説明

アルケニルエーテル重合体を含んでなるミクロスフェアおよびその製造方法

【課題】 刺激応答性を有し、大量の物質を吸着または内包できるミクロスフェアおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 アルケニルエーテル重合体を含んでなる、ミクロスフェア、および、(1)溶媒中、アルケニルエーテル重合体を凝集させて、コアセルベートを形成させる工程と、(2)上記コアセルベートの状態で上記アルケニルエーテル重合体の分子間を架橋する工程を含んでなる、ミクロスフェアの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニルエーテル重合体を含んでなるミクロスフェアおよびその製造方法に関する。さらに詳細には、様々な物質を大量に吸着または内包させることができ、かつ、刺激によって吸着または内包された物質を放出することができる、ミクロスフェアおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
刺激応答性ポリマーは、温度、pH変化、光、電場、化学物質添加などの環境変化に応じて形状や物性を著しく変える物質である。このような刺激応答性ポリマーの中に、刺激によって溶解状態からコアセルベートを形成するものがある。例えば、アルケニルエーテル重合体の中では、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルの共重合体や、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル重合体の水溶液が、温度によってコアセルベートを形成することが知られている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0003】
一方、アルケニルエーテル重合体からなる物質捕集材料ならびに物質を内包して刺激によって放出する組成物が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。これらは、アゾ染料やビタミンEに代表される薬剤成分を捕集、放出することができる。
しかしながら、これらは、大きさが10nm程度の極微小なものか、連続的に連なった高分子ゲルである。これまで、様々な物質を吸着または内包し、刺激に応じて放出することができるミクロスフェアは未だ報告されていない。
【特許文献1】特開2005-154497号公報
【特許文献2】特開2003-128587号公報
【非特許文献1】Journal of Polymer Science、 Part A: Polymer Chemistry、41巻、3300〜3312頁(2003年)
【非特許文献2】Macromolecules、37巻、1711〜1719頁(2004年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、刺激応答性を有し、様々な物質を大量に吸着または内包し、刺激に応じて放出することができるミクロスフェア、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、鋭意検討した結果、種々の溶媒中でアルケニルエーテル重合体(以下、「プレポリマー」ともいう)からコアセルベートを形成させ、そのコアセルベートの状態を維持したままプレポリマーを架橋することによって、目的物質の吸着能・放出能に優れたミクロスフェアを製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のものを包含する。
〔1〕 アルケニルエーテル重合体を含んでなる、ミクロスフェア。
〔2〕 上記アルケニルエーテル重合体は、刺激応答性ユニットと、架橋性ユニットを含んでなる、上記〔1〕に記載のミクロスフェア。
〔3〕 上記刺激応答性ユニットは、一般式[I]:
CHR=CH(OR) [I]
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。)
で表されるアルケニルエーテルに基づく、一般式[II]:
-[CHR-CH(OR)]- [II]
(式中、各記号は、一般式[I]にて示されるものと同義である。)
で表されるユニットである、上記〔2〕に記載のミクロスフェア。
〔4〕 上記一般式[I]で表されるアルケニルエーテルは、一般式[I’]:
CHR=CH(O-(R21-O)-R22) [I’]
(式中、Rは、一般式[I]にて示されるものと同義であり、R21は、2価の有機基を示し、R22は、水素原子または炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基を示し、lは、1〜18の整数から選ばれる。)
で表されるアルケニルエーテルである、上記〔3〕に記載のミクロスフェア。
〔5〕 上記一般式[I’]で表されるアルケニルエーテルは、
CH=CH(OCH-CH-CH-CH-OH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH)、
CH=CH(OCH-CH(CH)-CH-OH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH)、または
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-O-CH
である、上記〔4〕に記載のミクロスフェア。
〔6〕 上記架橋性ユニットは、一般式[III]:
CHR=CH(O-R-OCO-CR=CHR) [III]
(式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキレン基を示し、
は、水素原子、メチル基、またはフェニル基を示す。)
で表されるジアルケニルエーテルに基づく、一般式[IV]:
-[CHR-CH(O-R-OCO-CR=CHR)]- [IV]
(式中、各記号は、一般式[III]にて示されるものと同義である。)
で表されるユニットである、上記〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載のミクロスフェア。
〔7〕 上記一般式[III]で表されるジアルケニルエーテルは、
CH=CH(O-CH-CH-O-COC(CH)=CH)、
CH=CH(O-CH-CH-O-COCH=CH(C))、または
CH=CH(O-CH-CH-O-COCH=CH)
である、上記〔6〕に記載のミクロスフェア。
〔8〕 上記アルケニルエーテル重合体の重量平均分子量は、500〜1,000,000であり、かつ、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1〜2である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のミクロスフェア。
〔9〕 上記アルケニルエーテル重合体は、リビングカチオン重合により合成されたものである、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のミクロスフェア。
〔10〕 中空を有する、上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のミクロスフェア。
〔11〕 中空内に目的物質が充填された、上記〔10〕に記載のミクロスフェア。
〔12〕 目的物質が、遺伝子、医薬品、化粧品、香料、香辛料、色素および染料からなる群より選択された物質である、上記〔11〕に記載のミクロスフェア。
〔13〕 (1)溶媒中、アルケニルエーテル重合体を凝集させて、コアセルベートを形成させる工程と、
(2)上記コアセルベートの状態で上記アルケニルエーテル重合体の分子間を架橋する工程
を含む、上記〔1〕に記載のミクロスフェアの製造方法。
〔14〕 上記工程(1)において、上記アルケニルエーテル重合体を構成する少なくとも一つのユニットの性質を変化させることによって、コアセルベートを形成させる、上記〔13〕に記載の方法。
〔15〕 上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のミクロスフェアを含んでなる、目的物質を吸着および/または放出するための剤。
〔16〕 目的物質が、環境ホルモン、遺伝子、医薬品、化粧品、香料、香辛料、色素および染料からなる群より選択された物質である、上記〔14〕に記載の剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明のミクロスフェアは、ミクロな化学ゲルであり、大量の目的物質を吸着または内包することができるばかりでなく、刺激に応じて物理的形状(例えば粒径)を変化させて、吸着または内包させた目的物質を放出することができる。
また、本発明のミクロスフェアの製造方法は、従来のモノマーの重合と架橋を同時に行いミクロスフェアを製造する方法とは異なり、溶媒中でアルケニルエーテル重合体(プレポリマー)のコアセルベートを形成させ、コアセルベートの状態のままプレポリマーを架橋する方法であるので、プレポリマーの重合度を変えることによって、製造されるミクロスフェアの粒径を制御することができる。また、そのコアセルベート中に様々な目的物質を予め内包させることで、従来の方法のような重合反応による悪影響を受けずに、これらの目的物質をミクロスフェア中にカプセル化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において「ミクロスフェア」は、ナノからマイクロオーダーの大きさを有する、微小球状の化学ゲルである。また、当該ミクロスフェアは、このような微小球体の総称であり、これには、中空を有するミクロカプセルも包含される。
本発明において「アルケニルエーテル」は、ビニル基またはプロペニル基などのアルケニル基を有するエーテルである。具体的には、ビニルエーテル、プロペニルエーテルなどがある。
本発明において「刺激応答性」は、温度変化、電磁波への暴露、pH変化、濃度変化から選択された少なくとも一つの刺激に応答して、物理的状態が変化することを意味する。
本発明において「コアセルベート」は、溶媒中で形成される上記プレポリマーの濃縮相である。
本発明において「リビング重合」は、連鎖停止反応や連鎖移動反応がほとんどない重合系であって、生長末端の活性種が長時間保持される重合系である。この場合、モノマーが全て重合体に入り、重合終了した状態でも、末端活性種が失活せずに生きている。ここで、活性種が「カチオン」である重合系が「リビングカチオン重合」である。
【0008】
本発明のミクロスフェアは、アルケニルエーテル重合体を含んでなる。すなわち、本発明のミクロスフェアは、アルケニルエーテル重合体を含んでなる材料によって、その形状(構造)が規定された、微小球体である。この点で、架橋ポリマーからなる核に、アルケニルエーテル重合体の枝ポリマーが結合した、いわゆる星型ポリマー(例えば、特開2005-154497号公報参照)とは異なる。
【0009】
本発明に使用されるアルケニルエーテル重合体は、本発明の目的を達成することができる限り特に限定されないが、好適には刺激応答性ユニットと、架橋性ユニットを含んでなる。
【0010】
本発明における「刺激応答性ユニット」とは、アルケニルエーテル重合体(プレポリマー)を刺激応答性にし得る該重合体の構成ユニットである。したがって、かかるユニットを有するプレポリマーおよびそれから形成されるミクロスフェアは、刺激応答性を有する。
上記刺激応答性ユニットとしては、アルケニルエーテル重合体(プレポリマー)を刺激応答性にすることができるユニットであれば特に限定されないが、例えば、一般式[I]:
CHR=CH(OR) [I]
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。)
で表されるアルケニルエーテルに基づく、一般式[II]:
-[CHR-CH(OR)]- [II]
(式中、各記号は、一般式[I]にて示されるものと同義である。)
で表されるユニットが挙げられる。
【0011】
上記一般式[I]で表されるアルケニルエーテルとしては、有機基(R)が炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルコキシアルキル基、シリロキシアルキル基、炭素数6以上のシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基、炭素数6以上のヒドロキシシクロアルキル基、ヒドロキシアリール基、ヒドロキシアルキルアリール基、ヒドロキシアリールアルキル基、ヒドロキシアリールオキシアルキル基、ヒドロキシアリールオキシカルボニルアルキル基、(メタ)アクリルカルボニルオキシエチル基、スチリルカルボニルオキシエチル基、ソルビンカルボニルオキシエチル基、アミド、イミド、ウレタンまたは尿素結合を有するアルキル基、アミン、カルボン酸またはリン酸を有するアルキル基などで示される化合物が挙げられる。
【0012】
具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、n-ヘキサデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-メチル-3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル(4-ヒドロキシブチルビニルエーテルなど)、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテル、2-エトキシエチルビニルエーテル、2-(2-メトキシ)エトキシエチルビニルエーテル、2-(2-エトキシ)エトキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、2-エトキシ-2-エトキシエトキシエチルビニルエーテル、フェノキシエチルビニルエーテル、p-クロロフェノキシビニルエーテル、2-ビニロキシエチルベンゾエート、2-ビニロキシエチル-p-メトキシベンゾエート、2-ビニロキシエチル-p-クロロベンゾエート、2-ビニロキシエチルシナメート、ビニロキシエチルソルベート、ジエチルビニロキシエチルマロネート、ジフェニルビニロキシエチルマロネート、2-ビニロキシエチルフタルイミドなどのビニルエーテル;またはメチルプロペルエーテル、エチルプロペルエーテル、イソプロピルプロペニルエーテル、n-ブチルプロペニルエーテル、イソブチルプロペニルエーテル、シクロヘキシルプロペニルエーテル、n-ヘキサデシルプロペニルエーテル、2-クロロエチルプロペニルエーテル、ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、ヒドロキシプロピルプロペニルエーテル、ヒドロキシブチルプロペニルエーテル、ヒドロキシペンチルプロペニルエーテル、ヒドロキシヘキシルプロペニルエーテル、ベンジルプロペニルエーテル、エトキシエチルプロペニルエーテル、2-エトキシエトキシエチルプロペニルエーテル、2-エトキシ-2-エトキシエトキシエチルプロペニルエーテル、フェノキシエチルプロペニルエーテル、2-プロペニロキシエチルアセテート、2-プロペニロキシエチルベンゾエート、2-プロペニロキシエチル-p-メトキシベンゾエート、2-プロペニロキシエチル-p-クロロベンゾエート、2-プロペニロキシエチルシナメート、プロペニロキシエチルソルベート、ジエチルプロペニロキシエチルマロネート、ジフェニルプロペニロキシエチルマロネート、2-プロペニロキシエチルフタルイミドなどのプロペニルエーテルなどが挙げられる。
また、当該アルケニルエーテルは、1種または2種以上の化合物であってもよい。
【0013】
上記刺激応答性ユニットとしては、好適には下記一般式[I’]:
CHR=CH(O-(R21-O)-R22) [I’]
(式中、Rは、一般式[I]にて示されるものと同義であり、R21は、2価の有機基を示し、R22は、水素原子または炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基を示し、lは、1〜18の整数から選ばれる。)
で表されるアルケニルエーテルに基づく、一般式[II’]:
-[CHR-CH(O-(R21-O)-R22)]- [II’]
(式中、各記号は、一般式[I’]にて示されるものと同義である。)
で表されるユニットが挙げられる。かかるユニットを有する重合体(プレポリマー)およびそれから形成されるミクロスフェアは、特に刺激応答性の高いものとなる。
上記一般式[I’]および[II’]における2価の有機基(R21)としては、式:
-[CH(R23)]-または-[CH(R23)]-X-[CH(R24)]-
(式中、R23およびR24は、互いに独立して、水素原子またはメチル基を示し、
pおよびqは、互いに独立して、1以上の整数であり、好適には2〜6の整数から選ばれ、
Xは、-O-、-S-、-COO-または-OCO-を示す。
ここで、pが2以上の整数である場合、複数のR23は、同一であるか、または異なり、qが2以上の整数である場合、複数のR24は、同一であるか、または異なる。)
で示される基が挙げられる。
また、上記一般式[I’]および[II’]におけるR22としては、好適には水素原子、メチル基、エチル基である。
【0014】
上記一般式[I’]で表されるアルケニルエーテルとしては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
CH=CH(OCH-CH-CH-CH-OH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH)、
CH=CH(OCH-CH(CH)-CH-OH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-O-CH)。
【0015】
なお、上記一般式[I’]で表されるアルケニルエーテルにおいて、R22が水素原子である場合、通常、そのOH基は、重合反応前に、tert-ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、アセトキシ基、ベンゾキシ基などのOH保護基で保護される。次いで、重合反応後、該保護基を酸またはアルカリで脱保護することで、上記一般式[II’]で表されるユニットが得られる。
【0016】
本発明における「架橋性ユニット」とは、上記アルケニルエーテル重合体(プレポリマー)を、分子間架橋性にし得る該重合体の構成ユニットである。例えば、ジアルケニルエーテルに基づくユニットが挙げられる。好適には、一方のアルケニル基がカチオン重合性を有し、他方のアルケニル基がカチオン重合性を有しないジアルケニルエーテルに基づくユニット、例えば、一般式[III]:
CHR=CH(O-R-OCO-CR=CHR) [III]
(式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキレン基を示し、
は、水素原子、メチル基、またはフェニル基を示す。)
で表されるジアルケニルエーテルに基づく、一般式[IV]:
-[CHR-CH(O-R-OCO-CR=CHR)]- [IV]
(式中、各記号は、一般式[III]にて示されるものと同義である。)
で表されるユニットが挙げられる。かかる架橋性ユニットを有するアルケニルエーテル重合体は、コアセルベートの状態で光照射などにより分子間を架橋することができる。
【0017】
上記一般式[III]で表されるジアルケニルエーテルとしては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
CH=CH(O-CH-CH-OCO-C(CH)=CH)、
CH=CH(O-CH-CH-OCO-CH=CH(C))、
CH=CH(O-CH-CH-OCO-CH=CH)。
【0018】
本発明に好適なアルケニルエーテル重合体において、刺激応答性ユニットと、架橋性ユニットのモル比(刺激応答性ユニット/架橋性ユニット)は、1〜100、好適には、3〜40である。
【0019】
本発明において好適なアルケニルエーテル重合体としては、上記一般式[I]で表されるアルケニルエーテルと、上記一般式[III]で表されるジアルケニルエーテルとを共重合することで得られる、下記一般式[V]:
-[CHR-CH(OR)]-[CHR-CH(O-R-OCO-CR=CHR)]- [V]
(式中、mおよびnは、互いに独立して1以上の整数であり、
〜Rは、上記一般式[I]および[III]にて示されるものと同義である。)
で表される共重合体が挙げられ、より好適には、上記一般式[I’]で表されるアルケニルエーテルと、上記一般式[III]で表されるジアルケニルエーテルとを共重合することで得られる、下記一般式[V’]:
-[CHR-CH(O-(R21-O)-R22)]-[CHR-CH(O-R-OCO-CR=CHR)]- [V’]
(式中、m、n、R〜Rは、上記一般式[V]にて示されるものと同義であり、R21、R22およびlは一般式[I’]にて示されるものと同義である。)
で表される共重合体が挙げられる。
なかでも、所定のミクロスフェアを得るためには、ランダム共重合体であることが好適である。
特に、使用される上記一般式[I](好適には[I’])で表されるアルケニルエーテルと、上記一般式[III]で表されるジアルケニルエーテルとのモル比([I]/[III])が、1〜100、好適には3〜40である共重合体が好適である。
【0020】
具体的には、
4-ヒドロキシブチルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体、
2-エトキシエチルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体、
2-メトキシエチルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体、
2-メチル-3-ヒドロキシプロピルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体、
2-(2-メトキシ)エトキシエチルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体
2-(2-エトキシ)エトキシエチルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体、
トリエチレングリコールメチルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体
などが挙げられる。
なお、上記モノマーのうち、OH基を有するものは、通常、OH基がtert-ブチルジメチルシリロキシなどの保護基で保護された状態で共重合される。また、上記の共重合体のなかでも特にそのランダム共重合体が好適である。
【0021】
本発明に使用するアルケニルエーテル重合体は、上記アルケニルエーテルから当該分野で既知の方法、好適にはリビング重合(特にリビングカチオン重合)を使用して製造することができる。例えば、上記アルケニルエーテルから特開2005-154497号公報に記載されたリビングカチオン重合を使用して製造することができる。リビング重合は、得られる重合体の分子量分布が極めて狭く、分子量及び構造を制御することができることから、本発明においては、リビング重合により製造されたアルケニルエーテル重合体を使用することが好適である。
【0022】
本発明に使用するアルケニルエーテル重合体(プレポリマー)の重量平均分子量は、特に限定されないが、好適には500〜1,000,000程度であり、より好適には10,000〜100,000の範囲内である。
また、分子量分布の指標である重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、特に限定されないが、好適にはMw/Mnは1〜2であり、より好適には1〜1.5、さらに好適には1〜1.2である。
【0023】
本発明のミクロスフェアは、上記アルケニルエーテル重合体(プレポリマー)を使用して、好適には、
(1)溶媒中、アルケニルエーテル重合体を凝集させて、コアセルベートを形成させる工程と、
(2)上記コアセルベートの状態で上記アルケニルエーテル重合体の分子間を架橋する工程
を含む、方法により製造することができる。
上記方法に使用するアルケニルエーテル重合体(プレポリマー)は、一種であっても、二種以上であってもよい。また、上記プレポリマーには、本発明の目的を達成することができる限り、例えば、上記プレポリマーと共にミクロスフェアを構成し得るような、他のポリマー、モノマー、添加剤(例えば、架橋剤)などを混合させることもできる。
【0024】
上記方法に使用する溶媒としては、プレポリマーを溶解するが、所定の刺激を与えた場合にプレポリマーのコアセルベートを形成させ得る溶媒であれば特に限定されないが、光照射(例えば、254nmの光)などの架橋処理に対して化学変化を起こさない溶媒が好ましい。
このような溶媒は、使用するプレポリマーに応じて適宜選択することができる。例えば、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づく重合体などの水溶性プレポリマーの場合、水が好適である。また、2-エトキシエチルビニルエーテルに基づく重合体などの疎水性プレポリマーの場合、オクタン、ヘキサン、デカン、ペンタン、ドデカンなどの炭化水素系溶媒などが挙げられ、好適にはオクタンが挙げられる。
また、溶媒中のプレポリマーの濃度は、特に限定されないが、好適には0.01重量%〜20重量%であり、より好適には0.1重量%〜0.5重量%である。
【0025】
上記工程(1)において、上記プレポリマーの溶液を、例えば、石英セルなどの反応容器に入れ、刺激によってプレポリマーを凝集させて、コアセルベートを形成させる。ここで、プレポリマーのコアセルベートを形成させるための刺激は、プレポリマーの少なくとも一つのユニットの性質を変化させる刺激であることが好ましい。すなわち、コアセルベートを形成するように、プレポリマー中の少なくとも一つのユニット(好適には刺激応答性ユニット)の物理的性状(例えば、溶解度など)を変化し得る刺激であることが好ましい。
このような刺激としては、例えば、温度変化、電磁波への暴露、pH変化、濃度変化などが挙げられる。また、刺激は、使用するプレポリマーが応答性を示す刺激に応じて適宜選択することができる。例えば、プレポリマーが、所定の溶媒中において、相転移温度を境に、溶解状態から、コアセルベートを形成し得る凝集(不溶)状態に変化する性質を有する、いわゆる温度応答性ポリマーである場合、刺激としては、プレポリマーが溶解状態にある溶液の温度を、プレポリマーが凝集(不溶)状態になる温度に変化させることが挙げられる。
具体的には、プレポリマーとして4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づく重合体を使用し、溶媒として水を使用した場合、該重合体は、35〜50℃の範囲、好適には40〜45℃の範囲に相転移温度を有し、相転移温度未満の温度では溶解状態となり、相転移温度以上の温度では凝集(不溶)状態になりコアセルベートを形成し得る。また、水は、0〜100℃の範囲で液体であり、この範囲内で溶媒として使用できる。したがって、この場合の刺激としては、0℃以上相転移温度未満の温度(例えば10〜35℃)にあるプレポリマーの水溶液の温度を、相転移温度以上100℃までの温度(例えば50〜100℃)に変化させることが挙げられる。
また、プレポリマーとして2-エトキシエチルビニルエーテルに基づく重合体を使用し、溶媒としてオクタンを使用した場合、該重合体は、35〜50℃の範囲、好適には40〜45℃の範囲に相転移温度を有し、相転移温度を超える温度では溶解状態となり、相転移温度以下の温度では凝集(不溶)状態となりコアセルベートを形成し得る。また、オクタンは、−60〜125℃の範囲で液体であり、この範囲内で溶媒として使用できる。したがって、この場合の刺激としては、相転移温度を超えて125℃までの温度(例えば50〜125℃)にあるプレポリマーの溶液の温度を、相転移温度以下−60℃までの温度(例えば−60〜35℃)に変化させることが挙げられる。
【0026】
上記工程(1)において形成されたプレポリマーのコアセルベートを、コアセルベートの形状を維持した状態で、プレポリマーの分子間を架橋する。これにより刺激応答性のミクロスフェアが製造される。
アルケニルエーテル重合体の分子間の架橋は、当該分野において既知の方法を使用することができるが、迅速に架橋することができることから、好適には光照射が挙げられる。
光照射の条件は、プレポリマーを架橋することができる条件であれば特に限定されないが、例えば、低圧水銀灯を使用して254nmの光を照射して架橋を行う場合、好適には120ワット(W)で10分以上である。また、15ワットで1時間以上とすることもできる。なお、光照射により架橋を行う場合、プレポリマーの溶液を石英セル中に投入し、その中でコアセルベートを形成させ、その状態で光照射を行うことが好ましい。
【0027】
プレポリマーを架橋する際、コアセルベート中に目的物質(例えば、水溶液の場合、疎水性物質)を添加しておくことで、その目的物質をアルケニルエーテル重合体によってカプセル化することができる。すなわち、アルケニルエーテル重合体を含んでなる外壁(殻)と中空を有し、中空内に目的物質が充填されたミクロスフェア(ミクロカプセル)を製造することができる。そのような目的物質としては、例えば、遺伝子、医薬品、化粧品、香料、香辛料、色素および染料からなる群より選択された物質が挙げられる。
【0028】
上記のようにして得られる本発明のミクロスフェアの平均粒径は、特に限定されないが、好適には50nmから1μmの範囲である。また、かかるミクロスフェアの平均粒径は、使用するアルケニルエーテル重合体(プレポリマー)の分子量を変化させることによって変化させることができる。例えば、プレポリマーの分子量を大きくすることで、得られるミクロスフェアの平均粒径を大きくすることができる。
ここでいう平均粒径は、後述するように動的光散乱(DLS)によって解析される流体力学的直径である。
【0029】
本発明のミクロスフェアは、ミクロな化学ゲルであり、種々の目的物質を大量に吸着または内包させることができる。さらに、本発明のミクロスフェアは、刺激応答性を有するアルケニルエーテル重合体(プレポリマー)から構成されているので、刺激応答性を有する。すなわち、刺激に応じて、その物理的性状を変化させることができる。例えば、温度応答性を有するプレポリマーから構成されている場合、該プレポリマーの相転移温度をまたぐ温度変化によって、粒径を10〜90%、好適には25〜50%縮小または拡大させることができる。その結果、吸着または内包された目的物質を放出することができる。例えば、プレポリマーとして4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づく重合体を使用したミクロスフェアの場合、水中において、温度を10〜35℃から50〜100℃に変化させることで、その粒径を25〜50%縮小させることができる。したがって、本発明のミクロスフェアは、目的物質を吸着および/または放出するために使用することができる。ここで、目的物質としては、例えば、環境ホルモン、遺伝子、医薬品、化粧品、香料、香辛料、色素および染料からなる群より選択された物質が挙げられる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、以下の実施例において各測定法は次の方法に従った。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、ポリスチレンゲル換算のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)で測定した[RI検出器、カラム(東ソー(株)製TSKgelカラムMHRMR0047+MHRMR0048)、溶離液はテトラヒドロフラン]。
(2)コアセルベートは光学顕微鏡(オリンパスBX-51)にて温度を変化させて観察した。
(3)ミクロスフェアは、シリコンウエハ上に乗せ、AFMのタッピングモードにより観察した。
(4)ミクロスフェアの平均粒径(流体力学的直径)は、動的光散乱(DLS)(大塚電子(株)製DLS7000)により解析し、決定した。
(5)温度応答性は、紫外可視吸収スペクトルによって確認し、15〜80℃まで昇温・降温速度1℃/分で変化させた場合の本発明のミクロスフェアの物理的変化でもって示した。
【0031】
実施例1
4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づくミクロスフェアの製造
(1)4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づくプレポリマーの合成
三方活栓をつけたガラス反応容器を窒素ガス気流下で加熱し、容器内を十分乾燥させた。窒素雰囲気下、容器内にtert-ブチルジメチルシリロキシブチルビニルエーテル(0.78M)、2-ビニロキシエチルメタクリレート(0.02M)、酢酸エチル(1.0M)、1-イソブトキシエチルアセテート(4mM)およびトルエンを入れ、全体を4.5mLとし、0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMヘキサン溶液0.50mL(20mM)を加えて、重合を開始した。2、4、8、16、22時間後、アンモニア性メタノールを加えて重合を停止した。それぞれのサンプルをa、b、c、d、eとする。各サンプルをジクロロメタンまたはヘキサンで抽出後、有機溶媒をエバポレートし、テトラヒドロフランに溶解させた。次いで、3N-塩酸/エタノール中で6時間攪拌した後、透析し、プレポリマーa、b、c、d、eを得た。
【0032】
上記で得られた4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づくプレポリマーの分子量および分子量分布を、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)にて測定し(図1)、ポリスチレン標準サンプルで分子量を校正した。プレポリマーa、b、c、d、eの数平均分子量は、それぞれ1.4×10、2.0×10、2.9×10、3.6×10、4.1×10であり、分子量分布は、1.14、1.10、1.14、1.08、1.06であった。また、H NMRより、各ポリマー内にはラジカル重合性ユニットが存在し、メタクリル基も未反応のまま存在していることを確認した。
【0033】
(2)4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づくミクロスフェアの製造
石英ガラス性の試験管中に、各プレポリマーa、b、c、d、eの0.5重量%の水溶液を25℃で調製した。この水溶液の温度を50℃以上に上昇させると、水溶液全体が透明から白濁へ変化した。このとき、光学顕微鏡観察を行い、コアセルベートが形成されていることを確認した(図2)。次いで、この水溶液を55℃にし、120Wの低圧水銀灯にて254nmの光を10分間照射した。その結果、プレポリマーa、b、c、d、eから、それぞれ25℃で462nm、554nm、659nm、701nm、810nmの平均粒径を有するミクロスフェアa、b、c、d、eが得られた。
また、プレポリマーeの20重量%の水溶液を、同様に光架橋した結果、25℃で540nmの平均粒径を有するミクロスフェアe’が得られた。
なお、AFM測定により、ミクロスフェアeが球形であることを確認した(図4)。
【0034】
上記で製造したミクロスフェアa、b、c、d、eは、25℃では、それぞれ462nm、554nm、659nm、701nm、810nmの平均粒径であったが、55℃では、それぞれ282nm、242nm、288nm、250nm、250nmであった(ミクロスフェアaの結果を図3に示す)。すなわち、各ミクロスフェアは、温度(刺激)応答性を示した。
【0035】
実験例1
4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づくミクロスフェアのアゾ染料の捕捉
上記実施例1で製造したミクロスフェアeの水懸濁液に、過剰量の疎水性アゾ染料(1,5-ジフェニルカルバゾン、DCZ)を加え、常温で30分攪拌した。この懸濁液の上澄みのUV吸収を測定し(図5)、別途作成した検量線と比較することによって、アゾ染料の捕捉量を決定した。その結果、30℃では、ミクロスフェア1g当たりアゾ染料0.38gが取り込まれていた。また、その懸濁液の温度を60℃に上昇させると、約10分間でミクロスフェア1g当たりアゾ染料0.038gが放出された。このことから、本発明のミクロスフェアは、温度(刺激)によって放出可能な材料であることがわかった。
【0036】
実施例2
4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに基づくビタミンE内包カプセルの製造
石英ガラス性の試験管に、プレポリマーdの0.1重量%の水溶液を25℃で10mL調製した。この水溶液の温度を50℃以上に上昇させると、水溶液全体が透明から白濁へ変化した。このとき、光学顕微鏡観察を行い、コアセルベートが形成されていることを確認した。次いで、この水溶液を55℃にし、エタノール0.79ml中にビタミンE(dl-α-トコフェロール)0.2gを溶解した溶液5.0μlを添加し、120Wの低圧水銀灯にて254nmの光を10分間照射した。その結果、疎水性ビタミンEが紫外可視吸収スペクトルにより確認され(図6)、別途作成した検量線から、プレポリマーのコアセルベート中にビタミンEの全てが内包された後、プレポリマーが架橋されたことが確認された。すなわち、導入したビタミンEが全てカプセル化された。このミクロカプセルは、25℃で720nmの平均粒径を有した。
【0037】
実施例3
2-エトキシエチルビニルエーテルのミクロスフェアの合成
三方活栓をつけたガラス反応容器を窒素ガス気流下で加熱し、容器内を十分乾燥させた。窒素雰囲気下、容器内に2-エトキシエチルビニルエーテル(0.78M)、2-ビニロキシエチルメタクリレート(0.02M)、酢酸エチル(1.0M)、1-イソブトキシエチルアセテート(4mM)およびトルエンを入れ、全体を4.5mLとし、0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMヘキサン溶液0.50mL(20mM)を加えて、重合を開始した。4.5時間後、アンモニア性メタノールを加えて重合を停止した。得られたサンプルをジクロロメタンで抽出後、有機溶媒をエバポレートし、2-エトキシエチルビニルエーテルに基づくプレポリマーを得た。このプレポリマーをオクタンに60℃で溶解させた。この溶液を45℃以下にした場合、コアセルベートの状態になった。次いで、この溶液の温度を30℃にし、120Wの低圧水銀灯にて254nmの光を10分間照射した結果、30℃で750nmの平均粒径を有するミクロスフェアが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のミクロスフェアは、吸着能・放出能を有するミクロスフェアである。したがって、刺激応答性ポリマーを含む高機能材料、例えば医用製材料や化粧品などに応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1における4-ヒドロキシブチルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体の種々の時間での分子量分布を示す図である。
【図2】実施例1における4-ヒドロキシブチルビニルエーテルと2-ビニロキシエチルメタクリレートとの共重合体の水溶液のコアセルベートを光学顕微鏡で観察した図である。
【図3】実施例1で製造したミクロスフェアaの動的光散乱結果を示す図である。
【図4】実施例1で製造したミクロスフェアeのAFM像を示す図である。
【図5】実施例1で製造したミクロスフェアeとアゾ染料DCZの水懸濁液の種々の温度での紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図6】実施例2で製造したビタミンEを内包したカプセルの水溶液の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニルエーテル重合体を含んでなる、ミクロスフェア。
【請求項2】
上記アルケニルエーテル重合体は、刺激応答性ユニットと、架橋性ユニットを含んでなる、請求項1に記載のミクロスフェア。
【請求項3】
上記刺激応答性ユニットは、一般式[I]:
CHR=CH(OR) [I]
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。)
で表されるアルケニルエーテルに基づく、一般式[II]:
-[CHR-CH(OR)]- [II]
(式中、各記号は、一般式[I]にて示されるものと同義である。)
で表されるユニットである、請求項2に記載のミクロスフェア。
【請求項4】
上記一般式[I]で表されるアルケニルエーテルは、一般式[I’]:
CHR=CH(O-(R21-O)-R22) [I’]
(式中、Rは、一般式[I]にて示されるものと同義であり、R21は、2価の有機基を示し、R22は、水素原子または炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキル基を示し、lは、1〜18の整数から選ばれる。)
で表されるアルケニルエーテルである、請求項3に記載のミクロスフェア。
【請求項5】
上記一般式[I’]で表されるアルケニルエーテルは、
CH=CH(OCH-CH-CH-CH-OH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH)、
CH=CH(OCH-CH(CH)-CH-OH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH)、
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH)、または
CH=CH(OCH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-O-CH
である、請求項4に記載のミクロスフェア。
【請求項6】
上記架橋性ユニットは、一般式[III]:
CHR=CH(O-R-OCO-CR=CHR) [III]
(式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数1から18までの直鎖、分岐または環状のアルキレン基を示し、
は、水素原子、メチル基、またはフェニル基を示す。)
で表されるジアルケニルエーテルに基づく、一般式[IV]:
-[CHR-CH(O-R-OCO-CR=CHR)]- [IV]
(式中、各記号は、一般式[III]にて示されるものと同義である。)
で表されるユニットである、請求項2〜5のいずれかに記載のミクロスフェア。
【請求項7】
上記一般式[III]で表されるジアルケニルエーテルは、
CH=CH(O-CH-CH-OCO-C(CH)=CH)、
CH=CH(O-CH-CH-OCO-CH=CH(C))、または
CH=CH(O-CH-CH-OCO-CH=CH)
である、請求項6に記載のミクロスフェア。
【請求項8】
上記アルケニルエーテル重合体の重量平均分子量は、500〜1,000,000であり、かつ、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1〜2である、請求項1〜7のいずれかに記載のミクロスフェア。
【請求項9】
上記アルケニルエーテル重合体は、リビングカチオン重合により合成されたものである、請求項1〜8のいずれかに記載のミクロスフェア。
【請求項10】
中空を有する、請求項1〜9のいずれかに記載のミクロスフェア。
【請求項11】
中空内に目的物質が充填された、請求項10に記載のミクロスフェア。
【請求項12】
目的物質が、遺伝子、医薬品、化粧品、香料、香辛料、色素および染料からなる群より選択された物質である、請求項11に記載のミクロスフェア。
【請求項13】
(1)溶媒中、アルケニルエーテル重合体を凝集させて、コアセルベートを形成させる工程と、
(2)上記コアセルベートの状態で上記アルケニルエーテル重合体の分子間を架橋する工程
を含む、請求項1に記載のミクロスフェアの製造方法。
【請求項14】
上記工程(1)において、上記アルケニルエーテル重合体を構成する少なくとも一つのユニットの性質を変化させることによって、コアセルベートを形成させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれかに記載のミクロスフェアを含んでなる、目的物質を吸着および/または放出するための剤。
【請求項16】
目的物質が、環境ホルモン、遺伝子、医薬品、化粧品、香料、香辛料、色素および染料からなる群より選択された物質である、請求項14に記載の剤。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−54800(P2007−54800A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246472(P2005−246472)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(599100198)財団法人 滋賀県産業支援プラザ (12)
【Fターム(参考)】