説明

アルコキシル化エポキシド−アミン付加物及びそれらの使用

【課題】水系又は溶媒系の顔料濃縮物(顔料ペースト)の製造に適し、かつバインダ、コーティング材料、プラスチック及びプラスチック混合物の中で粒子状固体物を安定化するのに適したアルコキシル化エポキシド−アミン付加物を提供する。
【解決手段】A)少なくとも8個の炭素原子を有するモノ及び/又はポリエポキシドとB)第1級及び/又は第2級アミン、及び/又は第1級及び/又は第2級アルカノールアミン、及び/又は第2級アルキルアルカノールアミンと反応させて、1個以上の第2級水酸基を有する付加物を生成し、次いで、この付加物をC)アルキレンオキシドでアルコキシル化して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ−アミン付加物に基づく革新的なアミン性(aminic)ポリアルキレンオキシドに関し、これらアミン性ポリアルキレンオキシドの反応生成物にも関する。更に、本発明は有機系及び水系システムにおける有機及び無機顔料並びに充填材用の湿潤剤及び分散剤としての該アミン性ポリアルキレンオキシドの使用に関するものであり、かつ、液体システムへ混和するために、かかる分散剤で被覆した粉状又は繊維状の固体物に関する。
該アミン性ポリアルキレンオキシドは水系又は溶媒系の顔料濃縮物(顔料ペースト)の製造に特に適し、かつバインダ、コーティング材料、プラスチック及びプラスチック混合物の中で粒子状固体物を安定化するのに適している。これらの生成物はかかるシステムの粘度を低下させ、流動特性や貯蔵安定性を改良し、かつ色強度(colour strength)を増加させる。
【背景技術】
【0002】
液状媒質に固体物を混和するには、高い機械的な力を前提とする。したがって、これらの分散力を小さくし、システムに加える全エネルギーを小さくするために、通常、分散剤が使用され、必要に応じて粒子状固体物の凝集を防止し、分散時間を短くする。
これらの分散剤としてはアニオン、カチオン又は中性の構造の界面活性物質が一般的である。これらの分散剤の少量を固体物に直接適用するか、分散する媒質に加える。凝集した固体物を完全に解膠して一次粒子にしても、分散処理後に再凝集する場合があり、分散のための努力の一部又は全部がふいになることも知られている。
不十分な分散により、又はその後の再凝集により、液体システムの粘度が上昇したり、塗料やコーティングの光沢の不均一(shade drift)や損失が生じたり、プラスチックの機械的強度が低下したりなどの好ましくない結果となる。
【0003】
現在、多くの異なる物質が顔料や充填材を分散剤として使用されている。これに関する総説が特許文献1(EP 0 318 999 A2、2ページ、24〜26行)に記載されている。レシチン、脂肪酸及びこれらの塩、並びにアルキルフェノールエトキシレートのように非常にシンプルな化合物の他に、例えば、複雑な構造のものも分散剤として使用されている。湿潤剤や分散剤として使用するこれらの化合物の中で、エポキシドとアミン含有化合物との反応生成物がある。
【0004】
すなわち、特許文献2(US Pat.No.5,128,393)及び特許文献3(US Pat.No.4,710,561)には、モノエポキシドとアミノイミダゾリンとの反応生成物が記載されている。特許文献4(DE 690 02 806 T2)特許文献5(US 5,128,393 A)には、モノエポキシド又はポリエポキシドとアミンとの反応生成物で、イミダゾリン部分を保持しているものを分散剤として使用することが記述されている。
【0005】
(ポリ)エポキシドはバインダの構成成分として長い間知られている。このようなシステムは硬化剤成分としてのアミンと接触させて、架橋させることがしばしば行われている。 これらに関連する最近の開示情報によると、特定のアミン又はアミン−エポキシド付加物をエポキシ樹脂用硬化剤とすることが記述されている。
【0006】
例えば、芳香族ポリエポキシドとポリオキシアルキルアミンとを当量比で反応させて得られた自己分散性架橋性エポキシ樹脂で、その当量比(エポキシ当量:アミン当量)は1:0.1及び1:0.28の間であるものが特許文献6(DE 198 58 920 A1)(特許文献7(US 6,506,821 B1))に見出される。このような化合物のエポキシド基含有量がかなり多いために、製造した顔料濃縮物は、一方では貯蔵安定性が十分でなく、もう片方では異なるバインダとの相溶性が広くないことから、湿潤剤や分散剤として適していない。
【0007】
また、同様な生成物が特許文献8(US−A−3,945,964)及び特許文献9(US−A−4,485,229)に水系乳化剤として記述されている。さらに、特許文献10(US−A−4,4,051,195)及び特許文献11(EP−A−0 245 559)には、ポリオキシアルキルアミンを有するエポキシドに基づく架橋剤で、さらに、アクリル酸エステルとマイケル反応させたものが記述されている。これらの生成物は同様に架橋剤成分として機能することを意図しているので、これらの例示物も同様に架橋可能な基の密度が高く、分散剤としては使用でない生成物であると解釈される。
【0008】
特許文献12(WO 96/20971)記載の生成物、すなわち、エポキシ樹脂とアミン−エポキシド付加物との反応生成物であって自己乳化性架橋性エポキシ樹脂ついても、同じことが言える。上記のアミン−エポキシド付加物はポリエポキシドと不足当量のポリオキシアルキレンジアミンとの反応生成物である。
【0009】
特許文献13(EP 747 413 A2)には、脂肪族ポリオールと環当り少なくとも2個のエポキシド基を有するエポキシドとの反応生成物である乳化剤が記述されている。
したがって、これらの化合物は塩を生成することができる窒素原子がないので、顔料や充填材との親和性が無い。
【0010】
上記の分散剤のすべてについて共通していることは、これらは狭い領域における使用のために開発されたものに過ぎず、特に、極性が極端に変化するシステムに共通して使用するには限られた程度しか有用でない。
【0011】
着色用(カラーリング)水系の共溶媒含有又は溶媒含有コーティングシステムのための建築塗料工業において主に使用されるもので、普遍的な着色用ペーストとして知られているペーストにおいて、アルキルフェノールエトキシレート類及び/又はこれらのリン酸エステルが湿潤剤及び分散剤として長年使用されてきた。分散剤として上記使用のエポキシド付加物に比べ、これらの物質はバインダとして使用する場合に幅広い相溶性を示すことが注目される。
しかしながら、毒性的理由により、これらの化合物は批判の的であり、国によってはこれらの使用について、既に厳しい制限が課されている。
【0012】
アルキルフェノールエトキシレートに代わるものとして、脂肪アルコールエトキシレート及び/又はこれらのリン酸エステルが着色用ペーストを製造するために使用されている。脂肪アルコールエトキシレートを用いても、殆どの場合に、アルキルフェノールエトキシレートが有している顔料を安定化するという前向きの性質は達成されていない。さらに、生じた泡を安定化させるという傾向は、多くの脂肪アルコールエトキシレートによる負の副作用の一つである。
【0013】
当該脂肪アルコールエトキシレート及びその誘導体に加えて、分散剤として、ブロック共重合体リン酸エステル類及びこれらの塩(特許文献14(DE−A−100 29 648)/特許文献15(US 2,002,011,183 A1))及びスチレンオキシド含有ポリアルキレンオキシド(特許文献16(DE−A-199 40 797)/特許文献17(EP 0001078946 A1))も作られている。
【0014】
アルコキシル化エチレンジアミンに基づく化合物は基本的なポリアルキレンオキシドの分野における先行技術としてみなすことができる。この種の物質は、BASF AGの商標名Tetronic又はQuadrol(例えば、Tetronic RED 9040)、さらに、Clariant GmbHの商標名Genapol(例えば、Genapol ED 3060又はPN 30)のものを市販品として入手することができる。
さらに、市販品として入手できる乳化剤又は湿潤剤及び分散剤としてはUnion Carbide Corporationから、ポリエチレンオキシド/ビスフェノール A重合体である製品Carbowax M20のような、ポリアルキレンオキシド/ビスフェノール A重合体がある。しかしながら、これらの製品には窒素原子が無い。
【0015】
特許文献18(WO 02/16471)には、一般的に、芳香族の出発アルコールとエチレンオキシドとを反応させ、ついで、通常、プロピレンオキシドと反応させて得られるブロック共重合体の分散剤が記述されている。また、この文献には、アミン(例えば、N−フェニル−1−ナフチルアミン)とプロピレンオキシドとの反応生成物も記述されている。その上、1ページの3節には、本件に関する特許文献のリストがある。当該特許や当該特許に記述された文献には、アミンと高分子量エポキシドとの反応生成物における第2級水酸基のアルコキシル化について何ら言及されていない。
また、特許文献18の物質は顔料表面への親和性が弱く、このため、いわゆる顔料濃縮物の製造のための適正には限りがある。
【0016】
【特許文献1】EP 0 318 999 A2
【特許文献2】USP5,128,393
【特許文献3】USP4,710,561
【特許文献4】DE 690 02 806
【特許文献5】US 5,128,393 A
【特許文献6】DE 198 58 920 A1
【特許文献7】US 6,506,821 B1
【特許文献8】US−A−3,945,964
【特許文献9】US−A−4,485,229
【特許文献10】US−A−4,4,051,195
【特許文献11】EP−A−0 245 559
【特許文献12】WO 96/20971
【特許文献13】EP 747 413 A2
【特許文献14】DE−A−100 29 648
【特許文献15】US 2,002,011,183 A1
【特許文献16】DE−A-199 40 797
【特許文献17】EP 0001078946 A1
【特許文献18】WO 02/16471
【特許文献19】WO 96/20971
【特許文献20】WO 01/05900
【特許文献21】DE−A−3623297
【特許文献22】EP 0 675 076
【特許文献23】EP 01 207 135
【特許文献24】EP−A− 0 270 126
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、顔料や充填材を効果的に安定化するとともに、高充填で加工できるようにするために、塗料、ペースト又はプラスチック処方のミルベース(mill base)粘度を低くすることができるように、例えば、分散用の添加剤のような既知の分散剤の上述した欠点を除くことが本発明の一つの目的である。同時に、特に顔料ペースト及び充填材ペーストの場合には、広い相溶性を確保することで、これらのペーストが多くの異なるバインダやコーティング材料に使用できるようにすることである。次の要件としては、使用する発明性のある分散用添加剤は、相互にこれらのペースト又はこれらのペーストを使用して製造するバインダに凝集を生じさせないで混和できることである。
驚くべきことに、以下に記述したアミン性ポリアルキレンオキシド及び/又はこれらの更なる反応生成物が上述の要件を満たすことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらのアミン性ポリアルキレンオキシドは、500g/モルを超える数平均分子量を有するアルコキシル化エポキシド−アミン付加物であって、このアルコキシル化エポキシド−アミン付加物は、
A)少なくとも8個の炭素原子を有するモノ−及び/又はポリエポキシドと、
B)第1級及び/又は第2級アミン、及び/又は第1級及び/又は第2級アルカノールアミン、並びに/もしくは第2級アルキルアルカノールアミンを反応させて、1個以上の第2級水酸基を有する付加物を作り、次いで、該付加物を
C)アルキレンオキシドでアルコキシル化することにより製造することができる。
【0019】
エポキシ基当り1個の反応性アミノ基を用いるような比率でもって、成分A及びBは相互に有利に反応する。これらの比率を変えることは可能であるが、そうすることによるメリットは特に無い。使用する成分Cの量は、この成分の分子量及びアルコキシル化エポキシド−アミン付加物の目的とする分子量の関数である。
【0020】
成分A、B及びCから得られるエポキシド−アミン付加物は高価値の湿潤剤及び分散剤である。これらは2段階の反応で得られるそのままの形で使用することが出来、上述した技術的目標を達成することができる。しかしながら、或る場合には、個々のケースにおけるこれらの性質を特定の要件に適合させるため、特に、種々の顔料、コーティング材料及びプラスチックとの相溶性を良くするために、これらを更に修飾することが望ましい。下記したものがこの種の修飾であり、エポキシド−アミン付加物中の水酸基及び/又はアミノ基との反応により得られるものである。修飾している間に、これらは部分的又は完全に反応させることができる。
【0021】
下記した修飾反応は、所望に応じて相互に組み合せることができ、これにより多くの修飾生成物を製造することができる。2以上の修飾反応を連続して行う場合には、個々の反応ステップを実行する時に、1以上の連続反応に備え、分子中に十分な数の反応性基が保持されるように留意しなければならない。
【0022】
成分A, B及びCの反応並びに引続き行う生成物であるエポキシド−アミン付加物の修飾により、多くの異なる湿潤剤及び分散剤を製造することができる。 これらは個別に、又は、例えば、異なるエポキシド−アミン付加物の混合物のように相互に組合せて使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のアルコキシル化エポキシド−アミン付加物は水系又は溶媒系の顔料濃縮物(顔料ペースト)の製造に適し、かつバインダ、コーティング材料、プラスチック及びプラスチック混合物の中で粒子状固体物を安定化するのに適している。これらの生成物はかかるシステムの粘度を低下させ、流動特性や貯蔵安定性を改良し、かつ色強度(colour strength)を増加させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
上述した修飾が本発明の利点の具体的なものであり、下記のようにすることで当該修飾が可能となる。
a)アルコキシル化で生じる水酸基とヒドロキシカルボン酸及び/又は環状ラクトンとを反応させて、(ポリ)エステルを生成する、
b)アルコキシル化で生じる水酸基をエステル化又はエーテル化する、
c)アルコキシル化で生じる水酸基と少なくとも1個のフリーなイソシアネート基を有する(ポリ)イソシアネート又はポリイソシアネート付加物を反応させてウレタンとする、
d)リン酸又はポリリン酸、及び/又は酸性リン酸エステル及び/又はカルボン酸と反応させてそれぞれの有機塩を生成する、
e)アルコキシル化で生じる水酸基を反応させて酸性リン酸エステルを生成する、
f)該アミノ基をアルキル化又は酸化して第4級アンモニウム塩又はN−オキシドを生成する。
A)で述べたエポキシ化合物は、スチレンオキシド、少なくとも8個の炭素原子を有するアルキルグリシジルエーテル(例えば、C10−C16アルキルグリシジルエーテル)及び少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル−エポキシアルキルエステル(例えば、2,3−エポキシプロピル ネオ−デカネート)、又は少なくとも8個の炭素原子を有するポリエポキシ化合物で、これらを単独で、又は混合物で使用することができる。これらのエポキシド化合物を用いて得られる本発明のアミン性ポリアルキレンオキシドが非常に良い湿潤及び分散性質を有しているので、芳香族含有エポキシ化合物が好ましい。
【0025】
特に、1分子当たり平均1.5〜5のエポキシ官能基を持つ芳香族含有ポリエポキシドが好ましく、さらに、これらの中でも、1分子当たり平均2個のエポキシ官能基を有する該エポキシドがより好ましい。何故なら、これらを用いて製造されるアミン性アルキレンオキシドは素晴らしい湿潤及び分散性質を発揮するからである。これらの芳香族含有ポリエポキシドの例として、多官能性フェノールのポリグリシジルエーテルを挙げることができる。多官能性フェノールとは、特許文献19(WO 96/20971、16ページ、15行〜17ページ、18行)に記述されている化合物のことである。これらのフェノールの中では、多環ジフェノール類を含めて、ジフェノール類が好ましい。
【0026】
これら芳香族含有ポリエポキシドのグループの典型的な例として、ジフェニルオールプロパン(ビスフェノール A)とエピクロルヒドリン及びこの高級同族体との反応生成物があり、例えば、DOW Chemical Companyの商標名D.E.R.(例:D.E.R.331)又はResolution Performance Productsの商標名Epikote(例:Rpikote 828又は1001)で提供されている。その他に、適切なエポキシ化合物として、特許文献20(WO 01/05900の8〜9ページ)にその例がある。
【0027】
本発明の生成物の更に好ましい具体例としては、特許文献21(DE−A−3623297)の実施例に記述されているように、ノボラックに基づく反応物質との反応である。多官能性エポキシドの場合には、アミンの付加反応やそれに続くアルコキシ化反応に影響しない限り、本発明のアミンの付加反応に加えて、その他の反応もエポキシ基について行うことができる。従って、多官能性エポキシドの場合に、例えば、本発明のアミンの1個の付加反応の前又は後に、幾つかのエポキシ基をカルボン酸と反応させてβ−ヒドロキシエステルを生成することができる。
【0028】
B)で述べた第1級及び/又は第2級アミンに関し、脂肪族の第2級アミンはエポキシド−アミン付加物を製造する際の反応レジメのコントロールが特に上手く出来るので、この脂肪族の第2級アミンが特に好ましい。上述した第2級アミンの例は、ジアルキルアミン、アルキルシクロアルキルアミン、ジシクロアルキルアミン、及びピロリジン、ピペリジン及びモルホリンのような環状脂肪族アミンである。
【0029】
アルキルアミン及びジアルキルアミンの特に好ましい代表としては、アルキル及び/又はシクロアルキル鎖の炭素数が3及び28の間であるアミン類挙げられる。
具体的には、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、エチルヘキシルアミン、ジエチルヘキシルアミン及び高級同族体、メチルシクロヘキシルアミン及び高級同族体、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミンである。何故なら、これらの生成物は使用する該アミン類の沸点が高いので、反応が特に容易に達成されるからである。
【0030】
更なる好ましい具体例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン又はエチルエタノールアミンのような第1級及び/又は第2級アルカノールアミン、及び/又はアルキルアルカノールアミンに基づく生成物である。このグループから、特にアルキルアルカノールアミンに基づく生成物が好ましい。何故なら、エポキシド−アミンの付加物を製造する時の反応レジメが特に良くコントロール出来るからである。
【0031】
反応材料が架橋する可能性があるので、上述した反応のための第1級アミンの使用が制限される。このようにポリエポキシド化合物を使用する時には、反応溶液が架橋するから第1級アミンの等モル量を使用することできない場合が多い。そのような場合、例えば、不必要な架橋反応が起こるのを防ぐために、第1級及び第2級アミンの混合物を使用することができる。
【0032】
ヒドロキシル官能基の他に、本発明の生成物を製造するために使用するアミンは、更に、例えば、アルコキシ官能基、すなわち3−エトキシプロピルアミン、ビス(2−メトキシ−エチルアミン)及び/又はメチルベンジルアミンのような芳香族分子成分のように、次のアルコキシル化反応で不活性である他の官能基を有することができる。次に行うアルコキシル化において不活性である官能性を有するアミンを使用する時には、これらのアミンの中で、好ましい具体例としては、例えばジメチルアミノプロピルアミンのように更に第3級のアミノ基を有する第1級及び第2級アミンである。
【0033】
更なる官能性を有するアミンの中で、第1級又は第2級のアミノ基、及びアミノプロピルイミダゾール及び2−ピロリジノエチルアミンのような窒素を含有する複素環を有するアミンが好ましい。
【0034】
β-ヒドロキシアミノ官能基を形成するアミノ基を有するエポキシ官能基の反応は、当業者にとって知られているプロセスを用いて、溶媒中、又は好ましくは無溶媒(バルク)で行うことができる。該エポキシ基及び該アミンとの間の反応温度は、該付加物の反応性に依存する。多くのエポキシドは室温でさえアミンと反応する。その一方で、低い反応性の反応物質にとっては、160℃までの反応温度が必要である。本発明のエポキシドと本発明のアミンとの反応のための特に適切な反応温度は80〜140℃である。すなわち、この温度で破壊的な副反応が生じることが無く、急速な反応が進むからである。必要に応じて、当業者に知られている触媒を、エポキシドとアミンとの反応を加速するために加えることができる。反応の進み具合は、例えば、HPLCを用いて分析的に監視することができる。
【0035】
該(ポリ)エポキシド類及び該アミンから生成した付加生成物を当業者に知られている方法でアルコキシル化する。アルコキシル化では、付加反応中に生成するβ−水酸基上のみならず、存在する(アルキル)アルカノールアミンのいずれかの水酸基上及び/又は第1級アミンとエポキシドとの付加反応中に生成した第2級アミン上にポリアルコキシ鎖の形成が伴う。アルコキシル化は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、デセンオキシド及び/又はスチレンオキシドを使用して効果的に行うことができる。
【0036】
上述の生成物の中では、種々のアルキレンオキシドのブロック状配列の物が格別に好ましいものであり、例えば、最初にポリエチレンオキシドブロックとし、次いで、これにポリプロピレンブロックを重合させた生成物である。基本的なアルコキシレートの更なる好ましい具体例は、0〜40℃の間で液体である生成物である。
【0037】
アミン性ポリアルキレンオキサイドの塩類の生成は(d)で概説された、バルク(無溶媒)か、適切な溶媒もしくはキャリア媒質中で行うことができる。生成する有機塩類の粘度によって溶媒を使うかどうかを決める。このように、酸性成分としてポリリン酸を使用する場合には、塩の生成が低レベルでも粘度が急上昇するので、多くの場合に溶媒又はキャリア媒質を使用することが必要になる。これに関連して、塩化度は、使用する酸の酸当量とアミン性ポリアルキレンオキシドのアミン当量との比であると理解しなければならない。そして、それは0.05及び2.5間の値を用いることが好ましく、0.2及び1の間の値を用いることが特に好ましい。何故なら、最後に言及した生成物は異なるバインダ及び固体物のために最も幅広い有用性があるからである。
【0038】
分散させる固体物により、より高い又はより低い塩化度を有するる生成物を用いることができる。このように、例えば、酸性カーボンブラック等級品を分散させる場合に、優れた分散特性を有する塩化生成物を使用することができる。この塩化生成物は相当に過剰な塩基性の基を持っており、結果的に、アミン性ポリアルキレンオキシドは対応する有機酸で完全には塩化されない。完全には塩化されていない生成物と同様に、例えば、それ自身が塩基性である固体物を分散させる場合のように、アミン当量に基づき、酸過剰(塩化度>1)である生成物を使用することが特定の用途にはもっぱら理に適っている。
【0039】
これらの生成物が異なる顔料やバインダと特に幅広い相溶性を示すことに注目すべきことであり、従って、アミン性ポリアルキレンオキサイドの塩類としての好ましい具体例はポリリン酸及び/又は酸性リン酸エステルとの塩である。カルボン酸を有するる塩類の好ましい具体例はアミン性ポリアルキレンオキサイドと不飽和脂肪酸やクエン酸との塩であり、これらの生成物は湿潤剤及び分散剤として優れた特性を備えている。
【0040】
後述するアルコキシル化及びポリエステル化反応の間に形成される水酸基は、e)で述べたように、当業者に知られた方法により酸性リン酸エステル基に変換することができる。
【0041】
酸性リン酸エステルの合成は、Houben−Weylの「有機化学の方法(Methoden der Organischen Chemie)」XII/2、第4版、143ページff、の実施例として記載されている。使用するリン酸化試薬(例えば、P25、PCl5、ポリリン酸(PPS))の特性、並びにリン酸化する成分(R1OH)に対するリン酸化試薬の化学当量に基づき、モノエステル又はジエステルもしくは両種の混合物が生成する。比較的新規なリン酸化方法を用いて、広い限度の範囲内でリン酸モノエステル及びジエステルの量を制御することが可能である(特許文献22(EP 0 675 076)、 特許文献23(EP 01 207 135))。
【0042】
リン酸化反応においてリン酸化される異なる成分の混合物を使用することも可能である。当業者が知っているように、縮合度が比較的高いポリリン酸を使用する場合には、リン酸エステル類のためだけではなく、比率を変化させて、ポリリン酸エステルが生成するようにすることができる。本発明のアミン性ポリアルキレンオキサイドをリン酸化する時、特に難しいのはその中のアミノ基の存在である。例えば、予め該アミノ基が塩化されている場合にだけ、例えば、水酸基をポリリン酸でリン酸化することが容易にできる。酸性のリン酸化試薬の場合、それを過剰に使用することにより、この塩化が有利に起こることができる。場合によっては、相当の過剰量を使用した場合にのみ、反応は満足できるものとなる。
【0043】
b)の下で用意された発明性のあるアミン性ポリアルキレンオキシドの酸性リン酸エステルは、バルク(無溶媒)又は特別の方法である中和した状態で、例えば、二酸化チタン又は酸化鉄のような無機顔料を分散させるために好適である。何故なら、これらの生成物を使用することにより、特に、顔料の高充填が可能となるからである。
【0044】
b)で述べたように、アルコキシル化の間に形成される水酸基をエステル化又はエーテル化することができる。該エステル化又はエーテル化はある条件の下に起こることが当業者に知られている。その条件とは、例えば、該水酸基のエステル化又はエーテル化が十分な反応速度で行われるためには、多くの場合に、アミノ基が先に塩化されなければならないということである。或る種のバインダとフリーの水酸基とが不必要な反応を起こし、このシステムの貯蔵安定性が相当に低くなるので、或る場合には、本発明のエステル化又はエーテル化されたアミン性ポリアルキレンオキサイドはエステル化又はエーテル化されていないアミン性ポリアルキレンオキシドより好ましい。
【0045】
該エステル化されたアミン性ポリアルキレンオキシドの好ましい具体例としては、重合できる単位を有するる修飾体である。これは、例えば、アクリル酸又はメタアクリル酸でエステル化する間、又はアルキル(メタ)アクリレートでトランスエステル化する間に生成するものである。かかるエステル化は特に温和な条件で行うことが出来、特に、酵素的触媒作用によるエステル化方法が好ましい。該エステル化されたアミン性ポリアルキレンオキシドの更に好ましい具体例は、架橋の間に特定のコーティングシステムに組み込むことができる修飾体である。例えば、アルキド塗料に混和することができる、この種の修飾体は、例えば、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸のような(ポリ)不飽和(共役)カルボン酸でエステル化する間に生じる。
【0046】
アルコキシル化の間に生成する水酸基の修飾体のその他のものとしては、ヒドロキシカルボン酸及び/又は環状ラクトンとの反応で(ボリ)エステルを生成するものがある。この反応は、当業者に知られた方法で起こる。アミノ基が同時に存在する結果として、アミノ官能性基を有しない生成物の反応速度と比較して、この反応速度が著しく低下することが多く、この低下は、触媒量を増やすことで部分的に改善することができるに過ぎない。上述したアミン性ポリアルキレンオキシドの(ポリ)エステルの好ましい具体例として、例えば、反応物質としてのε−カプロラクトン及び/又はδ−バレロラクトンのような環状ラクトンに基づく生成物がある。 この反応において、末端水酸基はそのまま保持される。この種の生成物は、特に、多くのコーティングシステムにおいて幅広い相溶性が顕著である。
【0047】
c)に従って、アルコキシル化又はポリエステル化において生成する水酸基は、また、イソシアネートと反応してウレタンとすることができる。ウレタン生成は、当業者に知られている方法で行われる。多くの場合、第3級アミノ官能基のために触媒を必要としない。エステル化やエーテル化に際して、水酸基がコーティングシステムを破壊するようであれば、水酸基をウレタン基に変換するのが良い。さらに、ウレタンの生成は、しばしば湿潤剤及び分散剤の起泡抑制効果(foam suppressant effect)にとって良い結果となる。泡立ち傾向を抑制することは、特に、水系の処方で分散させる際に、この種の湿潤剤や分散剤の有用な付随的機能である。
【0048】
f)下で述べたように、アミン性ポリアルキレンオキシドの第4級化物もまた用いることができる。例えば、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アラルキルで、ハロカルボン酸エステルで、又はエポキシドで行うように、第4級化は当業者に知られている方法で行う。例えば、アミノ基が、顔料濃縮物が混和されるバインダシステムを崩壊する時には、この種の具体例が好ましい。第4級化したアミン性ポリアルキレンオキシドの特に好ましい具体例として、ポリエポキシドと第1級及び第2級アミンとのアルコキシル化反応生成物があり、これは更にジメチルアミノプロピルアミンのような第3級アミンを併せ持つので、例えば、次にこれが第4級化される。
【0049】
本発明の分散剤は、周知の分散剤用の従来技術に従って使用することができる。分散剤はそれ単独で、又はバインダ−と共に使うことができる。ポリオレフィンに使われるときに、例えば、分散剤と共にキャリア材料として対応する低分子量のポリオレフィンを使用するのが有利である。
【0050】
本発明の生成物を湿潤剤及び分散剤として使用する分野としては、カラーレジスト(液晶カラー画面の構成要素)として知られているものの製造分野における顔料製造、陰極並びに、好ましくは陽極電着コーティング用の顔料製造、及びインクジェット用インクへの適用という、特に好ましい3分野が代表的な応用分野である。
【0051】
本発明の生成物を分散剤及び分散安定剤として使用する以外に、また、粉状又は繊維状の固体物を本発明の生成物でコーティングすることも本発明が提供する。有機及び無機の両固体物のこの種のコーティングは、例えば、特許文献24(EP−A− 0 270 126)に記述されているような既知の方法で行う。溶媒又はエマルジョン媒質は除去するか混合物のままとすることができ、ペーストを生成する。これらのペーストは標準の市販品であって、更に、バインダ部分、及び付加的な補助剤並びに添加剤を含むことができる。顔料の場合に、例えば、顔料懸濁液に、又は顔料仕上げの間もしくは後に、本発明の生成物を加えることにより、特に、顔料合成中又は後に顔料表面をコーティングすることができる。
【0052】
このように前処理された顔料のバインダへの混和が相当容易になることが顕著であり、また、未処理の顔料と比較して、粘度、凝集性及び光沢特性も改良されることも顕著である。
【0053】
粉状及び繊維状固体物用のコーティング材料としての上記の応用と同様に、本発明の分散剤は合成樹脂の粘度低下剤及び相溶化剤として使うこともできる。この種の合成樹脂の具体例はシートモールディング組成物(SMC)及びバルクモールディング組成物(BMC)として知られていて、これらは充填材及び繊維を高充填した不飽和ポリエステル樹脂から成るものである。高剛性、良好な表面品質及び難燃特性(例えば、Al(OH)3又はMg(OH)2のような充填材の場合)を得るために、これらのシステムに充填材及び繊維を高充填することが必要であるが、このことにより、SMC及びBMCブレンドの粘度が急上昇したり、繊維の湿潤に伴う問題が生じたりする。SMC及びBMC合成樹脂ブレンドに関連する他の問題は、加工操作の間、収縮を減らすためにその処方にポリスチレン(PS)をしばしば加えることである。PSは使用する不飽和ポリエステル樹脂との相溶性が無く。成分分離を起こす。本発明の生成物を使用することにより、樹脂/充填材混合物の粘度をはっきりと低下させることができるので、充填材の高充填が可能となり、機械的性質、表面品質及び、Al(OH)3又はMg(OH)2を用いる場合には難燃性効果にメリットがある。PS充填SMC又はBMCブレンドを使用するときに、本発明の添加剤は、その優れた分散特性により、PSと不飽和ポリエステル樹脂とが相溶するようになる。これによりこの種のブレンドの貯蔵安定性及び加工信頼性を増やすことになる。
【0054】
本発明の分散剤の使用は、分散する固体物を基準に、0.5〜100重量%の量が好ましい。 しかしながら、特定の固体物を分散するために、実質的により多量の分散剤が必要となることも十分にあり得る。分散剤の量は、分散する固体物の被覆される表面のタイプ及びサイズに本質的に依存している。例えば、カーボンブラックは、云わば、TiO2より実質的に多量の分散剤を必要とする。顔料又は充填材の具体例を特許文献24で見出すことができる。他の具体例としては、特に、ジケトピロロピロール類のような有機顔料や、例えば、純鉄又は混合酸化物に基づく磁性顔料の分野で最近開発されているものがある。
【0055】
さらにまた、炭酸カルシウムや酸化カルシウムのような鉱物質充填剤、並びに、例えば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムのような難燃剤も分散させることが出来る。例えば、シリカのようなマッティング剤も同様に分散し、安定化することができる。本発明の分散剤の使用で、他の特別に適切な一つの分野は、例えば、SiO2、Al23又はZnOのナノ粒子を分散させることである。すなわち、本発明の分散剤は、ナノ粒子を分散している間に、所望の粘度にきちんと低下させることができるからである。
【実施例】
【0056】
さらに、本発明を以下の実施例で例示する。 別途示されない限り、部及びパーセンテージは重量によるものである。分子的均一性を欠いている物質の場合には、記述した分子量は数平均の平均値を表す。
【0057】
該アミンと該(ポリ)エポキシドとの反応の場合には、エポキシ基当たり1個の反応性アミノ基(例えば、ジメチルアミノプロピルアミンの場合には第1級アミノ基のみ)というように、当該反応の化学当量を選択する。アルコキシル化において使用するアルコキシル化剤のモル数は、あらゆるケースでアルコキシル化される全分子に関係する。以下の略語は、種々のアルコキシル化剤を表すものである。
エチレンオキシド: EO
プロピレンオキシド:PO
ブチレンオキシド: BO
デセンオキシド: DO
スチレンオキシド:SO
実施例3の「EO−28;PO−49」は、28モルのエチレンオキシドと49モルのプロピレンオキシドがジエタノールアミン及びD.E.R 331の付加物と反応することを意味する。
【0058】
アルコキシル化の異なる形態の定義として、アルコキシ化のより異なるアルコキシル化剤と順次反応してブロック構造となるか、又は、混合ガス供給(gasmix suply)と称されるように、不秩序構造又はランダム構造(略してランダム)となるかである。ブロック構造の場合、一覧表に示したアルコキシル化剤の配列が該アミン−(ポリ)エポキシ付加物から出発する種々のブロックの配列を示す。従って、例えば、実施例18において、「EO−ブロック−PO」は、最初に、EOブロックがジブチルアミンとD.E.R 331との付加物に重合し、引き続き、出来たEOブロックにPOブロックが重合する。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
実施例26
実施例22による反応生成物(アミン価(AmN): 22.8 mg KOH/g)の100部を、85%力価のリン酸(測定酸価(AN): 973mg KOH/g)の5.9部で塩化する。これにより、透明で黄色の反応生成物が得られる。この実施例における塩化度は2.5である。
【0062】
実施例27
実施例11による反応生成物(AmH:21.9 mg KOH/g)の85部をリン酸モノエステル[(HO)2PO(OR1)、ここで、R1はブトキシポリ(エチレングリコール−共−プロピレングリコール)、Mn=1,000g/モル、エチレングリコール/プロピレングリコール比=〜1:1、AN=〜98.7 mg KOH/g、以下リン酸エステルAと称す]の15.1部で、強力な攪拌の下に50℃で塩化する。
これにより、透明で粘着性の茶色生成物が得られる。
この実施例の塩化度は0.8である。
【0063】
実施例28
実施例18による反応生成物(AmN:19.1 mg KOH/g)の75部をリン酸エステルAの16.6部で、強力な攪拌の下に50℃で塩化する。
これにより、透明で粘着性のある茶色の生成物が得られる。この実施例の塩化度は0.8である。
【0064】
実施例29
実施例5による反応生成物(AmN:10.1 mg KOH/g)の150部をクエン酸の0.52部を用いて50℃で塩化する。これにより、透明で粘着性の黄色生成物が得られる。この実施例の塩化度は0.3である。
【0065】
実施例30
実施例10による反応生成物の100部とポリリン酸の9.5部とを強力な攪拌下に60℃で5分間混合する。この間に、粘度の急激な上昇が観察される。温度を80℃に上げて5時間後に、酸価が初期値の88.78 mg KOH/gから最終値の100.4 mg KOH/gまで上昇する。冷却後の反応生成物は黄色で、高粘度の透明な液体である。
【0066】
実施例31
実施例11によるエポキシド−アミン付加物の150部とトール油脂肪酸(測定酸価:193 mg KOH/g)の37.4部を混合する。この混合比率でもって、エステル化される水酸基に対して、当該トール油脂肪酸は過剰の約2倍モルを使用する。この混合物を、触媒としてのp−トルエンスルホン酸の1部と混合し、攪拌しながら180℃まで加熱する。窒素を穏やかに流して、反応混合物から反応水を除去する。これらの反応条件の下で約3.5時間経過後、反応温度を200℃まで上げた。更に7.5時間経過後、反応溶液のアミン価は27.1 mg KOH/gのレベルまで低下した。従って、全ての水酸基のほぼ50%以上がトール油脂肪酸によってエステル化された。これにより、黄褐色の透明な生成物が得られる。
【0067】
実施例32
実施例10による反応生成物の150部[水酸基価(OHN):31.7 mg KOH/g)とε−カプロラクトンの96.7g及びジブチル錫ジラウレート(DBTL)の200ppmとを混合する。窒素雰囲気下にて、これらの成分を攪拌しながら160℃に加熱する。6時間及び12時間の反応の後、その時間毎にDBTLの100ppmを加える。約15時間の全反応時間の範囲内で、当該反応溶液の固体物含量は98%を超えて上昇した。冷却後、生成したポリエステルは茶色で、部分的に結晶性の反応生成物である。これを適切な溶媒で希釈して使用する。
【0068】
実施例33
実施例9による反応生成物の(AmN:21.9)100部とヨウ化メチル(アルキル化される窒素原子を基準に90モル%)の5部とを混合し、この混合物を窒素雰囲気下、30℃で12時間攪拌する。この時間以内で、AmNはほぼ理論値に相当する2.2のレベルまで低下した。さらに、反応溶液の粘性はかなり増加した。粘着性のある黄色の反応生成物が得られる。
【0069】
実施例34
実施例14による反応生成物(アミン価 10.1mg/g)の150部をベンジルクロリドの3.08と混合する。実施例14による反応生成物とベンジルクロリドとのモル比はジメチルアミノアルキル基の約90%がアルキル化されるように選択した。3時間(窒素雰囲気下、120℃での反応時間)後に、アミン価は、ほぼ理論値に相当する11.2mg KOH/gレベルに低下した。
予備実験において、これらの反応条件下で、かつこのアルキル化剤を使用し、ジメチルアミノアルキル基がほぼ独占的にアルキル化されることが分った。透明で黄オレンジの粘着性反応生成物が得られる。
【0070】
実施例35
実施例11による反応生成物(OHN 24.1)の175部とステアリルイソシアネート21.4部とを混合し、この混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱する。これは、該アミン性ポリアルキレンオキシドの水酸基に対して、イソシアネート基が0.857モル不足していることに相当する。イソシアネート含量は反応直前決定された。ほぼ3時間の反応の後、イソシアネート基の含量は0.01%未満まで低下したので、その反応を終了する。部分的に結晶化した白い反応生成物が得られる。
【0071】
応用実施例
本発明の分散剤の性能をテストするために、種々の修飾もしくは未修飾のアミン性ポリアルキレンオキシドを使って顔料ペーストを製造した。これと並行して、市販されている発明性の無いアミン性ポリアルキレンオキシドを使い、同様に顔料ペーストを製造した。後者の生成物は化学的に本発明の物質と非常に類似し、市販されているので、アミン性ポリアルキレンオキシドの分野における技術の現状を代表するものである。水ベースの顔料ペーストを製造し、また、溶媒ベースのバインダシステムに使用される溶媒系(solvent−borne)顔料ペーストも製造した。
このように得られる顔料ペーストをバインダシステムに組み入れて、それらの性能を調べた。応用及び最終製品である顔料入りコーティング材料の架橋に続いて、色強度測定をドローダウン(drawdowns)について行った。さらにまた、粘度測定を顔料ペーストについて行った。
【0072】
【表3】

【0073】
100部のガラスビーズ(直径1mm)を上記混合物の100部に加えてできた混合物を、Getzmannの垂直ビーズミル(Dispermat CV)に入れ、直径40mmのポリプロピレンディスクを使用し、Bayferrox 130Mの場合には18 m/s、Heliogenblau 7101Fの場合には23m/sの周速度でもって、40℃で40分間分散させた。さらに、同様な条件下(周速度18m/s、分散時間30分)で、標準の市販湿潤剤と分散剤を用いて白色ペーストを製造した。
【0074】
【表4】

【0075】
分散性の品質をテストするために、下記の処方に従い、Skandexシェーカーを用いて、着色ペースト及び白色ペーストを標準の市販透明ワニスと混合した。
【0076】
【表5】

【0077】
Joncryl SCX 8280を基礎に製造した標準の市販透明ワニスは下記の処方である。
【0078】
【表6】

【0079】
次に、製品のコーティング材料を100μmのウェット膜厚で塗布し、ボックス型コーティングバー(box-type coating bar)を用い、BYK−Gardnerからのチャート(No 2853)と対比する。
当該コーティング材料を室温で乾燥した後、Byk−Gardnerの光沢−ヘイズ測定機器を用いて、60度の観察角で光沢を測定し、そして、コーティングのヘイズを測定する。白色ブレンドの顔料安定性は、擦り取っていないコーティング材料との対比で擦り取り(rub−out)で生じる陰差(difference in shade)を基準に測定する(すなわち、塗布した材料が乾燥する少し前にそれを擦ると陰差が生じる)。BYK−Gardnerの色差計(色ガイド、球体、観察角10度)を使用して、この陰差(ΔE値)を決定する。ΔE値が小さいほど、ブレンドの安定性は良好である。
【0080】
【表7】

* この場合、Tetronic RED 9040を使用した顔料ペーストは非常に高く凝集していたので、光沢度及びヘイズの測定ができなかった。
【0081】
【表8】

【0082】
表7及び8から明らかなように、本発明の生成物から製造された顔料入りコーティング材料のみが高光沢、低ヘイズ、かつ許容できるΔE値のコーティングとすることができる。本発明の他の分散剤や他の顔料を使って製造した顔料入りコーティング材料にも、同様なことが生じる。 発明性の無い生成物で、Heliogenblau 7101Fを使用した場合、許容できる分散のものは得られなかった。Bayferrox 130 Mの分散では、発明性の無い生成物で、光沢やヘイズが不良で、ΔE値についても弱点があった。
【0083】
本発明の生成物の応用範囲が広いことを例示するために、さらに、溶媒系バインダシステムにおける湿潤剤及び分散剤としてこの生成物を使用した。
【0084】
【表9】

【0085】
ガラスビーズ(直径1mm)の100部を上記の混合物の100部に加えてできた混合物をGetmannの垂直ビーズミル(Dispermat CV)に入れ、直径40mmのポリプロピレンディスクを使用し、23m/sの周速度でもって、40℃で60分間分散させた。生じたペーストを篩に掛けてガラスビーズを除去した後、粘度を測定した。この測定には、RheologicaのStresstechレオメータを使用した。23℃で直径25mmの平板及び円錐角1度の円錐平板粘度計(cone/plate geometry)を用い、異なる剪断速度で測定した。
【0086】
【表10】

【0087】
分散の品質をテストするために、以下の処方に従い、各色ペーストの2.4部を標準の市販品である溶媒系アルキッド樹脂と、Skandexシェーカーを用いて5分間混合する。
【0088】
【表11】

【0089】
処方する前に、DIN 4カップの中で、コーティング材料をキシレンで調製し、流れ時間が25秒となるようにする。このように調整したコーティング材料をポリエステルフィルム上に注ぎ、室温で10分間乾燥し、ついで塗料乾燥オーブンで140℃、30分間焼付ける。このときに使用した標準品は、Disperbyk 2050 であり、これはバインダ無し、溶媒系の顔料濃縮物として特別に開発したもので、顔料への親和性がある基を有するアクリレート共重合体であった。
【0090】
【表12】

【0091】
本発明の全ての生成物は、非常に優れた光沢及びヘイズ値を示す。Disperbyk 2050を含むペーストから製造されたコーティング材料もまた、良好な光沢値を示すが、ヘイズ値が比較的高い。しかしながら、ペースト粘度(表 10)については、大きな違いが見られる。本発明の生成物からなる全てのペーストは、工業標準のDisperbyk 2050と比較して極めて低い粘度を呈し、このために分散している間に顔料を実質的に高充填することができる。類似した現象は、本発明の他の分散剤並びに他の顔料で生産される顔料入りコーティング材料にも生じる。
【0092】
それゆえに、すなわち効果的な顔料の安定化とペーストのミルベース(mill base)粘度の低下とが相俟って、高充填の加工が可能となるので、本発明の目的に合致している。さらに、本発明のアルコキシル化エポキシド-アミン付加物の使用により、水系処方のみならず溶媒系処方においても生成物が特に幅広い相溶性を示すことができる。
【0093】
本生成物の更なる使用分野は、構成成分としてセルロースアセトブチレート(CAB)から成るコーティングシステムで使用される顔料用の湿潤剤及び分散剤としての該生成物の使用である。当業者に知られているように、この種類のコーティングシステムは深刻な顔料の凝集が生じる傾向がある。本発明の添加剤を使用することにより、良好な性能特性を有する凝集のない顔料入りコーティング材料を製造することができた。
【0094】
【表13】

【0095】
100部のガラスビーズを(直径1mm)、上記の混合物の100部に混ぜてできた混合物をGetzmannの垂直ビーズミル(Dispermatt CV)に入れ、直径40mmのポリプロピレンディスクを使用し、23m/sの周速度でもって、40℃で60分間分散させた。ガラスビーズを篩にかけて取り除いた後、コーティング材料を下記の処方で調合する。
【0096】
【表14】

【0097】
【表15】

【0098】
レットダウン(Letdown)の成分をSkandexシェーカーで10分間混合し、次いで、酢酸ブチルで1:1に希釈して、ポリエステルフィルム上に注いだ。コーティイング材料を室温で15分間蒸散し、続いて、140℃で30分間、塗料乾燥オーブン中で焼き付けた。コーティングの品質を目視で評価した。
【0099】
【表16】

【0100】
CABを含むコーティングシステムと同様に、異なるコーティング処方の湿潤剤及び分散剤として、特に本発明の生成物が幅広い応用において優れた特性を示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
500g/モルより大きい数平均分子量を有するアルコキシル化エポキシド−アミン付加物であって、
A)少なくとも8個の炭素原子を有するモノ及び/又はポリエポキシドと
B)第1級及び/又は第2級アミン、及び/又は第1級及び/又は第2級アルカノールアミン、及び/又は第2級アルキルアルカノールアミンとを反応させて1個以上の第2級水酸基を有する付加物を生成し、次いで、この付加物を
C)アルキレンオキシドでアルコキシル化して得られる該アルコキシル化エポキシド−アミン付加物。
【請求項2】
芳香族モノエポキシド及び/又はポリエポキシドが構成成分A)として用いられることを特徴とする請求項1に記載のエポキシド-アミン付加物。
【請求項3】
アルコキシル化で生じる水酸基がヒドロキシカルボン酸及び/又は環状ラクトンと反応して(ポリ)エステルラジカルとなることを特徴とする請求項1又は2に記載のエポキシド-アミン付加物。
【請求項4】
アルコキシル化又はポリエステ化において生成した水酸基がエステル化又はエーテル化されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシド−アミン付加物。
【請求項5】
アルコキシル化又はポリエステ化において生成した水酸基がモノ−及び/又はポリイソシアネートと、又は少なくとも1個のフリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート付加物と反応してウレタン基を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシド−アミン付加物。
【請求項6】
アルコキシル化又はポリエステ化において生成した水酸基が、更にリン酸又はポリリン酸、及び/又は酸性リン酸エステル及び/又はカルボン酸と反応して塩を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシド−アミン付加物。
【請求項7】
アルコキシル化又はポリエステル化において生成した水酸基が反応して酸性リン酸エステル基を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシド-アミン付加物。
【請求項8】
該付加物中の少なくとも1個のアミノ基が、更にアルキル化又は酸化されて第4級アンモニウム塩又はN−オキシドを生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシド−アミン付加物。
【請求項9】
A)少なくとも8個の炭素原子を有するモノ−及び/又はポリエポキシドが、
B)第1級及び/又は第2級アミン、及び/又は第1級及び/又は第2級アルカノールアミン、及び/又は第2級アルキルアルカノールアミンと反応して少なくとも1個の第2級水酸基を有する付加物を生成し、更に、該付加物が次のステップで、
C)アルキレンオキシドと反応して、
500g/モルより大きい数平均分子量の塩基性ポリアルキレンオキシドを生成することを特徴とする、アルコキシル化エポキシド−アミン付加物の製造方法。
【請求項10】
芳香族モノ及び/又はポリエポキシドを構成成分A)として使用することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルコキシル化により生じる水酸基をヒドロキシカルボン酸及び/又は環状ラクトンと反応させてポリエステルラジカルを生成することを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
アルコキシル化又はポリエステル化により生じる水酸基をエステル化又はエーテル化することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
アルコキシル化又はポリエステル化において生成した水酸基がモノ−及び/又はポリイソシアネートと、又は少なくとも1個のフリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート付加物と反応してウレタン基を生成することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
アルコキシル化又はポリエステル化において生成した水酸基が反応して、酸性リン酸エステル基を生成することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
該付加物中の少なくとも1個のアミノ基が、更にリン酸又はポリリン酸、及び/又は酸性リン酸エステル及び/又はカルボン酸と反応して塩を生成することを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
該付加物中の少なくとも1個のアミノ基が、更にアルキル化又は酸化されて第4級アンモニウム塩又はN−オキシドを生成することを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
有機及び無機顔料並びに充填材用の湿潤剤及び分散剤としての請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシド−アミン付加物の使用。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシド−アミン付加物で被覆した粉状又は繊維状固体物。


【公開番号】特開2006−124699(P2006−124699A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−295735(P2005−295735)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】