説明

アルケニルアリールの製造方法

【課題】アルミナ系脱水触媒の存在下、不純物としてのチタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応することによりアルケニルアリールを製造する方法であって、低コストで効率的にアルケニルアリールを得ることができるという優れた効果を有するアルケニルアリールの製造方法を提供する。
【解決手段】アリールアルコール原料液中のチタン濃度が0.01〜0.5(重量ppm)であることを特徴とするアルケニルアリールの製造方法。アルミナ系脱水触媒の例としては、アルミナを含有するものならばいかなるものでもよく、活性アルミナ、銅、亜鉛、パラジウム等の金属を含有する活性アルミナ、シリカ−アルミナ、銅、亜鉛、パラジウム等の金属を含有するシリカ−アルミナ等をあげることができ、触媒寿命、選択性の観点から活性アルミナが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニルアリールの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、アルミナ系脱水触媒の存在下、不純物としてのチタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応することによりアルケニルアリールを製造する方法であって、低コストで効率的にアルケニルアリールを得ることができるという優れた効果を有するアルケニルアリールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミナ系脱水触媒の存在下、アリールアルコール原料液を脱水反応することによりアルケニルアリールを製造する方法は公知である(たとえば特許文献1参照。)。しかしながら、不純物としてのチタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応することによりアルケニルアリールを製造する方法については記載がない。
【0003】
従来の方法においては、高い収率を得るために相当の高温を要し、低コストで効率的に高いアルケニルアリールを得るという観点において問題点があった。
【0004】
【特許文献1】特公昭52−39017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、アルミナ系脱水触媒の存在下、不純物としてのチタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応することによりアルケニルアリールを製造する方法であって、低コストで効率的にアルケニルアリールを得ることができるという優れた効果を有するアルケニルアリールの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、アルミナ系脱水触媒の存在下、不純物としてのチタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応することによりアルケニルアリールを製造する方法であって、該アリールアルコール原料液中のチタン濃度が0.01〜0.5(重量ppm)であることを特徴とするアルケニルアリールの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、アルミナ系脱水触媒の存在下、不純物としてのチタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応することによりアルケニルアリールを製造する方法であって、低コストで効率的にアルケニルアリールを得ることができるという優れた効果を有するアルケニルアリールの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のアルミナ系脱水触媒の例としては、アルミナを含有するものならばいかなるものでもよく、活性アルミナ、銅、亜鉛、パラジウム等の金属を含有する活性アルミナ、シリカ−アルミナ、銅、亜鉛、パラジウム等の金属を含有するシリカ−アルミナ等をあげることができ、触媒寿命、選択性の観点から活性アルミナが好ましい。
【0009】
本発明のアリールアルコールとしては、水酸基と芳香族基とを共に含む化合物であり、たとえば、クミルアルコール、1−フェニルエチルアルコール等を例示することができ、脱水反応により、クミルアルコールからはα−メチルスチレンが得られ、1−フェニルエチルアルコールからはスチレンが得られる。
【0010】
本発明の脱水反応に付す原料液は、不純物としてのチタンを含有するものであり、かつ該原料液中のチタン濃度が0.01〜0.5(重量ppm)のものである。該濃度を低くするには除去設備等が必要でコスト高となり、一方該濃度が高すぎるとアリールアルコールの転化率低下が著しくなり、いずれも不都合である。なお、一層好ましいチタン濃度は0.05〜0.3(重量ppm)である。
【0011】
原料液中のチタン濃度は、試料を乾式灰化後、誘導結合高周波プラズマ(ICP)分光分析により分析することによって測定することができる。
【0012】
本発明のアリールアルコール原料液としては、チタン系エポキシ化触媒の存在下、アルキルアリールハイドロパーオキサイドとプロピレンを反応させることによりプロピレンオキサイドとアリールアルコールに変換して得られたものを用いることができる。ここで、チタン系エポキシ化触媒の存在下、アルキルアリールハイドロパーオキサイドとプロピレンを反応させることによりプロピレンオキサイドとアリールアルコールに変換する方法としては、次の方法をあげることができる。
【0013】
エポキシ化反応は、溶媒を用いて液相中で実施される。溶媒は、反応時の温度及び圧力のもとで液体であり、かつ反応体及び生成物に対して実質的に不活性なものでなければならない。溶媒は、使用されるアルキルアリールハイドロパーオキサイド溶液中に存在する物質からなるものであってよい。たとえば、クメンハイドロパーオキサイドがその原料であるクメンとからなる混合物である場合には、特に溶媒を添加することなく、これを溶媒の代用とすることも可能である。その他、有用な溶媒としては、芳香族の単環式化合物(たとえば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン)及びアルカン(たとえば、オクタン、デカン、ドデカン)等があげられる。
【0014】
エポキシ化触媒は、目的物を高収率及び高選択率下に得る観点から、チタン系エポキシ化触媒が用いられる。チタン系エポキシ化触媒としては、珪素酸化物と化学的に結合したチタンを含有する、いわゆるチタン−シリカ触媒が好ましい。たとえば、チタン化合物をシリカ担体に担持したもの、共沈法やゾルゲル法で珪素酸化物と複合したもの、あるいはチタンを含むゼオライト化合物等をあげることができる。固体触媒は、スラリー状又は固定床の形で有利に実施できる。大規模な工業的操作の場合には、固定床を用いるのが好ましい。また、回分法、半連続法、連続法等によって実施できる。
【0015】
エポキシ化反応温度は、一般に0〜200℃であるが、25〜200℃の温度が好ましい。圧力は、反応混合物を液相の状態に保つのに充分な圧力でよい。一般に圧力は100〜10,000kPaであることが有利である。
【0016】
エポキシ化工程へ供給されるプロピレン/アルキルアリールハイドロパーオキサイドのモル比は2/1〜50/1であることが好ましい。該モル比が過少であると反応速度が低下して効率が悪く、一方、該モル比が過多であるとリサイクルされるプロピレンの量が多くなり、プロピレン回収工程において多大なエネルギーを必要とする。
【0017】
脱水反応は、アリールアルコールを触媒に接触させることによって行われる。反応は気相中あるいは溶媒を用いて液相中で実施できる。生産性や省エネルギーの観点から反応は液相で実施することが好ましい。溶媒は使用してもよく、使用しなくてもよい。溶媒を使用する場合は、反応体及び生成物に対して実質的に不活性なものでなければならない。
溶媒は、使用されるアリールアルコール溶液中に存在する物質からなるものであってよい。たとえば、クミルアルコールがその原料であるクメンとからなる混合物である場合には、特に溶媒を添加することなく、これを溶媒の代用とすることも可能である。その他、有用な溶媒としては、芳香族の単環式化合物(たとえば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン)及びアルカン(たとえば、オクタン、デカン、ドデカン)等があげられる。
【0018】
脱水反応温度は、一般に50〜450℃であるが、150〜300℃の温度が好ましい。圧力は、一般に100〜10,000kPaであるが、平衡反応であることを考えた場合、できるだけ低圧で実施することが有利である。
【0019】
脱水反応は、スラリー状又は固定床の形の触媒を使用して行うことができる。
【0020】
不純物としてのチタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応に供給した場合、脱水触媒の活性低下が促進されることがわかった。原料液中に含まれるチタンは脱水触媒に悪影響を及ぼしており、チタン濃度を0.01〜0.5(重量ppm)の範囲に維持することで、脱水触媒の活性低下を抑制することができる。
【0021】
原料液中のチタン濃度を本発明の範囲に維持する方法としては、フラッシュ蒸留法、吸着法、洗浄法等をあげることができる。好ましい方法としては、吸着法をあげることができる。チタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応に供給する前に、吸着剤処理してチタン濃度を本発明の範囲に調整することが望ましい。吸着剤としては、活性アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト等の金属酸化物があげられ、これらを単独又は混合物として用いることができる。吸着剤の設置個所としては、アルミナ系脱水触媒が充填された脱水反応器の上流部に単独に設けられた吸着床に充填するか、またはアルミナ系脱水触媒が充填された脱水反応器内の入口部に充填することがあげられる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例において本発明を説明する。
実施例1
金属製反応器に活性アルミナを819g充填し、活性アルミナ層の温度を233〜253℃の条件下、チタンを含有する30重量%クミルアルコール原料液(チタン0.15重量ppm)を5.7kg/hで供給した。この時の反応器出口でのα−メチルスチレンの収率は98.5%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ系脱水触媒の存在下、不純物としてのチタンを含有するアリールアルコール原料液を脱水反応することによりアルケニルアリールを製造する方法であって、該アリールアルコール原料液中のチタン濃度が0.01〜0.5(重量ppm)であることを特徴とするアルケニルアリールの製造方法。
【請求項2】
アリールアルコールがクミルアルコール及び/又は1−フェニルエチルアルコールであり、アルケニルアリールがα−メチルスチレン及び/又はスチレンである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
アルミナ系脱水触媒が活性アルミナである請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
アリールアルコール原料液が、チタン系エポキシ化触媒の存在下、アルキルアリールハイドロパーオキサイドとプロピレンを反応させることによりプロピレンオキサイドとアリールアルコールに変換して得られたものである請求項1記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−260756(P2008−260756A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53043(P2008−53043)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】