説明

アルコキシクリレン化合物による、レチノイドの光安定化作用

光安定化させる電子励起状態エネルギー(特に、レチノイド化合物からの一重項状態エネルギー)は、化学式(I)を有するフェニル環上のうちの1つの4(パラ)配位にあるアルコキシラジカル(本明細書中以下「アルコキシクリレン」)を有するα−シアノジフェニルアクリレート化合物に容易に移動する(によって受容される)ことが分かっている。



ここで、R1およびR2のうち1つは直鎖または分枝鎖C1−C30アルコキシラジカルであり、好適にはC1−C8であり、より好適にはメトキシであり、非アルコキシラジカルR1またはR2は水素であり、R3は直鎖または分枝鎖C1−C30アルキルラジカルであり、好適にはC2−C20である。前記化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、組成物中のレチノイド化合物の光安定性を少なくとも3倍およびさらには10倍以上も有意に増加させる。前記アルコキシクリレン化合物が有する、前記レチノイド化合物を安定化させる能力は濃度依存性であるため、レチノイド光安定化作用の量は、前記アルコキシクリレン化合物の濃度と共に増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願番号第11/891,281号(出願日:2007年8月9日)の部分継続である米国特許出願番号第12/022,758号(出願日:2008年1月30日)の部分継続であり、本出願中、同文献の開示内容全体を参考のため援用する。
【背景技術】
【0002】
レチノイドは、化合物の一種であり、構造的にビタミンAに関連している。レチノイド化合物は、体内における重要かつ多様な機能を有している(例えば、視覚、細胞増殖および分化の制御、骨組織の成長、免疫機能、ならびに腫瘍抑制遺伝子の活性化における役割)。レチノイド化合物は、皮膚癌の治療としても研究されている。例えば、9−シス−レチノイン酸は、カポジ肉腫に起因する皮膚病変の治療の支援に局所的に用いられる。
【0003】
レチノイド化合物は、頭尾様態で結合した4つのイソプレノイド単位からなる。レチノイド化合物の基本構造は、環状末端基と、ポリエン側鎖と、極性末端基とを含む。ポリエン側鎖の共役(すなわち、一重結合および二重結合が交互に続く)によって、レチノイド化合物の色が決定され(典型的には、黄色、オレンジ色または赤色)、また、当該レチノイド化合物の発色団として機能する能力も決定される。これらの化合物の側鎖および極性末端基が変化すると、異なる種類のレチノイド化合物が発生する。
【0004】
レチノイド化合物は、3世代に分類される。第1世代および第2世代のレチノイド化合物は、そのポリエン側鎖によって付与される柔軟性に起因して、いくつかのレチノイド受容体に結合することができる。第3世代のレチノイド化合物は、第1世代および第2世代のレチノイド化合物よりも柔軟性が低く、より少数のレチノイド受容体と相互作用する。レチノイド化合物の例を表1中に示す。
【表1】

【0005】
イソトレチノイン(13シスレチノイン酸)は、抗炎症作用および抗癌作用を備えたレチノイド化合物である。この作用は、ベータレチノイン酸受容体およびアルファレチノイン酸受容体(RAR−β、RAR−α)を通じて媒介される。イソトレチノインは、サイトカイン刺激性マウスメサンギウム細胞中のiNOS発現および活性を低減させ、ミトコンドリア膜透過性遷移を誘発する。ミトコンドリア膜透過性遷移は、腫れおよび膜電位低下として観察される。イソトレチノインはまた、シトクロムcのアポトーシス経路を通じた放出を刺激する。これらの活性は、EGTAおよびシクロスポリンAによって逆転する。イソトレチノインはまた、部分的に転写増加を介してMMP−1タンパク質発現を増加させる。イソトレチノインは、経口抗ニキビ薬剤および局所抗ニキビ薬剤と、日焼けで傷んだ皮膚の治療に用いられる局所薬剤とにおいて用いられる。
【0006】
レチノールは、内因性レチノイド化合物であり、視覚、骨成長、生殖、上皮細胞の成長、および感染抵抗を支援する。レチノールがセルに取り込まれると、レチノールは酸化してレチナールとなり、レチナールがさらに酸化してレチノイン酸となる。レチノイン酸は、RARおよびレチノイドX受容体(RXR)双方に対するリガンドとして機能する。レチノールは、正常な皮膚の健康を維持する機能があるものとされ、年齢を重ねた皺の多い皮膚の治療のための高価な消費者製品において用いられることが多い。
【0007】
トレチノインは、ニキビを治療することと、光による老化(すなわち、日焼けによる損傷)に起因する皮膚の変化をいくらか逆行させることが認められている。長期間用いられた場合、トレチノインは、小じわ、そばかす、面皰(ホワイトヘッドおよびブラックヘッド)、ならびに日光角化症(乾燥肌のシミ)をいくらか低減することができる。長期利用により、トレチノインは、有害なUVB光線およびUVA光線から皮膚を保護する(Bhawanら、1996年)。
【0008】
局所レチノイド化合物の使用に際し、患者に対し、日光に当たる際、予防的な、健康習慣を取り入れるようアドバイスすべきである。太陽からの有害光線は、雲およびさらにはガラスを通過し得る。そのため、窓際で働く人や車に乗る人にも、有害光線にあたるリスクがある。日焼け止め剤は、UV光による有害な影響から皮膚を保護するための代表的方法と考えられており(Leyden、2003年)、アヴォベンゾンなどを主成分とする広域スペクトル(UVB/UVA)日焼け止め剤によって、主な保護機能が得られている。日焼け止め剤は、曇りの日および冬の間も毎日塗布する必要がある。患者は、太陽にあたる30分前に適切な日焼け止め剤を露出皮膚領域に塗って保護し、その後も塗り直しを行って確実に保護できるようにする必要がある。日焼け止め剤を1日に1回塗っただけでは不十分である場合が多く、日焼け止め剤は1日を通して塗り直す必要がある。厳しい天候に晒される場合、日焼け止め剤を2時間おきに塗ることが推奨され、汗をかく場合または水泳をする場合は、上記以上の頻度で塗ることが推奨される。実行可能な場合、太陽光がピークになる時間(午前10時〜午後4時)は避けるべきであり、患者は可能であれば日陰を探すべきである。日焼け止め用のリップクリームも有用である。太陽にあたる時間が長くなると予測される場合(例えば、休暇中)、太陽にあたる1週間前からは局所レチノイド化合物の使用を中断する必要があり、戻った後に使用を再開する必要がある。
【0009】
レチノイド化合物の臨床用途(特に局所的に、本明細書中に記載の抗ニキビ用途、アンチエイジング用途、および皺低減用途)の1つの主要な欠点として、共役ポリエン尾が光に対して高い反応度を有する点がある。紫外線が発色団含有有機分子によって吸収されると、発色団部分中の電子が励起し、初期に占有されている低エネルギー軌道からより高エネルギーの以前は占有されていない軌道へ変化する。吸収された光子のエネルギーによって電子が活性化され、その結果、電子はより高エネルギーの軌道へと「ジャンプ」する(Turro、Modern Molecular Photochemistry、1991年を参照)。2つの励起電子状態が、UV光吸収によって発生した電子軌道構成から得られる。1つの状態においては、電子スピンは対をなし(逆平行)、他方の状態において、電子スピンは不対となる(平行)。スピンが対の状態においては、スピン磁気モーメントは発生しないが、スピンが不対の状態では、ネットスピン磁気モーメントを有する。スピンが対の状態は、磁界の存在下において単一の状態のままであり、一重項状態と呼ばれる。スピンが不対の状態は、磁界と相互作用して、3つの量子化状態に分かれ、三重項状態と呼ばれる。
【0010】
電子的励起状態において、発色団含有有機分子は、複数の既知の経路を介して劣化し易いため、ほとんどあるいは全くUV光を吸収できなくなる場合がある。十分なUV保護を提供するために、電子的励起発色団含有有機分子を光安定化するためには、電子的励起発色団含有有機分子が有するUV吸収能にとって有害な光化学反応を前記分子が起こす前に、前記分子を基底状態に戻す必要がある。励起三重項状態エネルギーをクエンチすることが可能である、公知の光安定化日焼け止め剤用添加剤が存在している(例えば、オクトクリレン、メチルベンジリデンカンファー、ならびに本譲受人の米国特許番号第6,113,931号、6,284,916号、6,518,451号、および6,551,605号のナフタレンジカルボン酸のエステルまたはポリエステル)。上記文献をここに参考のため援用する。本譲受人の係属中の出願(シリアル番号第11/891,281号および12/022,758号(それぞれ出願日は2007年8月9日および2008年1月30日)、上記文献をここに参考のため援用する)中に記載されているように、アルコキシクリレン(特に、メトキシクリレン)は、発色団含有有機分子(特に、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(アヴォベンゾン)、メトキシケイ皮酸オクチル(オクチノキサート)およびサリチル酸オクチル(オクチサレート)を電子的励起一重項状態および励起三重項状態の両方から基底状態へと戻し、これによりUV吸収有機分子を光安定化させることが分かっている。
【0011】
レチノイド化合物に光が当てられると、レチノイド化合物も、複数の経路(例えば、望ましくない異性化反応、光付加/置換反応、および付加環化)を介して光分解する。このような経路は全て、レチノイドの完全性と、レチノイドの意図される機能を行う能力とを破壊する。例えば、イソトレチノインは通常は、ピークが366nmの紫外線放射を強力に吸収する(ε=44、000)(図1)。イソトレチノインに5MED(105mJ/cm2)のUVを照射した場合(これは、太陽光への1時間の露出に等しい)、イソトレチノイン量が有意に低下する(図2)。
【0012】
局所レチノイド化合物およびレチノイド化合物を含有する組成物を臨床目的に開発および利用した場合、このレチノイド化合物の光安定性は極めて問題となる。局所レチノイド化合物含有生成物中に発生する光分解量を低減するためには、レチノイド生成物の製造を暗環境または特殊な照明条件下において行う必要があり、レチノイド生成物の包装も光速で行う必要がある。また、レチノイド化合物含有生成物を暗環境中で製造し、光速包装中に保存したとしても、レチノイド化合物含有生成物を皮膚に塗ったとたん、レチノイド化合物含有生成物はすぐに分解し、そのため、レチノイド生成物の効果が無くなる。
【発明の概要】
【0013】
光安定化させる電子励起状態エネルギー(特に、UV吸収分子からの一重項状態エネルギー)は、化学式(I)を有するフェニル環のうちの1つの上の4(パラ)配位にあるアルコキシラジカル(本明細書中以下「アルコキシクリレン」)を有するα−シアノジフェニルアクリレート化合物に容易に移動される(によって受容される)ことが分かっている。

ここで、R1およびR2のうち1つは、直鎖または分枝鎖C1−C30アルコキシラジカルであり、好適にはC1−C8であり、より好適にはメトキシであり、非アルコキシラジカルR1またはR2は水素であり、R3は、直鎖または分枝鎖C1−C30アルキルラジカルであり、好適にはC2−C20である。
【0014】
驚くべきことに、本明細書中に記載の化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、組成物中のレチノイド化合物の光安定性を少なくとも3倍およびさらには10倍以上も有意に増加させることが分かっている。アルコキシクリレン化合物が有する、レチノイド化合物を安定化させる能力は濃度依存性であるため、レチノイド光安定化作用の量は、アルコキシクリレン化合物の濃度と共に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1および図2は、5MED(105mJ/cm2)のUV照射(290〜400nm)への暴露前(図1)および暴露後(図2)の、シクロヘキサン中の0.05%イソトレチノイン(10ppm)を含有する組成物のUV吸収度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中、範囲を表す際、「約」または「およそ」の1つの特定の値からおよび/または「約」または「およそ」の別の特定の値へとして表す場合がある。このような範囲を表す場合、別の実施形態において、1つの特定の値からおよび/または他方の特定の値の範囲が含まれる。同様に、値を近似によって表す場合、「約」の後に値を記載することで、この特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。
【0017】
本明細書中、「アルコキシ」という用語は、化学式O−Rを有するフェニル環のうち1つまたは両方のパラ配位から延びるラジカルを指し、ここで、Rは、アルキルラジカル、1〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖であり、好適には、R=C1〜C8であり、より好適にはC2−C20であり、最も好適には−O−CH3(メトキシ)である。アルコキシラジカルの酸素原子は、好適には化学式(II)または(III)を有するフェニル環の1つまたは両方(好適には、フェニルのうち1つのみ)のパラ炭素原子に共有結合する。

または

ここで、R3は、直鎖または分枝鎖C1−C30アルキルラジカルであり、好適にはC2−C20である。
【0018】
本明細書中用いられる「クリレン」とは、色素体部分を指し、α−シアノ−β,β−ジフェニルプロパン酸エステルを含む。
【0019】
本明細書中用いられる「シアノ」とは、−C≡N基を指し、「−CN」とも表記される。
【0020】
「最小紅斑量」(MED)という用語は、暴露後24時間後に紅化を発生させる最小量のUVBである(1MED=21mJ/cm2)。MEDが5である場合、太陽に約1時間あたったことに相当する。
【0021】
本明細書中用いられる略語の定義を表2中に示す。
【表2】

【0022】
皮膚治療(例えば、抗ニキビまたは皺低減治療)のための、1つ以上のレチノイド化合物を含む組成物は、皮膚科学的に受容可能なキャリア中のUV−AおよびUV−B光活性化合物も有利に含むことが多く、必要に応じて添加剤(例えば、皮膚軟化剤、安定剤、乳化剤、およびこれらの組み合わせ)を含む。これらの添加剤を用いて、1つ以上の光活性化合物を含む組成物および1つ以上の有機溶媒および水を含む溶媒または溶媒組み合わせから、エマルジョン(水中油型または油中水型)形態の、1つ以上のレチノイド化合物を含有するUVフィルタ組成物を作製することができる。作製時においては、前記エマルジョンは好適には水中油型(O/W)エマルジョンであり、油相は、前記UVフィルタ化合物(単数または複数)および1つ以上の有機溶媒の混合物から主に形成される。
【0023】
前記レチノイド化合物含有組成物は、有利なことに、前記レチノイド化合物(単数または複数)に加えて、1つ以上の光活性化合物を含む。前記光活性化合物(単数または複数)は、UV照射を吸収するよう機能する。この吸収プロセスに起因して、光活性化合物は励起状態となる。前記励起状態は、前記光活性化合物の基底状態と比較して、励起電子エネルギー(例えば、一重項状態エネルギーまたは三重項状態エネルギー)の存在により、特徴付けられる。光活性化合物が励起状態に達すると、複数の経路が発生する。これら複数の経路を介して、前記励起光活性化合物は、余分なエネルギー(例えば、一重項および/または三重項エネルギー)を放散することができる。しかし、これらの経路のうちの多くは、前記光活性化合物を破壊し、その結果、前記光活性化合物が意図した目的を果たせなくなる。本明細書中に記載のアルコキシクリレン化合物は、レチノイド化合物およびアヴォベンゾン、メトキシケイ皮酸オクチル(オクチノキサート)、サリチル酸オクチル(オクチサレート)、およびこれらの組み合わせから電子一重項励起状態エネルギーを受容する。前記アルコキシクリレンはまた、日焼け止め組成物中の他のUV吸収化合物をクエンチする電子一重項状態エネルギーを提供することに加えて、極めて有効なUVA吸収体でもある。本譲受人の係属出願(シリアル番号第11/891,281号および12/022,758号(出願日:2007年8月9日および2008年1月30日))に記載のように、本明細書中に記載のアルコキシクリレン分子は、1つ以上のさらなる電子一重項励起状態クエンチ化合物(例えば、オキシベンゾン)と組み合わされた場合、特に有効な光安定化剤となる。特に驚くべき光安定化作用が、本明細書中に記載のアルコキシクリレン化合物をメトキシケイ皮酸オクチルおよびアヴォベンゾンと共に含む日焼け止め組成物において、達成される。メトキシケイ皮酸オクチルおよびアヴォベンゾンは全て、単独で用いた場合であってもあるいは化学式(I)のアルコキシクリレン化合物および本明細書中に記載のような1つ以上のレチノイド化合物と組み合わせた場合でも、有用である。
【0024】
光活性化合物とは、光に対して光電的に反応するもののことである。本明細書中開示されるようなレチノイド化合物含有組成物および光安定化方法において、光活性化合物とは、UV照射に対して光電的に反応するもののことである。例えば、光活性化合物の光分解によってUV照射に対して光電的に反応する光活性化合物含有組成物は全て、本明細書中に記載のアルコキシクリレン分子を含有することにより、大きな恩恵を受ける。本明細書中に記載のアルコキシクリレンは、Shaath,Nadim,Encyclopedia of UV filters、c2007(同文献を参考のため援用する)に記載されている任意の単一の光活性化合物または光活性化合物の組み合わせと組み合わされた場合、有用な光安定化剤および/または光活性化合物となる。全てのUVフィルタは、UV照射に晒された際に電子一重項励起状態に達するため、光安定性は全てのUVフィルタにとって問題となる。
【0025】
レチノイド化合物を光安定化させることに加え、化学式(I)の化合物は、レチノイド化合物含有組成物中に含まれる以下のUVフィルタも光安定化させると理論化される。前記レチノイド化合物含有組成物は、以下のもの全てを含み、任意の2つ以上の組み合わせを含み、以下のカテゴリー(具体例を含む)から選択された以下のような化合物を含む:p−アミノ安息香酸、その塩およびその誘導体(エチル、イソブチル、グリセリルエステル;p−ジメチルアミノ安息香酸)、アントラニル酸塩(o−アミノ安息香酸塩;メチル、メンチル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、リナリル、テルピニル、およびシクロヘキセニルエステル)、サリシレート(オクチル、アミル、フェニル、ベンジル、メンチル(ホモサラート)、グリセリル、およびジプロピレングリコールエステル)、ケイ皮酸誘導体(メンチルおよびベンジルエステル、アルファ−フェニルケイ皮酸ニトリル;ブチルシンナモイルピルビン酸塩)、ジヒドロキシケイ皮酸誘導体(ウンベリフェロン、メチルウンベリフェロン、メチルアセト−ウンベリフェロン)、カンファー誘導体(3ベンジリデン、4メチルベンジリデン、ポリアクリルアミドメチルベンジリデン、ベンザルコニウムメトサルフェート、ベンジリデンカンファースルホン酸、およびテレフタリリデンジカンフルスルホン酸)、トリヒドロキシケイ皮酸誘導体(エスクレチン、メチルエスクレチン、ダフネチン、および前記グルコシド、エスクリンおよびダフニン)、炭化水素(ディフェニルブタジエン、スチルベン)、ジベンザルアセトン、ベンザルアセトフェノン、ナフトールスルホン酸塩(2−ナフトール−3,6−ジスルホンおよび2−ナフトール−6,8−ジスルホン酸のナトリウム塩)、ジヒドロキシ−ナフトエ酸およびその塩、o−およびp−ヒドロキシジフェニル二硫酸塩、クマリン誘導体(7−ヒドロキシ、7−メチル、3−フェニル)、ジアゾール(2−アセチル−3−ブロモインダゾール、フェニルベンゾオキサゾール、メチルナフトオキサゾール、多様なアリールベンゾチアゾール)、キニーネ塩(重硫酸塩、硫酸塩、塩化物、オレイン酸塩、およびタンニン酸塩)、キノリン誘導体(8−ヒドロキシキノリン塩、2−フェニルキノリン)、ヒドロキシ−またはメトキシ置換ベンゾフェノン、尿酸誘導体、ビロ尿酸誘導体、タンニン酸およびその誘導体、ハイドロキノン、およびベンゾフェノン(オキシベンゾン、スリソベンゾン、ジオキシベンゾン、ベンゾレゾルシノール、オクタベンゾン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エトクリレン、および4−イソプロピル−ジベンゾイルメタン)。
【0026】
レチノイド化合物含有組成物中に含まれる以下のUVフィルタは、本明細書中に記載のアルコキシクリレン分子により、特に光安定化されるべきである:2−エチルヘキシルp−メトキシシンナメート、4,4’−t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルジメチルp−アミノ安息香酸塩、ジガロイルトリオレイン酸塩、エチル4−[ビス(ヒドロキシプロピル)]アミノ安息香酸塩、2−エチルヘキシルサリシレート、グリセロールp−アミノ安息香酸塩、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリシレート、およびこれらの組み合わせ。
【0027】
本明細書中開示される光活性レチノイド化合物含有組成物は、多様なさらなる光活性化合物(好適には、1つ以上のUV−A光活性化合物および1つ以上のUV−B光活性化合物を含む)を含み得る。好適には、レチノイド化合物含有組成物は、p−アミノ安息香酸および塩およびその誘導体、アントラニル酸塩およびその誘導体、ジベンゾイルメタンおよびその誘導体、サリシレートおよびその誘導体、ケイ皮酸およびその誘導体、ジヒドロキシケイ皮酸およびその誘導体、カンファーおよび塩およびその誘導体、トリヒドロキシケイ皮酸およびその誘導体、ジベンザルアセトンナフトールスルホン酸塩および塩およびその誘導体、ベンザルアセトフェノンナフトールスルホン酸塩および塩およびその誘導体、ジヒドロキシ−ナフトエ酸およびその塩、o−ヒドロキシジフェニル二硫酸塩および塩およびその誘導体、p−ヒドロキシジフェニル二硫酸塩および塩およびその誘導体、クマリンおよびその誘導体、ジアゾール誘導体、キニーネ誘導体およびその塩、キノリン誘導体、尿酸誘導体、ビロ尿酸誘導体、タンニン酸およびその誘導体、ハイドロキノン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートおよび塩およびその誘導体、ならびに上記の組み合わせからなる群から選択された光活性化合物も含む。
【0028】
UVA照射(約320nm〜約400nm)は、皮膚(特に、色白の皮膚または敏感な皮膚)へのダメージを引き起こす一因として知られている。レチノイド化合物含有日焼け止め組成物好適には、UV−A光活性化合物を含む。好適には、レチノイド化合物含有日焼け止め組成物は、ジベンゾイルメタン誘導体UV−A光活性化合物を含む。好適なジベンゾイルメタン誘導体を挙げると、2−メチルジベンゾイルメタン、4−メチルジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−tert−ブチルジベンゾイルメタン、2,4−ジメチルジベンゾイルメタン、2,5−ジメチルジベンゾイルメタン、4,4’−ジイソプロピルジベンゾイルメタン、4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−イソプロピル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2,4−ジメチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、およびこれらの組み合わせがある。
【0029】
米国内で市販される製品の場合、好適な皮膚科学的に受容可能な光活性化合物および濃度(化粧品用日焼け止め組成全量に対する重量パーセントとして報告されている)を挙げると、アミノ安息香酸(パラアミノ安息香酸およびPABAとも呼ばれる、15%以下)、アヴォベンゾン(ブチルメトキシジベンゾイルメタンとも呼ばれる、3%以下)、シノキサート(2エトキシエチルpメトキシシンナメートとも呼ばれる、3%以下)、ジオキシベンゾン(ベンゾフェノン8とも呼ばれる、3%以下)、ホモサラート(3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリシレートとも呼ばれる、15%以下)、メンチルアントラニル酸塩(メンチル2アミノ安息香酸塩とも呼ばれる、5%以下)、オクトクリレン(2エチルヘキシル2シアノ3,3ジフェニルアクリレートとも呼ばれる、10%以下)、オクチルメトキシシンナメート(7.5%以下)、オクチルサリシレート(2エチルヘキシルサリシレートとも呼ばれる、5%以下)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン3とも呼ばれる、6%以下)、パジマートO(オクチルジメチルPABAとも呼ばれる、8%以下)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(水溶性、4%以下)、スリソベンゾン(ベンゾフェノン4とも呼ばれる、10%以下)、二酸化チタン(25%以下)、トロラミンサリチル塩(トリエタノールアミンサリシレートとも呼ばれる、12%以下)、および酸化亜鉛(25%以下)がある。
【0030】
他の好適な皮膚科学的に受容可能な光活性化合物および好適な濃度(化粧品用日焼け止め組成全量に対する重量パーセント)を挙げると、ジエタノールアミンメトキシシンナメート(10%以下)、エチル−[ビス(ヒドロキシプロピル)]アミノ安息香酸塩(5%以下)、グリセリルアミノ安息香酸塩(3%以下)、4イソプロピルジベンゾイルメタン(5%以下)、4メチルベンジリデンカンファー(6%以下)、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸(10%以下)、およびスリソベンゾン(ベンゾフェノン4とも呼ばれる、10%以下)がある。
【0031】
欧州連合内で市販される製品の場合、好適な皮膚科学的に受容可能な光活性化合物および好適な濃度(化粧品用日焼け止め組成全量に対する重量パーセントとして報告される)を挙げると、PABA(5%以下)、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート(6%以下)、ホモサラート(10%以下)、ベンゾフェノン3(10%以下)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(8%以下、酸として示される)、テレフタリデンジカンフルスルホン酸(10%以下、酸として示される)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(5%以下)、ベンジリデンカンファースルホン酸(6%以下、酸として示される)、オクトクリレン(10%以下、酸として示される)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー(6%以下)、エチルヘキシルメトキシシンナメート(10%以下)、PEG 25 PABA(10%以下)、イソアミルpメトキシシンナメート(10%以下)、エチルヘキシルトリアゾン(5%以下)、ドロメトリゾールトリエルオキサン(15%以下)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(10%以下)、4メチルベンジリデンカンファー(4%以下)、3ベンジリデンカンファー(2%以下)、エチルヘキシルサリシレート(5%以下)、エチルヘキシルジメチルPABA(8%以下)、ベンゾフェノン4(5%、酸として示される)、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(10%以下)、二ナトリウムフェニルジベンズイミダゾールテトラスルホナート(10%以下、酸として示される)、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェノールトリアジン(10%以下)、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(10%以下、TINOSORB Mまたはビソクトリゾールとも呼ばれる)、およびビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(10%以下、TINOSORB Sまたはベモトリジノールとも呼ばれる)がある。
【0032】
上記したUVフィルタは全て、市販されている。例えば、適切な市販されている有機UVフィルタは、以下の表中の商標名および供給業者により、特定される。

【0033】
本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,485,713号および6,537,529号(本明細書中、同文献の開示内容を参考のため援用する)中に、例えば組成の油相に極性溶媒を付加することにより、日焼け止め組成中の光活性化合物の光安定性を増加させる組成および方法についての記載がある。本明細書中記載されるアルコキシクリレン(例えばメトキシクリレン)を含むレチノイド化合物含有日焼け止め組成物の油相の極性を増加させることにより、オクトクリレンと比較して、前記レチノイド化合物含有日焼け止め組成物の安定性が驚くほど増加する。前記レチノイド化合物含有日焼け止め組成物において、好適には、前記組成物の油相中に1つ以上の高極性溶媒が存在する。好適には、前記レチノイド化合物含有日焼け止め組成物中には、前記組成の油相の誘電率を少なくとも約7(好適には少なくとも約8)に増加させるために、十分な量の極性溶媒が存在する。前記油相中に高極性溶媒が有っても無くても、本明細書中記載のアルコキシクリレン分子(例えば、メトキシクリレン)は、オクトクリレンと比較して、予期しないほどの光安定性を生み出す。
【0034】
本発明の譲受人に譲渡された係属出願(シリアル番号第11/891,281号および12/022,758号(出願日:2007年8月9日および2008年10月30日)それぞれにおいて、光子励起光活性化合物を光安定化する方法についての記載がある。この光子励起光活性化合物は、日焼け止め組成物中においてUV照射を受けると、一重項励起状態となる。前記方法は、(1)前記光活性化合物を化学式(I)の化合物と混合する工程であって、

1およびR2のうち1つは直鎖または分枝鎖C1−C12アルコキシラジカルであり、前記非アルコキシR1またはR2は水素であり、R3は直鎖または分枝鎖C1−C24アルキルラジカルである、工程と、(2)前記混合物を前記光活性化合物が電子一重項励起状態となるのに十分な量のUV照射に暴露する工程とを含む。化学式(I)の化合物は、前記励起光活性化合物から前記一重項励起状態エネルギーを受容することで、前記光活性化合物を基底状態に戻し、これにより、前記光活性化合物のUV吸収能にとって有害な光化学反応を前記光活性化合物が起こす前に、前記光活性化合物がさらなるUV照射を吸収できるようにする。よって、前記光子励起光活性化合物からの一重項励起状態エネルギーが前記光子励起光活性化合物から化学式(I)の化合物へと移動することでクエンチされ、これにより、前記光活性化合物を光安定化させる。
【0035】
光活性化合物は、例えば30MED照射後に、或る波長においてまたは対象波長範囲にわたって(例えば、光活性化合物がピーク吸光度を有する波長(例えば、イソトレチノインの場合290〜400nm))、その元々の吸光度の少なくとも約90%を保持しているとき、安定したものとみなすことができる。同様に、レチノイド化合物含有組成物は、複数の光活性化合物を含むことができる。レチノイド化合物含有組成物は、全体として、例えば30MED照射後に、前記レチノイド化合物含有組成物が1つ以上の対象波長において(例えば、主要光活性化合物のピーク吸光度波長においてまたはその近隣において)、その元々の吸光度の少なくとも約90%を保持しているとき、安定したものとみなすことができる。
【0036】
驚くべきことに、本明細書中に記載の化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、組成物中のレチノイド化合物の光安定性を少なくとも3倍およびさらには10倍以上も予想外かつ有意に増加させることが分かっている。前記アルコキシクリレン化合物が有する、レチノイド化合物を安定化させる能力は濃度依存性であるため、レチノイド光安定化作用の量は、アルコキシクリレン化合物の濃度と共に増加する。例えば、0.1%のレチノールおよび1%または4%のエチルヘキシルメトキシクリレンを含む組成物中に残留するレチノールのパーセンテージは、6×5MEDでの照射後においてそれぞれ70%および99%であった。
【0037】
驚くべきことに、本明細書中に記載の化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、レチノイド化合物の安定化において、一般的に利用されている光安定化剤であるオクトクリレン(OC)よりも予想外により有効であることも分かっている。例えば、0.10%のレチノールおよび4%のエチルヘキシルメトキシクリレンを含む組成物中に残留するレチノールのパーセンテージは、6×5MEDでの照射後において99%であったのに対し、0.10%のレチノールおよび4%のオクトクリレンを含む組成物中に残留するレチノールのパーセンテージはわずか78%であった。
【0038】
1つの重要な実施形態によれば、化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、日焼け止めまたは皮膚用組成物中においてレチノイド化合物と組み合わされる。本発明に従って有利に用いられるレチノイド化合物のグループは、全ての皮膚科的におよび/または薬学的に受容可能なレチノイド化合物(例えば、レチノールおよびそのエステル、レチナールおよびまたレチノイン酸(ビタミンA酸)およびそのエステル)を含むものとして定義される。レチノイド化合物の例を挙げると、レチノール、レチナール、イソトレチノイン、トレチノイン、アリトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、ベキサロテン、タザロテン、アダパレン)がある。特定の実施形態において、前記レチノイド化合物は、イソトレチノインおよびレチノールからなる群から選択される。
【0039】
最終レチノイド化合物含有組成物中のレチノイド化合物の総量は、約0.001重量%〜約5重量%、好適には約0.005重量%〜約1重量%(例えば、約0.01重量%〜約0.5重量%)の範囲から選択され、各場合において、当該組成物の総重量に基づく。
【0040】
前記アルコキシクリレン化合物は、化学式(I)の化合物であり、

ここで、R1およびR2のうち1つは、直鎖または分枝鎖C1−C12アルコキシラジカルであり、非アルコキシR1またはR2は水素であり、R3は直鎖または分枝鎖C1−C24アルキルラジカルである。特定の実施形態において、化学式(I)の化合物は、エチルヘキシルメトキシクリレン(EHMC、IV)である。

別の特定の実施形態において、化学式(I)の化合物は、ブチルオクチルメトキシクリレン(BOMeOC、V)である。

【0041】
最終レチノイド化合物含有組成物中の前記アルコキシクリレン化合物の総量は、約0.01重量%〜約20重量%、好適には約0.1〜約10重量%(例えば、約0.1%〜約5重量%)の範囲から選択され、各場合において、当該組成物の総重量に基づく。
【0042】
前記アルコキシクリレン化合物の、最終レチノイド化合物含有組成物中のレチノイド化合物に対するモル比は、約0.001〜約1(好適には、約0.005〜約0.1(例えば、約0.01〜約0.06))である。
【0043】
別の実施形態によれば、化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、日焼け止め剤または皮膚用組成物中において、水溶性UVフィルタ化合物および/または広帯域フィルタ化合物と組み合わされ、必要に応じてそして好適には、ジベンゾイルメタン誘導体および/またはジアルキルナフタレートと組み合わされる。
【0044】
本発明の目的のための有利な水溶性UVフィルタ物質は、スルホン酸化UVフィルタであり、詳細には、以下である。
フェニレン−1,4−ビス(2−ベンゾイミダジル)−3,3’−5,5’−テト
ラスルホン酸、これは、以下の構造を有する

およびその塩、特に、対応するナトリウム、カリウムまたはトリエタノールアンモニウム塩、詳細にはフェニレン−1,4−ビス(2−ベンゾイミダジル)−3,3’−5,5’−テトラスルホン酸ビスナトリウム塩

INCI名称はジソジウムフェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸(CAS No.:180898-37-7)であり、これは、例えばNeo Heliopan APという商標名でHaarmann&Reimerから入手可能である。
【0045】
本発明の目的のためのさらなる有利なスルホン酸化UVフィルタは、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸の塩(例えば、そのナトリウム、カリウムまたはそのトリエタノールアンモニウム塩、およびスルホン酸そのもの)である。

【0046】
INCI名称はフェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(CAS No.27503−81−7)であり、これは、Eusolex232という商標名でMerckからあるいはNeo Heliopan Hydroという商標名でHaarmann&Reimerから入手可能である。
【0047】
本発明の目的のためのさらなる有利な水溶性UV−Bおよび/または広帯域フィルタ物質は、例えば、3−ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体(例えば、4−(2−オキソ−3−ボルニリデンメチル)ベンゼン−スルホン酸、2−メチル−5−(2−オキソ−3−ボルニリデンメチル)スルホン酸およびその塩)である。
【0048】
最終レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物中の1つ以上の水溶性UVフィルタ物質の総量は、約0.01重量%〜約20重量%(好適には、約0.1〜約10重量%)から有利に選択される。
【0049】
別の実施形態によれば、化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、日焼け止めまたは皮膚用組成物中において、ヒドロキシベンゾフェノン化合物および/または広帯域フィルタ化合物と組み合わされ、必要に応じてそして好適には、ジベンゾイルメタン誘導体および/またはジアルキルナフタレートと共に用いられる。
【0050】
アルコキシクリレンを利用することにより、他のUV安定剤の利用(詳細には、エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(オクトリクレン)または4−メチルベンジリデンカンファーの利用)を完全に不要とすることが可能となる。
【0051】
ヒドロキシベンゾフェノンは、以下の構造化学式により、特徴付けられる。

ここで、R1およびR2は、相互に独立し、水素、C120−アルキル、C3−C10−シクロアルキルまたはC3−C10−シクロアルケニルであり、置換基R1およびR2は、置換基R1およびR2が結合する窒素原子と共に、5−または6−連鎖を形成することができ、R3はC1−C20アルキルラジカルである。
【0052】
特に有利なヒドロキシベンゾフェノンは、2−(4’−ジエチルアミノ−2’−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル(あるいは、アミノベンゾフェノン)であり、これは、以下の構造により特徴付けられる。

これは、BASFからUvinul A Plusとして入手可能である。
【0053】
本発明によれば、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物は、約0.1〜約20重量%(有利には、約0.1〜約15重量%、特に好適には、約0.1〜約10重量%)の1つ以上のヒドロキシベンゾフェノンを含み、各場合において、当該組成物の総重量に基づく。
【0054】
本発明の範囲内において、R1および/またはR2が6〜10個の炭素原子を有する分岐アルキル基を表すジアルキルナフタレートは、前記レチノイド化合物含有組成物中に有利に含まれる。本発明の範囲内において、ジエチルヘキシルナフタレートは特に好適であり、例えば、Hallbrite TQ(登録商標)という商品名でCP HallまたはCorapan TQ(登録商標)という商品名でH&Rから入手可能である。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物は、有利には約0.001〜約30重量%(好適には、約0.01〜約20重量%、特に好適には、約0.5〜約15重量%)の1つ以上のジアルキルナフタレートを含む。
【0056】
本発明によるレチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用UV照射保護組成物は、通常通りに構成可能であり、抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用光保護、さらには皮膚および/または頭髪の治療、ケアおよび洗浄そしてさらには装飾用化粧品中の化粧品生成物として利用可能である。
【0057】
別の重要な実施形態によれば、化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、日焼け止め剤または皮膚用組成物中において、ベンゾトリアゾール誘導体化合物および/または広帯域フィルタ化合物と組み合わされ、必要に応じてそして好適には、ジベンゾイルメタン誘導体および/またはジアルキルナフタレートと共に用いられる。
【0058】
有利なベンゾトリアゾール誘導体は、2,2’−メチルエネビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)であり、これは、以下の化学構造式を有する。

(INCl:ビスオクチルトリアゾール)。これは、Tinosorb(登録商標)という商標名でCIBA−Chemikalien GmbHから入手可能であり、優れたUV吸収特性において際立っている。この物質の不利点としては、認識できないほどに薄い膜を皮膚上に形成する特性を有しているため、触ったときの感触が不快であるという点がある。
【0059】
別の不利点として、このようなベンゾトリアゾール誘導体は、従来の油成分中において、もしあれば、不適切な溶解度しか示せない点がある。周知の溶媒は、これらの化合物の最大約15重量%までしか溶解できず、これは通常は、完成後の化粧品または皮膚用組成物中の溶解した(すなわち、活性の)フィルタ物質のうち約1〜1.5重量%の濃度に相当する。
【0060】
そのため、先行技術の1つの不利点として、これらのフィルタ物質を用いた場合、通常比較的低い日焼け防止係数しか達成できない点がある。その理由として、これらのフィルタ物質の組成物中での溶解度または分散性が低すぎる(すなわち、これらのフィルタ物質をこのような組成物と十分に均質混合させるのは困難か不可能である)点がある。
【0061】
溶解度に制限がある場合に特定のUV保護が原則的に達成可能である場合にも、再結晶という別の問題が頻繁に発生する。
【0062】
詳細には、低溶解度の物質は、比較的高速に再結晶し、再結晶化は、温度の変動または他の影響によって誘発され得る。しかし、組成物の本質的成分(例えば、UVフィルタ)の再結晶が制御できない場合、所与の組成物の特性(特に、所望の光保護)に対して極めて不利な影響が生じる。
【0063】
別の実施形態によれば、本明細書中に記載のレチノイド化合物含有組成物は、化学式(I)のアルコキシクリレン化合物と組み合されることにより、より高い含有量の非対称置換型のトリアジン誘導体を含むことができ、これにより、より高い日焼け防止係数を得ることができる。
【0064】
しかし、レチノイド化合物含有組成物中のUV光保護に有効な活性成分の組み合わせによって先行技術の不利点が修正できるということは、当業者にとって驚くべきことであり、予期できないことであった。前記活性成分の組み合わせは、以下から構成される。
(a)ベンゾトリアゾール誘導体の群から選択された1つ以上のUVフィルタ物質、
(b)化学式(I)のアルコキシクリレン、および必要に応じて
(c)以下の構造化学式を有する1つ以上のジアルキルナフタレート

ここで、R1およびR2は、相互に独立し、6〜24個の炭素原子を有する分岐および非分岐アルキル基の群から選択される。
【0065】
本発明のこの実施形態の目的のための特に有利なUV光保護フィルタは、以下の構造化学式を有するベンゾトリアゾール化合物を含む。

ここで、R1およびR2は、相互に独立し、C5−C12−シクロアルキルまたはアリールラジカルの分岐または非分岐C1−C18−アルキルラジカルの群から選択される。C5−C12−シクロアルキルまたはアリールラジカルは、1つ以上のC1−C4アルキル基と必要に応じて置換される。
【0066】
好適なベンゾトリアゾール誘導体は、2,2’−メチルエネビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)であり、以下の化学構造化学式によって特徴付けられる。

【0067】
本発明の目的ための有利な広帯域フィルタは、さらに、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−[2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロピル]フェノール(CAS No.:155633−54−8)であり、INCl名称はドロメトリゾールトリシロキサンであり、以下の化学構造化学式によって特徴付けられる。

【0068】
最終レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物中の、1つ以上のベンゾトリアゾール誘導体(詳細には、2,2’−メチルエネビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)および/または2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−[2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロピル]フェノール)の総量は、当該組成物の重量に基づいて、有利には0.1〜15.0重量%(好適には、0.5〜10.0重量%)から選択される。
【0069】
本発明によるレチノイド化合物含有組成物は、通常通りに構成可能であり、抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用のUV光からの保護目的、さらには皮膚および/または頭髪の治療、ケアおよび洗浄そしてさらには装飾用化粧品中の化粧品生成物として利用可能である。
【0070】
使用時においては、前記レチノイド化合物含有組成物は、レチノイド化合物含有組成物において通例となっている様態で十分な量を皮膚および/または頭髪に塗布することができる。
【0071】
本発明によるレチノイド化合物含有組成物は、化粧品補助剤(例えば、このような組成物中において従来から用いられてきたもの、例えば、防腐剤、殺菌剤、香料、消泡剤、染料、着色効果を有する顔料、増粘剤、湿潤剤および/または保湿剤、脂肪、油、ワックス)または他の従来の抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物の他の従来の構成物質(例えば、アルコール、ポリオール、ポリマー、泡安定剤、電解質、有機溶媒またはシリコーン誘導体)を含み得る。
【0072】
さらなる含量の酸化防止剤が一般的に好適である。本発明によれば、1つ以上のレチノイド化合物と共に用いることが可能な好ましい酸化防止剤は、抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品および/または皮膚用途において適切なまたは従来から用いられている任意の酸化防止剤である。
【0073】
酸化防止剤は、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびその誘導体、イミダゾール(例えば、ウロカニン酸)およびその誘導体、ペプチド(例えば、D,L−カモシン、D−カルノシン、L−カルノシンおよびその誘導体(例えば、アンセリン))、カロテノイド、カロチン(例えば、アルファカロチン、ベータカロチン、リコピン)およびその誘導体、クロロゲン酸およびその誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えば、ジヒドロリポ酸)、アウロチオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミンおよびグリコシル、N−アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチルおよびラウリル、パルミトイル、オレイル、ガンマリノレイル、コレステリルおよびそのグリセリルエステル)およびその塩、ジラウリルチオジプロピオン酸、ジステアリルチオジプロピオン酸、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび塩)およびスルホキシミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシミン、ホモシステインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタチオニンスルホキシミン)を極めて低い耐量(例えば、pmol〜μmol/kg)で用いた物、ならびに(金属)キレート剤(例えば、α−ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α−ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁エキス、ビリルビン、胆緑素、EDTA、EGTAおよびその誘導体、不飽和脂肪酸およびその誘導体(例えば、γ−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールおよびその誘導体、ビタミンCおよび誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル、Mgアスコルビン酸リン酸、アスコルビルアセテート)、トコフェロールおよび誘導体(例えば、ビタミンEアセテート)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミチン酸)およびガムベンゾインのコニフェリル安息香酸エステル、ルチン酸およびその誘導体、α−グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリルイデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアンソール、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロ−フェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO4)、セレニウムおよびその誘導体(例えば、セレノメチオニン)、スチルベンおよびその誘導体(例えば、スチルベンオキシド、トランス−スチルベンオキシド)および本発明に従って適切な上記活性成分の誘導体(塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)からなる群から特に有利に選択される。
【0074】
別の実施形態によれば、本発明による化学式(I)のアルコキシクリレン化合物を含むレチノイド化合物含有組成物は、親水性スキンケア活性成分および/または広帯域フィルタ化合物と組み合わされ、必要に応じてそして好適には、ジベンゾイルメタン誘導体と共に用いられる。
【0075】
本発明によるレチノイド化合物含有組成物中のアルコキシクリレンと共に用いることによって安定化される(個別に用いられるかまたは任意に相互に組み合わされる)有利な親水性活性の成分を以下に挙げる。
ビオチン;カルニチンおよび誘導体;クレアチンおよび誘導体;葉酸;ピリドキシン;ナイアシンアミド;ポリフェノール(特にフラボノイド、とりわけアルファ−グルコシルルチン);アスコルビン酸および誘導体;マンサク;アロエベラ;パンテノール;アミノ酸。
【0076】
本発明の本実施形態の目的のための特に有利な親水性の活性成分として、例えばビタミンなどの水溶性酸化防止剤もある。
【0077】
前記レチノイド化合物含有組成物中の親水性活性成分(1つ以上の化合物)の量は、当該組成物の総重量に基づいて、好適には約0.0001〜10重量%(特に好適には約0.001〜約5重量%)である。
【0078】
酸化防止剤を添加剤または活性成分として用いた場合、特に有利なレチノイド化合物含有組成物も得られる。本発明の本実施形態によれば、前記レチノイド化合物含有組成物は有利には、1つ以上の酸化防止剤を含む。好ましいがそれでも必要に応じて用いられる酸化防止剤として使用され得るものは、抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品および/または皮膚用途において通常用いられるかまたは適切である全ての酸化防止剤である。
【0079】
前記組成物中の酸化防止剤(1つ以上の化合物)の量は、当該組成物の総重量に基づいて、好適には約0.001〜約30重量%(特に好適には約0.05〜約20重量%、詳細には約0.1〜約10重量%)である。
【0080】
ビタミンEおよび/またはその誘導体が酸化防止剤である場合、そのそれぞれの濃度を当該組成物の総重量に基づいて約0.001〜約10重量%の範囲から選択すると有利である。
【0081】
本発明によるレチノイド化合物含有組成物がさらなる抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用活性成分を含むと特に有利であり、好適な活性成分は、皮膚を酸化ストレスから保護する酸化防止剤である。
【0082】
有利なさらなる活性成分は、天然の活性成分および/またはその誘導体(例えば、ユビキノン、カロテノイド、クレアチン、タウリンおよび/またはβ−アラニン)である。
【0083】
本発明によるレチノイド化合物含有組成物は、例えば、公知の抗しわ活性成分(例えば、フラボングリコシド(詳細には、α−グリコシルルチン)、コエンザイムQ10、ビタミンEおよび/または誘導体など)を含み、これらは、例えば皮膚老化(例えば、乾燥、荒れおよび乾燥しわの形成、かゆみ、(例えば洗浄後の)再脂肪化の低減、可視的血管拡張(毛細血管拡張性、キュペロシス)、弛緩およびしわ線の形成、局所的色素過剰、低色素沈着および異常色素沈着(例えば、しみ)、機械的ストレスに対する感受性の増大(例えば、亀裂)などにおいて美容観点または皮膚の変化が皮膚に発生した場合の予防および治療のために特に有利に適している。さらに、これらは、有利なことに皮膚の乾燥または荒れの発生に対しても適している。
【0084】
さらに別の重要な実施形態によれば、化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、日焼け止めまたは皮膚用組成物中において、粒状UVフィルタ物質および/または広帯域フィルタ化合物と組み合わされ、必要に応じてそして好適には、ジベンゾイルメタン誘導体および/またはジアルキルナフタレートと共に用いられる。
【0085】
本発明の本実施形態の目的のための好適な粒状UVフィルタ物質として、無機色素(特に、水に若干可溶性または不溶性である金属酸化物および/または他の金属化合物)があり、特にチタン(TiO2)、亜鉛(ZnO)、鉄(例えば、Fe23)、ジルコニウム(ZrO2)、シリコン(SiO2)、マンガン(例えば、MnO)、アルミニウム(Al23)、セリウム(例えば、Ce23)、対応する金属の酸化物、およびこのような酸化物の混合物、およびバリウムの硫酸塩(BaSO4)がある。
【0086】
本発明の目的のための酸化亜鉛は、市販されている油性または水性プレディスパージョンの形態でも用いられ得る。本発明に従って適切な酸化亜鉛粒子および酸化亜鉛粒子のプレディスパージョンは、一次粒径が<300nmである点によって区別され、以下の商標名で以下の企業から入手することができる。

【0087】
本発明の目的のために特に好適な酸化亜鉛は、BASFからのZ−Cote HP1およびZ−CoteおよびHaarmann&Reimerからの酸化亜鉛NDMである。
【0088】
本発明の本実施形態において有用な二酸化チタン色素は、ルチルおよびアナターゼ結晶変態の双方の形態であり得、本発明の目的のために有利には表面処理(「コート」)され、その意図は、例えば親水性、両親媒性または疎水性特性を形成または維持することである。この表面処理は、それ自体が公知のプロセスによって薄肉の親水性および/または疎水性の無機かつ/または有機層に色素を提供する工程からなる。本発明の目的のための多様な表面コーティングは、水も含む。
【0089】
本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態のための無機表面コーティングは、酸化アルミニウム(Al23)、水酸化アルミニウムAl(OH)3または酸化アルミニウム水和物(または:アルミナ、CAS No.:1333−84−2)、ナトリウムヘキサメタホスフェート(NaPO36、メタリン酸ナトリウム(NaPO3n、二酸化ケイ素(SiO2)(または:シリカ、CAS No.:7631−86−9)、または酸化鉄(Fe23)からなり得る。これらの無機表面コーティングは、単独で用いてもよいし、組み合わせてかつ/または有機コーティング材料と組み合わせて用いてもよい。
【0090】
本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態のための有機表面コーティングは、植物または動物アルミニウムステアレート、植物または動物ステアリン酸、ラウリン酸、ジメチルポリシロキサン(または:ジメチコーン)、メチルポリシロキサン(メチコーン)、シメチコン(ジメチルポリシロキサンと、平均鎖長が200〜350のジメチルシロキサン単位およびシリカゲルとの混合物)またはアルギン酸からなり得る。これらの有機表面コーティングは、単独で、組み合わせてかつ/または無機コーティング材料と組み合わせて用いられ得る。
【0091】
本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態のコートされた二酸化チタンおよびコートされていない二酸化チタンは、市販されている油性または水性プレディスパージョンの形態で用いられ得る。分散助剤および/または可溶性メディエーターを付加すると有利であり得る。
【0092】
本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態の目的のための適切な二酸化チタン粒子および二酸化チタン粒子のプレディスパージョンは、以下の商標名で以下の企業から入手可能である。



【0093】
本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態の二酸化チタンは、一次粒径が10nm〜150nmである点によって、区別される。
【0094】
本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態のための特に好適な二酸化チタンは、Tayca CorporationからのMT−100ZおよびMT−100TV、MerckからのEusolexT−2000およびDegussaからの二酸化チタンT805である。
【0095】
さらなる有利な色素は、ラテックス粒子である。本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態において有利なラテックス粒子について、以下の公開文献中に記載がある:米国特許第5,663,213号およびEP0761201号。特に有利なラテックス粒子としては、水およびスチレン/アクリレートコポリマーから形成されたものがあり、例えば「Alliance SunSphere」という商標名でRohm&Haasから入手可能である。
【0096】
本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態の目的のための有利な有機色素は、2,2’−メチルエネビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(l,1,3,3−テトラメチルブチル−)フェノール)(INCI:ビス−オクチルトリアゾール)であり、Tinosorb(登録商標)Mという商標名でCIBA−Chemikalien GmbHから入手可能である。
【0097】
既にプレディスパージョンの形態になっていない粒状UVフィルタ物質を先ず本発明の1つ以上のジアルキルナフタレート中に分散させて、この基本分散物をさらに処理すると、本発明の粒子状日焼け止め添加剤の実施形態の目的のために特に有利である。市販のプレディスパージョンには、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品用または皮膚用組成物の他の物質との不要な相互作用を持ち得る助剤が安定化のために付加されていることが多い。しかし、驚くべきことに、本発明の基本分散物を調製する場合、このような安定剤の付加が不要になる。
【0098】
別の実施形態によれば、1つ以上の水溶性UVフィルタ物質を、前記レチノイド化合物含有組成物と組み合わせることができる。最終レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物中の1つ以上の水溶性UVフィルタ物質の総量は、約0.01重量%〜約20重量%(好適には、約0.1〜約10重量%)の範囲から有利に選択され、各場合において、調製物の総重量に基づく。
【0099】
さらに別の重要な実施形態において、化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、日焼け止め剤または皮膚用組成物中において、非対称置換型トリアジンUVフィルタ化合物および/または広帯域フィルタ化合物と組み合わされ、必要に応じてそして好適には、ジベンゾイルメタン誘導体と共に用いられる。
【0100】
非対称置換型トリアジン誘導体は、良好なUV光保護効果を示す。しかし、その主な不利点として、その溶解度が従来の油成分中において低い点がある。周知の溶媒は、これらの化合物の最大15重量%までしか溶解できず、これは、一般的には、完成したレチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物中の溶解した(=活性の)フィルタ物質の約1〜1.5重量%の濃度に相当する。
【0101】
従って、先行技術の1つの不利点として、これらのフィルタ物質を用いた場合、一般的に比較的低い日焼け止め係数しか達成できない点がある。なぜならば、これらのフィルタ物質の組成物中での溶解度または分散性は低すぎる(すなわち、これらのフィルタ物質をこのような組成物と十分に均質混合させるのは困難か不可能である)からである。
【0102】
溶解度が限定されている場合に特定のUV保護を原則的に達成することができたとしても、別の問題(すなわち、再結晶化)が発生することが多い。特に、溶解度が低い物質の場合、比較的高速で再結晶する。このような再結晶化は、温度変動または他の影響によって誘発され得る。しかし、UVフィルタなどの組成物の実質的成分の再結晶化が制御できない場合、所与の組成物の特性に対して極めて不利な影響が発生し、特に所望の光保護に対して極めて不利な影響が発生する。
【0103】
前記先行技術の不利点は、レチノイド化合物含有組成物中のUV光保護に効果的な活性成分の組み合わせにより改善される。前記組み合わせは、以下から構成される。
(a)非対称置換型トリアジン誘導体の群から選択された1つ以上のUVフィルタ物質
(b)構造化学式(I)を有する1つ以上のアルコキシクリレン、および
(c)必要に応じてジベンゾイルメタン誘導体および/またはジアルキルナフタレート。
【0104】
本発明のこの実施形態の意図内の有利な非対称置換型s−トリアジン誘導体としては、例えばEP−A−570838中に記載されているものがあり、その化学構造は、以下の一般化学式によって表される。

式中、Rは、分岐または非分岐C1−C18−アルキルラジカル、C5−C12−シクロアルキルラジカルであり、必要に応じて1つ以上のC1−C4−アルキル基と置換され、
Xは、酸素原子またはNH基であり、
1は、分岐または非分岐C1−C18−アルキルラジカル、C5−C12−シクロアルキルラジカルであり、必要に応じて1つ以上のC1−C4−アルキル基、または水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または以下の化学式の基と置換される。

式中、Aは、分岐または非分岐C1−C18−アルキルラジカル、C5−C12−シクロアルキルまたはアリールラジカルであり、必要に応じて1つ以上のC1−C4−アルキル基と置換され、
3は、水素原子またはメチル基であり、
nは1〜10の数であり、
2は、分岐または非分岐C1−C18−アルキルラジカル、C5−C12−シクロアルキルラジカルであり、必要に応じて1つ以上のC1−C4−アルキル基と置換され、
Xが前記NH基で有る場合、
分岐または非分岐C1−C18−アルキルラジカル、C5−C12−シクロアルキルラジカルは、必要に応じて、1つ以上のC1−C4−アルキル基、または水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または以下の化学式の基と置換される。

式中、Aは、分岐または非分岐C1−C18−アルキルラジカル、C5−C12−シクロアルキルまたはアリールラジカルであり、1つ以上のC1−C4−アルキル基と必要に応じて置換され、
3は水素原子またはメチル基であり、
Xが酸素原子である場合、nは1〜10の数である。
【0105】
好適な形態のこのトリアジン実施形態において、前記レチノイド化合物含有組成物は、抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、日焼け止め剤、化粧品または皮膚用組成物であり、ある含量の少なくとも1つの非対称置換型s−トリアジンを含む。この非対称置換型s−トリアジンは、以下の構造化学式を有する物質の群から選択される。

【0106】
全てのビスレソルシノールトリアジンは、本発明の目的のためのこの実施形態のために有利である。R4およびR5は、1〜18個の炭素原子の分岐または非分岐アルキル基の群から選択されると特に有利である。前記アルキル基は、ここでも有利にシリルオキシ基と置換され得る。
【0107】
1は、有利には、置換ホモ環状またはヘテロ環状芳香5員環または6員環である。
【0108】
以下の化合物がとりわけ有利である。

式中、R6は、水素原子または1〜10個の炭素原子を有する分岐または非分岐アルキル基であり、詳細には、2,4−ビス{[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(INCI:アニソトリアジン)であり、これは、Tinosorb(登録商標)Sという商標名でCIBA−Chemikalien GmbHから入手可能であり、以下の構造によって特徴付けられる。

【0109】
他の有利なものとして、2,4−ビス{[4−(3−スルホナート−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンナトリウム塩があり、これは以下の構造によって特徴付けられる。

【0110】
他の有利なものとして、2,4−ビス{[4−(3−(2−プロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンがあり、これは以下の構造によって特徴付けられる。

【0111】
他の有利なものとして、2,4−ビス{[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−[4−(2−メトキシエトキシカルボニル)フェニルアミノ]−1,3,5−トリアジンがあり、これは以下の構造によって特徴付けられる。

【0112】
他の有利なものとして、2,4−ビス{[4−(3−(2−プロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−[4−(エトキシカルボニル)フェニルアミノ]−1,3,5−トリアジンがあり、これは以下の構造によって特徴付けられる。

【0113】
他の有利なものとして、2,4−ビス{[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(1−メチルピロール−2−イル)1,3,5−トリアジンがあり、これは以下の構造によって特徴付けられる。

【0114】
他の有利なものとして、2,4−ビス{[4−トリス(トリメチルシロキシシリルプロピルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンがあり、これは以下の構造によって特徴付けられる。

【0115】
他の有利なものとして、2,4−ビス{[4−(2−メチルプロペニルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンがあり、これは以下の構造によって特徴付けられる。

【0116】
他の有利なものとして、2,4−ビス{[4−(1’,1’,1’,3’,5’,5’,5’−ヘプタメチルシロキシ2−メチルプロピルオキシ)−2−ヒドロキシ]−フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンがあり、これは以下の構造によって特徴付けられる。

【0117】
特に好適な実施形態において、本発明は、ある含量の非対称置換型s−トリアジンを含むレチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物に関し、非対称置換型s−トリアジンの化学構造は、以下の化学式によって表される。

これを本明細書中以下ジオクチルブチルアミドトリアゾン(INCI)とも呼び、これは、UVASORB HEBという商標名でSigma3Vから入手可能である。
【0118】
前記非対称置換型s−トリアジン誘導体(単数または複数)は、前記レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物の油相中に有利に均質混合される。
【0119】
1つ以上の非対称置換型s−トリアジン誘導体(詳細には、ジオクチルブチルアミドトリアゾン)の最終レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用組成物中における総量は、有利には、当該組成物の総重量に基づいて、約0.1〜約15.0重量%(好適には、約0.5〜約10.0重量%)の範囲から選択される。
【0120】
本明細書中に記載のレチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用光保護組成物は、抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、化粧品または皮膚用光保護および皮膚および/または頭髪の治療、ケアおよび洗浄のために用いられる場合および装飾用化粧品中のメイクアップ製品として用いられる場合従来の添加剤、溶媒および水濃度を含み得る。
【0121】
別の重要な実施形態によれば、化学式(I)のアルコキシクリレン化合物は、レチノイド化合物含有抗ニキビ、アンチエイジング、皺低減、日焼け止めまたは皮膚用組成物において、脂溶性酸化または紫外線感受性のある活性成分および/または広帯域フィルタ化合物と組み合わされ、必要に応じてそして好適にはジベンゾイルメタン誘導体と共に用いられる。
【0122】
本発明によって使用した場合、本明細書中に記載のアルコキシクリレンと共に使用された際に優れた様態で安定化される有利な脂溶性活性成分は、logP計算値が3.5よりも高いものである。Pは分配係数であり、実質的に相互に不混和性である2つの溶媒からなる二相系中の溶解物質の平衡濃度の比として定義される。これら2つの溶媒は、この場合、n−オクタノールおよび水であり、すなわち以下のようになる。

【0123】
ユビキノンおよびプラストキノンからなる群から脂溶性活性成分を選択すると有利である。本発明の目的のため、logP計算値が約15であるコエンザイムQ10がとりわけ有利である。
【0124】
脂溶性成分(単数または複数)をユビキノンの群のみから選択することにより、本発明の本実施形態によるとりわけ有利な組成物を得ることができるという点は、特に驚くべきである。
【0125】
本発明の本実施形態によるさらなる有利な脂溶性酸成分として、カロテノイドがある。本発明の目的のため、例えばlogP計算値が15であるベータ.−カロチンが特に有利である。
【0126】
本発明の本実施形態による有利なさらなる脂溶性活性成分として、リポ酸および誘導体、ビタミンEおよび誘導体、ビタミンF、二酸[8−ヘキサデセン−1,16−ジカルボン酸(CAS登録番号20701−68−2)]がある。
【0127】
前記組成物中の脂溶性活性成分(1つ以上の化合物)の量は、前記組成物の総重量に基づいて、好適には約0.0001〜約10重量%(特に好適には、約0.001〜約5重量%)である。
【実施例】
【0128】
例1
ブチルオクチルメトキシクリレンによる、イソトレチノインの光安定化作用

安定化および非安定化イソトレチノイン(表3)を含む水中油型エマルジョンを、薄暗がりで(かつ/または光から保護した様態で)以下の手順に従って調製し、紫外線を照射したところ、ブチルオクチルメトキシクリレン(BOMeOC)は、イソトレチノイン(IsoRA)に対し、驚くほど優れた光安定化効果を示した。
【表3】

【0129】
ジソジウムEDTA(11)を、水(14)を含む第1の容器中に溶解させた。キサンタンガム(10)を付加し、キサンタンガムが溶解するまで、混合物を攪拌した。第2の容器中に成分#1〜6および9を入れ、70℃まで加熱した。次に、成分#7を第2の容器に付加し、前記混合物を均質になるまで攪拌した。第1の容器から前記溶液のおよそ1/3を主容器に付加した。その後、成分#8を攪拌しながら主容器に付加し、得られた混合物を65℃まで加熱した。その後、第2の容器中の溶液を主容器に付加し、完全にエマルジョンが形成されるまで均質化した。その後、主容器を熱から離し、スウィープ攪拌し、第1の容器中の残りの溶液を主容器に付加した。成分#12および13は、事前混合した後、主容器に付加し、その後、成分#15を付加した。前記混合物が平滑かつ均質となるまで、スウィープ攪拌を継続した。適量の水を主容器に付加して、処理時に失われた水を交換した。得られた組成物を、35℃を下回る温度までバッチ冷却した後にパッケージした。
【0130】
表3によるおよそ0.12gのイソトレチノイン組成物を、5cm×2.5cm石英スライドに塗布し、第2の5cm×2.5cm石英スライドで被覆した。得られたスライドサンドイッチに圧力を付加して、前記スライド間において前記イソトレチノイン組成物を均等に広げた。その後、前記スライドサンドイッチにおいて、6箇所に5MED線量を照射した(6×5MED)。各線量は、1センチメートルの円をカバーする。その後、少量のアセトニトリルによってイソトレチノイン組成物を前記スライドサンドイッチから抽出し、よく混合し、PTFEサンプルフィルタを通じて濾過した。前記抽出されたイソトレチノイン組成物の50μLのサンプルに対し、表4中の計装およびパラメータを用いてHPLCを行った。6×5MEDの照射後に前記組成物中に残留していたイソトレチノインのパーセンテージを表3に示す。
【表4】

例2
エチルヘキシルメトキシクリレンによる、レチノールの光安定化作用
【0131】
異なる濃度の光安定化剤(表5)と共にレチノールを含む水中油型エマルジョンを薄暗がりで(かつ/または光から保護した様態で)以下の手順に従って調製し、紫外線を照射したところ、エチルヘキシルメトキシクリレン(EHMC)は、レチノールに対し、驚くほど優れた光安定化効果を示した。
【表5】

【0132】
ジソジウムEDTA(13)を、水(15)を含む第1の容器中に溶解させた。キサンタンガム(9)を付加し、前記キサンタンガムが溶解するまで、混合物を攪拌した。第2の容器中に油#1〜3および酸化防止剤#4〜5を入れた。前記溶液を65℃に加熱しながら、得られた油相中にレチノール(8)を溶解させた。その後、Ceralution H(登録商標)(9)を攪拌しつつ付加した。第1の容器から前記溶液のおよそ1/3を主容器に付加した。その後、Ceralution F(登録商標)(10)を攪拌しつつ主容器に付加し、得られた混合物を65℃まで加熱した。第2の容器中の溶液を主容器に付加し、2分間均質化した。均質化時において、第1の容器中の残りの溶液を主容器にゆっくりと付加した。その後、主容器を熱から離し、プロペラ攪拌を用いて冷却した。Microkill(登録商標)COS(11)およびグリセリン(12)を事前混合しておき、主容器に付加した。攪拌方法をスウィープ攪拌に切り換え、Simulgel 600(登録商標)(14)を主容器に付加した。混合物を平滑および均質になるまで攪拌した。
【0133】
表5によるおよそ0.12gのレチノール組成物を5cm×2.5cm石英スライドに塗布し、第2の5cm×2.5cm石英スライドで被覆した。得られたスライドサンドイッチ上に圧力を付加して、前記スライド間において前記レチノール組成物を均等に広げた。その後、前記スライドサンドイッチにおいて、6箇所に5MED線量を照射した(6×5MED)。各線量は、1センチメートルの円をカバーする。その後、少量のアセトニトリルによってレチノール組成物を前記スライドサンドイッチから抽出し、よく混合し、PTFEサンプルフィルタを通じて濾過した。前記抽出されたレチノール組成物の50μLのサンプルに対し、表6中の計装およびパラメータを用いてHPLCを行った。
【表6】

【0134】
0.02、0.03、0.04、および0.05gのレチノールを別個に4つの異なる25mL容量フラスコ中に正確に秤量することにより、レチノール標準物質を調製した。およそ10〜15mLのアセトニトリルを各フラスコに付加し、前記レチノールが良好に溶解するまで、これらのフラスコを振盪した。その後、アセトニトリルによって容積希釈した。溶液をよく混合し、PTFEサンプルフィルタを通じて濾過した。表6中のパラメータに従って、レチノール標準物質に対してHPLCを行い、ピーク高さおよび/またはピーク面積と、前記標準物質の重量(グラム/25mL)との間の関係についてチャートを作成した。レチノールの保持時間は13.7分とした。
【0135】
3.0〜3.2gの未照射レチノール組成物を25mL容量フラスコ中に正確に秤量することにより、レチノール比較参照用サンプルを調製した。およそ10〜15mLのアセトニトリルを前記フラスコに付加し、前記レチノールサンプルが完全に溶解するまで前記フラスコを振盪し、その後、アセトニトリルによって容積希釈した。その後、溶液をよく混合し、PTFEサンプルフィルタを通じて濾過した。表6中のパラメータに従って、前記レチノール比較参照用サンプルに対してHPLCを行い、前記サンプルのピーク高さおよび/またはピーク面積と、前記レチノール標準物質チャートとを比較することにより、25mLあたりのグラム数(N)を前記サンプルについて決定した。前記未照射サンプル中に存在するレチノールのパーセンテージを方程式1に従って計算した。
%レチノール=N/W*100 (1)
N=前記レチノール標準物質チャートから決定された、25mLあたりのグラム数
W=サンプル重量(グラム/25mL)
【0136】
レチノールの比と、照射前後の選択UV波長における内部ピークとに基づいて、6×5MED照射後に前記レチノール組成物中に残留しているレチノールのパーセンテージを計算した。結果を表5中に示す。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチノイド化合物を含む組成物において、UV照射を受けた際に、一重項励起状態または蛍光状態となる前記レチノイド化合物をUV誘発光分解から保護する方法であって、
前記レチノイド化合物からの一重項励起状態エネルギーをクエンチし、前記一重項励起状態エネルギーを前記レチノイド化合物から前記化学式(I)の化合物へと移動させるのに有効な量で、前記レチノイド化合物と化学式(I)の化合物とを組み合わせる工程を含み、

1およびR2のうち1つは直鎖または分枝鎖C1−C30アルコキシラジカルであり、非アルコキシR1またはR2は水素であり、R3は直鎖または分枝鎖C1−C30アルキルラジカルであり、これにより、前記レチノイド化合物を光安定化させる、
方法。
【請求項2】
1はメトキシであり、R2は水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1は水素であり、R2はメトキシである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
3は、C12−C24直鎖または分岐アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
3は、2−ブチルオクチルラジカルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
3は、2−エチルヘキシルラジカルである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約20%という重量範囲の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約10%というこの重量範囲の量で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約5%というこの重量範囲の量で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001%〜約5%という重量範囲の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.005%〜約1%というこの重量範囲で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.01%〜約0.5%というこの重量範囲で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対するモル比は約0.001〜約1である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対するこのモル比は約0.005〜約0.1である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対する前記モル比は約0.01〜約0.06である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記レチノイド化合物は、レチノール、レチナール、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、ベキサロテン、タザロテン、およびアダパレンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記レチノイド化合物はレチノールである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記レチノイド化合物はイソトレチノインである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記レチノイド化合物はトレチノインである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記レチノイド化合物はレチナールである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記レチノイド化合物はアリトレチノインである、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記レチノイド化合物はエトレチナートである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記レチノイド化合物はアシトレチンである、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記レチノイド化合物はベキサロテンである、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記レチノイド化合物はタザロテンである、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記レチノイド化合物はアダパレンである、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
組成物の総重量に基づいて、レチノイド化合物を約0.001%〜約5重量%の量でかつ化学式(I)の化合物を約0.01%〜約20重量%の量で皮膚科学的に受容可能なキャリア中に含み、前記化学式(I)の化合物は以下に記載の化合物である、光安定化組成物であって、

1およびR2のうち1つは直鎖または分枝鎖C1−C30アルコキシラジカルであり、非アルコキシR1またはR2は水素であり、R3は直鎖または分枝鎖C1−C30アルキルラジカルである、光安定化組成物。
【請求項28】
1はメトキシであり、R2は水素である、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項29】
1は水素であり、R2はメトキシである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項30】
3はC12−C24直鎖または分岐アルキルである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項31】
3は2−ブチルオクチルラジカルである、請求項30に記載の光安定化組成物。
【請求項32】
3は、2−エチルヘキシルラジカルである、請求項30に記載の光安定化組成物。
【請求項33】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約20%という重量範囲の量で存在する、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項34】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約10%というこの重量範囲の量で存在する、請求項33に記載の光安定化組成物。
【請求項35】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約5%というこの重量範囲の量で存在する、請求項33に記載の光安定化組成物。
【請求項36】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001%〜約5%の重量範囲の量で存在する、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項37】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.005%〜約1%というこの重量範囲で存在する、請求項36に記載の光安定化組成物。
【請求項38】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.01%〜約0.5%というこの重量範囲で存在する、請求項36に記載の光安定化組成物。
【請求項39】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対するモル比は約0.001〜約1である、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項40】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対するこのモル比は約0.005〜約0.1である、請求項39に記載の光安定化組成物。
【請求項41】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対する前記モル比は約0.01〜約0.06である、請求項39に記載の光安定化組成物。
【請求項42】
前記レチノイド化合物は、レチノール、レチナール、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、ベキサロテン、タザロテン、およびアダパレンからなる群から選択される、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項43】
前記レチノイド化合物はレチノールである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項44】
前記レチノイド化合物はイソトレチノインである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項45】
前記レチノイド化合物はトレチノインである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項46】
前記レチノイド化合物はレチナールである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項47】
前記レチノイド化合物はアリトレチノインである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項48】
前記レチノイド化合物はエトレチナートである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項49】
前記レチノイド化合物はアシトレチンである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項50】
前記レチノイド化合物はベキサロテンである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項51】
前記レチノイド化合物はタザロテンである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項52】
前記レチノイド化合物はアダパレンである、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項53】
皮膚の治療方法であって、前記皮膚と、請求項27に記載の光安定化組成物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項54】
1はメトキシであり、R2は水素である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
1は水素であり、R2はメトキシである、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
3は、C12−C24直鎖または分岐アルキルである、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
3は2−ブチルオクチルラジカルである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
3は2−エチルヘキシルラジカルである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約20%という重量範囲の量で存在する、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約10%というこの重量範囲の量で存在する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記化学式(I)の化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約5%というこの重量範囲の量で存在する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001%〜約5%という重量範囲の量で存在する、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.005%〜約1%というこの重量範囲で存在する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記レチノイド化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.01%〜約0.5%というこの重量範囲で存在する、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対するモル比は約0.001〜約1である、請求項53に記載の方法。
【請求項66】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対するこのモル比は約0.005〜約0.1である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記レチノイド化合物の前記化学式(I)の化合物に対する前記モル比は約0.01〜約0.06である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記レチノイド化合物は、レチノール、レチナール、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、ベキサロテン、タザロテン、およびアダパレンからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項69】
前記レチノイド化合物はレチノールである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記レチノイド化合物はイソトレチノインである、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記レチノイド化合物はトレチノインである、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記レチノイド化合物はレチナールである、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記レチノイド化合物はアリトレチノインである、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記レチノイド化合物はエトレチナートである、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
前記レチノイド化合物はアシトレチンである、請求項68に記載の方法。
【請求項76】
前記レチノイド化合物はベキサロテンである、請求項68に記載の方法。
【請求項77】
前記レチノイド化合物はタザロテンである、請求項68に記載の方法。
【請求項78】
前記レチノイド化合物はアダパレンである、請求項68に記載の方法。
【請求項79】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%〜約10重量%の脂溶性活性化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項80】
前記脂溶性酸化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%〜約5重量%の量で存在する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記脂溶性活性化合物は、ユビキノンおよびプラストキノンからなる群から選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記脂溶性活性化合物はコエンザイムQ10である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%〜約10重量%の脂溶性活性化合物をさらに含む、請求項27に記載の光安定化組成物。
【請求項84】
前記脂溶性活性化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%〜約5重量%の量で存在する、請求項83に記載の光安定化組成物。
【請求項85】
前記脂溶性活性化合物は、ユビキノンおよびプラストキノンからなる群から選択される、請求項83に記載の光安定化組成物。
【請求項86】
前記脂溶性活性化合物はコエンザイムQ10である、請求項83に記載の光安定化組成物。
【請求項87】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%〜約10重量%の脂溶性活性化合物をさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項88】
前記脂溶性活性化合物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%〜約5重量%の量で存在する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記脂溶性活性化合物は、ユビキノンおよびプラストキノンからなる群から選択される、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記脂溶性活性化合物はコエンザイムQ10である、請求項87に記載の方法。

【公表番号】特表2012−533520(P2012−533520A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516391(P2012−516391)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042227
【国際公開番号】WO2011/014371
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(305048082)ホールスター イノベーションズ コーポレイション (9)
【Fターム(参考)】