説明

アルコキシチオフェン誘導体の製造方法

【課題】ドープされた状態において高い導電性能を示し、かつ大気安定性を有するチオフェン系重合体のモノマーとして有用であるアルコキチオフェン誘導体を、不安定な中間体を経ずに効率的に合成できる製造方法を提供する。
【解決手段】2,3−ジハロゲン化チオフェン化合物と、カップリング残基を有するチオフェン誘導体等のヘテロアリーレン化合物とを反応させることによりジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体を得、次いで、該ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体とアルコールを反応させることにより、チオフェン環の3位にアルコキシ基が導入されたアルコキチオフェン誘導体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシチオフェン誘導体の製造方法に関するものである。本発明の方法で製造されたアルコキシチオフェン誘導体は、半導体又は、導電性高分子の材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
ピロール、チオフェン、アニリン等のようにヘテロ原子が環内外に存する五員環構造又は六員環構造を有する化合物を重合したり、炭化水素系芳香環構造を有する化合物を重合したりして得られる重合体は半導体性を有しており、有機電解トランジスタ、薄膜トランジスタ、RFID等の様々な有機デバイスへの用途が検討されている。また、酸化的、還元的にドープされたこれらの重合体は導電性を有しており、ドーピング量を調整することにより電気特性及び光学特性を適切にコントロールすることができるため、各種電極、エレクトロクロミック材料、各種センサー、一次電池、二次電池、固体電解コンデンサー、帯電防止剤等の様々な有機材料への用途が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルキルチオフェンとチエノ〔3,2−b〕チオフェンとを含む共重合体をドープした重合体が導電性を有することが記述されている。しかし、具体的な導電性や安定性については言及されておらず、非特許文献1において、これらの重合体の導電性が大気暴露によって大幅に低下することが報告されている。また、アルキルチオフェンとジチエノ〔3,2−b:2´,3´−d〕ピロールとを含む共重合体が、酸化的にドープされた際、高い導電性を示すことが報告されているが、大気暴露で大幅に導電性が低下している(非特許文献2)。
【0004】
したがって、より高い導電性を示し、大気中においても安定な重合体及びその製造方法の提供が求められている。
【0005】
本発明者らのこれまでの検討(特願2011−121312)により、前記課題は以下の方法によって解決できることを見出している。すなわち、アルコキシ基を有するアルコキシチオフェン誘導体をモノマーとして用いることにより、半導体性能、及びドープされた状態において高い導電性能を示し、かつ大気曝露によって導電性が低下することなく大気安定性を有する重合体を提供することができる。
【0006】
しかし、特願2011−121312に記載の製造方法によれば、3−アルコキシ−2−ハロゲノチオフェンとトリアルキルスズ化合物とを触媒存在下で反応させることで重合前駆体であるアルコキシチオフェン誘導体を合成しているが、高収率でアルコキシチオフェン誘導体を得ることはできていない。この原因として、2−ハロゲノチオフェンの3位に電子供与性基であるアルコキシ基が結合しているため、触媒の酸化的付加に不利に働き、目的の反応が進行し難く収率が低いことが考えられる。また、3−アルコキシ−2−ハロゲノチオフェンは、容易に重合することが知られており(非特許文献3)、安定性が悪いことから取り扱いが困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Advanced Functional Materials,19,1906(2009)
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society,130,13167(2008)
【非特許文献3】Australian Journal of Chemistry,64,335(2011)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008−504379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかして、本発明の目的は、アルコキチオフェン誘導体を、不安定な中間体を経ずに効率的に合成できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は検討を重ね、ジハロゲン化チオフェン化合物とヘテロアリーレン化合物とを反応させることによりジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体を得、次いで、該ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体とアルコールを反応させることによりアルコキシ基を導入することで上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明の目的は、
1.下記化学式(1)
【化1】

〔化学式(1)中、X及びXはそれぞれ同一または異なるハロゲン原子であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基である〕
で示されるジハロゲン化チオフェン化合物と、下記化学式(2)
−A−M ・・・(2)
〔化学式(2)中、Aは置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基であり、M及びMはハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、トリアルキル化スズ、ホウ酸又はホウ酸エステルである〕
で示されるヘテロアリーレン化合物とを反応させることで、下記化学式(3)
【化2】

〔化学式(3)中、X、R及びAは前記と同じである〕
で示されるジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体を得、次いで、該ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体とアルコールを反応させることを特徴とする、下記化学式(4)
【化3】

〔化学式(4)中、R及びAは前記と同じであり、
は下記化学式(5)
−〔W−(CH− ・・・(5)
(式(5)中、Rは水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であり、Wは酸素原子又は硫黄原子であり、〔W−(CH〕は繰り返し単位毎にWとaとが同一又は異なっていてもよく、aは1〜20、bは0〜20の正数である)で示される側鎖である〕
で示されるアルコキシチオフェン誘導体の製造方法;
2.置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aがチオフェン誘導体である、上記1に記載のアルコキシチオフェン誘導体の製造方法;
3.置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aが下記化学式(6)〜(10)
【化4】

〔化学式(6)〜(10)中、R、R、R、R、R、R、R10、R11,R12、R13、R14、R15、R16、R17はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基であり、R18は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基である〕
から選択されるいずれかである、上記2に記載のアルコキシチオフェン誘導体の製造方法;
4.置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aがチエノチオフェン−ジイル基である、上記1又は2に記載のアルコキシチオフェン誘導体の製造方法;

5.下記化学式(3)
【化5】

(式(3)中、Aは置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基であり、Xはハロゲン原子であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基である)
で示される、チオフェン環の3位にハロゲン原子を有することを特徴とするジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体;
6.下記化学式(1)
【化6】

〔化学式(1)中、X及びXはそれぞれ同一または異なるハロゲン原子であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基である〕
で示されるジハロゲン化チオフェン化合物と、下記化学式(2)
−A−M ・・・(2)
〔化学式(2)中、Aは置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基であり、M及びMはハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、トリアルキル化スズ、ホウ酸又はホウ酸エステルである〕
で示されるヘテロアリーレン化合物とを反応させることで得られる、上記5に記載のジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体;
7.置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aがチオフェン誘導体である、上記5又は6に記載のジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体;
8.置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aが、下記化学式(6)〜(10)
【化7】

〔化学式(6)〜(10)中、R、R、R、R、R、R、R10、R11,R12、R13、R14、R15、R16、R17はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基であり、R18は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基である〕
から選択されるいずれかである、上記7に記載のジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体;
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法を用いることにより、不安定な中間体を経ずにチオフェン環の3位にハロゲン原子を有するジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体を得、さらにアルコキシチオフェン誘導体を効率的に製造できる。このようにして得られたアルコキシチオフェン誘導体は、ドープされた状態において高い導電性を示し、かつ大気安定性を有する重合体の材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明の製造方法に用いられるジハロゲン化チオフェン化合物は、前記化学式(1)で示されるように、チオフェン環の2位及び3位にハロゲン原子を有するものである。
【0015】
化学式(1)において、X及びXが表すハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子がそれぞれ挙げられる。好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。X及びXが表すハロゲン原子は同一であっても異なるものであっても良い。X及びXが異なる場合には、ハロゲン原子の反応性がX>XとなるようにX及びXを定めるのが好ましい。
【0016】
化学式(1)において、Rが表す炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロプロピル基等が挙げられる。
【0017】
化学式(1)において、Rが表すアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルテトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
これらのアルキル基、アルコキシ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキレンオキシ基等が挙げられる。
【0019】
本発明の製造方法に用いられるヘテロアリーレン化合物は、前記化学式(2)で示されるように、両末端にM及びMで表されるハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、トリアルキル化スズ、ホウ酸又はホウ酸エステルから選ばれる何れかの官能基を有し、間にAで表される置換基を有していてもよい2価のヘテロアリーレン基を有するものである。
【0020】
化学式(2)においてM、Mが表すハロゲン化マグネシウムとして、−MgCl、−MgBr、−MgI等が挙げられる。
【0021】
化学式(2)においてM、Mが表すハロゲン化亜鉛として、−ZnCl、−ZnBr、−ZnI等が挙げられる。
【0022】
化学式(2)においてM、Mが表すトリアルキルスズとして、−Sn(Me)、−Sn(Bu)等が挙げられる。
【0023】
化学式(2)においてM、Mが表すホウ酸エステルとしては、−B(OMe)、−B(OEt)、−B(OPr)、−B(OBu)、化学式(11)〜(14)で表される環状ホウ酸エステル等が挙げられる。
【化8】

【0024】
化学式(2)において、Aが表す2価のヘテロアリーレン基としては、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、セレノフェン−2,5−ジイル、2,2´−ビチオフェン−5,5´−ジイル、チエノ〔3,2−b〕チオフェン−2,5−ジイル、チエノ〔2,3−b〕チオフェン−2,5−ジイル、チエノ〔3,4−b〕チオフェン−4,6−ジイル、ジチエノ〔3,2−b:2´3´―d〕チオフェン−5,5´−ジイル、シクロペンタ〔2,1−b:3,4−b´〕ジチオフェン−2,6−ジイル、ジチエノ〔3,2−b:2´,3´−d〕ピロール−2,6−ジイル、ベンゾ〔1,2−b:4,5−b´〕ジチオフェン−2,6−ジイル等の基が挙げられる。ヘテロアリーレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。
【0025】
化学式(2)において、Aが表す2価のヘテロアリーレン基として、好ましくは単環式、縮合多環式又は環集合式のチオフェン誘導体であり、例えばチオフェン−ジイル、ビチオフェン−ジイル、チエノチオフェン−ジイル、ジチエノピロール−ジイル、ベンゾジチオフェン−ジイル基等が挙げられる。具体的には、下記化学式(6)〜(10)で示される、置換基を有していてもよいチオフェン−2,5−ジイル、2,2´−ビチオフェン−5,5´−ジイル、チエノ〔3,2−b〕チオフェン−2,5−ジイル、ジチエノ〔3,2−b:2´,3´−d〕ピロール−2,6−ジイル、ベンゾ〔1,2−b:4,5−b´〕ジチオフェン−2,6−ジイルから選択される基であるのが好ましい。
【化9】

〔式(6)〜(10)中、R、R、R、R、R、R、R10、R11,R12、R13、R14、R15、R16、R17はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基であり、R18は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基である。〕
【0026】
Aが表す2価のヘテロアリーレン基がチエノチオフェン−ジイル基である場合には、チエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイル、チエノ[3,2−b]チオフェン−2,3−ジイル、チエノ[3,2−b]チオフェン−2,6−ジイル、チエノ[3,2−b]チオフェン−3,6−ジイル、チエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル、チエノ[2,3−b]チオフェン−3,4−ジイル、チエノ[2,3−b]チオフェン−2,4−ジイル、チエノ[2,3−b]チオフェン−2,5−ジイル、チエノ[3,4−b]チオフェン−4,6−ジイル、チエノ[3,4−b]チオフェン−2,6−ジイル、チエノ[3,4−b]チオフェン−2,4−ジイル、から選択される基であるのが好ましい。
【0027】
化学式(6)〜(10)中の、R、R、R、R、R、R、R10、R11,R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18が表す置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基としては、Rで例示したものと同じものが挙げられ、また、かかる置換基としても、同様に同じものが挙げられる。
【0028】
化学式(9)中のR18が表すアリール基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等から誘導されるアリール基が挙げられる。アリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。
【0029】
化学式(9)中のR18が表すヘテロアリール基としては、例えば、チオフェン環、ピロール環、フラン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環等から誘導されるヘテロアリール基が挙げられる。ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。
【0030】
化学式(1)で表されるジハロゲン化チオフェン化合物と化学式(2)で表されるヘテロアリーレン化合物とを反応させることにより、化学式(3)で表される3位にハロゲン原子を有することを特徴とするジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体が得られる。化学式(3)中のX、R及びAは、化学式(1)及び(2)で挙げたものと同じである。
【0031】
前記ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体とアルコールを反応させることにより、本発明の目的物である、化学式(4)で表されるチオフェン環の3位にアルコキシ基が導入されたアルコキシチオフェン誘導体を製造することができる。
【0032】
化学式(4)中のRを表す化学式(5)において、〔W−(CH〕の繰り返し単位は、Wがそれぞれ酸素原子のみ又は硫黄原子のみであってもよく、両原子が規則的又は不規則的に含有されているものであってもよい。
【0033】
化学式(5)において、Rが表す炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロプロピル基等が挙げられる。Rが表すアルキル基は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。
【0034】
化学式(4)において、−O−Rで表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ基、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ基、2−(3−(2−メトキシエトキシ)プロポキシ)エトキシ基、3−(3−メトキシプロポキシ)プロポキシ基等が挙げられる。
【0035】
化学式(3)で表されるジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体と反応させるアルコールとしては、特に制限はなく任意のものを使用することができる。具体的には、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n‐ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−ヘキサデカノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、2−メチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロプロパノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエトキシエタノール、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エタノール、2−(3−(2−メトキシエトキシ)プロポキシ)エタノール、3−(3−メトキシプロポキシ)プロパノール等が挙げられる。好ましくは、前記−O−Rで表されるアルコキシ基を形成できるアルコールである。
【0036】
本発明が提供するアルコキシチオフェン誘導体の製造方法は、ジハロゲン化チオフェン化合物(1)とヘテロアリーレン化合物(2)とをクロスカップリング反応する工程(第一工程)、及び第一工程で得られたジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体(3)にアルコール(ROH)を反応させることによりアルコキシ基を導入する工程(第二工程)に分けられる。以下、各工程について説明する。
【0037】
【化10】

(式中、R、R、X、X、A、M及びMは前記定義の通り。)
【0038】
〔第一工程〕
第一工程で使用するジハロゲン化チオフェン化合物(1)の製法に特に制限はなく、例えば、3−ブロモチオフェンの2位をブロモ化することで製造できる(非特許文献4)。市販品をそのまま使用することもできる。
〔非特許文献4〕Bioorganic & Medical Chemistry Letter,15,3,617−620(2005)
【0039】
第一工程で使用するヘテロアリーレン化合物(2)の製法に特に制限はなく、例えば、チオフェンとブチルリチウムを反応させ、2位、5位をリチオ化した後、塩化トリメチルスズを反応させることで製造できる(非特許文献5)。市販品を使用することも可能である。
〔非特許文献5〕Synthetic Communication,13,2,121−128(1983)
【0040】
第一工程は、ジハロゲン化チオフェン化合物(1)とヘテロアリーレン化合物(2)を窒素、又はアルゴン雰囲気下、遷移金属化合物存在下において、クロスカップリング反応することにより行う。クロスカップリング反応としては、例えば、化学式(2)のM、Mがハロゲン化マグネシウムで示される基を用いた玉尾−熊田−Corriu反応、ハロゲン化亜鉛で示される基を用いた根岸反応、ホウ酸又は、ホウ酸エステルで示される基を用いた鈴木−宮浦反応、トリアルキルスズで示される基を用いた右田−小杉−Stille反応等が挙げられる。
【0041】
第一工程で使用する遷移金属化合物としては、有機化学合成において、クロスカップリング反応を行う際に一般的に用いられる遷移金属化合物を用いることができる。例えば、ニッケルやパラジウム等にリン系の配位子が配位している金属錯体を用いることが好ましい。パラジウム化合物としてPd(PPh、Pd(dba)、Pd(dba)、Pd(OAc)等が挙げられ、ニッケル化合物としては、NiCl(dppp)、Ni(acac)等が挙げられる。また、リン系の配位子を共存させておくこともでき、例えば、トリアルキルホスフィン類、トリアリールホスフィン類、トリアルキルホスホニウム塩類、トリアリールホスホニウム塩類等が挙げられる。
【0042】
遷移金属化合物の使用量は、使用されるジハロゲン化チオフェン化合物(1)またはヘテロアリーレン化合物(2)に対して1当量以下であり、好ましくは0.1当量以下である。
【0043】
第一工程の反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限りどのような溶媒でも構わないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を併用して用いてもよい。また、水と有機溶媒を混合してもよく、化学式(2)のM、Mがホウ酸又はホウ酸エステルの場合には、水と有機溶媒との混合溶媒を懸濁状態で行うことが好ましい。水と有機溶媒の混合溶媒を使用する場合、4級アンモニウム塩、ホスニウム塩、クラウンエーテル等を相関移動触媒として添加してもよい。溶媒の使用量は、経済性及び、後処理の容易さの観点から、ジハロゲン化チオフェン化合物(1)に対して0.1質量倍から200質量倍であることが好ましい。
【0044】
第一工程で化学式(2)のM、Mがホウ酸又はホウ酸エステルの場合には、塩基の存在下で反応を行うことが好ましい。塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属水酸化物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のカルボン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸塩等が挙げられる。この場合の塩基の使用量は、ヘテロアリーレン化合物(2)に対して、2当量以上であることが好ましい。
【0045】
第一工程の反応温度は、使用する溶媒、化合物(1)、化合物(2)等によっても異なるが、−20℃から用いる溶媒の還流温度の範囲内である。
【0046】
第一工程の反応時間は、使用する溶媒、化合物(1)、化合物(2)等によっても異なるが、0.5時間から72時間の範囲が好ましく、1時間から24時間の範囲がより好ましい。
【0047】
第一工程において、必要があれば溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶などの有機化合物を単離する際に用いられる操作を行うことにより、アルコキシチオフェン誘導体の前駆体であるジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体(3)を単離することができる。
【0048】
〔第二工程〕
第二工程は、ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体(3)とアルコール(ROH)とを反応させることにより行う。この反応は酸又は塩基の存在下で行うことが好ましく、特に塩基の存在下で行うことが好ましい。
【0049】
第二工程で使用するアルコールの製法に特に制限はなく、市販品をそのまま使用することができる。第二工程で使用する好ましいアルコールとしては、前記に例示したものが挙げられる。アルコールの使用量は、ハロゲン原子Xに対して1〜100当量であるのが好ましい。
【0050】
第二工程で使用してもよい塩基としては、例えば、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類、ピリジン、ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等が挙げられる。塩基の使用量は、ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体(3)に対して、0.8モルから20モルの範囲であることが好ましく、0.8〜10モルの範囲であることがさらに好ましい。
【0051】
第二工程の反応性向上のため、ルイス酸を添加してもよい。ルイス酸としては、金属銅、臭化銅、ヨウ化銅等が挙げられる。ルイス酸の使用量としては、ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体(3)に対して、1当量以下であることが好ましく、0.5当量以下であることがより好ましい。
【0052】
第二工程は、溶媒の存在下、又は非存在下に実施することができる。溶媒としては、反応を阻害しなければ特に制限はなく、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等が挙げられる。また、水と有機溶媒を混合してもよい。
【0053】
第二工程の反応温度は、使用する溶媒、ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体(3)、アルコール等によっても異なるが、−20℃から用いる溶媒の還流温度の範囲内である。
【0054】
第二工程の反応時間は、使用する溶媒、ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体(3)、アルコール等によっても異なるが、0.5時間から72時間の範囲が好ましく、1時間から24時間の範囲がより好ましい。
【0055】
第二工程で得られたアルコキシチオフェン誘導体(4)は、必要に応じて常法により分離精製できる。例えば、反応混合物を水洗した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー又は再結晶等の通常の有機化合物の分離精製に用いられる方法により精製することができる。
【0056】
このような工程を経ることにより、目的のアルコキチオフェン誘導体(4)を、不安定な中間体を経ずに効率的に合成することができる。得られたアルコキシチオフェン誘導体(4)は、半導体性能及びドープされた状態において高い導電性能を示し、かつ大気安定性を有する重合体の材料として有用である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
2,5−ビス−3−ブロモチオフェン−2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンの合成
【0059】
【化11】

【0060】
温度計およびジムロート冷却器を備えた500ml三つ口フラスコに窒素雰囲気下、クロロベンゼン300g、2,5−ビス(トリメチルスズ)−チエノ[3,2−b]チオフェン3.00g(6.4mmol)、2,3−ジブロモチオフェン3.10g(13mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム118mg(0.13mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン157mg(0.52mmol)、塩化リチウム273mg(6.4mmol)を加えた。反応容器を90℃に加熱した後、3時間攪拌した。反応終了後、反応液にヘキサンを添加し室温まで冷却し、反応液をろ過した。残渣を集め、以下の物性を示す2,5−ビス−3−ブロモチオフェン−2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンを2.00g(収率67.2%)得た。
【0061】
H−NMR(270MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:7.05(2H,d,J=5.4Hz)、7.24(2H,d,J=5.4Hz)、7.60(2H,s)
【0062】
<実施例2>
2,5−ビス−3−ドデシルオキシチオフェン−2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンの合成
【0063】
【化12】

【0064】
温度計およびジムロート冷却器を備えた50ml三つ口フラスコに窒素雰囲気下、DMF5g、水素化ナトリウム(60%オイルディスパージョン)130mg(3.2mmol)を添加したところにドデカノール4.00g(22mmol)を投入した。滴下終了後30分攪拌した。その後、臭化銅61.7mg(0.43mmol)を添加し、DMF5gに溶解した実施例1で得られた2,5−ビス−3−ブロモチオフェン−2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェン1.00g(2.2mmol)を投入した。反応混合液を3時間、内温100℃で攪拌した。反応終了後、反応液に酢酸エチルと2規定塩酸水溶液を投入し中和した後、有機層と水層を分離した。この有機層は減圧下に濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製することで、2,5−ビス−3−ドデシルオキシチオフェン−2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンを890mg(収率60%)得た。
【0065】
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)δ:0.87(6H,t,J=6.6Hz)、1.26(36H,m)、1.86(4H,m)、4.12(4H,t,J=6.5Hz)、6.85(2H,d,J=5.3Hz)、7.06(2H,d,5.3Hz)、7.35(2H,s)
【0066】
<実施例3>
2,5−ビス〔3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン〕2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンの合成
【0067】
【化13】

【0068】
温度計およびジムロート冷却器を備えた50ml三つ口フラスコに窒素雰囲気下、DMF5g、水素化ナトリウム(60%オイルディスパージョン)130mg(3.2mmol)を添加したところに2−(2−メトキシエトキシ)エタノール2.64g(22mmol)を投入した。滴下終了後30分攪拌した。その後、臭化銅61.7mg(0.43mmol)を添加し、DMF5gに溶解した実施例1で得られた2,5−ビス−3−ブロモチオフェン−2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェン1.00g(2.2mmol)を投入した。反応混合液を3時間、内温100℃で攪拌した。反応終了後、反応液に酢酸エチルと2規定塩酸水溶液を投入し中和した後、有機層と水層を分離した。この有機層にヘキサンを加え、再結晶化で精製することで、2,5−ビス〔3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン〕2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンを750mg(収率63%)得た。
【0069】
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS)δ:3.40(6H,s)、3.58(4H,m)、3.75(4H,m)、3.92(4H,t,5.0Hz)、4.30(4H,t,5.0Hz)、6.87(2H,d,5.5Hz)、7.07(2H,d,5.5Hz)、7.39(2H,s)
【0070】
<比較例1>
2,5−ビス−3−ドデシルオキシチオフェン−2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンの合成
【0071】
【化14】

【0072】
温度計およびジムロート冷却器を備えた100ml三つ口フラスコに、クロロベンゼン50ml、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン466mg(1.00mmol)、2−ブロモ−3−ドデシルオキシチオフェン695mg(2.00mmol)、塩化リチウム42.4mg(1.00mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム18.3mg(0.0200mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン24.4mg(0.0800mmol)、を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、8時間攪拌した。反応終了後、トルエン200ml及び飽和食塩水を200ml加え、有機層と水層を分離した。有機層は減圧下で濃縮することにより、粗成生物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2,5−ビス−3−ドデシルオキシチオフェン−2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンを302mg(0.449mmol,44.9%)得た。
【0073】
<比較例2>
2,5−ビス〔3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン〕2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンの合成
【0074】
【化15】

【0075】
温度計およびジムロート冷却器を備えた100ml三つ口フラスコに、クロロベンゼン50ml、2,5−ビス(トリメチルスズ)−[3,2−b]チエノチオフェン466mg(1.00mmol)、2−ブロモ−3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン562mg(2.00mmol)、塩化リチウム42.4mg(1.00mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム18.3mg(0.0200mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン24.4mg(0.0800mmol)を加えた。反応容器を130℃に加熱した後、8時間攪拌した。反応終了後、トルエン200ml及び飽和食塩水200mlを加え、有機層と水層を分離した。有機層を200mlの水で2回、洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することにより、粗成生物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2,5−ビス〔3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン〕2−イル−チエノ〔3,2−b〕チオフェンを228mg(0.420mmol,42.0%)得た。
【0076】
実施例1より、本発明の製造方法を用いることで、アルコキシチオフェン誘導体の前駆体として有用な、チオフェン環の3位にハロゲン原子を有するジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体を高収率で得ることができることがわかる。また、実施例2、3より、本発明の製造方法を用いた場合、副生成物の生成が少なく高収率でアルコキシチオフェン誘導体を得ることができることがわかる。一方、本発明で規定する第一工程、第二工程を経ていない比較例1、2では、副生成物が多く目的のアルコキシチオフェン誘導体の収率は低かった。このことから、本発明の製造方法はアルコキシチオフェン誘導体の製造方法として優れていることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】

〔化学式(1)中、X及びXはそれぞれ同一または異なるハロゲン原子であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基である〕
で示されるジハロゲン化チオフェン化合物と、下記化学式(2)
−A−M ・・・(2)
〔化学式(2)中、Aは置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基であり、M及びMはハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、トリアルキル化スズ、ホウ酸又はホウ酸エステルである〕
で示されるヘテロアリーレン化合物とを反応させることで、下記化学式(3)
【化2】


〔化学式(3)中、X、R及びAは前記と同じである〕
で示されるジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体を得、次いで、該ジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体とアルコールを反応させることを特徴とする、下記化学式(4)
【化3】

〔化学式(4)中、R及びAは前記と同じであり、
は下記化学式(5)
−〔W−(CH− ・・・(5)
(式(5)中、Rは水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基であり、Wは酸素原子又は硫黄原子であり、〔W−(CH〕は繰り返し単位毎にWとaとが同一又は異なっていてもよく、aは1〜20、bは0〜20の正数である)で示される側鎖である〕
で示されるアルコキシチオフェン誘導体の製造方法。
【請求項2】
置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aがチオフェン誘導体である、請求項1に記載のアルコキシチオフェン誘導体の製造方法。
【請求項3】
置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aが下記化学式(6)〜(10)
【化4】

〔化学式(6)〜(10)中、R、R、R、R、R、R、R10、R11,R12、R13、R14、R15、R16、R17はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基であり、R18は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基である〕
から選択されるいずれかである、請求項2に記載のアルコキシチオフェン誘導体の製造方法。
【請求項4】
置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aがチエノチオフェン−ジイル基である、請求項1又は2に記載のアルコキシチオフェン誘導体の製造方法。
【請求項5】
下記化学式(3)
【化5】

(式(3)中、Aは置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基であり、Xはハロゲン原子であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基である)
で示される、チオフェン環の3位にハロゲン原子を有することを特徴とするジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体。
【請求項6】
下記化学式(1)
【化6】

〔化学式(1)中、X及びXはそれぞれ同一または異なるハロゲン原子であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基である〕
で示されるジハロゲン化チオフェン化合物と、下記化学式(2)
−A−M ・・・(2)
〔化学式(2)中、Aは置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基であり、M及びMはハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、トリアルキル化スズ、ホウ酸又はホウ酸エステルである〕
で示されるヘテロアリーレン化合物とを反応させることで得られる、請求項5に記載のジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体。
【請求項7】
置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aがチオフェン誘導体である、請求項5又は6に記載のジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体。
【請求項8】
置換基を有してもよい2価のヘテロアリーレン基Aが、下記化学式(6)〜(10)
【化7】

〔化学式(6)〜(10)中、R、R、R、R、R、R、R10、R11,R12、R13、R14、R15、R16、R17はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基であり、R18は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基である〕
から選択されるいずれかである、請求項7に記載のジハロゲン化ヘテロアリーレン誘導体。



【公開番号】特開2013−82645(P2013−82645A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222467(P2011−222467)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】