説明

アルギネートオリゴマーと抗生物質とによるアシネトバクター感染の治療

本発明は、アシネトバクター属の成長を阻害する抗生物質の有効性を改善する方法であって、上記抗生物質をアルギネートオリゴマーと共に使用することを含む、アシネトバクター属の成長を阻害する抗生物質の有効性を改善する方法を提供する。アシネトバクター属は有生物表面上のものであっても、又は無生物表面上のものであってもよく、医学的及び非医学的な使用及び方法の両方が提供される。一態様では、本発明は、アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体の治療において、少なくとも1つの抗生物質と共に使用されるアルギネートオリゴマーを提供する。別の態様では、該方法は、アシネトバクター属による部位のコンタミネーションを抑制するために、例えば消毒目的及び清浄目的で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシネトバクター生物に対する抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の有効性、特にアシネトバクター生物の成長を阻害する抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の効果(又は有効性)を増強又は改善するためのアルギネートオリゴマーの使用に関する。本発明は、アルギネートオリゴマーとアシネトバクター属に対する抗生物質との相乗効果の観察に基づき、したがって被験体におけるアシネトバクター属による位置のコンタミネーション(すなわちコロニー形成)の抑制、アシネトバクター生物の集団の抑制、特にアシネトバクター感染の治療のために抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と共に(又は組み合わせて若しくは併用して)使用されるアルギネートオリゴマーを提供する。
【背景技術】
【0002】
アシネトバクター属は、絶対好気性非発酵グラム陰性桿菌である細菌の属である。アシネトバクター種は自然界に広く分布しており、湿った又は乾いた表面上で長時間生存することができる。アシネトバクター種は健常な被験体に対しては非病原性であると考えられているが、アシネトバクター種が病院内環境で長時間存続し、易感染性患者の院内感染に関与し得ることが明らかになってきている。アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)は院内肺炎、特に遅発性人工呼吸器関連肺炎の原因になることが多く、皮膚感染及び創傷感染、菌血症及び髄膜炎を含む様々な他の感染を引き起こす可能性がある。アシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwoffii)も髄膜炎と関連している。アシネトバクター・ヘモリチカス(Acinetobacter haemolyticus)、アシネトバクター・ジョンソニイ(Acinetobacter johnsonii)、アシネトバクター・ジュニイ(Acinetobacter junii)、アシネトバクター・レイディオレジステンス(Acinetobacter radioresistens)、アシネトバクター・タンドイイ(Acinetobacter tandoii)、アシネトバクター・チェルンベルギアエ(Acinetobacter tjernbergiae)、アシネトバクター・タウネリ(Acinetobacter towneri)又はアシネトバクター・ウルシンギイ(Acinetobacter ursingii)を含む他の種も感染に関係している。特に注目すべきは、中東、例えばイラクに駐留していた米軍の軍人におけるアシネトバクター・バウマンニ感染の有病率である。
【0003】
多くのアシネトバクター株が多剤耐性を有するようであり、アシネトバクター感染及びコンタミネーションの抑制を困難にしているという事実が懸念されている。細菌における多剤耐性(MDR)は、少なくとも3つの薬物群、具体的には細菌との関連においては、少なくとも3つの抗微生物(又はより具体的には抗菌)剤群、特に本発明との関連においては、少なくとも3つの抗生物質群に対して細菌が耐性を有する状況を表す。或る群の抗生物質は、異なる群の抗生物質とは機能的に無関係であるか、構造的に無関係であるか、又はその両方である。細菌におけるMDRはしたがって、多抗菌薬耐性又は多抗生物質耐性と呼ばれることも多い。これらの用語は当該技術分野及び本明細書において区別なく使用される。多剤耐性表現型(又は多抗菌薬/抗生物質耐性表現型)を示す細菌は、MDR細菌(又は場合によってはMAR細菌)と称される。この場合も、これらの用語は当該技術分野及び本明細書において区別なく使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アシネトバクター感染は、その生物がMDRでなくとも問題を引き起こす場合がある。そのため、アシネトバクター属による感染及びコンタミネーション(MDRアシネトバクター属によるものを含む)に対する安全かつ効果的な治療が緊急に必要とされている。
【0005】
アルギネートは、(1−4)結合したβ−D−マンヌロン酸(M)及び/又はそのC−5エピマーα−L−グルロン酸(G)の直鎖ポリマーである。アルギネートの一次構造は、大きく変動し得る。M残基及びG残基は、連続した(contiguous)M残基又はG残基のホモポリマーブロック、交互のM残基及びG残基のブロックとして構成されることがあり、単一のM残基又はG残基がこれらのブロック構造の間に入るものとして見出される場合もある。アルギネート分子は、これらの構造の幾つか又は全てを含むことがあり、かかる構造は、ポリマー全体に均一に分布しないこともある。極端には、グルロン酸のホモポリマー(ポリグルロネート)、又はマンヌロン酸のホモポリマー(ポリマンヌロネート)が存在する。
【0006】
アルギネートは、海生褐藻類(例えば、デュルビレア(Durvillea)、レソニア(Lessonia)及びラミナリア(Laminaria)の或る特定の種)、並びに細菌(例えば、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)及びアゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii))から単離されている。他のシュードモナス菌(例えばシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)及びシュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina))は、アルギネートを産生する遺伝的素質を保持しているが、野生では検出可能なレベルのアルギネートを産生しない。突然変異により、これらの非産生型シュードモナス菌を、大量のアルギネートを安定的に産生するように誘導することができる。
【0007】
アルギネートは、ポリマンヌロネートとして合成され、エピメラーゼ(具体的にはC−5エピメラーゼ)の作用により、ポリマー中のM残基に対してG残基が形成される。藻類から抽出されたアルギネートの場合には、G残基は主にGブロックとして構成されるが、これは、藻類におけるアルギネート生合成に関与する酵素が、別のGに隣接してGを選択的に導入することによりM残基のストレッチをGブロックに変換するためである。これらの生合成系の解明により、特定の一次構造を有するアルギネートの産生が可能となっている(国際公開第94/09124号、Gimmestad, M et al, Journal of Bacteriology, 2003, Vol 185(12) 3515-3523、及び国際公開第2004/011628号)。
【0008】
アルギネートは通常、高分子量(例えば平均分子量が300000ダルトン〜500000ダルトンの範囲)の大きなポリマーとして、天然の供給源から単離される。しかし、かかる大きなアルギネートポリマーは、例えば化学的又は酵素的な加水分解により分解又は破壊され、より低い分子量のアルギネート構造を産生し得ることが既知である。工業的に使用されるアルギネートは通常、100000ダルトン〜300000ダルトンの範囲の平均分子量を有する(かかるアルギネートは依然として、大きなポリマーであると考えられる)が、医薬品には平均分子量約35000ダルトンのアルギネートが使用されている。
【0009】
アルギネートオリゴマーがアシネトバクター生物に対する抗生物質(特にマクロライド系抗生物質であるが、他の群の抗生物質も含む)の効果を大いに向上させ、抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と共にアルギネートオリゴマーを使用することが、アシネトバクター属によるコンタミネーション及び感染の非常に効果的な治療となることが今回見出された。アルギネートオリゴマーは、アシネトバクター属の細菌に対する抗生物質の効果を増強するか、又は向上させるうえで特に効果的であるようである。換言すれば、この特定の細菌属の場合においては、アルギネートオリゴマーは抗生物質との驚くべき相乗作用を示すようである。抗生物質の作用を増強するか、又は向上させる効果は、特にこの属について顕著である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、第1の態様では、本発明は、抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の有効性、特にアシネトバクター属(より具体的に表現すると、アシネトバクター生物)、又は別の観点からはアシネトバクター種の成長及び/又は生存能力を阻害する(アシネトバクター集団の成長及び単一のアシネトバクター生物の成長の阻害を含む)抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の効果(又は有効性)を改善する方法であって、上記抗生物質をアルギネートオリゴマーと共に(又は併用して若しくは組み合わせて)使用することを含む、方法を提供する。
【0011】
より具体的には、使用する工程は、抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の有効性、特にアシネトバクター生物の成長を阻害する抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質効果(又は有効性)を改善するのに効果的な量で、アシネトバクター生物を抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質に接触させるのと同時に、又は実質的に同時に、又はその前にアシネトバクター生物をアルギネートオリゴマーに接触させることを含み得る。特に、アシネトバクター生物をアルギネートオリゴマーに接触させる工程は、アルギネートオリゴマーを被験体、特にかかる治療を必要とする被験体(例えばアシネトバクター属(以上の具体的には、アシネトバクター生物と表現される)に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体)に投与することを含み得る。
【0012】
したがって、本発明は、アシネトバクター属(又はより具体的に表現すると、アシネトバクター生物)に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体の治療において、少なくとも1つの抗生物質と共に(又は組み合わせて若しくは併用して)使用されるアルギネートオリゴマーを提供する。
【0013】
本発明のこの態様は、アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体を治療する方法であって、効果的な量の抗生物質を効果的な量のアルギネートオリゴマーと共に上記被験体に投与することを含む、方法も提供する。
【0014】
「共に使用する」とは、薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマー及び薬学的に効果的な量の抗生物質を、アシネトバクター属(より具体的にアシネトバクター生物又はその集団)を、抗生物質に接触させるのと同時に、又は実質的に同時に、又はその前にアルギネートオリゴマーに接触させるようにして投与することを特に意味する。任意の臨床的に許容可能な投与計画を、これを達成するために使用することができる。当業者は、特定の被験体に対して適切な投与計画を設計するために、任意の関連する変動要因(例えば、使用されるオリゴマー及び抗生物質の投与経路、バイオアベイラビリティ及び薬物動態、被験体の身体的状態、細菌の位置等)を考慮に入れることができる。1つの実施の形態では、薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマーを、薬学的に効果的な量の抗生物質を投与するのと同時に、又は実質的に同時に、又はその前に投与する。他の実施の形態では、オリゴマーを抗生物質とは別々に、その後に投与する。当業者は、アシネトバクター生物に対する抗生物質の効果の改善を最大化するように、その投与計画を容易に設計することができる。当業者は、直面する特定の臨床状況に応じて2つの活性剤の最適な組合せを選択することもできる。
【0015】
「共に使用する」とは、それぞれの薬剤が同じ製剤又は組成物中に存在することを意味するものではなく、したがって、同時に又は実質的に同時に使用又は投与する場合であっても、アルギネートオリゴマーと抗生物質とが同じ組成物又は製剤中に存在する必要はなく、別々に投与してもよい(実際にはその可能性が最も高い)。したがって、「別々の」使用/投与は、所望の投薬計画又は使用計画に従う同時若しくは実質的に同時の、又は異なる時点での、例えば順次の、又は異なる時間間隔での使用/投与を含む。
【0016】
「に感染した」(又は「によって感染した」)という用語は、被験体が問題の細菌を含む、又は含有する、又は保有する可能性があること、すなわちアシネトバクター属が単に被験体内又は被験体上に存在する可能性があることを示し、これは被験体の身体内又は身体上の任意の部位又は位置を含み得る。被験体の感染が臨床疾患として現れる(すなわち感染により被験体において臨床症状が引き起こされる)必要はないが、このことも当然ながら包含される。アシネトバクター属によって感染した疑いがある被験体又は感染のリスクがある被験体は、生物に曝された被験体若しくはアシネトバクター属に感染した被験体、又はアシネトバクター感染の臨床兆候若しくは臨床症状を呈する被験体(感染の疑いがある場合)、又は全身的(例えば被験体の臨床状態のため)若しくは局所的(particularly)にかかわらず問題のアシネトバクター属に感染しやすい被験体であり得る。
【0017】
別の観点からは、本発明は、アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体の治療において、少なくとも1つの抗生物質と共に使用される薬剤の製造に対するアルギネートオリゴマーの使用を提供する。
【0018】
薬剤は、抗生物質(又は複数の抗生物質)を更に含み得る。薬剤は、アルギネートオリゴマー及び抗生物質(複数も可)を含む単一の組成物若しくは製剤の形態であってもよく、又は各々がアルギネートオリゴマー若しくは抗生物質(複数も可)をそれぞれ含有する、別々の組成物若しくは製剤を調製し、使用してもよい。
【0019】
したがって、より具体的な態様では、本発明は、アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体の治療において使用される薬剤の製造に対するアルギネートオリゴマー及び少なくとも1つの抗生物質の使用を提供する。
【0020】
上述したように、抗生物質はアルギネートオリゴマーとは別々に適用又は投与してもよい。
【0021】
したがって、本発明の更なる態様は、アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体の治療において、別々に、同時に又は順次に使用される複合製剤としてアルギネートオリゴマーと抗生物質(例えば1つ又は複数の抗生物質)とを含有する製品を提供する。
【0022】
抗生物質はアルギネートオリゴマーと同時に、又は順次に適用又は投与してもよい。上述したように、1つの実施の形態では、抗生物質をアルギネートオリゴマーと同時に又は実質的に同時に投与し、別の実施の形態では、抗生物質をアルギネートオリゴマーの後に投与する。他の実施の形態では、オリゴマーを抗生物質と別々に、その後に投与する。アルギネートオリゴマーの投与前若しくは投与後すぐ、又は投与前若しくは投与後ほぼすぐの抗生物質の適用又は投与は、「実質的に同時に」の範囲内に含まれる。「ほぼすぐ」という用語は、先の適用又は投与の1時間以内、好ましくは30分以内の適用又は投与を含むことを意味し得る。しかしながら、抗生物質はアルギネートオリゴマーの少なくとも1時間後、少なくとも3時間後、又は少なくとも6時間以上の後に適用又は投与してもよい。これらの実施の形態では、抗生物質はアルギネートオリゴマーの更なる適用の有無にかかわらず適用又は投与することができる。アルギネートオリゴマーは、上述したものを含む抗生物質の前又は抗生物質と同時の複数回の適用、抗生物質の投与後すぐの又はほぼすぐの適用又は投与で適用又は投与することができる。他の実施の形態では、抗生物質(複数も可)をアルギネートオリゴマーの前、例えばアルギネートオリゴマーの少なくとも1時間前、少なくとも3時間前、少なくとも6時間前に好都合に適用又は投与することができる。これらの実施の形態では、アルギネートオリゴマーは抗生物質の更なる適用の有無にかかわらず適用又は投与することができる。抗生物質は、アルギネートオリゴマーの前又はアルギネートオリゴマーと同時の複数回の適用(上で言及されたようにオリゴマーの投与前若しくは投与後すぐ、又は投与前若しくは投与後ほぼすぐの適用又は投与を含む)で適用又は投与することができる。
【0023】
好都合には、マクロライド系抗生物質はオリゴマーと同時に、又はオリゴマーの投与前若しくは投与後ほぼすぐに適用又は投与される。しかしながら、マクロライド系抗生物質はオリゴマーの少なくとも1時間後、少なくとも3時間後、又は少なくとも6時間後に適用又は投与してもよい。これらの実施の形態では、マクロライド系抗生物質はアルギネートオリゴマーの更なる適用の有無にかかわらず適用又は投与することができる。オリゴマーは、マクロライド系抗生物質の前又はマクロライド系抗生物質と同時の複数回の適用で適用又は投与することができる。
【0024】
抗生物質は任意の抗生物質であり得る。抗生物質群及び代表的なその構成成分は、アミノグリコシド系抗生物質(例えばアミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン)、カルバセフェム系抗生物質(例えばロラカルベフ)、第一世代セファロスポリン系抗生物質(例えばセファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン)、第二世代セファロスポリン系抗生物質(例えばセファクロル、セファマンドール、セファレキシン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム)、第三世代セファロスポリン系抗生物質(例えばセフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン)、第四世代セファロスポリン系抗生物質(例えばセフェピム)、マクロライド系抗生物質(例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、トロレアンドマイシン)、モノバクタム系抗生物質(例えばアズトレオナム)、ペニシリン系抗生物質(例えばアモキシシリン、アンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、チカルシリン)、ポリペプチド系抗生物質(例えばバシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB)、キノロン系抗生物質(例えばシプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン)、スルホンアミド系抗生物質(例えばマフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤)、テトラサイクリン系抗生物質(例えばデメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン)、グリシルサイクリン系抗生物質(例えばチゲサイクリン)、カルバペネム系抗生物質(例えばイミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム・ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601)を含むが、これらに限定されず、他の抗生物質はクロラムフェニコール;クリンダマイシン、エタンブトール;ホスホマイシン;イソニアジド;リネゾリド;メトロニダゾール;ニトロフラントイン;ピラジナミド;キヌプリスチン・ダルホプリスチン合剤;リファンピン;スペクチノマイシン;及びバンコマイシンを含む。
【0025】
本発明の方法の好ましい実施の形態では、使用される抗生物質はマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質(カルバペネム系抗生物質及び/又はモノバクタム系抗生物質及び/又はカルバセフェム系抗生物質を含み得る)、テトラサイクリン系抗生物質及びキノロン系抗生物質から選択される抗生物質である。他の実施の形態では、抗生物質群はアミノグリコシド系抗生物質及び/又はポリペプチド系抗生物質が含まれ得る。より具体的には、これらの実施の形態では、抗生物質はマクロライド系抗生物質、モノバクタム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、カルバセフェム系抗生物質、第三世代及び第四世代セファロスポリン系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質並びにキノロン系抗生物質、並びに任意でアミノグリコシド系抗生物質及び/又はポリペプチド系抗生物質から選択され得る。より具体的な代表的な実施の形態では、抗生物質はマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質並びにキノロン系抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質、モノバクタム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、カルバセフェム系抗生物質、第三世代及び第四世代セファロスポリン系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質並びにキノロン系抗生物質から選択され得る。より具体的な代表的な実施の形態では、抗生物質はマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質並びにキノロン系抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質、モノバクタム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、カルバセフェム系抗生物質、第三世代及び第四世代セファロスポリン系抗生物質並びにキノロン系抗生物質から選択され得る。例えば、抗生物質はアミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、タイロシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム・ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン及びトロバフロキサシンから選択され得る。特に、抗生物質はセフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、オキシテトラサイクリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択され得る。抗生物質がセフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択されることが特に好ましい。より好ましくは、抗生物質はアズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択される。他の実施の形態では、使用される抗生物質はトブラマイシン、アミカシン及び/又はコリスチンではない。他の実施の形態では、使用される抗生物質はアミノグリコシド系抗生物質又はポリペプチド系抗生物質ではない。他の実施の形態では、使用される抗生物質は、それがアルギネートオリゴマーと共に使用される条件下で正電荷を有する抗生物質、例えば少なくとも3個、例えば少なくとも4個、5個、6個又は7個のアミノ(−NH)基を有する抗生物質ではない。マクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質並びにキノロン系抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質、モノバクタム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、第三世代及び第四世代セファロスポリン系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質並びにキノロン系抗生物質、例えばセフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、オキシテトラサイクリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンが特に好ましい。
【0026】
他の好ましい実施の形態では、抗生物質はマクロライド系抗生物質であり、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン(troleandromycin)、タイロシンから選択され得る。好ましくは、マクロライド系抗生物質はアザライドマクロライド、好ましくはアジスロマイシンであるか、又はクラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン又はスピラマイシンから選択される。
【0027】
上述したように、アルギネートは典型的には、平均分子量が少なくとも35000ダルトン、すなわちモノマー残基数が約175〜190(ただし典型的にはもっと高い)のポリマーとして生じ、本発明によるアルギネートオリゴマーは、アルギネートポリマー(通常は天然のアルギネート)の分画(すなわちサイズの低減)により得られる物質と規定することができる。アルギネートオリゴマーは、平均分子量が35000ダルトン未満(すなわちモノマー残基数が約190未満又は約175未満)のアルギネート、特に平均分子量が30000ダルトン未満(すなわちモノマー残基数が約175未満又は約150未満)、より具体的には平均分子量が25000ダルトン未満又は20000ダルトン未満(すなわちモノマー残基数が約135未満若しくは125未満、又はモノマー残基数が約110未満若しくは100未満)のアルギネートであると考えることができる。
【0028】
別の観点からは、オリゴマーは概して、2個以上の単位又は残基を含み、本発明による使用のためのアルギネートオリゴマーは、典型的には2個〜100個のモノマー残基、好ましくは2個〜75個、好ましくは2個〜50個、より好ましくは2個〜40個、2個〜35個又は2個〜30個の残基を含有する。したがって本発明による使用のためのアルギネートオリゴマーは典型的には、350ダルトン〜20000ダルトン、好ましくは350ダルトン〜15000ダルトン、好ましくは350ダルトン〜10000ダルトン、より好ましくは350ダルトン〜8000ダルトン、350ダルトン〜7000ダルトン又は350ダルトン〜6000ダルトンの平均分子量を有する。
【0029】
別の観点からは、アルギネートオリゴマーは、2〜100、好ましくは2〜75、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜40、2〜35又は2〜30、2〜28、2〜25、2〜22、2〜20、2〜18、2〜17、2〜15、又は2〜12の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
【0030】
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わない)は3、4、5、6、7、8、9、10又は11のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13又は12のいずれか1つを含む。
【0031】
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わない)は8、9、10、11、12、13、14又は15のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17又は16のいずれか1つを含む。
【0032】
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わない)は11、12、13、14、15、16、17又は18のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20又は19のいずれか1つを含む。
【0033】
上述したように、アルギネートオリゴマーは、グルロネート若しくはグルロン酸(G)及び/又はマンヌロネート若しくはマンヌロン酸(M)の残基又は単位を含有する(又は含む)。本発明によるアルギネートオリゴマーは、好ましくはウロネート残基/ウロン酸残基のみ、又は実質的にそれらのみから構成され(すなわちそれらから本質的になり)、より具体的にはG残基及び/又はM残基のみ、又は実質的にそれらのみから構成される。別の表現をすると、本発明において使用されるアルギネートオリゴマーでは、モノマー残基の少なくとも80%、より具体的には少なくとも85%、90%、95%又は99%が、ウロネート残基/ウロン酸残基、又はより具体的にはG残基及び/又はM残基であり得る。換言すれば、好ましくはアルギネートオリゴマーは、他の残基又は単位(例えば、他の糖残基、又はより具体的には他のウロン酸残基/ウロネート残基)を含まない。
【0034】
アルギネートオリゴマーは、好ましくは直鎖オリゴマーである。
【0035】
より具体的には、1つの好ましい実施の形態では、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも30%が、G残基(すなわちグルロネート又はグルロン酸)である。換言すれば、アルギネートオリゴマーは、少なくとも30%のグルロネート(又はグルロン酸)残基を含有する。したがって具体的な実施の形態は、30%〜70%のG(グルロネート)残基、又は70%〜100%のG(グルロネート)残基を有する(例えば、含有する)アルギネートオリゴマーを含む。したがって、本発明による使用のための代表的なアルギネートオリゴマーは、少なくとも70%のG残基を含有し得る(すなわち、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも70%がG残基である)。
【0036】
好ましくはモノマー残基の少なくとも50%又は60%、より具体的には少なくとも70%又は75%、更により具体的には少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%が、グルロネートである。1つの実施の形態では、アルギネートオリゴマーは、オリゴグルロネート(すなわちGのホモオリゴマー、又は100%のG)であり得る。
【0037】
さらに1つの好ましい実施の形態では、上述の本発明のアルギネートは、G残基の大部分がいわゆるGブロック中に存在する一次構造を有する。好ましくはG残基の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%又は75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%、92%又は95%が、Gブロック中に存在する。Gブロックは、少なくとも2個のG残基、好ましくは少なくとも3個の連続したG残基、より好ましくは少なくとも4個又は5個の連続したG残基、最も好ましくは少なくとも7個の連続したG残基の連続した配列である。
【0038】
特に、G残基の少なくとも90%は、別のG残基と(1−4)結合している。より具体的にはアルギネートのG残基の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%が、別のG残基と(1−4)結合している。
【0039】
本発明において使用されるアルギネートオリゴマーは、好ましくは3mer〜35mer、より好ましくは3mer〜28mer、特に4mer〜25mer、特に6mer〜22mer、特に8mer〜20mer、特に10mer〜15merであり、例えば、350ダルトン〜6400ダルトン、又は350ダルトン〜6000ダルトン、好ましくは550ダルトン〜5500ダルトン、好ましくは750ダルトン〜5000ダルトン、特に750ダルトン〜4500ダルトン又は2000ダルトン〜3000ダルトンの範囲の分子量を有する。他の代表的なアルギネートオリゴマーとしては、上述したように7個、8個、9個、10個、11個又は12個〜50個、45個、40個、35個、28個、25個、22個又は20個の残基を有するオリゴマーが挙げられる。
【0040】
アルギネートオリゴマーは単一の化合物であり得る、又は例えば或る範囲の重合度を有する化合物の混合物であり得る。上述したように、アルギネートオリゴマーにおけるモノマー残基は、同じであっても、又は異なっていてもよく、その全てが荷電基を保有する必要はないが、その大部分(例えば少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%)が荷電基を保有することが好ましい。荷電基の実質的な大部分、例えば少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が同じ極性を有することが好ましい。アルギネートオリゴマーでは、ヒドロキシル基対荷電基の比は、好ましくは少なくとも2:1、より具体的には少なくとも3:1である。
【0041】
本発明のアルギネートオリゴマーは、3〜28、4〜25、6〜22、8〜20、又は10〜15、又は5〜18、又は7〜15、又は8〜12、特には10の重合度(DP)又は数平均重合度(DP)を有し得る。
【0042】
本発明のアルギネートオリゴマーは、8〜50、8〜40、8〜35、8〜30、8〜28、8〜25、8〜22、8〜20、8〜18、8〜16又は8〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DP)を有し得る。
【0043】
本発明のアルギネートオリゴマーは、9〜50、9〜40、9〜35、9〜30、9〜28、9〜25、9〜22、9〜20、9〜18、9〜16又は9〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DP)を有し得る。
【0044】
本発明のアルギネートオリゴマーは、10〜50、10〜40、10〜35、10〜30、10〜28、10〜25、10〜22、10〜20、10〜18、10〜16又は10〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DP)を有し得る。
【0045】
本発明のアルギネートオリゴマーは、12〜50、12〜40、12〜35、12〜30、12〜28、12〜25、12〜22、12〜20、12〜18、12〜16又は12〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DP)を有し得る。
【0046】
本発明のアルギネートオリゴマーは、15〜50、15〜40、15〜35、15〜30、15〜28、15〜25、15〜22、15〜20、15〜18又は15〜16の重合度(DP)又は数平均重合度(DP)を有し得る。
【0047】
本発明のアルギネートオリゴマーは、18〜50、18〜40、18〜35、18〜30、18〜28、18〜25、18〜22又は18〜20の重合度(DP)又は数平均重合度(DP)を有し得る。
【0048】
好ましくは、本発明のアルギネートオリゴマーは、本明細書で開示される範囲外の重合度を有するアルギネートオリゴマーを実質的に含まない、好ましくは本質的に含まない。このことは、本発明のアルギネートオリゴマーの分子量分布、例えば関連範囲外のDPを有する、本発明により使用されるアルギネートオリゴマーの各々のモル%を単位として表される。
【0049】
分子量分布は、好ましくは、DPに関する適切な上限(relevant upper limit)より3、2又は1高いDPを有するものが10モル%より少ない、好ましくは9モル%、8モル%、7モル%、6モル%、5モル%、4モル%、3モル%、2モル%又は1モル%より少ないようなものである。同様に、DPに関する適切な下限よりも3、2又は1小さい数未満のDPを有するものが10モル%、好ましくは9モル%、8モル%、7モル%、6モル%、5モル%、4モル%、3モル%、2モル%又は1モル%より少ないことが好ましい。
【0050】
好適なアルギネートオリゴマーは、国際公開第2007/039754号、国際公開第2007/039760号、国際公開第2008/125828号、及び国際出願PCT/GB2008/003607号に記載されている(それらの開示の全体が明示的に参照により本明細書に援用される)。
【0051】
代表的な好適なアルギネートオリゴマーは、5〜30の範囲のDPと、少なくとも0.80のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.20未満のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%のDPが25未満である。
【0052】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、7〜15(好ましくは8〜12)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.85(好ましくは少なくとも0.90)のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.15未満(好ましくは0.10未満)のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満(好ましくは14未満)である。
【0053】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜18(特に7〜15)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80(好ましくは少なくとも0.85、特に少なくとも0.92)のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.20未満(好ましくは0.15未満、特には0.08未満)のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満(好ましくは17未満)である。
【0054】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜18の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.08未満のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満である。
【0055】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜18(好ましくは7〜15、より好ましくは8〜12、特に約10)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80(好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.90、特に少なくとも0.92、最も具体的には少なくとも0.95)のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.20未満(好ましくは0.15未満、より好ましくは0.10未満、特には0.08未満、最も具体的には0.05未満)のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満(好ましくは17未満、より好ましくは14未満)である。
【0056】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、7〜15(好ましくは8〜12)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92(好ましくは少なくとも0.95)のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.08未満(好ましくは0.05未満)のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満(好ましくは14未満)である。
【0057】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜18の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.20未満のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満である。
【0058】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、7〜15の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.85のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.15未満のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満である。
【0059】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、7〜15の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92のグルロネート/ガラクツロネート率(F)と、0.08未満のマンヌロネート率(F)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満である。
【0060】
本発明により望ましい特定の群のアルギネートオリゴマーが、いわゆる「高G」又は「Gブロック」オリゴマーとして規定される、すなわちG残基又はGブロックの含量が高い(例えば、モノマー残基の少なくとも70%がGであり、好ましくはGブロック中に配置される)アルギネートオリゴマーであることが分かる。しかしながら、特に以下に更に記載される「高M」又は「Mブロック」オリゴマー又はMGブロックオリゴマーを含む、他のタイプのアルギネートオリゴマーを使用してもよい。したがって、これは、単一モノマータイプの割合が高いアルギネートオリゴマーであり、このタイプのモノマーは主にそのモノマータイプの連続した配列中に存在し、特に好ましいオリゴマー、例えばオリゴマー中のモノマー残基の少なくとも70%が別のG残基に(1−4)結合したG残基であるか、又はより好ましくはオリゴマーのモノマー残基の少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%が別のG残基に(1−4)結合したG残基であるオリゴマーを表す。この2つのG残基の(1−4)結合は代替的に、隣接するグルロン単位と結合したグルロン単位として表すこともできる。
【0061】
更なる実施の形態では、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の50%超がM残基(すなわちマンヌロネート又はマンヌロン酸)であり得る。換言すれば、アルギネートオリゴマーは50%超のマンヌロネート(又はマンヌロン酸)残基を含有する。したがって、具体的な実施の形態は、50%〜70%のM(マンヌロネート)残基、又は例えば70%〜100%のM(マンヌロネート)残基を有する(例えば含有する)アルギネートオリゴマーを含む。更に具体的な実施の形態は、71%〜85%のM残基又は85%〜100%のM残基を含有するオリゴマーも含む。したがって、本発明のこの実施の形態による使用のための代表的なアルギネートオリゴマーは、70%超のM残基を含有する(すなわちアルギネートオリゴマーのモノマー残基の70%超がM残基である)。
【0062】
他の実施の形態では、少なくとも50%又は60%、より具体的には少なくとも70%又は75%、更により具体的には少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%のモノマー残基がマンヌロネートである。1つの実施の形態では、アルギネートオリゴマーはオリゴマンヌロネート(すなわちMのホモオリゴマー、又は100%のM)であり得る。
【0063】
更なる実施の形態では、上述の本発明のアルギネートは、M残基の大部分がいわゆるMブロック中にある一次構造を有する。この実施の形態では、好ましくはM残基の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%又は75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%又は95%がMブロック中にある。Mブロックは少なくとも2つのM残基の連続した配列、好ましくは少なくとも3つの連続したM残基、より好ましくは少なくとも4つ又は5つの連続したM残基、最も好ましくは少なくとも7つの連続したM残基である。
【0064】
具体的には、M残基の少なくとも90%が別のM残基と(1−4)結合する。より具体的には、アルギネートのM残基の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%が別のM残基と(1−4)結合する。
【0065】
他の好ましいオリゴマーは、オリゴマー中のモノマー残基の少なくとも70%が別のM残基と(1−4)結合したM残基であるか、又はより好ましくはオリゴマーのモノマー残基の少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%が別のM残基と(1−4)結合したM残基であるアルギネートオリゴマーである。この2つのM残基の(1−4)結合は代替的に、隣接するマンヌロン単位と結合したマンヌロン単位として表すこともできる。
【0066】
また更なる実施の形態では、本発明のアルギネートオリゴマーは、交互のM残基及びG残基の配列を含む。少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの交互のM残基及びG残基の配列はMGブロックを表す。好ましくは、本発明のアルギネートオリゴマーはMGブロックを含む。より具体的に表すと、MGブロックはG残基及びM残基からなる少なくとも3つの連続した残基の配列であり、連続した配列中の各々の非末端(内部)G残基はM残基と(1−4)及び(4−1)結合し、連続した配列中の各々の非末端(内部)M残基はG残基と(1−4)及び(4−1)結合する。好ましくは、MGブロックは少なくとも5つ又は6つの連続した残基、より好ましくは少なくとも7つ又は8つの連続した残基である。
【0067】
更なる実施の形態では、アルギネートオリゴマー中の少数ウロネート(すなわちマンヌロネート又はグルロネート)が主にMGブロック中に見られる。この実施の形態では、MGブロックアルギネートオリゴマー中の少数ウロネートモノマーの好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%又は75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%又は95%がMGブロック中に存在する。別の実施の形態では、オリゴマー中のG残基及びM残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、例えば100%がMGブロック中に配置されるように、アルギネートオリゴマーが配置される。
【0068】
その最も広い意味においては、本発明はオリゴマーのモノマー残基の少なくとも1%(ただし100%未満)がG残基(すなわちグルロネート又はグルロン酸)であり、より具体的には、以下に更に規定されるように、モノマー残基の少なくとも30%がG残基である実施の形態にまで及ぶ。したがって、その最も広い意味では、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックは、少なくとも1%(ただし100%未満)のグルロネート(又はグルロン酸)残基を含有し得るが、概して、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックは、少なくとも30%(又は少なくとも35%、40%又は45%又は50%のG)(ただし100%未満のG)を含有する。したがって、具体的な実施の形態は、1%〜30%のG(グルロネート)残基、30%〜70%のG(グルロネート)残基、又は70%〜99%のG(グルロネート)残基を有する(例えば含有する)アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックを含む。したがって、本発明による使用のためのアルギネートオリゴマーを含有する代表的なMGブロックは、30%超(ただし70%未満)のG残基を含有し得る(すなわち、MGブロックアルギネートオリゴマーのモノマー残基の30%超(ただし70%未満)がG残基である)。
【0069】
好ましくは、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックのモノマー残基の30%超、より具体的には35%又は40%超、更により具体的には45%、50%、55%、60%又は65%超(ただし、いずれの場合も70%未満)がグルロネートである。代替的には、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックのモノマー残基の70%未満、より好ましくは65%又は60%未満、更により好ましくは55%、50%、45%、40%又は35%未満(ただし、いずれの場合も30%超)がグルロネートである。これらの値の任意の組合せによって形成される任意の範囲を選択することができる。したがって、例えばアルギネートオリゴマーを含有するMGブロックは、例えば35%〜65%、40%〜60%又は45%〜55%のG残基を有し得る。
【0070】
別の実施の形態では、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックは、ほぼ等量のG残基及びM残基(例えば、65%のG/35%のM〜35%のG/65%のM、例えば60%のG/40%のM〜40%のG/60%のM;55%のG/45%のM〜45%のG/55%のM;53%のG/47%のM〜47%のG/53%のM;51%のG/49%のM〜49%のG/51%のM;例えば、約50%のG及び約50%のMという比率)を有し得るが、これらの残基は主に、好ましくは全体的に又は可能な限り完全に交互のMGパターンで配置されている(例えば、M残基及びG残基の少なくとも50%又は少なくとも60%、70%、80%、85%、90%又は95%又は100%が交互のMG配列中にある)。
【0071】
或る特定の実施の形態では、本発明のオリゴマーの末端ウロン酸残基は二重結合、特にC原子とC原子との間に位置する二重結合を有しない。かかるオリゴマーは飽和末端ウロン酸残基を有するとして記載され得る。当業者は、過度の負担なしに飽和末端ウロン酸残基を有するオリゴマーを調製することができるだろう。これは、かかるオリゴマーを生じる製造技法を用いること、又は不飽和末端ウロン酸残基を有するオリゴマーを生じるプロセスによって製造されたオリゴマーを変換する(飽和させる)ことによって行うことができる。
【0072】
アルギネートオリゴマーは通常、電荷を保有するので、アルギネートオリゴマーに対する対イオンは、任意の生理学的に耐容性を有するイオン、特に荷電薬剤物質に一般的に使用されるイオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、塩化物イオン、メシレートイオン、メグルミンイオン等)であり得る。アルギネートのゲル化を促進するイオン(例えば2族の金属イオン)も、使用することができる。
【0073】
アルギネートオリゴマーは、適切な数のグルロネート残基及びマンヌロネート残基の重合から生成される合成物質であってもよいが、本発明において使用されるアルギネートオリゴマーは、上述したような天然の供給源、すなわち天然アルギネート原料から、好都合に入手、製造又は誘導することができる。
【0074】
本発明により使用可能なアルギネートオリゴマーを製造するための多糖からオリゴ糖への切断は、酵素消化及び酸加水分解等の従来の多糖溶解技法を使用して、実施することができる。望ましい1つの実施の形態では、酸加水分解を使用して本発明のアルギネートオリゴマーを調製する。他の実施の形態では、酵素消化を更なる加工処理工程(複数も可)と共に使用して、オリゴマー中の末端ウロン酸を飽和させる。オリゴマーはその後、イオン交換樹脂を使用してクロマトグラフィにより、又は分画沈降(fractionated precipitation)若しくは可溶化若しくは濾過により、多糖分解生成物から分離することができる。米国特許第6,121,441号及び国際公開第2008/125828号(その全体が明示的に参照により本明細書に援用される)は、本発明において使用されるアルギネートオリゴマーを調製するのに好適なプロセスを説明している。更なる情報及び考察は、例えば「Handbooks of Hydrocolloids(Ed. Phillips and Williams, CRC, Boca Raton, Florida, USA, 2000)」に見ることができる(この内容は、その全体が明示的に参照により本明細書に援用される)。
【0075】
アルギネートオリゴマーはまた化学的に修飾することができ、これには荷電基を付加する修飾(カルボキシル化又はカルボキシメチル化グリカン等)が含まれるが、これに限定されず、アルギネートオリゴマーは、柔軟性を変化させるために(例えば、過ヨウ素酸塩による酸化により)修飾される。
【0076】
本発明による使用に好適なアルギネートオリゴマー(例えば、オリゴグルロン酸)は、ラミナリア・ヒポルボレア(Laminaria hyperbora)及びレソニア・ニグレセンス(Lessonia nigrescens)(ただしこれらに限定されない)由来のアルギン酸の酸加水分解、中性pHでの溶解、pHを3.4に低下させてアルギネートオリゴマー(オリゴグルロン酸)を析出させる無機酸の添加、弱酸での洗浄、中性pHでの再懸濁、並びに凍結乾燥により、好都合に製造することができる。
【0077】
本発明のアルギネートオリゴマーの製造のためのアルギネートは、好適な細菌性供給源(例えばシュードモナス・エルギノーサ又はアゾトバクター・ビネランジー)から直接得ることもできる。
【0078】
G残基の大部分が単一残基としてではなくGブロック中に配置される一次構造を有するアルギネートオリゴマーが必要とされる実施の形態では、藻類の供給源が、これらの生物において産生されるアルギネートがこれらの構造を有する傾向があることから、最も好適であることが期待される。細菌性供給源は、異なる構造のアルギネートオリゴマーを得るのにより好適であり得る。
【0079】
シュードモナス・フルオレセンス及びアゾトバクター・ビネランジーにおけるアルギネート生合成に関与する分子装置が、クローニングされると共に、特徴づけられており(国際公開第94/09124号;Ertesvag, H., et al, Metabolic Engineering, 1999, Vol 1, 262-269;国際公開第2004/011628号;Gimmestad, M., et al(上記);Remminghorst and Rehm, Biotechnology Letters, 2006, Vol 28, 1701-1712;Gimmestad, M. et al, Journal of Bacteriology, 2006, Vol 188(15), 5551-5560)、調整した(tailored)一次構造を有するアルギネートを、これらの系を操作することにより容易に得ることができる。
【0080】
アルギネート(例えば藻類原料)のG含量は、例えばアゾトバクター・ビネランジー由来のマンヌロランC−5エピメラーゼ、又は他のエピメラーゼ酵素を用いて、エピマー化により増大させることができる。したがって、例えば、in vitroでのエピマー化を、シュードモナス又はアゾトバクター由来の単離エピメラーゼ、例えばシュードモナス・フルオレセンス若しくはアゾトバクター・ビネランジー由来のAlgG、又はアゾトバクター・ビネランジー由来のAlgE酵素(AlgE1〜AlgE7)を用いて、実施することができる。アルギネートを産生する能力を有する他の生物(特に藻類)由来のエピメラーゼの使用も、具体的に意図される。アゾトバクター・ビネランジーAlgEエピメラーゼを用いる低Gアルギネートのin vitroでのエピマー化は、Ertesvag et al(上記)及びStrugala et al(Gums and Stabilisers for the Food Industry, 2004, 12, The Royal Society of Chemistry, 84 - 94)に詳細に説明されている。
【0081】
アルギネート又はアルギネートオリゴマーを含有するGブロックを得るには、AlgE以外の1つ又は複数のアゾトバクター・ビネランジーAlgEエピメラーゼを用いるエピマー化が、これらの酵素がGブロック構造を産生する能力を有するため、好ましい。一方で、AlgE4エピメラーゼは選択的に個々のM残基をエピマー化して、Gブロックを産生するのではなく、M残基と結合した単一のG残基を産生するようであることが見出されているため、この酵素を使用して、M/G配列の交互のストレッチ又は単一のG残基を含有する一次構造を有するアルギネート又はアルギネートオリゴマーを作り出すことができる。特定の一次構造を、これらの酵素の種々の組合せを使用して得ることができる。
【0082】
これらの酵素の突然変異型又は他の生物由来の相同体も、有用であるとして具体的に意図される。国際公開第94/09124号は、例えば、エピメラーゼ配列によりコードされる組換え又は修飾マンヌロナンC−5エピメラーゼ酵素(AlgE酵素)を説明しており、ここではエピメラーゼの異なるドメイン又はモジュールをコードするDNA配列が、シャッフルされ(shuffled)、又は欠失すると共に、組み換えられている。代替的には、例えばAlgG遺伝子又はAlgE遺伝子の部位特異的突然変異誘発又はランダム突然変異誘発により得られる、天然のエピメラーゼ酵素(AlgG又はAlgE)の突然変異体を使用することができる。
【0083】
異なるアプローチは、その突然変異体がアルギネートオリゴマー産生に要求される構造のアルギネート、又は更には要求される構造及びサイズ(又は分子量)のアルギネートオリゴマーを産生するように、そのエピメラーゼ遺伝子の幾つか又は全てで突然変異したシュードモナス属及びアゾトバクター属の生物を作り出すことである。AlgG遺伝子が突然変異した多数のシュードモナス・フルオレセンス生物の作製は、国際公開第2004/011628号及びGimmestad, M., et al, 2003(上記)に詳細に説明されている。AlgE遺伝子が突然変異した多数のアゾトバクター・ビネランジー生物の作製は、Gimmestad, M., et al, 2006(上記)に開示されている。当業者は、この教示を用いて、過度の負担なしに、本発明のアルギネートオリゴマーを発生させるのに使用することができる新たな突然変異体を産生することができるであろう。
【0084】
更なるアプローチは、アゾトバクター属又はシュードモナス属の生物由来の内在性エピメラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させること、及びその後、1つ又は複数の外来性エピメラーゼ遺伝子(突然変異していても又は突然変異していなくともよく(すなわち野生型であっても又は修飾されていてもよく))を導入することであり、その発現は、例えば誘導性の又は他の「制御可能なプロモータ」の使用により制御されていてもよい。遺伝子の適切な組合せを選択することにより、所定の一次構造を有するアルギネートを生成することができる。
【0085】
また更なるアプローチは、シュードモナス属及び/又はアゾトバクター属のアルギネート生合成機構の幾つか又は全てを、非アルギネート産生生物(例えば大腸菌)中に導入すること、並びにこれらの遺伝子操作生物からのアルギネートの産生を誘導することであろう。
【0086】
これらの培養基準のシステムを使用する場合、アルギネート又はアルギネートオリゴマー生成物の一次構造は、培養条件により影響され得る。特定の生物により産生されるアルギネートの一次構造を操作するために、温度、浸透圧(osmolarity)、栄養レベル/栄養源及び大気パラメータ等の培養パラメータを調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0087】
「G残基/G」及び「M残基/M」への言及、又はグルロン酸若しくはマンヌロン酸、又はグルロネート若しくはマンヌロネートへの言及は、グルロン酸/グルロネート及びマンヌロン酸/マンヌロネート(具体的にはα−L−グルロン酸/グルロネート及びβ−D−マンヌロン酸/マンヌロネート)への言及と区別がなく解釈されるものとし、これには非修飾オリゴマーより実質的に低い活性(例えば抗生物質の効果の増大又は相乗活性)をもたらすことなく、1つ又は複数の利用可能な側鎖又は基が修飾されているそれらの誘導体が更に含まれる。一般的な糖修飾基は、アセチル基、スルフェート基、アミノ基、デオキシ基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基及びアンヒドロ基を含む。アルギネートオリゴマーはまた、荷電基を付加するために(例えばカルボキシル化又はカルボキシメチル化グリカン)、及び柔軟性を変化させるために(例えば過ヨウ素酸塩による酸化により)化学修飾することができる。当業者は、オリゴ糖の単糖サブユニットに対して行うことができるまた更なる化学修飾を認識し、これらを本発明のアルギネートに適用することができる。
【0088】
アシネトバクター生物は任意のアシネトバクター種、例えばアシネトバクター・バウマンニ、アシネトバクター・バイリイ(Acinetobacter baylyi)、アシネトバクター・ブーヴェティイ(Acinetobacter bouvetii)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アシネトバクター・ゲルネリ(Acinetobacter gerneri)、アシネトバクター・グリモンティイ(Acinetobacter grimontii)、アシネトバクター・ヘモリチカス、アシネトバクター・ジョンソニイ、アシネトバクター・ジュニイ、アシネトバクター・ルオフィイ、アシネトバクター・パルブス(Acinetobacter parvus)、アシネトバクター・レイディオレジステンス、アシネトバクター・シンドレリ(Acinetobacter schindleri)、アシネトバクター・タンドイイ、アシネトバクター・チェルンベルギアエ、アシネトバクター・タウネリ、アシネトバクター・ウルシンギイにから選択され得る。好ましくは、アシネトバクター生物はアシネトバクター・バウマンニ、アシネトバクター・ヘモリチカス、アシネトバクター・ジョンソニイ、アシネトバクター・ジュニイ、アシネトバクター・レイディオレジステンス、アシネトバクター・ルオフィイ、アシネトバクター・タンドイイ、アシネトバクター・チェルンベルギアエ、アシネトバクター・タウネリ又はアシネトバクター・ウルシンギイ、より好ましくはアシネトバクター・バウマンニ及びアシネトバクター・ルオフィイ、最も好ましくはアシネトバクター・バウマンニである。
【0089】
アシネトバクター属は、グラム陰性細菌に対して活性を有する1つ又は複数の抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質(カルバペネム系抗生物質、カルバセフェム系抗生物質及びモノバクタム系抗生物質を含み得る)、テトラサイクリン系抗生物質、ポリペプチド系抗生物質及びキノロン系抗生物質から選択される抗生物質に対して耐性を有するものと判断され得る。他の実施の形態では、群はアミノグリコシド系抗生物質を含み得る。また更なる実施の形態では、群はマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質及びキノロン系抗生物質を含み得る。本発明はアシネトバクター属が耐性を有する1つ又は複数の群に対する耐性の克服をもたらし得るが、このことは、アシネトバクター属が耐性を有し得る全ての抗生物質群に対する耐性が克服されることを必ずしも意味するものではないことに留意されたい。したがって、例えばマクロライド系抗生物質及び/又はβ−ラクタム系抗生物質及び/又はキノロン系抗生物質に対する耐性は、他の抗生物質(例えばアミノグリコシド系抗生物質)に対しても耐性を有するMDR株においても克服され得る。
【0090】
より具体的には、これらの実施の形態では、抗生物質はマクロライド系抗生物質、モノバクタム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、カルバセフェム系抗生物質、第三世代及び第四世代セファロスポリン系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、ポリペプチド系抗生物質並びにキノロン系抗生物質から選択され得る。より具体的な代表的な実施の形態では、細菌はマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質並びにキノロン系抗生物質から選択される抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質、モノバクタム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、カルバセフェム系抗生物質、第三世代及び第四世代セファロスポリン系抗生物質並びにキノロン系抗生物質から選択される抗生物質に対して耐性を有し得る。他の実施の形態では、上で列挙される抗生物質(antiobiotic)群はアミノグリコシド系抗生物質も含み得る。例えば、抗生物質はアミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、タイロシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム・ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン及び/又はトロバフロキサシンから選択され得る。特に、アシネトバクター生物はアミカシン、トブラマイシン、セフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、オキシテトラサイクリン、コリスチン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択される1つ又は複数の抗生物質に対して耐性を有し得る。アシネトバクター生物がセフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択される1つ又は複数の抗生物質に対して耐性を有することが特に好ましい。より好ましくは、アシネトバクター生物はアズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択される1つ又は複数の抗生物質に対して耐性を有する。
【0091】
「抗生物質に対して耐性を有する」とは、細菌が、その抗生物質に対して感受性を有する対照の細菌、又は典型的な若しくは野生型の細菌と比較して実質的に大きい耐容性(低下した感受性)を抗生物質に対して示すことを意味する。耐性は獲得又は発現されたもの(例えば別の細菌からの移動又は突然変異による;「獲得耐性」という用語は本明細書で使用される場合、それにより耐性が生じる任意の手段又は機構を含む)であり得るが、その生物にとって本質的な(又は先天的な)ものであってもよい。かかる実質的に大きな耐容性は、例えばMICアッセイ等の標準的なアッセイにおいて測定される、抗生物質に対する感受性の統計的に有意な低下であり得る。場合によっては、細菌は抗生物質への曝露に全く影響を受けない可能性もある。この場合、細菌は完全にその抗生物質に対する耐性を有するとみなされる。
【0092】
体表的な対照細菌は黄色ブドウ球菌オックスフォード株(NCTC 6571)であるが、多くの他の株が当該技術分野において既知であり、容易に利用可能である。典型的な又は野生型の細菌は、実験室及び世界中の培養株保存機関から容易に得ることができる。
【0093】
抗生物質に対する感受性(逆に言えば耐性及び耐容性)は、任意の好都合な方法で、例えば希釈感受性試験及び/又はディスク拡散試験によって測定することができる。当業者は、耐性をもたらすのに十分な耐容性/感受性の差の程度が試験を受ける抗生物質及び生物、並びに使用される試験に応じて変化することを理解するだろう。しかしながら、耐性細菌は、抗生物質に対して感受性を有する対照細菌、又は典型的な若しくは野生型の細菌の少なくとも2倍、例えば少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍、10倍、20倍又は50倍の抗生物質に対する耐容性を有することが好ましい。好ましくは、抗生物質に対する特定の細菌の耐性は、バイオフィルム中にない細菌又はバイオフィルム表現型を有しない細菌を使用して判定される。
【0094】
アシネトバクター属は、多剤耐性(MDR)であると判断され得る。例えば、アシネトバクター属は、グラム陰性細菌に対する活性を有する2個超(例えば3個超、5個超又は10個超)の抗生物質に対して耐性を示す。好ましくは、アシネトバクター生物は、少なくとも3個、又は少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の抗生物質群(例えば上に記載されるもの)に対して耐性を有する。上述したように、異なる群の抗生物質は構造的及び/又は機能的に異なる。他の実施の形態では、本発明の方法によって標的とされるアシネトバクター生物は、極度の薬物耐性(本発明によると、細菌が大半又は全ての抗生物質に対して耐性を有することを意味する)を有する任意のアシネトバクター生物であり得る。特に、極度の薬剤耐性の細菌は、少なくとも1つの最終手段の抗生物質(例えばバンコマイシン、リネゾリド等)に対して耐性を有する。当業者は最終手段の抗生物質の例を認識するだろう。
【0095】
好ましい実施の形態では、本発明の方法において使用される抗生物質は、標的とされるアシネトバクター生物が耐性を示す抗生物質である。本発明によれば、本発明のアルギネートオリゴマーは、標的アシネトバクター生物に対する使用される抗生物質の効果を改善する。その生物が抗生物質に対して耐性を有する場合、本発明は上記アシネトバクター生物における上記抗生物質に対する耐性を克服する方法であるとみなすことができる。本発明の方法の好ましい実施の形態では、使用される抗生物質はマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質及びキノロン系抗生物質から選択される抗生物質である。更なる実施の形態では、ポリペプチド系抗生物質及び/又はアミノグリコシド系抗生物質が含まれ得る。代替的な実施の形態では、抗生物質はアミノグリコシド系抗生物質及び/又はポリペプチド系抗生物質(例えばコリスチン)を含まない。
【0096】
したがって、「耐性の克服」とは、抗生物質に対する耐性の上記の指標の測定可能な低下(又は感受性の測定可能な増大、若しくは耐容性の測定可能な減少)をアシネトバクター属が示すこととして解釈されるものとする。したがって、「耐性の克服」は、代替的には「耐性の低下」として表すことができる。これは標的アシネトバクター属の観察される表現型への言及であり、必ずしも任意の特定の耐性機構の機構レベルでの任意の程度の逆転と同等であると考えられるものではない。実施例から分かるように、アルギネートオリゴマー及び抗生物質は、抗生物質に対する耐性を有する表現型を有するアシネトバクター属をその抗生物質に対してより感受性の高いものにする組み合わせ効果、例えば相乗効果を有する。1つの実施の形態では、アルギネートオリゴマーは抗生物質に対する耐性アシネトバクター属のMIC値を測定可能なほど低下させる。例えばMIC値は、本発明による治療の前のアシネトバクター属の抗生物質に対するMIC値の少なくとも50%、25%、20%、15%、10%、5%、2%又は1%である。
【0097】
したがって、本発明によるアルギネートオリゴマーの使用は、特定のアシネトバクター属に対して有用/効果的でないと以前は考えられていた抗生物質、又は所与のアシネトバクター属に対して通常は効果的でない抗生物質を有用な(又は効果的な)ものとすることができる。使用される抗生物質の用量を低くすることも可能にする。
【0098】
しかしながら、上述したように、任意の所与の(例えばMDR)株の耐性の全てを克服することは必要とされず、又は意味されない。本発明は例えば、所与の株における或る特定の抗生物質群(例えば、マクロライド系抗生物質及び/又はキノロン系抗生物質及び/又はβ−ラクタム系抗生物質)に対する耐性を克服するうえで効果的であり得るが、このことは他の抗生物質に対する耐性が残存する場合であっても臨床的に有用である。
【0099】
抗生物質に対する耐性の克服又は抗生物質の効果の増強(等)におけるアルギネートオリゴマーの効果は、問題の抗生物質に対する耐性の機構にかかわらずに見ることができる。しかし、良好な結果はシプロフロキサシンによって観察された。この抗生物質に対する耐性は、特にDNAジャイレース又はトポイソメラーゼIVをコードする遺伝子における突然変異の蓄積を伴い得る。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明のアルギネートオリゴマーはしたがって、この蓄積プロセスに、例えばそれを予防する、遅らせる又は停止することによって影響を及ぼし得る。しかしながら、アルギネートオリゴマーが任意の耐性の機構に対して任意の効果を有し得ることは、このことからは想定又は暗示されない。
【0100】
アシネトバクター属は、以前発見された株であっても、又は患者(例えばヒト患者)中若しくは健康管理機関(例えば病院)内で見られる株であってもよい。上述したように、アシネトバクター属は中東諸国において蔓延しており、したがってアシネトバクター属は任意のかかる株又は種であり得る。例えば、アシネトバクター属はリビアにおいて発見されている株であり得る。別の見方をすると、本発明によって標的とされるアシネトバクター生物は、臨床的に関連するアシネトバクター生物、例えば被験体における疾患及び/又は感染、特にその疾患及び/又は感染の治療において従来使用されている少なくとも3つの構造的及び/若しくは機能的に異なる抗生物質、又は少なくとも3個の抗生物質群、より具体的には少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個の構造的及び/若しくは機能的に異なる抗生物質若しくは群に反応を示さない疾患及び感染と関連することが知られるアシネトバクター生物であり得る。より具体的には、本発明によって標的とされるアシネトバクター生物は、臨床的に関連するアシネトバクター生物のMDR株に由来し得る。アシネトバクター生物は臨床的に重大な又は臨床的に重要な感染、換言すれば重大な臨床問題の原因である感染を引き起こす又はもたらす可能性がある。例えば、アシネトバクター生物は院内感染、患者、例えば嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、鬱血性閉塞性気道疾患/鬱血性閉塞性気道肺炎(COAD/COAP)、肺炎、気腫、気管支炎及び副鼻腔炎を患っている患者の気道における感染;慢性創傷(火傷を含む)における感染、植込式又は人工の医療デバイスと関連するデバイス関連感染、例えば人工弁心内膜炎、又はライン若しくはカテーテル若しくは人工関節若しくは代替組織(tissue replacements)、若しくは気管内チューブ若しくは気管切開チューブの感染と関連するアシネトバクター生物であり得る。特に、上述したように、軍事的状況、例えば戦場(例えば中東の)において獲得されるアシネトバクター感染は、ますます問題となってきており、本発明による治療に影響を受けやすい可能性がある。
【0101】
本発明の方法によって標的とされるアシネトバクター生物は、被験体から先に単離された細菌と同じものであり得る。したがって、アシネトバクター生物は好ましくは臨床株又は臨床分離株である。本発明の方法によって標的とされるアシネトバクター生物は被験体内又は被験体上に存在し得る。アシネトバクター生物は抗生物質に対して耐性を有する(例えばMDRである)ことが既知であるか、若しくは見出されたものであってもよく、又はアシネトバクター生物は被験体の治療中に耐性又はMDRを発現したものであってもよい。本発明による治療対象のアシネトバクター生物は概して、従来の実験室株又は対照株ではない。
【0102】
好ましくは、アシネトバクター種はアシネトバクター・バウマンニであり、アルギネートオリゴマーは、G残基の大部分がGブロック中にある一次構造を有するオリゴマーであり、抗生物質はマクロライドであり、例えば抗生物質はアジスロマイシンである。
【0103】
他の好ましい実施の形態では、アシネトバクター種はアシネトバクター・バウマンニ又はアシネトバクター・ルオフィイであり、抗生物質はマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質及びキノロン系抗生物質、例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、アズトレオナム、イミペネム、メロペネム、セフタジジム、オキシテトラサイクリン又はシプロフロキサシン、特にはアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、アズトレオナム、メロペネム又はセフタジジムから選択される。
【0104】
本発明の方法は、アシネトバクター属を2つ以上の抗生物質に接触させることを伴い得る。更なる抗生物質(複数も可)は任意の抗生物質、例えば上で列挙されるものであり得る。更なる抗生物質(複数も可)は、アシネトバクター属が感受性を有する抗生物質であり得る。更なる抗生物質(複数も可)は、アシネトバクター属が耐性を有する抗生物質であり得る。更なる抗生物質(複数も可)は、第1の又は他の抗生物質及び/又はアルギネートオリゴマーと共に(併用して又は組み合わせて)使用され得る。より具体的には、使用する工程は、アシネトバクター属を抗生物質の幾つか又は全てに接触させるのと同時に、又は実質的に同時に、又はその前に、アシネトバクター属の成長及び/又は生存能力を阻害するのに効果的な量でアシネトバクター属をアルギネートオリゴマーに接触させることを含み得る。
【0105】
上述したように、抗生物質(複数も可)は、アルギネートオリゴマーと同時に、又はアルギネートオリゴマーの投与前若しくは投与後すぐに、又は投与前若しくは投与後ほぼすぐに好都合に適用又は投与することができる。しかしながら、抗生物質(複数も可)は、異なる時点で、例えばアルギネートオリゴマーの少なくとも1時間後、少なくとも3時間後、少なくとも6時間後に適用又は投与してもよい。アルギネートオリゴマー及び抗生物質の効果を最適化する投薬計画を開発することは医師の能力の範囲内である。これらの実施の形態では、抗生物質(複数も可)はアルギネートオリゴマーの更なる適用の有無にかかわらず適用又は投与することができる。アルギネートオリゴマーは、抗生物質(複数も可)の前又は抗生物質と同時の複数回の適用で適用又は投与することができる。他の実施の形態では、抗生物質(複数も可)をアルギネートオリゴマーの前、例えばアルギネートオリゴマーの少なくとも1時間前、少なくとも3時間前、少なくとも6時間前に好都合に適用又は投与することができる。これらの実施の形態では、アルギネートオリゴマーは抗生物質の更なる適用の有無にかかわらず適用又は投与することができる。抗生物質(複数も可)は、アルギネートオリゴマーの前又はアルギネートオリゴマーと同時の複数回の適用で適用又は投与することができる。当業者は使用を意図するアルギネートオリゴマー及び抗生物質(複数も可)にとって適切な投与計画が何であるかを容易に判定することができる。
【0106】
好ましい抗生物質の組合せはコリスチン、シプロフロキサシン、メロペネム、セフタジジム、アズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びイミペネム/シラスタチン、アミカシン、ゲンタマイシン、オキシテトラサイクリン、トブラマイシン及びバンコマイシンからの2つ以上であり得る。より具体的には、これらはシプロフロキサシン、メロペネム、セフタジジム、アズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、イミペネム/シラスタチン又はオキシテトラサイクリン、更により具体的にはシプロフロキサシン、メロペネム、セフタジジム、アズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン及びスピラマイシンから選択され得る。
【0107】
アシネトバクター集団は上で言及されたアシネトバクター種のいずれかを含み、均一であっても又は不均一であってもよい。アシネトバクター集団は、少なくとも1000個の生物、例えば少なくとも10個、10個、10個、10個又は10個の生物からなると考えられる。アシネトバクター生物又はアシネトバクター集団は、その位置を別の微生物と共有する場合もある。
【0108】
「微生物」という用語は、本明細書で使用される場合、任意の微生物(microbial organism)、すなわち微視的な、すなわち裸眼で見るには小さ過ぎる任意の生物を含む。特に本明細書で使用される場合、この用語はウイルス、並びにより一般的には微生物、特に細菌、真菌、古細菌、藻類及び原生生物と考えられる生物を含む。したがって、この用語は特に、通常は単細胞性であるが、或る特定の条件下で単純な協同的コロニー又は構造、例えば糸状体、菌糸(hyphae)又は菌糸体(mycelia)(真の組織ではない)を組織する能力を有し得る生物を含む。微生物は原核生物であっても又は真核生物であってもよく、微生物の任意の群、属又は種に由来し得る。原核微生物の例としては、マイコプラズマ(例えばグラム陽性細菌、グラム陰性細菌又はグラム試験非応答性細菌)及び古細菌を含む細菌が挙げられるが、これらに限定されない。真核微生物は、真菌、藻類、及び分類上の原生生物界に分類されているか若しくはされていた、又は原生生物とみなされているか若しくはみなされていたもの、例えば原生動物、珪藻、原生植物(protoophyta)及び真菌様の菌(fungus-like molds)を含む。微生物は好気性であっても又は嫌気性であってもよい。微生物は病原性であっても、若しくは非病原性であってもよく、又は腐敗性であっても、若しくは指標微生物であってもよい。特に好ましい実施の形態では、微生物は病原性である。
【0109】
細菌の属又は種の例は、アビオトロフィア属、アクロモバクター属、アシダミノコッカス属、アシドボラクス属、アシネトバクター属、アクチノバチルス属、アクチノバクラム属、アクチノマジュラ属、アクチノミセス属、アエロコッカス属、エロモナス属、アフピア属、アグロバクテリウム属、アルガリゲネス属、アロイオコッカス属、アルテロモナス属、アミコラータ属、アミコラトプシス属、アナエロビオスピリルム属(Anaerobospirillum)、アナエロラブダス属、アラキニア属、アルカノバクテリウム属、アルコバクター属、アルスロバクター属、アトポビウム属、オーレオバクテリウム属、バクテロイデス属、バルネアトリックス属、バルトネラ属、ベルゲイエラ属、ビフィドバクテリウム属、バイロフィラ属、ブランハメラ属、ボレリア属、ボルデテラ属、ブラキスピラ属、ブレビバチルス属、ブレビバクテリウム属、ブレブンディモナス属、ブルセラ属、バークホルデリア属、ブティアウクセラ属、ブチリビブリオ属、カリマトバクテリウム属、カンピロバクター属、キャプノサイトファーガ属、カルジオバクテリウム属、カトネラ属、セデセア属、セルロモナス属、センチペダ属、クラミジア属、クラミドフィラ属、クロモバクテリウム属、クリセオバクテリウム属(Chyseobacterium)、クリセオモナス属、シトロバクター属、クロストリジウム属、コリンゼラ属、コマモナス属、コリネバクテリウム属、コクシエラ属、クリプトバクテリウム属、デルフチア属、デルマバクター属、デルマトフィルス属、デスルフォモナス属、デスルホビブリオ属、ジアリスタ属、ディケロバクター属、ドロシコッカス属、ドロシグラヌルム属、エドワージエラ属、エッゲルセラ属、エーリキア属、エイケネラ属、エンペドバクター属、エンテロバクター属、エンテロコッカス属、エルウィニア属、エリシペロスリクス属、エシェリキア属、ユーバクテリウム属、エウィンゲラ属、エキシグオバクテリウム属、ファクラミア属、フィリファクター属、フラビモナス属、フラボバクテリウム属、フランシセラ属、フソバクテリウム属、ガードネレラ属、グロビカテラ属、双子菌属、ゴルドナ属、ヘモフィルス属、ハフニア属、ヘリコバクター属、ハロコックス属(Helococcus)、ホールディマニア属、イグナビグラナム属、ジョンソネラ属、キンゲラ属、クレブシエラ属、コクリア属、コセレラ属、カルシア属、キトコッカス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロートロピア属、レクレルシア属、レジオネラ属、レミノレラ属、レプトスピラ属、レプトトリキア属、リューコノストック属、リステリア属、リストネラ属、メガスフェラ属、メチロバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、ミクロコッカス属、ミツオケラ属、モビルンカス属、モエレレラ属、モラクセラ属、モルガネラ属、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、ミロイデス属、ナイセリア属、ノカルジア属、ノカルジオプシス属、オクロバクテリウム属、オエルスコビア属(Oeskovia)、オリゲラ属、オリエンティア属、パエニバチルス属、パントエア属、パラクラミジア属、パスツレラ属、ペディオコッカス属、ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、フォトバクテリウム属、フォトラブダス属、プレジオモナス属、ポルフィロモナス属(Porphyrimonas)、プレボテラ属、プロピオニバクテリウム属、プロテウス属、プロビデンシア属、シュードモナス属、シュードノカルディア属、シュードラミバクター属、サイクロバクター属、ラーネラ属、ラルストニア属、ロドコッカス属、リケッチア属、ロシャリメア属、ロゼオモナス属、ロチア属、ルミノコッカス属、サルモネラ属、セレノモナス属、セルプリナ属、セラチア属、シュワネラ属(Shewenella)、赤痢菌属、シムカニア属、スラッキア属、スフィンゴバクテリウム属、スフィンゴモナス属、スピリルム属、ブドウ球菌属、ステノトロホモナス属、ストマトコッカス属、ストレプトバチルス属、連鎖球菌属、ストレプトミセス属、サクシニビブリオ属、ステレラ属、ストネラ属、テイタメラ属、ティセレラ属、トラバルシエラ属、トレポネーマ属、トロフェリマ属、ツカムレラ属(Tsakamurella)、ツリセラ属、ウレアプラズマ属、バゴコッカス属、ベイロネラ属、ビブリオ属、ウィークセラ属、ウォリネラ属、ザントモナス属、ゼノラブダス属、エルシニア属及びヨケネラ属、例えばヒト型結核菌、ウシ型結核菌(M. bovis)、マイコバクテリウム・チフィムリウム(M. typhimurium)、ウシ型結核菌株BCG、BCG亜株、マイコバクテリウム・アビウム(M. avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M. intracellulare)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(M. africanum)、マイコバクテリウム・カンサシ(M. kansasii)、マイコバクテリウム・マリヌム(M. marinum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(M. ulcerans)、ヨーネ菌(M. avium subspecies paratuberculosis)、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腺疫菌(Staphylococcus equi)、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、枯草菌(B. subtilis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、イスラエル放線菌(Actinomyces israelii)、アクネ菌(Propionibacterium acnes)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)及びエンテロコッカス種等のグラム陽性細菌、並びにシュードモナス・エルギノーサ、コレラ菌(Vibrio cholerae)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ヘモリチカ菌(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、チフス菌、ウシ流産菌(Brucella abortus)、コクシエラ菌(Coxiella burnetti)、大腸菌(Escherichia coli)、髄膜炎菌(Neiserria meningitidis)、淋菌(Neiserria gonorrhea)、インフルエンザ菌、軟性下疳菌、ペスト菌(Yersinia pestis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterolitica)、大腸菌、エシェリキア・ヒラエ(E. hirae)、セパシア菌、類鼻疽菌、野兎病菌(Francisella tularensis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobascterium nucleatum)、コウドリア・ルミナンチウム(Cowdria ruminantium)等のグラム陰性細菌、並びにクラミジア・トラコマチス、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)等のグラム試験非応答性細菌を含むが、これらに限定されない。
【0110】
微生物はまた、真菌、例えば原生生物に分類されているか又はされていたものであり得る真菌、例えばカンジダ属、アスペルギルス属、ニューモシスティス属、ペニシリウム属及びフザリウム属の真菌であっても又はそれに由来してもよい。代表的な真菌種は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ドゥブリニエンシス(Candida dubliniensis)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplama capsulatum)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidiodes immitis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidiodes brasiliensis)、ブラストマイセス・デルマチチジス(Blastomyces dermitidis)、ニューモシスティス・カリニ(Pneomocystis carnii)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffi)、アルテルナリア・アルテルネート(Alternaria alternate)を含むが、これらに限定されない。
【0111】
微生物はまた、藻類、例えば原生生物に分類されているか又はされていたものであり得る藻類であっても又はそれに由来してもよい。代表的な藻類種はカエトフォラ属、クロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)、コレオケーテ・スクタータ(Coleochaete scutata)、コレオケーテ・ソルータ(Coleochaete soluta)、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon merolae)、アファノカエテ属、グロエオテニウム属、サヤミドロ属、オーキスティス属、ユレモ属、パラドキシア・マルチシチア(Paradoxia multisitia)、フォルミディウム属、クロオコックス属、アファノテーケ属、オビケイソウ属(Fragillaria)、コッコネイス属(Cocconis)、ナビクラ属、キンベラ属、海洋性珪藻類、並びにシアノバクテリア(藍藻)、及びニッチア・パレア(Nitzschia palea)等の珪藻を含む。
【0112】
微生物はまた、原生動物、例えばアメーバ類、胞子虫類、繊毛虫類及び鞭毛虫類の成員であってもよい。代表的な原生動物は、トキソプラズマ種、例えばトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、プラズモディウム種、例えば熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、トリパノソーマ種、例えばトリパノソーマ・ブルーセイ(Trypanosoma brucei)、クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、リーシュマニア種、例えば大形リーシュマニア(Leishmania major)、及びエントアメーバ種、例えば赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)を含む。
【0113】
「ウイルス」という用語は全てのウイルスを包含する。したがって、ウイルスはRNAウイルス(一本鎖又は二本鎖)であっても、又はDNAウイルス(一本鎖又は二本鎖)であってもよい。ウイルスはエンベロープウイルスであっても、又は非エンベロープウイルスであってもよい。ウイルスは原核生物を標的としていても、又は真核生物を標的としていてもよい。ウイルスはバクテリオファージであっても、又は植物、動物若しくは真菌を標的とするウイルスであってもよい。好ましくは、ウイルスは真核生物、好ましくは動物又は植物を標的とする。動物を標的とするウイルスの代表的な科は、パルボウイルス科、パポウイルス科(papoviridae)、アデノウイルス科、ピコウイルス科(picoviridae)、レオウイルス科、レトロウイルス科(reteroviridae)、コロナウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、オルソミクソウイルス科、ヘルペスウイルス科、ヘパドナウイルス科及びポックスウイルス科である。植物を標的とするウイルスの代表的な科は、ブロモウイルス、ネポウイルス、コモウイルス、カリモウイルス、レオウイルス科、ラブドウイルス科、タバモウイルス、ククモウイルス、ルテオウイルス、ポテックスウイルス及びポチウイルスである。ウイルスはこれらの科のいずれかの成員、例えばHIV、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、オルソポックスウイルス、アビポックスウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、インフルエンザ、A型、B型、C型、D型及びE型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、口蹄疫ウイルス、SARSコロナウイルス、ライノウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス及びムンプスウイルスである。
【0114】
アシネトバクター生物又はその集団の位置は限定されない。アシネトバクター生物又はその集団は表面上に存在し得る。表面は限定されず、その上でアシネトバクター生物又はその集団が生じ得る任意の表面を含む。表面は、生物又は非生物のものであってもよく、無生物(又は非生物)の表面は、微生物接触又はコンタミネーションに曝されていてもよい任意のかかる表面を含む。したがって、機械(例えば工業用機械)若しくは医療機器上の表面、又は水生環境(例えば海洋用設備、若しくは船若しくはボート、若しくはそれらの部分若しくは構成要素)に曝された任意の表面、又は環境の任意の部分に曝された任意の表面(例えばパイプ若しくは建築物上)が特に含まれる。微生物接触又はコンタミネーションに曝されたかかる無生物表面は、特に以下の任意の部分を含む:食品又は飲料の加工処理、調製、貯蔵又は充填(dispensing)用の機械又は設備、空調装置、工業用機械、例えば化学的又は生物工学的な加工処理プラントにおけるもの、貯蔵タンク、及び医療用設備又は外科用設備、並びに細胞及び組織培養設備。材料を運搬又は輸送又は送達するための任意の装置又は設備は、微生物のコンタミネーションが起こりやすい。かかる表面は、特にパイプ(この用語は、本明細書では、任意のコンジット又はラインを含むように広範に使用される)を含む。代表的な無生物又は非生物の表面は、食品加工処理、貯蔵、充填若しくは調製用の設備若しくは表面、タンク、コンベヤ、床、ドレイン、クーラー、フリーザ、設備表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、空調管、冷却装置、食品若しくは飲料の充填ライン、熱交換器、ボートの船体、又は水に曝されたボート構造の任意の部分、歯科用水道、石油掘削管、コンタクトレンズ、及び貯蔵ケースを含むが、これらに限定されない。
【0115】
上述したように、医療用又は外科用の設備又はデバイスは、その上にアシネトバクター属のコンタミネーションが起こり得る具体的な種類の表面を表す。これは、任意の種類のライン(カテーテル(例えば中心静脈カテーテル及び尿路カテーテル)を含む)、人工デバイス、例えば心臓弁、人工関節、義歯、歯冠、歯覆(dental caps)及び軟部組織インプラント(例えば乳房、臀部及び唇のインプラント)を含み得る。任意の種類の植込式(又は「留置」)医療デバイス(例えばステント、子宮内デバイス、ペースメーカー、挿管チューブ(例えば気管内チューブ又は気管切開チューブ)、プロテーゼ又は人工デバイス、ライン又はカテーテル)が含まれる。「留置」医療デバイスは、その任意の部分が身体内に含まれる、すなわちそのデバイスが全体的に又は部分的に留置し得るデバイスを含み得る。
【0116】
表面は、任意の材料からなり得る。例えば表面は金属、例えばアルミニウム、鋼、ステンレス鋼、クロム、チタン、鉄、その合金等であり得る。表面は、プラスチック、例えばポリオレフィン(例えばポリエチレン、(超高分子量)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、ABS、アクリロニトリルブタジエン等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、及びポリアミド(例えば、ナイロン)、それらの組合せ等であってもよい。他の例は、アセタールコポリマー、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド(polythermide)、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニリデンフルオリド、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリ(テトラフルオロエチレン)を含む。表面はまた、れんが、タイル、セラミック、磁器、木材、ビニル、リノリウム又はカーペット、それらの組合せ等であってもよい。表面はまた、食品、例えば牛肉、鳥肉、豚肉、野菜、果実、魚、貝、それらの組合せ等であってもよい。アシネトバクター属による感染を抑制するための任意のかかる表面の「処理」(すなわち、任意のかかる表面にアルギネートオリゴマーを抗生物質と共に適用すること)が本発明に包含される。
【0117】
本発明によって治療することができるアシネトバクター属による感染では、アシネトバクター属は被験体内又は被験体の表面上に生じ得る。さらに、医療的な治療の状況外で、アシネトバクター生物は生物表面上にも生じ得る。したがって、本発明は生物表面の処理を含む。生物又は有生物の表面は、動物、植物又は真菌の身体内又は身体上の任意の表面又は界面を含み得る。したがって、生物又は有生物の表面は、「生理学的」又は「生物学的」表面と考えることができる。生物又は有生物の表面は、動物の身体の場合には血液学的組織又は造血(haematopoietic)組織(例えば血液)を含み得る任意の組織又は器官の表面を含む、任意の身体の内部又は外部の表面であり得る。死んだ若しくは死につつある(例えば壊死性の)、又は損傷した(例えば、炎症の、若しくは破壊された、若しくは分解した)組織は、微生物のコンタミネーションを特に受けやすく、かかる組織は、「有生物の」又は「生物の」という用語に包含される。表面は、粘膜表面であっても、又は非粘膜表面であってもよい。
【0118】
代表的な生物表面は、口腔内の任意の表面(例えば歯、歯肉、歯肉溝、歯周ポケット)、生殖器官(例えば子宮頸部、子宮、卵管)、腹膜、中耳、前立腺、尿路、血管内膜、眼、すなわち眼組織(例えば結膜、角膜組織、涙管、涙腺、眼瞼)、気道、肺組織(例えば気管支組織及び肺胞(alveolial)組織)、心臓弁、胃腸管、皮膚、頭皮、爪、及び局所創傷又は内部創傷であり得る創傷(特に慢性創傷及び外科創傷)の内側を含むが、これらに限定されない。他の表面には、(特に移植を受けた)器官、例えば心臓、肺、腎臓、肝臓、心臓弁、膵臓、腸、角膜組織、動脈グラフト及び静脈グラフト、並びに皮膚の外面が含まれる。
【0119】
一態様では、表面は、粘膜の表面ではない、又はより具体的には高粘性の粘液被膜を有しない。当業者は、所定の表面での粘液が高粘性である場合に、判定することができる。1つの実施の形態では、表面は、粘液分泌組織の表面ではない。より具体的には、かかる1つの実施の形態では、表面は、粘液で被覆された組織の表面ではない。当業者は、その一般的知識として、粘液を分泌する組織と、粘液で被覆されている組織とを、知っているだろう。
【0120】
位置は表面ではない位置であってもよい。換言すれば、アシネトバクター生物又はその集団は材料内及びその表面上に見られる場合もある。材料は化学的に不均一であっても、化学的に均一であってもよい。材料はまた、異なる部分若しくは構成要素から構築若しくは形成されるか、又は異なる部分若しくは構成要素を含み得る。材料はより大きな材料又は実体の一部であってもよい。材料は、上で言及される表面が形成される材料であっても、又はその材料を含んでいてもよい。場合によっては、材料は物体であると考えられ得るが、この用語はあらゆる場所の大量の液体を包含する。材料は上述の表面のいずれかを含み得る。材料は上で表面に関して論じられるように非生物又は生物(無生物又は有生物)のものであり得る。例えば、材料は完全に又は部分的に、固体、液体、半固体、ゲル又はゲル−ゾルであり得る。したがって、例えば、アシネトバクター生物又はその集団は体液(例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、消化管内容物、精液、痰及び他の肺分泌物);組織(例えば副腎、肝臓、腎臓、膵臓、下垂体、甲状腺、免疫、卵巣、精巣、前立腺、子宮内膜、眼、乳房、脂肪、上皮、内皮、神経、筋肉、肺、表皮、骨);細胞及び組織の培地;細胞及び組織の培養物;医療廃棄物/実験廃棄物(scientific waste)材料(先の材料のいずれかを含み得る);医薬品(例えば錠剤、ピル、粉末、ロゼンジ、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル、懸濁液、乳化液、溶液、シロップ、エアロゾル、スプレー、ネブライザにおける使用のための組成物、軟膏、軟ゼラチンカプセル及び硬ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射溶液、無菌包装粉末);動物又はヒト用の食品(例えば肉、魚、甲殻類、野菜、穀物、乳製品(diary products)、フルーツジュース、野菜ジュース、ソース、ブイヨン、スープ、菓子類、アルコール飲料、調味料);個人衛生用品(例えば歯磨き粉、洗口剤、シャンプー、石鹸、デオドラント、シャワー用ジェル);化粧品(例えばリップグロス、アイシャドウ、ファンデーション);飲料水;廃水;農業用飼料及び農業用水;殺虫剤製剤、農薬製剤及び除草剤製剤;工業用潤滑油等の中に存在し得る。液体、半固体、ゲル又はゲル−ゾルに注目すべきである。体液及び組織はin vitro/ex vivoで処理することができ、それを同じくin vivoで処理することも可能である。
【0121】
或る特定の実施の形態では、アシネトバクター生物はバイオフィルム中にない。他の実施の形態では、アシネトバクター生物はバイオフィルム中にある。違う言い方をすると、アシネトバクター生物はバイオフィルム様に成長しないか、若しくはバイオフィルム様に成長する、又は非バイオフィルム様に成長するか、若しくは非バイオフィルム様に成長しない。アルギネートオリゴマーがin vitroでアシネトバクター属のバイオフィルムを破壊し得ることを示すデータが得られた。例えば、in vitroのアシネトバクター・バウマンニのバイオフィルムの場合、アルギネートオリゴマーOligo CF−5/20(G残基90%〜95%)が6%及び10%で、細胞死及び著しい形態変化を特徴とする約80%の破壊をもたらした。アルギネートオリゴマー、特に上で「高G」であるか、又はGブロックの含量が高いと規定されるものは、特にアシネトバクター属に対して効果的であり(アシネトバクター属に対する直接効果、又はアシネトバクター属のバイオフィルムを破壊する効果を含む)、したがってそれ自体でアシネトバクター属に対して有用であり得る。
【0122】
したがって、他の態様では、本発明は、アシネトバクター属による感染若しくはコンタミネーション(すなわちコロニー形成)の抑制、又はアシネトバクター属(アシネトバクター属のバイオフィルム、又はアシネトバクター属を含有するバイオフィルムを含む)の成長及び/若しくは生存能力の阻害に使用されるアルギネートオリゴマー(本明細書で規定されるいずれのアルギネートオリゴマーであってもよい)も提供する。
【0123】
「バイオフィルム」とは、底質若しくは接触面に、又は互いに付着しており(或る程度の運動性細胞が存在することもある)、かつ細胞外ポリマー(より具体的には、微生物が産生した細胞外ポリマー)のマトリクス中に埋め込まれている、固着性細胞が優勢であることを特徴とする微生物のコミュニティを意味し、(例えば、同じ微生物であって「非バイオフィルム性」のもの、すなわち自由に浮かんでいる若しくは浮遊しているものと比較して)成長速度及び遺伝子転写に関してこのコロニーの微生物が変化した表現型を示すことを特徴とする。
【0124】
「バイオフィルム中にある」とは、アシネトバクター生物が(完全に又は部分的に)バイオフィルムのポリマーマトリクス内にあるか、ポリマーマトリクス上にあるか、又はポリマーマトリクスと結合し、バイオフィルム中のアシネトバクター生物の表現型特性(すなわち、例えば「非バイオフィルム性」、すなわち自由に浮かんでいる若しくは浮遊しているアシネトバクター生物と比較して、成長速度及び遺伝子転写に関して変化した表現型)を有することを意味する。
【0125】
違った方向から見ると、「バイオフィルム中にない」アシネトバクター生物は分離している、例えば浮遊している生物であるか、又は複数の生物の集合体中にある場合、集合体は組織化されていない。いずれの場合にも、アシネトバクター生物は、そのバイオフィルム中に住む対照物に観察される変化した表現型を示さない。
【0126】
アシネトバクター生物が、それが産生した細胞外ポリマー(例えば多糖類)から莢膜を形成し、アシネトバクター生物が通常はかかる莢膜内に見られることはよく理解される。アシネトバクター生物の単純なポリマー莢膜の存在は、バイオフィルム様の成長とは機能的に等価ではなく、かかる莢膜の存在はしたがって、それ自体でバイオフィルム表現型を示すものではないこともよく理解される。したがって、「バイオフィルム中にない」アシネトバクター生物は依然としてそれが産生した細胞外ポリマーのマトリクス(すなわち莢膜)と接触し得るが、かかる生物はそのバイオフィルム中に住む対照物において観察される変化した表現型を示さないことも理解される。したがって、アシネトバクター生物の所与の集団はバイオフィルム表現型を有する幾つかの生物を有し得る(例えばバイオフィルム様に成長する)が、他の集団はバイオフィルム表現型を有しない場合もある(例えばバイオフィルム様に成長しない)。
【0127】
上述のことから、本発明の方法、すなわち上述したものが医学的用途及び非医学的用途を有することが明らかである。特に、本発明は、アシネトバクター属による位置(又は部位)のコンタミネーションを抑制する方法、特に被験体におけるアシネトバクター感染の治療、さらに、アシネトバクター生物の集団を抑制する方法を提供する。したがって、方法はin vitro方法又はin vivo方法であり得る。したがって、方法はin vitro方法又はin vivo方法であり得る。以下でより詳細に説明するように、「抑制する」とは、既存のコンタミネーション又は感染の治療、及びコンタミネーション又は感染が生じるのを予防する治療の両方、すなわち「治療的」/対症療法的(reactionary)及び予防的な治療の両方を含む。
【0128】
したがって、本発明の一態様では、アシネトバクター属による被験体の感染を治療する方法であって、被験体に薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマーを、薬学的に効果的な量の抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質を投与するのと実質的に同時に、又はその前に投与することを含む、方法が提供される。
【0129】
したがって、本発明は、被験体におけるアシネトバクター感染の治療に抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と共に(又は組み合わせて若しくは併用して)使用されるアルギネートオリゴマーを提供する。
【0130】
本発明の別の態様では、かかる治療を必要とする被験体(例えばアシネトバクター生物に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体)においてアシネトバクター感染を治療又は予防する方法であって、被験体に薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマーを、薬学的に効果的な量の抗生物質と共に投与することを含む、方法が提供される。
【0131】
したがって、本発明は、かかる治療を必要とする被験体におけるアシネトバクター感染の治療又は予防のために抗生物質と共に(又は組み合わせて若しくは併用して)使用されるアルギネートオリゴマーを提供する。
【0132】
上でより詳細に規定されるように、「共に使用する」とは、薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマーを、薬学的に効果的な量の抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質を投与するのと同時に、又は実質的に同時に、又はその前に投与することを含むが、他の実施の形態では、オリゴマーを抗生物質と別々に、その後に投与する。
【0133】
別の観点からは、本発明は、被験体におけるアシネトバクター感染の治療に抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と共に使用される薬剤の製造に対するアルギネートオリゴマーの使用を提供する。本発明は、それを必要とする被験体におけるアシネトバクター感染の治療又は予防に抗生物質と共に使用される薬剤の製造に対するアルギネートオリゴマーの使用も提供する。
【0134】
薬剤は抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質を更に含んでもよく、上で論じたように単一又は別々の組成物又は製剤を調製し、使用してもよい。
【0135】
本発明のこの態様は、アシネトバクター属による被験体の感染の治療に使用される薬剤の製造における抗生物質と一緒のアルギネートオリゴマーの使用も提供する。
【0136】
本発明のこの態様によると、アシネトバクター属による被験体の感染の治療又は予防において別々に、同時に又は順次に使用される複合製剤としてアルギネートオリゴマーと抗生物質とを含有する製品も提供される。
【0137】
被験体は任意のヒト被験体又は非ヒト動物被験体であり得るが、より具体的には脊椎動物、例えば哺乳類、鳥類、両生類、魚類及び爬虫類から選択される動物であり得る。動物は家畜(a livestock or a domestic animal)又は商業的価値のある動物(実験動物又は動物園若しくは自然動物保護公園内の動物を含む)であってもよい。したがって、代表的な動物はイヌ、ネコ、ウサギ、マウス、モルモット、ハムスター、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ニワトリ、シチメンチョウ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、オウム、セキセイインコ、ハト、サケ、マス、タラ、ハドック、スズキ及びコイを含む。したがって、本発明の獣医学的使用が包含される。被験体は患者とみなされる場合もある。好ましくは被験体はヒトである。
【0138】
「被験体における」という用語は、被験体内又は被験体上の部位又は位置、例えば外部の身体表面を含むように本明細書では広範に使用され、特に医療デバイス、例えば植込式又は「留置」医療デバイスの感染を含み得る。「患者における」という用語は、これと一致して解釈されるものとする。
【0139】
アシネトバクター感染の位置は限定されず、上に記載される被験体内の部位又は位置のいずれかであり得る。アルギネートオリゴマー及び抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質を被験体に投与することは、好ましくは感染した位置を、その感染を治療するのに十分な量のアルギネートオリゴマー及び抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質に接触させる。
【0140】
アシネトバクター感染は上で記載される微生物のいずれかを更に含み得る。
【0141】
アシネトバクター感染は急性、又は代替的には慢性であり、例えば少なくとも5日間、又は少なくとも10日間、特に少なくとも20日間、より具体的には少なくとも30日間、最も具体的には少なくとも40日間持続している感染であり得る。
【0142】
本発明のこの態様では、アシネトバクター感染は、被験体内若しくは被験体上の表面(すなわち、上で論じたような生物の表面)、及び/又は医療デバイス、特に植込式若しくは「留置」医療デバイス(その代表例は上で論じている)の表面上で起こり得る。
【0143】
この態様の1つの実施の形態では、アシネトバクター生物はバイオフィルム中にない(したがってアシネトバクター感染は非バイオフィルム感染と考えることができる)。別の実施の形態では、アシネトバクター生物はバイオフィルム中にある。1つの実施の形態では、本発明のこの態様の方法は、被験体をアシネトバクター感染を有するか、又はアシネトバクター感染のリスクがある候補であるとして診断する工程を含み得る。別の実施の形態では、本発明のこの態様の方法は、治療の標的とされるアシネトバクター感染がバイオフィルムではない、又はバイオフィルムを伴わない(すなわち非バイオフィルム感染である)ことを判断する工程を更に含み得る。
【0144】
この点において、アシネトバクター感染は被験体内の表面でない位置で見られる感染、例えば体液におけるアシネトバクター感染(血液感染及び脳脊髄液感染を含む)、又は組織内の感染であり得る。したがって、本発明のこの態様は、菌血症、敗血症(septicaemia)、敗血症ショック、敗血症(sepsis)、髄膜炎、又はアシネトバクター属由来の毒素による中毒を治療する方法を提供する。
【0145】
特定の実施の形態では、本発明は呼吸器の感染、例えば嚢胞性線維症、肺炎、COPD、COAD、COAP、菌血症、敗血症、敗血症ショック、敗血症、髄膜炎又は細菌由来の毒素による中毒の治療を提供し得る。
【0146】
アシネトバクター属感染は、任意被験体で起こり得るが、被験体の中には、他よりも(that others)、より感染しやすいものもいる。アシネトバクター属感染しやすい被験体は、上皮及び/又は内皮の障壁が弱体化又は損傷した被験体、微生物感染に対する分泌に基づく防御が阻害された、破壊された、弱体化した、又は損なわれた被験体、並びに免疫障害を有する、免疫不全状態にある、又は免疫抑制された被験体(すなわち、疾患若しくは臨床的介入若しくは他の治療のいずれに起因するかにかかわらず、又は理由は何であれ、免疫系の任意の部分が正常に機能していない又は正常以下で機能している、換言すれば免疫応答又は免疫活性の任意の部分が低減又は損傷した被験体)を含むが、これらに限定されない。
【0147】
アシネトバクター属感染しやすい被験体の代表例は、予め確立した感染(例えば細菌、ウイルス、真菌又は原生生物等の寄生生物による)を有する被験体、特にHIVを有する被験体、菌血症、敗血症を有する被験体、及び敗血症ショックを有する被験体;免疫不全状態にある被験体、例えば、化学療法及び/又は放射線療法の準備をしている、該療法を受けている、又は該療法から回復している被験体、臓器(例えば骨髄、肝臓、肺、心臓、心臓弁、腎臓等)移植被験体(自家移植、同種移植及び異種移植の患者を含む)、AIDSを有する被験体;健康管理機関、例えば病院に居住している被験体、特に集中治療又は救急治療中の被験体(すなわち、患者に対する生命維持システム又は臓器維持システムの規定に関する被験体単位);人工呼吸器を付けている患者;外傷を患っている被験体;火傷を有する被験体、急性創傷及び/又は慢性創傷を有する被験体;新生児期の被験体;高齢の被験体;がんを有する被験体(任意の新生物の病状を含むように本明細書で広範に規定される;悪性又は非悪性のもの)、特に免疫系のがん(例えば白血病、リンパ腫及び他の血液がん)を有する被験体;関節リウマチ、I型糖尿病、クローン病等の自己免疫性病状を患っている被験体、特に、これらの疾患に関する免疫抑制治療を受けている被験体;上皮又は内皮の分泌(例えば粘液、涙、唾液)及び/又は分泌物排出が低減した、又は阻害された被験体(例えば、粘膜組織上の繊毛が十分に機能しない被験体、及び/又は粘液の粘性が高い患者(例えば喫煙者、及びCOPD、COAP、COAD、気管支炎、嚢胞性線維性、気腫、肺がん、喘息、肺炎又は副鼻腔炎を有する被験体)、並びに医療デバイスを装着した被験体を含むが、これらに限定されない。
【0148】
したがって、本発明によりアシネトバクター属感染と特に抑制され得る被験体は、かん流の低下、外傷の繰返し、栄養不足、酸素供給不足、又は白血球の機能不全のいずれに起因するかにかかわらず、障害を有したままである患者を含む。
【0149】
物理的外傷を被った被験体に特に注目すべきである。外傷自体が、被験体の上皮及び/又は内皮の障壁の弱体化又は損傷(compromisation)を引き起こすことがあり、被験体は、外傷に応答して免疫障害状態になり得る(ショック応答)。「外傷」という用語は、異物による細胞の攻撃、及び/又は細胞の物理的な傷害を広範に表す。異物には、微生物、粒子状物質、化学薬品等が含まれる。物理的な傷害には、機械的傷害;熱的傷害、例えば過度の熱又は冷たさにより引き起こされる傷害;電気的傷害、例えば電位の供給源との接触により引き起こされる傷害;及び、例えば赤外線、紫外線又は電離放射線への長期の広範な曝露により、引き起こされる放射線損傷が含まれる。
【0150】
火傷を有する被験体にも特に注目すべきである。任意の火傷、特に重度の火傷は、被験体の上皮及び/又は内皮の障壁の完全性(integrity)に対して顕著な影響を有し、被験体は、火傷に応答して免疫障害状態になることが多い(ショック応答)。
【0151】
典型的な火傷を引き起こす因子は、極度の温度(例えば、極度の温度での火、及び液体、及び気体)、電気、腐食性化学物質、摩擦及び放射線である。それらの因子の曝露の範囲及び期間は、その強度/強さと相俟って、様々な重症度の火傷を引き起こす。熱湯傷(すなわち、高温の液体及び/又は気体と関連する外傷)は、火傷であると考えられる。
【0152】
表皮の火傷の重症度は、通常、2つの方法で分類される。最も一般的なものは、程度による分類である。第1度の火傷は、通常、傷害の全体的な領域における紅斑(赤色)と、傷害部位における白斑とに限定される。これらの火傷の細胞外傷は、表皮と同じ深さにしか及ばない。第2度の火傷も、傷害の全体的な領域における紅斑を示すが、表皮に表面的な水疱形成を伴う。第2度の火傷の細胞外傷は、表面的な(乳頭状の)真皮を含み、深い(網状の)真皮層も含み得る。第3度の火傷は、皮下組織への損傷により表皮が喪失するものである。損傷は典型的には、炭化することも含め極度である。ときには焼痂(乾燥した、黒色の壊死性組織)が存在する。第3度の火傷は、移植を必要とする場合がある。第4度の火傷では、皮下組織の壊滅的な損傷が生じ、例えば皮下組織は完全に失われ、損傷は下層の筋肉、腱及び靭帯組織に及ぶ。炭化及び焼痂が観察される。火傷が致命的であるとはいえない場合であっても、移植が必要である。
【0153】
別の一般的な分類システムは、厚さによる分類である。「表層」の火傷は、第1度の火傷に相当する。第2度の火傷の範囲は、「部分層」の火傷の2つの分類に包含される。「部分層−表層性」は、乳頭状の真皮までの表皮にしか影響を及ぼさない火傷である。「部分層−深遠性」は、網状の真皮までの真皮に影響を及ぼす火傷である。「全層」の火傷は、第3度及び第4度の火傷に相当する。
【0154】
幾つかの物理的な傷害、例えば幾つかの火傷、及び異物による細胞の攻撃が、創傷の形成を引き起こす。より具体的には創傷は、組織における裂け目(breach)、又はその剥離であると考えることができる。創傷は、自発形成する病変、例えば皮膚潰瘍(例えば静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍若しくは圧迫潰瘍)、肛門裂傷又は口腔内潰瘍により引き起こされることもある。
【0155】
創傷は、典型的には急性又は慢性のいずれかと規定される。急性創傷は、治癒プロセスで認識されている3つの段階(すなわち、炎症段階、増殖段階及び再構成段階)を、長期的な経時変化を経ることなく、順序正しく進行する創傷である。しかし、慢性創傷は、治癒段階の1つで停止するので、治癒プロセスの生化学的事象の整然とした順序を全うしない創傷である。一般的に慢性創傷は、炎症段階で停止する。本発明の特定の態様によれば、慢性創傷は、少なくとも40日以内、特に少なくとも50日以内、より具体的には少なくとも60日以内、最も具体的には少なくとも70日以内には、治癒しない創傷である。
【0156】
上で論じたように、創傷は、創傷が上皮の障壁を欠くこと、並びに底質及び表面の利用可能性により、アシネトバクター属感染、特に慢性感染にとっての理想的な環境である。問題としては、創傷の感染は、治癒を更に遅延化させることが多く、それにより創傷は更に感染確立がされやすいものとなる。したがって本発明の方法は、創傷のアシネトバクター属感染の治療及び予防において効果的であり、創傷、特に慢性創傷の治療における本発明の方法の使用は、本発明の好ましい一態様を表す。
【0157】
したがって、本発明の実施の形態では、上述の被験体、特に呼吸器の疾患又は障害(例えばCOPD、COAD、COAP、肺炎、気腫、気管支炎、嚢胞性線維症)、創傷、火傷及び/又は外傷を有する被験体におけるアシネトバクター感染、特に慢性アシネトバクター感染の治療又は予防において抗生物質と共に(又は組み合わせて若しくは併用して)使用されるアルギネートオリゴマーであって、上記方法が薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマーを、薬学的に効果的な量の抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と実質的に同時に、又はその前に投与することを含む、アルギネートオリゴマーが提供される。他の実施の形態では、方法は薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマーを、薬学的に効果的な量の抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質を投与した後に投与することを含む。
【0158】
特に重要な態様では、本発明のアルギネートオリゴマーと抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質とを、創傷、例えば火傷におけるアシネトバクター感染を治療又は予防するため、例えばアシネトバクター属により感染した創傷、例えば火傷の治療において共に(又は組み合わせて若しくは併用して)使用することができる。
【0159】
創傷の感染を治療及び予防する能力のために、本明細書で規定される本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、創傷治癒に対する障害の1つを取り除くことができ、したがって上で規定されるアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、急性創傷及び慢性創傷の治癒の促進にも効果的である。
【0160】
治癒の促進は、治療が問題の創傷の治癒プロセス(すなわち、治癒プロセスで認識されている3つの段階を通る創傷の進行)を加速することを意味する。治癒プロセスの加速は、1つ、2つ又は全ての治癒段階(すなわち、炎症段階、増殖段階及び/又は再構成段階)を通る進行速度の増大として現れ得る。創傷が、治癒段階の1つにおいて停止する慢性創傷である場合には、加速は、停止後の直線的かつ連続的な治癒プロセスの再開として現れ得る。換言すれば、治療は、非治癒状態から治癒段階を通じて創傷が進行し始める状態へと創傷を移行させる。再開後の進行は、通常の急性創傷が治癒する速度と比較して、正常な速度、又は更に遅い速度であり得る。
【0161】
本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、アシネトバクター属が生じ得る身体内又は身体上のあらゆる場所でアシネトバクター属感染を治療又は予防するために共に(すなわち組み合わせて又は併用して)使用することができる。したがって、別の実施の形態では、感染はアシネトバクター属による医療デバイス、特に留置医療デバイス、例えば気管内チューブ及び気管切開チューブの感染であり得る。
【0162】
本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、例えば歯又は歯科/口腔プロテーゼ上のアシネトバクター生物の成長を阻害することによって、歯垢の制御において、例えばそれを低減するか、又はその発現を予防する、低減する若しくは遅延化させるためにオーラルケア剤(oral healthcare agents)として共に(すなわち組み合わせて又は併用して)使用することができる。本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、アシネトバクター属感染、又は口腔内で生じ得るアシネトバクター生物が関与する感染症、例えば歯肉炎及び歯周炎の治療及び予防において共に(すなわち組み合わせて又は併用して)使用することもできる。
【0163】
好都合には、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質は、任意の口腔健康/口腔衛生用の送達システムによって適用することができる。これは歯磨き粉、歯科用ゲル、歯科用フォーム及び洗口剤の使用によるものであり得る。可撤性義歯及び他の可撤性歯科プロテーゼを、口腔外で同じ組成物又は他の好適な薬学的に許容可能な組成物で処理することができる。表面上で長時間存続するか、又はアルギネートオリゴマー及び/若しくは抗生物質をコーティングされた表面から長時間にわたって放出し、口腔内及び可撤性義歯及び他の可撤性歯科プロテーゼの表面上でのアシネトバクター生物の成長を阻害するコーティングを形成するために、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を、口腔に適用される(又は口腔外で可撤性義歯及び他の可撤性歯科プロテーゼに適用される)組成物に組み込んでもよい。
【0164】
肺及び気道並びに身体の全ての領域のアシネトバクター属感染の治療は概して本発明に包含されるが、1つの実施の形態では、本発明の医学的な使用は、(i)特に嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、気腫、気管支炎及び副鼻腔炎の治療における、例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を患っている患者の気道、特に副鼻腔及び肺における感染、(ii)中耳炎を患っている患者の中耳における感染、又は(iii)生殖障害を有する女性患者の生殖器官における感染、又は(iv)消化管の機能不全(例えば便秘)を有する患者の消化管における感染の治療を対象としない。
【0165】
本発明の具体的な実施の形態では、本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質は、アシネトバクター属と関連する自然弁心内膜炎、急性中耳炎、慢性細菌性前立腺炎、肺炎(特に人工呼吸器関連肺炎)、呼吸器の疾患におけるアシネトバクター属感染(COPD、COAD、COAP、肺炎、嚢胞性線維症及び喘息を含み得る)、及び植込式又は人工の医療デバイス(例えば人工弁心内膜炎、又はライン若しくはカテーテル若しくは人工関節若しくは代替組織、若しくは気管内チューブ若しくは気管切開チューブの感染)と関連するデバイス関連アシネトバクター属感染の治療又は予防において共に(すなわち組み合わせて又は併用して)使用することができる。
【0166】
更なる実施の形態では、本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、眼におけるアシネトバクター属感染を制御するため、例えばそれを低減するため、又はその発現を予防する、低減する若しくは遅延化させるために共に使用される。特に、本発明のアルギネート及び抗生物質は、涙腺の閉塞のために生じ得るアシネトバクター属と関連する細菌性結膜炎、及び結果として起こる乾性角結膜炎(ドライアイとしても知られる)を治療又は予防するために共に使用される。
【0167】
先に言及したように、1つの実施の形態では、上記のアシネトバクター属感染及び関連症状はバイオフィルムでない、又はバイオフィルムを伴わない(換言すれば、非バイオフィルム感染である)。他の実施の形態では、上記のアシネトバクター属感染及び関連症状はバイオフィルムである、又はバイオフィルムを伴う。
【0168】
更なる態様では、本発明は、アシネトバクター属による部位のコンタミネーションを抑制する方法であって、部位及び/又はアシネトバクター生物を、効果的な量の抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の投与と実質的に同時に、又はその前に効果的な量のアルギネートオリゴマーに接触させることを含む、方法を提供する。この方法は、アシネトバクター属による部位のコンタミネーションを抑制する方法であって、部位及び/又はアシネトバクター生物を、抗生物質と共にアルギネートオリゴマーに接触させることを含む、方法とも記載され得る。
【0169】
アシネトバクター属による部位のコンタミネーションの抑制に使用される抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と共に(又は組み合わせて若しくは併用して)使用されるアルギネートオリゴマーも提供される。かかる方法は特にin vitro方法であり、部位は上で論じた任意の表面又は位置であり得る。
【0170】
別の観点からは、本発明のこの態様は、アシネトバクター属による部位のコンタミネーションの抑制において抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と共に使用される薬剤の製造に対するアルギネートオリゴマーの使用を提供する。薬剤は抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質を更に含み得る。
【0171】
「コンタミネーションを抑制する」とは、予防的及び対症療法的な手段又は治療の両方を含み、したがってコンタミネーションの予防、及び低減、制限又は排除を包含する。
【0172】
「コンタミネーション」は、特定の部位又は位置でのアシネトバクター生物の存在を意味する。コンタミネーションは、アシネトバクター生物による位置のコロニー形成、すなわち位置でのアシネトバクター生物の定着、及び複製又は更なるアシネトバクター生物(同じタイプであっても、又は異なるタイプであってもよい)の動員によるその生物の数の拡大を包含するとみなすことができる。1つの実施の形態では、コロニー形成プロセスはバイオフィルムの形成を伴わない。
【0173】
コンタミネーション又は潜在的なコンタミネーションの部位又は位置は制限されず、上に記載又は言及した様々な部位又は位置のいずれかであり得る。例えば、部位又は位置はin vitro又はin vivoであり得るが、特に本発明のこの態様では、「in vitro」又は「ex vivo」の部位又は位置(例えば無生物又は非生物の部位又は位置)である。しかしながら、部位又は位置は被験体内にあってもよく、その場合、薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマー及び抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質が被験体に投与される。
【0174】
特定の1つの実施の形態では、本発明のこの態様を医療廃棄物、実験廃棄物及び産業廃棄物の除染に適用することができる。別の特定の実施の形態では、本発明のこの態様を、移植用組織(例えば心臓、肺、腎臓、肝臓、心臓弁、膵臓、腸、角膜組織、動脈グラフト及び静脈グラフト、並びに皮膚)及び医療デバイス(例えば気管内チューブ及び気管切開チューブ)を植込み前に除染する(decontaminant)ために使用することができる。別の実施の形態では、本発明のこの態様は、材料、特に溶液及び液体中で抗アシネトバクター防腐剤として抗生物質と共にアルギネートオリゴマーを使用することを包含するとみなすことができる。
【0175】
別の態様では、本発明は、アシネトバクター生物の集団を抑制する方法であって、上記生物を効果的な量のアルギネートオリゴマーに、効果的な量の抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の投与と実質的に同時に、又はその前に接触させることを含む、方法を提供する。
【0176】
この態様の1つの実施の形態では、アシネトバクター生物又はその集団は、バイオフィルム中又はバイオフィルム形成プロセス中にない。例えば、アシネトバクター生物又はその集団はバイオフィルム形成が可能ではない、又は集団中の複数の生物が十分な数でないか、若しくはバイオフィルム形成を可能にするライフサイクルの段階にない。
【0177】
アシネトバクター生物の集団は均一(すなわち単一タイプのアシネトバクター生物を含有する)であっても、又は不均一(すなわち複数のタイプのアシネトバクター生物及び/又は他の微生物を含有する)であってもよい。例えば、上に記載される様々な微生物のいずれか又は全てを集団中に見ることができる。集団中の微生物の一部又は全ては病原性であってもよい。集団は確立された集団であっても、又は部分的に確立された集団であってもよい。換言すれば、治療対象の位置において、先に他の微生物を増殖又は動員して、集団を確立した少なくとも1つの微生物がコロニー形成している。
【0178】
「アシネトバクター生物の集団を抑制する」とは、集団の形成を防止するか、又は集団の成長を制御することを意味する。
【0179】
「アシネトバクター生物の集団の成長を制御する」とは、集団中のアシネトバクター生物の総数の拡大速度を低下させることを意味する。好ましくは、拡大速度を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、85%、95%又は99%低下させる。最も好ましくは、拡大を本質的に停止又は逆転させる、すなわち集団中のアシネトバクター生物の総数を維持又は減少させる。好ましくは、集団中の生存アシネトバクター生物の総数を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、85%、95%又は99%減少させる。最も好ましくは、集団を実質的又は完全に根絶する。実質的に根絶するとは、集団が生存アシネトバクター生物をわずかしか、又は実質的には全く含有しないことを意味する。
【0180】
集団の成長の制御は、1つの実施の形態では、集団中のアシネトバクター生物の複製速度を制御することによって達成することができる。この点においては、集団中のアシネトバクター生物の複製速度を好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、85%、95%又は99%減少させる。違った方向から見ると、好ましくは複製は実質的に中断しているか、又は実質的に停止している。
【0181】
代替的又は付加的には、集団の成長は集団中のアシネトバクター生物の一部又は全てを死滅させることによって制御することができる。
【0182】
「アシネトバクター集団の形成を予防する」とは、例えば複製を防止するか、又は既に存在しているアシネトバクター生物、若しくは既に存在しているものに加わるアシネトバクター生物を死滅させることによって、少数(集団未満の(sub-population)数)のアシネトバクター生物が拡大して集団サイズに達するのを防ぐことを意味する。
【0183】
アシネトバクター生物の集団の部位又は位置は限定されず、上に記載した様々な位置がここでも適用される。
【0184】
したがって、本発明に包含される医学的な使用は、被験体内でアシネトバクター集団を抑制するためのアルギネートオリゴマー及び抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の使用を含み得る。この態様では、本発明はしたがって、被験体におけるアシネトバクター生物の集団を抑制する方法であって、上記生物を薬学的に効果的な量の抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質の投与と実質的に同時に、又はその前に、薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマーに接触させることを含む、方法を提供する。
【0185】
抗生物質はアルギネートオリゴマーと同時に、又は順次に適用又は投与してもよい。上述したように、1つの実施の形態では、抗生物質をアルギネートオリゴマーと同時に又は実質的に同時に投与し、別の実施の形態では、抗生物質をアルギネートオリゴマーの後に投与する。他の実施の形態では、オリゴマーを抗生物質と別々に、その後に投与する。アルギネートオリゴマーの投与前若しくは投与後すぐ、又は投与前若しくは投与後ほぼすぐの抗生物質の適用又は投与は、「実質的に同時に」の範囲内に含まれる。「ほぼすぐ」という用語は、先の適用又は投与の1時間以内、好ましくは30分以内の適用又は投与を含むことを意味し得る。しかしながら、抗生物質はアルギネートオリゴマーの少なくとも1時間後、少なくとも3時間後、又は少なくとも6時間以上の後に適用又は投与してもよい。これらの実施の形態では、抗生物質はアルギネートオリゴマーの更なる適用の有無にかかわらず適用又は投与することができる。アルギネートオリゴマーは、上述したものを含む抗生物質の前又は抗生物質と同時の複数回の適用、抗生物質の投与後すぐの又はほぼすぐの適用又は投与で適用又は投与することができる。他の実施の形態では、抗生物質(複数も可)をアルギネートオリゴマーの前、例えばアルギネートオリゴマーの少なくとも1時間前、少なくとも3時間前、少なくとも6時間前に好都合に適用又は投与することができる。これらの実施の形態では、アルギネートオリゴマーは抗生物質の更なる適用の有無にかかわらず適用又は投与することができる。抗生物質は、アルギネートオリゴマーの前又はアルギネートオリゴマーと同時の複数回の適用で適用又は投与することができる。
【0186】
被験体におけるアシネトバクター集団の抑制に使用される抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と共に(又は組み合わせて若しくは併用して)使用されるアルギネートオリゴマーも提供される。
【0187】
別の観点からは、本発明のこの態様は、被験体におけるアシネトバクター集団の抑制において抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質と共に使用される薬剤の製造に対するアルギネートオリゴマーの使用を提供する。薬剤は抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質を更に含んでもよい。
【0188】
1つの実施の形態では、本発明のこの態様の方法は被験体を、その内部のアシネトバクター生物の集団が抑制されることによって利益を得る可能性のある候補であるとして診断する工程を含み得る。別の実施の形態では、本発明の方法は、抑制対象のアシネトバクター生物の集団がバイオフィルムではない、又はバイオフィルム中にない、又はバイオフィルムを伴わないことを判断する工程を更に含み得る。
【0189】
上述したように、アルギネートオリゴマーは、アシネトバクター生物に対する抗生物質の有効性、特にアシネトバクター生物の成長の阻害における抗生物質の有効性(又は効果)を改善し得る。
【0190】
抗生物質の有効性の改善には、例えば抗生物質の抗アシネトバクター効果を、アルギネートオリゴマーの非存在下で見られる抗生物質の効果と比べて何らかの点で増大又は向上するように、アシネトバクター生物に対する抗生物質の効果を改善又は向上する任意の態様が含まれる。これは、例えばアシネトバクター生物の成長を阻害する抗生物質の効果の増強、アルギネートオリゴマーの非存在下で見られるのと同じ効果を達成するために必要とされる抗生物質の量の減少、又は作用速度(speed or rate)の増大として見られる効力の増大、阻害効果がオリゴマーの非存在下よりも短時間で見られることに見ることができる。
【0191】
「アシネトバクター生物の成長」とは、アシネトバクター生物のサイズ、又はアシネトバクター生物の構成成分の量及び/若しくは体積(例えば核酸の量、タンパク質の量、核の数、細胞小器官の数又はサイズ、細胞質の体積)の増大、並びにアシネトバクター生物の数の増加、すなわちアシネトバクター生物の複製の増加の両方を意味する。
【0192】
通常、アシネトバクター生物の成長は、この生物の拡大を伴う。アシネトバクター生物の成長は日常的な技法によって測定することができる。例えば、微生物形態の経時的な顕微鏡検査、又は全体的なタンパク質若しくは核酸(例えばDNA)の量の変化、若しくは具体的なタンパク質若しくは核酸の量の変化を測定するアッセイを使用することができる。当業者は追跡すべき好適なマーカーを容易に選択することができる。好都合には、いわゆるハウスキーピング遺伝子(例えばβ−アクチン、GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ)、SDHA(コハク酸脱水素酵素)、HPRT1(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1)、HBS1L(HBS1様タンパク質)、AHSP(αヘモグロビン安定化タンパク質)及びβ2M(β2−ミクログロブリン))、16S RNA及びウイルス遺伝子、並びにそれらの発現産物をモニタリングすることができる。
【0193】
「アシネトバクター生物の複製」とは、アシネトバクター生物が増殖する作用を意味する。通常、これは微生物が2つに分かれる二分裂によるものである。微生物が2つに分裂することを支持するために、通常は二分裂に先立って分裂する微生物の拡大並びに細胞構成成分の量及び/又は体積の増大が起こる。複製によって細胞数が増加するため、その後に集団中の微生物数を評価する任意の方法を行うことができる。別の選択肢は、顕微鏡を用いた目視検査によってプロセスをリアルタイムで追跡することである。微生物が複製する(すなわちその別の世代を産生する)のにかかる時間は世代時間である。世代時間はアシネトバクター生物が見られる条件によって決まる。複製速度は世代時間を用いて表すことができる。
【0194】
「アシネトバクター生物の成長を阻害する」とは、アシネトバクター生物の測定可能な成長(例えば複製)又はその速度が低下することを意味する。好ましくは、アシネトバクター生物の測定可能な成長(例えば複製)又はその速度は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、70%、80%又は90%、例えば少なくとも95%低下する。好ましくは、測定可能な成長(例えば複製)は停止する。微生物サイズの増大又は拡大等に関する成長は、複製とは無関係に阻害することができ、逆もまた同様である。
【0195】
したがって、「アシネトバクター生物の成長及び/又は生存能力を阻害する抗生物質の効力を改善すること」等への言及は、アルギネートオリゴマーがマクロライド系抗生物質を、細菌成長を阻害する(例えば静菌剤として作用する)のに少なくとも2倍、又は少なくとも4倍、少なくとも8倍、少なくとも16倍又は少なくとも32倍効果的にすることを含み得る。違う言い方をすると、オリゴマーはアシネトバクター生物の成長及び/又は生存能力を阻害するマクロライド系抗生物質の効力を少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも8倍、少なくとも16倍又は少なくとも32倍にし得る。抗生物質の阻害効果は、最小阻止濃度(MIC)、すなわちアシネトバクター生物の成長を完全に阻害する抗生物質の濃度を評価することによって測定することができる。MICが2分の1になることは、抗生物質の阻害効果が2倍になることに相当する。MICが4分の1になることは、阻害効果が4倍になることに相当する。
【0196】
この態様は、被験体に投与されるか、又は位置に適用される抗生物質の濃度を、アシネトバクター生物に対する同じ効力を維持しながら低減することを可能にする。これは抗生物質が高価であるか、又は副作用を伴う場合に有益であり得る。抗生物質の使用を最小限に抑えることは、耐性の発現を最小限に抑えるためにも望ましい。本発明によれば、上述のような、すなわち抗生物質の投与と同時の、又は実質的に同時の、又はその前のアルギネートオリゴマーの使用は、アルギネートオリゴマーの非存在下で特定のレベルのアシネトバクター生物の成長及び/又は生存能力の阻害を達成するために通常投与される/適用される量の50%未満、25%未満、10%未満又は5%未満の濃度で抗生物質を使用することを可能にする。
【0197】
この態様では、アルギネートオリゴマーは上で論じられたもの、特に好ましいと述べられたもののいずれであってもよく、アルギネートオリゴマーはアシネトバクター生物及び/又はその位置に少なくとも2%、少なくとも4%、少なくとも6%、少なくとも8%又は少なくとも10%(w/v)の局所濃度で接触される。
【0198】
「接触させる」という用語は、直接的又は間接的のいずれかにかかわらず、アルギネートオリゴマー及び抗生物質をアシネトバクター生物に送達する任意の手段を包含し、したがってアルギネートオリゴマー及び抗生物質をアシネトバクター生物に適用する、又はアシネトバクター生物をアルギネートオリゴマー及び抗生物質に曝露する(例えばアルギネートオリゴマー及び抗生物質を直接アシネトバクター生物に適用する)、又はアシネトバクター生物がその内部若しくはその上に存在する被験体、例えばアシネトバクター生物に感染した被験体にアルギネートオリゴマー及び抗生物質を投与する任意の手段を包含する。
【0199】
より具体的には、アシネトバクター生物を効果的な量のアルギネートオリゴマー及び抗生物質、より具体的には共に(すなわち組み合わせて又は併用して)アシネトバクター生物の成長及び/又は生存能力を阻害する、したがって感染/コンタミネーションを治療又は予防する量のアルギネートオリゴマー及びその量の抗生物質に接触させる。
【0200】
「効果的な量」のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、共に(又は組み合わせて若しくは併用して)アシネトバクター生物又はその集団の成長及び/又は生存能力の測定可能な阻害をもたらす量のアルギネートオリゴマー及びその量の抗生物質である。或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの「効果的な量」は、抗生物質の有効性、特にアシネトバクター生物又はその集団の成長及び/又は生存能力を阻害する抗生物質の効果(又は有効性)を改善するのに効果的な量であるとみなすことができる。
【0201】
「薬学的に効果的な」量のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、共に(又は組み合わせて若しくは併用して)被験体内又は被験体上でアシネトバクター生物又はその集団の成長及び/又は生存能力の測定可能な阻害をもたらす、及び/又は標的とされるアシネトバクター感染の測定可能な治療若しくは予防をもたらす量のアルギネートオリゴマー及びその量の抗生物質である。
【0202】
当業者は日常的な用量応答プロトコル、好都合には上に論じられるような微生物成長の阻害等を評価する日常的な技法に基づいて、何が効果的な/薬学的に効果的な量のアルギネートオリゴマー及び抗生物質であるかを容易に判定することができる。当業者は、過度の負担なしに、その標的とする系におけるアルギネートオリゴマー及び抗生物質の組み合わせ効果を最大化するためにこれらの量を最適化することもできる。
【0203】
アルギネートオリゴマー及び抗生物質の好適な用量は被験体によって異なり、医師又は獣医師は被験体の体重、年齢及び性別、症状の重傷度、投与方法、更に選択される特定のアルギネートオリゴマー又は抗生物質に応じて判定することができる。通常、本発明のアルギネートオリゴマーは、治療を受ける位置に少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%又は少なくとも4%、より好ましくは少なくとも6%、最も好ましくは少なくとも10%(w/v)という局所濃度で適用される。通常、本発明の抗生物質は、治療を受ける位置に少なくとも0.03125μg/ml、好ましくは少なくとも0.0635μg/ml、0.125μg/ml、0.25μg/ml、0.5μg/ml、1μg/ml、2μg/ml、4μg/ml、8μg/ml、16μg/ml、32μg/ml、64μg/ml、128μg/ml、256μg/ml、512μg/ml、1024μg/ml、2048μg/ml又は4096μg/mlという局所濃度で適用される。
【0204】
本発明による被験体における医学的状態/感染の治療に関して使用される場合、「治療」は、任意の治療的効果、すなわち病状に対する、又は感染に関する任意の有益な効果を含むように、本明細書では広範に使用される。したがって感染の根絶若しくは排除、又は被験体若しくは感染の治癒が含まれるだけでなく、被験体の感染又は病状の改善も含まれる。したがって例えば、感染若しくは病状の任意の症状若しくは徴候、又は任意の臨床的に許容される感染/病状の指標(例えば、創傷サイズの減少、若しくは治癒時間の加速)の改善が含まれる。したがって治療は、例えば先在する又は診断された感染/病状の治癒的療法及び緩和療法の両方、すなわち対症治療を含む。
【0205】
本明細書で使用する場合の「予防」は、任意の予防的(prophylactic or preventative)効果を表す。したがって「予防」は、例えば予防的治療の前の病状又は症状又は適応症に関して、病状(この言及は適用可能な場合、本発明の種々の態様における感染及びコンタミネーションを含む)、又は病状、若しくはその1つ又は複数の症状若しくは適応症の開始を遅延化、制限、低減又は予防することを含む。したがって予防法は、病状、若しくはその症状若しくは適応症の発生若しくは発症の絶対的な予防と、病状若しくは症状若しくは適応症の開始若しくは発症の任意の遅延、又は病状若しくは症状若しくは適応症の発症若しくは進行の低減若しくは制限との両方を明確に含む。
【0206】
具体的には本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、共に(すなわち組み合わせて又は併用して)、例えば抗生物質に対して耐性を有するアシネトバクター属の感染又はコンタミネーションを予防する、又は少なくともそのリスクを最小化する予防的治療と考えることができる。
【0207】
アシネトバクター属による感染の抑制(治療又は予防)に関する本発明の態様は、本明細書で規定されるアルギネートオリゴマー及び抗生物質の予防的計画によって、アシネトバクター属による院内感染(病院関連/獲得性感染又は健康管理関連感染として既知である)に罹患するリスクを最小化することができるため、入院患者の治療において特に有用である。本発明のこの態様は、外傷を患っている被験体、火傷を有する被験体、及び創傷を有する被験体(それらの全てが、上で論じたように、同様の影響を受けていない被験体よりも、アシネトバクター属に感染しやすい)の治療においても特に有用である。
【0208】
概して、本発明による治療又は予防法を必要とする被験体は、アシネトバクター属による感染を患っている若しくはそのリスクを有すると診断される、例えばMDR細菌による感染を発症している若しくはそのリスクを有することが特定される。
【0209】
具体的には、本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、共に(すなわち組み合わせて又は併用して)、例えばアシネトバクター属による創傷の感染、アシネトバクター属と関連する自然弁心内膜炎、急性中耳炎、慢性細菌性前立腺炎、アシネトバクター属による気道及び肺の感染(例えば嚢胞性線維症、COPD、COAD、COAP、肺炎又は他の呼吸器の疾患)、又は医療(例えば留置)デバイスの感染を含む、アシネトバクター属による感染の発症を予防する、又は少なくともそのリスクを最小化する予防的治療と考えることができる。
【0210】
本発明は、単一のアルギネートオリゴマー、又は混合した(多数/複数の)異なるアルギネートオリゴマーの使用を包含する。したがって、例えば異なるアルギネートオリゴマー(例えば2つ以上)の組合せを使用してもよい。
【0211】
本発明は、単一の抗生物質、又は混合した(多数/複数の)異なる抗生物質の使用を包含する。したがって、例えば異なる抗生物質(例えば2つ以上)の組合せを使用してもよい。
【0212】
本発明の有利な1つの実施の形態では、アルギネートオリゴマー及び抗生物質は、本発明の方法において、更なる抗微生物剤(以下「更なる抗微生物剤」)と併用して又は組み合わせて使用することができる。
【0213】
医学的な使用との関連においては、かかる抗微生物剤は任意の臨床的に有用な抗微生物剤、特に抗生物質又は抗ウイルス剤又は抗真菌剤であり得る。非臨床的使用との関連においては、抗微生物剤は同様にかかる目的で使用される任意の抗微生物剤、例えば任意の消毒薬又は殺菌剤又は清浄剤又は滅菌剤であり得る。薬剤は別々に、又は同じ組成物中で共に、同時に又は順次に又は別々に、例えば任意の所望の時間間隔で使用することができる。
【0214】
したがって、代表例としては、更なる抗微生物剤はアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質(例えばマクロライド系抗生物質)の後に使用され得るが、その前の又は同時の又はその間の使用も状況によっては有益であり得る。
【0215】
抗微生物剤の選択は、当然ながら治療を受ける位置に適切である必要があるが、例えば抗微生物剤、例えば抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、及び/又は照射(例えばUV、X線、γ線)、極度の温度及び極度のpH等の滅菌条件を使用することができる。
【0216】
代表的な抗生物質には、上で列挙されるもの、特に好ましいと述べられるものが含まれる。アルギネートオリゴマーはこれらの更なる抗生物質の抗生物質効果を高めることもできる。
【0217】
代表的な殺菌剤は、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)、第四級アンモニウム化合物(例えば塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、過酸化水素、フェノール化合物(例えばTCP、トリクロサン)、アルコール(例えばエタノール)、Virkon(商標)、ヨード化合物(例えばポビドンヨード)、銀化合物(例えば元素銀ナノ/ミクロ粒子)を含むが、これらに限定されない。
【0218】
抗微生物界面活性剤は別の群の殺菌剤である。これらは微生物細胞膜及び他の構造成分を破壊し、したがって微生物の成長及び/又は生存能力を阻害する化合物である。抗微生物界面活性剤及び抗微生物剤組成物におけるその使用は当該技術分野において既知であるが、更なる指針が必要であれば、"Preservative-free and self-preserving cosmetics and drugs-Principles and practice", Ed. Kabara and Orth, Marcel Dekker, NY, NY, 1997における抗微生物剤界面活性剤の考察の全体が、参照により明示的に援用される。抗微生物界面活性剤は陰イオン性、陽イオン性、非イオン性又は両性であり得る。抗微生物陰イオン性界面活性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム、リシノール酸ナトリウム、胆汁酸、アルキルアリールスルホン酸塩、Grillosan DS7911、ウンデシレン酸モノエタノールアミドスルホコハク酸ジナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。抗微生物陽イオン性界面活性剤の例としては、第四級アンモニウム(ammionium)化合物、アミンイミド及びクロルヘキシジン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。抗微生物非イオン性界面活性剤の例としては、脂肪酸のモノエステル、アルキルジヒドロキシ安息香酸のポリエチレングリコモノエステル、グルコサミン誘導体、及びN−ラウロイルジペプチドのジエタノールアミドが挙げられるが、これらに限定されない。抗微生物両性界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアミノプロピオネート、アルキルイミノジプロピオネート及びアルキルイミダゾリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0219】
代表的な抗真菌剤は、ポリエン系抗真菌剤(例えばナタマイシン、リモシジン、フィリピン、ナイスタチン、アムホテリシンB、カンジシン(candicin));イミダゾール系抗真菌剤(例えばミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ビフォナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール);トリアゾール系抗真菌剤(例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、テルコナゾール);アリルアミン系抗真菌剤(例えばテルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、ブテナフィン);及びエキノキャンディン系抗真菌剤(例えばアニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン)を含むが、これらに限定されない。
【0220】
代表的な抗ウイルス剤は、アバカビル、アシクロビル、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ボセプレビル、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフュービルタイド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビ、フォスカーネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、III型インターフェロン、II型インターフェロン、I型インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル(nexavir)、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル及びジドブジンを含むが、これらに限定されない。
【0221】
更なる抗微生物剤は、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質の前、それと同時に、その後又はその間に好都合に適用することができる。好都合には、更なる抗微生物剤はアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質と実質的に同時に、又はその後に適用される。例えば、更なる抗微生物剤は、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質の投与の少なくとも1時間後、好ましくは少なくとも3時間後、より好ましくは少なくとも5時間後、最も好ましくは少なくとも6時間後に適用される。他の実施の形態では、更なる抗微生物剤は、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質の前、例えばアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質の少なくとも1時間前、少なくとも3時間前、少なくとも6時間前に好都合に適用又は投与することができる。これらの実施の形態では、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質は、更なる抗微生物剤の更なる適用の有無にかかわらず適用又は投与することができる。更なる抗微生物剤の抗微生物効果を最適化するために、更なる抗微生物剤は使用される薬剤に適切な時点で繰り返し与えられる(例えば投与又は送達される)。当業者は好適な投薬計画又は使用計画を考案することができる。長期的治療においては、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を同様に繰り返し使用することができる。アルギネートオリゴマーは抗生物質及び/又は更なる抗微生物剤と同じ頻度で適用することができるが、通常はその頻度は低い。所要の頻度はアシネトバクター生物の位置、コロニー組成及び使用される抗微生物剤によって決まり、当業者は結果を最適化するために投薬パターン又は使用パターンを最適化することができる。
【0222】
有利な実施の形態では、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質は、治療を受ける位置で感染を引き起こすアシネトバクター属を含むコロニー/集団の物理的な除去又は低減(例えばデブリードマン)の後に使用又は適用することができる。
【0223】
アシネトバクター属を含むコロニー/集団の除去、又はそれを除去する試みの後、位置を0時間〜24時間、特に2時間〜12時間、より具体的には4時間〜8時間、最も具体的には5時間〜7時間、例えば6時間アルギネートオリゴマーと接触させることができる。これに続いて、抗生物質及び必要に応じて更なる抗微生物剤を適用することができる。かかるシナリオは臨床状況において望ましいか、又は特に適用可能であり得る。アシネトバクター属によって感染した創傷の場合、インキュベーション期間を好都合に設定し、計画的な創傷被覆材の変更に対応することができる。
【0224】
任意の好適な外科的手段、機械的手段又は化学的手段を用いて、アシネトバクター属を含むコロニー/集団の物理的な除去を実施することができる。好都合には、これはコロニー/集団に対して圧力をかけて適用される液体、ゲル、ゲル−ゾル、半固体組成物若しくは気体、超音波処理、レーザーの使用、又は研磨器具によるものであり得る。除去自体に使用される、又は除去前、除去中、若しくは除去後の洗浄溶液として使用される組成物は、好都合にはアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を含有し得る。
【0225】
したがって、具体的な1つの実施の形態では、本発明の治療及び方法における使用のためのアルギネートオリゴマー、特に本明細書で規定される任意のアルギネートオリゴマー、及び/又は抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質、特に本明細書で規定される任意のマクロライド系抗生物質(例えば、好ましくはアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン又はスピラマイシンから選択されるマクロライド系抗生物質)を含有する、創傷のためのデブリードマン組成物又は洗浄組成物、例えば溶液が提供される。かかるデブリードマン組成物は、典型的には無菌溶液、特に無菌水溶液、又は油性無菌溶液であり、タンパク質分解酵素(例えばコラゲナーゼ、トリプシン、ペプシン、エラスターゼ)、研磨用固相(例えばコロイド状シリカ、粉砕軽石、粉砕植物又は動物殻体)を更に含有し得る。
【0226】
アルギネートオリゴマー及び抗生物質の免疫賦活剤との組合せ又は結合での使用も、臨床状況での本発明の方法の適用において、有益であり得る。これらの免疫賦活剤は、抗菌剤に関して上述したものに対応する時点で好都合に使用することができ、アルギネートオリゴマー及び/若しくは抗生物質、並びに/又は更なる抗菌剤との組合せで任意に使用することができる。好適な免疫賦活剤は、サイトカイン、例えばTNF、IL−1、IL−6、IL−8、並びに例えば米国特許第5,169,840号、国際公開第91/11205号及び国際公開第03/045402号(これらの全体が明示的に参照により本明細書に援用される)に記載される高M含量アルギネート等の免疫賦活性アルギネート(しかし、免疫賦活性を有する任意のアルギネートを含む)を含むが、これらに限定されない。
【0227】
成長因子、例えばPDGF、FGF、EGF、TGF、hGF、及び酵素と組み合わせた又は併用したアルギネートオリゴマー及び抗生物質の使用が、本発明の医学的な使用において有益であり得る。好適な酵素の代表例は、プロテアーゼ、例えばセリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ及びシステインプロテアーゼ(これらの種類のプロテアーゼの例は、欧州特許第0590746号(その全内容が参照により本明細書に援用される)に列挙されている);ヌクレアーゼ、例えばDNase I及びII、RNase A、H、I、II、III、P、PhyM、R;リパーゼ、及び多糖類を分解する能力を有する酵素を含むが、これらに限定されない。
【0228】
例えば核酸切断酵素(例えばDNase I等のDNase)、ゲルゾリン、チオール還元剤、アセチルシステイン、塩化ナトリウム、非荷電の低分子量多糖(例えばデキストラン)、アルギニン(若しくは他の一酸化窒素前駆体若しくは合成促進剤)、又はアニオン性ポリアミノ酸(例えばポリASP若しくはポリGLU)のような、生理学的に耐容性を有する粘膜粘度低減剤と組み合わせた又は併用したアルギネートオリゴマー及び抗生物質の使用も、有益であり得る。アンブロキソール、ブロムヘキシン(romhexine)、カルボシステイン、ドミオドール、エプラジノン、エルドステイン、レトステイン、メスナ、ネルテネキシン、ソブレロール、ステプロニン、チオプロニンが、注目すべき具体的な粘液溶解薬である。
【0229】
α遮断薬と組み合わせた又は併用したアルギネートオリゴマー及び抗生物質の使用も本発明の医学的な使用、特に慢性細菌性前立腺炎の治療において有益であり得る。好適なα遮断薬の代表例としては、選択的α1遮断薬(例えばドキサゾシン、シロドシン(dilodosin)、プラゾシン、タムスロシン、アルフゾシン、テラゾシン)、及び非選択的アドレナリン遮断薬(例えばフェノキシベンザミン、フェントラミン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0230】
気管支拡張剤と組み合わせた又は併用したアルギネートオリゴマー及び抗生物質の使用も本発明の医学的な使用、特にアシネトバクター生物と関連する呼吸器の疾患(COPD、COAD、COAP、肺炎、嚢胞性線維症、気腫及び喘息を含み得る)の治療において有益であり得る。好適な気管支拡張剤の代表例としては、β2作用薬(例えばピルブテロール、エピネフリン、サルブタモール、サルメテロール、レボサルブタモール、クレンブテロール)、抗コリン作用薬(例えばイプラトロピウム、オキシトロピウム、チオトロピウム)及びテオフィリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0231】
コルチコステロイドと組み合わせた又は併用したアルギネートオリゴマー及び抗生物質の使用も本発明の医学的な使用、特にアシネトバクター生物と関連する呼吸器の疾患(COPD、COAD、COAP、肺炎、嚢胞性線維症、気腫及び喘息を含み得る)の治療において有益であり得る。好適なコルチコステロイドの代表例は、プレドニソン、フルニソリド、トリアムシノロン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニソン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、アルクロメタゾン(aclometasone)、プレドニカルベート、クロベタゾン、クロベタゾール及びフルプレドニデンを含むが、これらに限定されない。
【0232】
アルギネートオリゴマー及び抗生物質は任意に、使用することが望まれ得る任意の他の治療的活性剤、例えば抗微生物剤、抗炎症剤(例えば抗炎症ステロイド剤)、免疫賦活剤、粘膜粘度低減剤、成長阻害剤又は酵素又はα遮断薬、気管支拡張剤又はコルチコステロイドと共に使用することができる。更なる治療的活性剤(例えば抗微生物剤又は抗炎症剤、免疫賦活剤、粘膜粘度低減剤、成長阻害剤又は酵素又はα遮断薬、気管支拡張剤又はコルチコステロイド)とアルギネートオリゴマー及び抗生物質との組合せでの使用は、活性剤の臨床効果を改善することができ、更なる治療的活性剤の用量(例えば通常用量又は正常用量)を低減することを有利に可能とすることができ、例えば更なる治療的活性剤をその正常用量若しくは通常用量、又はより低用量、例えばその正常用量の最大50%(若しくは50%)で使用することができる。
【0233】
医学的な使用の場合には、本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、任意の好都合な形態で、又は任意の好都合な手段、例えば局所経路、経口経路、非経口経路、経腸経路、非経口経路若しくは吸入によって被験体に投与することができる。好ましくはアルギネート及び抗生物質は局所経路、経口経路若しくは非経口経路、又は吸入によって投与される。アルギネートオリゴマー及び抗生物質は同じ組成物中にある必要はなく、同じ経路で投与する必要はない。場合によっては、アルギネートオリゴマー及び抗生物質は同じ経路によって投与されないことが好ましいこともある。
【0234】
当業者は、本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質を、当該技術分野で既知でありかつ文献で広く記載されている従来の方法のいずれかにより、これらの投与経路に適した医薬品組成物中に配合することができる。
【0235】
したがって本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と共に本明細書で規定されるアルギネートオリゴマーを含む、上述の方法又は使用のいずれかにおいて使用される医薬品組成物も提供する。
【0236】
本発明はしたがって、本明細書で規定される抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質を、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と共に含む、上述の方法又は使用のいずれかにおいて使用される医薬品組成物も提供する。この組成物は、本明細書で規定されるアルギネートオリゴマーも含み得る。
【0237】
活性成分は、任意に他の活性剤、1つ又は複数の従来の担体、希釈剤及び/又は賦形剤と共に組み込み、従来のガレヌス調製物、例えば錠剤、ピル、粉末(例えば吸入用粉末)、ロゼンジ、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル、懸濁液、乳化液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体として、又は液体媒体中で)、スプレー(例えば鼻腔用スプレー)、ネブライザにおける使用のための組成物、軟膏、軟ゼラチンカプセル及び硬ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射溶液、無菌包装粉末等を製造することができる。無菌吸入用組成物は、アシネトバクター生物と関連する呼吸器の疾患(COPD、COAD、COAP、肺炎、嚢胞性線維症、気腫及び喘息を含み得る)の治療における使用のために特に注目すべきである。
【0238】
好適な担体、賦形剤及び希釈剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシア・ゴム、リン酸カルシウム、不活性アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム,微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、水、水/エタノール、水/グリコール、水/ポリエチレン、高張食塩水、グリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、若しくは脂肪物質(ハードファット等)、又はそれらの好適な混合物である。注目すべき賦形剤及び希釈剤は、マンニトール及び高張食塩水(生理食塩水)である。
【0239】
組成物は、滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存料、甘味料、香料等を更に含んでいてもよい。
【0240】
上で論じたように、本発明による使用に提案されるアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、他の治療剤と共に、例えば単一の医薬品製剤又は医薬品組成物中で互いに組み合わせて(例えば共に投与される)、又は別々に(すなわち別々の、順次の又は同時の投与のために)使用することができる。したがって、本発明のアルギネートオリゴマー及び抗生物質は、例えば医薬品キット内で又は組み合わせた(「組合せ」)製品として組み合わせることができる。
【0241】
したがって、本発明の更なる態様は、アシネトバクター生物の成長及び/又は生存能力を阻害するため、アシネトバクター属による位置のコンタミネーションを抑制するため、アシネトバクター生物の集団を抑制するため、特に被験体におけるアシネトバクター感染を治療するために別々に、同時に又は順次に使用される(例えばアシネトバクター生物へ適用する及び/又は被験体若しくは位置に投与する)複合製剤としてアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質、例えば本明細書で規定されるマクロライド系抗生物質、及び更なる活性剤を含有する製品を提供する。
【0242】
上記の組合せ療法に関して上で論じたように、更なる治療的活性剤が医薬品組成物中に含まれ得る。
【0243】
本発明は、本明細書で規定されるアルギネートオリゴマー、並びに例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム・ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン及びトロバフロキサシンの群から選択される抗生物質を含む、製品(例えば医薬品キット、又は組み合わせた(「組合せ」)製品)又は組成物(例えば医薬品組成物)も提供する。好ましくは、抗生物質は、セフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、オキシテトラサイクリン、コリスチン、アジスロマイシン及びシプロフロキサシンの群から選択され、好ましくはアジスロマイシンである。例えば、抗生物質はアミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、タイロシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム・ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン及びトロバフロキサシンから選択され得る。特に、抗生物質はセフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、オキシテトラサイクリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択され得る。抗生物質がセフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択されることが特に好ましい。より好ましくは、抗生物質はアズトレオナム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択される。他の実施の形態では、使用される抗生物質はトブラマイシン、アミカシン及び/又はコリスチンではない。他の実施の形態では、使用される抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質又はポリペプチド系抗生物質ではない。他の実施の形態では、使用される抗生物質は、それがアルギネートオリゴマーと共に使用される条件下で正電荷を有する抗生物質、例えば少なくとも3個、例えば少なくとも4個、5個、6個又は7個のアミノ(−NH)基を有する抗生物質ではない。
【0244】
好ましい実施の形態では、製品又は組成物は本明細書で規定されるアルギネートオリゴマーと、例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン、タイロシンの群から選択されるマクロライド系抗生物質とを含む。好ましくは、マクロライド系抗生物質はアザライドマクロライド、好ましくはアジスロマイシンである。
【0245】
これらの製品及び組成物は具体的には本発明の方法において使用することが意図される。製品及び組成物は医薬品であっても又は医薬部外品であってもよい。したがって、本発明のこの態様の製品及び組成物は、本発明の方法のいずれかで使用することができる。
【0246】
本発明の医学的方法において使用される、かかる医薬製品及び医薬品組成物を製造するために本明細書で規定されるアルギネートオリゴマーの使用も意図される。
【0247】
更なる活性剤を組み込んでもよい。更なる活性剤及び賦形剤等の上記及び下記の考察は、その全体を本発明のこの態様に直接適用可能である。
【0248】
場合によっては、例えば体重増加/成長を促進するために、本明細書で規定されるアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を動物に投与することが有益であり得る。投与は上に記載される医薬品組成物の形態で達成することができるが、好都合には本明細書で規定されるアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質は、従来の飼料添加物、すなわち動物飼料に栄養学的に無視することのできる少量で添加される生成物として使用され得る。動物飼料における飼料添加物の使用は十分に確立されており、当業者が所望の効果、例えば体重増加/成長を達成するのに適切な本発明のアルギネートの量を判定及び使用することは完全に日常的であり得る。
【0249】
アルギネートオリゴマー及び抗生物質の相対含量は、必要とされる投薬量及び従う投薬計画に応じて変化し得るが、これは治療対象の被験体並びにアシネトバクター属の位置及び同一性、並びに/又はアシネトバクター属のコンタミネーション又はアシネトバクター属を含む集団の構成成分によって決まる。好ましくは、組成物は、アシネトバクター生物の成長及び/又は生存能力を阻害する抗生物質の効果の測定可能な増大をもたらす量のアルギネートオリゴマー、例えばアシネトバクター生物の成長及び/又は生存能力を阻害するマクロライド系抗生物質の効果を少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも8倍、少なくとも16倍又は少なくとも32倍にする量のアルギネートオリゴマーを含む。違う言い方をすると、組成物は標的とされる感染の測定可能な治療をもたらす量のアルギネートオリゴマー及びその量の抗生物質を含む。
【0250】
好ましくは、組成物又は生成物は、被験体に投与又は位置に適用した場合に、オリゴマーの局所濃度が少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%、6%又は8%、最も好ましくは少なくとも10%(w/v)となるのに十分なアルギネートオリゴマーを含む。抗生物質は、好ましくは少なくとも0.03125μg/ml、好ましくは少なくとも0.0625μg/ml、0.125μg/ml、0.25μg/ml、0.5μg/ml、1μg/ml、2μg/ml、4μg/ml、8μg/ml、16μg/ml、32μg/ml、64μg/ml、128μg/ml、256μg/ml、512μg/ml、1024μg/ml、2048μg/ml又は4096μg/mlの局所濃度をもたらすのに十分な量で存在する。当業者は、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質の量を、複数回の投与計画に従う場合に低減することができ、又は投与若しくは適用の回数を最小限にするために増大させることができることを知っているだろう。
【0251】
この態様の組成物及び製品は通常、他の成分を考慮に入れて、1%〜99%、5%〜95%、10%〜90%又は25%〜75%のアルギネートオリゴマー、及び1%〜99%、5%〜95%、10%〜90%又は25%〜75%のマクロライド系抗生物質を含む。
【0252】
非経口で投与可能な形態(例えば静脈内溶液)は、無菌でありかつ生理学的に許容不可能な薬剤を含まぬべきであり、投与による刺激又は他の悪影響を最小化するために低浸透圧であるべきであり、したがって該溶液は好ましくは、等張、又はわずかに高張の溶液、例えば高張食塩水(生理食塩水)であるべきである。好適なビヒクルは、非経口溶液、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンガー液、並びにRemington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed., Easton: Mack Publishing Co., pp. 1405-1412 and 1461-1487 (1975)及びThe National Formulary XIV, 14th ed. Washington: American Pharmaceutical Association(1975)に記載されるような他の溶液を投与するために習慣的に使用されている水性ビヒクルを含む。溶液は、バイオポリマーに適合性を有し、かつ製品の製造、貯蔵又は使用を妨げない非経口溶液、賦形剤及び他の添加物のために従来から使用されている保存料、抗菌剤、緩衝液及び抗酸化剤を含有することができる。
【0253】
局所投与のために、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を、クリーム、軟膏、ゲル、経皮パッチ等の中に組み込むことができる。アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質は、医学的な被覆材、例えば創傷被覆材、例えば織った(例えば布)被覆材、又は不織被覆材(例えばゲル、又はゲル成分を有する被覆材)中に組み込むこともできる。被覆材におけるアルギネートポリマーの使用は既知であり、かかる被覆材、又は実際には任意の被覆材は、本発明のアルギネートオリゴマーを更に組み込むことができる。
【0254】
したがって、更なる具体的な実施の形態では、本発明は、適切な場合に本発明の治療及び方法において使用されるアルギネートオリゴマー(本明細書で規定される任意のアルギネートオリゴマーであり得る)及び/又は抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質(本明細書で規定される任意の抗生物質であり得る)を含む創傷被覆材を更に提供する。
【0255】
好適であると考えられるさらなる局所システムは、例えば、固体、半固体、非晶質、又は液体結晶ゲルマトリクスがin situで形成され、かつアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を含み得るゲルのような、in situ薬剤送達システムである。かかるマトリクスは、マトリクスからのアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質の放出を制御するように好都合に設計することができ、例えば放出を、選択した一定期間にわたり遅延化及び/又は持続させることができる。かかるシステムは、生物学的な組織又は流体と接触しただけで、ゲルを形成し得る。典型的にはゲルは、生体接着性を有する。プレゲル組成物を保持する、又は該組成物を保持するように適合させることができる任意の身体の部位への送達は、かかる送達技法により標的とすることができる。かかるシステムは、国際公開第2005/023176号で説明されている。
【0256】
口腔、頬側及び歯の表面への塗布のために、歯磨き粉、歯科用ゲル、歯科用フォーム及び洗口剤に具体的に言及する。したがって、特定の一態様では、適切な場合に本発明の治療及び方法において使用される、アルギネートオリゴマー及び抗生物質(本明細書で規定される任意のアルギネートオリゴマー又は抗生物質であり得る)を含む、口腔健康管理、又は口腔衛生用の組成物、特に洗口剤、歯磨き粉、歯科用ゲル又は歯科用フォームが含まれる。
【0257】
吸入用組成物にも注目すべきである。吸入に好適な組成物の製剤は当業者にとって日常的であり、古くから呼吸器の疾患の治療において標準的な行為であった。吸入用組成物は例えば吸入用粉末、溶液又は懸濁液という形態をとり得る。当業者は、その要求に最適なタイプの送達システムを選択し、そのシステムにおける使用に好適な本発明のアルギネート及び/又は抗生物質の製剤を調製することができるだろう。噴射剤を使用しない噴霧可能な溶液及び吸入用粉末製剤が特に好ましい。
【0258】
上述したように、本発明の好ましい組成物は、例えば組織から、アシネトバクター生物を含むコロニー又は集団を除去するデブリードマンプロセスにおいて使用されるデブリードマン組成物である。典型的にはかかる組成物は液体であるが、ゲル、ゲル−ゾル、又は半固体組成物が使用され得る。組成物は、コロニー/集団を切除する(例えば、圧力をかけて組織に塗布することにより)のに使用することができ、及び/又は外科的、機械的若しくは化学的プロセスによる等の他の手段によるデブリードマンの前に、その最中に、及び/又はその後に、組織を浸すのに使用することができる。当業者は、本発明によれば、デブリードマン組成物を容易に構築することができる。
【0259】
無生物の表面上又は無生物材料中のアシネトバクター生物の場合には、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を、任意の好都合な組成物若しくは製剤で、又は任意の好都合な手段により、処理対象の表面又は材料に塗布することができる。したがってアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質は、液体、ゲル、ゲル−ゾル、半固体又は固体の形態(例えば溶液、懸濁液、ホモジネート、乳化液、ペースト、粉末、エアロゾル、蒸気)であり得る。典型的にはかかる無生物表面又は材料を処理する組成物は、薬学的に許容可能な組成物ではない組成物である。組成物の形態の選択は、表面上又は材料中のアシネトバクター生物の属性(identity)、及びその表面又は材料の位置により影響される。例えば、その位置が流体ラインである場合には、流体の組成物を適用することが好都合であり得る。処理対象の流体ラインの表面上又はその一部で持続するが、通常使用の流体中には浸出しない組成物(例えば接着性ゲル)を使用することが好ましい場合もある。当業者は、その一般的な知識により、好適な組成物を容易に調製することができる。例えば、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を、塗料製剤に添加し、処理対象の表面、例えば、ボートの船体、若しくは水に曝されたボートの構造の他の部分に、又は建築物若しくはその任意の部分、タンク(例えば貯蔵タンク若しくは加工処理タンク)に、又は実際には任意の工業用機械の任意の部分に、塗布することができる。かかる組成物は、上述のように、更なる抗菌剤、例えば抗生物質、塩素系漂白剤、TCP、エタノール、Virkon(商標)、ポビドンヨード、銀化合物、抗微生物界面活性剤等を好都合に含んでいてもよい。組成物は薬学的に許容可能である必要はないので、表面損傷、環境コンタミネーション、使用者の安全性、及び処理対象の表面のコンタミネーション、並びに組成物の他の成分との相互作用の考慮事項を条件として、より厳しい抗菌剤を使用することができる。
【0260】
本発明の組成物は、当該技術分野で既知の手法を利用することにより、被験体/表面への投与後に活性成分の迅速な、持続的な、又は遅延化した放出をもたらすように、構築することができる。接着性組成物も好ましい。接着製剤、持続放出製剤及び/又は遅延化放出製剤が特に好都合であり得る。
【0261】
更なる態様では、本発明は、アシネトバクター生物がコンタミネーション/コロニー形成しやすい製品であって、そのコンタミネーション/コロニー形成しやすい表面が本明細書で規定されるアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質、例えばマクロライド系抗生物質で前処理されている、製品を提供する。
【0262】
「前処理された」とは、コンタミネーション/コロニー形成しやすい表面がアシネトバクター生物への曝露の前にアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質に曝露されていること、並びにアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質が、アシネトバクター生物によるコンタミネーション/コロニー形成を相当な期間予防するのに十分な期間表面上で存続することを意味する。好ましくは、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質は、実質的に表面の耐用年数にわたって存続し、例えば前処理はアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質の実質的に永続的なコーティングをもたらす。したがって、前処理された表面/製品は、アルギネートオリゴマー(olgimer)及び/又は抗生物質が適用され、それがその上で残存するものである。かかる製品/表面はコーティングされた製品/表面であってもよい。
【0263】
アシネトバクター生物がコンタミネーション/コロニー形成しやすい製品及び表面の非限定的な例は上に記載されている。医療デバイス及び外科用デバイス(例えば気管内チューブ又は気管切開チューブ)及び食品又は飲料の加工処理、貯蔵又は充填用の設備に特に言及することができる。
【0264】
前処理は任意の好都合な手段、例えばアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質の表面への任意の形態の適用、とりわけ表面のコーティング、例えば、噴霧乾燥、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を組み込んだポリマーでのポリマーコーティング、並びにアルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を含有する塗料製剤、ワニス製剤又はラッカー製剤を用いて塗料を塗る、ワニスを塗る、又はラッカーを塗ることによって達成することができる。アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を含有するかかる「コーティング」組成物(例えば塗料、ワニス又はラッカー)は本発明の更なる態様である。代替的には、アルギネートオリゴマー及び/又は抗生物質を、物体又はそのコンタミネーション/コロニー形成しやすい部分が製造される材料中に組み込むことができる。このアプローチは、プラスチック及びシリコーン等のポリマーから製造される物体又はその構成部分(例えば、上に記載される医療用デバイス及び外科用デバイス)に適している。これは、カテーテル(例えば中心静脈カテーテル及び尿路カテーテル)を含む任意の種類のライン、人工デバイス、例えば心臓弁、人工関節、義歯、歯冠、歯覆及び軟組織植込部材(例えば乳房、臀部及び唇の植込部材)を含み得る。任意の種類の植込式(又は「留置」)医療デバイス(例えばステント、子宮内デバイス、ペースメーカー、挿管チューブ(例えば気管内チューブ又は気管切開チューブ)、プロテーゼ又は人工デバイス、ライン又はカテーテル)が含まれる。更なる製品には、食品加工処理、貯蔵、充填若しくは調製用の設備若しくは表面、タンク、コンベヤ、床、ドレイン、クーラー、フリーザ、設備表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、空調管、冷却装置、食品又は飲料の充填ライン、熱交換器、ボートの船体又は水に曝されたボートの構造の任意の部分、歯科用水道、石油掘削管、コンタクトレンズ及び貯蔵ケースが含まれる。
【0265】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して更に説明される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0266】
実施例1
種々の濃度のアジスロマイシンと組み合わせたセフタジジム又はシプロフロキサシンの最小阻止濃度に対するG断片アルギネートオリゴマーの効果
【0267】
細菌株:
リビアの供給源から単離された多剤耐性アシネトバクター・バウマンニ
黄色ブドウ球菌NCTC 6571 MIC CONTROL STRAIN(オックスフォード株)
【0268】
化学薬品及び細菌培地:
−80℃の貯蔵から回復させた後、細菌コロニーを5%のヒツジ血液を含む血液寒天培地上で培養し、トリプトンソーヤブイヨン(TSB)に播種し終夜培養するために使用した。抗生物質を、陽イオン調整ミューラーヒントンブロス(CAMHB)又はG断片(Oligo CF−5/20 G残基90%〜95%)を含むCAMHBで2%、6%又は10%に希釈した。抗生物質はSigma-Aldrichから購入した医薬品グレードのものであった。OligoG CF−5/20 G断片はAlgipharmaより提供を受けた。
【0269】
最小阻止濃度アッセイ(Jorgensen et al., Manual of Clinical Microbiology, 7th ed. Washington, D.C: American Society for Microbiology, 1999; 1526-43):
上述のような細菌の終夜培養物を、OD625が0.08〜0.10となるまで滅菌水で希釈し、細胞密度が0.5(マクファーランド標準濁度)に等しいことを確認した。
【0270】
CAMHB、又はアジスロマイシンを4μg/ml又は8μg/mlのいずれかで添加し、G断片(Oligo CF−5/20 G残基90%〜95%)を0%、2%、6%又は10%で添加したCAMHBで2倍のシプロフロキサシン段階希釈物及び2倍のセフタジジム段階希釈物を調製し、平底96ウェルマイクロタイタープレートの2連のウェルに入れた(各々のウェル中100μl)。セフタジジムは0μg/ml〜1024μg/mlで使用し、シプロフロキサシンは0μg/ml〜256μg/mlで使用した。
【0271】
マクファーランド標準濁度が0.5の細菌培養物をCAMHBで10倍に希釈し、抗生物質の段階希釈物を含有するマイクロタイタープレートに5μl添加した。プレートをパラフィルムで覆い、37℃で16時間〜20時間インキュベーションした。各々の抗生物質/抗生物質の組合せについてのMIC値を、目に見える成長の認められない最小濃度として判定した。結果を表1に示す。
【0272】
【表1】

【0273】
これらのデータは、このアシネトバクター・バウマンニ株の成長を、4μg/mlのアジスロマイシンと2%以上のG断片との組合せによって完全に阻害することができることを示している。G断片の非存在下では、4μg/ml及び8μg/mlのアジスロマイシンは成長を阻害することができず、阻害は更なる抗生物質(セフタジジム又はシプロフロキサシン)を添加することによってのみ達成された。
【0274】
アルギネートオリゴマー(例えばG断片)が、アシネトバクター・バウマンニに対するアジスロマイシンの有効性を向上させ、特にアルギネートオリゴマー(例えばG断片)がアシネトバクター・バウマンニの成長を阻害するアジスロマイシンの効果を向上させることを結論付けることができる。したがって、アルギネートオリゴマー(例えばG断片)と一緒のアジスロマイシンの使用は、アシネトバクター属による感染及びコンタミネーションの非常に効果的な治療となることが予想される。
【0275】
実施例2
実施例1の研究を、シュードモナス・エルギノーサのMDR株に対し、アジスロマイシンを1μg/ml又は2μg/mlで使用して繰り返した。結果を表2に示す。
【0276】
【表2】

【0277】
これらのデータは、シュードモナス生物においてはMIC値の幾らかの低下が見られたが、アシネトバクター生物におけるシプロフロキサシン及びセフタジジムのMIC値はOligoCF−5/20によって大きく低下することを示している。実施例1で論じたように、より高レベルのアジスロマイシン(すなわち8μg/ml又は4μg/ml)を用いた実験のほとんど全てにおいて、OligoCF−5/20の存在が、シプロフロキサシン又はセフタジジムを添加することなくアシネトバクター属の成長の完全な阻害をもたらしたため、OligoCF−5/20が同様にアシネトバクター生物においてアジスロマイシンのMIC値を大きく低下させることが分かる。
【0278】
実施例3
様々な抗生物質及びアシネトバクター株の最小阻止濃度に対するG断片アルギネートオリゴマーの効果
実施例1に記載されるMICアッセイを、表3及び表4に記載されるように、以下のアシネトバクター株、抗生物質及びOligoCF−5/20の濃度を用いて行った。
非MDR株
V19 7789アシネトバクター・バウマンニ
V20 8065アシネトバクター・ルオフィイ
MDR株
V4 MDR ACB(リビア)アシネトバクター・バウマンニ
V9 (エジプト)アシネトバクター・バウマンニ
V10 (エジプト)アシネトバクター・ルオフィイ
V22 6056アシネトバクター・ルオフィイ
【0279】
【表3】

【0280】
表4に挙げられる様々な株及び抗生物質を用い、以下のプロトコルを使用して更なるMICアッセイを行った。
【0281】
Gブロックアルギネート(OligoG CF−5/20)をミューラーヒントンブロス(Lab M limited、LAB114ミューラーヒントンブロス)中に、所望のアッセイ濃度(2%、6%及び10%)の1.25倍に溶解した。抗生物質をミューラーヒントンブロス、及びGブロックアルギネートを含むミューラーヒントンブロス中に、所望される最高のアッセイ濃度の1.25倍の濃度で溶解した。抗生物質はSigma-Aldrichから購入した医薬品グレードのものであった。OligoG CF−5/20 G断片はAlgipharma AS(Norway)より提供を受けた。
【0282】
抗生物質の2倍段階希釈物を、種々の濃度のGブロックアルギネートを含むミューラーヒントンブロス中で作製し、この溶液をNunc 384ウェルマイクロプレートの4つの並列ウェルに入れた(Nunc 242757マイクロプレートの1つのウェルにつき30μl)。各々のGブロック濃度について、抗生物質を添加しない8つのウェルの群を成長対照として各々のマイクロプレートに加えた。
【0283】
凍結ストック培養物を、全ての株についてTSB(TSB-broth)中の終夜培養物から、グリセロールを15%の濃度まで添加した後、−80℃で凍結することによって作製した。分析日に、終夜TSB培養物(45度の角度で傾斜させた50ml容チューブ中6ml、200rpm、2.5cmの振幅、37℃)を、TSBでOD600が0.10となるまで希釈し、更にミューラーヒントンブロスで40倍に希釈した。384ウェルアッセイプレートの各々のウェルに7.5μlの希釈培養物を播種した。マイクロプレートをビニール袋に入れ、37℃でインキュベーションした。約18時間のインキュベーションの後、マイクロウェルの600nmでの光学密度を測定し、各々のウェルの相対成長収率を対照群の成長に基づいて算出した。MIC値は試料群のうち、4つ全ての並列ウェルにおいて30%未満の成長を与える最高の濃度とした。推定MIC値の確認のために、マイクロプレートを8時間更にインキュベーションし、培養物の光学密度を再度測定した。
【0284】
表4において、基本データの主テーブル、並びに各々の特定の細菌及び抗生物質の組合せについてのMIC値に対するOligoCF−5/20の全体的な効果を表す副テーブルを示す。副テーブルにおいて、色の濃いボックスはMIC値の全体的な低下を表し、網掛けしたボックス(boxed)はMIC値の全体的な上昇を表し、Mは全てのMIC値が使用された抗生物質の最大濃度よりも高かったことを示し、Lは全てのMIC値が使用された抗生物質の最小濃度よりも低かったことを示し、NEはMIC値に対する効果が観察されなかったことを示す。
【0285】
【表4】

【0286】
表3及び表4に提示したデータは概して、漸増濃度のOligoCF−5/20(0%〜10%)が、試験した全ての抗生物質(アジスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、ジリスロマイシン、クラリスロマイシン及びスピラマイシン(マクロライド系抗生物質)、アズトレオナム(モノバクタム系抗生物質)、セフタジジム(セファロスポリン系抗生物質)、イミペネム(カルバペネム系抗生物質)、メロペネム(カルバペネム系抗生物質)、シプロフロキサシン(キノロン系抗生物質)及びオキシテトラサイクリン(テトラサイクリン系抗生物質))について、いずれかのアシネトバクター株でMIC値を低下させることを示す。試験した株が試験対象の抗生物質によって完全には影響を受けなかった(すなわち成長の阻害が試験した抗生物質の最低濃度で見られた)ほとんど全ての場合において、MIC値の低下が見られた。表4では、V9株がアズトレオナム又はセフタジジムを使用した場合にM(MICが、使用された抗生物質の最大濃度を超えた)を示す。しかしながら、表3では、これらの抗生物質はV9株において漸増濃度のOligoCF−5/20によるMIC値の低下を示す。同様に、表4では、V19株がシプロフロキサシン又はセフタジジムを使用した場合にM(MICが、使用された抗生物質の最大濃度を超えた)を示す。しかしながら、表3では、これらの抗生物質はV9株において漸増濃度のOligoCF−5/20によるMIC値の低下を示す。表4では、V19株におけるイミペネムのMIC値は、漸増濃度のOligoCF−5/20によって上昇したが、表3のデータによると、漸増濃度のOligoCF−5/20はこの株におけるイミペネムのMIC値に対して効果を有しなかった。全体としては、オキシテトラサイクリンの効果が漸増濃度のOligoCF−5/20による影響を最も受けなかったが、オキシテトラサイクリンはそれでも試験した2つの株、V10(表3)及びV4(表4)においてMIC値の低下を示した。
【0287】
これらのデータは、アシネトバクター生物に対する抗生物質の効果を向上させるアルギネートオリゴマーの能力、より具体的には、これらの細菌が有し得る抗生物質に対する耐性を克服するアルギネートオリゴマーのを強調するものである。
【0288】
アシネトバクター株についてのMICの増強は、マクロライド系抗生物質によって最も顕著であることが見出されたが、MIC値の有意な低下がβ−ラクタム系抗生物質によっても見られた。重要なことには、MIC値の低下は耐性を有するものから感受性を有するものへの表現型の変化のようなものであり得る。
【0289】
実施例4
2つのアシネトバクター株におけるアズトレオナム、シプロフロキサシン、メロペネム及びアジスロマイシンの最小阻止濃度に対するMブロックアルギネートオリゴマーの効果
実施例1に記載される研究を、表5に詳述されるように、以下のアシネトバクター・バウマンニの株、抗生物質、及びOligoG CF−5/20の代わりにMブロックアルギネートオリゴマーを用いて繰り返した。MブロックオリゴマーはMが100%のものであり、DPnは15〜18である。
【0290】
【表5】

【0291】
表5に示される結果は、MブロックオリゴマーがOligoG CF−5/20と同様、アシネトバクター・バウマンニのMDR株及び非MDR株において多数の異なる抗生物質(マクロライドを含む)のMIC値の低下に効果的であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシネトバクター属に対する抗生物質の有効性を改善する方法であって、上記抗生物質をアルギネートオリゴマーと共に使用することを含む、アシネトバクター属に対する抗生物質の有効性を改善する方法。
【請求項2】
アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、若しくは感染のリスクがある被験体の治療において、又はアシネトバクター属に対する抗生物質の有効性を改善するために前記抗生物質と共に使用されるアルギネートオリゴマー。
【請求項3】
アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体を治療する方法であって、効果的な量の抗生物質を効果的な量のアルギネートオリゴマーと共に前記被験体に投与することを含む、アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、又は感染のリスクがある被験体を治療する方法。
【請求項4】
アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、若しくは感染のリスクがある被験体の治療において、又はアシネトバクター属に対する抗生物質の有効性を改善するために前記抗生物質と共に使用される薬剤の製造に対するアルギネートオリゴマーの使用。
【請求項5】
アシネトバクター属に感染した、感染した疑いがある、若しくは感染のリスクがある被験体の治療において、又はアシネトバクター属に対する抗生物質の有効性を改善するために、別々に、同時に又は順次に使用される複合製剤としてアルギネートオリゴマーと前記抗生物質とを含有する製品。
【請求項6】
アシネトバクター属による部位のコンタミネーションを抑制するin vitro方法であって、前記部位及び/又は前記アシネトバクター属を、抗生物質と共にアルギネートオリゴマーに接触させることを含む、アシネトバクター属による部位のコンタミネーションを抑制するin vitro方法。
【請求項7】
前記抗生物質がマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質及びキノロン系抗生物質から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項8】
前記抗生物質がアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、タイロシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム・ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン及びトロバフロキサシン、好ましくはセフタジジム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、アズトレオナム、オキシテトラサイクリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン及びシプロフロキサシンから選択される、請求項7に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項9】
前記抗生物質がセフタジジム、メロペネム、アズトレオナム又はシプロフロキサシンから選択される、請求項8に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項10】
前記抗生物質がマクロライド系抗生物質であり、好ましくはアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン及びスピラマイシンから選択される、請求項7に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項11】
前記アシネトバクター生物がアシネトバクター・バウマンニ又はアシネトバクター・ルオフィイである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項12】
前記アシネトバクター生物が臨床株又は臨床分離株である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項13】
前記アシネトバクター生物が前記抗生物質に対して耐性を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項14】
前記アシネトバクター生物がマクロライド系抗生物質、β−ラクタム系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質及びキノロン系抗生物質のうち3つ以上の群の抗生物質に対して耐性を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項15】
前記アルギネートオリゴマーが35000ダルトン未満、好ましくは30000ダルトン、25000ダルトン又は20000ダルトン未満の平均分子量を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項16】
前記アルギネートオリゴマーが2〜100、好ましくは2〜75、2〜50、2〜35、2〜30、2〜25又は2〜20の数平均重合度を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項17】
前記アルギネートオリゴマーが最大100個のモノマー残基を有し、好ましくは2−mer〜35−mer、2−mer〜30−mer、3−mer〜35−mer、3−mer〜28−mer、4−mer〜25−mer、6−mer〜22−mer、8−mer〜20−mer又は10−mer〜15−merである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項18】
前記アルギネートオリゴマーが少なくとも70%のG残基を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項19】
前記アルギネートオリゴマーが少なくとも80%又は少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%又は100%のG残基を有する、請求項18に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項20】
前記G残基の少なくとも80%がGブロック中に配置される、請求項18又は19に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項21】
前記アルギネートオリゴマーが少なくとも70%のM残基を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項22】
前記アルギネートオリゴマーが少なくとも80%又は少なくとも90%のM残基、好ましくは少なくとも95%又は100%のM残基を有する、請求項21に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項23】
前記M残基の少なくとも80%がMブロック中に配置される、請求項21又は22に記載の方法、アルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項24】
前記感染が口腔、生殖器官、尿路、気道、胃腸管、腹膜、中耳、前立腺、血管内膜、結膜若しくは角膜組織を含む眼、肺組織、心臓弁、皮膚、頭皮、爪、創傷内側における表面、若しくは副腎組織、肝臓組織、腎臓組織、膵臓組織、下垂体組織、甲状腺組織、免疫組織、卵巣組織、精巣組織、前立腺組織、子宮内膜組織、眼組織、乳房組織、脂肪組織、上皮組織、内皮組織、神経組織、筋肉組織、肺組織、表皮組織若しくは骨組織の表面から選択される身体の内部若しくは外部の表面の感染、又は血液、血漿、血清、脳脊髄液、消化管内容物、痰、肺分泌物及び精液から選択される体液中の感染、又は副腎組織、肝臓組織、腎臓組織、膵臓組織、下垂体組織、甲状腺組織、免疫組織、卵巣組織、精巣組織、前立腺組織、子宮内膜組織、眼組織、乳房組織、脂肪組織、上皮組織、内皮組織、神経組織、筋肉組織、肺組織、表皮組織又は骨組織から選択される身体組織内若しくは身体組織上の感染である、請求項2〜5及び7〜23のいずれか一項に記載のアルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項25】
前記被験体が予め確立した感染を患う被験体、免疫障害を患う被験体、集中治療又は救急治療を受けている被験体、外傷を患っている被験体、火傷を有する被験体、急性創傷及び/又は慢性創傷を有する被験体、新生児期の被験体、高齢の被験体、がんを有する被験体、自己免疫性病状を患っている被験体、上皮若しくは内皮の分泌及び/又は分泌物排出が低減した若しくは阻害された被験体、又は医療デバイスを装着した被験体から選択される、請求項2〜5及び7〜24のいずれか一項に記載のアルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項26】
前記被験体がHIV、敗血症、敗血症ショック、AIDS、免疫系のがん、関節リウマチ、I型糖尿病、クローン病、COPD、COAD、COAP、気管支炎、嚢胞性線維症、気腫、肺がん、喘息、肺炎及び副鼻腔炎から選択される病状を有する被験体、化学療法及び/又は放射線療法の準備をしている、該療法を受けている、若しくは該療法から回復している被験体、臓器移植被験体、健康管理機関に居住している被験体、又は喫煙者から選択される、請求項25に記載のアルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項27】
前記被験体が、好ましくはCOPD、COAD、COAP、気管支炎、嚢胞性線維症、気腫、肺がん、喘息及び肺炎から選択される呼吸器の病状又は疾患を有する被験体から選択される、請求項25に記載のアルギネートオリゴマー、使用又は製品。
【請求項28】
前記細菌が有生物若しくは無生物の表面上、又は有生物若しくは無生物の材料中のものである、請求項1及び6〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記アシネトバクター属が食品若しくは飲料の加工処理、調製、貯蔵若しくは充填用の機械若しくは設備の表面、空調装置の表面、工業用機械の表面、貯蔵タンクの表面、医療用設備若しくは外科用設備の表面、水上用/海洋用設備の表面、又は建築物及び他の構造の表面から選択される表面上のものである、請求項1及び6〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記表面が食品の加工処理、貯蔵、充填若しくは調製用の設備若しくは表面、タンク、コンベヤ、床、ドレイン、クーラー、フリーザ、設備表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、空調管、冷却装置、食品若しくは飲料の充填ライン、熱交換器、ボートの船体、歯科用水道、石油掘削管、コンタクトレンズ、コンタクトレンズ貯蔵ケース、カテーテル、人工デバイス又は植込式医療デバイスから選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細菌が医療廃棄物/実験廃棄物、動物又はヒト用の食品、個人衛生用品、化粧品、飲料水、廃水、農業用飼料及び農業用水、殺虫剤製剤、農薬製剤、除草剤製剤、工業用潤滑油、細胞及び組織の培地、並びに細胞及び組織の培養物から選択される材料中のものである、請求項1及び6〜23のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528840(P2012−528840A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513674(P2012−513674)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001096
【国際公開番号】WO2010/139956
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511292459)
【Fターム(参考)】