成する。生成物流中のエチレンオキシド量は、通常、約0.5から10重量パーセントの間である。生成物流は、エチレンオキシド吸収塔に供給され、エチレンオキシドは、主に水を含有する再循環溶媒流により吸収される。エチレンオキシド減耗流は、再循環吸収剤流により二酸化炭素が少なくとも部分的に吸収される二酸化炭素吸収塔に、部分的または完全に供給される。再循環吸収剤流により吸収されないガスは、二酸化炭素吸収塔を迂回する任意のガスと再合流し、エチレンオキシド反応器に再循環される。
【0004】
エチレンオキシド吸収塔を出た溶媒流は濃厚吸収剤と呼ばれる。濃厚吸収剤は、エチレンオキシドを蒸気流として濃厚吸収剤から除去するエチレンオキシドストリッパーに供給される。エチレンオキシド減耗溶媒流は、希薄吸収剤と呼ばれ、エチレンオキシド吸収塔に再循環されてエチレンオキシドをさらに吸収する。
【0005】
エチレンオキシドストリッパーから得られたエチレンオキシドは、貯蔵および販売のために精製され得る、またはさらに反応してエチレングリコールを生成し得る。周知の一方法において、エチレンオキシドは、非触媒的工程において大過剰の水と反応する。この反応は、一般に、ほとんど90重量パーセントのモノエチレングリコールからなるグリコール生成物流を生成し、残りは、主にジエチレングリコール、いくらかのトリエチレングリコールおよび少量のより高級な同族体である。別の周知の方法において、エチレンオキシドは、二酸化炭素と触媒的に反応して、エチレンカーボネートを生成する。次いでエチレンカーボネートは加水分解されて、エチレングリコールを生成する。エチレンカーボネートを経た反応により、モノエチレングリコールへのエチレンオキシドの変換の選択性が著しく改善される。
【0006】
エチレンオキシド吸収塔に供給される希薄吸収剤は、一般に水性であるが、EP24628に開示されている方法において、希薄吸収剤はエチレンカーボネートである。エチレンカーボネート中に溶解しているエチレンオキシドおよび二酸化炭素を含有する濃厚吸収剤は、エチレンオキシドおよび二酸化炭素がストリッピングされるストリッパーに送られ、エチレンカーボネートは、希薄吸収剤としてエチレンオキシド吸収塔に戻される。ストリッピングされたエチレンオキシドおよび二酸化炭素は、エチレンカーボネート反応器に供給され、カルボキシル化触媒として機能するアニオン交換樹脂の存在下において反応してエチレンカーボネートになる。
【0007】
EP776890は、同様の方法を開示している。エチレンオキシド吸収塔に供給される希薄吸収剤は、主に、エチレンカーボネートおよびエチレングリコールを含有する。エチレンカーボネートおよびエチレングリコール中に溶解しているエチレンオキシドおよび二酸化炭素を含有する濃厚吸収剤は、エチレンオキシドおよび二酸化炭素が触媒の存在下において反応するエチレンカーボネート反応器に直接供給される。吸収装置は低温において運転され、カルボキシル化は、カルボキシル化を促進する条件の後続の反応器中で生じる。
【0008】
GB2107712は、エチレンオキシド反応器からのガスが、エチレンオキシドがカルボキシル化触媒の存在下においてエチレンカーボネートに変換される反応器に直接供給される代替の方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第24628号
【特許文献2】欧州特許出願公開第776890号
【特許文献3】英国特許出願公開第2107712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、アルケンからのアルキレングリコールの製造をさらに改善することを追及し、特に、高選択性を確保しつつ、プラントの複雑さを低減する(およびコストを低減する)方法を提供することを追及した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
したがって、本発明は、
(a)反応器中において、触媒の存在下においてアルケンを酸素と反応させて、アルキレンオキシド、アルケン、酸素、二酸化炭素および水蒸気を含むガス組成物を生成するステップ、
(b)ガス組成物から水を除去するステップ、
(c)(b)からのガス組成物をアルキレンオキシド吸収塔に供給し、希薄吸収剤をアルキレンオキシド吸収塔に供給し、カルボキシル化を促進する1種以上の触媒の存在下においてアルキレンオキシド吸収塔中でガス組成物を希薄吸収剤と接触させ、吸収塔から濃厚吸収剤を取り出し、希薄吸収剤が、少なくとも50重量%のアルキレンカーボネートを含み、10重量%未満の水を含み、希薄吸収剤が60℃を上回る温度で供給されるステップ、
(d)ステップ(c)からの濃厚吸収剤の一部を1つ以上の加水分解反応器に供給し、水を1つ以上の加水分解反応器に供給し、1つ以上の加水分解反応器中において1種以上の加水分解触媒の存在下において濃厚吸収剤を水と接触させ、1つ以上の加水分解反応器から生成物流を取り出すステップ、
(e)ステップ(d)からの生成物流を脱水器に供給し、水を除去し、脱水生成物流を生成するステップ、ならびに
(f)ステップ(e)からの脱水生成物流を精製し、精製アルキレングリコール生成物流を生成するステップ
を含む、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法を提供する。
【0012】
本発明の方法において、アルキレンオキシド吸収塔は、ガス組成物からアルキレンオキシドを吸収する吸収塔としても、アルキレンオキシドをアルキレンカーボネートに変換する反応器としても作用する。カルボキシル化触媒および希薄吸収剤を少なくとも60℃の温度においてアルキレンオキシド吸収塔に供給することにより、アルキレンオキシド吸収塔中でのカルボキシル化を促進し、吸収塔中でアルキレンオキシドがアルキレンカーボネートに著しく変換される。水がガス組成物から除去され、その後ガス組成物がアルキレンオキシド吸収塔に供給され、希薄吸収剤は、少なくとも50重量%のアルキレンカーボネートおよび10重量%未満の水を含む。アルキレンオキシド吸収塔に供給される水の量を制限することにより、アルキレンオキシド吸収塔からアルキレンオキシド反応器に再循環される任意のガスから水を除去する必要が減少し、実質的に非水性の環境において最も有効に機能するカルボキシル化触媒を用いる機会がより増加する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による方法を示す概略図である。
【図2】本発明の別の実施形態による方法を示す概略図である。
【図3】本発明の別の実施形態による方法を示す概略図である。
【図4】本発明の別の実施形態による方法を示す概略図である。
【図5】本発明の別の実施形態による方法を示す概略図である。
【図6】アルキレンオキシド吸収塔塔下部の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な記述)
本発明は、アルキレンオキシドおよびアルキレンカーボネートを経て、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法を提供する。
【0015】
【化1】

【0016】
、R、RおよびRは、好ましくは、水素から選択される、または1個から6個の炭素原子、より好ましくは1個から3個の炭素原子を有する置換されていてもよいアルキル基から選択される。置換基として、ヒドロキシ基等の部分が存在することができる。好ましくは、R、RおよびRは水素原子を表し、Rは、水素を表し、または非置換のC−Cアルキル基を表し、より好ましくは、R、R、RおよびRは、すべて水素原子を表す。
【0017】
したがって、適切なアルケンの例には、エチレンおよびプロピレンが挙げられる。本発明において、最も好ましいアルケンはエチレンである。
【0018】
アルケンは、反応器中において触媒の存在下において酸素と反応して、アルキレンオキシド、アルケン、酸素、二酸化炭素および水蒸気を含むガス組成物を生成する。酸素は、酸素として、または空気として供給され得るが、好ましくは酸素として供給される。バラストガス、例えばメタンまたは窒素は、一般に、引火性の混合を引き起こさずに高酸素濃度での運転を可能にするために供給される。調節剤、例えばモノクロロエタンまたはジクロロエタンは、エチレンオキシドの触媒性能を制御するために供給され得る。アルケン、酸素、バラストガスおよび調節剤は、好ましくは、アルキレンオキシド吸収塔からアルキレンオキシド反応器に(必要に応じて二酸化炭素吸収塔を経て)供給されるガスを再循環させるために供給される。
【0019】
アルキレンオキシド反応器は、一般に、多管式の固定床反応器である。触媒は、好ましくは、担体材料、例えばアルミナの上に微細に分散された銀および必要に応じて促進剤の金属である。反応は、好ましくは、1MPa超で3MPa未満の圧力および200℃超300℃未満の温度において行われる。アルキレンオキシド反応器からのガス組成物は、好ましくは1つ以上の温度水準における蒸気の生成を伴い、1種以上の冷却器で好ましくは冷却される。
【0020】
水はガス組成物から除去され、その後ガス組成物はアルキレンオキシド吸収塔に供給される。さらに、汚染物質はガス組成物から好ましくは除去され、ガス組成物はアルキレンオキシド吸収塔に供給される。可能な汚染物質には、酸、エステル、アルデヒド、アセタールおよび有機ハロゲン化物が挙げられる。
【0021】
水および必要に応じて汚染物質を除去する好ましい方法は、好ましくは、冷却または冷蔵されているのが好ましい、例えば20℃未満の再循環水溶液とガス組成物を接触させることにより急冷することである。急冷温度を下げることにより、アルキレンオキシド吸収塔への供給ガス中の水含有率が低減される。急冷は、好ましくは、アルキレンオキシド吸収塔と同じ容器中で行われる。再循環水溶液の一部を、クエンチ部からブリード流として取り出すことができ、ブリード流中の任意のアルキレンオキシドは、従来の方法により回収され得る。一実施形態において、物質、例えば水酸化ナトリウム等の塩基が、再循環水溶液に添加されて、汚染物質の除去を促進する。急冷後に、ガス組成物は、好ましくはアルキレンオキシド反応器から出てくる熱いガス組成物との熱統合により再加熱され得、その後ガス組成物はアルキレンオキシド吸収塔に供給される。
【0022】
水および必要に応じて汚染物質を除去する別の方法は、熱交換器を用いてガス流を冷却することであり、その後に除去され得る水の凝縮を引き起こす。最も好ましくは、水および必要に応じて汚染物質は、急冷または熱交換器による冷却の両方を用いて除去される。アルキレンオキシド吸収塔へのガス中の水含有率が高いままである場合、吸収塔中の水含有率を、必要に応じて加水分解触媒をアルキレンオキシド吸収塔に(および/または任意の(1つ以上の)仕上げ反応器に)供給することにより低減することができ、このことにより、存在する任意の水の、アルキレンオキシドとの反応を促進して、アルキレングリコールを形成する。
【0023】
ステップ(b)からのガス組成物は、アルキレンオキシド吸収塔に供給される。アルキレンオキシド吸収塔は、好ましくは、垂直に積み重ねられたトレイ塔または充填塔を含む。トレイまたは充填塔は、吸収塔およびガス組成物に表面積を与えて接触させ、2相間の質量移動を促進する。さらに、トレイは、液相反応が生じ得るかなりの液容積を与える。アルキレンオキシド吸収塔が一連の垂直に積み重ねられたトレイを含む実施形態において、ガスは上向きにトレイを通過することができ、液体は下向きにトレイからトレイに流れることができる。好ましくは、塔は、少なくとも20個のトレイ、より好ましくは少なくとも30個のトレイを含む。好ましくは、塔は、70個未満のトレイを含む。トレイを多くすると、塔の吸収能力および反応容積が増大するが、さらなるトレイを追加すると費用が増加する。アルキレンオキシド吸収塔が充填塔を含む実施形態において、構造化充填物、不規則充填物および触媒蒸留の内容物等の従来の充填物が用いられ得る。
【0024】
ステップ(b)からのガス組成物は、好ましくは、アルキレンオキシド吸収塔の下部において供給される。アルキレンオキシド吸収塔が垂直に積み重ねられたトレイ塔を含む場合、ガス組成物は、好ましくは、塔内最下のトレイの下に供給される。アルキレンオキシド吸収塔が充填塔を含む場合、ガス組成物は、好ましくは、充填材料の下に供給される。
【0025】
希薄吸収剤は、アルキレンオキシド吸収塔に供給され、アルキレンオキシド吸収塔中でガス組成物と接触し、濃厚吸収剤(アルキレンカーボネートを含むガス組成物から吸収される成分を含む)は、アルキレンオキシド吸収塔から取り出される。一実施形態において、希薄吸収剤は、アルキレンオキシド吸収塔の上部において供給される。アルキレンオキシド吸収塔が垂直に積み重ねられたトレイ塔を含む場合、希薄吸収剤は、好ましくは、吸収塔中の最上のトレイに供給される。アルキレンオキシド吸収塔が充填塔を含む場合、希薄吸収剤は、好ましくは、充填材料の上に供給される。別の実施形態において、希薄吸収剤は、希薄吸収剤がアルキレンオキシド吸収塔に供給される点より上にトレイまたは充填物があるように供給される。この実施形態において、追加の冷却された希薄吸収剤は、アルキレンオキシド吸収塔の上部に供給されて、アルキレンオキシド吸収塔の上部においてアルキレンオキシドまたは汚染物質を吸収することができる。
【0026】
希薄吸収剤は、少なくとも50重量%のアルキレンカーボネートを含み、10重量%未満の水を含む。本発明の方法が、エチレングリコールの調製のためである場合、好ましいアルキレンカーボネートはエチレンカーボネートである。本発明の方法が、プロピレングリコールの調製のためである場合、好ましいアルキレンカーボネートはプロピレンカーボネートである。希薄吸収剤は、好ましくは、少なくとも60重量%のアルキレンカーボネートを含み、より好ましくは、少なくとも70重量%のアルキレンカーボネートを含む。希薄吸収剤は、好ましくは、3重量%未満の水を含み、より好ましくは、2重量%未満の水を含む。水の量を最少化することは、カルボキシル化触媒が感水性である場合に特に重要である。希薄吸収剤は、アルキレングリコールを含むこともできる。
【0027】
ガス組成物は、カルボキシル化を促進する1種以上の触媒の存在下において、アルキレンオキシド吸収塔中で希薄吸収剤と接触する。本発明の一実施形態において、カルボキシル化を促進する1種以上の触媒は均一系であり、希薄吸収剤は、1種以上の触媒を含む。実質的に非水性の媒体中でカルボキシル化を促進することが知られている均一系触媒には、ハロゲン化亜鉛(特にヨウ化亜鉛および臭化亜鉛)の、第四級のハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウム(例えばハロゲン化n−ブチルアンモニウム)との組合せ、イミダゾリウム塩、ピリジン誘導体、ハロゲン化インジウム、ハロゲン化鉛およびポリオキソメタレート等のイオン液体が挙げられる。当業者に知られている他の均一系カルボキシル化触媒には、ヨウ化カリウムおよび臭化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属、ならびにトリブチルメチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムヨージド、トリフェニルメチルホスホニウムヨージド、トリフェニルプロピルホスホニウムブロミド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドおよびトリブチルメチルアンモニウムヨージド等のハロゲン化された有機のホスホニウム塩またはアンモニウム塩が挙げられる。本発明の別の実施形態において、カルボキシル化を促進する1種以上の触媒は不均一系である。(1種以上の)不均一系触媒は、好ましくは、垂直に積み重ねられたトレイ中または充填塔の充填物中に含有される。カルボキシル化を促進する不均一系触媒は、好ましくは、イオン交換樹脂、シリカ、ポリシロキサン、ポリビニルピリジンまたはポリスチレン等の固体の担体を基材とする。好ましくは、イオン交換樹脂等の固体の担体は、第四級のハロゲン化アンモニウムまたはハロゲン化ホスホニウムにより官能化され、ハロゲン化亜鉛等の金属塩助触媒と組み合わせて用いられる。あるいは、第四級ハロゲン化アンモニウムおよび第四級ハロゲン化ホスホニウムは、シリカ上に固定または不溶性ポリスチレンビーズに結合され得る。あるいは、ハロゲン化亜鉛等の金属塩は、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジンおよびキトサン等の固体の担体上に支持され得る。不均一系触媒は、好ましくは、CDTechからのM−Series(商標)の充填物、Sulzer ChemtechからのKatapak(商標)SPの充填物、KochからのKatamax(商標)の充填物またはMontzからのMultipak(商標)の充填物等の反応性の蒸留充填物を用いて吸収塔に統合される。
【0028】
最も好ましい触媒は、主にアルキレンカーボネートからなり、ごく少ない水を含む反応媒体中に存在する場合に、カルボキシル化反応のための高い活性を有する。触媒は、好ましくは、反応中に安定であり、不純物により浸出または分解する傾向がない。
【0029】
希薄吸収剤は、60℃を上回る温度においてアルキレンオキシド吸収塔に供給される。60℃を上回る温度において希薄吸収剤を供給することにより、吸収塔中でのカルボキシル化を促進し、生成されるアルキレンカーボネートが凝固しないことを保証する。凝固は、34℃の融点を有するエチレンカーボネートについての普通の問題である。好ましくは、希薄吸収剤は、65℃を上回る温度において、より好ましくは70℃を上回る温度において、なおより好ましくは80℃を上回る温度において、最も好ましくは90℃から250℃の間の温度で供給される。
【0030】
(a)からのガス組成物は、好ましくは、60℃を上回る温度においてアルキレンオキシド吸収塔に供給される。好ましくは、ガス組成物は、65℃を上回る温度において、より好ましくは70℃を上回る温度において、なおより好ましくは80℃を上回る温度において、最も好ましくは90℃から200℃の間の温度において供給される。
【0031】
アルキレンオキシド吸収塔中の温度は、アルキレンオキシド吸収塔に供給されるガス組成物および希薄吸収剤の温度により影響される。さらに、カルボキシル化反応は発熱性であるので、塔から吸収剤を取り出し、冷却し、塔に吸収剤を戻すことにより、アルキレンオキシド吸収剤中の温度を制御することが好ましい。アルキレンオキシド吸収塔中の温度は、好ましくは、これが80℃を上回り、より好ましくは90℃を上回り、好ましくは250℃を下回るように制御される。この温度は、カルボキシル化反応を促進し、生成されるアルキレンカーボネートが凝固しないことを保証する。
【0032】
アルキレンオキシド吸収塔中の圧力は、好ましくは1から4MPa、より好ましくは2から3MPaである。好ましい圧力は、より費用がかからない設備(例えば、より薄い壁を有する設備)を要求するより低い圧力と、吸収を増大させ容積測定によるガス流量を減少することにより設備および配管の大きさを縮小するより高い圧力と中間である。
【0033】
ステップ(b)からのガス組成物中のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素は、吸収剤中に吸収される。カルボキシル化触媒はカルボキシル化を促進し、好ましくは、アルキレンオキシド吸収塔に入ってくるアルキレンオキシドの少なくとも60%は、アルキレンオキシド吸収塔中でアルキレンカーボネートに変換される。より好ましくは、アルキレンオキシド吸収塔に入ってくるアルキレンオキシドの少なくとも80%は、アルキレンオキシド吸収塔中で変換される。
【0034】
アルキレンオキシド吸収塔に供給される、ステップ(b)からのガス組成物は、二酸化炭素を含む。ガス組成物は、カルボキシル化の所望の水準を達成するのに不十分な二酸化炭素を含有している可能性がある。これは、ステップ(a)において新しいバッチの触媒を用いた場合にありがちである。さらなる二酸化炭素源、例えば二酸化炭素回収ユニットからの二酸化炭素、または始動時における外部供給源からの二酸化炭素が、好ましくはアルキレンオキシド吸収塔に供給される。アルキレンオキシド吸収塔に供給される二酸化炭素の総量と、アルキレンオキシド吸収塔に供給されるアルキレンオキシドの量とのモル比は、好ましくは5:1から1:3の間、より好ましくは3:1から4:5の間である。二酸化炭素量がより多いと、アルキレンカーボネートへの変換が改善される。しかし、二酸化炭素量がより多いことも、コストがかかり得る工程中の二酸化炭素についての除去能力の追加、またはアルキレンオキシド触媒の性能に悪影響を及ぼすより高い二酸化炭素濃度でのアルキレンオキシド触媒の操作のいずれかを必要とする。
【0035】
アルキレンオキシド吸収塔中で吸収されないガスは、好ましくは、部分的または完全に、二酸化炭素が再循環吸収剤流により少なくとも部分的に吸収される二酸化炭素吸収塔に供給される。再循環吸収剤流により吸収されないガスは、好ましくは二酸化炭素吸収塔を迂回する任意のガスと再合流し、アルキレンオキシド反応器に再循環される。本発明の方法が、アルキレンオキシド吸収塔におけるアルキレンオキシドおよび二酸化炭素の著しい反応を達成するため、二酸化炭素は、アルキレンオキシド吸収塔中に効果的に捕捉されるので、アルキレンオキシド吸収塔を出るガス中の二酸化炭素量が少なく、二酸化炭素除去装置の必要性を低減する。本発明の一実施形態において、アルキレンオキシド吸収塔を出る、ガス流中の二酸化炭素量が十分に少ないので、二酸化炭素を回収するための二酸化炭素吸収塔が必要ない。
【0036】
濃厚吸収剤は、好ましくはアルキレンオキシド吸収塔の下部から液体を取り出すことにより、アルキレンオキシド吸収塔から取り出される。
【0037】
本発明の一実施形態において、ステップ(c)からの濃厚吸収剤の一部または全部は、ステップ(d)における1つ以上の加水分解反応器に供給される前に1つ以上の仕上げ反応器に供給される。アルキレンオキシド吸収塔に供給されるアルキレンオキシドの有意な量(例えば、少なくとも1%)が、アルキレンオキシド吸収塔中でアルキレンカーボネートに変換されない場合には、1つ以上の仕上げ反応器に供給するのが好ましい。逆に、アルキレンオキシド吸収塔に供給されるアルキレンオキシドの大部分(例えば、90%超)が、アルキレンオキシド吸収塔中でアルキレンカーボネートに変換される場合には、1つ以上の仕上げ反応器は必要ないことがあり、このことにより、本方法において用いられる設備は少なくなる。(1つ以上の仕上げ反応器を用いるかどうかの判断は、アルキレンオキシド吸収塔に供給されるアルキレンオキシドの90から99%が、アルキレンオキシド吸収塔中でアルキレンカーボネートに変換される領域において最も難しい。この範囲において、1つ以上の仕上げ反応器を用いるかどうかを考慮する際に、コストおよび生成物品質の要求を含むいくつかの異なる要因が、当業者により考慮される可能性がある。)アルキレンオキシド吸収塔中でのアルキレンオキシドの変換を最大化するために、スプレーノズルが、アルキレンオキシド吸収塔の下部において用いられて、二酸化炭素を分散し、カルボキシル化を促進することができる。1つ以上の仕上げ反応器は、好ましくは栓流反応器を含む。1つ以上の仕上げ反応器において、アルキレンオキシドのさらなるカルボキシル化が生じ、好ましくは、仕上げ反応器に入ってくるアルキレンオキシドの少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95%が、仕上げ反応器中でアルキレンカーボネートに変換される。仕上げ反応器は、カルボキシル化触媒を含有する。均一系触媒がアルキレンオキシド吸収塔中で用いられる場合には、濃厚吸収剤はカルボキシル化触媒を含み、仕上げ反応器に追加の触媒を添加する必要はない。しかし、不均一系触媒がアルキレンオキシド吸収塔中で用いられる実施形態において、仕上げ反応器中に不均一系触媒、最も好ましくは吸収塔中で用いられるのと同じ不均一系触媒の床を組み込むのが好ましい。好ましくは、濃厚吸収剤がアルキレンオキシド吸収塔から取り出された後で、濃厚吸収剤が仕上げ反応器に供給される前に、追加の二酸化炭素が、仕上げ反応器にまたは濃厚吸収剤に供給される。
【0038】
ステップ(c)からおよび任意のさらなる仕上げ反応器からの濃厚吸収剤の一部は、1つ以上の加水分解反応器に供給される。好ましくは、1−50重量%の濃厚吸収剤が加水分解反応器に供給され、最も好ましくは、2−20重量%が加水分解反応器に供給される。好ましくは、残りの濃厚吸収剤は、希薄吸収剤としてアルキレンオキシド吸収塔に再循環される。1つを超える加水分解反応器がある場合、加水分解反応器は連続して接続されている、すなわち、濃厚吸収剤の一部が、それぞれの加水分解反応器を順次必ず通過するのが好ましい。
【0039】
ステップ(c)からおよび任意のさらなる仕上げ反応器から生じる濃厚吸収剤は、濃厚吸収剤が少しでもステップ(d)における1つ以上の加水分解反応器に供給される前に、少なくとも2つの部分に分配されなければならない。さらに、濃厚吸収剤は、これが1つ以上の加水分解反応器に供給される前に、軽質成分の除去および/または均一系カルボキシル化触媒の除去を受けることができる。(軽質成分は、アルケン等のガスであり、また、(a)から生じるガス組成物中に存在するメタン等のバラストガスは、ステップ(c)において吸収塔に吸収されるので、濃厚吸収剤中に存在する。)
2つの部分への濃厚吸収剤の分配、軽質成分の除去および均一系カルボキシル化触媒の除去を達成するために用いられ得る好ましい方法において、濃厚吸収剤はフラッシュ容器に供給される。フラッシュ容器は、0.01から2MPa、好ましくは0.1から1MPa、最も好ましくは0.1から0.5MPaの圧力であり得る。フラッシュ容器を用いて除去された軽質成分は、好ましくはアルキレンオキシド吸収塔に再循環され、アルキレンオキシド吸収塔の下部に供給され得る。二酸化炭素が二酸化炭素ブリード流により工程から除去される場合には、アルキレンオキシド吸収塔に軽質成分を再循環することにより、アルケンを含む軽質成分が回収され失われないので、工程の効率が増大する。濃厚吸収剤中のアルキレンカーボネートの一部が、フラッシュされ、次いで凝縮され、1つ以上の加水分解反応器に供給される。均一系カルボキシル化触媒を含有し得る残留濃厚吸収剤は、好ましくは、希薄吸収剤としてアルキレンオキシド吸収塔に再循環される。
【0040】
1つ以上の加水分解反応器に供給されるべき部分および(好ましくはアルキレンオキシド吸収塔に再循環される)別の部分への濃厚吸収剤の分配を達成するために用いられ得る代替法において、濃厚吸収剤は液相分配を受ける。この方法により、触媒分離による軽質成分の除去がないので、軽質成分は、濃厚吸収剤の一部として加水分解反応器に送られる。この方法において、軽質成分は、好ましくは加水分解反応器から除去され、アルキレンオキシド吸収塔に再循環される。
【0041】
なおさらなる方法において、軽質成分は、フラッシュ容器を用いて除去され、好ましくは再循環され、残留濃厚吸収剤は、次いで液相分配を受ける。
【0042】
水は、1つ以上の加水分解反応器に供給される。水と反応器に入ってくるアルキレンカーボネートとのモル比は、好ましくは2:1から1:2の範囲内、最も好ましくは約1:1である。1つ以上の加水分解反応器がある場合、水は、最初の加水分解反応器にのみ直接供給され得る(そのため、水は、最初の加水分解反応器を経て次の加水分解反応器に供給される。)、または別法として水は、最初の加水分解反応器に、および1つ以上の次の加水分解反応器に直接供給され得る。水は、好ましくは蒸気として供給される。
【0043】
濃厚吸収剤は、1種以上の加水分解触媒の存在下において水と接触する。一実施形態において、1種以上の加水分解触媒は、1つ以上の加水分解反応器に供給される均一系触媒である。加水分解を促進することが知られている均一系触媒には、炭酸カリウム、水酸化カリウムおよび炭酸水素カリウム等の塩基性アルカリ金属塩、またはモリブデン酸カリウム等のアルカリ金属メタレートが挙げられる。別の実施形態において、1種以上の加水分解触媒は、不均一系触媒であり、好ましくは1つ以上の加水分解反応器中の固定床中に含有される。加水分解を促進する不均一系触媒には、固体の担体上に固定されたメタレート、例えば、第四級アンモニウムもしくは第四級ホスホニウムの基を含有するイオン交換樹脂上に固定されたモリブデン酸塩、バナジウム酸塩もしくはタングステン酸塩、または固体の担体上に固定された炭酸水素イオン等の塩基性アニオン、例えば第四級アンモニウムもしくは第四級ホスホニウムの基を含有するイオン交換樹脂上に固定された炭酸水素塩が挙げられる。
【0044】
本発明の一実施形態において、1つ以上の加水分解反応器の少なくとも1つはバッフル付反応器であり、このバッフル付反応器は少なくとも4つの区画を有し、この区画は内部バッフルにより形成され、この内部バッフルは反応器を通る反応流体に波状の経路をもたらす。必要に応じて蒸気がバッフル付反応器に注入される。
【0045】
二酸化炭素は、1つ以上の加水分解反応器中で生成され、好ましくは、生成物流が1つ以上の加水分解反応器を出るときに生成物流から分離され、アルキレンオキシド吸収塔におよび/または1つ以上の仕上げ反応器に少なくとも部分的に再循環される。
【0046】
1つ以上の加水分解反応器中の温度は、一般に80から200℃であり、好ましくは100から180℃である。1つ以上の加水分解反応器中の圧力は、一般に0.1から3MPaである。より高い圧力により、圧縮を必要とせず、吸収塔および仕上げ反応器に二酸化炭素を再循環することが可能になり得る。
【0047】
ステップ(d)からの生成物流は、脱水器に供給される。脱水器に供給される流れは、好ましくは、ごく少ないアルキレンオキシドまたはアルキレンカーボネートを含む、すなわち、アルキレンオキシドまたはアルキレンカーボネートの大部分が、脱水器塔への供給前に、アルキレングリコールに変換されている。好ましくは、脱水器塔に供給される流れ中の、アルキレングリコールと、アルキレンオキシドおよびアルキレンカーボネート(合わせて)とのモル比は、90:10を上回り、より好ましくは95:5を上回り、最も好ましくは99:1を上回る。脱水器は、好ましくは0.05MPa未満、より好ましくは0.025MPa未満、最も好ましくは約0.0125MPaの圧力で作動する少なくとも1つの真空塔を含む、1つ以上の塔であるのが好ましい。
【0048】
1種以上の均一系加水分解触媒が、1つ以上の加水分解反応器中で用いられる場合、または1種以上の均一系カルボキシル化触媒が、アルキレンオキシド吸収塔中で用いられ、1つ以上の加水分解反応器への供給前に濃厚吸収剤から分離されない場合、(1種以上の)均一系触媒は、ステップ(d)からの生成物流から、またはステップ(e)からの脱水生成物流から除去され得る。一実施形態において、ステップ(d)からの生成物流は、フラッシュ容器に供給されて、(1種以上の)均一系触媒を分離し(均一系触媒は、好ましくは、アルキレンオキシド吸収塔にまたは1つ以上の加水分解反応器に再循環される。)、次いで脱水器に供給される。別の実施形態において、ステップ(e)からの脱水生成物流は、フラッシュ容器に供給されて、(1種以上の)均一系触媒を分離し(均一系触媒は、好ましくは、アルキレンオキシド吸収塔にまたは1つ以上の加水分解反応器に再循環される。)、次いで続いて精製されて不純物を除去する。
【0049】
ステップ(e)からの脱水生成物流は精製されて、不純物が除去され、精製アルキレングリコール生成物流をもたらす。
【0050】
図1に、本発明の方法の好ましい実施形態を示す。エチレン、酸素、メタンおよび調節剤(例えばモノクロロエタン)は、(1)において再循環ガスに供給される。エチレンオキシド反応器(2)中で、エチレンおよび酸素が反応し、エチレン、酸素、メタン、エチレンオキシド、調節剤および二酸化炭素を含むガス組成物を生成し、これが冷却され、クエンチ部の下部トレイの下でクエンチ(4)に供給される。急冷されたガスは、再加熱され、下部トレイの下または充填材料の下でエチレンオキシド吸収塔塔(3)に供給される。必要に応じて二酸化炭素回収部(7)または加水分解反応器(13)からの追加の二酸化炭素も、エチレンオキシド吸収塔(3)に供給され得る、またはエチレンオキシド吸収塔への供給前にガスと混合され得る。エチレンカーボネート70重量%超、水2重量%未満および均一系カルボキシル化触媒を含む希薄吸収剤は、エチレンオキシド吸収塔塔(3)の上部で供給される(5)。希薄吸収剤は、90℃の温度で供給される。エチレンオキシド吸収塔中で、エチレンオキシドおよび二酸化炭素は、希薄吸収剤中に吸収され、反応して、エチレンカーボネートを生成する。エチレンオキシド吸収塔(3)中に吸収されなかったガスは、二酸化炭素がガスから除去される二酸化炭素回収部(7)に部分的または完全に供給される。回収された二酸化炭素流(8)は、直接にまたは供給ガスと混合することにより、エチレンオキシド吸収塔(3)に部分的または完全に再循環され得る。エチレンオキシド吸収塔(3)からのガス、二酸化炭素回収部(7)からのガスおよび反応器(2)に供給される再合流したガス流は、冷却されて、水含有率を低減し得る。ガス流から追い出された液体は、エチレンオキシド吸収塔塔(3)に再循環され得る。
【0051】
濃厚吸収剤は、エチレンオキシド吸収塔下部から取り出され(6)、仕上げ反応器(20)に供給される。次いで、濃厚吸収剤流は分配され(11)、一部はフラッシュ容器(9)に供給される。均一系カルボキシル化触媒は、フラッシュ容器中で分離され、フラッシュ容器から取り出され、希薄吸収剤(5)として吸収塔に再循環される前に、フラッシュ容器に供給されなかった濃厚吸収剤の一部と合わせられる。軽質成分流(10)は、フラッシュ容器の下流で取り出され、直接にまたは供給ガスと混合することにより、エチレンオキシド吸収塔(3)に再循環され得る。濃厚吸収剤流は、熱交換器(12)に供給され、次いで加水分解反応器(13)に供給される。
【0052】
流れ(19)および均一系加水分解触媒(17)は、加水分解反応器(13)に供給される。加水分解反応器(13)中において、エチレンカーボネートおよび水は、反応してモノエチレングリコールを生成する。放出された二酸化炭素ガス(14)は、直接にもしくはエチレンオキシド吸収塔供給材料と混合することにより、エチレンオキシド吸収塔(3)に再循環され得る、または完全または部分的に放出され得る。加水分解反応器(13)からの生成物流は、水が除去される脱水器(15)に供給される。脱水生成物流は、脱水器(15)から取り出され、モノエチレングリコール(MEG)精製塔(16)に供給される。グリコール中に溶解された加水分解触媒を含む溶液(17)は、MEG精製塔(16)の下部から取り出され、加水分解反応器(13)に再循環される。モノエチレングリコール生成物(18)は、MEG精製塔上部から取り出される。
【0053】
図2に、均一系のカルボキシル化触媒および加水分解触媒が、エチレンオキシド吸収塔(3)に供給される希薄吸収剤(5)中に両方存在する、本発明の方法の代替的な好ましい実施形態を示す。エチレンオキシド吸収塔(3)からの濃厚吸収剤流は、仕上げ反応器(20)に、次いでフラッシュ容器(9)に供給される。フラッシュ容器の下流で、流れが分配され、一部が熱交換器(12)に供給され、次いで加水分解反応器(13)に供給される。均一系触媒は、フラッシュ容器中で分離されず、加水分解反応器に供給される濃厚吸収剤中に残留する。グリコール中に溶解されたカルボキシル化触媒および加水分解触媒を含む溶液(17)は、MEG精製塔(16)の下部から取り出され、仕上げ反応器(11)に供給されない吸収剤流と混合後に、希薄吸収剤(5)としてエチレンオキシド吸収塔(3)に再循環される。
【0054】
図3に、エチレンオキシド吸収塔塔(3)中の不均一系触媒充填物、および加水分解反応器(13)中の不均一系触媒床を含む方法のさらに別の好ましい実施形態を示す。この実施形態においては、触媒の分離または再循環の必要がない。この実施形態において、仕上げ反応器は用いられていない。
【0055】
図4に、希薄吸収剤の一部が熱交換器(21)中で冷却され、上部充填物または上部トレイの上でエチレンオキシド吸収塔塔(3)に供給されて、エチレンオキシド吸収塔(3)の上部において残留エチレンオキシドおよび/または汚染物質を吸収する、均一系触媒を用いる実施形態を示す。この実施形態において、仕上げ反応器は用いられていない。
【0056】
図5に、エチレンオキシド吸収塔塔(3)中の不均一系触媒充填物、および加水分解反応器(13)中の均一系触媒を用いる方法の実施形態を示す。この実施形態において、エチレンオキシド吸収塔(3)を出るガス(23)の二酸化炭素含有率は十分低いので、このガス流から二酸化炭素を回収する必要はない。
【0057】
図6に、二酸化炭素ガス(100)がノズル(200)を通って液体に供給される、エチレンオキシド吸収塔塔下部の実施形態を説明する。液面(300)は、下部トレイの下または塔充填物(400)の下部の下にうまく維持される。濃厚吸収剤(500)は下部で出てくる。
【0058】
次に、本発明を、本発明を限定することを意図するものではない実施例を参照することにより説明する。
【実施例】
【0059】
本発明の方法を、図5に示すようなシステムに基づいてモデル化した。エチレンオキシド反応器の製造能力は1477kモル/時である。エチレンオキシド反応器(2)の出口からの生成物ガス流(22)は、245℃から3段階で50℃に冷却され、25℃に冷却された1000t/時の再循環水流により急冷することにより水が除去されるクエンチ部(4)に供給され、このことにより、エチレンオキシド生成物ガスの水含有率を、エチレンオキシド反応器出口における1.1モル%からエチレンオキシド吸収塔塔(3)への供給材料中における0.3モル%に低減する。このように、クエンチ部において、420kモル/時の水が除去、放出される。クエンチのブリード流により、13kモル/時のエチレンオキシドも放出される。クエンチ部は、エチレンオキシド吸収塔塔(3)と同じ容器の下部に統合された2つの理論段からなる吸収部としてモデル化されている。
【0060】
クエンチ部を出たガスは、エチレンオキシド反応器生成物ガスと向流で92℃の温度に再加熱される。500kモル/時の二酸化炭素流は、加水分解反応器(13)から再循環され(21)、クエンチ部からの再加熱されたガスと合流する。クエンチ部からの再加熱されたガスは、エチレンオキシド吸収塔(3)の下部に供給される。塔は、不均一系触媒充填物材料、臭化物の形態のLewatit(商標)KRイオン交換樹脂上のヨウ化亜鉛によって充填されている。この塔は、最高圧力22.5barおよび圧力損失100mbarで作動する。この塔は、22個の理論段によりモデル化されている。90℃の温度をもつ希薄吸収剤(5)は、同じ塔の上部に入ってくる。希薄吸収剤流は12286kモル/時である。
【0061】
この塔中で、エチレンオキシド(EO)および二酸化炭素は、反応してエチレンカーボネートを形成する。アレニウス型の反応速度式は、
d[EO]/dt=−1.81E+10*exp{−9264/T}*[EO]
である。
【0062】
不均一系カルボキシル化触媒の活性のためには、できるだけ水濃度を低く保つことが必須である。加水分解触媒、炭酸水素塩の形態のAmberjet4200の樹脂が、カルボキシル化触媒と1:10の比で混合される。このように、ガスとともに吸収剤に入ってくる少量の水は、反応式
d[EO]/dt=−2.0E+11*exp{−9021/T}*[EO]*[HO]
に従って、エチレンオキシド(EO)と反応し、モノエチレングリコールになる。
【0063】
以下の表1に、エチレンオキシド吸収塔についての生じるモル収支(kモル/時でのモル流量)を示す。
【0064】
【表1】

【0065】
エチレンカーボネートへのエチレンオキシドのカルボキシル化は発熱反応である。すべての熱20.6MWは、塔下部の2つの部分的な側面排出口により塔から除去される。排出液体は、95℃に冷却され、排出点よりわずかに下で塔に再循環される。
【0066】
エチレンオキシド吸収塔塔(23)の上部を出るガスは、低い二酸化炭素および水の濃度を有している。したがって、ガスが、エチレンオキシド反応器の入口に再循環される前に、二酸化炭素および水を除去するためのさらなる処理は、この実施例において必要ない。液体を冷却し追い出すことにより、モノエチレングリコールがガス流から除去される。
【0067】
表1の5列目から、塔を出た吸収剤流(6)がなお未変換のエチレンオキシドを含有することが明らかである。エチレンオキシド吸収塔塔に供給されるエチレンオキシドの変換率は92%である。エチレンオキシドの完全な変換は、同じ不均一系触媒が充填され、11秒の液体滞留時間をもつ恒温栓流反応器である仕上げ反応器(20)中でエチレンオキシド吸収塔生成物を処理することにより達成される。この反応器は、110℃で運転される。追加量159kモル/時の二酸化炭素を仕上げ反応器に供給して、エチレンカーボネートへのエチレンオキシドの完全な変換を可能にする。
【0068】
仕上げ反応器のモル収支(kモル/時でのモル流量)を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
液体エチレンカーボネートは、エチレンオキシド反応器再循環ガス流からの、メタンおよびエチレン等の炭化水素ガスを吸収する。二酸化炭素ブリード(14)とともにエチレンのような重要な炭化水素を失うことを避けるために、仕上げ反応器生成物はフラッシュされる。圧力は、仕上げ反応器出口における21.6bargから、断熱フラッシュ容器(9)において1bargに引き下げられる。表3におけるモル収支(kモル/時でのモル流量)は、エチレンおよびエタンの大部分が液体吸収剤から除去され、圧縮後にエチレンオキシド吸収塔塔または再循環ガスに再循環され得ることを示している。
【0071】
【表3】

【0072】
液体の大部分は、95℃に冷却された後に、エチレンオキシド吸収塔の上部に再循環流(5)としてポンプで戻される。
【0073】
液体の少ない部分は、再循環流から分離され、水1800kモル/時およびモノエチレングリコール3000kモル/時中に溶解した炭酸カリウム200kモル/時の再循環触媒に混合される。この溶液は150℃に加熱され、加水分解反応器(13)に供給される。加水分解反応器は、6分の液体滞留時間をもち、150℃において運転される恒温栓流反応器としてモデル化されたバッフル付容器である。二酸化炭素ガスは、放出され、エチレンオキシド反応器生成物ガス(21)流および仕上げ反応器(24)に一部が再循環され得る。加水分解反応器は25bargにおいて運転されるため、これは圧縮の必要なしに行われ得る。残留二酸化炭素は、大気(14)に排出される。
【0074】
このモデルにおいて用いられる反応速度は、
エチレンカーボネート+HO−>モノエチレングリコール+CO
d[EC]/dt=−0.01*[EC]*[HO]
エチレンカーボネート+モノエチレングリコール−>ジエチレングリコール+CO
d[EC]/dt=−0.00001*[EC]*[MEG]
である。
【0075】
加水分解反応器についてのモル収支(kモル/時でのモル流量)を、表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
加水分解反応器生成物は、従来技術により脱水され、本質的に水を含まないグリコール生成物は、モノエチレングリコール精製塔に送られる。モノエチレングリコール精製塔の下部において、モノエチレングリコールは、精製のために精製塔の上部にフラッシュされ、モノエチレングリコール中KCO溶液(17)は、加水分解反応器の入口に再循環される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケンからアルキレングリコールを調製する方法であって、
(a)反応器中において、触媒の存在下においてアルケンを酸素と反応させて、アルキレンオキシド、アルケン、酸素、二酸化炭素および水蒸気を含むガス組成物を生成するステップ、
(b)ガス組成物から水を除去するステップ、
(c)(b)からのガス組成物をアルキレンオキシド吸収塔に供給し、希薄吸収剤をアルキレンオキシド吸収塔に供給し、カルボキシル化を促進する1種以上の触媒の存在下においてアルキレンオキシド吸収塔中でガス組成物を希薄吸収剤と接触させ、ならびに吸収塔から濃厚吸収剤を取り出すステップ(希薄吸収剤は、少なくとも50重量%のアルキレンカーボネートを含み、および10重量%未満の水を含み、ならびに希薄吸収剤は60℃を上回る温度で供給される。)、
(d)ステップ(c)からの濃厚吸収剤の一部を1つ以上の加水分解反応器に供給し、水を1つ以上の加水分解反応器に供給し、1つ以上の加水分解反応器中において1種以上の加水分解触媒の存在下において濃厚吸収剤を水と接触させ、ならびに1つ以上の加水分解反応器から生成物流を取り出すステップ、
(e)ステップ(d)からの生成物流を脱水器に供給し、水を除去して脱水生成物流を生成するステップ、ならびに
(f)ステップ(e)からの脱水生成物流を精製して精製アルキレングリコール生成物流を生成するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(b)において、水が、ガス組成物が再循環水溶液と接触する急冷により、および/または熱交換器を用いてガス組成物を冷却することにより除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルキレンオキシド吸収塔が、垂直に積み重ねられたトレイ塔、または充填塔を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルキレンオキシド吸収塔中の温度が、80℃超から250℃未満の範囲内に制御される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
二酸化炭素を、アルキレンオキシド吸収塔に、二酸化炭素回収ユニットからおよび/または外部供給源から供給することを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)からの濃厚吸収剤の一部または全部を、ステップ(d)において濃厚吸収剤を1つ以上の加水分解反応器に供給する前に、1つ以上の仕上げ反応器に供給することを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)からおよび任意の追加した仕上げ反応器からの濃厚吸収剤の1−50重量%を、加水分解反応器に供給すること、ならびに濃厚吸収剤の残り50−99重量%を、希薄吸収剤の全部または一部としてアルキレンオキシド吸収塔に再循環することを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)からおよび任意の追加した仕上げ反応器からの濃厚吸収剤をフラッシュ容器に供給すること、フラッシュ容器を用いて軽質成分を除去すること、ならびに軽質成分をアルキレンオキシド吸収塔に再循環することを含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
希薄吸収剤が、均一系カルボキシル化触媒を含み、ステップ(c)からおよび任意の追加した仕上げ反応器からの濃厚吸収剤をフラッシュ容器に供給すること、フラッシュ容器から均一系カルボキシル化触媒およびアルキレンカーボネートを含む混合物を取り出すこと、ならびに希薄吸収剤の成分としてアルキレンオキシド吸収塔に混合物を再循環することを含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
均一系加水分解触媒を加水分解反応器に供給すること、ステップ(d)からの生成物流またはステップ(e)からの脱水生成物流をフラッシュ容器に供給すること、フラッシュ容器から均一系加水分解触媒およびアルキレングリコールを含む混合物を取り出すこと、ならびに加水分解反応器に混合物を再循環することを含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
希薄吸収剤が、均一系カルボキシル化触媒および均一系加水分解触媒を含み、ステップ(d)からの生成物流またはステップ(e)からの脱水生成物流をフラッシュ容器に供給して均一系触媒を分離すること、および触媒をアルキレンオキシド吸収塔に再循環することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アルキレンオキシド吸収塔中でカルボキシル化を促進する1種以上の触媒が不均一系であり、ならびに不均一系触媒が、垂直に積み重ねられたトレイ中または充填塔の充填物中に含有されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アルキレンオキシド吸収塔に入ってくるアルキレンオキシドの少なくとも60%が、アルキレンオキシド吸収塔中でアルキレンカーボネートに変換される、請求項1から12のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−504465(P2011−504465A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533557(P2010−533557)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065323
【国際公開番号】WO2009/062933
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】